説明

親子シールド掘進機

【課題】簡易な構成によって、地中に残置される親シールド機の外周部分の乱された地盤を、容易に安定させることのできる親子シールド掘進機を提供する。
【解決手段】子シールド機15を親機スキンプレート14の内部に同心状に配置し、地中の所定の位置まで掘進した後に、子シールド機15を親シールド機13から切り離して子シールド機15のみで掘進することにより、セグメント22a,22bの外径が変化するシールドトンネルを形成するシールド掘進機において、子シールド機15と親シールド機13との一体化は、子機スキンプレート16及び親機スキンプレート14に形成したピン固定穴23,24を合致させて、一体化保持ピン25を嵌着固定することによってなされる。また一体化保持ピン25を軸方向に貫通して、子機スキンプレート16の内側から親機スキンプレート14の外側に地盤注入材を注入するための注入材吐出穴26が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親子シールド掘進機に関し、特に子シールド機と親シールド機とを一体化した状態で掘進した後に、子シールド機を親シールド機から切り離して子シールド機のみで掘進することにより、セグメントの外径が途中で変化するシールドトンネルを形成する親子シールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工事において、立坑を介在させることなく、地中でトンネルの外径を変化させる工法として、外径の小さな子シールド機を外径の大きな親シールド機から発進させる親子シールド工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の親子シールド工法では、親子シールド掘進機は、子シールド機の推進機構と、親シールド機の推進機構とがそれぞれ個別に設けられていて、構造が複雑になると共に、経済的な面でも不利益がある。
【0003】
一方、例えば土被りが徐々に少なくなる場所や、土質の変化によって次第に土圧が小さくなる場所においては、トンネルの途中で、先行して設置されたセグメントから、より厚さの薄いセグメントに換えてシールドトンネルを施工することによって、施工能率の向上や施工コストの低減を効果的に図れることが知られている。このようなトンネルの途中でセグメントの厚さが変化し、これに伴って外径が僅かに小さくなるシールドトンネルを施工する際に、親シールド機の推進機構と子シールド機の推進機構とを兼用できるようにした親子シールド掘進機を用いる技術も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平2−210189号公報
【特許文献2】特開平11−280375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の親子シールド掘進機によれば、子シールド機を親シールド機の内側に同心状に配置すると共に、これらのスキンプレートをロック機構を介して分離可能に連結一体化した状態で、地中の所定の位置まで掘進した後に、親シールド機から子シールド機を切り離して、親シールド機を地中に残置したまま子シールド機のみを掘進させることにより、トンネルの途中でセグメントの外径が小さくなるシールドトンネルを形成するようになっている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の親子シールド掘進機によれば、子シールド機と親シールド機とを連結一体化した状態では、子シールド機に取付けられたカッターヘッドの伸縮部分を伸長させて、余掘りを行いつつ親シールド機の外径と略同じ掘削断面となるように親子シールド掘進機を掘進させてゆくことになるが、このような掘進の際に、親シールド機の外周部分の地盤が余堀りによって乱されることになる。このため、親シールド機の外周部分の地盤が乱されたままの状態で親シールド機が地中に残置されると、残置された親シールド機の直上部分の地盤に地盤沈下等の悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、簡易な構成によって、地中に残置される親シールド機の外周部分の乱された地盤を、容易に安定させることのできる親子シールド掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、切削径を拡縮可能なカッターヘッド、隔室、掘削土砂の搬出装置、シールドジャッキ、及びセグメント組立装置を装備した子シールド機を、親機スキンプレートの内部に切り離し可能に同心状に配置し、前記子シールド機と親シールド機とを一体化した状態で地中の所定の位置まで掘進した後に、前記子シールド機を前記親シールド機から切り離して前記子シールド機のみで掘進することにより、セグメントの外径が途中で変化するシールドトンネルを形成する親子シールド掘進機において、前記子シールド機と前記親シールド機との一体化は、子機スキンプレートに形成した複数の子機側ピン固定穴と、該子機側ピン固定穴に対応させて前記親機スキンプレートに形成した複数の親機側ピン固定穴とを各々合致させて、一体化保持ピンを着脱可能に嵌着固定することによってなされており、且つ前記一体化保持ピンを軸方向に貫通して、前記子機スキンプレートの内側から前記親機スキンプレートの外側に地盤注入材を注入するための注入材吐出穴が開閉可能に形成されている親子シールド掘進機を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
そして、本発明の親子シールド掘進機は、前記注入材吐出穴の外側部分に、逆止弁が設けられていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の親子シールド掘進機は、前記注入材吐出穴の内側縁部の注入口部分に、プラグ止めが設けられていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の親子シールド掘進機は、前記一体化保持ピンが、前記子機側ピン固定穴の内周面との間、及び前記親機側ピン固定穴の内周面との間に止水用のOリングを介在させて嵌着固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の親子シールド掘進機によれば、簡易な構成によって、地中に残置される親シールド機の外周部分の乱された地盤を、容易に安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい一実施形態に係る親子シールド掘進機10は、図1(a)に示すように、例えば前胴部11と後胴部12とからなる中折れ形式の泥水式のシールド掘進機であって、親シールド機13を構成する親機スキンプレート14の内部に、子シールド機15を構成する子機スキンプレート16を同心状に配置した二重構造を備えている。また、本実施形態の親子シールド掘進機10は、子シールド機15と親シールド機13とを連結一体化した状態で地中の所定の位置まで掘進した後に、親シールド機13を地中に残置したまま子シールド機15のみを掘進させることができるようになっており(図15,図2参照)、且つ後続して地中に連設配置されるセグメント22a,22bの周囲の乱された地盤に裏込め材を注入して安定させる機能を備えていると共に、地中に残置される親シールド機13の周囲の乱された地盤をも安定させる機能を備えている。
【0013】
そして、本実施形態の親子シールド掘進機10は、切削径を拡縮可能なカッターヘッド17、隔室18、掘削土砂の搬出装置19、シールドジャッキ20、及びセグメント組立装置21を装備した子シールド機15を、親機スキンプレート14の内部に切り離し可能に同心状に配置し、子シールド機15と親シールド機13とを一体化した状態で地中の所定の位置まで掘進した後に、子シールド機15を親シールド機13から切り離して子シールド機15のみで掘進することにより、セグメント22a,22bの外径が途中で変化するシールドトンネルを形成するシールド掘進機において、図1のA部を図3(a)に拡大して示すように、子シールド機15と親シールド機13との一体化は、子機スキンプレート16に形成した複数の子機側ピン固定穴23と、子機側ピン固定穴23に対応させて親機スキンプレート14に形成した複数の親機側ピン固定穴24とを各々合致させて、一体化保持ピン25を着脱可能に嵌着固定することによってなされており、且つ一体化保持ピン25を軸方向に貫通して、子機スキンプレート16の内側から親機スキンプレート14の外側に地盤注入材を注入するための注入材吐出穴26が開閉可能に形成されている。
【0014】
本実施形態では、親子シールド掘進機10によって形成されるシールドトンネルは、例えば共同溝用のトンネルであって、トンネルの途中でセグメント22a,22bの外径が120mm程度小さくなるように形成されるものであり、大きい外径のセグメントとして、例えば外径が5200mm、厚さが200mm程度の大径セグメント22aが用いられ、小さい外径のセグメントとして、例えば外径が5080mm、厚さが200mm程度の小径セグメント22bが用いられるようになっている。そして、本実施形態では、大径セグメント22aは、子シールド機15と親シールド機13とを一体化した状態での掘進時に、後胴部12における親機スキンプレート14(後胴部親機スキンプレート14b)の内部で組み立てられるようになっており(図1(a)参照)、小径セグメント22bは、子シールド機15のみでの掘進時に、後胴部12における子機スキンプレート16(後胴部子機スキンプレート15b及びテール部子機スキンプレート16c)の内部で組み立てられるようになっている(図2参照)。
【0015】
本実施形態の親子シールド掘進機10を構成する子シールド機15は、公知の泥水式シールド掘進機と略同様の構成を備えている。すなわち、図1(a)及び図2に示すように、子シールド機15の前胴部11側に配置された前胴部子機スキンプレート16aの内部は、これの前部に設置した隔壁27によって前後に区画されており、隔壁27よりもカッターヘッド17側の部分が、掘削土砂を泥水と共に充填して切羽面からの土圧に対抗させるための隔室18となっている。また、前胴部子機スキンプレート16aの内部には、隔壁27に支持させて、油圧又は電動のモータ、減速機、ギヤ等を備える回転駆動機構28が設けられている。この回転駆動機構28の駆動力によって、回転軸29を介して支持されるカッターヘッド17を回転させることにより、切羽面の切削を行うことができるようになっている。
【0016】
カッターヘッド17は、図1(b)にも示すように、センタービット17a、スポーク17b、面板17c、切削ずりの取込み口17d等を含む公知のもので、前胴部子機スキンプレート16aの先端開口を覆うようにして、これの前方に設けられている。またスポーク17bや面板17cには、多数のカッタービット17eが固設されていると共に、スポーク17bの先端には、径方向に進退可能なコピーカツター30が、前胴部子機スキンプレート16aよりも外側に突出可能に設けられている。このコピーカツター30を径方向に進退させることにより、カッターヘッド17による切削径を拡大して、親シールド機13の外径と略同じ掘削断面での掘削や、親シールド機13の余掘り部分の掘削を行うことができるようになっている。またカッターヘッド17による切削径を縮小して、子シールド機15の外径と略同じ掘削断面での掘削や、子シールド機15の余掘り部分の掘削を行うことができるようになっている。
【0017】
また、前胴部子機スキンプレート16aの隔壁27によって区画された後方部分には、隔室18と連通接続する、掘削土砂の搬出装置19としての送泥管31及び排泥管32が設けられており、これらの送泥管31や排泥管32は、後胴部子機スキンプレート16bの内部を経て、後方の発進立坑(図示せず。)に向けて、組み立てられたセグメント22a,22bの内部まで延設している。
【0018】
さらに、前胴部子機スキンプレート16aの隔壁27によって区画された後方部分には、前胴部11と後胴部12とに跨って取り付けられる中折れジャッキ33の一端部が、支持ブラケット34aを介して取り付けられていると共に、後胴部子機スキンプレート16bに支持固定されたシールドジャッキ20のシリンダ部20aの前部が、当該前胴部子機スキンプレート16a側にはみ出すようにして配設されている。
【0019】
後胴部子機スキンプレート16bは、前胴部子機スキンプレート16aの後方に例えば100mm程度の中折れ間隔部分sを保持して、前胴部子機スキンプレート16aに対して中折れ可能に連設されており、前胴部子機スキンプレート16a及び後述するテール部子機スキンプレート16cと共に子機スキンプレート16を形成する。後胴部子機スキンプレート16bには、これの先端部内側面に接合されて、球座プレート35が、前胴部子機スキンプレート16a側に突出して設けられている。この球座プレート35の外周面を前胴部子機スキンプレート16aの後端部内側面に摺接させることにより、折れ曲がり可能な状態を保持しつつ、後胴部子機スキンプレート16bの先端部と前胴部子機スキンプレート16aの後端部との間の中折れ間隔部分sを球座プレート35によって埋めることができるようになっている。
【0020】
また、後胴部子機スキンプレート16bの内側には、中折れジャッキ33の他端部が、支持ブラケット34bを介して取り付けられていると共に、シールドジャッキ20が、支持プレート36によって支持されて取り付けられている。
【0021】
さらに、後胴部子機スキンプレート16bの内側には、これの内周面から支持されて、セグメント組立装置21としてのエレクタや作業デッキ37が、後述するテール部子機スキンプレート16cが取り付けられる部分まで延設して設けられている。
【0022】
なお、本実施形態によれば、子機スキンプレート16を構成する前胴部子機スキンプレート16a、後胴部子機スキンプレート16b、及びテール部子機スキンプレート16cは、例えば肉厚が36mm程度の円筒形状の鋼板からなり、小径セグメント22bの外径よりも若干大きな、例えば5140mm程度の内径を備えると共に、例えば5212mm程度の外径を備えている。
【0023】
本実施形態の親子シールド掘進機10を構成する親シールド機13は、親機スキンプレート14によって構成され、これのカッターヘッド、隔室、掘削土砂の搬出装置、シールドジャッキ、セグメント組立装置等による推進機構は、子シールド機15に設けられたカッターヘッド17、隔室18、掘削土砂の搬出装置19、シールドジャッキ20、セグメント組立装置21等によって兼用されるようになっている。また、親機スキンプレート14は、親子シールド掘進機10の前胴部11に配置される前胴部親機スキンプレート14aと、親子シールド掘進機10の後胴部12に配置される後胴部親機スキンプレート14bとによって構成されている。
【0024】
前胴部親機スキンプレート14aは、前胴部子機スキンプレート16aと同様に、例えば肉厚が30mm程度の円筒形状の鋼板からなり、前胴部子機スキンプレート16aの外径よりも若干大きな、例えば5272mm程度の内径を備えると共に、例えば5332mm程度の外径を備えており、前胴部子機スキンプレート16aの外周面との間に例えば30mm程度の間隔を保持した状態で、前胴部子機スキンプレート16aの外側に二重構造となるように同心円状に配置される。
【0025】
また、本実施形態では、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとの間に介在して、周方向に延設する間隔保持リング38が、親子シールド掘進機10の軸方向に間隔をおいて複数設けられており、これらの間隔保持リング38によって、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとの間には上述の例えば30mm程度の間隔が保持されるようになっている。
【0026】
さらに、本実施形態では、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aを貫通するようにして、後述する一体化保持ピン25が、これらの全体に分散配置されて複数箇所に着脱可能に取付けられており、一体化保持ピン25をピン固定穴23,24(図3(a)参照)に嵌着することによって、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとを一体として押し出すことができる状態と、一体化保持ピン25をピン固定穴23,24から取り外すことによって、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとを切り離し、当該前胴部子機スキンプレート16aのみを押し出すことができる状態とを、切り替えることができるようになっている。
【0027】
さらにまた、本実施形態では、前胴部11の先端部には、図1のB部を図4に拡大して示すように、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとの間の隙間を埋めるようにして、例えばニトリルゴムからなる先端止水部品39が取り付けられており、当該隙間を介した泥水や土砂の流入を防止できるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態では、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとの間に保持された例えば30mm程度の間隔部分には、先端止水部品39と間隔保持リング38との間の部分、及び隣接する間隔保持リング38の間の部分を充填するようにして、例えばグリース等からなる充填材が充填されている。これによって、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとを一体として押し出す際や、前胴部子機スキンプレート16aのみを押し出す際に、これらの間隔部分に泥水や土砂が流入するのを、さらに効果的に防止することができるようになっている。
【0029】
ここで、グリース等の充填材は、例えば前胴部子機スキンプレート16aの内周面の適宜位置に取り付けた充填材圧入金物40(図1参照)に圧入管を接続し、当該充填材圧入金物40を介して充填材を圧入することにより、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとの間隔部分に容易に充填することが可能である。また前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとが一体化された状態から、一体化保持ピン25を取り外して前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとを切り離す際に、充填材圧入金物40を介して充填材の充填圧力を加えることにより、一体化されていた前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとを効果的に縁切りさせて、前胴部子機スキンプレート16aを前胴部親機スキンプレート14aからスムーズに切り離して前進させることができるようになっている。
【0030】
また、本実施形態では、前胴部親機スキンプレート14aの上部には、図1(a),(b)及び図6(a),(b)に示すように、子機スキンプレート16の後述するテール部子機スキンプレート16cの外周部分に外側に突出して取り付けられた同時裏込注入装置50(図2、図15参照)を、子シールド機15の発進時に通過させる切欠き通過溝41が、前胴部親機スキンプレート14aの軸方向の全長に亘って延設して2箇所に形成されている。
【0031】
切欠き通過溝41は、例えば520mm程度の幅で直線状に切欠き形成されており、またこの切欠き通過溝41の全体を外側から覆うようにして、断面が等脚台形状の鋼製の通過溝カバー体42が、その脚部を切欠き通過溝41の両側縁部に溶着固定して取り付けられている(図6(a)参照)。さらに、通過溝カバー体42の先端部には、フラップ式蓋部材43が開閉可能にヒンジ接合されて取り付けられていると共に、フラップ式蓋部材43の直後の部分には、例えば硬質ウレタンからなる止水充填材44が、通過溝カバー体42の内側を埋めるようにして設けられている(図6(b)参照)。
【0032】
そして、親シールド機13から子シールド機15を発進させてテール部子機スキンプレート16cに取り付けた同時裏込注入装置50を通過させる前の状態では、フラップ式蓋部材43及び止水充填材44は、通過溝カバー体42の先端部を閉塞して、土砂や泥水が通過溝カバー体42及び切欠き通過溝41を介して親機スキンプレート14の内部に流入するのを防止する。また、図8(a)に示すように、テール部子機スキンプレート16cに取り付けた子機同時裏込注入装置50が切欠き通過溝41を通過する際には、この同時裏込注入装置50が前進して通過溝カバー体42の先端部に至ると、止水充填材44は破壊されると共に、フラップ式蓋部材43は後方から押し上げられるようにして回転しつつ通過溝カバー体42の先端部を開放することにより、同時裏込注入装置50をスムーズに通過させることができるようになっている(図14,図15参照)。
【0033】
一方、前胴部親機スキンプレート14aの後方に例えば100mm程度の中折れ間隔部分sを保持して、前胴部親機スキンプレート14aに対して中折れ可能に連設する後胴部親機スキンプレート14bは、前胴部親機スキンプレート14aと同様に、例えば肉厚が36mm程度の円筒形状の鋼板からなり、後胴部子機スキンプレート16bの外径よりも若干大きな、例えば5260mm程度の内径を備えると共に、例えば5332mm程度の外径を備えており、後胴部子機スキンプレート16bの外周面との間に例えば24mm程度の間隔を保持した状態で、後胴部子機スキンプレート16bの外側に二重構造となるように同心円状に配置される。また後胴部親機スキンプレート14bは、図1(a)に示すように、後胴部子機スキンプレート16bよりも、例えば3800mm程度長く後方に延設されている。これによって、当該延設部分の内側に、後胴部親機スキンプレート14bの内周面に沿って大径セグメント22aを設置するための作業空間が確保されることになり、この作業空間には、後胴部子機スキンプレート16bの内周面から支持されたエレクタ21や作業デッキ37が延設配置されることになる。
【0034】
また、本実施形態では、後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとの間に介在して、周方向に延設する間隔保持リング38が、親子シールド掘進機10の軸方向に間隔をおいて複数設けられており、これらの間隔保持リング38によって、後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとの間には、上述の例えば24mm程度の間隔が保持されるようになっている。
【0035】
さらに、本実施形態では、後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bを貫通するようにして、後述する一体化保持ピン25が、後胴部子機スキンプレート16bの全体に分散配置されて複数箇所に着脱可能に取付けられており、一体化保持ピン25をピン固定穴23,24(図3(a)参照)に嵌着することによって、後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとを一体として押し出すことができる状態と、一体化保持ピン25をピン固定穴23,24から取り外すことによって、後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとを切り離し、当該後胴部子機スキンプレート16bのみを押し出すことができる状態とを、切り替えることができるようになっている。
【0036】
さらにまた、本実施形態では、後胴部子機スキンプレート16bの後端部には、図1のC部を図5において拡大して示すように、後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとの間の隙間を埋めるようにして、例えばニトリルゴムからなる機内止水部品45が取り付けられており、当該隙間を介した機内から後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとの間の間隔部分への水の流入を防止できるようになっている。
【0037】
なお、本実施形態では、後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとの間に保持された間隔部分には、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとの間の間隔部分と同様に、隣接する間隔保持リング38の間の部分や間隔保持リング38と機内止水部品45との間の部分を充填するようにして、例えばグリース等からなる充填材が充填されている。
【0038】
また、本実施形態では、後胴部親機スキンプレート14bの上部には、前胴部親機スキンプレート14aに設けられた切欠き通過溝41や通過溝カバー体42の延長上に配置されて、後続して設置された大径セグメント22aの外周部分の地山に裏込注入材を注入充填するための親機同時裏込注入装置46が、その防護カバー48を後胴部親機スキンプレート14bの軸方向の略全長に亘って延設させて2箇所に設けられている。親機同時裏込注入装置46は、図7(a)にも示すように、後胴部親機スキンプレート14bの外周面に沿って配置される裏込注入配管47と、配置された裏込注入配管47を覆うようにして後胴部親機スキンプレート14bの外周面から外側に突出して設けられる防護カバー48とからなる。
【0039】
裏込注入配管47は、図1では図示を省略しているが、例えば子シールド機15の内部から後方に延設し、後胴部子機スキンプレート16bよりも後方の部分において、後胴部親機スキンプレート14bを内側から貫通してこれの外周面に至り、防護カバー48の中空内部を経て後方に延設することにより、その後端吐出口が、後胴部親機スキンプレート14bの後端から後方に向けて開口するように配設されている。これによって、子シールド機15と親シールド機13とが一体化した親子シールド掘進機10の掘進時に、後胴部親機スキンプレート14bの前進に伴って、当該裏込注入配管47を介して、これの後方に残置される大径セグメント22aの周囲の余掘り等によって乱された地盤に、略同時に裏込め材を注入することが可能になり、当該大径セグメント22aの周囲の余掘り等によって乱された地盤を迅速且つ容易に安定させることが可能になる。
【0040】
防護カバー48は、断面が等脚台形状の鋼製のカバー体であって、その脚部を後胴部親機スキンプレート14bの外周面に溶着固定して取り付けられている(図7(a)参照)。また、本実施形態では、防護カバー48は、これの先端部を、例えば折れ曲り可能な可撓性を有する、好ましくは蛇腹状の可撓性カバー体(図示せず)を介して、前胴部親機スキンプレート14aに設けられた通過溝カバー体42の後端部と連続して設けられている。これによって、前胴部親機スキンプレート14aと後胴部親機スキンプレート14bとの間の中折れ間隔部分sから、防護カバー48の先端部や通過溝カバー体42の後端部を介して、これらの内部へ土砂等が流入するのを効果的に回避できるようになっている。さらに、防護カバー48の後端部は、裏込注入配管47の後端吐出口を開口状態で支持する閉塞蓋(図示せず)によって閉塞されており、この閉塞蓋によって、防護カバー48の内部への土砂等の流入を効果的に回避できるようになっている。
【0041】
ここで、本実施形態では、後胴部親機スキンプレート14bの中間部から先端縁部に至る領域における、後述するテール部子機スキンプレート16cが重ねて配置される部分については(図13,図14参照)、当該テール部子機スキンプレート16cを設置するのに先立って、図7(b)に示すように、親機同時裏込注入装置46の裏込注入配管47と、後胴部親機スキンプレート14bの防護カバー48の脚部によって挟まれる部分とが、撤去されるようになっている。これによって、防護カバー48の脚部によって挟まれる部分の後胴部親機スキンプレート14bには、後胴部通過溝49が、防護カバー48によって覆われた状態で形成されることになる。この後胴部通過溝49を介して、図8(b)に示すように、テール部子機スキンプレート16cの外周面に取り付けられた、裏込注入配管51と防護カバー52とからなる子機同時裏込注入装置50を、後胴部親機スキンプレート14bの外側に突出させた状態で配置することができるようになっていると共に、配置した子機同時裏込注入装置50を後胴部通過溝49に沿って前進させることができるようになっている。
【0042】
また、本実施形態では、後胴部親機スキンプレート14bの後端部分には、図1(a)に示すように、これの内周面に沿って配置されて、可撓性を有するリング状のテールシール64が、軸方向に間隔をおいて3体取り付けられている。テールシール64は、シールド掘進機に取り付けて用いられる公知のものであり、親子シールド掘進機10の前進に伴って、後胴部親機スキンプレート14bの後端部分で残置される大径セグメント22aの外周面にその内側縁部を摺接させることにより、大径セグメント22aと後胴部親機スキンプレート14bとの間の隙間を閉塞して、これらの隙間から土砂や水が親子シールド掘進機10の内部に侵入するのを防止する。
【0043】
そして、本実施形態の親子シールド掘進機10によれば、子シールド機15と親シールド機13とを一体として掘進して行く際のこれらのシールド機15,13の一体化は、図3(a),(b)に示すように、子機スキンプレート16に形成した複数の子機側ピン固定穴23と、親機スキンプレート14に形成した複数の親機側ピン固定穴24とを各々合致させて、一体化保持ピン25を着脱可能に嵌着固定することによってなされており、且つ一体化保持ピン25を軸方向に貫通して、子機スキンプレート16の内側から親機スキンプレート14の外側に地盤注入材を注入するための注入材吐出穴26が開閉可能に形成されている。
【0044】
すなわち、本実施形態では、子機スキンプレート16には、複数の子機側ピン固定穴23が、例えば180mm程度の外径を有するドーナツ形状の固定穴補強金物53によって補強されて、例えば80mm程度の内径を有するように開口形成されている。また、親機スキンプレート14には、子機側ピン固定穴23と対応する位置に、複数の親機側ピン固定穴24が、例えば180mm程度の外径を有するドーナツ形状の固定穴補強金物54によって補強されて、例えば80mm程度の内径を有するように開口形成されている。
【0045】
合致させた子機側ピン固定穴23と親機側ピン固定穴24に嵌着固定される一体化保持ピン25は、例えば80mm程度の外径を有すると共に、子機側ピン固定穴23と親機側ピン固定穴24とに跨って嵌着可能な例えば165mm程度の長さを有する略円柱形状の金属製の部材である。また、一体化保持ピン25には、これの中央を軸方向に貫通して、例えば25mm程度の内径の注入材吐出穴26が形成されており、この注入材吐出穴26の吐出口26aに近接する外側部分には、子機スキンプレート16の内側から親機スキンプレート14の外側に向う流体の通過を許容する一方で、親機スキンプレート14の外側から子機スキンプレート16の内側に向う流体の通過を遮断する機能を備える公知の逆止弁55が、開閉可能な開閉機構として取付けられている。
【0046】
さらに、注入材吐出穴26の内側縁部の注入口部分には、プラグ止め56が設けられており、このプラグ止め56に注入材圧送パイプ(図示せず)の接続プラグを連結接合することによって、地盤注入材を親機スキンプレート14の外側の地盤に向けて圧送注入することができるようになっている。なお、プラグ止め56に注入材圧送パイプが接合されていない間、プラグ止め56に閉塞栓を着脱可能に装着しておくことにより、注入材吐出穴26を開閉可能に強固に閉塞しておくことも可能である。
【0047】
また、本実施形態では、一体化保持ピン25は、子機側ピン固定穴23の内周面との間、及び親機側ピン固定穴24の内周面との間に止水用のOリング57を介在させてピン固定穴23,24に嵌着固定されており、これによって、一体化保持ピン25とピン固定穴23,24との間の隙間から子機スキンプレート16の内側に水が流入するのを強固に防止することができるようになっている。
【0048】
さらに、本実施形態では、一体化保持ピン25の内側端部の側面には、プレート係止切欠き58が、中心側に食い込むようにして凹状に切り欠き形成されており、このプレート係止切欠き58に矩形平板形状のキープレート59の側部を嵌め込むようにして係合させつつ、固定ボルト60を介してキープレート59を固定穴補強金物53の内側端面に締着固定することにより、ピン固定穴23,24に一体化保持ピン25が嵌着した状態を、強固に保持固定することができるようになっている。また子機スキンプレート16を親機スキンプレート14から切り離す際には、固定ボルト60を取り外すと共に、キープレート59をプレート係止切欠き58から取り外すことにより、一体化保持ピン25の固定状態を解除して、当該一体化保持ピン25をピン固定穴23,24から抜き取ることができるようになっている。
【0049】
なお、本実施形態では、一体化保持ピン25をピン固定穴23,24から抜き取ったら、図3(c)に示すように、子機側ピン固定穴23に内殻用閉塞蓋61を、親機側ピン固定穴24に外殻用閉塞蓋62を各々装着固定してこれらを閉塞した後に、子機スキンプレート16を親機スキンプレート14から切り離すようになっている。
【0050】
そして、上述の構成を有する本実施形態の親子シールド掘進機10によれば、図9〜図15に示す以下の工程にしたがって、子シールド機15と親シールド機13とを一体化した状態で地中の所定の位置まで掘進した後に、子シールド機15を親シールド機13から切り離して、親シールド機13を地中に残置したまま子シールド機15を発進させることができるようになっている。
【0051】
すなわち、図9に示すように、地中の所定の位置として、大径セグメント22aから小径セグメント22bに切り替える位置まで、後方に大径セグメント22aを連設配置しつつ子シールド機15と親シールド機13とが一体化した状態で親子シールド掘進機10を掘進させたら、掘進作業を中断して、カッターヘッド17のコピーカツター30を後退させることにより、カッターヘッド17による切削径を縮径する。また、前胴部11においては前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとを一体化する一体化保持ピン25に注入材圧送パイプを接続し、注入材吐出穴26を介して公知の地盤注入材を注入して固化させることにより、前胴部11の周囲の地盤を安定させる。さらに、後胴部12においても、後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとを一体化する一体化保持ピン25に注入材圧送パイプを接続し、注入材吐出穴26を介して公知の地盤注入材を注入して固化させることにより、後胴部12の周囲の地盤を安定させる。
【0052】
次に、図10に示すように、前胴部11において、前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとを一体化する一体化保持ピン25をピン固定穴23,24から取り外すと共に、充填材圧入金物40を介して前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとの間隔部分に充填材の充填圧力を加えることにより、一体化されていた前胴部親機スキンプレート14aと前胴部子機スキンプレート16aとを縁切りさせて、前胴部子機スキンプレート16aを前胴部親機スキンプレート14aから切り離し可能な状態とする。しかる後に、前胴部親機スキンプレート14aの位置を保持したまま、前胴部11における子シールド機15(前胴部子機スキンプレート16a)と、後胴部12における後胴部親機スキンプレート14b及び後胴部子機スキンプレート16bとを一体として、中折れ間隔部分s(図9参照)に相当する例えば100mm程度の長さ分掘進させる。これによって、前胴部親機スキンプレート14aに対して後胴部親機スキンプレート14bが、これの先端が前胴部親機スキンプレート14aの後端に当接するまで前進することになり、親機スキンプレート14における中折れ間隔部分sが閉塞されることになる。
【0053】
前胴部親機スキンプレート14aの後端と後胴部親機スキンプレート14bの先端との間の親機スキンプレート14の中折れ間隔部分sを閉塞したら、さらに、後胴部12において、後胴部親機スプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとを一体化する一体化保持ピン25をピン固定穴23,24から取り外すと共に、充填材圧入金物40を介して後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとの間隔部分に充填材の充填圧力を加えることにより、一体化されていた後胴部親機スキンプレート14bと後胴部子機スキンプレート16bとを縁切りさせて、後胴部子機スキンプレート16bを後胴部親機スキンプレート14bから切り離し可能な状態とする。
【0054】
これによって、前胴部子機スキンプレート16a及び後胴部子機スキンプレート16bは、何れも前胴部親機スキンプレート14a及び後胴部親機スキンプレート14bから切り離し可能な状態となるので、図11に示すように、後胴部親機スキンプレート14bの内部において、設置された大径セグメント22aの先端との間にスペーサ63を組み立てて介在させつつ、シールドジャッキ20を伸長して、子機スキンプレート16(前胴部子機スキンプレート16a及び後胴部子機スキンプレート16b)のみを前進させつつ、子シールド機15を掘進させてゆくことが可能になる。
【0055】
シールドジャッキ20が全伸するまで子シールド機15を掘進させたら、シールドジャッキ20を収縮させると共に、後胴部親機スキンプレート14bの内部において、後胴部子機スキンプレート16bの後方にテール部子機スキンプレート16cを接合一体化する作業を行う。
【0056】
後胴部子機スキンプレート16bの後方にテール部子機スキンプレート16cを接合一体化するには、図12に示すように、後胴部親機スキンプレート14bの内部において、スペーサ63が解体撤去される。また後胴部親機スキンプレート14bの、中間部から前胴部親機スキンプレート14aに接合された先端縁部に至る領域における、テール部子機スキンプレート16cが重ねて配置される部分については、親機同時裏込注入装置46の裏込注入配管47と、後胴部親機スキンプレート14bの防護カバー48の脚部によって挟まれる部分とが撤去されて、後胴部通過溝49が形成される(図7(a),(b)参照)。
【0057】
また、図13に示すように、シールドジャッキ20を径方向内側に僅かに移設して、当該シールドジャッキ20と後胴部親機スキンプレート14bの内周面との間に、テール部子機スキンプレート16cの先端部を後胴部親機スキンプレート14bの内側に沿って差し込むためのスペースを形成した後に、形成したスペースに当該先端部を差し込みつつテール部子機スキンプレート16cを後胴部親機スキンプレート14bの内周面に沿って組み立てる。また差し込んだテール部子機スキンプレート16cの先端を後胴部子機スキンプレート16bの後端に溶接等によって接合することによって、テール部子機スキンプレート16cと後胴部子機スキンプレート16bとを一体化する。さらに、後胴部子機スキンプレート16bの後端部に取り付けられていた機内止水部品45(図12参照)を撤去する。
【0058】
ここで、テール部子機スキンプレート16cは、後胴部子機スキンプレート16bと同様に、例えば肉厚が36mm程度の円筒形状の鋼板からなり、小径セグメント22bの外径よりも若干大きな、例えば5140mm程度の内径を備えると共に、例えば5212mm程度の外径を備えており、後胴部子機スキンプレート16bの後方に、例えば3700mmの長さで延設して取り付けられる。
【0059】
また、テール部子機スキンプレート16cには、これの上部における、後胴部親機スキンプレート14bの上部に設けられた親機同時裏込注入装置46や、前胴部親機スキンプレート14aの上部に設けられた切欠き通過溝41及び通過溝カバー体42と対応する位置に、図2及び図8(a),(b)にも示すように、親機同時裏込注入装置46と同様の構成を有する、裏込注入配管51と防護カバー52とからなる子機同時裏込注入装置50が、テール部子機スキンプレート16cの外周面に沿って軸方向に延設して2箇所に設けられている。さらに、テール部子機スキンプレート16cの後端部分には、これの内周面に沿って配置されて、可撓性を有するリング状のテールシール64が、軸方向に間隔をおいて3体取り付けられている。
【0060】
そして、テール部子機スキンプレート16cは、子機同時裏込注入装置50を、切欠き通過溝41や後胴部通過溝49を介して、前胴部親機スキンプレート14aや後胴部親機スキンプレート14bの外側に突出させると共に、当該子機同時裏込注入装置50を通過溝カバー体42や防護カバー52の内側に配置した状態で(図8(a),(b)参照)、後胴部子機スキンプレート16bの後方に配設され、これの先端を後胴部子機スキンプレート16bの後端に溶着固定することにより、後胴部子機スキンプレート16bと一体となって、前胴部子機スキンプレート16aに対して中折れ可能な子シールド機15の後胴部を構成することになる。
【0061】
テール部子機スキンプレート16cを後胴部子機スキンプレート16bの後方に接合一体化したら、図14に示すように、テール部子機スキンプレート16cの内部における作業として、後胴部親機スキンプレート14bの内部に設置された大径セグメント22aの前方に連設して、小径セグメント22bを組み立てる。このような小径セグメント22bの組み立て作業は、テール部子機スキンプレート16cの内部に延設して設けられたエレクタ21や作業デッキ37を用いて容易に行うことができる。
【0062】
小径セグメント22bを、収縮したシールドジャッキ20の直後の部分まで連設して組み立てたら、図15に示すように、組み立てた小径セグメント22bから反力をとって、シールドジャッキ20を伸長しつつ子シールド機15を掘進させてゆくことにより、子シールド機15を、地中に残置した親機スキンプレート14から発進させてゆく。
【0063】
ここで、子シールド機15を発進させて、子機スキンプレート16を親機スキンプレート14に対して前進させてゆく際に、テール部子機スキンプレート16cの外周面から突出して設けられた子機同時裏込注入装置50は、図8(a),(b)に示すように、後胴部親機スキンプレート14bの防護カバー48によって覆われた後胴部通過溝49や、前胴部親機スキンプレート14aの通過溝カバー体42によって覆われた切欠き通過溝41に沿って移動することにより、後胴部親機スキンプレート14bや前胴部親機スキンプレート14aと緩衝することなく前進することが可能になる。また子機同時裏込注入装置50の先端が通過溝カバー体42の先端部分に至ると、当該先端部分に設けられたフラップ式蓋部材43を後方から押し上げるようにして回転させつつ通過溝カバー体42の先端部を開放させて、子機同時裏込注入装置50を前胴部親機スキンプレート14aの先端部分からこれの前方に向けてスムーズに通過させてゆくことが可能になる(図15参照)。
【0064】
上述のようにして、子シールド機15を親シールド機13から発進させたら、図2に示すように、子シールド機15のみの掘進によって、公知のシールド工法と同様の作業工程にしたがって、大径セグメント22aよりも外径が小さな小径セグメント22bによるシールドトンネルが、順次構築されてゆくことになる。
【0065】
そして、上述の構成を備える本実施形態の親子シールド掘進機10によれば、簡易な構成によって、地中に残置される親シールド機13の外周部分の乱された地盤を、容易に安定させることができる。
【0066】
すなわち、本実施形態の親子シールド掘進機10によれば、子シールド機15と親シールド機13との一体化は、子機スキンプレート16に形成した複数の子機側ピン固定穴23と親機スキンプレート14に形成した複数の親機側ピン固定穴24とを各々合致させて、一体化保持ピン25を着脱可能に嵌着固定することによってなされており、且つ一体化保持ピン25を軸方向に貫通して、子機スキンプレート16の内側から親機スキンプレート14の外側に地盤注入材を注入するための注入材吐出穴26が開閉可能に形成されているので、子シールド機15と親シールド機13とを一体化するために用いる一体化保持ピン25をそのまま利用して、親シールド機13の地盤に注入材を注入するための注入材吐出穴26を簡易に設けることができると共に、一体化保持ピン25及び注入材吐出穴26は、子機スキンプレート16及び親機スキンプレート14を連続貫通して設けられているので、子機スキンプレート16の内側からの作業によって、親機スキンプレート14の外側の地盤に、地盤注入材を容易に注入充填することが可能なる。これらによって、地中に残置される親シールド機13の外周部分の乱された地盤を、容易に安定させることが可能になる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、親子シールド掘進機は、中折れ形式のシールド掘進機や泥水式のシールド掘進機である必要は必ずしも無く、中折れジャッキを備えていないシールド掘進機や、土圧式のシールド掘進機等、その他の形式の親子シールド掘進機であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】(a)は本発明の好ましい一実施形態に係る親子シールド掘進機の構成を説明する縦断面図、(b)は正面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る親子シールド掘進機の、子シールド機のみで掘進させる状態を説明する縦断面図である。
【図3】(a)は図1(a)のA部拡大断面図、(b)は(a)を上方から見た上面図、(c)は一体化保持ピンを取り外した状態の図1(a)のA部拡大断面図である。
【図4】図1(a)のB部拡大断面図である。
【図5】図1(a)のC部拡大断面図である。
【図6】(a)は前胴部親機スキンプレートの上部に設けられた切欠き通過溝及び通過溝カバー体を説明する横断面図、(b)は縦断面図である。
【図7】(a)は図1(a)のD−Dに沿った拡大断面図、(b)は図12のD’−D’に沿った拡大断面図である。
【図8】(a)は前胴部親機スキンプレートの上部に設けられた切欠き通過溝に沿って子機同時裏込注入装置を移動させる状況を説明する拡大断面図、(b)は後胴部親機スキンプレートの上部に形成した後胴部通過溝に沿って子機同時裏込注入装置を移動させる状況を説明する拡大断面図である。
【図9】子シールド機を親シールド機から切り離して掘進させる工程を説明する略示縦断面図である。
【図10】子シールド機を親シールド機から切り離して掘進させる工程を説明する略示縦断面図である。
【図11】子シールド機を親シールド機から切り離して掘進させる工程を説明する略示縦断面図である。
【図12】子シールド機を親シールド機から切り離して掘進させる工程を説明する略示縦断面図である。
【図13】子シールド機を親シールド機から切り離して掘進させる工程を説明する略示縦断面図である。
【図14】子シールド機を親シールド機から切り離して掘進させる工程を説明する略示縦断面図である。
【図15】子シールド機を親シールド機から切り離して掘進させる工程を説明する略示縦断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 親子シールド掘進機
11 前胴部
12 後胴部
13 親シールド機
14 親機スキンプレート
14a 前胴部親機スキンプレート
14b 後胴部親機スキンプレート
15 子シールド機
16 子機スキンプレート
16a 前胴部子機スキンプレート
16b 後胴部子機スキンプレート
16c テール部子機スキンプレート
17 カッターヘッド
18 隔室
19 掘削土砂の搬出装置
20 シールドジャッキ
21 セグメント組立装置
22a 大径セグメント
22b 小径セグメント
23 子機側ピン固定穴
24 親機側ピン固定穴
25 一体化保持ピン
26 注入材吐出穴
30 コピーカツター
35 球座プレート
53,54 固定穴補強金物
55 逆止弁
56 プラグ止め
57 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削径を拡縮可能なカッターヘッド、隔室、掘削土砂の搬出装置、シールドジャッキ、及びセグメント組立装置を装備した子シールド機を、親機スキンプレートの内部に切り離し可能に同心状に配置し、前記子シールド機と親シールド機とを一体化した状態で地中の所定の位置まで掘進した後に、前記子シールド機を前記親シールド機から切り離して前記子シールド機のみで掘進することにより、セグメントの外径が途中で変化するシールドトンネルを形成する親子シールド掘進機において、
前記子シールド機と前記親シールド機との一体化は、子機スキンプレートに形成した複数の子機側ピン固定穴と、該子機側ピン固定穴に対応させて前記親機スキンプレートに形成した複数の親機側ピン固定穴とを各々合致させて、一体化保持ピンを着脱可能に嵌着固定することによってなされており、
且つ前記一体化保持ピンを軸方向に貫通して、前記子機スキンプレートの内側から前記親機スキンプレートの外側に地盤注入材を注入するための注入材吐出穴が開閉可能に形成されている親子シールド掘進機。
【請求項2】
前記注入材吐出穴の外側部分に、逆止弁が設けられている請求項1に記載の親子シールド掘進機。
【請求項3】
前記注入材吐出穴の内側縁部の注入口部分に、プラグ止めが設けられている請求項1又は2に記載の親子シールド掘進機。
【請求項4】
前記一体化保持ピンは、前記子機側ピン固定穴の内周面との間、及び前記親機側ピン固定穴の内周面との間に止水用のOリングを介在させて嵌着固定されている請求項1〜3のいずれかに記載の親子シールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−59605(P2010−59605A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223296(P2008−223296)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】