説明

視線誘導装置および視線誘導システム

【課題】車両の乗員が視認しやすい表示を行うことが可能な技術を提供する。
【解決手段】視線誘導装置10は、所定範囲に可視光のレーザー光を出力するレーザー光出力部20と、レーザー光が自動車専用道路上の外側線に照射されるようにレーザー光出力部20の俯角を調整可能にするとともに、自動車専用道路を走行する車両の乗員の目の高さよりも低い所定位置においてレーザー光出力部20を自動車専用道路の道路端に設置された支持部に連結する連結部30とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視線誘導装置および視線誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の上方に設置されたレーザー光の出力装置からレーザー光を走査しつつ道路上の表示線(以下、外側線という)に照射することで、道路の上方から鉛直方向に延びる壁状もしくは膜状の光の表示を行う技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2856316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術においては道路の上方から下方に向けてレーザー光を照射するため、道路上の歩行者や車両の乗員からレーザー光の出射口を視認し得る。このため、歩行者や乗員が出射口を直視することを考慮してレーザー光の強度を抑制せざるを得ない。従って、空気中の水分や塵により光が反射することによって視認される壁状もしくは膜状の部位は出射口付近でしかみることができず視認性が悪かった。また、上方から下方に向けて形成される壁状もしくは膜状の光は車両の乗員から見た場合の水平方向の幅が狭く非常に視認しにくいといった問題があった。さらに、レーザー光の出力装置が道路の上方に設置されるため、施工、調整、保守が極めて難しいといった問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、車両の乗員にとって安全で視認しやすい表示を行うことが可能な技術の提供を目的とする。また、施工、調整、保守が容易な視線誘導装置および視線誘導システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明においては、所定範囲に可視光のレーザー光を出力するレーザー光出力手段と、当該レーザー光出力手段を道路端に設置するための支持部に連結する連結手段とによって視線誘導装置を構成する。この構成において、連結手段においては、レーザー光が自動車専用道路上の外側線に照射されるようにレーザー光出力手段の俯角を調整可能である。従って、所定範囲に可視光のレーザー光を出力するレーザー光出力手段にて外側線を照明することが可能である。さらに、レーザー光出力手段の出射口と外側線との間に霧などのレーザー光を反射する物体が存在する状態において、路肩上の空間に出射口を頂点とし外側線を底辺とした三角形を出現させることができる。このため、自動車専用道路において、外側線を境にして車両の走行車線より外側の領域を三角形の面によって示すことが可能である。
【0006】
さらに、連結手段においては、自動車専用道路を走行する車両の乗員の目の高さよりも低い所定位置にレーザー光出力手段を配置する。従って、レーザー光出力手段の出射口を頂点とし外側線を底辺とした三角形において、当該三角形の頂点が車両の乗員の目の高さよりも低い所定位置に存在し、底辺が自動車専用道路の路面に存在する状態となる。このため、三角形の面が路面に対して鋭角に交差する状態で三角形の面が車両の乗員に視認されることになる。従って、上方から下方に向けて鉛直方向に壁状もしくは膜状の光の表示を行う構成と比較して、乗員は広い面積にて光の表示を視認することができる。この結果、車両の乗員が視認しやすい表示を行うことが可能である。
【0007】
さらに、レーザー光出力手段は、自動車専用道路を走行する車両の乗員の目の高さよりも低い所定位置にて道路端に設置され、路面上の外側線にレーザー光が照射される。このため、レーザー光出力手段の俯角は0よりも大きい(水平方向に平行な方向よりも下を向いている)。従って、レーザー光が車両の乗員に視認されるおそれはなく、上方から下方に向けて鉛直方向に壁状もしくは膜状の光の表示を行う構成と比較してレーザー光の強度を強くすることができる。この結果、車両の乗員が視認しやすい表示を行うことが可能である。また、レーザー光出力手段が目の高さより低い位置に設置されることによって、道路端への装置の施工と、設置後の光軸合せの調整や保守管理が格段に容易となる。
【0008】
ここで、レーザー光出力手段は、所定範囲に可視光のレーザー光を出力することができればよい。すなわち、所定範囲に出力される可視光のレーザー光によって外側線を照明することができるようにレーザー光出力手段を構成することができればよい。所定範囲は自動車専用道路の路面上での反射光が外側線の形状として視認されるように構成することが好ましく、反射効率の悪い外側線以外には照射されないように構成することが好ましい。
【0009】
連結手段は、道路端にレーザー光出力手段を配置することによってレーザー光出力手段の俯角および位置が自動車専用道路に対して相対的に変化しないように固定することができればよい。なお、俯角はレーザー光出力手段におけるレーザー光の出射口から出力されるレーザー光の方向と水平方向との角度であり、所定範囲の中央に位置する光軸と水平方向との角度によって俯角を定義すればよい。
【0010】
さらに、レーザー光出力手段を連結する所定位置は、自動車専用道路を走行する車両の乗員の目の高さよりも低い位置であり、当該所定位置から俯角を設けてレーザー光出力手段が配置されることで自動車専用道路を走行する車両の乗員がレーザー光出力手段の出射口を直視できないように構成されていればよい。むろん、レーザー光出力手段の出射口を乗員が視認できないようにするためにフードを取り付ける構成としても良い。自動車専用道路を走行する車両の乗員の目の高さよりも低い所定位置は、予め決められていればよい。例えば、多数の車両に乗る乗員の目の高さを統計的に特定し当該高さよりも低い位置を所定位置とする構成や、各種の文献(例えば、道路構造令等の法令)によって規定された乗員の目の高さよりも低い位置を所定位置とする構成等を採用可能である。乗員の目の高さの位置としては自動車専用道路から1.2mの高さの位置が挙げられる。
【0011】
さらに、レーザー光出力手段から出力されるレーザー光の進行方向を予めレンズ系によって調整する構成としても良い。例えば、レンズ系によって、レーザー光生成部から出力されたレーザー光を外側線上の予め決められた長さの範囲に到達させるとともにレーザー光の光軸に対して垂直な面上でのレーザー光のエネルギー分布を均一化させる構成とする。すなわち、外側線上の予め決められた長さの範囲は矩形であり、当該矩形の範囲にレーザー光を到達させるため、レンズによってレーザー光の光軸に対して垂直な面上で矩形状に広がるようにレーザー光の進行方向を変化させる。さらに、当該矩形の範囲においてレーザー光のエネルギー分布を均一化させると、外側線上に到達したレーザー光のエネルギー分布が外側線上でほぼ均一となり、車両の乗員が外側線を明確に視認できるように構成することができる。
【0012】
さらに、レーザー光の色は限定されないものの、乗員が視認しやすい色であることが好ましい。出願人の試験では緑色のレーザー光であれば乗員にとって視認しやすいことが判明している。そこで、レーザー光出力手段から出力されるレーザー光を緑色レーザー光とすることが好ましい。例えば、赤外線レーザーを生成する赤外線レーザー生成部と、赤外線レーザーを波長変換し緑色レーザー光を生成する波長変換部とを備える構成とすれば、容易に緑色レーザー光を生成することが可能になる。
【0013】
さらに、レーザー光出力手段を連結する所定位置は、レーザー光出力手段の俯角が25.6°以下であるように設定される所定位置を設定しても良い。すなわち、車両の乗員の目の高さの典型値が1.2m、レーザー光出力手段を支持する支持部から外側線までの距離が2.5mである状態を想定するとレーザー光出力手段の俯角が25.6°となり、外側線までの距離が2.5m以上であることを想定すれば、俯角が25.6°以上となる。この構成によれば、典型的な道路において、レーザー光の正反射成分が乗員に視認されないように構成しつつ、外側線を境にして車両の走行車線より外側の領域を三角形の面によって示すことが可能である。
【0014】
さらに、自動車専用道路の延びる方向に沿って複数個の視線誘導装置を並べることによって視線誘導システムを構成してもよい。この構成によれば、外側線を底辺とし、レーザー光出力手段を頂点とする三角形を、自動車専用道路が延びる方向に沿って複数個並ぶように表示することができ、車両の乗員が走行車線の前方外側に位置する路肩の存在を極めて容易に認識することが可能になる。
【0015】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法としても発明は実現可能である。また、以上のような視線誘導装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。また、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、実現態様は適宜、変更可能である。また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であっても良いし光磁気記録媒体であっても良いし、今後開発されるいかなる記録媒体においても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(1A)は本発明の一実施形態にかかる視線誘導装置の側面図、(1B)は本発明の一実施形態にかかる視線誘導装置の正面図である。
【図2】(2A)は本発明の一実施形態にかかる視線誘導装置のブロック図、(2B)は設置されたレーザー光出力部を示す模式図である。
【図3】(3A)は外側線と外側線の照射するレーザー光との位置関係を示す詳細図、(3B)は外側線に対するレーザー光出力部とレーザー光との関係を図2(2A)の矢印A方向から見た模式図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる視線誘導装置を含む視線誘導システムを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる視線誘導装置を含む視線誘導システムの実施例の撮影画像を示す図である。
【図6】レーザー光の焦点をレーザー光出力部と外側線との中間に位置するように構成した場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)視線誘導装置の構成:
(2)他の実施形態:
【0018】
(1)視線誘導装置の構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかる視線誘導装置の側面図、図1Bは正面図である。同図1Aおよび図1Bにおいては、視線誘導装置10を実線によって示しており、視線誘導装置10に付属する付属装置は破線で示している。これらの図1A,図1Bに示す視線誘導装置10は、レーザー光出力部20と連結部30とを備えている。レーザー光出力部20は、内部にレーザー光を生成する装置が備えられており、略角柱状の部材の上辺および対向する側辺を覆うフードが取り付けられている。レーザー光出力部20の詳細構成は後述する。
【0019】
連結部30は、レーザー光出力部20の角度を調整しつつ、当該連結部30を介して道路端に設置されたコンクリート壁からなる支持部40(図4参照)にレーザー光出力部20を連結するための装置であり、角度調整部31とアーム部32と角柱部33,34と台座部35とを備えている。台座部35は板状部材の2辺を屈曲させることによって形成される部材であり、図示しない穴に支持部から延びる支柱を挿入するとともにねじ止めすることによって台座部35を支持部40に固定することが可能である。
【0020】
台座部35には、当該台座部35に形成される平面に対して垂直方向に延びる角柱部34が取り付けられ、当該角柱部34には角柱部33が取り付けられている。さらに、角柱部33の一面には、台座部35の上方の空間において台座部35の前記平面に略平行な方向に延びるアーム部32が取り付けられている。アーム部32の先端には、角度調整部31が取り付けられている。
【0021】
角度調整部31は、2個の円柱状部材を備えており、当該円柱状部材は軸が平行になるように角度調整部31に固定されている。また、角度調整部31は略半円形であるとともに当該半円の周に平行な延びる穴が形成された板状の部材を備えている。当該板状の部材はレーザー光出力部20に取り付けられるとともに、一方の円柱状部材の軸と半円の中心とが一致するように当該一方の円柱状部材に取り付けられている。さらに、他方の円柱状部材は上述の穴に挿入されている。従って、レーザー光出力部20は、一方の円柱状部材を中心にして回転可能である。
【0022】
なお、本実施形態にかかるレーザー光出力部20はレーザー光の出射口20aからレーザー光を出力することが可能であり、当該レーザー光の出射口20aから所定の立体角でレーザー光が出力されるが、その中央の点を光軸(図1Aに示す一点鎖線)とみなした場合に、光軸と水平方向(図1Aに示す二点鎖線)とのなす角をレーザー光出力部20の俯角αと定義する。この定義によると、角度調整部31は俯角αを調整可能な構成となる。
【0023】
また、本実施形態において、レーザー光出力部20が、自動車専用道路の道路端に設置された支持部40に対して連結部30によって支持されることにより、レーザー光出力部20は、自動車専用道路を走行する車両の乗員の目の高さよりも低い所定位置に支持される。本実施形態においては、レーザー光出力部20のレーザー光出射口20aが自動車専用道路から1.2m以下の高さになるように連結部30を介して支持部40に支持される。図2Bにおいては、自動車専用道路Rとレーザー光出力部20の出射口20aとの関係を模式的に示しており、レーザー光出力部20の側方(角度調整部31によって俯角を調整可能な面に対して垂直な方向)から当該レーザー光出力部20を眺めた状態を示している。ここでは、自動車専用道路を走行する車両の乗員の目の高さが1.2mより高い位置になるとみなしており、レーザー光出力部20の高さは、自動車専用道路を走行する車両の乗員がレーザー光出力部20から出力されるレーザー光を光軸に平行な方向から直視できないように、高さ1.2mの位置に設置してある。むろん、レーザー光出力部20の高さは、自動車専用道路を走行する車両の乗員がレーザー光出力を直視できない高さであれば良く、1.2m以下であればよい。
【0024】
レーザー光出力部20は、図1A,1Bにおいて破線で示す付属装置が備える電源供給部から電力の供給を受けて駆動する。図2Aは、レーザー光出力部20の構成を示すブロック図である。同図2Aに示すように、レーザー光出力部20は、レーザー光生成部21とレンズ系22とを備えている。また、レーザー光生成部21は赤外線レーザー生成部21aと波長変換部21bとを備え、レンズ系22は第1レンズ系22aと第2レンズ系22bとを備えている。
【0025】
赤外線レーザー生成部21aは、波長1064nmの赤外線レーザーを出力する半導体レーザー励起YAGレーザー装置である。波長変換部21bは、SHG(Second harmonic generation)によって1064nmの赤外線レーザーの波長を変換し532nmの緑色レーザー光を生成する装置である。すなわち、赤外線レーザー生成部21aから出力された赤外線レーザーは、波長変換部21bに入力し、波長変換部21b内で赤外線レーザーが緑色レーザー光に変換され、波長変換部21bから緑色レーザー光が出力される。なお、図2Aにおいては、赤外線レーザーを一点鎖線、緑色レーザー光を破線で示している。
【0026】
レンズ系22は、自動車専用道路上の外側線の幅方向(自動車専用道路が延びる方向に垂直な方向)に緑色レーザー光を均一化する第1レンズ系22aと、自動車専用道路上の外側線の長さ方向(自動車専用道路が延びる方向に平行な方向)に緑色レーザー光を均一化する非球面レンズからなる第2レンズ系22bとを備えている
【0027】
本実施形態において、第1レンズ系22aは複数のレンズを備えており、ガウシアンキャンセル光学系によって、レーザー光出力部20の出射口20aの所定方向(本実施形態においては、図1Bに示す正面図のように出射口20aに正対した場合の上下方向(D1方向))に均一なエネルギー分布となるように緑色レーザー光の進行方向が調整される。
【0028】
図2Bにおいては、上述のようにレーザー光出力部20の側方から当該レーザー光出力部20を眺めた状態を示しており、この例において、自動車専用道路R上の外側線Lはレーザー光出力部20の出射口20aから水平方向に2.5m離れた位置に存在する。すなわち、当該2.5mは道路端から外側線までの距離であり、図2Bに示す外側線Lより左側が路肩、外側線Lより右側が走行車線となっている。また、レーザー光出力部20においては、角度調整部31によって、出射口20aが外側線Lに向けられ、緑色レーザー光が自動車専用道路R上の外側線Lに照射され、かつ、外側線L以外の部分に緑色レーザー光が照射されないように第1レンズ系22aのレンズ構成および俯角が調整されている。
【0029】
具体的には、図2Bのように緑色レーザー光出力部20は、路面から1.2mの位置の出射口20aから15cm幅(自動車専用道路が延びる方向に垂直な方向の幅)の外側線Lの中心に光軸が一致するように俯角α=25.6°で出射される。また、図2Bの外側線L近傍の部分拡大図3Aのように、緑色レーザー光が外側線Lの幅15cmの内側を照射するように第1レンズ系のレンズ設計が行われている。なお、図3Aに示す例においては、レーザー光出力部20の出射口20aに対して平行かつ外側線Lの路側寄りの端点を通る面S内において、外側線Lを中心として面Sに示す矢印方向に沿って約4cmに広がるように第1レンズ系のレンズ設計が行われている。
【0030】
従って、レーザー光出力部20の出射口20aから出力された緑色レーザー光は、同図2Bおよび3Aにて破線で示すように広がりつつ進行し、外側線Lに照射される。なお、外側線Lは、白ペイントにJISR3301に規定された微小なガラスビーズを混ぜた塗料によって一般に形成されており、外側線Lに照射された緑色レーザー光はガラスビーズで拡散するため外側線Lの全幅に緑色レーザー光を照射しなくても外側線Lを均一に明るく光らせることが試験によって確認されている。また、外側線Lに照射された緑色レーザー光は外側線Lで減衰し、走行車線側に対して強い正反射光成分が生じないことが試験によって確認されている。
【0031】
そして、当該緑色レーザー光は、第1レンズ系22aによって、図1Bに示す正面図において出射口20aに正対した場合の上下方向(D1方向)に均一なエネルギー分布となるように進行方向が調整されている。従って、図2Bにおいては、レーザー光出力部20の出射口20aに対して平行な面S内で、一点鎖線の矢印で示す方向のエネルギー分布が均一となる。この結果、外側線Lに到達する緑色レーザー光は当該外側線L上で図2Bの左右方向(外側線Lの幅方向)にほぼ均一なエネルギー分布となる。
【0032】
第2レンズ系22bは非球面レンズを備えており、レーザー光出力部20の出射口20aにおいて上述の所定方向に垂直な方向(図1Bに示す正面図のように出射口20aに正対した場合の左右方向(D2方向))に均一なエネルギー分布となるように緑色レーザー光の進行方向が調整される。
【0033】
図3Bにおいては、図2Bに示す矢印A方向に沿ってレーザー光出力部20を眺めた状態を示しており、同図3Bに示すように、緑色レーザー光は、出射口20aから自動車専用道路Rに向けて進行する際に、図3Bに示す左右方向に広がりながら進行する。出射口20aから緑色レーザー光が出力される範囲は光軸を含む面内において90°である。そして、当該緑色レーザー光は、第2レンズ系22bによって、図1Bに示す正面図において出射口20aに正対した場合の左右方向(D2方向)に均一なエネルギー分布となるように第2レンズ系のレンズ設計が行われている。従って、図2Bに示す面S内で、図2Bの紙面に対して垂直な方向(すなわち、図3Bに示す左右方向)にエネルギー分布が均一となる。この結果、外側線Lに到達する緑色レーザー光は当該外側線L上で図3Bの左右方向(外側線Lの長さ方向)にほぼ均一なエネルギー分布となる。
【0034】
以上のように、本実施形態においては、外側線Lの幅方向と長さ方向との双方にエネルギー分布が均一となるように緑色レーザー光のエネルギー分布が調整される。従って、外側線Lにおける緑色レーザー光の乱反射は均一に生じ、外側線Lの全体が視認できるように外側線Lを照明することが可能である。
【0035】
以上の視線誘導装置10は、単独で使用されても良いが、自動車専用道路Rの延びる方向に沿って複数個の視線誘導装置10を並べて支持部40に設置することで複数の視線誘導装置10からなる視線誘導システムを構成してもよい。図4は、自動車専用道路Rの道路端に設置された支持部40に対して、複数の視線誘導装置10を設置した状態を示している。個々の視線誘導装置10からは緑色レーザー光が破線で示す範囲で出力され、当該緑色レーザー光が外側線Lに照射される。従って、破線で示す緑色レーザー光の照射範囲の上面においては、外側線Lを底辺、レーザー光出力部20の出射口20aを頂点とした厚みを持った三角形が緑色レーザー光によって形成される。このため、霧などに対して当該三角形が路肩上の空間に出現し、図4の奥側から手前側に進行する車両の乗員は路肩上に緑色の三角形が出現している状態を容易に認識することができ、当該乗員は路肩と走行車線とを明確に区別することができる。そして、上述のように、外側線Lに照射される緑色レーザー光のエネルギー分布が均一で、外側線Lによって緑色レーザー光が外側線Lに含まれるガラスビーズなどの反射帯によって拡散されるため、外側線Lの全体を効果的に照明することができる。この結果、路肩上の三角形の表示と外側線Lが明るく光ることで車両の乗員により明確に外側線を認識させることができる。図5は、当該図4に示す視線誘導システムの実施例の撮影画像を示す図である。
【0036】
なお、上記の実施形態においては、第1レンズ系22aおよび第2レンズ系22bを用いて外側線の幅方向と長さ方向のレーザー光を均一にする場合を例示したが、図1Bに示す正面図において出射口20aに正対した場合の上下方向(D1方向)と左右方向に対して異なる曲率のトロイダル面を持つトロイダルレンズからなる1つのレンズ系によって代用してもよい。
【0037】
また、出射口20aに焦点を形成するレンズ系を持つ場合を例示したが、図6のように出射口20aと外側線Lとの間に焦点を持つようにレンズを設計しても同様に厚みのある三角形を表示できる。
【0038】
さらに、上記の実施形態においては、請求項に述べる支持部をコンクリート壁によって形成する場合を例示したが、道路端に必要な長さを有する角柱部34を自立固定させて利用することが可能である。この場合、角柱部34を固定する路面上の位置が支持部となる。
【0039】
また、連結部に関しても同様に、上記の実施形態に限定されるものではなく、角度調整部31と道路端に自立させた角柱部34とを角度調整を可能とする適宜な中間部材(図示せず)を介して連結する構成を採用してもよい。
【0040】
(2)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、車両の乗員がレーザー光を直接的に視認できない位置に設置された視線誘導装置からレーザー光を外側線に照射する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、視線誘導装置10が人感センサを備える構成とし、視線誘導装置10に近づきレーザー光を故意に覗こうとする人物が所定距離以内に接近した場合にレーザー光の出力を停止されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…視線誘導装置、20…レーザー光出力部、21…レーザー光生成部、21a…赤外線レーザー生成部、21b…波長変換部、22…レンズ系、22a…第1レンズ系、22b…第2レンズ系、30…連結部、31…角度調整部、32…アーム部、33,34…角柱部、35…台座部、40…支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲に可視光のレーザー光を出力するレーザー光出力手段と、
前記レーザー光が自動車専用道路上の外側線に照射されるように前記レーザー光出力手段の俯角を調整可能にするとともに、前記自動車専用道路を走行する車両の乗員の目の高さよりも低い所定位置において前記レーザー光出力手段を前記自動車専用道路の道路端に設置された支持部に連結する連結手段と、
を備える視線誘導装置。
【請求項2】
前記レーザー光出力手段は、
前記レーザー光を生成するレーザー光生成部と、
前記レーザー光生成部から出力された前記レーザー光を前記外側線上の予め決められた長さの範囲に到達させるとともに前記レーザー光の光軸に対して垂直な面上での前記レーザー光のエネルギー分布を均一化させるレンズ系と、
を備える
請求項1に記載の視線誘導装置。
【請求項3】
前記レーザー光生成部は、赤外線レーザーを生成する赤外線レーザー生成部と、前記赤外線レーザーに基づいて緑色レーザー光を生成する波長変換部とを備える、
請求項2に記載の視線誘導装置。
【請求項4】
前記所定位置は、前記自動車専用道路から1.2m以下の高さの位置である、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の視線誘導装置。
【請求項5】
前記所定位置は、前記レーザー光出力手段の俯角が25.6°以下であるように設定される、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の視線誘導装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の視線誘導装置が、前記自動車専用道路の延びる方向に沿って複数個並べられて前記支持部に連結されることによって構成される、
視線誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−23848(P2013−23848A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157659(P2011−157659)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】