説明

親水性コーティング、物品、コーティング組成物及び方法

それでコーティングされた基材に曇り防止特性、反射防止特性、洗浄容易特性及び/又は静電気防止特性を付与するコーティング組成物。このコーティング組成物は、アミン基及び/又は保護アミン基で、並びに、アミン反応性基で、官能化されたナノ粒子を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、中国特許出願第200910151003.4号(2009年7月3日出願)及び米国特許出願第61/236,672号(2009年8月25日出願)の優先権を主張し、それらの内容を本明細書に参考として組み込む。
【背景技術】
【0002】
水を散らし、それにより物品の表面上に水滴が形成されるのを防ぐことができる表面を有する物品が、種々の用途にとって望ましい。一般に、曇りが生じるのは、高湿高温の状況下又は大きな温度差及び湿度差がある境界面で起こる。
【0003】
例えば、温室の窓などの霧又は湿潤環境で用いられる透明なプラスチックは、光透過率を低下させる光反射水滴又は曇りの形成を避けなくてはならない。また、ソーラーパネル、目の保護具(ゴーグル、フェイスシールド、ヘルメットなど)、眼科用レンズ、建築用グレージング、装飾的ガラスフレーム、自動車の窓及びフロントガラスは、物品の表面に水蒸気曇りが生じることによって不利な影響を受け得る。
【0004】
これらの材料上で親水性コーティングにより提供される水分散表面は、これらの透明性を維持するのを助け、望ましくない縞の生成を最小限にする。界面活性剤を組み込むものなどの、表面が「曇り一掃(fog up)」(すなわち、曇り防止コーティング)する傾向を低下することが報告されている親水性コーティングは既知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基材表面に親水性を付与するコーティング組成物に対する必要性は依然として存在し、ここで、このような親水性表面は、それでコーティングされた基材について、曇り防止特性、反射防止特性、洗浄容易特性及び静電気防止特性のうちの少なくとも1つにおいて、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性のうちの少なくとも1つをそれでコーティングされた基材に付与する水性コーティング組成物、並びに、コーティング方法及びコーティングされた物品に関する。このコーティング組成物は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ並びにアミン反応性基(例えば、エポキシ基、α,β−不飽和基)で官能化されたナノ粒子(好ましくはシリカナノ粒子)を利用する。好ましくは、このアミン及び/又は保護アミン基は、ナノ粒子の一部分又はセットに共有結合し、アミン反応性基はナノ粒子の異なる部分又はセットに共有結合している。より好ましくは、本発明のコーティング組成物は、アミン基で官能化されたナノ粒子(好ましくはシリカナノ粒子)の一部分又はセットと、エポキシ基で官能化されたナノ粒子の第二の部分又はセットと、を含む混合物を利用する。このコーティング組成物は、ソーラーパネル、並びに、フェイスマスク、シールド及び保護ガラスなどの広範囲の人身保護具に、特に有用である。
【0007】
一実施形態では、本発明は、基材表面改質方法を提供する。本方法は、コーティング組成物を基材に適用することと、基材上に親水性コーティングを形成するためにコーティング組成物を乾燥させることと、を含み、ここで、コーティングされた基材は、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す。このコーティング組成物は、共有結合を介して表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、この官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ;アミン反応性基;及び任意の親水基(好ましくはアミン及び/又は保護アミン基はナノ粒子の一部分に共有結合し、アミン反応性基はナノ粒子の異なる部分に共有結合している)を含む)と、任意の界面活性剤と、水及び存在する場合には液体媒質の総重量に基づいて30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質と、を含む。特定の好ましい実施形態では、このコーティング組成物は、共有結合したアミン基を含むナノ粒子の一部分と、共有結合したエポキシ基を含むナノ粒子の異なる部分と、を含む。
【0008】
一実施形態では、本発明は、コーティング組成物を提供する。このコーティング組成物は、ナノ粒子と、任意の界面活性剤と、水及び存在する場合には液体媒質の総重量に基づいて30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質と、を含み、ここで、このコーティング組成物は、それをコーティングし乾燥させた基材に親水性コーティングを提供し、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を有する。このナノ粒子は、共有結合を介して表面に結合した官能基を含み、ここで、この官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ;アミン反応性基;及び任意の親水基を含む。特定の好ましい実施形態では、このコーティング組成物は、共有結合したアミン基を含むナノ粒子の一部分と、共有結合したアミン反応性基を含むナノ粒子の異なる部分と、を含む。
【0009】
一実施形態では、本発明は、基材表面改質のためのキットを提供する。このキットは、共有結合を介して表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、この官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ;任意の親水基を含む)と、任意の界面活性剤と、水(好ましくは水及び存在する場合には液体媒質の総重量に基づいて30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質)と、を含む第一組成物を含む少なくとも1つの容器;並びに、共有結合を介して表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、この官能基は、アミン反応性基;任意の親水基を含む)と、任意の界面活性剤と、水(好ましくは水及び存在する場合には液体媒質の総重量に基づいて30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質)と、を含む第二組成物を含む少なくとも1つの容器、を含み、ここで、このコーティング組成物は組み合わされ、基材に適用され、乾燥させられると、基材上に親水性コーティングを提供し、これは曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す。
【0010】
一実施形態では、本発明は、親水性コーティングでコーティングされた少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を有する基材を含む物品を提供し、ここで、この親水性コーティングは、ナノ粒子に共有結合した官能基の反応により形成された共有化学結合を介して連結した1つ以上のタイプのナノ粒子を含む樹枝状ネットワークを含み、この官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせとアミン反応性基とを含み(好ましくは、反応に先立って、アミン及び/又は保護アミン基はナノ粒子の一部分に共有結合し、アミン反応性基はナノ粒子の別の異なる部分に共有結合している)、コーティングされた基材は、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す。特定の実施形態では、この物品は、人身保護物品である。特定の実施形態では、この物品は、ソーラーパネルである。
【0011】
一実施形態では、本発明は、シリカナノ粒子の水分散体をアミノ基で官能化する方法を提供する。この方法は、負に帯電したシリカナノ粒子を形成するためにシリカナノ粒子の水分散体のpHを少なくとも10.5に調整することと、負に帯電したシリカナノ粒子を、アルコキシシリル末端を含むアルコキシアミノアルキル置換有機シラン化合物と組み合わせることと、アルコキシアミノアルキル置換有機シラン化合物のアルコキシシリル末端を負に帯電したシリカ表面と優先的に反応させるのに有効な時間にわたって、アルコキシアミノアルキル置換有機シラン化合物を負に帯電したシリカナノ粒子と反応させておくことと、を含む。
【0012】
ここで、好ましくは、このナノ粒子は、シリカナノ粒子を含む。好ましくは、ナノ粒子は、60nm以下の平均粒径を有する。
【0013】
特定の実施形態では、親水性は、ナノ粒子の少なくとも一部分が、共有結合した親水基を持つものを含む場合、強化することができる。このような親水基は、カルボキシレート基、複数のカルボキシレート基を持つ構造単位、硫酸半エステル基、複数の硫酸半エステル基を持つ構造単位、スルホン酸基、複数のスルホン酸基を持つ構造単位、リン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基、複数のリン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基を持つ構造単位、ホスホン酸基、複数のホスホン酸基を持つ構造単位、これらの酸並びにこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。別の方法としては又は追加的には、このような親水基は、四級アンモニウム基、四級ホスホニウム基、三級スルホニウム基、ヒドロキシル基、ポリエチレンオキシド基、これらの組み合わせ及びこれらの複数を持つ構造単位からなる群から選択することができる。特定の実施形態では、親水基は、帯電している。
【0014】
定義
本明細書において、「ナノ粒子」は、ナノメートルサイズの粒子として定義され、好ましくは平均粒径が60ナノメートル(nm)以下である。本明細書で使用するとき、「粒度」及び「粒径」は同一の意味を有し、粒子(又はその凝集体)の最大寸法を指すのに使用される。この文脈において、「凝集」は、電荷又は極性によってまとまることができ、またより小さな構成要素に分解することができる粒子間の、弱い会合を指す。
【0015】
ナノ粒子に共有結合した「アミン反応性基」は、水性コーティングの乾燥に適切な条件下でアミン基と共有結合を形成することができる官能基である。
【0016】
「親水基」は、水分散性基、水溶性基、及び/又は、ナノ粒子の表面に親水性をもたらす帯電基を包含する。好ましくは、このような基がナノ粒子に結合する場合には、これらは水中でのナノ粒子の過剰な凝集及び沈殿を低減、好ましくは防止することができ、「水分散性基」と呼ばれる。
【0017】
「帯電基」は、官能基当たり1個以上のイオン化可能基を有する基を指す。
【0018】
「親水性コーティング」は、コーティングの表面が60°未満の静的接触角を有することを意味する。「高親水性コーティング」は、コーティングの表面が30°未満の静的接触角を有することを意味する。好ましくは、超親水性コーティングは、微小な水滴の付着を連続的な膜に拡げることができる「水様」表面を示し、このコーティングの表面は10°未満の接触角を有する。
【0019】
「強化ガラス」は、少なくとも500℃、少なくとも600℃又は少なくとも700℃に等しい温度などの高温にて最長30分、最長20分、最長10分又は最長5分の時間にわたって加熱することと、その表面を急速に冷却することと、を含む強化プロセスにさらされたガラスを意味する。例えば、このガラスは、700〜750℃の範囲の温度にて約2〜5分にわたって加熱し、その後急速冷却することができる。
【0020】
「乾燥した」コーティングは、液体のキャリア(すなわち、液状媒質)を含むコーティング組成物から与えられ、液体キャリアが実質的に、例えば、蒸発などで、完全に除去されたコーティングである。乾燥したコーティングは、溶媒蒸発中の反応性官能基間(例えば、アミン基とエポキシ基)の反応の結果として典型的にはまた「硬化されている」。硬化の速度及び程度は、乾燥プロセス中にコーティング組成物を加熱することにより、向上させることができる。
【0021】
用語「含む」及びその変化形は、これらの用語が説明文及び特許請求の範囲において現れる場合、限定的な意味を有するものではない。
【0022】
語句「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の環境において特定の利益を供し得る発明の実施形態を示す。しかしながら、同じ、又は他の状況下において他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0023】
本明細書で使用されるように、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用される。それゆえに、例えば、「1つの」官能基を備えるナノ粒子とは、ナノ粒子が「1つ以上の」官能基を備えることを意味すると解釈することができる。
【0024】
用語「及び/又は」は、1つ又はすべての列挙した要素/性質のうちの1つ又はすべて、あるいは、列挙した要素/性質のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「又は」は、その内容によって別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む通常の意味で用いられている。
【0026】
また、本明細書における端点による数の範囲の記載には、その範囲に含まれるすべての数が含まれる(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などが含まれる)。
【0027】
上記の本発明の概要は、開示される実施形態のそれぞれ、又は本発明のすべての実施の態様を述べることを目的としたものではない。以下の説明文は、実例となる実施形態をより詳細に例示するものである。本出願の複数の箇所において一連の実施例によって指標が与えられるが、各実施例は異なる組み合わせとして使用することができる。それぞれの場合において記載される一覧はあくまで代表的な群として与えられるものであって、排他的な羅列として解釈されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のコーティングを有する透明な基材を含むフェイスシールドを備える呼吸用マスクを示す図。
【図2】本発明のコーティングを有する透明な基材を有するフェイスシールドを備える呼吸マスクの代替的実施形態を示す図。
【図3】透明な基材の外面に本発明のコーティングを有する透明な基材を有する眼鏡を示す図。
【図4】ソーラーパネルを覆う前側基材上に本発明のコーティングを有するソーラーパネルを有するソーラーパネルの略図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、官能化ナノ粒子、特にシリカナノ粒子を含有する水性コーティング組成物、並びに、コーティング方法及びコーティングされた物品に関する。このナノ粒子は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ、並びに、アミン反応性基及び任意の親水基(水状官能基であり、水分散性、水溶性及び/又は帯電基であり得る)で官能化されている。好ましくは、アミン及び/又は保護アミン基はナノ粒子の集合の一部分(すなわち、セット)に共有結合しており、アミン反応性基はナノ粒子の集合の別の異なる部分(すなわち、セット)に共有結合している。特定の好ましい実施形態では、ナノ粒子の一部分は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ(好ましくはアミン基)で官能化されており、ナノ粒子の一部分はエポキシ基で官能化されている。
【0030】
ナノ粒子の集合の特定の部分はコーティング組成物を基材に適用する際には裸の粒子であり得るが、ナノ粒子の大部分、好ましくは大半がそれに共有結合している反応性官能基(例えば、アミン及びエポキシ基)を有することを理解すべきである。また、典型的には本発明のコーティング組成物は、ナノ粒子がアミン及び/又は保護アミン基並びにアミン反応性基で官能化された後に形成される。
【0031】
本発明のコーティング組成物は、それでコーティングされた基材に、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性のうちの少なくとも1つを付与する。これらの特性の1つ以上は、共有化学結合を介してこれらのナノ粒子を一緒に組み立てる/相互接続することを可能にするナノ粒子表面化学物質のデザインからもたらされ、これにより、樹脂状構造を形成し、これはこのような所望される特性の1つ以上を有する親水性コーティングの形成に寄与する。
【0032】
本発明のコーティングは親水性であり、これは、コーティングの表面が60°未満の静的接触角を有することを意味する。本発明の好ましいコーティングは高親水性であり、これは、コーティングの表面が30°未満の静的接触角を有することを意味する。本発明のより好ましいコーティングは超親水性であり、これは、コーティングが、微小な水滴の付着を連続的な膜に拡げることができる「水状」表面を示し、このコーティングの表面は10°未満の接触角を有することを意味する。
【0033】
本発明の特定のコーティング組成物は、コーティングされて乾燥された基材に曇り防止特性をもたらす。物品がヒトの呼気に直接繰り返し曝露された後及び/又は「蒸気」ジェット上で物品を保持した後及び/又は15℃〜20℃に保たれた水の容器の上に存在する水蒸気に曝露された後に、適切に透視できなくなるほどコーティング基材の透明性を著しく低減するのに十分な密度で、小さく凝縮した水滴が形成されることに、コーティングされた基材が抵抗する場合、乾燥したコーティングは、「曇りを防止する」と考えられる。コーティング組成物は、コーティングされた基材の透明性が、容易に透視することができないほど著しく減少していなければ、コーティングされた基材に均一の水膜又は少数の大きな水滴が生じても、曇りを防止するものとして見なされ得る。多くの場合、基材が「蒸気」ジェットにさらされた後に、基材の透明性を著しく低下させない水膜が残る。
【0034】
本発明の特定のコーティング組成物は、コーティングし、乾燥させた基材に「反射防止」特性をもたらし、この特性は以下のように定義することができる。本発明のコーティング組成物が基材に適用されて反射防止又は反射低減特性をもたらすとき、コーティングされた基材の光透過率を増加させることによりグレアは減少する。好ましくは、ガラス基材などの片面コーティングされた基材は、垂直入射光線の透過率において、550mm(例えば、ヒトの目が光−視覚反応(photo-optic response)のピークを示す波長)にて、コーティングされていない基材と比較するとき、少なくとも0.5%、少なくとも3%、並びに、両面コーティングされた基材については最大で10%ものあるいはそれ以上の増加を呈する。透過率パーセントは、光の入射角及び波長に依存し、例えば、プラスチックについては、表題が「Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics」であるASTM試験方法D1003−92を用いて、測定される。好ましくは、片面コーティングされたガラス基材は、550nmの光を用いて、コーティングされていない基材と比較するとき、少なくとも0.5%、より好ましくは少なくとも3%の透過率パーセントの増加を呈する。好ましくは、片面コーティングされたプラスチック基材は、透過率パーセントにおいて、550nmの光を用いて、コーティングされていない基材と比較するとき、少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%、並びに、最も好ましくは両面コーティングされた基材について8%超の増加を呈する。両面コーティングされた基材については、透過率パーセントにおける増加は、典型的にはこれらの値の2倍である。所望の用途が著しく「軸外」(すなわち非垂直)視野又は不所望の反射に関与するとき、視感度の増加は、特に反射が視野内の物体の輝度に近づく又は超える場合更に大きくなる場合がある。
【0035】
反射防止特性は、太陽電池を考慮する際には550nmよりも更に広い範囲にわたって考慮される、太陽電池は、太陽光エネルギーを電気に変換するための独特の吸収スペクトルを有する種々の半導体材料で開発されてきた。それぞれの種類の半導体材料は、特徴的なバンドギャップエネルギーを有し、ある光の波長において、最も効率的に光を吸収するか、又はより正確には、電磁放射線を太陽光スペクトルの一部分にわたって吸収する。太陽電池の形成に使用される半導体材料及びそれらの太陽光吸収帯端波長の例としては、結晶性シリコン単接合(約400nm〜約1150nm)、アモルファスシリコン単接合(約300nm〜約720nm)、リボンシリコン(約350nm〜約1150nm)、CIGS(銅インジウムガリウムセレン化物、約350nm〜約1000nm)、CdTe(テレル化カドミウム、約400nm〜約895nm)、GaAsマルチ接合(約350nm〜約1750nm)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの半導体材料の短い波長の左吸収帯端は、通常、300nm〜400nmの間である。当業者であれば、独自の固有の長波長吸収帯端を有する、より効率的な太陽電池のための新しい材料が開発されていること、及び多層反射フィルムは、対応する反射帯端を有することを理解する。
【0036】
特定の実施形態では、得られるコーティングは、コーティング表面での不必要な反射及びグレアの低減の結果として、コーティングされていない表面と比較して光反射の改善を示す。これは、このコーティングが、ナノ粒子と充填剤との結合時に生成される、ナノ粒子間の空隙の存在の結果として、高度に多孔質(すなわち、ナノ多孔質)であるためであると考えられる。更に、その孔径は、光散乱が典型的には観察されないような可視光線波長のものよりもはるかに小さいと考えられる。
【0037】
本発明の特定のコーティング組成物は、コーティングし乾燥させた基材に洗浄容易特性をもたらす。乾燥したコーティングは、コーティングされた基材が油及び/又は汚れ耐性を呈する場合に、「洗浄可能である」又は「容易に洗浄される」、あるいは、「洗浄可能」性又は「洗浄容易」性を有すると考えられる。別の方法としては及び/又は追加的に、乾燥したコーティングは、汚れ、食物、機械油、塗料、塵及び/又は埃などの有機汚染物質が水により単純にすすぎ落され得る場合に、容易に洗浄される又は洗浄可能であると考えられる。このような洗浄容易性又は洗浄可能性は、典型的には、コーティングのナノ多孔質構造がオリゴマー及びポリマー分子による透過を防止する傾向を有するため、もたらされる。
【0038】
本発明の特定のコーティング組成物は、コーティングし乾燥させた基材に静電気防止特性をもたらす。乾燥したコーティングは、コーティングされた基材が25℃にて10秒の充電時間にわたって100Vの設定でHiresta HT260(OAI,San Jose,CA,U.S.A)機器を用いて測定するときに1012Ω/sq〜10Ω/sqの電気抵抗率を有する場合に、「静電気防止性」であると考えられる。特定の用途は更に、10Ω/sq〜10Ω/sqの規模で表面固有抵抗を必要とし得る。
【0039】
本発明のコーティング組成物は、(例えば、無機又は有機材料の)基材に適用して乾燥させると、通常、通常使用時の操作(例えば、接触)では乾燥したコーティングを完全に除去しないような耐久性を有する。好ましいコーティングは、実施例の項目で示されるように、乾燥したコーティングがより機械的に過酷(例えば、摩擦)な条件下でも完全に除去されないような耐久性を有する。
【0040】
本発明のコーティング組成物から調製される好ましい乾燥したコーティングは、1つ以上の望ましい特性(曇り防止性、洗浄容易性及び/又は静電気防止性)を、50℃及び90%の湿度条件下にて、少なくとも12時間にわたって、より好ましくは少なくとも24時間にわたって、更により好ましくは少なくとも120時間にわたって、並びに多くの場合には200時間以上の長時間にわたって提供できる十分な耐久性を有することができる。
【0041】
本発明のコーティング組成物は、一時的(例えば、除去可能)又は恒久的なものであることができる。例えば、「除去可能な」乾燥したコーティングは、手で軽い圧力をかけて表面を、濡れた若しくは乾いた、布又はペーパータオルで拭く、あるいは水ですすぐことによって表面から除去する(好ましくは残渣を残さず完全に除去する)ことができるものである。
【0042】
本発明のコーティング組成物中の相当量の生体分子(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸)は、化学結合の形成及び粒子間充填といった形成されるコーティングネットワークに悪影響を及ぼし、乏しいコーティング耐久性を引き起こす恐れがあると考えられる。結果として、相当量の生体分子は、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性のうちの少なくとも1つに悪影響を及ぼし得る。それゆえに、本発明のコーティング組成物は、実質的に生体分子を全く含まない(おそらくは微量の大気混入によるものを除く)。
【0043】
好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物で使用されるナノ粒子の一部分は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせで官能化されている。本明細書では、「アミン」は、四級アンモニウムを含まない。好ましくはこのアミン基は一級又は二級であり、より好ましくはこれらは一級アミンである。これらは脂肪族であっても芳香族であってもよい。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物で使用されるナノ粒子の一部分は、アミン反応性基で官能化されている。代表的なアミン反応性基としては、電子吸引性基を有するα,β−エチレン性又はアセチレン性不飽和基、エポキシ基、カルボン酸含有基、無水物基、エステル含有基、フルオロスルホニル基及びこれらに類するものが挙げられる。好ましいアミン反応性基としては、エポキシ基及び電子吸引性基を有するα,β−エチレン性又はアセチレン性不飽和基が挙げられる。より好ましいアミン反応性基としては、エポキシ基が挙げられる。
【0045】
本発明の好ましい組成物は、密閉した容器内に、液状で又はアプリケータ基材に浸透した状態で周囲条件(例えば、室温)で貯蔵されても、比較的に長い、好ましくは数か月までの、貯蔵寿命を有し得る。好ましい組成物は、3〜8のpHで、又は4〜8のpHで、又は5〜8のpHで、維持される。このコーティング組成物が過度に塩基性である場合には、アミン官能基は過度に反応性であり得る。このコーティング組成物が過度に酸性である場合には、エポキシ基などのアミン反応性基は消費され得る。
【0046】
アミン官能基及び/又は保護アミン官能基を有する一部分とアミン反応性官能基を有する一部分という粒子の少なくとも2つの部分を含む組成物は、少なくともこのような混合物の耐用期間の拡張のため、特に好ましい。所望される場合には、本発明のコーティング組成物は、少なくとも二部分に分けて貯蔵して、表面への適用の直前に組み合わせることができる。例えば、本発明は、水と、共有結合を介して表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、この官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせを含む)と、を含む第一組成物を含む少なくとも1つの容器;並びに、水と、共有結合を介して表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、この官能基は、アミン反応性基を含む)と、を含む第二組成物を含む少なくとも1つの容器、を含む、基材表面改質のためのキットを提供することができる。
【0047】
ナノ粒子
本発明による表面改質されたナノ粒子は、ナノメートルサイズの粒子を含む。用語「ナノメートルサイズ」は、多くの場合(表面改質すなわち官能化の前に)100ナノメートル(nm)以下、好ましくは60nm以下のナノメートル範囲での平均粒径(すなわち、粒子の最大寸法の平均、又は球体粒子については平均粒径)により特徴付けられる粒子を指す。平均粒径は、より好ましくは(表面改質前に)45nm以下、更に好ましくは(表面改質前に)20nm以下、更により好ましくは(表面改質前に)10nm以下、更により好ましくは(表面改質前に)5nm以下である。好ましくは、表面改質前に、シリカナノ粒子の平均粒径は、少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも2nm、更により好ましくは少なくとも3nm、更により好ましくは少なくとも4nm、更により好ましくは少なくとも5nmである。特に好ましい粒度は4nm〜5nmである。
【0048】
ナノ粒子の平均粒径は、透過電子顕微鏡を使用して測定することができる。本発明の実践において、粒度はいずれかの好適な技術を用いて決定することができる。好ましくは、粒度は数平均粒径を表し、透過電子顕微鏡又は走査電子顕微鏡を使用する機器を用いて測定される。粒度を測定する別の方法は、重量平均径を測定する動的光散乱である。好適であることがわかったそのような機器の1つの例は、Beckman Coulter Inc.(Fullerton,CA)から入手可能なN4 PLUS SUB−MICRON PARTICLE ANALYZERである。
【0049】
ナノ粒子が比較的均一のサイズであることも好ましい。均一なサイズのナノ粒子は、一般に、より再現可能な結果を提供する。好ましくは、ナノ粒子のサイズの変動性は、平均粒径の25%未満である。
【0050】
本明細書では、ナノ粒子は(官能化前に)、水性環境での粒子の過剰な凝集及び沈殿を低減、及び好ましくは防止するために、水分散性である。必要であれば、ナノ粒子を水分散性基で官能化することによって水分散性を高めることができる。ナノ粒子凝結は、望ましくない沈殿、ゲル化、又は粘度の劇的な増加を生じる恐れがあるが、ナノ粒子が水性環境にある場合、凝集体(すなわち、凝集した粒子)の平均サイズが60nm以下である限り、少量の凝集は許容することができる。それゆえに、ナノ粒子は、個々の粒子又はこれらの小さな凝集体であることができるため、本明細書において好ましくはコロイド状ナノ粒子であると見なされる。
【0051】
ナノ粒子は、好ましくは少なくとも10m/グラム、より好ましくは少なくとも20m/グラム、更に好ましくは少なくとも25m/グラムの表面積を有する。ナノ粒子は、好ましくは750m/グラムを超える表面積を有する。
【0052】
本発明のナノ粒子は、多孔質又は無孔質であり得る。
【0053】
このナノ粒子は、無機又は有機材料から作製することができる。好適なポリマー固体支持材料としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリアミン、アミノエポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、セルロース系ポリマー、多糖、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ポリマー材料は、所望される官能基(例えば、アミン基、エポキシ基)を含有する分子の表面結合基Aと反応できる相補的な基を有するコモノマーを用いて調製されたコポリマーである。例えば、コモノマーは、カルボキシ、メルカプト、ヒドロキシ、アミノ、又はアルコキシシリル基を含有することができる。これらの基は、表面結合基Aと反応することができる。
【0054】
好適なガラス及びセラミックナノ粒子は、例えば、ナトリウム、ケイ素、アルミニウム、鉛、ホウ素、リン、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、ヒ素、ガリウム、チタン、銅、又はこれらの組み合わせを含むことができる。ガラスは典型的に種々のケイ酸塩含有物質を含む。
【0055】
有機ポリマーナノ粒子は、SiOの薄層などの無機層でコーティングすることができる。このような材料は、蒸着又はゾル−ゲル化学作用などの既知の方法により作製することができる。
【0056】
別の方法としては、ナノ粒子は、ダイヤモンド様ガラスの層を含むことができる。ダイヤモンド様ガラスは、炭素、ケイ素、及び水素、酸素、フッ素、イオウ、チタン、又は銅から選択される1つ以上の元素を含む非晶質材料である。いくつかのダイヤモンド様ガラス材料は、プラズマプロセスを使用してテトラメチルシラン前駆体から形成される。表面上のシラノール濃度を制御するために酸素プラズマ中で更に処理される疎水性材料を製造することができる。
【0057】
ダイヤモンド様ガラスは、ナノ粒子において別の材料上の薄いフィルム又はコーティングの形態であることができる。一部の用途では、ダイヤモンド様ガラスは、少なくとも30重量パーセント(重量%)の炭素、少なくとも25重量%のケイ素、及び45重量%までの酸素を有する薄いフィルムの形態であることができる。表面結合基Aは、ダイヤモンド様ガラスの表面に結合されている。
【0058】
一部の多層ナノ粒子では、ダイヤモンド様ガラスは、ダイヤモンド様炭素の層上に堆積されている。例えば、第二層は、表面上に堆積されたダイヤモンド様炭素の層を有するポリマーフィルムである。ダイヤモンド様ガラスの層は、ダイヤモンド様炭素層上に堆積されている。一部の実施形態では、ダイヤモンド様炭素は、多層ナノ粒子において、ポリマー層とダイヤモンド様ガラスの層との間の結合層又はプライマー層として機能することができる。ダイヤモンド様炭素フィルムは、例えば、プラズマ反応器において、アセチレンから調製することができる。
【0059】
ナノ粒子のために好適な金属、金属酸化物、又は金属酸化物水和物としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、アルミニウム、銅、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、チタン及びこれらに類するものを挙げることができる。本明細書では、ケイ素及び他の半金属もまた用語「金属」の範囲内に含まれる。金属含有材料は、ステンレス鋼及び酸化インジウムスズ及びこれらに類するものなどの合金を挙げることができる。
【0060】
一部の実施形態では、金属含有材料は多層ナノ粒子の外層である。例えば、ナノ粒子は、ポリマー第二層及び金属含有第一層を有することができる。もう1つの特定の実施例では、第二層はポリマーフィルムであり、第一層は金の薄いフィルムである。他の実施例では、多層ナノ粒子は、チタン含有層でコーティングされ、次に金含有層でコーティングされているポリマーフィルムを含む。すなわち、チタン層は、金の層をポリマー層へ接着させるための結合層又はプライマー層として機能することができる。一部の実施例では、ポリマー層はポリエステル又はポリイミドフィルムであることができる。
【0061】
金属含有材料を含む多層ナノ粒子の更なる他の実施例では、ケイ素支持体層を1つ以上の金属含有材料で被覆することができる。特定の実施例では、ケイ素支持体層を、クロムの層で被覆し、次に金の層で被覆することができる。クロム層は、金層のケイ素層への接着を改善することができる。
【0062】
好ましくは、本発明のナノ粒子は、シリカを含む。ナノ粒子は本質的にシリカのみを含み得る(しかし、コロイド状のジルコニアZrO、コロイド状のアルミナAl、コロイド状のセリアCeO、コロイド状のスズ(第二スズ)酸化物SnO、コロイド状の二酸化チタンTiOなどの他の酸化物も使用し得る)が、あるいは、コアシェルナノ粒子などの合成体ナノ粒子でもあり得る。コアシェルナノ粒子は、1種類の酸化物(例えば、酸化鉄)又は金属(例えば、金又は銀)のコア及びコアに堆積されたシリカ(若しくはジルコニア、アルミナ、セリア、酸化スズ、又は二酸化チタン)のシェルを含み得る。シリカは最も好ましいナノ粒子であり、特にケイ酸塩から誘導されるシリカナノ粒子、例えばアルカリ金属ケイ酸塩又はケイ酸アンモニウムがそうである。本明細書では、「シリカナノ粒子」はシリカのみを含むナノ粒子、並びに表面にシリカを含むコアシェルナノ粒子を指す。
【0063】
非改質ナノ粒子は、粉末としてよりもゾルとして提供され得る。好ましいゾルは一般に、流体媒質に分散した15重量%〜50重量%のコロイド状粒子を含有する。コロイド状粒子に好適な流体媒質の代表的な例としては、水、水性アルコール溶液、低級脂肪族アルコール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい流体媒質は水性であり、例えば、水及び所望により1種以上のアルコールである。コロイド状粒子は水性流体中に分散されると、それぞれの粒子の表面上に発生する共通電荷のために安定化し得る。共通電荷は凝集又は凝結よりむしろ分散を促進する傾向があるが、これは同様に荷電した粒子が互いに反発するためである。
【0064】
水性媒質中の無機シリカゾルは、当該技術分野において周知であり、市販されている。水又は水−アルコール溶液中のシリカゾルは、LUDOX(E.I.duPont de Nemours and Co.,Inc.(Wilmington,DE)製造)、NYACOL(Nyacol Co.(Ashland,MA)より入手可能)又はNALCO(Nalco Chemical Co.(Oak Brook,IL)製造)などの商品名で市販されている。一部の有用なシリカゾルは、平均粒径が4ナノメートル(nm)〜77nmであるシリカゾルとして入手可能なNALCO 1115、2326、1050、2327及び2329である。別の有用なシリカゾルは、平均粒径が20ナノメートルのシリカゾルとして入手可能なNALCO 1034aである。別の有用なシリカゾルは、平均粒径が5ナノメートルのシリカゾルとして入手可能なNALCO 2326である。好適なコロイド状シリカの更なる例が、米国特許番号第5,126,394号に記載されている。
【0065】
本発明のコーティング組成物で使用される好適なシリカナノ粒子は、針状であり得る。用語「針状」は、一般に針のような、細長い形状の粒子を指し、他のとげ状、棒状、鎖状、並びにフィラメント状形状を含んでよい。針状コロイダルシリカ粒子は、5〜25nmの均一な厚さ、40〜500nm(動的光散乱法による測定)の長さD、及び5〜30の伸長度D/Dを有する場合があり、ここで、米国特許第5,221,497号の明細書に開示されているように、Dは、等式D=2720/Sにより算出された直径(nm)を意味し、Sは、粒子の比表面積(m/g)を意味する。
【0066】
米国特許第5,221,497号には針状シリカナノ粒子の製造法が開示されており、この方法では、水溶性カルシウム塩、マグネシウム塩、又はこれらの混合物を、平均粒径3〜30nmの活性ケイ酸又は酸性シリカゾルのコロイド水溶液に、シリカに対しCaO、MgO、又はその両方が0.15〜1.00重量%の量で添加し、次いで水酸化アルキル金属を、SiO/MO(M:アルカリ金属原子)のモル比が20〜300となるように添加し、得られた液体を60〜300℃で0.5〜40時間加熱する。この方法で得られたコロイダルシリカ粒子は伸長形のシリカ粒子であり、5〜40nmの範囲内の均一な厚さで、1つの平面のみに延びる伸長を有する。針状シリカゾルはまた、米国特許第5,597,512号に記載されているように調製することができる。
【0067】
有用な針状シリカ粒子は、日産化学工業株式会社(東京、日本)から商標名SNOWTEX−UPの水性懸濁液として入手できる。この混合物は、20〜21%(重量/重量)の針状シリカ、0.35%(重量/重量)未満のNaO、及び水からなる。粒子は、直径約9〜15ナノメートルであり、40〜300ナノメートルの長さを有する。懸濁液は、25℃にて100mPas未満の粘度、9〜10.5のpH、20℃にて1.13の比重を有する。
【0068】
他の有用な針状シリカ粒子は、日産化学工業株式会社から商品名SNOWTEX−PS−S及びSNOWTEX−PS−Mの水性懸濁液として入手することができ、ナノ粒子からなる真珠の数珠状の形態を有する。この混合物は、20〜21%(重量/重量)のシリカ、0.2%(重量/重量)未満のNaO、及び水からなる。SNOWTEX−PS−M粒子は、直径約18〜25ナノメートルであり、80〜150ナノメートルの長さを有する。動的光散乱法による粒度は、80〜150ナノメートルである。懸濁液は、25℃にて100mPas未満の粘度、9〜10.5のpH、20℃にて1.13の比重を有する。SNOWTEX−PS−Sは、粒径10〜15nm、80〜120nmの長さを有する。
【0069】
本発明で使用されるゾルは、一般に、コロイドの表面電荷を中和するために対イオンを含み得る。用いられるコロイドのpH及び種類に応じて、コロイド上の表面電荷は、負であっても正であってもよい。したがって、カチオン又はアニオンのいずれかが、対イオンとして用いられる。負に帯電したコロイドに対する対イオンとして用いるために好適なカチオンの例にはNa、K、Li、NR(ここで、それぞれのRは、任意の一価部分であり得るが、好ましくはHか又は−CHなどのより低級のアルキル基か、これらの組み合わせなどである)のような四級アンモニウムカチオンが挙げられる。
【0070】
表面の官能性に応じて、種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能である。下記に提案される反応のうち、水性媒質中で作用するとき、水中に安定又は準安定な基に対する強い選好が存在することが理解される。
【0071】
ナノ粒子の表面は、典型的には、カルボキシ、ハロカルボニル、ハロカルボニルオキシ、シアノ、ヒドロキシ、フルオロスルホニル、イソシアナート、ハロシリル、アルコキシシリル、アシルオキシシリル、アジド、アジリジニル、ハロアルキル、一級脂肪族アミノ、二級脂肪族アミノ、メルカプト、ジスルフィド、アルキルジスルフィド、ベンゾトリアゾリル、ホスホナト、ホスホロアミド、ホスファト又はエチレン性不飽和基と組み合わせて反応することができる基を含む。すなわち、(官能化前の)ナノ粒子は、典型的には、表面結合基Aと反応することができる基を含む(すなわち、ナノ粒子は基Aと相補的つまり反応性である基を含む)。ナノ粒子は、処理されて、相補的な基(すなわち、表面反応性基)を含む外層を形成することができる。ナノ粒子は、表面結合基Aと反応することができる基を有することで知られる任意の固相材料から調製することができ、以下の好適な材料の例に限定されない。
【0072】
カルボキシ又はホスホン酸又はリン酸基は、金属又は金属酸化物を含有するナノ粒子と反応することができ、特にここで、金属は、銅、鉄、ニッケル又はアルミニウムである。
【0073】
カルボキシ基又はハロカルボニル基は、ヒドロキシ基を有するナノ粒子と反応して、カルボニルオキシ含有結合基を形成することができる。ヒドロキシ基を有するナノ粒子材料の例としては、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレートのヒドロキシ置換エステル、ポリアクリレートのヒドロキシ置換エステル、コロナ処理されたポリエチレン、及びガラス又はポリマーフィルムなどの支持材料上のポリビニルアルコールコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
カルボキシ基又はハロカルボニル基はまた、メルカプト基を有するナノ粒子と反応して、カルボニルチオ含有結合基を形成することもできる。メルカプト基を有するナノ粒子材料の例としては、ポリアクリレートのメルカプト置換エステル、ポリメタクリレートのメルカプト置換エステル、及びメルカプトアルキルシランで処理されたガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
更に、カルボキシ基又はハロカルボニル基は、一級脂肪族アミノ基又は二級脂肪族アミノ基と反応して、カルボニルイミノ含有結合基を形成することができる。芳香族一級又は二級アミノ基を有するナノ粒子材料の例としては、ポリアミン、ポリメタクリレートのアミン置換エステル、ポリアクリレートのアミン置換エステル、ポリエチレンイミン、及びアミノアルキルシランで処理したガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
ハロカルボニルオキシ基は、ヒドロキシ基を有するナノ粒子と反応して、オキシカルボニルオキシ含有結合基を形成することができる。ヒドロキシ基を有するナノ粒子材料の例としては、ポリビニルアルコール、コロナ処理したポリエチレン、ポリメタクリレートのヒドロキシ置換エステル、ポリアクリレートのヒドロキシ置換エステル、及びガラス又はポリマーフィルムなどの支持材上のポリビニルアルコールコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
ハロカルボニルオキシ基はまた、メルカプト基を有するナノ粒子と反応して、オキシカルボニルチオ含有結合基を形成することもできる。メルカプト基を有するナノ粒子材料の例としては、ポリメタクリレートのメルカプト置換エステル、ポリアクリレートのメルカプト置換エステル、及びメルカプトアルキルシランで処理されたガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
シアノ基は、アジド基を有するナノ粒子と反応して、テトラジンジイル含有結合基を形成することができる。アジド基を有するナノ粒子の例としては、ガラス又はポリマー支持体上でのポリ(4−アジドメチルスチレン)のコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリマー支持材料としては、ポリエステル及びポリイミドなどが挙げられる。
【0079】
ヒドロキシル基はイソシアネート基を有するナノ粒子と反応して、オキシカルボニルイミノ含有結合基を形成することができる。イソシアネート基を有する好適なナノ粒子としては、支持材料上の2−イソシアナトエチルメタクリレートポリマーのコーティングが挙げられるが、これに限定されない。好適な支持材料としては、ガラス、並びにポリエステル及びポリイミドなどのポリマー材料が挙げられる。
【0080】
ヒドロキシル基は、カルボキシ、カルボニルオキシカルボニル、又はハロカルボニルを有するナノ粒子と反応して、カルボニルオキシ含有結合基を形成することができる。好適なナノ粒子としては、支持材料上のアクリル酸ポリマー若しくはコポリマーのコーティング、又は支持材料上のメタクリル酸ポリマー若しくはコポリマーのコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。好適な支持材料としては、ガラス、並びにポリエステル及びポリイミドなどのポリマー材料が挙げられる。他の好適なナノ粒子としては、ポリエチレンと、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又はこれらの組み合わせとのコポリマーが挙げられる。
【0081】
メルカプト基は、イソシアネート基を有するナノ粒子と反応することができる。メルカプト基とイソシアネート基との間の反応は、チオカルボニルイミノ含有結合基を形成する。イソシアネート基を有する好適なナノ粒子としては、支持材料上の2−イソシアナトエチルメタクリレートポリマーのコーティングが挙げられるが、これに限定されない。好適な支持材料としては、ガラス、並びにポリエステル及びポリイミドなどのポリマー材料が挙げられる。
【0082】
メルカプト基はまた、ハロカルボニル基を有するナノ粒子と反応して、カルボニルチオ含有結合基を形成することもできる。ハロカルボニル基を有するナノ粒子としては、例えば、クロロカルボニル置換ポリエチレンが挙げられる。
【0083】
メルカプト基はまた、ハロカルボニルオキシ基を有するナノ粒子と反応して、オキシカルボニルチオ含有結合基を形成することもできる。ハロカルボニル基を有するナノ粒子としては、ポリビニルアルコールのクロロホルミルエステルが挙げられる。
【0084】
更に、メルカプト基は、エチレン性不飽和基を有するナノ粒子と反応して、チオエーテル含有結合基を形成することができる。エチレン性不飽和基を有する好適なナノ粒子としては、ブタジエンに由来するポリマー及びコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
イソシアナート基は、ヒドロキシ基を有するナノ粒子と反応して、オキシカルボニルイミノ含有結合基を形成することができる。ヒドロキシ基を有するナノ粒子材料の例としては、ポリビニルアルコール、コロナ処理されたポリエチレン、ポリメタクリレート又はポリアクリレートのヒドロキシ置換エステル、及びガラス又はポリマーフィルム上のポリビニルアルコールコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
イソシアネート基はまたメルカプト基と反応して、チオカルボニルイミノ含有結合基を形成することができる。メルカプト基を有するナノ粒子材料の例としては、ポリメタクリレート又はポリアクリレートのメルカプト置換エステル、及びメルカプトアルキルシランで処理したガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
更に、イソシアネート基は、一級脂肪族アミノ基又は二級脂肪族アミノ基と反応して、イミノカルボニルイミノ含有結合基を形成することができる。一級又は二級アミノ基を有する好適なナノ粒子としては、ポリアミン、ポリエチレンイミン、及びガラスなどの支持材料上又はポリエステル若しくはポリイミドなどのポリマー材料上のアミノアルキルシランのコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
イソシアネート基はまた、カルボキシと反応して、O−アシルカルバモイル含有結合基を形成することができる。カルボン酸基を有する好適なナノ粒子としては、ガラス又はポリマー支持体上の、アクリル酸ポリマー若しくはコポリマーのコーティング、又はメタクリル酸ポリマー若しくはコポリマーのコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。コポリマーとしては、ポリエチレン及びポリアクリル酸又はポリメタクリル酸を含有するコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリマー支持材料としては、ポリエステル及びポリイミド及びこれらに類するものが挙げられる。
【0089】
ハロシリル基、アルコキシシリル基、又はアシルオキシシリル基は、シラノール基を有するナノ粒子と反応して、ジシロキサン含有結合基を形成することができる。好適なナノ粒子としては、様々なガラス、セラミック材料、又はポリマー材料から調製されるものが挙げられる。これらの基はまた、表面上に金属水酸化物基を有する種々の材料と反応して、シロキサン含有結合基を形成することができる。好適な金属としては、銀、アルミニウム、銅、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛及びこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、金属は、ステンレス鋼又は別の合金である。ポリマー材料はシラノール基を有するように調製することができる。例えば、シラノール基を有する市販のモノマーとしては、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI)からの3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート及び3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0090】
ハロアルキル基は、例えば、三級アミノ基を有するナノ粒子と反応して、四級アンモニウム含有結合基を形成することができる。三級アミノ基を有する好適なナノ粒子としては、ポリジメチルアミノスチレン又はポリジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
同様に、三級アミノ基は、例えば、ハロアルキル基を有するナノ粒子と反応して、四級アンモニウム含有結合基を形成することができる。ハロアルキル基を有する好適なナノ粒子としては、例えば、支持材料上のハロアルキルシランのコーティングが挙げられる。支持材料には、ガラス、並びにポリエステル及びポリイミドなどのポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
一級脂肪族アミノ又は二級脂肪族アミノ基は、例えば、イソシアネート基を有するナノ粒子と反応して、オキシカルボニルイミノ含有結合基を形成することができる。イソシアネート基を有する好適なナノ粒子としては、ガラス又はポリマー支持体上の、2−イソシアナトエチルメタクリレートポリマー又はコポリマーのコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリマー支持体としては、ポリエステル及びポリイミドなどが挙げられる。
【0093】
一級脂肪族アミノ又は二級脂肪族アミノ基はまた、カルボキシ又はハロカルボニル基を含有するナノ粒子と反応して、カルボニルイミノ含有結合基を形成することができる。好適なナノ粒子としては、支持材料上のアクリル酸又はメタクリル酸ポリマーコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。支持材料は、例えば、ガラス、又はポリエステル若しくはポリイミドなどのポリマー材料であることができる。他の好適なナノ粒子としては、ポリエチレンと、ポリメタクリル酸又はポリアクリル酸とのコポリマーが挙げられる。
【0094】
ジスルフィド、チオール、又はアルキルジスルフィド基は、例えば、金属又は金属酸化物を含有する表面と反応することができる。好適な金属又は金属酸化物としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、銅、及びクロムが挙げられるが、これらに限定されない。ナノ粒子はまた、酸化インジウムスズなどの合金又は誘電材料であることができる。
【0095】
ベンゾトリアゾリルは、例えば、金属又は金属酸化物表面を有するナノ粒子と反応することができる。好適な金属又は金属酸化物としては、例えば、銀、アルミニウム、銅、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛及びこれらに類するものが挙げられる。金属又は金属酸化物としては、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ及びこれらに類するものなどの合金を挙げることができる。
【0096】
ホスホナト、ホスホロアミド、又はホスファトは、例えば、金属又は金属酸化物表面を有するナノ粒子と反応することができる。好適な金属又は金属酸化物としては、例えば、銀、アルミニウム、銅、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛及びこれらに類するものが挙げられる。金属又は金属酸化物としては、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ及びこれらに類するものなどの合金を挙げることができる。
【0097】
エチレン性不飽和基は、例えば、メルカプト基を有するナノ粒子と反応することができる。この反応は、ヘテロアルキレン含有結合基を形成する。好適なナノ粒子としては、例えば、ポリアクリレート又はポリメタクリレートのメルカプト置換アルキルエステルが挙げられる。
【0098】
上記固定基は、ナノ粒子上の対応するエポキシ若しくはアミン官能基又はマイケル付加反応供与体又は受容体の共有結合の形成に有用である。
【0099】
所望される場合には、異なるタイプのナノ粒子の様々な混合物を使用することができる(「裸の」若しくは「剥き出しの」、すなわち、官能化されていないナノ粒子又は親水基のみで官能化されたナノ粒子を更に包含する)。本発明のコーティング組成物中のナノ粒子濃度は、コーティング組成物の総重量に基づいて、好ましくは少なくとも0.1重量パーセント(重量%)、より好ましくは少なくとも0.2重量%、更に好ましくは少なくとも0.5重量%、更により好ましくは少なくとも1重量%、一層好ましくは少なくとも2重量%、より一層好ましくは2重量%超、更に一層好ましくは少なくとも3重量%、更により一層好ましくは少なくとも4重量%、更にまたより一層好ましくは少なくとも5重量%、ますます一層好ましくは少なくとも10重量%である。ナノ粒子の濃度は、コーティング組成物の総重量に基づいて、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。約30重量パーセントを超えると、コーティング組成物は所望される厚さの範囲内で適用することが困難になり、約0.1重量パーセントを下回ると、基材への適用後にコーティングを乾燥させるのに過度の時間が必要となる。本明細書で使用するとき、用語「組成物」及び「溶液」は、ナノ粒子の液状媒質分散体又は懸濁物を含む。
【0100】
官能化ナノ粒子
本発明のコーティング組成物で使用されるナノ粒子は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせを含む。また、本発明のコーティング組成物で使用されるナノ粒子は、アミン反応性基を含む。このような官能基は、同一のナノ粒子上にあってもよく又は異なるナノ粒子上にあってもよい。好ましくは、これらは、ナノ粒子集合の一部分がアミン及び/又は保護アミン基(好ましくはアミン基)を含み、ナノ粒子集合の一部分がアミン反応性基を含むように、異なるナノ粒子上にある。
【0101】
代表的なアミン反応性基としては、電子吸引性基を有するα,β−エチレン性又はアセチレン性不飽和基(例えば、α,β−不飽和カルボニル及びスルホン基)、エポキシ基、カルボン酸含有基、無水物基、エステル含有基、フルオロスルホニル基及びこれらに類するものが挙げられる。好ましいアミン反応性基としては、電子吸引性基を有するα,β−エチレン性又はアセチレン性不飽和基(例えば、α,β−不飽和カルボニル及びスルホン基)及びエポキシ基が挙げられる。より好ましいアミン反応性基としては、エポキシ基が挙げられる。
【0102】
好ましい実施形態では、本発明のナノ粒子の一部分は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせで官能化されており、本発明のナノ粒子の一部分はエポキシ基で官能化されている。アミン及び/又は保護アミン基で官能化されたナノ粒子は、アミン反応性基で官能化されたナノ粒子とは別個に調製される。これらは次に、コーティング組成物を乾燥させるとアミン基とアミン反応性基との間の反応が可能になるように、組み合わせられる。
【0103】
本発明は、共有結合(有機−有機、有機−無機(例えば、C−N)又は無機−無機結合(例えば、Si−O−Si)の組み合わせを含むことができる)を介して、樹枝状ネットワークによりナノ粒子を一緒に組み立てる/相互連結することを可能にするナノ粒子表面化学の設計も包含する。このネットワークは、相互連結したナノ粒子の通常連続相を含むと考えられる(同一であっても又は異なっていてもよい)。このような構造は親水性コーティングの形成に寄与し、コーティングされていない基材と比較して改善した特性を有している。
【0104】
例えば、一実施形態では、スキームIに示すように、アミン官能化ナノ粒子とエポキシ官能化ナノ粒子とを組み合わせてコーティング組成物にし、反応させて、乾燥すると樹枝状ネットワークを形成する。好ましくは、このような乾燥(及び硬化)は、コーティング組成物がコーティングされる基材の材料に依存して、少なくとも80℃の温度にて、より好ましくは80℃〜160℃の温度にて生じる。
【化1】

【0105】
別の代表的実施形態では、スキームIIに示すように、アミン官能化ナノ粒子とα,β−不飽和−官能化ナノ粒子とを組み合わせてコーティング組成物にし、反応させて、乾燥すると、特に少なくとも80℃の温度にて、好ましくは80℃〜120℃の温度にて加熱するとき、樹枝状ネットワークを形成する。この反応では、1つのナノ粒子のアミノ基とα位にあるα,β−エチレン性不飽和基との反応を伴う炭素−窒素結合により、アミン官能化ナノ粒子がα,β−不飽和−官能化ナノ粒子に共有結合するとき、マイケル付加化合物が生じる(ここで、示されているα,β−エチレン性不飽和基は、α位にカルボニル単位(アクリレート基)又はスルホニル単位(ビニルスルホン基)を含む)。マイケル付加化合物中に示されている遊離アクリレート基は、次に、更に別のアミン基含有ナノ粒子と反応することができ、これにより、三次元樹枝状ネットワークを構築する。
【化2】

【0106】
相補的反応性基(例えば、アミン基とエポキシ基)のモル比は、広範囲で様々であり得る。例えば、コーティング組成物内のアミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせの量とアミン反応性基の量のモル比は、95:5〜5:95、好ましくは70:30〜30:70の範囲内であり得る。より好ましくは、コーティング組成物内の反応性基のモル比は、およそ等モルである(例えば、エポキシ基に対しておよそ等モル量のアミン基)。この文脈では、「およそ」は、±2%を指す。
【0107】
各々が異なる相補的反応性基を持つ粒子(例えば、アミン基を有する1セットの粒子とエポキシ基を有する1セットの粒子)の重量比もまた広範囲にわたって様々であり得る。例えば、粒子の重量比は、95:5〜5:95、好ましくは70:30〜30:70であり得る。粒径間に大きな差が存在する場合には、非常に幅広い粒子重量比範囲が典型的に使用される。例えば、アミン官能基を有する40nmシリカ粒子は、エポキシ官能基を有する4nmシリカ粒子と95:5〜5:95の比で混合して使用することができるが、これは、一方がおよそ等モル比の反応性官能基に近づくのを可能にする、より小さな粒子の高表面官能性のためである。
【0108】
更に、機械的耐久性及び多孔性制御の改善は、異なるサイズのナノ粒子を組み合わせることにより得ることができる。90nmなどの大きな粒子だけから得られるコーティングは、所望される機械的特性を提供できないが、粒子充填、コーティングトポロジー(これらは機械的耐久性にとって重要である)を達成するのを助け得る特定の比で大きな粒子と小さな粒子を混合することにより改善された機械的特性を得ることができる。例えば、90nmの直径を有するエポキシ官能化ナノ粒子が5nmの直径を有するアミン官能化ナノ粒子と混合されると、同じ粒径を有する粒子の混合物と比較して(これらがどちらも20nmであっても又はどちらも5nmであっても)、改善された耐久性を得ることができる。
【0109】
アミン又は保護アミン官能基
好ましい実施形態では、本発明のナノ粒子の一部分は、アミン基で官能化されており、これは典型的にはアミノシロキサン化学作用を用いて形成することができる。アミン基は、所望される場合には、保護することができる。保護アミン基と保護されていないアミン基との組み合わせが、所望される場合には、使用することができる。
【0110】
アミン基は個々のナノ粒子の好ましいシリカ表面に共有結合され、好ましくはSi−O−Si結合により結合する。ジルコニア、アルミナ、セリア、酸化スズ、又は二酸化チタンを含有する他のナノ粒子は同じように、Zr−O−Si、Al−O−Si、Ce−O−Si、Sn−O−Si、及びTi−O−Siのそれぞれの化学結合でアミノシロキサンに結合され得る。これらの化学結合はSi−O−Siのシロキサン結合ほど強くないが、これらの結合強さは本発明のコーティング用途には十分であり得る。
【0111】
本明細書では、アミン官能化ナノ粒子の被覆のレベルは、コーティング組成物中のアミン基の量の100%がシリカ粒子の表面に共有結合すると想定して、コーティング組成物中のアミン基の濃度において報告される。好ましくは、アミン基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する。
【0112】
より好ましくは、アミン基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも5モル%、更に好ましくは少なくとも10モル%、更により好ましくは少なくとも25モル%に相当する量で存在する。アミン基のモル当量が大きいほど、より多くの粒子間結合に寄与することができ、これにより、より高密度の粒子ネットワークを有するコーティングを形成することができる。特定の状況では、アミン基の過剰(すなわち、100%超)が望ましいものであり得る。しかしながら、典型的には、アミン基の量は、コーティング組成物中の粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの150モル%以下に相当する量で存在する。アルコキシアミノアルキル置換有機シラン(例えば、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン)の多官能性に起因して、コーティング組成物が100モル%超のアミン基を含むとき、単層よりも多くのアミノシロキサンが粒子表面に形成される。過剰の加水分解されたアルコキシアミノアルキル置換有機シランは、存在する場合には、基材の表面上でプライマーとして機能することもできる。
【0113】
アミン基によるナノ粒子官能化は、従来技術を用いて達成することができる。シリカナノ粒子に関しては、しかしながら、アルコキシアミノアルキル置換有機シラン(例えば、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン)を反応させてシリカナノ粒子の表面上にアミノ官能基を形成することは、塩基条件を用いて、有利に(例えば、ゲル化を生じずに)達成できることが発見された。好ましくは、これは、少なくともpH 10.5にて、より好ましくは少なくともpH 11.0にて、更に好ましくは少なくともpH 11.5にて、更により好ましくは少なくともpH 12.0にて、一層好ましくは少なくともpH 12.5にて達成することができる。典型的な上方pHは、14.0である。典型的な方法では、シリカナノ粒子の水分散体のpHは、負に帯電したシリカ粒子を生じさせるために最初にこのpHに調整される。次に、アルコキシアミノアルキル置換有機シランは、負に帯電したシリカナノ粒子と組み合わせられ、アルコキシアミノアルキル置換有機シランのアルコキシシリル末端が負に帯電したシリカ表面と優先的に反応するのに有効な時間にわたって反応されられる。このようなpHは、アルコキシアミノアルキル置換有機シランのアルコキシシリル末端とシリカナノ粒子との間の反応を引き起こすのに有効な時間にわたって、維持される。典型的には、これは、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも12時間である。反応時間を短縮するために、室温よりも高い温度(例えば、60℃〜80℃)を使用することができる。所望のpH及び反応の時間は、官能化を改良し、組成物の安定性(例えば、粒子の沈殿及び/又は凝集の低下)を改良するものである。所望のレベルまで(好ましくは完全に)官能化反応が行われた後、コーティング溶液のpHは所望のpH(例えば、5〜8の範囲)にすることができる。
【0114】
官能基はナノ粒子への結合を可能にする様々な化学基を含む。このような基は典型的には、式A−L−F1により表される官能化合物で提供される。官能基F1は、アミン基を含む。ここでは、基Aはナノ粒子表面結合基であり、Lは結合又は様々な有機リンカーのうちのいずれでもあり得る。有機リンカーLは、直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、アリーレン、又はアルキレンとアリーレン基との組み合わせであることができ、所望によりヘテロ原子を含む。
【0115】
代表的なアミン官能化合物としては次のものが挙げられる。
【化3】

【0116】
種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能であり、それらには、例えば、ナノ粒子への表面改質剤の添加(例えば、粉末又はコロイド状分散物の形態)及び表面改質剤にナノ粒子と反応させることが挙げられる。アミン官能化合物A−L−F1について、表面結合基Aは典型的にはシラノール、アルコキシシラン、又はクロロシランであり、一官能性、二官能性、又は三官能性であり得る。例えば、シリカナノ粒子の表面のシラノール基が、官能化合物の少なくとも1つのシラノール基、アルコキシシラン基、又はクロロシラン基と反応し、官能化されたナノ粒子を形成する。官能化合物をシリカナノ粒子と反応させる例示的な条件は、「実施例」の部分に記載されている。
【0117】
アミン基は、所望される場合には、保護することができる。典型的には、アミン基は、アミンと反応(すなわち、保護)してこれを窒素原子に結合した水素原子がない形態に転化する好適な試薬との反応により保護形態に転化され得る。後続の脱保護は、元のアミン基を再生する。アミン基の保護及び対応する保護アミン基の脱保護のための方法は広く知られ、例えば、P.J.Kocienskiにより「Protecting Groups」、3rd ed.,Stuttgart:Thieme,2004に、及びT.W.Greene及びP.G.M.Wutsにより「Protective Groups in Organic Synthesis」、2nd ed.,New York:Wiley−Interscience,1991に説明されている。好適な保護基としては、CHC(O)−、CFC(O)−、(CHSi−、(CHCH−O−C(O)−、CH−O−C(O)−C(O)−、−C(O)OH、−C(O)O及びアルキル−NH−C(O)−が挙げられ、式中、「−」は窒素に対する結合を表す。
【0118】
アミン反応性基
本発明のナノ粒子は、アミン反応性基を含むことができる。これらは、アミン及び/又は保護アミン基を含有する同一のナノ粒子又は異なるナノ粒子で生じ得る。好ましくは、共有結合したアミン反応性基を有するナノ粒子は、共有結合したアミン及び/又は保護アミン基を有するものとは異なるナノ粒子である。代表的なアミン反応性基としては、電子吸引性基を有するα,β−エチレン性又はアセチレン性不飽和基、エポキシ基、カルボン酸含有基、炭素ハロゲン化物、無水物基、エステル含有基及びこれらに類するものが挙げられる。好ましいアミン反応性基としては、エポキシ基及び電子吸引性基を有するα,β−エチレン性又はアセチレン性不飽和基が挙げられる。より好ましいアミン反応性基としては、エポキシ基が挙げられる。
【0119】
本明細書では、アミン反応性官能基の被覆のレベルは、コーティング組成物中のアミン反応性基の量の100%がナノ粒子の表面に共有結合すると想定して、コーティング組成物中のアミン反応性官能基の濃度において報告される。好ましくは、アミン反応性官能基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する。
【0120】
より好ましくは、アミン反応性官能基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの少なくとも5モル%、更に好ましくは少なくとも10モル%、更により好ましくは少なくとも25モル%に相当する量で存在する。アミン反応性官能基のモル当量が大きいほど、より多くの粒子間結合に寄与することができ、これにより、より高密度の粒子ネットワークを有するコーティングを形成することができる。特定の状況では、アミン反応性官能基の過剰(すなわち、100%超)が望ましいものであり得る。しかしながら、典型的には、アミン反応性官能基の量は、コーティング組成物中の粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの150モル%以下である。
【0121】
アミン反応性官能基によるナノ粒子官能化は、従来技術を用いて達成することができる。
【0122】
官能基にはナノ粒子への結合を可能にする様々な化学基を含む。このような基は典型的には、式A−L−F2により表される官能化合物で提供される。官能基F2は、アミン反応性基を含む。ここでは、基Aはナノ粒子表面結合基であり、Lは結合又は様々な有機リンカーのうちのいずれでもあり得る。有機リンカーLは、直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、アリーレン、又はアルキレンとアリーレン基との組み合わせであることができ、所望によりヘテロ原子を含む。
【0123】
代表的なアミン反応性官能化合物としては次のものが挙げられる。
【化4】

【0124】
種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能であり、それらには、例えば、ナノ粒子への表面改質剤の添加(例えば、粉末又はコロイド状分散物の形態)及び表面改質剤をナノ粒子と反応させることが挙げられる。アミン反応性官能化合物A−L−F2について、表面結合基Aは典型的にはシラノール、アルコキシシラン、又はクロロシランであり、一官能性、二官能性、又は三官能性であり得る。例えば、シリカナノ粒子の表面のシラノール基が、官能基化合物の少なくとも1つのシラノール基、アルコキシシラン基、又はクロロシラン基と反応し、官能化されたナノ粒子を形成する。官能化合物をシリカナノ粒子と反応させる例示的な条件は、「実施例」の部分に記載されている。
【0125】
エポキシ官能基
好ましい実施形態では、本発明のナノ粒子の一部分は、エポキシ基などのアミン反応性基で官能化され、これは例えば、エポキシアルコキシシラン化学作用を用いて形成することができる。エポキシ基は個々のナノ粒子の好ましいシリカ表面に共有結合され、好ましくはSi−O−Si結合により結合する。ジルコニア、アルミナ、セリア、酸化スズ、又は二酸化チタンを含有する他のナノ粒子は同じように、Zr−O−Si、Al−O−Si、Ce−O−Si、Sn−O−Si、及びTi−O−Siのそれぞれの化学結合でエポキシアルコキシシロキサンに結合され得る。これらの化学結合はSi−O−Siのシロキサン結合ほど強くないが、これらの結合強さは本発明のコーティング用途には十分であり得る。
【0126】
本明細書では、エポキシ官能化ナノ粒子の被覆のレベルは、コーティング組成物中のエポキシ基の量の100%がシリカ粒子の表面に共有結合すると想定して、コーティング組成物中のエポキシ基の濃度において報告される。好ましくは、エポキシ基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する。
【0127】
より好ましくは、エポキシ基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの少なくとも5モル%、更に好ましくは少なくとも10モル%、更により好ましくは少なくとも25モル%に相当する量で存在する。エポキシ基のモル当量が大きいほど、より多くの粒子間結合に寄与することができ、これにより、より高密度の粒子ネットワークを有するコーティングを形成することができる。特定の状況では、エポキシ基の過剰(すなわち、100%超)が望ましいものであり得る。しかしながら、典型的には、エポキシ基の量は、コーティング組成物中の粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの150モル%以下である。エポキシアルコキシシランの多官能性のため、コーティング組成物が100モル%を超えるエポキシ基を含むとき、単層よりも多くのエポキシシロキサンが粒子表面に形成される。過剰の加水分解されたエポキシアルコキシシランは、存在するならば、基材の表面上のプライマーとしても機能し得る。
【0128】
エポキシ基によるナノ粒子官能化は、従来技術を用いて達成することができる。シリカナノ粒子については、しかしながら、これは、酸性条件下でエポキシ官能化合物を用いてナノ粒子を官能化することにより、有利に達成することができることが発見された。好ましくはpHは6以下であり、より好ましくは5以下のpHで、更により好ましくは3以下のpHで、更により好ましくは1〜3のpHである。このようなpHは、少なくとも3時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも12時間維持される。所望のpH及び反応の時間は、官能化を改良し、組成物の安定性(例えば、粒子の沈殿及び/又は凝集の低下)を改良し、かつ結果として得られたコーティングの曇り防止特性を改良する。4〜5nmのナノ粒子において、官能化反応の好ましいpHの範囲は1〜3である。所望のレベルまで(好ましくは完全に)官能化反応が行われた後、コーティング溶液のpHは所望のpH(例えば、5〜8の範囲)にすることができる。
【0129】
官能基はナノ粒子への結合を可能にする様々な化学基を含む。このような基は典型的には、式A−L−F3により表される官能化合物で提供される。官能基F3は、エポキシ基を含む。ここでは、基Aはナノ粒子表面結合基であり、Lは結合又は様々な有機リンカーのうちのいずれでもあり得る。有機リンカーLは、直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、アリーレン、又はアルキレンとアリーレン基との組み合わせであることができ、所望によりヘテロ原子を含む。
【0130】
代表的なエポキシ官能基化合物としては次のものが挙げられる。
【化5】

【0131】
種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能であり、それらには、例えば、ナノ粒子への表面改質剤の添加(例えば、粉末又はコロイド状分散物の形態)及び表面改質剤をナノ粒子と反応させることが挙げられる。エポキシ官能化合物A−L−F3について、表面結合基Aは典型的にはシラノール、アルコキシシラン、又はクロロシランであり、一官能性、二官能性、又は三官能性であり得る。例えば、シリカナノ粒子の表面のシラノール基が、官能基化合物の少なくとも1つのシラノール基、アルコキシシラン基、又はクロロシラン基と反応し、官能化されたナノ粒子を形成する。官能化合物をシリカナノ粒子と反応させる例示的な条件は、「実施例」の部分に記載されている。
【0132】
α,β−不飽和官能基
特定の実施形態では、本発明のナノ粒子の一部分は、α,β−不飽和基などのアミン反応性基で官能化され、これは例えば、アルコキシシラン化学作用を用いて形成することができる。α,β−不飽和基は個々のナノ粒子の好ましいシリカ表面に共有結合され、好ましくはSi−O−Si結合により結合する。ジルコニア、アルミナ、セリア、酸化スズ、又は二酸化チタンを含有する他のナノ粒子は同じように、Zr−O−Si、Al−O−Si、Ce−O−Si、Sn−O−Si、及びTi−O−Siのそれぞれの化学結合でアルコキシシランに結合され得る。これらの化学結合はSi−O−Siのシロキサン結合ほど強くないが、これらの結合強さは本発明のコーティング用途には十分であり得る。
【0133】
本明細書で使用するとき、「α,β−不飽和基」は、電子吸引性基を有するα,β−エチレン性又はアセチレン性不飽和基である。電子吸引性基の非限定例としては、カルボニル、ケトン、エステル、アミド、−SO−、−SO−、−CO−CO−、−CO−COOR(式中、R=CH、C、C、C)、スルホンアミド、ハロゲン化物、トリフルオロメチル、スルホンアミド、ハロゲン化物、マレイミド、マレエート又はこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、電子求引性基は、ケトン、エステル、又はアミドである。
【0134】
本明細書では、α,β−不飽和官能化ナノ粒子の被覆のレベルは、コーティング組成物中のα,β−不飽和基の量の100%がシリカ粒子の表面に共有結合すると想定して、コーティング組成物中のα,β−不飽和基の濃度において報告される。好ましくは、α,β−不飽和基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する。
【0135】
より好ましくは、α,β−不飽和基は、コーティング組成物中で粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの少なくとも5モル%、更に好ましくは少なくとも10モル%、更により好ましくは少なくとも25モル%に相当する量で存在する。α,β−不飽和基のモル当量が大きいほど、より多くの粒子間結合に寄与することができ、これにより、より高密度の粒子ネットワークを有するコーティングを形成することができる。特定の場合には、エポキシ基の過剰(すなわち、100%超)が望ましくなり得るが、しかし、コーティング組成物内のα,β−不飽和基の濃度は典型的には、粒子表面上の官能基の合計モルの150モル%以下である。α,β−不飽和アルコキシシランの多官能性に起因して、コーティング組成物が100モル%超のα,β−不飽和基を含むとき、単層よりも多くのα,β−不飽和アルコキシシランが粒子表面上に形成される。過剰の加水分解されたα,β−不飽和アルコキシシランは、存在するならば、基材の表面上のプライマーとしても機能し得る。
【0136】
典型的には、ナノ粒子官能化は、ナノ粒子をα,β−不飽和基で官能化することによって達成される。
【0137】
官能基はナノ粒子への結合を可能にする様々な化学基を含む。このような基は典型的には、式A−L−F4により表される官能化合物で提供される。官能基F4は、α,β−不飽和基を含む。ここでは、基Aはナノ粒子表面結合基であり、Lは結合又は様々な有機リンカーのうちのいずれでもあり得る。有機リンカーLは、直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、アリーレン、又はアルキレンとアリーレン基との組み合わせであることができ、所望によりヘテロ原子を含む。
【0138】
代表的なα,β−不飽和官能化合物としては、次のものが挙げられる。
【化6】

【0139】
特定の実施形態では、α,β−不飽和官能化合物は、アクリレート又はα,β−不飽和ケトンである。アクリレート及びα,β−不飽和ケトンは、広い範囲のpHにわたる水中での安定性という望ましい特性を呈し、更にまた、一級アミンとの高い反応性を呈し、マイケル付加化合物を不可逆的に形成する。
【0140】
マイケル付加化合物は、アミン官能化粒子がスキームIIで上述したようにα,β−不飽和官能化ナノ粒子に炭素−窒素結合により結合する場合に、生じる。
【0141】
種々の方法が、ナノ粒子の表面を改質するために利用可能であり、それらには、例えば、ナノ粒子への表面改質剤の添加(例えば、粉末又はコロイド状分散物の形態)及び表面改質剤をナノ粒子と反応させることが挙げられる。α,β−不飽和官能化合物A−L−F4について、表面結合基Aは典型的にはシラノール、アルコキシシラン、又はクロロシランであり、一官能性、二官能性、又は三官能性であり得る。例えば、シリカナノ粒子の表面のシラノール基が、官能基化合物の少なくとも1つのシラノール基、アルコキシシラン基、又はクロロシラン基と反応し、官能化されたナノ粒子を形成する。官能化合物をシリカナノ粒子と反応させる例示的な条件は、「実施例」の部分に記載されている。
【0142】
任意の親水基
所望される場合には、本発明の官能化ナノ粒子(アミン基及び/又は保護アミン基で感応化されたナノ粒子、アミン反応性基で感応化されたナノ粒子のいずれか又は両方)の親水性を向上させるために、追加の親水(例えば、水分散性、水溶性及び/又は帯電)基を個々の粒子に共有結合させることができる。親水基(例えば、水分散性基、水溶性基及び/又は帯電基)は、ナノ粒子表面に親水特性を供給できる一価の基であり、これにより、水性環境におけるナノ粒子の過剰な凝集及び/又は沈殿を低減並びに好ましくは防止する(しかしながら、ナノ粒子が水性環境にある場合、凝集体の平均サイズが好ましくは60nm以下である限り、少量の凝集は許容することができる)。
【0143】
本明細書で使用するとき、「親水性化合物」(例えば、「水分散性化合物」、「水溶性」及び/又は帯電)は、ナノ粒子の表面と反応させて親水基(例えば、水分散性基)で改質することができる化合物を表す。これは式A−L−WDにより表すことができ、式中、Aは表面結合基であり、これは本明細書に記載されている他の表面結合基と同一であっても異なっていてもよく、WDは親水基(例えば、水分散性基、水溶性基及び/又は帯電基)を表し、Lは有機リンカー又は結合を表す。有機リンカーLは、直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、アリーレン、又はアルキレンとアリーレン基との組み合わせであることができ、所望によりヘテロ原子を含む。
【0144】
親水基は水様基(water-like group)である。これらは典型的には、例えば、アニオン基、カチオン基、水に分散したときにアニオン基又はカチオン基を形成することができる基(例えば、塩又は酸)、あるいはこれらの混合物を含む。アニオン基又はアニオン形成基は、表面のアニオン性イオン化に寄与する任意の好適な基であることができる。例えば、好適な基としては次のものが挙げられる:カルボキシレート基、並びに、結合したエチレンジアミン三酢酸基及び結合したクエン酸により例示される、複数のカルボキシレート基を持つ構造単位;硫酸半エステル基及び複数の硫酸半エステル基を持つ構造単位;スルホン酸基及び複数のスルホン酸基を持つ構造単位;リン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基並びに複数のリン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基を持つ構造単位;ホスホン酸基及び複数のホスホン酸基を持つ構造単位;並びに同様の基並びにこれらの酸。
【0145】
カチオン基又はカチオン形成基は、表面のカチオン性イオン化に寄与する任意の好適な基であることができる。例えば、好適な基としては、四級アンモニウム基、四級ホスホニウム基、三級スルホニウム基、これらの組み合わせ及びこれらを複数持つ構造単位が挙げられる。
【0146】
他の好適な親水基としては、ヒドロキシル基、ポリエチレンオキシド基、これらの組み合わせ、並びにこれらを複数持つ構造単位が挙げられる。
【0147】
親水基は中性であってもよいが、多くは帯電している。「帯電基」は、官能基当たり1個以上のイオン化可能基を有する基を指す。
【0148】
特定の実施形態では、好ましい親水基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0149】
特定の実施形態では、ナノ粒子の表面上での水分散性基の結合は、重要なことに、ナノ粒子の分散に、安定性のために界面活性剤などの外部の乳化剤を必要としないことを意味する。しかしながら、所望される場合には、アニオン性及びカチオン性水分散性化合物も、外部の乳化剤として機能してナノ粒子の分散を助ける官能化ナノ粒子を含む組成物中で使用することができる。
【0150】
親水基は、式A−L−WDの親水性化合物を用いて提供することができる。例えば、エポキシ官能化合物においての親水性化合物の好適な表面結合基Aが本明細書に示されている。例としては、シラノール、アルコキシシラン、又はクロロシランが挙げられる。
【0151】
一部の好ましい親水性化合物としては次のものが挙げられる:
【化7】

【0152】
並びに他の既知の化合物。
非常に多様な他の親水性化合物が、外部の乳化剤として、又は水分散性基でナノ粒子を改質するために使用できる化合物として、本発明に有用であることを当業者であれば、理解するであろう。
【0153】
好ましくは、本発明の組成物の曇り防止性、反射防止性及び洗浄可能性を妨げないで所望のレベルの親水性をもたらすために十分な量の親水性化合物がナノ粒子と反応させられる。
【0154】
本明細書では、親水基によるナノ粒子の被覆のレベルは、コーティング組成物中の親水基の量の100%が粒子の表面に共有結合すると想定して、コーティング組成物中の親水基の濃度において報告される。使用されるのであれば、親水基は好ましくは、コーティング組成物中のナノ粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも1モル%、より好ましくは少なくとも10モル%に相当する量で存在する。使用されるのであれば、親水基は好ましくは、コーティング組成物中のナノ粒子表面上に、この粒子表面上の官能基の合計モルの60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、更により好ましくは10モル%以下に相当する量で存在する。
【0155】
好ましくは、親水性の所望されるレベルは、貯蔵安定的な分散液を調製するために外部の乳化剤が必要でない程度である。
【0156】
任意の添加剤
特定の実施形態では、本発明の組成物は1つ以上の界面活性剤を含む。本明細書で使用するとき、用語「界面活性剤」は、コーティング組成物の表面張力を低下させ、望ましい曇り防止性、洗浄容易性、反射防止性及び静電気防止性をそれでコーティングされた基材又は物品に付与するコーティングをもたらす分子を示す。本発明の有用な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は両性の界面活性剤を含む。例としては、次のものが挙げられる。
【0157】
【表1】

【0158】
【表2】

【0159】
界面活性剤は、有機シリコーン界面活性剤(例えば、ポリエーテル変性されたジメチルポリシロキサン)、ラウリルジメチルアミンオキシド、及びフッ素系界面活性剤が好ましい。シリコーン表面を含む製品(例えば、シリコーンハードコートなどのシリコーン基材又はシリコーンコーティング)の場合、有機シリコーン界面活性剤がより好ましい界面活性剤である。
【0160】
使用されるのであれば、本発明のコーティング組成物中の界面活性剤の濃度は、好ましくはコーティング組成物の少なくとも0.1重量パーセント(重量%)であり、より好ましくは少なくとも0.4重量%であり、更により好ましくは少なくとも1重量%である。使用されるのであれば、界面活性剤の濃度は、好ましくはコーティング組成物の10重量%以下であり、より好ましくはコーティング組成物の5重量%以下である。
【0161】
他の任意であるが好ましい添加剤は、抗菌剤である。例としては、以下のものが挙げられる(水中溶解度についての情報と共に)。
【0162】
【表3】

【0163】
使用されるのであれば、本発明のコーティング組成物中の抗菌剤の濃度は、好ましくはコーティング組成物の総重量の少なくとも0.0005重量パーセント(重量%)であり、より好ましくは少なくとも0.001重量%であり、更により好ましくは少なくとも0.002重量%である。使用されるのであれば、抗菌剤の濃度は、コーティング組成物の総重量の好ましくは1重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以下である。
【0164】
通常、本発明のコーティング組成物は液体キャリア(すなわち、流体媒質)として水を含むが、しかし、水に加えて有機溶媒を使用することもできる。本発明の好適な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコール及びそのモノメチルエーテル、エチレングリコール及びそのモノメチルエーテル、アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン、並びにテトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルアセトアミド、ホルムアミド又はそれらの組み合わせなどのエーテル、が挙げられる。存在する場合には、典型的には、有機溶媒は、アルコール又はアルコールの組み合わせである。コーティング組成物中の有機溶媒の量は、液体媒質の総重量に基づいて典型的には30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは2重量%以下、更により好ましくは1重量%以下である。最も好ましい液体媒質は、100%水である。
【0165】
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)などのテトラアルコキシカップリング剤、及びアルキルポリシリケート(例えばポリ(ジエトキシシロキサン))などのオリゴマー形態もまた、ナノ粒子間の結合を改善するために有用であり得る。コーティング組成物に含まれるカップリング剤の量は、コーティングの反射防止又は曇り防止特性が消滅するのを防ぐために、限定されるべきである。カップリング剤の最適量は、実験的に決定され、カップリング剤のアイデンティティ、分子量、及び屈折率に依存する。カップリング剤は、存在するとき、ナノ粒子の0.1〜20重量%、より好ましくはナノ粒子の約1〜15重量%の濃度で組成物に添加することができる。
【0166】
また、有機基材上のコーティングの耐久性は、例えば、酸性条件下のエタノールにより供給されるTEOSの組み込みにより改善することができる。例えば、100%エポキシシラノールで被覆された20nmシリカナノ粒子表面とアミンシラノールで被覆された20nmシリカナノ粒子表面とから1:1の比で構成されるコーティング配合物は、90:10又は80:20の重量比でTEOSと組み合わされると、TEOSが全く使用されないときよりも、湿潤している及び乾燥しているKIMWIPEティッシュによる強い摩擦に耐えたが、曇り防止及び反射防止特性は影響を受けなかった。理論に束縛されるものではないが、耐久性の改善は、加水分解されたテトラアルコキシシラン基から生じ、これがシロキサン結合を増加させて、親水性ナノ粒子間の相互作用を強化することができると考えられる。これは、特に、親水性ナノ粒子のシラノール基とのシロキサン縮合を可能にする多数のシラノール官能基を有するポリマー鎖について当てはまる。テトラアルコキシシランの加水分解は酸性条件下でポリマー鎖構造を生じることが既知である。
【0167】
本発明の親水性コーティングの機械的耐久性の改善はまた、裸のシリカナノ粒子の存在下で、特に5nmシリカナノ粒子の存在下で、達成することができる。裸のシリカナノ粒子の量は、ナノ粒子の量の50〜60重量%程度であり得る。
【0168】
物品
コーティングは、(例えば、無機及び/又は有機材料の)基材に適用して乾燥させると、除去可能又は恒久的である。本発明のコーティング組成物を適用し得る基材は、好ましくは可視光に透明又は半透明である。これらは、有機、無機材料又はこれらの組み合わせを含む。代表的な基材は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート(PC)、アリルジグリコールカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、酢酸酪酸セルロース、ガラス、ポリオレフィン、PVC及びこれらに類するものから作製され、それらのブレンド及びラミネートを含む。
【0169】
基材は典型的には、フィルム、シート、パネル又は物質の形状であり、ソーラーパネル、目の保護具、フェイスマスク、フェイスシールド、外科手術用マスク、及び他の(特に目用の)様々な人身保護具、並びに鏡、自動車の窓及びフロントガラスなどの物品の一部である。所望される場合には、コーティングは、物品の一部のみを覆い得、例えば、フェイスシールドの目に直接近接する部分のみがコーティングされ得る。基材は平板であっても、湾曲していても、所定の形状に形成されてもよい。コーティングされる物品は、吹き込み成形、流延成形、押出成形又は射出成形などによる任意の方法で製造され得る。
【0170】
本組成物は、バー、ロール、カーテン、輪転グラビア、スプレー又はディップコーティング技術などの従来技術を用いて、(例えば、注入可能形態又は噴霧可能形態の)液体系コーティング組成物の形態などの流体コーティング組成物として基材上にコーティングすることができる。この用途での使用に好適な噴霧器及びノズルシステムは当業者に既知であり、例えば、液圧式、気圧式、回転及び超音波ノズル及び関連する噴霧器システムが挙げられる。液圧式噴霧器の例は、US Global Resources(Seattle,WA)から入手可能なMSO噴霧器である。好適な気圧式噴霧器の例としては、DeVilbiss Corporation(Glendale Hts.,IL)から入手可能なEGA Manual Touch−Up Gun又はJacto(Tualaltin,OR)から入手可能なAJ−401−LH噴霧器が挙げられる。回転噴霧器は、高速回転ディスク、カップ又は車輪を使用して、液体を噴霧して中空錐体スプレーにする。回転速度が液滴サイズを制御する。回転噴霧器の例としては、Ledebuhr Industries(Williamston,MI)から入手可能なPROPTEC及びPENGUIN噴霧器が挙げられる。超音波噴霧器は、圧電結晶の高(20kHz〜50kHz)周波振動を用いて、狭い液滴サイズ分布及び低速噴霧を生じさせる。超音波噴霧器ノズルを有する好適な噴霧器の例としては、Sonics and Materials,Inc.(Newtown,CT)から入手可能なモデルVC5020AT及びVC5040ATが挙げられる。
【0171】
別の方法としては、本発明の組成物は、組成物をパッド、布などに含ませ若しくは基材表面の表面に適用し、パッド、布、ペーパータオル、又は他の適用装置/材で基材の表面を単に拭くことによって基材にコーティングすることができる。好適なアプリケータ基材は、例えば、スポンジ状、フォーム状、織布、不織布、又はニット物質であり得る。用語「不織布ウェブ」又は「不織布」は、不規則な様式でインターレイされた個々の繊維の構造を有するウェブ又は布を指す。対照的に、ニット又は織布は規則的な様式でインターレイされた繊維を有する。アプリケータ基材(例えば、アプリケータパッド又はワイプ)の原料は、合成又は天然繊維、長繊維、若しくは糸を含み得る。好適な原料としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリウレタン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリ尿素、ポリアクリロニトリル、セルロース、綿、レーヨン、麻、麻布、並びにこれらの共重合体及びポリマーブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。所望であれば、アプリケータ基材には、様々な形状の様々な原料の組み合わせが使用され得る。最も典型的な基材は、コーティング組成物を含んだ紙ワイプ(ワイプに染み込ませ又は浸透させた)である。
【0172】
本発明のコーティングは、基材の片面又は両面にコーティングすることができる。本発明のコーティングは、基材の片面にコーティングすることができ、基材の反対面はコーティングされなくてもよく又は広範囲の従来の組成物、特に従来の曇り防止組成物でコーティングされてもよい。好ましくは、コーティング面は、より湿度が高い方向に面するべきであり、例えば、フェイスシールドでは、曇り防止コーティングを有する側が着用者に面するべきである。
【0173】
コーティングされた表面は、(例えば、15分間かけて)室温で乾燥させてもよく、あるいは所望であれば、より速く乾燥させるために(例えば5分以内)高温で乾燥させてもよい。本発明のコーティング組成物にとって、乾燥条件は、例えば、乾燥したコーティングの耐久性、除去可能性及び恒久性に影響を及ぼす場合がある。「乾燥した」コーティング(すなわち、液体キャリア(すなわち、液体媒質)が例えば、蒸発によりコーティング組成物から実質的に完全に除去されているもの)はまた典型的には、反応性官能基間(例えば、アミン基とエポキシ基)の反応の結果として硬化する。このような硬化は、乾燥プロセス中にコーティング組成物を加熱することにより、向上させることができる。例えば、乾燥条件は、少なくとも80℃の温度、又は少なくとも100℃の温度、又は少なくとも120℃の温度を含むことができる。コーティング組成物が適用される基材が典型的に乾燥温度を制御する。例えば、ガラス基材については、コーティングは通常120℃〜160℃の温度にて乾燥させることができる。通常、プラスチック基材についてはコーティングは120℃〜140℃の温度にて乾燥させることができ、より具体的には、PET基材についてはコーティングは120℃〜135℃の温度にて乾燥させることができ、PMMAについては最高でも80℃程度の温度にて乾燥させることができる。
【0174】
更に、コーティングは、ガラス強化に典型的な温度及び時間にて(例えば、700〜750℃などの温度にて2〜5分にわたって)加熱することができ、これは強化プロセス後に透過電子顕微鏡(TEM)及びESCAが粒子の形状及び粒子上のコーティングの元素組成にいくらかの変化を示したとしても、太陽電池コーティングに重要な特性(高光透過性、反射防止、汚れ防止及び抗摩擦)を破壊しない。しかしながら、言及される具体的な強化条件は粒子を焼結するようには見えない。強化は商業的なソーラーガラスに必要とされ得、それゆえにコーティング組成物は強化の前又は後に適用され得る。ナノ構造により生じる比較的低い屈折率は、反射防止特性を付与し、これは少なくとも一部の実施形態では、光透過性を1.5〜2%改善することができ、それゆえに光から電力への変換を1〜2%改善する。これらの高温強化条件下でさえ、得られるコーティングは、裸のシリカ粒子よりも高い電力変換を付与することができる。
【0175】
ナノ粒子上の官能基は、基材へのコーティングの接着に寄与することができる。例えば、過剰なアミン基(これらの相補的反応性基、例えば、エポキシ基、に対する過剰)及び/又は過剰なエポキシ基は、表面の官能基と反応して、ナノ粒子と基材との間に共有結合を形成することができる。別の方法としては又は追加的に、基材とコーティングとの間の接着を改善するために、例えば、化学処理、機械的粗化、空気又は窒素コロナなどのコロナ処理、プラズマ、火炎又は化学放射線などによって基材を処理することができる。必要に応じて、任意の結合層を基材とコーティングとの間に適用して、層間接着を高めることもできる。
【0176】
本発明のコーティング組成物を組み込んだフェイスシールド及びメガネの例が図1〜3に示されている。図1は、透明な基材12を、着用者の目や顔を保護するために使用されるフェイスシールドとして含む呼吸用マスク10を図示する。本発明のコーティング組成物は、フェイスシールドの片側、又は透明な基材12の外側14及び内側16の両側に適用され得る。図2は、透明な基材22の内側の表面24に本発明のコーティングを有するフェイスシールドとして、透明な基材22を有する、呼吸用マスク20の別の実施形態を図示する。図3は、透明な基材32の外側の表面34に本発明のコーティングを有する透明な基材32を有する眼鏡30を図示する。本発明のコーティングは、例えば、曇り防止特性が所望される、任意の従来のフェイスシールド、マスク、バイザ、又はこれらに類するものに使用できることが理解されるべきである。
【0177】
本発明のコーティング組成物を含むことができる別の物品の例としては、太陽電池又は太陽電池の配列(一連の相互連結された太陽電池)と、送電増加のために並びに抗汚れ及びすすぎ落し洗浄のためにソーラーパネルの前側に配置されたコーティング組成物と、を備えるソーラーパネル(例えば、太陽電池モジュール)を挙げることができる。
【0178】
一般に、太陽電池は、光を電気に変換するために用いられる半導体デバイスであり、太陽電池と称され得る。太陽電池は、光に曝露されると、その両端子を横切って電圧を生じ、結果的に電子の流れを引き起こす。その電子の流れの大きさは、その電池の表面に形成される光起電接合(photovoltaic junction)に衝突する光の強度に比例する。典型的には、一連の太陽電池モジュールは、相互連結されて、単一の発電ユニットとして機能するソーラーアレイ(すなわち、ソーラーパネル)を形成し、ここで、1つの装置に電力を供給するためか又は貯蔵用蓄電池を充電するために、電池とモジュールは、好適な電圧が発生するように相互連結される。
【0179】
太陽電池で用いられる半導体材料としては、結晶性若しくは多結晶性シリコン、又は薄膜シリコン(例えば、非晶質、半晶質シリコン)、並びに、ガリウムヒ素、ジセレン化銅インジウム、有機半導体、CIGSなどの非シリコン材料、並びにこれらに類するものが挙げられる。2つのタイプの太陽電池、ウェーハ及び薄膜、が存在する。ウェーハは、単結晶若しくは多結晶のインゴット又は鋳物から機械的に切り取ることによって作製された、半導体材料の薄板である。薄膜ベースの太陽電池は、スパッタリング又は化学蒸着法等を用いて、典型的には基板又はスーパー基板(supersubstrate)の上に堆積された、半導体材料の連続層である。
【0180】
ウェーハ及び薄膜の太陽電池は、しばしば、モジュールが1つ以上の支持体を必要とするような具合に、十分脆弱である。支持体は、剛体であることもあり(例えば、ガラス板の剛体材料)、又は、それは、可撓性材料(例えば、金属膜及び/又は、ポリイミド若しくはポリエチレンテレフタレートのような好適なポリマー材料のシート)であり得る。支持体は、最上層又はスーパーストレート(superstrate)、すなわち、太陽電池と光源との間に配置され得、それは、光源から来る光に対して透明である。別の方法としては又は加えて、支持体は、太陽電池の後ろに配置される最下層であり得る。
【0181】
本発明のコーティング組成物は、ソーラーパネルの前面の上にコーティングされ得る。好ましいコーティング厚さは、反射防止コーティングについては100nm〜200nmの範囲である。図4は、本発明のコーティング44でコーティングされたガラス製前面基材42を有するソーラーパネル40の概略斜視図を図示する。
【0182】
下記の項目が提供される。
【0183】
項目1は基材表面の改質方法であり、この方法は、コーティング組成物を基材に適用することと、基材上に親水性コーティングを形成するためにコーティング組成物を乾燥させることと、を含む。このコーティング組成物は、共有結合を介して表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、この官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ;アミン反応性基;及び任意の親水基を含む)と、任意の界面活性剤と、水及び存在する場合には液体媒質の総重量に基づいて30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質と、を含む。コーティングされた基材は、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す。
【0184】
項目2は、アミン及び/又は保護アミン基がナノ粒子の一部分に共有結合し、アミン反応性基がナノ粒子の異なる部分に共有結合している、項目1の方法である。
【0185】
項目3は、コーティング組成物が、共有結合したアミン基を含むナノ粒子の一部分と、共有結合したエポキシ基を含むナノ粒子の異なる部分と、を含む、項目2の方法である。
【0186】
項目4は、ナノ粒子が60nm以下の平均粒径を有する、項目1〜3のうちのいずれか1つの方法である。
【0187】
項目5は、ナノ粒子が20nm以下の平均粒径を有する、項目3の方法である。
【0188】
項目6は、ナノ粒子の少なくとも一部分がシリカナノ粒子を含む、項目1〜5のうちのいずれか1つの方法である。
【0189】
項目7は、ナノ粒子の少なくとも一部分が共有結合した親水基を持つものを含む、項目1〜6のうちのいずれか1つの方法である。
【0190】
項目8は、親水基が、カルボキシレート基、複数のカルボキシレート基を持つ構造単位、硫酸半エステル基、複数の硫酸半エステル基を持つ構造単位、スルホン酸基、複数のスルホン酸基を持つ構造単位、リン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基、複数のリン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基を持つ構造単位、ホスホン酸基、複数のホスホン酸基を持つ構造単位、これらの酸並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目7の方法である。
【0191】
項目9は、親水基が、四級アンモニウム基、四級ホスホニウム基、三級スルホニウム基、ヒドロキシル基、ポリエチレンオキシド基、これらの組み合わせ及びこれらの複数を持つ構造単位からなる群から選択される、項目7の方法である。
【0192】
項目10は、親水基が帯電している、項目7の方法である。
【0193】
項目11は、親水基がコーティング組成物中の粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも1モル%に相当する量で存在する、項目7の方法である。
【0194】
項目12は、アミン基がコーティング組成物中の粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する、項目1〜11のうちのいずれか1つの方法である。
【0195】
項目13は、アミン反応性基がコーティング組成物中の粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する、項目1〜12のうちのいずれか1つの方法である。
【0196】
項目14は、アミン基及びアミン反応性基がコーティング組成物中にほぼ等モル量で存在する、項目1〜13のうちのいずれか1つの方法である。
【0197】
項目15は、コーティング組成物がpH 3〜8である、項目1〜14のうちのいずれか1つの方法である。
【0198】
項目16は、コーティング組成物がコーティング組成物の総重量に基づいて少なくとも0.1重量%でかつ30重量%以下のナノ粒子を含む、項目1〜15のうちのいずれか1つの方法である。
【0199】
項目17は、コーティング組成物がコーティング組成物の総重量に基づいて少なくとも0.1重量%の界面活性剤を含む、項目1〜16のうちのいずれか1つの方法である。
【0200】
項目18は、乾燥したコーティングが曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び/又は静電気防止性を少なくとも24時間にわたって基材にもたらす、項目1〜17のうちのいずれか1つの方法である。
【0201】
項目19は、項目1〜18のうちのいずれか1つの方法を用いて改質された基材表面を備える物品である。
【0202】
項目20は、共有結合を介して表面に結合した官能基を含むナノ粒子と、任意の界面活性剤と、水及び存在する場合には液体媒質の総重量に基づいて30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質と、を含むコーティング組成物である。官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ;アミン反応性基;及び任意の親水基を含む。このコーティング組成物は、親水性コーティングを基材にもたらし、コーティングし、乾燥させると、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び反射防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を有する。
【0203】
項目21は、アミン及び/又は保護アミン基がナノ粒子の一部分に共有結合し、アミン反応性基がナノ粒子の別の異なる部分に共有結合している、項目20のコーティング組成物である。
【0204】
項目22は、共有結合したアミン基を含むナノ粒子の一部分と、共有結合したアミン反応性基を含むナノ粒子の異なる部分と、を含む、項目21のコーティング組成物である。
【0205】
項目23は、ナノ粒子が60nm以下の平均粒径を有する、項目20〜22のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0206】
項目24は、ナノ粒子が20nm以下の平均粒径を有する、項目23のコーティング組成物である。
【0207】
項目25は、ナノ粒子の少なくとも一部分がシリカナノ粒子を含む、項目20〜24のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0208】
項目26は、ナノ粒子の少なくとも一部分に、共有結合した親水基を持つものを含む、項目20〜25のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0209】
項目27は、親水基が、カルボキシレート基、複数のカルボキシレート基を持つ構造単位、硫酸半エステル基、複数の硫酸半エステル基を持つ構造単位、スルホン酸基、複数のスルホン酸基を持つ構造単位、リン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基、複数のリン酸モノエステル基及び/又はリン酸ジエステル基を持つ構造単位、ホスホン酸基、複数のホスホン酸基を持つ構造単位、これらの酸並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目26のコーティング組成物である。
【0210】
項目28は、親水基が、四級アンモニウム基、四級ホスホニウム基、三級スルホニウム基、ヒドロキシル基、ポリエチレンオキシド基、これらの組み合わせ及びこれらの複数を持つ構造単位からなる群から選択される、項目26のコーティング組成物である。
【0211】
項目29は、親水基が帯電している、項目26のコーティング組成物である。
【0212】
項目30は、親水基がコーティング組成物中の粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも1モル%に相当する量で存在する、項目26のコーティング組成物である。
【0213】
項目31は、アミン基がコーティング組成物中の粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する、項目20〜30のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0214】
項目32は、アミン反応性基がコーティング組成物中の粒子表面上に、この表面上の官能基の合計モルの少なくとも3モル%に相当する量で存在する、項目20〜31のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0215】
項目33は、アミン基及びアミン反応性基がコーティング組成物中にほぼ等モル量で存在する、項目20〜32のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0216】
項目34は、pH 3〜8である、項目20〜33のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0217】
項目35は、コーティング組成物の総重量に基づいて少なくとも0.1重量%かつ30重量%以下のナノ粒子を含む項目20〜34のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0218】
項目36は、コーティング組成物の総重量に基づいて20重量%以下のナノ粒子を含む項目20〜35のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0219】
項目37は、コーティング組成物の総重量に基づいて少なくとも0.1重量%の界面活性剤を含む、項目20〜36のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0220】
項目38は、乾燥したコーティングが曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び/又は静電気防止性を少なくとも24時間にわたって基材にもたらす、項目20〜37のうちのいずれか1つのコーティング組成物である。
【0221】
項目39は、項目20〜38のうちのいずれか1つのコーティング組成物を用いて改質された基材表面を備える物品である。
【0222】
項目40は、基材表面を改質するためのキットである。このキットは、第一組成物を含む少なくとも1つの容器と、第二組成物を含む少なくとも1つの容器と、を含む。第一組成物は、ナノ粒子と、任意の界面活性剤と、水と、を含む。このナノ粒子は、共有結合を介して表面に結合した官能基を含み、ここで、この官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ;及び任意の親水基を含む。第二組成物は、ナノ粒子と、任意の界面活性剤と、水と、を含む。このナノ粒子は、共有結合を介して表面に結合した官能基を含み、ここで、この官能基は、アミン反応性基;及び任意の親水基を含む。このコーティング組成物は、組み合わせて、基材に適用し、乾燥させると、基材上に親水性コーティングをもたらし、これは、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す。
【0223】
項目41は、親水性コーティングでコーティングされた少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を含む基材を含む物品であり、ここで、この親水性コーティングは、ナノ粒子に共有結合した官能基の反応により形成された共有化学結合を介して連結した1つ以上のタイプのナノ粒子を含む樹枝状ネットワークを含み、この官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせとアミン反応性基とを含み、コーティングされた基材は、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す。
【0224】
項目42は、人身保護物品である項目41の物品である。
【0225】
項目43は、ソーラーパネルである項目41の物品である。
【0226】
項目44は、基材がガラスである項目43の物品である。
【0227】
項目45は、ガラスが強化されている項目43の物品である。
【0228】
項目46は、反応に先立って、アミン及び/又は保護アミン基がナノ粒子の一部分に共有結合され、アミン基がナノ粒子の別の異なる部分に共有結合されている、項目41〜45のうちのいずれか1つの物品である。
【0229】
項目47は、シリカナノ粒子の水分散体をアミノ基で官能化する方法である。この方法は、負に帯電したシリカナノ粒子を形成するためにシリカナノ粒子の水分散体のpHを少なくとも10.5に調整することと、負に帯電したシリカナノ粒子を、アルコキシシリル末端を含むアルコキシアミノアルキル置換有機シラン化合物と組み合わせることと、アルコキシアミノアルキル置換有機シラン化合物のアルコキシシリル末端を負に帯電したシリカ表面と優先的に反応させるのに有効な時間にわたって、アルコキシアミノアルキル置換有機シラン化合物を負に帯電したシリカナノ粒子と反応させておくことと、を含む。
【実施例1】
【0230】
別段に示されない限り、化学試薬及び溶媒はAldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI)から入手したか又は入手可能なものである。特に指示がない限り、実施例に記載される部、百分率又は比率はすべて、重量による。
【0231】
シリカナノ粒子分散体1034a(20−nm)、2327(20−nm)、1050(20−nm)、1115(4−nm)及び2326(5−nm)は、Nalco Company(Naperville,IL)から入手された。
【0232】
水性有機シラノール−スルホン酸ナトリウム塩(NaOSi(OH)(CHSONa、12.1重量%、pH=13.1)(SAS)、3−(グリシドキシプロピル)−トリメトキシシラン(GPS、97%)、3−(グリシドキシプロピル)−トリメトキシシラン(KH560、97%)、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(TTMS、メチルアルコール中50%)及びN−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸(EDTAS)は、Gelest Inc.(Morrisville,PA)から又はZhejiang Chem−Tech Group Co.,Ltd.(Hangzhou,Zhejiang Province,China)から又はDow Corning Company(Midland,MI)から入手した。
【0233】
テトラエトキシシラン(TEOS、99.9%)は、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手した。
【0234】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムは、商品名「MELINEX 618」としてE.I.DuPont de Nemours(Wilmington,DE)から入手され、5.0ミル(0.13mm)の厚さ及びプライミング済み表面を有していた。
【0235】
ポリカーボネート(PC)フィルムは、商品名LEXAN 8010(0.381mm)、8010SHC(1.0−mm)及びOQ92として、GE Advanced Materials Specialty Film and Sheet,(Pittsfield,MA)から入手可能である。
【0236】
PELLATHENE 2363は、Dow Chemical(Midland MI)から入手可能なポリエーテル系ポリウレタンである。
【0237】
ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムは、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能な3M(商標)SCOTCHCAL Luster Overlaminate 8519、1.25ミル(0.032mm)であった。
【0238】
曇り防止性能試験
コーティングされた試料の表面を様々な状況で水蒸気にさらすことによって曇り防止性能が評価された。指定基材を、ブロックされた塗布器又は1ミル(0.025mm)のギャップを有するMeyerバー、及び5重量%のシリカ分散物(合計シリカ重量)を用いてコーティングし、100〜200nmの範囲の乾燥コーティング厚さを得た。コーティングされた試料を80〜100℃に5分〜10分にわたって加熱し、乾燥させた。
【0239】
乾燥したコーティング済み表面は、室温に保たれ、15〜20℃の温度に保たれた水が入った容器の上の水蒸気にさらされた。コーティングは、水の容器の上に試料を保持した直後に、コーティングされた試料面に、はっきりと透視することができないほど試料の透明性を有意に低下させるのに十分な数の、小さな凝縮した水滴が推積しなければ、曇り防止であると見なされた。コーティング組成物は、たとえ均一の水膜又は少数の大きな水滴がコーティングされた表面に形成されたとしても、コーティングされた試料の透明性が、容易に透視できなくなるほど有意に低下しさえしなければ、曇り防止であると見なされた。
【0240】
接触角測定
Millipore Corporation(Billerica,MA)から入手した濾過システムを通して濾過した脱イオン水をそのまま用い、AST Products(Billerica,MA)製商品番号VCA−2500XEとして入手可能なビデオ接触角分析計により、乾燥したコーティング済み試料上で静的水接触角(すなわち、「接触角」)の測定を行った。報告する値は、液滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴の測定値の平均であり、これは表3及び4に示される。液滴量は静的測定について1μLであった。
【0241】
耐久性試験1
機械的耐久性は、実施例に示されるように乾燥している及び湿潤しているKIMWIPEティッシュでコーティング済み表面を(手により通常の圧力で)摩擦することにより評価された。表3及び4に報告された数字は、光透過率により判定したとき、コーティングを視覚的に除去するのに必要な拭き取り回数を指す、すなわち、コーティングは、乾燥KIMWIPEで「x」回擦り、湿潤KIMWIPEで「y」回擦った後に擦過傷が付いた。
【0242】
耐久性試験2
機械的耐久性は、実施例に示されるように乾燥している及び湿潤しているKIMWIPEティッシュでコーティング済み表面を(手により耐久性試験1よりもはるかに大きな圧力で)強く摩擦することにより評価された。表3及び4に報告された数字は、光透過率により判定したとき、コーティングを視覚的に除去するのに必要な拭き取り回数を指す、すなわち、コーティングは、乾燥KIMWIPEで「x」回擦り、湿潤KIMWIPEで「y」回擦った後に擦過傷が付いた。
【0243】
耐久性試験3
機械的耐久性は、濡れた状態及び乾燥した状態で擦ることにより評価された。乾燥した状態の擦りは、ペーパータオルでコーティング表面を(手により強い圧力で)20回摩擦することにより行った。濡れた状態の擦りは、布巾及び1.0重量%の洗剤水溶液(Shanghai Baimao Company)からのアニオン性及び非イオン性界面活性剤を有する市販の食器洗剤)と共に1kgの重りを200〜10,000サイクルにわたって用いて、Gardner Abrasion Tester(BYK−Gardner(Columbia,Maryland))で行った(表6及び7を参照されたい)。
【0244】
洗浄容易性試験
この試験は、Gorecki Manufacturing Inc.(Milaca,MN)から入手可能なGorecki Standard Carpet Soilの中にコーティング済み基材を浸漬し、30分にわたって振盪することにより行われた。別の方法としては、実施例にそのように示してある場合には、30秒だけ振盪を行った。試料を汚れ容器から取り出し、水道水で毎分750ミリメートル(mL/分)の速度にて1分にわたってすすいだ。試料をこれらの外観に基づいて評価した。「良好」という評価は試料が完全にきれいである場合に与えられ、「不良」という評価は試料がきれいではない場合に与えられた(表3及び4を参照されたい)。
【0245】
反射防止試験1
試料は、実験処理を行った及び行わなかったフィルムであった。全光線及び拡散半球透過率データをこれらの試料について測定した。測定は、PELA−1000積分球付属品(Perkin Elmer(Shelton,CT,USA))を取り付けたPerkin Elmer Lambda 900分光光度計で行った。この球は、直径が150mm(6インチ)であり、並びに「ASTM Standards on Color and Appearance Measurement,」Third Edition,ASTM,1991に公開されているように、ASTM方法E903、D1003、E308などに準拠している。全光線半球透過率の増加は、処理された試料についての表面反射率減少の結果として解釈される。「はい」は、透過率が片面当たり少なくとも0.5%、典型的には3〜5%増加することを意味する。
【0246】
反射防止試験2
試料は、実験処理を行った及び行わなかったソーラーガラスであった。全光線透過率測定は、HAZE−GARD DUAL曇価及び透過率計(BYK−Gardner(Columbia,Maryland,USA))で行った。透過率%は、ASTM D1003に従って太陽昼間光波長範囲(CIE D65標準光源)の平均として計器から直接読み取った(表6を参照されたい)。湿熱経時変化の効果を決定するために、コーティング済み試料を、IEC61215に従って85℃及び85%相対湿度にてチャンバ内で2160時間にわたって経時変化させ、光透過率%を再測定した(表8を参照されたい)。
【0247】
光から電気への変換率試験
SPI−Sun Simulator 4600ソーラーパネルテスター(SPIRE(Bedford,MA)から入手可能)を使用して、IEC61215に従ってPmaxにより測定されるように、光から電気への変換率を試験した。Pmaxは、ワット単位でのピーク電力として定義される十分に定義された産業パラメータである。標準サイズの光起電ソーラーモジュール(1574mm×794mm)を試験に使用した。変換率は、スプレーコーティングの前後に測定した。モジュールはテスターの表面上にセットし、ガラス表面は25℃にてテスターの光源に対して下に向けた。PmaxをSPIREソフトウェアにより自動的に計算した。表9は、強化後の、実施例25についての様々な繰り返し試行を表す。2つの異なるコーティング(0005及び0006)を超音波噴霧器で行い、各試料を5回試験した。
【0248】
表面抵抗率試験
コーティングした試料の表面抵抗率は、100Vの設定で25℃にて10秒充電時間にわたってHiresta HT260(OAI,San Jose,CA,USA)器具を用いて測定した。
【0249】
表面改質ナノ粒子(SMN)1(エポキシ官能化−20−nmナノ粒子):
NALCO 1050シリカナノ粒子(20グラム(g)、50重量%)及び脱イオン水(80g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHを1Nの塩酸を用いて5〜6の範囲内であるように調整した。エタノール(5g)中の(表1に指すような)GPS量を1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を室温にて更に48時間にわたって連続撹拌した。コーティング溶液濃度は約10重量%であり、例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製に使用した。
【0250】
SMN 2(アミン官能化−20−nmナノ粒子):
NALCO 1050シリカナノ粒子(8g、50重量%)及び脱イオン水(8g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHを1NのNaOHを用いて約11に調整した。エタノール(5g)中のAEAPTMS(0.53g)を1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を80℃にて更に14時間にわたって連続撹拌した。得られた溶液(25%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0251】
SMN 3(アミン官能化−5−nmナノ粒子):
NALCO 2326シリカナノ粒子(25g、20重量%)及び脱イオン水(25g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHは、0.1Nの水酸化ナトリウムを用いて約11に調整した。エタノール(5g)中のAEAPTMS(2.66g)を1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を80℃にて更に14時間にわたって連続撹拌した。得られた溶液(8重量%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0252】
SMN 4(アミン官能化−4−nmナノ粒子):
NALCO 1115シリカナノ粒子(30g、20重量%)及び脱イオン水(30g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHは、0.1Nの水酸化ナトリウムを用いて約12に調整された。エタノール(5g)中のAEAPTMS(3.63g)を1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を20℃にて更に14時間にわたって連続撹拌した。得られた溶液(14.3重量%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0253】
SMN 5〜7(エポキシ/スルホン酸官能化−20−nmナノ粒子):
NALCO 1050シリカナノ粒子(50g、10重量%)及び脱イオン水(40g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHを1Nの塩酸を用いて7.2〜7.8の範囲内であるように調整した。適切な量のエタノール(5g)中のGPSと脱イオン水(2.5g)中のSAS(3−(トリヒドロキシシリル)−1−プロパンスルホン酸)を1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加して、様々な比のエポキシアルコキシシランとスルホン酸シラノールを得(表1)、得られた混合物を更に12時間にわたって80℃にて連続撹拌した。得られた溶液(10重量%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0254】
SMN 8〜10(アミン/スルホン酸官能化−4−nmナノ粒子):
NALCO 1115シリカナノ粒子(25g、20重量%)及び脱イオン水(25g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHは、0.1Nの水酸化ナトリウムを用いて約12に調整された。適切な量のエタノール(2.5g)中のAEAPTMSと脱イオン水(2.5g)中のSASを1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加して、得られた混合物を更に12時間にわたって80℃にて連続撹拌した。得られた溶液(14.3重量%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0255】
SMN 11〜12(エポキシ/TTMS官能化−20−nmナノ粒子):
脱イオン水中のNalco 1050シリカナノ粒子(10g、10重量%)を15分にわたってガラスのジャーの中で撹拌した。この混合物のpHは、1Nの塩酸を用いて約2.5に調整された。適切な量のエタノール(5g)中のGPSと脱イオン水(2.5g)中のTTMSを1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加して、得られた混合物を更に12時間にわたって室温にて連続撹拌した。得られた溶液(約10重量%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0256】
SMN 13〜14(アミン/TTMS官能化−4−nmナノ粒子):
脱イオン水中のNalco 1115シリカナノ粒子(25g、10重量%)を15分にわたってガラスのジャーの中で撹拌した。この混合物のpHを1Nの水酸化カリウムを用いて11〜12の範囲内であるように調整した。適切な量のエタノール(5g)中のAEAPTMSと脱イオン水(2.5g)中のTTMSを1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加して、得られた混合物を更に12時間にわたって80℃にて連続撹拌した。得られた溶液(約10重量%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0257】
SMN 15(エポキシ/EDTAS官能化−20−nmナノ粒子):
脱イオン水中のNalco 1050シリカナノ粒子(10g、10重量%)を15分にわたってガラスのジャーの中で撹拌した。この混合物のpHは、1Nの塩酸を用いて約2.5に調整された。適切な量のエタノール(5g)中のGPSと脱イオン水(2.5g)中のEDTASを1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加して、得られた混合物を更に12時間にわたって室温にて連続撹拌した。得られた溶液(約10重量%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0258】
SMN 16(アミン/EDTAS官能化−4−nmナノ粒子):
脱イオン水中のNalco 1115シリカナノ粒子(25g、10重量%)を15分にわたってガラスのジャーの中で撹拌した。この混合物のpHを1Nの水酸化カリウムを用いて11〜12の範囲内であるように調整した。適切な量のエタノール(5g)中のAEAPTMSと脱イオン水(2.5g)中のEDTASを1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加して、得られた混合物を更に12時間にわたって80℃にて連続撹拌した。得られた溶液(約10重量%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0259】
SMN−17(アクリル/スルホン酸官能化−20−nmナノ粒子):
脱イオン水中のNalco 1050シリカナノ粒子(2g、10重量%)をエタノール(5g)中で脱イオン水中のSAS(3−(トリヒドロキシシリル)−1−プロパンスルホン酸、157.4mg)と一緒に撹拌し、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(94.4mg)を添加し、得られた混合物を封止した反応槽内で80℃にて4〜6時間にわたって連続撹拌した。得られた溶液(10重量%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0260】
SMN−18(アミン官能化−20−nmナノ粒子):
NALCO 1050シリカナノ粒子(8g、50重量%)及び脱イオン水(8g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHを1NのNaOHを用いて約11に調整した。エタノール(5g)中のAEAPTMS(0.27g)を1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を80℃にて更に14時間にわたって連続撹拌した。得られた溶液(25%)を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。
【0261】
SMN−19(エポキシ官能化−20−nmナノ粒子、SMN 18と共に):
SMN 1をSMN 18及び裸のシリカナノ粒子(1115)と1:1:1の比で5〜10重量%水溶液中で混合した。この混合物のpHを1Nの塩酸を用いて3〜5の範囲内であるように調整した。この混合物を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。コーティング溶液をPET基材上にMeyerバー#6を用いてコーティングして、乾燥させて、0.6マイクロメートルの厚さを有するコーティングを得た。コーティングした試料を次に120℃にて5〜30分にわたって乾燥させた。
【0262】
SMN−20(エポキシ官能化−20−nmナノ粒子、SMN−18及び裸の(1115)ナノ粒子と共に):
SMN 1をSMN 18及び裸のシリカナノ粒子(1115)と1:1:1の比で混合した。この混合物のpHを1Nの塩酸を用いて3〜5の範囲内であるように調整した。この混合物を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。コーティング溶液をPET基材上にMeyerバー#6を用いてコーティングして、乾燥させて、0.6マイクロメートルの厚さを有するコーティングを得た。コーティングした試料を次に120℃にて5〜30分にわたって乾燥させた。
【0263】
SMN−21(エポキシ官能化−20−nmナノ粒子(SMN 1)、SMN−18及びTEOSと共に):
SMN 1をSMN 18及びTEOSと1:1:1の比で5〜10重量%水溶液中で混合した。この混合物のpHを1Nの塩酸を用いて3〜5の範囲内であるように調整した。この混合物を例えば、表3及び4に記載のコーティング試料の調製において使用した。コーティング溶液をPET基材上にMeyerバー#6を用いてコーティングして、乾燥させて、0.6マイクロメートルの厚さを有するコーティングを得た。コーティングした試料を次に120℃にて5〜30分にわたって乾燥させた。
【0264】
SMN−22(エポキシ官能化−20−nmナノ粒子):
Nalco 1050シリカナノ粒子(80.5グラム(g)、50重量%)及び脱イオン水(328.5g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHを、濃塩酸を用いて約1.49に調整した。3.05グラム(g)のGPSを1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を60℃にて一晩連続撹拌した。コーティング溶液濃度は約10重量%であり、例えば、実施例25〜27についてのコーティング試料の調製に使用した。
【0265】
SMN−23(アミン官能化−5−nmナノ粒子):
NALCO 2326シリカナノ粒子(304.5g、20重量%)及び脱イオン水(306.8g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHは、2Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて約11であるように調整された。AEAPTMS(2.49g)を1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を60℃にて一晩連続撹拌した。得られた溶液(7.5重量%)を例えば、実施例25〜26についてのコーティング試料の調製において使用した。
【0266】
SMN−24(エポキシ官能化−40〜100nmナノ粒子):
日産化学STOUP 40〜100nm針状シリカナノ粒子(10.0g、15重量%水溶液)及び脱イオン水(10g)をガラスのジャーの中で15分にわたって一緒に撹拌した。この混合物のpHを1NのHNOを用いて1.56に調整した。3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(11.0g、KH560、Zhejiang Chemical Co.Ltd.)を1〜1.5時間にわたって撹拌しながら滴加し、得られた混合物を60℃にて一晩連続撹拌した。コーティング溶液濃度は約7.5重量%であり、実施例27についてのコーティングの調製に使用した。
【0267】
【表4】

【0268】
(実施例1〜24)
表1に示している通りの適切な量のSMN溶液を混合することにより、コーティング溶液(5重量%)を調製した。Meyerバー#3を用いてコーティング溶液を基材上にコーティングして、約100〜150nmの乾燥コーティング厚さを得た。コーティングした試料を次に100℃にて10分にわたって乾燥させた。
【0269】
実施例21〜24についてのコーティング溶液をPET基材上にMeyerバー#6を用いてコーティングして、乾燥させて、0.6マイクロメートルの厚さを有するコーティングを得た。コーティングした試料を次に120℃にて5〜30分にわたって乾燥させた。
【0270】
(実施例25〜27)
適切な量のSMN−22及びSMN−23を水及び界面活性剤と混合して湿潤を改善させることにより、コーティング溶液(2〜3重量%)を調製した。徐々に5.5gのSMN−22を10gのSMN−23に添加することにより、実施例25を調製した。次に、46gの脱イオン水を添加して溶液を希釈し、その後、0.23gのTRITON BG10の10%溶液、0.11gのRHODOCAL DS−10の5%溶液及び0.21gのCAPB−30Sの10%溶液を添加した。11gのSMN−22を10gのSMN−23と混合することを除いて実施例25の通りに、実施例26を調製した。同じ界面活性剤及び量及び水を両方の実施例において使用した。0.26gのSMN−24を10gの実施例25配合物に徐々に添加することにより、実施例27を調製した。それゆえに、実施例27は、ほんの少量の針状粒子が針状ではない粒子とブレンドされた混合物を表す。コーティング溶液をソーラーガラス基材(Zhejiang Flat Mirror Glass Co.Ltd.(FLT))の滑らかな面にスプレーコーティングし(単純な噴霧器)、様々な温度にて特定時間にわたって加熱した。表6〜8は、コーティング及び加熱後の透過率%、濡れた状態及び乾燥した状態の耐久性試験及び経時変化試験の結果を示す。
【0271】
実施例25も商業的な超音波アトマイザー及び噴霧器を用いて10種の異なるスプレー流量を使用してコーティングした。この場合、200℃/3分におけるガラスのコーティング及び加熱後の透過率%における増加は、コーティングされていないガラスと比較して1.32〜1.59であった。700〜730℃/3分におけるガラスのコーティング及び加熱後の透過率%における増加は、コーティングされていないガラスと比較して1.36〜1.85であった。それゆえに、実施例25については、200℃/3分におけるコーティング及び加熱からの透過率%と比較して700〜730℃/3分にて強化するとき、0〜0.52の透過率%の増加が見られた。スプレー流量と透過率における増加との間には強い相関関係はなかったが、通常は、流量が多いほど透過率の増加は大きい。それゆえに、実施例25は、矛盾なく及び驚くべきことに、200℃/3分で加熱したときよりも700〜730℃/3分で強化したときの透過率の方が増加が大きいことを示した。
【0272】
表9は、強化後、実施例25での様々な繰り返し試行を表す。超音波アトマイザーで2つの別個のコーティング(0005及び0006)を行い、各試料を5回試験してPmaxを出した。
【0273】
スプレーコーティングして700℃に5分にわたって加熱した実施例26を「洗浄容易性試験」(30秒のみ振盪)を用いて評価したところ、評価は「良好」であった。
【0274】
【表5】

【0275】
【表6】

【0276】
【表7】

【0277】
【表8】

【0278】
【表9】


NT=試験せず
【0279】
【表10】

【0280】
【表11】

【0281】
【表12】

【0282】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参考として組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する「特許請求の範囲」によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面の改質方法であって、該方法は:
コーティング組成物を基材に適用することであって、ここで、前記コーティング組成物が:
共有結合を介して表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、前記官能基は:
アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ;
アミン反応性基;及び
任意の親水基を含む)と、
任意の界面活性剤と、
水及び存在する場合には液体媒質の総重量に基づいて30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質と、を含む、適用することと、
前記基材上に親水性コーティングを形成するために前記コーティング組成物を乾燥させることと、を含み、
ここで、前記コーティングされた基材は、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す、方法。
【請求項2】
コーティング組成物であって、
共有結合を介して表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、前記官能基は:
アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ;
アミン反応性基;及び
任意の親水基を含む)と、
任意の界面活性剤と、
水及び存在する場合には液体媒質の総重量に基づいて30重量%以下の有機溶媒を含む液体媒質と、を含み、
ここで、前記コーティング組成物は、親水性コーティングを基材にもたらし、コーティングし、乾燥させると、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び反射防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を有する、コーティング組成物。
【請求項3】
前記アミン及び/又は保護アミン基がナノ粒子の一部分に共有結合し、前記アミン反応性基がナノ粒子の異なる部分に共有結合している、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記コーティング組成物が:
共有結合したアミン基を含む前記ナノ粒子の一部分と、
共有結合したエポキシ基を含む前記ナノ粒子の異なる部分と、を含む、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
基材表面を改質するためのキットであって、該キットは:
共有結合を介して前記表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、前記官能基は:
アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせ;
任意の親水基を含む)と、
任意の界面活性剤と、
水と、を含む第一組成物を含む少なくとも1つの容器;並びに
共有結合を介して前記表面に結合した官能基を含むナノ粒子(ここで、前記官能基は:
アミン反応性基;
任意の親水基を含む)と、
任意の界面活性剤と、
水と、を含む第二組成物を含む少なくとも1つの容器を含み、
ここで、前記コーティング組成物は、組み合わせて、基材に適用し、乾燥させると、基材上に親水性コーティングをもたらし、前記親水性コーティングは、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す、キット。
【請求項6】
親水性コーティングでコーティングされた少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を含む基材を含む物品であって、ここで、前記親水性コーティングは、ナノ粒子に共有結合した官能基の反応により形成された共有化学結合を介して連結した1つ以上のタイプのナノ粒子を含む樹枝状ネットワークを含み、前記官能基は、アミン基、保護アミン基又はこれらの組み合わせとアミン反応性基とを含み、前記コーティングされた基材は、曇り防止性、反射防止性、洗浄容易性及び静電気防止性からなる群から選択される少なくとも1つの性質において、コーティングされていない基材と比較して、改善を示す、物品。
【請求項7】
反応に先立って、前記アミン及び/又は保護アミン基がナノ粒子の一部分に共有結合され、前記アミン反応性基がナノ粒子の別の異なる部分に共有結合されている、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
人身保護物品である、請求項6に記載の物品。
【請求項9】
ソーラーパネルである、請求項6に記載の物品。
【請求項10】
前記基材がガラスである、請求項6に記載の物品。
【請求項11】
前記ガラスが強化されている、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
シリカナノ粒子の水分散体をアミノ基で官能化する方法であって、該方法は:
負に帯電したシリカナノ粒子を形成するためにシリカナノ粒子の水分散体のpHを少なくとも10.5に調整することと、
前記負に帯電したシリカナノ粒子を、アルコキシシリル末端を含むアルコキシアミノアルキル置換有機シラン化合物と組み合わせることと、
前記アルコキシアミノアルキル置換有機シラン化合物のアルコキシシリル末端を前記負に帯電したシリカ表面と優先的に反応させるのに有効な時間にわたって、前記アルコキシアミノアルキル置換有機シラン化合物を前記負に帯電したシリカナノ粒子と反応させておくことと、を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−532214(P2012−532214A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517877(P2012−517877)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/040524
【国際公開番号】WO2011/002838
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】