説明

視覚刺激装置

【課題】運転者を煩わせることなく、運転者の有効視野を効果的に拡大する。
【解決手段】視覚刺激ECU1は、運転者の前方に配設されたLED31を短時間P1だけ発光させることによって、運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激ST1を運転者に付与する刺激付与部15と、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する要否判定部11と、要否判定部11によって有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、刺激付与部15を介して閾下刺激ST1を、予め設定された所定周期P1で繰り返して付与する刺激制御部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両に搭載され、有効視野を拡大するべく、運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激を与える視覚刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者の運転する車両による事故が発生する要因として、加齢に伴って有効視野角が狭くなることが指摘されている。そこで、従来、運転者の視覚に対して刺激を与える種々の方法、装置等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の警報システムは、運転者の視野内に配設された画像表示装置に、行動関連情報を画像又はシンボルの形態で、運転者の反応を必要とする状況に基づき表示する。ここで、表示の持続時間は、これが運転者の意識下であり、かつ無意識の知覚闘値よりは上であるように調整される。すなわち、画像表示装置に表示される画像又はシンボルは、運転者にとって運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激である。特許文献1に記載の警報システムでは、運転者の注意を低下させず、また運転者を煩わせることなしに警報を発することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−213194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の警報システムでは、画像表示装置に表示される画像又はシンボルに対応する交通標識等の物体の認知能力を高めることが可能となるが、運転者の有効視野内に、対象となる物体が存在することが前提となる。すなわち、運転者の有効視野の範囲に応じて、その効果が異なり、有効視野の外に存在する物体に対しては、その効果が期待できない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、運転者を煩わせることなく、運転者の有効視野を効果的に拡大することの可能な視覚刺激装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有している。第1の発明は、車両に搭載され、有効視野を拡大するべく、運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激を与える視覚刺激装置であって、運転者の前方に配設され、予め設定され、前記閾下刺激となる短時間の発光が可能に構成され、前記閾下刺激を運転者に付与する刺激付与手段と、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する要否判定手段と、前記要否判定手段によって有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、前記刺激付与手段を介して前記閾下刺激を、予め設定された所定周期で繰り返して付与する刺激制御手段と、を備える。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記要否判定手段によって有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、運転者の有効視野を拡大する対象の範囲である視野拡大範囲を設定する範囲設定手段を備え、前記発光制御手段が、前記範囲設定手段によって設定された視野拡大範囲に基づいて、前記刺激付与手段を制御する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、前記要否判定手段が、前記車両が交差点で左折又は右折する場合に、前記車両が前記交差点へ進入する時点から、前記交差点から脱出する時点までの期間である右左折期間において、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定する。
【0010】
第4の発明は、上記第3の発明において、前記範囲設定手段が、前記車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点の内、少なくとも1つの時点で、前記視野拡大範囲を設定する。
【0011】
第5の発明は、上記第1の発明において、前記要否判定手段が、ナビゲーション情報、GPS(Global Positioning System)情報及び車速情報の少なくとも1つの情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する。
【0012】
第6の発明は、上記第1の発明において、前記要否判定手段が、運転者の操舵操作情報、加減速操作情報及び方向指示操作情報の少なくとも1つの情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する。
【0013】
第7の発明は、上記第2の発明において、前記刺激付与手段が、運転者の前方の複数箇所にそれぞれ配設された複数個の発光体を備え、当該複数個の発光体を介して、運転者に前記閾下刺激を付与する。
【0014】
第8の発明は、上記第7の発明において、前記刺激制御手段が、前記刺激付与手段を介して、前記範囲設定手段によって設定された視野拡大範囲に基づいて、前記複数個の発光体の中から、発光させる対象の発光体を選定し、選定された発光体を発光させる。
【0015】
第9の発明は、上記第7の発明において、前記複数個の発光体が、ダッシュボード上面に配設された複数個のLED(Light Emitting Diode)であって、前記刺激付与手段が、前記LEDからの光線をフロントガラスで反射させて運転者に照射することによって前記閾下刺激を付与する。
【0016】
第10の発明は、上記第9の発明において、前記複数個のLEDが、ダッシュボード上面に幅方向に直線状に配設されている。
【0017】
第11の発明は、上記第1の発明において、前記刺激付与手段が、HUD(Head Up Display)を備え、当該HUDを介して、運転者に前記閾下刺激を付与する。
【0018】
第12の発明は、上記第11の発明において、前記刺激付与手段が、歩行者を示す画像、自転車を示す画像、車両を示す画像、標識を示す画像、及び、信号機を示す画像の内、少なくとも1つの画像を、前記HUDに表示させることによって、前記閾下刺激を運転者に付与する。
【0019】
第13の発明は、上記第1の発明において、前記刺激付与手段が、サイドミラーに配設されたLED(Light Emitting Diode)、及び、運転者の前方に配設されたディスプレイ、の少なくとも一方を介して、運転者に前記閾下刺激を付与する。
【0020】
第14の発明は、上記第1の発明において、前記所定周期が、前記短時間の値に基づいて設定される。
【発明の効果】
【0021】
上記第1の発明によれば、運転者の前方に配設され、予め設定され、前記運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激となる短時間の発光が可能に構成された刺激付与手段によって、前記閾下刺激が運転者に付与される。また、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かが判定される。更に、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、前記刺激付与手段を介して前記閾下刺激が、予め設定された所定周期で繰り返して付与される。従って、運転者を煩わせることなく、運転者の有効視野を効果的に拡大することができる。
【0022】
すなわち、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、前記閾下刺激が、予め設定された所定周期で繰り返して付与されるため、前記所定周期を適正な値(例えば、500msec)に設定することによって、前記閾下刺激の効果を維持することができるので、運転者を煩わせることなく、運転者の有効視野を効果的に拡大することができるのである。
【0023】
つまり、例えば、略50msecの間発光する閾下刺激による有効視野の拡大効果は、略500msecの間持続するため、500msecの周期で、前記閾下刺激を繰り返して付与することによって、運転者を煩わせることなく、有効視野の拡大効果を維持することができるのである。
【0024】
上記第2の発明によれば、有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、運転者の有効視野を拡大する対象の範囲である視野拡大範囲が設定される。また、設定された視野拡大範囲に基づいて、前記刺激付与手段が制御される。従って、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0025】
すなわち、運転者の有効視野を拡大する対象の範囲である視野拡大範囲を、適正な範囲に設定することによって、運転者の有効視野を適正な範囲まで拡大することができるので、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができるのである。
【0026】
例えば、右折をするために交差点に進入した時点では、対向車線を走行する直進車両、左折車両、前方及び側方(=進行方向)の横断歩道等の歩行者、自転車等を広く確認する必要があるため、左右方向に広く有効視野を拡大する必要があるので、前記視野拡大範囲を左右に広く設定することが好ましい。右折を開始した後は、特に、対向車線を走行する左折車両、進行方向の横断歩道等の歩行者、自転車等を確認する必要があるため、特に右方向に有効視野を拡大する必要があるので、前記視野拡大範囲を右方向に広く設定することが好ましい。
【0027】
上記第3の発明によれば、前記車両が交差点で左折又は右折する場合に、前記車両が前記交差点へ進入する時点から、前記交差点から脱出する時点までの期間である右左折期間において、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定される。従って、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0028】
すなわち、事故防止の観点から、車両が交差点へ進入した時点から、前記交差点から脱出する時点までの期間である右左折期間においては、特に、運転者の有効視野を拡大する必要があると考えられる。そこで、前記右左折期間において、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定されるため、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができるのである。
【0029】
上記第4の発明によれば、前記車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点の内、少なくとも1つの時点で、前記視野拡大範囲が設定される。従って、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0030】
すなわち、車両が交差点で左折又は右折する場合には、前記車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点における運転者の有効視野を適正な広さに拡大することが、事故を未然に防止するために有効であると考えられる。そこで、前記車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点の内、少なくとも1つの時点で、前記視野拡大範囲が設定されるので、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができるのである。
【0031】
例えば、右折をするために交差点に進入した時点では、対向車線を走行する直進車両、左折車両、前方及び側方(=進行方向)の横断歩道等の歩行者、自転車等を広く確認する必要があるため、左右方向に広く有効視野を拡大する必要があるので、前記視野拡大範囲を左右に広く設定することが好ましい。右折を開始した後は、特に、対向車線を走行する左折車両、進行方向の横断歩道等の歩行者、自転車等を確認する必要があるため、特に右方向に有効視野を拡大する必要があるので、前記視野拡大範囲を右方向に広く設定することが好ましい。
【0032】
上記第5の発明によれば、ナビゲーション情報、GPS情報及び車速情報の少なくとも1つの情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かが判定される。従って、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを正確に判定することができる。
【0033】
上記第6の発明によれば、運転者の操舵操作情報、加減速操作情報及び方向指示操作情報の少なくとも1つの情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かが判定される。従って、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを正確に判定することができる。
【0034】
上記第7の発明によれば、前記刺激付与手段が、運転者の前方の複数箇所にそれぞれ配設された複数個の発光体を備え、当該複数個の発光体を介して、運転者に前記閾下刺激が付与される。従って、簡素な構成で、運転者を煩わせることなく、運転者の有効視野を効果的に拡大することができる。
【0035】
上記第8の発明によれば、設定された視野拡大範囲に基づいて、前記複数個の発光体の中から、発光させる対象の発光体が選定され、選定された発光体が発光される。従って、簡素な構成で、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0036】
すなわち、前記複数個の発光体の中から、発光させる対象の発光体を適正に選定することによって、設定された視野拡大範囲まで、運転者の有効視野を拡大することができるのである。
【0037】
上記第9の発明によれば、前記複数個の発光体が、ダッシュボード上面に配設された複数個のLEDであって、前記刺激付与手段によって、前記LEDからの光線をフロントガラスで反射させて運転者に照射することにより前記閾下刺激が付与される。従って、更に簡素な構成で、運転者の有効視野を効果的に拡大することができる。
【0038】
すなわち、運転者からは、フロントガラスの反射点の位置に光源があるかのように見えるため、運転者が前方正面を見ている状態で、運転者の目に、反射点からの反射光が入射されるので、運転者に閾下刺激を効果的に付与することができるのである。
【0039】
上記第10の発明によれば、前記複数個のLEDが、ダッシュボード上面に幅方向に直線状に配設されている。従って、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0040】
すなわち、運転者の有効視野は、左右方向に拡大する必要があるのに対して、前記複数個のLEDが、ダッシュボード上面に幅方向に直線状に配設されているため、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができるのである。
【0041】
上記第11の発明によれば、前記刺激付与手段が、HUDを備え、当該HUDを介して、運転者に前記閾下刺激が付与される。従って、運転者を煩わせることなく、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0042】
すなわち、前記HUDを介して、運転者に前記閾下刺激が付与されるため、走行中の状況に応じた画像、シンボル等を前記閾下刺激として運転者に付与することが可能となるので、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができるのである。また、運転者からは、フロントガラスの反射点の位置に画像が表示されているかのように見えるため、運転者が前方正面を見ている状態で、運転者の目に、反射点からの反射光が入射され、運転者に閾下刺激を効果的に付与することができるのである。
【0043】
上記第12の発明によれば、前記刺激付与手段によって、歩行者を示す画像、自転車を示す画像、車両を示す画像、標識を示す画像、及び、信号機を示す画像の内、少なくとも1つの画像が、前記HUDに表示されて、前記閾下刺激が運転者に付与される。従って、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0044】
すなわち、歩行者を示す画像、自転車を示す画像、車両を示す画像、標識を示す画像、及び、信号機を示す画像の内、少なくとも1つの画像が、前記HUDに表示されて、前記閾下刺激として運転者に付与されるため、歩行者を示す画像、自転車を示す画像、車両を示す画像、標識を示す画像、及び、信号機を示す画像の中から、走行中の状況に応じて、適正な画像を選定して表示することが可能となる。また、例えば、歩行者を示す画像が前記閾下刺激として運転者に付与された場合には、運転者が、歩行者を認識するために要する時間が短縮される。従って、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができるのである。
【0045】
上記第13の発明によれば、前記刺激付与手段によって、サイドミラーに配設されたLED、及び、運転者の前方に配設されたディスプレイ、の少なくとも一方を介して、運転者に前記閾下刺激が付与される。従って、簡素な構成で、運転者の有効視野を効果的に拡大することができる。
【0046】
すなわち、ターンシグナルランプ等としてサイドミラーに配設されたLED、ナビゲーション情報、警報情報等を表示するべく運転者の前方に配設されたディスプレイ等の、他の目的で配設されている機器を介して、運転者に前記閾下刺激が付与されるため、簡素な構成で、運転者の有効視野を効果的に拡大することができるのである。
【0047】
上記第14の発明によれば、前記所定周期が、前記短時間の値に基づいて設定される。従って、運転者の有効視野を効果的に拡大することができる。
【0048】
すなわち、前記所定周期が前記短時間の値に基づいて設定されるため、前記所定周期を適正な値(例えば、500msec)に設定することができる。そこで、前記所定周期を適正な値に設定することによって、前記閾下刺激の効果を維持することができるので、運転者の有効視野を効果的に拡大することができるのである。
【0049】
つまり、例えば、略50msecの間発光する閾下刺激による有効視野の拡大効果は、略500msecの間持続するため、500msecの周期で、前記閾下刺激を繰り返して付与することによって、有効視野の拡大効果を維持することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る視覚刺激装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】出力機器の構成の一例を示す斜視図
【図3】出力機器からの閾下刺激が運転者に到達する経路の一例を示す側面図
【図4】視覚刺激ECUの機能構成の一例を示すブロック図
【図5】右折時の視野拡大範囲の一例を示す平面図
【図6】LEDによる閾下刺激の視野拡大効果の一例を示す説明図
【図7】LEDの発光間隔と視野拡大効果との関係を示すグラフ
【図8】LEDの発光制御の一例を示すタイミングチャート
【図9】HUDに表示される画像の一例を示す画面図
【図10】視覚刺激ECUのLED制御動作の一例を示すフローチャート
【図11】視覚刺激ECUのHUD制御動作の一例を示すフローチャート
【図12】効果確認テストを行った実験装置の構成の一例を示す平面図、側面図
【図13】効果確認テストのテスト画面の一例を示す画面図
【図14】効果確認テストのテスト結果の一例を示すグラフ
【図15】出力機器の図2とは相違する構成の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明に係る視覚刺激装置の実施形態について説明する。本発明に係る視覚刺激装置は、車両に搭載され、有効視野を拡大するべく、運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激を与える視覚刺激装置である。まず、図1を用いて、本発明に係る視覚刺激装置の構成について説明する。
【0052】
図1は、本発明に係る視覚刺激装置の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本発明に係る視覚刺激ECU(Electronic Control Unit)1(視覚刺激装置の一部に相当する)は、入力機器2及び出力機器3と通信可能に接続されている。
【0053】
入力機器2は、視覚刺激ECU1に対して種々の情報を出力するものであって、ナビゲーションシステム21、車速センサ22、操舵角センサ23、加速操作センサ24、減速操作センサ25、方向指示操作センサ26、及び、CCDカメラ27を備えている。
【0054】
ナビゲーションシステム21は、GPS(Global Positioning System)を介して、車両の位置情報を取得し、HDD(Hard Disk Drive)等に格納された地図情報と比較して車両の地図上の位置を示す車両位置情報(GPS情報に相当する)、及び、車両の周囲に存在する信号機、標識等を示す情報である道路情報(ナビゲーション情報に相当する)を視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す要否判定部11、範囲設定部12)に対して出力する。
【0055】
車速センサ22は、車両の走行速度を検出するセンサであって、検出された車速情報を視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す要否判定部11、範囲設定部12)に対して出力する。
【0056】
操舵角センサ23は、ステアリングセンサ等からなり、操舵角を検出するセンサであって、検出された操舵角情報(操舵操作情報に相当する)を視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す要否判定部11、範囲設定部12)に対して出力する。
【0057】
加速操作センサ24は、スロットル開度センサ等からなり、アクセルペダルの踏み込み量を検出するセンサであって、検出されたアクセル踏込量情報(加減速操作情報の一部に相当する)を視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す要否判定部11、範囲設定部12)に対して出力する。
【0058】
減速操作センサ25は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するセンサであって、検出されたブレーキ踏込量情報(加減速操作情報の一部に相当する)を視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す要否判定部11、範囲設定部12)に対して出力する。
【0059】
方向指示操作センサ26は、方向指示レバーを介して行われる方向指示操作を検出するセンサであって、検出された方向指示操作情報を視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す要否判定部11、範囲設定部12)に対して出力する。
【0060】
CCD(Charge Coupled Device)カメラ27は、例えば、車両の前部バンパの近傍に配設され、車両の前方の画像情報を生成するカメラであって、生成された画像情報を視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す要否判定部11、範囲設定部12)に対して出力する。
【0061】
図2は、出力機器3の構成の一例を示す斜視図である。図3は、出力機器3からの閾下刺激が運転者に到達する経路の一例を示す側面図である。以下、図2、図3を用いて、出力機器3について説明する。出力機器3(視覚刺激装置の一部に相当する)は、視覚刺激ECU1からの指示に基づいて、運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激を与えるものであって、LED31及びHUD32を備えている。
【0062】
LED(Light Emitting Diode)31(複数個の発光体に相当する)は、運転者の前方の複数箇所(ここでは、5箇所)にそれぞれ配設された複数個(ここでは、5個)のLED311〜315を備えている。ここでは、図2に示すように、複数個(ここでは、5個)のLED311〜315は、ダッシュボードDBの上面に、幅方向(図では左右方向)に直線状に配設されている。また、LED311〜315は、視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す刺激付与部15)からの指示に従って、それぞれ、ON、OFF可能に構成されている。更に、LED311〜315は、視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す刺激付与部15)からの指示に従って、短時間T(例えば、略50msec)だけ、予め設定された所定周期P(例えば、500msec周期)で発光する。
【0063】
図3の上側の図は、LED311〜315からの閾下刺激ST1が運転者に到達する経路の一例を示す側面図である。ここでは、LED311〜315からの閾下刺激ST1は、短時間T(例えば、略50msec)だけ、予め設定された所定周期P(例えば、500msec周期)で発光された所定色(例えば、白色)の光線である。図3に示すように、LED311〜315からの光線は、フロントガラスFGの内面の所定位置で反射されて、反射光が運転者PSの目に到達する。そこで、運転者PSからは、フロントガラスFGの反射点311A〜315Aの位置に光源があるかのように見える。従って、運転者PSが前方正面を見ている状態で、運転者PSの目に、反射点311A〜315Aからの反射光が入射され、運転者PSに閾下刺激ST1を効果的に付与することができるのである。
【0064】
HUD(Head Up Display)32は、画像表示部321及び反射部材322を備えている。画像表示部321は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり、予め設定された画像を表示するものであって、ここでは、図2に示すように、ダッシュボードDBの上面に、運転者の略正面位置に配設されている。また、画像表示部321は、視覚刺激ECU1(ここでは、図4に示す刺激付与部15)からの指示に従って、歩行者を示す画像、自転車を示す画像、車両を示す画像、標識を示す画像、及び、信号機を示す画像の中から、選択された1つの画像を短時間T(例えば、略50msec)だけ、予め設定された所定周期P(例えば、500msec周期)で表示する(図9参照)。
【0065】
反射部材322は、ハーフミラー等からなり、フロントガラスFGの内面の画像表示部321と対向する位置に貼付され、画像表示部321からの画像を示す光線を反射するものである。図3の下側の図は、画像表示部321からの閾下刺激ST2が運転者に到達する経路の一例を示す側面図である。ここでは、画像表示部321からの閾下刺激ST2は、短時間T(例えば、略50msec)だけ、予め設定された所定周期P(例えば、500msec周期)で表示される画像を示す光線である。図3に示すように、画像表示部321からの光線は、フロントガラスFGの内面に貼付された反射部材322で反射されて、反射光が運転者PSの目に到達する。そこで、運転者PSからは、フロントガラスFGに貼付された反射部材322の位置に画像が表示されているかのように見える。従って、運転者PSが前方正面を見ている状態で、運転者PSの目に、反射部材322からの反射光が入射され、運転者PSに閾下刺激ST2(ここでは、短時間だけ表示される画像による刺激)を効果的に付与することができるのである。
【0066】
図4は、視覚刺激ECU1の機能構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、視覚刺激ECU1は、機能的に、要否判定部11、範囲設定部12、画像解析部13、刺激制御部14、刺激付与部15、及び、画像記憶部16を備えている。
【0067】
なお、視覚刺激ECU1は、視覚刺激ECU1の適所に配設されたマイクロコンピュータに、視覚刺激ECU1の適所に配設されたROM(Read Only Memory)等に予め格納された制御プログラムを実行させることにより、当該マイクロコンピュータを、機能的に、要否判定部11、範囲設定部12、画像解析部13、刺激制御部14、刺激付与部15、画像記憶部16等の機能部として機能させる。
【0068】
画像記憶部16(刺激付与手段の一部に相当する)は、HUD32に表示する画像情報を予め格納する機能部である。具体的には、画像記憶部16は、歩行者を示す画像情報、自転車を示す画像情報、車両を示す画像情報、標識を示す画像情報、及び、信号機を示す画像情報を予め格納している。また、画像記憶部16に格納された画像情報は、刺激付与部15によって読み出されて、HUD32に表示される。
【0069】
要否判定部11(要否判定手段の一部に相当する)は、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する機能部である。具体的には、要否判定部11は、入力機器2からの車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する。ここで、車両位置情報及び道路情報は、ナビゲーションシステム21から出力され、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報及び方向指示操作情報は、それぞれ、車速センサ22、操舵角センサ23、加速操作センサ24、減速操作センサ25、方向指示操作センサ26から出力され、画像情報は、CCDカメラ27から出力される。
【0070】
また、要否判定部11は、車両が交差点で左折又は右折する場合に、前記車両が前記交差点へ進入する時点から、前記交差点から脱出する時点までの期間である右左折期間において、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定する。すなわち、要否判定部11は、入力機器2からの車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報に基づいて、前記右左折期間であるか否かを判定する。
【0071】
例えば、要否判定部11は、以下の方法で、交差点へ進入したか否かを判定する。まず、車両位置情報及び道路情報に基づいて、車両が交差点近傍に到達しているか否かを判定する。そして、車両が交差点近傍に到達していると判定された場合に、方向指示操作情報に基づいて、方向指示操作がされたか否かを判定する。方向指示操作がされたと判定された場合に、画像情報に基づいて、車両が交差点へ進入したか否かを判定する。
【0072】
また、要否判定部11は、以下の方法で、右左折を実行中であるか否かの判定を行う。車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、及び、ブレーキ踏込量情報に基づいて、車両の交差点内での位置及び進行方向を推定する。そして、推定された車両の位置及び進行方向と、車両位置情報及び道路情報とに基づいて、右左折を開始したか否かを判定する。同様にして、右左折を終了したか否かを判定し、交差点から脱出する直前であるか否かを判定する。このようにして、要否判定部11は、前記右左折期間であるか否かを判定する。
【0073】
このようにして、事故防止の観点から、特に、運転者の有効視野を拡大する必要があると考えられる前記右左折期間において、要否判定部11によって、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定されるため、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができるのである。
【0074】
本実施形態では、要否判定部11が、前記右左折期間において、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定する場合について説明したが、要否判定部11が、見通しの悪い交差点、信号機の無い交差点、踏切等に進入する際に、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定する形態でも良い。
【0075】
また、要否判定部11が、車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否か(ここでは、前記右左折期間であるか否か)を判定するため、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを正確に判定することができる。
【0076】
本実施形態では、要否判定部11が、車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する場合について説明するが、要否判定部11が、車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報の少なくとも1つの情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する形態であれば良い。
【0077】
また、要否判定部11が、車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報に換えて(又は加えて)、他の情報(例えば、車車間通信情報等)に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する形態でも良い。
【0078】
範囲設定部12(範囲設定手段に相当する)は、要否判定部11によって有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、運転者の有効視野を拡大する対象の範囲である視野拡大範囲を設定する機能部である。具体的には、範囲設定部12は、要否判定部11と同様に、入力機器2からの車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する対象の範囲である視野拡大範囲を設定する。
【0079】
また、範囲設定部12は、前記車両が交差点で左折又は右折する場合に、車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点で、前記視野拡大範囲を設定する。なお、ここでは、範囲設定部12は、要否判定部11から、車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点を示す情報を取得する。
【0080】
図5は、右折時に範囲設定部12によって設定される視野拡大範囲の一例を示す平面図である。図に示すように自車両VCは、図の下側から上側に向けて走行しており、車両位置VC0〜VC4のような軌跡に沿って、図の略中央部に表示する交差点で右折する。車両が交差点へ進入する時点の車両位置を示す車両位置VC1では、対向車線を走行する直進車両、左折車両、前方及び側方(=進行方向)の横断歩道等の歩行者WP、自転車BY等を広く確認する必要があるため、左右方向に広く有効視野を拡大する必要があるので、範囲設定部12は、左右に広い視野拡大範囲θ1に設定する。
【0081】
右折を開始する時点の車両位置を示す車両位置VC2及び右折を実行中の時点の車両位置を示す車両位置VC3では共に、特に、対向車線を走行する左折車両、進行方向の横断歩道等の歩行者WP、自転車BY等を確認する必要があるため、特に右方向に有効視野を拡大する必要があるので、範囲設定部12は、それぞれ、右方向に広い視野拡大範囲θ2、θ3を設定する。
【0082】
右左折の実行を終了する時点(又は、交差点から脱出する直前の時点)の車両位置を示す車両位置VC4では、前方を中心とした視野角に戻す必要があるため、範囲設定部12は、視野拡大範囲θ4を設定する。
【0083】
このようにして、運転者の有効視野を拡大する対象の範囲である(=運転者の有効視野を拡大した結果として得られる有効視野角)視野拡大範囲θ1〜θ4を、適正な範囲に設定することによって、運転者の有効視野を適正な範囲まで拡大することができるので、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0084】
本実施形態では、範囲設定部12が、視野拡大範囲θ1〜θ4を設定する場合について説明するが、範囲設定部12が、運転者の有効視野を拡大する方向(右方向及び左方向の少なくとも一方)を設定する形態でも良い。この場合には、処理が簡略化される。
【0085】
また、本実施形態では、範囲設定部12が、車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報に基づいて、視野拡大範囲θ1〜θ4を設定する場合について説明するが、要否判定部11が、車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報の少なくとも1つの情報に基づいて、前記視野拡大範囲を設定する形態であれば良い。
【0086】
更に、範囲設定部12が、車両位置情報、道路情報、車速情報、操舵操作情報、アクセル踏込量情報、ブレーキ踏込量情報、方向指示操作情報及び画像情報に換えて(又は加えて)、他の情報(例えば、車車間通信情報等)に基づいて、前記視野拡大範囲を設定する形態でも良い。
【0087】
また、事故を未然に防止するためには、交差点内の車両の位置に応じて、運転者の有効視野を適正な広さに拡大することが有効であると考えられる。従って、上述のように、前記車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点で、適切な視野拡大範囲θ1〜θ4が設定されるので、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0088】
本実施形態では、範囲設定部12が、前記車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点で、視野拡大範囲θ1〜θ4を設定する場合について説明するが、範囲設定部12が、前記車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点の内、少なくとも1つの時点で、前記視野拡大範囲を設定する形態であれば良い。
【0089】
再び、図4に戻って、視覚刺激ECU1の機能構成について説明する。画像解析部13(要否判定手段の一部に相当する)は、CCDカメラ27からの画像情報を解析して、運転者に対して注意を喚起するべき対象の有無を判定すると共に、その種類を判定する機能部である。また、画像解析部13は、運転者に対して注意を喚起するべき対象があると判定された場合に、その種類を示す情報を、刺激制御部14に対して出力する。
【0090】
例えば、図5に示す右折を実行中の時点の車両位置を示す車両位置VC3では、画像解析部13は、運転者に対して注意を喚起するべき対象として、進行方向に敷設されている横断歩道の左側端近傍に歩行者WPがあり、該横断歩道の右側端近傍に自転車BYがあると判定し、それぞれの種類が、歩行者WP及び自転車BYであると判定する。
【0091】
刺激制御部14(刺激制御手段の一部に相当する)は、要否判定部11によって有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、刺激付与部15及びLED31を介して閾下刺激ST1を、予め設定された所定周期P(例えば、500msec周期)で繰り返して付与する機能部である。また、刺激制御部14は、範囲設定部12によって設定された視野拡大範囲θ1〜θ4(図5参照)に基づいて、刺激付与部15を制御する。具体的には、刺激制御部14は、範囲設定部12によって設定された視野拡大範囲θ1〜θ4(図5参照)に基づいて、LED311〜315の中から発光させる対象のLEDを選定し、選定されたLEDを発光させることによって、運転者に閾下刺激ST1を付与する。
【0092】
図6は、LED31による閾下刺激ST1の視野拡大効果の一例を示す説明図である。図の反射点311A〜315Aは、図3に示すように、LED311〜315からの光線がフロントガラスFGの内面で反射する位置を表している。また、反射点311A〜315Aの周囲に、楕円状の破線で記載した、視野拡大領域AR1〜AR5は、それぞれ、反射点311A〜315Aからの閾下刺激ST1によって、運転者の視野が拡大される領域を示している。更に、黒丸●は、発光しているLEDを示し、白丸○は、発光していないLEDを示している。
【0093】
図6は、上から順に、範囲設定部12によって視野拡大範囲θ1が設定された場合の視野拡大領域ARA、範囲設定部12によって視野拡大範囲θ2、θ3が設定された場合の視野拡大領域ARB、範囲設定部12によって視野拡大範囲θ4が設定された場合の視野拡大領域ARCを示している。
【0094】
すなわち、図6の上側の図に示すように、範囲設定部12によって視野拡大範囲θ1が設定された場合には、刺激制御部14によって、刺激付与部15を介して、LED311〜315が短時間Tだけ、予め設定された所定周期Pで発光される。その結果、LED311〜315の発光に伴う反射点311A〜315Aからの閾下刺激ST1によって、それぞれ、視野拡大領域AR1〜AR5の領域について運転者の視野が拡大され、視野拡大領域ARAの領域について運転者の視野が拡大されることになる。
【0095】
また、図6の中央位置の図に示すように、範囲設定部12によって視野拡大範囲θ2、θ3が設定された場合には、刺激制御部14によって、刺激付与部15を介して、LED314、315が短時間Tだけ、予め設定された所定周期Pで発光される。その結果、LED314、315の発光に伴う反射点314A、315Aからの閾下刺激ST1によって、それぞれ、視野拡大領域AR4、AR5の領域について運転者の視野が拡大され、視野拡大領域ARBの領域について運転者の視野が拡大されることになる。
【0096】
更に、図6の下側の図に示すように、範囲設定部12によって視野拡大範囲θ4が設定された場合には、刺激制御部14によって、刺激付与部15を介して、LED313〜315が短時間Tだけ、予め設定された所定周期Pで発光される。その結果、LED313〜315の発光に伴う反射点313A〜315Aからの閾下刺激ST1によって、それぞれ、視野拡大領域AR3〜AR5の領域について運転者の視野が拡大され、視野拡大領域ARCの領域について運転者の視野が拡大されることになる。
【0097】
このようにして、刺激制御部14によって、範囲設定部12により設定された視野拡大範囲θ1〜θ4に基づいて、5個のLED311〜315の中から、発光させる対象のLEDが適正に選定されるため、設定された視野拡大範囲θ1〜θ4まで、運転者を煩わせることなく、運転者の有効視野を拡大することができる。
【0098】
再び、図4に戻って、視覚刺激ECU1の機能構成について説明する。刺激制御部14は、更に、画像解析部13の解析結果に基づいて、刺激付与部15及びHUD32を介して閾下刺激ST2を、予め設定された所定周期P(例えば、500msec周期)で繰り返して付与する機能部である。
【0099】
具体的には、画像解析部13によって、画像解析部13から運転者に対して注意を喚起するべき対象があるとの情報及びその種類を示す情報が入力された場合に、刺激制御部14は、刺激付与部15を介して、画像記憶部16に予め格納された複数の画像情報の中から、画像解析部13から入力された種類情報に対応する画像情報を読み出させて、読み出された画像をHUD32に表示させて、運転者に対して閾下刺激ST2を所定周期Pで繰り返して付与させる。
【0100】
図9は、HUD32に表示される画像の一例を示す画面図である。図9の上側の図は、HUD32に画像が表示された状態を示す斜視図である。図3を用いて説明したように、運転者からは、フロントガラスに貼付された反射部材322上に表示された画像として閾下刺激ST2が付与される。
【0101】
図9の中段の図は、画像解析部13から運転者に対して注意を喚起するべき対象として歩行者WPが居ることを示す情報が入力された場合に、HUD32に表示される画像の画像図400である。画像図400には、歩行者WPを示す歩行者画像401が表示されている。図9の下側の図は、画像解析部13から運転者に対して注意を喚起するべき対象として自転車BYがあることを示す情報が入力された場合に、HUD32に表示される画像の画像図410である。画像図410には、自転車BYを示す自転車画像411が表示されている。
【0102】
このようにして、HUD32を介して、運転者に閾下刺激ST2が付与されるため、走行中の状況に応じた画像、シンボル等を閾下刺激ST2として運転者に付与することが可能となるので、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができるのである。また、運転者からは、フロントガラスFGに貼付された反射部材322の位置に画像が表示されているかのように見えるため、運転者が前方正面を見ている状態で、運転者の目に、反射部材322からの反射光が入射され、運転者に閾下刺激ST2を効果的に付与することができるのである。
【0103】
また、歩行者を示す画像、自転車を示す画像、車両を示す画像、標識を示す画像、及び、信号機を示す画像の内、少なくとも1つの画像が、HUD32に表示されて、閾下刺激ST2として運転者に付与されるため、歩行者を示す画像、自転車を示す画像、車両を示す画像、標識を示す画像、及び、信号機を示す画像の中から、走行中の状況に応じて、適正な画像を選定して表示することができる。また、例えば、歩行者を示す画像が閾下刺激ST2として運転者に付与された場合には、運転者が、歩行者を認識するために要する時間が短縮される。従って、運転者の有効視野を更に効果的に拡大することができる。
【0104】
本実施形態では、画像記憶部16が、歩行者を示す画像情報、自転車を示す画像情報、車両を示す画像情報、標識を示す画像情報、及び、信号機を示す画像情報を予め格納している場合について説明するが、画像記憶部16が、歩行者を示す画像情報、自転車を示す画像情報、車両を示す画像情報、標識を示す画像情報、及び、信号機を示す画像情報の内、少なくとも1つの画像情報を予め格納している形態であれば良い。また、画像記憶部16が、歩行者を示す画像情報、自転車を示す画像情報、車両を示す画像情報、標識を示す画像情報、及び、信号機を示す画像情報に換えて(又は、加えて)、その他の画像情報(例えば、犬、猫等の動物の画像等)を予め格納している形態でも良い。
【0105】
刺激付与部15(刺激付与手段の一部に相当する)は、刺激制御部14からの指示に基づいて、LED31及びHUD32を介して、それぞれ、閾下刺激ST1、ST2を運転者に対して付与する機能部である。具体的には、刺激付与部15は、LED311〜315の内、範囲設定部12によって設定された視野拡大範囲θ1〜θ4に対応するLED(図6参照)を、短時間T(例えば、略50msec)だけ、予め設定された所定周期P(例えば、500msec周期)で発光することによって、閾下刺激ST1を運転者に対して付与する。また、刺激付与部15は、HUD32に、刺激制御部14から指示された画像を、短時間T(例えば、略50msec)だけ、予め設定された所定周期P(例えば、500msec周期)で表示することによって、閾下刺激ST2を運転者に対して付与する。
【0106】
このようにして、刺激付与部15によって、LED31及びHUD32を介して、短時間T(例えば、略50msec)だけの、運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激ST1、ST2が運転者に対して付与されるため、運転者を煩わせることなく、運転者の有効視野を効果的に拡大することができる。
【0107】
図7は、LED31の発光間隔と視野拡大効果との関係を示すグラフである。図7において、4つのグラフの横軸は全て時間であって、縦軸は、LED31のON、OFF、又は、視野角拡大効果(%)である。図7において上側の2つのグラフは、上から順に、短時間Tが短時間T1(=略50msec)であって、所定周期Pが所定周期P1(=500msec)である場合のLED31の発光状態を示すタイミングチャート、及び、この発光による閾下刺激ST1が運転者に対して付与された場合の、運転者への視野角拡大効果の変化を示すグラフである。図7において下側の2つのグラフは、上から順に、短時間Tが短時間T2(=略100msec)であって、所定周期Pが所定周期P2(=1000msec)である場合のLED31の発光状態を示すタイミングチャート、及び、この発光による閾下刺激ST1が運転者に対して付与された場合の、運転者への視野角拡大効果の変化を示すグラフである。
【0108】
なお、ここでは、図7において上側の2つのグラフに示すように、刺激付与部15によって、LED31は、短時間T1(=略50msec)だけ、所定周期P1(=500msec)で発光される。このように、所定周期P1(=500msec)を、短時間T1の値(=略50msec)に基づいて設定することによって、視野角拡大効果を維持することができる。
【0109】
本実施形態では、刺激付与部15が、LED31を、短時間T1だけ、所定周期P1で発光させる場合について説明するが、刺激付与部15が、LED31を、その他の形態で発光させる形態でも良い。例えば、図7において下側の2つのグラフに示すように、刺激付与部15が、LED31を、LED31を、短時間T2(=略100msec)だけ、所定周期P2(=1000msec)で発光させる形態でも良い。
【0110】
図8は、LED31の発光制御の一例を示すタイミングチャートである。ここでは、図5に示すように、自車両VCが、車両位置VC0〜VC4のような軌跡に沿って右折する場合に、LED311〜LED315が発光されるタイミングについて説明する。図8に示すグラフの横軸は全て時間であって、上側に示す3つのグラフの縦軸は、それぞれ、LED311(又はLED312)、LED313、LED314(又はLED315)のON、OFFである。
【0111】
図5、図6を用いて説明したように、車両が交差点へ進入する時点の車両位置を示す車両位置VC1では、視野拡大範囲θ1に対応して、LED311〜315が全て発光される。また、右折を開始する時点の車両位置を示す車両位置VC2及び右折を実行中の時点の車両位置を示す車両位置VC3では、視野拡大範囲θ2、θ3に対応して、LED314、315が発光される。更に、右左折の実行を終了する時点(又は、交差点から脱出する直前の時点)の車両位置を示す車両位置VC4では、視野拡大範囲θ4に対応して、LED313〜315が発光される。
【0112】
そこで、図8に示すように、刺激付与部15によってLED311〜315の発光が制御される。すなわち、LED311、312は、車両が交差点へ進入する時点から、右折を開始する時点までの間、所定周期P1で発光される。また、LED313は、車両が交差点へ進入する時点から、右折を開始する時点までの間、所定周期P1で発光されると共に、右折を終了する時点から車両が交差点を脱出するまでの間、所定周期P1で発光される。更に、LED314、315は、車両が交差点へ進入する時点から、車両が交差点を脱出するまでの間、所定周期P1で発光される。
【0113】
図10は、視覚刺激ECU1によるLED31の制御動作の一例を示すフローチャートである。ただし、ここでは、便宜上、図5を用いて説明した右折の場合について説明する。まず、要否判定部11によって、車両が右折する交差点に進入したか否かの判定が行われる(S101)。右折する交差点に進入していないと判定された場合(S101でNO)には、処理が待機状態とされる。右折する交差点に進入したと判定された場合(S101でYES)には、範囲設定部12によって、視野拡大範囲θ1が設定されて、刺激制御部14によって、刺激付与部15を介して、視野拡大範囲θ1に対応する視野拡大領域ARAを実現するLED311〜315の発光が開始される(S103)。
【0114】
そして、要否判定部11によって、車両が右折を開始したか否かの判定が行われる(S105)。右折を開始していないと判定された場合(S105でNO)には、処理が待機状態とされる。右折を開始したと判定された場合(S105でYES)には、範囲設定部12によって、視野拡大範囲θ2が設定されて、刺激制御部14によって、刺激付与部15を介して、視野拡大範囲θ2に対応する視野拡大領域ARBを実現するLED314、315の発光が開始される(S107)。
【0115】
次に、要否判定部11によって、車両が右折を終了したか否かの判定が行われる(S109)。右折を終了していないと判定された場合(S109でNO)には、処理が待機状態とされる。右折を終了したと判定された場合(S109でYES)には、範囲設定部12によって、視野拡大範囲θ4が設定されて、刺激制御部14によって、刺激付与部15を介して、視野拡大範囲θ4に対応する視野拡大領域ARCを実現するLED313〜315の発光が開始される(S111)。次いで、要否判定部11によって、車両が交差点を脱出したか否かの判定が行われる(S113)。交差点を脱出していないと判定された場合(S113でNO)には、処理が待機状態とされる。交差点を脱出したと判定された場合(S113でYES)には、刺激制御部14によって、刺激付与部15を介して、LED311〜315の発光が停止されて(S115)、処理が終了される。
【0116】
図11は、視覚刺激ECU1によるHUD32の制御動作の一例を示すフローチャートである。ただし、ここでは、便宜上、図5を用いて説明した右折の際に、HUD32が、歩行者を示す画像、又は、自転車を示す画像を表示する場合について説明する。まず、要否判定部11によって、車両が右折する交差点に進入したか否かの判定が行われる(S201)。右折する交差点に進入していないと判定された場合(S201でNO)には、処理が待機状態とされる。右折する交差点に進入したと判定された場合(S201でYES)には、画像解析部13によって、CCDカメラ27から画像情報が取得される(S203)。そして、画像解析部13によって、ステップS203において取得された画像情報が解析される(S205)。
【0117】
次いで、画像解析部13によって、ステップS205での解析の結果として、運転者に対して注意を喚起するべき対象として歩行者が検出されたか否かの判定が行われる(S207)。歩行者が検出されたと判定された場合(S207でYES)には、処理がステップS215に進められる。歩行者が検出されていないと判定された場合(S207でNO)には、画像解析部13によって、ステップS205での解析の結果として、運転者に対して注意を喚起するべき対象として自転車が検出されたか否かの判定が行われる(S209)。自転車が検出されていないと判定された場合(S209でNO)には、処理がステップS219に進められる。自転車が検出されたと判定された場合(S209でYES)には、刺激制御部14によって、画像記憶部16から自転車に対応する画像情報が読み出される(S211)。そして、刺激付与部15によって、ステップS211で読み出された画像情報がHUD32に表示されて(S213)、処理がステップS219に進められる。
【0118】
ステップS207でYESの場合には、刺激制御部14によって、画像記憶部16から歩行者に対応する画像情報が読み出される(S215)。そして、刺激付与部15によって、ステップS215で読み出された画像情報がHUD32に表示されて(S217)、処理がステップS219に進められる。
【0119】
ステップS209でNOの場合、ステップS213の処理が終了した場合、又は、ステップS217の処理が終了した場合には、要否判定部11によって、車両が交差点を脱出したか否かの判定が行われる(S219)。交差点を脱出していないと判定された場合(S219でNO)には、処理がステップS203に戻され、ステップS203以降の処理が繰り返し実行される。交差点を脱出したと判定された場合(S219でYES)には、刺激制御部14によって、HUD32への画像表示が停止されて(S221)、処理が終了される。
【0120】
このようにして、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、閾下刺激ST1、ST2が、予め設定された所定周期P1で繰り返して付与されるため、所定周期P1を適正な値(例えば、500msec)に設定することによって、閾下刺激ST1、ST2の効果を維持することができるので、運転者を煩わせることなく、運転者の有効視野を効果的に拡大することができる。
【0121】
本実施形態では、刺激付与部15が、閾下刺激ST1、ST2を、予め設定された所定周期P1で繰り返して付与する場合について説明するが、刺激付与部15が、閾下刺激ST1及び閾下刺激ST2毎に、それぞれ、相違する所定周期で繰り返して付与する形態でも良い。例えば、刺激付与部15が、閾下刺激ST1及び閾下刺激ST2を、それぞれ、所定周期P1及び所定周期P2で繰り返して付与する形態でも良い。
【0122】
また、本実施形態では、刺激付与部15が、2種類の閾下刺激ST1、ST2を運転者に付与する場合について説明するが、刺激付与部15が、閾下刺激ST1、ST2に換えて(又は、加えて)、その他の閾下刺激を付与する形態でも良い。例えば、図15を用いて後述するように、刺激付与部15が、ディスプレイDPに画像(又は、光点)を表示して閾下刺激を付与する形態でも良い。
【0123】
次に、図12〜図15を用いて、本発明に係る視覚刺激装置の効果を示す実験(以下、「効果確認テスト」という)の内容及び結果について説明する。図12は、効果確認テストを行った実験装置の構成の一例を示す平面図、側面図である。図12の上側に、平面図を示し、下側に側面図を示している。図に示すように、実験装置は、被験者PSの視界の正面に配設されたディスプレイDSPを備えている。また、ディスプレイDSPは、被験者PSから20cmだけ離間させた位置に配設されている。更に、被験者PSからディスプレイDSPを見た視野角は、左右方向に角φ1(ここでは、90°)であり、上下方向に角φ2(ここでは、74°)である。
【0124】
図13は、効果確認テストにおいてディスプレイDSPに表示されるテスト画面の一例を示す画面図である。図に示すように、ディスプレイDSPの略中央位置には、中心刺激CPが表示され、中心刺激CPから所定の視野だけ離間した位置に周辺刺激SPが表示される。ここで、周辺刺激SPは、中心刺激CPを基準として、右上方向、右下方向、左上方向、及び、左下方向のいずれかの方向に、中心刺激CPから視野4°、12°、20°、28°、36°の位置(=全20箇所)の内、1点が白色に点灯される。ここでは、左上方向の視野角15°の位置が点灯している点LPとして表示されている。
【0125】
また、中心刺激CP(=中心課題)は、単純な文字の同定課題であって、文字の大きさは、視野角で0.8°×1.0°である。また、中心刺激CPは、背景を灰色として、白色で表示され、その輝度は、54cd/m2をピークとして正弦波状に変化する。また、中心刺激CPは、1文字当たり略140msec〜200msecの間、表示される。
【0126】
周辺刺激SPは、図に示すように白色の丸(図では、便宜上、黒色の丸として表示している)として表示され、その大きさは、直径が視野角で1.2°である。また、周辺刺激SPの輝度は、54cd/m2をピークとして正弦波状に変化する。
【0127】
更に、周辺刺激SPが表示される時点から所定時間(ここでは、200msec)だけ前の時点で、周辺刺激SPを表示する位置(又は、その周辺位置)に手がかり刺激が表示される場合がある。ここで、「手がかり刺激」とは、本発明に係る視覚刺激装置におけるLED31の発光(又は、HUD32の表示)に相当する閾下刺激であって、周辺刺激SPが表示される200msec前の時点で、略50msecの間だけ、輝度54cd/m2で表示される。ここで説明する効果確認テストは、閾下刺激である手がかり刺激を付与することによって、周辺刺激SPの正答率が向上するか否かを確認するものである。
【0128】
図14は、図12、図13を用いて説明した実験装置で行われた効果確認テストのテスト結果の一例を示すグラフである。図14に示すグラフは、手がかり刺激の効果を示すグラフであって、縦軸が正答率(%)、横軸が周辺刺激SPの視野角(度)である。実線で示すグラフG1は、手がかり刺激が付与された場合のグラフであって、破線で示すグラフG2は、手がかり刺激が付与されない場合のグラフである。このグラフから、手がかり刺激を付与することによって、有効視野角を拡大することができることが判る。ここで、「有効視野角」とは、正答率が所定の閾値(例えば、63%)以上となる視野角である。
【0129】
なお、本発明に係る視覚刺激装置は、上記実施形態に係る視覚刺激装置(視覚刺激ECU1、LED31、HUD32)に限定されず、下記の形態でも良い。
(A)本実施形態においては、視覚刺激ECU1が、機能的に、要否判定部11、範囲設定部12、画像解析部13、刺激制御部14、刺激付与部15、画像記憶部16等を備える場合について説明したが、要否判定部11、範囲設定部12、画像解析部13、刺激制御部14、刺激付与部15、及び、画像記憶部16の内、少なくとも1つの機能部が電気回路等のハードウェアによって実現されている形態でも良い。
【0130】
(B)本実施形態においては、刺激付与部15が、LED31及びHUD32を介して、閾下刺激ST1、ST2を運転者に付与する場合について説明するが、刺激付与部15が、その他の装置を介して、閾下刺激を運転者に付与する形態でも良い。図15は、閾下刺激を出力する出力機器の図2とは相違する構成の一例を示す斜視図である。
【0131】
図15に示すように、運転者の前方左下側に、種々の情報を表示するディスプレイDPが配設され、両側のサイドミラーには、として方向指示器として機能するターンシグナルランプDL、DRが配設されている。ディスプレイDPは、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり、ナビゲーション情報等を表示可能に構成されたものである。ターンシグナルランプDL、DRは、LED(Light Emitting Diode)等からなり、方向指示器として機能するものである。
【0132】
例えば、刺激付与部15が、ディスプレイDP上の所定位置(例えば、左上端部)に光点を短時間P1(=略50msec)だけ、所定周期P1(例えば、500msec周期)で繰り返して表示させて、閾下刺激ST3を運転者に付与する形態でも良い。また、刺激付与部15が、ディスプレイDP上の所定位置(例えば、左上端部)に画像(例えば、歩行者を示す画像、自転車を示す画像、車両を示す画像、標識を示す画像、及び、信号機を示す画像の内、少なくとも1つの画像)を短時間P1(=略50msec)だけ、所定周期P1(例えば、500msec周期)で繰り返して表示させて、閾下刺激ST4を運転者に付与する形態でも良い。また、例えば、刺激付与部15が、ターンシグナルランプDL、DRを、短時間P1(=略50msec)だけ、所定周期P1(例えば、500msec周期)で繰り返して発光させて、閾下刺激ST5を運転者に付与する形態でも良い。
【0133】
この場合には、視覚刺激装置として新たに出力機器を配設する必要が無いため、簡素な構成で、本発明に係る視覚刺激装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、例えば、車両に搭載され、有効視野を拡大するべく、運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激を与える視覚刺激装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1 視覚刺激ECU(視覚刺激装置の一部)
11 要否判定部(要否判定手段の一部)
12 範囲設定部(範囲設定手段)
13 画像解析部(要否判定手段の一部)
14 刺激制御部(刺激制御手段)
15 刺激付与部(刺激付与手段の一部)
16 画像記憶部(刺激付与手段の一部)
2 入力機器
21 ナビゲーションシステム
22 車速センサ
23 操舵角センサ
24 加速操作センサ
25 減速操作センサ
26 方向指示操作センサ
27 CCDカメラ
3 出力機器
31 LED
311〜315 LED
32 HUD
321 画像表示部
322 反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、有効視野を拡大するべく、運転者の視覚に対して意識に上らない刺激である閾下刺激を与える視覚刺激装置であって、
運転者の前方に配設され、予め設定され、前記閾下刺激となる短時間の発光が可能に構成され、前記閾下刺激を運転者に付与する刺激付与手段と、
運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する要否判定手段と、
前記要否判定手段によって有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、前記刺激付与手段を介して前記閾下刺激を、予め設定された所定周期で繰り返して付与する刺激制御手段と、を備える、視覚刺激装置。
【請求項2】
前記要否判定手段によって有効視野を拡大する必要があると判定された場合に、運転者の有効視野を拡大する対象の範囲である視野拡大範囲を設定する範囲設定手段を備え、
前記発光制御手段は、前記範囲設定手段によって設定された視野拡大範囲に基づいて、前記刺激付与手段を制御する、請求項1に記載の視覚刺激装置。
【請求項3】
前記要否判定手段は、前記車両が交差点で左折又は右折する場合に、前記車両が前記交差点へ進入する時点から、前記交差点から脱出する時点までの期間である右左折期間において、運転者の有効視野を拡大する必要があると判定する、請求項2に記載の視覚刺激装置。
【請求項4】
前記範囲設定手段は、前記車両が交差点へ進入する時点、右左折の実行を開始する時点、右左折の実行を終了する時点、及び、交差点から脱出する直前の時点の内、少なくとも1つの時点で、前記視野拡大範囲を設定する、請求項3に記載の視覚刺激装置。
【請求項5】
前記要否判定手段は、ナビゲーション情報、GPS(Global Positioning System)情報及び車速情報の少なくとも1つの情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する、請求項1に記載の視覚刺激装置。
【請求項6】
前記要否判定手段は、運転者の操舵操作情報、加減速操作情報及び方向指示操作情報の少なくとも1つの情報に基づいて、運転者の有効視野を拡大する必要があるか否かを判定する、請求項1に記載の視覚刺激装置。
【請求項7】
前記刺激付与手段は、運転者の前方の複数箇所にそれぞれ配設された複数個の発光体を備え、当該複数個の発光体を介して、運転者に前記閾下刺激を付与する、請求項2に記載の視覚刺激装置。
【請求項8】
前記刺激制御手段は、前記刺激付与手段を介して、前記範囲設定手段によって設定された視野拡大範囲に基づいて、前記複数個の発光体の中から、発光させる対象の発光体を選定し、選定された発光体を発光させる、請求項7に記載の視覚刺激装置。
【請求項9】
前記複数個の発光体は、ダッシュボード上面に配設された複数個のLED(Light Emitting Diode)であって、
前記刺激付与手段は、前記LEDからの光線をフロントガラスで反射させて運転者に照射することによって前記閾下刺激を付与する、請求項7に記載の視覚刺激装置。
【請求項10】
前記複数個のLEDは、ダッシュボード上面に幅方向に直線状に配設されている、請求項9に記載の視覚刺激装置。
【請求項11】
前記刺激付与手段は、HUD(Head Up Display)を備え、当該HUDを介して、運転者に前記閾下刺激を付与する、請求項1に記載の視覚刺激装置。
【請求項12】
前記刺激付与手段は、歩行者を示す画像、自転車を示す画像、車両を示す画像、標識を示す画像、及び、信号機を示す画像の内、少なくとも1つの画像を、前記HUDに表示させることによって、前記閾下刺激を運転者に付与する、請求項11に記載の視覚刺激装置。
【請求項13】
前記刺激付与手段は、サイドミラーに配設されたLED(Light Emitting Diode)、及び、運転者の前方に配設されたディスプレイ、の少なくとも一方を介して、運転者に前記閾下刺激を付与する、請求項1に記載の視覚刺激装置。
【請求項14】
前記所定周期は、前記短時間の値に基づいて設定される、請求項1に記載の視覚刺激装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−254201(P2010−254201A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108637(P2009−108637)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】