説明

見積算出装置

【課題】早期に、迅速、かつ、精度よく、見積を算出することができる見積算出装置を提供すること。
【解決手段】サービス提供に対する見積を算出する見積算出装置であって、サービス提供における作業内容のコスト情報を記憶するコスト情報記憶手段と、見積対象となるサービス提供を受ける側が要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間、を含む必要要件情報の入力を受け付ける必要要件情報入力手段と、必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報に基づいてサービス提供に必要な作業内容を特定する作業内容特定手段と、作業内容特定手段にて特定された作業内容と、コスト情報記憶手段に記憶されたコスト情報と、に基づいて見積対象となるサービス提供に対する見積を算出する見積算出手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見積算出装置にかかり、特に、提供するサービスの要件に応じて見積額を算出する見積算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のIT機器等のシステム展開役務受託においては、顧客毎に異なる事業環境やインフラ設備等の影響で、役務提供要件が非常に複雑になっている。特に、商談の初期段階の要件では、要件が不明確な部分が多く、商談と計画を進めていくに従って段階的に詳細化を行っていくことが必要不可欠になっている。このため、詳細な要件が確定するまでには非常に長い期間を要することになる。一方で、このような商談では、顧客側にとって非常に金額の大きなものとなることが多いため、ほとんどの場合は顧客側の予算計上から商談が開始されることになる。すると、予算計上の必要性から、役務提供者は顧客側の漠然とした要件を基にした短時間での見積り金額提示が求められることになる。つまり、要件が不明確であり、かつ、見積り提出期限が短い、という厳しい条件下において、精度の高い見積を提示しなければならない、という問題が生じていた。
【0003】
かかる状況下では、役務提供者の営業員は、顧客が想定していない重要要件の抜け漏れ確認や個々の要件に対するリスク分析を自らのスキル(経験)を頼りに実施するしかない状況となっている。その結果、見積りに再現性がなくなるだけでなく、想定外の要件が後から明らかになることから、非常に大きな見積り誤差が発生する、といった課題を抱えていた。その一方で、要件を詳細化していくにつれ提供する役務の範囲は拡大する傾向にあり、予算計上や商談の初期段階での見積りにおいて範囲内外の役務を明確にしていない場合、役務提供側が見積り不備として最終的に超過したコストを負担せざるを得ない、という問題も生じていた。
【0004】
ここで、下記特許文献1には、製品原価を算出するシステムが開示されている。このシステムでは、対象となる物品や製造に関わる工数に基づいて、原価を算出している。つまり、製品に関する要件が詳細に明確である場合に算出可能である。従って、商談初期や予算計上時点、つまり、要件が不明確な状態での見積の算出が困難である、という問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−78985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、商談初期や予算計上時点での見積り算出や要件のリスク分析は、非常に重要性が高く、その商談と役務提供結果の成否を左右するものになっているものの、これらの実行は非常に高いスキルや経験を要する。このため、種々の場所で増加する同様の商談を成功させるためには、高いスキルや経験を持たない営業員であっても、商談初期や予算計上時点での見積り算出や要件のリスク分析を行うことができる仕組みが求められている。
【0007】
そのため、本発明では、早期に、迅速、かつ、精度よく、見積を算出することができる見積算出装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明であるサービス提供に対する見積を算出する見積算出装置は、サービス提供における作業内容のコスト情報を記憶するコスト情報記憶手段と、見積対象となるサービス提供を受ける側が要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間、を含む必要要件情報の入力を受け付ける必要要件情報入力手段と、必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報に基づいてサービス提供に必要な作業内容を特定する作業内容特定手段と、作業内容特定手段にて特定された作業内容と、コスト情報記憶手段に記憶されたコスト情報と、に基づいて見積対象となるサービス提供に対する見積を算出する見積算出手段と、を備えた、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の発明によると、入力されたサービス項目などの要件の詳細が不明確な段階であっても、これら入力された情報に基づいて、自動的に、必要とされる作業内容を特定し、コストを算出することができる。従って、商談初期の段階から、迅速かつ精度よく、見積を算出することができる、という従来にない優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、IT機器等のシステム展開役務受託において、商談初期の漠然とした役務提供要件(以下、「必要要件」という)からでも、順次表示される要件確認用の質問に対して選択肢を選択または値を入力していくことで、超概算レベルの見積書作成と、見積要件のリスク分析までを自動的に行うことができることを特徴としている。
【0011】
そして、例えば、本発明は、IT機器等のキッティング、設置組立、データ移行、インストール、撤去・廃棄、またこれらを実施するにあたっての事前調査、および円滑で適切な実行を支援する実行コントロールを、単独あるいは複合的に実施する役務受託プロジェクト(サービス提供)の見積において適用可能である。なお、本発明は、後述するデータ格納部に実装された情報を入れ替えることにより、企業または個人宅を問わず、あらゆる物品の新規導入、入替え導入、既存物品への変更、撤去・廃棄作業等を行う役務受託プロジェクト(サービス提供)の見積に適用可能となる。
【0012】
そして、本発明の一形態は、上述したように、サービス提供に対する見積を算出する見積算出装置であって、サービス提供における作業内容のコスト情報を記憶するコスト情報記憶手段と、見積対象となるサービス提供を受ける側が要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間、を含む必要要件情報の入力を受け付ける必要要件情報入力手段と、必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報に基づいてサービス提供に必要な作業内容を特定する作業内容特定手段と、作業内容特定手段にて特定された作業内容と、コスト情報記憶手段に記憶されたコスト情報と、に基づいて見積対象となるサービス提供に対する見積を算出する見積算出手段と、を備えた、という構成を採っている。
【0013】
上記発明によると、まず、サービス提供を受ける側から、提供を受けるサービスに要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間といった要件が入力され、これに基づいて、かかる要件を満たすようサービス提供に必要な作業内容を特定する。そして、特定された作業内容に応じて、予め設定されたコスト情報に基づいて、サービス提供にかかるコストである見積を算出する。これにより、入力されたサービス項目等の詳細が不明確な初期の計画段階であっても、これら入力された情報に基づいて、自動的に、必要とされる作業内容を特定しコストを算出することができる。従って、迅速かつ精度よく、見積を算出することができる。
【0014】
また、本発明では、上記作業内容特定手段は、サービス提供に必要な作業の作業時間及び作業者数を含めて作業内容を特定する、という構成を採る。また、作業内容特定手段は、サービス提供に必要な作業に反復作業がある場合に作業時間を短縮して作業内容を特定する、という構成を採る。
【0015】
このように、コストに大きな影響を及ぼす作業時間や作業者数を含めてより詳細に作業内容を特定することで、より高精度に見積を算出することができる。特に、反復作業により作業時間を短縮して作業内容を特定することで、当該反復作業による効率化を反映したコストを算出でき、より高精度に見積を算出することができる。
【0016】
また、本発明では、上記コスト記憶手段に記憶されるコスト情報を更新するコスト情報更新手段を備えた、という構成を採る。これにより、作業者の作業の習熟度などによるコストの変動を迅速にコスト記憶手段に記憶することができる。従って、より迅速かつ高精度に見積を算出することができる。
【0017】
また、本発明では、上記必要要件情報入力手段は、サービス提供を受ける側に対する質問を出力すると共に当該質問に対する回答の入力を受け付けて、当該回答を前記必要要件情報として受け付ける、という構成を採る。これにより、見積算出装置からはサービス提供を受ける側に質問が出力され、当該サービス提供を受ける側が質問に回答することで、かかる回答を上述した必要要件情報として受け付けることができる。従って、必要要件情報の入力が容易となる。
【0018】
また、本発明では、サービス項目に対応するリスク情報を記憶するリスク情報記憶手段と、リスク情報と必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報とに基づいて、当該必要要件情報に含まれるサービス項目が行われることに対するリスク情報を特定するリスク特定手段と、を備えた、という構成を採る。このとき、上記リスク特定手段は、サービス提供の進行状況に応じてリスクを特定する、という構成を採る。さらに、本発明では、リスク特定手段にて特定したリスク情報を出力するリスク情報出力手段を備えた、という構成を採る。
【0019】
これにより、予め記憶されたリスク情報と入力された必要要件情報とに基づいて、サービス提供の際に行われるサービス項目に対するリスクを特定する。特に、サービス提供の進行状況、つまり、各サービス項目の進行に応じたリスクを特定して出力することで、サービス提供を受ける側は、現在の状況におけるリスクを認識することができる。
【0020】
また、本発明の他の形態であるプログラムは、サービス提供に対する見積を算出する見積算出装置に、見積対象となるサービス提供を受ける側が要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間、を含む必要要件情報の入力を受け付ける必要要件情報入力手段と、必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報に基づいてサービス提供に必要な作業内容を特定する作業内容特定手段と、作業内容特定手段にて特定された作業内容と、予め記憶されたサービス提供における作業内容のコスト情報と、に基づいて見積対象となるサービス提供に対する見積を算出する見積算出手段と、を実現させる、という構成を採っている。
【0021】
そして、本発明では、さらに、前記見積算出装置に、予め記憶されたサービス項目におけるリスク情報と、必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報と、に基づいて、当該必要要件情報に含まれるサービス項目が行われることに対するリスク情報を特定するリスク特定手段、を実現させる、という構成を採る。
【0022】
また、本発明の他の形態である見積算出方法は、コンピュータにてサービス提供に対する見積を算出する方法であって、見積対象となるサービス提供を受ける側が要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間、を含む必要要件情報の入力を受け付ける必要要件情報入力工程と、必要要件情報入力工程にて入力された必要要件情報に基づいてサービス提供に必要な作業内容を特定する作業内容特定工程と、作業内容特定工程にて特定された作業内容と、予め記憶されたサービス提供における作業内容のコスト情報と、に基づいて見積対象となるサービス提供に対する見積を算出する見積算出工程と、を有する、という構成を採っている。
【0023】
さらに、本発明では、上記見積算出工程の前後に、予め記憶されたサービス項目におけるリスク情報と、必要要件情報入力工程にて入力された必要要件情報と、に基づいて、当該必要要件情報に含まれるサービス項目が行われることに対するリスク情報を特定するリスク特定工程、を有する、という構成を採る。
【0024】
上述した構成のプログラム、方法の発明であっても、上記見積算出装置と同様に作用するため、上述した本発明の目的を達成することができる。
【実施例1】
【0025】
本発明の第1の実施例を、図1乃至図20を参照して説明する。図1は、見積算出装置の構成を示すブロック図であり、図2は、操作・表示制御機能実装装置の詳細を示す機能ブロック図である。図3乃至図15は、見積算出装置におけるデータ処理例を示す説明図である。図16乃至図20は、見積算出装置の動作を示すフローチャートである。
【0026】
[構成]
本実施例における見積算出装置は、IT機器等のシステム展開役務(サービス提供)を受託して当該役務を提供するサービス提供事業者が管理している装置であり、提供する役務(サービス)の対価である見積額を算出する装置である。そして、見積算出装置は、図1に示すように、データベース機能実装装置1と、操作・表示制御機能実装装置9と、印刷出力機能実装装置14と、を備えている。例えば、データベース機能実装装置1は、ハードディスクなどの記憶装置であるデータ格納部2を備えたデータベースサーバにて構成されている。また、操作・表示制御機能実装装置9は、CPUといった演算処理部12、フラッシュメモリといった一時記憶領域13、液晶ディスプレイなどの表示部10、キーボードやマウスといった入力操作部11、を備えたコンピュータにて構成されている。また、印刷出力機能実装装置14は、印刷出力部15を備えたプリンタにて構成されている。以下、各装置について詳述する。
【0027】
まず、データベース機能実装装置1のデータ格納部2は、格納データとして、質問・回答選択肢情報3、要素価格情報4、市場統計情報5、リスク分析情報6、演算式情報7、見積り結果情報8、を記憶している。
【0028】
質問・回答選択肢情報3は、提供するサービスを依頼する顧客に対して、当該サービスに対する要件を伺うための質問や、その質問に対する回答となる選択肢の情報を記憶している。ここで、質問や選択肢の一例を、図3乃至図6に示す。例えば、質問は、図3に示すように、役務の提供先といった要求する役務の量(サービス提供量)を回答させるものである。また、質問は、図4に示すように、要求する役務の提供期間(サービス提供期間)や納期を回答させるものである。また、質問は、図5乃至図6に示すように、要求する役務の大まかな要件である作業内容を表すサービス項目を回答させるものである。そして、これらの質問に対する回答の入力を、後述するように、操作・表示制御機能実装装置9が、顧客が要求するサービスの必要要件情報として受け付ける。
【0029】
また、データ格納部2に格納されている要素価格情報4は、展開役務を提供するために必要な構成物品の価格や各作業内容のコスト情報である。つまり、データ格納部2は、コスト情報記憶手段として機能している。作業内容のコスト情報は、例えば、各作業の作業時間毎のコストや、各作業に取り掛かる作業員一人当たりのコストなどである。また、市場統計情報5は、市場における各構成物品や作業内容の一般的なコストなど、市場から統計的に導き出せる展開役務に関する情報が記憶されている。
【0030】
また、データ格納部2のリスク分析情報6は、展開役務のサービス項目毎に生じうるリスク情報である。つまり、データ格納部2は、リスク情報記憶手段として機能している。具体的には、リスク分析情報6は、上述した質問に対する回答や選択肢毎、つまり、顧客が要求するサービス項目毎におけるリスク内容、及び、リスクの影響度、発生確率、発生頻度を表す情報である。そして、このリスクの影響度、発生確率、発生頻度は、サービス自体の進行状況、つまり、サービス項目の実行状況に応じて変化する情報である。
【0031】
また、データ格納部2の演算式情報7は、後述する演算処理部12にて演算する際に利用される演算式である。例えば、上述した質問に対する回答や選択肢を選択することによる顧客の要求である必要要件情報(サービス項目や量、期間など)に対して、必要な作業自体や、その作業時間、作業人数などを表す詳細な作業内容を特定するためのデータや演算式である。また、この特定された作業内容から上述した要素価格情報4やリスク分析情報6に基づいて、コストやリスクを算出するための演算式も含む。また、データ格納部2の見積結果情報8は、後述するように演算処理部12にて算出された見積結果を蓄積したものである。
【0032】
次に、操作・表示制御機能実装装置9の演算処理部12の構成について、図2を参照して説明する。この演算処理部12には、所定のプログラムが実行されることで、要件入力処理部21、作業内容特定処理部22、コスト算出処理部23、リスク算出処理部24、結果出力処理部25、情報更新処理部26、が構築されている。
【0033】
要件入力処理部21(必要要件情報入力手段)は、上述したように質問・回答選択肢情報3として記憶されている質問や選択肢を図3乃至図6に示すように表示部10に表示して、これに対する回答を、サービス提供を受ける顧客が要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間などの必要要件情報として受け付けて、一時記憶領域13に記憶する。
【0034】
作業内容特定処理部22(作業内容特定手段)は、上記要件入力処理部21にて受け付けたサービス提供に対する必要要件情報、及び、データ格納部2に格納されている演算式情報7などに基づいて、サービス提供に必要な作業内容を特定する。つまり、顧客にて入力されたサービスに要求する大まかな要件(必要要件情報)を満たすために実行するより詳細な作業内容等を特定する。例えば、あるサービス項目を何日まで提供するという要件が要求された場合に、予め設定されたサービス項目に対応する作業内容、作業人数、作業時間の関係を表す情報から、実際に必要となる作業内容、作業人数、作業時間を特定する。一例としては、図7に示すように、必要要件情報を満たしてサービス提供が可能な作業内容、作業時間、作業人数などを予測する。このとき、例えば、複数の同じ端末に対するアップグレード作業といった反復作業がある場合には、反復による作業者の習熟度の向上を踏まえて、作業時間を短縮して算出し特定する。
【0035】
コスト算出処理部23(見積算出手段)は、上述したように算出した作業内容、作業時間、作業人数、及び、要素価格情報4に記憶されている各作業毎のコスト情報に基づいて、サービス提供に対する対価となる見積を算出する。例えば、図8に示すように、各作業ごとのコストを算出し、図9に示すように、全体の概算見積を算出する。そして、結果出力処理部25にて、図9に示すように表示部10に見積を出力したり、あるいは、図11に示すように、印刷出力機能実装装置14を用いて紙媒体に印刷出力する。なお、このとき、図12に示すように、見積書の条件が記載された前提条件書も印刷出力する。
【0036】
なお、見積を算出する際に参照されるコスト情報、つまり要素価格情報4は、情報更新処理部26(コスト情報更新手段)によって、入力操作部11などから入力された情報に基づいて更新することができる。例えば、作業者の熟練度が増した場合には、作業時間が短縮できるため、作業内容や作業時間に対するコストを下げるよう更新することができる。あるいは、演算式情報7として記憶された各作業内容に対する作業時間や作業人数の情報を更新してもよい。
【0037】
リスク算出処理部24(リスク特定手段)は、上述したように入力されたサービス項目、及び、リスク分析情報6に記憶されているリスク情報、さらには、演算式情報7に基づいて、実行されるサービスに対するリスクを特定する。具体的には、あるサービス項目が実行される際に発生するリスク内容を特定したり、実行されるサービスに対するリスクの影響度やリスクの発生確率、発生頻度を算出する。また、結果出力処理部25(リスク情報出力手段)は、図10に示すように、表示部10に、発生確率と発生頻度のマトリックス上に、リスクが発生するサービス項目、例えば、サービス項目を回答させた質問の番号を表示する。このとき、マトリックス上に表示された質問番号を選択することで、図13に示すリスク詳細画面が表示される。この図に示すように、リスク詳細画面には、サービス項目に対するリスク事象とリスク原因、さらには、リスク回避のための事前対策を表す情報が表示される。なお、これらの情報は、予めリスク分析情報6として記憶されていた情報である。
【0038】
ここで、サービス項目毎のリスクの発生確率等は、時間の経過と共に、つまり、サービス提供の進行状況に応じて、その値も変化しうる。例えば、リスクAは、あるサービス項目が実行されるときに発生確率や影響度が高くなり、かかるサービス項目の実行が開始される前の一定期間やその実行が終了するとリスクが低くなる、というリスクが存在する場合があるとする。その場合には、結果出力処理部25が、図14の矢印に示すように、マトリックス上で表示しているリスクに対応する質問番号を、前回の表示位置から現在の表示位置に移動させて表示させる。また、図15に示すように、リスク詳細画面には、リスクが高くなる日時(図15の「」部分参照)を指定しての表示も行う。
【0039】
[動作]
次に、上記構成の見積算出装置の動作を、図16乃至図20のフローチャートを参照して説明する。まず、サービス提供を行う事業者の営業員が、上述した見積算出装置の利用を開始すると(ステップ101)、各要件入力プロセスが順次実行される(ステップ102〜110)。ここで、各要件入力プロセスは、それぞれ図17のフローチャートに示すプロセスに従って順次実行される。例えば、はじめの全般概略要件入力(ステップ102)が実行されると、図17に進み、質問・回答選択肢情報3を読み出して(ステップ201)、表示部10に表示する(ステップ202)。そして、サービス提供を受ける顧客によって選択肢が選択されたり、あるいは、入力欄に回答が入力されると(ステップ203)、これをサービス提供を受ける顧客の必要要件情報として受け付ける(必要要件情報入力工程)。
【0040】
続いて、受け付けた必要要件情報つまりサービス項目やサービス提供量、サービス提供期間に基づいて、より具体的に作業内容等を特定する必要があれば(ステップ204でYes)、演算式情報7などを用いてより具体的な作業内容や作業時間、作業人数などを算出する(ステップ205、作業内容特定工程)。続いて、この特定した作業内容等と、要素価格情報4に基づいて、サービス項目のコストを算出する(ステップ206でYes、ステップ207、見積算出工程)。そして、算出された結果、あるいは、入力された情報がそのまま、変数として代入し(ステップ208)、この変数に基づいて、表示制御演算を実行し(ステップ209)、次ページの質問内容に表示を変化させる(ステップ210でNo)。つまり、続いて、図16に示すステップ103のキッティング処理要件入力処理を、図17のステップ201から上述同様に実行する。
【0041】
その後、ステップ102〜110までの全ての要件入力プロセスに用意された質問が終了すると(ステップ210でYes)、コスト算出の途中結果表示が準備されたプロセスでは(ステップ211)、図7や図8に示すように、各サービス項目毎のコスト算出結果を表示する(ステップ212)。このようにして、算出されたコストや全てのサービス項目は、全体の見積算出およびリスク分析に必要な情報として、一時記憶領域13に格納された状態となる。
【0042】
続いて、図16のステップ111に示すように、見積りの結果表示を実行する。このときの詳細な動作を図18に示すが、ステップ213では、上述した質問や選択肢の文字列・数値・演算式など、または、一時記憶領域13に格納された変数・値の呼出が行われる。そして、これらを用いて、見積り金額算出演算を実行し(ステップ214、見積算出工程)、その結果、図9に示すように、超概算見積を表示する(ステップ111)。なお、ここで、利益率の変更入力が行われた場合には(ステップ112でYes、ステップ113)、その変更入力された値に従って、見積り結果表示を変化する(ステップ111)。
【0043】
次に、上述したように見積が算出された後に、リスク分析を実行する場合の動作を(ステップ112でNo、ステップ114でリスク分析に進む)、図16のステップ116〜119及び図19を参照して説明する。なお、図19は、図16のステップ116〜119の詳細を示したものである。まず、上述したように、質問や選択肢の文字列・数値・演算式など、または一時記憶領域13に格納された変数・値の呼出が行われる(ステップ215)。これらを用いて上述したようにマトリクス表示の演算が実行され(ステップ216)、リスクが特定される(リスク特定工程)、そして、図10に示すように、表示部10にリスクマトリクスが表示される(ステップ116)。このとき、マトリクス上に表示された個別リスク項目を選択すると(ステップ117)、リスク分析情報6や演算式情報7から個別リスク詳細表示・演算用情報が呼出される(ステップ217)。これに基づいて、個別リスク詳細表示・演算が実行され(ステップ218)、図13に示すように、個別リスク詳細が表示される(ステップ118)。なお、要件変更入力がある場合には(ステップ119でYes)、上述したように各要件入力プロセスで選択または値入力した内容を変更する(ステップ102〜110)。
【0044】
続いて、上述したように見積が算出された後に、見積書印刷を実行する場合の動作を(ステップ112でNo、ステップ114で見積書印刷に進む、ステップ115)、図20を参照して説明する。なお、図20は、図15の動作の詳細を示したものである。
【0045】
まず、上述したように、質問や選択肢の文字列・数値・演算式など、または一時記憶領域13に格納された変数・値の呼出が行われる(ステップ219)。これらを用いて見積書印刷イメージ構築演算が実行され(ステップ220)、構築された見積書イメージを表示し、この表示された見積書印刷イメージを、図11に示すように印刷出力する。
【0046】
そして、上述したように算出した見積結果や他の全てのデータ、つまり、一時記憶領域13に格納された全ての変数・値を、データ格納部2へ保存する(ステップ112でNo、ステップ114で結果保存に進む、ステップ120)。保存が完了したら見積算出装置の動作を終了する(ステップ121)。
【0047】
以上により、本発明によると、顧客側が大まかな要件を質問に対する回答として入力するのみで、かかる要件を満たす詳細な作業内容を特定して、サービス提供にかかるコストを算出することができる。従って、入力されたサービス項目等の詳細が不明確な初期の計画段階であっても、営業員のスキル(経験)によらず、重要要件の抜け漏れをなくすと共に、再現性のある見積及びリスク分析を短時間で作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明における見積算出装置は、IT機器等のキッティング、設置組立、データ移行、インストール、撤去・廃棄、またこれらを実施するにあたっての事前調査、および円滑で適切な実行を支援する実行コントロールを単独あるいは複合的に実施する役務受託において適用することができる。また、実装する情報を入れ替えることにより、企業または個人宅を問わず、あらゆる物品の新規導入、入替え導入、既存物品への変更、撤去・廃棄作業等を行う役務受託に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】見積算出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に開示した操作・表示制御機能実装装置の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】見積算出装置の表示画面に質問を出力したときの様子を示す図である。
【図4】見積算出装置の表示画面に質問を出力したときの様子を示す図である。
【図5】見積算出装置の表示画面に質問及び選択肢を出力したときの様子を示す図である。
【図6】見積算出装置の表示画面に質問及び選択肢を出力したときの様子を示す図である。
【図7】見積算出装置の表示画面に特定した作業内容を出力したときの様子を示す図である。
【図8】見積算出装置の表示画面に算出したコストを出力したときの様子を示す図である。
【図9】見積算出装置の表示画面に算出した見積を出力したときの様子を示す図である。
【図10】見積算出装置の表示画面に算出したリスク分析をマトリクス表示したときの様子を示す図である。
【図11】印刷出力機能実装装置から印刷出力した見積書を示す図である。
【図12】印刷出力機能実装装置から印刷出力した前提条件書を示す図である。
【図13】見積算出装置の表示画面にリスクの詳細を表示したときの様子を示す図である。
【図14】見積算出装置の表示画面に算出したリスク分析をマトリクス表示したときの様子を示す図である。
【図15】見積算出装置の表示画面にリスクの詳細を表示したときの様子を示す図である。
【図16】見積算出装置の全体動作を示すフローチャートである。
【図17】図16に開示した各要件入力時の詳細な動作を示すフローチャートである。
【図18】図16に開示した動作の一部の詳細な動作を示すフローチャートである。
【図19】図16に開示した動作の一部の詳細な動作を示すフローチャートである。
【図20】図16に開示した動作の一部の詳細な動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 データベース機能実装装置
2 データ格納部
3 質問・回答選択肢情報
4 要素価格情報
5 市場統計情報
6 リスク分析情報
7 演算式情報
8 見積り結果情報
9 操作・表示制御機能実装装置
10 表示部
11 入力操作部
12 演算処理部
13 一時記憶領域
14 印刷出力機能実装装置
15 印刷出力部
21 要件入力処理部
22 作業内容特定処理部
23 コスト算出処理部
24 リスク算出処理部
25 結果出力処理部
26 情報更新処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービス提供に対する見積を算出する見積算出装置であって、
サービス提供における作業内容のコスト情報を記憶するコスト情報記憶手段と、
見積対象となるサービス提供を受ける側が要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間、を含む必要要件情報の入力を受け付ける必要要件情報入力手段と、
前記必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報に基づいてサービス提供に必要な作業内容を特定する作業内容特定手段と、
前記作業内容特定手段にて特定された作業内容と、前記コスト情報記憶手段に記憶されたコスト情報と、に基づいて見積対象となるサービス提供に対する見積を算出する見積算出手段と、
を備えたことを特徴とする見積算出装置。
【請求項2】
前記作業内容特定手段は、サービス提供に必要な作業の作業時間及び作業者数を含めて前記作業内容を特定する、
ことを特徴とする請求項1記載の見積算出装置。
【請求項3】
前記作業内容特定手段は、サービス提供に必要な作業に反復作業がある場合に前記作業時間を短縮して前記作業内容を特定する、
ことを特徴とする請求項2記載の見積算出装置。
【請求項4】
前記コスト記憶手段に記憶される前記コスト情報を更新するコスト情報更新手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1,2又は3記載の見積算出装置。
【請求項5】
前記必要要件情報入力手段は、サービス提供を受ける側に対する質問を出力すると共に当該質問に対する回答の入力を受け付けて、当該回答を前記必要要件情報として受け付ける、
ことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の見積算出装置。
【請求項6】
前記サービス項目に対応するリスク情報を記憶するリスク情報記憶手段と、
前記リスク情報と前記必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報とに基づいて、当該必要要件情報に含まれるサービス項目が行われることに対するリスク情報を特定するリスク特定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の見積算出装置。
【請求項7】
前記リスク特定手段は、サービス提供の進行状況に応じてリスクを特定する、
ことを特徴とする請求項6記載の見積算出装置。
【請求項8】
前記リスク特定手段にて特定したリスク情報を出力するリスク情報出力手段を備えた、
ことを特徴とする請求項6又は7記載の見積算出装置。
【請求項9】
サービス提供に対する見積を算出する見積算出装置に、
見積対象となるサービス提供を受ける側が要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間、を含む必要要件情報の入力を受け付ける必要要件情報入力手段と、
前記必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報に基づいてサービス提供に必要な作業内容を特定する作業内容特定手段と、
前記作業内容特定手段にて特定された作業内容と、予め記憶されたサービス提供における作業内容のコスト情報と、に基づいて見積対象となるサービス提供に対する見積を算出する見積算出手段と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項10】
前記見積算出装置に、さらに、
予め記憶された前記サービス項目におけるリスク情報と、前記必要要件情報入力手段にて入力された必要要件情報と、に基づいて、当該必要要件情報に含まれるサービス項目が行われることに対するリスク情報を特定するリスク特定手段、
を実現させるための請求項9記載のプログラム。
【請求項11】
コンピュータにてサービス提供に対する見積を算出する方法であって、
見積対象となるサービス提供を受ける側が要求するサービス項目、サービス提供量、サービス提供期間、を含む必要要件情報の入力を受け付ける必要要件情報入力工程と、
前記必要要件情報入力工程にて入力された必要要件情報に基づいてサービス提供に必要な作業内容を特定する作業内容特定工程と、
前記作業内容特定工程にて特定された作業内容と、予め記憶されたサービス提供における作業内容のコスト情報と、に基づいて見積対象となるサービス提供に対する見積を算出する見積算出工程と、
を有することを特徴とする見積算出方法。
【請求項12】
前記見積算出工程の前後に、予め記憶された前記サービス項目におけるリスク情報と、前記必要要件情報入力工程にて入力された必要要件情報と、に基づいて、当該必要要件情報に含まれるサービス項目が行われることに対するリスク情報を特定するリスク特定工程、を有することを特徴とする請求項11記載の見積算出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−32041(P2009−32041A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195563(P2007−195563)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)