説明

覆工構造及び覆工方法

【課題】 トンネルの本坑と連絡坑との交差部の覆工を容易に行うことができる覆工方法を提供する。
【解決手段】 トンネルの本坑20と連絡坑22との交差部28の覆工方法であって、前記交差部28に、開口16を有する支持部材2を設置し、前記開口16を介して前記本坑20と前記連絡坑20とを連通する工程と、前記交差部28に、前記本坑20の内壁21と間隔をおいて覆工版30を設け、該覆工版30の端部を前記本坑20の底部と前記支持部材2の上部との間で支持する工程と、前記覆工版30と前記本坑20の内壁21との間、前記支持部材2と前記本坑20の内壁との間、及び前記支持部材2と前記連絡坑22の内壁23との間にモルタル31を打設する工程と、を備えている覆工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆工構造及び覆工方法に関し、特に、トンネルの本坑と連絡坑との交差部の二次覆工に有効な覆工構造及び覆工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、NATM(New Austrian Tunneling Method)工法によりトンネルの本坑及び連絡坑を構築する場合、掘削した部分の内壁にコンクリートを吹き付けて一次覆工を施し、一次覆工の完了後に更に適宜の方法によって二次覆工を施すことが行われている。
【0003】
例えば、一次覆工を施した本坑及び連絡坑内に移動式鋼製型枠(セントル)を配置し、鋼製型枠を本坑及び連絡坑の内壁に対向させ、鋼製型枠と本坑及び連絡坑の内壁との間にコンクリートを打設することによって二次覆工を施す方法(特許文献1参照)や、一次覆工の完了した本坑及び連絡坑の内壁にプレキャスト覆工版を取り付けることによって二次覆工を施す方法(特許文献2参照)が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−70498号公報
【特許文献2】特開昭59−210198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本坑及び連絡坑の内壁に移動式鋼製型枠を用いて二次覆工を施す方法にあっては、本坑及び連絡坑の本体部を覆工する場合には問題はないが、本坑と連絡坑との交差部を覆工する場合に、本坑側の移動式鋼製型枠又は連絡坑側の移動式鋼製型枠によって交差部が塞がれてしまうため、効率の悪い作業となる。また、交差部の形状に応じた専用の鋼製型枠を用いなければならないため、交差部の二次覆工に時間と手間と費用がかかる。
【0006】
さらに、プレキャスト覆工版を用いて二次覆工を施す方法にあっても、移動式鋼製型枠を用いる方法と同様に、本坑及び連絡坑の本体部を覆工する場合には問題はないが、本坑と連絡坑との交差部を覆工する場合に、交差部の形状に応じた専用のプレキャスト覆工版を用いなければならないため、交差部の覆工に時間と手間と費用がかかる。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、トンネルの本坑と連絡坑との交差部を、容易に、短時間で、安価な費用で覆工することができる覆工構造及び覆工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、トンネルの本坑と連絡坑との交差部の覆工構造であって、前記交差部に設置されるとともに、前記本坑と前記連絡坑とを連通する開口を有する支持部材と、 前記交差部に、前記本坑の内壁と間隔をおいて設けられるとともに、端部が前記本坑の底部と前記支持部材の上部との間で支持される覆工版と、該覆工版と前記本坑の内壁との間、前記支持部材と前記本坑の内壁との間、及び前記支持部材と前記連絡坑の内壁との間に打設されるモルタルとを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の覆工構造によれば、トンネルの本坑と連絡坑との交差部に支持部材を設置し、交差部の本坑の内壁と間隔をおいて覆工版を設け、覆工版の端部を本坑の底部と支持部材の上部との間で支持し、覆工版と本坑の内壁との間、支持部材と本坑の内壁との間、及び支持部材と連絡坑の内壁との間にモルタルを打設することにより、本坑と連絡坑との交差部を覆工することができる。
従って、トンネルの本坑と連絡坑との交差部の形状に応じた専用の鋼製型枠を使用する必要はなく、また、交差部の形状に応じた専用の覆工版を使用する必要はなく、同形状の覆工版で十分に対応することができるので、交差部を、容易に、短時間で、安価な費用で覆工することができる。
【0010】
また、本発明において、前記交差部は、前記本坑と前記連絡坑との接続部、該接続部に連続する前記本坑及び前記連絡坑の部分から構成されていることとしてもよい。
【0011】
本発明の覆工構造によれば、本坑と連絡抗との接続部、接続部に連続する本坑及び連絡坑の部分からなる交差部に対して、覆工版により、容易に、短時間で、安価な費用で覆工を施すことができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記支持部材は、下桁と、該下桁の上部に立設される複数の柱と、該複数の柱の上端間に架設される上桁とからなり、前記下桁と前記上桁と隣接する柱とによって囲まれる部分に前記開口が設けられ、前記下桁及び前記上桁が前記本坑の長手方向に沿うように、かつ、前記開口が前記連絡坑の前記本坑との接続断面に正対するように、前記交差部の底部に設置されていることとしてもよい。
【0013】
本発明の覆工構造によれば、下桁と複数の柱と上桁とからなる支持部材は、下桁及び上桁が本坑の長手方向に沿うように、かつ、開口が連絡坑の本坑との接続断面に正対するように、本坑と連絡坑との交差部に設置され、この支持部材を利用して交差部に覆工版が取り付けられる。また、支持部材の開口を介して本坑と連絡坑との間を相互に行き来することが可能となるので、作業効率を更に高めることができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記支持部材の下桁及び上桁と各柱との間は、接合手段を介して分解組み立て可能に接合されていることとしてもよい。
【0015】
本発明の覆工構造によれば、支持部材を下桁、上桁、及び柱に分解した状態で交差部に搬入し、交差部において接合手段を介して組み立てることにより、交差部に設置することができる。従って、支持部材が大型の重量物であっても、交差部に容易に搬入して組み立て、設置することができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記下桁及び上桁は、複数の部材に分解組み立て可能に構成されるとともに、隣接する部材間が接合手段を介して分解組み立て可能に接合されていることとしてもよい。
【0017】
本発明の覆工構造によれば、下桁及び上桁は、複数の部材に分解組み立て可能に構成されているので、支持部材の下桁及び上桁が大型の重量物であっても、下桁及び上桁を分解した状態とすることにより交差部に容易に搬入して組み立て、設置することができる。
【0018】
さらに、本発明は、トンネルの本坑と連絡坑との交差部の覆工方法であって、前記交差部に、開口を有する支持部材を設置し、前記開口を介して前記本坑と前記連絡坑とを連通する工程と、前記交差部に、前記本坑の内壁と間隔をおいて覆工版を設け、該覆工版の端部を前記本坑の底部と前記支持部材の上部との間で支持する工程と、前記覆工版と前記本坑の内壁との間、前記支持部材と前記本坑の内壁との間、及び前記支持部材と前記連絡坑の内壁との間にモルタルを打設する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明の覆工方法によれば、トンネルの本坑と連絡坑との交差部に支持部材を設置し、支持部材の開口を介して本坑と連絡坑とを連通する。そして、交差部に、本坑の内壁と間隔をおいて覆工版を設け、この覆工版の端部を本坑の底部と支持部材の上部との間で支持する。そして、覆工版と本坑の内壁との間、支持部材と本坑の内壁との間、及び支持部材と連絡坑の内壁との間にモルタルを打設する。これにより、本坑と連絡坑との交差部を覆工することができる。
【0020】
さらに、本発明において、前記交差部は、前記本坑と前記連絡坑との接続部、該接続部に連続する前記本坑及び前記連絡坑の部分から構成されていることとしてもよい。
【0021】
さらに、本発明において、前記交差部を除いた前記連絡抗及び前記本坑の部分に、前記連絡坑の内壁及び前記本坑の内壁と間隔をおいて覆工版を設ける工程と、該覆工板と前記連絡坑及び前記本坑の内壁との間にモルタルを打設する工程と、を更に備えていることとしてもよい。
【0022】
本発明の覆工方法によれば、交差部の覆工に前後して、交差部を除いた本坑及び連絡坑の部分に、本坑及び連絡坑の内壁と間隔をおいて覆工版を設け、この覆工版と本坑及び連絡坑の内壁との間にモルタルを打設することにより、交差部を除く本坑及び連絡坑の部分を覆工することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上、説明したように、本発明の覆工構造及び覆工方法によれば、トンネルの本坑と連絡坑との交差部を覆工する場合に、交差部の形状に応じた鋼製型枠を使用する必要がなく、また、交差部の形状に応じた覆工版を使用する必要もなく、同形状の覆工版を使用して、容易に、短時間で、安価な費用で交差部の覆工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による覆工構造の一実施の形態を示した正面図であって、覆工構造の支持部材の全体を示した正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】二次覆工が完了した状態を示した断面図である。
【図4】本坑の本体部の二次覆工が完了した状態をした断面図である。
【図5】本坑と連絡坑との交差部周辺を示した展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5には、本発明による覆工構造及び覆工方法の一実施の形態が示されている。図1は覆工構造の支持部材の全体を示す正面図、図2は図1の側面図、図3は二次覆工が完了した状態を示す断面図、図4は本坑の本体部の二次覆工が完了した状態を示す説明図、図5は本坑と連絡坑との交差部周辺の展開図である。
【0026】
本実施の形態の覆工構造及び覆工方法は、例えば、図5に示すように、トンネルの本坑20と連絡坑22との交差部28の覆工に適用可能なものであって、本坑20と連絡坑22との交差部28に対して覆工版30(本実施の形態ではプレキャスト覆工版)により二次覆工を施すのに有効なものである。
【0027】
本実施の形態の覆工構造1は、図1〜図3に示すように、トンネルの本坑20と連絡坑22との交差部28に設置される鋼製の支持部材2と、一次覆工が完了した交差部28の本坑20の内壁21に対して間隔おいて設けられるとともに、端部が交差部28の底部29と支持部材2の上部との間で支持される円弧板状の覆工版30と、覆工版30と交差部28の本坑20の内壁21との間、支持部材2と本坑20の内壁21との間、及び支持部材2と連絡坑22の内壁23との間に打設されるモルタル31とを備え、覆工版30とモルタル31とによって交差部28に二次覆工が施されるようになっている。
【0028】
ここで、交差部28は、本坑20と連絡坑22との接続部分、接続部分に連続する本坑20の部分(図5のA部分)、及び接続部分に連続する連絡坑22の部分(図5のB部分)を含むものとする。
【0029】
支持部材2は、図1及び図2に示すように、門型状をなすものであって、略角筒状の下桁3と、下桁3の上部中央及び両端にそれぞれ垂直に立設される略角筒状の3本の柱(中柱13、左柱14、及び右柱15)と、3本の柱(中柱13、左柱14、及び右柱15)の上端間に下桁3と平行をなすように架設される略角筒状の上桁8とから構成され、下桁3と上桁8と隣接する2本の柱(中柱13と左柱14、中柱13と右柱15)とによって囲まれる部分にそれぞれ矩形状の開口16が形成されている。
【0030】
支持部材2は、本坑20と連絡坑22との交差部28の本坑20側の底部29に、下桁3及び上桁8が本坑20の長手方向に沿うように、かつ各開口16が連絡坑22の本坑20との接続断面に正対するように設置され、各開口16を介して本坑20と連絡坑22との間が相互に連通するようになっている。
【0031】
交差部28の底部29(本坑20及び連絡坑22の本体部の底部も含む)には、掘削した土を埋め戻すことによって形成された所定の厚さの路盤24と、路盤24の上部にコンクリートを打設することによって形成された所定の厚さのインバート25とが設けられるとともに、インバート25の連絡坑22側の上端部にはコンクリートを打設することによって形成された所定の高さの調整台26が設けられ、この調整台26の上部に支持部材2がアンカーボルト(図示せず)によって固定されている。
【0032】
支持部材2は、下桁3と上桁8と3本の柱(中柱13、左柱14、右柱15)とに分解、組み立て可能に構成され、下桁3と各柱(中柱13、左柱14、右柱15)との間、及び上桁8と各柱(中柱13、左柱14、右柱15)との間を接合手段17を介してそれぞれ一体に接合することにより、全体が門型状に組み立てられるようになっている。
【0033】
接合手段17は、例えば、鋼製の添接板とボルト・ナットとから構成され、添接板を下桁2と各柱(中柱13、左柱14、右柱15)との間、及び上桁8と各柱(中柱13、左柱14、右柱15)との間に添わせ、各添接板の端部をボルト・ナットによって下桁3、上桁8、及び各柱(中柱13、左柱14、右柱15)に固定することにより、下桁3及び上桁8と各柱(中柱13、左柱14、右柱15)との間が一体に接合される。
【0034】
なお、接合手段17は、添接板とボルト・ナットとの組合せに限らず、下桁3及び上桁8と各柱(中柱13、左柱14、右柱15)との間を分解、組み立て可能に接合できる機能を有するものであればよい。
【0035】
支持部材2は、下桁3、上桁8、及び各柱(中柱13、左柱14、右柱15)の全体を一つの部材によって構成してもよいが、施工性を高めるために全体を2つ以上に分割するのが好ましい。本実施の形態においては、下桁3を3つの部材(左下桁部4、中下桁部5、及び右下桁部6)に分割し、上桁8を3つの部材(左上桁部9、中上桁部10、右上桁部11)に分割し、上記の接合手段17を介してそれぞれ一体に接合するように構成している。
【0036】
支持部材2は、図2に示すように、門型状に組み立てて交差部28の底部29に設置した場合に、下桁3及び上桁8の本坑20の内方側(連絡坑22と反対側)の端部が各柱(中柱13、左柱14、右柱15)よりも本坑20の内方側に所定の長さ突出するように、下桁3及び上桁8の形状、寸法が設定され、上桁8の本坑20の内方側に突出している部分の上部と交差部28の底部29のインバート25の上部との間で覆工版30の長手方向の両端部が支持されるようになっている。
【0037】
上桁8の本坑20の内方側に突出している部分の下面側には、上桁8の長手方向に所定の間隔ごとに複数の補強リブ12が一体に設けられ、この複数の補強リブ12によって上桁8の強度が高められている。また、下桁3の本坑20の内方側に突出している部分の上面側には、下桁3の長手方向に所定の間隔ごとに複数の補強リブ7が一体に設けられ、この複数の補強リブ7によって下桁3の強度が高められている。
【0038】
図3に示すように、覆工版30と本坑20の内壁21との間、支持部材2の上桁8と本坑20の内壁21との間、及び支持部材2の上桁8と連絡坑22の内壁23との間にはそれぞれモルタル31が打設され、このモルタル31によって覆工版30が本坑20の内壁21と一体化されるとともに、支持部材2が本坑20と連絡坑22との交差部28に一体に固定される。
【0039】
次に、本実施の形態の覆工方法について説明する。
本実施の形態の覆工方法は、本坑20と連絡坑22との交差部28に支持部材2を設置する工程と、交差部28に覆工版30を設ける工程と、覆工版30と本坑20の内壁21との間、支持部材2と本坑20の内壁21との間、及び支持部材2と連絡坑22の内壁23との間にモルタル31を打設する工程とを備えている。
【0040】
以下、各工程について説明する。
(1)支持部材設置工程
図1及び図2に示すように、支持部材2を、一次覆工が完了した本坑20と連絡坑22との交差部28に、本坑20の長手方向に沿うように、かつ各開口26が連絡坑22の本坑20との接続断面に正対するように設置する。
【0041】
この場合、支持部材2は、下桁3、上桁8、中柱13、左柱14、右柱15に分解し、下桁3を左下桁部4、中下桁部5、及び右下桁部6に分解し、上桁8を左上桁部9、中上桁部10、及び右上桁部11に分解した状態としておき、この状態でフォークリフト等を使用して交差部28の設置箇所に搬入する。
【0042】
そして、設置箇所において、下桁3の左下桁部4、中下桁部5、及び右下桁部6を調整台26の上部に載置し、左下桁部4及び右下桁部6と中下桁部5との間を接合手段17の添接板及びボルト・ナットを介して一体に接合し、下桁3をアンカーボルト(図示せず)によって調整台26に固定する。
【0043】
次に、下桁3の上部に上桁8の左上桁部9、中上桁部10、及び右上桁部11を載置し、左上桁部9及び右上桁部11と中上桁部10との間を接合手段17の添接板及びボルト・ナットを介して一体に接合し、下桁3と上桁8との間に予め介装させておいたジャッキ(図示せず)により上桁8と上昇させ、上桁8を下桁3の上方の所定の位置に位置決めする。
【0044】
次に、下桁3と上桁8との間に中柱13、左柱14、及び右柱15を挿入し、中柱、13左柱14、及び右柱15の下端を接合手段17の添接板及びボルト・ナットを介して下桁3に固定し、ジャッキによって上桁8を下降させて上桁8を中柱13、左柱14、及び右柱15の上部に載置し、中柱13、左柱14、及び右柱15の上端を接合手段17の添接板及びボルト・ナットを介して上桁8に固定する。
【0045】
このようにして、交差部28の底部29に支持部材2を門型状に組み立てて設置することにより、支持部材2の下桁3と上桁8と隣接2本の柱(中柱13と左柱14、中柱13と右柱15)とによって囲まれる部分にそれぞれ開口16が形成され、この開口16を介して本坑20と連絡坑22との間が相互に連通することになる。
【0046】
(2)覆工版の設置工程
図3に示すように、支持部材2を交差部28の底部29に設置した後に、スピンアーム等を使用して、本坑20の内壁21と所定の間隔をおいて覆工版30を配置し、覆工版30の長手方向の両端部を交差部28の底部29のインバート25の上部と支持部材2の上桁8の上部との間に架設し、覆工版30の長手方向の両端部をボルト等によってインバート25側及び支持部材2側に固定する。このような作業を複数の覆工板30に対して行い、交差部28を構成する本坑20の内壁21を複数の覆工版30によって所定の間隔をおいて被覆する。
【0047】
(3)モルタル打設工程
図3及び図5に示すように、複数の覆工版30を取り付けた後に、覆工版30と本坑20の内壁21との間、支持部材2の上桁8の上部と本坑20の内壁21との間、及び支持部材2の上桁8の上部と連絡坑22の内壁23との間にモルタル31を打設し、覆工版30を本坑20と一体化し、支持部材2を本坑20及び連絡坑22と一体化する。
【0048】
なお、上記の(1)〜(3)の工程に前後して、図4及び図5に示すように、交差部28を除いた本坑20及び連絡坑22の部分(本坑20及び連絡坑22の本体部)の内壁21、23に対して所定の間隔をおいて覆工板30を設け、覆工板30と本坑20及び連絡坑22の内壁21、23との間にモルタル31を打設し、本坑20及び連絡坑22の本体部に複数の覆工版30による二次覆工を施す。
【0049】
このようにして、トンネルの本坑20及び連絡坑22の本体部、及び交差部28に対して、覆工版30により二次覆工を施すことができる。
【0050】
上記のように構成した本実施の形態による覆工構造及び覆工方法にあっては、覆工版30を用いてトンネルの本坑20と連絡坑21との交差部28を覆工する場合に、支持部材2を交差部28の底部29に設置し、支持部材2を利用して覆工版30を交差部28の本坑20の内壁21に対向配置し、この状態で覆工板30と本坑20の内壁21との間、支持部材2と本坑20の内壁21との間、及び支持部材2と連絡坑22の内壁23との間にそれぞれモルタル31を打設することで、交差部28に対して二次覆工を施すことができるので、従来のように、交差部28の形状に応じ鋼製型枠を使用する必要はなく、また、交差部28の形状に応じた覆工版を使用する必要もなく、長さの短い同形状の覆工版30で十分に交差部28を覆工することができることになる。
【0051】
従って、トンネルの本坑20と連絡坑22との交差部28の覆工を、容易に、短時間で、安価な費用で行うことができる。
【0052】
また、支持部材2に形成した開口16を、本坑20と連絡坑22との間を行き来する通路として利用することができるので、これによっても交差部28の覆工を容易に効率よく行うことができる。
【0053】
なお、前記の説明においては、門型状に形成した支持部材2を用いて覆工版30を支持するように構成したが、門型に限らず、その他の形状の支持部材によって覆工版30を支持するように構成してもよい。
【0054】
また、前記の説明においては、覆工版30としてプレキャスト化したコンクリート覆工版(プレキャスト覆工版)を用いたが、プレキャスト覆工版に限らず、鋼製の覆工版を用いてもよい。また、所要の強度を有する板状のものを覆工版として用いてもよい。それらの場合にも同様の作用効果を奏する。
【0055】
さらに、前記の説明においては、支持部材2に2つの開口16を設けたが、支持部材2に1つ又は3つ以上の開口16を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 覆工構造
2 支持部材
3 下桁
4 左下桁部
5 中下桁部
6 右下桁部
7 補強リブ
8 上桁
9 左上桁部
10 中上桁部
11 右上桁部
12 補強リブ
13 中柱、
14 左柱
15 右柱
16 開口
17 接合手段
20 本坑
21 内壁
22 連絡坑
23 内壁
24 路盤
25 インバート
26 調整台
28 交差部
29 底部
30 覆工版
31 モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの本坑と連絡坑との交差部の覆工構造であって、
前記交差部に設置されるとともに、前記本坑と前記連絡坑とを連通する開口を有する支持部材と、
前記交差部に、前記本坑の内壁と間隔をおいて設けられるとともに、端部が前記本坑の底部と前記支持部材の上部との間で支持される覆工版と、
該覆工版と前記本坑の内壁との間、前記支持部材と前記本坑の内壁との間、及び前記支持部材と前記連絡坑の内壁との間に打設されるモルタルとを備えていることを特徴とする覆工構造。
【請求項2】
前記交差部は、前記本坑と前記連絡坑との接続部、該接続部に連続する前記本坑及び前記連絡坑の部分から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の覆工構造。
【請求項3】
前記支持部材は、下桁と、該下桁の上部に立設される複数の柱と、該複数の柱の上端間に架設される上桁とからなり、前記下桁と前記上桁と隣接する柱とによって囲まれる部分に前記開口が設けられ、
前記下桁及び前記上桁が前記本坑の長手方向に沿うように、かつ、前記開口が前記連絡坑の前記本坑との接続断面に正対するように、前記交差部の底部に設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の覆工構造。
【請求項4】
前記支持部材の下桁及び上桁と各柱との間は、接合手段を介して分解組み立て可能に接合されていることを特徴とする請求項3に記載の覆工構造。
【請求項5】
前記下桁及び上桁は、複数の部材に分解組み立て可能に構成されるとともに、隣接する部材間が接合手段を介して分解組み立て可能に接合されていることを特徴とする請求項4に記載の覆工構造。
【請求項6】
トンネルの本坑と連絡坑との交差部の覆工方法であって、
前記交差部に、開口を有する支持部材を設置し、前記開口を介して前記本坑と前記連絡坑とを連通する工程と、
前記交差部に、前記本坑の内壁と間隔をおいて覆工版を設け、該覆工版の端部を前記本坑の底部と前記支持部材の上部との間で支持する工程と、
前記覆工版と前記本坑の内壁との間、前記支持部材と前記本坑の内壁との間、及び前記支持部材と前記連絡坑の内壁との間にモルタルを打設する工程と、
を備えていることを特徴とする覆工方法。
【請求項7】
前記交差部は、前記本坑と前記連絡坑との接続部、該接続部に連続する前記本坑及び前記連絡坑の部分から構成されていることを特徴とする請求項6に記載の覆工方法。
【請求項8】
前記交差部を除いた前記連絡抗及び前記本坑の部分に、前記連絡坑の内壁及び前記本坑の内壁と間隔をおいて覆工版を設ける工程と、
該覆工板と前記連絡坑及び前記本坑の内壁との間にモルタルを打設する工程と、
を更に備えていることを特徴とする請求項6又は7に記載の覆工方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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