説明

見守りシステム、見守り装置及び見守り方法

【課題】居住者の安否を精度よく判断するための見守りシステムを提供する。
【解決手段】見守りシステム1は、通信回線7を介して接続された見守り装置5と管理装置6とを備える。見守り装置5は、住戸3の消費電力を所定の間隔で測定し、測定した消費電力の推移から複数の周波数成分を抽出する。見守り装置5は、さらに、抽出した各周波数成分の推移を表す値が各周波数に対応付けて予め定められた閾値より大きい周波数の数を計数し、住戸3の居住者4の活動量を計数された値によって示す活動量データを生成する。管理装置6は、通信回線7を介して見守り装置5から活動量データを取得し、取得した活動量データが表す値の変化を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居住者を見守るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ライフスタイルの多様化などにともない、単身ないし少数の世帯が増加する傾向にある。このような世帯では、例えば居住者が突然の健康不良にみまわれた場合などに、誰にも気付かれずに深刻な事態に陥ることがある。かかる事態を回避するため、遠方から居住者を見守るための技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1は、住宅内で消費される電力量を計測することによって居住者の生活パターンを推定し、推定した生活パターンと予想パラメータとを比較することによって居住者に異常があるか否かを判断する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−112267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、稼働と停止を自動的に切り替える電気温水器、空調装置等の電気機器が自動的に稼働した場合に、居住者に異常があるか否かの判断を誤ることがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、居住者の安否を精度よく判断するための見守りシステムなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の見守りシステムは、
通信回線を介して接続された見守り装置と管理装置とを備え、
前記見守り装置は、
住宅の消費電力を所定の間隔で測定する消費電力測定手段と、
前記測定された消費電力の推移から複数の周波数成分を抽出する抽出手段と、
前記抽出された各周波数成分の推移を表す値が各周波数に対応付けて予め定められた閾値より大きい周波数の数を計数し、前記住宅の居住者の活動量を前記計数された値によって示す活動量データを生成する活動量算出手段と、
前記生成された活動量データを前記通信回線を介して送信する送信手段とを有し、
前記管理装置は、
前記送信された活動量データを前記通信回線を介して受信する受信手段と、
前記活動量データが示す値の変化を表示させる表示制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費電力から複数の周波数成分を抽出し、抽出した複数の周波数成分に基づいて居住者の活動量を算出する。このため、活動量によって、居住者による電気機器の操作、すなわち、居住者の活動量を精度よく表すことができる。したがって、居住者の安否を精度よく判断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る見守りシステムの構成を示す図である。
【図2】一実施形態に係る見守り装置の機能的構成を示す図である。
【図3】消費電力データの一例を示す図である。
【図4】活動量データの一例を示す図である。
【図5】一実施形態に係る管理装置の機能的構成を示す図である。
【図6】収集データの一例を示す図である。
【図7】消費電力データ蓄積処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】見守り処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】送信処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】一実施形態に係る見守り装置の物理的構成を示す図である。
【図12】一実施形態に係る管理装置の物理的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る見守りシステム1の構成を示す図である。見守りシステム1は、マンション、アパートなどの集合住宅2の各住戸(住宅)3における居住者4の安否を遠方から見守るためのシステムであって、見守り装置5と管理装置6とを備える。見守り装置5と管理装置6とは、有線又は無線LAN(Local Area Network)などの通信回線7を介して通信可能に接続されている。
【0012】
見守り装置5は、居住者4が生活する各住戸3の消費電力に基づいて、居住者4の活動量を示す活動量データを生成する装置である。見守り装置5は、各住戸3の分電盤8に設けられる。
【0013】
分電盤8は、電力メータ10と電気機器13との間に設けられる。商用電源9から電力メータ10まで給電線11を介して供給される電力は、電力メータ10から屋内配線12を介して、各住戸3に設けられるエアコンディショナ、冷蔵庫、電子レンジ、テレビなどの電気機器13へ供給される。
【0014】
一般的に分電盤8が備える電気ブレーカを介して屋内配線12は分岐する。見守り装置5を分電盤8に設けることによって、各住戸3の分岐していない屋内配線12にて消費電力を計測することができるので、各住戸3で消費される全電力を容易に計測することができる。
【0015】
管理装置6は、各住戸3の見守り装置5から活動量データを取得し、取得した活動量データを管理するための装置である。管理装置6は、図1に示すように、居住者4の安否を見守る管理人14が詰める管理人室15に設けられる。
【0016】
図2は、見守り装置5の機能的構成を示す図である。同図に示すように、見守り装置5は、計時部21と、消費電力測定部22と、消費電力データ生成部23と、抽出部24と、移動平均算出部25と、活動量算出部26と、記憶部27と、送信部28とを備える。
【0017】
計時部21は、現在時刻を計測し、計測した時刻を示す現在時刻データを逐次出力する。
【0018】
消費電力測定部22は、屋内配線12を介して供給される電力を所定の周期で測定することで、各住戸3における消費電力P(T)[W]を測定する。消費電力測定部22は、測定結果を示す測定データを出力する。
【0019】
消費電力データ生成部23は、消費電力測定部22から出力された測定データと計時部21から出力された現在時刻データとに基づいて、測定時刻Tにおける消費電力P(T)を示す消費電力データを出力する。消費電力データでは、測定時刻Tと消費電力P(T)とが関連付けられている。
【0020】
一連の消費電力データによって表される消費電力の推移の一例を図3に示す。同図において、横軸は測定時刻Tを表し、縦軸は測定された消費電力P(T)[W]を表す。同図に示す消費電力の推移は、「2011年8月1日21:00」から「2011年8月2日0:00」までの測定時刻Tを含む一連の消費電力データによって表される。
【0021】
抽出部24は、予め定められた複数の周波数Fの中心周波数を有するバンドパスフィルタによって、消費電力データが示す消費電力P(T)の推移から各周波数Fの周波数成分を抽出する。そして、抽出部24は、各周波数Fについて、各測定時刻Tにおける周波数成分FCを示す周波数成分データを出力する。周波数成分データでは、測定時刻Tと周波数成分FCとが関連付けられている。
【0022】
移動平均算出部25は、各周波数Fについて、周波数成分FCの推移の移動平均MA(周波数成分FCの推移を表す値)を算出し、算出結果を示す移動平均データを生成する。移動平均データでは、測定時刻Tと、その測定時刻Tの前後N個(Nは自然数)の周波数成分FCの単純平均(移動平均MA)とが関連付けられている。
【0023】
活動量算出部26は、各周波数Fについて、各周波数Fに対応して予め定められた閾値THと各測定時刻Tの移動平均MAとを比較する。移動平均MAが閾値THより大きい場合に、活動量算出部26は、その移動平均MAに関連付けられた測定時刻Tの値を「1」と決定する。周波数成分FCが閾値TH以下である場合に、活動量算出部26は、その移動平均MAに関連付けられた測定時刻Tの値を「0」と決定する。これにより、移動平均MAは、二値化される。
【0024】
活動量算出部26は、各周波数Fについて、各測定時刻Tの移動平均MAを上述のように二値化した値を示す二値データを生成する。二値データでは、測定時刻Tと、決定された値(1又は0)とが関連付けられている。
【0025】
活動量算出部26は、各二値データに含まれる値を同一の測定時刻Tごとに加算することで、活動量AAを算出する。すなわち、活動量AAは、消費電力の推移に含まれる周波数成分FC(移動平均MA)のうち、閾値を超える周波数Fの数によって表される。そして、活動量算出部26は、算出した活動量AAと測定時刻Tとを関連付けた活動量データを生成する。
【0026】
なお、活動量AAは、各測定時刻Tにおける各住戸3の居住者4の活動量を表す。この点については、後に説明する。
【0027】
一連の活動量データによって表される活動量AAの推移の一例を図4に示す。同図において、横軸は測定時刻Tを表し、縦軸は活動量AAを表す。同図に示す活動量AAの推移は、「2011年8月1日00:00」から「2011年8月2日0:00」までの測定時刻Tを含む活動量データによって表される。
【0028】
図2に戻り、記憶部27は、消費電力データ生成部23によって生成される消費電力データ31と、活動量算出部26によって生成される活動量データ32とを記憶している。
【0029】
送信部28は、活動量算出部26によって生成された活動量データ32を、例えば記憶部27から随時取得する。送信部28は、取得した活動量データ32に住宅ID(Identification)を追加した収集データを生成する。送信部28は、生成した収集データを管理装置6へ、通信回線7を介して送信する。住宅IDは、見守り装置5が設けられた住戸3を特定できるように定められ、例えば住戸3の部屋番号などである。
【0030】
図5は、管理装置6の機能的構成を示す図である。同図に示すように、管理装置6は、受信部41と、記憶部42と、表示部43と、表示制御部44とを備える。
【0031】
受信部41は、各住戸3の見守り装置5から送信された収集データを、通信回線7を介して受信する。そして、受信部41は、受信した収集データを記憶部42へ出力する。
【0032】
記憶部42は、受信部41から出力された収集データ51を記憶している。図6は、収集データ51の一例を示す。同図に示すように、収集データ51では、住宅ID52と活動量データ32とが関連付けられている。
【0033】
表示部43は、記憶部42に記憶された収集データ51を表示する。表示制御部44は、記憶部42から収集データ51を随時取得し、取得した収集データ51を表示部43に表示させる。
【0034】
これまで、見守りシステム1の機能的な構成について説明した。ここから、見守りシステム1が備える見守り装置5と管理装置6のそれぞれが実行する処理の流れの一例について、図を参照しつつ説明する。
【0035】
図7は、見守り装置5が実行する消費電力データ蓄積処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す消費電力データ蓄積処理は、例えば見守り装置5の電源が投入されている間繰り返される。
【0036】
消費電力測定部22は、各住戸3における消費電力P(T)を例えば1秒周期で測定し、測定すると直ちにその測定結果を含む測定データを出力する(ステップS101)。
【0037】
消費電力データ生成部23は、消費電力測定部22から測定データを受け付け、計時部21から現在時刻データを受け付ける。そして、消費電力データ生成部23は、実質的に同時に受け付けた測定データと現在時刻データとのそれぞれが示す消費電力P(T)と時刻とを関連付けた消費電力データを生成する(ステップS102)。
【0038】
消費電力データ生成部23は、生成した消費電力データを記憶部27へ出力し、記憶部27は消費電力データ生成部23によって出力された消費電力データ31を蓄積して記憶する(ステップS103)。これによって、各住戸3の全消費電力の履歴が各見守り装置5に蓄積される。
【0039】
図8は、見守り装置5が実行する見守り処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す見守り処理は、例えば見守り装置5の電源が投入されて所定数の消費電力データが記憶された後に開始される。そして、見守り処理は、例えば電源が切断されるまで繰り返される。
【0040】
抽出部24は、消費電力データ生成部23によって生成された消費電力データ31のうち、所定の測定時刻Tが関連付けられた一連の消費電力データを記憶部27から取得する(ステップS201)。
【0041】
ここで取得される消費電力データ31は例えば、時間的に継続した活動量AAを算出するために必要なものである。より具体的に例えば、1回の見守り処理を実行することによって一定数の測定時刻Tに対応する活動量AAが算出されるとする。この場合に、消費電力データ取得処理(ステップS201)において取得される消費電力データ31は、前回の見守り処理で活動量AAが算出された最後の測定時刻Tの次の測定時刻Tから一定数の測定時刻Tに対応する活動量AAを算出するために必要なものである。
【0042】
なお、抽出部24は例えば、消費電力データ生成部23から消費電力データを逐次取得し、活動量AAを算出するために必要な一連の消費電力データを自身が保持していてもよい。
【0043】
抽出部24は、取得した消費電力データが示す消費電力から所定の周波数Fの周波数成分FCを抽出する(ステップS202)。そして、抽出部24は、各周波数Fについて、抽出した周波数成分FCを含む一連の周波数成分データを生成する。所定の周波数Fは例えば、10、20、30、・・・、70、80、及び90[秒]の周期に対応する周波数、すなわち、6、3、2、1.5、1.2、1、6/7、0.75、及び2/3[Hz]である。
【0044】
移動平均算出部25は、一連の周波数成分データを抽出部24から取得する。移動平均算出部25は、一連の周波数成分データが示す周波数成分FCの移動平均MAを算出する(ステップS203)。そして、移動平均算出部25は、各周波数Fについて、算出結果を含む一連の移動平均データを生成する。
【0045】
活動量算出部26は、一連の移動平均データを移動平均算出部25から取得する。活動量算出部26は、各周波数Fについて、各測定時刻Tの移動平均MAと閾値THとを比較する。閾値THは、周波数Fごとに、すなわち、6、3、2、1.5、1.2、1、6/7、0.75、及び2/3[Hz]のそれぞれについて予め定められる。
【0046】
比較した結果に基づいて、活動量算出部26は、各周波数Fについて、移動平均MAが閾値THより大きい測定時刻Tの値を1、閾値TH以下の移動平均MAの測定時刻Tの値を0と決定する。これにより、活動量算出部26は、各周波数成分FCを二値化する(ステップS204)。活動量算出部26は、各周波数Fについて、一連の二値データを生成する。
【0047】
活動量算出部26は、一連の二値データに含まれる値を測定時刻Tごとに加算する。すなわち、活動量算出部26は、各周波数Fの移動平均MAの各測定時刻Tにおける値が各周波数Fに対応する各閾値THより大きい周波数Fの数が、測定時刻Tごとに計数される。これによって、活動量算出部26は、各測定時刻Tの活動量AAを算出する(ステップS205)。
【0048】
活動量算出部26は、各周波数Fについて、各測定時刻Tの活動量を示す活動量データを生成する(ステップS206)。
【0049】
活動量算出部26は、生成した活動量データ32を記憶部27へ出力し、記憶部27は活動量算出部26によって出力された活動量データ32を蓄積して記憶する(ステップS207)。
【0050】
このような見守り処理が繰り返されることによって、各測定時刻Tにおける居住者4の活動量AAが算出され、時間的に継続した一連の活動量データが記憶部27に蓄積して記憶される。
【0051】
これまで説明した見守り処理において算出される活動量AAが居住者4の活動量を適切に表す指標となる理由について、ここで詳細に説明する。
【0052】
例えば、電源を投入するなど居住者4が電気機器13を操作すると、その稼働が安定するまでの消費電力には数秒から数十秒の種々の周期の波形が含まれる。また、調理、掃除など居住者4の日常生活の活動では不定期のタイミングで種々の電気機器13の電源を入切することがあるが、この場合、消費電力には数十秒から数分の種々周期の波形が含まれる。
【0053】
これに対して、電気機器13の電源が投入されていても、電気機器13が安定して稼働している場合、消費電力に含まれる波形の周期は通常、ほぼ一定になる。そのため、大きい活動量AAは、居住者4が電気機器13を操作した可能性が高いことを表し、小さい活動量AA(ゼロである場合を含む。)は、居住者4が電気機器13を操作していない可能性が高いことを表す。
【0054】
そして、電気機器13を操作するのは居住者4が活動している時である。したがって、大きい活動量AAは、居住者4が住戸3で活動中である可能性が高いことを表す。また、一般に日常生活のあらゆる場面で電気機器13を使用していることを考慮すると、小さい活動量AAは、それがある程度の時間(数10分〜数時間程度)より長く続く場合、居住者4が住戸3で活動中でない可能性が高いことを表す。住戸3で活動中でないとは、例えば外出中である、就寝中である、急病などその身に危険が生じている場合などである。
【0055】
ここで、例えば電気機器13の中には自動的に稼働と停止を切り替えるものがある。例えば、エアコンディショナ(冷房運転とする。)、電気冷蔵庫は、温度調整の対象となる空間の温度が降下して設定温度を下回ると停止し(サーモOFF)、その空間の温度が設定温度から乖離すれば稼働する(サーモON)。このような自動の切り替えであっても活動量AAに影響はある。
【0056】
しかし、自動の切り替えは機械的なものであるのでほぼ一定の周期であることが多い。そのため、自動の切り替えが活動量AAに与える影響は僅かである。すなわち、電気機器13が自動的に稼働と停止を切り替えることによって活動量AAは大きくなるものの、その変化量は、居住者4の操作による場合より明らかに小さいものである。
【0057】
また特に電気冷蔵庫のように常時稼働している電気機器13の場合、閾値THを適切に設定すれば、その電気機器13の稼働と停止が切り替わることによる活動量AAへの影響をほとんどなくすことができる。
【0058】
したがって、電気機器13の中に自動的に稼働と停止を切り替えるものが含まれていても、上述のように、大きい活動量AAは、居住者4が住戸3で活動中であることを表し、長時間継続する小さい活動量AAは、居住者4が住戸3で活動中でないことを表す。このように、活動量AAは、住戸3で使用される電気機器13の種類によらず、電気機器13の稼動状態を介して居住者4の活動量を精度よく表している。
【0059】
さらに、活動量AAを算出するために、周波数成分FCから移動平均MAが算出される。移動平均MAを算出することによって、移動平均の窓幅の時間内の時間的なずれ、測定誤差や外的要因による異常値などの影響を低減して各周波数成分FCの変化の傾向を定量化することができる。そのため、移動平均MAを介して活動量AAを算出することによって、居住者4の活動量をより精度よく表す活動量AAを算出することが可能になる。
【0060】
例えば1日のうちに活動量AAが大きくなる時間帯があれば、居住者4は安全であると判断することができる。また、例えば小さい活動量AAが続く場合には、その居住者4の身に危険が生じたと判断することができる。ここで、小さい活動量AAがどの程度の期間続いた場合に居住者4の身に危険が生じたと判断することができるかは、居住者4の普段の活動量AAの変化を考慮して決定されるとよい。例えば、小さい活動量AAが数日以上続くような場合には、居住者4の身に危険が生じたと判断することができる。
【0061】
もっとも、数時間程度の比較的短い時間継続する小さい活動量AAに基づいて居住者4の身に危険が生じたと判断することができる場合もある。活動量AAが小さい値(例えば、実施形態のように活動量AAが0〜9の値をとり得る場合であれば、0〜3程度)で変化している場合、上述の説明から分かるように、居住者4は活動しておらず、自動的に稼働と停止を切り替える電気機器13の電源が投入されている可能性が高い。例えば、深夜の活動量AAが普段0である居住者4の深夜の活動量AAがある日、0ではない小さい値(例えば1〜3)で変化しているとする。この場合、居住者4は普段とは異なり、エアコンディショナなどの電気機器13の電源を入れたまま放置している可能性が高く、その居住者4の身に危険が生じていると判断することができる。
【0062】
このように、活動量AAは電気機器13の稼動状態を介して居住者4の活動量を精度よく表す指標となり得る。そのため、活動量AAを参照することによって、居住者4の安否を精度よく判断することが可能になる。
【0063】
図9は、見守り装置5が実行する送信処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す送信処理は、例えば見守り装置5の電源が投入されている間、送信部28により定期的に(例えば、10分ごとに)実行される。
【0064】
送信部28は、活動量データ32を記憶部27から取得する(ステップS301)。ここで取得される活動量データ32は、前回の活動量データ取得処理(ステップS301)が実行された後に記憶部27に記憶されたものである。前回の活動量データ取得処理(ステップS301)で取得された活動量データ32は例えば、その活動量データ32の最後の測定時刻Tを送信部28が保持しておくことによって判別され得る。
【0065】
送信部28は、取得した活動量データ32に住宅IDが関連付けられた収集データを生成する。送信部28は、生成した収集データを通信回線7を介して管理装置6へ送信する(ステップS302)。
【0066】
図10は、管理装置6が実行する表示処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す表示処理は、例えば管理装置6の電源が投入されている間繰り返される。
【0067】
受信部41は、住宅IDを含む収集データを通信回線7を介して見守り装置5から受信する(ステップS401)。受信部41は、受信した収集データを記憶部42へ出力する。
【0068】
記憶部42は、受信部41から出力された収集データを取得する。記憶部42は、取得した収集データ51を蓄積し記憶する(ステップS402)。
【0069】
表示制御部44は、例えば10分ごとに、記憶部42から収集データ51を取得する(ステップS403)。ここで取得される収集データ51は、測定時刻Tが所定の期間(例えば、24時間)に含まれる各住戸3の活動量データ32を含む。
【0070】
表示制御部44は、取得した収集データ51が示す各住戸3の活動量AAの推移を、図1に示すようにグラフにより表示部43に表示させる(ステップS404)。
【0071】
このように、各住戸3の見守り装置5で生成された一連の活動量データは、通信回線7を介して管理装置6に収集される。そして、収集された活動量データが示す各住戸3の活動量AAは管理装置6に表示される。そのため、管理人14は、各住戸3の居住者4の安否を確認することができる。
【0072】
また、表示制御部44は、各住戸3の活動量AAの推移をグラフにより表示させる。これによって、管理人14は、各住戸3の活動量AAの推移を容易に認識することができ、その変化に基づく居住者4の安否の判断を容易にすることが可能になる。そして、管理人14は、居住者4の身に危険が生じたと判断した場合には、その住戸3に訪問するなどの措置を直ちに講じることができる。
【0073】
また、管理装置6は、ほぼリアルタイムで活動量AAの推移を表示する。そのため、実際に居住者4の身に危険が生じていた場合には、その危険を早期に発見することが可能になる。
【0074】
図11は、見守り装置5の物理的構成の一例を示す。同図に示すように、見守り装置5は、計時用チップ61と、消費電力測定ユニット62と、CPU(Central Processing Unit)63と、ROM(Read Only Memory)64と、RAM(Random Access Memory)65と、HDD(Hard Disc Drive)66と、通信部67とを備える。これらの各要素61〜67は、内部バス68を介して接続されている。
【0075】
計時用チップ61は、計時部21の一例であり、例えば水晶振動子を有して時刻を計測するチップである。消費電力測定ユニット62は、消費電力測定部22の一例であり、例えばクランプ式の電流センサ、電圧センサなどを有して消費電力を測定し、測定結果を含むデータを出力する。
【0076】
CPU63は各種の処理を行う。ROM64は、CPU63を起動させるためのソフトウェア・プログラムなどを記憶している。RAM65は、CPU63が処理を実行する場合に参照するデータを保持する。HDD66は、記憶部27の一例であり、各種データを記憶している。通信部67は、送信部28の一例であり、見守り装置5と管理装置6との間のデータの送受信を制御する。
【0077】
例えば、HDD66に記憶されたソフトウェア・プログラムを実行するCPU63が発揮する機能によって、消費電力データ生成部23、抽出部24、移動平均算出部25、及び活動量算出部26は実現される。なお、消費電力データ生成部23と抽出部24と移動平均算出部25と活動量算出部26との全部又は一部は例えば、その機能を有する専用のプロセッサにより実現されてもよい。また、見守り装置5は、HDD66に加えて又はそれに代えて、フラッシュメモリなどその他の補助記憶装置を記憶部27として備えてもよい。
【0078】
図12は、管理装置6の物理的構成の一例を示す。同図に示すように、管理装置6は、CPU70と、ROM71と、RAM72と、HDD73と、表示パネル74と、通信部75とを備える。これらの各要素70〜75は、内部バス76を介して接続されている。
【0079】
CPU70は各種の処理を行う。ROM71は、CPU70を起動させるためのソフトウェア・プログラムなどを記憶している。RAM72は、CPU70が処理を実行する場合に参照するデータを保持する。HDD73は、記憶部42の一例であり、各種データを記憶している。表示パネル74は、表示部43の一例であり、画面を表示する液晶パネルなどである。通信部75は、受信部41の一例であり、管理装置6と見守り装置5との間のデータの送受信を制御する。
【0080】
例えば、HDD73に記憶されたソフトウェア・プログラムを実行するCPU70が発揮する機能によって、表示制御部44は実現される。なお、表示制御部44は例えば、その機能を有する専用のプロセッサにより実現されてもよい。また、管理装置6は、HDD73に加えて又はそれに代えて、フラッシュメモリなどその他の補助記憶装置を記憶部42として備えてもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は実施形態によって限定されるものではない。本発明は、実施形態及び以下の変形例を適宜組み合わせたものも含み、また、それらと均等なものも含む。
【0082】
例えば、見守り装置5は、集合住宅2の各住戸3に限らず、戸建ての住宅に設けられてもよい。また、管理装置6は、見守りの対象となる住戸3とは別の建物、例えば居住者4の安否を見守る者が介護サービスを提供する事業者である場合にはその事業者のオフィスなどに設けられてもよい。また、見守り装置5と管理装置6とは、通信可能に接続されていればよく、通信回線7は、WAN(Wide Area Network)などを含んでもよい。
【0083】
また例えば、消費電力測定ユニット62には、例えば電力メータ10が用いられてもよい。これによれば、実施形態と同様に1つの消費電力測定ユニット62で各住戸3における全ての消費電力を計測することができる上に、見守り装置5の構成を簡素化することができる。また、各住戸3における全ての消費電力は、例えば分岐した屋内配線12の各々に設けられた消費電力測定ユニット62から出力される測定データが示す消費電力を消費電力データ生成部23が集計することによって計測されてもよい。
【0084】
さらに例えば、移動平均算出部25は、単純移動平均を算出することとしたが、重み付けをした移動平均(加重移動平均)など種々の移動平均が採用されてもよい。また、単純移動平均を採用する場合であっても、各測定時刻Tの移動平均を算出するために平均をとる数N(窓幅)を周波数Fごとに調整してもよい。このように移動平均を算出する具体的な方法には、種々の方法が採用され得る。適切な方法で移動平均を算出することによって、移動平均の窓幅の時間内の時間的なずれ、測定誤差や外的要因による異常値の影響を低減して各周波数成分の変化の傾向を定量化することができる。これによって、居住者4の活動量をより精度よく表す活動量AAを算出することが可能になる。
【0085】
さらに例えば、活動量算出部26は、各周波数成分データから移動平均データを介さずに、すなわち各周波数成分の推移を表す値として各周波数成分FC自体を用いて、二値データを生成し活動量データを生成してもよい。具体的には例えば、活動量算出部26は、各周波数Fについて、周波数成分FCと各周波数Fに対応して予め定められた閾値THとを比較することによって、二値データを生成して活動量データを生成するとよい。これによれば、移動平均算出部25が不要になるので、実施形態よりも構成を簡素化することができる。
【0086】
さらに例えば、送信部28は、記憶部27を介さずに、活動量算出部26から活動量データ32を取得してもよい。この場合、送信部28は、取得する都度住宅IDを付加した活動量データ32を送信してもよい。また、送信部28は、取得した活動量データ32を自身が保持し、保持している活動量データ32が所定量に達する度に住宅IDを付加して送信してもよい。
【0087】
さらに例えば、管理人14が管理装置6の入力部71を操作することによって、表示部43の一画面に活動量を表示させる住戸3や期間を指定できるようにしてもよい。これにより、管理人14は、所望の住戸3の活動量を拡大して見ることや、所望の住戸3の異なる日の同じ時間帯の活動量を比較して見ることなどができる。そのため、その住戸3の居住者4の安否を容易に判断することが可能になる。
【0088】
さらに例えば、活動量データ取得処理(ステップS301)の後に、送信部28は、取得した活動量データ32によって表される活動量AAが0又は十分小さい(閾値より小さい)か否かを判断してもよい。そして、活動量AAが0又は十分小さいと判断した場合には、送信部28は、活動量AAが0又は十分小さいことを示す情報を保持し、0又は十分小さい活動量AAが所定の時間(例えば24時間)継続したときに警告データを生成してもよい。警告データは、例えば「活動が長時間みられません。」などの0又は十分小さい活動量AAが継続していることを表すための文字情報などを含む。
【0089】
警告データが生成された場合には、送信部28は、収集データ送信処理(ステップS302)において、収集データとともに警告データを管理装置6へ送信し、その後、自身が保持していた警告データを削除する。
【0090】
そして、収集データとともに警告データが送信された場合、受信部41は、収集データ受信処理(ステップS401)において収集データ及び警告データを受信し、それらを記憶部42へ出力する。記憶部42は、収集データ蓄積処理(ステップS402)において受信部41から出力された収集データ及び警告データを取得して、蓄積し記憶する。
【0091】
収集データ及び警告データが蓄積された場合、表示制御部44は、収集データ取得処理(ステップS403)において収集データ及び警告データを取得し、表示処理(ステップS404)において収集データ及び警告データに含まれる内容を表示部43に表示させる。この表示処理において警告データの内容は、収集データの内容を表すグラフ上に表示される。より具体的には、グラフでは、警告データの内容を表す文字列は、その中央が警告データを受信した時刻上に位置するように表示される。
【0092】
このように、警告データを生成し、その内容を表示することによって、居住者4の身に危険が生じていることを容易に察知することが可能になる。
【符号の説明】
【0093】
1 見守りシステム
3 住戸
4 居住者
5 見守り装置
6 管理装置
7 通信回線
8 分電盤
9 商用電源
10 電力メータ
11 給電線
12 屋内配線
13 電気機器
14 管理人
15 管理人室
21 計時部
22 消費電力測定部
23 消費電力データ生成部
24 抽出部
25 移動平均算出部
26 活動量算出部
27 記憶部
28 送信部
41 受信部
42 記憶部
43 表示部
44 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して接続された見守り装置と管理装置とを備え、
前記見守り装置は、
住宅の消費電力を所定の間隔で測定する消費電力測定手段と、
前記測定された消費電力の推移から複数の周波数成分を抽出する抽出手段と、
前記抽出された各周波数成分の推移を表す値が各周波数に対応付けて予め定められた閾値より大きい周波数の数を計数し、前記住宅の居住者の活動量を前記計数された値によって示す活動量データを生成する活動量算出手段と、
前記生成された活動量データを前記通信回線を介して送信する送信手段とを有し、
前記管理装置は、
前記送信された活動量データを前記通信回線を介して受信する受信手段と、
前記活動量データが示す値の変化を表示させる表示制御手段とを有する
ことを特徴とする見守りシステム。
【請求項2】
前記活動量算出手段は、前記抽出された各周波数成分の同一の時刻における値が前記各閾値より大きい周波数の数を計数し、前記時刻における前記住宅の居住者の活動量を前記計数された値によって示す活動量データを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項3】
前記抽出された各周波数成分の移動平均を算出する移動平均算出手段をさらに備え、
前記活動量算出手段は、前記移動平均算出手段によって算出された移動平均の同一の時刻における値が前記各閾値より大きい周波数の数を計数し、前記時刻における前記住宅の居住者の活動量を前記計数された値によって示す活動量データを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記値の変化をグラフにより表示させる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の見守りシステム。
【請求項5】
住宅の消費電力を所定の間隔で測定する消費電力測定手段と、
前記測定された消費電力の推移から複数の周波数成分を抽出する抽出手段と、
前記抽出された各周波数成分の推移を示す値が各周波数に対応付けて予め定められた閾値より大きい周波数の数を計数し、前記住宅の居住者の活動量を前記計数された値によって示す活動量データを生成する活動量算出手段とを備える
ことを特徴とする見守り装置。
【請求項6】
住宅の消費電力の推移から複数の周波数成分を抽出し、
前記抽出された各周波数成分の推移を示す値が各周波数に対応付けて予め定められた閾値より大きい周波数の数を計数し、
前記住宅の居住者の活動量を前記計数された値によって示す活動量データを生成する
ことを特徴とする見守り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−54595(P2013−54595A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193220(P2011−193220)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】