説明

親水性化合物およびこれからなる親水性材料

【課題】3次元架橋により優れた表面硬度と耐久性を有し、高い親水性により、防曇性能、防汚性能、帯電防止性能、速乾性能(液体の蒸発速度が速い)により発揮することができ、しかも優れた防滴性を有する重合体、およびその重合体の原料となる化合物を提供すること。
【解決手段】スルホン酸基および/またはスルホン酸塩基を有する2官能性の特定構造を有する化合物、およびその化合物を含む単量体から得られる重合体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い親水性を付与する新規な化合物、それを重合して得られる新規な重合体および膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの表面及びガラスの表面に発生する曇りに対する改善要求がさらに強まっている。
曇りの問題を解決する方法として、アクリル系オリゴマーに反応性界面活性剤を加えて硬化膜の親水性と吸水性を向上させる防曇塗料が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。また、表面の親水性を向上させる事によって、外壁等に付着した汚れ(外気疎水性物質等)を降雨及び散水等によって浮き上がらせて効率的に除去するセルフクリーニング性(防汚染性)を有する防汚染材料(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照。)が注目されている。
【0003】
これら用途に好適な材料として、本発明者らは、アニオン性基を有する高親水性の単層膜を先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】国際公開第2007/064003号パンフレット
【非特許文献1】東亜合成研究年報、TREND 1999年 2月号、39〜44頁
【非特許文献2】高分子,44(5),307頁
【非特許文献3】未来材料,2(1),36−41頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先の本発明者らの提案は、アニオン性基を有する単官能の親水性単量体と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋性単量体とを重合してなる3次元架橋された高親水性の単層膜に関するものである。
【0005】
しかしながら、先の発明で開示されるスルホン酸基、またはスルホン酸塩基を有する親水性単量体は単官能性であり、その親水性単量体のみにより単独重合を行った場合は、リニアーポリマーとなり、水に溶出し易くなる為、さらに架橋性単量体を併用して3次元架橋する必要があった。
【0006】
また、温水蒸気等により水滴の付着し難さを評価する「防滴性」に於いて、高い架橋密度を維持したまま性能の向上を図るには、更さらなる工夫が必要であり、まだ改良の余地が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、さらに検討を重ねた結果、一般式(1)で表される化合物は単独で重合しても3次元架橋の親水性の重合体が得られること、またその重合体は透明性が良好で、しかも、防滴性も向上することを見い出した。
【0008】
さらに、上記重合体は、3次元架橋により優れた表面硬度と耐久性を有し、高い親水性により、防曇性能、防汚性能、帯電防止性能、および速乾性能(液体の蒸発速度が速い)を発揮することを見い出した。
【0009】
即ち、本発明は、
[1]下記一般式(1)で表される化合物。
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式(1)中、R1およびR2は水素原子またはメチル基、R3は水素原子または炭素
数1〜6のアルキル基を表す。Mは水素原子またはアルカリ金属を表す。nは1〜10の
整数を表す。)
[2]上記一般式(1)で表される化合物(A)を重合して得られる重合体。
[3]上記一般式(1)で表される化合物(A)と、化合物(A)を除く1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)とを共重合して得られる重合体。
[4]水接触角が30°以下である[2]または[3]に記載の重合体
[5][2]または[3]に記載の重合体からなる親水被膜
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性が良好で、防曇性、防汚性、帯電防止性、および速乾性に優れ、しかも防滴性にも優れた親水性の3次元架橋重合体、それからなる親水被膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔化合物〕
本発明の化合物は下記一般式(1)(以下、化合物(A)ともいう。)で表されることを特徴とする。
【0014】
【化2】

【0015】
上記式(1)中、R1およびR2は水素原子またはメチル基を表す。
3は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、そのアルキル基は直鎖アルキ
ルでも分岐アルキルでもよい。これらR3の中でも、水素原子または炭素数1〜3のアル
キル基が好ましく、原料の入手の容易さからは、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0016】
Mは水素原子またはアルカリ金属を表す。これらMの中でも、水素原子、ナトリウム、
カリウム、またはルビジウムが好ましく、ナトリウムまたはカリウムがさらに好ましい。nは1〜10の整数である。
【0017】
一般式(1)で表される本発明の化合物は、公知の反応を利用して合成できる。例えば、n=3の化合物(A)を合成する場合は、以下の合成ルートが挙げられる。
【0018】
【化3】

【0019】
すなわち、上記化合物は、出発物資ジメチロール脂肪酸を、アクリル化およびアルキルスルホン化して合成される。
アクリル化およびアルキルスルホン化の何れを先に実施するかにより、2つの合成ルートに分かれる。何れの合成ルートでも目的物の合成は可能であるが、中間体の取り出しが容易な中間体1を経由するルート(アクリル化、アルキルスルホン化の順番で合成するルート)の方が比較的に好ましい傾向にある。
【0020】
アクリル化の反応は、出発物質または中間体2が有する水酸基をアクリル化することにより行える。
アクリル化の方法としては、上記水酸基と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させる方法、上記水酸基と無水(メタ)アクリル酸とを反応させる方法、上記水酸基とハロゲノプロピオン酸ハライドとを反応させて先ずハロゲノプロピオン酸エステルを合成し、次いで3級アミンおよび苛性ソーダ等の塩基性物質によりハロゲノプロピオン酸エステルから脱塩酸する方法、上記水酸基と(メタ)アクリル酸とを反応させる法、および上記水酸基と(メタ)アクリル酸エステルとを反応させエステル交換する方法等が挙げられる。
【0021】
これら方法の中でも、上記水酸基と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させる方法、および、上記水酸基と(メタ)アクリル酸とを反応させる方法が比較的好ましく、上記水酸基と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させる方法がより好ましい。
【0022】
上述の水酸基と(メタ)アクリル酸ハライドとの反応の際には、反応促進剤として3級アミン等の塩基性物質またはアミド等の含窒素化合物を共存させ、0〜100℃の範囲、より好ましくは5〜60℃の範囲で反応させることが好ましい。
【0023】
アルキルスルホン化の反応は、出発物質または中間体1が有するカルボキシル基をアルキルスルホン化することにより行える。
n=3の化合物(A)をアルキルスルホン化する方法としては、アルカリ金属、アルカリ金属水酸化物、あるいはアルカリ金属塩の存在下、出発物質または中間体1とプロパン
スルトンとを反応させる方法が好ましい。上記方法の反応温度は、およそ室温から100℃の範囲が好ましく、30〜70℃の範囲がより好ましい。
【0024】
n=3以外の化合物(A)をアルキルスルホン化する方法としては、出発物質または中間体1と、ヒドロキシアルキルハライドにアルカリ金属スルホネートを反応させて得られるヒドロキシアルキルスルホン酸アルカリ金属塩とを反応させる方法等が挙げられる。
【0025】
出発物質または中間体1をヒドロキシアルキルスルホン酸アルカリ金属塩と反応させる場合には、そのまま脱水エステル化反応させてもよいし、出発物質または中間体1のカルボキシル基とハロゲン化リン、ハロゲン化チオニル等の公知のハロゲン化剤等とを反応させてアシルハライドを調製した後、そのアシルハライドをヒドロキシアルキルスルホン酸アルカリ金属塩と反応させてもよい。アシルハライドを経由して反応させる場合には、前記と同様に反応促進剤として3級アミン等の塩基性物質またはアミド等の含窒素化合物を共存させ、0〜100℃の範囲で反応させることが好ましい。
【0026】
上記方法によりR3を変更した本発明の化合物(A)を合成する場合には、出発物質で
あるジメチロール脂肪酸を変更すればよい。
上記ジメチロール脂肪酸としては、2,2−ジメチロール−酢酸、2,2−ジメチロール−プロピオン酸、2,2−ジメチロール−酪酸、2,2−ジメチロール−3−メチル−酪酸、2,2−ジメチロール−カプロン酸、2,2−ジメチロール−ヘプタン酸、2,2−ジメチロール−カプリル酸が挙げられる。これらジメチロール脂肪酸の中でも、比較的入手し易い原料としては、例えば、2,2−ジメチロール−プロピオン酸、2,2−ジメチロール−酪酸が挙げられる。
【0027】
〔重合体〕
本発明の重合体は、上述のようにして得られた化合物(A)のみを重合するか、もしくは、化合物(A)と、化合物(A)を除く1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)とを共重合することにより得られる。
【0028】
本発明の重合体を製造する際には、化合物(A)を2種以上併用しても良い。
また問題にならない範囲で、化合物(A)の重合体、例えば分子量322〜5,000
の範囲の化合物(A)のオリゴマー等が化合物(A)に含まれていても構わない。
【0029】
上記化合物(A)を除く、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)とは、重合性官能基として、化合物1分子内に1個以上の、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルチオ基、および(メタ)アクリルアミド基等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0030】
これら化合物(B)の中でも、1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が好ましく使用される。
1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性コハク酸(メタ)アクリレート(新中村化学「NKエステル A−SA」等)、テトラヒドロフルフ
リル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート(東亞合成「TO−1534」等)、モノ{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレートカリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートカリウム塩等の1分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(日本化薬「カヤラッド HX−220」等)、ポリエステルジ(メタ)アクリレート(第一工業薬
品「ニューフロンティア R−2201」等)、トリグリセロールジ(メタ)アクリレー
ト(共栄社化学「エポキシエステル 80−MFA」等)、ジアクリル酸亜鉛、ネオペン
チルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート(日本化薬「カヤラッド「R−604」」、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(東亞合成「アロニックス M−2
10」等)、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート(ナガセ化成「DA−721」)、エピクロルヒドリン変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート(ナガセ化成「DA−722」)、ビス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸等の1分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、
EO(エチレンオキシド)変性グリセリントリ(メタ)アクリレート(第一工業製薬「ニューフロンティア GE−3A」等)、PO(プロピレンオキシド)変性グリセリントリ(
メタ)アクリレート(日本化薬「カヤラッド GPO(プロピレンオキシド)−303」等
)、エピクロルヒドリン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート(ナガセ化成「デナコールアクリレート DA−314」等)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(化薬サートマー「SR−494」、新中村化学工業NKエステル ATM−35E等)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(新中村化学工業NKエステル A−9530)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(新中村化学工業NKエステル A−DPH)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(日本化薬「カヤラッド DPCA−30」等)、トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチル
}イソシアヌレート、トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸等の1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートとの反応生成物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタンとの反応生成物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアナートとの反応生成物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとの反応生成物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートとの反応生成物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアナートとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートトリマーとの反応生成物等のウレタンアクリレート化合物、
東亞合成「アロニックス M−6200」,ダイセルUCB「Ebcryl80」,BA
SF「Laromer PE56F」、三菱レーヨン「ダイヤビーム UK−4003」、日立化成「ヒタロイド 7831」等のポリエステル系オリゴマー(メタ)アクリレート
化合物等が挙げられる。
【0031】
これら1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の中でも、好ましくは、(メタ)アクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレートカリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートカリウム塩の1分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有す
る化合物、
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート(共栄社化学「エポキシエステル 80−MFA」等)、ビス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸
の1分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、
EO(エチレンオキシド)変性グリセリントリ(メタ)アクリレート(第一工業製薬「ニューフロンティア GE−3A」等)、エピクロルヒドリン変性グリセリントリ(メタ)
アクリレート(ナガセ化成「デナコールアクリレート DA−314」等)、EO(エチ
レンオキシド)変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(化薬サートマー「SR−494」、新中村化学工業NKエステル ATM−35E等)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(新中村化学工業NKエステル A−9530)、ジペ
ンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(新中村化学工業NKエステル A−DPH)、トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}イソシアヌレートの1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートとの反応生成物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートトリマーとの反応生成物等のウレタンアクリレート化合物
である。
【0032】
更に好ましくは、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレートカリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートカリウム塩の1分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート(共栄社化学「エポキシエステル 80−MFA
」等)、ビス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸の1分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、
EO(エチレンオキシド)変性グリセリントリ(メタ)アクリレート(第一工業製薬「ニューフロンティア GE−3A」等)、EO(エチレンオキシド)変性ペンタエリスリト
ールテトラ(メタ)アクリレート(化薬サートマー「SR−494」、新中村化学工業NKエステル ATM−35E等)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(新中村化学工業NKエステル A−9530)、トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチ
ル}イソシアヌレートの1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートトリマーとの反応生成物等のウレタンアクリレート化合物である。
【0033】
また、これら化合物(B)は2種以上併用してもよい。
化合物(A)と化合物(B)とを共重合する場合の配合比は、得られる重合体に要求される特性に応じて適宜決定することができる。
【0034】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、化合物(A)と共重合可能な、化合物(B)以外の単量体を共重合してもよい。例えば、得られる重合体の屈折率を高めるために、硫黄原子を有する単量体を使用してもよい。
【0035】
上記化合物(B)以外の単量体としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)
、5−メルカプトメチル−3,6−ジチアオクタン−1,8−ジチオール、4,8−ジ(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオール等の硫黄原子を有する単量体;
1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,3−キシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等のアミノ基を有する単量体;
2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、旭チバ「CY−179」、旭チバ「CY−175」、油化シェルエポキシ「RXE15」等のエポキシ基を有する単量体などが挙げられる。
【0036】
本発明の重合体を製造する方法は、化合物(A)の単独重合、あるいは、化合物(A)と化合物(B)などのその他単量体との共重合ができる限り、特に制限はない。
化合物(A)の単独重合、または化合物(A)と化合物(B)などその他単量体との共重合は、例えば、重合開始剤、およびその他の添加剤を必要に応じてを加えて重合性組成物を調製し、該組成物に熱または放射線を照射することによって行うことができる。上記熱および放射線は併用してもよい。
【0037】
重合反応は大気下で行うこともできるが、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが重合時間を短縮させる点で好ましい。
上記重合を放射線により行う場合には、波長領域が0.0001〜800nm範囲のエネルギー線が放射線として用いることができる。上記放射線としては、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線、可視光等が挙げられる。これら放射線は、前記の重合性組成物の特性、使用する重合開始剤等に応じて適宜選択することができる。
【0038】
これら放射線の中では汎用性の高い200〜450nmの範囲の紫外線が好ましく用いられる。また、放射線を発生させる装置は高価だが、0.01〜0.002nmの範囲の電子線も、短時間で重合が完結するため比較的に好ましい。
【0039】
上記紫外線により重合する場合、重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、または光アニオン重合開始剤等の光重合開始剤が使用できる。
中でも光ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。目的に応じて光重合促進剤を併用する場合もある。
【0040】
上記光ラジカル重合開始剤としては、イルガキュアー651(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー1173(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イルガキュアー500(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー2959(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー127(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー907(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー369(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー1300(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー819(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー1800(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアーTPO(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー4265(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアーOXE01(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアーOXE02(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製))、エサキュアーKT55(ランベルティー社製)、エサキュアーKIP150(ランベルティー社製)、エサキュアーKIP100F(ランベルティー社製)、エサキュアーKT37(ランベルティー社製)、エサキュアーKTO46(ランベルティー社製)、エサキュアー1001M(ランベルティー社製)、エサキュアーKIP/EM(ラ
ンベルティー社製)、エサキュアーDP250(ランベルティー社製)、エサキュアーKB1(ランベルティー社製)、2,4−ジエチルチオキサントンが挙げられる。
【0041】
これら光ラジカル重合開始剤の中でも、イルガキュアー184(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー1173(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー500(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー819(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアーTPO(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、エサキュアーKIP100F(ランベルティー社製)、エサキュアーKT37(ランベルティー社製)およびエサキュアーKTO46(ランベルティー社製)が好ましい。
【0042】
上記光重合促進剤としては、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’ 5,5
’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノンなどが挙げられる。
【0043】
一方、上記重合を熱により行う場合には、通常、重合性組成物に、熱重合開始剤として有機過酸化物等のラジカル発生剤を加え、室温から300℃以下の範囲で加熱して行われる。
【0044】
上記熱重合開始剤としては、例えば、日本油脂「パーヘキサACS」、「パーロイルIB」、「パークミルND」、「ナイパーCS」、「パーブチルO」、「パーヘキサC」、「パーメックN」、「パーブチルD」、「パーヘキサ25H」等の有機化酸化物などが挙げられる。
【0045】
これら重合開始剤は、通常、化合物(A)と必要に応じて使用する化合物(B)など他単量体との合計100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部の範囲である。
【0046】
例えば、後述する被膜製造などに使用する場合、上記重合性組成物には、操作性の向上、レベリング性の向上等を目的としてさらに溶媒を加えてもよい。
上記溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、メトキシエタノールなどのアルコキシエタノール、アルコキシプロパノール、アルキレングリコール、アルキレングリコールメチルエーテル、グリセリン等のアルコール類、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、水、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0047】
溶媒の使用量は特に制限はなく、経済性等を考慮して適宜その使用量を決定することができる。
上記溶媒を含む重合性組成物を重合硬化して、被膜を形成させる場合には、重合前に乾燥して溶媒を十分に除去することが好ましい。
【0048】
溶媒の除去が不十分であると、例えば被膜を形成する場合には、形成された被膜の親水性、被膜と基材との密着性が低下する場合がある。
したがって、上記重合性組成物の重合直前の重合組成物中の残存溶媒量は、おおよそ10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい

【0049】
乾燥温度は適宜決められるが、通常室温〜200℃の範囲、好ましくは30〜150℃の範囲、より好ましくは40〜100℃の範囲である。
乾燥時間も同様に適宜決められる。しかし、生産性を考慮した場合、短時間の方が好ましい傾向にあり、通常5分以下、好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下である。
【0050】
乾燥圧力も同様に適宜決められるが、微加圧、常圧、または減圧が好ましい傾向にある。
乾燥雰囲気は、大気でも窒素等の不活性ガスでも構わないが、湿度は低い方が好ましい傾向にある。具体的には、湿度は70%以下が好ましく、60%以下であればより好ましく、55%以下であればさらに好ましい。
【0051】
上記化合物(A)を含む単量体から得られる本発明の重合体は、透明性が良好で、表面硬度が高い。また、上記重合体は、水接触角が30°以下、より好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°以下の高親水性であり、防滴性に優れる。
【0052】
このような特性をもつ重合体が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、重合体が形成される過程で、化合物(A)中のスルホン酸基、またはスルホン酸塩基が重合体の表面に移行する一方で、化合物(A)が2官能性であるため、スルホン酸基、またはスルホン酸塩基が重合体の内部にもある程度残存するためであると推定される。
【0053】
特に、上記化合物(A)と上記化合物(B)とを含む単量体から得られる本発明の共重合体は、重合体中のスルホン酸基、またはスルホン酸塩基の濃度を上昇させずとも、水接触角が30°以下、より好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°以下の高親水性をより容易に達成することができ、防滴性に優れ、表面硬度も高い。また、上記共重合体は、スルホン酸基、またはスルホン酸塩基を含む単官能性単量体を含む単量体から得られる重合体と比較しても透明性に優れる。
【0054】
このような特性をもつ共重合体が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、共重合体が形成される過程で、化合物(B)と化合物(A)との親和性の関係で、化合物(A)中のスルホン酸基、またはスルホン酸塩基が重合体の表面により移行しやすくなる一方で、化合物(A)が2官能性であるため、重合体内部でも化合物(B)と化合物(A)との共重合が進行するため、スルホン酸基、またはスルホン酸塩基が重合体の内部にもある程度残存するためであると推定される。
【0055】
このような特性を有する、化合物(A)と化合物(B)とを含む単量体から得られる共重合体を製造する観点からは、単量体中の化合物(A)と化合物(B)との配合比(化合物(A):化合物(B))は、好ましくは質量比で通常99:1〜0.1:99.9の範囲が、より好ましくは90:10〜0.5:99.5の範囲、特に好ましくは80:20〜1:99の範囲である。
【0056】
本発明の重合体は、さらに必要に応じて添加剤を加えて使用できる。
上記添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、ラジカル補足剤、内部離型剤、酸化防止剤、重合禁止剤、光安定剤、色素、バインダー、フィラー、レベリング剤、その他公知の添加剤が挙げられる。
【0057】
上記紫外線吸収剤、光安定剤は、主として、本発明の本発明の重合体が長期間屋外等にに曝されても変質しないようにするために添加する。
上記紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(
1,1,3,3−テトラメチル−ブチル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(3−オン−4−オキサ−ドデシル)−6−tert−ブチル−フェノール、2−{5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル}−4−(3−オン−4−オキサ−ドデシル)−6−tert−ブチル−フェノール、2−{5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル}−4−メチル−6−tert−ブチル−フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−{5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル}−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−n−ドデシルフェノール、メチル−3−{3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル}プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応性生物等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−(4−フェノキシ−2−ヒドロキシ−フェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オキサ−ヘキサデシロキシ)−4,6−ジ(2、4−ジメチル−フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オキサ−ヘプタデシロキシ)−4,6−ジ(2、4−ジメチル−フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−iso−オクチロキシ−フェニル)−4,6−ジ(2、4−ジメチル−フェニル)−1,3,5−トリアジン、商品名チヌビン109(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビンPS(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン400(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン405(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン460(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン479(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)等のトリアジン系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤;プロパンジオック酸−{(4−メトキシフェニル)−メチレン}−ジメチルエステル、商品名ホスタビンPR−25(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンB−CAP(クラリアント・ジャパン株式会社製)等のプロパンジオック酸エステル系紫外線吸収剤;2−エチル−2’−エトキシ−オキサニリド、商品名Sanduvor VSU(クラリアント・ジャパン株式会社製)等のオキサニリド系紫
外線吸収剤などが挙げられる。これら紫外線吸収剤の中でもトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい傾向にある。
【0058】
上記光安定剤としては、HALS(Hindered Amin Light Stab
ilizers ヒンダードアミン系光安定剤:一般的に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有する化合物の総称)が挙げられる。
【0059】
上記HALSとしては、商品名チヌビン111FDL(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、商品名チヌビン123(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製))、商品名チヌビン144(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン292(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン765(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン770(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名CHIMASSORB119FL(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製))、商品名CHIMASSORB2020FDL(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキ
シ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(商品名CHIMASSORB622LD(チバ・スペシャリ・ティー・ケミカルズ株式会社製))、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](商品名CHIMASSORB944FD(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製))、商品名Sanduvor3050 Liq.(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名Sanduvo
r3052 Liq.(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名Sanduvor
3058 Liq.(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名Sanduvor3
051 Powder.(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名Sanduvo
r3070 Powder.(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名VP Sanduvor PR−31(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンN2
0(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンN24(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンN30(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンN321(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンPR−31(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビン845(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ナイロスタッブS−EED(クラリアント・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0060】
これら紫外線吸収剤および光安定剤の添加量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されない。しかし、紫外線吸収剤の使用量は、化合物(A)および必要に応じて添加される化合物(B)などのその他単量体の合計100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。また、光安定剤の使用量は、化合物(A)および必要に応じて添加される化合物(B)などのその他単量体の合計100質量部に対して、通常0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜3質量部の範囲である。
【0061】
また、上記添加剤以外にも、機械的、熱的強度を向上させる目的、光応答性および殺菌性等を付与する目的等で、シリカ、酸化チタンなどの金属酸化物、金属等を添加してもよい。さらに、主として殺菌性、抗菌性を付与するために、銀塩等の金属塩、ヨウ素、およびヨードニウム塩を添加してもよい。
【0062】
上述した添加剤の使用量は、その使用目的等に応じて、適宜設定できるが、化合物(A)および必要に応じて添加される化合物(B)などのその他単量体の合計100質量部に対して、通常0.01〜200質量%の範囲、好ましくは0.1〜100質量%の範囲である。
【0063】
上記添加剤は、本発明の重合体そのものに添加してもよい。また、上述した、本発明の化合物(A)を含む重合性組成物に添加してもよい。
本発明の重合体は、成形体として、あるいは被膜として使用できる。
【0064】
上記本発明の成形体は、例えば、上記重合性組成物を所望の形状の鋳型に注入し、鋳型内で重合させることにより製造できる。
特に、水接触角30°以下の高親水性の重合体からなる成型体は、親水性が必要な用途に好適である。
【0065】
また、水接触角が20°以下、好ましくは10℃以下の高親水性の重合体からなる成型体は、防曇材、防滴材、防汚材、帯電防止材、および速乾性材として好適である。
上記本発明の被膜は、例えば、本発明の化合物(A)を含む重合性組成物を基材に塗布して乾燥後、熱または放射線により重合、硬化させ、形成させることができる。
【0066】
上記基材としては、ガラス、シリカ、金属、金属酸化物等の無機材料、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、紙、パルプ等の有機材料、およびこれら基材の表面にさらに塗膜等の膜が形成された基材が挙げられる。
【0067】
また、これら基材表面は必要に応じてコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の物理的または化学的処理を施されていてもよい。また、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤等のコート剤により処理した後、上記被膜を形成してもよい。
【0068】
上記コート剤の中でも、ポリウレタン系コート剤が好ましい傾向にある。コート剤の塗布量は、通常おおよそ0.05g/m2〜5g/m2である。
また、酸素による重合阻害を回避する目的で、上記重合性組成物を基材に塗布し、必要に応じて乾燥を行い塗布層を形成した後、該塗布層を被覆材(フィルム等)で被覆し放射線を照射して重合してもよい。なお、被覆材で塗布層を被覆する際には、該塗布層と被覆材との間に空気(酸素)を含まないように密着することが望ましい。
【0069】
上記被覆材としては、酸素が遮断されば如何なる材料および形態でも構わないが、公知の透明フィルムが好ましい。フィルムの厚さは通常3〜200μmの範囲、好ましくは5〜100μmの範囲、より好ましくは10〜50μmの範囲である。
【0070】
本発明の重合体からなる上記被膜を基材表面に形成することにより、被膜と基材とから形成される積層体が製造される。上記被膜は、通常、親水性を有し、好ましくは、防曇性、防汚性、帯電防止性、速乾性を有する。
【0071】
特に、水接触角30°以下の高親水性の重合体からなる被膜は、親水性が必要な用途に好適である。
また、水接触角が20°以下、好ましくは10℃以下の高親水性の重合体からなる被膜は、防曇被膜、防滴被膜、防汚被膜、帯電防止被膜、および速乾性被膜として好適である。
【0072】
上記積層体の、重合性組成物からなる被膜が形成されていない基板表面には、後述する粘着層が設けられていてもよい。さらにその粘着層の表面に剥離フィルムが設けられていてもよい。
【0073】
例えば、上記積層体が積層フィルムである場合には、本発明の被膜が形成されていない基材フィルムの反対表面に粘着層を設けておくと、窓ガラス等のガラス、浴室等の鏡、ディスプレイ、テレビ等の表示材料表面、看板、広告板、案内板、鉄道、道路等の標識、建物の内壁および外壁などに容易に積層フィルムを塗布することができ、本発明の積層フィルムは、例えば、防曇フィルム、防滴フィルム、防汚フィルム、帯電防止フィルム、あるいは速乾性フィルムとして容易に使用することができる。
【0074】
上記粘着層は粘着剤により形成される。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルエーテルポリマー系粘着剤、シリコーン粘着剤、その他公知の粘着剤が挙げられる。粘着層の厚さは、通常2〜50μmの範囲、好ましくは5〜30μmの範囲である。
【0075】
また、本発明により得られた被膜は、さらに上述の被覆材(フィルム等)により被覆さ
れていてもよい。このように被覆材を被膜表面に設けると、輸送、保管、陳列等をする際に、被膜の傷付き、汚れを防ぐことができる。
【0076】
本発明により得られる重合体、成型体、被膜、および積層体は親水性である。
例えば、車輌、船舶、航空機、建築物等の用途に用いられる。
具体的には、これらの外壁、外装、内壁、内装、床、あるいは車輌用ホイール等の被膜として用いることができる。
【0077】
その他にも、窓、鏡、家具、家具材、風呂場用材、台所用材、換気扇、配管、配線、電化製品、電気部品、衣服、布、繊維などの衣料材、光学フィルム、光ディスク、眼鏡、コンタクトレンズ、ゴーグル等の光学物品、フラットパネル、タッチパネル等のディスプレイ及びそのディスプレイ材、太陽電池のガラス基板または最外層の保護透明板、ランプ、ライト等の照明物品及びその照明部材、熱交換機等の冷却フィン、化粧品容器及びその容器材、反射フィルム、反射板等の反射材、高速道路等に設置される遮音板の被膜として用いることができる。
【0078】
また本発明の重合体は、フォトレジスト、およびインクジェット記録版等の記録印刷材料に添加して用いることもできる。
これらの用途において、本発明の重合体は、親水性を付与でき、好適には、防曇性、防滴性、防汚性、あるいは速乾性を付与できる。また、好適には、結露防止性あるいは、帯電防止性を付与できる。
また、シート、フィルム、テープ、透明樹脂、及びガラス等の一般的な材料を本発明の重合体で被覆して、上記性能を付与できる。その他にも、本発明の重合体を含む組成物、あるいは本発明の化合物を含む重合性組成物をプライマーとして使用することもできる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、本発明において重合体の物性評価は下記の方法で行った。
<水接触角の測定>
水接触角の測定は、協和界面科学社製CA−V型を用いて、室温(25℃)にて測定した。
【0080】
<防曇性試験>
図1に示すように、ヒーター(3)で85℃にコントロールされた熱水浴(2)上に、空間(4)を介してコーティング面を下向きにして試験体(1)を置き、曇るか曇らないかを目視にて観察した。評価は、
・3分間以上曇らなかった場合を〇
・3分間未満で曇った場合を×
とした。
【0081】
<防汚性(セルフクリーニング)試験>
外気疎水性物質の疑似物質として、モーターオイル(新日本石油,API SL 10W−30)80.0gと粉末活性炭(和光純薬,試薬特級)10.0gからなる混合物(以後、「汚染物質」と略記する。)を調製した。この汚染物質を試験体の表面に約2ml滴下し、汚染物質を試験体表面に広げた後、160ml/secのシャワー水(噴出し圧力1.2Kgf/cm2)を10秒間当て、目視にて汚染状態を判定した。
【0082】
・試験シート表面に汚染物質の付着がほとんどなくなっていた場合を(〇)
・僅かに付着して残っていた場合を(△)
・明らかに付着して残っていた場合を(×)
とした。
【0083】
<速乾性試験>
横置きにしたポリカーボネートシート(三菱エンジニアリングプラスチック,「ユーピロンサンガード」,厚さ2mm,水接触角84°)、および該シートに本発明の重合体を被覆した試験片に、純水10μlを滴下し、表面に付着した水滴が乾燥するまでの時間を測定した。
【0084】
尚、測定室の室温は21℃、湿度は40%RHであった。
<密着性>
JIS K−5400 碁盤目テープ法により評価した。
【0085】
<表面硬度>
JIS K−5400 鉛筆引っかき試験により評価した。
<防滴性試験>
防曇試験と同様な試験装置(図1)を用い、ヒーター(3)で45℃にコントロールされた温水浴(2)上に、空間(4)を介してコーティング面を下向きにして試験体(1)を置き、水滴が付着するまでの時間、もしくは曇るまでの時間を測定した。
【0086】
[実施例1]
(中間体1の合成)
反応フラスコに2.2.−ジメチロール−プロピオン酸67.1g(0.50モル)、
安定剤4−メトキシフェノール0.91g、および溶剤N,N−ジメチルアセトアミド(以後「DMAC」と略す。)174.2g(2.00モル)を装入する。
【0087】
混合攪拌しながら内温50℃でアクリル酸クロライド90.5g(1.0モル)を滴下し、70℃で6時間保持する。
室温まで冷却後、酢酸エチル200gと蒸留水200gを加えてよく攪拌し、静置する。分離した水層(下)を廃棄し、残った有機層(上)を40℃で減圧濃縮し、中間体1である2,2,−ビス(アクリロイルオキシメチル)プロピオン酸103.3g(純度77%,収率66%)を得た。
【0088】
(SPDA−Kの合成)
反応フラスコに、純度77%の2,2,−ビス(アクリロイルオキシメチル)プロピオン酸15.7g(0.05モル)、安定剤4−メトキシフェノール0.16g、プロパンスルトン6.1g(0.05モル)、およびメタノール50.0gを装入する。
【0089】
混合攪拌しながら内温50℃で炭酸カリウム6.9g(0.05モル)を分割装入し、50℃で10時間保持する。
結晶が析出しない程度まで減圧濃縮した反応液を、イソプロピルアルコール200g中へ滴下し、生成した結晶を濾別する。
【0090】
この結晶を蒸留水200gに溶解し、クロロホルム200gを加えてよく混合攪拌し、静置後、下層のクロロホルム層を分液廃棄する。
残った水層を再度結晶が析出しない程度まで40℃で減圧濃縮し、上記と同様にイソプロピルアルコールで晶析し、結晶を濾別する。
【0091】
この結晶を40℃で減圧乾燥し(24時間)、純度85%の2,2−ビス(アクリロイルオキシメチル)プロピオン酸−3−スルホプロピルエステル カリウム塩(以後「SPDA−K」と略す)16.8g(収率71%)を得た。
得られたSPDAのNMRデータを図2に示す。
【0092】
[実施例2]
(SPDA−Naの合成)
反応フラスコに、純度77%の2,2,−ビス(アクリロイルオキシメチル)プロピオン酸31.5g(0.10モル)、安定剤4−メトキシフェノール0.32g、プロパンスルトン12.2g(0.10モル)、およびメタノール50.0gを装入する。
【0093】
混合攪拌しながら内温50℃で炭酸ナトリウム5.3g(0.05モル)を分割装入し、50℃で6時間保持する。
得られた反応液を、結晶が出ない程度まで35℃以下で減圧濃縮し、イソプロピルアルコール200g中へ滴下して生成した結晶を濾別した。
【0094】
この結晶を40℃で減圧乾燥し、純度72%の2,2−ビス(アクリロイルオキシメチル)プロピオン酸−3−スルホプロピルエステル ナトリウム塩(以後「SPDA−Na」と略す)12.2g(収率23%)を得た。
【0095】
[実施例3]
純度85%のSPDA−K3.0gにメタノール10.0g、メトキシエタノール20.0g、および重合開始剤としてKTO−46(ランベルティー社製)0.09g(3質量%対SPDA−K)を加えて混合溶解し、重合性組成物を調製した(固形分9%)。
【0096】
厚さ2mmのポリカーボネート製シート(以後、「PCシート」と略記する。水接触角84°)の表面に、上記の組成物をバーコーターで塗布し、ドライヤーにて乾燥後、強度6600mW/cm2の紫外線(無電極放電ランプ・Dバルブ,フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社,320−390nm)を照射して硬化させ、PCシート上に重合体からなる厚さ3μmの被膜を形成させた。
【0097】
得られた被膜は透明で水接触角は13°であった。結果を表1に示す。
[実施例4]
純度85%のSPDA−K3.0gに化合物(B)として80−MFA7.8g、メタノール2.8g、メトキシエタノール8.0g、および重合開始剤としてKTO−46(ランベルティー社製)0.32g(3質量%)を加えて混合溶解し、重合性組成物を調製した(固形分51%)。
【0098】
この重合性組成物を実施例1と同様に施工し、PCシート上に重合体からなる厚さ3μmの被膜を形成させた。
結果を表1に示す。
【0099】
[実施例5〜7および比較例1〜4]
配合を変更して実施例4と同様に重合性組成物を調製して被膜を形成し試験をした。結果を表1および表2に示す。
【0100】
[比較例5]
実施例および比較例で使用したPCシートそのものについて試験を行った。結果を表2に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【化4】

【0104】
【化5】

【0105】
【化6】

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】防曇性試験または防滴性試験の方法を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の化合物のNMRチャートである。
【符号の説明】
【0107】
1;試験体
2;熱水(85℃)または温水(45℃)
3;ヒーター
4;空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】

(上記式(1)中、R1およびR2は水素原子またはメチル基、R3は水素原子または炭素
数1〜6のアルキル基を表す。Mは水素原子またはアルカリ金属を表す。nは1〜10の
整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物(A)を重合して得られる重合体。
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物(A)と、化合物(A)を除く1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)とを共重合して得られる重合体。
【請求項4】
水接触角が30°以下である請求項2または3に記載の重合体。
【請求項5】
請求項2または3に記載の重合体からなる親水被膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−73923(P2009−73923A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243958(P2007−243958)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】