説明

視覚センサのマウント装置と方法

【課題】視覚センサの正確な位置と姿勢が不明である場合、或いはその位置又は姿勢が変化している場合でも、視覚センサをロボットのハンドに正確にマウントすることができる視覚センサのマウント装置と方法を提供する。
【解決手段】ロボット座標系Σにおいてハンド11を3次元移動可能なロボット2と、視覚センサ座標系Σにおいてハンドの位置と姿勢を非接触で検出可能な視覚センサ14とを備える。ロボット座標系において視覚センサ14の検出範囲内にハンド11を移動して(S1)、視覚センサ14により視覚センサ座標系におけるハンド11の位置と姿勢を非接触で検出し(S2)、この検出結果からハンド11と視覚センサ14の相対位置関係を算出し(S3)、測定した相対位置関係からロボット座標系Σにおける視覚センサ14の位置と姿勢を算出し(S4)、ロボット座標系においてハンド11を移動してハンドに視覚センサ14をマウントする(S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを用いた自動生産システムにおける視覚センサのマウント装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを用いた自動生産システムにおいて、ロボットのハンドに種々のツールをマウントする手段として、特許文献1〜3が既に提案されている。
【0003】
特許文献1のオートツールチェンジャーは、工具取り付け器具に溝を設けて、この溝でロボットのハンドをガイドするものである。
特許文献2の多機能ロボットは、ロボットのハンドにロボットの作業領域が観測出来る視覚センサとツールチェンジャーがマウントされているものである。
特許文献3の把持装置は、情報取得手段と移動経路設定手段と制御手段とを備え、設定された移動経路に沿って、把持手段を移動させ、被把持部材を把持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−289690号公報、「オートツールチェンジャー」
【特許文献2】特開平02−237784号公報、「多機能ロボット」
【特許文献3】特開2009−107043号公報、「把持装置および把持装置制御方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1のオートツールチェンジャーでは、ツールをロボットのハンドにマウントする際に、メカニカルガイドや治具上の溝等を使って取り付け時の位置精度を確保していた。
また、視覚センサを用いる特許文献2,3の手段では、視覚センサの置かれている台とツールの位置関係に厳しい制約があった。
【0006】
そのため、従来の手段では、ロボットのハンドにマウントするために、視覚センサを正確に位置決めし、その位置と姿勢に基づきハンドを移動する必要があった。
従って、視覚センサの正確な位置と姿勢が不明である場合、或いはその位置又は姿勢が変化している場合には、視覚センサをハンドにマウントできなかった。
【0007】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、視覚センサの正確な位置と姿勢が不明である場合、或いはその位置又は姿勢が変化している場合でも、視覚センサをロボットのハンドに正確にマウントすることができる視覚センサのマウント装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ロボット座標系においてハンドを3次元移動可能なロボットと、
視覚センサ座標系においてハンドの位置と姿勢を非接触で検出可能な視覚センサとを備え、
(A)ロボット座標系において視覚センサの検出範囲内にハンドを移動して、視覚センサにより視覚センサ座標系におけるハンドの位置と姿勢を非接触で検出し、
(B)前記検出結果からハンドと視覚センサの相対位置関係を算出し、
(C)前記相対位置関係からロボット座標系における視覚センサの位置と姿勢を算出し、
(D)ロボット座標系において前記ハンドを移動して該ハンドに前記視覚センサをマウントする、ことを特徴とする視覚センサのマウント方法が提供される。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記視覚センサは、レーザーレーダ又は撮像カメラである。
【0010】
また、前記視覚センサは、単独又はその他のツールに固定されている、ことが好ましい。
【0011】
また本発明によれば、ロボット座標系においてハンドを3次元移動可能なロボットを制御するロボット制御装置と、
視覚センサ座標系においてハンドの位置と姿勢を非接触で検出可能な視覚センサとを備え、前記ロボット制御装置により、
(A)ロボット座標系において視覚センサの検出範囲内にハンドを移動して、視覚センサにより視覚センサ座標系におけるハンドの位置と姿勢を非接触で検出し、
(B)前記検出結果からハンドと視覚センサの相対位置関係を算出し、
(C)前記相対位置関係からロボット座標系における視覚センサの位置と姿勢を算出し、
(D)ロボット座標系において前記ハンドを移動して該ハンドに前記視覚センサをマウントする、ことを特徴とする視覚センサのマウント装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の装置と方法によれば、視覚センサをロボットのハンドにマウントする際に、まず視覚センサの視野内にハンドを移動し、そこでハンドを動かしながら視野内でのハンド位置を測定し、その値をもとに視覚センサとハンドの相対位置関係を逆算する。
従って、センサが通常とずれた場所に置かれていたとしても、ハンドが視覚センサの視野内に入るように移動さえすれば、センサを把持する事ができる。そのためこの手段では、ガイド付き治具等の特殊なハードウェアは不要であり、かつ、設置場所の正確な位置出しや教示がいらない。また視野内でハンド位置を変えて複数回測定することにより、単なる位置決めだけでなく、視覚センサ座標系とロボット座標系の統合も行うことができる。
【0013】
すなわち上記本発明の装置と方法によれば、ロボット制御装置により、視覚センサの検出結果からハンドと視覚センサの相対位置関係を算出し、この関係からロボット座標系における視覚センサの位置と姿勢を算出するので、視覚センサの正確な位置と姿勢が不明である場合、或いはその位置又は姿勢が変化している場合でも、視覚センサをハンドに正確にマウントすることができる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるマウント装置を備えたロボットの全体構成図である。
【図2】本発明のマウント方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明のマウント方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明によるマウント装置を備えたロボットの全体構成図である。この図において、(A)は全体図、(B)は(A)のB部説明図である。
【0017】
図1(A)において、本発明のマウント装置10は、ロボット制御装置12と視覚センサ14を備える。
【0018】
ロボット制御装置12は、ロボット座標系Σにおいてハンド11(ロボットハンド)を3次元移動可能なロボット2を制御する。このロボット2は、ロボットアーム3のアーム先端1にハンド11を有する。
【0019】
ここでロボット座標系Σとは、ハンド11を3次元動作させる際の座標系であり、ロボットの非作動位置(例えばベース中心)を原点とするX,Y,Zの座標系を有する。
【0020】
ロボット制御装置12は、例えばコンピュータであり、ハンド11を制御するロボットコントローラの機能を備えていることが好ましい。
ロボット制御装置12は、図示しない記憶装置及び演算装置を備える。
【0021】
記憶装置は、例えばハードディスク、メモリカード、ROM、RAM等であり、ロボット座標系Σと視覚センサ座標系Σの相対位置関係、ロボット制御装置12で実行する計算プログラム等を記憶する。
この相対位置関係、計算プログラム等は、図示しない入力装置、例えばキーボード、メモリリーダから記憶装置に入力されている。
なお、ロボット座標系Σと視覚センサ座標系Σの相対位置関係は、厳密な意味では未知でよく、概略の相対位置関係が既知であればよい。
【0022】
演算装置は、例えばコンピュータのCPUであり、記憶した計算プログラムと記憶した位置関係から、後述する演算を算出する。
【0023】
ハンド11は、この例では2本の把持爪11aを開閉して、視覚センサ14を把持する把持装置である。なお、本発明はこの構成に限定されず、ハンド11に視覚センサ14を固定できる限りで、その他の固定手段(例えばマグネット)であってもよい。
【0024】
視覚センサ14は、視覚センサ座標系Σにおいてハンド11の位置と姿勢を非接触で検出可能に構成されている。
視覚センサ14は、この例では撮像カメラ(例えばCCDカメラ)であるが、レーザで距離を計測するレーザーレーダであってもよい。
【0025】
また、この例では、視覚センサ14を単独でハンド11にマウントするが、本発明はこれに限定されず、視覚センサ14をその他のツール(例えば、各種工具やセンサ)に固定し、そのツールをハンド11にマウントしてもよい。
すなわち、種々のツールに視覚センサ14を固定することで、ツールをハンド11にマウントするために本発明を用いてもよい。
【0026】
図1(B)に示すように、視覚センサ14の所定の位置を基準とする座標系を視覚センサ座標系Σと呼ぶ。視覚センサ座標系Σも、X,Y,Zの座標を有する。
【0027】
視覚センサ14は、ハンド11の作動範囲において、予め所定の位置(例えばセンサ設置台4)に静置されている。
視覚センサ14の静置は、センサの視野を塞がない限りで、正確な位置と姿勢が不明であっても、振動その他の原因で静置の位置又は姿勢が変化していてもよい。
【0028】
図2は、本発明のマウント方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、本発明の方法は、S1〜S5の各ステップ(工程)からなる。
【0029】
初めに、ロボット座標系Σにおいて視覚センサ14の検出範囲内にハンド11を移動し(S1)、視覚センサ14により視覚センサ座標系Σにおけるハンド11の位置と姿勢を非接触で検出する(S2)。
S1,S2のステップは、例えばハンド11をロボット座標系ΣにおいてX,Y,Z方向にそれぞれ移動し、その移動量と視覚センサ座標系Σにおけるハンド11の位置と姿勢を検出するのがよい。
【0030】
視覚センサ14が撮像カメラである場合、撮像カメラで検出されるのは2次元画像上の位置であり、その画像上の位置変化とハンド11の実際の移動量から、視覚センサ座標系Σにおけるハンド11の3次元位置と姿勢を検出することができる。
また、視覚センサ14がレーザーレーダである場合、レーザーレーダで検出されるのはハンド11の3次元位置であり、視覚センサ座標系Σにおけるハンド11の3次元位置と姿勢を直接検出することができる。
【0031】
次に、S2ステップの検出結果からハンド11と視覚センサ14の相対位置関係を算出する(S3)。
すなわち、視覚センサ14の正確な位置と姿勢が不明である場合、或いはその位置又は姿勢が変化している場合でも、概略の相対位置関係が既知であれば、上記S1〜S3のステップにより、ロボット座標系Σと視覚センサ座標系Σの相対位置関係を、厳密な意味で求めることができ、この段階で、視覚センサ座標系Σとロボット座標系Σの統合を行うことができる。
【0032】
次いで、求めた相対位置関係からロボット座標系における視覚センサの位置と姿勢を算出し(S4)、ロボット座標系においてハンド11を移動してハンド11に視覚センサ14をマウントする(S5)。
【0033】
図3は本発明のマウント方法の説明図である。
この図において、視覚センサ14は、ハンド11の作動範囲において、センサの視野を塞がないように、例えばセンサ設置台4に静置されている。
なお、この図で13は視覚センサ14の本来あるべき位置であるが、振動その他の原因で静置の位置又は姿勢が変化しており、視覚センサ14の正確な位置と姿勢は不明である。
また図3において、ハンド11を動作させるロボット座標系Σと視覚センサ14を基準とする視覚センサ座標系Σは、互いに独立しており、概略の相対位置関係は既知であるとする。
【0034】
以下、本発明による装置の動作を説明する。
初めに、ロボットアーム3を動かしてハンド11を移動させ、視覚センサ14の視野内にハンド11が入る状態に持っていく。
予想位置で視野内に映らない場合はハンド11を動かして視野範囲を探索する。
【0035】
次に、視覚センサ14にてハンド11の位置を計測する。ハンド11の位置を動かして、この測定を例えば4回繰り返す。
なお視覚センサ14が撮像カメラである場合、撮像カメラ14の撮像画像をモニターしながらハンド11にフィードバックをかけてもいい。
ハンド11を複数回動かさずに1回の計測で撮れたハンド11の特徴点(例えばコーナ)4点を使って、時間を節約してもよい。
【0036】
次に、先の測定結果から、視覚センサ14とハンド11の相対位置関係を逆算し、視覚センサ14の把持場所にハンド11を移動させて視覚センサ14を把持(マウント)する。
【0037】
次に、視覚センサ14をハンド11で把持した後、そのままハンド11を3次元移動させ、この際に、基準マーカ等を視覚センサ14で計測することにより、把持位置にずれが無い事を確認する。
【0038】
なお、上述した視覚センサ14の代わりに、ツール側に磁石、ハンド側にホールプルーブ等の磁場センサを用いて、メカニカルガイドや治具上の溝等を用いずに、ツールをハンドにマウントすることもできる。
視覚センサの場合は把持した後の把持ずれ補正が、視覚センサそのものを使って行えるが、他のツールの場合は外部に置かれている視覚センサ等を利用して補うのがよい。
【0039】
通常、ロボットの作動範囲を定点に設置した視覚センサで観測するには、大きな視野角と高い解像度が必要となる。一般にこれらはセンサ自体が高コストとなるうえ、読み出しデータが大量となり計算負荷が高くなり、かつ計測誤差が大きくなる問題点がある。
これに対し、本発明の手段により、適宜、視覚センサをハンドにマウントすることにより、ロボットの作動位置に近接して検出できるので、高い解像度を低コストで達成し、かつ計算負荷が低くし、かつ計測誤差を小さくできる。
【0040】
上述した本発明の装置と方法によれば、視覚センサ14をロボット2のハンド11にマウントする際に、まず視覚センサ14の視野内にハンド11を移動し、そこでハンド11を動かしながら視野内でのハンド位置を測定し、その値をもとに視覚センサ14とハンドの相対位置関係を逆算する。
従って、視覚センサ14が通常とずれた場所に置かれていたとしても、ハンド11が視覚センサ14の視野内に入るように移動さえすれば、視覚センサ14を把持することができる。そのためこの手段では、ガイド付き治具等の特殊なハードウェアは不要であり、かつ、設置場所の正確な位置出しや教示がいらない。また視野内でハンド位置を変えて複数回測定することにより、単なる位置決めだけでなく、視覚センサ座標系Σとロボット座標系Σの統合も行うことができる。
【0041】
すなわち上記本発明の装置と方法によれば、ロボット制御装置12により、視覚センサ14の検出結果からハンド11と視覚センサ14の相対位置関係を算出し、この関係からロボット座標系Σにおける視覚センサ14の位置と姿勢を算出するので、視覚センサ14の正確な位置と姿勢が不明である場合、或いはその位置又は姿勢が変化している場合でも、視覚センサ14をハンド11に正確にマウントすることができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 アーム先端、2 ロボット、3 ロボットアーム、
10 マウント装置、11 ハンド、11a 把持爪、
12 ロボット制御装置、
13 視覚センサのあるべき位置、
14 視覚センサ(撮像カメラ、レーザーレーダ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット座標系においてハンドを3次元移動可能なロボットと、
視覚センサ座標系においてハンドの位置と姿勢を非接触で検出可能な視覚センサとを備え、
(A)ロボット座標系において視覚センサの検出範囲内にハンドを移動して、視覚センサにより視覚センサ座標系におけるハンドの位置と姿勢を非接触で検出し、
(B)前記検出結果からハンドと視覚センサの相対位置関係を算出し、
(C)前記相対位置関係からロボット座標系における視覚センサの位置と姿勢を算出し、
(D)ロボット座標系において前記ハンドを移動して該ハンドに前記視覚センサをマウントする、ことを特徴とする視覚センサのマウント方法。
【請求項2】
前記視覚センサは、レーザーレーダ又は撮像カメラである、ことを特徴とする請求項1に記載のマウント方法。
【請求項3】
前記視覚センサは、単独又はその他のツールに固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のマウント方法。
【請求項4】
ロボット座標系においてハンドを3次元移動可能なロボットを制御するロボット制御装置と、
視覚センサ座標系においてハンドの位置と姿勢を非接触で検出可能な視覚センサとを備え、前記ロボット制御装置により、
(A)ロボット座標系において視覚センサの検出範囲内にハンドを移動して、視覚センサにより視覚センサ座標系におけるハンドの位置と姿勢を非接触で検出し、
(B)前記検出結果からハンドと視覚センサの相対位置関係を算出し、
(C)前記相対位置関係からロボット座標系における視覚センサの位置と姿勢を算出し、
(D)ロボット座標系において前記ハンドを移動して該ハンドに前記視覚センサをマウントする、ことを特徴とする視覚センサのマウント装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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