説明

親水性コーティング

本発明は親水性コーティングを調製するためのコーティング配合物に関し、この親水性コーティング配合物は、親水性ポリマー、骨格および重合反応を受けることができる少なくとも2つの反応性部分を含む支持ポリマー、ノリッシュI型光開始剤、ならびにノリッシュII型光開始剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、親水性コーティングを調製するためのコーティング配合物に関する。本発明はさらに、コーティング系、親水性コーティング、潤滑性コーティング、潤滑性コーティングにおけるノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤の使用、物品、医療機器または部品、ならびに基材上の親水性コーティングの形成方法に関する。
【0002】
ガイドワイヤ、尿路および心血管カテーテル、シリンジ、および膜などの多数の医療機器は、体内への挿入および体内からの除去を容易にするため、そして/あるいは体内からの流体のドレナージを容易にするために、外面および/または内面に潤滑剤を塗布する必要がある。また、挿入または除去時の軟部組織の損傷を最小限にするためにも潤滑特性が必要とされる。特に、潤滑の目的で、このような医療機器は湿潤であるとき、すなわち患者の体内に機器を挿入する前の一定期間湿潤流体を適用したときに潤滑性になって低摩擦特性を達成する親水性表面コーティングまたは層を有してもよい。湿潤後に潤滑性になるコーティングまたは層は、以下、親水性コーティングと呼ばれる。湿潤後に得られるコーティングは、以下、潤滑性コーティングと呼ばれる。
【0003】
現在、このような潤滑性コーティングは多くの場合摩耗し易く、従って使用時にその潤滑特性が損失されることもある。
【0004】
そのため、本発明の目的は、高潤滑性に加えて改善された耐摩耗性を示す潤滑性コーティングを提供することである。
【0005】
ここで、意外にも、親水性コーティングを調製するためのコーティング配合物を用いることによって改善された耐摩耗性を有する潤滑性コーティングを得ることができ、この親水性コーティング配合物は、
(a)親水性ポリマーと、
(b)骨格および重合反応を受けることができる少なくとも2つの反応性部分を含む支持ポリマーであって、750〜20,000g/mol、好ましくは1,000〜15,000g/mol、より好ましくは1,100〜10,000g/mol、特に1,200〜7,000、より特別には1,400〜5,000g/molの範囲の数平均分子量を有する支持ポリマーと、
(c)ノリッシュI型光開始剤と、
(d)ノリッシュII型光開始剤と
を含むことが分かった。
【0006】
さらに、本発明に係る親水性コーティング配合物を硬化させることによって得られる親水性コーティングは、当該技術分野において既知の同様のコーティングと比較して、蛇行性試験において極めて耐摩耗性であることが分かっている。結果として、実験部分で記載されるガーゼ摩擦(gauze rub)試験における繰り返しの摩擦にもかかわらず、親水性コーティングの潤滑性は保存される。これは、親水性コーティングが深刻な負荷(torture)を受けるガイドワイヤおよびカテーテルなどの心血管用途のために特に有利である。
【0007】
本発明の文脈の中では、「潤滑性」は、滑りやすい表面を有すると定義される。カテーテルなどの医療機器の外面または内面上のコーティングは、(湿潤させたときに)損害をもたらすことなく、そして/あるいは許容できないレベルの不快感を被験者に引き起こすことなく意図される体の部位に挿入することができれば、潤滑性であると考えられる。特に、コーティングは、300gのクランプ力、1cm/sの引張り力、および22℃の温度においてHarland FTS5000摩擦試験機(HFT)で測定したときに20g以下、好ましくは15g以下の摩擦を有すれば潤滑性であると考えられる。プロトコルは実施例に示される通りである。
【0008】
「湿潤される」という用語は当該技術分野において一般に知られており、広義には、「水を含有する」を意味する。特に、本明細書において、この用語は、潤滑性であるのに十分な水を含有するコーティングを説明するために使用される。水の濃度に関して、通常、湿潤したコーティングは、コーティングの乾燥重量を基準として少なくとも10重量%、好ましくはコーティングの乾燥重量を基準として少なくとも50重量%、より好ましくはコーティングの乾燥重量を基準として少なくとも100重量%の水を含有する。例えば、本発明の特定の実施形態では、約300〜500重量%の水の吸水が実現可能である。湿潤流体の例は、処理水または未処理水、例えば有機溶媒との含水混合物、あるいは例えば塩、タンパク質または多糖類を含む水溶液である。特に、湿潤流体は体液であり得る。
【0009】
ノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤は、例えば、可視光または紫外線、電子ビーム、あるいはγ線照射を用いて本発明に係る親水性コーティング配合物を硬化させ、親水性コーティングを形成するために使用される。本明細書において、ノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤はいずれもフリーラジカル光開始剤であるが、開始ラジカルが形成される方法によって区別される。照射時に発色団の単分子結合開裂を受けて、重合を開始させるラジカルを発生する化合物は、ノリッシュI型またはホモリティック光開始剤と呼ばれる。ノリッシュII型光開始剤は、低分子量化合物またはポリマーであり得る適切な相乗剤からの水素引抜きによって間接的にラジカルを発生する。
【0010】
式(1):
【化1】


によって示されるように、照射時に単分子結合開裂を受ける化合物は、ノリッシュI型またはホモリティック光開始剤と呼ばれる。
【0011】
官能基の性質およびカルボニル基に対する分子内のその位置に依存して、フラグメンテーションは、カルボニル基に隣接する結合において(α開裂)、β位の結合において(β開裂)、あるいは特に弱い結合(C−S結合またはO−O結合のような)の場合には他の離れた位置において起こり得る。光開始剤分子における最も重要なフラグメンテーションは、アルキルアリールケトンのカルボニル基とアルキル残基との間の炭素−炭素結合のα−開裂であり、これは、ノリッシュI型反応として知られている。
【0012】
光開始剤が、励起状態にある間に、第2の分子(共開始剤COI)と相互作用をして、式(2)によって示されるように二分子反応においてラジカルを発生すれば、光開始剤はノリッシュII型光開始剤と呼ばれる。一般に、ノリッシュII型光開始剤の2つの主な反応経路は、励起開始剤による水素引抜きまたは光誘起電子移動の後のフラグメンテーションである。水素引抜きは、励起ジアリールケトンの典型的な反応である。光誘起電子移動はより一般的な過程であり、特定の種類の化合物に限定されない。
【化2】

【0013】
適切なノリッシュI型またはフリーラジカル光開始剤の例は、ベンゾイン誘導体、メチロールベンゾインおよび4−ベンゾイル−1,3−ジオキソラン誘導体、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンスルフィド、ハロゲン化アセトフェノン誘導体などである。適切なノリッシュI型光開始剤の市販の例は、Irgacure 2959(2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン)、Irgacure 651(ベンジルジメチルケタールまたは2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタノン、Ciba−Geigy)、Irgacure 184(活性成分として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、Ciba−Geigy)、Darocur 1173(活性成分として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、Ciba−Geigy)、Irgacure 907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、Ciba−Geigy)、Irgacure 369(活性成分として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、Ciba−Geigy)、Esacure KIP 150(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}、Fratelli Lamberti)、Esacure KIP 100F(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンのブレンド、Fratelli Lamberti)、Esacure KTO46(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキシドおよびメチルベンゾフェノン誘導体のブレンド、Fratelli Lamberti)、アシルホスフィンオキシド、例えばLucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、BASF)、Irgacure 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィン−オキシド、Ciba−Geigy)、Irgacure 1700(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシドおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの25:75%のブレンド、Ciba−Geigy)などである。I型光開始剤の混合物も使用することができる。
【0014】
本発明に係る親水性コーティング配合物において使用することができるノリッシュII型光開始剤の例としては、芳香族ケトン、例えばベンゾフェノン、キサントン、ベンゾフェノンの誘導体(例えば、クロロベンゾフェノン)、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体のブレンド(例えば、Photocure 81、4−メチル−ベンゾフェノンおよびベンゾフェノンの50/50ブレンド)、ミヒラーケトン、エチルミヒラーケトン、チオキサントンおよびQuantacure ITX(イソプロピルチオキサントン)のような他のキサントン誘導体、ベンジル、アントラキノン(例えば、2−エチルアントラキノン)、クマリン、あるいはこれらの光開始剤の化学誘導体または組み合わせが挙げられる。
【0015】
好ましいのは、水溶性であるかあるいは水溶性になるように調整可能であるノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤であり、同様に好ましい光開始剤は、高分子光開始剤または重合可能な光開始剤である。
【0016】
一般に、親水性コーティング配合物中の光開始剤の全重量は、乾燥コーティングの全重量を基準として0.2〜10重量%の間であり、好ましくは0.8〜8重量%の間である。
【0017】
以下、本出願において与えられる成分の百分率は全て、乾燥コーティング、すなわち親水性コーティング配合物を硬化させたときに形成される親水性コーティングの全重量を基準とする。
【0018】
通常、ノリッシュI型光開始剤:ノリッシュII型光開始剤の重量比は、10:1〜1:10の間であり、好ましくは5:1〜1:5の間である。
【0019】
国際公開第2006/056482号パンフレットには、2つのポリマー間の架橋を引き起こすためにノリッシュI型光開始剤が使用される、潤滑性コーティングを有する医療機器を提供するための方法が開示される。
【0020】
米国特許出願公開第2006/024060号明細書には、表面からの物理的摩耗に対する改善された耐性を有するポリエチレンオキシドおよびポリエーテルブロックアミドの親水性の潤滑性ポリマーブレンドが開示される。
【0021】
上記の特許出願のいずれにおいても、ノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤の併用は開示されていない。
【0022】
本発明に係るコーティング配合物は親水性ポリマーも含む。
【0023】
本発明の文脈の中では、ポリマーという用語は、2つ以上の繰り返し単位を含む分子のために使用される。特に、同じであっても異なっていてもよい2つ以上のモノマーで構成され得る。本明細書で使用される場合、この用語は、オリゴマーおよびプレポリマーを含む。通常、ポリマーは、約500g/mol以上、特に約1000g/mol以上の数平均重量(M)を有するが、ポリマーが比較的小さいモノマー単位で構成される場合には、Mはより低いこともある。本明細書において、そして以下において、Mは、場合によりサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)と組み合わせて光散乱によって決定されるMであると定義される。
【0024】
親水性ポリマーは、構成単位を含む巨大分子で構成される高分子量の線状、分枝状または架橋ポリマーであると理解される。親水性ポリマーはコーティングに親水性を提供することができ、合成されても生物に由来してもよく、両方のブレンドまたはコポリマーでもあり得る。親水性ポリマーは非イオン性でもイオン性でもよい。親水性コーティング配合物において、1つまたは複数の非イオン性またはイオン性の親水性ポリマーが適用されてもよく、あるいは1つまたは複数の非イオン性およびイオン性の親水性ポリマーの組み合わせが適用されてもよい。
【0025】
非イオン性の親水性ポリマーとしては、ポリ(ラクタム)、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、アクリル酸およびメタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、無水マレイン酸系コポリマー、ポリエステル、ビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(カルボン酸)、ポリアミド、ポリ無水物、ポリホスファゼン、セルロース、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース、ヘパリン、デキストラン、ポリペプチド、例えばコラーゲン、フィブリン、およびエラスチン、多糖類、例えばキトサン、ヒアルロン酸、アルギナート、ゼラチン、およびキチン、ポリエステル、例えばポリラクチド、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトン、ポリペプチド、例えばコラーゲン、アルブミン、オリゴペプチド、ポリペプチド、短鎖ペプチド、タンパク質、ならびにオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
一般に、非イオン性の親水性ポリマーは、約8,000〜約5,000,000g/molの範囲、好ましくは約20,000〜約3,000,000g/molの範囲、そしてより好ましくは約200,000〜約2,000,000g/molの範囲の分子量を有する。
【0027】
イオン性の親水性ポリマーとしては、例えば高分子電解質が挙げられる。本発明の文脈の中では、高分子電解質は、構成単位を含む巨大分子で構成される高分子量の線状、分枝状または架橋ポリマーであり、高分子電解質が潤滑性コーティング中にある場合には、構成単位の1〜100%がイオン化基を含有すると理解される。本明細書において、構成単位は、例えば繰り返し単位であり、例えばモノマーであると理解される。高分子電解質は、本明細書では、1つの種類の巨大分子で構成される1つの種類の高分子電解質を指すこともあるが、異なる種類の巨大分子で構成される2つ以上の異なる種類の高分子電解質を指すこともある。
【0028】
いくつかの用途については、より好都合な乾燥時間を得るために、親水性ポリマーとして高分子電解質を、単独または非イオン性の親水性ポリマーと組み合わせて使用するのが特に有利なこともある。本明細書において、乾燥時間は、機器が湿潤流体(機器が貯蔵および/または湿潤にされていた)から取り出された後に、潤滑性コーティングが潤滑性のままである期間であると定義される。潤滑性コーティングを用いたときに直面する周知の問題は、体内に挿入する前に、あるいは例えば粘膜または静脈と接触するときに体内でコーティングが水を失って乾燥し得ることなので、これは特に有利である。当然ながら、これは潤滑性コーティングの潤滑性および低摩擦特性に影響を与え、潤滑性コーティングを含む機器が体内へ挿入または体内から除去される場合に複雑な状況をもたらし得る。乾燥時間は、HFT(上記を参照)においてカテーテルが空気にさらされた時間に応じた摩擦をグラムで測定することによって決定することができる。
【0029】
適切な高分子電解質を選択する場合に考慮すべき事柄は、水性媒体中でのその溶解度および粘度、その分子量、その電荷密度、コーティングの支持網との親和性、ならびにその生体適合性である。本明細書において、生体適合性は、生きている哺乳類の組織において毒性、有害性または免疫応答を生じないことによる生物学的な適合性を意味する。
【0030】
移行性の低下のために、高分子電解質は、好ましくは、場合によりサイズ排除クロマトグラフィと組み合わせて光散乱によって決定できるように、少なくとも約1000g/molの重量平均分子量を有するポリマーである。比較的高い分子量の高分子電解質は、乾燥時間の増大および/またはコーティングからの移行の低下のために好ましい。高分子電解質の重量平均分子量は、好ましくは少なくとも20,000g/mol、より好ましくは少なくとも100,000g/mol、さらにより好ましくは少なくとも約150,000g/mol、特に約200,000g/mol、またはそれ以上である。コーティングの適用を容易にするために、平均重量は、1,000,000g/mol以下、特に500,000g/mol以下、より特別には300,000g/mol以下であることが好ましい。
【0031】
高分子電解質中に存在し得るイオン化基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、カルボキシラート基、スルファート基、スルフィン酸基、スルホン酸基、ホスファート基、およびホスホン酸基である。このような基は、水との結合において非常に有効である。本発明の一実施形態では、高分子電解質は、金属イオンも含む。金属イオンは水に溶解されると水分子と錯体化し、水イオン(aqua ion)[M(HO)n+(式中、xは配位数、nは金属イオンの電荷である)を形成し、従って水との結合において特に有効である。高分子電解質中に存在し得る金属イオンは、例えば、Na、Li、またはKなどのアルカリ金属イオン、あるいはCa2+およびMg2+などのアルカリ土類金属イオンである。特に、高分子電解質が第4級アミン塩、例えば第4級アンモニウム基を含む場合、アニオンが存在し得る。このようなアニオンは、例えば、Cl、Br、IおよびFなどのハロゲン化物であり、そしてまた、スルファート、ニトラート、カルボナートおよびホスファートでもあり得る。
【0032】
適切な高分子電解質は、例えば、アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、メタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、フマル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、スルホン酸基を含むモノマーのホモポリマーおよびコポリマーの塩、第4級アンモニウム塩を含むモノマーのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの混合物および/または誘導体である。適切な高分子電解の例は、ポリ(アクリルアミド−co−アクリル酸)塩、例えばポリ(アクリルアミド−co−アクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリルアミド−co−メタクリル酸)塩、例えばポリ(アクリルアミド−co−メタクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリルアミド−co−アクリル酸)塩、例えばポリ(メタクリルアミド−co−アクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリルアミド−co−メタクリル酸)塩、例えばポリ(メタクリルアミド−co−メタクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリル酸)塩、例えばポリ(アクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸)塩、例えばポリ(メタクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリル酸−co−マレイン酸)塩、例えばポリ(アクリル酸−co−マレイン酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸−co−マレイン酸)塩、例えばポリ(メタクリル酸−co−マレイン酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリルアミド−co−マレイン酸)塩、例えばポリ(アクリルアミド−co−マレイン酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリルアミド−co−マレイン酸)塩、例えばポリ(メタクリルアミド−co−マレイン酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)塩、ポリ(4−スチレンスルホン酸)塩、ポリ(アクリルアミド−co−ジアルキルアンモニウムクロリド)、4級化ポリ[ビス−(2−クロロエチル)エーテル−alt−1,3−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、ポリアリルアンモニウムホスファート、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(トリメチレンオキシエチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(ジメチルドデシル(2−アクリルアミドエチル)アンモニウムブロミド)、ポリ(2−Nメチルピリジニウムエチレンヨウ素)、ポリビニルスルホン酸、ならびにポリ(ビニル)ピリジン、ポリエチレンイミン、およびポリリジンの塩である。
【0033】
特に適切な高分子電解質は、ランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい共重合体高分子電解質であり、前記共重合体高分子電解質は少なくとも2つの異なる種類の構成単位を含むコポリマーであり、少なくとも1つの種類の構成単位はイオン化可能またはイオン化基を含み、少なくとも1つの種類の構成単位はイオン化可能またはイオン化基を含まない。本明細書において、「イオン化可能」は、中性水溶液中、すなわち、6〜8の間のpHを有する溶液中でイオン化可能であると理解される。このような共重合体高分子電解質の一例は、ポリ(アクリルアミド−co−アクリル酸)塩である。
【0034】
本発明の一実施形態では、親水性コーティング組成物は高分子電解質を含む。その場合には、親水性コーティング配合物は、通常、乾燥コーティングの全重量を基準として1〜90重量%、3〜50重量%、5〜30重量%、または10〜20重量%の高分子電解質を含む。
【0035】
非イオン性またはイオン性親水性ポリマーは、乾燥コーティングの全重量を基準として、1重量%よりも多く、例えば10重量%よりも多く、20重量%よりも多く、または30重量%よりも多く使用することができる。親水性ポリマーは95重量%まで存在することができるが、大抵、親水性ポリマーは、乾燥コーティングの全重量を基準として50、60、70または80重量%までで使用されるであろう。
【0036】
また親水性コーティング配合物は、骨格と、重合反応を受けることができる少なくとも2つの反応性部分とを含む支持ポリマーも含む。本明細書において、支持ポリマーは親水性官能基も含有し得る。
【0037】
支持網は、前記支持ポリマーの硬化時に形成することができる。支持ポリマーの反応性部分は、アルケン、アミノ、アミド、スルフヒドリル(SH)、不飽和エステル(アクリレートおよびメタクリレートなど)、不飽和エーテル、不飽和アミド、ならびにアルキド/ドライ樹脂などのラジカル反応性基からなる群から選択され得る。支持ポリマーは、骨格と、上記の反応性部分の少なくとも1つとを有する。支持ポリマーの骨格は、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリオキサゾリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリオルトエステルおよびアルキドコポリマーのようなポリエステル、ポリペプチド、またはセルロースおよびデンプンなどの多糖類、あるいは上記の任意の組み合わせからなる群から選択され得る。特に、不飽和エステル、アミドまたはエーテル、チオールまたはメルカプタン基を有するポリマーは、本発明において適切に使用することができる。
【0038】
支持ポリマーは、約750〜約20,000g/molの範囲、好ましくは約1,000〜約15,000g/molの範囲、より好ましくは約1100〜約10,000g/molの範囲、特に約1200〜約7000g/mol、より特別には約1400〜約5000g/molの範囲の数平均分子量を有する。比較的高い分子量の支持ポリマー、すなわち約750g/molよりも大きい、好ましくは約1,000g/molよりも大きい分子量を有する支持ポリマーを用いる利点は、比較的粗い支持網が形成され得ることである。このような比較的粗い支持網はより容易に膨潤し、それと共に、より高い潤滑性およびより長い乾燥時間を有するコーティングを提供するであろう。
【0039】
支持ポリマーの1分子あたりの反応性部分の平均数は、好ましくは約1.2〜約64の範囲、より好ましくは約1.2〜約16の範囲、最も好ましくは約1.2〜約8の範囲である。これは、少なくとも2つの反応性部分を含む支持ポリマー分子は別として、1つの反応性部分を含む支持ポリマー分子、すなわち単官能性ポリマーも存在し得ることを意味する。また単官能性支持ポリマーは、形成された支持網の一部であってもよい。
【0040】
支持ポリマーは、乾燥コーティングの全重量を基準として、1重量%よりも多く、例えば10%よりも多く、20重量%よりも多く、30重量%よりも多く、または40重量%よりも多く使用することができる。支持ポリマーは、親水性コーティング配合物中に90重量%まで存在することができるが、大抵、支持ポリマーは、乾燥コーティングの全重量を基準として50または60重量%までで使用されるであろう。
【0041】
親水性コーティング配合物において、支持ポリマーに対する親水性ポリマーの重量比は、例えば、10:90〜90:10の間(25:75〜75:25の間、または60:40〜40:60の間など)で変化し得る。
【0042】
本発明は、基材に塗布されて硬化されたときに親水性コーティングをもたらす親水性コーティング配合物に関する。本明細書において、親水性コーティング配合物は、液体親水性コーティング配合物、例えば、液体媒体を含む溶液または分散液を指す。本明細書において、表面における親水性コーティング配合物の塗布を可能にする液体媒体はいずれも十分であろう。液体媒体の例は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはそれぞれの異性体のようなアルコールおよびこれらの水性混合物、あるいはアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、ならびにこれらの水性混合物または乳濁液、あるいは水である。親水性コーティング配合物はさらに、硬化したときに親水性コーティングに転換され、従って硬化後も親水性コーティング中に残存する成分を含む。本明細書において、硬化は、物理的または化学的な硬化、あるいは任意の方法、例えば加熱、冷却、乾燥、結晶化による凝固、あるいは放射線硬化または加熱硬化などの化学反応の結果としての硬化を指すと理解される。硬化状態において、例えば、紫外線または電子ビーム放射を用いることによって、親水性コーティング配合物中の成分の全てまたは一部は架橋されて、成分の全てまたは一部の間に共有結合を形成することができる。しかしながら、硬化状態において、成分の全てまたは一部は、イオン結合、双極子−双極子型相互作用による結合、あるいはファンデルワールス力または水素結合による結合を形成してもよい。
【0043】
「硬化させる」という用語は、堅固なまたは固体のコーティングが形成されるように配合物を処理する任意の方法を含む。特に、この用語は、親水性ポリマーがさらに重合し、グラフトポリマーを形成するようにグラフトが提供され、そして/あるいは架橋ポリマーを形成するように架橋される処理を含む。
【0044】
また本発明は、本発明に係る親水性コーティング配合物を基材に塗布して、それを硬化させることによって得られる親水性コーティングにも関する。本発明はさらに、前記親水性コーティングに湿潤流体を適用することによって得られる潤滑性コーティングと、潤滑性コーティングにおいてその耐摩耗性を改善するためのノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤の使用とに関する。さらに、本発明は、本発明に係る少なくとも1つの親水性コーティングを含む物品、特に医療機器または医療機器部品と、基材上に本発明に係る親水性コーティングを形成する方法とに関する。
【0045】
親水性コーティングは、親水性ポリマーと、親水性ポリマーおよび支持ポリマーから形成される親水性支持網であり得る支持網とを含む。前記親水性コーティングは、親水性ポリマー、支持ポリマー、ノリッシュI型光開始剤およびノリッシュII型光開始剤を含む親水性コーティング配合物を硬化させることによって形成される。好ましくは、親水性ポリマーおよび/または親水性支持網は、互いに共有結合および/または物理的に結合され、そして/あるいは捕捉されて、硬化後にポリマー網を形成する。
【0046】
親水性ポリマーおよび/または支持ポリマーが親水性コーティング内でポリマー網の一部として共有結合および/または物理的に結合されているという事実は、例えば医療機器に被覆される場合に、親水性ポリマーが親水性コーティングの環境内にほとんど漏出しないという利点を有する。これは、医療機器がヒトまたは動物の体内にある場合に特に有用である。
【0047】
本発明の一実施形態では、高分子電解質は湿潤流体中に存在し、本発明に係る親水性コーティングを湿潤させる際に親水性コーティング内に導入される。これは、流体内に入れられた親水性コーティングを有する医療機器、あるいは親水性コーティングが高分子電解質を含有する別の湿潤流体中で湿潤される医療機器のために特に有用である。従って、本発明は潤滑性コーティングを調製するためのコーティング系にも関し、前記コーティング系は、本発明に係るコーティング配合物と、高分子電解質を含む湿潤流体とを含む。
【0048】
本発明の一実施形態では、本発明に係る親水性コーティング配合物はさらに、コーティングの表面特性を改善することができる少なくとも1つの界面活性剤を含む。界面活性剤は、洗浄剤成分の最も重要な群である。一般に、これらは、親水性または水溶性増強官能基に結合した疎水性部分(通常は長いアルキル鎖)で構成された水溶性界面活性剤である。界面活性剤は、分子の親水性部分に存在する電荷(水溶液中で解離した後)に従って分類することができる:イオン性界面活性剤、例えばアニオン性またはカチオン性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤。イオン性界面活性剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、コール酸ナトリウム、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ラウリルジメチルアミン−オキシド(LDAO)、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩およびデオキシコール酸ナトリウム(DOC)が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、TRITONTMBG−10界面活性剤およびTRITON CG−110界面活性剤などのアルキルポリグルコシド、TERGITOLTMTMNシリーズなどの分枝状第2級アルコールエトキシラート、TERGITOL Lシリーズ、およびTERGITOL XD、XH、ならびにXJ界面活性剤などのエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、TERGITOL NPシリーズなどのノニルフェノールエトキシラート、TRITON Xシリーズなどのオクチルフェノールエトキシラート、TERGITOL 15−Sシリーズなどの第2級アルコールエトキシラート、ならびにTRITON CA界面活性剤、TRITON N−57界面活性剤、TRITON X−207界面活性剤、ならびにTween、例えば、Tween 80またはTween 20などの特殊アルコキシラートが挙げられる。
【0049】
上記の実施形態において、通常、乾燥コーティングの全重量を基準として0.001〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%の界面活性剤を適用することができる。
【0050】
本発明の一実施形態では、本発明に係る親水性コーティング配合物はさらに、コーティングの柔軟性を高めることができる少なくとも1つの可塑剤を含み、これは、被覆すべき物体が使用中に曲がる可能性がある場合に好ましいことがある。前記可塑剤は、乾燥コーティングの全重量を基準として、約0.01重量%〜約15重量%、好ましくは約1重量%〜約5.0重量%の濃度で親水性コーティング配合物中に含まれ得る。適切な可塑剤は、高沸点化合物、好ましくは大気圧で200℃よりも高い沸点を有し、硬化後にコーティング中に均一に溶解および/または分散したままである傾向を有する化合物である。適切な可塑剤の例は、デカノール、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ならびに/あるいはプロピレングリコールおよび/または脂肪酸とのコポリマーなどの、モノおよびポリアルコールならびにポリエーテルである。
【0051】
また本発明は、Harland FTS摩擦試験機で測定したときに、20g以下である初期潤滑性を有する本発明に係る潤滑性コーティングにも関する。
【0052】
本発明に係る親水性コーティングは、物品上に被覆することができる。親水性コーティングは、様々な形状および材料から選択され得る基材上に被覆することができる。基材は、多孔質、非多孔質、平滑、粗面、平坦または非平坦などの材質を有し得る。基材は、親水性コーティングをその表面に支持する。親水性コーティングは、基材の全領域または選択された領域に存在することができる。親水性コーティングは、フィルム、シート、棒、チューブ、成形部品(規則的または不規則な形状)、繊維、布帛、および粒子を含む様々な物理的形態に適用することができる。本発明において使用するために適切な表面は、多孔性、疎水性、親水性、着色性、強度、柔軟性、透過性、伸び、耐摩耗性および引裂抵抗などの所望の特性を提供する表面である。適切な表面の例は、例えば、金属、プラスチック、セラミック、ガラスおよび/または複合体からなる表面、あるいはこれらを含む表面である。親水性コーティングは前記表面に直接適用されてもよいし、あるいは前処理またはコーティングが親水性コーティングの基材への接着を助けるように設計されている場合には、前処理または被覆された表面に適用されてもよい。
【0053】
本発明の一実施形態では、本発明に係る親水性コーティングは、生物医学的基材上に被覆される。生物医学的基材は、一部には、医療分野、ならびに生細胞および生物系の研究分野を指す。これらの分野としては、診断、治療、および実験人間医学、獣医学、ならびに農業が挙げられる。医療分野の例としては、眼科学、整形外科学、および補綴学、免疫学、皮膚科学、薬理学、ならびに外科学が挙げられ、研究分野の非限定的な例としては、細胞生物学、微生物学、および化学が挙げられる。「生物医学的」という用語は、その源に関わらず、(i)生体内で生物学的応答を媒介する、(ii)生体外アッセイまたは他のモデル、例えば免疫学的または薬理学的アッセイにおいて活性である、あるいは(iii)細胞または生物体内で見ることができる、化学物質および化学物質の組成物も指す。また「生物医学的」という用語は、クロマトグラフィ、浸透、逆浸透、およびろ過の過程を伴うものなどの分離科学も指す。生物医学的物品の例としては、研究道具、工業用および消費者用途が挙げられる。生物医学的物品としては、分離物品、植込み型の物品、および眼科物品が挙げられる。眼科物品としては、ソフトおよびハードコンタクトレンズ、眼内レンズ、ならびに眼または周囲組織と接触する鉗子、開創器、または他の外科道具が挙げられる。好ましい生物医学的物品は、酸素に対して非常に透過性であるケイ素含有ヒドロゲルポリマーから製造されるソフトコンタクトレンズである。分離物品としては、フィルタ、浸透および逆浸透膜、および透析膜、ならびに人工皮膚または他の膜などのバイオ表面が挙げられる。植込み型物品としては、カテーテル、および人口骨のセグメント、関節、または軟骨が挙げられる。物品は、2つ以上のカテゴリーに入ることもあり、例えば、人工皮膚は多孔質の生物医学的物品である。細胞培養物品の例は、組織細胞培養または細胞培養の過程で使用されるガラスビーカー、プラスチックペトリ皿、および他の器具である。細胞培養物品の好ましい例は、粒子マイクロキャリヤの形状、多孔性、および密度を制御して性能を最適化することができる固定化細胞バイオリアクターにおいて使用されるバイオリアクターマイクロキャリヤ、シリコーンポリマーマトリックスである。理想的には、マイクロキャリヤは、化学的または生物学的分解、高衝撃応力、機械的応力(撹拌)、および繰り返される蒸気または化学滅菌に耐性である。シリコーンポリマーに加えて、他の材料も適切であり得る。また本発明は、親水性、湿潤性、またはウィッキング物品が所望される、食品産業、用紙印刷産業、病院用品、おむつおよび他のライナー、ならびに他の分野において適用することもできる。
【0054】
医療機器は、植込み型機器または体外機器であり得る。機器は、短期の一時使用または長期の永久移植であり得る。特定の実施形態では、適切な機器は、心拍障害、心不全、弁疾患、血管疾患、糖尿病、神経疾患および障害、整形外科、脳外科、腫瘍学、眼科学、およびENT手術において医学療法および/または診断を提供するために通常使用されるものである。
【0055】
医療機器の適切な例としては、ステント、ステントグラフト、吻合コネクタ、合成パッチ、リード、電極、針、ガイドワイヤ、カテーテル、センサー、手術器具、血管形成術バルーン、創傷ドレイン、シャント、チューブ、点滴スリーブ、尿道インサート、ペレット、インプラント、血液酸素供給器、ポンプ、血管グラフト、血管アクセスポート、心臓弁、弁形成リング、縫合、止血鉗子、外科用ステープル、ペースメーカー、植込み型除細動器、神経刺激装置、整形外科用機器、脳脊髄液シャント、植込み型薬物ポンプ、脊髄ケージ、人工椎間板、髄核のための置換機器、耳用チューブ、眼内レンズおよび低侵襲手術で使用される任意のチューブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明で使用するのに特に適している物品としては、カテーテル、例えば間欠カテーテル、バルーンカテーテル、PTCAカテーテル、ステント送達カテーテル、ガイドワイヤ、ステント、シリンジ、金属およびプラスチックインプラント、コンタクトレンズならびに医療用チューブなどの医療機器または部品が挙げられる。
【0057】
親水性コーティング配合物は、例えばディップコーティングによって基材に塗布することができる。他の塗布方法としては、スプレー、洗浄、蒸着、ブラシ、ローラー、および当該技術分野において知られている他の方法が挙げられる。
【0058】
本発明に係る親水性コーティングの厚さは、浸漬時間、引出し速度、親水性コーティング配合物の粘度、コーティング工程数および固形含量を変更することによって制御することができる。通常、基材上の親水性コーティングの厚さは、0.1〜300μm、好ましくは0.5〜100μmn、より好ましくは1〜30μmの範囲である。高分子電解質が親水性コーティング組成物中に存在する場合、イオン性またはイオン化可能基の濃度は、さらに、高分子電解質の種類または親水性コーティング配合物中の高分子電解質の濃度を変更することによって制御することができる。
【0059】
本発明はさらに、水系液体で湿潤されたときに低摩擦係数を有する親水性コーティングを基材上に形成する方法に関し、この方法は、本発明に係る親水性コーティング配合物を物品の少なくとも1つの表面に塗布することと、配合物を電磁放射にさらし、それにより開始剤を活性化することによって親水性コーティング配合物を硬化させることとを含む。
【0060】
親水性コーティングを基材上に適用するために、プライマーコーティングを用いて、親水性コーティングと基材との間の結合を提供することができる。プライマーコーティングは、一次コーティング、ベースコートまたはタイコートと呼ばれることが多い。前記プライマーコーティングは、例えば国際公開第02/10059号パンフレットに記載されるように、親水性コーティングの所与の基材への接着を容易にするコーティングである。プライマーコーティングと親水性コーティングとの間の結合は、共有結合またはイオン結合、水素結合、物理吸着またはポリマー絡合いのために起こり得る。これらのプライマーコーティングは溶媒系、水系(ラテックスまたは乳濁液)または無溶媒でよく、線状、分枝状および/または架橋成分を含むことができる。使用され得る典型的なプライマーコーティングは、例えばポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリエステル(例えば米国特許第6,287,285号明細書に記載されるようなポリアクリレートを含む)、ポリアミド、ポリエーテル、ポリオレフィン、および上記ポリマーのコポリマーを含む。
【0061】
特に、プライマーコーティングは支持ポリマー網を含み、支持網は場合により、国際公開第2006/056482A1号パンフレットに記載されるように、支持ポリマー網内で絡み合った官能性親水性ポリマーを含む。プライマーコーティングの配合に関する情報は、参照によって本明細書に援用される。
【0062】
上記のプライマー層は、特に、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン−プロピレンゴム(例えば、EPDM)などのポリオレフィン、またはほぼ同じまたはより低い親水性を有する表面において、ポリラクタム、特にPVPおよび/または別の上記に示した親水性ポリマーなどの親水性ポリマーを含むコーティングの接着性を改善するために特に有用である。一般に、プライマー層の厚さに関して制限はないが、通常、厚さは5μm未満、2μm未満、または1μm未満である。
【0063】
実施形態において、物品の表面は、提供すべきコーティングの接着性を改善するために、酸化的、光酸化的および/または極性化表面処理、例えば、プラズマおよび/またはコロナ処理にさらされる。適切な条件は当該技術分野において知られている。
【0064】
本発明の配合物の適用は、任意の方法で行うことができる。硬化条件は、光開始剤およびポリマーのための既知の硬化条件に基づいて決定する、あるいは通常通りに決定することができる。
【0065】
一般に、硬化は、物品の機械特性または別の特性が許容できない程度まで悪影響を受けない限り、基材に応じて任意の適切な温度で実行することができる。
【0066】
電磁放射の強度および波長は、選択された光開始剤に基づいて、通常通りに選択することができる。特に、スペクトルの紫外、可視またはIR部分において適切な波長を使用することができる。
【0067】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるであろう。
【0068】
[実施例]
以下に記載されるようにプライマーコーティング配合物を調製した。
【0069】
[プライマーコーティング配合物(実施例1〜3および比較例Aで使用される)]
【0070】
【表1】

【0071】
上記の成分を褐色ガラスフラスコに添加し、室温で一晩(約16時間)混合した。翌朝、プライマー配合物は6mPa.sの粘度を有する均質な液体になった。本明細書では、粘度は、25℃においてコーン番号1と組み合わせてBrookfield CAP1000、v.1.2で測定した。
【0072】
Harland 175−24 PCXコーターを用いて、上記のプライマーコーティング配合物を、外径0.031インチ(0.79mm)を有するポリウレタンジャケット付きNitinolワイヤに塗布した。適用パラメータは表1に記載される。
【0073】
【表2】

【0074】
[PTGL1000(T−H)の合成]
乾燥不活性雰囲気中で、トルエンジイソシアナート(TDIまたはT、Aldrich、95%純度、87.1g、0.5mol)、Irganox 1035(Ciba Specialty Chemicals、0.58g、ヒドロキシエチルアクリレート(HEAまたはH)に対して1重量%)およびスズ(II)2−エチルヘキサノアート(Sigma、95%純度、0.2g、0.5mol)を1リットルフラスコ内に入れ、30分間攪拌した。氷浴を用いて反応混合物を0℃に冷却した。HEA(Aldrich、96%純度、58.1g、0.5mol)を30分間で滴下添加し、その後氷浴を取り除き、混合物を室温まで温めた。3時間後、反応が完了した。ポリ(2−メチル−1,4−ブタンジオール)−alt−ポリ(テトラメチレングリコール)(PTGL1000、Hodogaya、M=1000g/mol、250g、0.25mol)を30分間で滴下添加した。
【0075】
続いて、反応混合物を60℃に加熱し、18時間攪拌すると、GPC(HEAの完全な消費を示す)、IR(NCO関連のバンドが示されない)およびNCO滴定(0.02重量%未満のNCO含量)で示されるように、反応が完了した。
【0076】
[実施例1〜3:]
全てがノリッシュI型(Irgacure 2959)およびノリッシュII型(ベンゾフェノン)光開始剤を含む3つの親水性コーティング配合物(実施例1〜3)を調製した。全固形含量に関して、実施例2の親水性コーティング配合物は、実施例1の親水性コーティング配合物と比較して、2倍多いベンゾフェノンを含んでいた。実施例3の親水性コーティング配合物は、実施例1および2の親水性コーティング配合物よりも高い全固形含量、すなわち8重量%対4重量%を有した。全固形含量に関して、実施例2および実施例3の親水性コーティング配合物は、同じ量のベンゾフェノンを含んでいた。
【0077】
[実施例1〜3の親水性コーティング配合物]
【0078】
【表3】

【0079】
上記の成分を褐色ガラスフラスコに添加し、室温で一晩(約16時間)混合した。翌朝、親水性コーティング配合物は表2に示される粘度を有する均質な液体になった。本明細書では、粘度は、25℃においてコーン番号1と組み合わせてBrookfield CAP1000、v.1.2で測定した。
【0080】
[比較実験A]
比較のために、ノリッシュII型光開始剤を用いずに親水性コーティング配合物Aを調製した。
【0081】
[比較実験Aの親水性コーティング配合物]
【0082】
【表4】

【0083】
上記の成分を褐色ガラスフラスコに添加し、室温で一晩(約16時間)混合した。翌朝、親水性コーティング配合物は表2に示される粘度を有する均質な液体になった。本明細書では、粘度は、25℃においてコーン番号1と組み合わせてBrookfield CAP1000、v.1.2で測定した。
【0084】
[PEG4000DAの合成]
150g(75mmolのOH)のポリエチレングリコール(PEG4000、Biochemika Ultra(Fluka)、OH価28.02mgKOH/g、499.5mew/kg、M=4004g/mol)を窒素雰囲気中45℃で350mlの乾燥トルエン中に溶解した。ラジカル安定剤として0.2g(0.15重量%)のIrganox 1035を添加した。得られた溶液を一晩共沸蒸留(50℃、70mbar)し、4Åの分子ふるい上に凝縮したトルエンを導いた。PEGの各バッチについて、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)第4版、段落2.5.3、ヒドロキシル価、105頁に記載される方法に従って実施されるOH滴定によってOH価を正確に決定した。
【0085】
これにより、添加すべき塩化アクリロイルの量を計算し、反応中のアクリル酸エステル化度を決定することが可能になる。9.1g(90mmol)のトリエチルアミンを反応混合物に添加した後、50mlのトルエン中に溶解した8.15g(90mmol)の塩化アクリロイルを1時間で滴下添加した。トリエチルアミンおよび塩化アクリロイルは無色の液体であった。反応混合物を窒素雰囲気中45℃で2〜4時間攪拌した。反応中、温度は45℃に保持し、PEGの結晶化を防止した。転化率を決定するために、サンプルを反応混合物から取り出し、乾燥させ、重水素化クロロホルム中に溶解した。無水トリフルオロ酢酸(TFAA)を添加し、H−NMRスペクトルを記録した。TFAAは残存するヒドロキシル基と反応してトリフルオロ酢酸エステルを形成し、これはH−NMR分光法を用いて容易に検出することができる(トリフルオロ酢酸基のα位のメチレンプロトンの三重項シグナル(g、4.45ppm)は、アクリル酸エステルのα位のメチレン基のシグナル(d、4.3ppm)とは明確に区別することができる)。アクリル酸エステル化度が98%未満の場合、さらに10mmolの塩化アクリロイルおよびトリエチルアミンを反応混合物に添加し、1時間反応させた。アクリル酸エステル化度が98%よりも高ければ、温かい溶液をろ過し、トリエチルアミン塩酸塩を除去した。
【0086】
約300mlのトルエンを真空下で除去した(50℃、20mbar)。残存する溶液を、加熱した滴下漏斗中で45℃に保持し、1リットルのジエチルエーテル(氷浴中で冷却)中に滴下添加した。エーテル懸濁液を1時間冷却してから、ろ過によってPEGジアクリレート生成物を得た。生成物を減圧した空気雰囲気(300mbar)中、室温で一晩乾燥させた。収率:80〜90%、白色結晶。
【0087】
親水性コーティング配合物1、2、Aおよび3を、Harland 175−24 PCXコーターを用いて、プライマーコーティングを有するポリウレタンジャケット付きNitinolワイヤに塗布した。プライマーコーティング−親水性コーティングのそれぞれの組み合わせについて、コーティング厚さを変えるために3つの異なる引出し速度を用いた。親水性コーティング配合物3は、コーティング厚さをさらに増大させる固形分を8重量%含んでいた。使用した関連の適用条件は表2に示される。
【0088】
【表5】

【0089】
ポリウレタンジャケット付きNitinolワイヤの被覆長さは、プライマーコーティングおよび親水性コーティングについて80cmであった。平均して、PCXコーターにおける紫外光強度は、検出器SED005#989およびフィルタWBS320#27794と組み合わせてHarland UVR335(IL1400)露出器で測定して、250〜400nmの間で60mW/cmである。プライマーコーティングは紫外光に15秒間露光したが、親水性コーティングは360秒間露光し、これは、それぞれ0.9J/cmおよび21.6J/cmの紫外線量に相当する。適用したコーティングパラメータについては表3が参照される。
【0090】
【表6】

【0091】
[潤滑性試験:]
被覆ポリウレタンジャケット付きNitinolワイヤに、Harland摩擦試験機FTS5000(HFT)で実施される潤滑性試験を行った。HFTにおける摩擦を、脱塩水に浸漬されたショアA60デュロメータシリコーンパッドに対して測定した。試験条件は表4に示される。
【0092】
【表7】

【0093】
HFTにおける試験の後、圧縮ガーゼ(Johnson & Johnson、ガーゼパッド、4×4インチ、注文番号.53053)を用いてサンプルを手で擦ることによって、被覆Nitinolワイヤにより厳しい試験を行った。摩擦試験の前にサンプルおよびガーゼパッドを脱塩水中に浸漬させた。過剰の水をガーゼパッドから穏やかに絞り、ガーゼをサンプルのまわりに巻きつけた。サンプルおよびガーゼを人差し指と親指の間で堅く押圧し、ガーゼを20cmの長さのサンプルに沿って下方に引っ張った。このシーケンスを24回繰り返した(全部で25回の摩擦)。
【0094】
ガーゼ摩擦の後、サンプルをHFT内に戻し、サンプルのガーゼ摩擦にさらされた部分において表4に記載される第2の試験を実施した。
【0095】
親水性コーティング1、2、A、および3についての試験結果は、それぞれ表5、6、7および8に与えられる。ガーゼ摩擦試験の前の摩擦力と比較したガーゼ摩擦試験の後の摩擦力は残存する潤滑性の尺度であり(低いままであれば、より良好である)、従って、厳しい試験条件下での耐摩耗性の尺度である。
【0096】
【表8】

【0097】
【表9】

【0098】
【表10】

【0099】
親水性コーティング1(実施例1)、親水性コーティング2(実施例2)および親水性コーティングA(比較実験A)についての上記の結果から、親水性コーティングA(ノリッシュII型光開始剤を含まない)は、親水性コーティング1および2(ノリッシュII型光開始剤を含む)よりも著しく低い耐摩耗性を示すと結論付けることができる。親水性コーティングAについては、ガーゼ摩擦試験後のHFTにおける摩擦力は非常に高くなり、HFTにおける多数のサイクルと共に急速に増大するが、親水性コーティング1および特に親水性コーティング2(ベンゾフェノン含量がより高い)のガーゼ試験後の摩擦力は、許容できるレベルのままである。
【0100】
表8には、より厚いコーティング(親水性コーティング配合物の固形含量がより高いのため)である親水性コーティング3の結果が与えられる。
【0101】
【表11】

【0102】
親水性コーティング3の結果と、親水性コーティング2(固形分に基づいて同じベンゾフェノン含量)の結果との比較によって、ベンゾフェノンを含む親水性コーティング配合物から得られるより厚いコーティングは、さらに高い耐摩耗性を提供することが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性コーティングを調製するためのコーティング配合物であって、前記親水性コーティング配合物が、
(a)親水性ポリマーと、
(b)骨格および重合反応を受けることができる少なくとも2つの反応性部分を含む支持ポリマーであって、750〜20,000g/mol、好ましくは1,000〜15,000g/mol、より好ましくは1,100〜10,000、特に1,200〜7,000、より特別には1,400〜5,000g/molの範囲の数平均分子量を有する支持ポリマーと、
(c)ノリッシュI型光開始剤と、
(d)ノリッシュII型光開始剤と
を含むコーティング配合物。
【請求項2】
前記ノリッシュI型光開始剤が、ベンゾイン誘導体、メチロールベンゾインおよび4−ベンゾイル−1,3−ジオキソラン誘導体、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンスルフィド、ならびにハロゲン化アセトフェノン誘導体からなる群から選択される請求項1に記載のコーティング配合物。
【請求項3】
前記ノリッシュII型光開始剤が、芳香族ケトン、例えば、ベンゾフェノン、キサントン、ベンゾフェノンの誘導体(例えば、クロロベンゾフェノン)、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体のブレンド(例えば、Photocure 81、4−メチル−ベンゾフェノンおよびベンゾフェノンの50/50ブレンド)、ミヒラーケトン、エチルミヒラーケトン、チオキサントンおよびQuantacure ITX(イソプロピルチオキサントン)のような他のキサントン誘導体、ベンジル、アントラキノン(例えば、2−エチルアントラキノン)、クマリンなど、あるいはこれらの光開始剤の化学誘導体または組み合わせからなる群から選択される請求項1または2に記載のコーティング配合物。
【請求項4】
前記ノリッシュI型光開始剤:前記ノリッシュII型光開始剤の重量比が、10:1〜1:10の間、好ましくは5:1〜1:5の間である請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項5】
前記コーティング配合物中の光開始剤の全量が、乾燥コーティングの全重量を基準として、0.2〜10重量%の間、好ましくは0.8〜8重量%の間である請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項6】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ラクタム)、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、アクリル酸およびメタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、無水マレイン酸系コポリマー、ポリエステル、ビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(カルボン酸)、ポリアミド、ポリ無水物、ポリホスファゼン、セルロース、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース、ヘパリン、デキストラン、ポリペプチド、例えば、コラーゲン、フィブリン、およびエラスチン、多糖類、例えば、キトサン、ヒアルロン酸、アルギナート、ゼラチン、およびキチン、ポリエステル、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトン、ポリペプチド、例えば、コラーゲン、アルブミン、オリゴペプチド、ポリペプチド、短鎖ペプチド、タンパク質、およびオリゴヌクレオチドからなる群から選択される非イオン性親水性ポリマーである請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項7】
前記親水性ポリマーが、アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、フマル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、スルホン酸基を含むモノマーのホモポリマーおよびコポリマーの塩、第4級アンモニウム塩を含むモノマーのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの混合物および/または誘導体からなる群から選択される高分子電解質である請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項8】
請求項6に記載の群から選択される非イオン性ポリマーと、請求項7に記載の群から選択される高分子電解質とを両方含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項9】
前記支持ポリマーの骨格が、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリオキサゾリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリオルトエステルおよびアルキドコポリマーのようなポリエステル、ポリペプチド、ならびにセルロースおよびデンプンなどの多糖類、または上記の任意の組み合わせからなる群から選択され、そして前記少なくとも2つの反応性部分が、アルケン、アミノ、アミド、スルフヒドリル(SH)、不飽和エステル(アクリレートおよびメタクリレートなど)、不飽和エーテル、不飽和アミド、ならびにアルキド/ドライ樹脂からなる群から選択される請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項10】
前記親水性コーティング配合物が、少なくとも1つの界面活性剤またはレベリング剤をさらに含む請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項11】
前記親水性コーティング配合物が、少なくとも1つの可塑剤をさらに含む請求項1〜10のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のコーティング配合物を硬化させることによって得られる親水性コーティング。
【請求項13】
請求項12に記載の親水性コーティングに湿潤流体を適用することによって得られる潤滑性コーティング。
【請求項14】
Harland FTS摩擦試験機で測定したときに、20g以下である1サイクル後の初期潤滑性を有する請求項13に記載の潤滑性コーティング。
【請求項15】
25回のガーゼ摩擦の後にHarland FTS摩擦試験機で測定したときに、300gのクランプ力で60g以下である耐摩耗性を有する請求項12に記載の潤滑性コーティング。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のコーティング配合物と、高分子電解質を含む湿潤流体とを含む、潤滑性コーティングを調製するためのコーティング系。
【請求項17】
25回のガーゼ摩擦の後にHarland FTS摩擦試験機で測定したときに、耐摩耗性が、300gのクランプ力で60g以下である、潤滑性コーティングにおけるノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤の使用。
【請求項18】
請求項12〜15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの親水性コーティングまたは潤滑性コーティングを含む物品。
【請求項19】
前記物品が医療機器または部品である請求項18に記載の物品。
【請求項20】
カテーテル、医療用チューブ、ガイドワイヤ、ステント、または膜を含む請求項19に記載の医療機器または部品。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のコーティング配合物を物品の少なくとも1つの表面に塗布することと、
前記配合物を電磁放射にさらし、それにより開始剤を活性化することによって前記コーティング配合物を硬化させることと
を含む、基材上に親水性コーティングを形成する方法。

【公表番号】特表2010−520316(P2010−520316A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551200(P2009−551200)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052396
【国際公開番号】WO2008/104572
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】