説明

見苦しいセルライトを減少させるために考案された美容用製剤

本発明は、見苦しいセルライトを減少させるのに有効な式(I)のアリールジメチルピラゾロンの新しい誘導体、およびそれを含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、セルライトの処置(treatment)に有用なアリールジメチルピラゾロンの誘導体、およびその誘導体を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
セルライト、すなわち「エディマタスファイブロスクレロティックパニキュロパシー(oedematous−fibrosclerotic panniculopathy)」は、主に脂肪の性質を有し、真皮の下に存在する組織である下皮を侵す障害である。セルライトは、ほとんど女性だけが罹り、青年期以降の女性人口のおよそ80から85%、ほとんどが白色人種で、特に「地中海人種」皮膚タイプの人々が患っている。
【0003】
細身の女性でさえ、大腿部に、より顕著な脂肪の蓄積が見られる傾向がある。
【0004】
セルライトは、脂肪組織における静脈およびリンパの微小循環の鈍化によって引き起こされ、その最も重要な代謝機能の障害および組織中の毒素の増加をもたらす。
【0005】
皮下脂肪組織のこの変性の明白な結果は、脂肪細胞容積の増加、および細胞間隙における液体の停滞による体液貯留である。
【0006】
セルライトは、いくつかの遺伝的(家族性素因)、体質的、ホルモンおよび血管の原因を有し、座りがちな生活習慣、ストレス、喫煙、肝臓疾患、ホルモンの失調、不適切な食生活、腸管障害、または顕著な体液貯留に特徴付けられる障害によって、しばしば悪化する。
【0007】
セルライトは主に美容上の問題であり、その観点で考慮されなければならない。
【0008】
現在、セルライトは、
1.物理療法(レーザー治療、イオン導入、超音波治療、およびオゾン治療)、
2.ダイエット用サプリメント、すなわち、無機塩(特にカリウム)、ビタミン、(脂質代謝を上昇させると信じられている)植物エキス、利尿薬、腸の調整剤、および(微小循環に活性な)ビオフラボノイド、
3.以下の活性成分、すなわちコエンザイムA、ホスファチジルコリン、アミノフィリン、エイシン(escin)、またはホメオパシー製品を使用するメソセラピー、
4.カフェイン、アミノフィリン、レボチロキシン、およびエイシンなどの薬理活性製品
によって、一般的に処置される。
【0009】
市場にはセルライトの処置のための多数の美容用(cosmetic)組成物がある。これらの組成物は、センテラアジアティカ(Centella asiatica)、イチョウの葉(Ginkgo biloba)、およびカバノキの抽出物、ならびにマロニエの木から抽出されるエイシンなどの植物エキスを主に含んでいる。
【0010】
その他の美容用組成物は、カフェイン、β−アドレナリン興奮剤、およびメチルキサンチンなどの化合物を含んでいる。それらの美容上の有効性は疑わしく、観察可能な改善は、それらの組成物の適用に伴う食餌療法およびマッサージが、しばしば原因である。
【0011】
EP692250は、微小循環を改善するためのフラボンの使用を記載している。
【0012】
GB1588501、FR2797765、EP1261310、およびEP1259221は、脂肪分解を活性化するための、キサンチンの美容上の使用を記載している。
【0013】
WO2006063714は、セルライトの処置に適した製剤を調製するための、いくつかのアリールジメチルピラゾロンの使用を記載している。アリールジメチルピラゾロンは、以前は、Edmondsonらによって、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters (2003年)、13巻、3983〜3987頁において、強力で選択的なPDE3B阻害剤として記載されていた。
【発明の概要】
【0014】
発明の説明
見苦しいセルライトを減少させるのに驚くほど有効な新しいアリールジメチルピラゾロン誘導体が、発見された。したがって、本発明の第1の態様は、以下の式(I)の化合物5−{4−[2−(4−フルオロ−ベンジル)−3−オキソ−シクロヘキサ−1−エニルアミン]−2,3−ジフルオロ−フェニル}−4,4−ジメチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オンに関する。
【0015】
【化1】

【0016】
式(I)の化合物は、塩酸、硫酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、プロピオン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸および酒石酸の中から選ばれる有機酸の中から選択される美容上許容できる(cosmetically acceptable)酸で、塩化させる(salified)ことができる。
【0017】
本発明の別の態様は、活性成分として式(I)の化合物を、好ましくは0.1から2重量%、より好ましくは0.1から1重量%、さらにより好ましくは0.2から0.5重量%の濃度で含む美容用組成物に関する。
【0018】
本発明による組成物は、皮膚の稠密度および体調を改善し、オレンジピールのような外見を最小限にし、同時に皮膚を保湿し滑らかにして、その結果、皮膚の弾力性を目に見えるほどに改善する。
【0019】
本発明による製剤はまた、微小循環に活性な化合物、化合物の混合物または抽出物、好ましくはサポニンまたはフラボン、場合により抽出物系のものも含むことができる。イチョウの葉、アルニカ、パイナップル、ドンクアイ(アンゲリカシネンシス(Angelica siniensis))、センテラアジアティカ、およびサポニンエイシンが、特に好ましい。
【0020】
微小循環に活性な物質の化合物、抽出物、または混合物は、0.1から4%の間の範囲の濃度で、組成物中に存在することができる。
【0021】
本発明による製剤はまた、補助剤、特に水またはアルコール(エタノール)、ビタミン、特にトコフェロール、デクスパンテノール、またはパルミチン酸レチノール、増粘剤、保存料、保護コロイド、加湿剤、香料、電解質、保湿剤、ゲル化剤、皮膚への透過性を増す薬剤、ポリマーまたはコポリマー、乳化剤、乳化安定剤、およびその他の美容上許容できる添加剤(excipient)などの、美容上許容できる添加剤を含むこともできる。局所製剤は、10−トランス−12−シス リノール酸およびドコサヘキサエン酸を含み、オメガ3として知られるポリ不飽和脂肪酸を含むことができる。
【0022】
保存料として、エチルアルコールまたはベンジルアルコールなどの低刺激性物質を使用することが好ましい。
【0023】
特に適切なゲル化剤は、カルボマー、特にカルボマー940、ポリアクリルアミド、イソパラフィン−ラウレス−7、キサンタンゴム、カラギーナン、アカシアゴム、グアーガム、寒天ゲル、アルギネートおよびメチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ならびにコロイド状二酸化ケイ素を含む。
【0024】
尿素およびパンテノールは、本発明による保湿剤の例である。
【0025】
本発明による組成物は、ゲル、スプレーゲル、クリーム、ノンオイルクリーム、ノンオイル製剤、軟膏または水性アルコールローションという形態をとってよい。
【0026】
本発明による医薬組成物の調製のための技術は、当業者には知られているであろうし、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版、Mack Publishing Co.に記載されている。
【0027】
例えば、ノンオイルクリーム(100g)の形態の本発明による組成物は、以下を含むことができる。すなわち、
活性成分: 重量%
−式(I)の化合物 0.2〜0.5
−エイシン(任意) 1〜3
添加剤:
−(モノステアリン酸グリセリン、マクロゴールセトステアリールエーテル(macrogol cetostearyl ether)、流動パラフィン、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチルアルコール、およびパラオキシ安息香酸エステル) 20〜25
−精製水 100gまでの適量。
【0028】
式(I)の化合物と以前に記載されたその他の化合物(WO2006063714およびBioorganic & Medicinal Chemistry Letters(2003年)、13巻、3983〜3987頁)との間の構造的な類似性を考慮して、
A)3−[2−[4−(4,4−ジメチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1−H−ピラゾール−3−イル)−2,3−ジフルオロ−フェニルアミン]−6−オキソシクロヘキサ−1−エニルメチル]−ベンゾニトリル(以後、「化合物A」と呼ぶ、これは、EdmondsonらによってBioorganic & Medicinal Chemistry Letters (2003年)、13巻、3983〜398頁に記載されている化合物18nに相当する)、
B)5−{4−[2−(4−フルオロ−ベンジル)−3−オキソ−シクロヘキサ−1−エニルアミン]−2−フルオロ−フェニル}−4,4−ジメチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン(以後、「化合物B」と呼ぶ、これは、EdmondsonらによってBioorganic & Medicinal Chemistry Letters (2003年)、13巻、3983〜398頁に記載されている化合物18kに相当する)
を、0.3重量%の濃度で含む製剤についていくつかの比較試験を行った。式(I)の化合物を含む本発明による美容用製剤は、見苦しいセルライトを減少させるのに、著しくより効果があることがわかった。
【0029】
以下の例は、本発明を説明するが、本発明を何ら制限するものではない。
【0030】

例1:ノンオイルクリーム(組成%)
活性成分
式(I)の化合物 0.2
エイシン 2
添加剤:
モノステアリン酸グリセリン 8
マクロゴールセトステアリールエーテル 2.5
流動パラフィン 2
白色ワセリン 2
ミリスチン酸イソプロピル 4
ミリスチルアルコール 3
パラオキシ安息香酸エステル 0.3
精製水 100gまでの適量。
【0031】
例2:ノンオイルクリーム(組成%)
活性成分
式(I)の化合物 0.3
添加剤:
セトステアリールアルコール 4.5
モノステアリン酸グリセリン 8.0
流動パラフィン 2
白色ワセリン 2
ジメチコーン 0.30
ミリスチン酸イソプロピル 1
ミリスチル(myristic)アルコール 3
エッセンシャルオイル 適量
精製水 100gまでの適量。
【0032】
例3:ノンオイルクリーム(組成%)
活性成分
式(I)の化合物 0.5
添加剤:
オレイン酸 5.0
ステアリン酸マクロゴール40 9.0
セトステアリールアルコール 6.0
ブチルヒドロキシアニソール 0.02
トロメタモール 0.1
ジメチコーン 0.3
カルボポール980 0.3
プロピレングリコール 20.0
亜硫酸ナトリウム 0.1
エッセンシャルオイル 適量
精製水 100gまでの適量。
【0033】
例4:水性アルコールゲル(組成%)
活性成分
式(I)の化合物 0.2
添加剤:
カルボマー 1.5
96°エチルアルコールEP 40ml
エッセンシャルオイル 適量
トリエタノールアミン pHの調整用に適量
精製水 100gまでの適量。
【0034】
例5:脂溶性クリーム(組成%)
活性成分
式(I)の化合物 0.3
添加剤:
ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3 4
オレイン酸グリセリル 2
蜜ロウ 7
ジカプリルエーテル 10
ヘキシルデカノール/ラウリン酸ヘキシルデシル 10
85%グリセリン 5
硫酸マグネシウム7H2O 1
パラオキシ安息香酸エステル 0.1
エッセンシャルオイル 適量
精製水 100gまでの適量。
【0035】
例6(比較用):ノンオイルクリーム(組成%)
活性成分
化合物A 0.3
添加剤:
セトステアリールアルコール 4.5
モノステアリン酸グリセリン 8.0
流動パラフィン 2
白色ワセリン 2
ジメチコーン 0.30
ミリスチン酸イソプロピル 1
ミリスチル(myristic)アルコール 3
エッセンシャルオイル 適量
精製水 100gまでの適量。
【0036】
例7(比較用):ノンオイルクリーム(組成%)
活性成分
化合物B 0.3
添加剤:
セトステアリールアルコール 4.5
モノステアリン酸グリセリン 8.0
流動パラフィン 2
白色ワセリン 2
ジメチコーン 0.30
ミリスチン酸イソプロピル 1
ミリスチル(myristic)アルコール 3
エッセンシャルオイル 適量
精製水 100gまでの適量。
【0037】
有効性試験
セルライトは主に美容上の問題である。したがって、本発明者らは、製品Aおよび製品Bを含む製剤(例6および7に記載された組成物)との比較によって、式(I)の化合物に基づいた製剤(例2に記載された組成物)の見苦しいセルライトを減少させる上での美容上の有効性を試験した。式(I)の化合物に最も類似する既知の化合物であるので、化合物AおよびBを比較対象(comparator)として使用した。
【0038】
大腿部、腰および臀部に明らかなセルライトの課題を有する21人の健康な成人女性を3群に分けた。各群は、例2、6、または7に記載されたものの中から選択される1つのクリームを与えられ、2カ月間、毎日1日2回、セルライトに罹っている大腿の部分に塗り、吸収されるまでマッサージした。もう一方の未処置の大腿部を対照として使用することができるように、この処置は常に片方の大腿部にのみ行われることになっていた。美容クリームの有効性は、処置した大腿部を未処置の大腿部と比較することによって、5段階スケールで、実施期間の終わりに評価した。考慮したパラメータは、オレンジピール効果の減少、皮膚の全体的な外見(セルライトに罹った部分から遠い部分の皮膚を理想的とみなして、皮膚の均一性および滑らかさ、組織の調子および弾力性、湿潤)、および大腿部周径の減少であった。発赤またはかゆみなどの処置に関連する副作用の存在もまた考慮した。
【0039】
試験は、式(I)の化合物を含む例2に記載された製剤で処置した患者の満足度を、明確に示し、2つの比較対象化合物を含む例6および7に記載された製剤よりはるかに有効であることを証明した。
【0040】
【表1】

【0041】
液晶サーモグラフィを使用して、処置の有効性の機器による間接的な評価を行った。この技術は、表面温度に基づいて、正常な脂肪組織と、美容上の問題の重症度に比例して、減少した血流が皮膚の進行性冷却を引き起こすセルライトに罹った組織とを識別する。
【0042】
化合物(I)による反復処置後、(セルライトに罹っていない)正常な皮膚の部分と罹患している部分との温度差は有意に減少し、以前に観察された温度低下の約70%が解消された。比較目的のため、化合物AおよびBでの処置の効果を評価した。正常な組織と比較した温度差のうちの約50%しか解消されなかったので、両者とも式(I)の化合物より効果が低いことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物5−{4−[2−(4−フルオロ−ベンジル)−3−オキソ−シクロヘキサ−1−エニルアミン]−2,3−ジフルオロ−フェニル}−4,4−ジメチル−2,4−ジヒドロ−ピラゾール−3−オン、
【化1】

およびその美容上許容できる塩。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)の化合物またはその美容上許容できる塩を含む、セルライトの処置のための局所投与用美容用組成物。
【請求項3】
式(I)の化合物を0.1から2重量%の濃度で含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)の化合物を0.1から1重量%の濃度で含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
式(I)の化合物を0.2から0.5重量%の濃度で含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ゲル、スプレーゲル、クリーム、ノンオイルクリーム、ノンオイル製剤、または軟膏の形態の請求項2から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
エイシン、またはイチョウの葉(Ginkgo biloba)、アルニカ、パイナップル、ドンクアイ(アンゲリカシネンシス(Angelica siniensis))、およびセンテラアジアティカ(Centella asiatica)の抽出物から選択されるサポニンおよび/またはフラボンもまた含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
10−トランス−12−シス リノール酸およびドコサヘキサエン酸のうちから選択されるポリ不飽和オメガ−3脂肪酸もまた含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の美容用組成物。
【請求項9】
セルライトの美容処置のための、請求項1に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2010−522222(P2010−522222A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500121(P2010−500121)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002261
【国際公開番号】WO2008/116602
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509265014)ア.メナリーニ インドゥストリエ ファルマチェウティケ リウニーテ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【氏名又は名称原語表記】A.MENARINI INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE S.R.L.
【Fターム(参考)】