説明

親水性ポリマー、親水性ポリマーの製造方法、親水性膜組成物およびこれを用いた親水性部材

【課題】親水性ポリマー中に残存するモノマーの量を一定の量以下とすることで安全性が高く、さらに、親水性、耐水性及び基材表面との密着性に優れた親水性部材を提供し得る親水性ポリマー、親水性ポリマーの製造方法、親水性膜組成物およびこれを用いた親水性部材を提供すること。
【解決手段】一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含有し、残存モノマー量が3.0質量%以下である親水性ポリマー。


一般式(I−1)および(I−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は特定の置換基を表す。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基板の表面が親水化されると、付着水滴が基板表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。さらに、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。このため、基材の表面を親水性ポリマーより形成される膜により親水性化した親水性部材に関する検討がされている。
【0002】
一方、一般的に化合物を合成する際に残存モノマー量を少なくすることは生産性向上に繋がる。
また、原料モノマーとして使用される化合物によってはヒトに対する発癌性が指摘されており、製品中への残存は極力少なくすることが好ましい。
親水性ポリマーの中でも、架橋構造が求められる吸水性ポリマーでは残存モノマーの低減は特に困難であるが、衛生材料に使われる親水性ポリマーにおいては、残存モノマーが少ないことが要求品質に求められることがあり、残存モノマーの量を減らしたポリマーに関する発明が公開されている(特許文献1)。
残存モノマーを低減する方法としては一旦濾過してからリスラリーをして削減する方法が該当業者の間で知られているが、溶媒を大量に使用することや、仕掛かり日数が増えるので製造コストが高くなり好ましくない。
そして、部材を親水化するための化合物としては加水分解性シリル基を含有した親水性ポリマーが知られている(特許文献2)が、該当特許中には残存モノマーに関する記述が存在せず、該親水性ポリマー中の残存モノマーが親水性部材の親水性、耐水性及び基材表面との密着性に影響を与えることについては全く知られていない。
【0003】
【特許文献1】特開2002−302513号公報
【特許文献2】特開2002−293824号公報
【特許文献3】特開2002−293824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、親水性ポリマー中に残存するモノマーの量を一定の量以下とすることで安全性が高く、さらに、親水性、耐水性及び基材表面との密着性に優れた親水性部材を提供し得る親水性ポリマー、親水性ポリマーの製造方法、親水性膜組成物およびこれを用いた親水性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含有し、残存モノマー量が3.0質量%以下である親水性ポリマー。
【0006】
【化1】

【0007】
一般式(I−1)および(I−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−ORa、−CORa、−CO2e、−CON(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)、−NHCORd、−NHCO2a、−OCON(Ra)(Rb)、−NHCON(Ra)(Rb)、−SO3e、−OSO3e、−SO2d、−NHSO2d、−SO2N(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)(Rc)、−N(Ra)(Rb)(Rc)(Rg)、−PO3(Re)(Rf)、−OPO3(Re)(Rf)、または−PO3(Rd)(Re)を表す。ここで、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rdは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Re及びRfは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rgはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
〔2〕
前記一般式(I−1)におけるL202が単結合であり、R205が水素原子であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の親水性ポリマー。
〔3〕
前記残存モノマー量が1.0質量%以下であることを特徴とする〔1〕に記載の親水性ポリマー。
〔4〕
残存モノマー量が0.1質量%以下であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の親水性ポリマー。
〔5〕
〔1〕〜4〕において、前記残存モノマーがアクリルアミドであることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の親水性ポリマー。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の親水性ポリマーを含有することを特徴とする親水性組成物。
〔7〕
〔6〕に記載の親水性組成物により形成された親水性部材。
〔8〕
モノマーの重合工程及び
重合工程後に20℃における該モノマーの溶解度が10質量%以上の有機溶媒と、開始剤とを添加する工程
を含むことを特徴とする一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含有し、残存モノマー量が3.0質量%以下である親水性ポリマーの製造方法。
【0008】
【化2】

【0009】
一般式(I−1)および(I−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−ORa、−CORa、−CO2e、−CON(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)、−NHCORd、−NHCO2a、−OCON(Ra)(Rb)、−NHCON(Ra)(Rb)、−SO3e、−OSO3e、−SO2d、−NHSO2d、−SO2N(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)(Rc)、−N(Ra)(Rb)(Rc)(Rg)、−PO3(Re)(Rf)、−OPO3(Re)(Rf)、または−PO3(Rd)(Re)を表す。ここで、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rdは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Re及びRfは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rgはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
〔9〕
前記モノマーがアクリルアミドであり、20℃における前記モノマーの溶解度が10質量%以上の有機溶媒がメタノールであることを特徴とする〔7〕又は〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕
重合工程で使用する溶媒が、20℃における前記モノマーの溶解度が10質量%以上の有機溶媒であり且つ親水性ポリマーの溶解度が10質量%以下の有機溶媒であることを特徴とする〔9〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各種の基板表面に安全性が高く、さらに、親水性、耐水性及び基材表面との密着性に優れた表面を有する親水性部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の親水性ポリマーは一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含有し、残存モノマー量が3.0質量%以下である。
【0012】
【化3】

【0013】
一般式(I−1)および(I−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−ORa、−CORa、−CO2e、−CON(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)、−NHCORd、−NHCO2a、−OCON(Ra)(Rb)、−NHCON(Ra)(Rb)、−SO3e、−OSO3e、−SO2d、−NHSO2d、−SO2N(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)(Rc)、−N(Ra)(Rb)(Rc)(Rg)、−PO3(Re)(Rf)、−OPO3(Re)(Rf)、または−PO3(Rd)(Re)を表す。ここで、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rdは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Re及びRfは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rgはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0014】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)は、上記一般式(I−2)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に上記一般式(I−1)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0015】
前記一般式(I−1)及び(I−2)において、R201〜R205は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、R201〜R205が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R201〜R205は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。R205は水素原子であることがより好ましい。
【0016】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0017】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO32)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO32)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0018】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R1〜R8において挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0019】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0020】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、より好ましくは炭素原子数1から12まで、更に好ましくは炭素原子数1から8の直鎖状、より好ましくは炭素原子数3から12までの、更に好ましくは炭素原子数3から8までの分岐状ならびにより好ましくは炭素原子数5から10まで、更に好ましくは炭素原子数5から8までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0021】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
親水性の観点から上記のなかでもヒドロキシメチル基が好ましい。
【0022】
201、L202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA201及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L201、L202が有機連結基を表す場合、L201〜L102は非金属原子からなる多価の連結基を表し、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。具体的には、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せから選ばれることが好ましく、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−または−S−または−CO−または−NH−を含む組合せで、2価の連結基であることが好ましい。
より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0023】
【化4】

【0024】
201及びL202は、より好ましくは、単結合、−CH2CH2CH2S−、−CH2S−、−CONHCH(CH3)CH2−、−CONH−、−CO−、−CO2−、−CH2−である。
202は単結合であることが更に好ましい。
【0025】
201は−OH、−ORa、−CORa、−CO2e、−CON(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)、−NHCORd、−NHCO2a、−OCON(Ra)(Rb)、−NHCON(Ra)(Rb)、−SO3e、−OSO3e、−SO2d、−NHSO2d、−SO2N(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)(Rc)、−N(Ra)(Rb)(Rc)(Rg)、−PO3(Re)(Rf)、−OPO3(Re)(Rf)、または−PO3(Rd)(Re)を表す。ここで、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rdは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Re及びRfは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rgはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)、−OCON(Ra)(Rb)、−NHCON(Ra)(Rb)、−SO2N(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)(Rc)、−N(Ra)(Rb)(Rc)(Rg)、−PO3(Re)(Rf)、−OPO3(Re)(Rf)、または−PO3(Rd)(Re)についてRa〜Rgがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。Ra〜Rgはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R1〜R8がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0026】
a〜Rfにおいて、直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
また、Ra〜Rgにおいて、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等、アルカリ土類金属としてしはバリウム等、オニウムとしてはアンモニウム、ヨードニウムまたはスルホニウム等が好適に挙げられる。
ハロゲンイオンとしてはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンを挙げることができ、無機アニオンとしては硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等が、有機アニオンとしてはメタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等が好適に挙げられる。
【0027】
201としては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH32、−COOH、−SO3-NMe4+、−SO3-+、−(CH2CH2O)nH、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH32、−SO3-+、−(CH2CH2O)nH、である。尚、上記において、nは1〜100の整数を表すことが好ましい。
【0028】
qは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0029】
本発明において、一般式(I−1)におけるL202が単結合であり、R205が水素原子であることが好ましい。
また、(I−2)で表される構造はアクリルアミドから誘導される構造であることがより好ましい。アクリルアミドを重合させたポリマーはより高い親水性が付与できるためである。
【0030】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)において、加水分解性シリル基量を有する一般式(I−1)の構造単位のモル数に対して、一般式(I−2)の構造単位のモル数が、1000〜5倍の範囲が好ましく、500〜10倍の範囲がより好ましく、200〜20倍の範囲が最も好ましい。20倍以上であれば親水性が不足することなく、一方、200倍以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0031】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)の質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0032】
本発明に好適に用い得る親水性ポリマー(I)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

【0044】
親水性ポリマー(I)は、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0045】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0046】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0047】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0048】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0049】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0050】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、特定親水性ポリマー(I)を添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、特定親水性ポリマー(I)中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0051】
親水性ポリマーユニット(I−2)と他のモノマーの共重合比の測定は、核磁気共鳴装置(NMR)や、標準物質で検量線を作成し、赤外分光光度計により測定することができる。
【0052】
本発明における親水性組成物は親水性ポリマーユニット(I−2)を単独あるいは2種以上混合しても良い。
親水性ポリマー(I)は硬化性向上と親水性付与の観点から、親水性組成物の全固形分に対して20〜99.5質量%使用されることが好ましく、30〜99.5質量%使用されることがさらに好ましい。
【0053】
上記、親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100mPa・s(5%水溶液、20℃測定)、好ましくは0.5〜70mPa・s、さらに好ましくは1〜50mPa・sの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0054】
〔残存モノマー量〕
本発明の親水性ポリマーにおける、残存モノマー量は3.0質量%以下である。残存モノマーは1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。残存モノマー量がこの範囲であれば密着性が向上し、耐水性が付与できる。残存モノマー量は高速液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィー等により定量することができる。
また、残存モノマーはアクリルアミドであることが好ましい。アクリルアミドを重合させたポリマーはより高い親水性が付与できるためである。
【0055】
〔親水性ポリマーの製造方法〕
本発明における親水性ポリマーの製造方法はモノマーの重合工程及び重合工程後に20℃における該モノマーの溶解度が10質量%以上の有機溶媒と、開始剤とを添加する工程を含む。
【0056】
(重合工程)
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter(Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
【0057】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0058】
【化16】

【0059】
上記式(i)及び(ii)において、R201〜R205、L201、L202、A201、qは、上記一般式(I−1)中のものと同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーは親水性基A201を有しており、このモノマーが親水性ポリマーにおける一構造単位となる。
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーにおいて、加水分解性シリル基量を有する一般式(I−1)の構造単位のモル数に対して、一般式(I−2)の構造単位のモル数が、1000〜5倍の範囲が好ましく、500〜10倍の範囲がより好ましく、200〜20倍の範囲が最も好ましい。20倍以上であれば親水性が不足することなく、一方、200倍以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0060】
(反応様式)
一般式(I−1)で表される構造単位に対応する化合物と一般式(I−2)で表される構造単位に対応する不飽和化合物とをラジカル反応させる際の反応様式は特に制限されるものではなく、ラジカル開始剤の存在下、あるいは高圧水銀灯等の照射下、例えば、バルク反応あるいは溶液反応あるいは懸濁反応(乳化反応)等を行うのが好ましい。また、重合方式についても、回分式(分割添加法や逐次添加法を含む)、半連続式または連続式など、目的に応じて適宜選択することができる。特に、不飽和化合物の分割添加法(分割チャージと称する場合もある)や逐次添加法(インクレメント法と称する場合もある)は一般式(I−2)で表される不飽和化合物の単独重合を効率的に抑制することができることから好ましい重合方法である。
【0061】
(反応比率)
一般式(I−1)で表される構造単位に対応する化合物と一般式(I−2)で表される構造単位に対応する不飽和化合物を反応させる際の反応比率についても特に制限されるものではないが、例えば、一般式(I−1)で表される構造単位に対応する化合物に対して、一般式(I−2)で表される構造単位に対応する不飽和化合物の反応量の比を0.5〜200モル倍の範囲内の値とするのが好ましい。この理由は、かかる反応比率がこれらの範囲外となると、副反応が生じやすくなり、加水分解性シラン化合物の収率が低下する場合があるためである。したがって、一般式(I−1)で表される構造単位に対応する化合物と一般式(I−2)で表される構造単位に対応する不飽和化合物の反応量の比を1〜100モル倍の範囲内の値とするのがより好ましく、5〜60モル倍の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0062】
(反応温度)
一般式(I−1)で表される構造単位に対応する化合物と一般式(I−2)で表される構造単位に対応する不飽和化合物を反応させる際の反応温度は特に制限されるものではないが、例えば、−50〜200℃の範囲内の値とするのが好ましい。この理由は、反応温度が−50℃未満となると、これらの反応性が著しく低下する場合があるためであり、一方、反応温度が200℃を超えると、使用可能な溶媒の種類が過度に制限されたり、あるいは副反応が生じやすくなる場合があるためである。したがって、かかる反応温度を0〜100℃の範囲内の値とするのがより好ましく、30〜100℃の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0063】
(反応時間)
反応時間については、反応温度等に依るが、反応の確実性と、生産性との関係から、通常、0.5〜100時間の範囲内の値とするのが好ましく、1〜24時間の範囲内の値とするのがより好ましい。
【0064】
(反応雰囲気)
一般式(I−1)で表される構造単位に対応する化合物と一般式(I−2)で表される構造単位に対応する不飽和化合物とを反応させる際の反応雰囲気は特に制限されるものではないが、例えば、反応系内を窒素バブリングしたり、あるいは超音波により脱酸素処理を行ったのち、これらの化合物のラジカル反応を行うことが好ましい。この理由は、このように窒素中等でラジカル反応を行うと、連鎖移動剤同士のカップリング反応に起因した化合物の生成を効率的に抑制することができるためである。すなわち、メルカプト基のカップリング反応が生じると着色する場合が多いが、それを有効に防止し、透明性の高い加水分解性シラン化合物を得ることができる。また、反応雰囲気に関して、反応系内に水が存在すると、ラジカル反応の段階でアルコキシ基の加水分解が自発的に進みやすいという問題がある。特に、カルボキシ基を含有する加水分解性シランをラジカル反応する場合、少量の水存在下であってもアルコキシ基の加水分解が容易に進行しやすくなる。このため、使用原料が液体の場合、例えば、モレキュラーシーブ、水素化カルシウム、硫酸マグネシウムなどの脱水剤を用いて脱水処理を施すか、あるいは必要に応じ、これらの乾燥剤の存在下、窒素中で蒸留処理を予め施すことがより好ましい。
【0065】
(溶媒)
一般式(I−1)で表される構造単位に対応する化合物と一般式(I−2)で表される構造単位に対応する不飽和化合物とを反応させる際に、これらを均一に反応させるために、溶媒を使用することが好ましい。このような溶媒としては、例えばアルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−メトキシー2−プロパノール、t−ブタノール、メチルプロピレングリコール、ジアセトンアルコール)、アミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン、1,3,ジメチル−2−イミダゾリジノン)、スルホン系溶媒(例えばスルホラン)スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレア)、エーテル系溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン)、炭化水素系溶媒(例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−デカン)、ハロゲン系溶媒(例えばテトラクロロエタン,クロロベンゼン、塩化メチレン)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル)、およびニトリル系溶媒(例えばアセトニトリル)を挙げることができる。これらの溶媒は単独又は二種類以上を混合して用いても良い。
なお、溶媒の使用量は一般式(I−1)と一般式(I−2)で表される構造単位に対応する不飽和化合物との合計量を100重量部としたときに、1〜10,000重量部の範囲内の値とするのが好ましく、50〜1,000重量部の範囲内の値とするのがより好ましく、特に好ましくは50〜800重量部の範囲内の値とすることである。
重合工程で使用する溶媒が、20℃における前記モノマーの溶解度が10質量%以上であり且つ親水性ポリマーの溶解度が10質量%以下である有機溶媒であることが好ましい。
仕込み時にモノマーの溶解に所要する時間を減らし、且つ重合後に濾過などで容易に取り出すことを可能にするためである。
【0066】
(有機溶媒と、開始剤とを添加する工程)
重合工程後に20℃における該モノマーの溶解度が10質量%以上の有機溶媒と、開始剤とを添加する工程により合成にかかる時間を最小限に抑え、沸点が高い溶剤と分解温度が高い開始剤を使用するため重合反応時に安全性が高くなり、残存モノマー量を低減することが同時に可能となった。
【0067】
モノマーの溶解度が20℃で10質量%以上の有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、アセトン、2−ブタノンなどのケトン系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒が挙げられる。
20℃モノマーの溶解度はモノマーが20℃において液体の場合も含む。
有機溶媒を添加することで反応系内に残存しているモノマーを溶解させ、ポリマー固体中から取り除くことができる。
有機溶媒の添加量は重合に使用した溶媒に対し、0.05から20当量であることが好ましく0.5から5.0当量であることがさらに好ましく、1.0から3.0当量が最も好ましい。
有機溶媒の添加量が上記範囲であれば十分なモノマー除去効果を得ることができ、使用する溶媒量が増すこともなく、コスト削減に繋がり生産性が向上し好ましい。
【0068】
また、ラジカル開始剤としては、アゾ系のラジカル開始剤または有機過酸化物が好ましく、より好ましくはアゾ系のラジカル開始剤である。具体的に、好ましいアゾ系のラジカル開始剤としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチル−バレロニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0069】
開始剤添加量は一般式(I−1)で表される構造単位に対応する化合物と一般式(I−2)で表される構造単位に対応する化合物の合計量100モル部に対し、0.0005〜20モル部の範囲内とすることが好ましく、0.001〜5モル部の範囲内とすることがより好ましい。
開始剤の添加量が上記範囲内であればコスト上昇につながることもなく、重合反応が充分に進行し所望の分子量や収率を得ることができ好ましい。
【0070】
本発明の製造方法において、前記モノマーがアクリルアミドであり、20℃における前記モノマーの溶解度が10質量%以上の有機溶媒がメタノールであることが好ましい。
メタノールは20℃でのアクリルアミドの溶解度が最も高く、且つポリマーの溶解度が低いためである。
【0071】
〔親水性組成物〕
本発明における親水性組成物は上記親水性ポリマーを含有する。好ましくは、(A)金属錯体触媒、(B)金属アルコキシド等を含有する。
【0072】
〔(A)触媒〕
本発明の親水性組成物および下塗層用組成物においては、(A)触媒を含有させることが好ましい。(A)触媒を含有させることにより親水性ポリマーの反応を促進させることができる。(A)触媒としては酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、又は、酸、あるいは塩基性化合物を水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0073】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0074】
また、(A)触媒は不揮発性の触媒であることが好ましい。不揮発性の触媒とは、沸点が125℃未満のもの以外のものであり、換言すれば、沸点が125℃以上のものや、そもそも沸点がないもの(熱分解など、相変化を起こさないものを含む)等である。
本発明に用いられる不揮発性の触媒としては、特に限定されないが、金属のキレート化合物やシランカップリング剤が挙げられる。
【0075】
前記金属のキレート化合物(以下、金属錯体とも称する)としては、特に限定されないが、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体がある。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,Sr,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0076】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシー4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0077】
好ましい配位子はアセチルアセトン又はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0078】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0079】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0080】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0081】
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0082】
本発明において、不揮発性の触媒として用いられるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、酸性またはアルカリ性を示す官能基を有するものが挙げられ、さらに詳細には、ペルオキソ酸、カルボン酸、カルボヒドラゾン酸、カルボキシミド酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、セレノン酸、セレニン酸、セレネン酸、テルロン酸、及び上記のアルカリ金属塩などといった酸性を示す官能基、或いは、アミノ基などといった塩基性を示す官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0083】
本発明に係る(A)触媒は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。また、(A)触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0084】
〔(B)Si、Ti、Zi、Alから選択される元素のアルコキシド化合物〕
本発明においては、親水性組成物が、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物(以下、(B)特定アルコキシドともいう)を含有することが好ましい。
(B)特定アルコキシドを含むことで、系中における加水分解・重縮合において、特定親水性ポリマーに含まれるシランカップリング基と(B)特定アルコキシドが加水分解した重合性の官能基によって、架橋を形成する反応サイトが増加し、より高密度で強固な架橋構造を有する有機無機複合体皮膜が形成されるため、得られる上塗り層の塗膜はさらに高強度となり、優れた耐摩耗性が発現し、高い表面親水性を長期間保持し得るものと考えられる。また、親水性が非常に高い表面は水が付着した場合、水が広がるために空気界面との表面積が増加し、水の乾燥速度が非常に速くなり、速乾性に優れた塗膜となる。
本発明で用いられる(B)特定アルコキシドであるSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物は、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、特定親水性ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な被膜を形成する。
(B)特定アルコキシドは、下記一般式(V)で表される化合物であることが好ましく、親水性膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、前記特定親水性ポリマー一般式(V)で表される(B)特定アルコキシドを混合して基板表面に被覆し、加熱、乾燥する。
【0085】
【化17】

【0086】
一般式(V)中、R17は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R18はアルキル基又はアリール基を表し、YはSi、Al、Ti又はZrを表し、kは0〜2の整数を表す。R17及びR18がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0087】
以下に、一般式(V)で表される(B)特定アルコキシドの具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。YがSiの場合、即ち、特定アルコキシド中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0088】
YがAlである場合、即ち、特定アルコキシド中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
YがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
YがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
これらの中でも、YがSiであるアルコキシドが被膜性の観点から好ましい。
【0089】
本発明に係る(B)特定アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
(B)特定アルコキシドは、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%の範囲で使用される。
(B)特定アルコキシドは市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0090】
本発明の親水性部材は、基板上に、親水性組成物が塗設されてなる親水性層を有しており、親水性組成物が上記に説明した本発明の親水性組成物であるため、充分な親水性、耐磨耗性、防汚性及び密着性を有するとともに、優れた潤滑性を長期に維持可能な親水性部材とすることができる。
本発明の親水性部材は、基板と親水性層との間の密着性を向上させるために、基板と親水性層との間に、さらに、下塗り層を有していても良い。
ここで、下塗り層は、上記した(A)触媒を含有する組成物を塗布することにより形成されたものであるのが好ましく、これによって、基板と親水性層との間の密着性をより向上させることができる。ここで、(A)触媒は、上記同様、不揮発性の触媒であることが好ましい。
(A)触媒は、下塗り層用組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは1〜25質量%の範囲で使用される。また、(A)触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0091】
また、下塗り層は、さらに(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する組成物を塗布することにより形成されたものであることが好ましく、これにより、さらに確実に、基板と親水性層との間の密着性を向上させることができる。
(B)特定アルコキシドは、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは5〜99質量%、更に好ましくは10〜95質量%の範囲で使用される。また、(B)特定アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0092】
〔その他の成分〕
本発明の親水性組成物および下塗り層用組成物には、目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。以下、併用しうる成分について説明する。
【0093】
〔界面活性剤〕
本発明においては、親水性組成物および下塗り層用組成物の被膜面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0094】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0095】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0096】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0097】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
好ましい界面活性剤の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0099】
【化18】

【0100】
〔抗菌剤〕
本発明の親水性部材に抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性組成物および下塗り層用組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られる。
抗菌剤としては、親水性部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤または、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
【0101】
有機系の抗菌剤としては、フェノールエーテル誘導体,イミダゾール誘導体,スルホン誘導体,N・ハロアルキルチオ化合物,アニリド誘導体,ピロール誘導体,第4アンモニウム塩、ピリジン系、トリアジン系、ベンゾイソチアゾリン系、イソチアゾリン系などが挙げられる。
例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール〈以後、TBZと表示〉、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル〈以後、BCMと表示〉、10,10'−オキシビスフェノキシアルシン〈以後、OBPAと表示〉、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛〈以後、ZPTと表示〉、N,N−ジメチル−N'−(フルオロジクロロメチルチオ)−N'−フェニルスルファミド〈ジクロルフルアニド〉、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2'−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
これら有機系の抗菌剤は、親水性、耐水性、昇華性、安全性等を考慮し、適宜選択して使用することができる。有機系抗菌剤中では、親水性、抗菌効果、コストの点から2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。
【0102】
無機系の抗菌剤としては、殺菌作用の高い順に、水銀,銀,銅,亜鉛,鉄,鉛,ビスマスなどが挙げられる。例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属や金属イオンをケイ酸塩系担体、リン酸塩系担体、酸化物、ガラスやチタン酸カリウム、アミノ酸等に担持させたものが挙げられる。たとえばゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0103】
天然系抗菌剤としては、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサンがある。
本発明には、アミノ酸の両側に金属を複合させたアミノメタルから成る日鉱の「商品名ホロンキラービースセラ」が好ましい。
これらは蒸散性ではなく、また、親水層のポリマーや架橋剤成分と相互作用しやすく、安定に分子分散あるいは固体分散可能であり、上塗り層表面に抗菌剤が効果的に露出しやすく、かつ、水がかかっても溶出することなく、効果を長期間持続させることができ、人体に影響を及ぼすこともない。また、上塗り層や塗布液に対して安定に分散することができ、上塗り層や塗布液の劣化もおこらない。
上記抗菌剤の中では、抗菌効果が大きいことから、銀系無機抗菌剤と水溶性有機抗菌剤が最も好ましい。特にケイ酸塩系担体であるゼオライトに銀を担持させた銀ゼオライトやシリカゲルに銀を担持させた抗菌剤や2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TPN、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。特に好ましい市販の銀ゼオライト系抗菌剤としては、品川燃料の「ゼオミック」や富士シリシア化学の「シルウェル」や日本電子材料の「バクテノン」等がある。その他、銀を無機イオン交換体セラミックスに担持させた東亜合成の「ノバロン」や触媒化成工業の「アトミーボール」やトリアジン系抗菌剤の「サンアイバックP」も好ましい。
【0104】
抗菌剤の含有量は、一般的には、親水性組成物および下塗り層用組成物中に、不揮発性成分に対して、0.001〜10質量%であるが、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ経時性も悪化せず、防汚性、防曇性に悪影響を及ぼさない。
【0105】
〔無機微粒子〕
本発明の親水性組成物および下塗り層用組成物には、形成される膜の硬化被膜強度向上及び親水性向上のために無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmであるのがよい。上記範囲であると、層中に安定に分散して、膜強度を十分に保持し、親水性に優れる膜を形成することができる。上述したような無機微粒子はコロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
【0106】
本発明に係る無機微粒子は、本発明の親水性組成物および下塗り層用組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の範囲で使用される。また、無機微粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、親水性部材の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0108】
〔酸化防止剤〕
本発明の親水性部材の安定性向上のため、親水性組成物および下塗り層用組成物に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0109】
〔溶剤〕
本発明の親水性部材の下塗り層および上塗り層形成時に、基板に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性組成物および下塗り層用組成物に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水性部材形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0110】
〔高分子化合物〕
本発明の親水性組成物および下塗り層用組成物には、膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0111】
〔その他の添加剤〕
さらにこの他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0112】
本発明の親水性組成物および下塗り層用組成物には、耐摩耗性、耐酸性及び耐アルカリ性の観点から、ジルコニアの塩化物、硝酸塩、アルコキシド類および有機錯体を含有することができる。ジルコニアの塩化物としては、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム(8水和物)、塩素含有ジルコニウムアルコキシドZr(OCm2m+1)xCly(m、x、y:整数、x+y=4)などが挙げられ、ジルコニウムの硝酸塩としては、オキシ硝酸ジルコニウム(2水和物)が挙げられ、ジルコニウムのアルコキシドとしては、ジルコニウムエトキシド,ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシドなどが挙げられ、有機錯体としては、アセチルアセトン誘導体が挙げられ、具体的にはテトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナト)ジルコニウムジブトキシド、ビス(アセチルアセトナト)ジルコニウムジクロリド、テトラキス(3,5−ヘプタンジオネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ジルコニウム、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ジルコニウムジイソプロポキシドなどが挙げられる。
上記ジルコニウム化合物は、本発明の親水性組成物および下塗り層用組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。
【0113】
〔親水性組成物の調液〕
親水性組成物の調製は、親水性ポリマーを、必要に応じて(A)触媒および(B)特定アルコキシドをエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0114】
前記親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0115】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
【0116】
〔下塗り層用組成物の調液〕
下塗り層用組成物についても、上記親水性組成物同様の方法により調製可能である。
【0117】
本発明における親水性部材は上記親水性組成物により形成されたものである。
このような本発明の下塗り層用組成物を含む溶液、親水性組成物を含む溶液を、適切な基板上に被膜し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることが好ましい。即ち、好ましくは本発明の親水性部材は、基板上に、下塗り層用組成物を塗布し、加熱、乾燥することで下塗り層を形成し、その上に親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することで上塗り層を形成することにより得られる。
加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点からは、50〜200℃の温度範囲において、2分〜1時間程度行うことが好ましく、80〜160℃の温度範囲で、5〜30分間乾燥することがより好ましい。また、加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
【0118】
また、本発明の親水性部材は、上塗り層及び下塗り層を基板上に被膜する場合、基板に被膜する直前に触媒を混合することができる。具体的には触媒混合直後〜1時間以内で塗設することが好ましい。触媒を混合し、長時間放置したのちに塗設すると下塗り層用組成物または親水性組成物の粘度があがり、塗布むら等の欠陥を生じることがある。その他の成分も塗設直前に混合することが好ましいが混合後、長時間保存してもかまわない。
【0119】
〔基板〕
本発明に用いられる基板は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、タイル、ゴム、ラテックス、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基板は、プラスチック、金属等の柔軟性のあるフレキシブルな基板である。フレキシブルな基板を用いることで、物品の変形などが自由に可能になり、取り付け作業や取り付け場所の自由度が増すばかりでなく、耐久性も増すことができる。通常、本発明に用いられる(A)3官能または2官能のアルコキシシランを下塗り層に用いると、下塗り層の表面が疎水的となるため、その後親水性層を形成する際にムラが生じたりや密着性が不足する懸念がある。このため、親水性部材の下塗り層に(A)3官能または2官能のアルコキシシランを用いられることは問題があるとされていた。しかし、本発明では、シランカップリング基を有する親水性ポリマーとの組み合わせのため、格別なる効果を発現できた。
本発明に用いられるプラスチック基板としては、特に制限はないが、光学部材として使用される基板は、透明性、屈折率、分散性などの光学特性を考慮して選択され、使用目的により、種々の物性、例えば、耐衝撃性、可撓性など強度をはじめとする物理的特性や、耐熱性、耐候性、耐久性などを考慮して選択される。プラスチック基板としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルムもしくはシートを挙げることができる。その中でも特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステフィルムが好ましい。これらは、使用目的に応じて、単独で用いられてもよく、或いは、2種以上を混合物、共重合体、積層体などの形態で組み合わせて用いることもできる。プラスチック基板の厚みは、積層する相手によってさまざまである。例えば曲面の多い部分では、薄いものが好まれ、6〜50μm程度のものが用いられる。また平面に用いられ、あるいは、強度を要求されるところでは50〜400μmが用いられる。
【0120】
基板と下塗り層の密着性を向上させる目的で、所望により基板の片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0121】
プラスチック基板として、下記のガラス板の説明において記載される無機化合物層をプラスチック板上に形成したものを用いることもできる。この場合、無機化合物層は反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層をプラスチック板上に形成する場合も、前述した無機基板におけるのと同様の手法で形成することができる。
【0122】
透明プラスチック基板に無機化合物層を形成する場合、両層の間には、ハードコート層を形成してもよい。ハードコート層を設けることにより、基板表面の硬度が向上すると共に、基板表面が平滑になるので、透明プラスチック基板と無機化合物層との密着性が向上し、耐引っ掻き強度の向上と、基板の屈曲に起因する無機化合物層へのクラックの発生を抑制することができる。このような基板を用いることで親水性部材の機械的強度を改善できる。ハードコート層の材質は、透明性、適度な強度、及び機械的強度を有するものであれば、特に限定されない。例えば、電離放射線や紫外線の照射による硬化樹脂や熱硬化性の樹脂が使用でき、特に紫外線照射硬化型アクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、熱硬化性ポリシロキサン樹脂が好ましい。これらの樹脂の屈折率は、透明プラスチック基板の屈折率と同等、もしくはこれに近似していることがより好ましい。
【0123】
このようなハードコート層の被膜方法は、特に限定されず、均一に塗布されるのであれば任意の方法を採用することができる。また、ハードコート層の膜厚は3μm以上であれば十分な強度となるが、透明性、塗工精度、取り扱いの点から5〜7μmの範囲が好ましい。さらにハードコート層に平均粒子径0.01〜3μmの無機あるいは有機物粒子を混合分散させることによって、一般的にアンチグレアと呼ばれる光拡散性処理を施すことができる。これらの粒子は透明であれば特に限定されないが、低屈折率材料が好ましく、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが安定性、耐熱性等の点で特に好ましい。光拡散性処理は、ハードコート層の表面に凹凸を設けることによっても達成できる。これらの無機化合物層やハードコート層は基板と下塗り層との間に設けることで、基板と下塗り層の密着性を向上させることができる。
【0124】
金属薄板としては、とくにアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0125】
基板の厚さは0.05〜0.6mmであるのが好ましく、0.08〜0.2mmであるのがより好ましい。
【0126】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、基板の親水性の向上、および下塗り層と基板との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。アルミ基板の処理方法は公知の方法で行うことができる。
【0127】
本発明で用いられる基板としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性の一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理および親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理はこれらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
たとえば封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
【0128】
<封孔処理>
本発明に用いられる封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、中でも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
【0129】
<無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理>
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
【0130】
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0131】
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、更に、リン酸塩化合物を含有するのが好ましい。リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組合せは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
【0132】
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、また、溶解度の点で、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
【0133】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回または複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0134】
<水蒸気による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧または常圧の水蒸気を連続的にまたは非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.00×105〜1.043×105Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0135】
<熱水による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)または有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0136】
<親水化処理>
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0137】
基板は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、下塗り層との良好な密着性と良好な汚れ難さが得られる。
【0138】
本発明で用いられるガラス板としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属性酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化リチウム、フッ化トリウム等の金属ハロゲン化物;などで形成した無機化合物層を備えたガラス板を挙げることができる。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。また素板ガラスのまま、前記下塗り層および上塗り層を塗設できるが、必要に応じ、下塗り層および上塗り層の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0139】
無機化合物層は、単層あるいは多層構成とすることができる。無機化合物層はその厚みによって、光透過性を維持させることもでき、また、反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層の形成方法としては、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0140】
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0141】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m2 が好ましく、0.1〜10g/m2 がより好ましい。
【0142】
〔親水性部材使用時の層構成〕
本発明の親水性部材を、防汚性及び/または防曇性効果の発現を期待して使用する場合、その目的、形態、使用場所に応じ、適宜別の層を付加して使用することができる。以下に必要に応じ付加される層構成について述べる。
【0143】
1)接着層
本発明の親水性部材を、別の基板上に貼り付けて使用する場合、基板の裏面に、接着層として、感圧接着剤である粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などの一般的に粘着シートに用いられるものが使用できる。
光学的に透明なものが必要な場合は光学用途向けの粘着剤が選ばれる。着色、半透明、マット調などの模様が必要な場合は、基板における模様付けのほかに粘着剤に、染料、有機や無機の微粒子を添加して効果を出すことも行うことができる。
粘着付与剤が必要な場合、樹脂、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂およびこれらの水素添加物などの接着付与樹脂を1種類または混合して用いることができる。
本発明で用いられる粘着剤の粘着力は一般に言われる強粘着であり、200g/25mm以上、好ましくは300g/25mm以上、さらに好ましくは400g/25mm以上である。なお、ここでいう粘着力はJIS Z 0237 に準拠し、180度剥離試験によって測定した値である。
【0144】
2)離型層
本発明の親水性部材が前記の接着層を有する場合には、さらに離型層を付加することができる。離型層には、離型性をもたせるために、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤しては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、フッ素系化合物、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いることができる。また、ホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤などの各種の離型剤や、この他、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、アクリル−フッ素系共重合樹脂、及びウレタン−シリコーン−フッ素系共重合樹脂などの共重合系樹脂、並びに、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンド、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンドが用いられる。また、フッ素原子及び/又はケイ素原子のいずれかの原子と、活性エネルギー線重合性基含有化合物を含む硬化性組成物を、硬化して得られるハードコート離型層としてもよい。
【0145】
3)その他の層
上塗り層(親水性層)の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷つきや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層に用いた親水性ポリマー層を使用することができる。保護層は、親水性部材を適切な基板へ貼り付けた後には剥がされる。
【0146】
〔構造体の形態〕
本発明の親水性層を有する構造体は、シート状、ロール状あるいはリボン状の形態で供給されてもよく、適切な基板に貼り付けるために、あらかじめカットされたもとして供給することもできる。
【0147】
本発明の親水性層を塗設した親水性部材は、窓ガラス等に適用(使用、貼り付け)する場合、視界確保の観点から透明性が重要である。本発明の親水性層は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。本発明の親水性層の厚さは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがさらに好ましく、0.1μm〜20μmが最も好ましい。膜厚が0.01μm以上の場合は、十分な親水性、耐久性が得ら好ましく、膜厚が100μm以下の場合は、クラックが入るなど製膜性に問題を来たすことがなく、好ましい。
本発明の親水性層の乾燥塗布量を好ましくは0.01g/m2〜100g/m2、より好ましくは0.02g/m2〜80g/m2、特に好ましくは0.05g/m2〜50g/m2とすることで、上記の膜厚を得ることができる。
また、下塗り層の厚さは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.02μm〜80μmがさらに好ましく、0.05μm〜50μmが特に好ましい。
下塗り層組成物の乾燥塗布量を好ましくは0.01g/m2〜100g/m2、より好ましくは0.02g/m2〜80g/m2、特に好ましくは0.05g/m2〜50g/m2とすることで、上記の膜厚を得ることができる。
透明性は、分光光度計で可視光領域(400nm〜800nm)の光透過率を測定し評価する。光透過率が100%〜70%が好ましく、95%〜75%がより好ましく、95%〜80%の範囲にあることが最も好ましい。この範囲にあることによって、視界をさえぎることなく、親水性層を塗設した親水性部材を各種用途に適用することができる。
【0148】
本発明の親水性部材は、上記のように、下塗り層用組成物および親水性組成物を、適切な基板上に塗布し、加熱、乾燥して表面親水性層を形成することで得ることができる。
下塗り層用組成物および親水性組成物の塗布方法は、公知の塗布方法を採用でき、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0149】
本発明の親水性部材が適用可能なものとしては、例えば、防曇効果を期待する場合には透明なものであり、透明なガラス基板または透明なプラスチック基板、レンズ、プリズム、鏡等である。
ガラスとしては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。
防曇効果を有する部材が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;その他建材用ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。最も好ましい用途は、自動車用及び建材用のガラスである。
【0150】
また、本発明の表面親水性部材に防汚効果を期待する場合には、その基板は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。
防汚効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。
雪国用屋根材、アンテナ、送電線等への適用も可能であり、その際は、着雪防止性にも優れた特性が得られる。
【0151】
また本発明の表面親水性部材に水等の速乾性を期待する場合にも、その基材は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。水等の速乾性効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。またこれらの用途に使用される製品を製造する工程において乾燥工程を有する場合は乾燥時間が短縮でき生産性が向上する効果も期待できる。
【0152】
上記用途の中でも、本発明に係る親水性部材は、フィン材であることが好ましく、アルミニウム製フィン本体を有するフィン材であることが好ましい。すなわち、本発明のフィン材は、フィン本体(好ましくはアルミニウム製フィン本体)と、フィン本体の表面の少なくとも一部に設けられた親水性層とを具備するフィン材であって、前記親水性層は、本発明に係る親水性膜形成用組成物が塗設されてなる。
室内エアコンや自動車エアコン等の熱交換器等に用いられるアルミニウム製フィン材(アルミニウム製フィン本体そのもの)は、冷房時に発生する凝集水が水滴となりフィン間にとどまることで水のブリッジが発生し、冷房能力が低下する。またフィン間に埃などが付着することでも、同様に冷房能力が低下する。これらの問題に対し、本発明の親水性膜形成用組成物がフィン本体に塗設されてなるフィン材によれば、親水性、防汚性、及びそれらの持続性に優れたフィン材が得られる。
本発明に係るフィン材は、パルミチン酸に1時間曝気、30分水洗、30分乾燥を5サイクル繰返した後の水接触角が40°以下であることが好ましい。
【0153】
フィン材のフィン本体に用いられるアルミニウムとしては、表面が脱脂されたもの、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板を挙げることができる。アルミニウム製のフィン本体は、表面が化成処理されていることが親水化処理皮膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、例えば、クロメート処理を挙げることができ、その代表例として、アルカリ塩−クロム酸塩法(B.V.法、M.B.V.法、E.W.法、アルロック法、ピルミン法)、クロム酸法、クロメート法、リン酸クロム酸法などの処理法、及びクロム酸クロムを主体とした組成物による無水洗塗布型処理法などが挙げられる。
【0154】
例えば、熱交換器用フィン材のフィン本体に用いられるアルミニウム等薄板としては、JIS規格で、1100、1050、1200、1N30等の純アルミニウム板、2017、2014等のAl−Cu系合金板、3003、3004等のAl−Mn系合金板、5052、5083等のAl−Mg系合金板、さらには6061等のAl−Mg−Si系合金板等のいずれを用いても良く、またその形状はシートおよびコイルのいずれでも良い。
【0155】
また、本発明に係るフィン材は、熱交換器に用いることが好ましい。本発明に係るフィン材を用いた熱交換器は、優れた親水性、防汚性及びそれらの持続性を有しているので、フィン間に水滴や埃などが付着するのを防止することができる。熱交換器としては、例えば、室内用クーラーやエアコン、建設機械用オイルクーラー、自動車のラジエーター、キャパシタ等に使用される熱交換器が挙げられる。
また、本発明に係るフィン材を用いた熱交換器をエアコンに使用することが好ましい。本発明に係るフィン材は、優れた親水性、防汚性及びそれらの持続性を有しているので、前述のような冷房能力の低下等の問題が改善されたエアコンを提供することができる。エアコンとしては、ルームエアコン、パッケージエアコン、カーエアコン等、いずれのものでもよい。
その他、本発明の熱交換器、エアコンには公知の技術(例えば特開2002−106882号公報、特開2002−156135号公報など)を用いることができ、特に制限されない。
【実施例】
【0156】
〔測定方法〕
13C−NMR
BRUKER社製AV400Mを用いて共鳴周波数400MHzで測定した。測定溶媒は、重水素化溶媒である重水素化ジメチルスルホキシドDMSO−d6を用いた。
【0157】
残存モノマー定量はHPLCで分析した
【0158】
HPLC装置
測定器:島津LC−10ATvp
カラム:Tsk−gel ODS100V(4.6mmφ×150mm)粒経3μm
溶離液:アセトニトリル:蒸留水=2:98(0.1vol%リン酸含有)
流速:0.8ml/min. カラム温度:40℃ 測定波長:UV210nm 注入量:20μm
【0159】
GPC装置
測定器:東ソー HPLC−8220
カラム:東ソー α-guard column 6mm*4cm
α―M 6mm*30cm ×2本
検出器:RI レンジ 256
溶離液:蒸留水(0.5mmol/L硝酸ナトリウム含有)
流速:1.0ml/min. カラム温度:40℃
【0160】
密着性試験
親水膜を塗布した基材の表面にJIS K−5400に従ってカッターで傷を入れて1mm角の碁盤目を100個作り、セロハン接着テープ(積水化学製、#252、25mm幅、SP粘着力:750gf/25mm幅)を付着させた。このテープの一端を基材の表面に直角に保ち、瞬間的に剥離して残った基盤目の数を表す。100個の基盤目全てが剥離した状態が0、全て剥離しない状態が100である。
【0161】
耐水性試験
親水性部材の形成後の水滴接触角を測定し初期接触角とした。また該親水性部材を流量5L/時間の水道水に240時間曝露した後の水滴接触角を測定し、耐水性試験後接触角とした。初期接触角と耐水性試験後接触角との数値の差が少ないものが耐水性に優れる。空中水滴接触角は協和界面科学(株)製、DropMaster500により測定した。
【0162】
〔実施例1〕 親水性ポリマー(II−1)の合成(残存モノマー量0.06質量%)
【0163】
【化19】

【0164】
500ml4つ口フラスコに1−メトキシー2−プロパノール55gを入れ窒素気流下80℃に保った。アクリルアミド55g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 3.7g、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.52gを1−メトキシ−2−プロパノール110g中に攪拌溶解したものを3.5時間かけて攪拌しながら滴下した。滴下開始約10分後から白い沈殿が見られ、滴下終了時にはスラリー溶液となった。0.5時間そのままの温度に保った後、メタノール100ml中に2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.26gを溶解させたものを添加し、内温73℃で2時間後反応させた。冷却した後、窒素雰囲気下で濾過して白色固体が得られた。60℃で一晩乾燥し、54.6gの白色固体を得た。
得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は9000だった。13C-NMRにより、末端にトリメトキシシリル基(50.0ppm)が導入された親水性ポリマー(II−1)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマーを分析したところ、アクリルアミドと保持時間が一致したため、残存モノマーはアクリルアミドと断定した。絶対検量線法により求めた残存モノマー量は0.060質量%であった。
【0165】
〔塗布方法〕
オゾン発生装置により表面処理をしたガラスに下記組成の塗布液(1)をバー塗布し、100℃、2分でオーブン乾燥した後、下記組成の塗布液(2)をバー塗布し100℃、5分でオーブン乾燥して親水ガラスを作成した。得られた親水層の膜厚は約40nmであった。
(塗布液1)
蒸留水19g、エタノール6.1g、アセチルアセトン0.23g、オルトチタン酸テトラエチル0.31g、オルトケイ酸テトラメチル3.12gを順に加え、室温で2時間撹拌した。
得られた液に蒸留水196g、エタノール225g、下記アニオン系界面活性剤の5%水溶液を0.86g、コロイダルシリカ分散物20質量%水溶液(スノーテックスC)を4.10g添加し10分攪拌した
【0166】
【化20】

【0167】
(塗布液2)
蒸留水88g、上で得た親水性ポリマー(II−1)3.5gを攪拌して溶解させた。この中にエタノール18.3g、アセチルアセトン0.82g、オルトチタン酸テトラエチル0.94g、オルトケイ酸テトラメチル10.4gを順に加え、室温で2時間撹拌した。
得られた液に蒸留水365gとエタノール450g、上記アニオン系界面活性剤の5%水溶液を1.0g、コロイダルシリカ分散物20質量%水溶液(スノーテックスC)を17.29g添加し10分攪拌した。
【0168】
〔実施例2〕
500ml4つ口フラスコに1−メトキシー2−プロパノール55gを入れ窒素気流下80℃に保った。アクリルアミド53g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 3.7g、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.52gを1−メトキシ−2−プロパノール110g中に攪拌溶解したものを3.5時間かけて攪拌しながら滴下した。滴下開始約10分後から白い沈殿が見られ、滴下終了時にはスラリー溶液となった。後反応を0.5時間行った後、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.26gを1−メトキシ−2−プロパノール110ml中に溶解させたものを添加して後反応を2時間実施した。冷却後窒素雰囲気下で濾過して60℃で乾燥し白色固体を54.1g得た。得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は9100だった。13C-NMRにより、親水性ポリマー(II−1)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、0.124質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性試験と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0169】
〔実施例3〕
実施例1に於いて、重合工程における溶媒を1−メトキシ−2−プロパノールからエタノールに変更した以外は実施例1と同様にして化合物1を合成した。得られた固体は52.1gだった。
得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は8900だった。13C-NMRにより、親水性ポリマー(II−1)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、0.289質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性試験と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0170】
〔実施例4〕
実施例1に於いて滴下終了後0.5時間後反応させた後濾過して乾燥させたこと以外は実施例1と同様にして化合物1を合成した。得られた固体は53.3gだった。得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は8900だった。13C-NMRにより、親水性ポリマー(II−1)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、1.33質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性試験と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0171】
〔実施例5〕
実施例1に於いて、重合工程における溶媒をN,N‘−ジメチルアセトアミドに変更したこと以外は実施例4と同様にして化合物1を合成した。得られた固体は51.1gだった。得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は12000だった。13C-NMRにより、親水性ポリマー(II−1)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、0.91質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性試験と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0172】
〔実施例6〕
500ml4つ口フラスコに1−メトキシー2−プロパノール55gを入れ窒素気流下80℃に保った。アクリルアミド55g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 3.7g、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.52gを1−メトキシ−2−プロパノール110g中に攪拌溶解したものを3.5時間かけて攪拌しながら滴下した。滴下開始約10分後から白い沈殿が見られ、滴下終了時にはスラリー溶液となった。0.5時間そのままの温度に保った後、メタノール100ml中に2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.26gを溶解させたものを添加し、内温65℃で2時間後反応させた。冷却した後、窒素雰囲気下で濾過して白色固体が得られた。60℃で一晩乾燥し、54.7gの白色固体を得た。
得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は9300だった。13C-NMRにより、親水性ポリマー(II−1)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、0.097質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性試験と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0173】
〔実施例7〕(開始剤添加時の反応溶媒をメタノールからアセトニトリルに変更)
実施例1に於いて、重合終了後に再度開始剤を追加する際の溶媒をアセトニトリルに変更した以外は実施例1と同様にして化合物1を合成した。得られた固体は53.6gだった。得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は9300だった。13C-NMRにより、親水性ポリマー(II−1)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、1.31質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性試験と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0174】
〔実施例8〕(開始剤添加時の反応溶媒をメタノールから酢酸エチルに変更)
実施例1に於いて、重合終了後に再度開始剤を追加する際の溶媒を酢酸エチルに変更した以外は実施例1と同様にして化合物1を合成した。得られた固体は52.5gだった。得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は4000だった。13C−NMRにより、(II−1)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、2.11質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0175】
〔実施例9〕親水性ポリマー(II−114)の合成
【0176】
【化21】

【0177】
500ml4つ口フラスコに1−メトキシー2−プロパノール55gを入れ窒素気流下80℃に保った。アクリルアミド50g、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド18.2g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 3.88g、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.55gを1−メトキシ−2−プロパノール110g中に攪拌溶解したものを3.5時間かけて攪拌しながら滴下した。0.5時間そのままの温度に保った後、メタノール100ml中に2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチルを0.55gを溶解させたものを添加し、内温73℃で2時間後反応させた。冷却した後、窒素雰囲気下で濾過して白色固体が得られた。60℃で一晩乾燥し、57.6gの白色固体を得た(収率99.5%)。
得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は19000だった。13C−NMRにより、末端にトリメトキシシリル基(50.0ppm)が導入された親水性ポリマー(II−114)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、0.094質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0178】
〔比較例1〕(特開2002−293824に基づく親水性ポリマー(II−1)の合成)
500ml三口フラスコにアクリルアミド50g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.4g、及びジメチルホルムアミド220gを入れ、65℃窒素気流下、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。酢酸エチル2リットル中に投入したところ固体が析出した。乾燥後の重量は52.4gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量7500のポリマーであり、13C−NMRにより、末端にトリメトキシシリル基(50.0ppm)が導入されたポリマーである事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、3.88質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0179】
〔比較例2〕
実施例4に於いて、開始剤量を0.052gに、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 0.37gに変更したこと以外は実施例4と同様にして親水性ポリマー(II−1)を合成した。得られた固体は50.1gだった。得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は11000だった。13C-NMRにより、親水性ポリマー(II−1)である事が確認できた。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、3.23質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0180】
〔比較例3〕(開始剤添加時の反応溶媒をメタノールからトルエンに変更)
実施例1に於いて、重合終了後に再度開始剤を追加する際の溶媒をトルエンに変更した以外は実施例1と同様にして化合物1を合成した。得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は8800だった。13C−NMRにより、末端にトリメトキシシリル基(50.0ppm)が導入されたポリマーである事が確認できた。得られた固体は50.8gだった。
得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、3.11質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0181】
〔比較例4〕
比較例1に於いて、親水性ポリマーを(II−1)から(II−114)に変更した以外は比較例1と同様にして合成した。得られた固体をGPCにより分析した。ポリエチレンオキシド標準の重量平均分子量は18800だった。13C−NMRにより、末端にトリメトキシシリル基(50.0ppm)が導入された親水性ポリマー(II−114)である事が確認できた。得られた固体は52.3gだった。得られたポリマーの残存モノマー量を分析したところ、4.18質量%であった。
得られたポリマーを用いて実施例1と同様に塗布し、密着性と耐水性試験を実施した。結果を表1に纏めた。
【0182】
【表1】

【0183】
表中の記号は以下のとおりである。
MP:1−メトキシ−2−プロパノール
DMAc:N,N'−ジメチルアセトアミド
DMF:N,N'―ジメチルホルムアミド
【0184】
表1より親水性ポリマーの残存モノマー量を3.0質量%以下にすることで密着性や耐水性に優れた塗布膜を与えることができる。
【0185】
実施例及び比較例で使用した溶媒に対する20℃におけるポリマーの溶解度(質量%)について以下に示す。
【0186】
【表2】

【0187】
【化22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含有し、残存モノマー量が3.0質量%以下である親水性ポリマー。
【化1】

一般式(I−1)および(I−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−ORa、−CORa、−CO2e、−CON(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)、−NHCORd、−NHCO2a、−OCON(Ra)(Rb)、−NHCON(Ra)(Rb)、−SO3e、−OSO3e、−SO2d、−NHSO2d、−SO2N(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)(Rc)、−N(Ra)(Rb)(Rc)(Rg)、−PO3(Re)(Rf)、−OPO3(Re)(Rf)、または−PO3(Rd)(Re)を表す。ここで、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rdは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Re及びRfは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rgはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項2】
前記一般式(I−1)におけるL202が単結合であり、R205が水素原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の親水性ポリマー。
【請求項3】
前記残存モノマー量が1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の親水性ポリマー。
【請求項4】
残存モノマー量が0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の親水性ポリマー。
【請求項5】
請求項1〜4において、前記残存モノマーがアクリルアミドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の親水性ポリマー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の親水性ポリマーを含有することを特徴とする親水性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の親水性組成物により形成された親水性部材。
【請求項8】
モノマーの重合工程及び
重合工程後に20℃における該モノマーの溶解度が10質量%以上の有機溶媒と、開始剤とを添加する工程
を含むことを特徴とする一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含有し、残存モノマー量が3.0質量%以下である親水性ポリマーの製造方法。
【化2】

一般式(I−1)および(I−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−ORa、−CORa、−CO2e、−CON(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)、−NHCORd、−NHCO2a、−OCON(Ra)(Rb)、−NHCON(Ra)(Rb)、−SO3e、−OSO3e、−SO2d、−NHSO2d、−SO2N(Ra)(Rb)、−N(Ra)(Rb)(Rc)、−N(Ra)(Rb)(Rc)(Rg)、−PO3(Re)(Rf)、−OPO3(Re)(Rf)、または−PO3(Rd)(Re)を表す。ここで、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rdは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Re及びRfは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rgはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項9】
前記モノマーがアクリルアミドであり、20℃における前記モノマーの溶解度が10質量%以上の有機溶媒がメタノールであることを特徴とする請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
重合工程で使用する溶媒が、20℃における前記モノマーの溶解度が10質量%以上の有機溶媒であり且つ親水性ポリマーの溶解度が10質量%以下の有機溶媒であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−65066(P2010−65066A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229661(P2008−229661)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】