説明

親水性ポリウレタン分散体

本発明は、ポリウレタンウレアが(1)ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのコポリマー単位で終端し、(2)少なくとも1種のヒドロキシル基含有ポリカーボネートポリオールを含んでなる、ポリウレタンウレア分散体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性被膜を製造するために使用できるポリウレタン分散体としての被覆組成物に関する。本発明の更なる対象は、そのような被覆組成物の製造方法、該被覆組成物の使用、特にメディカルデバイスを被覆するための使用である。
【背景技術】
【0002】
カテーテルのようなメディカルデバイスの使用は、該デバイスに親水性表面を付与することによって大きく改良することができる。血液または尿との接触時に親水性表面が水膜を吸着するといった事実によって、導尿カテーテルまたは血管カテーテルの挿入および移動がより容易になる。水膜がカテーテル表面と血管壁の間の摩擦を低減し、それによってカテーテルの挿入および移動がより容易になる。均一な水膜の形成によって摩擦を低減するために、挿入前にデバイスに直接水を供給することもできる。関係している患者の痛みはより軽減され、結果的に、血管壁を傷つける危険性が低減する。カテーテルを血液と接触させて使用する場合は更に、血栓が生じる危険性が常に存在する。これに関して、親水性被膜は、抗血栓性被膜として有用であると一般に考えられている。
【0003】
そのような表面を製造するための適性は、基本的に、対応するポリウレタンの溶液または分散体から出発して製造されたポリウレタン被膜が有している。
【0004】
例えば、US 5,589,563は、生物医学分野に使用され、かつメディカルデバイスの被覆にも使用できるポリマーのための表面変性末端基を含有する被膜の使用を記載している。得られる被膜は、溶液または分散体に基づいて製造され、該ポリマー被膜は、アミン、フッ素化アルカノール、ポリジメチルシロキサンおよびアミン末端ポリエチレンオキシドから選択される異なった末端基を含有する。しかしながら該ポリマーは、メディカルデバイス用被膜としての特性、特に要求される親水性に関する特性を十分有していない。
【0005】
DE 199 14 882 A1は、
(a)少なくとも1種のポリオール成分、
(b)少なくとも1種のジイソシアネート成分、トリイソシアネート成分および/またはポリイソシアネート成分、
(c)イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1個の基と少なくとも1つの親水性ポリエーテル鎖とを含有する化合物、および/または塩を形成でき必要に応じて少なくとも部分的に中和された状態で存在してよい少なくとも1個の基とイソシアネート基に対して反応性である少なくとも1個の基とを含有する化合物からなる、少なくとも1種の親水性の非イオン性または潜在的イオン性合成成分、
(d)イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1個の基を含有する、分子量範囲32〜500の、成分(a)〜(c)とは異なる少なくとも1種の合成成分、および
(e)少なくとも1種の単官能性ブロッキング剤
から合成した、分散または溶解した状態の、ポリウレタン、ポリウレタンウレアおよびポリウレアに関する。このように単官能性ブロッキング剤を必ず含有するポリマー分散体は、サイズ剤に使用される。
【0006】
DE 199 14 885 A1は、
(a)少なくとも1種のポリオール成分、
(b)少なくとも1種のジイソシアネート成分、トリイソシアネート成分および/またはポリイソシアネート成分、
(c)必要に応じて、NCO基に対して反応性である少なくとも1個の基と塩を形成でき必要に応じて少なくとも部分的に中和された状態で存在してよい少なくとも1個の基とを含有する化合物からなる、少なくとも1種の(潜在的)イオン性合成成分、
(d)必要に応じて、イソシアネート付加反応において1〜4の官能価を有し、かつ少なくとも1個の親水性ポリエーテル鎖を含有する化合物からなる、少なくとも1種の非イオン的親水性合成成分、
(e)必要に応じて、イソシアネート基に対して反応性である基を含有する、分子量範囲32〜2500の、成分(a)〜(d)とは異なる少なくとも1種の合成成分、および
(f)0.1〜15重量%の、少なくとも50%の範囲のジメチルピラゾールで構成される少なくとも1種の単官能性ブロッキング剤
の反応生成物に好ましくは相当する、ポリウレタン、ポリウレタン−ポリウレアまたはポリウレアに基づく分散体であって、成分(a)〜(f)の和は100%であり、成分(c)または(d)のいずれかは0でなくてよく、かつ安定な分散体を形成できる量で使用される、分散体に関する。特に、無機基材を被覆するため、木材および木材に基づく材料をワニス塗りおよびシーリングするため、金属表面を塗装および被覆するため、プラスチックを塗装および被覆するため、並びに布地および皮革を被覆するために、該分散体を使用する。
【0007】
従来技術から知られているこれらのポリウレタンウレア分散体は、医療目的、即ちメディカルデバイスを被覆するために使用されていない。
【0008】
更に、今まで知られているポリウレタンウレア被膜は、メディカルデバイス上の被膜として使用するのに十分な親水性を有していないといった欠点をしばしば有する。
【0009】
これに関して、US 5,589,563は、メディカルデバイスを被覆するために使用できる生物医学的ポリマーに表面変性末端基を導入することを推奨している。該ポリマーは、アミン、フッ素化アルカノール、ポリジメチルシロキサンおよびアミン末端ポリエチレンオキシドから選択される異なった末端基を含有する。しかしながら、メディカルデバイス用被膜として、該ポリマーもまた十分な特性、特に要求される親水性に関する十分な特性を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 5,589,563
【特許文献2】DE 199 14 882 A1
【特許文献3】DE 199 14 885 A1
【特許文献4】US 5,589,563
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、メディカルデバイスに親水性表面を付与するために使用できるポリウレタンウレア分散体を提供することである。該表面は、血液と接触させてしばしば使用されるので、該材料表面は、良好な血液適合性も有すべきであり、特に血栓が生じる危険性を低減すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、メディカルデバイスに親水性表面を付与するために使用できる、ポリウレタンウレア分散体を提供する。
【0013】
本発明のポリウレタンウレア分散体は、
(1)ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含んでなるコポリマー単位で終端している、少なくとも1種のポリウレタンウレア、並びに
(2)少なくとも1種のポリカーボネートポリオール
を含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、これらの特定のポリウレタンウレアを含んでなる組成物が、メディカルデバイス上の被膜として著しく適していることが見出された。該組成物は、著しく滑らかな被膜を提供すると同時に、メディカルデバイスを用いた処置中に血栓が生じる危険性を低減する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的のためのポリウレタンウレアは、
(a)以下の一般構造:
【化1】

で示されるウレタン基を少なくとも2個含有する反復単位、および
以下の一般構造:
【化2】

で示されるウレア基を含有する反復単位の少なくとも1個
を含有するポリマー化合物である。
【0016】
本発明で使用する被覆組成物は、実質的にイオン変性されていないポリウレタンウレアに基づく。これは、本発明では、本発明で使用するポリウレタンウレアがイオン基(特に、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスフェート基およびホスホネート基)を実質的に含有しないことを意味する。
【0017】
用語「実質的にイオン変性されていない」とは、本発明では、イオン変性が最大2.50重量%、好ましくは最大2.00重量%、特に最大1.50重量%、より好ましくは最大1.00重量%、とりわけ最大0.50重量%の割合で存在し、最も好ましい状況では、本発明のポリウレタンウレア全体でイオン変性が存在しないことを意味する。
【0018】
本発明のポリウレタンウレアは、好ましくは実質的に直鎖分子であり、あまり好ましくはないが分枝であってもよい。実質的に直鎖分子とは、好ましくは1.7〜2.3、特に1.8〜2.2、より好ましくは1.9〜2.1の平均ヒドロキシル官能価を有するポリカーボネートポリオールを含んでなる、初期架橋度の低い系を意味する。この種の系はまだ、十分な程度に分散することができる。
【0019】
本発明で好ましく使用するポリウレタンウレアの数平均分子量は、好ましくは1000〜200,000、より好ましくは5000〜100,000である。本発明において、数平均分子量は、30℃で、ジメチルアセトアミド中、標準としてのポリスチレンに対して測定される。
【0020】
ポリウレタンウレア
以下に、本発明のポリウレタンウレアをより詳細に記載する。
本発明のポリウレタンウレアは、少なくとも1種のポリカーボネートポリオール成分、ポリイソシアネート成分、ポリオキシアルキレンエーテル成分、ジアミンおよび/またはアミノアルコール成分、および必要に応じてポリオール成分を包含する合成成分の反応によって調製される。
以下に、個々の合成成分をより詳細に記載する。
【0021】
(a)ポリカーボネートポリオール
本発明のポリウレタンウレアは、少なくとも1種のヒドロキシル含有ポリカーボネート(ポリカーボネートポリオール)に由来する単位を含んでなる。
【0022】
基本的に、1.7〜2.3、好ましくは1.8〜2.2、より好ましくは1.9〜2.1の平均ヒドロキシル官能価を有するポリカーボネートポリオール(即ちポリヒドロキシル化合物)が、ヒドロキシル含有ポリカーボネートに基づく単位の導入に適している。従って、ポリカーボネートは、好適には、実質的に直鎖の構造であり、僅かな三次元架橋しか有さない。
【0023】
適当なヒドロキシル含有ポリカーボネートは、例えば炭酸誘導体(例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲン)とポリオール(好ましくはジオール)との反応によって得られる、好ましくは400〜6000g/mol、より好ましくは500〜5000g/mol、特に600〜3000g/molの分子量(OH価によって測定された分子量;DIN 53240)のポリカーボネートである。そのような適当なジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、およびラクトン変性ジオールを包含する。
【0024】
ジオール成分は、好ましくは40〜100重量%のヘキサンジオール、好適には1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体、好ましくは末端OH基の他にエーテル基またはエステル基も含有するヘキサンジオール誘導体(その例は、1molのヘキサンジオールと少なくとも1mol、好ましくは1〜2molのカプロラクトンとの反応によって、或いはジへキシレングリコールまたはトリへキシレングリコールを与えるヘキサンジオール同士のエーテル化によって、得られる生成物である)を含有する。ポリエーテル−ポリカーボネートジオールを使用することもできる。ヒドロキシルポリカーボネートは、実質的に直鎖であるほうがよい。しかしながら必要に応じて、ヒドロキシルポリカーボネートは、多官能性成分、特に低分子量ポリオールの配合の結果として、やや分枝していてもよい。この目的に適した低分子量ポリオールの例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシドまたは1,3,4,6−ジアンヒドロヘキシトールを包含する。好ましいポリカーボネートは、ヘキサン−1,6−ジオールに基づくポリカーボネート、および例えばブタン−1,4−ジオールのような変性作用を有するコジオールに基づくポリカーボネート、またはε−カプロラクトンに基づくポリカーボネートである。更に好ましいポリカーボネートジオールは、ヘキサン−1,6−ジオールおよびブタン−1,4−ジオールの混合物に基づくポリカーボネートジオールである。
【0025】
(b)ポリイソシアネート
本発明のポリウレタンウレアは更に、少なくとも1種のポリイソシアネートに由来する単位を含有する。
【0026】
ポリイソシアネート(b)として、当業者に知られており、1以上、好ましくは2以上の平均NCO官能価を有する、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族および脂環式イソシアネートの全てを、それらがホスゲン法またはホスゲンフリー法のどちらによって調製されたかに関係なく、単独でまたは互いの所望の混合物として使用することができる。ポリイソシアネートは、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、アロファネート、ビウレット、ウレア、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシルウレアおよび/またはカルボジイミド構造を含有してもよい。ポリイソシアネートは、単独でまたは互いの所望の混合物として使用してよい。
【0027】
3〜30個、好ましくは4〜20個の炭素原子の(存在するNCO基を除く)炭素主鎖を含有する、一連の脂肪族または脂環式の例からのイソシアネートを使用することが好ましい。
【0028】
成分(b)の特に好ましい化合物は、脂肪族的および/または脂環式的に結合したNCO基を含有する上記した種類、例えば、ビス(イソシアナトアルキル)エーテル、ビス−およびトリス(イソシアナトアルキル)ベンゼン、−トルエン、および−キシレン、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート(例えば、一般に2,4,4および2,2,4異性体の混合物としての、トリメチル−HDI(TMDI))、ノナントリイソシアネート(例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート)、デカンジイソシアネート、デカントリイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、ドデカントリイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)またはビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)に従う。
【0029】
成分(b)の特に好ましい化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチル−HDI(TMDI)、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート(MPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート(IMCI)および/または4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)或いはこれらイソシアネートの混合物である。更なる例は、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造および3個以上のNCO基を含有する、上記ジイソシアネートの誘導体である。
【0030】
本発明で使用する被覆組成物中の成分(b)の量は、各々の場合に本発明で使用する被覆組成物の成分(a)に基づいて、好ましくは1.0〜4.0mol、より好ましくは1.2〜3.8mol、特に1.5〜3.5molである。
【0031】
(c)ポリオキシアルキレンエーテル
本発明のポリウレタンウレアは、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含んでなるコポリマーに由来する単位を含有する。該コポリマー単位は、ポリウレタンウレアにおいて末端基として存在する。
【0032】
非イオン的親水化化合物(c)は、例えば、適当なスターター分子のアルコキシル化により常套法で得られる種類の、一分子あたり平均して5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を含有する単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである(例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, 第4版、第19巻、Verlag Chemie, ヴァインハイム、第31頁〜第38頁)。
【0033】
適当なスターター分子の例は、飽和モノアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール(各種異性体)、ヘキサノール(各種異性体)、オクタノール(各種異性体)およびノナノール(各種異性体)、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール(各種異性体)またはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル))、不飽和アルコール(例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール)、芳香族アルコール(例えば、フェノール、クレゾール(各種異性体)またはメトキシフェノール(各種異性体))、芳香脂肪族アルコール(例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール)、第二級モノアミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−およびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン)、並びに複素環式第二級アミン(例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾール)である。好ましいスターター分子は、飽和モノアルコールである。スターター分子として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用することが特に好ましい。
【0034】
アルコキシル化反応では、アルキレンオキシドであるエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを、任意の順でまたは混合物として使用できる。
【0035】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、アルキレンオキシド単位が好ましくは少なくとも30mol%、より好ましくは少なくとも40mol%の範囲のエチレンオキシド単位で構成される、エチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位および60mol%以下のプロピレンオキシド単位を含有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0036】
ポリオキシアルキレンエーテルの平均分子量は、好ましくは500g/mol〜5000g/mol、より好ましくは1000g/mol〜4000g/mol、特に1000g/mol〜3000g/molである。
【0037】
本発明で使用する被覆組成物中の成分(c)の量は、各々の場合に本発明で使用する被覆組成物の成分(a)に基づいて、好ましくは0.01〜0.5mol、より好ましくは0.02〜0.4mol、特に0.04〜0.3molである。
【0038】
本発明によって、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド含有混合ポリオキシアルキレンエーテルに基づく末端基を含有するポリウレタンウレアが、親水性の高い被膜を製造するのに特に適していることがわかった。後に示すように、もっぱらポリエチレンオキシドで終端したポリウレタンウレアと比べて、本発明の被膜は、有意に低い接触角をもたらし、従って、より親水性である。
【0039】
(d)ジアミンまたはアミノアルコール
本発明のポリウレタンウレアは、少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコールに由来する単位を含有する。
【0040】
本発明のポリウレタン被覆剤は、いわゆる連鎖延長剤(d)を用いて製造される。そのような連鎖延長剤は、ジアミンまたはポリアミンおよびヒドラジド、例えば、ヒドラジン、1,2−エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパンおよび1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−キシリレンジアミンおよび1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジアミンおよび4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルエチレンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタンおよび他の(C〜C)ジ−およびテトラアルキルジシクロヘキシルメタン、例えば4,4’−ジアミノ−3,5−ジエチル−3’,5’−ジイソプロピルジシクロヘキシルメタンである。
【0041】
適当なジアミンまたはアミノアルコールは、一般に、NCO基に対する異なった反応性を有する活性水素を含有する低分子量のジアミンまたはアミノアルコール、例えば、第一級アミノ基の他に第二級アミノ基も含有するか、或いはアミノ基(第一級または第二級)の他にOH基も含有する化合物である。そのような化合物の例は、第一級および第二級アミン、例えば、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン、およびアミノアルコール、例えば、N−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミン、特に好ましくはジエタノールアミンである。
【0042】
本発明で使用する被覆組成物の成分(d)は、組成物の調製において、連鎖延長剤としておよび/または連鎖停止剤として使用され得る。
【0043】
本発明で使用する被覆組成物中の成分(d)の量は、各々の場合に本発明で使用する被覆組成物の成分(a)に基づいて、好ましくは0.05〜3.0mol、より好ましくは0.1〜2.0mol、特に0.2〜1.5molである。
【0044】
(e)ポリオール
別の態様では、本発明のポリウレタンは、少なくとも1種の別のポリオールに由来する単位を付加的に含んでなる。
【0045】
ポリウレタンウレアを合成するために使用する更なる低分子量ポリオール(e)は、一般に、ポリマー鎖を剛直にするおよび/または分枝する効果を有する。分子量は、好ましくは62〜500g/mol、より好ましくは62〜400g/mol、特に62〜200g/molである。
【0046】
適当なポリオールは、脂肪族基、脂環式基または芳香族基を含有してよい。本発明では、例えば一分子あたり約20個までの炭素原子を含有する低分子量ポリオール、例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、およびトリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリスリトール、並びにそれらのおよび必要に応じて他の低分子量ポリオールとの混合物を挙げることができる。例えば、α−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシカプロン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸(β−ヒドロキシエチル)エステルまたはテレフタル酸ビス(β−ヒドロキシエチル)エステルのようなエステルジオールを使用してもよい。
【0047】
本発明で使用する被覆組成物中の成分(e)の量は、各々の場合に本発明で使用する被覆組成物の成分(a)に基づいて、好ましくは0.1〜1.0mol、より好ましくは0.2〜0.9mol、特に0.2〜0.8molである。
【0048】
(f)更なるアミン含有単位および/またはヒドロキシ含有単位(合成成分)
イソシアネート含有成分(b)と、ヒドロキシ官能性化合物またはアミン官能性化合物である成分(a)、(c)、(d)および使用するならば(e)との反応は、典型的には、反応性ヒドロキシ化合物または反応性アミン化合物に対してややNCO過剰が認められる状態で行う。水への分散の結果として、残留イソシアネート基は加水分解されてアミン基になる。しかしながら特定の場合では、ポリウレタンを分散する前に、残留イソシアネート基をブロックすることが重要であり得る。
【0049】
従って、本発明に従って供給されるポリウレタンウレア被覆剤は、各々の場合に鎖末端に位置してキャップする合成成分(f)を含んでなることもできる。これらの単位は、一方では、NCO基に対して反応性である単官能性化合物、例えばモノアミン、特に第二級モノアミン、またはモノアルコールに由来する。
【0050】
本発明では、例えば、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジンおよびそれらの適当な置換誘導体を挙げることができる。
【0051】
単位(f)は、NCO過剰を解消するため、本発明の被覆剤に本質的に使用されるので、望ましい量は、本質的にNCO過剰量に依存し、一般的に明記できない。
【0052】
本発明の1つの好ましい態様では、成分(f)を使用しない。その場合、本発明のポリウレタンウレアは成分(a)〜(d)および必要に応じて成分(e)をもっぱら含んでなる。本発明のポリウレタンウレアが成分(a)〜(d)および必要に応じて成分(e)で構成される、即ち更なる合成成分を含まない場合が更に好ましい。
【0053】
(g)更なる成分
更に、本発明のポリウレタンウレアは、意図した目的に典型的な更なる成分、例えば添加剤および充填剤を含んでなることができる。その例は、活性薬物、活性薬物の放出を促進する添加剤(薬物溶出添加剤)、および薬剤である。
【0054】
メディカルデバイス上の本発明の被膜に使用できる薬剤は、一般に、例えば、抗血栓剤、抗生物質、抗腫瘍剤、成長ホルモン、抗ウィルス剤、抗血管形成剤、血管形成剤、抗有糸分裂剤、抗炎症剤、細胞周期調節因子、遺伝因子、ホルモン、およびそれらの同族体、誘導体、断片、薬物塩、並びにそれらの組み合わせである。
【0055】
従って、そのような薬剤の特定例は、抗血栓剤(抗血栓形成剤)、および動脈の急性血栓症、狭窄症または晩発性再狭窄症を抑制するための他の製剤を包含する。その例は、ヘパリン、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子、抗トロンボキサン−B剤;抗−B−トロンボグロブリン、プロスタグランジン−E、アスピリン、ジピリジモール、抗トロンボキサン−A剤、マウス・モノクローナル抗体7E3、トリアゾロピリミジン、シプロステン、ヒルジン、チクロピジン、ニコランジルなどである。成長因子も同様に、動脈狭窄部位での内膜下線維筋性過形成を抑制するために薬剤として使用できる。或いは、狭窄部位では、他のあらゆる細胞増殖阻害剤を使用できる。
【0056】
薬剤は、血管痙攣を防ぐために、血管拡張薬、例えばパパベリンのような鎮痙剤で構成されていてもよい。薬剤は、カルシウム拮抗薬のような血管作用薬自体、或いはα−およびβ−アドレナリン作動薬または拮抗薬であり得る。加えて、治療薬は、例えば、生体弁を冠動脈壁に結合するために使用される、医療グレードのシアノアクリレートのような生物起源接着剤、または線維素であり得る。
【0057】
治療薬は、更に、好ましくは(例えば、腫瘍部位で抗新生物薬を継続制御放出するのに使用するための)薬剤用制御放出賦形剤を伴った、5−フルオロウラシルのような抗新生物薬であってよい。
【0058】
治療薬は、好ましくは、体内の感染の局所病巣でメディカルデバイスの被膜から継続放出するための制御放出賦形剤と組み合わせた、抗生物質であってよい。同様に治療薬は、局所組織における炎症を抑制する目的または他の理由のため、ステロイドを含有できる。
【0059】
適当な薬剤の特定例は、以下を包含する:
(a)ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヒルジン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ウロキナーゼおよびストレプトキナーゼを包含する細胞溶解物質、それらの同族体、類似体、断片、誘導体および薬物塩;
(b)抗生物質、例えば、ペニシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、アミノグリコシド、キノロン、ポリミキシン、エリスロマイシン;テトラサイクリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、スルホンアミド、それらの同族体、類似体、誘導体、薬物塩およびそれらの混合物;
(c)パクリタキセル、ドセタキセル、シロリムスまたはエベロリムスのような免疫抑制剤、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファランおよびイホスファミドを包含するアルキル化剤;メトトレキサート、6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシルおよびシタラビンを包含する代謝拮抗剤;ビンブラスチンを包含する植物性アルカロイド;ビンクリスチンおよびエトポシド;ドキソルビシン、ダウノマイシン、ブレオマイシンおよびマイトマイシンを包含する抗生物質;カルムスチンおよびロムスチンを包含するニトロソウレア;シスプラチンを包含する無機イオン;インターフェロンを包含する生体反応変性剤;アンギオスタチンおよびエンドスタチン;アスパラギナーゼを包含する酵素;およびタモキシフェンおよびフルタミドを包含するホルモン、それらの同族体、類似体、断片、誘導体、薬物塩並びにそれらの混合物;
(d)抗ウィルス剤、例えば、アマンタジン、リマンタジン、リバビリン、イドクスウリジン、ビダラビン、トリフルリジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ジドブジン、ホスホノホルメート、インターフェロン、それらの同族体、類似体、断片、誘導体、薬物塩並びにそれらの混合物;および
(e)抗炎症剤、例えば、イブプロフェン、デキサメタゾンまたはメチルプレドニゾロン。
【0060】
1つの好ましい態様では、本発明に従って供給される被覆組成物は、
(a)少なくとも1種のポリカーボネートポリオール;
(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;
(c)ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含んでなる、少なくとも1種の単官能性混合ポリオキシアルキレンエーテル;および
(d)少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコール
から合成されるポリウレタンウレアを含んでなる。
【0061】
本発明の別の態様では、本発明に従って供給される被覆組成物は、
(a)少なくとも1種のポリカーボネートポリオール;
(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;
(c)ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含んでなる、少なくとも1種の単官能性混合ポリオキシアルキレンエーテル;
(d)少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコール;および
(e)少なくとも1種のポリオール
から合成されるポリウレタンウレアを含んでなる。
【0062】
本発明の別の態様では、本発明に従って供給される被覆組成物は、
(a)少なくとも1種のポリカーボネートポリオール;
(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;
(c)ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含んでなる、少なくとも1種の単官能性混合ポリオキシアルキレンエーテル;
(d)少なくとも1種のジアミンまたはアミノアルコール;
(e)少なくとも1種のポリオール;および
(f)ポリマー鎖末端に位置する、少なくとも1種のアミン含有モノマーまたはヒドロキシ含有モノマー
から合成されるポリウレタンウレアを含んでなる。
【0063】
既に記載したように、本発明の特に好ましい態様では、本発明のポリウレタンウレアは、成分(a)〜(d)および必要に応じて(e)でもっぱら構成される。
【0064】
本発明によれば、
(a)400g/mol〜6000g/molの平均分子量および1.7〜2.3のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1種のポリカーボネートポリオール、またはそのようなポリカーボネートポリオールの混合物;
(b)ポリカーボネートポリオール1molにつき1.0〜4.0molの量の、少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ポリイソシアネートまたはそのようなポリイソシアネートの混合物;
(c)ポリカーボネートポリオール1molにつき0.01〜0.5molの量の、500g/mol〜5000g/molの平均分子量を有する少なくとも1種のポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド含有単官能性混合ポリオキシアルキレンエーテルまたはそのようなポリエーテルの混合物;
(d)ポリカーボネートポリオール1molにつき0.05〜3.0molの量の、いわゆる連鎖延長剤としての、少なくとも1種の脂肪族または脂環式ジアミン或いは少なくとも1種のアミノアルコール或いはそのような化合物の混合物;
(e)必要に応じて、ポリカーボネートポリオール1molにつき0.1〜1.0molの量の、62g/mol〜500g/molの分子量を有する1種以上の短鎖脂肪族ポリオール;および
(f)必要に応じて、ポリマー鎖末端に位置してキャップするアミン含有単位またはOH含有単位
から合成されるポリウレタンウレアも好ましい。
【0065】
本発明によれば、
(a)500g/mol〜5000g/molの平均分子量および1.8〜2.2のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1種のポリカーボネートポリオール、またはそのようなポリカーボネートポリオールの混合物;
(b)ポリカーボネートポリオール1molにつき1.2〜3.8molの量の、少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ポリイソシアネートまたはそのようなポリイソシアネートの混合物;
(c)ポリカーボネートポリオール1molにつき0.02〜0.4molの量の、1000g/mol〜4000g/molの平均分子量を有する少なくとも1種のポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド含有単官能性混合ポリオキシアルキレンエーテルまたはそのようなポリエーテルの混合物;
(d)ポリカーボネートポリオール1molにつき0.1〜2.0molの量の、いわゆる連鎖延長剤としての、少なくとも1種の脂肪族または脂環式ジアミン或いは少なくとも1種のアミノアルコール或いはそのような化合物の混合物;
(e)必要に応じて、ポリカーボネートポリオール1molにつき0.2〜0.9molの量の、62g/mol〜400g/molの分子量を有する1種以上の短鎖脂肪族ポリオール;および
(f)必要に応じて、ポリマー鎖末端に位置してキャップするアミン含有単位またはOH含有単位
から合成されるポリウレタンウレアが更に好ましい。
【0066】
本発明によれば、
(a)600g/mol〜3000g/molの平均分子量および1.9〜2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1種のポリカーボネートポリオール、またはそのようなポリカーボネートポリオールの混合物;
(b)ポリカーボネートポリオール1molにつき1.5〜3.5molの量の、少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ポリイソシアネートまたはそのようなポリイソシアネートの混合物;
(c)ポリカーボネートポリオール1molにつき0.04〜0.3molの量の、1000g/mol〜3000g/molの平均分子量を有する少なくとも1種のポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド含有単官能性混合ポリオキシアルキレンエーテルまたはそのようなポリエーテルの混合物;
(d)ポリカーボネートポリオール1molにつき0.2〜1.5molの量の、いわゆる連鎖延長剤としての、少なくとも1種の脂肪族または脂環式ジアミン或いは少なくとも1種のアミノアルコール或いはそのような化合物の混合物;
(e)必要に応じて、ポリカーボネートポリオール1molにつき0.2〜0.8molの量の、62g/mol〜200g/molの分子量を有する1種以上の短鎖脂肪族ポリオール;および
(f)必要に応じて、ポリマー鎖末端に位置してキャップするアミン含有単位またはOH含有単位
から合成されるポリウレタンウレアも更に好ましい。
【0067】
被覆組成物をメディカルデバイスに適用する。
【0068】
本発明の分散体状被覆組成物の使用
本発明の分散体状被覆組成物は、メディカルデバイス上の被膜を形成するために使用できる。
【0069】
用語「メディカルデバイス」とは、本発明において広く理解される。(機器も含む)メディカルデバイスの適当な非限定例は、以下である:コンタクトレンズ;カニューレ;カテーテル、例えば、導尿カテーテルまたは尿管カテーテルのような泌尿器カテーテル;中心静脈カテーテル;静脈カテーテル或いは入口カテーテルまたは出口カテーテル;拡張バルーン;血管形成および生検のためのカテーテル;ステント、塞栓症フィルターまたは大静脈フィルターを導入するために使用するカテーテル;バルーンカテーテルまたは他の拡張メディカルデバイス;内視鏡;喉頭鏡;気管内チューブ、レスピレータおよび他の気管吸引デバイスのような気管デバイス;気管支肺胞洗浄カテーテル;冠動脈血管形成術で使用するカテーテル;ガイドロッド、挿入ガイドなど;血管プラグ;ペースメーカー構成要素;人工内耳;栄養補給のための歯科インプラントチューブ、ドレナージ管;およびガイドワイヤー。
【0070】
更に、本発明の被覆液は、保護被膜、例えば、手袋、ステントおよび他のインプラント;外部(体外)血液ライン(血液運搬パイプ);膜、例えば透析のための膜;血液フィルター;循環支援のためのデバイス;創傷処置のための処置材料;蓄尿袋および蓄便袋を製造するために使用され得る。医学上の有効成分、例えば、ステントまたはバルーン表面または避妊具のための医学上の有効成分を含んでなるインプラントも包含される。
【0071】
典型的には、メディカルデバイスは、カテーテル、内視鏡、喉頭鏡、気管内チューブ、栄養補給チューブ、ガイドロッド、ステントおよび他のインプラントからなる。
【0072】
被覆される表面基材として適した多くの材料、例えば、金属、布地、セラミックまたはプラスチックがあり、プラスチックの使用が、メディカルデバイスの製造には好ましい。
【0073】
メディカルデバイスを被覆するために上記種類の非イオン的安定化ポリウレタン水性分散体を用いることにより、極めて親水性である、従って滑らかで血液適合性である表面を有するメディカルデバイスを製造できることが本発明に従って見出された。上記した被覆組成物を、好ましくは水性分散体として得、メディカルデバイス表面に適用する。
【0074】
被覆分散体の調製
一般に、先により詳細に記載した被覆剤の成分は、まず、成分(a)、(b)、(c)および必要に応じて(e)の反応によってウレア基不含有イソシアネート官能性プレポリマーを調製するように反応させる。イソシアネート基の、ポリカーボネートポリオールのイソシアネート反応性基に対する物質量比は、好ましくは0.8〜4.0、より好ましくは0.9〜3.8、特に1.0〜3.5である。
【0075】
別の態様では、まず、成分(a)を独立してイソシアネート(b)と反応させることもできる。その後、成分(c)および(e)を添加して反応させることができる。続いて一般に、水への分散前、分散中または分散後に、残留イソシアネート基をアミノ官能性連鎖延長または連鎖停止に付す。連鎖延長に使用する化合物のイソシアネート反応性基の、プレポリマーの遊離イソシアネート基に対する当量比は、好ましくは40〜150%、より好ましくは50〜120%、特に60〜120%である(成分d)。
【0076】
本発明のポリウレタン分散体は、好ましくは、アセトン法として知られている方法によって調製される。このアセトン法によりポリウレタン分散体を調製するために、典型的には、第一級または第二級アミノ基を含有しない、成分(a)、(c)および(e)の一部または全て、並びにポリイソシアネート成分(b)を導入してイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを調製し、必要に応じて、イソシアネート基に対して不活性である水混和性溶媒で希釈する。そして、バッチを50〜120℃の範囲の温度に加熱する。イソシアネート付加反応を促進するために、ポリウレタン化学で知られている触媒を使用でき、その例はジラウリン酸ジブチル錫である。触媒を使用せずに合成することが好ましい。
【0077】
適当な溶媒は、典型的な脂肪族ケト官能性溶媒、例えば、アセトン、ブタノンであり、それらは、調製の開始時だけでなく、必要に応じて開始後に少しずつ添加してもよい。アセトンおよびブタノンが好ましい。例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、およびエーテル単位またはエステル単位含有溶媒のような他の溶媒も同様に使用でき、蒸留によって全部または一部を除去してもよいし、または分散体に完全に残してもよい。
【0078】
その後、反応開始時に添加しなかった成分(c)および(e)を計量添加する。
【0079】
好ましい方法では、溶媒を添加せずにプレポリマーを調製し、その連鎖延長のためだけに、適当な溶媒(好ましくはアセトン)で希釈する。
【0080】
ポリウレタンプレポリマーの調製では、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する物質量比は、好ましくは0.8〜4.0、より好ましくは0.9〜3.8、特に1.0〜3.5である。
【0081】
プレポリマーをもたらす反応は、部分的にまたは完全に、好ましくは完全に行う。このようにして、遊離イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーを、バルクまたは溶液として得る。
【0082】
続いて、更なる処理工程で、まだ行っていないかまたは部分的にしか行っていないならば、得られたプレポリマーを脂肪族ケトン(例えばアセトンまたはブタノン)で溶解する。
【0083】
その後、可能なNH官能性成分、NH官能性成分および/またはOH官能性成分を、残留イソシアネート基と反応させる。別の態様として、この連鎖延長/連鎖停止は、分散前または分散中に溶媒中で行ってもよいし、或いは分散後に水中で行ってもよい。水中での分散前に連鎖延長を行うことが好ましい。
【0084】
NH基またはNH基を含有する成分(d)の定義に従う化合物を連鎖延長に使用する場合、プレポリマーの連鎖延長は、好ましくは分散前に行う。
【0085】
連鎖延長度、換言すれば、連鎖延長に使用する化合物のNCO反応性基の、プレポリマーの遊離NCO基に対する当量比は、好ましくは40〜150%、より好ましくは50〜120%、特に60〜120%である。
【0086】
必要に応じて、本発明の方法では、アミン成分(d)を単独でまたは混合物として水希釈状態または溶媒希釈状態で使用してよい。混合物として使用する場合、基本的に、いかなる順序で添加してもよい。
【0087】
水または有機溶媒を希釈剤として使用するならば、希釈剤含量は好ましくは70〜95重量%である。
【0088】
プレポリマーからのポリウレタン分散体の調製は、連鎖延長に続いて行う。この目的のために、溶解および連鎖延長したポリウレタンポリマーを、必要に応じて強く剪断しながら(例えば激しく撹拌しながら)、分散水に導入するか、または逆に分散水をプレポリマー溶液に撹拌しながら添加する。溶解したプレポリマーに水を添加することが好ましい。
【0089】
その後、典型的には、分散工程後に分散体中になお存在する溶媒を、蒸留によって除去する。この除去を、実際の分散中に行うことも可能である。
【0090】
合成後のポリウレタン分散体の固形分は、20〜70重量%、好ましくは20〜65重量%である。被覆実験のため、被膜厚さを変える目的で、分散体を水で任意に希釈できる。1〜60重量%の濃度の全てが可能である。1〜40重量%の範囲の濃度が好ましい。
【0091】
これに関して、より厚いおよびより薄い被膜厚さが本発明では可能であるが、例えば数百nm〜数百μmのような所望の被膜厚さを達成することができる。
【0092】
メディカルデバイスの被膜のためのポリウレタン材料は、本発明の水性分散体を水で希釈することによって、所望の値に希釈できる。更に、必要に応じてポリウレタン分散体の粘度を高くするために、増粘剤を添加することができる。更なる添加剤、例えば、酸化防止剤、pHを調節するための緩衝物質、または顔料を添加することもできる。また、必要に応じて、更なる添加剤、例えば、風合い助剤、染料、艶消し剤、紫外線安定剤、光安定剤、疎水化剤、親水化剤および/または流れ制御剤を使用することもできる。
【0093】
続いて、これら分散体から出発して、上記した方法によって、メディカル被膜を製造する。
【0094】
得られたメディカルデバイス上被膜が分散体から出発して製造されたのかまたは溶液から出発して製造されたのかによって、該被膜が異なることが本発明に従って見出された。
【0095】
メディカルデバイス上の本発明の被膜は、上記被覆組成物の分散体から出発して得られた場合、利点を有する。なぜなら、本発明の被覆系の分散体は、有機溶媒残留物を含有しないメディカルデバイス上被膜をもたらし、従って、一般に毒性の観点から好ましいと同時に、より著しい親水性をもたらす(これは例えば小さい接触角から明らかになる)からである。この点については、後に示す実験および比較実験を参照する。
【0096】
メディカルデバイスは、様々な方法によって、本発明の親水性ポリウレタン分散体で被覆され得る。この目的に適した被覆技術の例は、ナイフ塗布、印刷、転写式塗布、噴霧、スピンコーティングまたは浸漬を包含する。
【0097】
被膜を製造するための出発材料として使用するポリウレタン水性分散体は、所望の方法で調製できる。しかしながら、上記したアセトン法が好ましい。
【0098】
本発明では、金属、布地、セラミックおよびプラスチックのような幅広い種類の基材を被覆できる。金属製またはプラスチック製のメディカルデバイスを被覆することが好ましい。金属の例は、医療用のステンレス鋼またはニッケル−チタン合金を包含する。メディカルデバイスを構成し得るものから多くのポリマー材料を考えることができ、その例は、ポリアミド;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリエーテル;ポリエステル;ポリ酢酸ビニル;天然ゴムおよび合成ゴム;スチレンおよび不飽和化合物(例えば、エチレン、ブチレンおよびイソプレン)のブロックコポリマー;ポリエチレン、またはポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー;シリコーン;ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリウレタンである。親水性ポリウレタンのメディカルデバイスへの良好な接着のために、該親水性被覆剤を適用する前に、更なる適当な被膜を下塗として適用することもできる。
【0099】
本発明に従って提供される被覆組成物は、滑りを改善する親水性に加えて、高度な血液適合性も特徴とする。結果的に、この被膜での加工は、特に血液との接触においても有利である。従来技術のポリマーと比べて、本発明の材料は、血液との接触において低減された凝血傾向を示す。
【0100】
親水性ポリウレタン被膜を有する本発明のカテーテルの利点を、以下の実施例における比較実験によって説明する。
【実施例】
【0101】
本発明の実施例および比較例に記載した樹脂のNCO含量は、DIN EN ISO 11909に従って滴定によって測定した。
固形分はDIN EN ISO 3251に従って測定した。1gのポリウレタン分散体を、赤外線乾燥機を用いて、恒量に達するまで115℃で乾燥した(15〜20分)。
ポリウレタン分散体の平均粒度は、Malvern Instruments製の高性能粒度測定器(HPPS 3.3)を用いて測定した。
特に記載のない限り、%で記載した量は重量%であり、得られる水性分散体に関する。
【0102】
使用した物質および略語:
・Desmophen(登録商標)C2200:ポリカーボネートポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))
・Desmophen(登録商標)C1200:ポリカーボネートポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))
・Desmophen(登録商標)XP 2613:ポリカーボネートポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))
・PolyTHF(登録商標)2000:ポリテトラメチレングリコールポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン))
・Polyether LB 25:エチレンオキシド/プロピレンオキシドに基づく単官能性ポリエーテル、数平均分子量2250g/mol、OH価25mgKOH/g(Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))
【0103】
実施例1:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
277.2gのDesmophen C 2200、33.1gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を110℃に加熱した。3時間40分後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は15分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、41.5%の固形分および164nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0104】
実施例2:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
269.8gのDesmophen C 2200、49.7gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を100℃に加熱した。21.5時間後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は5分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、41.3%の固形分および109nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0105】
実施例3:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
277.2gのDesmophen C 1200、33.1gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を110℃に加熱した。2.5時間後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は5分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、40.4%の固形分および146nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0106】
実施例4:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
282.1gのDesmophen C 2200、22.0gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を110℃に加熱した。21.5時間後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は5分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、41.7%の固形分および207nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0107】
実施例5:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
269.8gのDesmophen XP 2613、49.7gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を110℃に加熱した。70分後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は5分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、41.2%の固形分および112nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0108】
実施例6:
この実施例は、本発明のポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。
249.4gのDesmophen C 2200、33.1gのPolyether LB 25、1.9gのトリメチロールプロパン、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を110℃に加熱した。4時間20分後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを720gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン3.3gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は15分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、38.9%の固形分および144nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0109】
実施例7:
282.1gのDesmophen XP 2613、22.0gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を110℃に加熱した。70分後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は5分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、38.3%の固形分および215nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0110】
実施例8:
この実施例は、本発明の実施例1に対する比較生成物としてのポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。Desmophen C 2200をPoly THF 2000に置き換える。
277.2gのPoly THF 2000、33.1gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を110℃に加熱した。18時間後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は5分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、40.7%の固形分および166nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0111】
実施例9:
この実施例は、本発明の実施例2に対する比較生成物としてのポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。Desmophen C 2200をPoly THF 2000に置き換える。
269.8gのPoly THF 2000、49.7gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を100℃に加熱した。17.5時間後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は5分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、41.6%の固形分および107nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0112】
実施例10:
この実施例は、本発明の実施例4に対する比較生成物としてのポリウレタンウレア分散体の製造方法を記載する。Desmophen C 2200をPoly THF 2000に置き換える。
282.1gのPoly THF 2000、22.0gのPolyether LB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を110℃に加熱した。21.5時間後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は5分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、37.5%の固形分および195nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0113】
実施例11:被膜の製造および静的接触角の測定
静的接触角を測定するための被膜を、スピンコーター(RC5 Gyrset 5、Karl Suess(ドイツ国ガルヒング))を用いて、25×75mm寸法のスライドガラス上に製造した。この目的のため、スライドガラスをスピンコーターの試料台に固定し、約2.5〜3gの未希釈ポリウレタン水性分散体で均一に被覆した。試料台を1300rpmで20秒間回転することによって均一な被膜を得た。被膜を100℃で15分間、次いで50℃で24時間乾燥した。得られた被覆スライドガラスを直接、接触角測定に付した。
【0114】
得られたスライドガラス上被膜の上で静的接触角の測定を実施する。コンピューター制御注入を備えたDataphysics社製ビデオ接触角測定装置OCA20を用い、10滴のミリポア水を試験片上に置き、その静的濡れ角を測定する。予め帯電防止乾燥機を用いて、(存在するならば)試料表面上の静電荷を除去する。
【0115】
【表1】

【0116】
表1からわかるように、本発明の実施例1〜7のポリカーボネート含有被覆剤は、45°以下の静的接触角を有する極めて親水性の被膜を生じる。実施例1〜6の被覆剤は、30°未満の静的接触角を有する特に親水性の被膜を生じる。その一方、比較例7〜10のPoly THF含有被膜は、これらの被膜の組成が実施例1、2および4の組成とPoly THF以外同一であるといった事実にもかかわらず、実質的に極性がより低い。
【0117】
更に、"Evaluation of a poly(vinylpyrollidone)-coated biomaterial for urological use";M.M. Tanney, S.P. Gorman, Biomaterials 23 (2002), 4601-4608に開示されているデータは、ポリウレタンの接触角が約97°であり、PVP被覆ポリウレタンの接触角が約50°であることを示している。
【0118】
実施例12:凝血パラメーターの測定
実施例1のポリウレタン分散体をガラス上にスピンコーティングすることによって、血液接触を調べるための被膜を製造した。試料表面を、オートクレーブ処理したインキュベーションチャンバーに挿入し、1.95mlの血液を用いてインキュベートした。適した実験設備は、U. Strellerら、J. Biomed. Mater. Res B, 2003, 66B, 379-390に記載されている。
【0119】
試験に必要な静脈血を、少なくとも10日間薬剤を服用しなかった男性提供者から19Gカニューレを介して採取した。ヘパリン(2LU/mL)を添加することによって凝血を防いだ。次いで、このように調製した血液を、ポリウレタン表面を備え、37℃に予備加熱したインキュベーションチャンバーに挿入し、37℃でチャンバーを永久回転させながら2時間インキュベートした。使用した比較材料は、ガラスおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であった。ガラスは、血液凝固にとって強活性化表面であり、PTFEは、多くの用途に許容できるポリマー材料である(U. Strellerら、J. Biomed. Mater. Res B, 2003, 66B, 379-390参照)。
【0120】
インキュベーションを行った後、3つのパラメーターを測定した。
トロンビン−抗トロンビン複合体(Enzygnost TAT micro, Dade Behring GmbH(ドイツ国マールブルク))
血小板第4因子(Haemochrom Diagnostica GmbH(ドイツ国エッセン)製ELISA PF 4完成キット)
自動細胞計測システム(Coulter社(ドイツ国クレーフェルト)製AcTdiff)によって、EDTA抗凝血薬含有血液中の血小板低下を測定した。
【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【0123】
【表4】

【0124】
測定した3つの血液パラメーターは、実施例1の親水性ポリウレタンが、非常に穏やかな程度にしか凝血を活性化しないことを示している。固有凝血カスケードの活性化の尺度としてのトロンビン−抗トロンビン複合体から、ポリウレタンが、極めて高い血液適合性を有するとされているPTFEと比べても、より低い値を示し、結果的に、より低い活性化を誘発することがわかる。
【0125】
血小板第4因子は、血小板活性化の指標である。凝血に関するこの細胞部分もまた、親水性ポリウレタンによって低い程度にしか活性化されない。血液適合性の高いPTFEは、より高い活性化を誘発する。血小板低下もまた、ガラスおよびPTFEについて有意である。このことは、血小板の一部がそれらの表面に付着していることを意味する。対照的に、実施例1の親水性ポリウレタンの場合、実質的に低下は見られない。
【0126】
実施例13
この実施例は、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含んでなるコポリマーで終端したポリウレタンを用いた本発明の実施例に対する比較材料としての、末端ポリエチレンオキシド単位含有水性分散体の合成方法を記載する。本発明の目的のために使用したPolyether LB 25を、この実施例では、等モル量の同等の純ポリエチレンオキシドエーテルに置き換える。
【0127】
277.2gのDesmophen C 2200、29.4gのPolyethylene Glycol 2000モノメチルエーテル(供給元:Fluka、CAS番号9004-74-4)、および6.7gのネオペンチルグリコールを65℃で導入し、5分間の撹拌によって均質化した。65℃で、この混合物を、まず71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)と、次いで11.9gのイソホロンジイソシアネートと、1分間にわたって混合した。この混合物を110℃に加熱した。35分後、理論NCO値に達した。完成したプレポリマーを711gのアセトンに50℃で溶解し、次いで、40℃で、エチレンジアミン4.8gの水16g溶液を10分間にわたって計量添加した。続く撹拌時間は5分間であった。次いで、590gの水を添加することにより、15分間にわたって分散を行った。その後、減圧下で蒸留することにより、溶媒を除去した。これにより、40.0%の固形分および130nmの平均粒度を有する貯蔵安定なポリウレタン分散体を得た。
【0128】
実施例11に記載したように、ガラス上被膜をスピンコーティングによって製造し、この被膜の静的接触角を確かめた。得られた結果は、45°の静的接触角であった。この値と実施例1の被膜についての値(10°未満、実施例11における表1参照)とを比べると、混合ポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシドモノオールLB 25を使用することにより、純ポリエチレンオキシドモノオールと比べて、接触角が著しく小さくなり、従って被膜がより親水性になることがわかる。
【0129】
実施例14
この実施例は、比較例としての、有機溶液中での本発明の実施例1のポリウレタンウレアポリマーの合成方法を記載する。
【0130】
277.2gのDesmophen C 2200、33.1gのLB 25、および6.7gのネオペンチルグリコールの混合物を、71.3gの4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)および11.9gのイソホロンジイソシアネートと60℃で混合する。混合物を110℃に加熱し、2.4の一定NCO含量が得られるまで反応させた。混合物を放冷し、475gのトルエンおよび320gのイソプロパノールで希釈した。室温で、エチレンジアミン4.8gの1−メトキシプロパン−2−オール150g溶液を添加した。完全に添加した後、撹拌を2時間継続した。これにより、23℃で607mPasの粘度を有する、濃度30.2%のトルエン/イソプロパノール/1−メトキシプロパン−2−オール中ポリウレタンウレア溶液1350gを得た。
【0131】
実施例11に記載したように、ガラス上被膜をスピンコーティングによって製造し、この被膜の静的接触角を確かめた。得られた結果は、27°の静的接触角であった。この値と、水中分散体であるが構造的に同じ被膜である実施例1の被膜についての値(10°未満、実施例11における表1参照)とを比べると、対応する溶液から出発して得られた被膜と比べて水性分散体から出発した被膜の方がより親水性であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含んでなるコポリマー単位で終端しており、
(2)少なくとも1種のヒドロキシル含有ポリカーボネートポリオールを含んでなる
ポリウレタンウレア
を含んでなることを特徴とする分散体状被覆組成物。
【請求項2】
ポリウレタンウレアが少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族イソシアネートに由来する単位を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項3】
ポリウレタンウレアが2.5重量%の最大イオン変性(ionic modification)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の被覆組成物。
【請求項4】
(a)400g/mol〜6000g/molの平均分子量および1.7〜2.3のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1種のポリカーボネートポリオール、またはそのようなポリカーボネートポリオールの混合物;
(b)ポリカーボネートポリオール1molにつき1.0〜4.0molの量の、少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ポリイソシアネートまたはそのようなポリイソシアネートの混合物;
(c)ポリカーボネートポリオール1molにつき0.01〜0.5molの量の、500g/mol〜5000g/molの平均分子量を有する少なくとも1種のポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド含有単官能性混合ポリオキシアルキレンエーテルまたはそのようなポリエーテルの混合物;
(d)ポリカーボネートポリオール1molにつき0.05〜3.0molの量の、いわゆる連鎖延長剤としての、少なくとも1種の脂肪族または脂環式ジアミン或いは少なくとも1種のアミノアルコール或いはそのような化合物の混合物;
(e)必要に応じて、ポリカーボネートポリオール1molにつき0.1〜1.0molの量の、62g/mol〜500g/molの分子量を有する1種以上の短鎖脂肪族ポリオール;および
必要に応じて、ポリマー鎖末端に位置してキャップするアミン含有単位またはOH含有単位
から合成したポリウレタンウレア
を含んでなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆組成物。
【請求項5】
以下の工程:
(I)成分(a)、(b)、(c)および必要に応じて(e)を最初に導入し、必要に応じて、この初期導入物をイソシアネート基に対して不活性である水混和性溶媒で希釈する工程;
(II)工程(I)から得られる組成物を50〜120℃の範囲の温度に加熱する工程;
(III)反応開始時に添加しなかった成分(c)および(e)を計量添加する工程;
(IV)得られたプレポリマーを脂肪族ケトンで溶解する工程;
(V)成分(d)を添加して連鎖延長させる工程;
(VI)水を添加して分散させる工程;および
(VII)好ましくは蒸留によって、脂肪族ケトンを除去する工程
を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンウレア分散体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって得られる、分散体状被覆組成物。
【請求項7】
請求項1〜4または6のいずれかに記載の被覆液の、少なくとも1種のメディカルデバイスを被覆するための使用。

【公表番号】特表2011−515515(P2011−515515A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500095(P2011−500095)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001898
【国際公開番号】WO2009/115263
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】