説明

親水性塗膜の形成方法、及び親水性塗膜

【課題】親水性が高く、耐クラック性に優れ、作業環境の影響を受けにくく膜厚や物性の均一性に優れた親水性塗膜の形成方法を提供する。
【解決手段】基材表面の汚染物質をガラスコンパウンド及び/又はメラミン樹脂スポンジで除去する第一の工程と、(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子、(B)重合体粒子を含むコーティング組成物を、前記基材上に塗布し、その後、乾燥する第二の工程とを含む親水性塗膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性塗膜の形成方法、及び親水性塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な温暖化現象により環境に対する意識が高まり、炭酸ガス等の温暖化ガスを発生しない新しいエネルギーシステムが関心を集めている。
例えば、太陽電池発電や風力発電等の環境に優しい再生可能なエネルギーは、炭酸ガス等の温暖化を誘発すると言われているガスを排出しないため、クリーンなエネルギーとして研究開発が盛んに行われている。特に、太陽電池や太陽熱発電は、安全性や取り扱い性に優れていることから、注目を浴びている。
【0003】
代表的な太陽熱発電方法として、集中方式(中央タワー式)、分散方式(パラボリックトラフ)、ディッシュ/スターリング方式がある。
これらの方式は太陽光を反射鏡によって一部分に集光し、その集光熱によって熱電変換により電気エネルギーを得る方式である。そのため、これらの方式では、効率良く電気エネルギーを得るためには、集光効率を高めることが重要であるが、集光効率を大きく左右する要因として、反射鏡の汚れによる反射率の低下が特に問題になっている。また同様に、ガラスや耐候性樹脂フィルム等からなる保護カバーによって受光面が保護されている太陽電池も当該保護カバーが長期間の使用中に煤塵で汚れるため、光透過率が低下し、太陽電池のエネルギー変換効率の低下を招来するという問題がある。
【0004】
受光面の表面の汚れを防止する技術として、例えば特許文献1には、アナターゼ型酸化チタン含有層上に、アンモニア水に溶解させたタングステン酸と蒸留水とを加えたコーティング液を塗布し、700℃で焼付け処理を施して酸化タングステンからなる層を形成して、表面層を形成する技術が開示されている。また、無機成分だけでなく、有機成分も配合することで、防汚性等を向上させようとする試みも行われている。
しかしながら、このようなコーティングは実験室レベルでは十分性能を発揮することが可能であるが、実用レベルにおける大判サイズの塗装で性能を十分に発揮することは容易ではない。
【0005】
また、特許文献2には、光触媒性塗膜を形成する方法として、塗液吐出ノズルの先端口径が0.5〜3.0mmである塗装機を用い、バインダ成分と光触媒と溶媒とを含有する塗液を基材に塗布し乾燥して、基材の表面に、光触媒を含有する塗膜を形成する方法が提案されている。また、塗膜形成の前処理として、表面の汚染物質を除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−114545号公報
【特許文献2】特開2008−100122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載されている技術によると、膜形成塗液に無機成分のみが配合されているため、太陽電池モジュール、大型反射鏡等の表面に塗膜を形成した場合にクラックが生じ易く剥がれ易いという問題がある。
また、従来の汚染物質の除去方法では、十分に汚れを洗浄しきれず、濡れ性のバラツキが発生し、膜厚や物性の均一性が十分ではないという問題がある。さらには、前洗浄に使用する洗浄剤残りによる塗膜への影響が発生するという問題もある。
【0008】
本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、親水性が高く、厚膜形成時の耐クラック性に優れ、作業環境の影響を受けにくく、膜厚や物性の均一性に優れた親水性塗膜を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
基材表面の汚染物質を、所定の材料を用いて除去する第一の工程と、
(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子、(B)重合体粒子を含むコーティング組成物を前記基材上に塗布し、その後に乾燥する第二の工程と、
を、含む形成方法により得られる親水性塗膜が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
〔1〕
基材表面の汚染物質をガラスコンパウンド及び/又はメラミン樹脂スポンジで除去する第一の工程と、
(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子、(B)重合体粒子を含むコーティング組成物を、前記基材上に塗布し、その後、乾燥する第二の工程と、
を含む、
親水性塗膜の形成方法。
〔2〕
前記第一の工程の後、前記第二の工程の前に、前記基材表面を、沸点100℃以下のアルコール及び/又は精製水で洗浄する工程を行う、前記〔1〕に記載の親水性塗膜の形成方法。
〔3〕
前記(B)重合体粒子が、
(b1)成分:加水分解性珪素化合物と、
(b2)成分:ビニル単量体と、
(b3)成分:乳化剤と、
(b4)成分:水と、
を含む重合原液中で、前記(b1)成分と前記(b2)成分とを重合して得られる重合体エマルジョン粒子であり、
前記(B)重合体粒子の数平均粒子径が10nm〜800nmである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の親水性塗膜の形成方法。
〔4〕
前記(B)重合体粒子は、水相成分の含有率が15質量%以下である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の親水性塗膜の形成方法。
〔5〕
前記コーティング組成物が、加水分解性珪素含有化合物(C)をさらに含む前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の親水性塗膜の形成方法。
〔6〕
前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の親水性塗膜の形成方法によって得られる親水性塗膜。
〔7〕
前記〔6〕に記載の親水性塗膜を具備する太陽電池モジュール。
〔8〕
前記〔6〕に記載の親水性塗膜を具備するリフレクター装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、親水性が高く、耐クラック性に優れ、作業環境の影響を受けにくく膜厚や物性の均一性に優れた親水性塗膜の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】太陽電池モジュールの一例の概略断面図を示す。
【図2】リフレクター装置の一例の概略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応するメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応するメタクリロイル」を意味する。
【0015】
〔親水性塗膜の形成方法〕
本実施形態の親水性塗膜の形成方法は、
基材表面の汚染物質をガラスコンパウンド及び/又はメラミン樹脂スポンジで除去する第一の工程と、
(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子、(B)重合体粒子を含むコーティング組成物を、基材上に塗布し、その後、乾燥する第二の工程と、
を含む。
当該形成方法によれば、親水性が高く、かつ厚膜を形成した時の耐クラック性にも優れ、さらには作業環境の影響を受けにくく、均一な膜厚と物性を有する親水性塗膜を得ることができる。
親水性は23℃における表面の水接触角で表わすことができる。表面の水接触角とは、乾燥された塗膜と、その表面に存在する水滴の接線とのなす角度をいい、液滴法によって測定できる。
なお、「親水性」とは、測定対象物の表面に対する水(23℃)の接触角が、好ましくは60度以下、より好ましくは30度以下、さらに好ましくは20度以下になることを意味する。
【0016】
なお、本明細書中において、「塗膜」は、連続膜に限定されるものではなく、不連続膜、島状分散膜等の態様であっても構わない。
【0017】
〔第一の工程〕
本実施形態の親水性塗膜の形成方法の第一の工程においては、基材表面の汚染物質をガラスコンパウンド及び/又はメラミン樹脂スポンジで除去する。
(基材)
基材としては、特に限定されず、具体的には、ガラス基板、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン(共)重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる樹脂フィルム等が好ましく、これらの中でも、耐候性、耐衝撃性、コストのバランスの観点からガラス基板がより好ましい。
ガラス基板を用いる場合には、波長350〜1400nmの光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。かかるガラス基板としては赤外部の吸収の少ない白板ガラスを使用するのが一般的であるが、青板ガラスであっても厚さが3mm以下であれば、最終的に得られる親水性塗膜を形成した基材を太陽電池モジュールにしようする場合、太陽電池モジュールの出力特性への影響は通常少ない。また、ガラス基板の機械的強度を高めるために熱処理により強化ガラスを得ることができるが、熱処理無しのフロート板ガラスを用いてもよい。
【0018】
(ガラスコンパウンド)
ガラスコンパウンドとしては、酸化セリウム、二酸化珪素等の酸化物粒子が使用できる。
好ましい粒子径は0.01μm〜100μm、0.1μm〜10μmがより好ましい。
粒子径が小さいと研磨効率が悪く、粒子径が大きいと基材表面が傷ついた場合に透過率が低下して好ましくない。
【0019】
(メラミン樹脂スポンジ)
メラミン樹脂スポンジは、基材の表面を傷めることが少なく、汚染物質の除去性にも優れるため好ましい。上記方法で汚染物質の除去を行った後、コーティング組成物を塗布すると、塗膜の接着強度を高めることができ、面方向の物性のばらつきが少ない均一な塗膜が得られる。
【0020】
前記メラミン樹脂スポンジとしては、内部に細かい穴が無数にあいた柔らかいものを使用することが好ましい。このようなメラミン樹脂スポンジは、少量の水を含ませると消しゴムのように表面を磨耗しながら汚れを除去できる。また、このようなメラミン樹脂スポンジとガラスコンパウンドを併用する場合、ガラスコンパウンドの粉末が飛散せず、基材の表面の傷つきも少なくすることができるため好ましい。
また、メラミン樹脂スポンジは乾燥した状態で使用しても、少量の水やアルコールとの混合溶媒を含んだ状態で使用してもよい。
第一の工程においては、他の除去方法、たとえばサンダーによる研磨、酸、アルカリの少なくとも一種を選択し、洗浄処理を併用してもよい。
【0021】
〔第一の工程〕後、後述する〔第二の工程〕の前に、基材の表面に残留する油分の除去、界面活性剤の除去、基材表面の乾燥を促進する目的から、沸点が100℃以下のアルコール及び/又は精製水で洗浄することが好ましい。
使用する沸点100℃以下のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、工業用アルコールが挙げられる。特に価格の面と安全性の面から工業用アルコールのソルミックス、プリントエース、クリンソルブ(以上、日本アルコール販売)が好ましい。
【0022】
また、上述した〔第一の工程〕における洗浄処理、さらには必要に応じて前記アルコール及び/又は精製水での洗浄処理の後、そのままの状態の基材に、後述する〔第二の工程〕においてコーティング組成物を塗布することもできるが、基材の表面に予めプライマー処理やシーラー処理を施したり、下塗り層、中塗り層を形成したりした後、塗装してもよい。
【0023】
〔第二の工程〕
本実施形態の親水性塗膜の形成方法においては、上述した〔第一の工程〕の後、(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子、(B)重合体粒子を含むコーティング組成物を基材上に塗布し、その後に乾燥処理を行う。
【0024】
(コーティング組成物)
コーティング組成物は、(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子(以下、単に(A)成分と記載する場合もある。)と(B)重合体粒子(以下、単に(B)成分と記載する場合もある。)を含む。
(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子、(B)重合体粒子を含むコーティング組成物を用いることにより、厚膜時のクラック防止性や、基材との密着性が高い塗膜が得られる。
【0025】
<(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子>
コーティング組成物は、(A)成分:数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子を含む。これにより、透明性及び親水性が高い塗膜が得られる。
(A)成分は、(B)成分と相互作用することにより、(B)成分の硬化剤として作用すると考えられる(ただし、作用はこれに限定されない)。当該相互作用としては、特に限定されないが、例えば(A)成分が一般に有する官能基(例えば水酸基等)と、(B)成分が有する官能基(例えば水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、及びエーテル基等)との水素結合、(A)成分が一般に有する官能基と、(B)成分との化学結合(例えば縮合)等を例示することができる。
【0026】
(A)成分の数平均粒子径(一次粒子と二次粒子との混合物であってもよく、一次粒子及び二次粒子のいずれか一方のみであってもよい。)は、1nm〜400nmであり、好ましくは1nm〜100nm、より好ましくは3nm〜80nmであり、さらに好ましくは5nm〜50nmである。
(A)成分の数平均粒子径を上記範囲とすることで、得られる塗膜や積層体等の光学特性等に寄与し得る。特に、その数平均粒子径を100nm以下とすることは、得られる塗膜や積層体の光線透過率を大きく向上させ得る。
なお、(A)成分の数平均粒子径(以下、単に「粒子径」と略記することがある。)は、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
【0027】
(A)成分として用いられる金属酸化物は、特に限定されず、公知のものを用いることもできるが、後述する(B)成分との相互作用の観点から、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
これらの中でも、表面水酸基が多く、後述する(B)成分との相互作用が特に強いという観点から、二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモン、及びそれらの複合酸化物からなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
後述する塗膜とした際に、表面水酸基の多い(A)成分が連続相を形成することができるため、塗膜表面の水酸基密度が高くなり、それ自身の親水性も高くなるため、前記二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモンがより好ましい。(A)成分の金属酸化物粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(A)成分の金属酸化物粒子が存在する形態としては、特に限定されず、例えば粉体、分散液、ゾル等が挙げられる。
ここでいう「分散液」及び「ゾル」とは、(A)成分が、水、親水性有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒中に0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%の濃度で、一次粒子あるいは二次粒子の少なくとも一方として分散された状態を意味する。
【0029】
(A)成分の金属酸化物粒子を「分散液」又は「ゾル」とするための親水性有機溶媒としては、例えばエチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド及びニトロベンゼン、並びに、これらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0030】
コーティング組成物あるいは塗膜に付与したい性質等に応じて、適宜好適なものを(A)成分として選択できる。
コーティング組成物あるいは塗膜に付与したい性質等としては、例えば反射防止性、耐溶剤性、帯電防止性、耐熱性、ハードコート性、光触媒活性等が挙げられる。所望の性質に応じて、(A)成分の材料、含有量、さらには数平均粒子径等の物性等について好適なものを選択できる。
【0031】
さらに、特定の性能の効果を高めたい場合や、コーティング組成物に複数の性能を付与したい場合には、(A)成分として2種以上の金属酸化物粒子を併用することもできる。かかる観点から(A)成分の代表的なものとして、(A1)シリカ、(A2)光触媒、(A3)導電性金属酸化物等の粒子が挙げられる。以下、これらについて説明する。
[(A1)シリカ]
(A1)成分のシリカ(いわゆる二酸化珪素)の粒子に関しては、その製法は特に限定されず、沈殿法、乾式法等によって製造できる。
取り扱い性の観点から、コロイダルシリカの状態で存在することがより好ましい。
(A1)成分がコロイダルシリカの状態で存在する場合には、ゾル−ゲル法で調製したものを使用することができ、市販品を利用することもできる。
コロイダルシリカをゾル−ゲル法で調製する場合、Werner Stober et al;J.Colloid and Interface Sci.,26,62−69(1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6,792−801(1990)、色材協会誌,61[9]488−493(1988)等に記載の方法を参照して調製することができる。
【0032】
コロイダルシリカは、二酸化珪素を基本単位とするシリカの水又は水溶性溶媒の分散体であり、そのシリカ粒子の数平均粒子径は、好ましくは1nm〜400nmであり、より好ましくは1nm〜200nm、さらに好ましくは1nm〜100nm、さらにより好ましくは5nm〜30nmである。
数平均粒子径が1nm以上であれば、塗膜や後述するコーティング組成物の貯蔵安定性がより良好であり、100nm以下であると、塗膜の透明性がより良好となる。
上記範囲の粒子径のシリカ粒子を有するコロイダルシリカは、水性分散液の状態で、酸性及び塩基性のいずれであっても用いることができ、コーティング組成物において共に混合する後述する(B)成分の水性分散体の安定領域に応じて、そのpHを適宜選択することができる。
【0033】
水を分散媒体とする酸性のコロイダルシリカとしては、例えば市販品として日産化学工業社製のスノーテックス(商標)−O、スノーテックス−OS、スノーテックス−OL、旭電化工業社製のアデライト(商標)AT−20Q、クラリアントジャパン社製のクレボゾール(商標)20H12、クレボゾール30CAL25等が挙げられる。
【0034】
塩基性のコロイダルシリカとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又はアミンの添加で安定化したシリカ等が挙げられる。
具体的には、市販品として日産化学工業社製のスノーテックス−20、スノーテックス−30、スノーテックス−C、スノーテックス−C30、スノーテックス−CM40、スノーテックス−N、スノーテックス−N30、スノーテックス−K、スノーテックス−XL、スノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、スノーテックスPS−M、スノーテックスPS−L等、旭電化工業社製のアデライトAT−20、アデライトAT−30、アデライトAT−20N、アデライトAT−30N、アデライトAT−20A、アデライトAT−30A、アデライトAT−40、アデライトAT−50等、クラリアントジャパン社製のクレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50、デュポン社製のルドックス(商標)HS−40、ルドックスHS−30、ルドックスLS、ルドックスSM−30等が挙げられる。
【0035】
前記水溶性溶剤を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、例えば市販品として、日産化学工業社製のMA−ST−M(数平均粒子径が20nm〜25nmのメタノール分散タイプ)、IPA−ST(数平均粒子径が10nm〜15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG−ST(数平均粒子径が10nm〜15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EG−ST−ZL(数平均粒子径が70nm〜100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC−ST(数平均粒子径が10nm〜15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)等が挙げられる。
【0036】
コロイダルシリカは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分の金属酸化物粒子が、(A1)シリカ、特にコロイダルシリカを主成分とする場合、少量成分として、アルミナ、アルミン酸ナトリウム等を含んでいてもよい。
また、コロイダルシリカには、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等)や有機塩基(テトラメチルアンモニウム等)が共存してもよい。
ここで、主成分とは、金属酸化物粒子中に50質量%以上、好ましくは70質量%以上含有されている成分のことをいう。
【0037】
[(A2)光触媒]
(A2)光触媒の粒子とは、光照射により光触媒活性及び親水性の少なくとも一方を発現する化合物(以下、単に「光触媒」と略記することがある。)の粒子をいう。
(A)成分として、光照射により光触媒活性を発現する化合物の粒子を用いる場合、得られる塗膜の表面は、汚染有機物質の分解活性(有機物分解性)や耐汚染性に優れたものとなる。
【0038】
(A2)光触媒としては、例えばTiO2、ZnO、SrTiO3、BaTiO3、BaTiO4、BaTi49、K2NbO3、Nb25、Fe23、Ta25、K3Ta3Si23、WO3、SnO2、Bi23、BiVO4、NiO、Cu2O、RuO2、CeO2、さらにはTi、Nb、Ta、及びVからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)を挙げることができる。
これらの光触媒の中でもTiO2(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとして、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれも使用できる。
【0039】
[(A3)導電性金属酸化物]
また、得られるコーティング組成物の帯電防止性能等を発現する観点から、(A3)成分として、導電性を有する金属酸化物(導電性金属酸化物)の粒子を用いることができる。
このような導電性を有する金属酸化物としては、例えば錫をドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。
また、後述する(B)成分との相互作用の観点から、例えば、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化セリウム等を併用することもできる。
【0040】
(A)成分は、(A1)成分:数平均粒子径が1nm〜400nmのシリカ粒子と、(A2)成分:数平均粒子径が1nm〜2000nmの光触媒粒子と、を含むことが好ましい。
(A1)成分は後述する(B)成分と相互作用しながら(B)成分の粒子間に連続相を形成して存在することができる。この結果、塗膜の最表面には親水性の高いシリカ粒子が存在することになるため、光の照射に無関係に塗膜形成直後から高い親水性が得られると共に、透明性、耐候性がより向上し得る。この場合、後述する(B)成分の含有量に対する(A1)成分と(A2)成分との総含有量の質量比((A1+A2)/(B))が、60/100〜480/100であり、(A1)成分と(A2)成分との総含有量に対する(A1)成分の含有量の質量比((A1)/(A1+A2))が、85/100〜99/100であることがより好ましい。
【0041】
<(B)重合体粒子>
コーティング組成物は、(B)重合体粒子を含む。
当該(B)成分は、不飽和結合を有する単量体成分を、ラジカル、カチオン及びアニオン等の介在によって重合することにより得られる高分子の粒子である。
コーティング組成物中において、(B)重合体粒子は、前記(A)成分に囲まれて存在していることが好ましい。
(B)重合体粒子は、媒体中に分散したエマルジョン粒子、ディスパージョン粒子や不均一に分散したスラリー粒子等のいずれでもよく、エマルジョン粒子であることが好ましい。エマルジョン粒子であることにより、後述する塗膜とした場合に(A)成分と(B)成分とにより海島構造を形成することができる。海島構造を形成することで塗膜最表面に金属酸化物が局在化し、金属酸化物の水酸基等の親水基によって良好な親水性を発現できる。エマルジョン粒子としては、特に限定されず、例えばアクリルエマルジョン粒子、スチレンエマルジョン粒子、アクリルスチレンエマルジョン粒子、アクリルシリコンエマルジョン粒子、シリコンエマルジョン粒子、フッ素樹脂エマルジョン粒子等が挙げられる。
【0042】
(B)成分は、
(b1)成分:加水分解性珪素化合物と、
(b2)成分:ビニル単量体と、
(b3)成分:乳化剤と、
(b4)成分:水と、
を、含む重合原液中で、(b1)成分及び(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子であることがより好ましい。
(B)成分が前記(b1)成分と(b2)成分とを重合することによって複合化された状態でコーティング組成物中に含有されていることにより、後述する(C)加水分解性珪素化合物が(B)成分の表面に比較的安定に表面吸着するか、あるいは粒子間への架橋が生じる、すなわち(B)成分同士を(C)成分がつないだ状態になるために好ましい。
このようにして得られる(B)成分としては、(b1)成分に由来する水酸基と(b2)成分の重合生成物とが、水素結合等により複合化されたものを好適に用いることができる。
【0043】
前記(b1)成分としては、例えば下記式(1)で表される化合物やその縮合生成物、シランカップリング剤等が挙げられる。
SiWxy ・・・(1)
式(1)中、Wは炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。
Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び、置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。
xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。また、x+y=4である。
【0044】
前記シランカップリング剤とは、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在するシラン誘導体を意味する。
【0045】
前記式(1)で表される化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
また、(b1)成分としては、フェニル基を有する珪素アルコキシド(例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等)を用いることができる。
フェニル基を有する珪素アルコキシドを用いた場合、水及び乳化剤の存在下における(b1)成分及び(b2)成分の重合安定性が良好となり好適である。
【0047】
前記(b1)成分は、チオール基を有するシランカップリング剤や、(b1−1)成分:ビニル重合性基を有する加水分解性珪素化合物を含んでもよい。
これらを(b1)成分中に含有させた場合、得られる塗膜の長期防汚染性が良好となり好適である。
【0048】
チオール基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0049】
前記(b1−1)成分としては、例えば、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0050】
上述したシランカップリング剤はいずれも、後述する(b2)成分との共重合又は連鎖移動反応により化学結合を生成し得る。
このため、ビニル重合性基やチオール基を有するシランカップリング剤を上述した他の(b1)成分と混合若しくは複合化させて用いた場合、(b1)成分の重合生成物と後述する(b2)成分の重合生成物とを化学結合により複合化し得る。
【0051】
前記(b1−1)成分における「ビニル重合性基」としては、例えばビニル基、アリル基等が挙げられ、これらの中でも3−(メタ)アクリルオキシプロピル基が好ましい。
【0052】
前記(b1)成分は、(b1−2)成分:環状シロキサンオリゴマーを含んでいてもよい。当該(b1−2)成分を用いた場合、得られる塗膜の柔軟性がより良好となり好適である。
【0053】
前記(b1−2)成分:環状シロキサンオリゴマーとしては、下記式(2)で表される化合物を例示することができる。
(R’2SiO)m ・・・(2)
ここで、式(2)中、R’は、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基、からなる群より選ばれる少なくとも1種を示す。
mは整数であり、2≦m≦20である。
中でも、反応性等の点からオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
【0054】
(b1)成分として、前記式(1)で表される化合物の縮合生成物を用いる場合、当該縮合生成物のポリスチレン換算の重量平均分子量(GPC法による)は、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜1000である。
【0055】
上述した各種(b1)成分は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上述した(B)成分全体に対する(b1)成分の含有量の質量比((b1)/(B))は、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100〜80/100、より好ましくは0.1/100〜70/100である。
【0057】
また、上述した(B)成分全体に対する(b1−1)成分の含有量の質量比((b1−1)/(B))は、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100〜20/100、より好ましくは0.5/100〜10/100である。
さらに、下記において詳細に説明する(b2)成分の含有量に対する(b1−1)成分の含有量の質量比((b1−1)/(b2))は、重合安定性の観点から、好ましくは0.1/100〜100/100、より好ましくは0.5/100〜50/100である。
【0058】
さらにまた、(B)成分全体に対する(b1−2)成分の含有量の質量比((b1−2)/(B))(質量比)は、親水性の観点から、好ましくは0.01/100〜20/100、より好ましくは0.5/100〜5/100である。
またさらに、下記において詳細に説明する(b2)成分の含有量に対する(b1−2)成分の含有量の質量比((b1−2)/(b2))は、重合安定性の観点から、好ましくは0.5/100〜50/100、より好ましくは1.0/100〜20/100である。
【0059】
(B)成分の重合成分である(b2)成分は、ビニル単量体である。
(b2)成分としては、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、及びエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニル単量体であることが好ましい。
かかる官能基を有するビニル単量体であることにより、(B)成分以外の他の成分(例えば(A)成分の金属酸化物等)が有する官能基と化学結合(例えば縮合等)することが容易となり、相互作用を高めることができる。
【0060】
(b2)成分として挙げられる水酸基含有ビニル単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート若しくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのような各種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル若しくは4−ヒドロキシブチルビニルエーテルのような各種の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテルのような各種の水酸基含有アリルエーテル類;ポリエチレングリコールに代表される種々のポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリル酸に代表される種々の不飽和カルボン酸とから得られるポリオキシアルキレングリコールのモノエステル類;上述の各種の水酸基含有単量体類とε−カプロラクトンに代表される種々のラクトン類との付加物;グリシジル(メタ)アクリレートに代表される種々のエポキシ基含有不飽和単量体と酢酸に代表される種々の酸類との付加物;(メタ)アクリル酸に代表される種々の不飽和カルボン酸類と「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)に代表されるα−オレフィンのエポキサイド以外の種々のモノエポキシ化合物との付加物等が挙げられる。
【0061】
(b2)成分として挙げられるカルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸若しくはフマル酸のような各種の不飽和カルボン酸類;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチルのような不飽和ジカルボン酸類と飽和1価アルコール類とのモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニル若しくはコハク酸モノビニルのような各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸若しくは無水トリメリット酸のような各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と上述の各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物;上述の各種のカルボキシル基含有単量体類とラクトン類とを付加反応して得られる単量体類等が挙げられる。
【0062】
(b2)成分として挙げられるアミノ基含有ビニル単量体としては、例えば、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート若しくはN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンのような各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルキノリンのような各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミド若しくはN−[2−(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリンのような各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミド若しくはN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドのような各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル若しくは4−ジメチルアミノブチルビニルエーテルのような各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0063】
(b2)成分として挙げられるエーテル基含有ビニル単量体としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体のような各種のポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル類、アリルエーテル類又は(メタ)アクリル酸エステル類のビニル単量体類が挙げられる。エーテル基含有ビニル単量体は市販品を用いることもでき、例えばブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、AE−350(以上、日本油脂社製、商品名)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤社製、商品名)等が挙げられる。ここで、ポリオキシエチレン鎖のオキシエチレン単位の数は2〜30が好ましい。2未満では、塗膜の柔軟性が不充分となる傾向にあり、30を超えると、塗膜が軟らかくなり、耐ブロッキング性に劣る傾向にある。
【0064】
(b2)成分として挙げられるアミド基含有ビニル単量体としては、例えば、N−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミドを例示することができる。
より具体的には、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
【0065】
前記(b2)成分としては、他成分との水素結合性をより向上させる観点から、2級アミド基、3級アミド基あるいはその両方を有するビニル単量体であることが好ましい。特に水素結合力の観点から3級アミド基を有するビニル単量体が好ましい。
上述した(b2)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
(B)成分全体に対する(b2)成分の含有量の質量比((b2)/(B))は、重合安定性の観点から、0.01/100〜99/100、好ましくは0.1/100〜60/100、より好ましく0.5/100〜50/100である。
【0067】
また、上述した(A1)シリカの、コーティング組成物中における含有量に対する、(b2)成分のコーティング組成物中の含有量の質量比((b2)/(A1))は、(A1)成分との水素結合性や配合安定性の観点から0.0001/100〜90/100であることが好ましく、より好ましくは0.001/100〜50/100、さらに好ましくは0.2/1〜25/100である。
【0068】
(B)重合体粒子を重合するための重合原液中に含有されている(b3)成分としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤、酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
前記(b3)成分としては、得られる(B)成分の水分散安定性を向上させる観点、及び、得られる塗膜の長期防汚染性を向上させる観点から、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を用いることが好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体、及びそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、並びに、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体等が挙げられる。
【0070】
前記スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、ナフチル基、及びコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物;スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物等が挙げられる。
【0071】
前記硫酸エステル基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、及びナフチル基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物等が挙げられる。
【0072】
前記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物としては、例えば、アリルスルホコハク酸塩等が挙げられる。より詳しくは、例えば、エレミノールJS−2(三洋化成社製、商品名)、ラテムルS−120、S−180A又はS−180(花王社製、商品名)等が挙げられる。
【0073】
スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物としては、例えば、アクアロンHS−10又はKH−1025(第一工業製薬社製、商品名)、アデカリアソープSE−1025N又はSR−1025(旭電化工業社製、商品名)等が挙げられる。
【0074】
ノニオン基を有するビニル単量体としては、例えば、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業社製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業社製)が挙げられる。
上述した(b3)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
(b3)成分の使用量は、重合安定性の観点から、(B)成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.001〜5質量部である。
【0076】
コーティング組成物を構成する(B)成分は、上述の(b1)〜(b3)の各成分、及び(b4)成分(すなわち水)を含む重合原液中で、(b1)成分及び(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子であることが好ましい。(b4)成分の使用量は、重合安定性の観点から、重合原液中の含有率として好ましくは30〜99.9質量%である。
【0077】
前記重合原液には、(b1)〜(b4)成分に加え、更に種々の成分を混合することができる。まず、前記重合原液には、(b5)成分:(b2)成分と共重合可能な他のビニル単量体をさらに混合することが好ましい。このような(b5)成分を用いることは、生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、(b1)成分である加水分解性珪素化合物の重合生成物との相溶性等)を制御する観点から好適である。
【0078】
(b5)成分としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体のような官能基を含有する単量体等が挙げられる。
上述した(b5)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
(b5)成分が全ビニル単量体((b2)+(b5))中に占める割合としては、好ましくは0.001〜30質量%であり、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲である。(b5)成分をこの範囲で用いることは、ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、(b1)成分である加水分解性珪素化合物の重合生成物との相溶性等を制御する観点から好適である。
【0080】
(B)重合体粒子を重合するための前記重合原液には、連鎖移動剤を混合することができる。
連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンのような芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸のようなチオカルボン酸又はそれらの塩若しくはそれらのアルキルエステル類、又はポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド及びチオグリコール、α−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
これら連鎖移動剤の使用量は、全ビニル単量体((b2)+(b5))の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。連鎖移動剤をこの範囲で用いることは、重合安定性の観点から好適である。
【0082】
さらに、(B)重合体粒子を重合するための前記重合原液には、分散安定剤を混合することができる。
分散安定剤としては、特に限定されず、例えば、ポリカルボン酸及びスルホン酸塩からなる群より選ばれる各種の水溶性オリゴマー類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性又は水分散性アクリル樹脂等の合成又は天然の水溶性又は水分散性の各種高分子物質等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
分散安定剤の使用量は、(B)成分の重合体エマルジョン粒子100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.001〜5質量部である。
【0084】
上述の(B)重合体粒子の重合原液の重合は、重合触媒の存在下で実施することが好ましい。
前記重合触媒は、(b1)成分の加水分解と縮合を促進し、このような(b1)成分の重合触媒としては、例えば、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類;酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類;硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類;酸性又は弱酸性の無機塩;フタル酸、リン酸、硝酸のような酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのような塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫化合物等が挙げられる。
これらの中でも、(b1)成分である加水分解性珪素化合物の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としての作用を有する酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)等が好ましい。
(b1)成分の重合触媒の使用量としては、加水分解前の(b1)成分に対して好ましくは(0.01質量%〜20質量%)である。
【0085】
(b2)成分の重合触媒としては、熱又は還元性物質等によってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適である。
そのようなラジカル重合触媒として、例えば水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物が挙げられ、これらが好ましい。より具体的には、ラジカル重合触媒として、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0086】
前記(b2)成分の重合触媒の使用量としては、全ビニル単量体((b2)+(b5))100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部である。なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望む場合、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
【0087】
(B)重合体粒子の重合を行う際、(b1)成分の重合と、(b2)成分の重合とは、別々に実施することも可能であるが、同時に実施すると水素結合等によるミクロな有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
なお、(b1)成分と(b2)成分とを別々に重合させた場合、重合後、シランカップリング剤と(b1)成分、及び(b2)成分を混合し熱重合することにより、(B)重合体粒子が得られる。この方法によると、(b1)、(b2)の粒子が軟凝集することにより複合化した大径の粒子が形成される傾向がある。
【0088】
(B)成分:重合体粒子を得る方法として、(b3)乳化剤がミセルを形成するのに充分な量の(b4)水の存在下に、(b1)成分と(b2)成分とを重合する、いわゆる乳化重合が適している。
乳化重合の方法としては、例えば(b1)成分及び(b2)成分、更には必要に応じて(b3)成分をそのまま、又は乳化した状態で、一括若しくは分割して、又は連続的に反応容器中に滴下し、重合触媒の存在下、好ましくは大気圧から必要により10MPaまでの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合させる方法等が挙げられる。ただし、必要に応じて、これ以上の圧力で、又はこれ以下の温度条件で重合してもよい。
【0089】
(B)成分:重合体粒子を重合するための重合原液の各成分の配合については、重合安定性の観点から、全固形分質量が(B)成分中の0.1〜70質量%、好ましくは1〜55質量%の範囲になるように(b1)〜(b4)の各成分を配合するのが好ましい。
全固形分質量(質量%)は、重合終了後に(B)成分を100℃に加温したオーブンに2時間入れて乾燥させた乾燥質量を求め、下記式(I)に基づいて求めることができる。
全固形分質量(質量%)=乾燥質量/(B)成分の質量×100・・・(I)
【0090】
なお、(B)重合体粒子の乳化重合を行うに際して、得られる(B)成分の粒子径を適度に成長又は制御する観点から、シード重合法を用いることが好ましい。
シード重合法とは、予め水相中にエマルジョン粒子(シード粒子)を存在させて重合させる方法である。シード重合法を行う際の重合系中のpHとしては、好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは1.0〜6.0である。そのpHは、リン酸二ナトリウム、ボラックス、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
【0091】
またさらに、(B)重合体粒子を得る方法として、(b1)成分を重合させるのに必要な(b3)成分及び(b4)成分の存在下、(b1)成分及び(b2)成分を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョン粒子となるまで水を添加する手法も適用できる。
【0092】
(B)重合体粒子は、得られるコーティング組成物による親水性塗膜の基材密着性を向上させる観点から、コア層と、当該コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。
当該コア/シェル構造を形成する方法としては、乳化重合を多段で行う、多段乳化重合が非常に有用である。
コア/シェル構造は、例えば透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により観察することができる。
【0093】
(B)重合体粒子は、前記コア層を形成するシード粒子を含む前記重合原液中で、前記(b1)成分及び前記(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子であり、前記シード粒子が、前記(b1)成分、前記(b2)成分及び(b5)前記(b2)成分と共重合可能な他のビニル単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の成分を重合して得られる粒子であることがより好ましい。この場合も、多段乳化重合が有用である。
【0094】
前記多段乳化重合は、例えば、第1段階として、(b3)成分及び(b4)成分の存在下、(b1)成分、(b2)成分及び(b5)成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の成分を重合してシード粒子を形成し、第2段階として、当該シード粒子の存在下、(b1)成分及び(b2)成分、並びに必要に応じて(b5)成分を含む重合原液を添加して重合する方法が挙げられる(2段重合法)。
3段以上の多段乳化重合を実施する場合、例えば第3段階として、さらに(b1)成分及び(b2)成分、並びに必要に応じて(b5)成分を含む重合原液を添加して重合することができる。このような多段乳化重合による方法は、重合安定性の観点からも好適である。
【0095】
(B)重合体粒子の製造方法として、2段重合法を採用する場合、上記第1段階において用いられる重合原液中の固形分質量(M1)と上記第2段階において添加される重合原液中の固形分質量(M2)との質量比((M1)/(M2))は、重合安定性の観点から、好ましくは9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8である。
【0096】
また、(B)重合体粒子は、上記コア/シェル構造として、重合安定性の観点から、シード粒子の粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)が大きく変化することなく、上記第2段階の重合によって粒子径が増大した構造を有することが好ましい。なお、体積平均粒子径は、数平均粒子径と同様に測定することができる。
【0097】
(B)重合体粒子は、前記コア層において、(b1)成分の含有量に対する(b2)成分の含有量の質量比((b2)/(b1))が、0.01/1〜1/1であると好ましい。シェル層の最外層において、(b1)成分の含有量に対する(b2)成分の含有量の質量比((b2)/(b1))が、0.01/1〜10/1であることが好ましい。コア層において、質量比((b2)/(b1))を0.01/1以上とすることで重合安定性がより優れる傾向にあり、1/1以下とすることで耐久性や柔軟性がさらに向上する。また、シェル層の最外層において、質量比((b2)/(b1))を0.01/1以上とすることで、前述の(A)成分との相互作用を大きくでき、10/1以下とすることで相互作用を適度に抑制でき、充分な安定性を得られる傾向にある。
【0098】
(B)重合体粒子のコア/シェル構造のコア層のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下である。この場合、室温における柔軟性がより優れた塗膜を得ることができるので、クラック等が生じ難い太陽電池用の保護部材を形成することが可能となり、好ましい。
なお、Tgは示差走査熱量測定装置(DSC)にて測定することができる。
【0099】
(B)重合体粒子の水相成分の含有率は、15量%以下であることが好ましい。
(B)重合体粒子の水相成分の含有率は、下記式(II)で表される。
(B)成分の水相成分を15質量%以下とすることにより、得られる塗膜は透明性及び親水性に優れるとともに、高温下においても優れた親水性を維持できる。
水相成分の含有率(%)
=((B)成分を分画分子量50,000でろ過したろ液の乾燥質量)×(100−全固形分質量)/(前記ろ液の質量−前記ろ液の乾燥質量)×100/全固形分質量 ・・・(II)
【0100】
(B)成分中の水相成分の含有量は、より好ましくは10質量%以下とすることにより、得られる塗膜は透明性及び親水性に優れるとともに、高温下だけでなく、高湿下、さらには高温高湿下であっても優れた親水性を維持できる。
(B)成分中の水相成分の含有量の下限は、特に限定されないが、少ない方が好ましい。
【0101】
(B)重合体粒子の数平均粒子径は、10nm〜800nmであることが好ましい。
(B)成分の数平均粒子径をこのような範囲に調整し、後述する数平均粒子径が1nm〜400nmの(A)成分と組み合わせてコーティング組成物を形成することにより、得られる塗膜は耐候性、防汚染性がさらに良好となる。
得られる塗膜の透明性向上の観点から、(B)成分の数平均粒子径は10nm〜100nmであるとより好ましい。
なお、数平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0102】
(B)成分に対する(A)成分の質量比((A)/(B))は、親水性と成膜性の観点から、好ましくは50/100〜10000/100であり、より好ましくは110/100〜1000/100であり、さらに好ましくは150/100〜300/100である。かかる比率とすることで、得られる塗膜の親水性、反射防止性を向上できる。
【0103】
(A)成分の表面積(SA)と(B)成分の表面積(SB)との比((SA)/(SB))は、好ましくは0.001〜1000の範囲である。なお、各成分の表面積は、(A)成分及び(B)成分の各々の粒子径、各々の質量、及び各々の比重から、粒子の形状を真球と仮定して算出することができる。
【0104】
本実施形態の親水性塗膜の形成方法において用いるコーティング組成物は、(A)金属酸化物粒子が(B)重合体粒子を囲む構造とすることができ、これらの分散形態として、いわゆる海島構造をとることが好ましい。
例えば(A)成分が海相となり、(B)成分が島相となるようにすることができる。
また、(A)成分が、(B)成分と相互作用しながら(B)成分の粒子間に連続相を形成して存在することが好ましい。この場合、得られるコーティング組成物の反射率、耐候性、防汚性がより向上し得る。
【0105】
さらに、ここで(B)成分は、上記したエマルジョン粒子であることが好ましく、エマルジョン粒子としては、上記した重合体エマルジョン粒子であることが好ましい。かかるエマルジョン粒子、あるいは重合体エマルジョン粒子は、上述したものを用いることができる。
【0106】
<(C)加水分解性珪素含有化合物>
基材との密着性、塗膜の強度を向上する目的で(C)成分加水分解性珪素含有化合物を添加することが好ましい。
【0107】
(C)成分加水分解性珪素含有化合物としては、下記式(3)で表される加水分解性珪素含有化合物(c1)、下記式(4)で表される加水分解性珪素含有化合物(c2)、及び下記式(5)で表される加水分解性珪素含有化合物(c3)からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
1nSiX4-n ・・・(3)
式(3)中、R1は、水素原子、あるいは、ハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有していてもよい、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基若しくはアリール基のいずれかを示す。
Xは、加水分解性基を示し、nは0〜3の整数である。
加水分解性基は加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基等が挙げられる。
3Si−R2n−SiX3 ・・・(4)
式(4)中、Xは加水分解性基を示し、R2は炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を示す。nは0又は1である。
3−(O−Si(OR32n−OR3 ・・・(5)
ここで、式(5)中、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
nは2〜8の整数である。
【0108】
加水分解性珪素含有化合物(c1)及び(c2)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(i−ブトキシ)シラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリフルオロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、テトラキス(メチルエチルケトキシム)シラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0109】
前記式(5)で表される加水分解性珪素含有化合物(c3)としては、例えば、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば多摩化学工業社製の商品名「Mシリケート51」、コルコート社製の商品名「MSI51」、三菱化学社製の「MS51」、同「MS56」)、テトエトキシシランの部分加水分解縮合物(多摩化学工業社製の商品名「シリケート35」、同「シリケート45」、コルコート社製の商品名「ESI40」、同「ESI48」)、テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(多摩化学工業社製の商品名「FR−3」、コルコート社製の商品名「EMSi48」)等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0110】
(A)成分に対する(C)成分の質量比((C)/(A))は、好ましくは1/100〜1000/100であり、より好ましくは10/100〜200/100、さらには40/100〜120/100である。(C)/(A)が1/100以上であると、得られる塗膜は高温条件下や高湿条件下でも親水性を維持できる傾向があり、(C)/(A)が1000/100以下であると塗膜とした場合の耐衝撃性をより向上できる傾向がある。
【0111】
なお、上述した(C)成分は、(A)成分と共有結合(シラノールの縮合)を形成して、強固な塗膜を形成する機能を有しており、上述した(b1)成分は、(b2)成分と水素結合を形成して分子レベルで複合化することにより、強固な塗膜を形成する機能を有している。
【0112】
<(D)酸触媒>
(C)成分を用いる場合、加水分解を促進する目的で(D)酸触媒を使用できる。
(D)酸触媒としては、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類、硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類、酸性又は弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、硝酸のような酸性化合物類等が挙げられる。
これらの中でも、酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30の直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸分岐型アルキルベンゼンスルホン酸、例えば直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸、分岐型ドデシルベンゼンスルホン酸等が好ましい。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
(D)成分は、コーティング組成物のpH調整剤としても機能する。
コーティング組成物のpHが7以下の場合、pH7を超える場合と異なり、(C)成分の加水分解が部分的に進行しやすい。そのような場合、アルコールなどの有機溶媒が少ない系では、その加水分解の進行を制御できずに、ゲル化などコーティング液が不安定化する。しかし、そのような場合、アルキルベンゼンスルホン酸のように酸触媒としても働き、界面活性剤的な作用を有する触媒を使用するこことで、加水分解の進行を制御し、コーティング組成物の安定性を損なうことなく(C)成分の加水分解やオリゴマー化を進めることが可能となる。その結果、(A)成分や(B)成分と混合した際に安定に混合することができる。さらには、基材に塗布した後の縮合及び養生段階で、部分的に加水分解した(C)成分同士の縮合が効果的に進むと共に、(A)成分、(B)成分及び基材の化学結合がバランスよく進行するため、得られた塗膜の親水性を維持しながら反射防止効果と塗膜強度を発現することが可能となる。これらは一例であり、コーティング組成物を基材に塗布する直前にさらにpHを調整するなど目的に応じて使うことができる。
(D)酸触媒の使用量は、(C)成分に対して、0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0114】
<(E)親水性溶媒>
本実施形態で用いるコーティング組成物は、(E)親水性溶媒を含んでもよい。
(E)親水性溶媒としては、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド及びニトロベンゼン、並びに、これらの2種以上の混合物が挙げられる。
特に、水への溶解性が高く沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。
溶解性の指標として水への溶解度だけでなく、溶解性パラメータを使用することもできる。溶解性パラメータは10以上であることが好ましい。
このような親水性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールが好ましい。
(E)親水性溶媒の含有量は、コーティング組成物全体に対して、1〜90質量%であることが好ましく、3〜40質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0115】
<その他の添加剤>
本実施形態の親水性塗膜の形成方法において用いるコーティング組成物は、上記各成分に加えて、その用途及び使用方法等に応じて、通常、塗料や成型用樹脂に添加配合される添加剤成分、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等をそれぞれの目的に応じて選択したり、組み合わせたりして配合することができる。
【0116】
前記光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく用いられる。
中でも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性光安定剤が好ましい。
前記紫外線吸収剤としては、例えば有機系紫外線吸収剤を挙げることができる。このような有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。中でも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤を用いることが好ましい。また、紫外線吸収能の高いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0117】
光安定剤は、有機系紫外線吸収剤と併用することが好ましい。両者を併用することは、得られる塗膜の耐候性向上に寄与し得る。また、これらの有機系紫外線吸収剤や、光安定剤、各種添加剤成分は、(A1)成分及び(B)成分と単に配合することもでき、(B)成分を合成する際に共存させることも可能である。具体的にはモノマーと混合したり、モノマーと同時に反応系に導入して分子レベルでの取り込みを行ったり、(B)成分中へ取り込んだりしてもよい。また、(A1)成分、(B)成分のそれぞれの分散液に対して、攪拌しながら徐々に添加して配合してもよい。
【0118】
(コーティング組成物の塗布、乾燥工程)
本実施形態の親水性塗膜の形成方法において、第二の工程で用いる塗装方法としては、ディップコート、フローコート、ロールコート、スピンコート、スプレーコート、刷け塗り等の公知の方法が挙げられる。
【0119】
前記コーティング組成物の塗工布後、乾燥処理を行う。
この場合、所望により好ましくは20℃〜500℃、より好ましくは40℃〜250℃での熱処理を行ってもよい。
乾燥方法は公知の方法を用いることができる。例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥、これらを組み合わせることができる。
【0120】
〔親水性塗膜〕
上述したように、所定の基材表面の汚染物質をガラスコンパウンド及び/又はメラミン樹脂スポンジで除去する第一の工程と、(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子、(B)重合体粒子を含むコーティング組成物を、基材上に塗布し、その後、乾燥する第二の工程とにより親水性塗膜が得られる。
【0121】
〔用途〕
<エネルギー変換装置用部材>
本実施形態の親水性塗膜の形成方法は、エネルギー変換装置用部のコーティング層の形成方法として好適に用いることができる。
エネルギー変換装置としては、例えば、太陽光を利用した発電装置等が挙げられる。
エネルギー用部材としては、例えば、太陽光を利用した発電に使用できる部材をいい、より具体的には、太陽電池モジュールに用いられる部材、太陽熱発電システムに用いられる部材等が挙げられる。
中でも、太陽電池モジュールの保護部材や、光反射鏡の保護部材に好適に用いることができる。
例えば、太陽電池モジュールの表面の保護部材であるカバーガラスや裏面の保護部材であるバックシート、封止材、アルミ枠等の型枠、集光型太陽電池のフレネルレンズ、太陽熱発電に用いられる光反射鏡等の保護部材が挙げられる。
【0122】
特に、本実施形態の親水性塗膜の形成方法により得られた親水性塗膜は、太陽電池モジュールの保護部材として好適である。
例えば、砂漠等において大規模な太陽電池モジュールを設置して使用する場合、風で舞い上がった砂等が太陽電池モジュールの保護部材に付着するので、部材の表面が傷つけられたり、透明性や防汚性の効果が低下したりするといった問題が生じる。しかしながら、本実施形態の親水性塗膜の形成方法で得られる親水性塗膜は、防汚性、透明性、親水性、耐久性(耐衝撃性)に優れ、高温高湿下であっても表面親水性を維持できるため、付着した砂やほこり等を雨水等によって簡便に洗い流すこともできる。
【0123】
<太陽電池モジュール>
本実施形態の親水性塗膜の形成方法により得られた親水性塗膜は、太陽電池モジュールの保護部材用のコーティング層(以下、単に保護部材という場合がある。)とすることができる。
図1は、太陽電池モジュールの一例の概略断面図を示す。
太陽電池モジュール2は、保護部材20と、前記保護部材20と対向して配置されるバックシート22と、前記保護部材20と前記バックシート22との間に配置される発電素子24と、を備える。
発電素子24は、封止材26によって封止されている。
太陽電池モジュール2において太陽光Lは、保護部材20側から入射して発電素子24に到達する。
【0124】
保護部材20は、発電素子24等を保護する保護部材である。
保護部材20は、基板202と塗膜204により構成されており、基板202の表面に本実施形態の親水性塗膜の形成方法で形成される塗膜204が形成されている。
この場合、保護部材20は太陽光を透過する光透過性基板として機能する。
そして、保護部材20は前記親水性塗膜の形成方法で得られた塗膜204が形成された面を太陽電池モジュール2の表面側となるように用いることが好ましい。
【0125】
保護部材20は、耐候性、撥水性、耐汚染性、機械強度をはじめとして、太陽電池モジュール2の屋外暴露における長期信頼性を確保できるための性能を具備することが好ましい。
また、太陽光を有効に活用するために、光学ロスの小さい、透明性の高い部材であることが好ましい。
基板202の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン(共)重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる樹脂フィルム等が好ましく、これらの中でも、耐候性、耐衝撃性、コストのバランスの観点からガラス基板がより好ましい。
【0126】
基板202としてガラス基板を用いる場合には、波長350〜1400nmの光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。かかるガラス基板としては赤外部の吸収の少ない白板ガラスを使用するのが一般的であるが、青板ガラスであっても厚さが3mm以下であれば太陽電池モジュールの出力特性への影響は通常少ない。また、ガラス基板の機械的強度を高めるために熱処理により強化ガラスを得ることができるが、熱処理無しのフロート板ガラスを用いてもよい。
【0127】
基板202として樹脂フィルムを用いる場合、樹脂フィルムとしては、透明性、強度、コスト等の観点からポリエステル樹脂が好ましく、とりわけポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。
また、耐侯性が特に良好なフッ素樹脂も好適に用いられる。
具体的には、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)が挙げられる。耐候性の観点からはポリフッ化ビニリデン樹脂が好ましいが、耐候性及び機械的強度の両立をする観点からは四フッ化エチレン−エチレン共重合体が好ましい。
【0128】
バックシート22としては、特に限定はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、上述の保護部材20と同様に、耐候性、機械強度等の諸特性を有することが好ましい。
したがって、保護部材20と同様の材質でバックシートを構成してもよい。すなわち、保護部材20(特に、基材202)において用いることができる上述の各種材料を、バックシートにおいても用いることができる。特に、ポリエステル樹脂、及びガラス基板を好ましく用いることができ、中でも、耐候性、コストの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)がより好ましい。
【0129】
バックシート22は、太陽光の通過を前提としないため、保護部材20で求められる透明性(透光性)は必ずしも要求されない。そこで、太陽電池モジュール2の機械的強度を増す目的や、温度変化による歪や反りを防止する目的で、補強板を貼り付けてもよい。補強板としては、例えば、鋼板、プラスチック板、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)板等が挙げられる。
【0130】
バックシート22は、2層以上からなる多層構造を有していてもよい。多層構造としては、例えば中央層の両面に、中央層に対して対称の配置となるように同一成分の層が1又は2以上積層された構造等が挙げられる。そのような構造を有するものとしては、例えばPET/アルミナ蒸着PET/PET、PVF(ポリフッ化ビニル、デュポン社製 商品名:テドラー)/PET/PVF、PET/AL箔/PET等が挙げられる。
【0131】
発電素子24は、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであれば特に限定されず、例えばシリコン(単結晶系、多結晶系、非結晶(アモルファス)系)、化合物半導体(3−5族、2−6族、その他)等を用いることができ、中でも、発電性能とコストとのバランスの観点から、多結晶シリコンが好ましい。
【0132】
封止材26は、発電素子24を封止可能な部材であればよく、その種類は特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂を含む樹脂封止シート等が挙げられる。
このような樹脂封止シートを熱溶融させることにより、封止対象である発電素子24等に密着し、封止することができる。
かかる封止材26を用いることで、発電素子24のクリープを防止できるとともに、保護部材20やバックシート22に対して優れた接着性を発揮することができる。
【0133】
太陽電池モジュールの製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することもできる。
例えば、保護部材20/封止材26/発電素子24/封止材26/バックシート22の順に重ね、真空ラミネート装置を用いて150℃、15分間の条件で真空ラミネートすることにより製造できる。
【0134】
太陽電池モジュール2の各部材の厚さは特に限定されないが、保護部材20の厚さは、耐候性、耐衝撃性の観点から3mm以上が好ましく、バックシート22の厚さは、絶縁性の観点から75μm以上が好ましく、発電素子24の厚さは、発電性能とコストのバランスの観点から140μm〜250μmが好ましく、封止材26の厚さは、クッション性及び封止性の観点から250μm以上が好ましい。
【0135】
<リフレクター装置>
図2は、リフレクター装置の一例の概略斜視図である。
図2のリフレクター装置3は、光反射鏡32と、前記光反射鏡の反射面側に形成された本実施形態の親水性塗膜の形成方法で得られた親水性塗膜30と、前記反射鏡32を支持する支持体34とにより構成されている。
本実施形態の親水性塗膜の形成方法により得られた親水性塗膜30は、光反射鏡32の保護部材(以下、単に保護部材という場合がある。)としての役割を有している。
リフレクター装置3の構成は、特に限定されず、適宜好適な構成に変形することができる。
【0136】
<太陽熱発電システム>
図2に示すリフレクター装置3と、このリフレクター装置3により集光される太陽光を電気エネルギーに変換する装置と、を組み合わせることにより、太陽熱発電システムとすることができる。
太陽熱発電システムの構成は、特に限定されず、適宜好適な構成に変形することができる。
【実施例】
【0137】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、各種物性は下記の方法で測定及び評価を行った。
また、本実施例及び比較例において、特に断りがない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
【0138】
(数平均粒子径)
試料中の固形分含有量が0.1〜20質量%となるように溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて測定した。
【0139】
(外観)
コーティング組成物を塗布した際における、塗液のハジキの程度を目視で観察し、評価した。
○:良好、△:わずかにハジキがある、×:ハジキが多い
【0140】
(水接触角)
コーティング組成物を塗布した塗膜の表面に、脱イオン水の水滴を乗せ、23℃で1分間放置した後、接触角測定装置(協和界面科学製 DM−501型接触角計)を用いて測定した。
【0141】
(最大塗工膜厚)
コーティング組成物をスピンコーターで成膜し、親水性塗膜を形成した後、マイクロスコープ(100倍)で観察した際に微小クラックの無い良好な膜厚を測定した。
最大塗工膜厚が厚いほど耐クラック性が良好であると判断した。
【0142】
(作業環境の影響)
前処理(第一の工程)が完了した基板を実験室に一日放置して、その後、コーティング組成物を塗装した際の、コーティング組成物のハジキの程度を目視で観察し、膜厚ムラに関して下記の3段階で評価した。
○:全面で濡れ性良好、△:一部でハジキがある、×:ハジキが多い
【0143】
(前処理(第一の工程)の作業性)
前処理(第一の工程)実施後、コーティング組成物の塗布前における基板の表面に付着した洗浄残渣を除去するための、さらなる洗浄工程の必要性を、目視及び水接触角のバラツキにより定性的に下記の3段階で評価した。
○:追加洗浄の必要無し、△:1回以上の追加洗浄が必要、×:3回以上の追加洗浄が必要
【0144】
〔製造例1〕
(重合体エマルジョン粒子(LTX−1)水分散体の合成)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸4gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。
これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。
次に、アクリル酸ブチル150g、テトラエトキシシラン30g、フェニルトリメトキシシラン145g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液とジエチルアクリルアミド165g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化社製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1900gの混合液とを、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。
さらに熱養生として、反応容器中の温度が80℃の状態で約4時間撹拌を続行した。
その後、室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過し、固形分14.08質量%、水相成分8.91質量%、数平均粒子径131nmの重合体エマルジョン粒子(LTX−1)水分散体を得た。
重合体エマルジョン粒子(LTX−1)水分散体を、限外ろ過装置を用いてろ過し、水相成分を含有するろ液を得た。
【0145】
〔実施例1〕
下記表1に示す配合量で、エタノール、水、1質量%n−ドデシルベンゼンスルホン酸(1質量%DBSと表記)を混合した後に、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(三菱化学社製「MS−56」):SiO2換算で56%相当)を25℃で加え、1%塩酸水溶液でpH2に調整した。
1時間撹拌した後、下記表1に示す配合量で数平均粒子径8nmの粒子を有する水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスOS」、日産化学工業社製、固形分20質量%、以下「ST−OS」とも記す。)と、上記〔製造例1〕で得られた重合体エマルジョン粒子(LTX−1)とを加え、30分撹拌してコーティング組成物を得た。
5cm角の青板ガラス基板を用い、前処理として市販のメラミン樹脂製スポンジ(レック株式会社 「激落ちくん」)を用いて、汚染物質、油分の十分な除去を行い、さらに工業用アルコール(ソルミックスA7(日本アルコール販売社製)にて洗浄を行った。
さらに、コロナ処理を14kwで30秒実施した。
次に、スプレー式温風低圧塗装機を用いて、コーティング組成物をスプレー塗布し、常温乾燥した。
塗装機として、高回転型タービンのブロアを備えたスプレー式温風低圧塗装機(チロン社製SG−91)を用いて、次の条件で運転した。
(1)塗液吐出ノズルの先端口径:1.2mm
(2)吐出圧:0.018MPa
(3)吐出量:70mL/分
(4)ブロア送風圧力:0.018MPa
(5)エアーカーテンのエアー風量:2200リットル/分
(6)エアーカーテンのエアー温度:塗装作業の環境温度より15℃高い温度
(7)塗装速度:被塗物の幅1mを3秒間で塗装機を移動させた。
得られた塗膜の評価結果は表1に示した。
【0146】
〔比較例1〕
下記表1に示す配合量で、エタノール、水を混合した後に、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(三菱化学社製「MS−56」)を25℃で加え、30分間撹拌してコーティング組成物を得た。
得られたコーティング組成物を5cm角の青板ガラス基板上(前処理無し)に、上記実施例1と同様の方法によりスピンコートした。
その後、常温乾燥して親水性塗膜を得た。
得られた親水性塗膜の評価結果を、下記表1に示した。
【0147】
〔比較例2〕
下記表1に示す配合量で、エタノール、水を混合した後に、10%(固形分10質量%)二酸化チタン水分散液(MPT−422:石原産業社製)、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(三菱化学社製「MS−56」)を25℃で加え、30分間撹拌してコーティング組成物を得た。
得られたコーティング組成物を5cm角の青板ガラス基板上(前処理無し)にスプレー塗装した後、常温乾燥して塗膜を得た。
得られた塗膜の評価結果は、下記表1に示した。
温風低圧塗装機の塗液吐出ノズルの先端口径を0.3mmとし、下記条件で運転した。
(1)塗液吐出ノズルの先端口径:0.3mm
(2)吐出圧:0.018MPa
(3)吐出量:70mL/分
(4)ブロア送風圧力:0.018MPa
(5)エアーカーテンのエアー風量:2200リットル/分
(6)エアーカーテンのエアー温度:塗装作業の環境温度より15℃高い温度
(7)塗装速度:被塗物の幅1mを3秒間で塗装機を移動させた。
【0148】
〔比較例3〕
下記表1に示す配合量に従い、5cm角の青板ガラス基板に前処理を行わず塗装した。
その他の条件は、実施例1と同様に塗装して評価した。
【0149】
〔実施例2〕
5cm角の青板ガラス基板の前処理として、市販のガラスコンパウンド(ウィルソン社製商品名 「ガラスコンパウンド Super」を用いた。
ガラス基板の表面に、ガラスパウンドを適量とって、ウエスで表面を10往復して研磨した。次に、工業用アルコール(ソルミックスA7(日本アルコール販売社製)にて洗浄を行った。さらに、コロナ処理を14kwで30秒実施した。
その後、実施例1と同様の条件により塗膜を形成し、評価した。
【0150】
実施例及び比較例の結果を下記表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
表1に示すように、各実施例の親水性塗膜は、外観性、親水性、厚膜時の耐クラック性に優れ、成膜の際の作業環境の影響も少なく、均一な膜質が得られたことが確認された。
また、塗膜形成の前処理として、メラミン樹脂スポンジによる除去工程を実施することにより、塗膜形成面を確実に清浄化でき、かつ除去工程に伴う汚染物質も生じないため、塗膜形成工程を簡易かつ迅速に行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の形成方法で得られた塗膜は、太陽電池モジュールや太陽熱発電システム等といった各種エネルギー生産装置の部材、太陽光の透過性や集光性が良好な太陽電池用の保護部材、太陽熱発電用の光反射鏡の部材等として、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0154】
2 太陽電池モジュール
20 保護部材
22 バックシート
24 発電素子
26 封止材
202 基板
204 親水性塗膜
3 リフレクター装置
30 親水性塗膜
32 光反射鏡
34 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面の汚染物質をガラスコンパウンド及び/又はメラミン樹脂スポンジで除去する第一の工程と、
(A)数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物粒子、(B)重合体粒子を含むコーティング組成物を、前記基材上に塗布し、その後、乾燥する第二の工程と、
を含む、
親水性塗膜の形成方法。
【請求項2】
前記第一の工程の後、前記第二の工程の前に、
前記基材表面を、沸点100℃以下のアルコール及び/又は精製水で洗浄する工程を行う、請求項1に記載の親水性塗膜の形成方法。
【請求項3】
前記(B)重合体粒子が、
(b1)成分:加水分解性珪素化合物と、
(b2)成分:ビニル単量体と、
(b3)成分:乳化剤と、
(b4)成分:水と、
を含む重合原液中で、前記(b1)成分と前記(b2)成分とを重合して得られる重合体エマルジョン粒子であり、
前記(B)重合体粒子の数平均粒子径が10nm〜800nmである、請求項1又は2に記載の親水性塗膜の形成方法。
【請求項4】
前記(B)重合体粒子は、水相成分の含有率が15質量%以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の親水性塗膜の形成方法。
【請求項5】
前記コーティング組成物が、加水分解性珪素含有化合物(C)をさらに含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水性塗膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の親水性塗膜の形成方法によって得られる親水性塗膜。
【請求項7】
請求項6に記載の親水性塗膜を具備する太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項6に記載の親水性塗膜を具備するリフレクター装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−210558(P2012−210558A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76507(P2011−76507)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】