説明

親展文書用紙及び該用紙を用いる親展文書作製方法

【課題】個人情報の要秘匿事項を表層の半透明薄紙に付した目隠し用図柄で隠して感熱印刷表示できるようにした感熱印刷紙に、上記個人情報文書の発行者自身が比較的簡易な設備により低コストで印刷表示可能とし、個人情報の電子データを外部業者に提供して情報漏れの虞が生じるなどの問題点を解消できるようにした親展文書用紙を提供する。
【解決手段】個人情報を含む必要事項を感熱印刷表示すべき超高感度の感熱印刷紙2の印刷面に、該個人情報のうちの要秘匿事項の印刷部分2aを隠す目隠し用図柄3aを印刷するための厚さ50μm以下の半透明薄紙3を、剥離可能な接着剤を介して貼り付けることにより構成する。上記半透明薄紙は、目隠し用図柄を印刷しない部位の下の感熱印刷表示2bを視認できる程度の透明性を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人情報を含む必要事項を、該個人情報の漏出を抑止可能な状態で感熱プリンターにより印刷して多数の受取人に送付あるいは配布できるようにした親展葉書等の親展文書、及び該親展文書用紙に個人情報を含む必要事項を感熱印刷表示する親展文書作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの個人情報を含む必要事項を表示した書面を親展文書として多くの人々に送付または配布することの必要性が増加しているが、その親展文書の作製に際してセキュリティ対策が問題になっている。
従来、上記親展文書を多量に印刷する場合には、鮮明な高速印字を行うためのレーザープリンターや、個人情報の印字面を隠すために非粘着性で易剥離性の接着剤により秘匿用のシートを連続的に接着する装置などの設備を要するために初期投資が膨大になり、採算性の観点から、上記設備を備えた業者に委託するのが一般的であるが、そのような親展文書の作製を外部に委託するためには、個人情報の電子データを受託者に提供することになり、この電子データの管理が厳重に行われていても、何らかの原因により漏洩する可能性がある。
【0003】
官公庁や金融機関、量販店、ポイントカードを発行する小売店などでは、膨大な量の個人情報を含む文書の発送需要があり、それらの文書の発行数が多いときには上記設備を備えた業者に委託するのもやむを得ないが、比較的小規模の企業が顧客に対し個人情報を含む文書を発送したり、社内で従業員に給与明細書等の他人に知られたくない個人情報を含む文書を配布したりする場合には、個人情報の電子データを外部に提供するのを躊躇することから、初期投資があまり大きくならない範囲内で個人情報を含む文書の製造設備を調え、個人情報の外部への搬出による情報漏れを防ぐことが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の技術的課題は、個人情報の要秘匿事項を表層の半透明薄紙に付した目隠し用図柄で隠して感熱印刷表示できるようにした感熱印刷紙に、上記個人情報文書の発行者自身が比較的簡易な設備により低コストで印刷表示可能とし、それによって、個人情報の電子データを外部業者に提供して情報漏れの虞が生じるなどの問題点を解消できるようにした親展文書用紙、及び該用紙を用いる親展文書作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明によれば、個人情報を含む必要事項を感熱印刷表示すべき超高感度の感熱印刷紙と、少なくとも該個人情報のうちの要秘匿事項の印刷部分を隠す目隠し用図柄を印刷するための厚さ50μm以下の半透明薄紙とを備え、上記感熱印刷紙の印刷面に該半透明薄紙を剥離可能な接着剤を介して貼り付けることにより構成され、上記半透明薄紙を、目隠し用図柄を印刷しない部位においては、その下位の感熱印刷紙における感熱印刷表示を視認できる程度の透明性を有するものとした親展文書用紙が提供される。
【0006】
本発明に係る親展文書用紙の好ましい実施形態においては、上記半透明薄紙がグラシン紙であり、また、上記感熱印刷紙における印刷面とは反対側の面にインクジェット印刷用紙を貼着したものとして構成される。
上記親展文書用紙においては、感熱印刷紙の発色及び半透明薄紙の目隠し用図柄の印刷インクとは吸収波長の異なるインクを用いて位置決めするためのタイミングマークを付しておくのが、該親展文書用紙への個人情報の感熱印刷のために有効である。
【0007】
また、本発明によれば、上記親展文書用紙における感熱印刷紙に対し、上記半透明薄紙を通して感熱プリンターによる上記必要事項の感熱印刷表示を行い、上記感熱印刷紙における要秘匿事項の印刷部分上における半透明薄紙に目隠し用図柄を印刷し、上記感熱印刷紙における秘匿不要事項の印刷部分上における半透明薄紙には目隠し用図柄の印刷をしないで、上記半透明薄紙を通して秘匿不要事項の印刷を可視化することを特徴とする親展文書作製方法が提供される。
【0008】
上述した本発明の親展文書用紙は、感熱印刷紙上に半透明薄紙を接離可能な接着剤を介して貼り付けたものとしてユーザーに提供され、しかも、上記感熱印刷紙は超高感度の感熱性を有しているので、ユーザーにおいて、ノーマル感度の感熱紙に適用する汎用の標準的で比較的安価な感熱プリンターを用意して個人情報を含む必要事項を所定のパターンで感熱印刷することができ、そのため、個人情報のデータを外部業者に提供する必要がなくなり、また、感熱印刷紙に感熱印刷表示した事項のうちで、親展文書の宛先等の個人情報の要秘匿事項でない部分は表層に貼着した半透明薄紙を通して視認でき、上記要秘匿事項は上記半透明薄紙に付した目隠し用図柄で隠されるので、簡易な感熱印刷のみにより親展文書を作製することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上に詳述した本発明の親展文書用紙及び親展文書作製方法によれば、個人情報の要秘匿事項を、表層の半透明薄紙に付した目隠し用図柄で隠して感熱印刷表示できるようにした感熱印刷紙に、上記個人情報文書の発行者自身が比較的簡易な設備により低コストで印刷表示可能とし、それによって、個人情報の電子データを外部業者に提供して情報漏れの虞が生じるなどの問題点を解消できるようにした親展文書用紙、及び該用紙を用いる親展文書作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る親展文書用紙の実施例を示す平面図である。
【図2】上記親展文書用紙の断面図である。
【図3】本発明に係る親展文書用紙の製造設備の構成を概念的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2は、本発明に係る親展文書用紙の実施の一例を示している。この親展文書用紙1は、個人情報を含む必要事項を感熱印刷表示すべき超高感度の感熱印刷紙2と、少なくとも該個人情報のうちの要秘匿事項の印刷部分2aを隠す目隠し用図柄3aを印刷するための厚さ50μm以下の半透明薄紙3とを備え、上記感熱印刷紙2の印刷面に該半透明薄紙3を剥離可能な接着剤を介して貼り付けることにより構成したものである。上記剥離可能な接着剤は、非粘着性で易剥離性のもので、剥離後には粘着性がなく、接着面を再度重ね合わせても再接着しないものである。必要があれば、上記感熱印刷紙2における印刷面とは反対側の面に、インクジェット印刷用紙4を貼着しておくことができる。この貼着には剥離可能な接着剤を用いる必要はないが、それらの貼着面に広告その他の印刷を予め施しておく場合には、剥離可能な接着剤を用いることになる。
【0012】
上記半透明薄紙3としては、目隠し用図柄3aを印刷しない部位において、その下位の感熱印刷紙2における感熱印刷表示2bを半透明薄紙3上から視認できる程度の透明性を有することが必要であり、例えば、厚さが50μm以下で、透明度が50%以上であることが望まれる。半透明薄紙3の更に望ましい厚さは30μmであり、更に望ましい透明度は70%である。これは、個人情報を含む必要事項を感熱印刷表示したとき、該個人情報のうちの要秘匿事項の印刷部分2aは半透明薄紙3への目隠し用図柄3aの印刷により隠すが、秘匿の必要がなく、むしろ、その書面の配布者、配布の宛先、日付、書類名、送付または配布の目的などのように、送付あるいは配布のために必要な事項であり、しかも、送付あるいは配布後に名宛人が半透明薄紙3を剥離して廃棄した後にも、上記感熱印刷紙2が、誰から誰に、何時、どのような目的で送付あるいは配布された書面であるかを知るために有効なものである。即ち、感熱印刷紙2に表示している事項の一部を送付あるいは配布の宛先等としても利用することができ、別途その宛先等を印刷表示する必要がない。
【0013】
また、上記半透明薄紙3としては、感熱印刷のための熱の透過性においてすぐれるグラシン紙などで、厚さが50μm以下という薄いものが適しているが、これは、上記感熱印刷紙2の超高感度の印刷面との関連において、低出力の安価な感熱プリンター、具体的には、ノーマル感度の感熱紙に適用する汎用の標準的な感熱プリンターによって、上記感熱印刷紙2の印刷面において鮮明な画像として発色させるために必要なものである。
なお、上記半透明薄紙3は、必要に応じてその一部に切断線3bを付与しておくこともでき、また、該半透明薄紙3は必ずしも感熱印刷紙2の全面に貼着する必要はなく、感熱印刷紙2における感熱印刷しない部分へは貼着しなくてもよい。
【0014】
また、上記感熱印刷紙2の裏面に必要に応じて貼着するフルカラーのインクジェット印刷用紙4は、現状のインクジェット印刷技術によって非常に鮮明な画像を簡易に印刷表示できることから、該印刷に適した紙質の用紙を貼着して、広告その他の鮮明な表示に供するためのものである。
【0015】
上記構成を有する親展文書用紙1は、図3を参照して以下に説明するような装置によって製造することができる。この製造装置により製造される親展文書用紙1は、基本的には、上述したように、必要事項を感熱印刷表示すべき感熱印刷紙2の印刷面上に、グラシン紙等からなる半透明薄紙3を剥離可能な接着剤を介して貼り付けることにより構成したものであるが、必要があれば、図2に示すように感熱印刷紙2の印刷面とは反対側の面にインクジェット印刷用紙4を貼着したものとして構成することもできる。
【0016】
図3は上記親展文書用紙の製造装置の概要を概念的に示すもので、この製造装置では、一連の製造ラインの始端側に、感熱印刷紙2を連続的に供給する感熱印刷紙ロール12のリールと、該感熱印刷紙2の印刷面に剥離可能な接着剤で貼り付ける半透明薄紙3を連続的に供給する薄紙ロール13のリールと、必要に応じて、感熱印刷紙2の印刷面とは反対側の面に貼り付けるインクジェット印刷用紙4の用紙ロール14のリールとを、図示しないフレーム上に架設可能にしたものである。これらのロール12,13,14は、導出される感熱印刷紙2の印刷面上に半透明薄紙3を貼着し、該感熱印刷紙2の印刷面とは反対側にインクジェット印刷用紙4を貼着できるような配列で設置される必要がある。
【0017】
感熱印刷紙ロール12から連続的に供給される感熱印刷紙2の印刷面に半透明薄紙3を接着するため、薄紙ロール13から導出された半透明薄紙3における感熱印刷紙2側の面に対向する位置には、非粘着性で易剥離性の接着剤を半透明薄紙3に塗布する接着剤塗布機器15が設置される。また、感熱印刷紙2の印刷面とは反対側の面にインクジェット印刷用紙4を貼り付ける場合には、感熱印刷紙2の印刷面とは反対側の面に対向する位置にも接着剤塗布機器16が設置される。
【0018】
更に、上記感熱印刷紙ロール12と薄紙ロール13から導出された感熱印刷紙2及び半透明薄紙3とが重ねられ、また必要に応じてインクジェット印刷用紙4のロール14から導出された該用紙4も重ねられる位置に、それらを加圧接着して積層シート6とする加圧ローラ17aを備えた圧着機器17が設置される。次に、この圧着機器17において加圧接着して送出される積層シート6は、必要に応じて半透明薄紙3の一部のみに前記切断線3bを付与する切断線付与機器18、親展文書の作製時や使用時等における部分的切断を容易にするためのミシン目を付与するミシン目付与機器19、製造した積層シート6を必要な大きさに裁断するカッター20等に送られ、定型のシート状、連続折りのファンホールド状、巻取ったロール状など、その後に印刷するプリンターの各種形態に適合するような親展文書用紙1として構成される。
【0019】
上記積層シート6には、感熱印刷紙ロール12から連続的に供給される感熱印刷紙2の接着面には、半透明薄紙3との接着に先立ち、後に感熱印刷する個人情報等と関連する罫線や、当該用紙の用途に応じた基本的事項、あるいは注意書き等を、予め任意印刷手段により印刷しておくことができ、更には、上記印刷を予め行ったものを感熱印刷紙ロール12として用いることもできる。上記感熱印刷紙ロール12を汎用性のあるものとして無印刷の状態で提供する場合には、個人情報の感熱印刷に際して上記の各印刷を行えばよい。
【0020】
また、上記半透明薄紙3において、感熱印刷紙2に感熱印刷される個人情報の要秘匿事項の印刷部分上に位置する部位には、上記薄紙ロール13から導出して感熱印刷紙2の印刷面に接着する前後、あるいは、ユーザーにおける個人情報の感熱印刷の前後等、任意の時点において、目隠し用図柄3aを印刷することができる。
上記感熱印刷紙2の裏面に貼着したインクジェット印刷用紙4に対しても、任意時点に適宜インクジェット印刷を行うことができる。
【0021】
更に、上記親展文書用紙1における半透明薄紙3の隅部等には、必要に応じて、該用紙1の任意の製造段階で、上記感熱印刷紙2の発色(通常黒発色)及び半透明薄紙3の目隠し用図柄3aの印刷インク(通常黒)とは吸収波長の異なるインクを用いて、感熱印刷紙2に対する感熱印刷や半透明薄紙3に対する目隠し用図柄3aの印刷において上記用紙1を正確に位置決めするためのタイミングマーク3cを付しておくことができる。
【0022】
上記構成を有する親展文書用紙は、他人に知られたくない個人情報を記載した各種文書を、その発行者から直接または葉書等としてその個人情報を有している者に送付または配布するために用いられ、特に、官公庁や金融機関、量販店、ポイントカードを発行する小売店などで、個人情報を外部に出すことを望まない場合、あるいは比較的小規模の企業が外部業者に委託するほどでない数の親展文書を顧客に対して発送したりする場合、更には、社内で従業員らに給与明細書等の他人に知られたくない個人情報を含む文書を配布したりする場合などに適し、重要な個人情報を保護する親展文書を社内等で安価に作製して必要な人に提供することができる。
【符号の説明】
【0023】
2 感熱印刷紙
2a 要秘匿事項の印刷部分
2b 感熱印刷表示
3 半透明薄紙
3a 目隠し用図柄
3c タイミングマーク
4 インクジェット印刷用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人情報を含む必要事項を感熱印刷表示すべき超高感度の感熱印刷紙と、少なくとも該個人情報のうちの要秘匿事項の印刷部分を隠す目隠し用図柄を印刷するための厚さ50μm以下の半透明薄紙とを備え、上記感熱印刷紙の印刷面に該半透明薄紙を剥離可能な接着剤を介して貼り付けることにより構成され、
上記半透明薄紙を、目隠し用図柄を印刷しない部位においては、その下位の感熱印刷紙における感熱印刷表示を視認できる程度の透明性を有するものとした、
ことを特徴とする親展文書用紙。
【請求項2】
上記半透明薄紙がグラシン紙であることを特徴とする請求項1に記載の親展文書用紙。
【請求項3】
上記感熱印刷紙における印刷面とは反対側の面にインクジェット印刷用紙を貼着したことを特徴とする請求項1または2に記載の親展文書用紙。
【請求項4】
上記感熱印刷紙の発色及び半透明薄紙の目隠し用図柄の印刷インクとは吸収波長の異なるインクを用いて位置決めするためのタイミングマークを付していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の親展文書用紙。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の親展文書用紙における感熱印刷紙に対し、上記半透明薄紙を通して感熱プリンターによる上記必要事項の感熱印刷表示を行い、上記感熱印刷紙における要秘匿事項の印刷部分上における半透明薄紙に目隠し用図柄を印刷し、上記感熱印刷紙における秘匿不要事項の印刷部分上における半透明薄紙には目隠し用図柄の印刷をしないで、上記半透明薄紙を通して秘匿不要事項の印刷を可視化する、
ことを特徴とする親展文書作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−245786(P2011−245786A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122594(P2010−122594)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(390027203)株式会社中川製作所 (9)
【Fターム(参考)】