説明

親水性樹脂、吸収物品および重合用アクリル酸

【課題】長期保存した場合に着色や変色のより少ない親水性樹脂および吸収物品を提供する。
【解決手段】ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下のアクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体成分を重合して得られる親水性樹脂、アクリル酸系重合体を主成分とし、ハイドロキノンおよび/またはベンゾキノンを含有する親水性樹脂であって、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量に対して10〜1,000,000倍量の重量比のキンヒドロン化防止剤を含有する親水性樹脂、および、アクリル酸系重合体を主成分とする親水性樹脂であって、開放系、70℃、65%RHの条件下で1週間放置後の着色度(YI)が20以下である親水性樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性樹脂、吸収物品および重合用アクリル酸に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、親水性樹脂の1種として高度の吸水性を有する吸水性樹脂が開発され、綿、パルプ、紙、海綿などの繊維基体と複合化され、紙おむつ、生理用ナプキンなどの吸収物品として実用化されている。吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸部分中和物架橋体等のアクリル酸および/またはその塩を単量体として用いたアクリル酸系重合体がその吸水性能の高さから最も工業的に多く用いられている(特許文献1など)。
これらの吸水性樹脂を長期(4ヶ月以上)保存すると室温でも褐色ないし黄色に着色ないし変色し、このような吸水性樹脂を用いた吸収物品は保存中に商品価値が著しく低下するという問題がある。
【0003】
この問題に対して特許文献2では、吸水性樹脂中の微量の遷移金属が介在してラジカル種が発生し吸水性樹脂の分解・ポリマー鎖の切断などの好ましくない反応が引き起こされることが原因であるとして、有機リン酸化合物またはその塩によって遷移金属を捕捉することによって経時着色を防止するという技術が提案されている。
しかし、特許文献2記載の上記改良技術には、以下の問題がある。
すなわち、上記改良技術では、吸水性樹脂粉末のみでは、初期の着色度(YI)が7.8前後であっても、70℃/65%RH密封系に1週間曝すと、着色度(YI)が35.0〜37.2にまで増大する(特許文献2の比較例1−3)のに対して、吸水性樹脂粉末に有機リン化合物を0.1〜0.63重量%添加しておくと、1週間経過後の着色度(YI)が12.2〜13.0にまで抑えられた(特許文献2の実施例1−3)とされている。上記改良技術では、確かに、経時着色はいくらか抑制出来る。しかし、有機リン化合物の添加は、プロセス的に複雑になるのみならず、安全性などから必ずしも好ましいものではない。また、上記改良技術で最も優れた結果を示す実施例2でも70℃、65%RH、1週間放置後の着色度(YI)は12.2、着色度変化(ΔYI)は4.4程度にしか過ぎず、さらに長期にわたって保存した場合にはやはり大きな着色や変色の問題が生じた。
【0004】
吸水性樹脂やその製品(おむつなどの吸収物品)は、世界各国に輸出されており、長時間保存したり、高湿下で保存したりすることが多い。このため、着色の問題が多発する。
近年、吸収物品における吸水性樹脂の使用量は増加傾向にある。上記改良技術は、吸水性樹脂の使用量が少量であれば着色防止できるが、多量になると対応できない。このため、吸水性樹脂それ自体の改良、すなわち、着色の極めて少ない吸水性樹脂の開発が望まれている。
上記改良技術には、着色評価でも問題がある。すなわち、着色評価を密封下で行っているが、吸水性樹脂を含む衛生材料は、通常、完全に密封されて保存されることはなく、少なくとも一部は開放系(たとえば、開袋のためのミシン目等を有するもの)で保存されるので、着色評価を開放系で行う必要があるからである。
【0005】
本発明者らは、後述の課題を解決するために、鋭意検討する過程で、現在市販されている吸水性樹脂について、開放系での着色評価を行ったところ、着色度(Y1)は40〜50以上であった。すなわち、従来の吸水性樹脂は、開放系下では、大きな着色度を示した。本発明者らは、このように、上記改良技術における密封系での着色評価は、開放系での着色評価よりも値が低く出る傾向(例えば、上記改良技術における実施例2の着色度(YI)=12.2は開放系評価では約23〜30程度になる)があることを確認するとともに、開放系での着色評価でYI=20以下であれば、上記課題を解決できて実用に充分に耐えることも確認した。
【0006】
なお、逆相懸濁重合で得られた従来の一部の樹脂には、着色度(Y1)が20を若干超える程度のものもあったが、逆相懸濁重合では多量の疎水性有機溶剤を使用するため、有機溶剤残存による安全性の問題があって衛生材料に不適である上、有機溶剤使用によるコストの問題もあり、得られる吸水性樹脂が球状の微粒子であるので、パルプの混合や固定が困難であり、また、一般に表面近傍の架橋程度が不十分であると言う問題もある。その結果、加圧下吸収倍率や通液性が低い。
上記改良技術では、重合し乾燥し粉砕した吸水性樹脂の着色評価は行っているが、重合・乾燥後に行われる吸水性樹脂粒子表面近傍の架橋や、吸水性樹脂の粒度、形状、含水率等が着色に与える影響について十分な検討がなされていないことも問題である。例えば、吸水性樹脂が備えるべき特性としては、一般に、体液等の水性液体に接した際の優れた吸水量や吸水速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、少ない水可溶分や残存モノマー、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力等が挙げられる。これらの特性の中でも、加圧下の吸収挙動(加圧下吸収倍率や加圧下通液性)は吸水性樹脂の備えるべき基本特性として重視されている。加圧下吸収倍率の高い吸水性樹脂を得るために、吸水性樹脂の表面を表面架橋剤を用いて表面架橋する方法が知られている(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)。吸水性樹脂の製造においては、上記表面架橋工程で吸水性樹脂の加熱を行うほか、吸水性樹脂の乾燥工程でも加熱を行う。上記表面架橋に際しては、多価アルコールが安全性や物性面などから好適であるため、多用されているが、多価アルコールは、脱水反応により架橋を行うので、反応性が低い。そのため、多価アルコールを使用しての表面架橋には比較的高温や長時間が必要である。上述の物性向上や生産性を重視するとなると、表面架橋工程や乾燥工程で長時間しかも高温での加熱が必要となり、その結果、吸水性樹脂の熱劣化や着色が避けられず、その改善が必要であった。特に、多価アルコールなどで表面架橋した吸水性樹脂では、製造時にないし経時的に着色し易い傾向が高いので、上記改善が強く求められている。
【0007】
紙おむつ等の種々の吸収物品を製造する際には、吸湿性が非常に高く、しかも、粉末が主流である吸水性樹脂を多量に繊維基材に組み込む必要がある。その作業環境、気候条件によっては、吸水性樹脂の粉末同士がポッパーやラインの途中でブロッキングを起こしたり、装置に付着したりして、吸収物品を安定に製造できないという問題も、近時、大きくなってきた。しかし、上記ブロッキング性の改善された従来の吸水性樹脂は、ブロッキング性改善剤の添加によって、加圧下吸収倍率その他一部の吸収特性が劣化するほか、樹脂濃度の高い吸収物品においては、吸収された体液の戻り量が上記改善剤添加のために増加してしまう傾向にもあった。そのため、上記改善剤を添加しないことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−54751号公報
【特許文献2】特開平5−86251号公報
【特許文献3】EP第668080号公報
【特許文献4】米国第5597873号公報
【特許文献5】米国第5422405号公報
【特許文献6】米国第5409771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の第1の課題は、開放系で長期保存した場合に着色や変色のより少ない、新規な吸水性樹脂等の親水性樹脂および吸収物品を提供することにある。
本発明の第2の課題は、表面架橋工程や乾燥工程における高温、長時間の加熱によって劣化や着色、変色の起きにくい、新規な吸水性樹脂等の親水性樹脂および吸収物品を提供することにある。
本発明の第3の課題は、吸水性樹脂の吸湿流動性(高湿条件下の吸水性樹脂の耐ブロッキング性)を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討する過程で、特許文献2で着色の原因とされている遷移金属だけが着色の原因ではないと推定し、他の原因について鋭意検討を行った。吸水性樹脂の原料としてはアクリル酸などの1種または2種以上のモノマーに加えて、中和に用いる水酸化ナトリウムなどの塩基や架橋剤、重合開始剤、有機溶媒、水など通常10数種類の原料が用いられる。そして、これらの原料の中でもアクリル酸は工業的にはプロピレン気相酸化法で製造されることが多いが、その場合に副生物や不純物として酢酸、ホルムアルデヒド、アクロレイン、プロピオン酸、マレイン酸、アセトン、フルフラール、ベンズアルデヒド等が含まれている。これらの副生物や不純物を除去するために、溶剤抽出法、共沸脱水法等の方法によって精製が行われるが、アクリル酸は非常に重合しやすいため、重合禁止剤の存在下で行うことが必要である。重合禁止剤としてはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、銅塩、メチレンブルー等が有効であるが、これらの中で最も安価なハイドロキノンを主に用い、他の高価な重合禁止剤(ハイドロキノンモノメチルエーテル等)を補助的に用いることが多い。例えば、特開平10−17524号公報では、酢酸の水溶液と銅化合物との混合物をこの精製工程の重合禁止剤として用いることを提案するものであるが、実施例の全てでハイドロキノンを併用している。
【0011】
ハイドロキノンは沸点(沸点285℃/730Torr,融点174℃)が高いことから蒸留の際に用いてもアクリル酸(沸点141℃/755Torr)蒸気中には混入せず最終的な精製アクリル酸には含まれないものと従来考えられていた。実際、市販のアクリル酸には、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテルが200ppm程度含まれていることは明記されているが、ハイドロキノンが含まれている旨を明記したものはなく、アクリル酸にはハイドロキノンは存在しないものであると考えられてきた。ところが、本発明者らはごく微量ではあるがハイドロキノンが精製アクリル酸中に含まれていることを見出した。これは、ハイドロキノンは、下記式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
で示されるようにベンゾキノンと平衡関係にあり、ベンゾキノンが昇華性を有するために、蒸留中の熱経時により精製途中でハイドロキノンがベンゾキノン化してアクリル酸中に混入した後、再びハイドロキノン化することが原因の一つと考えられる。そして、精製アクリル酸に混入したハイドロキノンの一部は、ハイドロキノンとベンゾキノンの平衡の中間状態のセミキノン(セミキノン自体の単離は不可能とされる)の状態で2分子会合して下記式(2)((A)または(B)のいずれか)
【0014】
【化2】

【0015】
で示される会合体(キンヒドロン)を生成する。本発明者らはこの会合体(キンヒドロン)が吸水性樹脂の経時着色の原因であることを見出し、本発明を完成させたものである。吸水性樹脂の10数種類の原料(単量体、架橋剤、溶媒、重合開始剤等)の中には多くの不純物が存在し(たとえば、単量体中の不純物として、特開平3−31306号公報、特開平6−211934号公報および特開平6−56931号公報等に例がある。)、単量体のアクリル酸中にも不純物として多くのものが含まれており、また重合禁止剤としても多くのものが知られているが、驚くべきことに、それらの中でアクリル酸中に極微量含まれている、ハイドロキノンが吸水性樹脂の経時着色の原因となることを見出した。例えば、同じハイドロキノン系の重合禁止剤であってもハイドロキノンモノメチルエーテルでは吸水性樹脂の経時着色の問題はないし、他の不純物(アクロレイン、ベンズアルデヒド、酢酸、プロピオン酸など)でも吸水性樹脂の経時着色の問題はないことを見出した。
【0016】
未中和のアクリル酸ポリマーは酸性(pH=約3.0)であることから、ハイドロキノンからベンゾキノンの方向へ平衡が進む率は低く、ハイドロキノンの含量がごく微量であれば式(2)の会合体が生成する確率は低い。しかしながら、吸水性樹脂はその用途から中性(pH=6−8程度、市販品はpH=6.1程度)であることが求められるため、ハイドロキノンからベンゾキノンの方向へ平衡が進む率が高く、式(2)の会合体が生成する確率も高くなることが、吸水性樹脂の着色に多いに寄与している事実を見出した。すなわち、吸水性樹脂は中性ポリアクリル酸架橋体である故に、水溶性ポリアクリル酸、例えば、完全中和ポリアクリル酸(中和率100モル%)や未和ポリアクリル酸に比べて大きく着色することを見出した。
【0017】
アクリル酸は酸性であることからアクリル酸中ではハイドロキノンからベンゾキノンの方向へ平衡が進む率は低く、ハイドロキノンの含量がごく微量であれば式(2)の会合体が生成する確率は低い。しかしながら、吸水性樹脂はその用途から中性であることが求められるため、ハイドロキノンからベンゾキノンの方向へ平衡が進む率が高く、式(2)の会合体が生成する確率も高くなる。
以上から、本発明者らは、吸水性樹脂における経時着色を防止するには、次の(i)および/または(ii)の方法を採用することが有効であると考えた。
(i)吸水性樹脂中で、ハイドロキノンからベンゾキノンの方向へ平衡が進み式(2)の会合体(キンヒドロン)が生成する率を低くする。このためには、吸水性樹脂にキンヒドロン化防止剤を添加することが有効である。
【0018】
(ii)従来よりもハイドロキノンの含有量の少ないアクリル酸を用いて吸水性樹脂を製造し、得られる吸水性樹脂中のハイドロキノン量を少ないものとする(実際には前記したようにハイドロキノンはベンゾキノンと平衡関係にあるので、ハイドロキノンの量とはハイドロキノンとベンゾキノンの合計量となる)。このためには、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下のアクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体成分を重合して吸水性樹脂を製造することが有効である。
そして、これらの知見は吸水性樹脂に限らず、アクリル酸を原料とする親水性樹脂全般の着色防止に適用できると考え、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明は、次の構成を提供する。
(1)ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下のアクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体成分を重合して得られる親水性樹脂。
(2)前記重合が水溶液重合である(1)記載の親水性樹脂。
(3)重合後3時間以内に100〜300℃で加熱乾燥させて得られる(1)または(2)に記載の親水性樹脂。
(4)含水率が2重量%以下である(1)から(3)までのいずれかに記載の親水性樹脂。
【0020】
(5)部分中和されてなる樹脂である(1)から(4)までのいずれかに記載の親水性樹脂。
(6)アクリル酸系重合体を主成分とし、ハイドロキノンおよび/またはベンゾキノンを含有する親水性樹脂であって、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量に対して10〜1,000,000倍量の重量比のキンヒドロン化防止剤を含有する親水性樹脂。
(7)アクリル酸系重合体を主成分とする親水性樹脂であって、開放系、70℃、65%RHの条件下で1週間放置後の着色度(YI)が20以下である親水性樹脂。
(8)不定形破砕状の粒子からなり、粒径300μm以上の粒子が全体の50重量%以上である(1)〜(3)、(7)のいずれかに記載の親水性樹脂。
【0021】
(9)吸水性樹脂である(1)から(8)までのいずれかに記載の親水性樹脂。
(10)生理食塩水中のpHが5.5以下である(9)記載の親水性樹脂。
(11)粒子表面近傍の架橋がなされている(9)または(10)に記載の親水性樹脂。
(12)前記粒子表面近傍の架橋のための架橋剤が多価アルコールである(11)記載の親水性樹脂。
(13)生理食塩水に対する50g/cmでの加圧下吸収倍率が20g/g以上である(9)から(12)までのいずれかに記載の親水性樹脂。
【0022】
(14)(9)から(13)までのいずれか記載の親水性樹脂および繊維基材を含む吸収層と、透液性を有する表面シートと、不透液性を有する背面シートとを備え、かつ親水性樹脂と繊維基材の合計量に対する親水性樹脂の重量比αが0.3以上である吸収物品。
(15)製造工程でハイドキノンを使用して得られるアクリル酸であって、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下である重合用アクリル酸。
(16)親水性樹脂重合用である(15)記載の重合用アクリル酸。
(17)親水性樹脂が吸水性樹脂である(16)記載の重合用アクリル酸。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量の少ない重合用アクリル酸を原料とすることで、長期保存しても着色や変色が少ない親水性樹脂を提供することができる。
本発明ではまた、キンヒドロン化防止剤を含有する親水性樹脂を提供する。この親水性樹脂も長期保存しても着色や変色が少ない。
本発明ではまた、開放系、70℃、65%RH、1週間放置後の着色度(YI)が20以下である親水性樹脂を提供する。この親水性樹脂も、長期保存しても着色や変色が少ない。
【0024】
本発明の親水性樹脂のうち吸水性樹脂は、水、体液、生理食塩水、尿、血液、セメント水、肥料含有水などの各種液体を吸収することができ、必要により不織布、フィルム、パルプなどの基材と組み合わせて吸収物品として用いることができる。かかる吸収物品は、使い捨ておむつや生理ナプキン、失禁パット等などの人体に接する用途;油中の水の分離材;その他の脱水または乾燥剤;植物や土壌などの保水材;ヘドロなどの凝固剤;結露防止剤;電線あるいは光ファイバー用止水材;土木建築用止水材など、吸水、保水、湿潤、膨潤、ゲル化を必要とする各種産業用途に有用である。
吸水性樹脂が、特に、原料としてのpH5.5以下の吸水性樹脂を、多価アルコールを架橋剤に用いて表面架橋して得られたものであると、耐ブロッキング性に優れる。このため、この吸水性樹脂は、従来、生理用ナップキンや大人用おむつ等の適した吸水性樹脂がないとされる用途に好適に用いることができる。
【0025】
本発明の親水性樹脂は、吸水性樹脂以外の全ての親水性樹脂、例えば、水溶性樹脂の公知の用途の全てに適用することができる。例えば液体洗剤用ビルダーや貼付剤の用途では、着色や変色によって商品価値が低下するので、本発明の親水性樹脂を用いることが有効である。
本発明の吸水性樹脂を用いた吸収物品は保存期間中に着色や変色をきたさないので、商品価値が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明で用いた加圧下吸収倍率の測定装置である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上記(i)で使用され、本発明の親水性樹脂の1成分として用いられるキンヒドロン化防止剤について説明する。アクリル酸系重合体を主成分とし、ハイドロキノンおよび/またはベンゾキノンを含有する親水性樹脂にキンヒドロン化防止剤を添加することにより、式(2)の会合体が生成する率を低くすることができる。キンヒドロン化防止剤とは、ハイドロキノンおよび/またはベンゾキノンから平衡により生成するセミキノンが2分子会合してキンヒドロンとなるのを抑制する性質を有する物質のことを言う。キンヒドロン化防止剤としてはハイドロキノンおよび/またはベンゾキノンからキンヒドロンの生成を抑制する性質のものであれば特に限定されない。具体的には、分子内に2個以上の−(NH−CO)−結合を有する化合物が例示される。分子内に2個以上の−(NH−CO)−結合を有する化合物が、キンヒドロン化の抑制に効果がある理由は定かではないが、ハイドロキノンが何らかの作用により安定化されるためと推定される。分子内に2個以上の−(NH−CO)−結合を有する化合物の中でも分子量が1000以下の化合物を用いることがより好ましい。分子量が高くなると親水性樹脂中に浸透ないし移動しにくくなり、キンヒドロン化防止効果が発揮されにくくなると考えられるためである。
【0028】
分子内に2個以上の−(NH−CO)−結合を有する化合物としては、例えば分子内に−(NH−CO)−R−(CO−NH)−結合を有する化合物、分子内に−(CO−NH)−R−(NH−CO)−結合を有する化合物が挙げられる(ただし、ここでRは単結合または有機基である)。具体的には、下記式(3)で示されるメチレンビスアクリルアミドや、
【0029】
【化3】

【0030】
下記式(4)で示される2,2’−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
【0031】
【化4】

【0032】
が挙げられる。特に効果の面からメチレンビスアクリルアミドが好ましい。
キンヒドロン化防止剤の添加量としては、親水性樹脂中のハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量に対し10〜1,000,000倍量の重量比であることが必要であり、50〜500,000倍量の重量比であることが好ましく、100〜500,000倍量の重量比であることが特に好ましい。10倍量より少ないとキンヒドロン化防止の効果が少ない。一方、1,000,000倍量より多くなると、親水性樹脂の割合が実質的に低下するため、例えば、吸水性樹脂の場合には吸収物性の低下をもたらすおそれがある。親水性樹脂中のハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量を基準とするのは、前述したとおりハイドロキノンとベンゾキノンが平衡関係にあるためである。
【0033】
なお、N,N’−メチレンビスアクリルアミドは、吸水性樹脂の内部架橋剤として単量体成分の重合の際に用いることが知られており、その一部は吸水性樹脂の構造中に取り込まれず単独の形で吸水性樹脂に含まれている場合もあると考えられる。しかしながら、内部架橋剤として使用しても、親水性不飽和単量体を重合して得られた吸水性樹脂中に残存するN,N’−メチレンビスアクリルアミドの量は通常検出限界以下であるので吸水性樹脂中のハイドロキノンがキンヒドロン化することを防ぐことはできない。
本発明の親水性樹脂の原料となる、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下のアクリル酸およびその塩について説明する。
【0034】
アクリル酸を製造する方法としては、プロピレン気相酸化法、エチレンシアンヒドリン法、高圧レッペ法、改良レッペ法、ケテン法、アクリロニトリル加水分解法等が工業的製造法として知られており、中でもプロピレン気相酸化法が最も多く採用されている。
プロピレン気相酸化法とは、プロピレンから気相接触酸化法によりアクロレインを経てアクリル酸を得る方法である。反応は水蒸気を希釈剤として通常二段階で行われる。プロピレンの転化率はほぼ100%であり、高収率であるという利点がある。プロピレン気相酸化法では、通常反応ガスを水で吸収することで不純物を含むアクリル酸水溶液を得る。アクリル酸水溶液から酢酸、ホルムアルデヒド、アクロレイン、プロピオン酸、マレイン酸、アセトン、フルフラール、ベンズアルデヒド等の副生物や不純物を精製除去して「粗製アクリル酸」を得た後、親水性樹脂や吸水性樹脂の原料として使用する場合は、重合阻害性の微量アルデヒド分を除去するために、通常はさらなる精製を行い「精製アクリル酸」とする。「粗製アクリル酸」から「精製アクリル酸」を得る工程の精製方法としては蒸留法または晶析法がある。なお、特開平10−17524号公報で「精製アクリル酸」と称されているのは、本発明でいう「粗製アクリル酸」である。また、本発明でいう「重合用アクリル酸」とは、得られたアクリル酸をそのままアクリル酸として重合する場合または中和してその塩として重合する場合に用いる、アクリル酸を意味する。アクリル酸水溶液から粗製アクリル酸を得る工程および粗製アクリル酸から精製アクリル酸を得る工程においては、重合禁止剤の添加が必須であり、前記したように通常は最も安価なハイドロキノンが主に用いられ、上記中間の工程で使用されたハイドロキノンはその高沸点から、すべて除去されていたと思われていた。しかし、本発明者らによって、従来の方法によると最終的な精製アクリル酸中にハイドロキノンが極微量0.5〜1ppm程度含まれること、および、この極微量のハイドロキノンがアクリル酸ポリマーの着色の原因であることが見出された。
【0035】
本発明で目的とする「ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下」というレベルを達成するためには、(1)アクリル酸水溶液から粗製アクリル酸を経て精製アクリル酸を得るまでの工程で添加する重合禁止剤としてのハイドロキノンの量を少なくする、および(2)粗製アクリル酸から精製アクリル酸を得る工程を従来よりも念入りに行ったり、通常の精製工程でもさらに入念に行ったりする、等の方法に従う必要がある。
(1)の最も極端な例は精製工程で重合禁止剤としてハイドロキノンを全く用いず、その他の重合禁止剤のみを用いることであるが、ハイドロキノンは最も安価な重合禁止剤であるという利点を有するため、精製工程で0.20ppm以下まで除去可能な範囲で用いることは問題ない。粗製アクリル酸中に含まれるハイドロキノンとベンゾキノンの合計量にもよるが、一般的には粗製アクリル酸から精製アクリル酸を得る工程で、供給する粗製アクリル酸中のハイドロキノンとその変化したベンゾキノンの合計量と、工程で添加するハイドロキノンの量の合計が1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは500ppm以下であれば、通常の精製工程でも入念に行えば0.20ppm以下まで除去でき、上記中間の工程では、たとえば、ハイドロキノンを10〜500ppm添加して行われる。ハイドロキノンを少なくした分代わりに用いるその他の重合禁止剤としては、親水性樹脂中での悪影響の少ないものが好ましく、ハイドロキノンモノメチルエーテル等を例示することができる。
【0036】
(2)の従来よりも念入りに行うとは、精製方法として蒸留法を採用する場合は、段数の増加、還流比の増加等により、精製方法として晶析法を採用する場合は、晶析回数の増加等により精留度を上げることをさす。また、同様の理由から、市販のアクリル酸を購入した場合、さらに精製を行うことで、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量を0.20ppm以下にまで低減することができる。さらに好ましくは、(1)および(2)が併用される。
すなわち、(ii)では、アクリル酸のうち、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量が0.20ppm以下のアクリル酸を意図的に製造ないし/市販品より選択ないし再精製して、該アクリル酸を用いて親水性樹脂を得ることを特徴としている。
【0037】
上記により得られるハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下、好ましくは0.15ppm以下、さらに好ましくは0.10ppm以下のアクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体成分を重合することにより、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が少なく、長期保存した場合に着色や変色の少ない本発明の親水性樹脂(特に吸水性樹脂)を得ることができるが、本発明はこれに限定されず、「ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下のアクリル酸」はあらゆるアクリル酸系重合体の原料の重合用アクリル酸として用いることができる。アクリル酸やその塩をそのまま単量体として用いてもよいし、さらにはそのエステルを単量体の一成分として、本発明のアクリル酸(塩)と共重合してもよい。
【0038】
アクリル酸系重合体の代表例としては、親水性樹脂が挙げられる。親水性樹脂とは一般に、ポリマー鎖に親水性の官能基、例えば、カルボキシル基や水酸基、アミド基やアミノ基、スルホン酸基などを有している重合体をいう。本発明では、アクリル酸、アクリル酸塩を重合して得られるポリアクリル酸、ポリアクリル酸の一部(25〜95モル%程度)または全部のカルボキシル基が塩になっている中和ポリアクリル酸の他、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリルアクリレート等の水溶性または疎水性不飽和単量体等を共重合成分とするものも含まれる。本発明において、アクリル酸以外の単量体を用いる場合には、このアクリル酸以外の単量体は、主成分として用いるアクリル酸およびその塩との合計量に対して、30モル%以下、好ましくは10モル%以下で用いることが好ましい。なお、これら親水性樹脂の代表例として、後述する吸水性樹脂や水溶性樹脂が挙げられる。
【0039】
単量体成分はアクリル酸および/またはその塩を主成分とし、中でも着色問題の大きい吸水性樹脂、特に、部分中和のアクリル酸ポリマーが本発明に最適に適用される。部分中和のアクリル酸ポリマーは、物性面から、アクリル酸部分の50〜95モル%が中和されていると好ましく、60〜90モル%が中和されているとより好ましい。塩としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを例示することができるが、低着色のためには、金属塩、特に、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属塩のうちでもナトリウム塩やリチウム塩が好ましく、高い加圧下吸収倍率を有しながら、やや着色しやすいリチウム塩に対しても好適に用いることができる。この中和は重合前の単量体で行っても良いし、重合中や重合後に行っても良い。最終的に得られるアクリル酸系重合体中のハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量を少ないものとするためには、アクリル酸およびその塩以外の共重合成分として、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下のものを用いることが望ましい。そして、重合される全単量体成分中でも、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が、0.20ppm以下、さらに0.15ppm以下、特に0.10ppm以下にすることが好ましい。
【0040】
本発明においては、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量の少ないアクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体成分を重合して得られる親水性樹脂に対し、酸性物質を残存させることで、ハイドロキノンとベンゾキノンの平衡をハイドロキノン側に強く進行させ、セミキノンの存在率が低くなり、セミキノンのキンヒドロン化を抑制することができる。このような酸性物質としては、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、スルファミン酸、ギ酸、炭酸、シュウ酸、クエン酸、こはく酸、安息香酸、サリチル酸、酒石酸、酢酸等を挙げることができる。
なお、別途、後述するように、親水性樹脂のpH(生理食塩水中)を5.5以下に下げることで、さらに低着色とすることもでき、例えば、0〜58モル%中和、さらには0〜50モル%中和、とりわけ0〜40モル%、特に0〜10モル%中和のポリアクリル酸架橋体も本発明では、従来の常識に反して好適に、低着色、耐吸湿ブロッキング性の吸水性樹脂として使用される。
【0041】
また、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量の少ないアクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体成分を重合して得られる親水性樹脂に対し、アルカリ性物質を残存させることで、メカニズムの詳細は不明であるが、ハイドロキノンから由来するセミキノンの存在率が低くなると推定され、セミキノンのキンヒドロン化を抑制することができる。このようなアルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等を挙げることができる。
本発明においては、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量の少ないアクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体成分を重合して得られる親水性樹脂に対し、前記したキンヒドロン化防止剤を添加することで、長期保存した場合の着色や変色をより少なくすることができる。
【0042】
本発明の親水性樹脂は、長期保存しても着色や変色のおそれの少ないものであり、具体的には、開放系、70℃、65%RH、1週間放置後の着色度(YI)が20以下、好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、最も好ましくは6以下である。初期の着色度(YI)は、好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下、最も好ましくは4以下である。上記条件下で、1週間放置後の着色度(YI)の変化(ΔYI)は、好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下、最も好ましくは4以下である。
また、本発明で親水性樹脂を得るに際し、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、性能面や重合の制御の容易さから、上記単量体成分を水溶液とすることによる水溶液重合または逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、逆相懸濁重合とは、不活性疎水性溶媒中に単量体水溶液の液滴を分散させる重合方法であり、水溶液重合とは、単量体水溶液を不活性溶媒に分散させることなく直接重合させる方法である。さらに、これらの重合は、好ましくは、窒素やアルゴンなどの不活性気体雰囲気で行われ、また、単量体成分は、その溶解酸素が不活性気体で十分に置換された後に重合に用いられる。本発明では、高生産性で高物性だが、着色の問題が起こりやすかった水溶液重合に特に好適である。
【0043】
上記逆相懸濁重合や水溶液重合で、単量体成分を水溶液とする場合、この水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体成分の濃度は、特に限定されるものではないが、物性面から、10重量%〜70重量%の範囲内が好ましく、15〜45重量%がより好ましく、30〜40重量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液重合または逆相懸濁重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
上記単量体水溶液を重合する際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤の1種または2種以上を用いることができる。
【0044】
さらに、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用し、両者を組み合わせることによりレドックス系開始剤とすることもできる。上記の還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
これらの重合開始剤や還元剤の使用量は、単量体成分に対して、通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.5モル%である。これらの重合開始剤の使用量が0.001モル%未満の場合には、未反応の単量体成分が多くなり、従って、得られる親水性樹脂中の残存モノマーが増加するので好ましくない。一方、これら重合開始剤の使用量が2モル%を越える場合には、得られる親水性樹脂、特に吸水性樹脂中の水可溶成分や着色が増加するので好ましくない。
【0045】
また、重合開始剤を用いる代わりに、反応系に放射線、電子線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより重合反応を行ってもよいし、それらを重合開始剤と併用してもよい。なお、上記重合反応における反応温度は、特に限定されるものでないが、15〜100℃、さらには20〜90℃の範囲内が好ましい。また、反応時間や圧力も特に限定されるものではなく、単量体成分や重合開始剤の種類、反応温度などに応じて適宜決定すればよい。
なお、重合に際しては、反応系に、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、窒素、アゾ化合物、不活性有機溶媒などの各種発泡剤;澱粉、セルロース、それらの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸 (塩)架橋体等の親水性高分子;各種界面活性剤;次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0046】
水溶液重合した場合、得られたゲル状重合体は必要により細分化された後、好ましくは乾燥され、必要により粉砕や分級、さらには造粒することで親水性樹脂が得られる。本発明では、重合後なるべく短時間で乾燥することで、さらに低着色の親水性樹脂が得られる。親水性樹脂の含水率は2重量%以下が好ましい。
すなわち、本発明で親水性樹脂を得る場合、より低着色を達成するため、その乾燥減量(粉末1gを180℃で3時間加熱)から求められる樹脂固形分が80重量%以上、好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、さらには98重量%以上とされる。また、乾燥温度は特に限定されるものではないが、例えば、100〜300℃の範囲内、より好ましくは150〜250℃の範囲内とすればよい。また、乾燥時間は特に限定されるものではないが、長時間の放置は着色をまねく恐れがあり、よって、重合後なるべく短時間、好ましくは5時間以内、さらには3時間以内、特に1時間以内に上記固形分にまで乾燥される。
【0047】
用いられる乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではないが、熱風乾燥や高湿乾燥がより好ましい。
本発明では特に不活性気体や不活性溶媒も必要なく、いかなる雰囲気や乾燥条件でも着色の少ない親水性樹脂が得られ、生産性や物性に優れる。本発明では高温短時間の熱風乾燥や高湿乾燥が好ましく適用される。なお、逆相懸濁重合では、不活性溶媒での低温共沸脱水が乾燥に用いられるが、市販品の逆相吸水性樹脂ではかかる特殊な乾燥のためか、やや低着色である。しかし、共沸脱水は有機溶媒の使用によるコストや、残存有機溶媒による製品の安全性のために好ましくなく、本発明の方法は低着色のみならず、その安全性やコスト面でも好ましい。
【0048】
本発明で得られる親水性樹脂の形状については、特に制限がなく、不定形破砕状や球状等の粉末、ゲル状、シート状、棒状、繊維状、フィルム状であってもよく、また、繊維基材などに複合化や担持させてもよい。本発明の諸物性を達成する上で、好ましくは、粉末状の親水性樹脂、特に、高物性ではあるが着色が目立ちやすかった不定形破砕状の親水性樹脂が用いられる。
親水性樹脂の粉末の重量平均粒子径としては、10〜2000μm、物性面から好ましくは100〜1000μm、さらに好ましくは200〜600μmの範囲であり、さらに150μm以下の微粉末の含有量は少ないほど、10重量%以下、さらには5重量%以下が好ましい。特に、高物性(たとえば、通液性や加圧下吸収倍率)であるのにもかかわらず着色の問題の顕著であった、平均粒子径の粗い粉末(例えば、300μm以上の粒子を50重量%含む粉末)や、微粉(例えば、150μm以下)の少ない粉末に対して、本発明は好ましく適用される。また、実質上、上限は、850μm以下であり、300〜850μmの粒子を50重量%以上、さらには70重量%以上、特に80重量%以上含むことが好ましい。
【0049】
本発明では、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量を0.20ppmとした上、その親水性樹脂のpHを低く、調整することでさらに低着色とすることができる。
これら親水性樹脂のうち、架橋構造を有するものは吸水性樹脂となりうる。吸水性樹脂とは、多量の水、生理食塩水、尿等を吸収膨潤して実質水不溶性のヒドロゲルを形成するものである。
本発明で吸水性樹脂とは、典型的には、単量体成分を重合、かつ、架橋することにより得られ、無荷重下、イオン交換水中において自重の10〜3000倍、生理食塩水中において自重の5〜200倍という多量の水を吸収し、水不溶性ヒトロゲルを形成するものである。また、上記吸水性樹脂としては、この吸水性樹脂中の水可溶分が25重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下の実質水不溶性を示すものが挙げられる。吸水性樹脂の形状は、粉末が好ましく、不定形破砕状の粉末がさらに好ましく、その平均粒子径も前述の親水性樹脂と同様である。
【0050】
用いられる架橋方法としては特に制限なく、例えば、(A)アクリル酸および/またはアクリル酸塩を重合して、または、上記水溶性不飽和単量体を共重合成分として、親水性重合体を得た後、重合中や重合後に架橋剤を添加して後架橋する方法、(B)ラジカル重合開始剤によるラジカル架橋、(C)電子線等による放射線架橋する方法等も挙げられるが、(D)予め所定量の内部架橋剤をアクリル酸および/またはアクリル酸塩、または共重合成分としての上記水溶性または疎水性不飽和単量体に添加して重合を行い、重合と同時または重合後に架橋反応させることが好ましい。
かかる手法(D)で用いられる内部架橋剤としては、例えば、N,N−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の内部架橋剤の1種または2種以上が用いられる。なお、1種以上の内部架橋剤を使用する場合には、得られる吸水性樹脂の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0051】
内部架橋剤の使用量としては、前記単量体成分に対して、0.005〜2モル%とするのが好ましく、より好ましくは0.01〜1モル%、さらに好ましくは0.05〜0.2モル%の範囲である。上記内部架橋剤の使用量が0.005モル%よりも少ない場合、または、2モル%よりも多い場合には、所望の吸収特性が得られない恐れがある。
本発明の吸水性樹脂は、単量体成分を適宜調整して吸水性樹脂の自身の生理食塩水中でのpHを5.5以下に調整することで、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量を0.20ppm以下に調整すると、さらに低着色の吸水性樹脂となるので好ましい。このような生理食塩水中でpH5.5以下の酸性吸水性樹脂としては、重合体の官能基として酸基を有し、生理食塩水中でのpHが5.5以下の酸性を示すものであり、その酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リン酸基などを好ましく例示できる。以下では、生理食塩水中でpH5.5以下の酸性吸水性樹脂を、単に、酸性吸水性樹脂と呼ぶことがある。
【0052】
酸性吸水性樹脂を得るには、用いる単量体成分の種類やモル比にもよるが、上記酸基を含有する単量体(酸基含有単量体)を主成分とする単量体成分を重合し吸水性樹脂を得るに際して、重合前や重合時の酸基含有単量体や得られた重合体の中和を全く行わないか、あるいは、酸基を中和する割合を低く、いわゆる低中和にすることで、得られた吸水性樹脂のpHが5.5以下の酸性にすることが必要である。
酸基含有単量体としてアクリル酸を用いる場合、アクリル酸塩の種類にもよるが、ナトリウム塩の場合、その構成単位としてアクリル酸100〜58モル%、アクリル酸塩0〜42モル%(但し、両者の合計量は100モル%とする)の範囲で重合することが好ましい。また、必要に応じて、アクリル酸またはその重合体を中和する場合、その中和は、重合前の単量体で行ってもよいし、重合途中または重合後に、さらに酸または塩基を添加する中和、いわゆる後中和で行ってもよい。そして、これらの中和には、公知の無機または有機の酸や塩基が用いられる。
【0053】
本発明の吸水性樹脂は、表面架橋されていてもよい。
吸水性樹脂の表面架橋とは、吸水性樹脂内部の均一な架橋構造の他にさらに表面層に架橋密度の高い部分を設けることであり、後述の表面架橋剤を用いて行われる。表面架橋剤が吸水性樹脂の表面に浸透や被覆してもよい。本発明では上記した吸水性樹脂、たとえば、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.20ppm以下のアクリル酸および/またはその塩を用いて得られた吸水性樹脂を、表面架橋することで、従来にない経時的な着色の少ない、新規な、表面架橋された吸水性樹脂(以下、表面架橋された吸水性樹脂を吸水剤ということがある。)が得られる。
【0054】
吸水性樹脂を表面架橋することによって、加圧下吸収倍率が高まる。従来市販の吸水性樹脂において、加圧下吸収倍率の高い吸水性樹脂は知られていたが、それらは何れも経時的に着色してしまうため、近年着目されている高コア濃度のおむつやナプキンに使用できないが実状であった。本発明の吸収剤は、1週間放置後の着色度(YI)が20以下で着色が小さく、かつ、生理食塩水に対する加圧下吸収倍率(50g/cm)が20g/g以上である。吸水剤の加圧下吸収倍率は、20g/g以上、好ましくは23g/g以上、さらに好ましくは25g/g以上である。
本発明で用いられる表面架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソバン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物等を必須とするものが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの表面処理剤は、pHに関わらず用いられる。
【0055】
上記例示の表面架橋剤のうち、物性や着色の点から、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、アルキレンカーボネート化合物等がより好ましい。
特に、本発明において、架橋反応に高温を必要する脱水性反応性架橋剤は、架橋反応後のみならず、経時的にも比較的着色し易いことが本発明者らによって見出された。かかる問題を解決できる本発明では、表面架橋剤としては、高物性を示す脱水反応性架橋剤(多価アミン、多価アルコール、アルキレンカーボネート)が好ましく、特に多価アルコールが、物性や着色の点から本発明で好適に使用される。
【0056】
なお、本発明において、物性面から、多価アルコールを反応させずに、上記その他表面架橋剤の溶剤として用いて、吸水性樹脂、特に酸性吸水性樹脂の表面に多価アルコールが浸透や被覆してもよい。多価アルコールを溶剤または表面架橋剤として用いない場合は、加圧下吸収倍率が向上しないばかりか、残存表面架橋剤の発生が見られたり、吸水速度が大きく低下したり、繊維基材との吸水剤との混合性やコア保型性に劣るなど、吸収性物品に適した、特に大人用おむつや生理用ナプキンに適した吸水剤が得られにくい場合がある。
また、上記酸性吸水性樹脂を用いて表面架橋する場合、溶媒または表面架橋剤としての多価アルコールは、酸性吸水性樹脂の表面架橋には特に有効である。酸性吸水性樹脂は吸水速度が遅い上、表面架橋時にもそのTgが低く、粘着性が高く、均一な表面架橋が困難であり、溶媒または架橋剤としての多価アルコール、特に架橋剤としての多価アルコールが酸性吸水性樹脂の表面架橋や吸水速度やコア保型性の改善のために必要であることが本発明者らによって初めて見出された。また、吸水剤表面を被覆または表面架橋する多価アルコールは、酸性吸水性樹脂が直接皮膚に触れることを防止する上でも重要であることが見出された。
【0057】
また、吸水性樹脂の表面架橋には、特開平6−184320号公報(特許文献5)で提案されているように、カルボキシル基と反応し得る表面架橋剤が、溶解度パラメータ(SP値)の互いに異なる第一表面架橋剤及び第二表面架橋剤を組み合わせてなる場合にも、加圧下吸収倍率がさらに一層優れた吸水剤を得ることができる。
上記の溶解度パラメータとは、化合物の極性を表すファクターとして一般に用いられる値である。本発明において、上記の溶解度パラメータは、ポリマーハンドブック第3版(WILEY INTERSCIENCE社発行)527頁〜539頁に記載されている溶媒の溶解度パラメータδ(cal/cm1/2を適用することとする。また、上記の頁に記載されていない溶媒の溶解度パラメータに関しては、このポリマーハンドブックの524頁に記載されているSmallの式に、同525頁に記載されているHoyの凝集エネルギー定数を代入して導かれる値を適用することとする。
【0058】
上記の第一表面架橋剤は、カルボキシル基と反応可能な、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2以上の化合物が好ましく、13.0(cal/cm1/2以上の化合物がより好ましい。上記の第二表面架橋剤は、カルボキシル基と反応可能な、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2未満の化合物が好ましく、9.5〜12.0(cal/cm1/2の範囲内の化合物がより好ましい。上記第一表面架橋剤としては、プロピレングリコール、グリセリン等が例示され、第二表面架橋剤としては、ブタンジオール、エチレングリコールジグリシジルエーテル等が例示される。
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、0.001重量部〜10重量部の範囲内が好ましく、0.01重量部〜5重量部の範囲内がより好ましい。
【0059】
また、表面架橋剤を併用する場合、用いられる表面架橋剤は少なくとも一方は多価アルコールであることが好ましい。また、酸性吸水性樹脂と皮膚との直接接触を防止した上、表面架橋剤または溶剤として用いられる多価アルコールの使用量は、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部、またより好ましくは0.2〜5重量部、特に好ましくは0.5〜4重量部で用いられる。
本発明における表面架橋剤には、加圧下吸収倍率の向上のため、溶媒として水を含むことが好ましい。水の使用量は、吸水性樹脂の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、0を越え20重量部以下が好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。
【0060】
また、本発明における表面架橋剤は、必要に応じて、親水性有機溶媒(水性液体)を含有してもよい。上記の親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類やそれらアルコールのEO(エチレンオキサイド)付加物;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。加圧下吸収倍率の向上のため、親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、0.1重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。
【0061】
吸水性樹脂と表面架橋剤またはその溶液/分散液との混合は、直接吸水性樹脂に噴霧ないし滴下してもよいし、50〜5000重量%程度(対吸水性樹脂)の多量の分散溶媒に吸水性樹脂を分散させてもよい。
吸水性樹脂と表面架橋剤とを混合した後、さらに、必要に応じて加熱処理を行い、吸水性樹脂の表面近傍を架橋させ、生理食塩水に対する50g/cmでの加圧下吸収倍率が20g/g以上の吸水剤を得る。この際、原料として用いた吸水性樹脂のpHを5.5以下に調整することで、さらに着色を防止できるので好ましい。
すなわち、吸水性樹脂の表面近傍で表面架橋剤を反応させるには、表面架橋剤の反応性、製造装置の簡易性、生産性を考慮すると加熱処理を行うのが好ましい。物性面や生産性のみならず、着色をより抑えるには、乾燥した状態で短時間で反応することが好ましく、よって、表面近傍の加熱架橋が粉体系で行われ、温度100〜250℃/3時間以内にてなされることが好ましい。なお、粉体系とは実質的に分散溶媒を用いずに、乾燥した吸水性樹脂に直接架橋剤またはその溶液(分散液)を添加して反応させることである。
【0062】
上記加熱処理を行う際の加熱温度は、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃である。また、加熱時間は、好ましくは1分〜2時間の範囲で決定される。好ましくは、例えば、温度180℃では0.1〜1.5時間の範囲、温度200℃では0.1〜1時間の範囲で加熱処理される。加熱処理は、通常の乾燥機又は加熱炉を用いて行うことができる。乾燥機としては、例えば、溝型混合乾燥機、ロータリー乾燥機、デスク乾燥機、流動層乾燥機、気流型乾燥機、赤外線乾燥機等が挙げられる。
また、本発明では、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量の少ない吸収性樹脂を用いているため、表面架橋に伴う着色も抑えられ、さらに得られた吸水性樹脂の経時的着色も抑えられる。また、酸性吸水性樹脂を用いれば、より着色を抑えられる上、表面架橋剤として多価アルコール等を用いた場合に、その反応性も大きく改善され、生産性の向上のみならず、また、吸水性樹脂の熱劣化も避けられることが見出された。
【0063】
上記表面架橋では、表面架橋剤や加熱処理条件(温度や時間)を調整することで、加圧下吸収倍率が20g/g以上、また、常圧吸収倍率が好ましくは25g/g以上とすることができる。
以上のようにして得られた本発明の吸水剤は、従来にない特性を有する新規な吸水剤、すなわち、多価アルコール等の表面架橋剤で架橋され、且つ生理食塩水中でのpHが5.5以下であり、生理食塩水に対する50g/cmでの加圧下吸収倍率が20g/g以上の吸水剤である。また、本発明の吸水剤は、加圧下吸収倍率が20g/g以上であり、かつ70℃、65%1週間での着色度(YI)が20以下の新規な吸水剤である。また、その形状は、好ましくは不定形破砕状であり、その粒子径は前記のとおりである。
【0064】
本発明の吸水剤は、生理食塩水に対する加圧下吸収倍率が20g/cmでは好ましくは30g/g以上であり、さらに高荷重下(50g/cm)での人工尿に対する加圧下吸収倍率も好ましくは25g/g以上、さらに好ましくは30g/gという極めて高い値を示す。吸水剤の(無加圧下)吸収倍率は、好ましくは25g/g以上、さらに好ましくは28g/g以上である。また、吸水剤の形状は粉末が好ましく、その平均粒子径は前記の通りであり、吸水剤の水可溶性分量や好ましいYI値の変化(ΔYI)も好ましくは前記の範囲である。
特に低着色の吸水性樹脂を目的とする場合、過剰の酸性(強酸性)では、表面架橋剤を用いても物性低下や皮膚刺激性が見られる場合もあるので、吸水剤のpHは好ましくは5.3〜2.8、より好ましくは5.3〜4.5、特に好ましくは5.3〜4.8の弱酸性の範囲である。
【0065】
さらに、本発明の吸水剤は高温高湿(例えば、70℃/湿度65%)でも長時間、低着色であり、温度25℃以上湿度65%以上での使用または保存に好適である。
また、本発明の吸水剤、特に、多価アルコールで表面架橋された吸水剤または多価アルコールが表面に浸透した吸水剤は、原料の吸水性樹脂のpHを5.5以下とした場合、通常、25℃、相対湿度60%の状態下で2時間放置したときのブロッキング率が50重量%以下を示し、吸湿流動性(高湿での吸水剤の耐ブロッキング性)に優れた吸水剤である。本発明の吸水剤のブロッキング率は、さらに好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0066】
従来より、中和率の低い酸性の吸水性樹脂は、樹脂の粘着性向上やTg低下、吸水速度の低下、単量体の揮発性などの問題を有していることが広く知られた。そのため、従来の吸水性樹脂としては、その衛生材料としての用途を考え、また、特に表面架橋の容易さなどもあり、実質中性の吸水性樹脂(pH6〜8の範囲、さらには、pH=6.1程度で殆どの衛生材料用の市販品が該当)、例えば、中和率65〜90%程度の中性ポリアクリル酸塩架橋体が用いられていた。
しかし、本発明者らにより、多価アルコール等の表面架橋剤で、上記酸性吸水性樹脂を用いて表面架橋を行なって得られた吸水剤は、意外なことに、低着色で表面架橋の反応性(生産性)も向上した上、残存モノマーも低減され、吸湿流動性(耐ブロッキング性)や液拡散性も向上し、消臭能にも優れ、吸収性物品、特に生理用ナプキンや大人用紙おむつに好適である。特に本発明では、吸水性樹脂について、そのpHを下げるほど、経時的な着色(ΔYI)を改善することができ、0〜10モル%中和、さらには実質未中和のポリアクリル酸架橋体も好ましく用いられる。
【0067】
従来、吸水性樹脂の吸湿流動性を改善するために、吸水性樹脂に無機粉末、界面活性剤などの添加剤を添加する技術は知られていたが、これら添加剤は安全性やコストの問題のみならず、その物性(加圧下吸収倍率など)を低下させたり、吸水性樹脂を含む吸収性物品中での吸水挙動(パルプへの混合性や固定性、液の戻り量)を低下させるとい問題を有していた。それに対して、本発明の吸水剤はそのpHを酸性とするという簡便な手段で、驚くべく吸湿流動性の改善を示す上に、残存モノマー低減や表面架橋の反応性を改善し、しかも、物性やコスト、安全性に影響を与えない。
本発明の吸水性樹脂や吸水剤に、消毒剤、抗菌剤、香料、各種の無機または有機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類や、本発明のポリアクリル酸以外の各種親水性樹脂や疎水性樹脂等を添加し、これにより、種々の機能を付与させることもできる。これらの添加量は、目的に応じて適宜決定されるが、たとえば、吸水性樹脂や吸水剤に対して0.001〜400重量%である。
【0068】
次いで、本発明の吸収性物品について説明する。
本発明の吸収性物品は、吸水性樹脂と繊維基材を含む吸収層、透液性を有する表面シート、不透液性を有する背面シートを備える吸収性物品であって、吸水性樹脂と繊維基材の合計量に対する吸水性樹脂の重量比αが0.3以上であることを特徴とするものである。αは好ましくは0.4〜1.0、さらに好ましくは0.5〜0.8の範囲である。
本発明の吸収性物品において、吸水性樹脂と繊維基材との合計量に対する吸水性樹脂の重量比αが0.3未満の場合は、吸水性樹脂の使用量が少なく、樹脂の種類によらず比較的の吸水性樹脂の分布が均一な吸収性物品が得られるが、一般に吸収性物品はかさ高く、戻り量も多いものとなる。特に、本発明の吸水性樹脂を用いた場合、製造初期および経時的な着色が非常に少ないため、αが0.3以上の高濃度に吸水性樹脂を配合しても、その着色が問題なることがなく非常に好ましい。
【0069】
この吸収性物品の製造方法は、繊維基材と吸水性樹脂とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体(吸収コアを)作成し、吸収コアを液透過性表面材と液不透過性基材でサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープなどを装置することで、吸収性物品、特に生理用ナプキンや大人用おむつとすればよい。かかる吸収コアは密度0.06〜0.5g/cc、坪量0.01〜0.20g/cmの範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロンなどを例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。
【0070】
本発明の吸水性樹脂を用いることにより、吸水性樹脂と繊維基材の合計量に対する吸水性樹脂の重量比αが0.3以上と高い樹脂濃度の場合においても、作業性よく、均一に繊維と樹脂がブレンドされた吸収体を製造することができる。
このように本発明の吸水性樹脂は、樹脂濃度の高い優れた吸収特性を示す吸収性物品を安定的に提供することができる。このような吸収性物品としては、具体的には、近年成長の著しい大人用紙おむつをはじめ、子供用おむつや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料等が挙げられそれらに特に限定されるものではないが、吸収性物品の中に存在する吸水性樹脂が優れた作業特性、混合特性を有し、かつ、加圧下の吸収特性(通液性、吸収量、拡散性、吸収速度など)に優れていることから吸収性物品の戻り量が少なく、ドライ感が著しいことより装着している本人、介護の人々の負担等を大きく低減することができる。
【0071】
本発明の親水性樹脂や吸水性樹脂は、高い湿度、特に25℃以上、相対湿度50%以上の状態下での使用または保存に好適であり、いかなる工場環境でも特に湿度調整を行なわず使用できるので好ましい。特に、特に高湿下でブロッキングや着色も少ないため、吸水性樹脂を粉末で用いるとさらに好ましい。
また、本発明は、親水性樹脂を一定温度および一定湿度の条件下、開放系に放置して、親水性樹脂の着色評価方法をも提供する。温度および湿度は、温度25℃以上、湿度50℃以上が好ましく、温度40〜100℃、湿度60〜100%がさらに好ましい。また、評価に要する時間は12時間以上、さらには24〜480時間である。従来、特許文献2の密閉系での着色評価に方法に比べて、本発明の方法は簡便かつ正確であり、実際の着色により対応している。
【実施例】
【0072】
以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例中で「部」とは特にことわりがない限り「重量部」を表すものとする。 本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性[1]〜[8]は、以下の測定法に従って求めた。
[1]ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量の定量方法
精製アクリル酸中に含まれるハイドロキノンおよびベンゾキノンの定量は発色法を用いて以下の操作により行った。
(1)25mlメスフラスコに脱イオン水10mlをホールピペットで採取し、試料溶液2mlを加える。
(2)ブランクとして、25mlメスフラスコに脱イオン水10mlをホールピペットで採取する。
(3)両液を15分間氷冷した後、予め30分間氷冷したn−ブチルアミン5mlをホールピペットで加え、氷水中にて混合撹拌し、白煙が生じなくなるまで反応させる。
(4)脱イオン水で希釈し全量25mlにした後、分光光度計((株)日立製作所製、モデル100−40)で吸光度を求め、ハイドロキノンを定量する。
【0073】
[2]吸水性樹脂の経時着色の評価方法
吸水性樹脂(乾燥粉末/特に断わりのない限り粒径600−300μmの乾燥粉末)を内径55mmで高さ70mmのポリプロピレン製容器((株)テラオカ製の120cc Pack−Ace)の底面に2.000g散布し、容器に蓋をせず開放系で、タバイエスペック(株)製の恒温恒湿機(PLATINOUS LUCIFER、形式番号PL−2G)中70℃、65%RH雰囲気に1週間、吸水性樹脂粉末を放置した。なお、上記吸水性樹脂の単位面積当たりの散布量(0.084g/cm)は、高濃度コアでのモデル的な散布量である。
【0074】
1週間後、容器中の吸水性樹脂を下記粉末・ペースト試料台(30mmΦ)にすべて充填して、その着色度(YI)について、日本電色工業株式会社(製)分光式色差計SZ−Σ80 COLOR MEASURING SYSTEMを用いて、設定条件(反射測定/付属の粉末・ペースト試料台(30mmΦ)/標準として粉末・ペースト用・標準丸白板NO2/30Φ投光パイプ)にて、吸水性樹脂の表面色を測定した。
[3]吸水性樹脂の吸収倍率の測定方法
吸水性樹脂0.2gを不織布製のティーバッグ式袋(40×150mm)に均一に入れ、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。30分後にティーバッグ式袋を引き上げ、一定時間水切りを行った後、ティーバッグ式袋の重量W1を測定した。同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行いそのときの重量W2を求め、以下の式で(無加圧下)吸収倍率を算出した。
【0075】
吸収倍率(g/g)
=(吸収後重量W1(g)−ブランク重量W2(g))/吸水性樹脂重量(g)
[4]生理食塩水中のpH
300rpmの撹拌子を含むカラスビーカー中の100.0gの生理食塩水(室温、23±2℃)に対して、100mgの吸水性樹脂ないし吸水剤を添加して、20分間撹拌後、膨潤ゲルの分散した生理食塩水のpHを、pHメーター(ガラス電極式水素イオン濃度型;株式会社堀場製作所)にて測定する。
[5]水可溶性分および残存モノマー
吸水性樹脂ないし吸水剤0.50gを1,000mlの脱イオン水に分散し、マグネテックスターラーで16時間攪拌後、ろ紙(TOYO、No.6)で膨潤ゲルを分離しろ過した。次いで、吸水性樹脂から溶出した濾液中の水溶性ポリマーをコロイド滴定することで、吸水性樹脂中の水可溶分の重量%(対吸水性樹脂)を求めた。また、別途、2時間攪拌後の吸水剤の濾液を液体クロマトクラフィーでUV分析することで、吸水剤の残存モノマー量ppm(対吸水剤)も分析した。
【0076】
[6]加圧下吸収倍率
加圧下吸収倍率の測定に用いた測定装置について、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、測定装置は、天秤1と、この天秤1上に載置された所定容量の容器2と、外気吸入パイプシート3と、導管4と、ガラスフィルタ6と、このガラスフィルタ6上に載置された測定部5とからなっている。上記の容器2は、その頂部に開口部2aを、その側面部に開口部2bをそれぞれ有している。容器2の開口部2aには外気吸入パイプ3が嵌入される一方、開口部2bには導管4が取り付けられている。
また、容器2には、所定量の生理食塩水11ないし人工尿が入っている。外気吸入パイプ3の下端部は、生理食塩水11中に没している。外気吸入パイプ3は、容器2内の圧力をほぼ大気圧に保つために設けられている。上記のガラスフィルタ6は、直径55mmに形成されている。そして、容器2及びガラスフィルタ6は、シリコーン樹脂からなる導管4によって互いに連通している。また、ガラスフィルタ6は、容器2に対する位置及び高さが固定されている。
【0077】
上記の測定部5は、濾紙7と、支持円筒8と、この支持円筒8の底部に貼着された金網9と、おもり10とを有している。そして、測定部5は、ガラスフィルタ6上に濾紙7、底部に金網9を有する支持円筒8がこの順に載置されると共に、支持円筒9内部、つまり金網9上におもり10が載置されてなっている。金網9はステンレスからなり400メッシュ(JIS標準メッシュ38μm)に形成されている。また、金網9の上面、つまり金網9と吸水性樹脂との接触面の高さは、外気吸入パイプ3の下端面の高さと等しくなるように設定されている。そして、金網9上に、所定量及び所定粒径の吸水性樹脂が均一に散布されるようになっている。おもり10は、金網9上の吸水性樹脂に対して、20g/cmないし50g/cmの荷重を均一に加えることができるように、その重量が調整されている。
【0078】
上記構成の測定装置を用いて、加圧下吸収倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。
まず、容器2に所定量の0.9重量%生理食塩水11を入れ、外気吸入パイプ3を嵌入する等の所定の準備動作を行う。次に、ガラスフィルタ6上に濾紙7を載置すると共に、この載置動作に平行して、支持円筒8内部、つまり金網9上に、吸水性樹脂0.9gを均一に散布し、この吸水性樹脂上におもり10を載置する。次いで、濾紙7上に、吸水性樹脂及びおもり10を載置した上記支持円筒8の金網9を、その中心部がガラスフィルタ6の中心部に一致するように載置する。
【0079】
そして、濾紙7上に支持円筒8を載置した時点から、60分にわたって経時的に、吸水性樹脂が吸水した生理食塩水11の重量を天秤1の測定値から求める。同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、吸水性樹脂以外の、例えば、濾紙7等が吸水した生理食塩水11の重量を天秤1の測定値から求め、ブランク値とした。次いで、ブランク値を差し引く補正を行って、吸水性樹脂が実際に吸水した生理食塩水11の重量を、吸水性樹脂の重量(0.9g)で除して、20g/cmないし50g/cmでの加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
測定には、被吸収液として生理食塩水(0.9重量%NaCl水溶液)の他、別途、人工尿も用いた。測定に用いた人工尿は、硫酸ナトリウムを0.2重量%,塩化カリウムを0.2重量%,塩化マグネシウム6水和物を0.05重量%,塩化カルシウム2水和物を0.025重量%,燐酸二水素アンモニウムを0.085重量%,燐酸水素二アンモニウムを0.015重量%、各々、イオン交換水に溶解させた人工尿である。
【0080】
[7]吸湿ブロッキング率
JIS 850μm通過物である吸水性樹脂の粉末2.000gをアルミニウムカップ(底面の直径52mm/高さ22mm)の底に均一に散布し、予め温度25℃で相対湿度60%の恒温恒湿器(タバイエスペック製PLATINOUS LUCIFERPL- 2G )に入れる。次いで、2時間放置後、吸水性樹脂を恒温恒湿器より取り出し、さらにアルミニウムカップ上の吸水性樹脂を全量、直径7.5cmで目開き2000μmのJIS 標準篩に上に移動させ、篩上で振動与えず放置する。
そして、吸湿ブロッキングすることで2000μm篩上に残留した吸水性樹脂の重量(g)/および篩を通過した吸水性樹脂の重量(g)を測定し、その比率(篩上の吸水性樹脂(g)/(篩上の吸水性樹脂(g)+篩通過の吸水性樹脂(g))を計算することで、吸水性樹脂のブロッキング率(%)を求めた。もちろん、ブロッキング率が低いほど、吸湿後の流動性に優れた好適な吸水性樹脂である。
【0081】
[8]吸湿性
上記[7]の試験において、吸水性樹脂粉末2.000gが温度25℃で相対湿度60%の恒温恒湿器(タバイエスペック製PLATINOUS LUCIFER PL-2G )の条件下、2時間で吸湿した吸水性樹脂の重量増加(0.1mg単位)を求めて、吸湿性(対吸水性樹脂の重量%)を求めた。勿論、吸水性樹脂としての保存安定性などから、吸湿率(%)が少ない方が好ましい。
[実施例1](ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸)
プロピレンを接触気相酸化してアクリル酸を製造する方法において、得られた反応ガスを吸収塔で水に吸収させる際に、吸収液中にハイドロキノンを生成したアクリル酸水溶液に対して300ppm添加して吸収させ、アクリル酸水溶液を得た。次いでこのアクリル酸水溶液から酢酸、プロピオン酸などの軽沸成分を蒸留により除去し、さらにマレイン酸やアクリル酸の二量体などの高沸成分を除去して粗製アクリル酸を得た。この粗製アクリル酸の組成はアクリル酸99.75重量%、酢酸0.07重量%、プロピオン酸0.05重量%、水0.05重量%、その他0.08重量%であり、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量は10ppmであった。
【0082】
この粗製アクリル酸を、単蒸留装置を用いて、以下の方法で精製し、精製アクリル酸(ア)を得た。まず、粗製アクリル酸に重合禁止剤としてハイドロキノンを添加してハイドロキノンとベンゾキノンの合計量を500ppmとした後、1000g/hrで連続的に蒸留装置の塔底に供給しながら50mmHgの減圧下、蒸留を実施し、精製アクリル酸985g/hrで廃油を15g/hrで連続的に抜き出した。このときの廃油の組成はアクリル酸50.6重量%、酢酸0.01重量%、プロピオン酸0.01重量%、その他49.3重量%であり、精製アクリル酸(ア)の組成はアクリル酸99.83重量%、酢酸0.07重量%、プロピオン酸0.05重量%、水0.05重量%で、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量は0.15ppmであった。
【0083】
続いて、撹拌機を備えた蒸留フラスコにイオン交換水1754.5gを仕込み、精製アクリル酸(ア)を1280g、および48重量%の水酸化ナトリウム水溶液1482gを、フラスコ中の温度を20〜40℃に保ちながら滴下して、37重量%水溶液の精製アクリル酸ナトリウム(イ)を得た。
[実施例2](ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸)
粗製アクリル酸を精製する方法として、晶析装置を用いて精製した。実施例1と同様にして得た粗製アクリル酸に重合防止剤としてハイドロキノンを添加してハイドロキノンとベンゾキノンの合計量を500ppmとした後、10000gを晶析装置に導入し、9850gの精製アクリル酸(ウ)を得た。
【0084】
このときの廃油の組成はアクリル酸81.9重量%、酢酸4.0重量%、プロピオン酸2.7重量%、水2.7重量%、その他8.7重量%であり、精製アクリル酸(ウ)の組成はアクリル酸99.97重量%、酢酸0.01重量%、プロピオン酸0.01重量%、水0.01重量%で、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量は0.10ppmであった。精製アクリル酸(ウ)を実施例1と同様の方法で中和し、37重量%水溶液の精製アクリル酸ナトリウム(エ)を得た。
[比較例1](ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量1.20ppmのアクリル酸)
粗製アクリル酸を精製する方法として、実施例1の同様の蒸留装置を用いて以下の方法で精製アクリル酸(オ)を得た。実施例1と同様にして得た粗製アクリル酸に重合防止剤としてハイドロキノンを添加してハイドロキノンとベンゾキノンの合計量を1500ppmとした後、1000g/hrで連続的に蒸留装置の塔底に供給しながら50mmHgの減圧下、蒸留を実施し、精製アクリル酸985g/hrで廃油を15g/hrで連続的に抜き出した。
【0085】
このときの廃油の組成はアクリル酸49.9重量%、酢酸0.01重量%、プロピオン酸0.01重量%、その他50.0重量%であり、精製アクリル酸(オ)の組成はアクリル酸99.82重量%、酢酸0.01重量%、プロピオン酸0.05重量%、水0.06重量%で、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量は1.20ppmであった。精製アクリル酸(オ)を実施例1と同様の方法で中和し、37重量%水溶液の精製アクリル酸ナトリウム(カ)を得た。
[比較例2](ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量1.10ppmのアクリル酸)
粗製アクリル酸を精製する方法として、実施例2と同様の晶析装置を用いて以下の方法で精製アクリル酸(キ)を得た。実施例1と同様にして得た粗製アクリル酸に重合防止剤としてハイドロキノンを添加してハイドロキノンとベンゾキノンの合計量を1500ppmとした後、10000gを晶析装置に導入し、9850gの精製アクリル酸(キ)を得た。
【0086】
このときの廃油の組成はアクリル酸75.3重量%、酢酸4.0重量%、プロピオン酸2.7重量%、水2.7重量%、その他15.3重量%であり、精製アクリル酸(キ)の組成はアクリル酸99.97重量%、酢酸0.01重量%、プロピオン酸0.01重量%、水0.01重量%で、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量は1.10ppmであった。精製アクリル酸(キ)を実施例1と同様の方法で中和し、37重量%水溶液の精製アクリル酸ナトリウム(ク)を得た。
実施例1では粗製アクリル酸を蒸留により精製する際にハイドロキノンを添加してハイドロキノンとベンゾキノンの合計量を500ppmとしているのに対し、比較例1では1500ppmとしたものである。そのため結果として実施例1では精製アクリル酸(ア)中のハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量は0.15ppmであるが、比較例1では精製アクリル酸(オ)中のハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量は1.20ppmと多くなっている。
【0087】
同様に実施例2では粗製アクリル酸を晶析により精製する際にハイドロキノンを添加してハイドロキノンとベンゾキノンの合計量を500ppmとしているのに対し、比較例2では1500ppmとしたものである。そのため結果として実施例2では精製アクリル酸(ウ)中のハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量は0.10ppmであるが、比較例2では精製アクリル酸(キ)中のハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量は1.10ppmと多くなっている。
[実施例3](ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸の重合)
回転径が120mmであるシグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付ステンレス製双腕型ニーダーを反応機とした。該ニーダーは系内を密封する蓋を備えている。実施例1で得た精製アクリル酸(ア)376.3g、アクリル酸ナトリウム(イ)3983gとイオン交換水640.7g、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート2.775gを、シグマ型双腕ニーダーに仕込み、反応液とした後、窒素ガスを吹き込んで系を窒素置換した。次にジャケットに30℃の温水を通し、反応液を撹拌しながら、反応液に、重合開始剤として過硫酸ナトリウムおよびL−アスコルビン酸を添加して、およそ1分後に重合が開始した。そして、30〜80℃で重合を行い60分後に含水ゲル状重合体を得た。得られた含水ゲル状重合体を50メッシュの金網上に広げ、160℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュの金網で通過物を分級することにより、吸水性樹脂(1)を得た。
【0088】
吸水性樹脂(1)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例4](ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.10ppmのアクリル酸の重合)
実施例3において、精製アクリル酸(ウ)とアクリル酸ナトリウム(エ)を用いる他は、実施例3と同様にして吸水性樹脂(2)を得た。
吸水性樹脂(2)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[比較例3](ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量1.10ppmのアクリル酸の重合)
実施例3において、精製アクリル酸(オ)とアクリル酸ナトリウム(カ)を用いる他は、実施例3と同様にして吸水性樹脂(3)を得た。
【0089】
吸水性樹脂(3)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[比較例4](ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量1.20ppmのアクリル酸の重合)
実施例3において、精製アクリル酸(キ)とアクリル酸ナトリウム(ク)を用いる他は、実施例3と同様にして吸水性樹脂(4)を得た。
吸水性樹脂(4)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例5](キンヒドロン化防止剤の添加)
吸水性樹脂(3)95重量部に対してN,N’−メチレンビスアクリルアミド5重量部を均一にドライブレンドした後、経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例6](キンヒドロン化防止剤の添加)
吸水性樹脂(3)99重量部に対してN,N’−メチレンビスアクリルアミド1重量部を均一にドライブレンドした後、経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例7](キンヒドロン化防止剤の添加)
吸水性樹脂(4)95重量部に対してN,N’−メチレンビスアクリルアミド5重量部を均一にドライブレンドした後、経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例8](キンヒドロン化防止剤の添加)
吸水性樹脂(4)99重量部に対してN,N’−メチレンビスアクリルアミド1重量部を均一にドライブレンドした後、経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例9](ハイドロキノンおよびキンヒドロン化防止剤の添加)
吸水性樹脂(2)95重量部に対してハイドロキノン0.02重量%水溶液5重量部を混合し吸水性樹脂(5)を得た。吸水性樹脂(5)99重量部に対してN,N’−メチレンビスアクリルアミド1重量部を均一にドライブレンドした後、経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例10](ハイドロキノンおよびキンヒドロン化防止剤の添加)
吸水性樹脂(2)95重量部に対してハイドロキノン0.2重量%水溶液5重量部を混合し吸水性樹脂(6)を得た。吸水性樹脂(6)99重量部に対してN,N’−メチレンビスアクリルアミド1重量部を均一にドライブレンドした後、経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[比較例5](ハイドロキノンの添加)
吸水性樹脂(5)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[比較例6](ハイドロキノンの添加)
吸水性樹脂(6)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例11](不純物の添加)
吸水性樹脂(2)99重量部に対してハイドロキノンモノメチルエーテル1重量部を混合し吸水性樹脂(7)を得た。吸水性樹脂(7)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例12](不純物の添加)
吸水性樹脂(2)99重量部に対してアクロレイン1重量部を混合し吸水性樹脂(8)を得た。吸水性樹脂(8)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例13](不純物の添加)
吸水性樹脂(2)99重量部に対してベンズアルデヒド1重量部を混合し吸水性樹脂(9)を得た。吸水性樹脂(9)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例14](不純物の添加)
吸水性樹脂(2)99重量部に対して酢酸1重量部を混合し吸水性樹脂(10)を得た。吸水性樹脂(10)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例15](不純物の添加)
吸水性樹脂(2)99重量部に対してプロピオン酸1重量部を混合し吸水性樹脂(11)を得た。吸水性樹脂(11)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[実施例16](不純物の添加)
吸水性樹脂(2)99重量部に対してフルフラール1重量部を混合し吸水性樹脂(12)を得た。
[比較例7](ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量1.10ppmのアクリル酸の重合)
回転径が120mmであるシグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付ステンレス製双腕型ニーダーを反応機とした。該ニーダーは系内を密封する蓋を備えている。比較例2で得た精製アクリル酸(オ)376.3g、アクリル酸ナトリウム(カ)3983gとイオン交換水640.7g、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド1.617gを、シグマ型双腕ニーダーに仕込み、反応液とした後、窒素ガスを吹き込んで系を窒素置換した。次にジャケットに30℃の温水を通し、反応液を撹拌しながら、反応液に、重合開始剤として過硫酸ナトリウムおよびL−アスコルビン酸を添加して、およそ1分後に重合が開始した。そして、30〜80℃で重合を行い60分後に含水ゲル状重合体を得た。得られた含水ゲル状重合体を50メッシュの金網上に広げ、160℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュの金網で通過物を分級することにより、吸水性樹脂(12)を得た。
【0090】
吸水性樹脂(12)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
[比較例8]
比較例7において架橋剤量としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド16.17gを使用する他は比較例7と同様にして吸水性樹脂(13)を得た。
吸水性樹脂(13)の経時着色を評価し、結果を表1に示した。
〔実施例17−19〕(不純物の添加)
実施例3で得られた吸水性樹脂(1)100gに対して、特許文献2で吸水性樹脂の着色の原因とされている遷移金属2ppm(対吸水性樹脂)を水10%を用いて添加した。すなわち、Fe(硝酸鉄1000ppm標準液/和光純薬)、Ni(硝酸ニッケル1000ppm標準液/和光純薬)、Mn(塩化マンガン標準液/キシダ化学)の水溶液を添加し100℃で乾燥することで吸水性樹脂(15)〜(17)を得た。遷移金属を2ppm含む吸水性樹脂(15)〜(17)の経時着色を評価し、結果を表2に示した。
〔実施例20、21〕(粒度の影響)
実施例3で得られた吸水性樹脂(1)をJIS標準篩で分級して、粒径850−600μm(吸水性樹脂(18))、600−300μm、300−150μm(吸水性樹脂(19))に3分割し、実施例1(600−300μmの粉末)に続いて、実施例20(850−600μmの粉末)および実施例21(300−150μmの粉末)について、経時着色を評価し、結果を表2に示した。
〔比較例9〕(特許文献2の追試)
比較例3で得られた吸水性樹脂(3)に、特許文献2記載の着色防止剤;1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸0.5重量%を水溶液(水10%)として混合してさらに乾燥することで、吸水性樹脂(20)を得た。以下、吸水性樹脂(20)について経時着色を評価し、結果を表2に示した。
〔比較例10、11〕(添加剤)
比較例3で得られた吸水性樹脂(3)に対して、市販の漂白剤である過酸化水素0.5重量%、または、亜硫酸水素ナトリウムを0.5重量%を水溶液(水10重量%)として混合し乾燥することで吸水性樹脂(21)、(22)を得て、経時着色を評価し、結果を表2に示した。なお、吸水性樹脂にこれらの添加剤を添加する技術は、EP第780424号公報、米国特許第4959060号公報、米国特許第4972019号公報、米国特許第4929717号公報および米国特許第5229488号公報に記載されている。
〔比較例12〜14〕(添加剤)
比較例9において、遷移金属をトラップするため、吸水性樹脂(3)に対してポリリシン(比較例11)、ポリヴァリン(比較例12)、ポリグリシン(比較例13)をそれぞれ1重量%、水溶液(水10重量%)で混合してさらに乾燥し、得られた吸水性樹脂(23)〜(25)について経時着色を評価し、結果を表2に示した。比較例12〜14で用いたポリアミノ酸の分子量は約5000であった。なお、吸水性樹脂にこれらのポリアミノ酸を添加する技術は、特許文献3に記載されている。
〔比較例15〕(洗浄)
比較例3で得られた吸水性樹脂(3)100gを、50重量%のエタノール水溶液100ccで30分間攪拌し、濾過して50℃で乾燥した。なお、吸水性樹脂を洗浄する技術は、EP第780424号公報、EP第837076号公報および米国特許第4794166号公報に記載されている。
〔実施例22〕(酸性吸水性樹脂粉末の製造(1))
実施例1で得られたハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸を用いて得られた、55モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム塩の水溶液5500g(水溶液中での単量体濃度33重量%)に、内部架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレートを0.02モル%溶解させ窒素ガスで30分脱気後、内容積10Lでシグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋をつけた反応器に該単量体水溶液(1)を供給し、20℃の温度に保ちながら反応系の窒素置換を続けた。次いで、羽を回転させながら、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.12g/mol(対単量体)と/L−アスコルビン酸0.005g/molをそれぞれ水溶液として添加したところ、約1分後に重合が開始し、11分後にピーク温度91℃を向かえ、さらに撹拌しながら水溶液重合を継続した。その際生成した含水ゲル状重合体は約5mm〜1mm以下に細粒化され、攪拌を続け、重合が開始して40分後に含水ゲル状重合体(1)を取り出した。
【0091】
得られた含水ゲル状重合体(1)の細粒化物を目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ、150℃で2時間熱風乾燥した。乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、更に850μmメッシュで分級し、不定形破砕状の酸性吸水性樹脂粉末(26)を得た。こうして得られた酸性吸水性樹脂粉末(26)の諸物性は、pH=5.4、(無加圧下)吸収倍率36.0g/g、水可溶分20重量%であった。
〔実施例23〕(酸性吸水性樹脂粉末の製造(2))
実施例22において、水溶液重合に用いられる単量体として、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸を用いて得られた、40モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム塩の水溶液5022g(単量体濃度30重量%)に、内部架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレートを0.05モル%を溶解させた単量体水溶液(2)を用い、42℃に保ち実施例22と同様に窒素置換した。次いで、実施例22と同様に水溶液重合を行ったところ、ピーク温度91℃を示し、こうして得られた含水ゲル状重合体(2)の細粒化物について、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ、150℃で2.5時間熱風乾燥した。実施例22と同様に粉砕し分級し、不定形破砕状の酸性吸水性樹脂粉末(27)を得た。こうして得られた酸性吸水性樹脂粉末(27)の諸物性は、pH=4.9、(無加圧下)吸収倍率31.5g/g、水可溶分10重量%であった。
〔実施例24〕(酸性吸水性樹脂粉末の製造(3))
実施例22において、水溶液重合に用いられる単量体として、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸を用いて得られた、50モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム塩の水溶液5295g(単量体濃度37重量%)に、内部架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレートを0.05モル%を溶解させた単量体水溶液(3)を用い、27℃に保ち実施例22と同様に窒素置換した。次いで、実施例22と同様に水溶液重合を行なったところ、ピーク温度95℃を示し、得られた含水ゲル状重合体(3)の細粒化物を実施例23と同様に乾燥し粉砕・分級し、不定形破砕状の酸性吸水性樹脂粉末(28)を得た。得られた酸性吸水性樹脂粉末(28)の諸物性は、pH=5.2、(無加圧下)吸収倍率30.6g/g、水可溶分5重量%であった。
〔実施例25〕(酸性吸水性樹脂粉末の製造(4))
実施例22において、水溶液重合に用いられる単量体として、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸を用いて得られた、58モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム塩の水溶液5295g(単量体濃度37重量%)に、内部架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレートを0.05モル%を溶解させた単量体水溶液(3)を用い、27℃に保ち実施例22と同様に窒素置換した。次いで、実施例22と同様に水溶液重合を行なったところ、ピーク温度92℃を示し、こうして得られた含水ゲル状重合体(4)の細粒化物を実施例23と同様に乾燥し粉砕・分級し、不定形破砕状の酸性吸水性樹脂粉末(29)を得た。酸性吸水性樹脂粉末(29)の諸物性は、pH=5.5、(無加圧下)吸収倍率37.0g/g、水可溶分7.5重量%であった。
〔実施例26〕(吸水性樹脂粉末の製造(5))
ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸10088gにハイドロキノン0.05ppmを加え、N,N’−メチレンビスアクリルアミド151g(0.7モル%)、イオン交換水39609gからなる単量体水溶液を20℃に保ち、窒素置換した。重合開始剤として、10重量%過酸化水素水溶液100.8g、10重量%(2,2−アゾビスアミジノプロパン2塩酸塩/和光純薬(株)製品名V−50)水溶液305.2g、および、1重量%L−アスコルビン酸水溶液252gを添加して、断熱重合を2時間行った。こうして、得られた含水ゲル状重合体(5)をミートチョパーで数mmに裁断し、60℃で熱風乾燥し、さらに60℃で減圧乾燥し、次いで、実施例23と同様に乾燥し粉砕・分級し、不定形破砕状の酸性吸水性樹脂粉末(30)を得た。得られた酸性吸水性樹脂粉末(30)の諸物性は、pH=3.0、(無加圧下)吸収倍率6g/g(24時間値)、水可溶分2重量%であった。また、酸性吸水性樹脂粉末(30)の着色度は、製造直後はYI=3.0、試験後(1週間後)はYI=5.2、着色度の変化ΔYI=2.2であった。
〔実施例27〕(吸水性樹脂粉末の製造(6))
実施例22において、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.15ppmのアクリル酸を用いて得られた、アクリル酸ナトリウム塩の中和率75モル%に変更する以外は実施例22と同様に重合し、さらに乾燥粉砕することで、pH=6.1の不定形破砕状の中性吸水性樹脂粉末(31)得た。
〔実施例28〕(酸性吸水性樹脂の表面架橋(1))
実施例22で得られた酸性吸水性樹脂粉末(26)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール1重量部/水3重量部/イソプロパノール0.5重量部からなる架橋剤組成物を添加した後、混合物を180℃で22分間加熱処理することで、吸水剤(1)を得た。
【0092】
吸水剤(1)の諸物性は、pH=5.4,生理食塩水に対する20g/cmでの加圧下吸収倍率は30.4g/gであり、(無加圧下)吸収倍率28.4g/g,生理食塩水に対する50g/cmでの加圧下吸収倍率が23.1g/g,人工尿に対する50g/cmでの加圧下吸収倍率が28.4g/gであった。また、平均粒子径は300μmであり、残存モノマー量は250ppmであった。結果を表3に示す。
〔実施例29〕(中性吸水性樹脂の表面架橋/pHが5.5を超える場合)
実施例28において、実施例27で得られた中性吸水性樹脂(31)(中和率75モル%のポリアクリル酸ナトリウム架橋体/pH=6.1)を用いての表面架橋で得られた吸水剤(2)の諸物性は、pH=6.1で、生理食塩水に対する20g/cmでの加圧下吸収倍率などは表3に示すように、吸水剤(1)とほぼ同じ値であった。また、平均粒子径は300μm、残存モノマー量は400ppm、表面架橋の反応時間も約40分と実施例28の約2倍必要であった。結果を表3に示す。
〔実施例30〕(酸性吸水性樹脂の表面架橋(2))
実施例23で得られた酸性吸水性樹脂粉末(27)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部/プロピレングリコール1重量部/水3重量部/イソプロパノール3重量部からなる架橋剤を添加した後、混合物を150℃で20分間加熱処理することで、平均粒子径約300μmの吸水剤(3)を得た。結果を表3に示す。
〔実施例31〕(酸性吸水性樹脂の表面架橋(3))
実施例24で得られた酸性吸水性樹脂粉末(28)100重量部に対して、実施例30と同様に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部/プロピレングリコール1重量部/水3重量部/イソプロパノール3重量部からなる架橋剤を添加した後、混合物を150℃で20分間加熱処理することで、平均粒子径約300μmの吸水剤(4)を得た。結果を表3に示す。
〔実施例32〕(酸性吸水性樹脂の表面架橋(4))
実施例25で得られた酸性吸水性樹脂粉末(29)100重量部に対して、実施例30と同様に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1重量部/プロピレングリコール1重量部/水3重量部/イソプロパノール3重量部からなる架橋剤を添加した後、混合物を150℃で20分間加熱処理することで、平均粒子径約300μmの吸水剤(5)を得た。結果を表3に示す。
〔比較例16〕(比較表面架橋)
実施例22において、ハイドロキノン0.35ppm添加して、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.50ppmのアクリル酸を用いて得られた、アクリル酸ナトリウム塩の中和率75モル%に変更する以外は実施例22と同様に重合し、さらに乾燥粉砕することで、pH=6.1の不定形破砕状の中性吸水性樹脂粉末(31)得た。次いで、得られた吸水性樹脂粉末(31)について、実施例29と同様に表面近傍の架橋剤を行うことで、比較吸水剤(1)を得た。結果を表3に示す。
〔比較例17〕(市販品の吸水性樹脂)
市販のおむつの中から分離して得られた吸水性樹脂について、その着色(300〜600μmの吸水性樹脂について)と加圧下吸収倍率(バルクの吸水性樹脂について)などを比較した。結果を表4に示す。
〔比較例18〕(特許文献2の類似の着色評価)
ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量1.10ppmの比較例3で得られた吸水性樹脂(4)について、特許文献2の実施例の類似の着色評価方法に従って行なった。すなわち、吸水性樹脂(4)を厚さ60μmのポリエチレン製袋に入れヒートシールすることで密閉した後、70℃、65%RH、1週間放置した。1週間後、密閉された吸水性樹脂を開封して、以下、同様に着色(YI)を評価した。結果を表5に示す。なお、着色の測定装置およびその条件は、特許文献2記載の条件とは異なるため、比較例18は、密封系(特許文献2)と開放系(本願)との比較である。
〔実施例33−35〕(含水率の影響)
実施例3で得られた吸水性樹脂(1)をさらに乾燥して、含水率0.2重量%以下の吸水性樹脂(32)を得た。次いで、該吸水性樹脂(32)100gに水を5g、11g、25g噴霧して吸収させさらに放置することで、含水率約5重量%(吸水性樹脂33)、約10重量%(吸水性樹脂(34))、約20重量%(吸水性樹脂(35))を得た。こうして、得られた吸水性樹脂(33)〜(35)について、比較例18と同様の特許文献2の類似の着色試験を行った。結果を表5に示す。
[実施例36](紙オムツ)
実施例3で得られた吸水性樹脂(1)を用いて、吸収体を以下に示す方法により作製し、次いで衛生材料である紙おむつを作製した。
【0093】
まず、吸水性樹脂(1)50重量部と親水性繊維としての木材粉砕パルプ50重量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。
次いで、得られた混合物をJIS 400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上に、バッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、120mm×400mmの大きさのウェブを圧力2kg/cmで5秒間プレスすることにより、吸収体を作製した。上記の吸収体の樹脂濃度は50重量%である。吸収体の坪量は約0.047g/cmであった。なお、吸水性樹脂および木材粉砕パルプは容易にかつ均一混合することができた。
【0094】
続いて、バックシート、上記の吸収体、および、トップシートを、両面テープを用いてこの順に互いに貼着した。上記バックシートは液不透過性のポリプロピレンからなっており、所定形状に切断されている。また、上記トップシートは液透過性のポリプロピレンからなっており、バックシートと略同一形状に切断されている。そして、上記貼着物における所定の位置に、いわゆるレッグギャザー、および、いわゆるウェストギャザーを設けた。さらに、上記貼着物における所定位置に、いわゆるテープファスナーを取り付けた。これにより、紙おむつを作製した。
この紙おむつを、タバイエスペック(株)製の恒温恒湿機(形式番号PL−2G)中70℃、65%RH雰囲気に1週間放置して、経時着色を評価したところ、試験前と比較して外観上変色しなかった。
[実施例37](紙オムツ)
実施例6で得られた吸水性樹脂を用いて、実施例36と同様の方法を用いて紙おむつを作製し、この紙おむつの経時着色を実施例36と同様にして評価したところ、試験前と比較して外観上変色しなかった。
[比較例19](比較紙オムツ)
比較例3で得られた吸水性樹脂(3)を用いて、実施例36と同様の方法を用いて紙おむつを作製し、この紙おむつの経時着色を実施例36と同様にして評価した。試験前と比較して試験後の紙おむつはトップシート上から、茶褐色の斑点状の存在が目視された。
〔実施例38〕(生理用ナプキン)
吸水性樹脂を含まない市販の生理用ナプキンに対して、そのパルプ中に実施例22で得られた吸水剤(2)0.5gを組み込むことで、生理用ナプキン(1)を得た。こうして得られたα=0.5の生理用ナプキン(1)に対して、実施例23と同様に着色評価を行った。経時着色を評価したところ、試験前と比較して外観上変色しなかった。
〔比較例20〕(比較生理用ナプキン)
実施例38において、吸水剤(2)に代わって比較吸水剤(1)を用いることで、比較生理用ナプキン(1)を得た。以下、同様に着色評価を行ったところ、ナプキンの表面に茶褐色の斑点状の存在が目視された。
〔実施例39〕
ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.15ppmのアクリル酸にさらにハイドロキノンを加えて含有量0.20ppmのアクリル酸195.23gを調製した。そのアクリル酸の中和物であるアクリル酸リチウムの30重量%水溶液1749.99g、架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート3.91g(対単量体0.085モル%)、イオン交換水1012.17gを均一に混合して得られた部分中和アクリル酸リチウム水溶液を円筒容器中に入れ、窒素ガスで脱気した。次いで、部分中和アクリル酸リチウム水溶液を14℃に保ちながら、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(商品名V−50、和光純薬工業製)の10重量%水溶液9.44g、過硫酸ナトリウムの10重量%水溶液9.44g、過酸化水素水の0.10重量%水溶液14.16g、L−アスコルビン酸の1重量%水溶液6.61gを重合開始剤として添加、混合したところ、約1分間で重合が開始し、その後、静置断熱重合を1.5時間継続した。さらに得られた含水ゲル状重合体を反応容器から取り出し、70℃のジャケットを有したニーダーに入れ、ブレードを15分間攪拌することで、含水ゲルを約1〜5mmに裁断した後、160℃の熱風乾燥機で1時間乾燥した。得られた乾燥物は、卓上粉砕機で粉砕し、JIS標準篩を通過させることで、850〜150μmの粒子径部分を分取した。こうして得られた吸水性樹脂粉末(36)の諸物性は、分取直後の着色度YI=6.9、(無加圧下)吸収倍率49.6g/g、水可溶分13.0重量%であった。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
実施例3、4ではハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量がそれぞれ0.15ppm、0.10ppmのアクリル酸およびその塩を原料としているので、着色度の変化の度合いは非常に小さいものとなっている。これに対して比較例3、4ではハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量がそれぞれ1.20ppm、1.10ppmのアクリル酸およびその塩を原料としているので、着色度の変化の度合いは非常に大きいものとなっている。
実施例5〜8では、比較例3、4のハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量の多い吸水性樹脂に対し、キンヒドロン化防止剤としてのN,N’−メチレンビスアクリルアミドを加えているので、着色度の変化の度合いが非常に小さいものとなっている。
【0101】
比較例5、6では実施例4の吸水性樹脂に対しハイドロキノンを加えたため、着色度の変化の度合いが非常に大きいものとなっている。実施例9、10では比較例5、6の吸水性樹脂に対し、キンヒドロン化防止剤としてのN,N’−メチレンビスアクリルアミドを加えているので、着色度の変化の度合いが非常に小さいものとなっている。
実施例11〜15では実施例4の吸水性樹脂に対しハイドロキノン以外の不純物を加えたものであるが、これらの不純物は着色には影響しないので、着色度の変化の度合いは実施例4と同程度の非常に小さいものとなっている。
比較例7、8では吸水性樹脂の内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを用いたものであるが、架橋剤として樹脂中に取り込まれているため、キンヒドロン化防止剤としての効果がなく、着色変化防止効果がない。
【0102】
比較例9では、特許文献2で示された吸水性樹脂の着色防止剤である有機リン酸化合物(1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸)を用いたものであるが、確かに着色防止効果は示されるが、本発明のハイドロキノンおよび/またはベンゾキノンの合計の含有量を0.20ppm以下にする方法に比べて劣っている。また、特許文献2の評価条件では1週間後のYIは12前後であるが、本発明の試験条件では20を超えており、本発明の方がより厳しい評価であることがわかる。
比較例10、11では、市販の漂白剤として過酸化水素/亜硫酸水素塩を使用したが、亜硫酸水素塩で若干の効果が示されるが、本発明に比べて遥かに劣っていることがわかる。
【0103】
実施例17〜19では、特許文献2で吸水性樹脂の着色の原因とされている遷移金属を2ppmと多量に添加したが、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量0.20ppmと比較して、着色に殆ど寄与しないことがわかる。なお、特開平3−31306号公報は、吸水性樹脂の不純物として、0.1〜0.01ppmの重金属を開示している。
実施例20、21および実施例3では、吸水性樹脂の粒度の影響を調べたが、粒度が大きい方が着色が大きいことが分かる。
比較例9〜14では、特許文献2に記載のものを含め各種添加剤を加えたが、本発明に比べて、効果がないか、または、効果が少ないことがわかる。
【0104】
実施例22〜27では、吸水性樹脂のpHの影響を調べたが、pHが低いほど低着色であることが分かる。
実施例28〜32および比較例16では、吸水性樹脂の表面架橋の影響を調べたが、本発明の吸水剤(1)〜(5)は、比較例(15)に示した市販品とも比べて低着色な上高い加圧下吸収倍率を示す。さらに表面架橋は着色を促進させることが分かる。また、pHを下げることで、吸水剤の残存モノマーや吸湿量(重量%)も少ない上に、特に、吸水剤(1)〜(4)は高湿条件での耐ブッロキング性が15重量%以下と飛躍的に改善されている。
【0105】
比較例17では、市販品の吸水性樹脂であるが、本発明に比べてひどく着色し/かつ加圧下吸収倍率も低い。
比較例18では、特許文献2に類似の密閉系での着色評価方法であるが、本発明の着色評価(比較例3)に比べて、甘い条件であることが分かる。
実施例33〜35では、特許文献2に類似の密閉系での着色評価方法にしたがって、含水率の影響を調べたが、含水率が高いほど(特に、10%を超え、20%程度では)、着色し易いことが分かる。
実施例36〜38および比較例19〜20では、本発明の吸水性樹脂が吸収物品中でも低着色であることが分かる。
【符号の説明】
【0106】
1 天秤
2 容器
2a 開口部
2b 開口部
3 外気吸入パイプ
4 導管
5 測定部
6 ガラスフィルタ
7 濾紙
8 支持円筒
9 金網
10 重り
11 生理食塩水(または人工尿)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下のアクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体成分を重合して得られる親水性樹脂。
【請求項2】
前記重合が水溶液重合である請求項1記載の親水性樹脂。
【請求項3】
重合後3時間以内に100〜300℃で加熱乾燥させて得られる請求項1または2に記載の親水性樹脂。
【請求項4】
含水率が2重量%以下である請求項1から3までのいずれかに記載の親水性樹脂。
【請求項5】
部分中和されてなる樹脂である請求項1から4までのいずれかに記載の親水性樹脂。
【請求項6】
アクリル酸系重合体を主成分とし、ハイドロキノンおよび/またはベンゾキノンを含有する親水性樹脂であって、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計量に対して10〜1,000,000倍量の重量比のキンヒドロン化防止剤を含有する親水性樹脂。
【請求項7】
アクリル酸系重合体を主成分とする親水性樹脂であって、開放系、70℃、65%RHの条件下で1週間放置後の着色度(YI)が20以下である親水性樹脂。
【請求項8】
不定形破砕状の粒子からなり、粒径300μm以上の粒子が全体の50重量%以上である請求項1〜3、7のいずれかに記載の親水性樹脂。
【請求項9】
吸水性樹脂である請求項1から8までのいずれかに記載の親水性樹脂。
【請求項10】
生理食塩水中のpHが5.5以下である請求項9記載の親水性樹脂。
【請求項11】
粒子表面近傍の架橋がなされている請求項9または10に記載の親水性樹脂。
【請求項12】
前記粒子表面近傍の架橋のための架橋剤が多価アルコールである請求項11記載の親水性樹脂。
【請求項13】
生理食塩水に対する50g/cmでの加圧下吸収倍率が20g/g以上である請求項9から12までのいずれかに記載の親水性樹脂。
【請求項14】
請求項9から13までのいずれか記載の親水性樹脂および繊維基材を含む吸収層と、透液性を有する表面シートと、不透液性を有する背面シートとを備え、かつ親水性樹脂と繊維基材の合計量に対する親水性樹脂の重量比αが0.3以上である吸収物品。
【請求項15】
製造工程でハイドキノンを使用して得られるアクリル酸であって、ハイドロキノンおよびベンゾキノンの合計の含有量が0.20ppm以下である重合用アクリル酸。
【請求項16】
親水性樹脂重合用である請求項15記載の重合用アクリル酸。
【請求項17】
親水性樹脂が吸水性樹脂である請求項16記載の重合用アクリル酸。


【図1】
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【公開番号】特開2009−173942(P2009−173942A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75137(P2009−75137)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【分割の表示】特願平11−64026の分割
【原出願日】平成11年3月10日(1999.3.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】