説明

規定された分化能を有する幹細胞クローンの選択

細胞のクローン集団を作製するための方法であって、a)インビトロにおいて増幅され、未分化または本質的に未分化の状態に維持された多能性または多分化能性の細胞の集団を得る工程;b)集団の個別化された細胞を増幅して細胞のクローン集団にする工程;ならびにc)神経細胞型、肝細胞、または心筋細胞のいずれかについて少なくとも約50%均一である集団に分化する能力を有することが決定された、細胞の1つまたはそれより多くのクローン集団を選択する工程を含む方法が開示される。本発明の方法によって作製される細胞のクローン集団、および被験体への本発明のクローン細胞の投与を含む、被験体における疾患を治療する方法もまた、開示される。本発明の方法によって作製される細胞のクローン集団と試験化合物を接触させることを含む、試験化合物をスクリーニングするための方法もまた、記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本願は、2009年12月2日に提出された米国出願第61/266,072号に対する優先権を主張する。その開示全体は、放棄なしにその全体が本明細書中に具体的に参考として援用される。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、一般に、幹細胞選択、幹細胞分化、および細胞療法の分野に関連する。特に、本発明は、明確な分化能力を有する非遺伝子修飾クローン多能性幹細胞系の選択のための方法および本発明の方法によって作製される幹細胞クローンの適用に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
胚性幹(ES)細胞および誘導多能性幹細胞を含む多能性幹細胞は、初期発生を研究し、疾患および毒性学をモデル化し、細胞療法において使用するための大きな見込みがある。同じことは、成体および胚性神経幹細胞に該当する。そのような細胞が培養において増殖することができ、異なる細胞型に分化するそれらの潜在能を維持することができるので、それらは、様々な疾患を治療するために細胞のほぼ無限の供給をもたらすことができる。
【0004】
研究が活発な1つの分野は、細胞療法を使用する神経系疾患および心血管疾患の治療である。変性神経系疾患の治療に対するアプローチは、ドーパミン作動性ニューロンなどのような中枢神経系の細胞を神経系の患部に移植することである。
【0005】
細胞療法のための細胞についての可能性のある供給源は、ES細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、および他のタイプの幹細胞をインビトロにおいて分化させることによって調製される。霊長動物ES細胞培養物を調製するための方法は、ヒト、アカゲザル、およびマーモセットES細胞について記載されている(特許文献1;特許文献2;特許文献3)。
【0006】
あいにく、多能性幹細胞に由来する異なる細胞型の異種性の混合物は、培養において得るのが容易であるが、特異的な系列へのそれらの標的分化は、困難なままである。一般に、培養におけるES細胞の分化は、細胞の異種性の混合物を産生し、これらのうちのいくつかのみが、神経細胞などのような、細胞療法に適している分化細胞となり得る。
【0007】
より制御された分化プロセスは、幹細胞による神経細胞工学および神経組織工学の改善を強く支援するであろう。したがって、細胞療法において使用される幹細胞由来の分化細胞を調製するための、改善された方法についての必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,843,780号明細書
【特許文献2】米国特許第6,200,806号明細書
【特許文献3】米国特許第7,029,913号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特異的なまたは特定の分化能を有する多能性幹細胞のクローン集団を提供するための方法の同定に部分的に基づく。本発明の方法は、ESCを利用する細胞療法またはバイオテクノロジーにおいて適用することができる、分化細胞の豊富な集団を提供する利点を有する。さらに、治療上の適用における、精製されたまたは高度に精製された分化細胞の使用は、脳への細胞の移植に続く、奇形腫または神経上皮腫瘍の危険性などのような、被験体における副作用の危険性を低下させる。さらに、本発明の方法は、遺伝子修飾されていない細胞のクローン集団を提供してもよい。
【0010】
細胞のクローン集団を作製するまたは生成するための方法であって、a)インビトロにおいて増幅(expand)し、未分化または本質的に未分化の状態に維持された多能性(pluripotent)または多分化能性(multipotent)の細胞の集団を得る工程;b)集団の個別化された細胞を増幅して細胞のクローン集団にする工程;ならびにc)神経細胞型、肝細胞、筋細胞、または心筋細胞のいずれかについて少なくとも約50%均一である集団に分化する能力を有することが決定された、細胞の1つまたはそれより多くのクローン集団を選択する工程を含む方法が本発明において含まれる。ある実施形態では、方法は、細胞の1つまたはそれより多くの選択集団の細胞またはそれらの子孫を提供することをさらに含んでいてもよい。下記の実施例において示されるように、ある種のクローン多能性細胞系における肝細胞特有のマーカーの増加は、胚様体への分化の間に約100倍増加した。
【0011】
「細胞のクローン集団」は、単一の共通の母細胞の子孫である細胞の群を指すように本明細書において定義される。
【0012】
用語「多能性幹細胞」は、3つの胚葉、すなわち内胚葉、中胚葉、および外胚葉すべての細胞を誘発することができる細胞を指す。理論上、多能性細胞は、体のあらゆる細胞に分化することができるが、多能性の実験的な決定は、それぞれの胚葉のいくつかの細胞型への多能性細胞の分化に典型的に基づく。本発明のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚性幹(ES)細胞である。他の実施形態では、多能性幹細胞は、分化細胞の再プログラムによって誘発される誘導多能性幹細胞である。ある実施形態では、多能性幹細胞は、体細胞核移植によって誘発される胚性幹細胞である。多能性細胞は、ヒト胚性幹細胞であってもよい。ヒト胚性幹細胞の非限定的な例は、H1、H9、hES2、hES3、hES4、hES5、hES6、BG01、BG02、BG03、HSF1、HSF6、H1、H7、H9、H13B、およびH14を含む。多能性細胞は、よりいっそう詳細に下記に議論されるように、誘導多能性細胞(iPSC)であってもよい。iPSCの非限定的な例は、iPS 6.1、iPS 6.6、iPS、iPS 5.6、iPS 5.12、iPS 5.2.15、iPS 5.2.24、iPS 5.2.20、iPS 6.2.1、およびiPS 5/3−4.3を含む。方法は、細胞の選択クローン集団を増幅することをさらに含んでいてもよい。方法は、細胞が、神経細胞、肝細胞、または心筋細胞のいずれかについて少なくとも約50%均一な集団に分化する能力を有するかどうかを決定することをさらに含んでいてもよい。方法は、細胞の選択クローン集団を提供することをさらに含んでいてもよい。方法は、保存または輸送のための、細胞の選択クローン集団を調製することをさらに含んでいてもよい。当該保存または輸送のための細胞の調製は、細胞を凍結させることを含んでいてもよい。
【0013】
用語「多分化能性幹細胞」は、限られた数の組織型に分化することができる幹細胞を指す。多分化能性幹細胞の非限定的な例は、神経幹細胞および造血幹細胞を含む。「神経幹細胞」は、神経細胞に最終的に分化するさらに多くの神経幹細胞および子孫細胞を誘発することができる(つまり、自己再生を示す)神経組織由来の未分化細胞である。神経幹細胞は、成体または胚性神経幹細胞とすることができる。
【0014】
本明細書において使用される用語「心筋細胞」は、(a)成熟もしくは未成熟心筋細胞中に存在することが公知の1つもしくは複数の形態的特徴を示す細胞または(b)成熟もしくは未成熟心筋細胞中に存在することが公知の1つもしくは複数のマーカーもしくは他のタンパク質を発現する細胞を指す。したがって、本明細書において使用される用語「心筋細胞」は、成熟または未成熟心筋細胞の両方を指す。形態的特徴の非限定的な例は、拍動している筋細胞の形成、心臓特異的筋節タンパク質の発現、およびイオンチャネルの発現を含む。マーカーの非限定的な例は、心筋トロポニンI(cTnI)、心筋トロポニンT(cTnT)、筋節ミオシン重鎖(MHC)、GATA−4、Nkx2.5、N−カドヘリン、ベータ.1−アドレノセプター(β1−AR)、ANF、転写因子のMEF−2ファミリー、クレアチンキナーゼMB(CK−MB)、ミオグロビン、および心房性ナトリウム利尿因子(Liら、2006年)を含む。
【0015】
本明細書において使用される「神経細胞」は、(a)成熟ニューロン、未成熟ニューロン、成熟グリア細胞、未成熟グリア細胞、もしくは神経前駆細胞中に存在することが公知の1つもしくは複数の形態的特徴を示す細胞または(b)成熟ニューロン、未成熟ニューロン、成熟グリア細胞、未成熟グリア細胞、もしくは神経前駆細胞中に存在することが公知の1つもしくは複数のマーカー、神経伝達物質、もしくは他のタンパク質を発現する細胞を指す。形態的特徴の非限定的な例は、小さな細胞体、軸索を暗示する複数のプロセス、および樹状突起を含む。マーカー、神経伝達物質、または他のタンパク質の非限定的な例は、a)ニューロンの特徴であるβ3−チューブリン、微小管関連タンパク質2(MAP−2)、または神経細線維;b)アストロサイト中に存在するグリア線維酸性タンパク質(GFAP);c)希突起膠細胞の特徴である2’,3’−環状ヌクレオチド3’−ホスホジエステラーゼ(CNPase)ガラクトセレブロシド(GaIC)またはミエリン塩基性タンパク質(MBP);d)未分化ES細胞の特徴であるOct−4;e)神経前駆体および他の細胞の特徴であるPax−6およびネスチン;f)中枢神経系を発生させる特徴であるSox 1;g)カテコールアミンニューロン中に存在するチロシンヒドロキシラーゼ(TH);h)ガンマ−アミノ酪酸を含有するニューロン中に存在するグルタミン酸デカルボキシラーゼ、アイソフォーム67(GAD67);i)中間の神経分化の特徴であるビメンチン;ならびにj)ドーパミン作動性分化についてのサインであるドーパミン分泌、放射性ドーパミン取り込み、およびドーパミントランスポーター発現を含む。「グリア細胞」の非限定的な例は、アストロサイト、希突起膠細胞、上衣細胞、放射神経膠、シュワン細胞、および衛星細胞を含む。本明細書において使用される「神経細胞」は、「ニューロン細胞」を含む。本明細書において使用される「ニューロン細胞」は、成熟または未成熟ニューロンを指す。たとえば、成熟または未成熟ニューロンは、成熟または未成熟ドーパミン作動性ニューロンであってもよい。
【0016】
本明細書において使用される用語「肝細胞」は、(a)成熟もしくは未成熟肝細胞中に存在することが公知の1つもしくは複数の形態的特徴を示す細胞または(b)成熟もしくは未成熟肝細胞中に存在する公知の1つもしくは複数のマーカーもしくは他のタンパク質を発現する細胞を指す。したがって、本明細書において使用される用語「肝細胞」は、成熟または未成熟肝細胞の両方を指す。形態的特徴の非限定的な例は、好酸性細胞質、多数のミトコンドリアおよび好塩基性顆粒、分散したクロマチンを有する丸い核、ならびに顕著な核小体を含む。肝細胞はまた、アルファフェトプロテインを含む肝臓特異的タンパク質、アルブミンの発現の同定によって同定されてもよい。肝細胞を区別するために使用されてもよいさらなる方法は、電子顕微鏡、免疫細胞化学、免疫蛍光法、定量的PCR、ウエスタンブロッティング、およびin situハイブリダイゼーションを含む。
【0017】
細胞の選択クローン集団は、心臓形成性の分化能を示してもよい。細胞の選択クローン集団は、肝細胞分化能を示してもよい。その代わりに、細胞のクローン集団は神経形成性の分化能を示してもよい。神経形成性の分化能を示す細胞のクローン集団は、任意の特定のタイプの神経細胞への分化を示してもよい。非限定的な例は、ニューロン、希突起膠細胞、アストロサイト、小グリア細胞、衛星細胞、およびシュワン細胞を含む。特定の実施形態では、神経細胞は、ドーパミン作動性ニューロンである。
【0018】
いくつかの実施形態では、細胞の選択クローン集団は、少なくとも55%の神経細胞、少なくとも60%の神経細胞、少なくとも65%の神経細胞、少なくとも70%の神経細胞、少なくとも75%の神経細胞、少なくとも80%の神経細胞、少なくとも85%の神経細胞、少なくとも90%の神経細胞、少なくとも95%の神経細胞、もしくは少なくとも99%の神経細胞またはその中で推論できる任意の範囲に分化する能力を示してもよい。他の実施形態では、細胞の選択クローン集団は、少なくとも55%の心筋細胞、少なくとも60%の心筋細胞、少なくとも65%の心筋細胞、少なくとも70%の心筋細胞、少なくとも75%の心筋細胞、少なくとも80%の心筋細胞、少なくとも85%の心筋細胞、少なくとも90%の心筋細胞、少なくとも95%の心筋細胞、もしくは少なくとも99%の心筋細胞またはその中で推論できる任意の範囲に分化する能力を示してもよい。さらに他の実施形態では、細胞の選択クローン集団は、少なくとも55%の肝細胞、少なくとも60%の肝細胞、少なくとも65%の肝細胞、少なくとも70%の肝細胞、少なくとも75%の肝細胞、少なくとも80%の肝細胞、少なくとも85%の肝細胞、少なくとも90%の肝細胞、少なくとも95%の肝細胞、もしくは少なくとも99%の肝細胞またはその中で推論できる任意の範囲に分化する能力を示してもよい。
【0019】
集団の個別化された細胞を増幅して細胞のクローン集団にする任意の方法もまた、本明細書において記載された方法において使用するために企図される。方法は、集団の個別化された細胞の単離を含んでいてもよい。フローサイトメトリー(FACS)、免疫磁気技術、抗体カラム、免疫沈降、およびイムノパニングを含むが、これらに限定されない様々なタイプの免疫選択は、細胞を単離するために本発明の実施において使用されてもよい。さらなる例は、本明細書において下記に議論される。特定の実施形態では、単離は、インビトロにおいて実行される。細胞培養技術は、当業者らに周知である。そのような技術の非限定的な例は、本明細書において下記に記載される。
【0020】
いくつかの実施形態では、細胞のクローン集団は、神経細胞型または心筋細胞への分化を誘導するために、1つまたはそれより多くの分化作用物質に曝露される。本明細書において使用される用語「分化を誘導すること」または「分化を誘導する」は、幹細胞に対する直接的なまたは意図的な作用の結果として、幹細胞を発生させて、特異的な分化細胞型にすることを意味するようにとられる。作用因子は、イオン流入などのような細胞パラメーター、pH変化、ならびに/またはこれらに限定されないが、分化を調節し、引き起こす増殖因子およびサイトカインなどのような、分泌タンパク質などのような細胞外因子を含むことができる。それは、細胞をコンフルエンスまで培養することを含んでいてもよく、細胞密度が作用してもよい。いくつかの実施形態では、分化作用物質は、細胞によって提供される。そのような作用物質の非限定的な例は、本明細書において下記に記載される。
【0021】
細胞の分化を評価するための、当業者らに公知の任意の方法は、本発明の方法における適用について企図される。分化作用物質への未分化幹細胞の曝露によって調製される分化細胞は、神経前駆体細胞、心筋細胞、肝細胞、または他の細胞型としてのそれらのステータスを確認するために、形態学的に、免疫化学的に、および他の方法において特徴付けることができる。形態的分析に関して、細胞は、多くの表現型の基準に従って特徴付けることができる。基準は、形態的特徴の顕微鏡観察、発現した細胞マーカーの検出または定量化、酵素活性、神経伝達物質およびそれらの受容体、ならびに電気生理学的機能を含むが、これらに限定されない。
【0022】
細胞はまた、それらが特定の種類の細胞の特徴である表現型マーカーを発現するかどうかに従って分化について評価することができる。当技術分野において公知の組織特異的マーカーは、細胞表面マーカーについてのフローイムノサイトケミストリー(flow immunocytochemistry)および蛍光活性化セルソーター、細胞内または細胞表面マーカーについての免疫組織化学的検査(たとえば固定された細胞または組織切片の)、細胞抽出物のウエスタンブロット解析、ならびに細胞抽出物または培地に分泌された産物についての酵素結合免疫測定法などのような任意の適した免疫学的技術を使用して分化を評価するために検出することができる。抗原に結合している抗体は、標識を増幅するための、標識された二次抗体もしくは他のコンジュゲート(ビオチン−アビジンコンジュゲートなど)を使用する、細胞の固定後の、標準的な免疫細胞化学もしくはフローサイトメトリーアッセイまたは当技術分野において周知の他の免疫学的方法によって観察することができる。一般に、免疫複合体形成の検出は、当技術分野において周知であり、多数のアプローチの適用を通して達成されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、細胞のクローン集団を提供するための方法は、インビトロにおいて増幅された細胞を試験化合物に曝露することおよび増幅された細胞における、毒性と関連する細胞パラメーターを測定することをさらに含む。特定の実施形態では、細胞は、インビトロにおいて試験化合物に曝露される。
【0024】
細胞のクローン集団は、哺乳動物細胞であってもよい。細胞の供給源の非限定的な例は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、雌ウシ、霊長動物、またはヒトを含む。特定の実施形態では、細胞のクローン集団は、ヒトの細胞である。
【0025】
ある実施形態では、多分化能性または多能性細胞は、個別化された細胞の、細胞のクローン集団への増幅の前に少なくとも1回、継代されている。
【0026】
本発明はまた、向上した神経分化能を示す細胞のクローン集団を調製するまたは作製するための方法であって、a)インビトロにおいて増幅され、未分化または本質的に未分化の状態に維持された多能性または多分化能性細胞の集団を得る工程;b)多分化能性または多能性細胞の集団由来の複数の細胞を個別化および増幅する工程;c)神経細胞型について少なくとも約50%均一である集団に分化する能力を有することが決定された、細胞の1つまたはそれより多くのクローン集団を選択する工程;ならびにd)細胞の1つまたはそれより多くの選択集団の細胞またはそれらの子孫を提供する工程を含む方法にも関する。増殖した細胞は、少なくとも55%の神経細胞、少なくとも60%の神経細胞、少なくとも65%の神経細胞、少なくとも70%の神経細胞、少なくとも75%の神経細胞、少なくとも80%の神経細胞、少なくとも85%の神経細胞、少なくとも90%の神経細胞、少なくとも95%の神経細胞、もしくは少なくとも99%の神経細胞またはその中で推論できる任意の範囲に分化する能力を示してもよい。特定の実施形態では、神経細胞は、ドーパミン作動性細胞である。多能性または多分化能性細胞は、上記に議論される細胞のいずれかであってもよい。いくつかの実施形態では、方法は、神経細胞を試験化合物に曝露することおよび神経細胞における、毒性と関連する細胞パラメーターを測定することをさらに含む。細胞またはそれらの子孫の提供は、当業者らに公知の任意の方法を使用して、細胞またはそれらの子孫を被験体に投与することを含んでいてもよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、本発明の方法によって作製される複数のクローン由来心筋細胞または複数のクローン由来神経細胞に関する。本発明の方法によって作製される心筋細胞または神経細胞は、組織中に含まれていてもよいまたは含まれていなくてもよい。組織は、適した容器手段中のものとしてもよい。特定の実施形態では、神経細胞は、ドーパミン作動性細胞である。神経細胞は、組織中に含まれていてもよい。組織および/または細胞は、容器手段中に含まれていてもよい。
【0028】
本発明のさらなる実施形態は、本発明の方法によって作製される複数のクローン由来神経細胞、肝細胞、または心筋細胞およびキャリアを含む組成物に関する。いくつかの実施形態では、組成物中の複数のクローン由来神経細胞、肝細胞、または心筋細胞は、単一の共通の前駆細胞から増幅されている。他の実施形態では、細胞は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の共通の前駆細胞に由来する。組成物は、哺乳動物被験体への投与のために製剤された医薬組成物であってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、組成物中の複数のクローン由来神経細胞、肝細胞、または心筋細胞は、単離クローン由来神経細胞または単離心筋細胞としてさらに定義される。組成物は、単離クローン由来神経細胞または単離クローン由来心筋細胞ではない他の細胞を含んでいてもよいまたは含んでいなくてもよい。組成物中の細胞の数は、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも1010、少なくとも1011、少なくとも1012、少なくとも1013、少なくとも1014、少なくとも1015、少なくとも1016、少なくとも1017、少なくとも1018、少なくとも1019、少なくとも1020、もしくはそれ以上の細胞または本明細書において推論できる細胞の数の任意の範囲であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物中に、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくはそれ以上の神経細胞、肝細胞、もしくは心筋細胞または本明細書において推論できるパーセンテージの任意の範囲を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約90%の神経細胞を含む。他の実施形態では、組成物は、少なくとも約90%の心筋細胞を含む。
【0031】
組成物は、当業者らに公知の、任意の薬学的に許容されるキャリアを含んでいてもよい。そのようなキャリアの非限定的な例は、本明細書において下記に記載される。いくつかの実施形態では、組成物は、1つまたはそれより多くの副次的な治療剤を含む。副次的な治療剤の非限定的な例は、化学療法剤を含む。化学療法剤のいくつかの例は、本明細書において下記に記載される。
【0032】
本発明は、本発明の方法によって作製される複数のクローン由来細胞を含む、適した容器手段を含むキットをさらに含む。細胞は、組織中に含まれていてもよいまたは含まれていなくてもよい。他の任意選択のキット成分は、本明細書において下記に記載される。
【0033】
本発明はまた、試験化合物をスクリーニングするための方法であって、a)複数の心筋細胞、肝細胞、または神経細胞を試験化合物と接触させることならびにb)試験化合物との接触に起因する細胞の表現型および活性に対するあらゆる変化を決定することを含み、細胞は、本明細書において記載される方法によって作製される、方法に関する。いくつかの実施形態では、表現型または活性は、毒性の測定値となる。細胞の表現型または活性に対するあらゆる変化の決定は、当業者らに公知の任意の方法に従って実行されてもよい。適用することができる方法の例は、形態的分析、免疫化学的分析、および上記に記載される他の方法を含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれより多くの遺伝子の発現は、複数の心筋細胞、肝細胞、または神経細胞において測定される。そのような遺伝子の非限定的な例は、カスパーゼ3、NF−kB、TNF−アルファ、熱誘導性因子(HIF−1アルファ)、熱ショックタンパク質(Hsp)、細胞統合性遺伝子(cellular integrity gene)(たとえばトランスアミナーゼ)、ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、および酸化ストレス遺伝子を含む。遺伝子発現は、任意の方法または当業者らに周知の方法の組み合わせを使用して測定されてもよい。そのような方法の非限定的な例は、ハイスループット遺伝子配列決定、ウエスタンブロット、遺伝子発現アレイ、フローサイトメトリー、免疫蛍光法、プロモーター/レポーター遺伝子ベースのアッセイ、または比色アッセイを含む。測定されてもよいパラメーターの他の例は、心筋細胞の収縮、細胞死、活動電位のパターン、およびイオン透過性を含む。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、心臓形成性の分化能を示す細胞のクローン集団を調製するまたは作製するための方法であって、a)インビトロにおいて増幅され、未分化または本質的に未分化の状態に維持された多能性または多分化能性細胞の集団を得る工程;b)多分化能性または多能性細胞の集団由来の複数の細胞を個別化し、かつ細胞のクローン集団を増幅する工程;c)心筋細胞について少なくとも約50%均一である集団に分化する能力を有することが決定された、細胞の1つまたはそれより多くのクローン集団を選択する工程;ならびにd)工程(c)において観察されるように、増幅された細胞が心筋細胞に分化する能力に基づいて、細胞および組織工学、薬剤スクリーニング、または細胞療法のために増幅された細胞を使用する工程を含む方法に関する。
【0035】
本発明のさらなる実施形態は、肝細胞分化能を示す細胞のクローン集団を提供するための方法であって、a)インビトロにおいて増幅され、未分化または本質的に未分化の状態に維持された多能性または多分化能性細胞の集団を得る工程;b)多分化能性または多能性細胞の集団由来の複数の細胞を個別化し、かつ細胞のクローン集団を増幅する工程;c)肝細胞について少なくとも約50%均一である集団に分化する能力を有することが決定された、細胞の1つまたはそれより多くのクローン集団を選択する工程;ならびにd)工程(c)において観察されるように、増幅された細胞が肝細胞に分化する能力に基づいて、細胞および組織工学、薬剤スクリーニング、または細胞療法のために増幅された細胞を使用する工程を含む方法に関する。
【0036】
本発明の方法によって作製される細胞のクローン集団を含む、被験体における疾患を治療するための方法もまた、企図される。本発明の方法によって作製される細胞またはそれらの子孫は、移植、細胞療法、または遺伝子療法のために使用されてもよい。本発明は、細胞ベースの療法のための本発明の方法によって作製される神経細胞、肝細胞、または心筋細胞の使用を企図する。たとえば、細胞は、成体において疾患または外傷により実質的に損傷しており、著しく衰えているヒト組織を再生するために使用されてもよい。再生は、in vivoまたはex vivoにおいて実行されてもよい。たとえば、本明細書において記載される方法によって作製される心筋細胞は、被験体における心組織の再生に適用されてもよく、対象の心組織は、心虚血によって損傷している。本発明の神経細胞は、損傷したまたは変性を受けた神経系の細胞を再生する目的で投与されてもよい。本発明の肝細胞は、損傷したまたは変性を受けた神経系の細胞を再生する目的で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の細胞は、被験体に直接投与されてもよい。そのため、本開示の方法は、心臓または神経系の多くの疾患、外傷、または他の有害な状態の治療において有用であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明の心筋細胞、肝細胞、または神経細胞は、3D再構築によってヒトの体器官をモデル化するために使用することができる。たとえば、たとえば、ヒトの脳における組織は、本明細書において記載される方法によって作製される神経細胞の3D培養によってモデル化されてもよい。心臓組織は、本発明の方法によって作製される心筋細胞から誘発され、再構築されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の神経細胞および心筋細胞はまた、たとえば、必要に応じて、細胞を遺伝子操作し、分化させ、遺伝子療法のためのドナーにおける標的部位に細胞または組織を送達することによってヒトの体の様々な部位に送達されることとなる様々な治療上活性な分子または遺伝子のためのキャリアビヒクルとして使用されてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、方法は、神経細胞の実質的に均一な集団を被験体に投与する工程を含み、神経細胞は、本明細書において記載される方法によって作製されたものであるまたは本明細書において記載される方法によって作製される神経細胞の子孫である。特定の実施形態では、神経細胞は、ドーパミン作動性細胞である。他の実施形態では、投与される細胞は、本発明の方法によって作製される心筋細胞である。被験体は、神経系を含む疾患または心血管系を含む疾患を有することが知られているまたは疑われる被験体であってもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、疾患は、神経変性疾患である。治療のために企図される神経変性疾患の非限定的な例は、パーキンソン病、アルツハイマー(Alzeimer)病、多発性硬化症、卒中、筋萎縮性側索硬化症(ルー ゲーリッグ病)、前頭側頭型認知症(ピック病)、プリオン病、ハンチントン病、脳虚血、特発性パーキンソン病、局所的または薬剤誘導性パーキンソン症候群、異なる起源のアルツハイマー病および大脳の認知症症候群、ハンチントン舞踏病、AIDS脳症、クロイツフェルトヤコプ病、麻疹ウイルスおよびヘルペスウイルスによって誘導される脳症、ならびにボレリア症などのような感染誘導性神経変性障害、肝性、アルコール性、低酸素性、低血糖、または高血糖誘導性脳症および溶媒または医薬品によって誘導される脳症などのような代謝毒性神経変性障害、様々な起源の変性網膜障害、外傷誘導性脳および骨髄損傷、脊髄損傷、医薬、毒素、病毒、および薬剤の追加および/または除去後のなどのような、様々な起源の大脳過剰興奮性症状、精神また外傷誘導性大脳過剰興奮性状態、代謝、医薬、毒性、および伝染誘導性多発ニューロパシーおよび多発神経炎などのような末梢神経系の神経変性症候群を含む。特定の実施形態では、疾患は、パーキンソン病である。心血管疾患の非限定的な例は、心筋虚血症、心筋症、うっ血性心不全、および心筋梗塞を含む。
【0040】
本発明の他の態様は、心疾患または心状態を治療するまたは予防するための方法である。心疾患は、典型的に、心機能の低下と関連し、これらに限定されないが、心筋梗塞、心肥大、および心不整脈などのような状態を含む。本発明の本態様では、方法は、本発明の単離された分化心筋細胞の細胞および/または本発明の方法を使用して処理された場合に心筋細胞の細胞に分化することができる細胞を被験体の心組織に導入する工程を含む。単離された分化心筋細胞は、本明細書において記載される方法によって作製される心筋細胞の子孫であってもよい。単離された心筋細胞の細胞は、被験体の損傷した心組織に好ましくは移植される。より好ましくは、方法は、被験体において心機能の回復をもたらす。いくつかの実施形態では、被験体は、虚血性心疾患またはうっ血性心不全を有する被験体である。細胞は、当業者らに公知の任意の方法を使用して投与されてもよい。非限定的な例は、静脈内投与、動脈内投与、および心筋内投与を含む。方法は、任意選択で、心疾患の治療のための1つまたはそれより多くの副次的な形態の療法を実行するまたは投与することを含んでいてもよい。そのような療法の非限定的な例は、下記に議論される。
【0041】
本発明のさらに他の態様では、心組織を修復するための方法であって、本明細書において記載される方法によって作製される、本発明の単離心筋細胞もしくは単離された心前駆細胞または心筋細胞の子孫を被験体の損傷した心組織に導入する工程を含む方法が提供される。
【0042】
本発明の他の態様は、肝疾患または状態を治療するまたは予防するための方法である。治療のために企図される肝疾患の非限定的な例は、肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、肝硬変、肝臓癌、ウィルソン病、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、小胆管の自己免疫疾患、バッド−キアリー症候群、ジルベール症候群、および糖原病II型を含む。
【0043】
細胞は、当業者らに公知の任意の方法を使用して投与されてもよい。非限定的な例は、直接的な注射、皮内、鞘内、心臓内、経皮的、非経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、脳または中枢神経系への注射、経皮的、気管内、腹腔内、灌流、および灌注を含む。特定の実施形態では、パーキンソン病は、黒質緻密部の少なくとも一部分を含む領域にドーパミン作動性ニューロンを注射することによって治療される。
【0044】
疾患を治療する利点があることが公知であるかまたはそのように思われる任意の数の細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約100,000〜約10,000,000の細胞が、用量当たりに投与される。単一の用量が投与されてもよいまたは複数回の用量が投与されてもよい。
【0045】
特定の実施形態における被験体は、哺乳動物被験体である。哺乳動物被験体の非限定的な例は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、雌ウシ、ウマ、霊長動物、およびヒトを含む。特定の実施形態では、被験体は、ヒトである。
【0046】
本発明の一実施形態に関して議論されるあらゆる限定は、本発明の任意の他の実施形態に適用されてもよいことが明確に企図される。さらに、本発明のあらゆる組成物は、本発明のあらゆる方法において使用されてもよく、本発明のあらゆる方法は、本発明のあらゆる組成物を作製するまたは利用するために使用されてもよい。
【0047】
請求項における用語「または」の使用は、選択肢のみを指すようにまたは選択肢が相互に排他的であることが明示的に示されない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は選択肢のみならびに「および/または」を指す定義を支持する。
【0048】
本出願の全体にわたって、用語「約」は、値が、デバイスおよび/または値を決定するために利用される方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0049】
本明細書において使用されるように、「1つの(a)」または「1つの(an)」という指定は、その他に明確に示されない限り、1つまたは複数を意味してもよい。請求項(複数可)において本明細書において使用されるように、語「含むこと」と共に使用される場合、単語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つのまたは1つを超える、を意味してもよい。本明細書において使用されるように、「他の」は、少なくとも第2のまたはそれ以上の、を意味してもよい。
【0050】
本発明の方法、細胞、およびキットのいずれかの任意の実施形態は、記載される特徴および/または工程を含む/含む/含有する/有するではなく、それから成ってもよいまたはそれから本質的に成ってもよい。したがって、請求項のいずれかにおいて、用語「からなる」または「から本質的になる」は、オープンエンド連結動詞を使用して、それがないものから所与の請求項の範囲を変更するために、上記に列挙されるオープンエンド連結動詞のいずれかと置き換えられてもよい。
【0051】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、本発明の精神および範囲内の様々な変化および修飾が、この詳細な説明から当業者らに明らかになるので、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、例証のみのために提供されることが理解されたい。
【0052】
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本発明のある態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書において提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、1つまたはそれより多くのこれらの図面への参照によってより理解されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1A〜D。ESCの亜集団は、神経分化を回避する。ESCは、PA6間質細胞との5日間の共培養によって神経分化にかけた。初期の分化は、最初の5日間で実行された。後期の分化は、細胞解離およびポリオルニチン上での再度の平板培養の後に誘導された。(図1A)初期の分化の間のネスチンおよびベータ−III−チューブリン発現のフローサイトメトリー分析。(図1B)初期の分化の間のネスチンおよびOct−4発現のフローサイトメトリー分析。(図1C)ESCの初期および後期の分化の間のフローサイトメトリーによるCFSE希釈液の分析。(図1D)分化中のESCにおける表現型分析およびCFSE希釈液分析の組み合わせ。CFSE希釈液は、異なる亜集団について異なる時点で評価した:ネスチンポジティブ/ベータ−III−チューブリンネガティブ(神経上皮細胞)、ネスチンネガティブ/ベータ−III−チューブリンポジティブ(ニューロン細胞)、ネスチンネガティブ/ベータ−III−チューブリンネガティブ(非神経細胞)。
【図2】図2A〜E。個々の親ESCから誘導した子孫の変異性。(図2A)1つのコロニーを1つの親ESCから誘導した実験装置において、細胞は、72時間の分化後にネスチンおよびベータ−III−チューブリンについて染色した。(図2B)ESC−Talpha−1−GFPは、72時間、神経分化を受けさせ、緑色蛍光について分析した。(図2C)150のESC誘導コロニーを、NeuNポジティブ(成熟期ニューロン)、THポジティブ(ドーパミン作動性ニューロン)、およびベータ−III−チューブリンポジティブ(ニューロン細胞)細胞の存在または不在について分析した。(図2D)、(図2E)ESC−H2B−mRFP1は、神経分化を受けさせ、最初の2日間、生の画像化によってモニターした。
【図3】図3A〜B。ESC亜系におけるmRNA発現プロファイル。全mRNA発現プロファイルを、個々のクローンESC亜系に対して実行した。(図3A)多能性および/または初期内部細胞塊に関連するmRNAの発現が確立された。(図3B)6800の遺伝子の発現は、ESCクローンの間で著しく変動した。それぞれのクローンの遺伝子発現プロファイルに基づいて、ESCクローンを分類するために階層的クラスターを確立した。2つの最も異なるクローンは、クローン1および2であったが、クローン4および6は非常に類似した。
【図4】図4A〜D。クローンESCは、神経形成性および心臓形成性の分化能を共有しない。(図4A、図4B、図4C)クローンESCは、PA6間質細胞上で共培養によって神経分化を受けさせた。(図4A)ネスチンポジティブ神経上皮細胞を含むコロニーのパーセンテージを3日後に評価した。(図4B、図4C)ベータ−III−チューブリンポジティブニューロン細胞(図4B)または(C)THポジティブドーパミン作動性ニューロンを含むコロニーのパーセンテージを、1週間後に評価した。(図4D)ESCクローン1、2、3、および4は、胚様体に向けて分化した。心臓分化は、異なる時点で、拍動する胚様体のパーセンテージによって評価した。
【図5】図5A〜H。クローンESCは、同じ分化能を共有しない。ESCクローンは、胚様体に向けてインビトロにおいて分化し、異なる組織学的タイプおよび胚葉に特異的な遺伝子の発現について定量的PCRによって評価した。
【図6】図6A〜B。D3 ESC由来のクローン亜系は、細胞の多様性を確認する。全mRNA発現プロファイルを、個々のクローンD3亜系に対して実行した。(図6A)多能性および/または初期内部細胞塊に関連するmRNAの発現が確立された。(図6B)D3亜系は、PA6間質細胞上で共培養によって神経分化を受けさせた。βIII−チューブリン+ニューロン細胞、neuN+成熟ニューロン、およびTH+ドーパミン作動性ニューロンを含むコロニーのパーセンテージは、1週間後に評価した。
【図7】図7A〜B。ベータ−III−チューブリンプロモーターの特異性。(図7A)PA6間質細胞上でのESC−H2B−mRFP1−βIIIp−GFPの1週間の神経分化後の神経細胞におけるネスチンおよび(図7B)ベータ−III−チューブリンに対する免疫蛍光法。
【図8】個々の親ESCから誘導した子孫の系統発生。系統樹は、図2において説明する画像から確立した。系統樹の5つの例を示す。
【図9】クローン1、2、6、および7における未同定誘導染色体(der)の存在。標準的な核型は、継代16で、クローン1、2、6、および7について実行した。染色体をGバンド染色し、数え、高異数倍数性41、XY優勢集団細胞において存在するさらなる染色体が示された()。
【図10】ESCクローン1および2の間で異なって発現される遺伝子の機能的な分類。経路は、MetaCoreを使用して同定した。チャートは、クローン1および2の間で311の異なって発現されたmRNAに基づくものとした。パーセンテージは、GOの割り当てを有する遺伝子の総数と比較した、それぞれの経路において異なって発現された遺伝子の数を指す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
例示的な実施形態の説明
本発明は、結果として生じる細胞集団の不均一性の低下をもたらす、多能性および多分化能性幹細胞からの神経細胞および心筋細胞の、制御された分化プロセスを含む。多能性幹細胞から分化させた細胞の不均一性は、治療上の適用のための細胞調製物の品質および純度を損ない、可能性としてレシピエント被験体にとって危険である。下記の実施例において示されるように、内部細胞塊(ICM)および多能性のマーカーを発現するクローンESC亜系は、樹立され、ある種のクローン亜系は、ある期間にわたって安定した別個の分化能を示すことが観察された。たとえば、外胚葉(たとえばニューロン)、内胚葉(たとえば肝細胞)、または中胚葉(たとえば筋細胞もしくは心筋細胞)の細胞系列への優先的な分化を示す、様々なクローン多能性幹細胞系が、樹立された。現在入手可能であるiPS細胞および/もしくは今後開発され得るiPSを含む誘導多能性幹細胞(iPS)またはESCは、改変された分化能を示すクローン多能性幹細胞系を作製するために使用されてもよい。したがって、本発明は、低下した不均一性およびしたがって、副作用についての可能性の低下と共に治療効果についてのより大きな可能性を有する細胞のクローン集団を提供するための方法を部分的に提供する。様々な実施形態では、本明細書において記載される方法を介して産生されるクローン多能性細胞系に由来する細胞は、試験化合物の薬理学的または毒物学的評価のために使用されてもよい。
【0055】
A.多能性および多分化能性細胞
多能性または多分化能性細胞の集団由来の細胞のクローン集団を提供するための方法は、本発明によって企図される。あらゆる多能性または多分化能性細胞が、本発明の方法において使用するために企図される。多能性幹細胞および多分化能性幹細胞の非限定的な例は、下記に議論される。
【0056】
1.哺乳動物胚性幹細胞
哺乳動物胚性幹(ES)細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来する多能性細胞である。ES細胞は、発生中の胚の外側の栄養外胚葉層を除去し、次いで、非増殖性細胞のフィーダー層上で内部細胞塊を培養することによって単離することができる。適切な条件下で、増殖中の未分化ES細胞のコロニーが作製される。コロニーは、取り出し、個々の細胞に解離し、次いで、新鮮なフィーダー層上で再度平板培養することができる。再度平板培養された細胞は、増殖し続け、未分化ES細胞の新しいコロニーを作製することができる。次いで、新しいコロニーは、取り出し、解離させ、さらに再度平板培養し、成長するのを可能にすることができる。未分化ES細胞を「継代培養する」または「継代する」ためのこのプロセスは、未分化ES細胞を含有する細胞系を作製するために何度も繰り返すことができる(米国特許第5,843,780号;第6,200,806号;第7,029,913号)。「初代細胞培養物」は、胚盤胞の内部細胞塊などのような組織から直接得られた細胞の培養物である。「継代培養物」は、初代細胞培養物に由来する任意の培養物である。
【0057】
マウスES細胞を得るための方法は、周知である。ある方法では、マウスの129株由来の着床前の胚盤胞は、栄養外胚葉を除去するためにマウス抗血清を用いて処理され、内部細胞塊は、ウシ胎児血清を含有する培地において、化学的に不活性化されたマウス胚性線維芽細胞のフィーダー細胞層上で培養される。発生する未分化ES細胞のコロニーは、ES細胞の集団を作製するために、ウシ胎児血清の存在下においてマウス胚性線維芽細胞フィーダー層上で継代培養される。いくつかの方法では、マウスES細胞は、血清含有培養培地にサイトカイン白血病抑制因子(LIF)を追加することによって、フィーダー層の非存在下において成長することができる(Smith、2000年)。他の方法では、マウスES細胞は、骨形成タンパク質およびLIFの存在下において無血清培地において成長することができる(Yingら、2003年)。
【0058】
ヒトのES細胞は、先に記載される方法を使用して、胚盤胞から得ることができる(Thomsonら、1995年;Thomsonら、1998年;ThomsonおよびMarshall、1998年;Reubinoffら、2000年)。ある方法では、5日目のヒト胚盤胞は、ウサギ抗ヒト脾臓細胞抗血清に曝露され、次いで、栄養外胚葉細胞を溶解するためにモルモット補体の1:5希釈液に曝露される。無傷の内部細胞塊から、溶解した栄養外胚葉細胞を除去した後に、内部細胞塊は、ガンマ不活性化マウス胚性線維芽細胞のフィーダー層上でかつウシ胎児血清の存在下において培養される。9〜15日間後に、内部細胞塊に由来する細胞の塊は、化学的に(つまり、トリプシンに曝露)または機械的に解離し、ウシ胎児血清およびマウス胚性線維芽細胞のフィーダー層を含有する新鮮な培地において再度平板培養することができる。さらなる増殖に際して、未分化形態を有するコロニーは、マイクロピペットによって選択され、機械的に解離して塊にし、再度平板培養される(米国特許第6,833,269号を参照されたい)。ES様の形態は、明らかに高い核対細胞質比および顕著な核小体を有する密度の高いコロニーとして特徴付けられる。結果として生じるES細胞は、簡潔なトリプシン処理によってまたはマイクロピペットによる個々のコロニーの選択によってルーチン的に継代することができる。いくつかの方法では、ヒトES細胞は、塩基性線維芽細胞増殖因子の存在下において線維芽細胞のフィーダー層上でES細胞を培養することによって血清を伴うことなく成長させることができる(Amitら、2000年)。他の方法では、ヒトES細胞は、塩基性線維芽細胞増殖因子を含有する「条件」培地の存在下においてMatrigelまたはラミニンなどのようなタンパク質マトリックス上で細胞を培養することによって、フィーダー細胞層を伴うことなく成長させることができる(Xuら、2001年)。培地は、線維芽細胞と共に共培養することによって先に条件付けられる。
【0059】
アカゲザルおよび一般的なマーモセットのES細胞の単離のための方法もまた、公知である(ThomsonおよびMarshall、1998年;Thomsonら、1995年;ThomsonおよびOdorico、2000年)。
【0060】
ES細胞の他の供給源は、樹立ES細胞系である。様々なマウス細胞系およびヒトES細胞系は、公知であり、それらの成長および増殖のための条件は、定義されている。たとえば、マウスCGR8細胞系は、マウス株129胚の内部細胞塊から樹立され、CGR8細胞の培養物は、フィーダー層を伴わないでLIFの存在下において成長することができる。さらなる例として、ヒトES細胞系H1、H7、H9、H13、およびH14は、Thompsonらによって樹立された。さらに、H9系のサブクローンH9.1およびH9.2が開発された。当技術分野において公知の事実上いかなるES細胞系または幹細胞系も、たとえば、参照によって本明細書において組み込まれるYuおよびThompson(2008年)において記載されるものなどのように、本発明と共に使用されてもよいことが予想される。さらなるiPS細胞は、治療上、患者に投与され戻されてもよい細胞を作製するために被験体から樹立されてもよい。iPS細胞は、したがって、テーラーメイド医療のために使用されてもよい。
【0061】
本発明に関連して使用するためのES細胞の供給源は、胚盤胞、胚盤胞の内部細胞塊の培養に由来する細胞、または樹立細胞系の培養物から得られる細胞とすることができる。したがって、本明細書において使用されるように、用語「ES細胞」は、胚盤胞の内部細胞塊の細胞、内部細胞塊の培養物から得られるES細胞、およびES細胞系の培養物から得られるES細胞を指すことができる。
【0062】
多能性細胞は、体のあらゆる細胞に分化することができる。ES細胞の多能性は、様々な方法において決定されてきた(Martin、1982年)。ある試験では、胚盤胞の内部細胞塊に由来するマウスES細胞は、他の胚盤胞の腔に注射される。注射された胚盤胞は、偽妊娠雌マウスの子宮の中に置かれ、注射された胚盤胞細胞およびレシピエント胚盤胞細胞のキメラである子孫を産生する。他の試験では、マウスES細胞は、成体マウスに注射され、奇形腫と呼ばれる腫瘍を産生する。そのような腫瘍は、内胚葉、中胚葉、および外胚葉に由来する様々な細胞型を含有することができる。ある実施形態では、1つまたはそれより多くの奇形腫誘発性の細胞は、培養されてもよいまたは本発明に従って神経細胞もしくは神経系にコミットした細胞に分化できる。ヒトES細胞の多能性はまた、免疫不全マウスにおける奇形腫の形成によって試験することができる。第3の試験は、ES細胞がより特殊化した細胞に分化することを可能にするために培養条件を改変することである。たとえば、マウスES細胞は、フィーダー層を除去し、培養培地にLIFを追加することによって、様々な細胞型に自発的に分化することができる。同様に、ヒトES細胞は、フィーダー層を除去し、浮遊液において非接着性表面上でES細胞を成長させることによって自発的に分化することができる(Itskovitz−Eldorら、2000年;Reubinoffら、2000年;Roachら、1993年)。そのような条件下で、ES細胞は、ニューロンおよび心筋細胞の特徴を有する細胞を含有する胚様体と呼ばれる細胞凝集塊を形成することができる。これらの試験のすべてにおいて、ES細胞の多能性は、内胚葉、中胚葉、および外胚葉起源の細胞を生成するそれらの能力によって示される。
【0063】
ES細胞は、それらが産生するタンパク質によって特徴付けることができる。たとえば、以下のマーカータンパク質は、ES細胞を特徴付けるために使用されてきた:段階特異的胚抗原SSEA−1、段階特異的胚抗原SSEA−3、段階特異的胚抗原SSEA−4、腫瘍拒絶抗原−1−60(TRA1−60)、腫瘍拒絶抗原−1−81(TRA1−81)、アルカリホスファターゼ(AP)、および転写因子Oct−4。表1において示されるように、マウス、ヒト、および霊長動物細胞は、これらのマーカーの発現のそれらのパターンにおいて異なる。たとえば、SSEA−1は、ヒトまたはサルES細胞ではなく、マウスES細胞において発現されるが、TRA1−60は、マウスES細胞ではなく、ヒトおよびサルES細胞において発現される。
【0064】
【表1】

培養条件に依存して、ES細胞は、分化細胞または未分化細胞のコロニーを産生することができる。用語「分化する」は、発生経路に沿った細胞の進行を意味する。用語「分化した」は、他の細胞と比較した、発生経路に沿った細胞の進行を説明する相対的な用語である。たとえば、多能性細胞は、体のあらゆる細胞を誘発することができるが、造血細胞などのようなより分化した細胞は、より少ない細胞型を誘発する。本明細書において使用されるように、「未分化ES細胞」は、より特殊化した細胞の特徴を示さないES細胞を指す。
【0065】
2.誘導多能性幹細胞
誘導多能性幹(iPS)細胞は、ES細胞の特徴を有するが、分化体細胞の再プログラムによって得られる細胞である。誘導多能性幹細胞は、様々な方法によって得られてきた。ある方法では、成体ヒト皮膚線維芽細胞は、レトロウイルス形質導入を使用し、転写因子Oct3/4、Sox2、c−Myc、およびKlf4を用いてトランスフェクトされる(Takahashiら、2007年)。トランスフェクトされた細胞は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を補足した培地において、SNLフィーダー細胞(LIFを産生するマウス細胞線維芽細胞細胞系)上で平板培養される。およそ25日間後に、ヒトES細胞コロニーに類似するコロニーが、培養中に現れる。ES細胞様のコロニーは、採集され、bFGFの存在下においてフィーダー細胞上で増幅される。細胞の特徴に基づいて、ES細胞様のコロニーの細胞は、誘導多能性幹細胞である。誘導多能性幹細胞は、ヒトES細胞に形態学的に類似し、様々なヒトES細胞マーカーを発現する。また、ヒトES細胞の分化をもたらすことが公知の条件下で成長させた場合、誘導多能性幹細胞は、その結果、分化する。たとえば、誘導多能性幹細胞は、ニューロン構造物およびニューロンマーカーを有する細胞に分化することができる。事実上いかなるiPS細胞またはiPS細胞系も、たとえば、YuおよびThompson (2008年)において記載されるもの含めて、本発明と共に使用されてもよいことが予想される。
【0066】
他の方法では、ヒト胎児線維芽細胞またはヒト新生児線維芽細胞は、レンチウイルス形質導入を使用し、4つの遺伝子、Oct4、Sox2、Nanog、およびLin28を用いてトランスフェクトされる(Yuら、2007年)。感染の12〜20日後に、ヒトES細胞形態を有するコロニーが、見て明らかになる。コロニーは、採集され、増幅される。コロニーを構成する誘導多能性幹細胞は、ヒトES細胞に形態学的に類似し、様々なヒトES細胞マーカーを発現し、マウスへの注射後に、神経組織、軟骨、および腸上皮を有する奇形腫を形成する。
【0067】
マウス由来の誘導多能性幹細胞を調製するための方法もまた、知られている(TakahashiおよびYamanaka、2006年)。iPS細胞の誘導は、典型的に、Soxファミリー由来の少なくとも1つのメンバーおよびOctファミリー由来の少なくとも1つのメンバーの発現またはそれへの曝露を必要とする。SoxおよびOctは、ES細胞の独自性を特定する転写調節階層の中心となると考えられる。たとえば、Soxは、Sox−1、Sox−2、Sox−3、Sox−15、またはSox−18であってもよく、Octは、Oct−4であってもよい。さらなる因子は、Nanog、Lin28、Klf4、またはc−Mycのように、再プログラム効率を増加させてもよく、再プログラム因子の特定のセットは、Sox−2、Oct−4、Nanog、および任意選択でLin−28を含むまたはSox−2、Oct4、Klf4、および任意選択でc−Mycを含むセットであってもよい。様々な実施形態では、Oct−4、Nanog、Klf−4、およびSox−2は、ESCの多能性を誘導するおよび/または維持するために使用されてもよい。
【0068】
3.体細胞核移植によって誘導される胚性幹細胞
ある実施形態では、多能性幹細胞は、体細胞核移植によって誘発される胚性幹細胞である。体細胞核移植では、ドナー核は、紡錘体なしの卵母細胞の中に移される。核移植によって産生される幹細胞は、ドナー核と遺伝子的に同一である。ある方法では、アカゲザルの皮膚線維芽細胞由来のドナー線維芽細胞核は、電気融合によって、紡錘体なしの成熟中期IIアカゲザル卵母細胞の細胞質の中に導入される(Byrneら、2007年)。融合された卵母細胞は、イオノマイシンへの曝露によって活性化され、次いで、胚盤胞段階までインキュベートされる。選択された胚盤胞の内部細胞塊は、次いで、培養され、胚性幹細胞系を産生する。胚性幹細胞系は、通常のES細胞形態を示し、様々なES細胞マーカーを発現し、インビトロまたin vivoにおいて複数の細胞型に分化する。本明細書において使用されるように、用語「ES細胞」は、受精核を含有する胚に由来する胚性幹細胞を指す。ES細胞は、「体細胞核移植によって誘導される胚性幹細胞」と呼ばれる、核移植によって産生される胚性幹細胞と区別される。
4.神経幹細胞
神経幹細胞は、神経幹細胞(自己再生が可能)または神経細胞に最終的に分化するであろう細胞を誘発することができる、神経組織由来の未分化細胞である。神経幹細胞は、成体神経幹細胞または胚性神経幹細胞とすることができる。本明細書において使用されるように、用語「成体」神経幹細胞は、成体または小児由来かどうかに関わらず体細胞組織に由来する幹細胞を指す。ヒトおよび他の動物由来の成体および胚性神経幹細胞を単離するための方法は、周知である(RietzeおよびReynolds、2006年;Svendsenら、1999年)。
【0069】
B.細胞培養
1.一般の細胞培養
当業者らに公知の多能性幹細胞および多分化能性幹細胞を培養するための任意の方法が、本発明の方法における包含のために企図される。細胞生物学、組織培養、および発生学における標準的な教科書および概説は、すべて、参照によって本明細書において組み込まれるTeratocarcinomas and embryonic stem cells: A practical approach (1987年);Guide to Techniques in Mouse Development (1993年);Embryonic Stem Cell Differentiation インビトロ (1993年);Properties and uses of Embryonic Stem Cells: Prospects for Application to Human Biology and Gene Therapy (1998年)を含む。
【0070】
組織培養において一般に使用される標準的な方法は、Animal Cell Culture (1987年);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (1987年);およびCurrent Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology (1987年&1995年)において記載されている。
【0071】
2.増殖培地
幹細胞培養のための様々な培地および培養条件が、当技術分野において公知である。ある態様では、細胞は、線維芽細胞などのようなフィーダー細胞を用いてまたは線維芽細胞条件培地において成長させてもよい。しかしながら、いくつかの実例では、幹細胞は、フィーダー細胞の非存在下において成長させることが好ましいことがある。いくつかの態様では、細胞は、TeSRなどのような限定培地(たとえば、BD Biosciencesから入手可能なMTESR.TM.1)において成長させてもよい(Ludwigら、2006a、米国特許出願第2006/0084168号)。そのような培地は、ES細胞の無血清培養のために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、培地は、必要な増殖因子を供給するために、ウシまたはヒト血清を補足される(Ludwigら、2006b)。
【0072】
たとえば、培養培地は,DMEM、RPMI 1640、GMEM、またはneurobasal培地とすることができる。培養培地は、血清を含有することができるまたは無血清培地とすることができる。無血清培地は、外因性の増殖因子の追加を伴うことなく使用することができるまたは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、インスリン様増殖因子−2(IGF−2)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子8(FGF8)、ソニックヘッジホッグ(Shh)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、またはビタミンCなどのような増殖因子を補足することができる。非接着性表面は、低接着組織培養プラスチックとすることができる。
【0073】
第1の工程でのように、第2の工程の培養培地は、多能性幹細胞または神経幹細胞の成長を支持する任意の培地とすることができる。培地は、血清を含有することができるまたは増殖因子の追加を伴ってもしくは伴わないで、無血清培地とすることができる。同様に、細胞は、非接着性組織培養表面上で浮遊液において成長させることができる。
【0074】
本発明のさらなる態様では、さらなる培地成分は、細胞が分離されるようになる場合(たとえば細胞集団の分割の間に)、幹細胞アポトーシスを低下させる分子などのように、幹細胞増殖培地中に含まれていてもよい。たとえば、培地は、Y−27632またはその誘導体などのような、1つまたはそれより多くのRho関連キナーゼ(ROCK)阻害剤を含んでいてもよい。いくつかの態様では、本発明の培地は、HA−100またはその誘導体を含んでいてもよい。幹細胞増殖培地中に含まれていてもよい他のROCK阻害剤は、H−1152((S)−(+)−2−メチル−1−[(4−メチル−5−イソキノリニル)スルホニル]ホモピペラジン)を含む。H−1152は、HA−100よりもおよそ10倍大きな効力を示す。したがって、H−1152は、たとえば、約0.1〜10μΜ、約0.5〜5μΜ、約1〜3μΜ、または約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、もしくは5μΜまたはその中で推論できる任意の範囲の濃度でES細胞成長培地中に存在してもよい。ある実施形態では、HA−100は、約1μΜで、ES細胞増殖培地中に存在する。H−1152は、96ウェルプレートにおける、個別化されたヒトES細胞の非常に効率的な接種を可能にする(HA−100と同様であるが、10分の1の濃度で)。他の場合には細胞集団で継代される個別化されたHES細胞は、ウェル当たりより一定の細胞密度を可能にし、これは、細胞ベースの小分子スクリーニングのためのストリンジェントな必要条件となる。H−1152は、したがって、本発明に従って、自動細胞培養を含む、ES細胞ベースの小分子スクリーニングのためのプロトコールにおいて使用することができる。H−1152は、たとえば、参照によって本明細書において組み込まれるIkenoyaら (2002年)およびSasakiら (2002年)において先に記載されている。
【0075】
ES細胞増殖培地中に含まれていてもよい他のROCK阻害剤は、Y−27632、N−(4−ピリジル)−N’−(2,4,6−トリクロロフェニル)尿素、3−(4−ピリジル)−1H−インドール、グリシル−H1152((S)−(+)−2−メチル−4−グリシル−1−(4−メチルイソキノリニル−5−スルホニル)ホモピペラジン)、および/またはHA1100(ヒドロキシファスジル(Hydroxyfausdil))を含む。Y−27632((R)−(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−N−(4−ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)は、Sigma−Aldrichから市販で入手可能であり、先に記載されている(たとえばMaekawaら、1999年;Daviesら、2000年を参照されたい)。
【0076】
3.細胞培養装置、系、および方法
いくつかの態様では、本発明は、バイオリアクター技術を利用してもよい。バイオリアクターにおける細胞の成長は、最終用途用にさらなる分化が可能な、十分に生物学的に活性な細胞の大規模生産を可能にする。バイオリアクターは、浮遊および足場依存性動物細胞培養の両方からの生物学的産物の生産のために広く使用されてきた。撹拌タンクバイオリアクターにおけるマイクロキャリア細胞培養は、非常に高度な体積特有の培養表面積を提供し、ウイルスワクチンの生産のために使用されてきた(Griffiths、1986年)。さらに、撹拌タンクバイオリアクターは、計量可能であることが産業的に証明されているが、そのような技術は、細胞が足場非依存性培養において成長し得る場合のみ、利用されてもよい。Corning−Costarによって製造されるマルチプレートCELLCUBE(商標)細胞培養システムもまた、非常に高度な体積特有の培養表面積を提供する。細胞は、コンパクトな立方体の形状をした、相互に密閉し合った培養プレートの両側で成長する。撹拌タンクバイオリアクターと異なり、CELLCUBE(商標)培養ユニットは、使い捨てである。これは、使い捨てのシステムと関連する資本支出、品質管理、および品質保証の費用が削減されるために、臨床上の産物の早期の生産に非常に望ましい。
【0077】
a.非灌流接着システム
従来より、足場依存性細胞培養物は、本明細書において記載されるように、小さなガラスまたはプラスチック容器の底で増殖させる。実験室規模に適している、典型的な従来の技術によって提供される制限された表面積対体積比は、大規模な細胞および細胞産物の生産においてボトルネックを引き起こした。小さな培養体積における細胞増殖のために大きな接触可能表面を提供するシステムを提供するための試みでは、多くの技術が提案されてきた:ローラーボトルシステム、スタックプレートプロパゲーター、スパイラルフィルムボトルシステム、中空繊維システム、充填ベッド、プレートエクスチェンジャーシステム、および膜チュービングリール。これらのシステムがそれらの性質において不均一であり、時に複数のプロセスに基づくので、それらは、以下の、スケールアップのための可能性の欠点による制限、細胞試料を採取する際の困難さ、重要なプロセスパラメーターを測定し、制御する可能性の制限、および培養の全体にわたって均一な環境条件を維持する際の困難さの影響を受ける。
【0078】
これらの短所にもかかわらず、大規模足場依存性細胞生産のための一般に使用されるプロセスは、ローラーボトルである。大きな、異なった形状のT型フラスコと大差ないので、システムの単純性は、それを非常に信頼できるものにし、よって魅力的なものにする。1日当たり何千ものローラーボトルを操作し、したがって、他の場合に必要とされる極度の人間の操作と関連する混入の危険性および不整合性を排除することができる完全自動ロボットが、利用可能である。
【0079】
b.マイクロキャリア上での培養
従来の足場依存性培養プロセスの欠点を克服するために、van Wezel (1967年)は、マイクロキャリア培養システムの概念を開発した。このシステムでは、細胞は、ゆっくりとした撹拌によって増殖培地中に浮遊させた小さな固体粒子の表面上で増殖させる。細胞は、マイクロキャリアに接着し、マイクロキャリア表面上で培養密度まで徐々に成長する。実際、この大規模培養システムは、単一ディスクプロセスから単層培養および浮遊培養の両方が統合された単位プロセスに、接着依存性の培養を改良する。したがって、細胞が成長するのに必要な表面を均一な浮遊培養の利点と組み合わせることにより、生産を増加させる。
【0080】
ほとんどの他の足場依存性大規模培養方法に対するマイクロキャリア培養の利点は、数倍となる。第1に、マイクロキャリア培養は、高度な細胞密度収率および高度に濃縮された細胞産物を得る可能性を導く高度な表面積対体積比(キャリア濃度を変化させることによって可変)を提供する。培養物を灌流リアクターモードにおいて増殖させた場合、細胞収率は、1〜2*10細胞/mlとなる。第2に、細胞は、多くの小さな低生産性容器(つまりフラスコまたは皿)を使用する代わりに、1つの単位プロセス容器において増殖させることができる。これは、はるかによりよい栄養素利用率および培養培地の相当な節約をもたらす。さらに、単一のリアクターにおける増殖は、設備スペースの必要性および細胞当たりに必要とされる操作工程の数の削減を導き、したがって、労務費および混入の危険性を削減する。第3に、十分に混合される、均一なマイクロキャリア浮遊培養は、環境条件(たとえば、培地成分のpH、pO、および濃度)をモニターし、かつ制御するのを可能にし、したがって、より再現可能な細胞増殖および産物回収を導く。第4に、顕微鏡観察、化学分析、または計数のために代表試料を採取することが可能である。第5に、マイクロキャリアが、浮遊液から速やかに沈降するので、流加プロセスの使用または細胞の採取は、比較的容易に行うことができる。第6に、マイクロキャリア上での足場依存性培養増殖のモードは、このシステムを、タンパク質分解酵素の使用を伴わない細胞の移動、細胞の共培養、動物への移植、およびマイクロキャリア保持のためにデカンター、カラム、流動層、または中空繊維を使用する培養物の灌流などのような他の細胞の操作のために使用することを可能にする。第7に、マイクロキャリア培養は、浮遊液中での微生物および動物細胞の培養のために使用される従来の設備を使用して、比較的容易にスケールアップされる。
【0081】
c.哺乳動物細胞のマイクロカプセル化
哺乳動物細胞を培養するのに特に有用であることが示された1つの方法は、マイクロカプセル化である。哺乳動物細胞は、半透性ヒドロゲル膜の内部で保持される。多孔質膜は、細胞のまわりに形成され、カプセルを囲む大量の培地を用いる、栄養素、ガス、および代謝産物の交換を可能にする。緩やかで、迅速で、無毒性であるいくつかの方法が、開発されてきており、結果として生じる膜は、培養の期間を通じて、成長している細胞集団を保持するのに十分に多孔質であり、強い。これらの方法はすべて、カルシウム含有溶液との液滴接触によってゲル化される可溶性アルジネートに基づく。Lim(1982年、参照によって本明細書において組み込まれる米国特許第4,352,883号)は、押し出されて、小さな開口部を通り、液滴を形成し、およそ1%の塩化カルシウム溶液の中に遊離する、アルギン酸ナトリウムのおよそ1%の溶液中で濃縮された細胞を記載する。次いで、液滴は、表面のアルジネートにイオン結合するポリアミノ酸の層に流し込まれる。最後に、アルジネートは、カルシウムイオンを除去するためにキレート剤中で液滴を処理することによって再液化される。他の方法は、アルジネート溶液の中に滴下され、したがって、中空のアルジネート球体を生成することとなるカルシウム溶液中の細胞を使用する。同様のアプローチは、アルジネートの中に滴下され、これもまた中空の球体を生成する、キトサン溶液中の細胞を含む。
【0082】
マイクロカプセル化された細胞は、撹拌タンクリアクター中で、直径が150〜1500μmの範囲のビーズサイズで容易に増殖され、細かい網状のスクリーニングを使用して、灌流リアクター中で容易に保持される。総培地体積に対するカプセル体積の比は、1:2〜1:10ほど密に維持することができる。10までの被膜内の細胞密度と共に、培養において有効な細胞密度は、1〜5*10である。
【0083】
他のプロセスに対するマイクロカプセル化の利点は、スパージングおよび撹拌から生じるずり応力の有害作用からの保護、灌流システムを使用する目的のためにビーズを容易に保持する能力、スケールアップが比較的簡単であること、ならびにビーズを埋め込みのために使用する能力を含む。
【0084】
d.灌流接着システム
灌流接着システムもまた、本発明の方法において使用するために企図される。灌流は、(生理的な栄養液の、)細胞の集団を通るまたはそれに対する、安定した速度での連続流動を指す。それは、回収された培地を用いて細胞を洗浄する連続流動培養とは対照的に、培養単位の範囲内での細胞の保持を包含する(たとえばケモスタット)。灌流についての考えは、今世紀の始めから公知であり、顕微鏡観察の延長のために、組織の小片を生存可能に保つために適用されてきた。この技術は、血液、リンパ液、または他の体液が継続的に細胞に供給されるin vivoにおける細胞環境を模倣するために始められた。灌流を伴うことなく、培養中の細胞は、供給および欠乏の交互のフェーズを通り抜け、したがって、それらの成長および代謝潜在能力の完全な発現を制限する。
【0085】
灌流培養の現行の使用は、高密度(つまり0.1〜5*10細胞/ml)で成長している細胞についての課題に応じるものである。2〜4*10細胞/ml超に密度を増加させるために、培地は、栄養不足を補い、毒性産物を除去するために、新鮮な供給物と絶えず交換しなければならない。灌流は、培養環境(pH、pO、栄養素レベルなど)のはるかによい制御を可能にし、細胞接着のための培養物内で表面積の利用率を著しく増加させる手段である。
【0086】
不織布のベッドマトリックスを使用する灌流充填ベッドリアクターの開発は、10細胞/ベッド体積mlを超過する密度で灌流培養物を維持するための手段を提供した(CELLIGEN(商標)、New Brunswick Scientific、Edison、N.J.)。概説すると、このリアクターは、足場依存性細胞および非足場依存性細胞の両方の培養のために改善されたリアクターを含む。リアクターは、内部の再循環を提供するための手段を有する充填ベッドとして設計されている。好ましくは、繊維マトリックスキャリアは、リアクター容器内のバスケット中に配置される。バスケットの上部および底部は、穴を有し、培地がバスケットを通って流れることを可能にする。特別に設計されたインペラーは、栄養素の一定の供給および廃棄物の除去を確実にするために、繊維マトリックスによって占められるスペースを通る培地の再循環を提供する。これは、同時に、無視できる量の総細胞集団が培地中に浮遊することを確実にする。バスケットおよび再循環の組み合わせはまた、繊維マトリックスを通る、酸素で処理された培地の泡のない流れを提供する。繊維マトリックスは、直径10μm〜100μmの「細孔」を有する不織布であり、個々の細胞の体積の1〜20倍に対応する細孔体積と共に高度な内部体積を提供する。
【0087】
他の培養システムと比較して、このアプローチは、いくつかの著しい長所を有する。繊維マトリックスキャリアにより、細胞は、撹拌および発泡からの機械的ストレスから保護される。バスケットを通る自由な培地の流れは、最適に調節されたレベルの酸素、pH、および栄養素を細胞に提供する。産物は、継続的に培養物から取り出すことができ、採取された産物は、細胞がなく、続く精製工程を促進する低タンパク質培地中で作製することができる。また、このリアクターシステムの特有のデザインは、リアクターをスケールアップするためのより容易な方法を提供する。現在、30リットルまでのサイズが、利用可能である。100リットルおよび300リットルのバージョンは、開発中であり、理論的な計算は、1000リットルのリアクターまでを支持する。この技術は、WO 94/17178において詳細に説明される(1994年8月4日、Freedmanら、その全体が参照によってこれによって組み込まれる)。
【0088】
CELLCUBE(商標)(Corning−Costar)モジュールは、基体に接着した細胞の固定および成長のための大きなスチレン表面積を供給する。それは、隣接するプレートの間に薄い密閉された層流スペースを生み出すためにつながれた一連の並列の培養プレートを有する、全体にカプセル化された無菌で使い捨てのデバイスである。
【0089】
CELLCUBE(商標)モジュールは、対角線上に互いに向き合い、培地の流れを調節するのを助ける入口および出口のポートを有する。成長の最初の数日の間に、培養物は、最初の接種後にシステム内に含有される培地によって一般に満たされる。最初の接種および培地灌流の開始の間の時間は、接種する接種材料中の細胞の密度および細胞増殖速度に依存する。循環培地における栄養素濃度の測定値は、培養物のステータスの好適な指標となる。手順を確立する場合、最も経済的で生産的なオペレーティングパラメーターを決定するために、様々な異なる灌流量で栄養素組成をモニターすることが必要となり得る。
【0090】
システム内の細胞は、従来の培養システムよりも高度な密度の溶液(細胞/ml)に達する。多くの典型的に使用される基本培地は、1〜2*10細胞/ml/日を支持するように設計される。85,000cm表面により実行される代表的なCELLCUBE(商標)は、モジュール内におよそ6Lの培地を含有する。細胞密度は、培養容器中で10細胞/mLを超過することが多い。コンフルエンスでは、培地の2〜4リアクター分の体積が1日当たりに必要とされる。
【0091】
e.ES細胞の自動増幅のための装置/システム
本発明のある態様は、ES細胞などのような多能性または多分化能性細胞の自動増幅のための装置またはシステムを含む。例示的なデバイスは、生存可能なES細胞集団、インキュベーターと流体連結している液体ハンドラーユニット、および細胞分離のためのオペレーティングプログラムを含むコントローラーを含むことができる。
【0092】
本発明の装置において使用されるES細胞集団は、当業者らに公知の任意の供給源由来のES細胞集団を含んでいてもよい。たとえば、ヒトESCなどのような胚性幹細胞を得るための方法は、米国特許第5,843,780号、第6,200,806号、および第7,029,913号において先に記載されている。本明細書において使用される装置という用語は、単一のハウジングのデバイスに限定されず、たとえば電気的な、機械的な、または他の接続メカニズムを介して相互に連結される複数のデバイスを含んでいてもよいことが理解される。
【0093】
様々なタイプの液体ハンドラーユニットが、市販で入手可能であり、たとえば、ある態様では、液体ハンドラーは、Hamilton MICROLAB(登録商標) STARワークステーションまたはBeckman Coulter BIOMEK(登録商標) 2000液体ハンドラー(B2K)などのようなロボットハンドラーであってもよい。ロボット液体ハンドラーに関して、米国特許第6,325,114号もまた、参照されたい。さらに他の態様では、液体ハンドラーは、ロボットアームを含まないが、むしろ、流体またはマイクロ流体液体ハンドラーなどのような、バルブの衝動作用および圧力勾配の適用によって液体を移動させるデバイスであってもよい。
【0094】
多くのインキュベーターは、当技術分野において公知であり、本発明の実施形態に従って使用されてもよい。たとえば、ある実施形態では、インキュベーターは、Kendro CYTOMAT(商標)インキュベーターであってもよい。
【0095】
さらに、本発明のある実施形態における細胞増幅装置およびシステムは、幹細胞増幅の制御のためのコントローラーを含んでいてもよい。そのようなプログラムは、液体ハンドラーユニット、流体連結デバイス、および/またはインキュベーターと電子通信していてもよい。当業者は、ある態様では、オペレーティング装置またはシステムは、コンピューターまたはコンピューター読み取り可能な媒体中に含まれてもよいことを認識するであろう。
【0096】
十分に理解されるように、オペレーティング装置は、コンピューター自動化の手段によって達成されてもよく、それによって、オペレーティング装置は、本発明のある実施形態を構成する様々なハードウェアデバイスに指示し、それを制御する。ハードウェアエレメントの統合を達成するために利用されてもよい例示的なオペレーティングプログラムは、OVERLORD(商標)統合ソフトウェアプログラム(Biosero, Inc.)であり、これは、機器の間の連絡を設定するために、単純なドラッグアンドドロップシステムを使用する。ソフトウェアはまた、数値変数および文字列変数、条件文、ならびにコントロールループなどのような一連のプログラムエレメントを可能にする。
【0097】
任意選択で、本発明による装置は、インキュベーターおよび液体ハンドラーユニットの間の流体連結を促進する流体連結デバイスを含んでいてもよい。たとえば、液体ハンドラーがロボットハンドラーである場合では、流体連結デバイスは、液体ハンドラーユニットおよびインキュベーターの間で細胞のプレートを移動させるデバイスなどのようなロボットデバイスであってもよい。たとえば、ロボットデバイスは、Hudson Platecrane XLであってもよい。
【0098】
さらに、多能性またはES細胞の増幅システムは、液体ハンドラーユニットのための試薬を含む、1つまたはそれより多くのレザバーを含んでいてもよい。たとえば、レザバーは、プロテイナーゼ阻害剤を有するまたは有していない細胞増殖培地;細胞培養プレート;タンパク質分解酵素溶液;リン酸緩衝生理食塩水(PBS);および/またはピペットチップを含んでいてもよい。ある態様では、さらなるロボットデバイスは、液体ハンドラーデバイスおよびレザバーの間の連絡を促進するために使用されてもよい。ある実施形態では、レザバーは、任意選択でROCK阻害剤および/またはダイズトリプシン阻害剤などのようなプロテアーゼ阻害剤と共に、TeSR培地を含有していてもよい。他の実施形態では、レザバーは、タンパク質分解酵素(たとえばトリプシン、EDTAなど)を含む溶液を含有していてもよい。
【0099】
いくつかの態様では、Beckman Coulter Stacker Carouselは、レザバー(たとえばプレートまたはピペットレザバー)および液体ハンドラーデバイスの間の連絡を促進するために使用されてもよい。レザバーは、冷蔵庫などのような温度制御ユニット中に収容されてもよい。温度制御ユニットは、所望の温度(たとえば約37℃)まで溶液を予熱するために任意選択で加熱ユニットを含んでいてもよいが、本発明者らは、加熱ユニットが、単純な冷蔵庫のように、ある実施形態では必要ではないことを発見した。
【0100】
4.集団からの個々細胞の単離
本発明の方法のある実施形態は、細胞の集団からの細胞の選択を含む。当業者らに公知のあらゆる方法は、細胞の集団から個々の細胞を単離するための方法として企図される。いくつかの実施形態では、フローサイトメトリーセルソーターを使用する典型的限界希釈アッセイ(96ウェルプレートにおいて)は、集団から個々の細胞を単離するために利用される。
【0101】
多くのセルソーティング技術は、非心筋細胞系列細胞から心筋細胞系列細胞をソートするために利用可能である。それらのセルソーティング技術は、ネガティブ免疫選択およびポジティブ免疫選択を含むが、これらに限定されない。
【0102】
免疫選択は、選択システムの特異性が、抗体またはレクチンもしくはハプテンなどのような抗体様の分子によって与えられる様々な技術を包含する総称である。そのような特異性の例は、特異的な細胞表面抗原に対する抗体の親和性である。一般的な2つのタイプの免疫選択技術が、実施される。ネガティブ免疫選択は、本明細書における方法による、霊長動物多能性幹細胞の分化に起因する細胞集団からの非心筋細胞系列細胞の排除などのような、不均一な集団からの成分の特異的な亜集団の排除を含む。対照的に、ポジティブ免疫選択は、本明細書における方法による、霊長動物多能性幹細胞の分化に由来する心筋細胞系列細胞の直接的な選択および回収などのような、特異的な成分の直接的な選択および回収を指す。フローサイトメトリー(FACS)、免疫磁気技術、抗体カラム、免疫沈降、およびイムノパニングを含むが、これらに限定されない様々なタイプの免疫選択は、本発明の実施において使用されてもよい。
【0103】
5.未分化の状態の維持
多能性および多分化能性細胞は、当業者らに公知の任意の方法によって未分化の状態で維持することができる。たとえば、未分化の状態は、血清およびフィーダー層の存在下において細胞を培養することによって維持されてもよい。たとえば、フィーダー層は、マウス胚性線維芽細胞であってもよい。未分化の状態において幹細胞を維持する他の方法もまた、公知である。たとえば、マウスES細胞は、フィーダー層を伴わないでLIFの存在下において培養することによって、未分化の状態で維持することができる。しかしながら、マウスES細胞と異なり、ヒトES細胞は、LIFに応答しない。ヒトES細胞は、塩基性線維芽細胞増殖因子の存在下において線維芽細胞のフィーダー層上でES細胞を培養することによって(Amitら、2000年)またはフィーダー層を伴うことなくかつ線維芽細胞条件培地および塩基性線維芽細胞増殖因子の存在下においてMatrigelもしくはラミニンなどのようなタンパク質マトリックス上で培養することによって(Xuら、2001年;米国特許第6,833,269号)、未分化の状態で維持することができる。
【0104】
多能性または多分化能性細胞の培養物は、集団における幹細胞およびそれらの誘導体の実質的な割合が、未分化の細胞の形態学的特質を示す場合、「未分化の」として記載され、胚または成体の起源の分化した細胞をそれらと明確に区別する。未分化のES細胞は、当業者らによって認識され、高度な核/細胞質比および顕著な核小体を有する細胞のコロニーにおいて二次元の顕微鏡視野に典型的に現れる。未分化の細胞のコロニーは、分化した隣接する細胞を有することができることが理解される。
【0105】
C.幹細胞の分化
ヒト胚性幹細胞(hES)などのような幹細胞および好ましくは分化因子(複数可)を提供する任意の細胞は、インビトロにおいて共培養される。これは、好ましくは、培養における胚細胞の増殖によって産生される胚細胞単層にhES細胞を導入することを含む。胚細胞単層は、実質的なコンフルエンスまで成長させてもよく、幹細胞の特異的な細胞型への分化を誘導するのに十分な期間、胚細胞の細胞外培地の存在下において幹細胞を成長させる。その代わりに、幹細胞は、胚細胞(複数可)の存在下ではなく、胚細胞(複数可)の細胞外培地を含有する培養において成長させてもよい。胚細胞および幹細胞は、フィルターまたは寒天などのような無細胞マトリックスによって互いに分離されてもよい。
【0106】
幹細胞の分化のために、幹細胞は、胚細胞の単層上で平板培養され、幹細胞の分化を誘導するための培養において成長させてもよい。しかしながら、本発明の目的のために、幹細胞は、当業者らに公知の任意の方法によって、心筋細胞および心性前駆細胞に分化されてもよい。たとえば、アスコルビン酸は、分化を増強するために追加することができる。
【0107】
幹細胞成長のための最適条件からの段階的な離脱は、特異的な細胞型への幹細胞の分化を促進する。適した培養条件は、分化速度および/または効率を増加させることができる共培養におけるDMSO、レチノイン酸、FGF、またはBMPの追加を含んでいてもよい。
【0108】
胚細胞層の細胞密度は、典型的に、その安定性および性能に影響する。hES細胞の心筋細胞分化を増強するための細胞培養培地は、アスコルビン酸またはその誘導体もしくは機能的等価物を含んでいてもよい。培地の濃度は、好ましくは、hES細胞にアスコルビン酸、その誘導体、または機能的等価物を送達するのに適した濃度である。濃度は、10−3M〜10−5Mの範囲であってもよい。より好ましくは、濃度は、10−4Mである。あらゆるタイプの培養培地が、適しているが、それがhES細胞を培養するのに適していることを条件とする。
【0109】
細胞培養培地は、無血清であってもよい。しかしながら、様々な濃度の血清が許容され、20%〜0%の範囲であってもよい。血清濃度はまた、20%、10%、5%、2.5%、および0%を含む群から選択される濃度で提供されてもよい。
【0110】
本発明に従って、分化作用物質への未分化の哺乳動物幹細胞の曝露が、実行される。未分化幹細胞は、分化作用物質の存在下において一時、培養することができ、次いで、分化作用物質の非存在下において増殖させる。分化作用物質への曝露の結果が神経細胞、肝細胞、または心筋細胞への幹細胞の分化である限り、様々なこの基本的な手順が企図される。たとえば、第1の工程において、未分化幹細胞は、分化作用物質の存在下において非接着性表面上で浮遊液中で培養することができる。第2の工程において、適切な時間、分化作用物質に幹細胞を曝露させた後に、細胞は、新鮮な培養培地と共に、分化作用物質の存在において、非接着性表面上で、浮遊液中で培養することができる。第3の工程において、曝露させた細胞は、分化作用物質の非存在下において平板培養し、成長させることができる。細胞が約80〜90%の培養密度に達した場合、増殖中の細胞は、分割し、継代することができる。
【0111】
第1の工程において、培養培地は、幹細胞の生存および成長を支持する任意の培地とすることができる。たとえば、培養培地は,DMEM、RPMI 1640、GMEM、またはneurobasal培地とすることができる。培養培地は、血清を含有することができるまたは無血清培地とすることができる。無血清培地は、外因性の増殖因子の追加を伴うことなく使用することができるまたは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、インスリン様増殖因子−2(IGF−2)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子8(FGF8)、ソニックヘッジホッグ(Shh)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、またはビタミンCなどのような増殖因子を補足することができる。非接着性表面は、低接着組織培養プラスチックとすることができる。
【0112】
第1の工程でのように、第2の工程の培養培地は、幹細胞の成長を支持する任意の培地とすることができる。培地は、血清を含有することができるまたは増殖因子の追加を伴ってもしくは伴わないで、無血清培地とすることができる。同様に、細胞は、非接着性組織培養表面上で浮遊液において成長させることができる。
【0113】
第3の工程において、曝露された細胞は、血清を含有する培養培地において、増殖因子を有していない無血清培地において、またはbFGF、IGF−2、EGF、FGF8、Shh、BDNF、GDNF、もしくはビタミンCなどのような増殖因子を含有する無血清培地において、接着性表面上で平板培養することができる。接着性表面は、組織培養プラスチックとすることができるまたはポリオルニチン/ラミニン、ウシコラーゲンI、ヒト細胞外抽出物、ブタ皮膚ゼラチン、またはMatrigelによりコーティングされた組織培養プレートなどのようなコーティング組織培養表面とすることができる。細胞は、それらが培養密度、80〜90%の培養密度、または任意の他のレベルの培養密度に達する場合、継代することができる。細胞の凝集塊、単一細胞浮遊液、またはその両方は、平板培養することができる。継代のために細胞を調製するために、細胞は、たとえばピペット操作によって、接着性表面から機械的に取り出すことができるまたはトリプシン−EDTA、コラゲナーゼ、もしくはディスパーゼなどのようなプロテアーゼを用いる処理によって化学的に取り出すことができる。
【0114】
第1の工程、第2の工程、および第3の工程のあらゆる組み合わせが企図される。たとえば、ある手順では、第1の工程は、増殖因子を有していない無血清培地の使用を含むが、第2および第3の工程は、増殖因子を有する無血清培地の使用を含む。他の手順では、3つの工程はすべて、増殖因子を有する無血清培地の使用を含む。他の手順では、細胞が、第3の工程において平板培養される前に、培養培地の変化を伴うことなく分化作用物質に曝露されるように、第1および第2の工程は、組み合わせられる。
【0115】
分化作用物質の有効な濃度は、用量−応答分析によって決定することができる。分化作用物質は、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのような溶媒中に溶解することができ、次いで、ES細胞培養物に様々な濃度で追加することができる。
【0116】
当業者らに公知の任意の分化作用物質は、本発明の分化作用物質として企図される。たとえば、ドーパミン作動性細胞などのような神経形成性の細胞型への分化のために、適切な培地における、PA6フィーダー細胞上での共培養と共に、間質誘導誘発活性(stromal derived induced activity)(SDIA)が、利用されてもよい。後期分化実験のために、共培養物は、酵素により解離され、ポリオルニチンコーティングガラスカバーガラス上で再度平板培養される。
【0117】
心筋細胞は、浮遊液中に生じる。ESCは、単一細胞レベルで解離され、それぞれの細胞は、胚様体と呼ばれる、限定培地中の浮遊構造を生じる。1週間後に、拍動している細胞を含有する胚様体のパーセンテージが、定量化される(肉眼的な評価)。ある実施形態では、アクチビンが、培養培地中に含まれる。ある実施形態では、分化中に使用されるアクチビンは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、またはアクチビンCである。ある実施形態では、1つを超えるアクチビンが、使用されてもよい。ある実施形態では、TGF−β、ノダル(nodal)、またはレフティーなどのような他のTGFβスーパーファミリーメンバーは、本発明の方法において、アクチビンの代わりに置き換えられてもよいまたはそれに加えられてもよい。ある実施形態では、分化中に使用されるBMPは、BMP−2、BMP−4、またはBMP−7である。ある実施形態では、BMPは、BMP−2、BMP−4、またはBMP−7以外のBMPである(BMP−1を除く)。ある実施形態では、1つを超えるBMPが、使用されてもよい。
【0118】
分化中の細胞は、BMP工程後に、アクチビンおよびBMPの両方がない状態で培養されてもよい。IGFは、その培養工程において含まれていてもよい。いくつかのそれらの実施形態では、IGFは、10ng/ml〜500ng/ml;または25ng/ml〜100ng/ml;または50ng/ml〜100ng/mlの濃度で含まれる。ある実施形態では、IGFは、10ng/ml未満または500ng/mlを超える濃度で含まれる。IGFは、IGF−1またはIGF−2であってもよい。ある実施形態では、インスリンは、本発明の方法においてIGFの代わりに置き換えられてもよい。
D.細胞の選択
1.神経前駆体細胞、神経細胞、およびグリア細胞の特徴付け
様々な量の分化作用物質への曝露後のES細胞培養物の分化の程度は、神経前駆体細胞および/または神経細胞において活性なプロモーター、遺伝子、およびタンパク質の発現を測定することによって決定することができる。たとえば、Ta−1プロモーター、β3−チューブリン遺伝子およびタンパク質、ネスチン遺伝子およびタンパク質、ダブルコルチン遺伝子およびタンパク質、ビメンチン遺伝子およびタンパク質、NeuN遺伝子およびタンパク質、MAP2遺伝子およびタンパク質の発現を分析することができる。用量−応答分析のための濃度の典型的な範囲は、100nM〜100nMの分化作用物質である。
【0119】
分化作用物質への未分化幹細胞の曝露によって調製される分化細胞は、神経前駆体細胞としてのそれらのステータスを確認するために、形態学的に、免疫化学的に、および他の方法において特徴付けることができる。
【0120】
細胞は、多くの表現型の基準に従って特徴付けることができる。基準は、形態的特徴の顕微鏡観察、発現した細胞マーカーの検出または定量化、酵素活性、神経伝達物質およびそれらの受容体、ならびに電気生理学的機能を含むが、これらに限定されない。
【0121】
本発明において包含されるある種の細胞は、神経細胞またはグリア細胞の特徴である形態的特徴を有する。これらの特徴は、当業者らによって認識される。たとえば、ニューロンは、小さな細胞体および軸索を暗示する複数のプロセスおよび樹状突起を含む。
【0122】
神経細胞はまた、それらが特定の種類の神経細胞の表現型マーカー特徴を発現するかどうかに従って特徴付けることができる。対象のマーカーは、a)ニューロンの特徴であるβ3−チューブリン、微小管関連タンパク質2(MAP−2)、または神経細線維;b)アストロサイト中に存在するグリア線維酸性タンパク質(GFAP);c)希突起膠細胞の特徴である2’,3’−環状ヌクレオチド3’−ホスホジエステラーゼ(CNPase)ガラクトセレブロシド(GalC)またはミエリン塩基性タンパク質(MBP);d)未分化ES細胞の特徴であるOct−4;e)神経前駆体および他の細胞の特徴であるPax 6およびネスチン;f)中枢神経系を発生させる特徴であるSox 1;g)カテコールアミンニューロン中に存在するチロシンヒドロキシラーゼ(TH);h)ガンマ−アミノ酪酸を含有するニューロン中に存在するグルタミン酸デカルボキシラーゼ、アイソフォーム67(GAD67);ならびにi)中間の神経分化の特徴であるビメンチンを含むが、これらに限定されない。
【0123】
当技術分野において公知の組織特異的マーカーは、細胞表面マーカーについてのフローイムノサイトケミストリーおよび蛍光活性化セルソーター、細胞内または細胞表面マーカーについての免疫組織化学的検査(たとえば固定された細胞または組織切片の)、細胞抽出物のウエスタンブロット解析、ならびに細胞抽出物または培地に分泌された産物についての酵素結合免疫測定法などのような、任意の適した免疫学的技術を使用して検出することができる。抗原に結合している抗体は、標識を増幅するための、標識された二次抗体もしくは他のコンジュゲート(ビオチン−アビジンコンジュゲートなど)を使用する、細胞の固定後の、標準的な免疫細胞化学もしくはフローサイトメトリーアッセイまたは当技術分野において周知の他の免疫学的方法によって観察することができる。一般に、免疫複合体形成の検出は、当技術分野において周知であり、多数のアプローチの適用を通して達成されてもよい。これらの方法は、一般に、それらの放射性、蛍光性、生物学的、および酵素学的タグのいずれかなどのような標識またはマーカーの検出に基づく。そのような標識の使用に関する米国特許は、それぞれは、参照によって本明細書において組み込まれる第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号、および第4,366,241号を含む。
【0124】
組織特異的遺伝子産物の発現はまた、ノーザンブロット解析もしくはドットブロットハイブリダイゼーション分析によってまたはそれぞれ、それらの全体が参照によって本明細書において組み込まれる米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,800,159号においてならびにInnisら、1988年において詳細に記載される標準的な増幅方法において配列特異的なプライマーを使用する、逆転写酵素によって始められるポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によってmRNAレベルで検出することもできる。本開示において列挙される特定のマーカーについての配列データは、GenBANKなどのような公的なデータベースから得ることができる。タンパク質またはmRNAレベルで検出される組織特異的マーカーの発現は、レベルが、未分化ES細胞などのような対照細胞の少なくとも2倍、好ましくは10または50倍を超える場合、ポジティブであると考えられる。
【0125】
また、神経細胞、特に最終分化細胞の特徴は、神経伝達物質の生合成、放出、および再取り込みに関与する受容体および酵素ならびにシナプス伝達に関連する脱分極および再分極の事象に関与するイオンチャネルである。シナプス形成の証拠は、シナプトフィジンの染色によって得ることができる。ある種の神経伝達物質に対する受容性の証拠は、ガンマアミノ酪酸(GABA)、グルタメート、ドーパミン、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ノルアドレナリン、アセチルコリン、およびセロトニンに対する受容体の検出によって得ることができる。
【0126】
神経細胞は、多くの表現型の基準に従って特徴付けることができる。基準は、形態的特徴の顕微鏡観察、発現した細胞マーカーの検出または定量化、酵素活性、神経伝達物質およびそれらの受容体、ならびに電気生理学的機能を含むが、これらに限定されない。
【0127】
本発明において包含されるある種の細胞は、神経細胞またはグリア細胞の特徴である形態的特徴を有する。これらの特徴は、当業者らによって認識される。たとえば、ニューロンは、小さな細胞体および軸索を暗示する複数のプロセスおよび樹状突起を含む。
【0128】
神経細胞はまた、それらが特定の種類の神経細胞の表現型マーカー特徴を発現するかどうかに従って特徴付けることができる。対象のマーカーは、a)ニューロンの特徴であるβ3−チューブリン、微小管関連タンパク質2(MAP−2)、または神経細線維;b)アストロサイト中に存在するグリア線維酸性タンパク質(GFAP);c)希突起膠細胞の特徴である2’,3’−環状ヌクレオチド3’−ホスホジエステラーゼ(CNPase)ガラクトセレブロシド(GalC)またはミエリン塩基性タンパク質(MBP);d)未分化ES細胞の特徴であるOct−4;e)神経前駆体および他の細胞の特徴であるPax 6およびネスチン;f)中枢神経系を発生させる特徴であるSox 1;g)カテコールアミンニューロン中に存在するチロシンヒドロキシラーゼ(TH);h)ガンマ−アミノ酪酸を含有するニューロン中に存在するグルタミン酸デカルボキシラーゼ、アイソフォーム67(GAD67);ならびにi)中間の神経分化の特徴であるビメンチンを含むが、これらに限定されない。
【0129】
本開示において列挙され、当技術分野において公知である組織特異的マーカーは、細胞表面マーカーについてのフローイムノサイトケミストリーおよび蛍光活性化セルソーター、細胞内または細胞表面マーカーについての免疫組織化学的検査(たとえば固定された細胞または組織切片の)、細胞抽出物のウエスタンブロット解析、ならびに細胞抽出物または培地に分泌された産物についての酵素結合免疫測定法などのような、任意の適した免疫学的技術を使用して検出することができる。抗原に結合している抗体は、標識を増幅するための、標識された二次抗体もしくは他のコンジュゲート(ビオチン−アビジンコンジュゲートなど)を使用する、細胞の固定後の、標準的な免疫細胞化学もしくはフローサイトメトリーアッセイまたは当技術分野において周知の他の免疫学的方法によって観察することができる。一般に、免疫複合体形成の検出は、当技術分野において周知であり、多数のアプローチの適用を通して達成されてもよい。これらの方法は、一般に、それらの放射性、蛍光性、生物学的、および酵素学的タグのいずれかなどのような標識またはマーカーの検出に基づく。そのような標識の使用に関する米国特許は、それぞれは、参照によって本明細書において組み込まれる第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号、および第4,366,241号を含む。
【0130】
組織特異的遺伝子産物の発現はまた、ノーザンブロット解析もしくはドットブロットハイブリダイゼーション分析によってまたはそれぞれ、それらの全体が参照によって本明細書において組み込まれる米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,800,159号においてならびにInnisら、1988年において詳細に記載される標準的な増幅方法において配列特異的なプライマーを使用する、逆転写酵素によって始められるポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によってmRNAレベルで検出することもできる。本開示において列挙される特定のマーカーについての配列データは、GenBANKなどのような公的なデータベースから得ることができる。タンパク質またはmRNAレベルで検出される組織特異的マーカーの発現は、レベルが、未分化ES細胞などのような対照細胞の少なくとも2倍、好ましくは10または50倍を超える場合、ポジティブであると考えられる。
【0131】
また、神経細胞、特に最終分化細胞の特徴は、神経伝達物質の生合成、放出、および再取り込みに関与する受容体および酵素ならびにシナプス伝達に関連する脱分極および再分極の事象に関与するイオンチャネルである。シナプス形成の証拠は、シナプトフィジンの染色によって得ることができる。ある種の神経伝達物質に対する受容性の証拠は、ガンマアミノ酪酸(GABA)、グルタメート、ドーパミン、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ノルアドレナリン、アセチルコリン、およびセロトニンに対する受容体の検出によって得ることができる。
【0132】
胚性幹細胞(ES)を使用して神経分化を評価する場合、一般に、神経発生に関与する生理的細胞間相互作用を可能な限り厳密に模倣するのが望ましい。ヒトESの気相/液相界面ベースの培養を含む方法は、本発明の方法において企図される。この培養システムは、追加の増殖因子の非存在下において三次元の細胞増幅および神経分化を可能にすることができる。ある実施形態では、その全体が参照によって組み込まれるEirakuら (2008年)において記載されるものなどのような培養方法は、本発明により使用されてもよい。
【0133】
2.心筋細胞の特徴付け
分化についての細胞の特徴付けの先の方法のいずれも、心筋細胞への分化についての細胞を評価する際に適用することができる。ヒト胚性幹細胞は、心臓特異的筋節タンパク質およびイオンチャネルを発現する、拍動している筋細胞を形成するように、マウス臓側内胚葉(VE)様細胞と共に共培養されてもよい。この共培養法は、心筋細胞分化の誘導を可能にする。たとえばヒトES細胞を含む多能性ES細胞のEND−2細胞との共培養は、様々な系列からの2つの特有の細胞型への広範囲な分化を誘導する。一方は、上皮であり、アルファ−フェトプロテインについてポジティブに染色される大きな嚢胞性の構造物を形成し、推測上、胚体外臓側内胚葉であり、他方は、高度な局所密度の領域に分類され、自発的に拍動する。これらの拍動している細胞は、心筋細胞である。心筋細胞分化に関するさらなる情報は、参照によって本明細書において明確に組み込まれる米国特許出願公開第20080031857号、第20080187494号、および第20070010012号において見つけることができる。
【0134】
3.肝細胞の特徴付け
分化についての細胞の特徴付けの先の方法のいずれも、肝細胞への分化についての細胞を評価する際に適用することができる。インビトロにおける肝細胞への多能性幹細胞の分化を促進するための方法は、たとえば、Sancho−Bruら (2009年)またはZaretら (2008年)において記載されるように、それらの分化を予防する因子の除去を含んでいてもよいおよび/また適切な増殖因子への曝露を通してのものであってもよい。iPS細胞は、肝細胞に分化してもよく、組織置換または遺伝子療法のために使用されてもよい。肝臓の発生は、アクチビンAへの曝露によってiPSから始められてもよい。次いで、BMP−4およびbFGFを用いるさらなる処理は、肝臓系列に向けて細胞を分化させることができる(たとえばZaretら (2008年)を参照されたい)。以前の研究により、ヒトiPS細胞がESCと同等の肝細胞系列分化潜在能力を有することが示されている(Si−Tayebら (2010年)。肝細胞分化に関するさらなる情報は、参照によって本明細書において明確に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0086525号、第2010/0129351号、第2005/0042750号、第2010/0143313号、第2010/0086999号、WO 2010/049752A1、およびUS7473555において見つけることができる。
【0135】
E.スクリーニングの適用
本明細書において記載される方法によって作製される細胞はまた、発生の細胞生物学および分子生物学、機能ゲノム科学、ならびに治療上もしくは予防的な移植、治療、薬剤スクリーニング、またはインビトロにおける創薬において使用される分化細胞の生成を研究するために使用することができる。たとえば、細胞は、ゲノム解析のために、mRNA、cDNA、またはゲノムライブラリーを作製するために、ヒト化モノクローナル抗体を含むが、これらに限定されない特異的なポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体を作製するために(WO 01/51616、参照によって本明細書において明確に組み込まれる)、または薬剤研究における医薬化合物などのような、それに由来する細胞もしくは組織に対する様々な試験化合物もしくは生物学的活性分子の効果をスクリーニングするために使用することができる。細胞はまた、培養中の神経細胞または心筋細胞の特徴およびこれらの細胞の分化に影響する因子(小分子薬剤、ペプチド、ポリヌクレオチド、およびその他同種のものなど)または条件(細胞培養条件もしくは操作など)をスクリーニングするために使用することもできる。
【0136】
本発明は、本発明の方法によって作製される神経細胞または心筋細胞において試験化合物を評価するための方法を含む。試験化合物は、それが、試験化合物との接触に起因する、細胞の表現型または活性の変化を誘導するかどうかについて評価されてもよい。これらのアッセイは、単一の試験化合物を試験することまたは候補物質の大きなライブラリーの無作為のスクリーニングを含んでいてもよい。その代わりに、アッセイは、ニューロンまたは神経性にコミットした細胞の機能をおそらく調整するであろうと考えられる構造の特質を考慮して選択される特定のクラスの化合物に集中するために使用されてもよい。ある実施形態では、試験化合物の毒性は、化合物を、人工神経組織を形成した細胞などのような(Schmandtら、2005年)(たとえば、ヒト胚性幹細胞に由来する)、複数の神経細胞または神経性にコミットした細胞と接触させることによって評価されてもよい。ENTは、本発明による細胞の分化を介して産生されてもよいヒト胎児の脳のある種の層に類似している、胚性幹細胞(ES)に由来する組織の3次元の片である。毒性試験は、たとえば、ヒト患者などのような被験体への試験化合物の臨床上の投与前に、インビトロにおける薬剤スクリーニングプロセスの一部として利用されてもよい。
【0137】
様々な特質は、試験化合物が細胞において毒性をもたらすかどうか決定するために評価されてもよい。パラメーターは、たとえば細胞死(ネクローシス、アポトーシス)興奮毒性、細胞毒性、神経機能の改変(たとえば、活動電位または長期増強の生成の改変など)、脳受容体機能の改変、公知の毒性化合物を用いる攻撃に対する抵抗性の減少、シナプス毒性、発生神経毒性、または神経系列に特異的な毒性(たとえば希突起膠細胞、アストロサイト、もしくはドーパミン作動性ニューロンにおける)は、試験化合物が毒性または神経毒性をもたらすかどうかを決定するために細胞において評価されてもよい。電気生理学的技術は、神経活動または機能を検出するために使用されてもよい。シナプスマーカーの測定は、シナプス毒性を有する化合物を検出するために使用されてもよい。細胞は、発光または蛍光タンパク質などのようなレポーター遺伝子の発現を制御する、定義される系列(たとえば希突起膠細胞、ドーパミン作動性ニューロンなど)に特異的なプロモーターを含有するように操作されてもよく、このように、神経系列に特異的な毒性は、インビトロにおいてレポーター遺伝子の発現の変化によって、より容易に観察されてもよい。ある実施形態では、活性酸素種は、試験化合物が細胞の酸化ストレスの増加をもたらすかどうかを決定するために測定されてもよい。ある実施形態では、用量−応答関係は、試験化合物の毒性を評価するために生成されてもよい。ある実施形態では、発生的な神経毒性は、試験化合物および神経分化中の細胞をインキュベートすることによって評価されてもよい。
【0138】
複数の化合物または小分子ライブラリーの一部もしくはすべては、本発明に従って培養された細胞における毒性もしくは神経活性についてスクリーニングされてもよい。いくつかまたは本質的にすべての神経細胞または神経系にコミットした細胞は、試験化合物の毒性の評価前にドーパミン作動性細胞にさらに分化してもよく、これは、化合物のドーパミン作動性毒性を理解することが望ましい可能性のある実例において特に有用であり得る。
【0139】
本発明の培養および/または毒性試験方法は、自動化されてもよい。ある実施形態では、細胞を培養する工程、細胞を分化させる工程、および/または試験化合物の特性(たとえば毒性)を評価する工程と関連する1つまたはそれより多くの工程は、たとえば、細胞においてハイスループット毒性評価を促進するために、ロボット工学の使用を介して、自動化されてもよい。たとえば、様々なロボット工学は、細胞を培養するために、細胞に培地を追加するまたはそれから除去するために、本発明に従って分化させた神経細胞または神経性にコミットした細胞を含む培地に試験化合物を追加するために使用されてもよい。本発明の方法と共に使用されてもよい、特定のロボット工学は、所望されるようにより多くのまたは少ないウェルを使用することができるが、典型的に12〜384ウェルの範囲のマルチウェルにおける細胞の自動標準化された配分を可能にする細胞ディスペンサー(たとえばThermo Fisher Scientific, Inc.からのMatrix WellMate(商標))ならびにマルチウェルプレートへのライブラリー化合物の自動配分およびたとえば、IC50の計算のための化合物の自動希釈を可能にする多チャネル液体ハンドラー(たとえばCaliper Life SciencesからのZephyr)を含む。
【0140】
化合物の毒性を評価するために、一般に、試験化合物の存在下および非存在下において細胞の機能および/または生存率が決定される。たとえば、方法は、一般に、
試験化合物を提供する工程;
本発明に従って産生された単離細胞または複数の細胞と試験化合物を混合する工程;
候補修飾因子が、工程(c)における細胞(複数可)において、細胞の生存率または機能を改変するまたは破壊することができるかどうかを測定する工程;および
工程(c)において測定された特徴を、当該候補修飾因子の非存在下における細胞(複数可)の特徴と比較する工程を含み、
測定された特徴の間の差異は、当該候補修飾因子が、細胞(複数可)に対する毒性に影響するまたはそれを示すことを示す。
【0141】
スクリーニングは、96ウェルプレートなどのような1つまたはそれより多くのマルチウェルプレートを使用し、ハイスループットアッセイにおいて実行されてもよい。たとえば、ENTは、試験化合物(たとえば、小分子、タンパク質、ペプチド、抗体、推定上の治療薬)または複数の化合物(たとえば化合物バンク、小分子ライブラリー、ペプチドライブラリー、抗体ライブラリーなどからの)の神経毒性の可能性を研究するために、スクリーニングプラットフォームを確立するためにマルチウェルプレートにおいて産生されてもよい。試験化合物は、合成して産生されてもよいまたは天然の供給源から精製されてもよい。ENTを作製するおよび/または試験化合物の特性を評価するための方法は、自動化されてもよく、たとえば、マルチウェルプレートに化合物もしくは溶液を追加するもしくはそれから除去する工程、マルチウェルプレートにおいて発光もしくは蛍光を検出する工程、および/またはマルチウェルプレートにおいてENTを作製する工程は、たとえばロボット工学を介して自動化されてもよい。
【0142】
様々な実施形態では、試験化合物の組み合わせは、神経細胞、肝細胞、または心筋細胞への2、3、4、5、6、またはそれ以上の試験化合物の同時のまたは連続する適用が、特定の効果または毒性をもたらすかどうかを決定するために評価されてもよい。組織への複数の化合物の連続する投与は、所望されるように、数秒〜数時間、数週間、またはそれ以上の範囲であってもよい。たとえば、そのような実例では、互いに約12〜24時間以内に、より好ましくは、互いに約6〜12時間以内に、細胞を両方のモダリティーと接触させてもよいことが企図される。しかしながら、それぞれの投与の間に数日間(2、3、4、5、6、または7)〜数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)経過する場合、いくつかの状況では、治療の期間を著しく延長することは望ましい可能性がある。様々な組み合わせは、試験化合物「A」および試験化合物「B」の間で利用されてもよい:
【0143】
【化1】

他の実施形態では、試験化合物は、様々な神経組織または神経性にコミットした組織(複数可)と別々に接触させてもよい。
【0144】
この目的のために使用されてもよい特定の神経プロモーターは、たとえば、Tα1 α−チューブリンプロモーター(Tα1)およびβIII−チューブリンプロモーターを含む。たとえば、ドーパミン作動性ニューロン特異的プロモーター(たとえばチロシンヒドロキシラーゼプロモーター)、シナプス特異的プロモーター(たとえばシナプシンIプロモーター)、軸索特異的プロモーター(たとえばMAP2プロモーター)、および非神経特異的プロモーター(たとえばCNPase IIプロモーターによって評価される希突起膠細胞)を含む、特定の神経系列についての様々なプロモーターは、特定の細胞型における応答を評価するために使用されてもよい。用語「プロモーター」は、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域を指すためのその通常の意味で、本明細書において使用され、調節配列は、RNAポリメラーゼに結合し、下流の(3’方向の)コード配列の転写を始めることができる遺伝子に由来する。
【0145】
ある実施形態では、多能性幹細胞は、神経細胞または神経性にコミットした細胞への幹細胞の分化を検出するために、2重レポーター系を用いてトランスフェクトされてもよい。2重レポーター系は、第1の発光または蛍光タンパク質を発現するためのニューロン特異的プロモーターを利用してもよく、第2のプロモーター(たとえばすべての細胞または第2の細胞型によって発現されるプロモーター)は、第2の発光または蛍光タンパク質の発現を駆動することができる。このように、神経マーカーの相対的な発現が、観察されてもよい。レポーター系は、たとえば、リポソームトランスフェクション、微粒子銃、またはレンチウイルストランスフェクションなどのようなウイルストランスフェクションを含む様々な技術を介して多能性細胞にトランスフェクトされてもよい。下記の実施例では、2重レポーター系は、Tα1プロモーターを介してのFireflyルシフェラーゼおよびEF1−αショートプロモーター(EF1−αS)を介してのRenillaルシフェラーゼの発現を観察するために使用される。
【0146】
蛍光タンパク質は、一般に、少なくとも3つのアミノ酸から形成される蛍光発色団を含み、典型的に、p−ヒドロキシベンジリデン−イミダゾリジノン発色団を生成する環化反応によって特徴付けられる。発色団は、補欠分子族を含有していなくてもよく、選択的なエネルギーの光を放射することができ、エネルギーは、正確な波長(複数可)を含む外部の光源からの先の照明によって発色団中に保存されている。自発的に、蛍光タンパク質は、構造および発色団中に存在するアミノ酸の数において広く異なり得るが、発色団が、p−ヒドロキシベンジリデン−イミダゾリジノン環構造を含むことを条件とする。いくつかの実例では、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質において見つけられ、Chalfieら(1994年)において記載されるものなどのようなβ−バレル構造を含んでいてもよい。蛍光タンパク質は、典型的に、タンパク質によって吸収される特定の波長の入射光に応じて、より長い波長の光を放射する能力を示す。蛍光活性化セルソーティングまたは(FACS)は、ある実施形態において、1つまたはそれより多くのニューロン特異的マーカーの発現を検出するために使用されてもよい。本発明により使用されてもよいFACS製品、たとえばFACSCalibur(Becton Dickson)が、利用可能である。
【0147】
試験化合物は、天然に存在する化合物の断片もしくは一部を含んでいてもよいまたは他の場合には不活性である公知の化合物の活性な組み合わせとして見出されてもよい。動物、細菌、菌類、葉および樹皮を含む植物供給源ならびに海洋試料などのような天然の供給源から単離される化合物は、可能性として有用な医薬作用物質の存在についての候補としてアッセイされてもよいことが提案されている。スクリーニングされることとなる医薬作用物質はまた、化学組成物または人工の化合物から誘導するまたは合成することもできることが理解されよう。したがって、本発明によって同定される候補物質は、公知の阻害剤または刺激物質から開始されるラショナルドラッグデザインを通して設計されてもよいペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子阻害剤、または任意の他の化合物であってもよいことが理解される。
【0148】
他の試験化合物は、アンチセンス分子、リボザイム、および抗体(単鎖抗体を含む)を含み、これらのそれぞれは、標的分子に対して特異的であろう。そのような化合物は、この文書において、よりいっそう詳細に別記される。たとえば、翻訳開始部位または転写開始部位に結合するアンチセンス分子またはスプライスジャンクションは、理想的な候補阻害剤となるであろう。薬理学的活性化合物に立体的に類似しているペプチド修飾因子または他の化合物のペプチドミメティックもまた、試験化合物として果たしてもよい。
【0149】
当然ながら、本発明のスクリーニング方法はすべて、毒性または他のいくつかの特性が、試験化合物においてまたはそれについて、観察されるかもしれないまたは観察されないかもしれないという事実にもかかわらず、それら自体、有用であることが理解されよう。
【0150】
F.組織工学および細胞療法
本発明はまた、細胞ベースの療法のための本発明の方法によって作製される神経細胞、肝細胞、または心筋細胞の使用をも企図する。疾患または外傷により実質的に損傷しているヒト組織を再生する能力は、成体において著しく衰えている。本明細書において開示される細胞は、細胞補充療法または組織再生のために哺乳動物被験体に投与されてもよいまたは移植されてもよい。その代わりに、本発明の細胞は、被験体に直接投与されてもよい。そのため、本開示の方法は、多くの疾患、外傷、または他の有害な状態の治療において有用であり得る。
【0151】
本発明の心筋細胞、肝細胞、または神経細胞は、3D組織工学によってヒトの体器官をモデル化するために使用することができる。たとえば、ヒトの脳における組織は、本明細書において記載される方法によって作製される神経細胞の3D培養によってモデル化することができる。同様に、心臓組織は、本発明の方法によって作製される心筋細胞から誘発され、再構築されてもよい。肝臓組織は、本発明の方法によって作製される肝細胞から誘発され、再構築されてもよい。本開示の神経細胞、肝細胞および心筋細胞はまた、たとえば、必要に応じて、細胞を遺伝子操作し、分化させ、遺伝子療法のためのドナーにおける標的部位に細胞または組織を送達することによってヒトの体の様々な部位に送達されることとなる様々な治療上活性な分子または遺伝子のためのキャリアビヒクルとして使用されてもよい。
【0152】
G.疾患の治療
他の態様では、本発明は、被験体における疾患を治療するための方法であって、本発明の方法によって作製される、有効量の神経細胞または心筋細胞を、疾患を有する被験体に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンは、神経系疾患または外傷を治療するために投与される。
【0153】
本発明が有効となってもよい神経変性疾患および障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、卒中、筋萎縮性側索硬化症(ルー ゲーリッグ病)、前頭側頭型認知症(ピック病)、プリオン病、ハンチントン病、脳虚血、特発性パーキンソン病、局所的または薬剤誘導性パーキンソン症候群、異なる起源のアルツハイマー病および大脳の認知症症候群、ハンチントン舞踏病、AIDS脳症、クロイツフェルトヤコプ病、麻疹ウイルスおよびヘルペスウイルスによって誘導される脳症、ならびにボレリア症などのような感染誘導性神経変性障害、肝性、アルコール性、低酸素性、低血糖、または高血糖誘導性脳症および溶媒または医薬品によって誘導される脳症などのような代謝毒性神経変性障害、様々な起源の変性網膜障害、外傷誘導性脳および骨髄損傷、脊髄損傷、医薬、毒素、病毒、および薬剤の追加および/または除去後のなどのような、様々な起源の大脳過剰興奮性症状、精神また外傷誘導性大脳過剰興奮性状態、代謝、医薬、毒性、および伝染誘導性多発ニューロパシーおよび多発神経炎などのような末梢神経系の神経変性症候群、ならびに鎮咳気管支増幅性の作用を含むが、これらに限定されない。
【0154】
本発明が有効であってもよい肝疾患および障害は、肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、肝硬変、肝臓癌、ウィルソン病、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、小胆管の自己免疫疾患、バッド−キアリー症候群、ジルベール症候群、糖原病II型、急性肝不全、アラジール症候群、アルファ−1アンチトリプシン欠損症、自己免疫性肝炎、胆道閉鎖症、糖原病、肝芽腫、肝細胞癌(肝癌)、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)、および尿素サイクル障害を含むが、これらに限定されない。
【0155】
1.医薬製剤
本発明の方法によって作製される神経細胞、肝細胞、または心筋細胞は、医薬組成物中に含まれていてもよい。細胞の医薬組成物は、当業者らに公知の任意の方法によって投与することができる。たとえば、投与は、神経系の損傷部位への直接的な注射によるものであってもよいまたは非経口的に、静脈内に、皮内に、筋肉内に、経皮的に、腹腔内に、もしくは鞘内に投与されてもよい。
【0156】
注射については、細胞の溶液は、水性溶媒中のものとする。注射用の使用に適している医薬形態は、無菌水溶液を含む。たとえば、キャリアは、水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、およびその他同種のもの)、その適した混合物、ならびに/または植物油を含有する溶媒または分散媒とすることができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、およびその他同種のものによってもたらすことができる。多くの場合では、等張剤、たとえば糖、塩化ナトリウムを含むことは好ましい。
【0157】
水溶液における非経口投与については、たとえば、溶液は、必要ならば、適宜緩衝されるべきであり、液体希釈剤は、最初に、十分な食塩水またはグルコースと等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与にとりわけ適している。これに関連して、利用することができる無菌水性溶媒は、本発明の開示に照らして当業者らに公知となろう。投与の担当者は、少なくとも、個々の被験体に適切な用量を決定するであろう。
【0158】
本明細書において使用されるように、「キャリア」は、いずれかおよびすべての溶媒、分散培地、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝剤、キャリア溶液、懸濁剤、コロイド、ならびにその他同種のものを含む。医薬活性物質に対するそのような培地および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の培地または作用物質が活性成分と不適合性である場合を除いて、治療用組成物におけるその使用は、企図される。補足活性成分もまた、組成物の中に組み込むことができる。
【0159】
語句「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」は、ヒトに投与された場合に、アレルギー反応または同様の好ましくない反応をもたらさない分子要素および組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含有する水性組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されている。典型的に、そのような組成物は溶液か懸濁剤のいずれかとして注射液として調製される;注射前の、液体中の溶液または懸濁剤に適している固体形態もまた、調製することができる。
【0160】
2.投与
神経系損傷の治療については、被験体は、本発明の細胞の薬学的有効量を投与される。投与のルートは、損傷の場所および性質に応じて、自然に変化し、また、たとえば、皮内、鞘内、中枢神経系への注射、心臓内、経皮的、非経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮的、気管内、腹腔内、灌流、灌注、および直接的な注射を含むこととなる。
【0161】
細胞は、1回の用量または複数回の用量で与えることができる。適切な場合には、連続投与もまた、適用されてもよい。一般に、継続的な灌流を介しての治療用組成物の用量は、1回または複数回の注射から与えられるものと等価であり、灌流が行われる期間の間、調節される。投与される細胞の用量は、治療されている被験体、被験体の体重、投与の方法、および医師の判断に依存する。治療レジメンも同様に変化し、神経系損傷のタイプ、損傷の場所、疾患進行、ならびに患者の健康および年齢に依存することが多い。
【0162】
3.治療の組み合わせ
ある実施形態では、本発明の組成物および方法は、本発明の方法によって作製されるクローン細胞の投与および1つまたはそれより多くのさらなる療法を含む。そのような療法は、本発明のクローン細胞を用いる治療が企図される、任意の疾患の治療において適用することができる。たとえば、その疾患は、神経変性疾患、心血管疾患、肝疾患、または癌などのような過剰増殖疾患であってもよい。
【0163】
併用療法を含む方法および組成物は、治療または防護効果を増強するおよび/または他の療法の治療効果を増加させる。治療上および予防的な方法および組成物は、神経変性の治療または心血管疾患の治療などのような所望の効果を達成するのに有効な量の組み合わせで提供することができる。
【0164】
本発明のクローン細胞は、療法の副次的な形態の前に、その間に、その後に、またはそれに関連して様々な組み合わせで投与されてもよい。投与は、同時〜数分間〜数日間〜数週間の範囲の間隔であってもよい。各送達時の間で、かなりの期間にわたって期限切れにならなかったこと、それゆえ、2つの化合物が、患者に対して、好都合に組み合わせられた効果をなお及ぼすことができるであろうことが一般に保証されるだろう。細胞および副次的な療法は、互いに、約12〜24または72時間以内に、より好ましくは、互いに、約6〜12時間以内に投与されてもよい。いくつかの状況では、それぞれの投与の間に数日間(2、3、4、5、6、または7)〜数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)経過する場合、治療の期間を著しく延長することは望ましい可能性がある。
【0165】
ある実施形態では、治療のコースは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90日、またはそれ以上続くことになる。一方の作用物質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、および/または90日目、その任意の組み合わせに与えられてもよく、他方の作用物質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、および/もしくは90日目またはその任意の組み合わせに与えられてもよいことが企図される。1日(24時間)以内に、患者は1回または複数回の細胞(複数可)の投与が与えられてもよい。さらに、治療のコースの後、治療が投与されない期間があることが企図される。この期間は、彼らの予後、体力、健康などのような患者の状態に依存して、1、2、3、4、5、6、7日間および/または1、2、3、4、5週間および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月間またはそれ以上続いてもよい。
【0166】
様々な組み合わせが、利用されてもよい。下記の例について、本発明のクローン細胞は、「A」として示され、療法の副次的な形態は、「B」とする:A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A 。
【0167】
患者への本発明の任意の化合物または療法の投与は、もしあれば作用物質の毒性を考慮に入れて、そのような化合物の投与のための一般的なプロトコールに従う。そのため、いくつかの実施形態では、併用療法に起因する毒性をモニターする工程がある。治療サイクルは、必要に応じて繰り返されることが期待される。様々な標準的な療法および外科的介入が、記載される療法と組み合わせて適用されてもよいこともまた、企図される。
【0168】
様々な実施形態では、本発明の方法によって誘導される細胞(たとえば心筋細胞、肝細胞、神経細胞、ドーパミン作動性ニューロンなど)は、免疫抑制薬と組み合わせて患者に投与されてもよい。他の実施形態では、本発明の細胞と組み合わせて免疫抑制薬を投与することは不必要であってもよい。たとえば、iPS細胞は、被験体由来の細胞から産生されてもよく、所望の細胞型に続いて再分化されてもよく、次いで、これらの細胞は、被験体に、治療上、投与され戻されてもよい。細胞が被験体の細胞から誘導されたので、再分化細胞は、有害な免疫学的応答をほとんどまたはまったくもたらさない可能性がある。それにもかかわらず、様々な実施形態では、たとえば、患者が炎症性疾患または自己免疫疾患を有する場合、免疫抑制薬または抗炎症性化合物が患者に好都合に投与されてもよい。
【0169】
特定の態様では、標準的な副次的な療法は、薬物療法、化学療法、免疫療法、外科的療法、放射線療法、または遺伝子療法を含んでいてもよく、本明細書において記載されるクローン細胞と組み合わせて利用されてもよいことが企図される。下記は、薬物療法の副次的な形態の非限定的な例である。
【0170】
a.心血管薬
本発明において使用されてもよい薬理学的治療剤の非限定的な例は、抗高リポタンパク血症剤、抗動脈硬化剤、抗血栓/線維素溶解剤、血液凝固薬、抗不整脈薬、血圧降下剤、血管昇圧剤、うっ血性心不全のための治療剤、抗狭心症剤、抗菌剤、またはその組み合わせを含む。
【0171】
さらに、β−遮断薬が、本発明の実施例(以下を参照されたい)において使用されたので、以下のいずれも、心臓療法標的遺伝子の新しいセットを開発するために使用されてもよいことが注目されるべきである。これらの遺伝子の多くが部分的に重なっていることが期待されるが、おそらく新しい遺伝子標的を開発することができる。
【0172】
ある実施形態では、「抗高リポタンパク血症薬」として本明細書において公知である、1つまたはそれより多くの血中脂質および/またはリポタンパク質の濃度を低下させる作用物質の投与は、特に、血管組織のアテローム性動脈硬化症、肥大、または封鎖の治療において、本発明に従って心血管療法と組み合わせられてもよい。ある態様では、抗高リポタンパク血症剤は、アリールオキシアルカン/フィブリン酸誘導体、樹脂/胆汁酸捕捉剤、HMG CoAレダクターゼ阻害剤、ニコチン酸誘導体、甲状腺ホルモンもしくは甲状腺ホルモンアナログ、種々の作用物質、またはその組み合わせを含んでいてもよい。
【0173】
アリールオキシアルカン/フィブリン酸誘導体の非限定的な例は、ベクロブレート、ベザフィブレート(enzafibrate)、ビニフィブレート、シプロフィブレート、クリノフィブレート、クロフィブレート(atromide−S)、クロフィブリン酸、エトフィブレート、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル(lobid)、ニコフィブレート、ピリフィブレート、ロニフィブレート、シンフィブレート、およびテオフィブレートを含む。
【0174】
樹脂/胆汁酸捕捉剤の非限定的な例は、コレスチラミン(cholybar、questran)、コレスチポール(colestid)、およびポリデキシド(polidexide)を含む。
【0175】
HMG CoAレダクターゼ阻害剤の非限定的な例は、ロバスタチン(mevacor)、プラバスタチン(pravochol)またはシンバスタチン(zocor)を含んでいる。
【0176】
ニコチン酸誘導体の非限定的な例は、ニコチネート、アシピモックス、ニセリトロール、ニコクロネート、ニコモール、およびオキシニアシン酸を含む。
【0177】
甲状腺ホルモンおよびそのアナログの非限定的な例は、エトロキセート(etoroxate)、チロプロープ酸、およびチロキシンを含む。
【0178】
種々の抗高リポタンパク血症薬の非限定的な例は、アシフラン、アザコステロール、ベンフルオレックス、β−ベンザルブチルアミド、カルニチン、硫酸コンドロイチン、クロメストロン(clomestrone)、デキストラン(detaxtran)、デキストラン硫酸ナトリウム、5,8,11,14,17−イコサペンタエン酸、エリタデニン、フラザボール、メグルトール、メリナミド、ミタトリエンジオール、オルニチン、γ−オリザノール、パンテチン、四酢酸ペンタエリスリトール、α−フェニルブチルアミド、ピロザジル、プロブコール(lorelco)、β−シトステロール、スルトシル酸ピペラジン塩、チアデノール、トリパラノール、およびキセンブシンを含む。
【0179】
抗動脈硬化薬の非限定的な例は、ピリジノールカルバメートを含む。
【0180】
ある実施形態では、血餅の除去または予防を支援する作用物質の投与は、特にアテローム性動脈硬化症および血管系(たとえば動脈性)封鎖の治療において、修飾因子の投与と組み合わせられてもよい。抗血栓および/または線維素溶解剤の非限定的な例は、抗凝血薬、抗凝血薬アンタゴニスト、抗血小板剤、血栓溶解剤、血栓溶解剤アンタゴニスト、またはその組み合わせを含む。
【0181】
ある態様では、たとえばアスピリンおよびワルファリン(coumadin)などのような、経口的に投与することができる抗血栓剤は好ましい。
【0182】
抗凝血薬の非限定的な例、アセノクマロール、アンクロッド、アニシンジオン、ブロムインジオン、クロリンジオン、クメストロール(coumetarol)、シクロクマロール、デキストラン硫酸ナトリウム、ジクマロール、ジフェナジオン、ビスクマ酢酸エチル、エチリデンジクマロール、フルインジオン、ヘパリン、ヒルジン、リアポレートナトリウム(lyapolate sodium)、オキサジジオン、ペントサンポリサルフェート、フェニンジオン、フェンプロクーモン、フォスビチン、ピコタミド、チオクロマロール、およびワルファリンを含む。
【0183】
抗血小板剤の非限定的な例は、アスピリン、デキストラン、ジピリダモール(persantin)、ヘパリン、スルフィンピラゾン(anturane)、およびチクロピジン(ticlid)を含む。
【0184】
血栓溶解剤の非限定的な例は、組織プラスミノーゲン活性化因子(activase)、プラスミン、プロウロキナーゼ、ウロキナーゼ(abbokinase)、ストレプトキナーゼ(streptase)、アニストレプラーゼ/APSAC(eminase)を含む。
【0185】
患者が出血または出血の可能性の増加に苦しんでいる実施形態では、血液凝固を増強してもよい作用物質が、使用されてもよい。血液凝固促進物質の非限定的な例は、血栓溶解剤アンタゴニストおよび抗凝血薬アンタゴニストを含む。
【0186】
抗凝血薬アンタゴニストの非限定的な例は、プロタミンおよびビタミンK1を含む。
【0187】
血栓溶解剤アンタゴニストの非限定的な例は、アミノカプロン酸(amicar)およびトラネキサム酸(amstat)を含む。抗血栓薬の非限定的な例は、アナグレリド、アルガトロバン、シロスタゾール、ダルトロバン、デフィブロタイド、エノキサパリン、fraxiparine、インドブフェン、ラモパラン(lamoparan)、オザグレル、ピコタミド、プラフィブリド、テデルパリン(tedelparin)、チクロピジン、およびトリフルサルを含む。
【0188】
抗不整脈剤の非限定的な例は、クラスI抗不整脈剤(ナトリウムチャネル遮断薬)、クラスII抗不整脈剤(β−アドレナリン遮断薬)、クラスII抗不整脈剤(再分極延長薬)、クラスIV抗不整脈剤(カルシウムチャネル遮断薬)、および種々の抗不整脈剤を含む。
【0189】
ナトリウムチャネル遮断薬の非限定的な例は、クラスIA、クラスIB、およびクラスIC抗不整脈剤を含む。クラスIA抗不整脈剤の非限定的な例は、ジソピラミド(norpace)、プロカインアミド(pronestyl)、およびキニジン(quinidex)を含む。クラスIB抗不整脈剤の非限定的な例は、リドカイン(xylocaine)、トカイニド(tonocard)、およびメキシレチン(mexitil)を含む。クラスIC抗不整脈剤の非限定的な例は、エンカイニド(enkaid)およびフレカイニド(tambocor)を含む。
【0190】
他にβ−アドレナリン遮断薬、β−アドレナリンアンタゴニスト、またはクラスII抗不整脈剤として公知であるベータ遮断薬の非限定的な例は、アセブトロール(sectral)、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、アテノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフラロール、ブニトロロール、ブプラノロール、ブチドリンハイドロクロライド、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、エスモロール(brevibloc)、インデノロール、ラベタロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ナドキソロール、ニフェナロール(nifenalol)、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プラクトロール、プロネタロール、プロパノロール(inderal)、ソタロール(betapace)、スルフィナロール、タリノロール、テルタトロール、チモロール、トリプロロール、ならびにキシビノロール(xibinolol)を含む。ある態様では、ベータ遮断薬は、アリールオキシプロパノールアミン誘導体を含む。アリールオキシプロパノールアミン誘導体の非限定的な例は、アセブトロール、アルプレノロール、アロチノロール、アテノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブニトロロール、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、エパノロール、インデノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール、タリノロール、チモロール、およびトリプロロールを含む。
【0191】
クラスIII抗不整脈剤としても公知である、再分極を延長する作用物質の非限定的な例は、アミオダロン(cordarone)およびソタロール(betapace)を含む。
【0192】
他にクラスIV抗不整脈剤として公知であるカルシウムチャネル遮断薬の非限定的な例は、アリールアルキルアミン(たとえばベプリジル(bepridile)、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、プレニルアミン、テロジリン、ベラパミル)、ジヒドロピリジン誘導体(フェロジピン、イスラジピン、ニカルジビン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン)ピペラジン(piperazinde)誘導体(たとえばシンナリジン、フルナリジン、リドフラジン)、またはベンシクラン、エタフェノン、マグネシウム、ミベフラジル、もしくはペルヘキシリンなどのような種々のカルシウムチャネル遮断薬を含む。ある実施形態では、カルシウムチャネル遮断薬は、長時間作用性のジヒドロピリジン(ニフェジピンタイプ)カルシウムアンタゴニストを含む。
【0193】
種々の抗不整脈剤の非限定的な例は、アデノシン(adenocard)、ジゴキシン(lanoxin)、アセカイニド、アジュマリン、アモプロキサン、アプリンジン、プレチリウムトシレート、ブナフチン、ブトベンジン、カポベン酸、シフェンリン、ジソピラミド、ヒドロキニジン、インデカイニド、臭化イプラトロピウム、リドカイン、ロラジミン、ロルカイニド、メオベンチン、モリシジン、ピルメノール、プラジュマリン、プロパフェノン、ピリノリン、ポリガラクツロン酸キニジン、硫酸キニジン、およびビキジルを含む。
【0194】
血圧降下剤の非限定的な例は、交感神経抑制薬、アルファ/ベータ遮断薬、アルファ遮断薬、抗アンギオテンシンII剤、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管増幅薬、および種々の抗高血圧薬を含む。
【0195】
α−アドレナリン遮断薬またはα−アドレナリンアンタゴニストとしても公知であるアルファ遮断薬の非限定的な例は、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、インドラミン、ラベタロール、ニセルゴリン、プラゾシン、テラゾシン、トラゾリン、トリマゾシン、およびヨヒンビンを含む。ある実施形態では、アルファ遮断薬は、キナゾリン誘導体を含んでいてもよい。キナゾリン誘導体の非限定的な例はアルフゾシン、ブナゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、およびトリマゾシンを含む。
【0196】
ある実施形態では、血圧降下剤は、アルファおよびベータアドレナリンアンタゴニストの両方である。アルファ/ベータ遮断薬の非限定的な例は、ラベタロール(normodyne、trandate)を含む。
【0197】
抗アンギオテンシンII剤の非限定的な例は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤およびアンギオテンシンII受容体アンタゴニストを含む。アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)の非限定的な例は、アラセプリル、エナラプリル(vasotec)、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリラト、ホシノプリル、リシノプリル、モベルトプリル(moveltopril)、ペリンドプリル、キナプリル、およびラミプリルを含む。アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、ANG受容体遮断薬、またはANG−II 1型受容体遮断薬(ARBS)としても公知であるアンギオテンシンII受容体遮断薬の非限定的な例は、アンジオカンデサルタン(angiocandesartan)、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、およびバルサルタンを含む。
【0198】
交感神経遮断薬の非限定的な例は、中枢性交感神経遮断薬または末梢性交感神経遮断薬を含む。中枢神経系(CNS)交感神経遮断薬として公知である中枢性交感神経遮断薬の非限定的な例は、クロニジン(catapres)、酢酸グアナベンズ(wytensin)グアンファシン(tenex)、およびメチルドパ(aldomet)を含む。末梢性交感神経遮断薬の非限定的な例は、神経節遮断剤、アドレナリン作動性ニューロン遮断剤、β−アドレナリン遮断剤、またはアルファ1アドレナリン遮断剤を含む。神経節遮断剤の非限定的な例は、メカミルアミン(inversine)およびトリメタファン(arfonad)を含む。アドレナリン作動性ニューロン遮断剤は、非限定的に、グアネチジン(ismelin)およびレセルピン(serpasil)を含む。β−アドレナリン遮断薬の非限定的な例は、アセブトロール(acenitolol)(sectral)、アテノロール(tenormin)、ベタキソロール(kerlone)、カルテオロール(cartrol)、ラベタロール(normodyne、trandate)、メトプロロール(lopressor)、ナダノール(nadanol)(corgard)、ペンブトロール(levatol)、ピンドロール(visken)、プロプラノロール(inderal)、およびチモロール(blocadren)を含む。アルファ1アドレナリン遮断薬の非限定的な例は、プラゾシン(minipress)、ドキサゾシン(cardura)、およびテラゾシン(hytrin)を含む。
【0199】
ある実施形態では、心血管治療剤は、血管増幅薬(たとえば脳血管増幅薬、冠血管増幅薬、または末梢血管増幅薬)を含んでいてもよい。ある好ましい実施形態では、血管増幅薬は、冠血管増幅薬を含む。冠血管増幅薬の非限定的な例は、アモトリフェン、ベンダゾール、ベンフロジルヘミスクシネート、ベンズヨーダロン、クロラシジン(chloracizine)、クロモナール、クロベンフロール、クロニトレート、ジラゼブ、ジピリダモール、ドロプレニラミン、エフロキサート、四硝酸エリトリチル(erythrityl tetranitrane)、エタフェノン、フェンジリン、フロレジル、ガングレフェン、ヘレストロール(herestrol)ビス(β−ジエチルアミノエチルエーテル)、ヘキソベンジン、イトラミントシレート、ケリン、リドフラジン(lidoflanine)、マンニトールヘキサニトレン(hexanitrane)、メジバジン、ニトログリセリン(nicorglycerin)、四硝酸ペンタエリスリトール、ペントリニトロール、ペルヘキシリン、トラピジル、トリクロミル、トリメタジジン、リン酸トロルニトレート、およびビスナジンを含む。
【0200】
ある態様では、血管増幅薬は、慢性療法血管増幅薬または高血圧緊急症血管増幅薬を含んでいてもよい。慢性療法血管増幅薬の非限定的な例は、ヒドララジン(apresoline)およびミノキシジル(loniten)を含む。高血圧緊急症血管増幅薬の非限定的な例は、ニトロプルシド(nipride)、ジアゾキシド(hyperstat IV)、ヒドララジン(apresoline)、ミノキシジル(loniten)、およびベラパミルを含む。
【0201】
種々の抗高血圧薬の非限定的な例は、アジュマリン、γ−アミノ酪酸、ブフェニド、シクレタニン(cicletainine)、シクロシドミン、タンニン酸クリプテナミン、フェノルドパム、フロセキナン、ケタンセリン、メブタメート、メカミルアミン、メチルドパ、メチル4−ピリジルケトンチオセミカルバゾン、ムゾリミン、パルギリン、ペンピジン、ピナシジル、ピペロキサン、プリマペロン、プロトベラトリン、ラウバシン、レシメトール、リルメニジン(rilmenidene)、サララシン、ニトロプルシドナトリウム、チクリナフェン、カンシル酸トリメタファン、チロシナーゼ、およびウラピジルを含む。
【0202】
ある態様では、抗高血圧薬は、アリールエタノールアミン誘導体、ベンゾチアジアジン誘導体、N−カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、グアニジン誘導体、ヒドラジン/フタラジン、イミダゾール誘導体、第四アンモニウム化合物、レセルピン誘導体、またはスルホンアミド(suflonamide)誘導体を含んでいてもよい。
【0203】
アリールエタノールアミン誘導体の非限定的な例は、アモスラロール、ブフラロール、ジレバロール、ラベタロール、プロネタロール、ソタロール、およびスルフィナロールを含む。
【0204】
ベンゾチアジアジン誘導体の非限定的な例はアルチジド(althizide)、ベンドロフルメサイアザイド、ベンズチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロサイアザイド、クロルサリドン、シクロペンチアジド、シクロチアジド、ジアゾキシド、エピサイアザイド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothizide)、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethizide)、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチジド(polythizide)、テトラクロルメチアジド、およびトリクロルメチアジドを含む。
【0205】
N−カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体の非限定的な例は、アラセプリル、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラト、ホシノプリル、リシノプリル、モベルチプリル、ペリンドプリル、キナプリル、およびラミプリルを含む。
【0206】
ジヒドロピリジン誘導体の非限定的な例は、アムロジン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジビン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニソルジピン、およびニトレンジピンを含む。
【0207】
グアニジン誘導体の非限定的な例は、ベタニジン、デブリソキン、グアナベンズ、グアナクリン、グアナドレル、グアナゾジン、グアネチジン、グアンファシン、グアノクロル、グアノキサベンズ、およびグアノキサンを含む。
【0208】
ヒドラジン/フタラジンの非限定的な例は、ブドララジン、カドララジン、ジヒドララジン、エンドララジン、ヒドラカルバジン、ヒドララジン、フェニプラジン、ピルドララジン、およびトドララジンを含む。
【0209】
イミダゾール誘導体の非限定的な例は、クロニジン、ロフェキシジン、フェントラミン、チザニジン、およびトロニジンを含む。
【0210】
第四アンモニウム化合物の非限定的な例は、臭化アザメトニウム、塩化クロルイソンダミン、ヘキサメソニウム、ペンタシニウムビス(硫酸メチル)、臭化ペンタメトニウム、酒石酸ペントリニウム、フェナクトロピニウムクロリド、およびトリメチジニウムメトサルフェートを含む。
【0211】
レセルピン誘導体の非限定的な例は、ビエタセルピン、デセルピジン、レシナミン、レセルピン、およびシロシンゴピンを含む。
【0212】
スルホンアミド誘導体の非限定的な例は、アンブシド、クロパミド、フロセミド、インダパミド、キネサゾン、トリパミド、およびキシパミドを含む。
【0213】
血管昇圧剤は、一般に、外科手技の間に起こり得るショックの間に血圧を増加させるために使用される。抗低血圧薬としても公知である血管昇圧剤の非限定的な例は、アメジニウム硫酸メチル、アンギオテンシンアミド、ジメトフリン、ドーパミン、エチフェルミン、エチレフリン、ゲペフリン、メタラミノール、ミドドリン、ノルエピネフリン、フォレドリン、およびシネフリンを含む。
【0214】
うっ血性心不全の治療のための作用物質の非限定的な例は、抗アンギオテンシンII作用物質、後負荷前負荷低下治療、利尿薬、および変力剤を含む。
【0215】
ある実施形態では、アンギオテンシンアンタゴニストに対して耐性がない動物患者は、併用療法を用いて治療されてもよい。そのような療法は、ヒドララジン(apresoline)および硝酸イソソルビド(isordil、sorbitrate)の投与を組み合わせてもよい。
【0216】
利尿薬の非限定的な例は、チアジドまたはベンゾチアジアジン誘導体(たとえばアルチアジド、ベンドロフルメチアジド(bendroflumethazide)、ベンズチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロチアジド、クロロチアジド、クロルサリドン、シクロペンチアジド、エピチアジド、エチアジド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチジド、テトラクロルメチアジド、トリクロルメチアジド)、有機水銀化合物(たとえばクロルメロドリン、メラルリド、メルカムファミド(mercamphamide)、メルカプトメリンナトリウム、メルクマリル酸、マーキュマチリンナトリウム(mercumatilin dodium)、塩化第一水銀、マーサリル)、プテリジン(たとえばフルテレン、トリアムテレン)、プリン(たとえばアセフィリン、7−モルホリノメチルテオフィリン、パマブロム(pamobrom)、プロテオブロミン(protheobromine)、テオブロミン)、アルドステロンアンタゴニストを含むステロイド(たとえばカンレノン、オレアンドリン、スピロノラクトン)、スルホンアミド誘導体(たとえばアセタゾラミド、アンブシド、アゾセミド、ブメタニド、ブタゾールアミド、クロラミノフェナミド、クロフェナミド、クロパミド、クロレキソロン、ジフェニルメタン−4,4’−ジスルホンアミド、ジスルファミド、エトキシゾラミド、フロセミド、インダパミド、メフルシド、メタゾラミド、ピレタニド、キネサゾン、トラセミド、トリパミド、キシパミド)、ウラシル(たとえばアミノメトラディン、アミソメトラジン)、カリウム保持性アンタゴニスト(たとえばアミロライド、トリアムテレン)またはアミノジン(aminozine)などのような種々の利尿薬、アルブチン、クロラザニル、エタクリン酸、エトゾリン、ヒドラカルバジン、イソソルビド、マンニトール、メトカルコン、ムゾリミン、ペルヘキシリン、チクリナフェン(ticrnafen)、および尿素を含む。
【0217】
強心剤としても公知である陽性変力剤の非限定的な例は、アセフィリン、アセチルジギトキシン、2−アミノ−4−ピコリン、アムリノン、ベンフロジルヘミスクシネート、ブクラデシン、セルベロシン(cerberosine)、カンフォタミド、コンバラトキシン、シマリン、デノパミン、デスラノシド、ジギタリン、ジギタリス、ジギトキシン、ジゴキシン、ドブタミン、ドーパミン、ドペキサミン、エノキシモン、エリトロフレイン、フェナルコミン、ギタリン、ギトキシン、グリコシアミン、ヘプタミノール、ヒドラスチニン、イボパミン、ラナトシド、メタミバム(metamivam)、ミルリノン、ネリフォリン(nerifolin)、オレアンドリン、ウアベイン、オキシフェドリン、プレナルテロール、プロシラジン、レジブフォゲニン、シラレン、シラレニン、ストロファンチン(strphanthin)、スルマゾール、テオブロミンおよびキサモテロールを含む。
【0218】
特定の態様では、変力剤は、強心配糖体、ベータアドレナリンアゴニスト、またはホスホジエステラーゼ阻害剤である。強心配糖体の非限定的な例は、ジゴキシン(lanoxin)およびジギトキシン(crystodigin)を含む。β−アドレナリンアゴニストの非限定的な例は、アルブテロール、バンブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、デノパミン、ジオキセテドリン(dioxethedrine)、ドブタミン(dobutrex)、ドーパミン(intropin)、ドペキサミン、エフェドリン、エタフェドリン、エチルノルエピネフリン、フェノテロール、ホルモテロール、ヘキソプレナリン、イボパミン、イソエタリン、イソプロテレノール、マブテロール、メタプロテレノール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ピルブテロール、プロカテロール、プロトキロール、レプロテロール、リミテロール、リトドリン、ソテレノール、テルブタリン、トレトキノール、ツロブテロール、およびキサモテロールを含む。ホスホジエステラーゼ阻害剤の非限定的な例は、アムリノン(inocor)を含む。
【0219】
抗狭心症薬は、硝酸エステル、カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬、およびその組み合わせを含んでいてもよい。
【0220】
ニトロ血管増幅剤としても公知である硝酸エステルの非限定的な例は、ニトログリセリン(nitro−bid、nitrostat)、硝酸イソソルビド(isordil、sorbitrate)、および硝酸アミル(aspirol、vaporole)を含む。
【0221】
外科的療法は、副次的な療法として企図される。血管および心血管疾患および障害のためのそのような外科的治療剤は、当業者らに周知であり、生物に対して外科手術を実行すること、心臓血管機械的プロテーゼ、血管形成術、冠状動脈再灌流、カテーテルアブレーションを提供すること、被験体に対する植え込み型除細動器、機械的循環支持体、心臓移植、血管形成術、弁置換外科手術、冠動脈バイパス術、またはその組み合わせを提供すること含んでいてもよいが、これらに限定されない。本発明において使用されてもよい機械的循環支持体の非限定的な例は、大動脈内バルーンカウンターパルセイション、左室補助デバイス、またはその組み合わせを含む。
【0222】
b.神経変性疾患の副次的な療法
神経変性疾患の副次的な療法の例は、薬物療法または外科的療法を含む。薬物療法の非限定的な例は、コリンエステラーゼ阻害剤を含む。例として、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンを含む。副次的な療法の他の例は、Memantineなどのような、脳におけるグルタメートを調節する作用物質を含む。さらなる例として、ビタミンEなどのような酸化防止剤を含む。抗精神病薬、神経抑制薬、抗うつ薬、不安緩解剤を含み、睡眠補助薬もまた、療法の副次的な形態として企図される。他の副次的な作用物質は、セレギリン、選択的モノアミンオキシダーゼ阻害剤、エストロゲン、抗炎症薬、およびginkgo bilobaを含む。
【0223】
副次的な療法はまた、レボドパ、ドーパミンアゴニスト、およびCOMT阻害剤を含む。
【0224】
副次的な外科的療法は、剥離、深部脳刺激、淡蒼球切裁、および本発明の細胞以外のドーパミン産生細胞の大脳移植を含む。
【0225】
c.肝疾患の副次的な療法
肝疾患の副次的な療法の例は、薬物療法または外科的療法を含む。薬物療法の非限定的な例は、スルファサラジン、コルチコステロイド、抗炎症性化合物、サイトカイン特異的療法(たとえばペントキシフィリンまたは抗TNF、酸化防止剤、および抗ウイルス療法を含む。
【0226】
d.化学療法剤
種々様々の化学療法剤は、本発明に従って使用されてもよい。用語「化学療法」は、癌を治療するための薬剤の使用を指す。「化学療法剤」は、癌の治療において投与される化合物または組成物を意味するために使用される。これらの作用物質または薬剤は、細胞内の活性のそれらのモード、たとえば、それらが細胞周期に影響するかどうかおよびその段階によって分類される。その代わりに、作用物質は、DNAに直接架橋する、DNAの中にインターカレートする、または核酸合成に影響することによって染色体および有系分裂の異常を誘導するその能力に基づいて特徴付けられてもよい。ほとんどの化学療法剤は、以下の種類に分類される:アルキル化薬、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤およびニトロソ尿素。これらの作用物質の例は、先に記載されている。
【0227】
H.キット
本発明の様々な態様では、キットは、本発明の細胞のクローン集団を含む、1つまたはそれより多くの密閉容器を含有することが構想される。いくつかの実施形態では、キットはまた、eppendorfチューブ、アッセイプレート、注射器、ボトル、またはチューブなどのようなキットの成分と反応しない容器である、適した容器手段を含んでいてもよい。容器は、プラスチックまたはガラスなどのような滅菌可能な物質から作られたものでもよい。
【0228】
キットは、供給源、保存指示、投与指示などのような、本発明の方法に関する手順の工程または細胞のクローン集団に関する情報を概説する指示シートをさらに含んでいてもよい。指示情報は、コンピューターを使用して実行された場合に、薬学的有効量の治療剤を送達する実際のまたは仮想の手順を表示する、機械読み取り可能な指示を含有する、コンピューター読み取り可能な媒体中のものであってもよい。キットは、疾患の治療または予防において適用することができる、1つまたはそれより多くのさらなる治療剤を任意選択で含んでいてもよい。たとえば、さらなる治療剤は、神経変性疾患または心血管疾患の治療または予防において適用することができる作用物質であってもよい。そのような作用物質の非限定的な例は、本明細書において他のところで議論される。
【実施例】
【0229】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。続く実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能するように、発明者によって発見された技術を示し、したがって、その実施のための好ましいモードを構成すると考えることができることが、当業者らによって十分に理解されるはずである。しかしながら、当業者らは、本開示を考慮して、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変化が、開示される特定の実施形態において成され、同様のまたは類似する結果をなお得ることができることを十分に理解するはずである。
【0230】
(実施例1)
材料および方法
細胞培養:マウスCGR8 ESC系は、European Collection of Cell Culture(ATCC)から得た;間質PA6細胞系は、Riken BRC細胞バンク、Japanによって提供された。CGR8胚性幹細胞系は、10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、1%非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(treptomycin)(Gibco、Invitrogen、Grand Island、NY、USA;www.invitrogen.com)、および白血病抑制因子を補足したBHK−21培地中で維持した。CGR8は、ゼラチンコーティング皿上で培養した。PA6間質細胞系は、10%ウシ胎児血清を補足したMEM−アルファ培地中で維持した(Gibco、Invitrogen)。
【0231】
抗体:以下の一次抗体を使用した:マウス抗ネスチン、マウス抗ニューロン核特異的タンパク質(NeuN)、ウサギ抗チロシンヒドロキシラーゼ、ラット抗ドーパミントランスポーター(DAT)(Chemicon、Temecula、CA、USA;www.chemicon.com)、マウス抗チロシンヒドロキシラーゼ(Santa Cruz Biotechnology Inc.、Santa Cruz、CA、USA;www.scbt.com)、マウス抗ベータ−IIIチューブリン(Sigma−Aldrich、St. Louis、MO、USA;www.sigmaaldrich.com)、およびウサギ抗ベータIIIチューブリン(Covance、Princeton、NJ、USA;www.covance.com)。以下の蛍光色素標識二次抗体を使用した:マウス、ヤギ、またはウサギに対するヤギまたはロバ由来のAlexa Fluor(555または488)標識抗体(Molecular Probes、Eugene、OR、USA;probes.invitrogen.com);マウスIgGに対するCy5コンジュゲートロバ、ウサギIgGに対するPE−Cy5.5ヤギ(Jackson Immunoresearch Laboratories、USA;www.jacksonimmuno.com)。
【0232】
フローサイトメトリー:細胞は、メーカーの推奨に従って、1.25μmol/L 5,6−カルボキシ−フルオレセイン−スクシンイミジル−エステル(CFSE、Sigma、city?)を用いて標識した。使用した以下の抗体は、ネスチンおよびベータ−III−チューブリンに対するものとした。それらの細胞内検出のために、細胞は、0.2% Triton X−100および10%胎児ウシ血清を含有する、PBS中の抗体の適切な希釈液とのインキュベーション(45分)の前に、一定の撹拌下で、室温で、10分間、パラホルムアルデヒド0.5%を用いて固定した。細胞は、PBSを用いて2回すすぎ、適切な二次抗体と共に45分間、インキュベートし、蛍光励起セルソーティング(FACS)分析の前に洗浄した。蛍光は、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ、USA;http:www.bd.com)およびCellQuestソフトウェアを用いて分析した。
【0233】
免疫蛍光法および顕微鏡検査法:細胞を含有するガラス製カバーガラスは、さらに30分間のPBS中でのTriton X−100 0.2%を用いる透過処理の前に、室温で、15分間、PBS中で、2%パラホルムアルデヒドを用いて固定した。PBSを用いて洗浄した後に、カバーガラスは、1%のウシ胎児血清を含有するPBS中で一次抗体の適切な希釈液と+4℃で一晩インキュベートした。PBS中で洗浄した後に、カバーガラスは、二次抗体の適切な希釈液と室温で1時間、インキュベートし、さらに洗浄し、300nM 4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)と共に15分間、インキュベートした。細胞は、PBS中で洗浄し、FluorSave封入剤(Calbiochem、San Diego、CA;USA;www.emdbiosciences.com)への封入の前に水を用いてすすいだ。自動画像化は、MetaXpressソフトウェア(Molecular Devices、city、country)を使用し、imageXpress自動蛍光顕微鏡を用いて実行した。
【0234】
ESCの神経分化:ESCは、照射(5000rad)PA6のコンフルエントな層上で低密度(100細胞/cm)で平板培養する前にPBSを用いて洗浄した。分化用の培地は、GMEM、15%のノックアウト血清代替品、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1mM非必須アミノ酸、0.1mMベータ−メルカプトエタノール、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、Invitrogen)を含んだ。いくつかの実験では、神経分離進行中の細胞は、トリプシン/EDTA 0.5%使用して分離し、5000細胞/cmの密度で、ポリオルニチンコーティング細胞培養ペトリ皿(0.001%)上で再度平板培養した。
【0235】
胚様体の生成:CGR8は、PBSを用いて1回洗浄し、トリプシン/EDTA 5%を使用して分離した。細胞は、白血病抑制因子を有していない培養培地中で希釈し、細胞プレートのカバー上の500細胞の20μl液滴上に置いた。2日後に、胚様体を形成する細胞は、10ml超低付着プレート中にプールし、3日間、インキュベーター中にもう一度残した。5日目に、胚様体を、ゼラチンコーティング皿上で平板培養した。第1の胚様体は、7日目に拍動し始めた。培養培地は、2日毎に交換した。
【0236】
レンチウイルスベクターおよびESC形質導入:エントリーベクターを生成するために、プロモーター(eta−IIIpおよびTalpha−1)ならびに対象の遺伝子(GFPおよびH2B−mRFP1)は、Gateway(登録商標) BP clonase enzyme mix(Invitrogen)を使用して、pDONRP4−P1RおよびpDONR221の中にそれぞれクローニングした。次いで、結果として生じるエントリーベクターは、Gateway(登録商標) LR plus clonase enzyme mix(Invitrogen)を使用して、2K7bsdまたは2K7neoレンチウイルスベクターの中に組換えた。レンチウイルスベクター粒子は、リン酸カルシウムを使用する、293T細胞中での一時的なトランスフェクションによって産生した。レンチウイルスベクターを含有する上清は、72時間後に収集し、0.45μm細孔サイズのポリエーテルスルホン膜でろ過し、超遠心分離法(4℃で90分間、50,000xg)によって120倍に濃縮した。ペレットは、ESC培養培地中に再懸濁し、続いて、標的細胞に追加した。形質導入の3日後に、ブラストサイジン(7.5μg/ml)またはネオマイシン(400μg/ml)を培養培地に追加し、選択を6日(ブラストサイジン)または10日(ネオマイシン)間、維持した。
【0237】
マイクロアレイ:全RNAは、RNA mini Kit(Quiagen、city、country)を用いて単離し、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies、Palo Alto、CA、USA)でキャピラリー電気泳動法によってRNAの完全性について品質管理した。500ngを増幅し、Illumina TotalPrep RNA Amplification kit(Ambion、city、country)を使用して標識した。cRNAの品質は、Agilent 2100 Bioanalyzerでキャピラリー電気泳動法によって評価した。ヒト発現アレイ(Illumina、city、country)に対するハイブリダイゼーションは、メーカーの指示に従って実行した。
【0238】
データは、Illumina Beadstudio 3.1.3(background correctionおよびquantile normalization)を使用して、標準化し、分析した。それぞれの試料の発現プロファイルは、GeneSpringGX 7.3.1(Agilent Technologies)にインポートした。発現値に加えて、Illumina BeadStudioソフトウェアは、検出p値を算出する。これに基づいて、プローブに、検出フラグ(P(存在):p<0.045;M(限界):0.050〜0.045の間のp、A(不在):p>0.05)をそれぞれ割り当てた。異なって発現した転写産物を同定するために、スチューデントt検定および/またはANOVAおよびフィルタリングのさらなる工程を実行した。機能的な存在論についてのEnrichment analysisは、MetaCoreソフトウェア(www.genego.com)を使用して行った。
【0239】
細胞遺伝学的および分子分析:ESCは、4時間、50ng/mlでコルセミド(Invitrogen)を用いて処理した。有系分裂停止細胞は、5分間、KCl 0.075M使用して、低浸透圧性の処理にかけ、3回、カルノア固定液(メタノール:酢酸=3:1、v/v)と溶液を交換することによって固定し、その後で、細胞を含有する溶液をスライドガラス上に広げた。染色体は、続いて、標準的な手順に従ってGバンド染色した。オリゴヌクレオチドアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(Array−CGH)分析は、約20kbの分解能を有する、全ゲノムをカバーするMouse Genome CGH Microarray Kit 244B(Agilent Technologies)を使用し、メーカーのプロトコールに従って実行した。データは、それぞれ2.5および6.0の感度閾値ならびに0.2Mbの移動平均ウィンドウに従って、統計アルゴリズムz−スコアおよびADAM−2を使用し、Agilent CGH analytics 3.4ソフトウェアを用いて分析した。マッピングデータは、NCBI database Build 37(www.ncbi.nlm.nih.gov)を使用し、マウスゲノム配列に基づいて分析した。
【0240】
(実施例2)
胚性幹細胞内の細胞の多様性:多能性クローン亜系は、別個の分化能を示す
初期内部細胞塊(ICM)から誘導した胚性幹細胞(ESC)は、理論上均一な多能性細胞から構成される。本研究は、1つの親ESCから誘導した子孫の特徴付けを可能にする実験条件を使用して、この概念を試験するために設計した。フローサイトメトリーおよび生の画像分析は、神経分化を受けた、いくつかの個々のESCが、初期に所望の表現型に回避する子孫を生成することを実証した。それは、分化プログラムの遅延によるものではなく、ニューロンを生成する、個々の親ESCの能力における著しい差異によるものであり、したがって、ESCの間のクローン多様性の可能性を高めた。さらにこの仮説を実証するために、マウスESC由来のクローン亜系を限界希釈法によって生成した。すべてのクローンが同等のレベルの多能性マーカー(Oct4、Nanog、Sox2、Klf4を含む)を発現したという事実にもかかわらず、これらのクローン系のトランスクリプトーム分析は、遺伝子発現プロファイルにおける著しい差異を示した。異なるクローンは、表現型分化アッセイにおいておよび胚様体における遺伝子発現に関して、別個の分化能を示した。これらの発見のより幅広い適用可能性を実証するために、クローンを他のESC系から生成した。これらのクローン亜系もまた、それらの分化能において著しい個体性を示した。まとめると、これらの観察は、多能性ESCが、別個の分化能を有する個々の細胞型からなることを実証する。これらの発見は、ESCについての生物学的理解のための新規なエレメントを同定するだけではなく、それらの将来のインビトロおよびin vivoにおける使用のための主な可能性を有する新しいツールを提供する。
ESCの分化は、神経の運命に初期に回避する増殖細胞を生成する
ESCの分化の間に、典型的に、細胞の画分は、所望の細胞の表現型を獲得しない。これは、非等時性(anisochronicity)、つまり、亜集団の、成熟プロセスにおける進行の遅れによるものであり得るが、細胞の亜集団は、分化プロトコールに対する本質的な抵抗性のために所望の分化を回避するかもしれない。この疑問を検討するために、発明者らは、細胞分裂の分析と分化マーカーの免疫検出を組み合わせるフローサイトメトリーアッセイを開発した。
【0241】
マウスCGR8 ESCは、初期の分化を誘導するために、照射間質細胞(PA6)(Shintaniら、2008年)のコンフルエントな層上で低密度で5日間、培養し、示された場合、分離し、より進んだ神経分化に向けて進行するように、ポリオルニチン上で平板培養した。未分化ESCは、ネスチンおよびベータ−III−チューブリンに対してネガティブであった(図1A、左パネル)。分化の5日目に、2つのマーカーの細胞発現についての複合パターンが、ベータ−III−チューブリンポジティブ、ネスチンネガティブニューロン細胞、ネスチンポジティブ、ベータ−III−チューブリンネガティブ前駆体細胞、およびダブルポジティブ移行細胞の小さな集団により観察された(図1A、右パネル)。ダブルネガティブ細胞の注目すべき、かなり大きな集団が、観察されたが、SSEA−1発現が、ネスチンポジティブおよびネガティブ集団の両方において分化の5日後に消失したので、これらは、多能性状態からの亜集団の離脱の遅延によるものではなかった(図1B)。
【0242】
細胞分裂の同時性もまた、蛍光プローブカルボキシ−フルオレセイン−スクシンイミジル−エステル(CFSE)を使用してモニターした(Lyons、2000年)。CFSEは、それぞれの細胞分裂の後に娘細胞において50%ずつ希釈される、安定した、無毒性の蛍光色素であり、それによって、有系分裂事象の数のフローサイトメトリーによる定量を可能にする。非分裂細胞は、CFSE蛍光の最初のレベルを維持するが、分裂細胞は、分裂の数の関数として蛍光を失う。単相性のCFSEヒストグラムにおいて示されるように、ほとんどの細胞は、初期神経分化の間に分裂した(図1C、左パネル)。対照的に、多相性のCFSEヒストグラムは、細胞の亜集団が、後期神経分化の間に分裂の速度を落とすまたはそれを停止することを示す(図1C、右パネル)。
【0243】
次いで、細胞増殖は、ポリオルニチン(図1D)上での平板培養の24時間、48時間、72時間後に、後期神経分化の間の細胞分化マーカーの関数として分析した。平板培養の2日後に、ニューロン亜集団(ネスチンネガティブ/ベータ−III−チューブリンポジティブ)は、活発に増殖した神経上皮(ネスチンポジティブ/ベータ−III−チューブリンネガティブ)および非神経細胞(ネスチンネガティブ/ベータ−III−チューブリンネガティブ)(より低いCFSE強度)と比較して、その増殖の速度を落とした(より高度なCFSE強度)。再度平板培養した3日後に、ニューロン集団は、決定的に分裂を停止した細胞を含んだが、非神経細胞および神経上皮細胞は、分裂を継続した。異なるCFSE強度に対応する注目すべき、いくつかのピークが、3つの亜集団内で観察され、これもまた、それらの間の不均一性を実証した。
【0244】
まとめると、これらの観察は、すべてのESCが、分化プログラムを開始したが、いくつかの細胞が、非常に早期に神経の運命に回避し、有糸分裂後のニューロンが増殖中の神経細胞前駆体および非神経細胞と共存する混合培養物を生成したことを示す。この回避応答は、神経分化を受けたESCの間の不均一性によって説明することができるかもしれない。
【0245】
神経分化を受けた個々のESCは、明確な子孫を生成する
次いで、ESCの間の不均一性の仮説を調査した。1つの個々のESCから排他的に誘導した子孫の特徴付けを可能にする実験条件を設計した。神経分化は、PA6間質細胞上で、超低密度でESCを平板培養することによって誘導した。これらの条件下で、単一のESCは、分化が進行中のコロニーを生成し、それぞれの子孫の性質をモニターすることができる。3日後に、ESCから誘導されたコロニーは、不均一であった。いくつかのコロニーは、神経表現型(ネスチン+およびβIII−チューブリン+)を有する細胞を含んでいたが、他のコロニーは、非神経細胞であった(ダブルネガティブ)(図2A)。この観察は、1つの単一ESCから誘導した子孫の性質における大きな差異を示した。定量により、コロニーの半分が、3日後にβIII−チューブリン+ニューロン細胞を含んだことが示された(図2B)。分化の後期に、コロニーの25%は、ドーパミン作動性表現型(チロシンヒドロキシラーゼポジティブ(TH)+)を有するニューロンを含み、コロニーの10%は、成熟期ニューロン(NeuN+)を含んだ(図2B)。コロニーの間の不均一性は、2つの他の神経細胞前駆体細胞マーカー、Pax−6およびSox−1を使用して確認した。神経コミットメントについてのコロニーの間の不均一性は、初期神経特異的プロモーターTα1の制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する遺伝子修飾ESC系を使用して確認した(Suterら、2009年)。先の観察のとおりに、神経分化を受けたESC−Tα1−GFPは、GFP+およびGFP−コロニーを誘導し(図2C)、神経および非神経子孫の共存を確認した。したがって、神経運命に回避するいくつかの細胞の能力は、それらが由来する親細胞の性質に関連付けられる。
【0246】
異なる子孫の間で観察された変異性は、プロモーター/レポーター遺伝子ベースの方法を使用して、よりいっそう詳細に分析した。遺伝子修飾CGR8 ESC系は、βIII−チューブリン−プロモーター(βIIIp)の制御下でGFPを発現するように開発した。これらのESC−βIIIp−GFP細胞は、その細胞核に対するターゲティングのためにH2Bヒストンに融合した単量体赤色蛍光タンパク質(mRFP1)を発現するレンチウイルスベクターを用いて同時形質導入した。これは、ESC−βIIIp−GFP−H2B−mRFP1が、それらの赤色の蛍光性核のために、蛍光顕微鏡法によって可視化されるのを可能にした。βIII−チューブリンについてのプロモーターは、未分化ESCにおいて低レベルで恒常的に活性である。対照的に、GFP発現は、ネスチン非神経集団において減少する(図7A)が、より高度なGFP発現が、βIII−チューブリン+ニューロン細胞において誘導される(図7B)。ESC−βIIIp−GFP−H2B−mRFP1を、神経分化のためにPA6上で平板培養し、いくつかの個々のESCは、自動ハイスループット画像システム(ImageXpress、Molecular Devices)を使用して、2日間、経過観察した。画像化により、未分化ESC−βIIIp−GFP−H2B−mRFP1が、バックグラウンドレベルのGFPを発現し、平板培養後に速やかに分裂することを確認した。いくつかのコロニーでは、GFP発現は、ESCから誘導された子孫において維持されたまたは増加した(図2D、コロニー1)。他のコロニーでは、GFP発現は、すべての細胞において速やかに消失し(図2D、コロニー2)、いくつかの個々のESCが、非神経子孫を生成することを確認した。最後に、細胞の1つの画分のみがGFP発現をオフにしたコロニーもまた、観察され(図2E)1つの個々のESCから誘導された子孫もまた、神経および非神経細胞の間の混合物となり得ることを示した。
【0247】
GFP発現を含む系統樹は、生の画像化動画から確立した。すべての分析した系統樹のどれも、同一ではなく、したがって、個々のESCから誘導された子孫の独自性が確認された。たとえば、子孫の一部(図8A、B、D)または全体(図8C)がGFP発現をオフにしたことを観察することができる。他のコロニーでは、プロモーターは、2日後に、ほとんどの細胞において活性なままであった(図8D)。興味深いことには、GFP発現をオフにした細胞は、最初の分裂によって生成された2つの娘細胞の一方から排他的に誘導されることが多かった。対照的に、GFP発現を維持したものは、他方の娘細胞から誘導され、最初の分裂が、それぞれ異なる子孫を生成する2つの異なる娘細胞を産生したことを示した。
【0248】
まとめると、これらの観察により、個々のESCが、明確な子孫を生成し、神経子孫の生成について同じ潜在能を共有しないということが確認される。
【0249】
初期多能性ICMに対応するESCの間のクローン多様性
同じ培養における個々のESCが同じ神経形成性の潜在能を共有しないという観察は、個体の間の不均一性またはESC神経分化を引き起こす決定における確率性によって説明することができる。単一細胞レベルでESCの間の個体性の仮説を調査した。7つのクローン亜系を限界希釈法によってESCから誘導した。それぞれのクローン亜系の多能性表現型を最初に調査した。試験した亜系のほとんどは、rex−1、アルカリホスファターゼ、Oct−4、Nanog、Klf−4、Sox−2、Klf−2、Pecam−1、およびPramel−4を含む初期ICMの多能性細胞のマーカーを発現した(図3A)。ほとんどのクローンにおいて、多様な発現レベルであるが、Stellaの発現が見出されたことは注目すべきことである。1つのクローン系(クローン5)は、原始内胚葉マーカーを発現したので、研究から除外した。
【0250】
クローンESC亜系は、次いで、それらのゲノム構造の分析にかけた。異なるクローン(クローン1〜7)の標準的な核型分析(Gバンド染色)を実行した。染色体数および染色体異常の存在は、2つの培養時間間隔(継代10および16)で評価した(表2)。ほとんどのクローンは、継代16で、クローン7以外は、細胞モザイク現象を示した。クローン3における通常の2n=40の頻度値は、継代20で36%であり、継代16で60%>であった(表2)。分析はまた、染色体異常の存在をも明らかにした。クローン1、2、6、および7は、両方の継代に存在する未同定の誘導染色体(der)の存在によって同一の構造の再配列を示した。この再配列した染色体は、高異数倍数性41、XY優勢集団細胞中に存在した(図9)。クローンの高解像度ゲノム解析はまた、分子核型分析(array−CGH)によって実行した。この分析は、すべての分析したクローンにおいて1Mbよりも小さな、共通の部分的な欠失および重複の存在を明らかにした(表3)。染色体X上の重複がクローン1および2において存在したが、他において不在であったことは注目すべきことである。廃棄したクローン5は、5qE1における領域の欠如によって代表される異なるゲノムのプロファイルを示した。まとめると、これらの結果は、クローンのゲノム構造が、クローン5を例外として、類似しており、主な異常を示さなかったことを示唆する。
【0251】
【表2】

【0252】
【表3】

明らかなゲノムの異常を有していないクローン亜系(つまりクローン1、2、3、4、6、7)は、マイクロアレイによる全mRNA発現分析にかけた。6800の遺伝子の発現は、クローン系の間で著しく変動した(ANOVA統計的検定を使用する分散分析)。個々のクローンのESCについてのこれらの6800の遺伝子の発現プロファイルの数学的分析は、階層クラスタリングを可能にした(図3B)。最も異なるクローンESCは、クローン1および2であった。これに反して、クローン4/クローン6の組と同様に、クローン2は、クローン3に、より類似していた。図10は、クローン1および2の間の、異なって発現された遺伝子のファミリーを概説する(公的なデータベースGO process (Metacore software);www.genego.comから)。2つのクローンの間で異なって発現された遺伝子のおよそ半分を、ニューロン生成を含む発生プロセスにおいて分類した。すべてのクローン系の間の最も重要な変化の性質もまた、分析した。表4中に、異なるクローンの間で発現レベルの定量的に最も重要な差異を示す30の遺伝子を列挙する。リストは、遺伝子:i)3つのグアニル酸結合タンパク質(Gbp 1、2、3);ii)3つのケラチン(Krt 8、18、19);iii)2つのカルボニックアンヒドラーゼ(Car2、4)のいくつかの群を含有する。インスリン様増殖因子結合タンパク質3(Igfbp3)と共に、インスリン様増殖因子2(Igf2)の対およびいくつかの転写因子もまた、注目されたい。
【0253】
【表4】

表4において、すべての転写産物の発現レベルをクローンの間で比較した。標準偏差に対応する値は、クローンの間の転写産物発現の平均を用いて標準化した。転写産物はすべて、標準偏差および発現レベルの間の比に従って分類した。表は、より高度な比と関連する30の最初の遺伝子のリストを提供する。
【0254】
発明者らは、mRNA発現レベルにおけるこれらの差異が、異なるクローンへの特異的な分化経路に対する傾向を与えるかもしれないと仮定した。機能レベルで変異性を調査するために、クローンESCを、PA6間質細胞との共培養によって神経分化を受けさせた。系はすべて、神経および非神経コロニーを誘導した。しかしながら、神経および非神経コロニーの間の比は、クローンの間で異なった。クローン2および6は、クローン7よりも、神経上皮細胞(ネスチン+)を含む、著しくより高度なパーセンテージのコロニーを生成した(図4A)。クローン2および6のこの能力の増加は、ニューロンβIII−チューブリン染色によって確認した(図4B)。分化の1週間後およびこれらの観察のとおりに、クローン7は、THドーパミン作動性ニューロンを有するコロニーを生成する能力がより低かった(図4C)。クローン1が、他のクローンよりも多数のTHポジティブコロニーを誘導したことは注目すべきことである。クローンはまた、それらの心臓形成性の潜在能においても変動した。クローン2および3は、拍動している心筋細胞を産生するのに、クローン4よりも著しく効率的であった。対照的に、クローン1は、心臓細胞を生成するのに効率的ではなかった(図4D)。
【0255】
適切な条件下で、亜系はすべて、浮遊胚様体を生成する能力を有した。次いで、異なる胚葉/細胞型に関連付けられる遺伝子の発現は、2週間後に胚様体において定量化した。分析した遺伝子のすべての発現は、クローンの間で異なった(図5A〜H)。外胚葉Zic1(図5A)および神経外胚葉nkx2.2(図5B)の不均一な発現が観察され、ESCクローンの神経形成性の潜在能における変異性を示唆した。不均一性はまた、内胚葉遺伝子Foxa2を使用して観察された(図5C)。クローン2および3は、より高度なレベルの心臓マーカーMyh7を誘導した(図5D)が、肝臓α−フェトプロテインは、クローン7においてより生成された(図5E)。変異性はまた、膵臓インスリン(図5F)ならびに中胚葉Tal1(図5G)および筋細胞アクチニン1(図5H)を生成するクローンの能力において観察された。
【0256】
まとめると、これらのデータにより、クローン系が、同じ分化能を共有しないことが示され、かつ同じ培養におけるその個々の多能性ESCが機能的に不均一であることが確認される。
【0257】
クローンの不均一性のこの概念はまた、他のESC系(D3)においても試験した。亜系は、限界希釈法によってD3から生成し、クローンはそれぞれ、ゲノム解析および全遺伝子発現プロファイルにかけた。CGR8系について観察されたように、亜系の間で主なゲノムの異常はなかった。遺伝子発現アレイを実行し、初期ICMに対応する多能性マーカーはすべて、クローンにおいて検出された(図6A)。D3亜系は、βIII−チューブリン+ニューロン(図6B)、NeuN+成熟期ニューロン(図6C)、およびTH+ドーパミン作動性ニューロン(図6D)を含む、コロニーを生成するそれらの能力において、著しく異なり、ESCにおける細胞の個体性が確認された。
【0258】
参考文献
以下の参考文献は、それらが、本明細書において記載されるものに対して補足的な、例示的な手順のまたは他の詳細を提供する程度まで、参照によって本明細書において明確に組み込まれる。
【0259】
【表5−1】

【0260】
【表5−2】

【0261】
【表5−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞のクローン集団を作製するための方法であって、
a)インビトロにおいて増幅され、未分化または本質的に未分化の状態に維持された多能性または多分化能性細胞の集団を得る工程;
b)該集団の個別化された細胞を増幅して細胞のクローン集団にする工程;ならびに
c)神経細胞、肝細胞、または心筋細胞のいずれかについて少なくとも約50%均一である集団に分化する能力を有することが決定された、細胞の1つまたはそれより多くのクローン集団を選択する工程を含む方法。
【請求項2】
前記選択された細胞のクローン集団が、心臓形成性の分化能を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クローン集団が、少なくとも約65%心筋細胞の細胞に分化する能力を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クローン集団が、少なくとも約75%の心筋細胞の細胞に分化する能力を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記クローン集団が、少なくとも約90%の心筋細胞の細胞に分化する能力を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多能性細胞が、ヒト胚性幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択された細胞のクローン集団が、神経形成性の分化を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記クローン集団が、少なくとも約65%の神経細胞に分化する能力を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記クローン集団が、少なくとも約75%の神経細胞に分化する能力を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記神経細胞が、ドーパミン作動性ニューロンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記多能性細胞が、ヒト胚性幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒト胚性幹細胞が、H1、H9、hES2、hES3、hES4、hES5、hES6、BG01、BG02、BG03、HSF1、HSF6、H1、H7、H9、H13BおよびH14からなるリストから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記多能性細胞が、誘導多能性細胞(iPSC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記iPSCが、iPS 6.1、iPS 6.6、iPS、iPS 5.6、iPS 5.12、iPS 5.2.15、iPS 5.2.24、iPS 5.2.20、iPS 6.2.1、およびiPS 5/3−4.3からなるリストから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記選択された細胞のクローン集団を増幅する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
細胞が、神経細胞、肝細胞、または心筋細胞のいずれかについて少なくとも約50%均一な集団に分化する能力を有するかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記選択された細胞のクローン集団を提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
保存または輸送のための、前記選択された細胞のクローン集団を調製する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記保存または輸送のための細胞の調製が、該細胞を凍結させる工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記増幅された細胞を試験化合物に曝露する工程、および該増幅された細胞における、毒性と関連する細胞パラメーターを測定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記クローン集団が、分化作用物質への曝露によって、少なくとも約50%の心筋細胞を含む細胞の集団に分化できる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞のクローン集団が、ヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記多分化能性または多能性細胞が、前記個別化の前に少なくとも1回継代されている、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法によって作製される、複数のクローン由来心筋細胞。
【請求項25】
前記心筋細胞が組織中に含まれる、請求項24に記載の心筋細胞。
【請求項26】
前記組織は、適した容器手段中に含まれる、請求項25に記載の心筋細胞。
【請求項27】
複数のクローン由来心筋細胞組織が、容器手段中に含まれる、請求項26に記載の心筋細胞。
【請求項28】
請求項1に記載の方法によって作製される複数のクローン由来心筋細胞および薬学的に許容されるキャリアを含む、組成物。
【請求項29】
向上した神経分化能を示す細胞のクローン集団を調製するための方法であって、
a)インビトロにおいて増幅され、未分化または本質的に未分化の状態に維持された多能性または多分化能性細胞の集団を得る工程;
b)該多分化能性または多能性細胞の集団由来の複数の細胞を個別化および増幅する工程;
c)該個別化された細胞から増幅された細胞を、神経細胞型に分化する能力について試験する工程;および
d)分化作用物質に該細胞を曝露することによって少なくとも約50%の神経細胞に分化できる、増幅された細胞を選択する工程
を含む、方法。
【請求項30】
前記増幅された細胞が、75%のドーパミン作動性ニューロンに分化できる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記多能性または多分化能性細胞が、多能性細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記多能性細胞が、ヒト胚性幹細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒト胚性幹細胞が、H1、H9、hES2、hES3、hES4、hES5、hES6、BG01、BG02、BG03、HSF1、HSF6、H1、H7、H9、H13BおよびH14からなるリストから選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記多能性細胞が、誘導多能性細胞(iPSC)である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記iPSCが、iPS 6.1、iPS 6.6、iPS、iPS 5.6、iPS 5.12、iPS 5.2.15、iPS 5.2.24、iPS 5.2.20、iPS 6.2.1、およびiPS 5/3−4.3からなるリストから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記神経細胞を試験化合物に曝露する工程、および該神経細胞における、毒性と関連する細胞パラメーターを測定する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
請求項1に記載の方法によって作製される、複数のクローン由来の神経細胞。
【請求項38】
前記神経細胞が組織中に含まれる、請求項37に記載の神経細胞。
【請求項39】
前記組織が、適した容器手段中に含まれる、請求項38に記載の神経細胞。
【請求項40】
複数のクローン由来神経組織が、容器手段中に含まれる、請求項37に記載の神経細胞。
【請求項41】
請求項1に記載の方法によって作製される複数のクローン由来神経細胞および薬学的に許容されるキャリアを含む、組成物。
【請求項42】
試験化合物をスクリーニングするための方法であって、
a)複数の心筋細胞、肝細胞、または神経細胞を該試験化合物と接触させる工程;
b)該試験化合物との接触に起因する、該細胞の表現型または活性の何らかの変化を決定する工程を含み、該細胞が、請求項1に記載の方法によって作製される、方法。
【請求項43】
前記表現型または活性が、毒性の測定値であなる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
1つまたはそれより多くの遺伝子の発現が、前記複数の心筋細胞または神経細胞において測定される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記1つまたはそれより多くの遺伝子が、活性化カスパーゼ3、NF−kB、TNF−アルファ、熱誘導性因子(HIF−1アルファ)、熱ショックタンパク質(Hsp)、トランスアミナーゼ、ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼから選択される群からの少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記遺伝子発現が、ハイスループット遺伝子配列決定、ウエスタンブロット、遺伝子発現アレイ、フローサイトメトリー、免疫蛍光法、プロモーター/レポーター遺伝子ベースのアッセイ、または比色アッセイを使用して測定される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
表現型または活性の何らかの変化の決定が、心筋細胞の収縮、細胞死、活動電位のパターン、およびイオン透過性からなる群から選択されるパラメーターを評価する工程を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記多能性または多分化能性細胞が、ヒト細胞である、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
心臓形成性の分化能を示す細胞のクローン集団を作製するための方法であって、
a)インビトロにおいて増幅され、未分化または本質的に未分化の状態に維持された多能性または多分化能性細胞の集団を得る工程;
b)前記集団の個別化された細胞を細胞のクローン集団に増幅する工程;
c)心筋細胞について少なくとも約50%均一である集団に分化する能力を有することが決定された、細胞の1つまたはそれより多くのクローン集団を選択する工程;ならびに
d)工程(c)において観察される、前記増幅された細胞が心筋細胞に分化する能力に基づいて、前記選択された細胞を、細胞および組織工学、薬剤スクリーニング、または細胞療法のために使用する工程を含む、方法。
【請求項50】
神経細胞の実質的に均一な集団を被験体に投与する工程を含む、疾患を治療する方法であって、前記神経細胞が、
a)インビトロにおいて増幅され、未分化または本質的に未分化の状態に維持された多能性または多分化能性細胞の集団を得る工程;
b)該集団の個別化された細胞を細胞のクローン集団に増幅する工程;
c)神経細胞型について少なくとも約50%均一である集団に分化する能力を有することが決定された、細胞の1つまたはそれより多くのクローン集団を選択する工程;および
d)該細胞の1つまたはそれより多くの選択された集団の細胞またはそれらの子孫を提供する工程を含む方法によって作製されたものである、方法。
【請求項51】
前記神経細胞が、ドーパミン作動性ニューロンである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記疾患が、パーキンソン病である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記ドーパミン作動性ニューロンの集団が、黒質緻密部の少なくとも一部分を含む領域に注射される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
約100,000〜約10,000,000細胞が、注射される、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記被験体が、ヒトである、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
被験体における心疾患を治療するための方法であって、工程1の方法によって作製される複数のクローン由来心筋細胞を被験体に投与する工程を含み、前記心疾患が治療される、方法。
【請求項57】
前記被験体が、虚血性心疾患を有する被験体として同定される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記心筋細胞を静脈内に、動脈内に、または心筋内に投与する工程を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
心疾患の治療のための療法の1つまたはそれより多くの副次的な形態を実行する工程をさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記被験体の心臓の心機能が向上する、請求項56に記載の方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−512671(P2013−512671A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542160(P2012−542160)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058570
【国際公開番号】WO2011/068879
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(505098937)リサーチ ディベロップメント ファウンデーション (16)
【Fターム(参考)】