説明

覚醒システム

【課題】覚醒システムにおいて、睡眠者に不快感を与えることなく心地よい目覚めを支援する。
【解決手段】覚醒システム1は、照明部2と、制御部4と、起床設定時刻等を入力されるインタフェース部5と、照明開始時刻を算出する演算部6と、時計部7と、体動を検出するセンサ部8とを備えている。制御部4は、照明開始時刻になると照明を開始し出力を漸増させると共に体動の検出を開始する。体動が検出されると保持時間が計測され、保持時間中に次の体動が検出されると保持時間が再計測される。検出回数が閾値を超えると照明出力が増加され、睡眠者が覚醒される。保持時間は照明開始時刻付近では短く設定されるので、浅眠状態になっていると誤って判断されて覚醒される虞が少ない。起床設定時刻に近い時間帯では長く設定されるので、浅眠状態になっていないと誤って判断されて覚醒状態に導かれない虞が少ない。これにより、心地よい目覚めが支援される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覚醒光の出力を漸増させて心地よい目覚めを支援する覚醒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、起床には目覚し時計が一般的に用いられている。しかしながら、浅い睡眠状態(以下、浅眠状態と称する)のときにアラーム音によって起こされると比較的気分良く目覚められるが、深い睡眠状態のときにアラーム音によって起こされると急激な覚醒となり、目覚めの気分が悪くなる。
【0003】
そこで、起床設定時刻の所定時間前から睡眠者に覚醒作用をもたらす光(以下、覚醒光と称する)の照明を開始し、照明出力を漸増させることにより光の覚醒作用によって睡眠者が浅眠状態にまで変化したとして、その後にアラーム音等で睡眠者を覚醒させる覚醒システムが知られている(例えば特許文献1参照)。このように覚醒光の出力を漸増することにより、睡眠者が深い睡眠からアラーム音等によって急激に覚醒されることを回避し、気分良く目覚められるようにしている。しかしながら、このような覚醒システムにおいては、覚醒光によって睡眠者が浅眠状態になるとは限らず、浅眠状態になっていない場合にもアラームによって起こされるので、急激な覚醒となり目覚めの気分が悪くなる虞がある。
【0004】
また、睡眠者は浅眠状態の時には体動が増える等の覚醒反応を示すことに着目し、体動を検出するセンサを備え、起床設定時刻の頃に体動がある基準を超えた時点で覚醒反応が起きたとして、アラーム等によって睡眠者を覚醒させる覚醒システムが知られている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、このような覚醒システムにおいては、起床設定時刻の頃に睡眠者の体動を検出しない場合は、睡眠者が起床設定時刻にアラームによって起こされるので、急激な覚醒となり目覚めの気分が悪くなる。そのために、センサの検出感度を高くすると、睡眠者が浅眠状態になっていないのに浅眠状態になっていると判断されてアラーム等によって起こされて不快になる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−318670号公報
【特許文献2】特開昭63−125263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解消するものであり、睡眠者に不快感を与えることなく、心地よい目覚めを支援する覚醒システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、睡眠者を覚醒させる覚醒光を照射する照明部と、前記照明部の出力を制御する制御手段と、前記制御手段に対して起床設定時刻を含む制御条件を入力するインタフェース部と、時刻を計時し前記制御手段に伝達する時計部と、を備え、前記制御手段は、予め定められた照明開始時刻から照明を開始し、照明出力を時間経過とともに漸増させる覚醒システムにおいて、睡眠者の体動を検出し、体動検出信号を出力する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段からの体動検出信号を検出した後に予め定められた保持時間が経過するまでに次の体動検出信号を検出したときに、該保持時間の計測をリセットして保持時間を延長すると共に体動検出信号の回数の累積値を演算し、この累積値が予め定められた閾値を超えたときに睡眠者が浅眠状態にあると判断する浅眠判断手段を有し、前記浅眠判断手段によって睡眠者が浅眠状態にあると判断されると、前記制御手段は照明出力を増加させて起床設定時刻よりも早く覚醒光が最大照度となるように前記照明部を制御し、前記保持時間は、起床設定時刻よりも早い時間帯においては相対的に短く設定され、起床設定時刻に近づくにつれて相対的に長く設定されているものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、睡眠者の体動を検出した体動検出信号を検出した後の保持時間中に、体動検出信号の累積値が予め定められた閾値を超えると、睡眠者が浅眠状態にあるとして照明出力を増加させて睡眠者を覚醒させるので、心地よい目覚めが支援される。また、起床設定時刻よりも早い時間帯では保持時間が短いので、睡眠者が浅眠状態になっていない状態であるにも拘わらず浅眠状態になっていると誤って判断されて照明出力が増大されて睡眠者が不快になる虞が少ない。また、起床設定時刻に近い時間帯では保持時間が長いので、睡眠者が浅眠状態になっているにも拘わらず浅眠状態になっていないと誤って判断されて照明出力が増大せずに覚醒状態に導かれない虞が少ない。これらにより、睡眠者に不快感を与えることなく、心地よい目覚めが支援される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る覚醒システムの構成図。
【図2】(a)は同覚醒システムの各部の配置構成図、(b)は同覚醒システムの他の例の配置構成図。
【図3】(a)は同覚醒システムにおける動作例を示す図、(b)は同覚醒システムにおける浅眠判断基準の変位を示す図。
【図4】同覚醒システムにおける体動検出信号を示す図。
【図5】(a)は同上実施形態の変形例に係る覚醒システムにおける動作例を示す図、(b)は同覚醒システムにおける浅眠判断基準の変位を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る覚醒システムについて図1及び図2を参照して説明する。図1に示すように、覚醒システム1は、睡眠者を覚醒させる覚醒光を照射する照明部2と、鳴動する音源部3と、照明部2の出力や音源部3の鳴動等を制御する制御部(制御手段)4と、起床設定時刻や照明の開始を起床設定時刻よりも早める時間等の各種設定をするためのインタフェース部5と、照明開始時刻等を演算する演算部6と、時刻を計時する時計部7と、睡眠者の体動を検出するセンサ部(検出手段)8とを備えている。
【0011】
照明部2は、制御部4の制御によって覚醒光を漸増させて出力するものであって、例えば白熱電球やLED等のいずれの光源でもよく、覚醒光が睡眠者の顔を照射するように設けられる。音源部3は、制御部4の制御によって起床設定時刻にユーザの起床を促すアラーム音を発する音源であり、例えばブザーやスピーカ等である。制御部4は、センサ部8が検出した睡眠者の体動と起床設定時刻等に基づいて照明部2や音源部3等を制御する制御プログラム(浅眠判断手段)41を有する。制御部4は、制御プログラム41に従い、起床設定時刻前に、インタフェース部5に設定された時間だけ早く照明部2の照明を開始し、時間経過と共に照明出力を漸増して起床設定時刻に照明出力を最大にする漸増パターンによって照明を行ない、睡眠者を覚醒させる。また、制御部4は、センサ部8からの体動検出信号に基づいて、睡眠者が浅眠状態にあると判断したときは、漸増パターンよりも照明出力を早く増加させる早増加パターンによって照明を行なう。
【0012】
インタフェース部5は、起床設定時刻の設定、照明の開始を起床設定時刻よりも早める時間の設定、アラーム音のオン/オフ、照明の出力調整等の操作をユーザが行うダイヤルやテンキー等や、現在時刻等を表示する液晶等の表示部を有する。照明の開始を起床設定時刻よりも早める時間は、ユーザが設定するのでなく、演算部6等に製造時に組み込んでおいてもよい。演算部6は、インタフェース部5に設定された照明を早める時間と起床設定時刻とに基づいて照明開始時刻を演算し、演算結果を制御部4に伝達する。時計部7は、時刻を計時し、時刻を制御部4へ伝達する。センサ部8は、寝具上や寝具下に設置された圧電センサや、ユーザの腕等に装着された加速度センサや、ユーザの身体及び寝具上を検出域とする非接触の赤外線センサ等のセンサであり、各センサが出力した体動検出信号は制御部4に伝達される。制御部4は、体動検出信号の検出状態が予め定められた浅眠判断基準を満たしたときに睡眠者が浅眠状態にあって覚醒反応を示したと判断する。
【0013】
図2(a)は、覚醒システム1の各部の配置構成を示す。覚醒システム1は、筐体9に照明部2や音源部3等の各部を備えている。覚醒システム1は、インタフェース部5の操作がし易いように睡眠者の頭部付近に配置される。照明部2は、睡眠者の頭部が照明領域に入るように設けられている。センサ部8は、この例では赤外線センサであって睡眠者の頭部から寝具全体を検出領域としており、睡眠者及び寝具の動きから睡眠者の体動を検出し、体動検出信号を制御部4に出力する。センサ部8が圧電センサの場合には、圧電センサが検出した圧力の大きさや圧力変動の頻度に基づいて体動検出信号を制御部4に出力する。センサ部8が加速度センサの場合には、加速度センサが検出した加速度の大きさや所定以上の大きさの加速度が検出された頻度に基づいて体動検出信号を制御部4に出力する。図2(b)は、覚醒システム1の他の構成例を示す。この例では、照明部2は天井に設けられている。照明部2は、制御部4から有線信号、又は赤外線等の無線信号によって制御される。天井から室内全体が照明されるので、自然の夜明けに近い状態に覚醒光を漸増させることができる。
【0014】
次に、覚醒システム1の動作例を、図3を参照して説明する。インタフェース部5に起床設定時刻と照明を早める時間とが設定されると、演算部6は、照明開始時刻を算出し制御部4へ伝達する。図3(a)に示す例では、照明開始時刻は起床設定時刻よりも30分早く設定されている。制御部4は、照明開始時刻になると、照明部2の照明とセンサ部8による体動の検出とを開始し、予め定められた漸増パターン(破線で示す)に基づいて照明出力を漸増させる。制御部4は、覚醒光を漸増させる途中において、センサ部8から受信した体動検出信号が予め定められた浅眠判断基準を満たすと、睡眠者が浅眠状態になって覚醒反応を示したとして漸増パターンよりも早く出力を増加させる早増加パターン(実線で示す)によって照明を続行する。この早増加パターンによって、覚醒光は起床設定時刻よりも早く最大照度になる。起床設定時刻になると、音源部3によってアラームが鳴動するが、インタフェース部5の操作によって、音源部3の鳴動を停止にしておいてもよい。
【0015】
図3(b)に浅眠判断基準の変位を示す。浅眠判断基準は、照明開始時刻に近いほど浅眠状態と判断され難く、時間が経過して起床設定時刻に近づくにつれて浅眠状態と判断され易いように設定されている。この浅眠判断基準には、体動検出信号の検出回数に基づく基準や体動検出信号の強度に基づく基準等、種々の基準を設けることができるが、本実施形態では、体動検出信号の検出回数に基づいて設けられている。
【0016】
次に、浅眠判断基準について、図4に示す体動検出信号を参照して説明する。体動検出信号は、センサ部8が体動を検出すると出力される。体動検出信号はパルス波であり、検出された体動の大きさに拘わらずに波高値が一定で出力時間も一定であり、体動の動作時間が所定の時間を超える場合には、新たな体動検出信号が出力される。
【0017】
制御部4は、体動検出信号を検出したa時点において、体動検出信号の回数の累積値として1回をカウントし、体動検出信号の終了時点のb時点から保持時間を計測する。保持時間中のc時点において次の体動検出信号を検出すると、体動検出信号の累積値として2回をカウントし、2回目の体動検出信号の終了時点のd時点から保持時間を新たに計測して保持時間を延長する。このようにして、保持時間の延長を繰り返し、体動検出信号の累積値が予め定められた閾値を超えると、睡眠者が浅眠状態にあると判断する。図4の例では、累積値が4回では閾値を越えないとしており、4回目の体動検出信号の保持時間を計測し、保持時間が経過するe時点において次の体動検出信号を検出しないので、累積値を0にリセットする。続いて、次の体動検出信号を検出したf時点において、体動検出信号の累積値1回をカウントし、保持時間中に次の体動検出信号を検出しないので、累積値を0にリセットする。この例では、累積値が4回では閾値を越えないとしたが、例えば閾値が3回である場合では、4回目の体動検出信号を検出した時点で、睡眠者が浅眠状態にあると判断し、照明出力を増大する。
【0018】
保持時間は、起床設定時刻よりも早い時間帯である照明開始時刻の頃においては相対的に短く設定されており、保持時間中に次の体動検出信号が検出され難いので、体動検出信号の累積値が大きくならず閾値を超え難い。また、保持時間は、起床設定時刻に近づくにつれて相対的に長く設定されており、保持時間中に次の体動検出信号が検出され易いので、体動検出信号の累積値が大きくなり閾値を超え易い。図4の例のような体動検出信号の検出状態でも、保持時間が短い場合には保持時間中に次の体動検出信号を検出し難いので体動検出信号の累積値が閾値を超え難いが、保持時間が長い場合には保持時間中に次の体動検出信号を検出し易いので体動検出信号の累積値が閾値を超え易い。なお、保持時間の計測は、体動検出信号の終了時点から始めずに、例えば体動検出信号の開始時点から始めてもよい。
【0019】
本実施形態の覚醒システム1によれば、上記のような構成のため、照明開始時刻に近い時間帯では累積値が閾値を超え難く、浅眠状態と判断され難いので、睡眠者が浅眠状態になっていないのに浅眠状態になっていると判断されて照明出力が増大され、睡眠者が早めに起こされて不快になる虞が少なくなる。また、起床設定時刻に近い時間帯では累積値が閾値を超え易く、浅眠状態と判断され易いので、睡眠者が浅眠状態になっていても浅眠状態になっていないと判断されて照明出力が増大せずに浅眠状態から覚醒状態に導かれない虞が少なくなる。これらにより、睡眠者に不快感を与えることなく、覚醒光の漸増によって睡眠者に心地よい目覚めを支援することができる。なお、覚醒光の照明開始から起床設定時刻までの間に浅眠状態であるとの判断が行なわれない場合は、制御部4は所定の漸増パターンで照明出力を最大まで漸増させる。これにより、起床設定時刻前に浅眠判断基準を満たされなかった場合においても、漸増する覚醒光により睡眠者の目覚めを支援することができる。
【0020】
次に、体動検出信号と浅眠判断基準の変形例について、図5を参照して説明する。この変形例では、照明開始時刻になると、制御部4はセンサ部8による体動の検出を開始するが、照明部2による照明は開始しない。そして、体動検出信号の回数の累積値が閾値を超え、睡眠者が浅眠状態にあると判断されると、早増加パターン(図5(a)に実線で示す)によって照明を開始する。保持時間は、実施形態と同様に照明開始時刻の頃は短く設定されており、照明開始時刻から起床設定時刻に近づくにつれて長く設定されている。体動検出信号の回数の累積値が閾値を超えない場合には、所定の時刻になると予め定められた第2の漸増パターン(破線で示す)に基づいて照明出力が漸増される。この構成により、体動を示す前から照明を開始されることに不快感を覚える人にも、心地よい目覚めを支援することができる。
【0021】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、覚醒反応を検出したときに、早増加パターンを用いずに漸増パターンの時間軸を縮小して照明を行なってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 覚醒システム
2 照明部
4 制御部(制御手段)
41 制御プログラム(浅眠判断手段)
5 インタフェース部
7 時計部
8 センサ部(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠者を覚醒させる覚醒光を照射する照明部と、前記照明部の出力を制御する制御手段と、前記制御手段に対して起床設定時刻を含む制御条件を入力するインタフェース部と、時刻を計時し前記制御手段に伝達する時計部と、を備え、前記制御手段は、予め定められた照明開始時刻から照明を開始し、照明出力を時間経過とともに漸増させる覚醒システムにおいて、
睡眠者の体動を検出し、体動検出信号を出力する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段からの体動検出信号を検出した後に予め定められた保持時間が経過するまでに次の体動検出信号を検出したときに、該保持時間の計測をリセットして保持時間を延長すると共に体動検出信号の回数の累積値を演算し、この累積値が予め定められた閾値を超えたときに睡眠者が浅眠状態にあると判断する浅眠判断手段を有し、
前記浅眠判断手段によって睡眠者が浅眠状態にあると判断されると、前記制御手段は照明出力を増加させて起床設定時刻よりも早く覚醒光が最大照度となるように前記照明部を制御し、
前記保持時間は、起床設定時刻よりも早い時間帯においては相対的に短く設定され、起床設定時刻に近づくにつれて相対的に長く設定されていることを特徴とする覚醒システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−130823(P2011−130823A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290723(P2009−290723)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)