覆蓋装置及びその使用方法
【課題】二人以下の少ない作業員でも容易に覆蓋の開閉を行うことができるとともに、覆蓋を開いた状態としているときでも、覆蓋の上面に設置した太陽電池モジュールのほぼ全体に太陽光が当たって発電状態が得られるような覆蓋装置とその使用方法とを提供する。
【解決手段】上下水道施設の上方を覆うための覆蓋装置であって、上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているか、又は直線状に傾斜した傾斜面を有しており、前記上面に沿って太陽電池モジュール5が設置された複数の覆蓋3と、前記上下水道施設を形成する躯体20に水平に架設される回転軸2とを備え、前記複数の覆蓋3が、その幅方向と回転軸2の軸方向とが一致するよう回転軸2により回動可能に支持された状態で隣接配置され、各覆蓋3の長手方向における一端部を開閉側端部11として上下に回動させることにより各覆蓋3を開閉できるようにした覆蓋装置。
【解決手段】上下水道施設の上方を覆うための覆蓋装置であって、上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているか、又は直線状に傾斜した傾斜面を有しており、前記上面に沿って太陽電池モジュール5が設置された複数の覆蓋3と、前記上下水道施設を形成する躯体20に水平に架設される回転軸2とを備え、前記複数の覆蓋3が、その幅方向と回転軸2の軸方向とが一致するよう回転軸2により回動可能に支持された状態で隣接配置され、各覆蓋3の長手方向における一端部を開閉側端部11として上下に回動させることにより各覆蓋3を開閉できるようにした覆蓋装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道施設の上方を覆うために使用される覆蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池、凝集沈殿池、砂ろ過池、配水池等の上下水道施設においては、太陽光の照射による藻類の繁殖、悪臭の拡散、異物の混入等を防止する目的で、採水時等の必要時以外は、当該上下水道施設の上方を覆蓋で覆うようにしている。
【0003】
そして、近年においては、この上下水道施設が、日射条件の良い場所に広い面積で設けられていることに着目し、覆蓋の上面に太陽電池パネル等の太陽電池モジュールを設置して太陽光発電を行う試みがなされている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
特許文献1に示すように、通常、覆蓋は、その長手方向において円弧状に盛り上がった上面を有し、上下水道施設の上方に架け渡すようにして、その幅方向に複数個を隣接配置して使用され、覆蓋を開閉させる方法としては、二人の作業員がそれぞれ覆蓋の長さ方向の端部に設けられた取手を掴んで持ち上げ移動させるという方法が一般的である。
【0005】
したがって、覆蓋は、二人の作業員で持ち上げることができるよう、一般には1枚当たり40kg以下の重量で作製されてきたが、覆蓋の上面に太陽電池モジュールを設置する場合には、一定の規格で製造された太陽電池モジュールの大きさに合わせて覆蓋の寸法も大きくしなければならず、このため覆蓋本体の重量が重くなるとともに、太陽電池モジュールの重量も付加されて覆蓋の総重量が増加し、二人の作業員では持ち上げることが困難となるという問題が生じた。
【0006】
また、特許文献2に示すように、覆蓋をその幅方向にスライドさせて隣接する他の覆蓋に重ねることにより、上下水道施設の上方を開口させる方式のものも存在するが、開口して採水等の作業を行うのは一般に日中であり、このようなスライド方式の覆蓋を用いる場合には、作業時(開口時)に覆蓋の重なり合った部分が陰となり、当該部分においては覆蓋の上面に設置した太陽電池モジュールに太陽光が当たらないため発電できない状態となる。
【特許文献1】特開2005−340704号公報
【特許文献2】特開2002−43609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二人以下の少ない作業員でも容易に覆蓋の開閉を行うことができるとともに、覆蓋を開いた状態としているときでも、覆蓋の上面に設置した太陽電池モジュールのほぼ全体に太陽光が当たって発電状態が得られるような覆蓋装置とその使用方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の覆蓋装置及びその使用方法が提供される。
【0009】
[1] 上下水道施設の上方を覆うための覆蓋装置であって、上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているか、又は直線状に傾斜した傾斜面を有しており、前記上面に沿って太陽電池モジュールが設置された複数の覆蓋と、前記上下水道施設を形成する躯体に水平に架設される回転軸とを備え、前記複数の覆蓋が、その幅方向と前記回転軸の軸方向とが一致するよう前記回転軸により回動可能に支持された状態で隣接配置され、前記各覆蓋の長手方向における一端部を開閉側端部として上下に回動させることにより前記各覆蓋を開閉できるようにした覆蓋装置。
【0010】
[2] 前記各覆蓋の長手方向における開閉側端部とは反対側の端部から前記回転軸の中心までの距離をL1とし、前記各覆蓋が閉じられた状態における前記各覆蓋の下面から前記上下水道施設に収容された水の最高水位における水面までの距離をH1としたとき、L1とH1とがL1<H1の関係を満たす[1]に記載の覆蓋装置。
【0011】
[3] 前記各覆蓋を持ち上げて移動させるだけの操作により、前記各覆蓋が前記回転軸から取り外し可能な構造を有する[1]又は[2]に記載の覆蓋装置。
【0012】
[4] 前記複数の覆蓋の内の一部の覆蓋を回転軸から取り外したときに、他の覆蓋を前記回転軸に沿って摺動させることにより、前記他の覆蓋を前記取り外しにより生じた開口部に移動可能な構造を有する[3]に記載の覆蓋装置。
【0013】
[5] 隣接する前記覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された前記太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されており、隣接する前記覆蓋の一方が開いた状態で他方が閉じた状態にあるときでも、前記ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものである[1]〜[4]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0014】
[6] 隣接する前記覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された前記太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されており、隣接する前記覆蓋の一方を前記覆蓋の幅と同じ距離だけ幅方向に移動させたときでも、前記ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものである[1]〜[4]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0015】
[7] 前記回転軸を持ち上げて移動させるだけの操作により、前記回転軸が前記躯体から取り外し可能な構造を有する[1]〜[6]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0016】
[8] 前記覆蓋を開いた状態としている間、前記覆蓋と前記躯体との間に介在させることにより、前記覆蓋の傾斜角度を所望の角度に維持する伸縮可能な突っ張り棒を備えた[1]〜[7]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0017】
[9] 前記各覆蓋が閉じられた状態において、前記各覆蓋の幅方向における端部が、隣接する他の覆蓋の幅方向における端部と上下方向に重なり合い、かつ、覆蓋の長手方向における前記回転軸の支持位置を境界として、前記端部の重なり合いにおける上下の位置関係が入れ替わる構造を有する[1]〜[8]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0018】
[10] 前記端部の重なり合いにおいて、下側になる端部の部位の上面及び/又は上側になる端部の部位の下面に、シール用のゴム層が形成されている[9]に記載の覆蓋装置。
【0019】
[11] 前記覆蓋の上面に、前記上下水道施設の場内処理水を散布するための散布用配管を設けた[1]〜[10]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0020】
[12] [1]〜[11]の何れかに記載の覆蓋装置の内、前記覆蓋の上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているものの使用方法であって、前記覆蓋装置を、前記各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、前記開閉側端部が北側となるように配置し、前記各覆蓋を開いた状態としている間は、前記覆蓋の傾斜角度が5〜40゜となるようにする覆蓋装置の使用方法(第一の使用方法)。
【0021】
[13] [1]〜[11]の何れかに記載の覆蓋装置の内、前記覆蓋の上面が長手方向において直線状に傾斜した傾斜面を有しているものの使用方法であって、前記覆蓋装置を、前記各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、前記傾斜面における傾斜の下側が南側となるように配置し、前記各覆蓋を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、前記傾斜面の水平方向に対する角度が5〜40゜となるようにする覆蓋装置の使用方法(第二の使用方法)。
【発明の効果】
【0022】
本発明の覆蓋装置によれば、太陽電池モジュールの設置により重量が増加した覆蓋であっても、回転軸を基点として上下に開閉する構造としたことにより、一人の作業員で容易に覆蓋の開閉を行うことが可能である。また、従来のスライド式の覆蓋のように、開口時に覆蓋が重なり合って覆蓋上面に設置された太陽電池モジュールの一部が陰になることがないので、覆蓋を開いた状態としているときでも、太陽電池モジュールのほぼ全体に太陽光が当たって発電状態を継続させることができる。更に、本発明の覆蓋装置の使用方法によれば、覆蓋が回転軸を基点として上下に開閉するという本発明の覆蓋装置の特長を活かし、覆蓋の傾斜角度を、覆蓋の上面に設置した太陽電池モジュールに理想的な入射角度で太陽光が当たるような所定の角度に設定することにより、発電効率の向上を図り、発電電力量を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1及び図2は本発明に係る覆蓋装置の実施形態の一例を示すものであり、図1は上方から見た平面図、図2は回転軸の軸方向から見た側面図である。本発明に係る覆蓋装置は、上下水道施設の上方を覆う複数の覆蓋3と、それら覆蓋3を回動可能に支持する回転軸2とを備える。なお、本発明において、「上下水道施設」とは、最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池、凝集沈殿池、砂ろ過池、配水池等のような上下水の各種処理、貯水等を行う水槽や池を意味する。
【0025】
各覆蓋3は、上面がその長手方向において円弧状に盛り上がり、その上面に沿って太陽電池モジュール5が設置されている。ここで、「円弧状」とは、完全な円弧形状のみならず、一般にアーチ状、ドーム状等と称されるような円弧形状に類似する形状をも含む。覆蓋3の上面を円弧状とし、その形状に沿って太陽電池モジュール5を設置すれば、太陽電池モジュール5上に降った雨や雪が自然に流れ落ちて、太陽電池モジュール5上に留まりにくい。したがって、降雪が有った場合にも、太陽電池モジュール5上には多量の積雪は生じにくく、積雪による覆蓋の重量増加も軽減される。なお、図5に示すように、各覆蓋3は、上面がその長手方向において直線状に傾斜した傾斜面9を有していてもよく、この場合にも、円弧状の場合と同様の効果が得られる。加えて、このような傾斜面9を持たせた場合には、円弧状に湾曲した上面には設置が困難な太陽電池モジュール5であっても容易に設置できるという利点が有る。
【0026】
回転軸2は上下水道施設を形成する躯体20に水平に架設される。複数の覆蓋3は、その幅方向(長手方向と直交する方向)と回転軸2の軸方向とが一致するよう回転軸2により回動可能に支持された状態で隣接配置され、上下水30が収容された上下水道施設の上方を覆う。このように回転軸2に支持された各覆蓋3は、その長手方向における一端部を開閉側端部11とし、その開閉側端部11を回転軸2を基点に上下に回動させることにより開閉させることができる。隣接配置される覆蓋3の数は、特に限定されるものではなく、覆蓋3で覆おうとする上下水道施設の面積等により適宜決定することができる。
【0027】
このような構造を有する本発明の覆蓋装置において、図3に示すように、覆蓋3の開閉側端部11から回転軸2の中心までの距離をL2とし、覆蓋3の長手方向に対し垂直で回転軸2の中心を通過する直線40により左右に分割される覆蓋3の右側分割体の質量と左側分割体の質量をそれぞれ順にP1、P2とし、回転軸2の中心から右側分割体の重心までの距離をl1とし、回転軸2の中心から左側分割体の重心までの距離をl2とし、作業員が覆蓋3の開閉側端部11を持って上方に回動させる(持ち上げる)際に作業員に加わる質量をPとしたとき、力のモーメントMは下式(1)によって表され、この式から下式(2)が導かれる。
M=P2×l2−P1×l2=P×L2 (1)
P=(P2×l2−P1×l2)/L2 (2)
【0028】
ここで、例えば、覆蓋3の一枚当たりの質量が85kgで、L2が3500mm、l1が500mm、l2が1500mm、P1が25kg、P2が60kgであるとすると、上式(2)より、Pは約22kgとなり、これは二人の作業員が40kgの覆蓋の両端部をそれぞれ持って持ち上げる際に作業員一人当たりに加わる質量(20kg)と大差がない。したがって、本発明の覆蓋装置においては、上面に太陽電池モジュールを設置したことによって質量が大きく増加した覆蓋が用いられた場合であっても、一人の作業員によって容易に開閉作業を行うことが可能である。
【0029】
本発明の覆蓋装置において、回転軸2による覆蓋3の支持位置は、覆蓋3の長手方向中央である場合に開閉作業に要する力が最も小さくなるが、この場合には、覆蓋3の開閉側端部11を持ち上げた際に、開閉側端部11と反対側の端部(非開閉側端部)13が下方に回動して水平位置から下がる距離が最大となり、非開閉側端部13が上下水道施設に収容された上下水30に浸かってしまったり、太陽電池モジュール5の一部が陰になってしまったりする恐れがある。
【0030】
本発明の覆蓋装置においては、このような事態を避けるため、図4に示すように、非開閉側端部13から回転軸2の中心までの距離をL1とし、各覆蓋3が閉じられた状態(各覆蓋3の長手方向が水平方向になっている状態)における各覆蓋3の下面から上下水道施設に収容された上下水30の最高水位における水面までの距離をH1としたとき、L1とH1とがL1<H1の関係を満たすように、回転軸2による覆蓋3の支持位置を設定することが好ましい。
【0031】
開閉作業に要する力を小さくすることを優先する等の理由で、回転軸2による覆蓋3の支持位置を、L1<H1の関係を満たさないような位置とする場合には、覆蓋3の開閉側端部11を持ち上げた際(覆蓋3を開いた状態にした際)に、非開閉側端部13が上下水30に浸かったり、太陽電池モジュール5の一部が陰になってしまったりするのを防ぐため、覆蓋3の傾斜角度が所定の角度以上にならないよう制限するストッパーを設けることが好ましい。ここで、「覆蓋の傾斜角度」とは、覆蓋3の長手方向と水平方向とのなす角θの角度を意味する。
【0032】
なお、回転軸2による覆蓋3の支持位置を、覆蓋3の長手方向における中央部よりも非開閉側端部13寄りにする場合には、覆蓋3の開閉側端部11が水平位置よりも下方に回動するのを防止し、覆蓋3を閉じた状態にしているときに、その長手方向が水平方向に保たれるようにするため、図4に示すように、上下水道施設を形成する躯体20に、覆蓋3の開閉側端部11を支持する覆蓋受けブラケット23を設けることが好ましい。更に、各覆蓋3が閉じられた状態にあるときに、非開閉側端部13と躯体20との間の密閉度を向上させるため、躯体20に、非開閉側端部13と躯体20との間をシールするゴムシールパッキン21を設けることが好ましい。
【0033】
回転軸2による覆蓋3の支持構造としては、例えば、覆蓋3に軸受を取り付けて当該軸受により回転軸2を保持するようにしてもよいが、水槽内に設置される機器(例えばエアレーション設備等)の搬入・搬出時のような大掛かりなメンテナンスを行う際の作業性を考慮して、各覆蓋を持ち上げて移動させるだけの操作により、各覆蓋が回転軸から取り外し可能な構造とすることが好ましい。具体的には、例えば、図4のように、覆蓋2の下面に回転軸2の径に対応した断面が半円状の溝6を形成し、溝6が回転軸に嵌合するような支持構造とすれば、覆蓋3を持ち上げるだけで回転軸2から覆蓋3を容易に取り外すことができ、取り外した覆蓋3の回転軸2への取り付けも容易である。なお、覆蓋3の開閉や取り外しを行いやすくするため、覆蓋3の長手方向の両端部付近に取手17、18を設けることが好ましい。
【0034】
また、本発明の覆蓋装置においては、複数の覆蓋の内の一部の覆蓋を回転軸から取り外したときに、他の覆蓋を回転軸に沿って摺動(スライド)させることにより、前記取り外しにより生じた開口部に当該他の覆蓋を移動可能な構造とすることがこのましい。前記のように、覆蓋3の下面に回転軸2の径に対応した断面が半円状の溝6を形成し、溝6が回転軸2に嵌合するような支持構造とすれば、このような摺動による移動も可能である。このような摺動可能な構造とすれば、開口部の位置を容易に変更することができ、一部の覆蓋を回転軸から取り外すだけで、上下水道施設内部の様々な位置にアクセス可能となる。
【0035】
本発明の覆蓋装置に使用される各覆蓋は、各々その上面に太陽電池モジュールが設けられているが、各太陽電池モジュールにより発電された電力の集電等のため、隣接する覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されていることが好ましい。そして、この場合においては、常に安定した接続状態を保つため、隣接する覆蓋の一方が開いた状態で他方が閉じた状態にあるときでも、ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものであることが好ましい。また、前記のように一部の覆蓋を回転軸から取り外したときには、その覆蓋上の太陽電池モジュールに接続されているケーブルを取り外した上で、回転軸上に残った覆蓋上の太陽電池モジュール間をケーブルで接続するが、この際のケーブルの取り外しや接続を容易にするため、太陽電池モジュールとケーブルとの接続部はコネクタ等により脱着可能となっていることが好ましい。
【0036】
また、前述のような覆蓋の摺動による移動の際の移動距離は、覆蓋の幅と同距離程度であることが多いと考えられるが、そのような場合にも安定した接続状態を保つため、隣接する覆蓋の一方を覆蓋の幅と同じ距離だけ幅方向に移動させたときでも、ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものであることが好ましい。また、通常、本発明のような太陽電池モジュールを備えた覆蓋装置の周囲には系統電源が設置されるが、この系統電源に近い位置に存在する覆蓋の上面に設けられた太陽電池モジュールは、系統電源と伸縮可能なケーブルで接続されることが好ましい。なお、伸縮可能なケーブルとは、カールさせるなどして伸縮性を持たせたケーブルのことである。
【0037】
大掛かりなメンテナンスの際には、全ての覆蓋を回転軸から取り外して別の場所に仮置きする場合があるが、仮置きされた隣接する覆蓋間の距離が、それら覆蓋の上面に設置された太陽電池モジュール同士を接続するケーブルの全長又は伸長限界以下であれば、当該メンテナンス中でも接続状態が維持でき、発電を行うことが可能である。また、前記のように太陽電池モジュールとケーブルとの接続部がコネクタ等により脱着可能となっている場合には、両者の接続を解除することにより、その間の発電はできなくなるものの、隣接する覆蓋をケーブルの全長又は伸長限界を超える距離まで離して仮置きすることができる。
【0038】
また、本発明の覆蓋装置においては、覆蓋だけでなく回転軸の取り外しも必要となるような数年に一度の更に大掛かりなメンテナンスも容易に行えるようにするため、回転軸を持ち上げて移動させるだけの操作により、回転軸そのものも上下水道施設を形成する躯体から取り外し可能な構造とすることが好ましい。例えば、躯体の回転軸が架設される部位(上下水を取り囲む躯体の周縁部)に、U字状の溝を形成し、当該溝に回転軸を嵌合させるような構造としておけば、回転軸を持ち上げるだけで躯体から回転軸を容易に取り外すことができ、取り外した回転軸の躯体への取り付けも容易である。
【0039】
また、本発明の覆蓋装置においては、覆蓋を開いて採水等の作業をしている間に、誤って覆蓋が閉じて作業員が怪我を負うことがないように、覆蓋を開いた状態としている間、覆蓋と躯体との間に介在させて、覆蓋を開いた状態のまま固定する突っ張り棒を備えることが好ましい。この突っ張り棒は、覆蓋の傾斜角度を所望の角度に調節できるよう伸縮可能な構造であることが好ましい。また、開口側からの強風にも耐えられるよう、覆蓋及び躯体に、突っ張り棒の端部を引っ掛けるなどして固定できるような固定具を設けることが好ましい。
【0040】
図6〜10は本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例を示すものであり、図6は上方から見た平面図、図7は図6のA−A断面図、図8は図6のB−B断面図である。また、図9は隣接する覆蓋の一方を示す斜視図であり、図10は隣接する覆蓋の他方を示す斜視図である。
【0041】
本実施形態は、各覆蓋が閉じられた状態において、各覆蓋の幅方向における端部が、隣接する他の覆蓋の幅方向における端部と上下方向に重なり合い、かつ、覆蓋の長手方向における回転軸の支持位置を境界として、前記端部の重なり合いにおける上下の位置関係が入れ替わる構造を有する。
【0042】
すなわち、図6〜10に基づいて説明すると、回転軸2による支持位置を境界として、当該支持位置から開閉側端部11までの範囲においては、覆蓋3aの幅方向における端部7aが、隣接する覆蓋3bの幅方向における端部7bの上側になるよう両端部が重なっており、回転軸2による支持位置から非開閉側端部13までの範囲においては、覆蓋3bの幅方向における端部7bが、隣接する覆蓋3aの幅方向における端部7aの上側になるよう両端部が重なっている。
【0043】
このような構造とすることにより、隣接する覆蓋3a、3b間の密閉度を高めることができる。また、この端部の重なり合いにおいて、下側になる端部の部位の上面及び/又は上側になる端部の部位の下面に、シール用のゴム層(ゴムシールパッキン)を形成すると、より密閉度が高くなり好ましく、図6〜10に示す実施形態においては、下側になる端部の部位の上面にゴム層15を形成している。なお、このように端部が重なり合う構造においては、覆蓋3aは、隣接する覆蓋3bが閉じているときでも、開閉側端部11を持ち上げて開いた状態とすることができるが、覆蓋3bは、回転軸2による支持位置から開閉側端部11までの範囲において、その幅方向における端部7bが下側にあるため、単独では開閉側端部11を持ち上げることができず、開いた状態としたいときは、隣接する覆蓋7aとともに開閉側端部11を持ち上げる必要がある。
【0044】
なお、図9及び図10は、上面が長手方向において円弧状に盛り上がっている覆蓋の例であるが、この実施形態においては、図11及び図12のように、上面が長手方向において直線状に傾斜した傾斜面9を有している覆蓋を、隣接する一方の覆蓋3aと他方の覆蓋3bとに使用しても良い。
【0045】
本発明の覆蓋装置においては、覆蓋の上面に、上下水道施設の場内処理水を散布するための散布用配管を設けることが好ましい。一般に、太陽電池モジュールは温度が上昇するほど発電効率が低下するので、このような散布用配管から場内処理水(通常の水温は15〜20℃程度)を散布して太陽電池モジュールを冷却し、温度上昇を抑制すれば、発電効率を向上させることができる。
【0046】
本発明の覆蓋装置に用いられる覆蓋の材質は特に制限されるものではないが、開閉作業を容易にする観点から軽量であることが好ましく、例えば、ガラス繊維強化樹脂(FRP)等が好適な材料として挙げられる。また、回転軸の材質も特に制限されるものではないが、上下水道施設の上方を覆うために必要な数の覆蓋を支持できる強度や上下水に対する耐腐食性が必要であり、例えば、ステンレス鋼等が好適な材料として挙げられる。
【0047】
本発明の覆蓋装置の第一の使用方法は、これまで説明した本発明の覆蓋装置の内、図2のように、覆蓋3の上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているものの使用方法である。この使用方法においては、前記覆蓋装置を、各覆蓋3の長手方向が南北方向となり、かつ、各覆蓋3の開閉側端部11が北側となるように配置し、各覆蓋3を開いた状態としている間は、覆蓋3の傾斜角度が5〜40゜、好ましくは20〜30゜、更に好ましくは30゜となるようにする。このように各覆蓋3の長手方向が南北方向となるように配置すれば、覆蓋3を開いた状態にしたときに、傾斜した覆蓋3の上面が南向きとなる。そして、覆蓋3の傾斜角度を前記のように設定すれば、覆蓋3の上面に設置された太陽電池モジュール5に対し、理想的な入射角度で太陽光が入射するようになり、高い発電効率が得られる。
【0048】
なお、このような高い発電効率を継続的に得るために、採水等の作業時だけでなく、本来は覆蓋を開く必要のない時間帯においても、前記のような傾斜角度で開いた状態にしておきたい場合には、開口部を防臭シート等で覆うなどの対策を施すことが好ましい。
【0049】
本発明の覆蓋装置の第二の使用方法は、これまで説明した本発明の覆蓋装置の内、図5のように、覆蓋3の上面が長手方向において直線状に傾斜した傾斜面9を有しているものの使用方法である。この使用方法においては、前記覆蓋装置を、各覆蓋3の長手方向が南北方向となり、かつ、傾斜面9における傾斜の下側(低い側)が南側となるように配置し、各覆蓋3を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、傾斜面9の水平方向に対する角度が5〜40゜、好ましくは20〜30゜となるようにする。このように各覆蓋3の長手方向が南北方向となるように配置すれば、傾斜面9が南向きとなる。そして、傾斜面9の角度を前記のように設定すれば、各覆蓋3を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、覆蓋3の上面(傾斜面9)に設置された太陽電池モジュール5に対し、理想的な入射角度で太陽光が入射するようになり、高い発電効率が得られる。
【0050】
各覆蓋3を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、傾斜面9の水平方向に対する角度が5〜40゜となるようにするには、例えば、覆蓋3の長手方向に対する傾斜面9の角度が40゜となるように傾斜面9を形成し、覆蓋3を開いた状態としている間における覆蓋3の傾斜角度(覆蓋3の長手方向と水平方向とのなす角θの角度)を35゜以下にすればよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
図2に示すような本発明の覆蓋装置を、各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、開閉側端部が北側となるように配置した。そして、晴天日の日中に、各覆蓋を0〜90゜の異なる傾斜角度で固定し、各覆蓋の上面に設置した太陽電池モジュールによる発電電力量を調べ、その結果を図13のグラフに示した。なお、当該グラフにおいては、最も発電電力量が高かった傾斜角度30゜の場合の発電電力量を100%とし、30゜以外の傾斜角度とした場合の発電電力量を相対値として示している。このグラフから、覆蓋の傾斜角度が30゜に近いほど、太陽電池モジュールによる発電電力量が高まることがわかる。また、傾斜角度が5゜以上の場合に発電電力量が90%以上と高くなるが、傾斜角度が40゜を超過すると発電電力量が98%以下となるため、傾斜角度を40゜を超える値に設定する意味はない。とりわけ、傾斜角度を20〜30゜に設定した場合には、発電電力量が98%以上と高い発電効率が得られるため、最も望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、開閉作業が容易で、かつ、太陽電池モジュールによる発電を効率良く行える上下水道施設の覆蓋装置及びその使用方法として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の一例を示す、上方から見た平面図である。
【図2】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の一例を示す、回転軸の軸方向から見た側面図である。
【図3】覆蓋を開く際の力のモーメントを説明するための説明図である。
【図4】回転軸による覆蓋の好適な支持位置を説明するための説明図である。
【図5】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の一例を示す、回転軸の軸方向から見た側面図である。
【図6】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例を示す、上方から見た平面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6のB−B断面図である。
【図9】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例において、隣接する覆蓋の一方を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例において、隣接する覆蓋の他方を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例において、隣接する覆蓋の一方を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例において、隣接する覆蓋の他方を示す斜視図である。
【図13】実施例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
2:回転軸、3:覆蓋、3a:覆蓋、3b:覆蓋、5:太陽電池モジュール、6:溝、7a:覆蓋の幅方向における端部、7b:覆蓋の幅方向における端部、9:傾斜面、11:開閉側端部、13:非開閉側端部、15:ゴム層、17:取手、18:取手、20:躯体、21:ゴムシールパッキン、23:覆蓋受けブラケット、30:上下水、40:直線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道施設の上方を覆うために使用される覆蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池、凝集沈殿池、砂ろ過池、配水池等の上下水道施設においては、太陽光の照射による藻類の繁殖、悪臭の拡散、異物の混入等を防止する目的で、採水時等の必要時以外は、当該上下水道施設の上方を覆蓋で覆うようにしている。
【0003】
そして、近年においては、この上下水道施設が、日射条件の良い場所に広い面積で設けられていることに着目し、覆蓋の上面に太陽電池パネル等の太陽電池モジュールを設置して太陽光発電を行う試みがなされている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
特許文献1に示すように、通常、覆蓋は、その長手方向において円弧状に盛り上がった上面を有し、上下水道施設の上方に架け渡すようにして、その幅方向に複数個を隣接配置して使用され、覆蓋を開閉させる方法としては、二人の作業員がそれぞれ覆蓋の長さ方向の端部に設けられた取手を掴んで持ち上げ移動させるという方法が一般的である。
【0005】
したがって、覆蓋は、二人の作業員で持ち上げることができるよう、一般には1枚当たり40kg以下の重量で作製されてきたが、覆蓋の上面に太陽電池モジュールを設置する場合には、一定の規格で製造された太陽電池モジュールの大きさに合わせて覆蓋の寸法も大きくしなければならず、このため覆蓋本体の重量が重くなるとともに、太陽電池モジュールの重量も付加されて覆蓋の総重量が増加し、二人の作業員では持ち上げることが困難となるという問題が生じた。
【0006】
また、特許文献2に示すように、覆蓋をその幅方向にスライドさせて隣接する他の覆蓋に重ねることにより、上下水道施設の上方を開口させる方式のものも存在するが、開口して採水等の作業を行うのは一般に日中であり、このようなスライド方式の覆蓋を用いる場合には、作業時(開口時)に覆蓋の重なり合った部分が陰となり、当該部分においては覆蓋の上面に設置した太陽電池モジュールに太陽光が当たらないため発電できない状態となる。
【特許文献1】特開2005−340704号公報
【特許文献2】特開2002−43609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二人以下の少ない作業員でも容易に覆蓋の開閉を行うことができるとともに、覆蓋を開いた状態としているときでも、覆蓋の上面に設置した太陽電池モジュールのほぼ全体に太陽光が当たって発電状態が得られるような覆蓋装置とその使用方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の覆蓋装置及びその使用方法が提供される。
【0009】
[1] 上下水道施設の上方を覆うための覆蓋装置であって、上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているか、又は直線状に傾斜した傾斜面を有しており、前記上面に沿って太陽電池モジュールが設置された複数の覆蓋と、前記上下水道施設を形成する躯体に水平に架設される回転軸とを備え、前記複数の覆蓋が、その幅方向と前記回転軸の軸方向とが一致するよう前記回転軸により回動可能に支持された状態で隣接配置され、前記各覆蓋の長手方向における一端部を開閉側端部として上下に回動させることにより前記各覆蓋を開閉できるようにした覆蓋装置。
【0010】
[2] 前記各覆蓋の長手方向における開閉側端部とは反対側の端部から前記回転軸の中心までの距離をL1とし、前記各覆蓋が閉じられた状態における前記各覆蓋の下面から前記上下水道施設に収容された水の最高水位における水面までの距離をH1としたとき、L1とH1とがL1<H1の関係を満たす[1]に記載の覆蓋装置。
【0011】
[3] 前記各覆蓋を持ち上げて移動させるだけの操作により、前記各覆蓋が前記回転軸から取り外し可能な構造を有する[1]又は[2]に記載の覆蓋装置。
【0012】
[4] 前記複数の覆蓋の内の一部の覆蓋を回転軸から取り外したときに、他の覆蓋を前記回転軸に沿って摺動させることにより、前記他の覆蓋を前記取り外しにより生じた開口部に移動可能な構造を有する[3]に記載の覆蓋装置。
【0013】
[5] 隣接する前記覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された前記太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されており、隣接する前記覆蓋の一方が開いた状態で他方が閉じた状態にあるときでも、前記ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものである[1]〜[4]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0014】
[6] 隣接する前記覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された前記太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されており、隣接する前記覆蓋の一方を前記覆蓋の幅と同じ距離だけ幅方向に移動させたときでも、前記ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものである[1]〜[4]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0015】
[7] 前記回転軸を持ち上げて移動させるだけの操作により、前記回転軸が前記躯体から取り外し可能な構造を有する[1]〜[6]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0016】
[8] 前記覆蓋を開いた状態としている間、前記覆蓋と前記躯体との間に介在させることにより、前記覆蓋の傾斜角度を所望の角度に維持する伸縮可能な突っ張り棒を備えた[1]〜[7]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0017】
[9] 前記各覆蓋が閉じられた状態において、前記各覆蓋の幅方向における端部が、隣接する他の覆蓋の幅方向における端部と上下方向に重なり合い、かつ、覆蓋の長手方向における前記回転軸の支持位置を境界として、前記端部の重なり合いにおける上下の位置関係が入れ替わる構造を有する[1]〜[8]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0018】
[10] 前記端部の重なり合いにおいて、下側になる端部の部位の上面及び/又は上側になる端部の部位の下面に、シール用のゴム層が形成されている[9]に記載の覆蓋装置。
【0019】
[11] 前記覆蓋の上面に、前記上下水道施設の場内処理水を散布するための散布用配管を設けた[1]〜[10]の何れかに記載の覆蓋装置。
【0020】
[12] [1]〜[11]の何れかに記載の覆蓋装置の内、前記覆蓋の上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているものの使用方法であって、前記覆蓋装置を、前記各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、前記開閉側端部が北側となるように配置し、前記各覆蓋を開いた状態としている間は、前記覆蓋の傾斜角度が5〜40゜となるようにする覆蓋装置の使用方法(第一の使用方法)。
【0021】
[13] [1]〜[11]の何れかに記載の覆蓋装置の内、前記覆蓋の上面が長手方向において直線状に傾斜した傾斜面を有しているものの使用方法であって、前記覆蓋装置を、前記各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、前記傾斜面における傾斜の下側が南側となるように配置し、前記各覆蓋を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、前記傾斜面の水平方向に対する角度が5〜40゜となるようにする覆蓋装置の使用方法(第二の使用方法)。
【発明の効果】
【0022】
本発明の覆蓋装置によれば、太陽電池モジュールの設置により重量が増加した覆蓋であっても、回転軸を基点として上下に開閉する構造としたことにより、一人の作業員で容易に覆蓋の開閉を行うことが可能である。また、従来のスライド式の覆蓋のように、開口時に覆蓋が重なり合って覆蓋上面に設置された太陽電池モジュールの一部が陰になることがないので、覆蓋を開いた状態としているときでも、太陽電池モジュールのほぼ全体に太陽光が当たって発電状態を継続させることができる。更に、本発明の覆蓋装置の使用方法によれば、覆蓋が回転軸を基点として上下に開閉するという本発明の覆蓋装置の特長を活かし、覆蓋の傾斜角度を、覆蓋の上面に設置した太陽電池モジュールに理想的な入射角度で太陽光が当たるような所定の角度に設定することにより、発電効率の向上を図り、発電電力量を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1及び図2は本発明に係る覆蓋装置の実施形態の一例を示すものであり、図1は上方から見た平面図、図2は回転軸の軸方向から見た側面図である。本発明に係る覆蓋装置は、上下水道施設の上方を覆う複数の覆蓋3と、それら覆蓋3を回動可能に支持する回転軸2とを備える。なお、本発明において、「上下水道施設」とは、最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池、凝集沈殿池、砂ろ過池、配水池等のような上下水の各種処理、貯水等を行う水槽や池を意味する。
【0025】
各覆蓋3は、上面がその長手方向において円弧状に盛り上がり、その上面に沿って太陽電池モジュール5が設置されている。ここで、「円弧状」とは、完全な円弧形状のみならず、一般にアーチ状、ドーム状等と称されるような円弧形状に類似する形状をも含む。覆蓋3の上面を円弧状とし、その形状に沿って太陽電池モジュール5を設置すれば、太陽電池モジュール5上に降った雨や雪が自然に流れ落ちて、太陽電池モジュール5上に留まりにくい。したがって、降雪が有った場合にも、太陽電池モジュール5上には多量の積雪は生じにくく、積雪による覆蓋の重量増加も軽減される。なお、図5に示すように、各覆蓋3は、上面がその長手方向において直線状に傾斜した傾斜面9を有していてもよく、この場合にも、円弧状の場合と同様の効果が得られる。加えて、このような傾斜面9を持たせた場合には、円弧状に湾曲した上面には設置が困難な太陽電池モジュール5であっても容易に設置できるという利点が有る。
【0026】
回転軸2は上下水道施設を形成する躯体20に水平に架設される。複数の覆蓋3は、その幅方向(長手方向と直交する方向)と回転軸2の軸方向とが一致するよう回転軸2により回動可能に支持された状態で隣接配置され、上下水30が収容された上下水道施設の上方を覆う。このように回転軸2に支持された各覆蓋3は、その長手方向における一端部を開閉側端部11とし、その開閉側端部11を回転軸2を基点に上下に回動させることにより開閉させることができる。隣接配置される覆蓋3の数は、特に限定されるものではなく、覆蓋3で覆おうとする上下水道施設の面積等により適宜決定することができる。
【0027】
このような構造を有する本発明の覆蓋装置において、図3に示すように、覆蓋3の開閉側端部11から回転軸2の中心までの距離をL2とし、覆蓋3の長手方向に対し垂直で回転軸2の中心を通過する直線40により左右に分割される覆蓋3の右側分割体の質量と左側分割体の質量をそれぞれ順にP1、P2とし、回転軸2の中心から右側分割体の重心までの距離をl1とし、回転軸2の中心から左側分割体の重心までの距離をl2とし、作業員が覆蓋3の開閉側端部11を持って上方に回動させる(持ち上げる)際に作業員に加わる質量をPとしたとき、力のモーメントMは下式(1)によって表され、この式から下式(2)が導かれる。
M=P2×l2−P1×l2=P×L2 (1)
P=(P2×l2−P1×l2)/L2 (2)
【0028】
ここで、例えば、覆蓋3の一枚当たりの質量が85kgで、L2が3500mm、l1が500mm、l2が1500mm、P1が25kg、P2が60kgであるとすると、上式(2)より、Pは約22kgとなり、これは二人の作業員が40kgの覆蓋の両端部をそれぞれ持って持ち上げる際に作業員一人当たりに加わる質量(20kg)と大差がない。したがって、本発明の覆蓋装置においては、上面に太陽電池モジュールを設置したことによって質量が大きく増加した覆蓋が用いられた場合であっても、一人の作業員によって容易に開閉作業を行うことが可能である。
【0029】
本発明の覆蓋装置において、回転軸2による覆蓋3の支持位置は、覆蓋3の長手方向中央である場合に開閉作業に要する力が最も小さくなるが、この場合には、覆蓋3の開閉側端部11を持ち上げた際に、開閉側端部11と反対側の端部(非開閉側端部)13が下方に回動して水平位置から下がる距離が最大となり、非開閉側端部13が上下水道施設に収容された上下水30に浸かってしまったり、太陽電池モジュール5の一部が陰になってしまったりする恐れがある。
【0030】
本発明の覆蓋装置においては、このような事態を避けるため、図4に示すように、非開閉側端部13から回転軸2の中心までの距離をL1とし、各覆蓋3が閉じられた状態(各覆蓋3の長手方向が水平方向になっている状態)における各覆蓋3の下面から上下水道施設に収容された上下水30の最高水位における水面までの距離をH1としたとき、L1とH1とがL1<H1の関係を満たすように、回転軸2による覆蓋3の支持位置を設定することが好ましい。
【0031】
開閉作業に要する力を小さくすることを優先する等の理由で、回転軸2による覆蓋3の支持位置を、L1<H1の関係を満たさないような位置とする場合には、覆蓋3の開閉側端部11を持ち上げた際(覆蓋3を開いた状態にした際)に、非開閉側端部13が上下水30に浸かったり、太陽電池モジュール5の一部が陰になってしまったりするのを防ぐため、覆蓋3の傾斜角度が所定の角度以上にならないよう制限するストッパーを設けることが好ましい。ここで、「覆蓋の傾斜角度」とは、覆蓋3の長手方向と水平方向とのなす角θの角度を意味する。
【0032】
なお、回転軸2による覆蓋3の支持位置を、覆蓋3の長手方向における中央部よりも非開閉側端部13寄りにする場合には、覆蓋3の開閉側端部11が水平位置よりも下方に回動するのを防止し、覆蓋3を閉じた状態にしているときに、その長手方向が水平方向に保たれるようにするため、図4に示すように、上下水道施設を形成する躯体20に、覆蓋3の開閉側端部11を支持する覆蓋受けブラケット23を設けることが好ましい。更に、各覆蓋3が閉じられた状態にあるときに、非開閉側端部13と躯体20との間の密閉度を向上させるため、躯体20に、非開閉側端部13と躯体20との間をシールするゴムシールパッキン21を設けることが好ましい。
【0033】
回転軸2による覆蓋3の支持構造としては、例えば、覆蓋3に軸受を取り付けて当該軸受により回転軸2を保持するようにしてもよいが、水槽内に設置される機器(例えばエアレーション設備等)の搬入・搬出時のような大掛かりなメンテナンスを行う際の作業性を考慮して、各覆蓋を持ち上げて移動させるだけの操作により、各覆蓋が回転軸から取り外し可能な構造とすることが好ましい。具体的には、例えば、図4のように、覆蓋2の下面に回転軸2の径に対応した断面が半円状の溝6を形成し、溝6が回転軸に嵌合するような支持構造とすれば、覆蓋3を持ち上げるだけで回転軸2から覆蓋3を容易に取り外すことができ、取り外した覆蓋3の回転軸2への取り付けも容易である。なお、覆蓋3の開閉や取り外しを行いやすくするため、覆蓋3の長手方向の両端部付近に取手17、18を設けることが好ましい。
【0034】
また、本発明の覆蓋装置においては、複数の覆蓋の内の一部の覆蓋を回転軸から取り外したときに、他の覆蓋を回転軸に沿って摺動(スライド)させることにより、前記取り外しにより生じた開口部に当該他の覆蓋を移動可能な構造とすることがこのましい。前記のように、覆蓋3の下面に回転軸2の径に対応した断面が半円状の溝6を形成し、溝6が回転軸2に嵌合するような支持構造とすれば、このような摺動による移動も可能である。このような摺動可能な構造とすれば、開口部の位置を容易に変更することができ、一部の覆蓋を回転軸から取り外すだけで、上下水道施設内部の様々な位置にアクセス可能となる。
【0035】
本発明の覆蓋装置に使用される各覆蓋は、各々その上面に太陽電池モジュールが設けられているが、各太陽電池モジュールにより発電された電力の集電等のため、隣接する覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されていることが好ましい。そして、この場合においては、常に安定した接続状態を保つため、隣接する覆蓋の一方が開いた状態で他方が閉じた状態にあるときでも、ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものであることが好ましい。また、前記のように一部の覆蓋を回転軸から取り外したときには、その覆蓋上の太陽電池モジュールに接続されているケーブルを取り外した上で、回転軸上に残った覆蓋上の太陽電池モジュール間をケーブルで接続するが、この際のケーブルの取り外しや接続を容易にするため、太陽電池モジュールとケーブルとの接続部はコネクタ等により脱着可能となっていることが好ましい。
【0036】
また、前述のような覆蓋の摺動による移動の際の移動距離は、覆蓋の幅と同距離程度であることが多いと考えられるが、そのような場合にも安定した接続状態を保つため、隣接する覆蓋の一方を覆蓋の幅と同じ距離だけ幅方向に移動させたときでも、ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものであることが好ましい。また、通常、本発明のような太陽電池モジュールを備えた覆蓋装置の周囲には系統電源が設置されるが、この系統電源に近い位置に存在する覆蓋の上面に設けられた太陽電池モジュールは、系統電源と伸縮可能なケーブルで接続されることが好ましい。なお、伸縮可能なケーブルとは、カールさせるなどして伸縮性を持たせたケーブルのことである。
【0037】
大掛かりなメンテナンスの際には、全ての覆蓋を回転軸から取り外して別の場所に仮置きする場合があるが、仮置きされた隣接する覆蓋間の距離が、それら覆蓋の上面に設置された太陽電池モジュール同士を接続するケーブルの全長又は伸長限界以下であれば、当該メンテナンス中でも接続状態が維持でき、発電を行うことが可能である。また、前記のように太陽電池モジュールとケーブルとの接続部がコネクタ等により脱着可能となっている場合には、両者の接続を解除することにより、その間の発電はできなくなるものの、隣接する覆蓋をケーブルの全長又は伸長限界を超える距離まで離して仮置きすることができる。
【0038】
また、本発明の覆蓋装置においては、覆蓋だけでなく回転軸の取り外しも必要となるような数年に一度の更に大掛かりなメンテナンスも容易に行えるようにするため、回転軸を持ち上げて移動させるだけの操作により、回転軸そのものも上下水道施設を形成する躯体から取り外し可能な構造とすることが好ましい。例えば、躯体の回転軸が架設される部位(上下水を取り囲む躯体の周縁部)に、U字状の溝を形成し、当該溝に回転軸を嵌合させるような構造としておけば、回転軸を持ち上げるだけで躯体から回転軸を容易に取り外すことができ、取り外した回転軸の躯体への取り付けも容易である。
【0039】
また、本発明の覆蓋装置においては、覆蓋を開いて採水等の作業をしている間に、誤って覆蓋が閉じて作業員が怪我を負うことがないように、覆蓋を開いた状態としている間、覆蓋と躯体との間に介在させて、覆蓋を開いた状態のまま固定する突っ張り棒を備えることが好ましい。この突っ張り棒は、覆蓋の傾斜角度を所望の角度に調節できるよう伸縮可能な構造であることが好ましい。また、開口側からの強風にも耐えられるよう、覆蓋及び躯体に、突っ張り棒の端部を引っ掛けるなどして固定できるような固定具を設けることが好ましい。
【0040】
図6〜10は本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例を示すものであり、図6は上方から見た平面図、図7は図6のA−A断面図、図8は図6のB−B断面図である。また、図9は隣接する覆蓋の一方を示す斜視図であり、図10は隣接する覆蓋の他方を示す斜視図である。
【0041】
本実施形態は、各覆蓋が閉じられた状態において、各覆蓋の幅方向における端部が、隣接する他の覆蓋の幅方向における端部と上下方向に重なり合い、かつ、覆蓋の長手方向における回転軸の支持位置を境界として、前記端部の重なり合いにおける上下の位置関係が入れ替わる構造を有する。
【0042】
すなわち、図6〜10に基づいて説明すると、回転軸2による支持位置を境界として、当該支持位置から開閉側端部11までの範囲においては、覆蓋3aの幅方向における端部7aが、隣接する覆蓋3bの幅方向における端部7bの上側になるよう両端部が重なっており、回転軸2による支持位置から非開閉側端部13までの範囲においては、覆蓋3bの幅方向における端部7bが、隣接する覆蓋3aの幅方向における端部7aの上側になるよう両端部が重なっている。
【0043】
このような構造とすることにより、隣接する覆蓋3a、3b間の密閉度を高めることができる。また、この端部の重なり合いにおいて、下側になる端部の部位の上面及び/又は上側になる端部の部位の下面に、シール用のゴム層(ゴムシールパッキン)を形成すると、より密閉度が高くなり好ましく、図6〜10に示す実施形態においては、下側になる端部の部位の上面にゴム層15を形成している。なお、このように端部が重なり合う構造においては、覆蓋3aは、隣接する覆蓋3bが閉じているときでも、開閉側端部11を持ち上げて開いた状態とすることができるが、覆蓋3bは、回転軸2による支持位置から開閉側端部11までの範囲において、その幅方向における端部7bが下側にあるため、単独では開閉側端部11を持ち上げることができず、開いた状態としたいときは、隣接する覆蓋7aとともに開閉側端部11を持ち上げる必要がある。
【0044】
なお、図9及び図10は、上面が長手方向において円弧状に盛り上がっている覆蓋の例であるが、この実施形態においては、図11及び図12のように、上面が長手方向において直線状に傾斜した傾斜面9を有している覆蓋を、隣接する一方の覆蓋3aと他方の覆蓋3bとに使用しても良い。
【0045】
本発明の覆蓋装置においては、覆蓋の上面に、上下水道施設の場内処理水を散布するための散布用配管を設けることが好ましい。一般に、太陽電池モジュールは温度が上昇するほど発電効率が低下するので、このような散布用配管から場内処理水(通常の水温は15〜20℃程度)を散布して太陽電池モジュールを冷却し、温度上昇を抑制すれば、発電効率を向上させることができる。
【0046】
本発明の覆蓋装置に用いられる覆蓋の材質は特に制限されるものではないが、開閉作業を容易にする観点から軽量であることが好ましく、例えば、ガラス繊維強化樹脂(FRP)等が好適な材料として挙げられる。また、回転軸の材質も特に制限されるものではないが、上下水道施設の上方を覆うために必要な数の覆蓋を支持できる強度や上下水に対する耐腐食性が必要であり、例えば、ステンレス鋼等が好適な材料として挙げられる。
【0047】
本発明の覆蓋装置の第一の使用方法は、これまで説明した本発明の覆蓋装置の内、図2のように、覆蓋3の上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているものの使用方法である。この使用方法においては、前記覆蓋装置を、各覆蓋3の長手方向が南北方向となり、かつ、各覆蓋3の開閉側端部11が北側となるように配置し、各覆蓋3を開いた状態としている間は、覆蓋3の傾斜角度が5〜40゜、好ましくは20〜30゜、更に好ましくは30゜となるようにする。このように各覆蓋3の長手方向が南北方向となるように配置すれば、覆蓋3を開いた状態にしたときに、傾斜した覆蓋3の上面が南向きとなる。そして、覆蓋3の傾斜角度を前記のように設定すれば、覆蓋3の上面に設置された太陽電池モジュール5に対し、理想的な入射角度で太陽光が入射するようになり、高い発電効率が得られる。
【0048】
なお、このような高い発電効率を継続的に得るために、採水等の作業時だけでなく、本来は覆蓋を開く必要のない時間帯においても、前記のような傾斜角度で開いた状態にしておきたい場合には、開口部を防臭シート等で覆うなどの対策を施すことが好ましい。
【0049】
本発明の覆蓋装置の第二の使用方法は、これまで説明した本発明の覆蓋装置の内、図5のように、覆蓋3の上面が長手方向において直線状に傾斜した傾斜面9を有しているものの使用方法である。この使用方法においては、前記覆蓋装置を、各覆蓋3の長手方向が南北方向となり、かつ、傾斜面9における傾斜の下側(低い側)が南側となるように配置し、各覆蓋3を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、傾斜面9の水平方向に対する角度が5〜40゜、好ましくは20〜30゜となるようにする。このように各覆蓋3の長手方向が南北方向となるように配置すれば、傾斜面9が南向きとなる。そして、傾斜面9の角度を前記のように設定すれば、各覆蓋3を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、覆蓋3の上面(傾斜面9)に設置された太陽電池モジュール5に対し、理想的な入射角度で太陽光が入射するようになり、高い発電効率が得られる。
【0050】
各覆蓋3を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、傾斜面9の水平方向に対する角度が5〜40゜となるようにするには、例えば、覆蓋3の長手方向に対する傾斜面9の角度が40゜となるように傾斜面9を形成し、覆蓋3を開いた状態としている間における覆蓋3の傾斜角度(覆蓋3の長手方向と水平方向とのなす角θの角度)を35゜以下にすればよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
図2に示すような本発明の覆蓋装置を、各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、開閉側端部が北側となるように配置した。そして、晴天日の日中に、各覆蓋を0〜90゜の異なる傾斜角度で固定し、各覆蓋の上面に設置した太陽電池モジュールによる発電電力量を調べ、その結果を図13のグラフに示した。なお、当該グラフにおいては、最も発電電力量が高かった傾斜角度30゜の場合の発電電力量を100%とし、30゜以外の傾斜角度とした場合の発電電力量を相対値として示している。このグラフから、覆蓋の傾斜角度が30゜に近いほど、太陽電池モジュールによる発電電力量が高まることがわかる。また、傾斜角度が5゜以上の場合に発電電力量が90%以上と高くなるが、傾斜角度が40゜を超過すると発電電力量が98%以下となるため、傾斜角度を40゜を超える値に設定する意味はない。とりわけ、傾斜角度を20〜30゜に設定した場合には、発電電力量が98%以上と高い発電効率が得られるため、最も望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、開閉作業が容易で、かつ、太陽電池モジュールによる発電を効率良く行える上下水道施設の覆蓋装置及びその使用方法として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の一例を示す、上方から見た平面図である。
【図2】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の一例を示す、回転軸の軸方向から見た側面図である。
【図3】覆蓋を開く際の力のモーメントを説明するための説明図である。
【図4】回転軸による覆蓋の好適な支持位置を説明するための説明図である。
【図5】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の一例を示す、回転軸の軸方向から見た側面図である。
【図6】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例を示す、上方から見た平面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6のB−B断面図である。
【図9】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例において、隣接する覆蓋の一方を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例において、隣接する覆蓋の他方を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例において、隣接する覆蓋の一方を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る覆蓋装置の実施形態の他の一例において、隣接する覆蓋の他方を示す斜視図である。
【図13】実施例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
2:回転軸、3:覆蓋、3a:覆蓋、3b:覆蓋、5:太陽電池モジュール、6:溝、7a:覆蓋の幅方向における端部、7b:覆蓋の幅方向における端部、9:傾斜面、11:開閉側端部、13:非開閉側端部、15:ゴム層、17:取手、18:取手、20:躯体、21:ゴムシールパッキン、23:覆蓋受けブラケット、30:上下水、40:直線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下水道施設の上方を覆うための覆蓋装置であって、
上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているか、又は直線状に傾斜した傾斜面を有しており、前記上面に沿って太陽電池モジュールが設置された複数の覆蓋と、
前記上下水道施設を形成する躯体に水平に架設される回転軸とを備え、
前記複数の覆蓋が、その幅方向と前記回転軸の軸方向とが一致するよう前記回転軸により回動可能に支持された状態で隣接配置され、
前記各覆蓋の長手方向における一端部を開閉側端部として上下に回動させることにより前記各覆蓋を開閉できるようにした覆蓋装置。
【請求項2】
前記各覆蓋の長手方向における開閉側端部とは反対側の端部から前記回転軸の中心までの距離をL1とし、前記各覆蓋が閉じられた状態における前記各覆蓋の下面から前記上下水道施設に収容された水の最高水位における水面までの距離をH1としたとき、L1とH1とがL1<H1の関係を満たす請求項1に記載の覆蓋装置。
【請求項3】
前記各覆蓋を持ち上げて移動させるだけの操作により、前記各覆蓋が前記回転軸から取り外し可能な構造を有する請求項1又は2に記載の覆蓋装置。
【請求項4】
前記複数の覆蓋の内の一部の覆蓋を回転軸から取り外したときに、他の覆蓋を前記回転軸に沿って摺動させることにより、前記他の覆蓋を前記取り外しにより生じた開口部に移動可能な構造を有する請求項3に記載の覆蓋装置。
【請求項5】
隣接する前記覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された前記太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されており、隣接する前記覆蓋の一方が開いた状態で他方が閉じた状態にあるときでも、前記ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものである請求項1〜4の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項6】
隣接する前記覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された前記太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されており、隣接する前記覆蓋の一方を前記覆蓋の幅と同じ距離だけ幅方向に移動させたときでも、前記ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものである請求項1〜4の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項7】
前記回転軸を持ち上げて移動させるだけの操作により、前記回転軸が前記躯体から取り外し可能な構造を有する請求項1〜6の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項8】
前記覆蓋を開いた状態としている間、前記覆蓋と前記躯体との間に介在させることにより、前記覆蓋の傾斜角度を所望の角度に維持する伸縮可能な突っ張り棒を備えた請求項1〜7の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項9】
前記各覆蓋が閉じられた状態において、前記各覆蓋の幅方向における端部が、隣接する他の覆蓋の幅方向における端部と上下方向に重なり合い、かつ、覆蓋の長手方向における前記回転軸の支持位置を境界として、前記端部の重なり合いにおける上下の位置関係が入れ替わる構造を有する請求項1〜8の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項10】
前記端部の重なり合いにおいて、下側になる端部の部位の上面及び/又は上側になる端部の部位の下面に、シール用のゴム層が形成されている請求項9に記載の覆蓋装置。
【請求項11】
前記覆蓋の上面に、前記上下水道施設の場内処理水を散布するための散布用配管を設けた請求項1〜10の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の覆蓋装置の内、前記覆蓋の上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているものの使用方法であって、
前記覆蓋装置を、前記各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、前記開閉側端部が北側となるように配置し、前記各覆蓋を開いた状態としている間は、前記覆蓋の傾斜角度が5〜40゜となるようにする覆蓋装置の使用方法。
【請求項13】
請求項1〜11の何れか一項に記載の覆蓋装置の内、前記覆蓋の上面が長手方向において直線状に傾斜した傾斜面を有しているものの使用方法であって、
前記覆蓋装置を、前記各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、前記傾斜面における傾斜の下側が南側となるように配置し、前記各覆蓋を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、前記傾斜面の水平方向に対する角度が5〜40゜となるようにする覆蓋装置の使用方法。
【請求項1】
上下水道施設の上方を覆うための覆蓋装置であって、
上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているか、又は直線状に傾斜した傾斜面を有しており、前記上面に沿って太陽電池モジュールが設置された複数の覆蓋と、
前記上下水道施設を形成する躯体に水平に架設される回転軸とを備え、
前記複数の覆蓋が、その幅方向と前記回転軸の軸方向とが一致するよう前記回転軸により回動可能に支持された状態で隣接配置され、
前記各覆蓋の長手方向における一端部を開閉側端部として上下に回動させることにより前記各覆蓋を開閉できるようにした覆蓋装置。
【請求項2】
前記各覆蓋の長手方向における開閉側端部とは反対側の端部から前記回転軸の中心までの距離をL1とし、前記各覆蓋が閉じられた状態における前記各覆蓋の下面から前記上下水道施設に収容された水の最高水位における水面までの距離をH1としたとき、L1とH1とがL1<H1の関係を満たす請求項1に記載の覆蓋装置。
【請求項3】
前記各覆蓋を持ち上げて移動させるだけの操作により、前記各覆蓋が前記回転軸から取り外し可能な構造を有する請求項1又は2に記載の覆蓋装置。
【請求項4】
前記複数の覆蓋の内の一部の覆蓋を回転軸から取り外したときに、他の覆蓋を前記回転軸に沿って摺動させることにより、前記他の覆蓋を前記取り外しにより生じた開口部に移動可能な構造を有する請求項3に記載の覆蓋装置。
【請求項5】
隣接する前記覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された前記太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されており、隣接する前記覆蓋の一方が開いた状態で他方が閉じた状態にあるときでも、前記ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものである請求項1〜4の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項6】
隣接する前記覆蓋間において、それら覆蓋の上面に設置された前記太陽電池モジュール同士がケーブルにより電気的に接続されており、隣接する前記覆蓋の一方を前記覆蓋の幅と同じ距離だけ幅方向に移動させたときでも、前記ケーブルが接続状態を維持できるだけの長さを有するか、接続状態を維持できるよう伸縮可能なものである請求項1〜4の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項7】
前記回転軸を持ち上げて移動させるだけの操作により、前記回転軸が前記躯体から取り外し可能な構造を有する請求項1〜6の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項8】
前記覆蓋を開いた状態としている間、前記覆蓋と前記躯体との間に介在させることにより、前記覆蓋の傾斜角度を所望の角度に維持する伸縮可能な突っ張り棒を備えた請求項1〜7の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項9】
前記各覆蓋が閉じられた状態において、前記各覆蓋の幅方向における端部が、隣接する他の覆蓋の幅方向における端部と上下方向に重なり合い、かつ、覆蓋の長手方向における前記回転軸の支持位置を境界として、前記端部の重なり合いにおける上下の位置関係が入れ替わる構造を有する請求項1〜8の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項10】
前記端部の重なり合いにおいて、下側になる端部の部位の上面及び/又は上側になる端部の部位の下面に、シール用のゴム層が形成されている請求項9に記載の覆蓋装置。
【請求項11】
前記覆蓋の上面に、前記上下水道施設の場内処理水を散布するための散布用配管を設けた請求項1〜10の何れか一項に記載の覆蓋装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の覆蓋装置の内、前記覆蓋の上面が長手方向において円弧状に盛り上がっているものの使用方法であって、
前記覆蓋装置を、前記各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、前記開閉側端部が北側となるように配置し、前記各覆蓋を開いた状態としている間は、前記覆蓋の傾斜角度が5〜40゜となるようにする覆蓋装置の使用方法。
【請求項13】
請求項1〜11の何れか一項に記載の覆蓋装置の内、前記覆蓋の上面が長手方向において直線状に傾斜した傾斜面を有しているものの使用方法であって、
前記覆蓋装置を、前記各覆蓋の長手方向が南北方向となり、かつ、前記傾斜面における傾斜の下側が南側となるように配置し、前記各覆蓋を開いた状態としている間も閉じた状態としている間も、前記傾斜面の水平方向に対する角度が5〜40゜となるようにする覆蓋装置の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−50257(P2010−50257A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212727(P2008−212727)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
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