説明

親水性ポリウレタンフォーム及びその製造方法

【課題】親水性に優れるポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の親水性ポリウレタンフォームは、ポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等)、ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート等)、発泡剤(水)、整泡剤、触媒(アミン化合物等)、及び、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランを用いて形成された、シラノール基を有するポリウレタンからなり、連続気泡構造を有することを特徴とする。
−O−[Si(OR−O]−R (1)
(式中、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、mは、2以上の整数である。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性に優れるポリウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性のポリウレタンフォームは、その優れた弾力性や、多孔質体であることによる吸水性及び保水性を生かして、プリンターのインク吸収材、吸水用ロール、吸汗材、保湿材、水耕栽培用部材、自動車の洗車後の水分の拭き取り材、液晶用板ガラス、建築用板ガラス等のガラス洗浄材、OA機器分野におけるクリーンルームの水分の拭き取り材、ワイパー用部材、結露防止材等、幅広く使用されている。
【0003】
従来、親水性ポリウレタンフォームとしては、エチレンオキサイド含有量が20質量%以下のポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるプレポリマー、低分子量ポリヒドロキシ化合物と、過剰量の水とを用いて得られたポリウレタンフォーム(特許文献1参照)、親水性を有する有機酸金属塩及び/又はその重合体を含むポリオールと、イソシアネートと、水とを用い、イソシアネートインデックスを低めにして得られたポリウレタンフォーム(特許文献2参照)、3官能又は4官能のポリオール、ポリエチレングリコール、整泡剤、アミン触媒、水及びポリイソシアネートを用いて得られたポリウレタンフォーム(特許文献3参照)等が知られている。
また、ポリウレタンフォームに親水性を付与する方法としては、従来、公知の方法により得られたポリウレタンフォームに、ポリエチレングリコールを含浸させる方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−78819号公報
【特許文献2】特開2002−105164号公報
【特許文献3】特開2003−40963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に開示されたポリウレタンフォームは、水を含んで膨潤することがあり、親水性の用途としては未だ十分ではなかった。また、その製造原料が、特殊な親水性付与成分を含むことから、ポリウレタンフォームの製造設備に専用の設備が必要であった。そして、生産管理上、配合の標準化の妨げとなり、更には、生産の合理化の妨げとなっていた。
本発明は、親水性を有し、広い物性範囲で、硬さ、弾性及び圧縮残留歪のバランスに優れた親水性ポリウレタンフォーム、及び、製造設備の制約がなく、負担のかからない製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される。
1.ポリオール(以下、「ポリオール(A)」ともいう。)、ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネート(B)」ともいう。)、発泡剤(以下、「発泡剤(C)」ともいう。)、整泡剤(以下、「整泡剤(D)」ともいう。)、触媒(以下、「触媒(E)」ともいう。)、及び、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(以下、「アルコキシシラン(F)」ともいう。)を用いて形成された、シラノール基を有するポリウレタンからなり、連続気泡構造を有することを特徴とする親水性ポリウレタンフォーム。
−O−[Si(OR−O]−R (1)
(式中、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、mは、2以上の整数である。)
2.上記ポリオール(A)が、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選ばれた少なくとも1種である上記1に記載の親水性ポリウレタンフォーム。
3.JIS K6400−7(A法)に準じて測定された通気性が1〜300リットル/分である上記1又は2に記載の親水性ポリウレタンフォーム。
4.上記1に記載の親水性ポリウレタンフォームの製造方法であって、
ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、整泡剤(D)、触媒(E)、及び、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(F)の存在下に反応させて、第1ポリウレタンフォームを得る工程(以下、「反応工程」という。)と、
上記第1ポリウレタンフォームに水又は水蒸気を接触させる工程(以下、「接触工程」という。)と、
を備えることを特徴とする親水性ポリウレタンフォームの製造方法。
−O−[Si(OR−O]−R (1)
(式中、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、mは、2以上の整数である。)
5.上記1に記載の親水性ポリウレタンフォームの製造方法であって、
ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、整泡剤(D)、触媒(E)、及び、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(F)の存在下に反応させて、第1ポリウレタンフォームを得る工程(反応工程)と、
上記第1ポリウレタンフォームの内部の気体を、水蒸気を含む空気に置換する工程(以下、「ガス置換工程」という。)と、
を備えることを特徴とする親水性ポリウレタンフォームの製造方法。
−O−[Si(OR−O]−R (1)
(式中、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、mは、2以上の整数である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリウレタンフォームは、シラノール基(−Si−OH)を有することにより、親水性を有し、広い物性範囲で、硬さ、弾性及び圧縮残留歪のバランスに優れる。
また、本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造方法によれば、反応工程において、アルコキシシラン(F)の部分加水分解物(シラノール基及びアルコキシシリル基を有する化合物)が生成し、これがポリイソシアネート(B)と反応して、第1ポリウレタンフォームが得られ、その後、接触工程又はガス置換工程において、残存した−Si−OR、−Si−OR又は−Si−ORのアルコキシシリル基が加水分解されてシラノール基に変換されると考えられるので、上記効果を有するポリウレタンフォームを、効率よく製造することができる。本発明においては、アルコキシシラン(F)を、ポリオール(A)100質量部に対して、例えば、5.0質量部以下と少ない使用量とすることができ、アルコキシシラン(F)専用の大型タンクを設ける必要がない。また、既存のウレタンフォームの製造用の配合に応用できるため、配合上の自由度が高い。即ち、製造設備の制約がないため、利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ポリウレタンフォームの表面に載置した水滴の寸法の測定位置を示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
また、「親水性」とは、具体的には、本発明のポリウレタンフォームに水を接触させると、水がはじくことはなく、ポリウレタンフォームを水上に浮かせた後、水が次第に連通孔内に浸透し、最終的にポリウレタンフォームが水中に浸漬されて含水状態となる性質(通水性、保水性又は吸水性とも表現される。)を意味する。尚、水の浸透速度(吸水速度)については、製造原料の種類及びその使用量等によって、それが大きいものから小さいものまで、様々である。
【0010】
本発明は、ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを、発泡剤(C)、整泡剤(D)、触媒(E)、及び、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(F)の存在下に反応させて、第1ポリウレタンフォームを得る反応工程と、この第1ポリウレタンフォームに水又は水蒸気を接触させる接触工程、又は、第1ポリウレタンフォームの内部の気体を、水蒸気を含む空気に置換するガス置換工程とを備える製造方法により得られた、連続気泡構造を有するポリウレタンフォームであり、シラノール基を有する親水性ポリウレタンフォームである。
−O−[Si(OR−O]−R (1)
(式中、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、mは、2以上の整数である。)
【0011】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの形成に用いられる原料について、説明する。
【0012】
上記ポリオール(A)は、ヒドロキシル基を2つ以上有する化合物であれば、特に限定されず、従来、公知のポリウレタンフォームの形成に用いられるポリオールを用いることができる。
【0013】
上記ポリオール(A)としては、(a1)多価アルコール、(a2)多価フェノール、(a3)ヒドロキシル基を2個以上有するアルカノールアミン、(a4)ヒマシ油等の天然油脂系ポリオール、(a5)ポリエーテルポリオール、(a6)ポリエーテルエステルポリオール、(a7)ポリエステルポリオール、(a8)ポリジエンポリオール、(a9)アクリルポリオール、(a10)シリコーンポリオール、(a11)上記(a1)〜(a10)から選ばれた少なくとも1種の化合物(原料ポリオール)の存在下、ビニル系単量体を重合させて得られたポリマーポリオール等が挙げられる。
【0014】
多価アルコール(a1)としては、炭素数2〜20の2価アルコール、炭素数3〜20の3価アルコール、炭素数5〜20の4〜8価又はそれ以上の多価アルコール等が挙げられる。
炭素数2〜20の2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール等の脂肪族ジオールや、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のシクロアルキレングリコール等の脂環式ジオール等が挙げられる。
炭素数3〜20の3価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール等のアルカントリオール等の脂肪族トリオール等が挙げられる。
炭素数5〜20の4〜8価又はそれ以上の多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等のアルカンポリオール等の脂肪族ポリオール等が挙げられる。
【0015】
多価フェノール(a2)としては、ピロガロール、ハイドロキノン等の単環多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールスルホン等のビスフェノール類;フェノール及びホルムアルデヒドの縮合物(ノボラック)等が挙げられる。
【0016】
ヒドロキシル基を2個以上有するアルカノールアミン(a3)としては、ジエタノールアミン、エタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノール−2−ヒドロキシブチルアミン、イソプロパノール−2−ヒドロキシブチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0017】
ポリエーテルポリオール(a5)としては、上記多価アルコール(a1)、上記多価フェノール(a2)、及び、上記アルカノールアミン(a3)を含むアミン化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、2,3−若しくは1,4−ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加(ブロック及び/又はランダム付加)して得られた化合物等を用いることができる。
上記アミン化合物は、上記アルカノールアミン(a3)以外のアミン化合物を含んでもよく、その例としては、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等の、炭素数2〜20のモノアルカノールアミン、n−ブチルアミン、オクチルアミン等の、炭素数1〜20のモノアミン化合物、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の、炭素数2〜6のジアミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の、炭素数4〜20のポリアルキレンポリアミン等の脂肪族アミン化合物;アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン等の、炭素数6〜20の芳香族アミン化合物;イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン等の、炭素数4〜20の脂環式アミン化合物;ピペラジン、アミノエチルピペラジン等の、炭素数4〜20の複素環式アミン化合物等が挙げられる。
上記ポリエーテルポリオール(a5)としては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールに、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドを付加させて得られた化合物が好ましい。
【0018】
ポリエーテルエステルポリオール(a6)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのプロピレンオキシド付加物等のポリアルキレンポリオールに、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水フタル酸等のポリカルボン酸無水物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテル基を有する化合物とを反応させて得られた化合物等が挙げられる。
【0019】
ポリエステルポリオール(a7)としては、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等が挙げられる。
縮合系ポリエステルポリオールは、通常、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させて得られたものであり、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン−ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル−ヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ3−メチルペンタンアジペートジオール、ポリエチレンテレフタレートジオール、ポリブチレンテレフタレートジオール、ポリヘキサメチレンテレフタレートジオール、ポリネオペンチルテレフタレートジオール、ポリエチレン−ブチレンテレフタレートジオール、ポリネオペンチル−ヘキサメチレンテレフタレートジオール、ポリ3−メチルペンタンテレフタレートジオール、ポリエチレンイソフタレートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルイソフタレートジオール、ポリエチレン−ブチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチル−ヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリ3−メチルペンタンイソフタレートジオール等が挙げられる。
【0020】
ポリマーポリオール(a11)としては、上記のポリエーテルポリオール(a5)、ポリエステルポリオール(a7)等の原料ポリオールの存在下、重合開始剤を用いて、ビニル系単量体を重合させて得られた化合物(グラフト重合体)を用いることができる。この反応において、連鎖移動剤を用いることもできる。
ビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物等を用いることができる。このビニル系単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレンが好ましい。
不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、他のビニル系化合物としては、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸;(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド化合物;ジアミノエチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート等のアミノ基含有不飽和化合物;塩化ビニリデン、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート等のハロゲン含有ビニル化合物;ジビニルベンゼン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能ビニル化合物等が挙げられる。
上記ビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物及び不飽和ニトリル化合物を含むことが好ましく、芳香族ビニル化合物単独か、あるいは、芳香族ビニル化合物及び不飽和ニトリル化合物の組合せであることが特に好ましい。
【0022】
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物;ジベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過コハク酸等の有機過酸化物;過硫酸塩、過ホウ酸塩等の無機過酸化物等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、ドデカンチオール、エタンチオール、オクタンチオール、トルエンチオール等のメルカプタン化合物;四塩化炭素、四臭化炭素、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0023】
上記ポリマーポリオール(a11)の製造に用いられる原料ポリオール及びビニル系単量体の使用比率は、以下の通りである。即ち、原料ポリオールを100質量部とした場合、ビニル系単量体は、好ましくは5〜60質量部である。
【0024】
上記ポリオール(A)の数平均分子量は、親水性に優れたポリウレタンフォームが効率よく得られ、ポリウレタンフォームに優れた弾性が付与されることから、好ましくは500〜10,000、より好ましくは1,000〜8,000、更に好ましくは2,000〜5,000である。この数平均分子量が小さすぎると、高硬度のポリウレタンフォームが形成される場合があり、一方、この数平均分子量が大きすぎると、弾性が十分でないポリウレタンフォームが形成される場合がある。
また、上記ポリオール(A)の水酸基価(ポリオール1グラム中のヒドロキシル基の数に相当する水酸化カリウムのミリグラム数)の平均値は、親水性に優れたポリウレタンフォームが効率よく得られ、ポリウレタンフォームに優れた柔軟性が付与されることから、好ましくは20〜300mgKOH/g、より好ましくは25〜100mgKOH/g、更に好ましくは30〜80mgKOH/gである。この平均水酸基価が小さすぎると、弾性が十分でないポリウレタンフォームが形成される場合があり、一方、この平均水酸基価が大きすぎると、高硬度で脆いポリウレタンフォームが形成される場合がある。
【0025】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造に用いるポリオール(A)は、1種単独であってよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。本発明において、好ましいポリオール(A)は、ポリエーテルポリオール(a5)及びポリエステルポリオール(a7)である。
【0026】
上記ポリイソシアネート(B)は、イソシアネート基を2つ以上有する化合物であれば、特に限定されず、従来、公知のポリウレタンフォームの形成に用いられるポリイソシアネートを用いることができる。
【0027】
上記ポリイソシアネート(B)としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、これらのイソシアネート化合物の変性物を用いることができる。
【0028】
芳香族イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。
脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(HXDI)、水添化MDI(H12MDI)等が挙げられる。
また、変性イソシアネートとしては、上記イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
【0029】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造に用いるポリイソシアネート(B)は、1種単独であってよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。本発明において、好ましいポリイソシアネート(B)は、トリレンジイソシアネートである。
【0030】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造に用いるポリイソシアネート(B)の使用量は、本発明の親水性ポリウレタンフォームの用途、所望の物性等により、適宜、選択される。本発明においては、所定の範囲のイソシアネートインデックスに基づいて、ポリイソシアネート(B)の使用量が選択される。本発明に係るイソシアネートインデックスは、好ましくは100〜130であり、より好ましくは103〜125、更に好ましくは105〜120である。このイソシアネートインデックスが上記範囲にあると、親水性、硬さ、弾性及び圧縮残留歪を広い範囲に制御されたポリウレタンフォームとすることができる。
尚、イソシアネートインデックスとは、ポリイソシアネート(B)が反応するヒドロキシル基と化学量論的に当量反応する場合に100となるように計算される、ポリオール(活性水素化合物)/イソシアネートの質量比率を表す指数であり、下記式にて表される。
イソシアネートインデックス={(実際のイソシアネート量)/(化学量論的に計算されたイソシアネート量)}×100
本発明におけるイソシアネートインデックスは、活性水素を有さないアルコキシシラン(F)を考慮せずに算出されたものとする。
【0031】
上記イソシアネートインデックスが100を超えるということは、イソシアネート基の量がヒドロキシル基の量より過剰であることを意味する。そして、このイソシアネートインデックスが100未満の場合には、ポリオール(A)に対するポリイソシアネート(B)の反応が不足するので、発泡体が軟らかくなる傾向がある。一方、イソシアネートインデックスが上記上限値を超えて大きすぎる場合には、発泡体が硬くなる傾向がある。
【0032】
上記発泡剤(C)としては、上記ポリイソシアネート(B)と反応して発泡剤としての炭酸ガスを発生する水;ポリウレタン生成時の反応熱で気化することにより発泡剤として機能する、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の炭化水素;塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル等のハロゲン系化合物;液化した二酸化炭素を高圧下で原料に混入させ発泡時に気化することにより発泡剤として機能する液化二酸化炭素等が挙げられる。これらのうち、水が好ましく、例えば、イオン交換水、水道水、蒸留水等を用いることができる。
【0033】
上記発泡剤(C)が水である場合、その使用量は、上記ポリオール(A)を100質量部とした場合に、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜7質量部、更に好ましくは3〜5質量部である。水の使用量が上記範囲にあると、親水性に優れたポリウレタンフォームが効率よく得られ、弾性に優れるポリウレタンフォームを高い生産性をもって製造することができる。
【0034】
上記整泡剤(D)としては、従来、公知のシリコーン系整泡剤及びフッ素系整泡剤を用いることができる。これらのうち、ポリウレタンフォームの生産性の観点から、シリコーン系整泡剤が好ましい。
【0035】
上記シリコーン系整泡剤は、好ましくは、ポリシロキサン鎖及びポリオキシアルキレン鎖を有する化合物である。この化合物において、ポリシロキサン鎖及びポリオキシアルキレン鎖は、ブロック型構造を有していてもよいし、主鎖のポリシロキサン鎖にポリオキシアルキレン鎖がグラフトしたグラフト型構造を有していてもよい。また、これらが混在した構造を有していてもよい。
上記ポリシロキサン鎖は、側鎖に有機基を有するオルガノポリシロキサン鎖を意味し、その例としては、ジメチルシロキサン鎖等が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等の単一のオキシアルキレン基から構成されるもの、又は、オキシエチレンオキシプロピレンブロック鎖、オキシエチレンオキシプロピレンランダム鎖等の複数種のオキシアルキレン基から構成されるものとすることができ、これらの組み合わせにより構成されていてもよい。
【0036】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造に用いる整泡剤(D)は、1種単独であってよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
上記整泡剤(D)の使用量は、上記ポリオール(A)を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.5〜2.0質量部である。この整泡剤の使用量が上記範囲にあると、発泡安定性に優れるポリウレタンフォームとすることができる。
【0038】
上記触媒(E)は、特に限定されず、従来、公知のポリウレタンフォームの形成に用いられる化合物を用いることができ、例えば、アミン(以下、「アミン触媒」という。)や、有機錫化合物、有機ビスマス化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等から選ばれた少なくとも1種以上の有機金属化合物(以下、「金属触媒」という。)を用いることができる。
【0039】
上記アミン触媒としては、モノアミン化合物、ジアミン化合物、トリアミン化合物、ポリアミン化合物、環状アミン化合物、アルコールアミン化合物、エーテルアミン化合物や、これらの化合物における構造の一部がポリイソシアネート(B)と反応するように、ヒドロキシル化又はアミノ化されてなる反応型アミン触媒等が挙げられる。
【0040】
上記アミン触媒の具体例は、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、トリス(ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N",N"−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N",N"−ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジンや、ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノブタノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)アミン、N,N−ジメチル−(4−ヒドロキシブチル)アミン、N,N−ジメチル−(3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)アミン、N,N−ジメチル−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)アミン、N,N−ジメチル−(2−ヒドロキシブチル)アミン、N,N−ジメチル−(1−ヒドロキシメチルプロピル)アミン等のアルコールアミン化合物;N,N−ジポリオキシエチレンステアリルアミン、N,N−ジポリオキシエチレン牛脂アルキルアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス−(3−ジメチル)−アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン化合物;1−メチルピペラジン、1−エチルピペラジン、1−プロピルピペラジン、1−イソプロピルピペラジン、1−ブチルピペラジン、1−(1−メチルプロピル)ピペラジン、1−(2−メチルプロピル)ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)−エチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)−モルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、3−(ジメチルアミノ)プロピルイミダゾール、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、N−(3−ヒドロキシプロピル)−モルホリン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−モルホリン、N−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−モルホリン、N−(4−ヒドロキシブチル)−モルホリン、N−(3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)−モルホリン、N−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−モルホリン、N−(2−ヒドロキシブチル)−モルホリン、N−(1−ヒドロキシメチルプロピル)−モルホリン等の環状アミン化合物等である。
本発明に係るアミン触媒としては、3級アミン、及び、反応型アミン触媒が好ましい。
【0041】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造に用いるアミン触媒は、1種単独であってよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0042】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造にアミン触媒を用いる場合、その使用量は、上記ポリオール(A)を100質量部とした場合に、好ましくは0.01〜3.0質量部、より好ましくは0.05〜2.0質量部、更に好ましくは0.07〜1.7質量部である。このアミン触媒の含有量が上記範囲にあると、親水性及び発泡安定性に優れたポリウレタンフォームを効率よく得ることができる。
【0043】
尚、本発明においては、ポリオール(A)の種類によって、アミン触媒の種類及び使用量を選択することにより、親水性、硬さ、弾性及び圧縮残留歪を広い範囲に制御可能なポリウレタンフォームとすることができる。
上記ポリオール(A)がポリエステルポリオールの場合、好ましいアミン触媒は、環状アミン化合物であり、その使用量は、上記ポリオール(A)を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜2.0質量部、より好ましくは0.2〜1.8質量部、更に好ましくは0.3〜1.7質量部である。
また、上記ポリオール(A)がポリエーテルポリオールの場合、好ましいアミン触媒は、アルコールアミン化合物であり、その使用量は、上記ポリオール(A)を100質量部とした場合に、好ましくは0.01〜1.0質量部、より好ましくは0.05〜0.8質量部、更に好ましくは0.08〜0.5質量部である。
【0044】
上記のように、本発明に係る触媒(E)としては、金属触媒を用いることができる。この金属触媒のうち、有機錫化合物としては、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫メルカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫メルカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート等が挙げられる。
有機ビスマス化合物としては、酢酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ジブチルビスマスジアセテート、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等が挙げられる。
有機鉛化合物としては、酢酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛、ジブチル鉛ジアセテート、ジブチル鉛ジラウレート、ジオクチル鉛ジラウレート等が挙げられる。
有機亜鉛化合物としては、ナフテン酸亜鉛、デカン酸亜鉛、4−シクロヘキシル酪酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、イソ酪酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−トルエンスルホン酸亜鉛、亜鉛(II)ビス−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート等が挙げられる。
【0045】
上記金属触媒としては、有機錫化合物が好ましい。
【0046】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造に金属触媒を用いる場合、その使用量は、上記ポリオール(A)を100質量部とした場合に、好ましくは0.01〜1.0質量部、より好ましくは0.03〜0.8質量部、更に好ましくは0.1〜0.5質量部である。この金属触媒の含有量が上記範囲にあると、フォームの表面のベタツキ性の少ない(表面硬化が充分な)キュアー性に優れるポリウレタンフォームとすることができる。
【0047】
尚、本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造に用いる触媒(E)としては、アミン触媒及び金属触媒を組み合わせて用いてもよい。この場合、金属触媒の使用量は、上記アミン触媒を100質量部とした場合に、好ましくは1〜500質量部、より好ましくは3〜400質量部、更に好ましくは10〜300質量部である。
【0048】
次に、アルコキシシラン(F)について、説明する。このアルコキシシラン(F)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
−O−[Si(OR−O]−R (1)
(式中、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、mは、2以上の整数である。)
【0049】
上記一般式(1)において、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基である。この炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれでもよい。好ましい炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であり、その炭素原子数は、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜2である。
また、上記一般式(1)において、mは2以上の整数であり、好ましくは3〜30、より好ましくは4〜20である。
【0050】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造に用いるアルコキシシラン(F)は、1種単独であってよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0051】
上記アルコキシシラン(F)の使用量は、上記ポリオール(A)を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.2〜2.0質量部である。このアルコキシシラン(F)の使用量が上記範囲にあると、親水性に優れたポリウレタンフォームが効率よく得られ、クラックや崩壊を生じることなく、発泡安定性に優れるポリウレタンフォームとすることができる。尚、上記アルコキシシラン(F)の使用量が少なすぎると、親水性が十分でない場合がある。また、この使用量が多すぎると、ウレタン原料の反応バランスを阻害し、樹脂化強度が十分に得られない場合がある。
【0052】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造に際して、必要に応じて、鎖延長剤、破泡剤、消泡剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、難燃剤、抗菌剤、安定剤、着色剤、親水性付与剤等の添加剤を用いてもよい。
【0053】
本発明の親水性ポリウレタンフォームは、上記のように、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、発泡剤(C)、整泡剤(D)、触媒(E)及びアルコキシシラン(F)を用いて得られたものである。その製造に際しては、反応工程、及び、接触工程又はガス置換工程を、順次、進めるものである。
【0054】
上記反応工程は、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を、発泡剤(C)、整泡剤(D)、触媒(E)及びアルコキシシラン(F)の存在下に反応させて、第1ポリウレタンフォームを得る工程である。本発明において、モールド成形又は軟質スラブフォーム成形を適用することができる。
上記反応工程における具体的な操作の一例は、次の通りである。
初めに、ポリオール(A)、発泡剤(C)、整泡剤(D)、触媒(E)、アルコキシシラン(F)、及び、必要により、添加剤について、所定量を混合した後、発泡機等を使用して、この混合物と、ポリイソシアネート(B)とを混合する。
次いで、モールド成形の場合には、得られた混合液(発泡原液)を、密閉型もしくは開放型のモールド(金属製又は樹脂製)に注入した後、加熱等によるウレタン化反応に供して、硬化したのを確認し、脱型して、連続気泡構造を有し、軟質の第1ポリウレタンフォームを得る。
また、軟質スラブフォーム成形の場合には、スラブ成形用のコンベアに配された離型紙の上に、混合液(発泡原液)を供給し、加熱炉に通すことにより、連続気泡構造を有する軟質の第1ポリウレタンフォームを得る。
【0055】
上記第1ポリウレタンフォームは、アルコキシシラン(F)と、空気中の水分、又は、発泡剤(C)として水を用いた場合の水、とが反応して形成された、アルコキシシラン(F)の部分加水分解物(シラノール基及びアルコキシシリル基を有する化合物)が生成し、この部分加水分解物におけるシラノール基の一部又は全てが、ポリイソシアネート(B)と反応して得られたものであると考えられる。従って、この第1ポリウレタンフォームを構成するポリウレタンは、少なくとも、−Si−OR、−Si−OR又は−Si−ORのアルコキシシリル基を含んでおり、シラノール基を含む場合がある。
【0056】
上記反応工程により得られた第1ポリウレタンフォームは、一面側から他面側への通気性(通水性)を有し、JIS K6400−7 A法に準じて測定される通気性は、好ましくは1〜300リットル/分、より好ましくは5〜250リットル/分である。
また、セル数(JIS K6400に準拠)は、好ましくは10〜100個/25mm、より好ましくは20〜80個/25mmである。
密度(JIS K7222に準拠)は、好ましくは10〜100kg/m、より好ましくは15〜80kg/mである。
更に、硬さ(JIS K6400−2に準拠)は、好ましくは10〜300N、より好ましくは40〜200Nである。
【0057】
上記反応工程の後、第1ポリウレタンフォームは、接触工程に供される。
この接触工程における具体的な操作は、以下に例示される。
(1)第1ポリウレタンフォームに水又は水蒸気を噴霧する方法。
(2)第1ポリウレタンフォームを水の中に浸漬する方法。
これらの方法において、水は、冷水、温水及び熱水のいずれでもよい。
【0058】
本発明の親水性ポリウレタンフォームを製造する他の方法においては、上記反応工程の後、第1ポリウレタンフォームは、ガス置換工程、即ち、第1ポリウレタンフォームの内部の気体を、水蒸気を含む空気に置換する工程に供される。
上記のように、反応工程は、加熱を伴う工程であるので、この反応工程の終了後、第1ポリウレタンフォームの通気性が良好、例えば、後述する「ヘルスバブル」、「ガス抜け少」又は「ため息」の発泡状態、であれば、反応工程の終了とともに、ガス置換工程が進行していると考えられる。尚、「ヘルスバブル」は、泡化反応により発生した炭酸ガス等が、膨らんだ第1ポリウレタンフォームの表面からブクブクとガス抜けする状態(別の表現では「ガス抜け多し」)であり、「ガス抜け少」は、ガス抜け量が少ない状態である。また、「ため息」は、膨らんだ第1ポリウレタンフォームの表面から泡状のガス抜けはないものの、一旦膨らんだフォーム表面が、ヒトのため息のように、わずかに縮み微細なガスが抜ける状態である。
【0059】
上記ガス置換工程において、第1ポリウレタンフォームの内部の気体が、空気に置換されると、上記接触工程より時間を要するかも知れないが、第1ポリウレタンフォームに残存するアルコキシシリル基が空気中の水分と反応して、シラノール基に変換され、本発明の親水性ポリウレタンフォームが得られる。尚、ガス置換工程の具体的な方法としては、第1ポリウレタンフォームを空気中に放置する方法のほか、第1ポリウレタンフォームに空気を吹き付ける方法、一定の湿度を有する密閉容器に第1ポリウレタンフォームを閉じ込めておく方法、等が挙げられる。
【0060】
本発明においては、必要に応じて、上記接触工程又はガス置換工程の後、ポリウレタンフォームを乾燥する乾燥工程、厚さを調節する圧縮工程等を備えることができる。
【0061】
上記のようにして得られた本発明の親水性ポリウレタンフォームの構造及び物性は、第1ポリウレタンフォームのそれらと、同様である。即ち、連続気泡構造、通気性、セル数、密度及び硬さは、接触工程又はガス置換工程の前後において、同様である。
また、製造原料として用いたアルコキシシラン(F)は、上記のように、ポリウレタンのセル壁及びセル骨格を形成しているものと考えられるので、本発明の親水性ポリウレタンフォームにおいては、残存していない。
【0062】
尚、本発明において、親水性ポリウレタンフォームを水に接触させた際の水の浸透速度(吸水速度)は、製造原料の種類及びその使用量等によって、即ち、ポリウレタンを主とするセル壁の構成材料及びセル形状によって、大きいものから小さいものまで、様々である。
【0063】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの物性(引張強度、引張伸び、圧縮残留歪)は、以下の通りである。
引張強度(JIS K6400−5に準拠)は、好ましくは50〜500kPa、より好ましくは80〜300kPaである。
引張伸び(JIS K6400−5に準拠)は、好ましくは50〜1,000%、より好ましくは80〜500%である。
圧縮残留歪(JIS K6400−4に準拠)は、好ましくは0.01〜20%、より好ましくは0.01〜10%である。
【0064】
本発明の親水性ポリウレタンフォームの製造方法においては、原料成分及びその使用量を適切に選択することにより、広い物性範囲で、硬さ、弾性及び圧縮残留歪のバランスに優れた親水性ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0065】
製造原料のうち、ポリオール(A)がポリエーテルポリオールを含み、触媒(E)がアミン触媒及び金属触媒を含む場合であって、発泡剤(C)、整泡剤(D)、アミン触媒、金属触媒及びアルコキシシラン(F)の使用量が、ポリオール(A)100質量部に対して、それぞれ、4〜5質量部、0.5〜1.5質量部、0.1〜0.5質量部、0.1〜0.5質量部及び0.1〜1.0質量部であり、且つ、イソシアネートインデックスが105〜120である場合には、密度を、好ましくは18〜40kg/m、より好ましくは20〜30kg/mとすることができ、硬さを、好ましくは60〜200N、より好ましくは80〜150Nとすることができ、引張強度を、好ましくは50〜300kPa、より好ましくは80〜200kPaとすることができ、圧縮残留歪を、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは0.1〜10%とすることができる。
この場合、上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン(F)として、R、R及びRが、炭素原子数1〜10の炭化水素基であるアルコキシシランを用いると、炭素原子数1〜10の炭化水素基であるアルコキシシランを用いたときよりも、水に接触させた際の通水性及び吸水性が早まる傾向にある。
【0066】
また、製造原料のうち、ポリオール(A)がポリエステルポリオールを含み、触媒(E)がアミン触媒を含む場合であって、発泡剤(C)、整泡剤(D)、触媒(E)及びアルコキシシラン(F)の使用量が、ポリオール(A)100質量部に対して、それぞれ、2〜6質量部、0.2〜3.0質量部、0.01〜2.0質量部及び0.1〜5.0質量部であり、且つ、イソシアネートインデックスが100〜130である場合には、密度を、好ましくは16〜50kg/m、より好ましくは20〜40kg/mとすることができ、硬さを、好ましくは50〜300N、より好ましくは100〜250Nとすることができ、引張強度を、好ましくは50〜500kPa、より好ましくは70〜400kPaとすることができ、圧縮残留歪を、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは0.1〜10%とすることができる。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0068】
1.原料成分
下記の実施例及び比較例において用いる材料を示す。
1−1.ポリオール(A)
(1)ポリオール(A1)
日本ポリウレタン工業社製ポリエステルポリオール「N2200」(商品名)を用いた。官能基数は2.7、水酸基価は60mgKOH/g、数平均分子量は2,500である。
(2)ポリオール(A2)
三洋化成工業社製ポリエーテルポリオール「GP−3050F」(商品名)を用いた。官能基数は3、水酸基価は56mgKOH/g、数平均分子量は3,000である。
【0069】
1−2.ポリイソシアネート(B)
日本ポリウレタン社製トリレンジイソシアネート「コロネートT−80」(商品名)を用いた。
1−3.発泡剤(C)
水を用いた。
1−4.整泡剤(D)
(1)整泡剤(D1)
GE東芝シリコーン社製シリコーン整泡剤「NIAX SILICONE SE232」(商品名)を用いた。この製品は、ポリオキシアルキレン・ポリジメチルシロキサン共重合体を含む整泡剤である。
(2)整泡剤(D2)
エボニック社製シリコーン整泡剤「BF2370」(商品名)を用いた。この製品は、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイドを共重合して得られた重合体を含む整泡剤である。
【0070】
1−5.触媒(E)
(1)アミン系触媒(E1)
花王社製N−エチルモルホリン「カオーライザーNo.22」(商品名)を用いた。
(2)アミン系触媒(E2)
花王社製N,N−ジメチルアミノヘキサノール「カオーライザーNo.25」(商品名)を用いた。
(3)金属触媒(E3)
城北化学工業社製オクチル酸錫「MRH−110」(商品名)を用いた。
【0071】
1−6.アルコキシシラン(F)
(1)アルコキシシラン(F1)
上記一般式(1)におけるR、R及びRが、それぞれ、メチル基、メチル基及びメチル基であり、平均分子量が600(m=4〜5)であるアルコキシシラン(商品名「MS−51」、三菱化学社製)を用いた。
(2)アルコキシシラン(F2)
上記一般式(1)におけるR、R及びRが、それぞれ、メチル基、メチル基及びメチル基であり、平均分子量が2,000(m≒18)であるアルコキシシラン(商品名「MS−51」、三菱化学社製)を用いた。
1−7.アルコキシシラン(G)
比較例のために、信越化学工業社製デシルトリメトキシシラン「KBM3103」(商品名)を用いた。
【0072】
2.親水性ポリウレタンフォームの製造及び評価
実施例1〜5及び比較例1〜3
ポリイソシアネート以外の原料を、表1及び表2に示す割合で混合した後、ポリイソシアネートを配合して更に混合した。次いで、得られた混合物を、容器(内寸:300mm×300mm×300mm)に投入して、23℃で発泡及び硬化させた。その後、得られたポリウレタンフォーム(第1ポリウレタンフォーム)を、70℃で1時間静置した。次いで、このポリウレタンフォームを、水中に120分間浸漬させてから、これを取り出し、水切りを行わずに、70℃に設定した恒温槽内に3時間載置することにより、連続気泡を有する親水性ポリウレタンフォームを得た。
表1及び表2に記載のイソシアネートインデックスは、アルコキシシランに由来するシラノール基を考慮しないで算出した値である。
【0073】
第1ポリウレタンフォーム製造の際の発泡状態(ガス抜け状態)、及び、得られた親水性ポリウレタンフォームの密度、通気性、硬さ、引張強度、引張伸び、圧縮残留歪、アセトン抽出物の総量、吸水時間、水滴サイズ及び含水時間(水没時間)について評価した。その結果を表1及び表2に併記した。
【0074】
(1)発泡状態(ガス抜け状態)
第1ウレタンフォーム製造の際の発泡状態を目視で評価した。判断基準は以下の通りである。
「ヘルスバブル」は、泡化反応により発生した炭酸ガス等が、膨らんだ第1ポリウレタンフォームの表面からブクブクとガス抜けしたことを意味する。
「ガス抜け少」は、炭酸ガス等のガス抜け量が少なかったことを意味する。
「ため息」は、膨らんだ第1ポリウレタンフォームの表面から泡状のガス抜けはないものの、一旦膨らんだフォーム表面が、ヒトのため息のように、わずかに縮み微細なガスが抜けたことを意味する。
また、「ガス抜けなし」は、上記のガス抜けがなく、フォームが上昇して膨らみそのまま膨らんだままで、硬化したことを意味する。
(2)密度
JIS K7222に準じて測定した。
(3)通気性
JIS K6400−7のA法に準じて測定した。
(4)硬さ
JIS K6400−2に準じて測定した。
(5)引張強度及び伸び
JIS K6400−5に準じて測定した。
(6)圧縮残留歪
JIS K6400−4に準じて測定した。
(7)アセトン抽出
得られた親水性ポリウレタンフォームを切削加工して、大きさが10mm×30mm×30mmである試験片を作製し、アセトンを用いて、70℃でソックスレー抽出を8時間行い、ポリウレタンフォームの質量に対する抽出物の質量の割合を算出した。
(8)親水性試験
下記方法により、含水時間(水没時間)、吸水時間及び水滴の大きさを測定し、親水性を評価した。
(a)吸水時間及び水滴の大きさ
得られた親水性ポリウレタンフォームを切削加工して、大きさが100mm×100mm×10mmである板状試験片を作製し、この板状試験片の表面に、スポイトを用いて0.5mlの水を滴下し、図1に従って、その大きさを測定した。水は、上方から見て円形となるように滴下した。また、水滴を形成してから、水が表面から内部に完全に浸透して、表面に見えなくなるまでの時間を測定した。
(b)含水時間(水没時間)
得られた親水性ポリウレタンフォームを切削加工して、大きさが100mm×100mm×10mmである板状試験片を作製し、この板状試験片を、容器に収容した23℃の水の水面に静置し、載置してから完全に水没するまでの時間を計測した。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
比較例1〜3は、本発明に係る成分(F)を用いずにポリウレタンフォームを製造した例であり、親水性が十分ではなかった。
一方、実施例1〜5は、比較例1〜3よりも優れた親水性を有することが明らかである。特に、吸水時間を、13〜97分といった広い範囲に制御することができるので、所望の吸水性に応じた商品設計が容易であるとともに、広い用途に使用可能である。
尚、表1及び表2の「アセトン抽出物の総量」において、比較例1及び実施例1では、それぞれ、1.25%及び1.13%となっており、また、比較例2及び実施例2では、それぞれ、0.41%及び0.43%となっており、実施例1及び2は、成分(F)を用いていない比較例1及び2よりも多量であるといえないので、成分(F)は、反応に消費されて、ポリウレタンの骨格に含まれているものと思われる。尚、比較例において抽出されたものは、整泡剤、未反応のポリオール等と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の親水性ポリウレタンフォームは、プリンターのインク吸収材、吸水用ロール、吸汗材、保湿材、水耕栽培用部材、自動車の洗車後の水分の拭き取り材、液晶用板ガラス、建築用板ガラス等のガラス洗浄材、OA機器分野におけるクリーンルームの水分の拭き取り材、ワイパー用部材、結露防止材、食品用トレークッション材等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤、触媒、及び、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランを用いて形成された、シラノール基を有するポリウレタンからなり、連続気泡構造を有することを特徴とする親水性ポリウレタンフォーム。
−O−[Si(OR−O]−R (1)
(式中、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、mは、2以上の整数である。)
【請求項2】
上記ポリオールが、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の親水性ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
JIS K6400−7(A法)に準じて測定された通気性が1〜300リットル/分である請求項1又は2に記載の親水性ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項1に記載の親水性ポリウレタンフォームの製造方法であって、
ポリオールと、ポリイソシアネートとを、発泡剤、整泡剤、触媒、及び、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランの存在下に反応させて、第1ポリウレタンフォームを得る工程と、
上記第1ポリウレタンフォームに水又は水蒸気を接触させる工程と、
を備えることを特徴とする親水性ポリウレタンフォームの製造方法。
−O−[Si(OR−O]−R (1)
(式中、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、mは、2以上の整数である。)
【請求項5】
請求項1に記載の親水性ポリウレタンフォームの製造方法であって、
ポリオールと、ポリイソシアネートとを、発泡剤、整泡剤、触媒、及び、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランの存在下に反応させて、第1ポリウレタンフォームを得る工程と、
上記第1ポリウレタンフォームの内部の気体を、水蒸気を含む空気に置換する工程と、
を備えることを特徴とする親水性ポリウレタンフォームの製造方法。
−O−[Si(OR−O]−R (1)
(式中、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、mは、2以上の整数である。)

【図1】
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【公開番号】特開2012−77166(P2012−77166A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222676(P2010−222676)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】