説明

親水化処理剤組成物

【課題】
難着霜性および除霜性に優れ、その優れた性能を長期間持続することが可能な被膜を形成できる親水化処理剤組成物、及び該親水化処理剤組成物を塗装して焼付けてなる親水性硬化被膜を有する熱交換器部品を提供すること。
【解決手段】
ベタイン構造を有する重合性不飽和モノマー及びホスホリルコリン構造を有する重合性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の両性イオン基含有重合性不飽和モノマー(a1)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)を共重合して得られるアクリル樹脂(A)、親水性架橋重合体粒子(B)及び架橋剤(C)を含んでなることを特徴とする親水化処理剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物の表面に適用することによって着霜を遅らせたり、付着する霜の成長を抑制したりする特性(以下、この特性を難着霜性と記す)、及び付着した霜を融解させた際に生じた水を該表面から流去しやすくする特性(以下、この特性を除霜性と記す)に優れた親水性硬化被膜を形成する親水化処理剤組成物、及び該親水化処理剤組成物を塗装してなる親水性硬化被膜を有する熱交換器部品に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の熱交換器部品においてアルミニウム製或いはアルミニウム合金製のフィンは、熱交換効率を向上させるために単位体積あたりの表面積を大きくする目的から、フィン間隔を極めて狭く取り付けるように設計されている。空気調和機の室外機に備え付けられた熱交換器部品のフィンは、低気温での暖房運転時に表面が着霜しやすい。近年広く普及しているヒートポンプ式空気調和機は特にこの傾向が強い。フィン間隔が極めて狭いためにそのまま運転を続けると付着した霜が成長して、ついにはフィン間を霜が連結して塞いでしまい、熱交換効率が著しく低下する。熱交換効率を回復するにはフィンに付着した霜を除くための運転(除霜運転)を行わなければならない。一般的に、除霜運転中は暖房運転が止まるので室内の人は不快であるし、電気エネルギーが本来の目的以外に費やされることになる。
【0003】
また、この除霜運転においてはフィン材表面の疎水性が高いと、霜の融解により発生した水滴が孤立して大きくなりフィン間をつなぐ形で残りやすいことが知られている。水滴がフィン間に存在すると暖房運転を再開したときに、この水滴が氷結してフィン間を部分的に塞ぎ、さらに氷結部位で霜の成長が速くなる現象が起こるために、結果として除霜運転の回数が増えることになってしまう。除霜運転にかかわる上記した不具合を解決するために、フィン材表面を親水化することによって、霜の融解により発生した水をフィン材表面に薄く広がるようにして落下除去させたり、蒸発しやすくして、フィン材表面に水滴が残らないようにすることが行われてきた。
【0004】
フィン材表面を親水化する方法として実用化されているものに、高分子量の水ガラスを主体とする親水化処理材を用いて親水性無機系被膜を形成する方法がある。しかし、この無機系被膜はフィン上に発生した水分により成分の水ガラスが加水分解されて、流出或いは被膜剥離などが起こり、親水性が経時で低下するという問題があった。このような無機系被膜の問題を解決する方法として、フィン材上に親水性有機無機複合被膜を形成する手法が検討されており、これまでにコロイダルシリカのような親水性無機粒子成分と親水性有機樹脂成分の組合せからなる組成物が実用化されている。ところがロールコーターなどの手段によりアルミニウム板にこの組成物を塗装後に焼付けて親水性被膜を形成し、その後この板にプレス成型加工を施してフィン材を作成する方法(プレヒート法)の場合、プレス成型に用いられる金型が摩耗し易くなり、磨耗の進行した金型の使用によってフィン材の成型不良や親水性被膜の破壊による耐食性の低下等の問題を発生することがあった。そこで親水性無機粒子の替わりに親水性架橋重合体粒子を用いる方法が特許文献1において提案され、プレコート法における上記した金型の磨耗、成型不良、被膜の破壊の問題が解決され、該発明を熱交換器用アルミフィン材に適用した場合には優れた除霜性を長期間持続することが可能になった。一方、そもそも霜を着きにくくすればよいとの発想から、このような親水化による除霜性に加えて、難着霜性という新たな特性を付与することが要望されるようになってきた。しかし、特許文献1の方法においても、難着霜性に関しては不十分であった。
【0005】
親水性有機被膜を形成する手法として特許文献2には水性熱硬化型アクリルアミノプラスト樹脂及び/または水性エマルションシリコン樹脂、両性イオン基を有する樹脂粒子及びアルカリ金属塩からなる熱交換器被膜用組成物が開示されている。その被膜を熱交換器用フィン材に適用した場合、使用初期の親水性に優れていたが、長期間その親水性を維持することは困難であった。また、難着霜性は使用初期から不十分であり、長期間使用すると親水性の低下に伴って除霜性が低下してしまう問題があった。
【0006】
特許文献3にはベタイン構造を有する両性イオン基含有ポリマーを含む親水性被膜形成用組成物が開示されている。この組成物から得られる被膜は架橋構造を有しているために親水性を長期間維持することが可能であるが、該組成物を熱交換器用フィン材に適用した場合には、除霜性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−149715号公報
【特許文献2】特開昭61−238864号公報
【特許文献3】特開2008−308659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、難着霜性および除霜性に優れ、その優れた性能を長期間持続することが可能な被膜を形成できる親水化処理剤組成物、及び該親水化処理剤組成物を塗装して焼付けてなる親水性硬化被膜を有する熱交換器部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造の両性イオン基含有重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物の共重合体、親水性架橋重合体粒子及び架橋剤からなる親水化処理剤組成物を用いることにより、難着霜性及び除霜性の両方に優れた被膜が得られ、その性能を長期間持続することができることを見出し、本発明を開示するに至った。すなわち、本発明は次項からなる。
1.ベタイン構造を有する重合性不飽和モノマー及びホスホリルコリン構造を有する重合性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の両性イオン基含有重合性不飽和モノマー(a1)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)を共重合して得られるアクリル樹脂(A)、親水性架橋重合体粒子(B)及び架橋剤(C)を含んでなることを特徴とする親水化処理剤組成物。
2.架橋剤(C)がメラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロック化イソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である1に記載の親水化処理剤組成物。
3.1又は2に記載の親水化処理剤組成物が塗装された熱交換器部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物によれば、難着霜性及び除霜性に優れた被膜が得られ、さらに従来の問題点であった該性能の長期間持続を可能とする被膜が得られる。かくして、空気調和機に本発明の組成物が塗装された熱交換器部品を使用することにより、省エネルギー化と快適な運転環境を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の親水化処理剤組成物をさらに詳細に説明する。本発明の親水化処理剤組成物はアクリル樹脂(A)、親水性架橋重合体粒子(B)及び架橋剤(C)を含んでなる。
【0012】
アクリル樹脂(A)
アクリル樹脂(A)はベタイン構造を有する重合性不飽和モノマー及びホスホリルコリン構造を有する重合性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の両性イオン基含有重合性不飽和モノマー(a1)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)を共重合して得られる。上記のモノマー(a1)は下記式(1)に示すベタイン構造、或いは下記式(2)に示すホスホリルコリン構造を有する両性イオン基含有重合性不飽和モノマーである。
【0013】
【化1】

【0014】
(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキレン基を表し、R、Rは独立に水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは水酸基で置換されていていもよい炭素数1〜15の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、又は水酸基で置換されていてもよいフェニレン基、Zは酸素原子又はイミノ基を表し、Xはスルホン酸アニオン基、カルボン酸アニオン基、リン酸アニオン基の何れか1種の基を表す。)
【0015】
【化2】

【0016】
(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキレン基を表す。)
式(1)で表されるベタイン化合物である重合性不飽和モノマー(a1)は、式(1)におけるXがカルボン酸アニオン基の場合、「カルボキシベタイン系モノマー」、Xがスルホン酸アニオン基の場合、「スルホベタイン系モノマー」、Xがリン酸アニオン基の場合、「ホスホベタイン系モノマー」と、本明細書においては記すことがある。カルボキシベタイン系モノマーの具体例としては、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−カルボキシラトエチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(2−カルボキシラトエチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(3−カルボキシラトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(3−カルボキシラトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(4−カルボキシラトブチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(4−カルボキシラトブチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(カルボキシラトメチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(カルボキシラトメチル)アミニウム等が挙げられる。カルボキシベタイン系モノマーは、公知の方法で製造することができ、例えば特開2008−63334号公報、或いは特開平9−95474号公報に記載の方法を用いることができる。なお、上記したうち、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(カルボキシラトメチル)アミニウムは本明細書においてメタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−メチルカルボキシベタインと記載することがある。
【0017】
スルホベタイン系モノマーの具体例としては、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−スルホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(2−スルホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(3−スルホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(3−スルホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(4−スルホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(4−スルホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(スルホナトメチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(スルホナトメチル)アミニウム等が挙げられる。スルホベタイン系モノマーは公知の方法で製造することができ、例えば特開2008−63334に記載の方法を用いることができる。なお、上記したうち、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(3−スルホナトプロピル)アミニウムは本明細書においてメタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタインと記載することがある。
【0018】
ホスホベタイン系モノマーの具体例としては、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−ホスホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ホスホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(3−ホスホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(3−ホスホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(4−ホスホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ホスホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(ホスホナトメチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(ホスホナトメチル)アミニウム等が挙げられる。上記ホスホベタイン系モノマーは、公知の方法で製造することができ、例えば特開2008−63334に記載の方法を用いることができる。
【0019】
ホスホリルコリン構造を有する重合性不飽和モノマーは公知の化合物を用いることができ、該化合物は例えば特開昭54−63025号公報、特開昭58−154591号公報、特開平6−345787、特開平7−10892号公報、特開平11−43496号公報などに記載の方法で製造することができる。ホスホリルコリン構造を有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、アクリロイルオキシブチルホスホリルコリン等が挙げられる。
【0020】
上記した重合性不飽和モノマー(a1)は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
なお、ベタインは一つの分子内にカチオンとして第4級アンモニウムと酸のアニオンをもった分子内塩に対する一般名である(化学大辞典8、縮刷版第38刷、319頁、2003年10月1日、共立出版株式会社)。本明細書においてはカチオンとして第4級アンモニウムと、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、リン酸アニオンの何れか1種のアニオンとを有する式1の化合物のことをベタイン構造を有する重合性不飽和モノマーと称する。他方、ホスホリルコリンはレシチン代謝の中間体として重要な化合物であり(化学大辞典8、縮刷版第38刷、677頁、2003年10月1日、共立出版株式会社)、本明細書においてはホスホリルコリンのエステル化合物である式2の化合物のことをホスホリルコリン構造を有する重合性不飽和モノマーと称する。このものも一つの分子内にカチオンとアニオンをもった分子内塩である。本明細書において一つの分子内にカチオンとアニオンをもった分子内塩である重合性不飽和モノマーを両性イオン基含有重合性不飽和モノマーと称する。
【0022】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(a2)の内、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートと無水コハク酸のエステルである2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート(製品名:NKエステルSA、新中村化学工業株式会社製品)のような水酸基含有不飽和モノマーと酸無水物化合物の反応生成物であるカルボキシル基含有不飽和モノマー、無水マレイン酸と水酸基含有化合物のハーフエステル化反応により得られた化合物等を挙げることができる。上記したモノマーのカルボキシル基は塩基性物質と塩を形成していてもよい。
【0023】
モノマー(a2)の内、水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の如きアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステルを挙げることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとε−カプロラクトンとの付加物も挙げられる。この付加物の市販品としては、例えば、「プラクセルFM−3」(商品名、ダイセル化学工業社製)等を挙げることができる。
【0024】
その他の重合性不飽和モノマー(a3)は、例えば以下の化合物を挙げることができる。
【0025】
(メタ)アクリルアミド系モノマー:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等。
【0026】
含窒素複素環式化合物系モノマー:2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジン等。
【0027】
アミノ基含有モノマー:N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等。
【0028】
ニトリル基含有モノマー:アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜30のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル等。(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステル、又は、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル等。
【0030】
ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー:下記式(2)に示す構造の化合物、或いはポリオキシアルキレン化合物と反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマーとの反応により得られる化合物等。
【0031】
【化3】

【0032】
(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはn個の繰り返し単位中、その全てが同じであっても或いは異なっていてもよい炭素数2〜5のアルキレン基を表し、さらに該アルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよく、R10は水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基を表し、nは2〜300の整数である)
芳香族系モノマー:スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン等。
【0033】
フッ化アルキル基含有モノマー:(メタ)アクリル酸パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロイソノニルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル等のアクリル酸又はメタクリル酸のパーフルオロアルキルエステル。
【0034】
オレフィン系モノマー:エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン等。
【0035】
フルオロオレフィン系モノマー:トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等。
【0036】
ビニルエステル系モノマー:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル等の炭素原子数1〜20の脂肪酸のビニルエステル類やプロペニルエステル類。このようなビニルエステル類の市販品として、「VeoVa」モノマー(商品名、シェル化学社製、分岐高級脂肪酸のビニルエステル)等が挙げられる。
【0037】
加水分解性アルコキシシリル基含有モノマー:ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等。
【0038】
スルホン酸基含有モノマー:ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホエチル、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー及びその塩。
【0039】
リン酸基含有モノマー:2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等の水酸基含有モノマーとリン酸化合物のエステル化物、或いは(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基にリン酸化合物を付加させた化合物等。
【0040】
一分子中に複数の不飽和結合を有するモノマー:(メタ)アクリル酸アリル、1,6−ジ(メタクリロイルオキシ)ヘキサン、ジビニルベンゼン等。
【0041】
上記したその他の重合性不飽和モノマー(a3)は1種又は2種以上を使用することができる。
【0042】
両性イオン基含有重合性不飽和モノマー(a1)の使用量は、モノマー(a1)、(a2)及び(a3)の総量に対して、好ましくは10質量〜90質量%、さらに好ましくは20質量〜80質量%の範囲であるのがよい。重合性不飽和モノマー(a1)の使用量が10質量%よりも少ないと得られる硬化被膜の難着霜性と除霜性が不十分になることがある。90%質量よりも多いと得られる硬化被膜の耐水性が不十分になることがある。
【0043】
モノマー(a2)は、モノマー(a1)及びモノマー(a3)と共重合することによりアクリル樹脂(A)にカルボキシル基及び/又は水酸基を導入することができる。これらのカルボキシル基と水酸基は架橋剤(C)との架橋反応性官能基として利用したり、或いはアクリル樹脂(A)の親水性を調整するために使用することが可能である。アクリル樹脂(A)の固形分当たりの酸価、或いは水酸基価の合計した値は好ましくは20〜200mgKOH/gの範囲であり、さらに好ましくは40〜180mgKOH/gの範囲である。アクリル樹脂(A)の酸価と水酸基価の合計した値が上記した範囲の数値になるようにモノマー(a2)のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーと水酸基含有重合性不飽和モノマーは、それぞれ単独で或いは両方を用いることができる。アクリル樹脂(A)の固形分当たりの酸価と水酸基価の合計した値が20mgKOH/gよりも小さいと焼付け後の塗膜の架橋が不十分なために塗膜の加工性が劣ることがある。アクリル樹脂(A)の固形分当たりの酸価と水酸基価の合計した値が200mgKOH/gよりも大きいと焼付け後の硬化塗膜の耐水性が不十分となって、難着霜性や除霜性を長期に維持することが困難になる場合がある。
【0044】
上記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は好ましくは2,000〜300,000、さらに好ましくは3,000〜200,000の範囲内である。
【0045】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0046】
アクリル樹脂(A)は、両性イオン基含有重合性不飽和モノマー(a1)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)を共重合して得られる。重合方法としては例えば溶媒中での均一重合(溶液重合)や分散重合、或いは溶媒を用いないバルク重合などの公知の方法を用いることができるが中でも溶液重合法が最適である。重合の際は連鎖移動剤を用いて分子量調整することもできる。モノマーと重合開始剤の重合系内への導入方法は従来公知の方法を用いることができる。
【0047】
溶液重合に際して使用される溶媒としては、例えば、水;トルエン、キシレン、「スワゾール1000」(コスモ石油社製、商品名、高沸点石油系溶剤)などの芳香族系溶剤;酢酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ブタノール等のアルコール系溶剤などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、必要に応じて上記した溶剤と水を混合して用いることも可能である。
【0048】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの公知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。重合開始剤の使用量は、重合させるモノマーの総量に対して、0.01〜30質量%程度が好ましく、0.1〜20質量%程度がより好ましい。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等の公知の化合物を用いることができる。溶液重合による共重合は、例えばモノマーと重合開始剤の混合物を溶剤に溶解または分散し、これを撹拌しながら通常50℃〜200℃程度に加熱しながら1〜20時間程度撹拌することによって行うことができる。
【0049】
アクリル樹脂(A)は塩基性化合物と一緒に用いてもよく、アクリル樹脂(A)中のカルボキシル基の一部又は全部をアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩とすればよく、例えば、上記アクリル樹脂(A)をアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物で中和することによって用いることができる。
【0050】
親水性架橋重合体粒子(B)
本発明組成物における親水性架橋重合体粒子(B)は公知の方法によって得られるものを使用することができ、難着霜性と除霜性に優れる観点から、例えば特開2000−328038号公報、特開2002−302644号公報、特開2009−149715号公報等に記載された方法により得られたものを好適に使用することができる。具体的には以下に記す方法によって得ることができる。
【0051】
親水性架橋重合体粒子(B)は、親水性重合性不飽和モノマー(b1)、(メタ)アクリルアミド系モノマー(b2)、架橋性不飽和モノマー(b3)及びその他の重合性不飽和モノマー(b4)の共重合体からなる親水性架橋重合体粒子である。
【0052】
親水性重合性不飽和モノマー(b1)としては、1分子中に少なくとも1個の重合性不飽和基と、ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する化合物を挙げることができ、該化合物の代表例としては上記式(3)に示したポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、或いは式(4)に記したポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
【0053】
【化4】

【0054】
(式中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R12は水素原子又は重合開始剤切片等の重合体末端基を表し、XはO、S又はN原子を含有してもよい炭素原子数5〜10の二価の有機基を表わし、mは10〜100の整数である)
上記式(4)において、XはO、S又はN原子を含有してもよい炭素原子数5〜10の二価の有機基であり、具体例としては、下記式(5)で表わされる有機基を挙げることができる。上記親水性重合性不飽和モノマー(b1)としては、分散安定性等の観点から、nが50〜200である式(3)、又は(4)の化合物が好ましい。
【0055】
【化5】

【0056】
(メタ)アクリルアミド系モノマー(b2)は下記式(6)または(7)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0057】
【化6】

【0058】
(式中、R13は水素原子又はメチル基を表わし、R14およびR15 は同一又は相異なり、それぞれ水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表わし、且つR14とR15 との炭素原子数の和は5以下である。)
【0059】
【化7】

【0060】
(式中、R16は水素原子又はメチル基を表わす。)
上記式(6)においてR14 又はR15 によって表わされる「炭素原子数1〜5のアルキル基」は、直鎖状のもの又は分枝鎖状のもののいずれであってもよく、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミルなどを挙げることができる。上記一般式(6)で示されるモノマー(b2)の代表例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N, N−ジメチルアクリルアミド、N, N−ジメチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0061】
架橋性不飽和モノマー(b3)は、粒子の架橋に寄与する成分であり、1分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物、ならびに1分子中に加水分解性シリル基、エポキシ基、N−メチロール基及びN−アルコキシメチル基から選ばれる少なくとも1個の官能基と1個の重合性不飽和基とを有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。架橋性不飽和モノマー(b3)のうち、1分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1, 3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、得られる重合体粒子の分散安定性および親水性等の観点から、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミドが好適である。
【0062】
上記架橋性不飽和モノマー(b3)のうち、1分子中に加水分解性シリル基、エポキシ基、N−メチロール基及びN−アルコキシメチル基から選ばれる少なくとも1個の官能基と1個の重合性不飽和基とを有する化合物の代表例としては下記の化合物を挙げることができる。
【0063】
加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマー:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等。エポキシ基を有する重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。N−メチロール基を有する重合性不飽和モノマー:N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等。N−アルコキシメチル基を有する重合性不飽和モノマー:N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等。これらのモノマーのうち、重合体粒子の有機溶剤中での安定性等の点から、N−メチロール基又は炭素数1〜7のN−アルコキシメチル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましい。なお、本明細書において「加水分解性シリル基」とは、加水分解することによってシラノール基を生成する珪素含有基を意味する。
【0064】
その他の重合性不飽和モノマー(b4)は、必要に応じて用いられるモノマーであり、1分子中に1個の重合性不飽和基を有し、前記モノマー(b1)、(b2)及び(b3)と共重合可能な、前記モノマー(b1)、(b2)及び(b3)以外の化合物であり、また、上述したアクリル樹脂Aを製造するために使用することのできるモノマー(a2)〜(a3)の各種化合物の内、前記モノマー(b1)、(b2)及び(b3)以外の化合物を使用することが可能である。
【0065】
モノマー(b3)中の官能基が加水分解性シリル基、N−メチロール基又はN−アルコキシメチル基である場合、これらの基はそれぞれこれらの基同志で反応して架橋することもできる。また、モノマー(b4)として、前記モノマー(b3)における官能基と相補的に反応する官能基を有する化合物を使用すると、モノマー(b3)中の官能基とモノマー(b4)中の官能基の反応によって粒子内部を架橋させることも可能である。モノマー(b3)中の官能基が加水分解性シリル基、N−メチロール基、又はN−アルコキシメチル基の場合、該官能基と相補的に反応する(b4)の官能基としては水酸基を挙げることができ、モノマー(b3)中の官能基がエポキシ基の場合、該官能基と相補的に反応する(b4)の官能基としてはカルボキシル基を挙げることができ、適宜これらの相補的に反応する官能基を有する重合性不飽和モノマーを選択して使用することができる。
【0066】
親水性架橋重合体粒子(B)は、例えば以上に述べた親水性重合性不飽和モノマー(b1)、(メタ)アクリルアミド系モノマー(b2)、架橋性不飽和モノマー(b3)、及びその他の重合性不飽和モノマー(b4)を分散安定剤の存在下或いは不存在下に、上記モノマーを溶解するが生成する共重合体を実質的に溶解しない水混和性有機溶媒中又は水混和性有機溶媒/水混合溶媒中で共重合せしめることにより製造することができる。
【0067】
その際の各モノマーの使用割合は、(b1)〜(b4)の総量に対してポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する重合性不飽和モノマー(b1):2〜50質量%、好ましくは2〜40質量%、(メタ)アクリルアミド系モノマー(b2):20〜97質量%、好ましくは30〜96質量%、架橋性不飽和モノマー(b3):1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、その他の重合性不飽和モノマー(b5):0〜77質量%、好ましくは0〜66質量%であることが親水持続性の点から好ましい。
【0068】
ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖を有する親水性重合性不飽和モノマー(b1)の量が2質量%未満であると、生成する重合体粒子を安定化することが困難となることがあり、重合中又は貯蔵中に凝集物が生成しやすくなり、一方50質量%を超えると、生成する重合体粒子が反応溶媒に溶解しやすくなり、重合体の多くが溶解してしまうことがある。(メタ)アクリルアミド系モノマー(b2)の量が20質量%未満であると、一般に、重合によって生成する重合体が反応溶媒に溶解しやすくなり重合体粒子の形成が困難となる場合があり、一方、97質量%を超えると、重合中および経時での重合体粒子の安定性が不充分となり凝集物が生成しやすくなる場合がある。架橋性不飽和モノマー(b3)の量が1質量%未満であると、溶媒として水以外に有機溶剤を含む組成物において使用した場合、貯蔵中に有機溶剤により膨潤して組成物の粘度が増大することがあり、一方30質量%を超えると、これを含む組成物の被膜を形成したアルミニウム板をプレス成型する際に金型が摩耗し易くなることがある。
【0069】
親水性架橋重合体粒子(B)の製造において、親水性重合性不飽和モノマー(b1)が共重合されることによって生成する重合体粒子に親水性に富んだポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖が導入され、該重合体粒子の分散安定化に該ポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖が寄与するため、重合体粒子(B)は分散安定剤の使用せずとも製造が可能である。
【0070】
上記重合体粒子(B)の製造に際して反応溶媒として、原料のモノマー混合物は溶解するが、生成する共重合体を実質的に溶解しない水混和性有機溶媒又は水混和性有機溶媒/水混合溶媒が使用される。ここで「水混和性」又は「水と混和する」とは、20℃の温度で水に任意の割合で溶解しうることを意味する。
【0071】
上記水混和性有機溶媒としては、上記の要件を満たす限り任意のものを使用することができるが、特に、溶解性パラメータ(SP)値が一般に9〜11、特に9.5〜10.7の範囲内にある有機溶媒を少なくとも50重量%、特に70重量%以上含有するものが、重合安定性の観点から好適である。なお、本明細書における「溶解性パラメータ(SP)値」は、ジャーナル・オブ・ペイント・テクノロジー(Journal of Paint Technology)第42巻、541号、76〜118頁(1970年2月)の記載に基づくものである。
【0072】
SP値が上記の範囲内にある水混和性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられ、これらの中特に、エチレングリコールモノブチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0073】
水混和性有機溶媒は、以上に述べた如きSP値が9〜11の範囲内にある有機溶媒以外に、他の水混和性又は水非混和性有機溶媒を含有することができる。そのような有機溶媒としては、水混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が好適である。これらの他の水混和性又は水非混和性有機溶媒は、有機溶媒の全量の50質量%以下、特に30質量%以下の量で使用することが望ましい。
【0074】
また、反応溶媒として、水混和性有機溶媒/水の混合溶媒を使用する場合、該混合溶媒中における水の含有量は、重合安定性等の観点から、通常、水混和性有機溶媒100質量部あたり60質量部以下、特に40質量部以下であることが好ましい。
【0075】
前記モノマー混合物の共重合は、通常、ラジカル重合開始剤の存在下に行なわれる。ラジカル重合開始剤としては、それ自体既知のものを使用することができ、その使用量は、通常、モノマーの合計量に対して0.2〜5質量%の範囲内が好ましい。
【0076】
重合温度は、使用する重合開始剤の種類等によって変えることができるが、通常、約50〜約160℃、さらには90〜160℃の範囲内の温度が適当であり、反応時間は0.5〜10時間程度とすることができる。また、重合反応後にモノマー(b3)による架橋を進行させるために、より高温に加熱してもよい。さらに、重合反応中や重合反応後における粒子内架橋反応をより速やかに進行させるために、必要に応じて、架橋反応触媒を加えてもよい。架橋反応触媒としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の強酸触媒;トリエチルアミンなどの塩基触媒などを挙げることができ、架橋反応種に応じて適宜選定すればよい。以上に記したように製造される重合体粒子(B)の粒子径は、特に限定されるものではないが、重合体粒子(B)の安定性、凝集物の発生抑制などの点から、一般に0.03〜1μm、好ましくは0.05〜0.6μmの範囲内の平均粒子径を有することが適当である。この平均粒子径は、粒子径測定装置、例えばサブミクロン粒子アナライザー N5(ベックマン・コールター社製)によって測定し、単分散モード解析により求めることができる。
【0077】
上記重合体粒子(B)は、親水性重合性不飽和モノマー(b1)に由来するポリオキシアルキレン鎖又はポリビニルピロリドン鎖が重合体粒子表面に化学的に結合した状態で外側に向って配向しているため、分散安定剤の不存在下であっても、重合安定性及び経時での分散安定性(貯蔵安定性)が極めて優れており、しかも、表面が親水性に富んでいる。
【0078】
また、重合体粒子(B)は、モノマー(b3)成分の存在により、粒子内架橋されており、有機溶剤型塗料中においてもその形態を保持し、また、加熱によっても容易に溶融しないためにその形態を保持できる。
【0079】
本発明組成物においてアクリル樹脂(A)の固形分質量と親水性架橋重合体粒子(B)の固形分質量の比率は97/3〜55/45、特に95/5〜60/40の範囲内が好適である。上記(A)と(B)の固形分質量比が97/3よりも大きいと、得られる被膜の除霜性が不十分になることがある。また、55/45よりも小さいと塗装作業性が低下して膜厚の制御が難しくなることがある。
【0080】
架橋剤(C)
本発明組成物における架橋剤(C)は焼付け後に得られる親水性被膜の耐水性を向上させたり、或いは難着霜性や除霜性を長期に維持したりする目的で用いられるものである。該架橋剤としては例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアルデヒド化合物、フェノール樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、金属化合物(金属塩、金属錯体、金属酸化物、金属水酸化物等)、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ヒドロキシアルキルアミド化合物、シリケート化合物等を挙げることができる。
【0081】
上記メラミン樹脂としては、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂があげられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等がある。また、このメチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものも使用でき、エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。メラミン樹脂としては、なかでもメチロール基の少なくとも一部をメチルエーテル化したメチロール化メラミン樹脂が好適である。メラミン樹脂を使用する場合その使用量は、本発明のアクリル樹脂(A)100質量部に対して、メラミン樹脂が0.5〜100質量部、好ましくは1〜45質量部である。
【0082】
上記ポリアルデヒド化合物は、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する化合物であり、その具体例としてはグリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。
【0083】
上記ポリエポキシ化合物としては、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、その代表的な例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルまたはクレゾールノボラックポリグリシジルエーテルなどの多価アルコールまたは多価フェノールのポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸のグリシジルエステル及びグリシジルエーテル化物;フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルまたは(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体などの多価カルボン酸のポリグリシジルエステル;ヒダントイン環などの含窒素ヘテロ環を含むポリエポキシ化合物;上記1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物と多価アルコール、多価フェノールまたは多塩基酸との付加物であるエポキシ樹脂;脂肪酸変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂;側鎖にエポキシ基を有するビニル系重合体などを挙げることができる。エポキシ化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基及び水酸基の合計1モルに対して、エポキシ化合物中のエポキシ基の量が0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0084】
上記イソシアネート化合物は1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、従来からポリウレタンの製造に使用されているものを使用することができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0085】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0086】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0087】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0088】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0089】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びトリレンジイソシアネートの粗製物(クルードTDI)などを挙げることができる。
【0090】
上記のポリイソシアネート化合物は必要に応じてイソシアネート基の一部を水酸基やアミノ基等の活性水素を1分子に1〜5個含有する化合物で変性したものを用いてもよい。
【0091】
上記のポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0092】
架橋剤としてのブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤で封鎖した化合物である。
【0093】
ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応は既知の条件で行なうことができる。また、両成分の比率は、イソシアネート基が残存しないようポリイソシアネート化合物中の全イソシアネート基に対して若干過剰量のブロック剤となるような比率とするのが好ましい。ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチルピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0094】
ブロック剤はイソシアネート基を封鎖する化合物である。ブロックされたイソシアネート基は、通常、例えば100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱すると、ブロック剤が解離してイソシアネート基が再生され、水酸基等と容易に反応させることができる。
【0095】
ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、ジアセトンアルコールなどのアルコール系;アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系;3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、及び4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系の化合物などを挙げることができる。上記したブロック剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0096】
上記ブロック剤のうち、硬化性と塗膜黄変性の観点からオキシム系、ピラゾール系の化合物を好適に使用することができる。
【0097】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ブロック化ポリイソシアネート化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれる水酸基1モルに対して、ブロック化ポリイソシアネート基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0098】
ポリオキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を分子中に2個以上有する化合物を挙げることができ、2,2’−p−フェニレン−ビス−(1,3−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(1,3−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)の如き低分子量のポリ(1,3−オキサゾリン)化合物;さらには、2−ビニル1,3−オキサゾリン、2−イソプロペニル−1,3−オキサゾリンの如き1,3−オキサゾリン基含有ビニル系単量体の単独重合体もしくはこれと共重合可能な各種のビニル系単量体とを共重合せしめて得られる、1,3−オキサゾリン基を含有するビニル系重合体が挙げられる。
【0099】
市販のオキサゾリン基含有化合物としては、「エポクロスK−1000」、「エポクロスK−1020E」、「エポクロスK−1030E」、「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」、「エポクロスWS−500」(以上、商品名、日本触媒化学工業(株)製)などが挙げられる。上記ポリオキサゾリン化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1モルに対して、ポリオキサゾリン化合物中のオキサゾリン基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0100】
カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を分子中に2個以上有する化合物を挙げることができ、その具体例としては「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−06」、(以上商品名、日清紡績株式会社製)等の市販品を挙げることができる。これらは単独でも2種以上の混合物でも使用できる。カルボジイミド化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1モルに対して、カルボジイミド化合物中のカルボジイミド基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0101】
2−ヒドロキシアルキルアミド化合物としては例えばアジピン酸の両端にジアルカノールアミンが縮合した構造の4官能型として、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミド(商品名:PrimidXL552;CAS 6334−25−4)やN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アジパミド(商品名:PrimidQM1260;CAS 57843−53−5)が挙げられる(いずれもEMS社製)。2−ヒドロキシアルキルアミド化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1モルに対して、2−ヒドロキシアルキルアミド化合物中のヒドロキシ基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0102】
ヒドラジド化合物としては、1分子中にヒドラジド基、および/またはセミカルバジド基を2個以上有する化合物を好適に用いることができる。例えば蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどの不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド、フタル酸、テレフタル酸またはイソフタル酸ジヒドラジド、並びにピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジドまたはテトラヒドラジド;ニトリロトリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、カルボン酸低級アルキルエステル基を1分子中に2個以上有する低重合体をヒドラジンまたはヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド(特公昭52−22878号参照)、炭酸ジヒドラジド等のポリヒドラジド化合物。上記したヒドラジド化合物は本発明のアクリル樹脂(A)にカルボニル基が含まれる場合に架橋剤として使用することが可能である。該アクリル樹脂(A)はその製造の際に上記したその他の重合性不飽和モノマーとして、例えばダイアセトン(メタ)アクリルアミドのように分子内にカルボニル基を有するモノマーを用いることにより得ることができる。ヒドラジド化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボニル基1モルに対して、ヒドラジド化合物中のヒドラジド基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0103】
セミカルバジド化合物としてはヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれにより誘導されるポリイソシアネート化合物にヒドラジンやモノアルキル置換ヒドラジンを反応させて得られるポリセミカルバジド化合物、ジイソシアネートを含む該ポリイソシアネート化合物に上記例示のジヒドラジド化合物やポリヒドラジド化合物を反応させて得られるポリヒドラジド化合物、該ポリイソシアネート化合物とポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の活性水素を有するポリエーテルやポリオールとの反応から得られる変性ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基にヒドラジンやモノアルキル置換ヒドラジンを反応させて得られるポリセミカルバジド化合物、該変性ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドやポリヒドラジドを反応させて得られるポリヒドラジド化合物等が挙げられ、これらは単独で、或いは必要に応じて混合して一緒に用いることができる。上記したセミカルバジド化合物は本発明のアクリル樹脂(A)にカルボニル基が含まれる場合に架橋剤として使用することが可能である。該アクリル樹脂(A)はその製造の際に上記したその他の重合性不飽和モノマーとして、例えばダイアセトン(メタ)アクリルアミドのように分子内にカルボニル基を有するモノマーを用いることにより得ることができる。セミカルバジド化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボニル基1モルに対して、セミカルバジド化合物中のセミカルバジド基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0104】
シリケート化合物としては、一般式:(R17−Si−(OR184−n(式中、R17はエポキシ基もしくはメルカプト基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル基又はフェニル基であり、nは0または1である。OR18は炭素原子数1〜6のアルコキシ基である。)で表わされるオルガノシリケート及び/又はその縮合物を挙げることができる。該オルガノシリケート及び/又はその縮合物はアクリル樹脂(A)が水酸基或いはシリル基を含有している場合に架橋剤として好適に用いることができる。架橋効率の観点から上記オルガノシリケートは縮合物がより好ましく使用できる。上記一般式におけるR17の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、グリシジル、メチルグリシジル、メルカプトメチル、2−メルカプトエチル、2−メルカプトプロピル、3−メルカプトプロピル、4−メルカプトブチル、フェニル、p−メルカプトフェニル基などを挙げることができる。
【0105】
該オルガノシリケートの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシランなどの4官能シラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリn−ブトキシシラン、フェニルトリイソブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ラウリルトリメトキシシラン、ラウリルトリエトキシシラン等の3官能シランが挙げられる。上記オルガノシリケートの縮合物としては、これらの4官能もしくは3官能シランの1種又は2種以上の組み合わせでの縮合物などが挙げられる。
【0106】
オルガノシリケートの縮合物は、常法により製造することができ、市販品の、例えば、MKCシリケートMS51、MS56、MS57、MS56S、MS56SB5、MS58B15、MS58B30、ES40、EMS31、BTS(以上、いずれも三菱化学(株)製、商品名)、メチルシリケート51、エチルシリケート40、エチルシリケート40T、エチルシリケート48(以上、いずれもコルコート(株)製、商品名)、KR500、KR9218、X−41−1805、X−41−1810、X−41−1818、X−41−1053、X−41−1056(以上、いずれも信越化学工業(株)製、商品名)等を挙げることができる。また、これらのオルガノシリケートの縮合物を単体で、又は2種以上を組み合わせて部分加水分解縮合することによっても得ることができる。オルガノシリケートの縮合物は、分枝状もしくは直鎖状の縮合物であって、縮合度が2〜100、さらに2〜20であることが好適である。ここで縮合度はオルガノシリケートの縮合物1分子当たりに含まれるケイ素原子の数の平均値である。本発明の親水化処理剤組成物においては上記したオルガノシリケートやオルガノシリケートの縮合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
アクリル樹脂(A)に含有されるカルボキシル基または水酸基と反応して金属架橋し得る架橋剤としてBa、B、Fe、Ca、Mg,Cu、Al、Zn、Ti、Zr、Pd、Pt及びMnなどの二価以上の金属化合物を挙げることができる。金属化合物としては金属塩、金属錯体、金属酸化物、金属水酸化物等の既知の化合物を用いることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0108】
架橋剤(C)は、親水性架橋重合体粒子(B)の有する官能基の種類によってはこれらと反応することもあるが、上記したようにアクリル樹脂(A)の有する官能基の種類に応じて適宜単独で或いは複数の種類の架橋剤(C)を選択して用いることが好適である。架橋剤(C)としては、上記した中で特にメラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロック化イソシアネート化合物が本発明の親水化処理剤組成物から得られる親水性被膜の難着霜性と除霜性の両方の性能を満足する観点から好適である。
【0109】
親水化処理剤組成物
本発明組成物は、アクリル樹脂(A)、親水性架橋重合体粒子(B)及び架橋剤(C)を必須成分とするものである。本発明組成物においてアクリル樹脂(A)と併せて親水性架橋重合体粒子(B)を用いたことが難着霜性と除霜性の両方に優れた性能の発揮に繋がったと考えている。その理由は明らかではないがアクリル樹脂(A)は両性イオン基含有重合性不飽和モノマーを含む不重合性飽和モノマーを共重合して得られたものであるために、両性イオンに起因する親水性を有しており、親水性架橋重合体粒子の添加により形成された被膜表面の微小な凹凸がこの親水性をさらに効果的に発揮した結果であると推定している。また、アクリル樹脂(A)はカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び/又は水酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合して得られたものであるために、これらの官能基を利用して架橋剤(C)と架橋反応することが可能である。本発明組成物から形成された被膜は、この架橋反応により3次元網目構造を形成することによって、難着霜性及び除霜性を長期間維持することが可能になったと考えている。
【0110】
本発明組成物は、アクリル樹脂(A)、親水性架橋重合体粒子(B)及び架橋剤(C)を必須成分とするものであり、通常、さらにこれらの成分を溶解ないしは分散するための溶媒を含有し、さらに必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、防菌剤、防腐剤、防カビ剤、着色顔料、染料、それ自体既知の防錆顔料(たとえばクロム酸塩系、鉛系、モリブデン酸系など)、防錆剤や酸化防止剤(たとえばタンニン酸や3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸などのフェノール性水酸基含有芳香族カルボン酸およびその塩類やエステル類、ポリフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、フィチン酸やホスフィン酸などの有機リン酸、重リン酸の金属塩類、亜硝酸塩など)、帯電防止剤、難燃剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、光安定剤など塗料に用いることのできる公知の添加剤を本発明組成物の硬化被膜の所期性能を損なわない範囲において含有することができる。
【0111】
また、本発明の組成物はさらに必要に応じて公知の水溶性樹脂やシリカ粒子を配合しても良い。該水溶性樹脂としては、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、N−アルキル置換或いはN−未置換の(メタ)アクリルアミド共重合体、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、水溶性ナイロン、酸化デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを挙げることができる。シリカ粒子としては、いわゆるシリカゾル又は微粉状シリカであって、通常、粒子径が5nm〜10μm程度、好ましくは5nm〜1μmで、通常、水分散液として供給されているものをそのまま使用するか、又は微粉状シリカを水に分散させて使用することができる。上記した水溶性樹脂、或いはシリカ粒子は本発明組成物の硬化被膜の親水性や物性の調整等の目的で使用するものである。これらの水溶性樹脂或いはシリカ粒子は、本発明組成物の硬化被膜の所期性能を損なわない範囲において含有することができる。
【0112】
硬化触媒はアクリル樹脂(A)及び架橋剤(C)との架橋反応を促進するものであれば、特に限定されるものではなく、既知のものを用いることができる。例えばプロトン酸化合物、プロトン酸化合物と塩基性化合物の中和塩、金属塩化合物、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物、アンモニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩化合物、アミン化合物等を挙げることができる。
【0113】
アクリル樹脂(A)、親水性架橋重合体粒子(B)、架橋剤(C)、及び必要に応じて使用するその他の成分を溶解ないしは分散するための溶媒は、アクリル樹脂(A)を溶液重合において製造する際に使用可能な上述した有機溶剤であってもよいし、水或いは該有機溶剤と水との混合溶媒であってもよい。
【0114】
本発明組成物は被膜表面の水接触角をより低くする目的で界面活性剤を必要に応じて使用してもよい。該界面活性剤としては、硬化被膜表面に湿潤作用を有するものであれば、陰イオン系、陽イオン系、両性イオン系、非イオン系のいずれの界面活性剤であってもよい。使用しうる界面活性剤の代表例としては、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩およびアルキレンオキシドシラン化合物を挙げることができる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0115】
本発明組成物において、防菌剤は得られる被膜における微生物の発生や繁殖を阻止するなどの目的で必要に応じて配合されるものであり、該防菌剤としては特に以下の(1)〜(5)の条件を備えているものが好適である。
毒性で安全性が高いこと;
熱、光、酸、アルカリなどに対して安定であり、水に対して離溶性であり、かつ持続性にすぐれていること;
低濃度で殺菌性を有するか、または菌の発育を阻止する能力を有すること;
料に配合しても効力が低下しないこと、また、塗料の安定性を阻害しないこと;
形成した被膜の親水性および耐食性を阻害しないこと。
かかる条件に適合する防菌剤はそれ自体既知の防菌・殺菌作用をもつ脂肪族系、芳香族系の有機化合物の中から選ぶことができ、例えば、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンツチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、フェノール系、第4級アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロムインダノン系等の防菌剤が挙げられる。
【0116】
上記防菌剤の具体例としては、2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N−ジメチル−N'−フェノール−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、O−フェニルフェノール、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチル−p−トルイルスルホン、2−ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジサルファイド、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、ビス(2−ピリジルチオ)亜鉛1,1’−ジオキサイド(ジンクピリチオン)などを挙げることができる。また、無機塩系の防菌剤も使用でき、例えばメタホウ酸バリウム、ホウ酸銅、ホウ酸亜鉛、ゼオライト(アルミノシリケート)などが代表的なものである。
【0117】
これらの防菌剤はそれぞれ単独で用いてもよく或いは併用することができ、その配合量は防菌剤の種類等に応じて変えることができるが、一般には、本発明組成物の安定性、造膜性、被膜の親水性、被塗物の耐食性を阻害しない等の点を考慮して、通常、アクリル樹脂(A)、親水性架橋重合体粒子(B)及び架橋剤(C)の固形分合計100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、3〜15質量部の範囲とすることがより好ましい。
【0118】
本発明組成物は、例えばアクリル樹脂(A)、親水性架橋重合体粒子(B)、架橋剤(C)及び必要に応じて配合される上記した成分とともに、有機溶媒または有機溶媒と水との混合溶媒に溶解ないしは分散することにより調製することができる。本発明の親水化処理剤組成物は、例えば熱交換器フィン材表面に塗布し、乾燥させることによって難着霜性と除霜性に優れた硬化被膜を熱交換器フィン材表面に形成することができる。
【0119】
本発明の熱交換器部品
本発明の熱交換器部品は、本発明の親水化処理剤組成物を塗装し、焼付けてなる硬化被膜を有する。熱電導率の低下を抑制しつつ、難着霜性と除霜性が長期維持される観点から、硬化被膜量が0.3〜5g/mとなるように塗装することが好ましく、0.5〜3g/mとなるように塗装することがさらに好ましい。熱交換機部品は、アルミニウム、鉄、銅等の熱伝導率の良好な金属材料を素材として、好適に用いられるが、その中でも特にアルミニウム材が好ましい。
【0120】
上記熱交換器部品が例えばアルミニウム製のフィンの場合、アルミニウム素材表面が脱脂され、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板(熱交換器に組立てられたものであってもよい)が好適に用いられる。アルミニウム製のフィンは特に表面が化成処理されていることが親水化処理剤組成物被膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、従来からの公知の方法を用いることができる。
【0121】
親水化処理剤組成物の塗装は、それ自体既知の方法、例えばフローコーティング法、浸漬塗装、シャワー塗装、スプレー塗装、静電スプレー塗装、ロール塗装、電気泳動塗装などによって行うことができる。塗装した後の焼付けは焼付け温度(素材到達最高温度)を60〜300℃で、焼付け時間を5秒間〜30分間で行なうことが好ましい。素材到達最高温度が60℃よりも低かったり、焼付け時間が5秒間よりも短い場合は、得られる被膜の架橋反応が不十分なために、難着霜性や除霜性の長期持続性能が得られないことがある。また、焼付け温度が300℃よりも高かったり、焼付け時間が30分間よりも長い場合は、硬化塗膜中の有機成分の部分熱劣化が起こり、難着霜性や除霜性の長期持続性能が得られないことがある。アルミニウム板表面に本発明の親水化処理剤組成物の硬化被膜を形成した場合は、該被膜形成後に加工して熱交換器部品を得ることができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0123】
アクリル樹脂の製造例
(製造例1)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、モノマー槽、攪拌機等を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテル85部と脱イオン水85部を仕込み、窒素気流下で80℃に加熱して保持し、表1に記した組成のモノマー 100部(メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−メチルカルボキシベタイン 25部、アクリル酸 10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 10部、メチルアクリレート 30部、エチルアクリレート 25部)、ラジカル重合開始剤2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物 0.7部、及び脱イオン水 50部からなる混合物をモノマー槽に仕込み、2時間かけて反応槽内に滴下した。滴下終了後、さらに同温度で0.5時間保持してから、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物 0.5部と脱イオン水5部との混合物を0.5時間かけて滴下した。その後、同温度で1時間保持し、固形分33%のアクリル樹脂溶液A−1を得た。得られた樹脂は樹脂酸価78mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/gを有していた。
【0124】
(製造例2〜10)
製造例1において、モノマー組成を表1に記載した配合とする以外は製造例1と同様にして製造し、アクリル樹脂溶液A−2〜A−10を得た。得られた樹脂の酸価及び水酸基価をあわせて表1に記載した。
【0125】
製造例4のメタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタインは、ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンス(Journal of Applied Polymer Science)、30巻、(1885年)4697頁に記載の以下の方法で合成した。温度計、サーモスタット、還流冷却器、モノマー槽、攪拌機等を備えた反応槽に、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート 35部、アセトン 80部を加え30℃で攪拌した後、1,3−プロパンスルトン 27.2部をアセトン 12部に溶解させ、30分かけて滴下した。30℃で4時間反応後、沈殿物を濾過し、得られた白色結晶を脱水アセトンで2回洗浄し、減圧乾燥後、メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタインを得た。
【0126】
製造例5のメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンは、特開昭58−154591号公報に記載の以下の方法で合成した。
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 13部とトリエチルアミン 9.35部を乾燥したジエチルエーテル 150mlに入れ、−20℃に冷却しながら、2−クロロ−1,3,2−ジオキサホスホラン 14.25部を滴下した。滴下中は反応温度を−20〜−10℃に保ち、滴下終了後、氷冷下で2時間攪拌した。さらに室温で30分間攪拌した後、トリエチルアミン塩酸塩を除去し、ジエチルエーテルを減圧留去して、メタクリロイルオキシエチル−1,3,2−ジオキサホスホラン(化合物1)を得た。
化合物1 9.44部(0.04モル)とトリメチルアミン 11.8部(0.2モル)及びアセトニトリル 80mlを耐圧反応管に入れ、50℃で10時間振とう反応させた。反応後すぐに濃縮し、冷所で保存し、白色結晶を得た。この粗結晶を脱水クロロホルムに溶かし、脱水アセトンで再沈殿させることにより、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを得た。
【0127】
【表1】

【0128】
(*1)大阪有機化学工業製
(*2)メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、オキシエチレン基の繰り返し単位数は約45、固形分50%、エボニックデグサジャパン製
親水性架橋重合体粒子の製造例
親水性架橋重合体粒子(B−1)の製造
温度計、サーモスタット、還流冷却器、モノマー槽、攪拌機等を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル 200部を入れ、80℃に昇温した。次にフラスコ内に下記の重合性不飽和モノマー、有機溶媒、脱イオン水、重合開始剤の混合物を5時間かけて滴下し、滴下終了後さらに2時間80℃に保持して親水性架橋重合体粒子(B−1)の分散液を得た。
ブレンマーPME−4000(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、オキシエチレン基の繰り返し単位数は約90、固形分100%、日本油脂社製) 20部
アクリルアミド 50部
N−メチロールアクリルアミド 15部
アクリル酸 10部
メチレンビスアクリルアミド 5部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 150部
脱イオン水 50部
過硫酸アンモニウム 1.5部
得られた分散液は乳白色の、固形分20%の安定な分散液であり、重合体粒子の粒子径は320nm(サブミクロン粒子アナライザー N5(ベックマン・コールター社製)によって測定し、単分散モード解析により求めた)であった。
【0129】
親水性架橋重合体粒子(B―2)の製造
温度計、サーモスタット、還流冷却器、モノマー槽、攪拌機等を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル 170部を入れ、80℃に昇温した。次にフラスコ内に下記の重合性不飽和モノマー、有機溶媒、脱イオン水、重合開始剤の混合物を5時間かけて滴下し、滴下終了後さらに2時間80℃に保持して親水性架橋重合体粒子(B−2)の分散液を得た。
ブレンマーPME−4000(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、オキシエチレン基の繰り返し単位数は約90、固形分100%、日本油脂社製) 30部
アクリルアミド 45部
アクリル酸 15部
グリシジルメタクリレート 10部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 150部
脱イオン水 80部
過硫酸アンモニウム 1.5部
得られた分散液は乳白色の、固形分20%の安定な分散液であり、樹脂粒子の粒子径は163nm(サブミクロン粒子アナライザー N5(ベックマン・コールター社製)によって測定し、単分散モード解析により求めた)であった。
【0130】
親水化処理剤組成物の製造
(実施例1)
製造例1で得たアクリル樹脂溶液A−2を固形分量で64部、親水性架橋重合体粒子B−1を固形分量で16部、サイメル701(日本サイテックインダストリーズ社製、メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分82%)を固形分量で20部、溶媒として脱イオン水を加えて攪拌し、固形分15%の親水化処理剤組成物1を得た。
【0131】
(実施例2〜15及び比較例1〜3)
下記表2−1と表2−2に示す配合で、実施例1と同様にして固形分15%の各親水化処理用組成物2〜18を得た。なお、表中の配合量は固形分量である。
【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
(*3)メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分82%、日本サイテックインダストリーズ社製
(*4)オキサゾリン基含有アクリルポリマー、固形分25%、日本触媒社製
(*5)ポリエポキシ化合物、固形分100%、ナガセケムテックス社製
(*6)ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分80%、旭化成ケミカルズ社製
(*7)ポリイソシアネート化合物、固形分100%、住化バイエルウレタン社製
塗装試験板の作成
上記実施例1〜15および比較例1〜3で得た親水化処理剤組成物を、アルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル(株)製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂した後、クロメート処理剤(日本パーカライジング(株)製、商品名「アルクロム712」)でクロメート処理(金属クロム換算塗着量30mg/m)を行ったアルミニウム板(A1050、板厚0.1mm)に、硬化被膜量が1g/mとなるように塗布し、素材到達最終温度が220℃の条件で10秒間焼付けを行うことにより塗装試験板を得た。得られた塗装試験板について下記試験方法に従って試験を行った。その試験結果を表2−1及び表2−2にあわせて示す。
【0135】
試験方法
難着霜性:塗装試験板を5cm×10cmにカットし、ペルチェ素子に貼り付け、室内温度が8℃、室内湿度が70%であるブース内にて、ペルチェ素子を−10℃に冷却し、塗装試験板を垂直に立てた状態で着霜までの時間を目視にて比較する事で評価した。難着霜性は、目視により着霜が確認できるまでの時間が5分以上の場合を「◎」、5分未満の場合を「×」とした。なお、ペルチェ素子とは2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した板状の半導体素子のことを言う。直流電流を流すと、一方の面が吸熱し、反対面に発熱が起こる。電流の極性を逆転させると、その関係が反転することを利用して高精度の温度制御が可能である。
【0136】
除霜性:上記した難着霜性試験において塗装試験板の表面に着霜してから30分間、ペルチェ素子を−10℃に保った後、各塗装試験板を垂直に立てた状態でペルチェ素子を5℃まで加熱し、霜を融解させた。塗装試験板を垂直に立てた状態で、霜が融解して生成した水(結露水)が水滴として試験板表面に残存した場合に、該水滴が試験板表面に占める面積の割合を結露水滴割合(%)として求めた。結露水滴割合は、試験板をカメラにより撮影して得られた試験板の画像を画像処理ソフトウェア(WinROOF、三谷商事)に読み込ませて、試験板上の水滴が付着した部分とそれ以外の部分を画像上で区別して、試験板上の水滴の付着した面積の占める割合を結露水滴割合として求めた。結露水が試験板表面に濡れ広がって試験板より落下したために試験板表面に水滴が認められない場合、結露水滴割合は0%であり、評価は最良の「◎」とした。試験板表面に水滴が残存し結露水滴割合が5%未満の場合は評価を「○」、結露水滴割合が5%以上〜10%未満の場合は評価を「△」、結露水滴割合が10%以上の場合は評価を「×」とした。除霜性は「○」以上の評価が実用性があるレベルである。
【0137】
難着霜性と除霜性の持続性:塗装試験板を水道水流水(流水量は、塗装試験板1mあたり、15kg/時)中に72時間浸漬し、80℃の雰囲気で15分乾燥させた塗装試験板を用いて上記記載の難着霜性試験、除霜性試験をそれぞれ行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)に示すベタイン構造を有する重合性不飽和モノマー及び下記式(2)に示すホスホリルコリン構造を有する重合性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の両性イオン基含有重合性不飽和モノマー(a1)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)を共重合して得られるアクリル樹脂(A)、親水性架橋重合体粒子(B)及び架橋剤(C)を含んでなることを特徴とする親水化処理剤組成物。
【化1】

(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキレン基を表し、R、Rは独立に水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは水酸基で置換されていていもよい炭素数1〜15の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、又は水酸基で置換されていてもよいフェニレン基、Zは酸素原子又はイミノ基を表し、Xはスルホン酸アニオン基、カルボン酸アニオン基、リン酸アニオン基の何れか1種の基を表す。)
【化2】

(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
架橋剤(C)がメラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロック化イソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の親水化処理剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の親水化処理剤組成物が塗装された熱交換器部品。

【公開番号】特開2012−25820(P2012−25820A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164346(P2010−164346)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】