説明

親水化処理組成物

【課題】
難着霜性および除霜性に優れ、その優れた性能を長期間持続することが可能な被膜を形成できる親水化処理組成物、及び該親水化処理組成物を塗装してなる親水性被膜を有する熱交換器用部品を提供すること。
【解決手段】
特定の構造を有するポリエーテル化合物と反応して結合を形成することの可能な官能基を有する重合性不飽和モノマーと該ポリエーテル化合物の反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を重合して得られるポリエーテル基含有アクリル樹脂(A)と架橋剤(B)を含んでなることを特徴とする親水化処理組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物の表面に適用することによって着霜を遅らせたり、付着する霜の成長を抑制したりする特性(以下、この特性を難着霜性と記す)、及び付着した霜を融解させた際に生じた水が該表面から流去する効率を高くできる特性(以下、この特性を除霜性と記す)に優れた親水性硬化被膜を形成する親水化処理組成物、及び該親水化処理組成物を塗装してなる親水性被膜を有する熱交換器用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の熱交換器用部品の中でアルミニウム製或いはアルミニウム合金製のフィンは、熱交換効率を向上させるために単位体積あたりの表面積を大きくする目的から、フィン間隔を極めて狭く取り付けるように設計されている。空気調和機の室外機に備え付けられた熱交換器用部品のフィンは、低気温での暖房運転時に表面に着霜しやすい。近年広く普及しているヒートポンプ式空気調和機は特にこの傾向が強い。フィン間隔が極めて狭いためにそのまま運転を続けると付着した霜が成長して、ついには隣合ったフィン間を霜が連結して塞いでしまい、熱交換効率が著しく低下する。熱交換効率を回復するにはフィンに付着した霜を除くための運転(除霜運転)を行わなければならない。一般的には除霜運転の間、暖房運転が止まるので室内の人は不快であるし、電気エネルギーが本来の目的以外に費やされることになる。
【0003】
また、この除霜運転においてはフィン材表面の疎水性が高いと、霜の融解により発生した水が孤立して大きな水滴となり、フィン間をつなぐ形で残りやすいことが知られている。水滴がフィン間に残存すると暖房運転を再開したときに、この水滴が氷結してフィン間を部分的に塞ぎ、さらに氷結部位で霜の成長が速くなる現象が起こるために、結果として除霜運転の回数が増えることになってしまう。除霜運転にかかわる上記した不具合を解決するために、フィン材表面を親水化することによって、霜の融解により発生した水をフィン材表面に薄く広がるようにして落下除去させたり、蒸発しやすくして、フィン材表面に水滴が残らないようにすることが行われてきた。
【0004】
フィン材表面を親水化する方法として実用化されているものに、高分子量の水ガラスを主体とする親水化処理材を用いて親水性無機系被膜を形成する方法がある。しかし、この無機系被膜はフィン上に発生した水分により成分の水ガラスが加水分解されて、流出或いは被膜剥離などが起こり、親水性が経時で低下するという問題があった。また、そもそも霜を着きにくくすればよいとの発想から親水化による除霜性に加えて、難着霜性という新たな特性を付与することが近年なされてきた。このような除霜性や難着霜性などの特性を付与し、同時に上記した水ガラスを主体とする無機系被膜の問題を解決する方法として、フィン材上に親水性有機無機複合被膜、或いは親水性有機被膜を形成する手法が提案されてきた。
【0005】
特許文献1にはポリビニルアルコール、水分散コロイダルシリカ、及びメタ珪酸リチウムを含有することを特徴とする有機無機複合系親水化処理組成物が開示されている。このものは使用初期においては親水性が高く、難着霜性と除霜性に優れるがこれらの特性の持続性を改善するまでには至らなかった。
【0006】
上記特性の持続性向上を狙って被膜に架橋構造を持たせる有機無機複合系親水化処理組成物の提案も行われている。例えば特許文献2にはポリビニルアルコールおよびその誘導体、分子内にアミノ基及び/または第4級アンモニウム基を含有する水溶性重合体、架橋剤、ならびにシリカ微粒子を含有する水系処理液が開示されている。また、特許文献3には酸基、アミノ基、及び第4級アンモニウム基の少なくとも1員を含有するモノマーの共重合体、アミド系モノマー共重合体、架橋性化合物及び金属化合物からなる水性処理剤が開示されている。しかし、これらは除霜性の持続性において実用上満足できるものではなかった。
【0007】
樹脂酸価が400以上の高酸価樹脂を用いた有機無機複合系親水化処理組成物の提案も行われている。例えば特許文献4には珪酸塩、ポリビニルアルコール、及び高酸価アクリル樹脂を含有する熱交換器フィン材用親水化処理組成物が開示されている。また、特許文献5にはコロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、及びカルボキシル基の一部が金属塩を形成している高酸価アクリル樹脂を含有する熱交換器フィン材用親水化処理組成物が開示されている。しかし、これらの組成物は特許文献1の組成物よりも難着霜性及び除霜性の持続性は改善されていたが、実用的にはさらなる持続性の向上が必要とされた。
【0008】
特許文献6にはカルボキシメチルセルロースと質量平均分子量300〜400の比較的低分子量のポリエチレングリコールを特定の固形分比で含有する非架橋タイプの有機系親水性表面処理材が開示されているが難着霜性及び除霜性の持続性において実用上十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−202313号公報
【特許文献2】特開平6−300482号公報
【特許文献3】特開平7−19776号公報
【特許文献4】特開2001−164175号公報
【特許文献5】特開2001−172547号公報
【特許文献6】特開2000−28291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、難着霜性および除霜性に優れ、その優れた性能を長期間持続することが可能な被膜を形成できる親水化処理組成物、及び該親水化処理組成物を塗装してなる親水性被膜を有する熱交換器用部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエーテル基含有アクリル樹脂(A)と架橋剤(B)を含んでなることを特徴とする親水化処理組成物を使用することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の項からなる。
1.側鎖に下記式(1)に示す構造のポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)及び架橋剤(B)を含んでなる親水化処理組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
(Rはn個の繰り返し単位中、その全てが同じであっても或いは異なっていてもよく、水酸基を含有していてもよい炭素数2〜5の2価の有機基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは5〜300の整数である)
2.ポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)が、イソシアネート基又は酸無水物基を含有する重合性不飽和モノマー(c1)と下記式(2)に示す構造のポリエーテル化合物との反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)を含むモノマー混合物を重合して得られるものであることを特徴とする上記1に記載の親水化処理組成物。
【0014】
【化2】

【0015】
(Rはn個の繰り返し単位中、その全てが同じであっても或いは異なっていてもよく、水酸基を含有していてもよい炭素数2〜5の2価の有機基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは5〜300の整数である)
3.ポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)が、エステル基又はエポキシ基を含有する重合性不飽和モノマー(c2)と下記式(3)に示す構造のポリエーテル化合物との反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a2)を含むモノマー混合物を重合して得られるものであることを特徴とする上記1に記載の親水化処理組成物。
【0016】
【化3】

【0017】
(Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは繰り返し単位数で5〜300の整数である)
4.ポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)が、エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及びカルボニル基から選ばれる1種の反応性基を含有する重合性不飽和モノマー(c3)と下記式(4)に示す構造のポリエーテル化合物との反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a3)を含むモノマー混合物を重合して得られるものであることを特徴とする上記1に記載の親水化処理組成物。
【0018】
【化4】

【0019】
(Rはn個の繰り返し単位中、その全てが同じであっても或いは異なっていてもよく、水酸基を含有していてもよい炭素数2〜5の2価の有機基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは5〜300の整数である)
5.アクリル樹脂(A)の合成に用いるモノマー混合物がカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び/または水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)を含むことを特徴とする上記1乃至4に記載の親水化処理組成物。
6.アクリル樹脂(A)の合成に用いるモノマー混合物がポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれる少なくとも2種のモノマーを含むことを特徴とする上記2乃至5に記載の親水化処理組成物。
7.式(2)においてRがエチレン基であり、且つnが5〜200の整数であることを特徴とする上記2、5又は6に記載の親水化処理組成物。
8.ポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び/又は水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)、エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及びカルボニル基から選ばれる1種の反応性基を含有する重合性不飽和モノマー(c3)、並びにその他の重合性不飽和モノマーを共重合して得られるアクリル樹脂中間体(C)と上記式(2)〜(4)に示す構造のポリエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物との反応により得られるものであることを特徴とする上記1に記載の親水化処理組成物。
9.上記1乃至8に記載の親水化処理組成物を塗装してなる被膜を有する熱交換器用部品。
【発明の効果】
【0020】
本発明の組成物によれば、難着霜性及び除霜性に優れた被膜が得られ、さらに従来の問題点であった該性能の長期間持続を可能とする被膜が得られる。かくして、空気調和機に本発明の組成物で処理された熱交換器用部品を使用することにより、省エネルギー化と快適な運転環境を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の親水化処理組成物をさらに詳細に説明する。本発明の親水化処理組成物は、ポリエーテル基含有アクリル樹脂(A)及び架橋剤(B)を含んでなる。該アクリル樹脂(A)はそれ自体既知の方法、例えば下記の方法(1)又は方法(2)等によって得ることができる。
【0022】
方法(1)
ポリエーテル基含有アクリル樹脂(A)はイソシアネート基又は酸無水物基を含有する重合性不飽和モノマー(c1)と下記式(2)に示す構造のポリエーテル化合物との反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)、エステル基又はエポキシ基を含有する重合性不飽和モノマー(c2)と下記式(3)に示す構造のポリエーテル化合物との反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、並びにエステル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及びカルボニル基から選ばれる1種の反応性基を含有する重合性不飽和モノマー(c3)と下記式(4)に示す構造のポリエーテル化合物との反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a3)から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むモノマー混合物を重合して得られる。
【0023】
【化5】

【0024】
(Rはn個の繰り返し単位中、その全てが同じであっても或いは異なっていてもよく、水酸基を含有していてもよい炭素数2〜5の2価の有機基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは5〜300の整数である)
【0025】
【化6】

【0026】
(Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは繰り返し単位数で5〜300の整数である)
【0027】
【化7】

【0028】
(Rはn個の繰り返し単位中、その全てが同じであっても或いは異なっていてもよく、水酸基を含有していてもよい炭素数2〜5の2価の有機基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは5〜300の整数である)
上記したエステル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及びカルボニル基から選ばれる1種の反応性基を含有する重合性不飽和モノマーは、具体的には以下に記すモノマーを挙げることができる。
【0029】
(m−1)エステル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜30のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル等。(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステル、又は、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル等。
【0030】
(m−2)イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー:2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名「カレンズAOI」)、商品名「カレンズMOI−EG」(昭和電工社製)、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの如き反応性の異なる2つのイソシアネート基を有する化合物と(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有重合性不飽和モノマーとの付加反応により得られるモノマー等。
【0031】
(m−3)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸グリシジル、フマル酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸4−(グリシジルオキシ)ブチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等。
【0032】
(m−4)酸無水物基含有重合性不飽和モノマー:無水マレイン酸、無水イタコン酸等。
【0033】
(m−5)カルボニル基含有重合性不飽和モノマー:ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等。
【0034】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0035】
上記した式(2)に示す構造のポリエーテル化合物の具体例としては、日本油脂株式会社製「ユニオックスM−400」、「ユニオックスM−550」、「ユニオックスM−1000」、「ユニオックスM−2000」、「ユニオックスM−4000」等のポリエチレングリコールモノメチルエーテル、花王株式会社製「エマルゲン150」等のポリエチレングリコールモノラウリルエーテル等を挙げることができる。
【0036】
上記した式(3)に示す構造のポリエーテル化合物の具体例としては、ダイセル化学工業株式会社製「PGL−06」、「PGL−10」、「PGL−X」等のポリグリセリンを挙げることができる。
【0037】
上記した式(4)に示す構造のポリエーテル化合物の具体例としては、HUNTSMAN社製SURFONAMINEシリーズにおけるアミノ基含有ポリエーテル化合物が挙げられ、ポリエーテル基がオキシエチレン基とオキシプロピレン基からなる「B−60」、「B−100」、「B−200」、「L−100」、「L−200」、「L−207」、「L−300」等を挙げることができる。
【0038】
ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)を得るための上記した反応は公知の反応であり、その反応を以下に説明する。
【0039】
イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと式(2)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は、該ポリエーテル化合物に含まれる水酸基と該イソシアネート基が反応してウレタン結合を形成し、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)を生成する。
【0040】
酸無水物基含有重合性不飽和モノマーと式(2)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は、該ポリエーテル化合物に含まれる水酸基と該酸無水物基が反応してエステル結合を形成し、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)を生成する。
【0041】
エステル基含有重合性不飽和モノマーと式(3)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は、該ポリエーテル化合物に含まれる水酸基と該エステル基が脱アルコール反応してエステル結合を形成し、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a2)を生成する。
【0042】
エポキシ基含有重合性不飽和モノマーと式(3)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は、該ポリエーテル化合物に含まれる水酸基と該エポキシ基が反応してエーテル結合を形成し、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a2)を生成する。
【0043】
イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと式(4)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は、該ポリエーテル化合物に含まれるアミノ基と該イソシアネート基が反応してウレア結合を形成し、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a3)を生成する。
【0044】
酸無水物基含有重合性不飽和モノマーと式(4)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は、該ポリエーテル化合物に含まれるアミノ基と該酸無水物基が反応してアミド結合を形成し、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a3)を生成する。
【0045】
エステル基含有重合性不飽和モノマーと式(4)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は、該ポリエーテル化合物に含まれるアミノ基と該エステル基が脱アルコール反応してアミド結合を形成し、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a3)を生成する。
【0046】
エポキシ基含有重合性不飽和モノマーと式(4)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は、該ポリエーテル化合物に含まれるアミノ基と該エポキシ基が反応してイミノ基を形成し、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a3)を生成する。
【0047】
カルボニル基含有重合性不飽和モノマーと式(4)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は、該ポリエーテル化合物に含まれるアミノ基と該カルボニル基が脱水反応してイミン化合物であるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a3)を生成する。
【0048】
上記したモノマー(a1)〜(a3)を得る反応において、1分子中に含有される水酸基の合計或いはアミノ基と水酸基の合計が2個以上のポリエーテル化合物を用いた場合、生成するポリエーテル基含有モノマーは、重合性不飽和基とポリエーテル基を1分子中に1個ずつ有する化合物以外に1分子中に2個以上の重合性不飽和基を持つ化合物を含むことがあり、該化合物を用いて製造されるアクリル樹脂(A)の分子量は該化合物を含まない場合に想定される分子量よりも大きくなることがある。このような1分子中に含有される水酸基の合計或いはアミノ基と水酸基の合計が2個以上のポリエーテル化合物1モルに対して、該ポリエーテルと反応可能な反応性基を含有する重合性不飽和モノマーの該反応における使用モル数は分子量調整の観点から0.2〜1.2モル、さらに0.7〜1.05モルの範囲が好ましい。0.2モルよりも少ない使用量だと、不飽和基を持たないポリエーテル化合物が多くなり、塗膜の耐水性が低下することがある。また、1.2モルよりも多い使用量だと1分子中に2個以上の重合性不飽和基を有するポリエーテル基含有モノマーの生成量が多くなり、得られるアクリル樹脂(A)の粘度が高くなって本発明の組成物の塗装が困難になることがある。
【0049】
モノマー(a1)或いは(a3)を得る反応において、1分子中に水酸基を1個含むか、或いはアミノ基を1個含み水酸基を含まないポリエーテル化合物1モルに対して、該ポリエーテル化合物と反応可能な反応性基を含有する重合性不飽和モノマーの該反応における使用モル数は0.8〜1.4モル、さらに0.9〜1.1モルの範囲が好ましい。0.8モルよりも少ない使用量だと、不飽和基を持たないポリエーテル化合物が多くなり、塗膜の耐水性が低下することがある。また、1.4モルよりも多い使用量だと該反応性基を含有する重合性不飽和モノマーが未反応のまま残存して、得られるアクリル樹脂(A)の粘度が高くなって本発明の組成物の塗装が困難になることがある。
【0050】
ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)を得るための上記した反応は既知の方法により行うことができ、反応温度200℃以下、さらに150℃〜−10℃の範囲で行うことが好ましく、必要に応じて既知の触媒、溶媒、ラジカル重合禁止剤等を添加したり、大気等の酸素含有気体を反応系内に通気しながら行ってもよい。
【0051】
エステル基含有重合性不飽和モノマーと式(3)又は式(4)に示す構造のポリエーテル化合物との反応は該エステル基含有重合性不飽和モノマーのアルコキシ基がアルコールとして脱離しながら進行し、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマーを得ることができる。この反応において脱離するアルコールを反応系外に除去することによって反応効率を向上させることが可能である。反応効率向上の観点からエステル基含有重合性不飽和モノマーのアルコキシ基の炭素数は3以下が好ましく、炭素数1が特に好ましい。
【0052】
ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)は、得られる被膜に親水性を付与し、難着霜性及び除霜性に優れた被膜を得るために必須の共重合成分である。上記モノマー(a1)〜(a3)は共重合反応性および得られる被膜の難着霜性及び除霜性の観点から、式(2)〜(4)における繰り返し単位数nが5〜300の整数で表わされる化合物を用いることが好ましい。式(2)〜(4)におけるnが5よりも小さいと得られる被膜の難着霜性と除霜性が所望のレベルに至らないことがある。式(2)〜(4)におけるnが300よりも大きいと得られるモノマーの共重合反応性が低下して、該モノマーの一部が未反応のまま残存することがある。本発明組成物において上記した式(2)〜(4)におけるnが5以上のポリエーテル化合物を用いて得られたポリエーテル基含有重合性不飽和モノマーを使用して得られたアクリル樹脂(A)を使用したときに極めて優れた難着霜性と除霜性を発現する被膜を得ることができる。その理由は明らかではないが、このポリエーテル鎖の平均重合度nが5以上である場合は0℃以下の低温環境下においてもポリエーテル鎖はミクロブラウン運動していると言われている。このため、被膜表層部のポリエーテル鎖に吸着した水分子や鎖近傍の水分子が凝固し難くなることが着霜の抑制と除霜の容易さを示すひとつの理由であると推定される。したがって従来技術の親水性を付与した被膜では到達し得なかった高いレベルの難着霜性と除霜性を本発明の組成物が実現できるのは、親水性と低温での運動性の両方を兼ね備えた特定の構造のポリエーテル鎖に起因すると考えている。
【0053】
上記ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)のポリエーテル基はポリオキシエチレン基であることが、アクリル樹脂(A)に特に高い親水性を付与できるので好適である。該ポリオキシエチレン基は、平均重合度に相当するnは5〜200の整数である式(2)に表される化合物に由来するポリオキシエチレン基であることが好ましい。該平均重合度nが200よりも大きいとモノマー(a1)の共重合反応性が低下して、アクリル樹脂(A)を得るための重合反応後にモノマー(a1)の一部が未反応のまま残存することがある。上記したポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)は1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
アクリル樹脂(A)は上記したポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むモノマー混合物を重合して得ることができ、さらにカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び/又は水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)を該モノマー混合物は含んでいることが、得られるアクリル樹脂(A)の架橋反応性や親水性などの特性の調整が容易であることから好ましい。
【0055】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートと無水コハク酸のエステルである2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート(製品名:NKエステルSA、新中村化学工業株式会社製品)のような水酸基含有不飽和モノマーと酸無水物化合物の反応生成物であるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、無水マレイン酸と水酸基含有化合物のハーフエステル化反応により得られた化合物等を挙げることができる。上記したモノマーのカルボキシル基は塩基性物質と塩を形成していてもよい。
【0056】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の如きアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステルを挙げることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとε−カプロラクトンとの付加物も挙げられる。この付加物の市販品としては、例えば、「プラクセルFM−3」等(商品名、ダイセル化学工業社製)が挙げられる。
【0057】
上記したモノマー混合物はポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含み、且つカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び/又は水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)、並びにさらにこれら以外の重合性不飽和モノマーを必要に応じて含んでいてもよく、該モノマーは例えば以下の化合物を挙げることができる。
【0058】
(メタ)アクリルアミド系モノマー:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等。
【0059】
含窒素複素環式化合物系モノマー:2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジン等。
【0060】
アミノ基含有モノマー:N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等。
【0061】
ニトリル基含有モノマー:アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜30のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル等。(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステル、又は、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル等。
【0063】
芳香族系モノマー:スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン等。
【0064】
フッ化アルキル基含有モノマー:(メタ)アクリル酸パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロイソノニルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル等のアクリル酸又はメタクリル酸のパーフルオロアルキルエステル。
【0065】
オレフィン系モノマー:エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン等。
【0066】
フルオロオレフィン系モノマー:トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等。
【0067】
ビニルエステル系モノマー:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル等の炭素原子数1〜20の脂肪酸のビニルエステル類やプロペニルエステル類。このようなビニルエステル類の市販品として、「VeoVa」モノマー(商品名、シェル化学社製、分岐高級脂肪酸のビニルエステル)等が挙げられる。
【0068】
加水分解性アルコキシシリル基含有モノマー:ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等。
【0069】
スルホン酸基含有モノマー:ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホエチル、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー及びその塩。
【0070】
リン酸基含有モノマー:2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等の水酸基含有モノマーとリン酸化合物のエステル化物、或いは(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基にリン酸化合物を付加させた化合物等。
【0071】
一分子中に複数の不飽和結合を有するモノマー:(メタ)アクリル酸アリル、1,6−ジ(メタクリロイルオキシ)ヘキサン、ジビニルベンゼン等。
【0072】
モノマー(a1)、(a2)、(a3)、(b1)及び(b2)以外の上記した重合性不飽和モノマーは1種で又は2種以上を使用することができる。
【0073】
ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び/または水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)並びに必要に応じて使用される上記した重合性不飽和モノマーとの合計質量を100質量%として、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)の使用量は、好ましくは10質量〜90質量%、さらに好ましくは20質量〜80質量%の範囲であるのがよい。ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)の使用量が10質量%よりも少ないと得られる硬化被膜の難着霜性と除霜性が不十分になることがある。90%質量よりも多いと重合性不飽和モノマー(a1)〜(a3)の一部が未反応のまま残存することがある。
【0074】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)は本発明に用いるアクリル樹脂(A)に必要な酸価に応じて使用量を調整することができる。これらのモノマーを共重合することによりアクリル樹脂(A)に導入されたカルボキシル基は架橋剤(B)との架橋反応性官能基として利用したり、アクリル樹脂(A)の親水性を補完する役割として使用することが可能である。アクリル樹脂(A)の固形分酸価は200mgKOH/g以下であることが好ましい。固形分酸価が200mgKOH/gよりも大きいと焼付け後の硬化被膜の耐水性が不十分となって、難着霜性や除霜性を長期に維持することが困難になる場合がある。
【0075】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)は本発明に用いるアクリル樹脂(A)に必要な水酸基価に応じて使用量を調整することができる。これらのモノマーを共重合することによりアクリル樹脂(A)に導入された水酸基は架橋剤(B)との架橋反応性官能基として利用したり、アクリル樹脂(A)の親水性を補完する役割として使用することができる。アクリル樹脂(A)の固形分の水酸基価は500mgKOH/g以下であることが好ましい。上記水酸基価が500mgKOH/gよりも大きいと焼付け後の硬化被膜の難着霜性や除霜性が不十分になることがある。
【0076】
上記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は好ましくは2,000〜300,000、さらに好ましくは3,000〜200,000の範囲内である。
【0077】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0078】
アクリル樹脂(A)は、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含み、且つカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び/又は水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)、並びにこれら以外の重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を重合開始剤を用いて重合して得られる。重合方法としては例えば溶媒中での均一重合(溶液重合)や分散重合、或いは溶媒を用いないバルク重合などの公知の方法を用いることができるが中でも溶液重合法が最も一般的である。重合の際は必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量調整することもできる。モノマーと重合開始剤の重合系内への導入方法は従来公知の方法を用いることができる。
【0079】
溶液重合法に際して使用される溶媒としては、例えば、水;トルエン、キシレン、「スワゾール1000」(コスモ石油社製、商品名、高沸点石油系溶剤)などの芳香族系溶剤;酢酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ブタノール等のアルコール系溶剤;プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネートなどを挙げることができる。これらの溶媒は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、必要に応じて上記した溶剤と水を混合して用いることも可能である。
【0080】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの公知のラジカル重合開始剤等を挙げることができる。重合開始剤の使用量は、モノマーの総量に対して、0.01〜30質量%程度が好ましく、0.1〜20質量%程度がより好ましい。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等の公知の化合物を用いることができる。溶液重合による共重合は、例えばモノマーと重合開始剤の混合物を溶剤に溶解または分散し、これを撹拌しながら通常50℃〜200℃程度に加熱しながら1〜20時間程度撹拌することによって行うことができる。
【0081】
方法(2)
アクリル樹脂(A)は、ポリエーテル基含有重合性不飽和モノマーを共重合して得る上記した方法(1)以外に、水酸基又はアミノ基と反応可能な官能基を含有する重合性不飽和モノマーを共重合して得られるアクリル樹脂中間体(C)と式(2)、(3)及び(4)に示す構造のポリエーテル化合物から選ばれる少なくとも1腫のポリエーテル化合物との反応により得ることも可能である。この場合、該ポリエーテル化合物と反応させるアクリル樹脂は、方法(1)に記したカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び/又は水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)、エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及びカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性基を含有する重合性不飽和モノマー(c3)、並びにその他の重合性不飽和モノマーをラジカル重合開始剤を用いて共重合して得ることができる。
【0082】
エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及びカルボニル基を含有する重合性不飽和モノマー(c3)は、上記方法(1)で記したモノマー(m−1)〜(m−5)を使用することができる。
【0083】
その他の重合性不飽和モノマーは、上記したモノマー(b1)、(b2)及び(c3)以外の重合性不飽和モノマーであり、例えば方法(1)に記した(メタ)アクリルアミド系モノマー、含窒素複素環式化合物系モノマー、アミノ基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、芳香族系モノマー、フッ化アルキル基含有モノマー、オレフィン系モノマー、フルオロオレフィン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、加水分解性アルコキシシリル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、一分子中に複数の不飽和結合を有するモノマー等からなる群からモノマー(b1)、(b2)及び(c3)以外のモノマーを選択して、1種で又は2種以上を使用することができる。
【0084】
重合方法としては例えば溶液重合や分散重合、或いは溶媒を用いないバルク重合などの公知の方法を用いることができるが中でも溶液重合が最も一般的である。該共重合に用いる溶媒、重合開始剤、重合温度、重合温度等は方法(1)のアクリル樹脂(A)の製造と同様にしてアクリル樹脂中間体(C)を製造することが可能である。
【0085】
アクリル樹脂中間体(C)と式(2)又は(3)の水酸基含有ポリエーテル化合物又は式(4)のアミノ基含有ポリエーテル化合物との反応は反応温度250℃以下、さらに好ましくは200℃〜−10℃の範囲で行うことができる。また、該反応は必要に応じて既知の触媒、溶媒を添加して行ってもよい。
【0086】
アクリル樹脂中間体(C)100質量部に対して水酸基含有ポリエーテル化合物及び/又はアミノ基含有ポリエーテル化合物の合計使用量は11質量部〜900質量部、さらに好ましくは25質量部〜400質量部の範囲であるのがよい。水酸基含有ポリエーテル化合物及び/又はアミノ基含有ポリエーテル化合物の合計使用量11質量部よりも少ないと得られる硬化被膜の難着霜性と除霜性が不十分になることがあり、900質量部よりも多いと水酸基含有ポリエーテル化合物又はアミノ基含有ポリエーテル化合物の一部が未反応のまま残存することがある。上記した水酸基含有ポリエーテル化合物又はアミノ基含有ポリエーテル化合物の上記反応での使用量は、アクリル樹脂中間体(C)の製造における反応性基含有モノマー(m−1)〜(m−5)の使用量と該ポリエーテル化合物中の水酸基又はアミノ基の濃度によって決定されるので、方法(2)によるアクリル樹脂(A)の製造は、これらの量を適宜調整して実施することができる。アクリル樹脂(A)の酸価、水酸基価、重量平均分子量の好ましい範囲は上記方法(1)において記した値と同じである。
【0087】
上記した方法(1)又は方法(2)で得られたアクリル樹脂(A)は塩基性化合物と一緒に用いてもよく、アクリル樹脂(A)中のカルボキシル基の一部又は全部をアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩とすればよく、例えば、上記アクリル樹脂(A)をアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物で中和することによって用いることができる。
【0088】
架橋剤(B)
本発明組成物における架橋剤(B)は焼付け後に得られる親水性被膜の耐水性を向上させたり、或いは難着霜性や除霜性を長期に維持したりする目的で用いられるものである。該架橋剤としては例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアルデヒド化合物、フェノール樹脂、ポリエポキシ化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、金属化合物(金属塩、金属錯体、金属酸化物、金属水酸化物等)、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ヒドロキシアルキルアミド化合物、ヒドラジド化合物、セミカルバジド化合物、シリケート化合物等を挙げることができる。
【0089】
上記メラミン樹脂としては、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂があげられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等がある。また、このメチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものも使用でき、エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。メラミン樹脂としては、なかでもメチロール基の少なくとも一部をメチルエーテル化したメチロール化メラミン樹脂が好適である。メラミン樹脂を使用する場合その使用量は、本発明のアクリル樹脂(A)100質量部に対して、メラミン樹脂が0.5〜100質量部、好ましくは1〜45質量部であることが望ましい。
【0090】
上記ポリアルデヒド化合物は、1分子中に少なくとも2個のアルデヒド基を有する化合物であり、その具体例としてはグリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。
【0091】
上記ポリエポキシ化合物としては、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、その代表的な例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルまたはクレゾールノボラックポリグリシジルエーテルなどの多価アルコールまたは多価フェノールのポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸のグリシジルエステル及びグリシジルエーテル化物;フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルまたは(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体などの多価カルボン酸のポリグリシジルエステル;ヒダントイン環などの含窒素ヘテロ環を含むポリエポキシ化合物;上記1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物と多価アルコール、多価フェノールまたは多塩基酸との付加物であるエポキシ樹脂;脂肪酸変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂;側鎖にエポキシ基を有するビニル系重合体などを挙げることができる。エポキシ化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1モルに対して、エポキシ化合物中のエポキシ基の量が0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0092】
ブロック化ポリイソシアネート化合物における原料となるポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、従来からポリウレタンの製造に使用されているものを使用することができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0093】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0094】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0095】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0096】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0097】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDIなどを挙げることができる。
【0098】
上記のポリイソシアネート化合物は必要に応じてイソシアネート基の一部を水酸基やアミノ基等の活性水素を1分子に1〜5個含有する化合物で変性したものを用いてもよい。
【0099】
上記のポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0100】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤で封鎖した化合物である。
【0101】
ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応は既知の条件で行なうことができる。また、両成分の比率は、イソシアネート基が残存しないようポリイソシアネート化合物中の全イソシアネート基に対して若干過剰量のブロック剤となるような比率とするのが好ましい。ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチルピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0102】
ブロック剤はイソシアネート基を封鎖する化合物である。ブロックされたイソシアネート基は、通常、例えば100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱すると、ブロック剤が解離してイソシアネート基が再生され、水酸基等と容易に反応させることができる。
【0103】
ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、ジアセトンアルコールなどのアルコール系;アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系;3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、及び4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系の化合物などを挙げることができる。上記したブロック剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0104】
上記ブロック剤のうち、硬化性と被膜黄変性の観点からオキシム系、ピラゾール系の化合物を好適に使用することができる。
【0105】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ブロック化ポリイソシアネート化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれる水酸基1モルに対して、ブロック化ポリイソシアネート基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0106】
ポリオキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を分子中に2個以上有する化合物を挙げることができ、2,2’−p−フェニレン−ビス−(1,3−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(1,3−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)の如き低分子量のポリ(1,3−オキサゾリン)化合物;さらには、2−ビニル1,3−オキサゾリン、2−イソプロペニル−1,3−オキサゾリンの如き1,3−オキサゾリン基含有ビニル系単量体の単独重合体もしくはこれと共重合可能な各種のビニル系単量体とを共重合せしめて得られる、1,3−オキサゾリン基を含有するビニル系重合体が挙げられる。
【0107】
市販のオキサゾリン基含有化合物としては、「エポクロスK−1000」、「エポクロスK−1020E」、「エポクロスK−1030E」、「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」、「エポクロスWS−500」(以上、商品名、日本触媒化学工業(株)製)などが挙げられる。上記ポリオキサゾリン化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1モルに対して、ポリオキサゾリン化合物中のオキサゾリン基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0108】
ポリカルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を分子中に2個以上有する化合物を挙げることができ、その具体例としては「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−06」、(以上商品名、日清紡績株式会社製)等の市販品を挙げることができる。これらは単独でも2種以上の混合物でも使用できる。ポリカルボジイミド化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1モルに対して、カルボジイミド化合物中のカルボジイミド基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0109】
ヒドロキシアルキルアミド化合物としては例えばアジピン酸の両端にジアルカノールアミンが縮合した構造の4官能型化合物として、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミド(商品名:PrimidXL552;CAS 6334−25−4)やN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アジパミド(商品名:PrimidQM1260;CAS 57843−53−5)が挙げられる(いずれもEMS社製)。2−ヒドロキシアルキルアミド化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1モルに対して、2−ヒドロキシアルキルアミド化合物中のヒドロキシ基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0110】
ヒドラジド化合物としては、1分子中にヒドラジド基、および/またはセミカルバジド基を2個以上有する化合物を好適に用いることができる。例えば蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド、フタル酸、テレフタル酸またはイソフタル酸ジヒドラジド、並びにピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジドまたはテトラヒドラジド;ニトリロトリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、カルボン酸低級アルキルエステル基を1分子中に2個以上有する低重合体をヒドラジンまたはヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド(特公昭52−22878号参照)、炭酸ジヒドラジド等のポリヒドラジド化合物を挙げることができる。上記したヒドラジド化合物は本発明組成物のアクリル樹脂(A)にカルボニル基が含まれる場合に架橋剤として使用することが可能である。該アクリル樹脂(A)はその製造の際に上記したその他のモノマーとして、例えばダイアセトン(メタ)アクリルアミドのように分子内にカルボニル基を有するモノマーを用いることにより得ることができる。ヒドラジド化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボニル基1モルに対して、ヒドラジド化合物中のヒドラジド基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0111】
セミカルバジド化合物としてはヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれにより誘導されるポリイソシアネート化合物にヒドラジンやモノアルキル置換ヒドラジンを反応させて得られるポリセミカルバジド化合物、ジイソシアネートを含む該ポリイソシアネート化合物に上記例示のジヒドラジド化合物やポリヒドラジド化合物を反応させて得られるポリヒドラジド化合物、該ポリイソシアネート化合物とポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の活性水素を有するポリエーテルやポリオールとの反応から得られる変性ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基にヒドラジンやモノアルキル置換ヒドラジンを反応させて得られるポリセミカルバジド化合物、該変性ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドやポリヒドラジドを反応させて得られるポリヒドラジド化合物等が挙げられ、これらは単独で、或いは必要に応じて混合して一緒に用いることができる。上記したセミカルバジド化合物は本発明のアクリル樹脂(A)にカルボニル基が含まれる場合に架橋剤として使用することが可能である。該アクリル樹脂(A)はその製造の際に上記したその他のモノマーとして、例えばダイアセトン(メタ)アクリルアミドのように分子内にカルボニル基を有するモノマーを用いることにより得ることができる。セミカルバジド化合物を配合する場合その配合量は、本発明のアクリル樹脂(A)に含まれるカルボニル基1モルに対して、セミカルバジド化合物中のセミカルバジド基の量が通常0.05〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0112】
シリケート化合物としては、一般式:(R−Si−(OR4−n(式中、Rはエポキシ基もしくはメルカプト基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル基又はフェニル基であり、nは0または1である。ORは炭素原子数1〜6のアルコキシ基である。)で表わされるオルガノシリケート及び/又はその縮合物を挙げることができる。該オルガノシリケート及び/又はその縮合物はアクリル樹脂(A)が水酸基或いはシリル基を含有している場合に架橋剤として好適に用いることができる。架橋効率の観点から上記オルガノシリケートは縮合物がより好ましく使用できる。上記一般式におけるRの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、グリシジル、メチルグリシジル、メルカプトメチル、2−メルカプトエチル、2−メルカプトプロピル、3−メルカプトプロピル、4−メルカプトブチル、フェニル、p−メルカプトフェニル基などを挙げることができる。
【0113】
該オルガノシリケートの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシランなどの4官能シラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリn−ブトキシシラン、フェニルトリイソブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ラウリルトリメトキシシラン、ラウリルトリエトキシシラン等の3官能シランが挙げられる。上記オルガノシリケートの縮合物としては、これらの4官能もしくは3官能シランの1種又は2種以上の組み合わせでの縮合物などが挙げられる。
【0114】
オルガノシリケートの縮合物は、常法により製造することができ、市販品を使用することができる。市販品としては例えば、MKCシリケートMS51、MS56、MS57、MS56S、MS56SB5、MS58B15、MS58B30、ES40、EMS31、BTS(以上、いずれも三菱化学(株)製、商品名)、メチルシリケート51、エチルシリケート40、エチルシリケート40T、エチルシリケート48(以上、いずれもコルコート(株)製、商品名)、KR500、KR9218、X−41−1805、X−41−1810、X−41−1818、X−41−1053、X−41−1056(以上、いずれも信越化学工業(株)製、商品名)等を挙げることができる。また、これらのオルガノシリケートの縮合物を単体で、又は2種以上を組み合わせて部分加水分解縮合することによっても得ることができる。オルガノシリケートの縮合物は、分枝状もしくは直鎖状の縮合物であって、縮合度が2〜100、さらに2〜20であるものが好適である。本発明の親水化処理組成物においては上記したオルガノシリケートやオルガノシリケートの縮合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
アクリル樹脂(A)に含有されるカルボキシル基または水酸基と反応して金属架橋し得る架橋剤としてBa、B、Fe、Ca、Mg,Cu、Al、Zn、Ti、Zr、Pd、Pt及びMnなどの二価以上の金属化合物を挙げることができる。金属化合物としては金属塩、金属錯体、金属酸化物、金属水酸化物等の既知の化合物を用いることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0116】
親水化処理組成物
本発明組成物は、アクリル樹脂(A)と架橋剤(B)を必須成分とするものであり、通常、さらにこれらの成分を溶解ないしは分散するための溶媒を含有し、さらに必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、防菌剤、防腐剤、防カビ剤、着色顔料、染料、それ自体既知の防錆顔料(たとえばクロム酸塩系、鉛系、モリブデン酸系など)、防錆剤や酸化防止剤(たとえばタンニン酸や3’,4’,5’−トリヒドロキシ安息香酸などのフェノール性水酸基含有芳香族カルボン酸およびその塩類やエステル類、ポリフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、フィチン酸やホスフィン酸などの有機リン酸、重リン酸の金属塩類、亜硝酸塩など)、帯電防止剤、難燃剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、光安定剤など塗料に用いることのできる公知の添加剤を本発明組成物の硬化被膜の所期性能を損なわない範囲において含有することができる。
【0117】
また、本発明の組成物はさらに必要に応じて公知の水溶性樹脂やシリカ微粒子を配合しても良い。該水溶性樹脂としては、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、N−アルキル置換或いはN−未置換の(メタ)アクリルアミド共重合体、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、水溶性ナイロン、酸化デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを挙げることができる。シリカ微粒子としては、いわゆるシリカゾル又は微粉状シリカであって、通常、粒子径が5nm〜10μm程度、好ましくは5nm〜1μmで、通常、水分散液として供給されているものをそのまま使用するか、又は微粉状シリカを水に分散させて使用することができる。上記した水溶性樹脂、或いはシリカ微粒子は本発明組成物の硬化被膜の親水性や物性の調整等の目的で使用することができる。これらの水溶性樹脂或いはシリカ微粒子は、本発明組成物の硬化被膜の所期性能を損なわない範囲において含有することができる。
【0118】
硬化触媒はアクリル樹脂(A)と架橋剤(B)との架橋反応を促進するものであれば、特に限定されるものではなく、既知のものを用いることができる。例えばプロトン酸化合物、プロトン酸化合物と塩基性化合物の中和塩、金属塩化合物、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物、アンモニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩化合物、アミン化合物等を挙げることができる。
【0119】
アクリル樹脂(A)、架橋剤(B)、及び必要に応じて使用するその他の成分を溶解ないしは分散するための溶媒は、アクリル樹脂(A)を溶液重合において製造する際に使用可能な上述した有機溶剤であってもよいし、水或いは該有機溶剤と水との混合溶媒であってもよい。
【0120】
本発明組成物は被膜表面の水接触角をより低くする目的で界面活性剤を必要に応じて使用してもよい。該界面活性剤としては、被膜表面に湿潤作用を有するものであれば、陰イオン系、陽イオン系、両性イオン系、非イオン系のいずれの界面活性剤であってもよい。使用しうる界面活性剤の代表例としては、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩およびアルキレンオキシドシラン化合物を挙げることができる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0121】
本発明組成物において、前記防菌剤は得られる被膜における微生物の発生や繁殖を阻止するなどの目的で必要に応じて配合されるものであり、該防菌剤としては特に以下の(1)〜(5)の条件を備えているものが好適である。
毒性で安全性が高いこと;
熱、光、酸、アルカリなどに対して安定であり、水に対して離溶性であり、かつ持続性にすぐれていること;
低濃度で殺菌性を有するか、または菌の発育を阻止する能力を有すること;
料に配合しても効力が低下しないこと、また、塗料の安定性を阻害しないこと;
形成した被膜の親水性および耐食性を阻害しないこと。
かかる条件に適合する防菌剤はそれ自体既知の防菌・殺菌作用をもつ脂肪族系、芳香族系の有機化合物の中から選ぶことができ、例えば、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンツチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、フェノール系、第4級アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロムインダノン系等の防菌剤が挙げられる。
【0122】
上記防菌剤の具体例としては、2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N−ジメチル−N’−フェノール−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、O−フェニルフェノール、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチル−p−トルイルスルホン、2−ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジサルファイド、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、ビス(2−ピリジルチオ)亜鉛1,1’−ジオキサイド(ジンクピリチオン)などを挙げることができる。また、無機塩系の防菌剤も使用でき、例えばメタホウ酸バリウム、ホウ酸銅、ホウ酸亜鉛、ゼオライト(アルミノシリケート)などが代表的なものである。
【0123】
これらの防菌剤はそれぞれ単独で用いてもよく或いは併用することができ、その配合量は防菌剤の種類等に応じて変えることができるが、一般には、本発明組成物の安定性、造膜性、被膜の親水性、被塗物の耐食性を阻害しない等の点を考慮して、通常、アクリル樹脂(A)と架橋剤(B)の固形分合計100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、3〜15質量部の範囲とすることがより好ましい。
【0124】
本発明組成物は、例えばアクリル樹脂(A)、架橋剤(B)及び必要に応じて配合される上記した成分とともに、有機溶媒または有機溶媒と水との混合溶媒に溶解ないしは分散することにより調製することができる。本発明の親水化処理組成物は、例えば熱交換器フィン材表面に塗布し、乾燥させることによって難着霜性と除霜性に優れた硬化被膜を熱交換器フィン材表面に形成することができる。
【0125】
本発明の熱交換器用部品
本発明の熱交換器用部品は、本発明の親水化処理組成物を塗装し、焼付けてなる硬化被膜を有する。熱電導率の低下を抑制しつつ、難着霜性と除霜性が長期維持される観点から、硬化被膜量が0.3〜5g/mとなるように塗装することが好ましく、0.5〜3g/mとなるように塗装することがさらに好ましい。熱交換機部品は、アルミニウム、鉄、銅等の熱伝導率の良好な金属材料を素材として、好適に用いられるが、その中でも特にアルミニウム材が好ましい。
【0126】
上記熱交換器用部品が例えばアルミニウム製のフィンの場合、アルミニウム素材表面が脱脂され、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板(熱交換器に組立てられたものであってもよい)が好適に用いられる。アルミニウム製のフィンは特に表面が化成処理されていることが親水化処理組成物被膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、従来からの公知の方法を用いることができる。
【0127】
親水化処理組成物の塗装は、それ自体既知の方法、例えばフローコーティング法、浸漬塗装、シャワー塗装、スプレー塗装、静電スプレー塗装、ロール塗装、電気泳動塗装などによって行うことができる。被膜の硬化は、例えば焼き付けにより行なうことができる。焼付けは、焼付け温度(素材到達最高温度)を60〜300℃、焼付け時間を5秒〜30分で行なうことが好ましい。素材到達最高温度が60℃よりも低かったり、焼付け時間が5秒よりも短い場合は、得られる被膜の架橋反応が不十分なために、難着霜性や除霜性の長期持続性能が得られないことがある。また、焼付け温度が300℃よりも高かったり、焼付け時間が30分よりも長い場合は、硬化被膜中の有機成分の部分熱劣化が起こり、難着霜性や除霜性の長期持続性能が得られないことがある。アルミニウム板表面に本発明の親水化処理組成物の硬化被膜を形成した場合は、該被膜形成後に加工して熱交換器用部品を得ることができる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。「モノマー(a1−1)」の「a1」はモノマー(a1)の1種であることを意味し、「a1−」の後の番号はモノマー(a1)に属する個々のモノマーに割り当てた通し番号である。また、表中の各化合物の量を表す全ての数値は水や有機溶剤等の溶媒を除いた有効成分の量を表す。
【0129】
モノマー(a1)〜(a3)の製造例
製造例1 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、ユニオックス M−1000(商品名、日油株式会社製)を1050部仕込み、減圧下、攪拌しながら90℃に昇温後、3時間脱水した。空気導入管から液相に空気通気し常圧に戻し、50℃に温度を下げ、p−メトキシフェノール0.5部およびカレンズAOI(商品名、昭和電工株式会社製)141部を加え、60℃に昇温後1時間反応させ、ジブチル錫ジラウレート0.03部を加え、60℃でNCO価(注1)が1以下になるまで反応させ、最後に水1191部で希釈し固形分50%のモノマー(a1−1)を得た。
【0130】
(注1)NCO価:アクリル樹脂1g中に含まれるイソシアネート基の量をイソシアネート基の質量に換算した値(mg)で、以下に示す測定方法にて追跡した。三角フラスコに試料(g)を小数点以下2桁まではかりとり、ジオキサン10mlを加え、溶解した試料を50℃に加熱し、1/5規定ジブチルアミンのジオキサン溶液10mlを加え、2分間かき混ぜて試料に含まれるイソシアネート基とジブチルアミンを反応させる。次にブロムフェノールブルーのエチルアルコール溶液を2〜3滴加えて1/10規定塩酸溶液で残存するジブチルアミンを滴定し、青色から黄緑色に変化したときを終点とする。
計算式 N=(0.1×42×(A−B)×f)/(0.01×S×W)
(ここでN:NCO価、A:空試験のN/5ジブチルアミン−ジオキサン溶液を中和するのに使用した1/10規定塩酸溶液の量(ml)、B:試料の滴定に使用した1/10規定塩酸溶液の量(ml)、f:1/10規定塩酸溶液のファクター、S:試料の加熱残分(%)、W:試料の質量(g)、42:イソシアネート基の分子量)
製造例2 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、ユニオックスM−2000(商品名、日油株式会社製)を2100部仕込み、減圧下、攪拌しながら90℃に昇温後、3時間脱水した。空気導入管から液相に空気通気し常圧に戻し、50℃に温度を下げ、p−メトキシフェノール0.5部およびカレンズAOI(商品名、昭和電工株式会社製)141部を加え、60℃に昇温後1時間反応し、ジブチル錫ジラウレート0.03部を加え、60℃でNCO価(注1)が1以下になるまで反応させ、最後に水2241部で希釈し固形分50%のモノマー(a1−2)を得た。
【0131】
製造例3 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、ユニオックス M−4000(商品名、日油株式会社製)を2100部仕込み、減圧下、攪拌しながら90℃に昇温後、3時間脱水した。空気導入管から液相に空気通気し常圧に戻し、50℃に温度を下げ、p−メトキシフェノール0.5部およびカレンズAOI(商品名、昭和電工株式会社製)70部を加え、60℃に昇温後1時間反応し、ジブチル錫ジラウレート0.03部を加え、60℃でNCO価(注1)が1以下になるまで反応させ、最後に水2170部で希釈し固形分50%のモノマー(a1−3)を得た。
【0132】
製造例4 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、p−メトキシフェノール0.5部およびカレンズAOI(商品名、昭和電工株式会社製)141部を仕込み、攪拌しながら空気導入管から液相に空気通気下で5℃に冷却し、SURFONAMINE L100(商品名、HUNTSMAN社製)1050部を50%テトラヒドロフラン溶液にして反応槽温度が10℃以下になるように滴下し、20℃でNCO価(注1)が1以下になるまで反応させ、テトラヒドロフランを減圧留去した。水1191部で希釈し固形分50%のモノマー(a3−1)を得た。
【0133】
製造例5 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、p−メトキシフェノール0.5部およびカレンズAOI(商品名、昭和電工株式会社製)、71部を仕込み、攪拌しながら空気導入管から液相に空気通気下で5℃に冷却し、SURFONAMINE L200(商品名、HUNTSMAN社製)1058部を50%テトラヒドロフラン溶液にして反応槽温度が10℃以下になるように滴下し、20℃でNCO価(注1)が1以下になるまで反応させ、テトラヒドロフランを減圧留去した。水1128部で希釈し固形分50%のモノマー(a3−2)を得た。
【0134】
製造例6 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、PGL X(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)を1575部仕込み、減圧下、攪拌しながら90℃に昇温後、3時間脱水した。空気導入管から液相に空気通気し常圧に戻し、50℃に温度を下げ、p−メトキシフェノール0.5部およびカレンズAOI(商品名、昭和電工株式会社製)141部を加え、60℃に昇温後1時間反応し、ジブチル錫ジラウレート0.03部を加え、60℃でNCO価(注1)が1以下になるまで反応させ、最後に水1716部で希釈し固形分50%のモノマー(a1−4)を得た。
【0135】
製造例7 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、p−メトキシフェノール1.0部およびPGL X(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)1575部、メチルメタクリレート390部及びジブチル酸化錫0.2部をそれぞれ仕込んだ。その後、空気導入管から液相に空気通気下、混合物を攪拌しながら115℃に保ち、14時間反応させた。その間、メチルメタクリレート及びエステル交換反応のため発生するメタノールの共沸混合物を除去しながら反応を行い、固形分の値から算出したMMAの反応率は19.7%であった。減圧濃縮後、最後に水1650部で希釈後固形分50%のモノマー(a2−1)を得た。
【0136】
(中間体1)の製造 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートを400部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.4部をそれぞれ仕込んだ。その後、空気導入管から液相に空気通気下、混合物を攪拌しながら70℃に保ち、アクリル酸2−ヒドロキシエチル219部を2時間かけて滴下後、2時間反応した。その後、ジブチル酸化錫を0.03部加え、80℃に昇温後NCO価(注1)が124になるまで反応させて、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーである(中間体1)を得た。
【0137】
製造例8 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、ユニオックス M−2000(商品名、日油株式会社製)を2100部仕込み、減圧下、攪拌しながら90℃に昇温後、3時間脱水した。空気導入管から液相に空気通気し常圧に戻し、50℃に温度を下げ、p−メトキシフェノール0.5部および(中間体1)を339部加え、60℃に昇温後1時間反応し、ジブチル錫ジラウレート0.03部を加え、60℃でNCO価(注1)が1以下になるまで反応させ、最後に水2439部で希釈し固形分50%のモノマー(a1−5)を得た。
【0138】
製造例9 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、p−メトキシフェノール0.5部および(中間体1)を339部仕込み、攪拌しながら窒素気流下で5℃に冷却し、SURFONAMINE L200(商品名、HUNTSMAN社製)2100部を50%テトラヒドロフラン溶液にして反応槽温度が10℃以下になるように滴下し、20℃でNCO価(注1)が1以下になるまで反応させ、テトラヒドロフランを減圧留去した。水2439部で希釈し固形分50%のモノマー(a3−3)を得た。
【0139】
製造例10 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、PGL X(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)を1575部仕込み、減圧下、攪拌しながら90℃に昇温後、3時間脱水した。空気導入管から液相に空気通気し常圧に戻し、50℃に温度を下げ、p−メトキシフェノール0.5部および中間体1を339部加え、60℃に昇温後1時間反応し、ジブチル錫ジラウレート0.03部を加え、60℃でNCO価(注1)が1以下になるまで反応させ、最後に水1914部で希釈し固形分50%のモノマー(a1−6)を得た。
【0140】
製造例11 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、ユニオックス M−2000(商品名、日油株式会社製)を2100部仕込み、減圧下、攪拌しながら90℃に昇温後、3時間脱水した。空気導入管から液相に空気通気し常圧に戻し、50℃に温度を下げ、p−メトキシフェノール0.5部および無水マレイン酸98部を加え、100℃に昇温後、液相に空気通気下で全酸価(注2)が26以下になるまで反応させ、最後に水2198部で希釈し固形分50%のモノマー(a1−7)を得た。
(注2)全酸価:試料1g中に含まれる全酸分を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で、下記の測定方法にて追跡した。なお、本発明において酸分は樹脂中の全カルボン酸(樹脂中の未反応酸無水物基は水により開環させ、それにより生成したカルボン酸を含む)を含む。試料0.2〜0.3gを小数点以下4桁まで三角フラスコに測りとり、90%ピリジン水溶液30mlを加え、3分間煮沸し、冷却後フェノールフタレイン−エチルアルコール溶液2滴を加え、1/10規定水酸化カリウムのエチルアルコール溶液で滴定し、薄い紅色になったときを終点とする。
計算式 A=(B×F×5.61)/S
(ここで、A:全酸価、B:1/10規定水酸化カリウム−エチルアルコール溶液の使用量(ml)、F:1/10規定水酸化カリウム−エチルアルコール溶液のファクター、S:試料の質量(g))
製造例12 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、p−メトキシフェノール0.5部および無水マレイン酸98部を仕込み、空気導入管から液相に空気通気下、SURFONAMINE L200(商品名、HUNTSMAN社製)2100部を50%テトラヒドロフラン溶液にして1時間で滴下し、60℃に昇温後全酸価(注2)が26以下になるまで反応させ、テトラヒドロフランを減圧留去した。水2198部で希釈し固形分50%のモノマー(a3−4)を得た。
【0141】
製造例13 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、PGL X(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)を1575部仕込み、減圧下、攪拌しながら90℃に昇温後、3時間脱水した。空気導入管から液相に空気通気下で常圧に戻し、50℃に温度を下げ、p−メトキシフェノール0.5部および無水マレイン酸98部を加え、100℃に昇温後全酸価(注2)が35以下になるまで反応させ、最後に水(1673部)で希釈し固形分50%のモノマー(a1−8)を得た。
【0142】
製造例14 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、空気導入管を備えた四つ口フラスコに、p−メトキシフェノール0.5部およびグリシジルメタクリレート142部を仕込み、攪拌しながら空気導入管から液相に空気通気下で80℃に昇温後、加熱溶融させたSURFONAMINE L200(商品名、HUNTSMAN社製)を1960部加え、エポキシ価(注3)が0.50mmol/g以下になるまで反応させた。水2102部で希釈し固形分50%のモノマー(a3−5)を得た。
【0143】
(注3)エポキシ価:樹脂1g中に含まれるエポキシ基のミリモル数(mmol/g)。三角フラスコに試料を少数点以下4桁まではかりとり、これに40mlのメチルエチルケトンを加えて溶解する。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)溶液(CTAB20gを酢酸200mlとメチルエチルケトン200mlに溶解した溶液)10mlを加え均一にし、スクリーン指示薬(アスファズリンG0.3gを氷酢酸100mlに溶解した溶液とチモールブルー1.5gをメタノール500mlに溶解した溶液の混合溶液)0.2mlを加え、1/10規定過塩素酸の酢酸溶液で滴定し、桃色になった点を終点とする。
計算式 E=(A−B)×0.1×F/S×0.01×W
(ここで、E:エポキシ価、A:本試験の1/10規定過塩素酸−酢酸溶液の使用量、B:空試験の1/10規定過塩素酸の酢酸溶液の使用量、F:本試験の1/10規定過塩素酸の酢酸溶液のファクター、S:試料の加熱残分、W:試料の質量)
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
(*1)2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、昭和電工社製
(*2)イソホロンジイソシアネートとアクリル酸2−ヒドロキシエチルの反応物、製造については明細書の本文に記載。
(*3)ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、日本油脂社製、M−1000:分子量1000、M−2000:分子量2000、M−4000:分子量4000
(*4)ポリグリセリン、ダイセル化学社製、20量体
(*5)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体で片方の末端にアミノ基、もう一方の末端がメチル基を有する。L−100:分子量1000、L−200:分子量2000
アクリル樹脂(A)の製造例
製造例15 温度計、サーモスタット、還流冷却器、モノマー槽1とモノマー槽2、攪拌機を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテル 70部を仕込み、窒素気流下で110℃に加熱して保持し、表2−1に記した組成のモノマーの内、アクリル酸 10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 11部、2−エチルヘキシルアクリレート 24部、メチルメタクリレート 5部、ラジカル重合開始剤t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.7部からなる混合物をモノマー槽1に仕込み、モノマー(a1−1)の50重量%水溶液100部(モノマー質量で50部)をモノマー槽2に仕込んだ。モノマー槽1と2内のモノマー混合物を同時に2時間かけて反応槽内に滴下した。滴下終了後、さらに同温度で0.5時間保持してから、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部とプロピレングリコールモノメチルエーテル5部との混合物を0.5時間かけて滴下した。その後、同温度で1時間保持してから50℃まで冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し固形分30%のアクリル樹脂溶液(A−1)を得た。得られた樹脂は樹脂酸価78mgKOH/g、水酸基価47mgKOH/g、重量平均分子量2.3万を有していた。
【0147】
製造例16〜24及び28〜32 製造例15において、モノマー組成を表2−1及び2−2に記載した配合とする以外は製造例15と同様にして製造し、アクリル樹脂溶液(A−2)〜(A−10)及び(A−14)、(A−15)、(A−16)、アクリル樹脂中間体溶液(C−1)、アクリル樹脂中間体溶液(C−2)を得た。得られた樹脂の樹脂酸価、水酸基価、重量平均分子量は表2−1及び2−2に記載した。
【0148】
製造例25 温度計、サーモスタット、還流冷却器、モノマー槽1とモノマー槽2、攪拌機、を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテル70部を仕込み、窒素気流下で135℃に加熱して保持し、表2−2に記した組成のモノマーの内、アクリル酸 10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 11部、2−エチルヘキシルアクリレート 19部、スチレン 5部、メチルメタクリレート 5部、ラジカル重合開始剤t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.5部からなる混合物をモノマー槽1に仕込み、モノマー(a1−7)の50重量%水溶液100部(モノマー量で50部)をモノマー槽2に仕込んだ。モノマー槽1と2内のモノマー混合物を同時に2時間かけて反応槽内に滴下した。滴下終了後、さらに同温度で0.5時間保持してから、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部とプロピレングリコールモノメチルエーテル5部との混合物を0.5時間かけて滴下した。その後、同温度で1時間保持してから50℃まで冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し固形分30%のアクリル樹脂溶液(A−11)を得た。得られた樹脂は樹脂酸価91mgKOH/g、水酸基価47mgKOH/g、重量平均分子量2.2万を有していた。
【0149】
製造例26、27
モノマー組成を表2−2に記載した配合とする以外は製造例25と同様にして製造し、アクリル樹脂溶液(A−12)と(A−13)を得た。得られた樹脂の樹脂酸価、水酸基価、重量平均分子量は表2−2に記載した。
【0150】
製造例33 温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機などを備えた四つ口フラスコに、アクリル樹脂中間体溶液(C−1)333部を仕込み、窒素気流下で80℃に加熱して保持し、加熱溶融させたSURFONAMINE L200(商品名、HUNTSMAN社製)を44部加え、エポキシ価(注3)が0.24mmol/g以下になるまで反応させた。溶媒を減圧留去させ、固形分50%のアクリル樹脂溶液(A−17)を得た。得られた樹脂は水酸基価72mgKOH/gを有していた。
【0151】
製造例34 温度計、サーモスタット、還流冷却器、水分離器、攪拌機などを備えた四つ口フラスコに、アクリル樹脂中間体溶液(C−2)333部、加熱溶融させたSURFONAMINE L200(商品名、HUNTSMAN社製)49.6部を仕込み、115℃に加熱して4時間反応させた。その間、反応により生じる水は水分離器を用いて、プロピレングリコールモノメチルエーテルと共沸分離除去しながら反応を行い、適宜減少した分のプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えた。反応後、プロピレングリコールモノメチルエールを減圧留去させ、固形分50%のアクリル樹脂溶液(A−18)を得た。得られた樹脂は酸価148mgKOH/g、水酸基価82mgKOH/gを有していた。
【0152】
【表3】

【0153】
【表4】

【0154】
【表5】

【0155】
親水化処理組成物の製造例
実施例1
製造例1で得たアクリル樹脂溶液(A−1)を固形分量で80部、サイメル701
(日本サイテックインダストリーズ社製、メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分82%)を固形分量で20部、溶媒として脱イオン水を加えて攪拌し、固形分15%の親水化処理用組成物(D−1)を得た。
【0156】
実施例2〜19及び比較例1〜5
下記表3−1と表3−2に示す配合で、実施例1と同様にして固形分15%の各親水化処理用組成物(D−2)〜(D−24)を得た。なお、配合量は固形分である。
【0157】
【表6】

【0158】
【表7】

【0159】
(*1)メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分82%、日本サイテックインダストリーズ社製)
(*2)日本乳化剤製のジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩、20%水溶液として使用
塗装試験板の作成
上記実施例1〜19及び比較例1〜5で得た親水化処理組成物を、アルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル(株)製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂した後、クロメート処理剤(日本パーカライジング(株)製、商品名「アルクロム712」)でクロメート処理(金属クロム換算塗着量30mg/m)を行ったアルミニウム板(A1050、板厚0.1mm)に、硬化被膜量が1g/mとなるように塗布し、素材到達最終温度が220℃で10秒間焼付けし塗装試験板を得た。得られた塗装試験板について下記試験方法に従って試験を行った。その試験結果を表3−1と表3−2に示す。
【0160】
試験方法
難着霜性:塗装試験板を5cm×10cmにカットし、ペルチェ素子に貼り付け、室内温度が8℃、室内湿度が70%であるブース内にて、ペルチェ素子を−10℃に冷却し、塗装試験板を垂直に立てた状態で着霜までの時間を目視にて比較する事で評価した。難着霜性は、目視により着霜が確認できるまでの時間が5分以上の場合を「◎」、5分未満の場合を「×」とした。なお、ペルチェ素子とは2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した板状の半導体素子のことを言う。直流電流を流すと、一方の面が吸熱し、反対面に発熱が起こる。電流の極性を逆転させると、その関係が反転することを利用して高精度の温度制御が可能である。
【0161】
除霜性:上記した難着霜性試験において塗装試験板の表面に着霜してから30分間、ペルチェ素子を−10℃に保った後、各塗装試験板を垂直に立てた状態でペルチェ素子を5℃まで加熱し、霜を融解させた。塗装試験板を垂直に立てた状態で、霜が融解して生成した水(結露水)が水滴として試験板表面に残存した場合に、該水滴が試験板表面に占める面積の割合を結露水滴割合(%)として目視により測定した。結露水が試験板表面に濡れ広がって試験板より落下したために試験板表面に水滴が残存しない場合、結露水滴割合は0%であり、評価は最良の「◎」とした。結露水滴割合が1%以上〜10%未満の場合は評価を「○」、結露水滴割合が10%以上〜20%未満の場合は評価を「△」、結露水滴割合が20%以上の場合は評価を「×」とした。ここで水滴とは、直径5mm以下の結露水とする。除霜性は「△」以上の評価で実用性があると判断した。
【0162】
難着霜性と除霜性の持続性:塗装試験板を水道水流水(流水量は、塗装試験板1mあたり、15kg/時)中に72時間浸漬し、80℃の雰囲気で15分乾燥させた塗装試験板を用いて上記記載の難着霜性試験、除霜性試験をそれぞれ行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に下記式(1)に示す構造のポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)及び架橋剤(B)を含んでなる親水化処理組成物。
【化1】

(Rはn個の繰り返し単位中、その全てが同じであっても或いは異なっていてもよく、水酸基を含有していてもよい炭素数2〜5の2価の有機基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは5〜300の整数である)
【請求項2】
ポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)が、イソシアネート基又は酸無水物基を含有する重合性不飽和モノマー(c1)と下記式(2)に示す構造のポリエーテル化合物との反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)を含むモノマー混合物を重合して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の親水化処理組成物。
【化2】

(Rはn個の繰り返し単位中、その全てが同じであっても或いは異なっていてもよく、水酸基を含有していてもよい炭素数2〜5の2価の有機基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは5〜300の整数である)
【請求項3】
ポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)が、エステル基又はエポキシ基を含有する重合性不飽和モノマー(c2)と下記式(3)に示す構造のポリエーテル化合物との反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a2)を含むモノマー混合物を重合して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の親水化処理組成物。
【化3】

(Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは繰り返し単位数で5〜300の整数である)
【請求項4】
ポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)が、エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及びカルボニル基から選ばれる1種の反応性基を含有する重合性不飽和モノマー(c3)と下記式(4)に示す構造のポリエーテル化合物との反応により得られるポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a3)を含むモノマー混合物を重合して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の親水化処理組成物。
【化4】

(Rはn個の繰り返し単位中、その全てが同じであっても或いは異なっていてもよく、水酸基を含有していてもよい炭素数2〜5の2価の有機基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基又はアシル基を表し、nは5〜300の整数である)
【請求項5】
アクリル樹脂(A)の合成に用いるモノマー混合物がカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び/または水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)を含むことを特徴とする請求項2乃至4に記載の親水化処理組成物。
【請求項6】
アクリル樹脂(A)の合成に用いるモノマー混合物がポリエーテル基含有重合性不飽和モノマー(a1)、(a2)及び(a3)から選ばれる少なくとも2種のモノマーを含むことを特徴とする請求項2乃至5に記載の親水化処理組成物。
【請求項7】
式(2)においてRがエチレン基であり、且つnが5〜200の整数であることを特徴とする請求項2、5又は6に記載の親水化処理組成物。
【請求項8】
ポリエーテル基を含有するアクリル樹脂(A)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び/又は水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)、エステル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及びカルボニル基から選ばれる1種の反応性基を含有する重合性不飽和モノマー(c3)、並びにその他の重合性不飽和モノマーを共重合して得られるアクリル樹脂中間体(C)と上記式(2)〜(4)に示す構造のポリエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物との反応により得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の親水化処理組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の親水化処理組成物を塗装してなる被膜を有する熱交換器用部品。

【公開番号】特開2011−132421(P2011−132421A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294848(P2009−294848)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】