親水性のα−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートによる水不溶性ナノ粒子の処理、こうして修飾されたナノ粒子、及び造影剤としてのそれの使用
本願は、水不溶性ナノ粒子、特にMR及びX線イメージングのような診断イメージングで有用な金属及び金属化合物のナノ粒子を、親水性部分とのα−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートで処理することで、ナノ粒子に診断イメージングで有用とするのに十分な親水性を付与する方法を開示している。開示される修飾親水性ナノ粒子には、修飾用コンジュゲートの親水性部分がエチレンオキシド系ポリマー及びコポリマー並びに双性イオン(zwitterions)であり、ナノ粒子が超常磁性酸化鉄及び酸化タンタルのような遷移金属酸化物からなるものがある。安定な水性コロイド懸濁液を形成するのに十分な親水性を有するナノ粒子が開示される。また、修飾親水性ナノ粒子を造影剤として用いるMR及びX線イメージングのような診断イメージングも開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、ナノ粒子(特に遷移金属酸化物に基づくナノ粒子)を処理することで、安定な水性懸濁液を形成するのに十分な親水性をそれに付与し、したがってMRI及びX線イメージングのような診断イメージングにおける造影剤のような親水性を要求する用途で有用にするための方法、前記処理で得られる親水性ナノ粒子、前記安定な水性懸濁液、並びに前記イメージングにおける造影剤としての前記親水性ナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子、即ち適切にはナノメートル単位で測定される直径を有する粒子は、多種多様の最終用途に関して検討されてきた。これらの用途の一部はある程度の親水性を要求するが、ある種のナノ粒子の基材となる材料はこの属性に欠けることがある。例えば、MR及びX線イメージング用の造影剤として使用するのに適したイメージング特性を有するナノ粒子は、通例は適当な親水性に欠ける遷移金属酸化物に基づいている。したがって、これらのナノ粒子の表面特性を修飾して水性媒体との適合性を高め、これらのナノ粒子に安定な水性懸濁液を形成する能力を与えるための努力が行われてきた。しかし、造影剤としての使用のような若干の用途では、ナノ粒子は単分散の粒度分布を有することも好ましく、カルボキシレート基をもった炭水化物に基づく生物学的マトリックス中での錯体化による不均一な凝集のような多分散の粒度分布を生じる表面処理は問題がある。さらに、造影剤としてのインビボでの使用のような若干の用途では、表面処理は明確に定義された再現可能な構造を有すると共に、安全性試験にも適合することが望ましい。シラン系表面処理は、これらの目標を妨げる自己縮合を受けることがあるので問題を有し得る。
【0003】
さらに、精製の結果として親水性の低下を生じないと共に、電解質を含む水性媒体中で懸濁安定性を示す親水性ナノ粒子に対するニーズが存在していた。例えば、ヒト被験体におけるインビボでの使用のための造影剤の製造に際しては、候補ナノ粒子は濾過に付されると共に、等張の水性媒体(即ち、約150mM NaClを含む媒体)中で懸濁安定性を示すことが期待されるのが通例である。単独のリン酸系物質(例えば、ポリリン酸)又は親水性部分(例えば、ポリエチレングリコール)に連結されたリン酸系物質を用いて、遷移金属酸化物にリン酸イオンを付着させることでこのタイプの親水性をナノ粒子に付与するための努力が存在していた。これに関して述べれば、ヒト被験体におけるインビボでの使用のためには、ヒト組織との望ましくない相互作用を避けるため本質的に中性のゼータ電位を有する親水性ナノ粒子が好ましい。しかし、かかる努力は、濾過後に150mM NaCl水性媒体中でコロイド懸濁液として所望の安定性を示す親水的に修飾されたナノ粒子を生み出さなかった。例えば、かかる努力は、30kDaカットオフでの接線流濾過及びかかる水性媒体中で1週間以上の貯蔵後に動的光散乱(DLS)で測定した場合に本質的に安定な粒度(増大しない流体力学的直径(DH))を示す懸濁液を生み出さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
米国特許出願第2003/229280号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、α−ヒドロキシ基を担持する炭素原子を介してα−ヒドロキシホスホン酸及び親水性部分を結合してなるコンジュゲートが、水不溶性ナノ粒子(特に遷移金属酸化物に基づくナノ粒子)の親水性を向上させるための作用物質として優れた性能を有するという発見を含んでいる。コンジュゲートの結合では、α−ヒドロキシホスホン酸の3つのヒドロキシル基のすべてが保存され、これがナノ粒子に対する優れた付着力をコンジュゲートに与えると考えられる。若干の実施形態では、コンジュゲートは次の構造Iを有している。
【0006】
【化1】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。若干の実施形態では、Sは直接結合、非置換又は置換脂肪族基又は脂環式基、非置換又は置換アリール基、ヘテロ脂肪族基或いはヘテロアリール基であり、若干の場合には1〜10個の炭素原子からなる長さの直鎖アルキル基である。Lは、直接結合、カルボニル基、エーテル基、エステル基、第二級又は第三級アミン、第四級アミン基、アミド基、カルバメート基或いは尿素基である。好適なナノ粒子は、水中における糖又は食塩のように溶質の個々の分子が溶媒中に一様に分散するという古典的な意味では、水に不溶なものである。したがって、水中においてある程度の懸濁性を有するナノ粒子をα−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートで処理すること、及びこうして得られるコンジュゲートが付着したナノ粒子は、本発明に包含される。
【0007】
コンジュゲートは、ヒトの組織と望ましくない反応を起こすことがある基又は部分を含まないことが特に有利である。したがって、コンジュゲートはナノ粒子に付着した場合に約−40mV乃至40mV、好ましくは約−15mV乃至15mVのゼータ電位を示すのが好都合である。このように付着した場合、コンジュゲートは本質的に中性のゼータ電位を示すことが特に興味深い。これは、双性イオン又は非イオン性部分を親水性部分として使用することで簡便に達成される。
【0008】
親水性部分はモノマー又はポリマーであり得るが、これらは本質的に中性の正味イオン電荷を有するのが好都合である。ポリマー親水性部分部分のうち、少なくとも部分的にエチレンオキシド単位に基づくポリエーテル(例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー及びポリエチレングリコール)が特に有利である。正味電荷を有しないモノマー親水性部分(特に双性イオン)は、安定性評価のための特性決定が非常に容易であるので、ヒト被験体に関してインビボで使用すべきナノ粒子を処理するために使用されるコンジュゲートにとって好都合である。これらのうち、4−ピペラジンカルボン酸に基づくものが特に有利である。
【0009】
ヒト被験体に関してインビボで使用すべきナノ粒子を処理するために使用されるコンジュゲートにとってはまた、α−ヒドロキシホスホン酸と親水性部分との間の結合が炭化水素であること、即ち構造I中でAが単結合であることも好都合である。これは、かかる処理ナノ粒子とヒトの組織との相互作用の可能性を最小にする。これに関して述べれば、次の構造II及び構造IIIのコンジュゲートが特に有利である。
【0010】
【化2】
コンジュゲートは、好ましくは、ナノ粒子1個当たり約2個のコンジュゲートの比率でナノ粒子を処理するために使用した場合、ナノ粒子が水性媒体中にDLSで測定して約500nm以下のDHを有する安定なコロイド懸濁液を形成し得るのに十分な親水性を有している。コンジュゲートは、このようにして処理されたナノ粒子に、等容のn−オクタノール及び0.1M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(pH7.0)の間における分配係数の対数に関して1未満の値を示すのに十分な親水性を付与することが特に好都合である。
【0011】
一層高い親水性を達成するようにコンジュゲートで処理されるナノ粒子は、好ましくは、遷移金属及び遷移金属化合物(例えば、酸化物、炭化物、硫化物、窒化物、リン化物、ホウ化物、ハロゲン化物、セレン化物、テルル化物及びこれらの組合せ)に基づいている。酸化物が特に有利である。酸化物構造はα−ヒドロキシホスホン酸の付着力に寄与すると考えられる。遷移金属化合物は、MR及びX線イメージング用の造影剤を製造するために有用である。元素周期表の第3周期の遷移金属は、常磁性(好都合には超常磁性)を示す化合物を形成するために有用であり、したがってMRI造影剤として有用である。特に好都合なのは、酸化鉄及び任意にはコバルト、銅、マンガン、ニッケル又はこれらの組合せに基づく超常磁性ナノ粒子である。これらのうち、最も好都合なのは、マグネタイト、マグヘマイト又はこれらの組合せに基づくナノ粒子であって、粒径が約15nm以下でありかつ超常磁性を示すものである。これらは一般に超常磁性酸化鉄(SPIO)粒子といわれる。34を超える原子番号の遷移金属及び亜鉛は、X線造影剤として有用な化合物を製造するために有用である。これらのうち、ハフニウム、モリブデン、銀、タンタル、タングステン及びジルコニウムが特に有利であり、タンタル(特に酸化タンタル)が最も好都合である。
【0012】
親水的に修飾されたナノ粒子は、通例、DLSで測定して500nm以下のDHを有する。好都合には、そのDHは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下であり、最も好ましくはそのDHは3〜30nmである。親水的に修飾されたナノ粒子がヒト被験体において例えばMR又はX線造影剤としてインビボで使用する予定であれば、特に好都合なDHは約8nm以下である。
【0013】
親水的に修飾されたナノ粒子は、簡便にはナノ粒子をコンジュゲートと反応させることで製造される。好都合なアプローチは、テトラヒドロフラン(THF)のような有機溶媒中におけるナノ粒子のコロイド懸濁液を形成し、次いでそれを同一又は異なる有機溶媒中におけるコンジュゲートの有機溶液と混合することである。次いで、反応が本質的に完了するまで、混合物を高温に長時間保つ。通例、50℃以上の温度で16時間以上が好都合である。
【0014】
親水的に修飾されたナノ粒子の安定な単分散水性コロイド懸濁液は容易に得られる。かかる懸濁液は、好ましくは、30kDaカットオフでの接線流濾過のような濾過、及び水性媒体を等張にするためのNaCl(即ち、約150nMのNaCl)の添加のような電解質の添加に対して安定であるべきである。好ましくは、懸濁液は1週間以上の貯蔵に対して安定であり、さらに好ましくは、沈降ばかりでなく懸濁ナノ粒子のDLSで測定されるDHの増大に対しても安定である。もし懸濁液をヒト被験体においてインビボで使用するのであれば、NaCl、デキストロース又はこれらの組合せの添加によってそれを等張にするのが好都合である。
【0015】
安定な単分散水性コロイド懸濁液は、簡便にはコロイド懸濁液を有機溶媒で希釈することで製造される。好都合なアプローチは、その中でナノ粒子をコンジュゲートと反応させた有機溶媒又は有機溶媒混合物を単に水の添加で希釈することである。別のアプローチは、有機溶媒中におけるナノ粒子のコロイド懸濁液を水中のコンジュゲートと反応させることである。いずれの場合にも、濾過又はヘキサンのような溶媒での有機抽出或いはこれらの組合せによって未反応の反応体を除去するのが好都合である。溶媒抽出後における水性相中の揮発分は、部分真空の適用によって除去できる。次いで、親水的に修飾されたナノ粒子は30kDaフィルターに対する接線流濾過によって精製できる。
【0016】
親水的に修飾されたナノ粒子は、診断イメージングにおける造影剤として好都合に使用できる。通常のタイプのかかる診断イメージングはMR及びX線イメージングである。いずれの場合にも、−15mV乃至15mVのゼータ電位を有する親水的に修飾されたナノ粒子を使用するのが好都合である。ヒト被験体のインビボイメージングにおける好都合なアプローチは、ナノ粒子を好ましくは安定な等張水性懸濁液として静脈内に投与することである。イメージングがMRによる場合には、ナノ粒子は常磁性(好ましくは超常磁性)の化学種からなるべきであり、さらに好ましくはマグネタイト又はマグヘマイトのように酸化鉄に基づくものであるべきである。イメージングがX線による場合には、ナノ粒子は34を超える原子番号の金属又は亜鉛(好ましくは、金、ハフニウム、モリブデン、銀、タンタル、タングステン又はジルコニウム)の遷移金属化合物からなるべきであり、最も好ましくは酸化タンタルに基づくものであるべきである。特に興味深い実施形態では、親水的に修飾されたナノ粒子は8nm以下のDHを有し、腎臓を通して被験体の身体から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面中では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で示されている。
【図1】図1は、親水性ナノ粒子を製造するための好適なα−ヒドロキシホスホン酸の一般構造式である。
【図2】図2は、親水性ナノ粒子を製造するための特に有利なα−ヒドロキシホスホン酸の構造式(式中、Meはメチル基である。)である。
【図3】図3は、親水性部分Rが結合したα−ヒドロキシホスホン酸に至る合成経路である。
【図4】図4は、図2に示された特に有利なα−ヒドロキシホスホン酸に至る合成経路である。
【図5】図5は、図3に示すようにして合成されるタイプのα−ヒドロキシホスホン酸であって、親水性部分Rが超常磁性酸化鉄SPIOナノ粒子に結合した場合を示す仮説模式図である。
【図6A】図6Aは、造影剤の不使用時における実施例12に係る腫瘍のT1重み付き画像(TE=4.1ms)である。
【図6B】図6Bは、実施例4のナノ粒子造影剤の投与から30分後における実施例12に係る腫瘍のT1重み付き画像(TE=4.1ms)である。
【図6C】図6Cは、図6Aと図6Bとの間の差を示す差マップである。
【図6D】図6Dは、造影剤の不使用時における実施例12に係る腫瘍のT2*重み付き画像(TE=18.4ms)である。
【図6E】図6Eは、実施例4のナノ粒子造影剤の投与から30分後における実施例12に係る腫瘍のT2*重み付き画像(TE=18.4ms)である。
【図6F】図6Fは、図6Dと図6Eとの間の差を示すR2*緩和差マップであって、腫瘍と筋肉組織との明確な区別を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のコンジュゲートは、広義には多種多様の結合及び親水性部分を有するものとして定義される。重要な特徴は、化学的かつ立体的にアクセス可能なα−ヒドロキシホスホン酸の3つのヒドロキシル基を有することである。かかる構造はキラル中心を有するものの、個々の鏡像異性体及び可能なラセミ混合物のすべてが水不溶性ナノ粒子に親水性を付与するために適していると予想される。
【0019】
これらのコンジュゲートは、α−ヒドロキシホスホン酸構造と親水性部分との間に、炭素、窒素、酸素及び硫黄に基づくものをはじめとする周知化学結合のいずれかを含み得る。特に有利な基は、炭化水素、カルボニル、エステル、エーテル、第二級又は第三級アミン、第四級アミン、尿素、カルバメート及びアミドである。コンジュゲートで処理すべきナノ粒子の所期の最終用途は、結合基の選択に影響を与えることがある。例えば、ナノ粒子を特にヒト被験体においてインビボで使用するのであれば、タンパク質のような組織成分との相互作用を生じることがある第四級基のような結合を避けるのが望ましい場合がある。不活性の観点から最も有利な結合基は炭化水素である。
【0020】
親水性部分は、界面活性剤として知られているものを含め、水との良好な適合性を有することが知られている任意の部分であり得る。これらはアニオン性、カチオン性又は非イオン性であり得る。親水性部分は、単糖、二糖又はオリゴ糖のような炭水化物、非炭水化物系モノマーポリアルコール、エチレンオキシド基を有するポリエーテル、ポリビニルアルコールのようなペンダントヒドロキシル基を有する(エチレンオキシド基を有するポリエーテル以外の)非炭水化物系ポリマー、ポリ(エチレンイミン)、脂肪族又は脂環式アミン及びこれらの組合せであり得る。
【0021】
若干の実施形態では、親水性部分はエチレンオキシドに基づいており、ポリ(エチレンオキシド)が特に有利である。特に約5000ダルトン以下の分子量を有するもの、とりわけ約2000ダルトン以下の分子量を有するものが有利である。約350ダルトンの分子量を有するポリ(エチレンオキシド)が特に有利である。
【0022】
親水性部分はまた、1以上の正に帯電した部分、1以上の負に帯電した部分、及び帯電部分の間にあるスペーサー基を有する双性イオンであり得る。本願の目的のためには、正に帯電した部分及び負に帯電した部分の組合せは、生理学的pH値でそれが本質的に正味電荷を示さなければ双性イオンと見なされる。好適な正に帯電した部分には、プロトン化第一級アミン、プロトン化第二級アミン、プロトン化第三級アルキルアミン、第四級アルキルアミン、プロトン化アミジン、プロトン化グアニジン、プロトン化ピリジン、プロトン化ピリミジン、プロトン化ピラジン、プロトン化プリン、プロトン化イミダゾール、プロトン化ピロール又はこれらの組合せがあり、好適な負に帯電した部分には、脱プロトン化カルボン酸、脱プロトン化スルホン酸、脱プロトン化スルフィン酸、脱プロトン化ホスホン酸、脱プロトン化リン酸、脱プロトン化ホスフィン酸又はこれらの組合せがあり、好適なスペーサー基には、非置換及び置換の脂肪族基、脂環式基及びアリール基、ヘテロ脂肪族基、ヘテロアリール基、エーテル、アミド、エステル、カルバメート、尿素又はこれらの組合せがある。一実施形態では、スペーサー基は1〜10個の炭素原子からなる長さの直鎖アルキル基を含んでいる。
【0023】
ナノ粒子の所期の最終用途が正味イオン電荷を有するα−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートが付着した修飾親水性ナノ粒子に適合しているならば、親水性部分は双性イオンの形成に適するものとして上記に記載された正に帯電した部分のいずれか又は負に帯電した部分のいずれかであり得る。
【0024】
コンジュゲートで処理すべきナノ粒子の所期の最終用途は、親水性部分の選択に影響を与えることがある。例えば、ナノ粒子を特にヒト被験体においてインビボで使用するのであれば、タンパク質のような組織成分との相互作用を生じることがあるイオン基のような親水性部分を避けるのが望ましい場合がある。インビボ用途のためには、本質的に正味電荷をもたない親水性部分(例えば、双性イオン及びエチレンオキシド単位を有するポリエーテル)が特に有利である。ヒト被験体で使用するためには、安全性評価のため容易かつ再現可能に特性決定される親水性部分(例えば、モノマー部分)が特に好都合である。特に好都合な親水性部分は4−ピペラジンカルボン酸に基づくものであって、これらはモノマーであると共に双性イオンとして正味電荷を有していない。細胞培養物のインビトロ接種のような、毒性があまり問題にならない用途のためには、ポリ(エチレン)イミンが適当な親水性部分であり得る。
【0025】
特に好適な双性イオンは、2008年12月29日に提出された米国特許出願第12/344,604号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。これらには、カチオン性窒素と、カルボン酸、リン酸又はスルホン酸に基づくアニオン性基とを含む親水性部分、例えばN,N−ジメチル−−3−スルホ−N−(3−プロピル)プロパン−1−アミニウム、3−(メチル)プロピル)アミノ)プロパン−1−スルホン酸、3−(プロピルアミノ)プロパン−1−スルホン酸、2−(エトキシ(ヒドロキシ)ホスホリルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアミニウム、2−エチル(ヒドロキシ)ホスホリルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアミニウム、N,N,N−トリメチル−3−(N−プロピオニルスルファモイル)プロパン−1−アミニウム、N−((2H−テトラゾール−5−イル)メチル)−N,N−ジメチル−プロパン−1−アミニウム、N−(2−カルボキシエチル)−N,N−ジメチル−プロパン−1−アミニウム、3−(メチルプロピル)アミノ)プロパン酸、3−(プロピルアミノ)プロパン酸、N−(カルボキシメチル)−N,N−ジメチル−プロパン−1−アミニウム、2−(メチルアミノ)酢酸、2−(プロピルアミノ)酢酸、2−(4−プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)酢酸、3−(4−プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)プロパン酸、2−(メチル(2−プロピルウレイド)エチル)アミノ)酢酸及び2−(2−(プロピルウレイド)エチル)アミノ酢酸がある。
【0026】
好適な親水性ポリエーテルに基づく親水性部分は、1999年6月29日に発行された米国特許第5,916,539号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。これらには、アミノ及びヒドロキシルを含む各種の末端基を有する様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)並びにポリプロピレングリコール(PPG)とのコポリマーがある。
【0027】
コンジュゲートは、好ましくは、金属ベースのナノ粒子1モルに対してコンジュゲート2モルの比率でナノ粒子と反応させた場合、ナノ粒子が安定な水性懸濁液を形成し得るのに十分な親水性を有している。これに関して述べれば、ナノ粒子は通例は遷移金属化合物(例えば、酸化物)又は遷移金属自体に基づいている。反応比率は、元素態金属のモル数を用いて規定するのが好都合である。これは、有機溶媒中におけるナノ粒子の出発懸濁液の元素分析で容易に求めることができる。ナノ粒子の化学構成及び処理前の平均粒度を知れば、ナノ粒子当たりのコンジュゲートの量を概算で求めることができる。コンジュゲートは、この比率で処理された15nm未満の酸化鉄又は酸化タンタルナノ粒子に、等容のn−オクタノール及び0.1M MOPS緩衝液(pH7.0)の間における分配係数の対数に関して1未満の値を示すのに十分な親水性を与えるに足るだけの親水性を有することが特に好都合である。
【0028】
α−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートが付着した修飾親水性ナノ粒子は、接線流濾過及び室温で1週間の貯蔵後に150mM NaCl水中での動的光散乱(DLS)によって測定した場合に流体力学的直径(DH)の実質的変化を示さない安定な水性コロイド懸濁液を形成するのに十分な親水性を有することが特に有利である。
【0029】
コンジュゲートで処理すべきナノ粒子は、コンジュゲートのα−ヒドロキシホスホン酸部分が付着する500nm以下の粒子に形成できる任意の水不溶性材料からなり得る。MR又はX線イメージングにおける造影剤として有用であるナノ粒子を使用することが有利である。しかし、遺伝子のトランスフェクション用細胞培養物のインフュージョンのような他の最終用途のためのナノ粒子もまた有利である。
【0030】
MRI造影剤として使用するためには、ナノ粒子の基材は常磁性の金属又はその化合物とすべきであり、超常磁性のものが特に有利である。これらの金属は、マンガンで始まって亜鉛で終わる元素周期表のIII周期の遷移金属から得るのが好都合である。特に興味深い材料群は酸化鉄に基づくものである。特に好都合な材料は、SPIOとして知られるものである。これらの材料は、一般式[Fe2+O3]x[Fe2+O3(M2+O)]1-x(式中、1≧x≧0)を有している。M2+は、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、マグネシウム、銅、亜鉛又はこれらの組合せのような二価金属イオンであり得る。金属イオン(M2+)が第一鉄イオン(Fe2+)であって、x=0の場合、材料はマグネタイト(Fe3O4)であり、x=1の場合、材料はマグヘマイト(γ−Fe2O3)である。
【0031】
一般に超常磁性は、不対スピンの結晶含有領域が磁区といわれる熱力学的に独立した単一ドメイン粒子と見なし得る程度に大きい場合に生じる。これらの磁区は、それの個々の不対電子の和より大きい正味の磁気双極子を示す。磁場が印加されていなければ、すべての磁区がランダムに配向していて正味の磁化はない。外部磁場の印加はすべての磁区の双極子モーメントを再配向させ、その結果として正味の磁気モーメントが生じる。若干の実施形態では、これらの材料は透過型電子顕微鏡(TEM)分析で示されるようにスピネル型結晶構造を示す。
【0032】
X線造影剤として使用するためには、ナノ粒子の基材は、生物において通例見出される物質より実質的に大きい放射線不透過性の金属又はその化合物とすべきである。約50nMの濃度の場合、34以上の有効原子番号を有する材料を使用するのが好都合である。かかる材料は、特に有利な最小の増強である約30ハウンスフィールド単位(HU)以上の適切なコントラスト増強を生み出す可能性がある。このような特性を与え得る遷移金属元素の例には、タングステン、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、モリブデン、銀及び亜鉛がある。酸化タンタルは、X線イメージング用途で使用するのに適したコア組成物の1つの具体例であ。特に有利なのは、約100〜約5000ハウンスフィールド単位の範囲内のCT信号を生み出す材料である。
【0033】
α−ヒドロキシホスホン酸が付着した修飾親水性ナノ粒子は、診断イメージングにおける造影剤として使用できる。かかる用途では、これらのナノ粒子は被験体(若干の実施形態では、哺乳動物被験体)に投与され、次いで被験体はイメージングに付される。これらのナノ粒子はMR及びX線イメージングにおいて特別の有用性を有するが、超音波又は放射性トレーサーイメージングにおいても造影剤として有用である。
【0034】
特に哺乳動物被験体、さらにはヒト被験体の診断イメージングで使用する場合、α−ヒドロキシホスホン酸が付着した修飾親水性ナノ粒子は、通例は1種以上の賦形剤を含んでも含まなくてもよい薬学的に許容されるキャリヤー中に取り込まれる。投与が注射(特に非経口注射)による場合には、キャリヤーは通例、約150mMのNaCl、5%デキストロース又はこれらの組合せの添加によって等張性にした水性媒体である。それはまた、通例、約7.3〜7.4の生理的pHを有する。投与は、脈管内(IM)、皮下(SQ)又は最も一般には静脈内(IV)に行うことができる。しかし、投与はまた、被験体の血液又は組織にナノ粒子をゆっくりと放出するデポの移植によって行うこともできる。
【0035】
別法として、投与は胃腸管のイメージングのため経口摂取によって行うこともでき、或いは肺及び気道のイメージングのため吸入によって行うこともできる。
【0036】
ヒト被験体への投与、特にIV投与では、α−ヒドロキシホスホン酸が付着した修飾親水性ナノ粒子は使用する量で無毒であり、細菌やウイルスのようないかなる感染因子も含まず、またいかなる発熱原も含まないことが要求される。したがって、これらのナノ粒子は所要の精製操作に対して安定であり、親水性の低下を受けないことが必要である。
【0037】
これらのナノ粒子は、適切な重量オスモル濃度及びpHを有する安定な水性コロイド懸濁液として、希釈のために適した濃縮水性コロイド懸濁液として、或いは再構成のために適した粉末(例えば、凍結乾燥によって得られる粉末)として、投与の現場に送達し得る。
【0038】
実施例1
PEG−350コンジュゲートの合成
PEG−350モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒドの合成。CH2Cl2(98mL)に溶解したPEG−350モノ(メチルエーテル)(3.438g、9.82mmol)を含む溶液にDess−Martin Periodinane(5.00g、11.79mmol)を添加し、得られた溶液を室温で20時間撹拌した。反応中に微細な白色沈殿が生じたが、反応終了時にこれをセライトパッドでの濾過によって除去した。真空中で濾液から溶媒を除去したところ、黄色の油状物中に懸濁された白色の固体が残った。固体をジエチルエーテルでトリチュレートし、固体をセライトパッドでの濾過によって除去した。真空中で濾液から溶媒を除去したところ、生成物PEG−350モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒド(3.42g、100%)が黄色の油状物として残った。1H NMR(CDCl3)δ 9.73(t,J=4Hz,1H),4.16(d,J=4Hz,2H),7.65(m,24H),3.38(s,3H)ppm。IR(neat)2873,1732,1455,1350,1109,1040,948,851,749cm-1。
【0039】
ジエチルα−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホネートの合成。テトラヒドロフラン(53mL)に溶解したPEG−350モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒド(3.71g、10.7mmol)を含む溶液にジエチルホスフィット(1.77g、12.8mmol)を添加した。溶液を0℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(1.94g、12.8mmol)を添加した。0℃で10分間撹拌した後、rxnを室温に加温し、さらに24時間撹拌した。真空中で溶媒を除去し、残った暗黄色の油状物をカラムクロマトグラフィー(100%CH2Cl2〜15%MeOH/85%CH2Cl2)によって精製することで、3.30g(64%)の所望生成物ジエチルα−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホネートを黄色の油状物として得た。1H NMR(CDCl3)δ 4.19(m,6H),3.65(m,24H),3.38(s,3H),1.34(m,6H)ppm。31P NMR(CDCl3)δ 23.1ppm。IR(neat)3343,2872,1725,1453,1248,1105,965,850,791cm-1。
【0040】
α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホン酸の合成。塩化メチレン(74mL)に溶解したジエチルα−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホネート(3.61g、7.43mmol)を含む溶液にトリメチルシリルブロミド(3.41g、22.3mmol)を添加し、得られた溶液を室温で2時間撹拌した。真空中で溶媒を除去したところ、褐色の油状物が残った。得られた油状物をアセトン(74mL)及び水(0.5mL)に溶解し、得られた溶液を室温で1.5時間撹拌した。次いで、真空中で溶媒を除去したところ、所望生成物α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホン酸(2.66g、84%)が金色の油状物として残った。1H NMR(CDCl3)δ 3.65(m,24H),3.38(s,3H)。31P NMR(CDCl3)δ 24.0ppm。IR(neat)3460,2870,1727,1456,1351,945,849cm-1。
【0041】
実施例2
PEG−1900コンジュゲートの合成
PEG−1900モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒドの合成。CH2Cl2(86mL)に溶解したPEG−1900モノ(メチルエーテル)(16.32g、8.60mmol)を含む溶液にDess−Martin Periodinane(4.00g、9.44mmol)を添加し、得られた溶液を室温で20時間撹拌した。反応中に微細な白色沈殿が生じたが、反応終了時にこれをセライトパッドでの濾過によって除去した。真空中で濾液から溶媒を除去したところ、白色の固体が残った。これをTHF/ヘキサンから再結晶することで、所望生成物(11.6g、71%)を白色の固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 9.74(t,J=1Hz,1H),4.17(d,J=1Hz,2H),3.83(m,2H),3.65(m,170H),3.39(s,3H)。
【0042】
ジエチルα−ヒドロキシPEG−1900モノ(メチルエーテル)ホスホネートの合成。テトラヒドロフラン(57mL)に溶解したPEG−1900モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒド(10.74g、5.66mmol)を含む溶液に、ジエチルホスフィット(0.938g、6.79mmol)を添加し、次いで1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(1.03g、6.79mmol)を添加した。反応物を室温で72時間撹拌した。真空中で溶媒を除去し、残った橙黄色の固体をTHF/ヘキサンから再結晶することで、所望生成物(11.08g、96%)をオフホワイトの固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 4.18(m,4H),3.64(m,172H),3.38(s,3H)。
【0043】
α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホン酸の合成。塩化メチレン(54mL)に溶解したジエチルα−ヒドロキシPEG−1900モノ(メチルエーテル)ホスホネート(11.08g、5.44mmol)を含む溶液にトリメチルシリルブロミド(2.49g、16.3mmol)を添加し、得られた溶液を室温で3時間撹拌した。真空中で溶媒を除去したところ、褐色の油状物が残った。得られた油状物をアセトン(54mL)及び水(0.5mL)に溶解し、得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、真空中で溶媒を除去し、残った橙色の固体をTHF/ヘキサンから再結晶することで、所望生成物(10.77g、86%)をオフホワイトの固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 4.12(m,2H),3.65(m,170H),3.38(s,3H)。
【0044】
比較例1
親水性ホスフェートの合成
ジフェニルPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスフェートの合成。CH2Cl2(80mL)に溶解したPEG−350モノ(メチルエーテル)(8.54g、24.4mmol)を含む溶液に、トリエチルアミン(3.68g、36.6mmol)を添加し、次いで4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.298g、2.44mmol)を添加した。得られた溶液を0℃に冷却し、ジフェニルクロロホスフェート(7.87g、29.3mmol)を滴下し、反応物を0℃で10分間撹拌した。次いで、反応物を室温に加温し、さらに16時間撹拌した。反応物を10%HCl(80mL)の添加で奪活し、得られた層を分離した。有機層を水(80mL)及びブライン(80mL)で洗浄し、無水物MgSO4上で乾燥した。濾過し、真空中で溶媒を除去したところ、所望生成物(14.2g、100%)が金色の油状物として残った。1H NMR(CDCl3)δ 7.34(m,4H),7.22(m,6H),4.38(m,2H),3.73(m,2H),3.64(m,24H),3.54(m,2H),3.38(s,3H)。
【0045】
PEG−350モノ(メチルエーテル)リン酸の合成。酢酸(108mL)に溶解したジフェニルPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスフェート(14.2g、24.4mmol)を含む溶液に酸化白金(IV)水和物(200mg)を添加し、得られた懸濁液を50℃に加熱し、水素の取込みが止むまでH2雰囲気下に置いた。反応物をセライトパッドで濾過して触媒を除去し、真空中で溶媒を除去したところ、所望生成物(10.49g、100%)が透明な黄色油状物として残った。1H NMR(CDCl3)δ 4.20(m,2H),3.67(m,24H),3.56(m,2H),3.39(s,3H)。
【0046】
実施例3
超常磁性酸化鉄(SPIO)ナノ粒子の合成。100mL三つ口丸底フラスコにFe(acac)3(0.706g、2.0mmol)及び無水ベンジルアルコール(20mL)を仕込んだ。得られた溶液を窒素でスパージし、窒素雰囲気下において165℃で4時間加熱した。次いで、得られた(DLSで測定して)5nm酸化鉄粒子のコロイド懸濁液を室温に冷却し、その温度で貯蔵した。
【0047】
実施例4
α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホネートでコートした超常磁性酸化鉄ナノ粒子の合成。実施例3の超常磁性酸化鉄ナノ粒子をTHF中に懸濁した1mg Fe/mLのコロイド懸濁液に、(Fe 1モル当たりコンジュゲート1モルの比率で)実施例1のα−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートを添加し、得られた懸濁液を50℃で16時間加熱した。次いで、反応物を室温に冷却し、水で希釈し、褐色の水溶液をヘキサで3回洗浄した。水性層中に残留する揮発分を真空中で除去し、得られたナノ粒子を、接線流濾過を使用しながら30kDa分子カットオフフィルターに対してH2Oで洗浄することで精製した。
【0048】
実施例5
α−ヒドロキシPEG−1900モノ(メチルエーテル)ホスホネートでコートした超常磁性酸化鉄ナノ粒子の合成。実施例1のコンジュゲートの代わりに実施例2のコンジュゲートを用いて実施例4を繰り返した。
【0049】
比較例2
α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスフェートでコートした超常磁性酸化鉄ナノ粒子の合成。比較例1のコンジュゲートを用いて実施例4を繰り返した。
【0050】
実施例6
5−ブロモ−1−ペンタナールの合成。250mL丸底フラスコ内で、塩化オキサリル(2.42mL、0.022mol)を無水ジクロロメタン(40mL)と混合した。フラスコを窒素でブランケットし、溶液をドライアイス/アセトン浴中で−78℃に冷却した。反応混合物を撹拌し、無水ジメチルスルホキシド(3.4mL、0.044mol)をフラスコにゆっくりと添加し、次いで5−ブロモ−1−ペンタノール(3.34g、0.020mol)を添加し、反応混合物を−78℃で15分間撹拌した。トリエチルアミン(14.0mL、0.1mol)を反応混合物にゆっくりと添加した。トリエチルアミンの添加が完了した後、反応物を−78℃で5分間撹拌した。反応物をドライアイス/アセトン浴から取り出し、室温に加温し、室温で18時間撹拌した。
【0051】
水(100mL)を反応混合物に添加した。二相混合物を500mL分液漏斗内で激しく振盪した。水性層を除去し、ジクロロメタン(100mL)で抽出した。このジクロロメタンを反応混合物からのジクロロメタンと合わせた。合わせたジクロロメタン溶液を各100mLの1%HCl(aq)、水、飽和NaHCO3(aq)及び飽和NaCl(aq)で順次に洗浄した。ジクロロメタン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタン溶液を濾過によって回収した。真空下で溶媒を除去したところ、黄色の液体(1.80g)が残った。主生成物は5−ブロモ−1−ペンタナールであることが1H NMRによって確認された。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 9.81(m,1H),3.43(m,3H),2.50(m,2H),2.0−1.4(m,8H)。それ以上の精製なしに反応生成物を実施例7に供した。
【0052】
実施例7
ジエチル(5−ブロモ−1−ヒドロキシ−ペンチル)ホスホネートの合成。250mL丸底フラスコ内で、5−ブロモペンタナール(1.64g、0.010mol)をジエチルエーテル(15mL)に溶解した。反応物を窒素でブランケットした。過塩素酸リチウム(7.92g、0.075mol)を反応物に添加し、反応溶液を氷浴中で0℃に冷却した。クロロトリメチルシラン(0.631mL、0.010mol)をフラスコに添加し、次いでトリメチルホスフィット(2.1mL、0.012mol)を添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した。
【0053】
室温で18時間後、水(40mL)を反応物に添加し、次いでジクロロメタン(40mL)を添加した。有機層を分液漏斗に移し、水(40mL)及びブライン(40mL)で順次に洗浄した。塩化メチレン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して塩化メチレン溶液を回収した。真空下で溶媒を除去したところ、黄色の油状物(3.01g)が残った。油状物を1H NMR及び31P NMRによって特性決定し、主生成物はジエチル(5−ブロモ−1−ヒドロキシ−ペンチル)ホスホネートであることが確認された。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 4.25−4.00(m,4H),3.00−3.43(m,2H),1.78−1.95(m,2H),1.78−1.61(m,3H),1.61−1.41(m,2H),1.40−1.25(m,6H)。31P NMR(600MHz,CDCl3)δ 26.5(s,1P),24.2−24.7(m,0.3P)。それ以上の精製なしに反応生成物を実施例8に供した。
【0054】
実施例8
ジエチル5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホネートの合成。300mL丸底フラスコ内で、ジエチル(5−ブロモ−1−ヒドロキシ−ペンチル)ホスホネート(3.02g、0.0099mol)を無水トルエン(100mL)に溶解した。トリエチルアミン(2.08mL、0.015mol)を反応混合物に添加し、次いでエチルイソニペコテート(1.84mL、0.012mol)を添加した。混合物を18時間加熱還流した。真空下で溶媒を除去したところ、橙色のガムが残った。ガムをジクロロメタン(100mL)に溶解し、飽和NaHCO3水溶液(100mL)及びブライン(100mL)で順次に洗浄した。塩化メチレン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過によって回収した。真空下で溶媒を除去したところ、橙色の液体(1.70g)が残った。
【0055】
橙色の液体をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。シリカゲルカラム(40g)を、100%ジクロロメタンで開始し、30分かけてジクロロメタン中20体積%メタノールまで変化する溶媒勾配を用いて溶出した。生成物を含む画分を合わせ、真空下で溶媒を除去したところ、黄色の液体(0.66g)が残った。黄色の液体を1H NMRによって特性決定し、主生成物はジエチル5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホネートであることが確認された。1H NMR(400mHz,CDCl3)δ 4.9−4.5(s,1H),4.2−4(m,5H),3.8−3.7(m,1H),2.9−2.7(m,2H),2.4−2.1(m,3H),2.1−1.9(m,2H),1.9−1.8(m,2H),1.8−1.3(m,8H),1.3−1.2(m,5H),1.2−1.1(m,3H)。それ以上の精製なしに反応生成物を実施例9に供した。
【0056】
実施例9
5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホン酸の合成。100mLフラスコ内で、ジエチル5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホネート(0.66g、0.0017mol)をジクロロメタン(25mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(0.69mL、0.0052mol)を反応混合物に添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。一晩の撹拌後、真空下で溶媒を除去したところ、橙色のガムが残った。ガムをアセトン(20mL)に溶解した。水(0.4mL)を添加した。ガムが沈殿した。真空下で溶媒を除去したところ、赤色のガム(0.6g)が残った。ガムを1H NMRによって特性決定し、生成物は5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホン酸であることが確認された。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ 4.3−4.1(m,2H),3.9−3.4(m,3H),3.4−2.5(m,7H),2.5−1.35(m,11H),1.35−1.2(m,3H)。
【0057】
実施例10
5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホネートでコートした酸化タンタルナノ粒子の合成。イソ酪酸(0.242g、2.75mmol)及び水(0.08g、4.44mmol)を含む無水メタノール(17mL)の溶液を、N2でスパージすることで40分間ガス抜きした。これにTa2(OEt)2(1g、2.46mmol)を滴下し、反応混合物をN2雰囲気下で5時間撹拌することで、3〜4nmナノ粒子の懸濁液を得た。5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホン酸(0.088g、0.205mmol)をメタノール(0.5mL)に溶解した溶液を酸化タンタルナノ粒子懸濁液(1mL)に滴下し、N2下において70℃で一晩加熱した。室温に冷却した後、水(約3mL)を反応混合物に滴下した。ロータリーエバポレーター上においてメタノールを減圧下で蒸発させて除去した後、1M NH4OH(0.33mL)を添加し、反応物を50℃で一晩撹拌した。3500Da分子量カットオフ再生セルロース膜を用いて、反応混合物を水(3×2L)に対して24時間透析した。DLSによれば、粒度は水中で7nmであると確認された。
【0058】
実施例11
SPIOナノ粒子のコロイド懸濁液の特性決定。実施例4及び実施例5並びに比較例2において接線流濾過の結果として得られたコロイド懸濁液を、安定性及びゼータ電位に関して評価した。
【0059】
150mM NaCl水溶液を懸濁媒体として使用しながら、動的光散乱(DLS)によって流体力学的直径(DH)を測定した。接線流濾過で精製したSPIO懸濁液を150mM NaCl水溶液で希釈し、100nmフィルターに通してダストを除去した後、Brookhaven ZetaPALSを用いてDLS分析を行った。希釈は、DLS測定中に最小で毎秒20000カウントを与えるように実施した。測定は、修飾ナノ粒子を製造した直後及び室温で2週間貯蔵した後に行った。貯蔵後におけるDHの顕著な増大は、ナノ粒子が凝集し、したがってそのコロイド懸濁液が安定でないことを表していた。
【0060】
接線流濾過で精製したSPIO懸濁液を10mM NaClで14×に希釈し、希釈したSPIO溶液を100nmフィルターに通してダストを除去した後、Brookhaven ZetaPALSを用いてゼータ電位を測定した。3種のコロイド懸濁液のすべてに関し、ゼータ電位は一般に中性として認められている±15mVの範囲内にあった。
【0061】
結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
実施例12
MRIによるインビボ腫瘍のイメージング。動物に関係するすべての手続きは、GE Global Research Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコルの下で完了した。雌のFischer 344ラット(約150g)において、0.1mLのハンクス平衡塩類溶液中の2×106 Mat B III細胞(ATCC# CRL1666、ATCC(マナサス、米国ヴァージニア州))を皮下注射することで腫瘍を誘導した。注射部位は肩胛骨の間の背中に位置していた。移植から9日後、腫瘍が直径約1cmになった時に腫瘍のイメージングを行った。
【0063】
イメージングは、注文製造の約6cmソレノイド受信RFコイルを用いて臨床用の3T GE MR750スキャナー上で行った。イメージングの準備のため、それぞれ75mg/kg及び5mg/kgの用量でケタミン及びジアゼパムをIP注射することで麻酔した。固定後、24ゲージのカテーテルをを側尾静脈内に配置し、食塩水でプライムしたマイクロボアカテーテルライン延長部及びストップコックに連結した。カテーテル、ライン及びストップコックの死容積は約0.5mLであった。次いで、前処理した動物をRFコイル内に配置し、スキャナーのボア内で位置決めした。注射前画像セットを取得し、次いでテーブル又は動物を移動させることなしにPEG−350 α−ヒドロキシホスホネートでコートした超常磁性酸化鉄ナノ粒子をストップコック経由で注射し、次いで食塩水(約0.8mL)でフラッシュした。注射の直後に(注射後約30秒から始めて)、約30分の動的取得時間を通じて画像セットを収集し、約16のポストコントラスト時点の収集が得られた。注射に関しては、SPIO造影剤を10mg Fe/mLの濃度で生理食塩水中に懸濁し、注射前に滅菌濾過し、内毒素の存在について試験した。造影剤は3mg Fe/kg体重の用量で投与した。
【0064】
10のエコー時間での画像収集を可能にする3D高速勾配エコーパルスシーケンスを使用した。グラフィカルプレスクリプションインターフェースにより、腫瘍がトランスアキシャルスライス内で中央に位置しかつカバー範囲が深さ方向で腫瘍の大部分を含むようにイメージングスラブを位置決めした。バルスシーケンスパラメーターは次の通りであった。パルスシーケンス:3D ME fGRE、TE:4.1〜68の範囲にわたり、スペーシングは7.1ms、TR:75.5ms、フリップ角:25度、帯域幅:62.5MHz、マトリクス:256×256、スライス厚さ:0.9mm、視野:8cmであって、0.31×0.31×0.9のボクセル寸法を生じる。シーケンス取得時間は約2分であった。
【0065】
IDLプラットホーム(IDL v.6.3、ITT Corp.(ボールダー、米国コロラド州))上に構築されたカスタムソフトウェアツール(CineTool v8.0.2、GE Healthcare社)を用いてイメージングデータセットを解析した。簡単に述べれば、かかる画像解析ツールは、注射前系列上に3D検査対象領域(ROI)を手動描画し、続いてすべての時点で描画されたROI内のあらゆるボクセルに関する指数回帰を行ってT2*時間定数を計算することを可能にした。代表的な画像及び差マップを図6に示す。
【0066】
以上、本明細書中には本発明の若干の特徴のみを例示し説明してきたが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の真の技術思想に含まれるこのような修正及び変更のすべてを包含することを理解すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、ナノ粒子(特に遷移金属酸化物に基づくナノ粒子)を処理することで、安定な水性懸濁液を形成するのに十分な親水性をそれに付与し、したがってMRI及びX線イメージングのような診断イメージングにおける造影剤のような親水性を要求する用途で有用にするための方法、前記処理で得られる親水性ナノ粒子、前記安定な水性懸濁液、並びに前記イメージングにおける造影剤としての前記親水性ナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子、即ち適切にはナノメートル単位で測定される直径を有する粒子は、多種多様の最終用途に関して検討されてきた。これらの用途の一部はある程度の親水性を要求するが、ある種のナノ粒子の基材となる材料はこの属性に欠けることがある。例えば、MR及びX線イメージング用の造影剤として使用するのに適したイメージング特性を有するナノ粒子は、通例は適当な親水性に欠ける遷移金属酸化物に基づいている。したがって、これらのナノ粒子の表面特性を修飾して水性媒体との適合性を高め、これらのナノ粒子に安定な水性懸濁液を形成する能力を与えるための努力が行われてきた。しかし、造影剤としての使用のような若干の用途では、ナノ粒子は単分散の粒度分布を有することも好ましく、カルボキシレート基をもった炭水化物に基づく生物学的マトリックス中での錯体化による不均一な凝集のような多分散の粒度分布を生じる表面処理は問題がある。さらに、造影剤としてのインビボでの使用のような若干の用途では、表面処理は明確に定義された再現可能な構造を有すると共に、安全性試験にも適合することが望ましい。シラン系表面処理は、これらの目標を妨げる自己縮合を受けることがあるので問題を有し得る。
【0003】
さらに、精製の結果として親水性の低下を生じないと共に、電解質を含む水性媒体中で懸濁安定性を示す親水性ナノ粒子に対するニーズが存在していた。例えば、ヒト被験体におけるインビボでの使用のための造影剤の製造に際しては、候補ナノ粒子は濾過に付されると共に、等張の水性媒体(即ち、約150mM NaClを含む媒体)中で懸濁安定性を示すことが期待されるのが通例である。単独のリン酸系物質(例えば、ポリリン酸)又は親水性部分(例えば、ポリエチレングリコール)に連結されたリン酸系物質を用いて、遷移金属酸化物にリン酸イオンを付着させることでこのタイプの親水性をナノ粒子に付与するための努力が存在していた。これに関して述べれば、ヒト被験体におけるインビボでの使用のためには、ヒト組織との望ましくない相互作用を避けるため本質的に中性のゼータ電位を有する親水性ナノ粒子が好ましい。しかし、かかる努力は、濾過後に150mM NaCl水性媒体中でコロイド懸濁液として所望の安定性を示す親水的に修飾されたナノ粒子を生み出さなかった。例えば、かかる努力は、30kDaカットオフでの接線流濾過及びかかる水性媒体中で1週間以上の貯蔵後に動的光散乱(DLS)で測定した場合に本質的に安定な粒度(増大しない流体力学的直径(DH))を示す懸濁液を生み出さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
米国特許出願第2003/229280号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、α−ヒドロキシ基を担持する炭素原子を介してα−ヒドロキシホスホン酸及び親水性部分を結合してなるコンジュゲートが、水不溶性ナノ粒子(特に遷移金属酸化物に基づくナノ粒子)の親水性を向上させるための作用物質として優れた性能を有するという発見を含んでいる。コンジュゲートの結合では、α−ヒドロキシホスホン酸の3つのヒドロキシル基のすべてが保存され、これがナノ粒子に対する優れた付着力をコンジュゲートに与えると考えられる。若干の実施形態では、コンジュゲートは次の構造Iを有している。
【0006】
【化1】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。若干の実施形態では、Sは直接結合、非置換又は置換脂肪族基又は脂環式基、非置換又は置換アリール基、ヘテロ脂肪族基或いはヘテロアリール基であり、若干の場合には1〜10個の炭素原子からなる長さの直鎖アルキル基である。Lは、直接結合、カルボニル基、エーテル基、エステル基、第二級又は第三級アミン、第四級アミン基、アミド基、カルバメート基或いは尿素基である。好適なナノ粒子は、水中における糖又は食塩のように溶質の個々の分子が溶媒中に一様に分散するという古典的な意味では、水に不溶なものである。したがって、水中においてある程度の懸濁性を有するナノ粒子をα−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートで処理すること、及びこうして得られるコンジュゲートが付着したナノ粒子は、本発明に包含される。
【0007】
コンジュゲートは、ヒトの組織と望ましくない反応を起こすことがある基又は部分を含まないことが特に有利である。したがって、コンジュゲートはナノ粒子に付着した場合に約−40mV乃至40mV、好ましくは約−15mV乃至15mVのゼータ電位を示すのが好都合である。このように付着した場合、コンジュゲートは本質的に中性のゼータ電位を示すことが特に興味深い。これは、双性イオン又は非イオン性部分を親水性部分として使用することで簡便に達成される。
【0008】
親水性部分はモノマー又はポリマーであり得るが、これらは本質的に中性の正味イオン電荷を有するのが好都合である。ポリマー親水性部分部分のうち、少なくとも部分的にエチレンオキシド単位に基づくポリエーテル(例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー及びポリエチレングリコール)が特に有利である。正味電荷を有しないモノマー親水性部分(特に双性イオン)は、安定性評価のための特性決定が非常に容易であるので、ヒト被験体に関してインビボで使用すべきナノ粒子を処理するために使用されるコンジュゲートにとって好都合である。これらのうち、4−ピペラジンカルボン酸に基づくものが特に有利である。
【0009】
ヒト被験体に関してインビボで使用すべきナノ粒子を処理するために使用されるコンジュゲートにとってはまた、α−ヒドロキシホスホン酸と親水性部分との間の結合が炭化水素であること、即ち構造I中でAが単結合であることも好都合である。これは、かかる処理ナノ粒子とヒトの組織との相互作用の可能性を最小にする。これに関して述べれば、次の構造II及び構造IIIのコンジュゲートが特に有利である。
【0010】
【化2】
コンジュゲートは、好ましくは、ナノ粒子1個当たり約2個のコンジュゲートの比率でナノ粒子を処理するために使用した場合、ナノ粒子が水性媒体中にDLSで測定して約500nm以下のDHを有する安定なコロイド懸濁液を形成し得るのに十分な親水性を有している。コンジュゲートは、このようにして処理されたナノ粒子に、等容のn−オクタノール及び0.1M 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(pH7.0)の間における分配係数の対数に関して1未満の値を示すのに十分な親水性を付与することが特に好都合である。
【0011】
一層高い親水性を達成するようにコンジュゲートで処理されるナノ粒子は、好ましくは、遷移金属及び遷移金属化合物(例えば、酸化物、炭化物、硫化物、窒化物、リン化物、ホウ化物、ハロゲン化物、セレン化物、テルル化物及びこれらの組合せ)に基づいている。酸化物が特に有利である。酸化物構造はα−ヒドロキシホスホン酸の付着力に寄与すると考えられる。遷移金属化合物は、MR及びX線イメージング用の造影剤を製造するために有用である。元素周期表の第3周期の遷移金属は、常磁性(好都合には超常磁性)を示す化合物を形成するために有用であり、したがってMRI造影剤として有用である。特に好都合なのは、酸化鉄及び任意にはコバルト、銅、マンガン、ニッケル又はこれらの組合せに基づく超常磁性ナノ粒子である。これらのうち、最も好都合なのは、マグネタイト、マグヘマイト又はこれらの組合せに基づくナノ粒子であって、粒径が約15nm以下でありかつ超常磁性を示すものである。これらは一般に超常磁性酸化鉄(SPIO)粒子といわれる。34を超える原子番号の遷移金属及び亜鉛は、X線造影剤として有用な化合物を製造するために有用である。これらのうち、ハフニウム、モリブデン、銀、タンタル、タングステン及びジルコニウムが特に有利であり、タンタル(特に酸化タンタル)が最も好都合である。
【0012】
親水的に修飾されたナノ粒子は、通例、DLSで測定して500nm以下のDHを有する。好都合には、そのDHは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下であり、最も好ましくはそのDHは3〜30nmである。親水的に修飾されたナノ粒子がヒト被験体において例えばMR又はX線造影剤としてインビボで使用する予定であれば、特に好都合なDHは約8nm以下である。
【0013】
親水的に修飾されたナノ粒子は、簡便にはナノ粒子をコンジュゲートと反応させることで製造される。好都合なアプローチは、テトラヒドロフラン(THF)のような有機溶媒中におけるナノ粒子のコロイド懸濁液を形成し、次いでそれを同一又は異なる有機溶媒中におけるコンジュゲートの有機溶液と混合することである。次いで、反応が本質的に完了するまで、混合物を高温に長時間保つ。通例、50℃以上の温度で16時間以上が好都合である。
【0014】
親水的に修飾されたナノ粒子の安定な単分散水性コロイド懸濁液は容易に得られる。かかる懸濁液は、好ましくは、30kDaカットオフでの接線流濾過のような濾過、及び水性媒体を等張にするためのNaCl(即ち、約150nMのNaCl)の添加のような電解質の添加に対して安定であるべきである。好ましくは、懸濁液は1週間以上の貯蔵に対して安定であり、さらに好ましくは、沈降ばかりでなく懸濁ナノ粒子のDLSで測定されるDHの増大に対しても安定である。もし懸濁液をヒト被験体においてインビボで使用するのであれば、NaCl、デキストロース又はこれらの組合せの添加によってそれを等張にするのが好都合である。
【0015】
安定な単分散水性コロイド懸濁液は、簡便にはコロイド懸濁液を有機溶媒で希釈することで製造される。好都合なアプローチは、その中でナノ粒子をコンジュゲートと反応させた有機溶媒又は有機溶媒混合物を単に水の添加で希釈することである。別のアプローチは、有機溶媒中におけるナノ粒子のコロイド懸濁液を水中のコンジュゲートと反応させることである。いずれの場合にも、濾過又はヘキサンのような溶媒での有機抽出或いはこれらの組合せによって未反応の反応体を除去するのが好都合である。溶媒抽出後における水性相中の揮発分は、部分真空の適用によって除去できる。次いで、親水的に修飾されたナノ粒子は30kDaフィルターに対する接線流濾過によって精製できる。
【0016】
親水的に修飾されたナノ粒子は、診断イメージングにおける造影剤として好都合に使用できる。通常のタイプのかかる診断イメージングはMR及びX線イメージングである。いずれの場合にも、−15mV乃至15mVのゼータ電位を有する親水的に修飾されたナノ粒子を使用するのが好都合である。ヒト被験体のインビボイメージングにおける好都合なアプローチは、ナノ粒子を好ましくは安定な等張水性懸濁液として静脈内に投与することである。イメージングがMRによる場合には、ナノ粒子は常磁性(好ましくは超常磁性)の化学種からなるべきであり、さらに好ましくはマグネタイト又はマグヘマイトのように酸化鉄に基づくものであるべきである。イメージングがX線による場合には、ナノ粒子は34を超える原子番号の金属又は亜鉛(好ましくは、金、ハフニウム、モリブデン、銀、タンタル、タングステン又はジルコニウム)の遷移金属化合物からなるべきであり、最も好ましくは酸化タンタルに基づくものであるべきである。特に興味深い実施形態では、親水的に修飾されたナノ粒子は8nm以下のDHを有し、腎臓を通して被験体の身体から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面中では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で示されている。
【図1】図1は、親水性ナノ粒子を製造するための好適なα−ヒドロキシホスホン酸の一般構造式である。
【図2】図2は、親水性ナノ粒子を製造するための特に有利なα−ヒドロキシホスホン酸の構造式(式中、Meはメチル基である。)である。
【図3】図3は、親水性部分Rが結合したα−ヒドロキシホスホン酸に至る合成経路である。
【図4】図4は、図2に示された特に有利なα−ヒドロキシホスホン酸に至る合成経路である。
【図5】図5は、図3に示すようにして合成されるタイプのα−ヒドロキシホスホン酸であって、親水性部分Rが超常磁性酸化鉄SPIOナノ粒子に結合した場合を示す仮説模式図である。
【図6A】図6Aは、造影剤の不使用時における実施例12に係る腫瘍のT1重み付き画像(TE=4.1ms)である。
【図6B】図6Bは、実施例4のナノ粒子造影剤の投与から30分後における実施例12に係る腫瘍のT1重み付き画像(TE=4.1ms)である。
【図6C】図6Cは、図6Aと図6Bとの間の差を示す差マップである。
【図6D】図6Dは、造影剤の不使用時における実施例12に係る腫瘍のT2*重み付き画像(TE=18.4ms)である。
【図6E】図6Eは、実施例4のナノ粒子造影剤の投与から30分後における実施例12に係る腫瘍のT2*重み付き画像(TE=18.4ms)である。
【図6F】図6Fは、図6Dと図6Eとの間の差を示すR2*緩和差マップであって、腫瘍と筋肉組織との明確な区別を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のコンジュゲートは、広義には多種多様の結合及び親水性部分を有するものとして定義される。重要な特徴は、化学的かつ立体的にアクセス可能なα−ヒドロキシホスホン酸の3つのヒドロキシル基を有することである。かかる構造はキラル中心を有するものの、個々の鏡像異性体及び可能なラセミ混合物のすべてが水不溶性ナノ粒子に親水性を付与するために適していると予想される。
【0019】
これらのコンジュゲートは、α−ヒドロキシホスホン酸構造と親水性部分との間に、炭素、窒素、酸素及び硫黄に基づくものをはじめとする周知化学結合のいずれかを含み得る。特に有利な基は、炭化水素、カルボニル、エステル、エーテル、第二級又は第三級アミン、第四級アミン、尿素、カルバメート及びアミドである。コンジュゲートで処理すべきナノ粒子の所期の最終用途は、結合基の選択に影響を与えることがある。例えば、ナノ粒子を特にヒト被験体においてインビボで使用するのであれば、タンパク質のような組織成分との相互作用を生じることがある第四級基のような結合を避けるのが望ましい場合がある。不活性の観点から最も有利な結合基は炭化水素である。
【0020】
親水性部分は、界面活性剤として知られているものを含め、水との良好な適合性を有することが知られている任意の部分であり得る。これらはアニオン性、カチオン性又は非イオン性であり得る。親水性部分は、単糖、二糖又はオリゴ糖のような炭水化物、非炭水化物系モノマーポリアルコール、エチレンオキシド基を有するポリエーテル、ポリビニルアルコールのようなペンダントヒドロキシル基を有する(エチレンオキシド基を有するポリエーテル以外の)非炭水化物系ポリマー、ポリ(エチレンイミン)、脂肪族又は脂環式アミン及びこれらの組合せであり得る。
【0021】
若干の実施形態では、親水性部分はエチレンオキシドに基づいており、ポリ(エチレンオキシド)が特に有利である。特に約5000ダルトン以下の分子量を有するもの、とりわけ約2000ダルトン以下の分子量を有するものが有利である。約350ダルトンの分子量を有するポリ(エチレンオキシド)が特に有利である。
【0022】
親水性部分はまた、1以上の正に帯電した部分、1以上の負に帯電した部分、及び帯電部分の間にあるスペーサー基を有する双性イオンであり得る。本願の目的のためには、正に帯電した部分及び負に帯電した部分の組合せは、生理学的pH値でそれが本質的に正味電荷を示さなければ双性イオンと見なされる。好適な正に帯電した部分には、プロトン化第一級アミン、プロトン化第二級アミン、プロトン化第三級アルキルアミン、第四級アルキルアミン、プロトン化アミジン、プロトン化グアニジン、プロトン化ピリジン、プロトン化ピリミジン、プロトン化ピラジン、プロトン化プリン、プロトン化イミダゾール、プロトン化ピロール又はこれらの組合せがあり、好適な負に帯電した部分には、脱プロトン化カルボン酸、脱プロトン化スルホン酸、脱プロトン化スルフィン酸、脱プロトン化ホスホン酸、脱プロトン化リン酸、脱プロトン化ホスフィン酸又はこれらの組合せがあり、好適なスペーサー基には、非置換及び置換の脂肪族基、脂環式基及びアリール基、ヘテロ脂肪族基、ヘテロアリール基、エーテル、アミド、エステル、カルバメート、尿素又はこれらの組合せがある。一実施形態では、スペーサー基は1〜10個の炭素原子からなる長さの直鎖アルキル基を含んでいる。
【0023】
ナノ粒子の所期の最終用途が正味イオン電荷を有するα−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートが付着した修飾親水性ナノ粒子に適合しているならば、親水性部分は双性イオンの形成に適するものとして上記に記載された正に帯電した部分のいずれか又は負に帯電した部分のいずれかであり得る。
【0024】
コンジュゲートで処理すべきナノ粒子の所期の最終用途は、親水性部分の選択に影響を与えることがある。例えば、ナノ粒子を特にヒト被験体においてインビボで使用するのであれば、タンパク質のような組織成分との相互作用を生じることがあるイオン基のような親水性部分を避けるのが望ましい場合がある。インビボ用途のためには、本質的に正味電荷をもたない親水性部分(例えば、双性イオン及びエチレンオキシド単位を有するポリエーテル)が特に有利である。ヒト被験体で使用するためには、安全性評価のため容易かつ再現可能に特性決定される親水性部分(例えば、モノマー部分)が特に好都合である。特に好都合な親水性部分は4−ピペラジンカルボン酸に基づくものであって、これらはモノマーであると共に双性イオンとして正味電荷を有していない。細胞培養物のインビトロ接種のような、毒性があまり問題にならない用途のためには、ポリ(エチレン)イミンが適当な親水性部分であり得る。
【0025】
特に好適な双性イオンは、2008年12月29日に提出された米国特許出願第12/344,604号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。これらには、カチオン性窒素と、カルボン酸、リン酸又はスルホン酸に基づくアニオン性基とを含む親水性部分、例えばN,N−ジメチル−−3−スルホ−N−(3−プロピル)プロパン−1−アミニウム、3−(メチル)プロピル)アミノ)プロパン−1−スルホン酸、3−(プロピルアミノ)プロパン−1−スルホン酸、2−(エトキシ(ヒドロキシ)ホスホリルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアミニウム、2−エチル(ヒドロキシ)ホスホリルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアミニウム、N,N,N−トリメチル−3−(N−プロピオニルスルファモイル)プロパン−1−アミニウム、N−((2H−テトラゾール−5−イル)メチル)−N,N−ジメチル−プロパン−1−アミニウム、N−(2−カルボキシエチル)−N,N−ジメチル−プロパン−1−アミニウム、3−(メチルプロピル)アミノ)プロパン酸、3−(プロピルアミノ)プロパン酸、N−(カルボキシメチル)−N,N−ジメチル−プロパン−1−アミニウム、2−(メチルアミノ)酢酸、2−(プロピルアミノ)酢酸、2−(4−プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)酢酸、3−(4−プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)プロパン酸、2−(メチル(2−プロピルウレイド)エチル)アミノ)酢酸及び2−(2−(プロピルウレイド)エチル)アミノ酢酸がある。
【0026】
好適な親水性ポリエーテルに基づく親水性部分は、1999年6月29日に発行された米国特許第5,916,539号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。これらには、アミノ及びヒドロキシルを含む各種の末端基を有する様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)並びにポリプロピレングリコール(PPG)とのコポリマーがある。
【0027】
コンジュゲートは、好ましくは、金属ベースのナノ粒子1モルに対してコンジュゲート2モルの比率でナノ粒子と反応させた場合、ナノ粒子が安定な水性懸濁液を形成し得るのに十分な親水性を有している。これに関して述べれば、ナノ粒子は通例は遷移金属化合物(例えば、酸化物)又は遷移金属自体に基づいている。反応比率は、元素態金属のモル数を用いて規定するのが好都合である。これは、有機溶媒中におけるナノ粒子の出発懸濁液の元素分析で容易に求めることができる。ナノ粒子の化学構成及び処理前の平均粒度を知れば、ナノ粒子当たりのコンジュゲートの量を概算で求めることができる。コンジュゲートは、この比率で処理された15nm未満の酸化鉄又は酸化タンタルナノ粒子に、等容のn−オクタノール及び0.1M MOPS緩衝液(pH7.0)の間における分配係数の対数に関して1未満の値を示すのに十分な親水性を与えるに足るだけの親水性を有することが特に好都合である。
【0028】
α−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートが付着した修飾親水性ナノ粒子は、接線流濾過及び室温で1週間の貯蔵後に150mM NaCl水中での動的光散乱(DLS)によって測定した場合に流体力学的直径(DH)の実質的変化を示さない安定な水性コロイド懸濁液を形成するのに十分な親水性を有することが特に有利である。
【0029】
コンジュゲートで処理すべきナノ粒子は、コンジュゲートのα−ヒドロキシホスホン酸部分が付着する500nm以下の粒子に形成できる任意の水不溶性材料からなり得る。MR又はX線イメージングにおける造影剤として有用であるナノ粒子を使用することが有利である。しかし、遺伝子のトランスフェクション用細胞培養物のインフュージョンのような他の最終用途のためのナノ粒子もまた有利である。
【0030】
MRI造影剤として使用するためには、ナノ粒子の基材は常磁性の金属又はその化合物とすべきであり、超常磁性のものが特に有利である。これらの金属は、マンガンで始まって亜鉛で終わる元素周期表のIII周期の遷移金属から得るのが好都合である。特に興味深い材料群は酸化鉄に基づくものである。特に好都合な材料は、SPIOとして知られるものである。これらの材料は、一般式[Fe2+O3]x[Fe2+O3(M2+O)]1-x(式中、1≧x≧0)を有している。M2+は、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、マグネシウム、銅、亜鉛又はこれらの組合せのような二価金属イオンであり得る。金属イオン(M2+)が第一鉄イオン(Fe2+)であって、x=0の場合、材料はマグネタイト(Fe3O4)であり、x=1の場合、材料はマグヘマイト(γ−Fe2O3)である。
【0031】
一般に超常磁性は、不対スピンの結晶含有領域が磁区といわれる熱力学的に独立した単一ドメイン粒子と見なし得る程度に大きい場合に生じる。これらの磁区は、それの個々の不対電子の和より大きい正味の磁気双極子を示す。磁場が印加されていなければ、すべての磁区がランダムに配向していて正味の磁化はない。外部磁場の印加はすべての磁区の双極子モーメントを再配向させ、その結果として正味の磁気モーメントが生じる。若干の実施形態では、これらの材料は透過型電子顕微鏡(TEM)分析で示されるようにスピネル型結晶構造を示す。
【0032】
X線造影剤として使用するためには、ナノ粒子の基材は、生物において通例見出される物質より実質的に大きい放射線不透過性の金属又はその化合物とすべきである。約50nMの濃度の場合、34以上の有効原子番号を有する材料を使用するのが好都合である。かかる材料は、特に有利な最小の増強である約30ハウンスフィールド単位(HU)以上の適切なコントラスト増強を生み出す可能性がある。このような特性を与え得る遷移金属元素の例には、タングステン、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、モリブデン、銀及び亜鉛がある。酸化タンタルは、X線イメージング用途で使用するのに適したコア組成物の1つの具体例であ。特に有利なのは、約100〜約5000ハウンスフィールド単位の範囲内のCT信号を生み出す材料である。
【0033】
α−ヒドロキシホスホン酸が付着した修飾親水性ナノ粒子は、診断イメージングにおける造影剤として使用できる。かかる用途では、これらのナノ粒子は被験体(若干の実施形態では、哺乳動物被験体)に投与され、次いで被験体はイメージングに付される。これらのナノ粒子はMR及びX線イメージングにおいて特別の有用性を有するが、超音波又は放射性トレーサーイメージングにおいても造影剤として有用である。
【0034】
特に哺乳動物被験体、さらにはヒト被験体の診断イメージングで使用する場合、α−ヒドロキシホスホン酸が付着した修飾親水性ナノ粒子は、通例は1種以上の賦形剤を含んでも含まなくてもよい薬学的に許容されるキャリヤー中に取り込まれる。投与が注射(特に非経口注射)による場合には、キャリヤーは通例、約150mMのNaCl、5%デキストロース又はこれらの組合せの添加によって等張性にした水性媒体である。それはまた、通例、約7.3〜7.4の生理的pHを有する。投与は、脈管内(IM)、皮下(SQ)又は最も一般には静脈内(IV)に行うことができる。しかし、投与はまた、被験体の血液又は組織にナノ粒子をゆっくりと放出するデポの移植によって行うこともできる。
【0035】
別法として、投与は胃腸管のイメージングのため経口摂取によって行うこともでき、或いは肺及び気道のイメージングのため吸入によって行うこともできる。
【0036】
ヒト被験体への投与、特にIV投与では、α−ヒドロキシホスホン酸が付着した修飾親水性ナノ粒子は使用する量で無毒であり、細菌やウイルスのようないかなる感染因子も含まず、またいかなる発熱原も含まないことが要求される。したがって、これらのナノ粒子は所要の精製操作に対して安定であり、親水性の低下を受けないことが必要である。
【0037】
これらのナノ粒子は、適切な重量オスモル濃度及びpHを有する安定な水性コロイド懸濁液として、希釈のために適した濃縮水性コロイド懸濁液として、或いは再構成のために適した粉末(例えば、凍結乾燥によって得られる粉末)として、投与の現場に送達し得る。
【0038】
実施例1
PEG−350コンジュゲートの合成
PEG−350モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒドの合成。CH2Cl2(98mL)に溶解したPEG−350モノ(メチルエーテル)(3.438g、9.82mmol)を含む溶液にDess−Martin Periodinane(5.00g、11.79mmol)を添加し、得られた溶液を室温で20時間撹拌した。反応中に微細な白色沈殿が生じたが、反応終了時にこれをセライトパッドでの濾過によって除去した。真空中で濾液から溶媒を除去したところ、黄色の油状物中に懸濁された白色の固体が残った。固体をジエチルエーテルでトリチュレートし、固体をセライトパッドでの濾過によって除去した。真空中で濾液から溶媒を除去したところ、生成物PEG−350モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒド(3.42g、100%)が黄色の油状物として残った。1H NMR(CDCl3)δ 9.73(t,J=4Hz,1H),4.16(d,J=4Hz,2H),7.65(m,24H),3.38(s,3H)ppm。IR(neat)2873,1732,1455,1350,1109,1040,948,851,749cm-1。
【0039】
ジエチルα−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホネートの合成。テトラヒドロフラン(53mL)に溶解したPEG−350モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒド(3.71g、10.7mmol)を含む溶液にジエチルホスフィット(1.77g、12.8mmol)を添加した。溶液を0℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(1.94g、12.8mmol)を添加した。0℃で10分間撹拌した後、rxnを室温に加温し、さらに24時間撹拌した。真空中で溶媒を除去し、残った暗黄色の油状物をカラムクロマトグラフィー(100%CH2Cl2〜15%MeOH/85%CH2Cl2)によって精製することで、3.30g(64%)の所望生成物ジエチルα−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホネートを黄色の油状物として得た。1H NMR(CDCl3)δ 4.19(m,6H),3.65(m,24H),3.38(s,3H),1.34(m,6H)ppm。31P NMR(CDCl3)δ 23.1ppm。IR(neat)3343,2872,1725,1453,1248,1105,965,850,791cm-1。
【0040】
α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホン酸の合成。塩化メチレン(74mL)に溶解したジエチルα−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホネート(3.61g、7.43mmol)を含む溶液にトリメチルシリルブロミド(3.41g、22.3mmol)を添加し、得られた溶液を室温で2時間撹拌した。真空中で溶媒を除去したところ、褐色の油状物が残った。得られた油状物をアセトン(74mL)及び水(0.5mL)に溶解し、得られた溶液を室温で1.5時間撹拌した。次いで、真空中で溶媒を除去したところ、所望生成物α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホン酸(2.66g、84%)が金色の油状物として残った。1H NMR(CDCl3)δ 3.65(m,24H),3.38(s,3H)。31P NMR(CDCl3)δ 24.0ppm。IR(neat)3460,2870,1727,1456,1351,945,849cm-1。
【0041】
実施例2
PEG−1900コンジュゲートの合成
PEG−1900モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒドの合成。CH2Cl2(86mL)に溶解したPEG−1900モノ(メチルエーテル)(16.32g、8.60mmol)を含む溶液にDess−Martin Periodinane(4.00g、9.44mmol)を添加し、得られた溶液を室温で20時間撹拌した。反応中に微細な白色沈殿が生じたが、反応終了時にこれをセライトパッドでの濾過によって除去した。真空中で濾液から溶媒を除去したところ、白色の固体が残った。これをTHF/ヘキサンから再結晶することで、所望生成物(11.6g、71%)を白色の固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 9.74(t,J=1Hz,1H),4.17(d,J=1Hz,2H),3.83(m,2H),3.65(m,170H),3.39(s,3H)。
【0042】
ジエチルα−ヒドロキシPEG−1900モノ(メチルエーテル)ホスホネートの合成。テトラヒドロフラン(57mL)に溶解したPEG−1900モノ(メチルエーテル)アセトアルデヒド(10.74g、5.66mmol)を含む溶液に、ジエチルホスフィット(0.938g、6.79mmol)を添加し、次いで1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(1.03g、6.79mmol)を添加した。反応物を室温で72時間撹拌した。真空中で溶媒を除去し、残った橙黄色の固体をTHF/ヘキサンから再結晶することで、所望生成物(11.08g、96%)をオフホワイトの固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 4.18(m,4H),3.64(m,172H),3.38(s,3H)。
【0043】
α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホン酸の合成。塩化メチレン(54mL)に溶解したジエチルα−ヒドロキシPEG−1900モノ(メチルエーテル)ホスホネート(11.08g、5.44mmol)を含む溶液にトリメチルシリルブロミド(2.49g、16.3mmol)を添加し、得られた溶液を室温で3時間撹拌した。真空中で溶媒を除去したところ、褐色の油状物が残った。得られた油状物をアセトン(54mL)及び水(0.5mL)に溶解し、得られた溶液を室温で16時間撹拌した。次いで、真空中で溶媒を除去し、残った橙色の固体をTHF/ヘキサンから再結晶することで、所望生成物(10.77g、86%)をオフホワイトの固体として得た。1H NMR(CDCl3)δ 4.12(m,2H),3.65(m,170H),3.38(s,3H)。
【0044】
比較例1
親水性ホスフェートの合成
ジフェニルPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスフェートの合成。CH2Cl2(80mL)に溶解したPEG−350モノ(メチルエーテル)(8.54g、24.4mmol)を含む溶液に、トリエチルアミン(3.68g、36.6mmol)を添加し、次いで4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.298g、2.44mmol)を添加した。得られた溶液を0℃に冷却し、ジフェニルクロロホスフェート(7.87g、29.3mmol)を滴下し、反応物を0℃で10分間撹拌した。次いで、反応物を室温に加温し、さらに16時間撹拌した。反応物を10%HCl(80mL)の添加で奪活し、得られた層を分離した。有機層を水(80mL)及びブライン(80mL)で洗浄し、無水物MgSO4上で乾燥した。濾過し、真空中で溶媒を除去したところ、所望生成物(14.2g、100%)が金色の油状物として残った。1H NMR(CDCl3)δ 7.34(m,4H),7.22(m,6H),4.38(m,2H),3.73(m,2H),3.64(m,24H),3.54(m,2H),3.38(s,3H)。
【0045】
PEG−350モノ(メチルエーテル)リン酸の合成。酢酸(108mL)に溶解したジフェニルPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスフェート(14.2g、24.4mmol)を含む溶液に酸化白金(IV)水和物(200mg)を添加し、得られた懸濁液を50℃に加熱し、水素の取込みが止むまでH2雰囲気下に置いた。反応物をセライトパッドで濾過して触媒を除去し、真空中で溶媒を除去したところ、所望生成物(10.49g、100%)が透明な黄色油状物として残った。1H NMR(CDCl3)δ 4.20(m,2H),3.67(m,24H),3.56(m,2H),3.39(s,3H)。
【0046】
実施例3
超常磁性酸化鉄(SPIO)ナノ粒子の合成。100mL三つ口丸底フラスコにFe(acac)3(0.706g、2.0mmol)及び無水ベンジルアルコール(20mL)を仕込んだ。得られた溶液を窒素でスパージし、窒素雰囲気下において165℃で4時間加熱した。次いで、得られた(DLSで測定して)5nm酸化鉄粒子のコロイド懸濁液を室温に冷却し、その温度で貯蔵した。
【0047】
実施例4
α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスホネートでコートした超常磁性酸化鉄ナノ粒子の合成。実施例3の超常磁性酸化鉄ナノ粒子をTHF中に懸濁した1mg Fe/mLのコロイド懸濁液に、(Fe 1モル当たりコンジュゲート1モルの比率で)実施例1のα−ヒドロキシホスホン酸コンジュゲートを添加し、得られた懸濁液を50℃で16時間加熱した。次いで、反応物を室温に冷却し、水で希釈し、褐色の水溶液をヘキサで3回洗浄した。水性層中に残留する揮発分を真空中で除去し、得られたナノ粒子を、接線流濾過を使用しながら30kDa分子カットオフフィルターに対してH2Oで洗浄することで精製した。
【0048】
実施例5
α−ヒドロキシPEG−1900モノ(メチルエーテル)ホスホネートでコートした超常磁性酸化鉄ナノ粒子の合成。実施例1のコンジュゲートの代わりに実施例2のコンジュゲートを用いて実施例4を繰り返した。
【0049】
比較例2
α−ヒドロキシPEG−350モノ(メチルエーテル)ホスフェートでコートした超常磁性酸化鉄ナノ粒子の合成。比較例1のコンジュゲートを用いて実施例4を繰り返した。
【0050】
実施例6
5−ブロモ−1−ペンタナールの合成。250mL丸底フラスコ内で、塩化オキサリル(2.42mL、0.022mol)を無水ジクロロメタン(40mL)と混合した。フラスコを窒素でブランケットし、溶液をドライアイス/アセトン浴中で−78℃に冷却した。反応混合物を撹拌し、無水ジメチルスルホキシド(3.4mL、0.044mol)をフラスコにゆっくりと添加し、次いで5−ブロモ−1−ペンタノール(3.34g、0.020mol)を添加し、反応混合物を−78℃で15分間撹拌した。トリエチルアミン(14.0mL、0.1mol)を反応混合物にゆっくりと添加した。トリエチルアミンの添加が完了した後、反応物を−78℃で5分間撹拌した。反応物をドライアイス/アセトン浴から取り出し、室温に加温し、室温で18時間撹拌した。
【0051】
水(100mL)を反応混合物に添加した。二相混合物を500mL分液漏斗内で激しく振盪した。水性層を除去し、ジクロロメタン(100mL)で抽出した。このジクロロメタンを反応混合物からのジクロロメタンと合わせた。合わせたジクロロメタン溶液を各100mLの1%HCl(aq)、水、飽和NaHCO3(aq)及び飽和NaCl(aq)で順次に洗浄した。ジクロロメタン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタン溶液を濾過によって回収した。真空下で溶媒を除去したところ、黄色の液体(1.80g)が残った。主生成物は5−ブロモ−1−ペンタナールであることが1H NMRによって確認された。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 9.81(m,1H),3.43(m,3H),2.50(m,2H),2.0−1.4(m,8H)。それ以上の精製なしに反応生成物を実施例7に供した。
【0052】
実施例7
ジエチル(5−ブロモ−1−ヒドロキシ−ペンチル)ホスホネートの合成。250mL丸底フラスコ内で、5−ブロモペンタナール(1.64g、0.010mol)をジエチルエーテル(15mL)に溶解した。反応物を窒素でブランケットした。過塩素酸リチウム(7.92g、0.075mol)を反応物に添加し、反応溶液を氷浴中で0℃に冷却した。クロロトリメチルシラン(0.631mL、0.010mol)をフラスコに添加し、次いでトリメチルホスフィット(2.1mL、0.012mol)を添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した。
【0053】
室温で18時間後、水(40mL)を反応物に添加し、次いでジクロロメタン(40mL)を添加した。有機層を分液漏斗に移し、水(40mL)及びブライン(40mL)で順次に洗浄した。塩化メチレン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して塩化メチレン溶液を回収した。真空下で溶媒を除去したところ、黄色の油状物(3.01g)が残った。油状物を1H NMR及び31P NMRによって特性決定し、主生成物はジエチル(5−ブロモ−1−ヒドロキシ−ペンチル)ホスホネートであることが確認された。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 4.25−4.00(m,4H),3.00−3.43(m,2H),1.78−1.95(m,2H),1.78−1.61(m,3H),1.61−1.41(m,2H),1.40−1.25(m,6H)。31P NMR(600MHz,CDCl3)δ 26.5(s,1P),24.2−24.7(m,0.3P)。それ以上の精製なしに反応生成物を実施例8に供した。
【0054】
実施例8
ジエチル5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホネートの合成。300mL丸底フラスコ内で、ジエチル(5−ブロモ−1−ヒドロキシ−ペンチル)ホスホネート(3.02g、0.0099mol)を無水トルエン(100mL)に溶解した。トリエチルアミン(2.08mL、0.015mol)を反応混合物に添加し、次いでエチルイソニペコテート(1.84mL、0.012mol)を添加した。混合物を18時間加熱還流した。真空下で溶媒を除去したところ、橙色のガムが残った。ガムをジクロロメタン(100mL)に溶解し、飽和NaHCO3水溶液(100mL)及びブライン(100mL)で順次に洗浄した。塩化メチレン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過によって回収した。真空下で溶媒を除去したところ、橙色の液体(1.70g)が残った。
【0055】
橙色の液体をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。シリカゲルカラム(40g)を、100%ジクロロメタンで開始し、30分かけてジクロロメタン中20体積%メタノールまで変化する溶媒勾配を用いて溶出した。生成物を含む画分を合わせ、真空下で溶媒を除去したところ、黄色の液体(0.66g)が残った。黄色の液体を1H NMRによって特性決定し、主生成物はジエチル5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホネートであることが確認された。1H NMR(400mHz,CDCl3)δ 4.9−4.5(s,1H),4.2−4(m,5H),3.8−3.7(m,1H),2.9−2.7(m,2H),2.4−2.1(m,3H),2.1−1.9(m,2H),1.9−1.8(m,2H),1.8−1.3(m,8H),1.3−1.2(m,5H),1.2−1.1(m,3H)。それ以上の精製なしに反応生成物を実施例9に供した。
【0056】
実施例9
5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホン酸の合成。100mLフラスコ内で、ジエチル5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホネート(0.66g、0.0017mol)をジクロロメタン(25mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(0.69mL、0.0052mol)を反応混合物に添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。一晩の撹拌後、真空下で溶媒を除去したところ、橙色のガムが残った。ガムをアセトン(20mL)に溶解した。水(0.4mL)を添加した。ガムが沈殿した。真空下で溶媒を除去したところ、赤色のガム(0.6g)が残った。ガムを1H NMRによって特性決定し、生成物は5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホン酸であることが確認された。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ 4.3−4.1(m,2H),3.9−3.4(m,3H),3.4−2.5(m,7H),2.5−1.35(m,11H),1.35−1.2(m,3H)。
【0057】
実施例10
5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホネートでコートした酸化タンタルナノ粒子の合成。イソ酪酸(0.242g、2.75mmol)及び水(0.08g、4.44mmol)を含む無水メタノール(17mL)の溶液を、N2でスパージすることで40分間ガス抜きした。これにTa2(OEt)2(1g、2.46mmol)を滴下し、反応混合物をN2雰囲気下で5時間撹拌することで、3〜4nmナノ粒子の懸濁液を得た。5−(4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イル)−1−ヒドロキシペンチルホスホン酸(0.088g、0.205mmol)をメタノール(0.5mL)に溶解した溶液を酸化タンタルナノ粒子懸濁液(1mL)に滴下し、N2下において70℃で一晩加熱した。室温に冷却した後、水(約3mL)を反応混合物に滴下した。ロータリーエバポレーター上においてメタノールを減圧下で蒸発させて除去した後、1M NH4OH(0.33mL)を添加し、反応物を50℃で一晩撹拌した。3500Da分子量カットオフ再生セルロース膜を用いて、反応混合物を水(3×2L)に対して24時間透析した。DLSによれば、粒度は水中で7nmであると確認された。
【0058】
実施例11
SPIOナノ粒子のコロイド懸濁液の特性決定。実施例4及び実施例5並びに比較例2において接線流濾過の結果として得られたコロイド懸濁液を、安定性及びゼータ電位に関して評価した。
【0059】
150mM NaCl水溶液を懸濁媒体として使用しながら、動的光散乱(DLS)によって流体力学的直径(DH)を測定した。接線流濾過で精製したSPIO懸濁液を150mM NaCl水溶液で希釈し、100nmフィルターに通してダストを除去した後、Brookhaven ZetaPALSを用いてDLS分析を行った。希釈は、DLS測定中に最小で毎秒20000カウントを与えるように実施した。測定は、修飾ナノ粒子を製造した直後及び室温で2週間貯蔵した後に行った。貯蔵後におけるDHの顕著な増大は、ナノ粒子が凝集し、したがってそのコロイド懸濁液が安定でないことを表していた。
【0060】
接線流濾過で精製したSPIO懸濁液を10mM NaClで14×に希釈し、希釈したSPIO溶液を100nmフィルターに通してダストを除去した後、Brookhaven ZetaPALSを用いてゼータ電位を測定した。3種のコロイド懸濁液のすべてに関し、ゼータ電位は一般に中性として認められている±15mVの範囲内にあった。
【0061】
結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
実施例12
MRIによるインビボ腫瘍のイメージング。動物に関係するすべての手続きは、GE Global Research Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコルの下で完了した。雌のFischer 344ラット(約150g)において、0.1mLのハンクス平衡塩類溶液中の2×106 Mat B III細胞(ATCC# CRL1666、ATCC(マナサス、米国ヴァージニア州))を皮下注射することで腫瘍を誘導した。注射部位は肩胛骨の間の背中に位置していた。移植から9日後、腫瘍が直径約1cmになった時に腫瘍のイメージングを行った。
【0063】
イメージングは、注文製造の約6cmソレノイド受信RFコイルを用いて臨床用の3T GE MR750スキャナー上で行った。イメージングの準備のため、それぞれ75mg/kg及び5mg/kgの用量でケタミン及びジアゼパムをIP注射することで麻酔した。固定後、24ゲージのカテーテルをを側尾静脈内に配置し、食塩水でプライムしたマイクロボアカテーテルライン延長部及びストップコックに連結した。カテーテル、ライン及びストップコックの死容積は約0.5mLであった。次いで、前処理した動物をRFコイル内に配置し、スキャナーのボア内で位置決めした。注射前画像セットを取得し、次いでテーブル又は動物を移動させることなしにPEG−350 α−ヒドロキシホスホネートでコートした超常磁性酸化鉄ナノ粒子をストップコック経由で注射し、次いで食塩水(約0.8mL)でフラッシュした。注射の直後に(注射後約30秒から始めて)、約30分の動的取得時間を通じて画像セットを収集し、約16のポストコントラスト時点の収集が得られた。注射に関しては、SPIO造影剤を10mg Fe/mLの濃度で生理食塩水中に懸濁し、注射前に滅菌濾過し、内毒素の存在について試験した。造影剤は3mg Fe/kg体重の用量で投与した。
【0064】
10のエコー時間での画像収集を可能にする3D高速勾配エコーパルスシーケンスを使用した。グラフィカルプレスクリプションインターフェースにより、腫瘍がトランスアキシャルスライス内で中央に位置しかつカバー範囲が深さ方向で腫瘍の大部分を含むようにイメージングスラブを位置決めした。バルスシーケンスパラメーターは次の通りであった。パルスシーケンス:3D ME fGRE、TE:4.1〜68の範囲にわたり、スペーシングは7.1ms、TR:75.5ms、フリップ角:25度、帯域幅:62.5MHz、マトリクス:256×256、スライス厚さ:0.9mm、視野:8cmであって、0.31×0.31×0.9のボクセル寸法を生じる。シーケンス取得時間は約2分であった。
【0065】
IDLプラットホーム(IDL v.6.3、ITT Corp.(ボールダー、米国コロラド州))上に構築されたカスタムソフトウェアツール(CineTool v8.0.2、GE Healthcare社)を用いてイメージングデータセットを解析した。簡単に述べれば、かかる画像解析ツールは、注射前系列上に3D検査対象領域(ROI)を手動描画し、続いてすべての時点で描画されたROI内のあらゆるボクセルに関する指数回帰を行ってT2*時間定数を計算することを可能にした。代表的な画像及び差マップを図6に示す。
【0066】
以上、本明細書中には本発明の若干の特徴のみを例示し説明してきたが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の真の技術思想に含まれるこのような修正及び変更のすべてを包含することを理解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のα−ヒドロキシホスホネート部分が付着した水不溶性ナノ粒子を含む組成物。
【請求項2】
1以上のα−ヒドロキシホスホネート部分が次の式を有する、請求項1記載の組成物。
【化1】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。
【請求項3】
α−ヒドロキシホスホネートが
【化2】
及び
【化3】
からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
哺乳動物被験体への注射に適した診断剤組成物であって、
次の式を有するα−ヒドロキシホスホネート部分が付着した水不溶性ナノ粒子、及び
薬学的に許容されるキャリヤー又は賦形剤
を含む診断剤組成物。
【化4】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。
【請求項5】
ヒト被験体への注射に適している、請求項4記載の診断剤組成物。
【請求項6】
α−ヒドロキシホスホネートが
【化5】
及び
【化6】
からなる群から選択される、請求項4記載の診断剤組成物。
【請求項7】
α−ヒドロキシホスホネート部分が付着した水不溶性ナノ粒子を診断イメージングで利用する方法であって、
a.前記ナノ粒子を被験体に投与する段階、及び
b.前記ナノ粒子が造影剤として作用する診断イメージングに前記被験体を付す段階
を含む方法。
【請求項8】
α−ヒドロキシホスホネート部分が次の式を有する、請求項7記載の方法。
【化7】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。
【請求項9】
α−ヒドロキシホスホネート部分が付着した水不溶性ナノ粒子の製造方法であって、
a.懸濁剤中におけるナノ粒子の懸濁液を用意する段階、及び
b.前記懸濁液を前記α−ヒドロキシホスホネート部分に接触させる段階
を含む方法。
【請求項10】
α−ヒドロキシホスホネート部分が次の式を有する、請求項9記載の方法。
【化8】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。
【請求項1】
1以上のα−ヒドロキシホスホネート部分が付着した水不溶性ナノ粒子を含む組成物。
【請求項2】
1以上のα−ヒドロキシホスホネート部分が次の式を有する、請求項1記載の組成物。
【化1】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。
【請求項3】
α−ヒドロキシホスホネートが
【化2】
及び
【化3】
からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
哺乳動物被験体への注射に適した診断剤組成物であって、
次の式を有するα−ヒドロキシホスホネート部分が付着した水不溶性ナノ粒子、及び
薬学的に許容されるキャリヤー又は賦形剤
を含む診断剤組成物。
【化4】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。
【請求項5】
ヒト被験体への注射に適している、請求項4記載の診断剤組成物。
【請求項6】
α−ヒドロキシホスホネートが
【化5】
及び
【化6】
からなる群から選択される、請求項4記載の診断剤組成物。
【請求項7】
α−ヒドロキシホスホネート部分が付着した水不溶性ナノ粒子を診断イメージングで利用する方法であって、
a.前記ナノ粒子を被験体に投与する段階、及び
b.前記ナノ粒子が造影剤として作用する診断イメージングに前記被験体を付す段階
を含む方法。
【請求項8】
α−ヒドロキシホスホネート部分が次の式を有する、請求項7記載の方法。
【化7】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。
【請求項9】
α−ヒドロキシホスホネート部分が付着した水不溶性ナノ粒子の製造方法であって、
a.懸濁剤中におけるナノ粒子の懸濁液を用意する段階、及び
b.前記懸濁液を前記α−ヒドロキシホスホネート部分に接触させる段階
を含む方法。
【請求項10】
α−ヒドロキシホスホネート部分が次の式を有する、請求項9記載の方法。
【化8】
式中、Sはスペーサーであり、LはSとRとの間の結合であり、Rは親水性部分であり、m及びpは1〜5であり、n及びoは0〜5である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【公表番号】特表2013−509381(P2013−509381A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535840(P2012−535840)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066429
【国際公開番号】WO2011/051422
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066429
【国際公開番号】WO2011/051422
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
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