説明

親水性組成物、その生成のための方法、およびそのような組成物でコーティングされた基材

光触媒材料、および本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む親水性結合剤を含む液体組成物が開示される。本発明の組成物の結合剤は、親水性であり、かつ本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む。別の局面において、本発明は、そのような液体組成物を作製する方法、1パックの液体組成物、そのような液体組成物で基材をコーティングする方法、および本発明の液体組成物でコーティングされた基材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2004年5月28日に出願された、米国仮特許出願第60/575,437号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む親水性結合剤中に分散された、光触媒材料を含む液体組成物に関する。この液体組成物は、コーティング組成物として具体化され得る。特に、この液体組成物は、例えば、親水性かつ耐久性のコーティングを形成する安定な1パックの(one−pack)コーティング組成物として用いられ得る。このコーティングは、有利な、洗浄容易特性、自己洗浄特性、防汚特性、曇り止め特性、静電気防止特性、および/または抗菌特性を示し得る。そのような液体組成物から形成されるコーティングは、光触媒材料の光励起の際に優れた親水性を与えられ得る。
【背景技術】
【0003】
親水性コーティングは、特定のコーティング適用(例えば、防汚特性、洗浄容易特性、自己洗浄特性、および/または曇り止め特性を示すコーティングされた表面が望ましい場合)に有利である。このようなコーティングは、例として、野外環境に曝露される表面への適用に特に有用であり得る。建物構造および野外に曝露される他の物品は、とりわけ、種々の汚染物(例えば、ほこり、油、粘土)とおそらく接触する。例えば、降雨は、このような汚染物を載せ得る。親水性コーティングが堆積された表面は、雨水がコーティングされた表面に沿って流れる場合、雨水中の汚染物が表面に付着することを妨げることによって、防汚性であり得る。さらに、好天の間、空気で運ばれる汚染物は、表面に接触し、付着し得る。親水性コーティングが堆積された表面は、この表面が、例えば、降雨の間に水と接触する場合、これらの汚染を洗い流す能力を有するので、自己洗浄性であり得る。
【0004】
自己洗浄特性および/または防汚特性を有するコーティングはまた、屋内汚染(例えば、油および/または脂肪のような台所汚染物)に曝露される表面への適用のために有利であり得る。親水性コーティングが堆積された物品は、汚染物をコーティングから放出し、洗浄剤を使用すること無しに、物品の表面からこれらの汚染物を除去するために、水中に浸漬されるか、水でぬらされるか、または水でリンスされ得る。
【0005】
曇り止め特性を有するコーティングは、同様に、多くの適用において特に有用であり得る。例えば、可視性が重要である表面を備える物品(例えば、風防、窓ガラス、眼鏡のレンズ、鏡、および他の類似の物品)は、蒸気または水分凝縮液によって曇り得るか、または表面に付着する水滴によってぼやけ得る表面を含むので、曇り止め特性を有するコーティングから利益を得ることができる。物品の表面の曇りは、表面が周囲大気の露点未満の温度に維持され、それによって、周囲空気中の水分の凝縮が生じ、物品の表面に水分の凝集物を形成する場合に、生じることが公知である。凝縮物粒子が十分に小さく、その直径が可視光線の波長の約半分である場合、粒子は、光を散乱し得、表面は、明らかに不透明になり、可視性の低下を引き起こす。
【0006】
親水性コーティングが堆積された表面は、このようなコーティングが、別々の水滴を形成することなく、凝縮粒子を比較的均一な水の膜に変換し得るので、曇り止め性であり得る。同様に、親水性コーティングが堆積された表面は、降雨または水の跳ね返しが表面上に別個の水滴を形成することを妨げ得、これによって、窓、鏡および/またはアイウェアを介して可視性を改善し得る。
【0007】
これらの利点および他の利点の観点から、種々の親水性コーティング組成物が提案されている。これらのコーティングのうちのいくらかは、ケイ素含有結合剤中に分散された光触媒材料の作用によって、親水性を達成する。例えば、特許文献1(’867特許)は、コーティング形成要素中に分散された粒子性光触媒を開示する。光触媒は、好ましくは、0.1ミクロン以下の平均粒径を有する二酸化チタン粒子からなり、二酸化チタンがアナターゼ形態またはルチル形態のいずれかで使用され得る。コーティング形成要素は、硬化される場合、シリコーン樹脂のコーティングを形成し得、加水分解性シランの部分的加水分解、続く重縮合によって形成されるオルガノポリシロキサンから構成される。’867特許において、シリコーンコーティング形成要素は、本質的に、かなり疎水性であるが、分散された光触媒の励起の際に、高い程度の水親和性(すなわち、親水性)がこのコーティングに与えられ得る。
【0008】
特許文献2は、1〜500ナノメートルの平均粒子直径を有する酸化チタン、加水分解性ケイ素化合物の加水分解物、および溶媒を含むコーティングフィルム形成組成物を開示する。加水分解性ケイ素化合物は、式Sin−1(OR)2n+2(ここで、nは、2〜6であり、そしてRは、C〜Cアルキル基である)によって表されるケイ酸アルキル縮合物である。加水分解物は、50〜1500%の加水分解割合でケイ酸アルキル縮合物を加水分解することから生じる。しかし、加水分解物は、本質的に親水性であるとは考えられない。
【0009】
特許文献3および特許文献4は、光触媒の粒子が未硬化または部分的に硬化されたシリコーン(オルガノポリシロキサン)またはその前駆体のフィルム形成要素中に分散されている、光触媒コーティング組成物を開示する。光触媒は、金属酸化物の粒子(例えば、二酸化チタンのアナターゼ形態およびルチル形態)を含み得る。これらの特許に従って、コーティング組成物は、基材の表面上に塗布され、次いで、フィルム形成要素は、硬化に供される。次いで、光触媒の光励起の際に、フィルム形成要素のシリコーン分子のケイ素原子に結合した有機基が、光触媒の光触媒作用によりヒドロキシル基で置換される。これによって、光触媒コーティングの表面は、「超親水性」になる。すなわち、表面は、水との接触角が約10°未満になる程度まで、高度に親水性になる。しかし、これらの特許において、フィルム形成要素は、本質的に、かなり疎水性である。すなわち、水との初期接触角度は、50°より大きい。結果として、コーティングは、最初に疎水性であり、親水性がコーティングに与えられるのは、分散された光触媒の励起の際のみである。
【0010】
特許文献5は、部材の表面に曇り防止特性を与えるために、部材の表面を親水性にし得る組成物を開示する。この特許に開示される組成物は、(a)金属酸化物の光触媒粒子、(b)シリコーン樹脂フィルムを形成し得る前駆体またはシリカフィルムを形成し得る前駆体、および(c)溶媒(例えば、水、有機溶媒、およびこれらの混合物)を含む。溶媒は、組成物中の光触媒粒子および前駆体の固体の全含有量が0.01〜5重量%であるような量で添加される。しかし、先の例におけるように、コーティングの親水性化は、光触媒の光励起の際に行われ、一方フィルム形成材料は、本質的に、親水性ではない。従って、このようなコーティングは、光触媒の励起の前では、親水性であるとは考えられない。
【0011】
しかし、ケイ素含有結合剤中に分散された光触媒材料の作用により親水性を達成するこれらの先行技術の親水性コーティングは、いくつかの欠点を被っている。1つの注目すべき欠点は、これらのコーティングが、光触媒の光励起になるまで、親水性を示さないことである。さらに、これらの組成物は、代表的に、強制的な硬化を必要とする。すなわち、これらは、室温で効果的に硬化し得ない。
【0012】
特許文献6(’229特許)は、光触媒材料を含み得る別の組成物を開示する。’229特許に開示されるコーティングは、結合剤として作用し、特定の四官能性アルコキシシランを加水分解および縮合重合することによって得られる、シリコーン樹脂を含むコーティング組成物を塗布することから形成される。コーティング組成物はまた、コロイド状シリカを含み得る。結果として、’229特許に開示される組成物から形成されるコーティングされたフィルムは、最初に親水性であり得る。しかし、この最初の親水性は、シリコーン樹脂自体というよりも、組成物中のコロイド状シリカの存在から生じると考えられる。’229特許に開示されるシリコーン樹脂は、樹脂の所望のpHが3.8〜6.0であり、Si−OR基がゲル化および親水性を妨げる量で樹脂中に存在するので、それ自体親水性ではないと考えられる。結果として、このようなコーティングは、いくつかの欠点を被っている。例えば、光触媒材料を含むこのようなコーティングは、基材とケイ素樹脂を含むコーティング組成物との間にプライマー層を含むこと無しに、有機ベース材料上に直接効率的に塗布され得ない。さらに、コーティング組成物中にコロイド状シリカを含むことにより、その組成物がより大きな膜厚において有機基材上に塗布される場合に、虹色の変化(iridescent)を生じる。
【0013】
結果として、光触媒材料と結合剤とを含む組成物を提供するのが有利であり、ここでそのような組成物から形成されるコーティングは、その光触媒の光励起の前に親水性であり得、かつその光触媒の光励起の際に超親水性にされ得る。低いヘイズ値を有し、周囲温度において効率的に硬化され得、そして/または暗い状態に曝露された際に長期間その親水性を維持する、このタイプの組成物を提供することもまた、有利である。さらに、安定な1パックの製品の形態におけるこのような組成物を具体化することが、有利である。
【特許文献1】米国特許第5,755,867号明細書
【特許文献2】特開平8−164334号公報
【特許文献3】米国特許第6,013,372号明細書
【特許文献4】米国特許第6,090,489号明細書
【特許文献5】米国特許第6,165,256号明細書
【特許文献6】米国特許第6,303,229号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、(a)光触媒材料と(b)結合剤とを含む液体組成物(例えば、コーティング組成物)に関する。本発明の組成物の結合剤は、親水性であり、かつ本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む。
【0015】
別の局面において、本発明は、そのような液体組成物を作製する方法、1パックの液体組成物、そのような液体組成物で基材をコーティングする方法、および本発明の液体組成物でコーティングされた基材に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(本発明の実施形態の詳細な説明)
以下の詳細な説明のために、本発明は、明白に反対に記載される場合を除いて、種々の代替の改変および工程の配列をとり得ることが理解される。さらに、任意の作動実施例以外の例、またはその他で示される場合、例えば、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量を表す全ての数字は、用語「約」によって全ての場合において修飾されるとして理解されるべきである。従って、そうでないと示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本発明によって得られる所望の特性に依存して変化し得る近似である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限すること試みないで、各数値パラメーターは、少なくとも、報告される有効数字の数を考慮して、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0017】
本発明の幅広い範囲を記載する数値範囲およびパラメーターが近似であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、できるだけ正確に報告される。しかし、任意の数値は、それらそれぞれの試験測定において見出される標準変動から必ず生じる特定の誤差を固有に含む。
【0018】
本出願において、他に具体的に記載されない限り、単数形の使用は、複数形を含み、複数形は、単数形を含む。例えば、制限しないで、本出願は、「光触媒材料(a photocatalytic material)」を含む液体組成物を参照する。「光触媒材料(a photocatalytic material)」に対するこのような参照は、一種の光触媒材料を含む組成物、および一種より多い触媒材料を含む組成物(例えば、2つの異なる光触媒材料を含む組成物)を含むことを意味する。さらに、本出願において、「および/または」が特定の例において明確に使用され得るが、他に具体的に示されない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。
【0019】
また、本明細書中に示される任意の数値範囲がそこに包含される全ての部分範囲を含むことが意図される。例えば、「1〜10」の範囲は、1という示された最小値と10という示された最大値との間の(1という示された最小値と10という示された最大値とを含む)全ての部分範囲(すなわち、1以上の最小値および10以下の最小値を有する)を含むことを意図する。
【0020】
本発明は、(a)光触媒材料と(b)結合剤とを含む液体組成物(例えば、コーティング組成物)に関する。本発明の組成物の結合剤は、親水性であり、かつ本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む。
【0021】
本発明の液体組成物は、光触媒材料を含む。本明細書中で使用される場合、用語「光触媒材料」とは、放射線(例えば、紫外線放射線または可視放射線)への曝露および放射線の吸収の際に光励起可能である材料をいう。光触媒材料は、触媒の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きいエネルギーを有する光に曝露された場合、価電子帯の電子の励起が伝導電子を生成し、これによって、特定の価電子帯を越えて正孔を残す材料である。特定の実施形態において、光触媒材料は、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄(III)、三酸化ジビスマス、三酸化タングステン、ストロンチウムチタネート、二酸化チタン、またはこれらの混合物)を含む。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、上記液体組成物中に存在する光触媒材料の少なくとも一部は、1nm〜100nm(例えば、3nm〜35nm、またはなお他の実施形態において、7nm〜20nm)の平均結晶直径を有する粒子の形態である。これらの実施形態において、粒子の平均結晶直径は、示される値の任意に組合せの間の範囲(示された値を含む)であり得る。粒子の平均結晶直径が、その液体組成物に組み込まれることが望ましい特性に基づいて選択され得ることが当業者によって理解される。いくつかの実施形態において、実質的に全ての光触媒材料は、このような粒子の形態で存在する。光触媒材料金属酸化物粒子の平均結晶直径は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡によって決定され得、このような粒子の結晶相は、当業者によって公知なように、X線回折によって決定され得る。
【0023】
上記のように、特定の材料は、例えば、紫外放射線(「UV」)および/または可視放射線への曝露および吸収の際に光触媒性であり得る。本発明の特定の実施形態において、この光触媒材料は、これらの機構の1つ以上によって光励起可能である材料を含む。本発明において使用され得、UV放射線への曝露の際に光触媒性である材料の例としては、酸化スズ、酸化亜鉛、ならびに二酸化チタンの板チタン石形態、アナターゼ形態およびルチル形態が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用され得、可視放射線への曝露の際に光触媒性である材料の例としては、酸化チタンの板チタン石形態、チタン金属の火炎熱分解(flame pyrolysis)によって化学的に改変された二酸化チタン、窒素ドープ二酸化チタン、およびプラズマ処理二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、光触媒材料は、水中に分散された光触媒材料の粒子を含むゾル(例えば、チタニアゾル)の形態で提供される。このようなゾルは、市場で容易に入手可能である。本発明における使用に適した、このような材料の例としては、S5−300AおよびS5−33B(Millenium Chemicalsから入手可能)、STS−01、STS−02、およびSTS−21(Ishihara Sangyo Corporationから入手可能)、およびNTB−1、NTB−13、およびNTB−200(Showa Denko Corporationから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、光触媒材料は、水中に分散された、板チタン石型酸化チタン粒子、または板チタン石型とアナターゼ型および/もしくはルチル型酸化チタン粒子との混合物を含むゾルの形態で存在する。このようなゾルは、特定の条件(例えば、本明細書中において参考として援用される、米国特許出願第6,479,031号によって教示される)で四塩化チタンを加水分解することによって調製され得る。本発明における使用に適切なこのタイプのゾルとしては、Showa Denko Corporationから入手可能なNTB−1およびNTB−13チタニアゾルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、光触媒材料は、化学的に改変された二酸化チタンを含む。このような材料の例としては、Khanら、Efficient Photochemical Water Splitting by a Chemically Modified n−TiO,Science Reprint,Volume 297,2243〜2245(2002)(これは、本明細書中において参考として援用される)に記載される火炎熱分解によって化学的に改変された二酸化チタン、米国特許出願公開2002/0169076A1(例えば、段落[0152]〜[0203])(これは、本明細書中において参考として援用される)に記載されるように製造された窒素ドープ酸化チタン、および/または米国特許第6,306,343号の第2欄第49行目〜第7欄第17行目(本明細書中において参考として援用される)に記載されるようなプラズマ処理二酸化チタンが挙げられる。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、上記液体組成物に存在する光触媒材料の量は、重量%が組成物の全溶液重量に基づいて、0.05重量%〜5重量%の固体(例えば、0.1重量%〜0.75重量%の固体)の範囲である。これらの実施形態において、その液体組成物中に存在し得る光触媒材料の量は、示された値の任意の組合せの間の範囲(示された値を含む)であり得る。液体組成物中に存在する光触媒材料の量は、その組成物中に含まれることが望まれる特性によって決定されることが当業者によって理解される。
【0028】
本発明の液体組成物は、親水性である結合剤も含む。本明細書中で使用される場合、用語「結合剤」とは、光触媒材料の粒子が分散される連続的材料をいう。本明細書中で使用される場合、用語「親水性結合剤」は、結合剤自体が水に対して親和性を有することを意味する。材料の親水性を評価するための1つの方法は、その材料から形成される乾燥フィルムと水の接触角を測定することである。本発明の特定の実施形態において、結合剤は、20°以下、他の実施形態において、15°以下、なお他の実施形態において10°以下の水接触角を示す乾燥フィルムを形成し得る材料を含む。
【0029】
結果として、本発明の特定の実施形態において、基材に液体組成物を適用してその後乾燥すると、光触媒材料の光励起の前において、得られるフィルムは、20°以下、いくつかの実施形態において、15°以下、なお他の実施形態において10°以下の初期水接触角を示す。本明細書中で報告される水接触角は、接触点における液滴形状の接線と液滴を通して測定される基材の表面との間の角度の尺度であり、Gaertner Scientific側角器光学部品を備えるLord Manufacturing,Inc.によって製造される改変閉じ込め気泡(captive bubble)指示器を使用する固着(sessile)液滴法によって測定され得る。測定される表面は、光源の前面に、上を向いて水平位置に配置される。水の固着液滴は、固着液滴のプロフィールが観察され得、接触角が、円形分度器目盛りを備える側角器テレスコープを介して度(°)で測定され得るように、光源の前面の表面の上面に配置される。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、液体組成物は、静電気防止特性を示す結合剤を含む。すなわち、この結合剤は、静電気電荷を放散させる能力を有する乾燥フィルムを形成し得る。当業者によって理解されるように、材料の静電防止能力を評価する1つの方法は、材料の表面抵抗率を測定することである。本発明の特定の実施形態において、結合剤は、7.5×10〜1.5×1012オーム/cm、または他の実施形態において、1.0×1010オーム/cm以下の表面抵抗率を示す乾燥フィルムを形成し得る材料を含む。本明細書中で報告される表面抵抗率は、(1)サンプル上のいくつかの位置で5ミリメートル離れて配置されたラージエクステンションプローブ(large extension probe)、または(2)サンプル上のいくつかの位置に2と3/4インチ離れて配置されたメーターオンボードプローブ(meter’s onboard probe)のいずれかを使用して、ACL Statitide Model 800Megohmeterを用いて決定し得る。結果として、本発明はまた、このような静電気防止特性を有する液体組成物に関する。
【0031】
本発明の液体組成物は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む結合剤を含む。本明細書中で使用される場合、用語「オルガノシリケート」とは、酸素原子を介してケイ素原子に結合された有機基を含む化合物をいう。適切なオルガノシリケートとしては、制限ではなく、酸素原子を介してケイ素原子に結合された4つの有機基を含むオルガノシラン、およびケイ素原子によって構成されるシロキサン主鎖((Si−O))を有するオルガノキシシロキサンが挙げられる。
【0032】
オルガノシリケート中の酸素原子を介してケイ素原子に結合される有機基は、限定ではなく、例えば、直鎖アルキル基、分枝アルキル基、または環式アルキル基が挙げられ得る。オルガノシリケート中の酸素原子を介してケイ素原子に結合され得る有機基の特定の例としては、制限ではなく、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、オクチルなどが挙げられる。これらのアルキル基のうち、C〜Cアルキル基がしばしば使用される。他の適切な有機基の例としては、アリール、キシリル、ナフチルなどが挙げられ得る。オルガノシリケートは、二種以上の異なる種類の有機基を含み得る。
【0033】
適切なオルガノキシシランの具体的な非限定的な例は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、およびジメトキシジエトキシシランである。これらのオルガノシリケートは、単独でまたはこれらの任意の2つ以上の組合せで使用され得る。これらのオルガノシリケートのうち、テトラメトキシシランおよび/またはその部分的加水分解縮合物は、加水分解に対して高い反応性を示し、従って、シラノール基を容易に生成し得る。
【0034】
適切なオルガノキシシロキサンの具体的な非限定的な例は、上記オルガノキシシランの縮合物である。オルガノキシシロキサンの縮合の程度は、特に制限されていない。特定の実施形態において、縮合の程度は、以下の式:
SiO(OR)
(ここで、xは、0〜1.2であり、yは、1.4〜4であり、但し、(2x+y)は、4であり;そしてRは、有機基(例えば、C〜Cアルキル基)である)によって表される範囲内にある。
【0035】
因子x、すなわち、下付き文字xは、シロキサンの縮合の程度を表す。シロキサンが分子量分布を示す場合、因子xは、平均縮合度を意味する。xが0である上記式によって表される化合物は、モノマーとしてのオルガノキシシランであり、0<x<2である上記式によって表される化合物は、部分的加水分解縮合によって得られる縮合物に対応するオリゴマーである。また、x=2である上記式によって表される化合物は、SiO(シリカ)に対応する。特定の実施形態において、本発明において使用されるオルガノシリケートの縮合度xは、0〜1.2(例えば、0〜1.0)の範囲である。シロキサン主鎖は、直鎖構造、分枝鎖構造または環式構造、あるいはそれらの混合物を有し得る。上記式SiO(OR)は、本明細書中において参考として援用される、米国特許第6,599,976号の第5欄第10行目〜第41行目に記載される、Si−NMRによって決定され得る。
【0036】
先に述べたように、本発明の液体組成物の結合剤は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む。本明細書中で使用される場合、用語「本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケート」とは、オルガノシリケートのオルガノキシ基が、材料が親水性になる程度(すなわち、この材料が、20°以下、または他の実施形態において、15°以下、またはなお他の実施形態において、10°以下の水接触角を示す乾燥フィルムを形成し得る)まで、シラノール基によって実質的に置換されている材料をいう。この加水分解は、以下:
【0037】
【化1】

に示すように、網状ポリマーを生成し得る。ここで、mおよびnは、正数であり、mは、n以下である。本発明の特定の実施形態において、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートから形成された乾燥フィルムは、FTIRまたは他の適切な分析技術によって決定されるように−OR基を実質的に含まない。
【0038】
ここで、図1を参照して、このような親水性結合剤材料から形成された乾燥フィルムのFTIR分析を反映するチャートが示される。明らかなように、有意なピークが、Si−OH結合波数(これは、920〜950である)およびSi−O−Si結合波数(これは、1050〜1100である)において観察される。他方、Si−OR波数(これは、2900〜3000である)における任意の実質的なピークが無いことによって示されるように、親水性材料が実質的に−OR基を含まない(ここで、Rは、C〜Cアルキル基を表す)ことが明らかである。
【0039】
特定の実施形態において、本発明の結合剤に含まれる本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートは、酸性加水分解触媒の存在下で大量の水を用いたオルガノシリケートの加水分解の生成物である。加水分解は、オルガノシリケートのオルガノキシ基を加水分解し得る化学量論量よりもかなり多い量で存在する水で行われ得る。このような過剰な量の水の添加によって、オルガノシリケートの加水分解によって生成されるシラノール基が、大量の水と共存し得、これによって、シラノール基の縮合反応を妨げることが考えられる。
【0040】
オルガノシリケートの加水分解は、一種以上の酸性加水分解触媒の存在下で実行され得る。適切な触媒の具体的な例としては、限定ではないが、無機酸(例えば、とりわけ、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸);有機酸(例えば、とりわけ、酢酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、ギ酸、クエン酸、およびシュウ酸);アルカリ触媒(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア)、ならびに有機アミン化合物、有機金属化合物またはオルガノシリケート以外の金属アルコキシド化合物(例えば、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、およびジブチルスズジアセテート)、有機アルミニウム化合物(例えば、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、およびエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピオネート)、有機チタン化合物(例えば、チタンテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)−ビス(アセチルアセトネート)およびチタニウムテトラ−n−ブトキシド)、ならびに有機ジルコニウム化合物(例えば、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)−ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウム(イソプロポキシ)−ビス(アセチルアセトネート)およびジルコニウムテトラ−n−ブトキシド)、およびホウ素化合物(例えば、ホウ素トリ−n−ブトキシドおよびホウ酸)など)が挙げられる。
【0041】
特定の実施形態において、結合剤はまた、水に加えて、有機溶媒(例えば、アルコール、グリコール誘導体、炭化水素、エステル、ケトン、エーテルなど)を含み得る。これらの溶媒は、単独で、またはこれらの2種以上の混合物の形態で使用され得る。
【0042】
使用され得るアルコールの具体的な例としては、限定ではなく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アセチルアセトンアルコールなどが挙げられる。使用され得るグリコール誘導体の具体的な例としては、制限ではなく、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。使用され得る炭化水素の具体的な例としては、制限ではなく、ベンゼン、トルエン、キシレン、ケロセン、n−ヘキサンなどが挙げられる。使用され得るエステルの具体的な例としては、制限ではなく、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどが挙げられる。使用され得るケトンの具体的な例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどが挙げられる。使用され得るエーテルの具体的な例としては、制限ではなく、エチルエーテル、ブチルエーテル、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0043】
本発明のにおける使用に適切な結合剤、およびそれらの作製方法は、本明細書中において参考として援用される、米国特許第6,599,976号の第3欄第57行目〜第10欄第58行目に記載される。本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートであり、本発明の組成物における結合剤としての使用に適した市販材料の非限定的な例は、MSH−200シリケート、MSH−400シリケートおよびMSH−500シリケート(Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから入手可能)、ならびにShinsui Flow MS−1200(Dainippon Shikizai,Tokyo,Japanから入手可能)である。
【0044】
特定の実施形態において、結合剤は、多段階プロセスで調製され、ここで、第1段階において、オルガノキシシラン(例えば、先に記載されるもののいずれか)が、酸性加水分解触媒(例えば、先に記載されるもののいずれか)の存在下で水と反応する(水は、オルガノキシシランのオルガノキシ基を加水分解し得る化学量論量よりも少ない量で存在する)。特定の実施形態において、酸性加水分解触媒は、有機酸を含む。特定の実施形態において、水は、オルガノキシシランのオルガノキシ基の50%を加水分解し得る化学量論量で、第1段階の間に存在する。第1段階の結果は、部分加水分解重縮合反応生成物である。
【0045】
特定の実施形態において、多段階結合剤調製プロセスの第1段階は、加水分解反応の結果として形成されるSi−OH基の縮合度を制限する条件下で実行される。このような条件としては、例えば、例えば外部冷却による反応の発熱の制御、酸触媒の添加速度の制御、および/または任意の有機共溶媒の実質的な非存在下(または完全な非存在下)での第1段階の加水分解の実行が挙げられ得る。
【0046】
第2段階において、次いで、部分加水分解重縮合反応生成物は、大量の水と、しばしば、酸性加水分解触媒の非存在下で接触させられる。第2段階において使用される水の量は、オルガノキシシランのオルガノキシ基を加水分解し得る化学量論量よりもかなり多い(「かなり多い」によって、得られる溶液が、2%以下の固体を含むことを意味する)。
【0047】
なお他の実施形態において、結合剤は、テトラアルコキシシランオリゴマー(例えば、商品名MKC Silicate MS−51、MKC Silicate MS−56およびMKC Silicate MS−60(全て、商標;Mitsubishi Chemical Corp.の製品)で、Mitsubishi Chemical Corp.から市販されるもの)を用いて開始することによって調製される。このようなオリゴマーは、有機酸加水分解触媒(例えば、酢酸)および/または有機溶媒の存在下で水と反応する。ここで、水は、テトラアルコキシシランのオルガノキシ基を加水分解し得る化学量論量よりもかなり多い量で存在する。
【0048】
結果として、本発明は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む親水性組成物を作製するための方法に関する。本明細書の実施例は、このような方法のための例示的な実施例を記載する。
【0049】
本発明の特定の実施形態において、液体組成物中に存在するオルガノシリケートの量は、組成物の全重量に基づいて、オルガノシリケート中のSiOとして計算して、0.1〜2重量%(例えば、0.2〜0.9重量%)の範囲である。これらの実施形態において、液体組成物中に存在し得るオルガノシリケートの量は、示される値の任意の組合せの間の範囲(示された値を含む)であり得る。液体組成物中に存在するオルガノシリケートの量が、組成物中に組み込まれることが望まれる特性によって決定されることが当業者によって理解される。
【0050】
特定の実施形態において、光触媒材料およびオルガノシリケートは、0.05:0.95〜5:0.3の重量比、または他の実施形態において、0.10:0.90〜3.0:0.5の重量比、またはなお他の実施形態において、少なくとも0.3:0.5の重量比、もしくは0.2:0.6の重量比で、液体組成物中に存在する。これらの実施形態において、光触媒材料とオルガノシリケートとの比は、示される値の任意の組合せの間の範囲(示された値を含む)であり得る。液体組成物中の光触媒材料とオルガノシリケートとの比は、組成物中に組み込まれることが望ましい特性(例えば、適用されるポリマー組成物に基づき得る組成物に望ましい屈折率)によって決定されることが当業者によって理解される。
【0051】
特定の実施形態において、本発明の液体組成物は、無機粒子(例えば、シリカ、アルミナ(処理されたアルミナ(例えば、アルファアルミニウムオキシドとして公知のシリカ処理アルミナ)を含む)、炭化ケイ素、ダイアモンドダスト、立方晶窒化ホウ素、および炭化ホウ素)をさらに含み得る。このような無機粒子は、例えば、実質的に無色であり得、例えば、シリカ、例えば、コロイド状シリカであり得る。このような材料は、向上した傷(mar)耐性およびひっかき(scratch)耐性を提供し得る。このような粒子は、この組成物の最終使用適用および所望の効果に依存して、サブミクロンサイズ(例えば、ナノサイズ粒子)〜10ミクロンの範囲の平均粒径を有し得る。
【0052】
特定の実施形態において、このような粒子は、液体組成物中へ組み込まれる前に、1〜10ミクロン、または1〜5ミクロンの範囲の平均粒径を有する無機粒子を含む。他の実施形態において、この粒子は、液体組成物に組み込む前に、1〜1000ナノメートル未満(例えば、1〜100ナノメートル、または他の実施形態において、5〜50ナノメートル)の範囲の平均粒径を有し得る。いくつかの実施形態において、無機粒子は、液体組成物に組み込む前に、5〜50ナノメートル、または5〜25ナノメートルの範囲の平均粒径を有する。この粒径は、これらの値の任意の組合せの間の範囲(示された値を含む)であり得る。
【0053】
本発明の特定の実施形態において、粒子は、液体組成物中に、組成物の全重量に基づいて、5.0重量%まで、または0.1〜1.0重量%、または0.1〜0.5重量%の範囲の量で、存在し得る。液体組成物中に存在する粒子の量は、これらの値の任意の組合せの間の範囲(示された値を含む)であり得る。
【0054】
本発明の特定の実施形態において、液体組成物はまた、抗菌増強物質(例えば、金属(例えば、銀、銅、金、亜鉛、それらの化合物、またはそれらの混合物);四級アンモニウム化合物(例えば、ベンザルコニウムクロリド、ジアルキルジメチル−アンモニウムクロリド、セチルトリメチル−アンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、および3−(トリメトキシシリル)−プロピルジメチル−オクタデシル−アンモニウムクロリド);フェノール(例えば、2−ベンジル−4−クロロフェノール、o−フェニルフェノール、ナトリウムo−フェニルフェネート(sodium o−phenylphenate)、ペンタクロロフェノール、2(2’,4’−ジクロロフェノキシ)−5−クロロフェノール、および4−クロロ−3−メチルフェノール);ハロゲン化合物(例えば、トリクロロイソシアヌレート、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、モノトリクロロイソシアヌレート、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、1:4ジクロロジメチルヒダントイン、ブロモクロロジメチルヒダントイン、2,2’−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、ビス(1,4−ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、およびブロモ酢酸ベンジル);有機金属(例えば、10,10’−オキシビスフェノキシ−ヒ素、トリブチルスズオキシド、フッ化トリブチルスズ、銅8−キノリノレート、ナフテン酸銅、クロム酸化ヒ酸銅、アンモニア性ヒ酸銅、および酸化第一銅);有機硫黄化合物(例えば、メチレンビスチオシアネート(MBT)、ビニレンビスチオシアネート、クロロエチレンビスチオ−シアネート、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、エチレンビスジチオカルバミン酸二ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびビス(トリクロロメチル)スルホン);複素環(例えば、テトラヒドロ−3,5−ジメチル−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン(DMTT)、ピリジンチオンナトリウム、ピリジンチオン亜鉛、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシミド、N−(トリクロロメチルチオ)−フタルイミド、および5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン);ならびに窒素化合物(例えば、N−ココトリメチレンジアミン、N−[α−(1−ニトロエチル)ベンジル]−エチレンジアミン、2−(ヒドロキシメチル)アミノ−エタノール、2−(ヒドロキシメチル)アミノ−2−メチルプロパノール、2−ヒドロキシメチル−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−s−トリアジン、4−(2−ニトロブチル)モルホリン+4,4’−(2−エチル−2−ニトロ−トリメチレン)−ジモルホリン、グルタルアルデヒド、1,3−ジメチロール−5,5−ジメチル−ヒダントイン、およびイミダゾリジニル尿素)、ならびにこれらの混合物)を含有する。
【0055】
本発明の液体組成物は、特定の実施形態において、微生物に対して、特に、種々の真菌に対して効力を示すために十分な量の抗菌剤を含有し得る。より具体的には、特定の実施形態において、本発明の実施形態は、MTCC(American Association of Chemists & Colorists)試験方法30、第III部に従って試験されると、基材上での微生物の増殖を阻害するために十分な量の抗菌剤を含有する。当業者は、この試験方法およびそのパラメータをよく知っている。本発明の特定の実施形態において、液体組成物中に存在する抗菌増強物質の量は、この組成物の総重量に基づいて、0.01重量%〜1.0重量%(例えば、0.1重量%〜1.0重量%、または他の実施形態において、0.1重量%〜0.5重量%)の範囲である。これらの実施形態において、液体組成物中に存在し得る、抗菌増強物質の量は、記載される値を含めて、記載される値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。液体組成物中に存在する抗菌増強材料の量は、この組成物中に組み込まれることが望まれる特性によって決定されることが当業者によって理解される。
【0056】
特定の実施形態において、本発明の液体組成物は、光学活性増強剤(例えば、白金、金、パラジウム、鉄、ニッケル、またはこれらの可溶性塩)を含有し得る。これらの物質を、光触媒物質を含有する組成物に添加することは、光触媒のレドックス反応を増強し、コーティング表面に接着する汚染物質の分解を促進することが公知である。本発明の特定の実施形態において、この光学活性増強剤は、液体組成物中に、この組成物の総重量に基づいて、0.01重量%〜1.0重量%(例えば、0.1重量%〜1.0重量%、または他の実施形態においては、0.1重量%〜0.5重量%)の範囲の量で存在する。これらの実施形態において、液体組成物中に存在し得る光学活性促進剤の量は、記載される値を含めて、記載される値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。液体組成物中に存在する光学活性増強材料の量は、この組成物中に組み込まれることが望まれる特性によって決定されることが当業者によって理解される。
【0057】
特定の実施形態において、本発明の液体組成物は、カップリング剤を含有し得、このカップリング剤は、本発明の組成物の塗装基材への接着を改善し得る。本発明の液体組成物における使用に適したカップリング剤の例としては、米国特許第6,165,256号の第8欄第27行〜第9欄第8行に記載される物質が挙げられるが、これらに限定されない(この米国特許は、本明細書中に参考として援用される)。
【0058】
本発明の特定の実施形態において、液体組成物中に存在するカップリング剤の量は、この組成物の総重量に基づいて、0.01重量%〜1重量%(例えば、0.01重量%〜0.5重量%)の範囲である。これらの実施形態において、この液体組成物中に存在し得るカップリング剤の量は、記載される値を含めて、記載される値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。液体組成物中に存在するカップリング剤の量は、この組成物中に組み込まれることが望まれる特性によって決定されることが当業者によって理解される。
【0059】
特定の実施形態において、本発明の液体組成物は、表面活性剤を含有し得、この表面活性剤は、特に、この組成物がコーティングされた基材(例えば、有機コーティングでコーティングされた基材)上に塗布される場合に、この組成物の濡れ性の改善を補助し得る。本発明において使用するために適した表面活性剤の例としては、米国特許第6,610,777号の第37欄第22行〜第38欄第60行、および米国特許第6,657,001号の第38欄第46行〜第40欄第39行に記載される材料が挙げられるが、これらに限定されない(これらの米国特許は両方とも、本明細書中に参考として援用される)。
【0060】
本発明の特定の実施形態において、液体組成物中に存在する表面活性剤の量は、この組成物中の固形分の総重量に基づいて、0.01重量%〜3重量%(例えば、0.01重量%〜2重量%、または他の実施形態において、0.1重量%〜1重量%)の範囲である。これらの実施形態において、この液体組成物中に存在し得る表面活性剤の量は、記載される値を含めて、記載される値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。液体組成物中に存在する表面活性剤の量は、この組成物中に組み込まれることが望まれる特性によって決定されることが当業者によって理解される。
【0061】
特定の実施形態において、本発明の液体組成物はまた、清浄組成物を含有する。適切な清浄組成物としては、界面活性剤、溶媒系、水、およびpH調整剤(例えば、酢酸またはアンモニア)を含有する材料が挙げられる。適切な清浄組成物は、米国特許第3,463,735号に開示されており、この米国特許は、低沸点溶媒(例えば、イソプロパノール)および適度に高沸点の溶媒(例えば、合計3個〜8個の炭素原子を有する、C〜Cのアルキレングリコールアルキルエーテル)を含有する溶媒系を含有する清浄組成物を開示する。適切な市販の清浄組成物としては、WINDEX(登録商標)が挙げられ、これは、SC Johnson and Son,Inc.から市販されている。本発明者らは、本発明の特定の実施形態への洗浄組成物の含有が、塗装表面(アルミニウム−クラッド窓サッシ、アルミニウムサイジングなど)に適用された場合の本発明の組成物の濡れ特性を改善し得ることを発見した。結果として、特定の実施形態において、塗装表面は、本発明の液体組成物の塗布の前に清浄化される必要がない。
【0062】
従って、本発明の特定の実施形態は、(a)洗浄組成物、および(b)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む液体組成物に関する。このような組成物はまた、先に記載されているように、光触媒材料を含み得る。
【0063】
特定の実施形態において、清浄組成物は、本発明の液体組成物中に、この液体組成物の総重量に基づいた重量で、少なくとも10重量%(例えば、少なくとも20重量%、またはいくつかの場合には、少なくとも25重量%)の量で存在する。
【0064】
所望であれば、本発明のコーティング組成物は、コーティングの技術の当業者に周知の他の任意のコーティング材料を含有し得る。
【0065】
本発明はまた、液体組成物を作製する方法に関する。本発明の特定の方法に従って、液体組成物は、(a)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する親水性物質を提供する工程であって、この親水性物質のpHは、3.5以下である、工程;(b)希釈剤中に分散された光触媒物質を含有するゾルまたはペーストを提供する工程であって、このゾルのpHは、3.5以下である、工程;および(c)(a)において提供された親水性物質を(b)において提供されたゾルまたはペーストと混合して、この光触媒物質をこの親水性物質中に分散させる工程によって調製される。この方法によって作製される液体組成物は、凝集または沈殿をほとんどまたは全く起こさずに、12ヶ月を超えて安定であり得ることが見出された。本明細書中に報告されるpH値は、Fisher Scientificから市販されているACCUMET pHメーターを使用して決定され得る。
【0066】
本発明の特定の方法は、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する親水性物質を提供する工程を包含し、ここで、この親水性物質のpHは、3.5以下であるか、またはいくつかの場合には、1.3〜3.5であるか、またはなお他の場合には、3.0〜3.5である。本発明の方法の特定の実施形態において、このような親水性物質は、最初に、親水性物質のpHが望ましいpHより大きい、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを提供する工程、次いで、この親水性物質のpHが3.5以下になるまで、いくつかの場合には、1.3〜3.5になるまで、またはなお他の場合には、3.0〜3.5になるまで、この親水性物質に酸を添加する工程によって得られる。例えば、先に言及されたように、この親水性物質は、MSH−200および/またはMS−1200シリケートを含有し得、これらの両方は、代表的に、3.5〜4.5のpHで、供給業者により提供される。
【0067】
本発明の方法の特定の実施形態において、親水性物質は、希釈剤(例えば、水または有機溶媒)で希釈され得、その後、例えば、この親水性物質の固形分含有量を低下させるために、酸が添加され、これによって、以下に説明されるように、より薄いフィルムの形成を可能にする。
【0068】
この親水性物質のpHを調整するためにこの親水性物質に添加され得る酸としては、無機酸と有機酸との両方が挙げられる。適切な無機酸としては、とりわけ、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機酸としては、とりわけ、酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、ギ酸、およびシュウ酸が挙げられる。
【0069】
本発明の特定の方法は、ゾルまたはペーストのpHが3.5以下であるか、またはいくつかの場合には、1.3〜3.5であるか、またはなお他の場合には、3.0〜3.5である、希釈剤中に分散された光触媒物質を含有するゾルまたはペーストを提供する工程を包含する。特定の実施形態において、このゾルまたはペーストのpHは、本発明の工程(a)で提供される親水性物質のpHと実質的に同じである。本発明の方法の特定の実施形態において、このようなゾルまたはペーストは、最初に、pHが望ましいpHより大きいゾルまたはペーストを提供する工程、次いで、このゾルまたはペーストのpHが3.5になるまで、またはいくつかの場合には、1.3〜3.5になるまで、またはなお他の場合には、1.3〜3.5になるまで、このゾルまたはペーストに酸を添加する工程によって、得られる。例えば、先に言及されたように、本発明の組成物において使用される、光触媒物質は、Showa Denko CorporationからNTB−1およびNTB−13の名称で入手可能な酸化チタンのゾルを含有し得、ここで、このゾルは、水中に分散した、板チタン石型酸化チタン粒子、あるいは板チタン石型酸化チタン粒子とアナターゼ型酸化チタンおよび/またはルチル型酸化チタン粒子との混合物を含有する。NTB−1およびNTB−13は、代表的に、2〜4のpHで、供給業者により提供される。
【0070】
光触媒物質を含有するゾルまたはペーストのpHを調整するためにこのゾルまたはペーストに添加され得る酸としては、無機酸と有機酸との両方が挙げられ、とりわけ、先に記載されたものが挙げられる。本発明の特定の実施形態において、この光触媒物質を含有するゾルまたはペーストに添加される酸は、本発明の工程(a)において提供される親水性物質に添加される酸と同じである。
【0071】
本発明の方法は、工程(a)で提供される親水性物質を、工程(b)で提供されるゾルまたはペーストと混合し、この光触媒物質をこの親水性物質中に分散させる工程を包含する。この混合する工程は、具体的には限定されず、この混合が、親水性物質中での光触媒物質の分散を生じる限り、当業者に公知の任意の従来の混合技術によって、達成され得る。その結果、本発明はまた、組成物のpHが、3.5以下(例えば、1.3〜3.5、またはいくつかの場合には、3.0〜3.5)のpHである液体組成物に関する。
【0072】
本発明の特定の他の方法に従って、液体組成物は、(a)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する親水性物質を提供する工程であって、この親水性物質のpHが、7.0〜8.5である、工程;(b)希釈剤中に分散された光触媒物質を含有するゾルまたはペーストを提供する工程であって、このゾルまたはペーストのpHが、7.0〜8.5である、工程;および(c)(a)において提供された親水性物質を(b)において提供されたゾルまたはペーストと混合して、この光触媒物質をこの親水性物質中に分散させる工程によって、調製される。
【0073】
本発明のこれらの方法は、親水性物質のpHが7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの場合には、7.5〜8.0)である、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含有する親水性物質を提供する工程を包含する。本発明のこれらの方法の特定の実施形態において、このような親水性物質は、最初に、親水性物質のpHが所望のpHより低い、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを提供し、次いで、この親水性物質のpHが7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの場合には、7.5〜8.0)になるまで、この親水性物質に塩基を添加することによって、得られる。
【0074】
本発明のこれらの方法の特定の実施形態において、この親水性物質は、先に記載されるように、塩基化合物の添加前に水で希釈され得る。
【0075】
親水性物質のpHを調整するためにこの親水性物質に添加され得る物質としては、有機塩基と無機塩基との両方が挙げられる。この親水性物質のpHを上昇させるために使用され得る塩基の具体的な例としては、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウムおよび水酸化リチウム);水酸化アンモニウム、第四級アンモニウム水酸化物(例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドおよびテトラエタノールアンモニウムヒドロキシド);アンモニア;アミン(例えば、トリエチルアミンおよび3−(ジエチルアミノ)−プロパン−1−オール);第三級スルホニウム水酸化物(例えば、トリメチルスルホニウムヒドロキシドおよびトリエチルスルホニウムヒドロキシド);第四級ホスホニウムヒドロキシド(例えば、テトラメチルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラエチルホスホニウムヒドロキシド);有機シラノレート(例えば、三カリウムγ−アミノプロピルシラントリオレート、三カリウムN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルシラントリオレート、二カリウムジメチルシランジオレート、カリウムトリメチルシラノレート、ビス−テトラメチルアンモニウムジメチルシランジオレート、ビス−テトラエチルアンモニウムジメチルシランジオレート、およびテトラエチルアンモニウムトリメチルシラノレート);酢酸ナトリウム;ケイ酸ナトリウム;重炭酸アンモニウム;ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本発明のこれらの方法は、ゾルまたはペーストのpHが7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの場合には、7.5〜8.0)である、希釈剤中に分散された光触媒物質を含有するゾルまたはペーストを提供する工程を包含する。特定の実施形態において、このゾルまたはペーストのpHは、親水性物質(a)のpHと実質的に同じである。本発明のこれらの方法の特定の実施形態において、このようなゾルまたはペーストは、最初に、ゾルまたはペーストのpHが望ましいpHより低いゾルまたはペーストを提供する工程、次いで、このゾルまたはペーストのpHが7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの場合には、7.5〜8.0)になるまで、このゾルまたはペーストに塩基を添加する工程によって、得られる。
【0077】
光触媒物質を含有するゾルまたはペーストのpHを調整するためにこのゾルまたはペーストに添加され得る塩基としては、無機塩基および有機塩基が挙げられ、とりわけ、先に記載されたものが挙げられる。本発明の特定の実施形態において、光触媒物質を含有するゾルまたはペーストに添加される塩基は、本発明の工程(a)で提供される親水性物質に添加される塩基と同じである。
【0078】
本発明のこれらの方法は、さらに、工程(a)で提供された親水性物質を、工程(b)で提供されたゾルまたはペーストと混合し、この光触媒物質をこの親水性物質中に分散させる工程を包含する。この混合する工程は、具体的には限定されず、そしてこの混合が、親水性物質中への光触媒物質の分散を生じる限り、当業者に公知の任意の従来の混合技術によって、達成され得る。この方法によって作製される液体組成物は、少量のみの沈殿を伴って24〜72時間安定であることが見出された。結果として、本発明はまた、組成物のpHが7.0〜8.5(例えば、7.0〜8.0、またはいくつかの場合には、7.5〜8.0)である液体組成物に関する。
【0079】
ここで図2および図3を参照すると、(i)本発明の特定の非限定的な実施形態の、拡大されたスケールでの概略断面図、および(ii)本発明の実施形態を図示する顕微鏡写真が、それぞれ見られる。図2および図3から明らかであるように、本発明の特定の実施形態において、光触媒物質が、親水性結合剤の全体にわたって分散しているコーティングが形成される。これらの実施形態において、このコーティングは、ナノサイズの光触媒粒子10の形態の光触媒物質(これらの特定の例において、これらの粒子は、20ナノメートル以下の平均結晶直径を有する)を含有し、これらの粒子は、親水性結合剤20の全体にわたって、比較的均一に分散している。具体的には、図3に示されるように、粒子10は、集合していない。すなわち、これらの粒子の全てまたはほぼ全てが、互いに結合しているのではなく、結合剤によって包まれており、そして結合剤によって分離されている。いずれの理論によっても限定されないが、親水性物質と、光触媒物質のゾルまたはペーストとのpHを、混合する前に制御することによって、これらの光触媒粒子はこの親水性物質中に十分に分散され得、その結果、集合が防止され、それにより、低濁度の液体組成物が得られると考えられる。従って、本発明はまた、以下に記載されるように、低い濁度を有する液体組成物に関する。
【0080】
光触媒粒子は、本発明の特定の組成物において集合することを防止するので、この組成物は、有機フィルム上に直接塗布され得、一方で、光触媒物質(例えば、二酸化チタン粒子)と、有機フィルムとの間での直接の接触を、生じるとしてもほとんど生じない。結果として、本発明の実施形態の1つの利点は、液体組成物が、本発明の組成物と有機フィルムとの間に任意のバリア層を必要とせずに、直接塗布され得ることである。当業者によって理解されるように、光触媒物質(例えば、二酸化チタン)の光触媒作用によって発生する−OHフリーラジカルは、この光触媒物質と直接接触する有機フィルムを分解する。
【0081】
本発明の液体組成物、および/または本発明の液体組成物の生成の方法の1つの利点は、これらの組成物が、安定な1パッケージ液体組成物を生じ得ることである。従って、本発明は、1パックの液体組成物に関する。本明細書中において使用される場合、用語「1パックの液体組成物」とは、この組成物を構成する成分が、単一の容器内で一緒に貯蔵される液体組成物をいう。
【0082】
本発明の1パックの液体組成物は、先に議論された光触媒物質および親水性結合剤を含めて、少なくとも2つの成分を含有する。さらに、このような1パックの液体組成物は、少なくとも3ヶ月の貯蔵寿命を有する。本明細書中において使用される場合、用語「貯蔵寿命」とは、これらの成分が単一の容器内で合わされた時点と、この液体組成物がもはやヘーズの低いフィルムを形成し得ないほどこの液体組成物の濁度が増加する程度までの沈殿または集合の発生との間の、時間の量をいう。本発明の特定の実施形態において、1パックの液体組成物は、少なくとも3ヶ月、または他の特定の実施形態においては、少なくとも6ヶ月、またはいくつかの場合には、少なくとも12ヶ月の貯蔵寿命を有する。
【0083】
特定の実施形態において、本発明の液体組成物は、3ヵ月後、6ヵ月後、またはいくつかの場合には、12ヵ月後に、600NTU(比濁法の濁度単位)以下、またはいくつかの場合には、400NTU以下の濁度を有する。本明細書中に報告される濁度の値は、Shaban Manufacturing Inc,H.F.Instruments Divisionによって製造されるTurbidimeter,Model DRT−100Dによって、28mmの直径×91mmの長さの、平坦な底部を有するサンプルキュベットを使用して、決定され得る。さらに、特定の実施形態において、本発明の組成物から堆積されるコーティングフィルムは、特定の実施形態において低いヘーズを有する。本明細書中において使用される場合、「低いヘーズ」とは、フィルムが、0.3%以下のヘーズを有することを意味する。本明細書中に報告されるヘーズの値は、ヘーズ計(例えば、Pacific Scientific Company,Silver Spring,Mdから入手可能なHazegard(登録商標) Model No.XL−211)を用いて決定され得る。
【0084】
本発明の液体組成物はまた、マルチパックの製品の形態で提供され得る。本発明はまた、先に議論された光触媒物質を含有する第一の成分、および先に議論された親水性結合剤を含有する第二の成分を備えるマルチパックの製品に関する。本明細書中において使用される場合、用語「マルチパック製品」とは、1種より多い成分を含有し、これらの成分が、基材への塗布の直前に合わされる、コーティング組成物をいう。
【0085】
本発明はまた、基材に液体組成物をコーティングする方法に関する。本発明のこれらの方法は、以下の工程を包含する:(a)基材に、液体組成物を塗布する工程;(b)この組成物を硬化させる工程。基材は、例えば、アルコール/水混合物で洗浄され得、工程(a)の前に乾燥され得る。本発明のこれらの方法において使用される液体組成物は、先に考察された触媒材料および親水性結合剤を含む。
【0086】
本発明のこれらの方法において、液体組成物は、任意の望ましい技術(例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、浸漬、スピンコーティング、フローコーティング、ブラッシング、およびワイピング)によって、基材に塗布され得る。本発明の液体組成物は、ポリマー基材、セラミック基材、コンクリート基材、セメント基材、ガラス基材、木材基材、紙製基材または金属基材、これらの複合材料、または他の材料(塗装基材を含む)に、塗布され得る。先に提案されるように、本発明の液体組成物は、このような基材の表面に存在し得る有機フィルム上に直接効果的に塗布され得る。所望の場合、本発明の組成物の複数の層が適用され得る。シラノール基と反応性である基材は、本発明の組成物を「係留(anchor)」し、それによって、改善された接着を提供し得る。
【0087】
本発明の液体組成物が塗布され得る物品の具体的な例としては、窓;自動車、航空機、船などの防風ガラス;屋内または屋外の鏡;レンズ、眼鏡または他の光学機器;保護用スポーツゴーグル;マスク;ヘルメットシールド;冷凍食品の展示容器のスライド式ガラス蓋;ガラスカバー;建物の壁;建物の床;建物の外側タイル;建築用の石材;塗装された鋼板;アルミニウムパネル;窓枠;スクリーンドア;門扉;サンルーム;手すり;温室;交通信号;透明な防音壁;掲示板;広告版;ガードレール;道路の反射物;装飾用パネル;太陽電池;自動車、船、航空機などの塗装された表面;照明具、備品および他の物品の塗装された表面;空気処理システムおよび精製器;台所および浴室の内部の備品および器具;セラミックタイル;空気濾過ユニット;店の陳列棚;コンピュータディスプレイ;空調機の熱交換器;高電圧ケーブル;建物の外側および内側の部材;窓ガラス;食器類;生活空間、浴室、台所、病室、工場の空間、事務所の空間などの壁;衛生陶器(例えば、洗面器、浴槽、便器(closet bowl)、小便器、流しなど);ならびに電子設備(例えば、コンピュータディスプレイ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明の液体組成物は、例えば、紙、布、または不織布に、本発明の液体組成物を含浸させることによって、基材に塗布され得る。この含浸された物質は、容器内で貯蔵され得、そして基材の表面をワイプコートする必要がある場合に、取り出され得る。あるいは、紙、布、または不織布は、使用の際に、本発明の液体組成物を含浸され得る。
【0089】
本発明の、基材をコーティングする方法において、液体組成物は、この基材に塗布された後に硬化(すなわち、乾燥)される。いずれの理論によっても束縛されないが、硬化の際に、本質的に完全に加水分解された結合剤のシラノール基のいくらかが縮合し、その結果、Si−O−Ti結合が、この液体組成物から形成された乾燥フィルム中で形成されると考えられる。これらの基の存在は、以下により詳細に記載されるように、本発明の組成物から形成されるコーティングの耐久性を増強すると考えられる。
【0090】
液体組成物は、自己硬化し得、その結果、この組成物は、いかなる硬化触媒の補助もなしで、硬化し得る。さらに、このような組成物は、例えば、周囲温度で硬化し得る。換言すれば、本発明の液体組成物の硬化は、この組成物を空気中に静置することによって、達成され得る(すなわち、空気乾燥)。本発明の特定の実施形態に従って、この液体組成物は、この組成物を、25℃で2時間〜3時間、空気に曝露して、超親水性(superhydrophilicity)を達成し、そして16時間曝露して、長期間の耐久性を達成させることにより、硬化される。本発明の液体組成物はまた、熱乾燥によって硬化され得る。例えば、本発明の特定の実施形態に従って、液体組成物は、空気に3分間〜5分間曝露し、次いで、少なくとも3秒間、80℃〜100℃で強制的に乾燥させることによって、硬化される。
【0091】
本発明の特定の実施形態の特徴の1つは、液体組成物が、非常に低い固形物含有量(この組成物の総重量に基づいて、約1重量%の全固形分)を有し得ることである。その結果、この液体組成物は、非常に小さいフィルム厚で、基材に塗布され得る。具体的には、本発明の特定の実施形態によれば、この組成物は、200ナノメートル(0.2マイクロメートル)以下、またはいくつかの実施形態においては、10ナノメートル〜100ナノメートル(0.01マイクロメートル〜0.1マイクロメートル)、本発明のなお他の実施形態においては、20ナノメートル〜60ナノメートル(0.02マイクロメートル〜0.06マイクロメートル)の乾燥フィルム厚の薄膜の形態で、基材に塗布される。本発明の組成物の、このような低いフィルム厚での塗布は、この組成物の屈折率を基材の屈折率と合わせる必要なしに、光学薄膜を提供する際に、特に有利であり得る。
【0092】
先に言及されたように、本発明の液体組成物から形成されるコーティングは、最初から親水性である。すなわち、塗布および引き続く乾燥の際であって、光触媒の励起の前に、このコーティングは、水に対する親和性を示す。この最初の親水性は、結合剤の親水性から生じ、そして20°以下、またはいくつかの実施形態においては、15°以下、なお他の実施形態においては、10°以下の初期の水接触角度によって説明され得る。しかし、光触媒物質の励起の際に、本発明の液体組成物から形成されるコーティングは、「超親水性」にされ得る。すなわち、光触媒の励起の後に、このようなコーティングは、5°未満の水接触角度を示し得、0°程度に小さい角度さえも示し得る。
【0093】
光触媒を励起させるために使用され得る手段は、その液体組成物において使用される光触媒物質に依存する。例えば、可視光への曝露の際に光励起される物質(例えば、板チタン石型の二酸化チタン、および窒素または炭素をドープされたに酸化チタン)は、少なくとも400ナノメートルの波長の任意の放射線を含む、任意の可視光源に曝露され得る。他方で、アナターゼ型およびルチル型の二酸化チタン、酸化スズ、および酸化亜鉛は、それぞれ、387ナノメートル未満、413ナノメートル未満、344ナノメートル未満、および387ナノメートル未満の波長のUV放射線に曝露することによって、光励起され得る。このような光触媒を光励起させるために適切なUV放射線源としては、UVランプ(例えば、商品名UVA−340のもとでCleveland,OhioのQ−Panel Companyによって販売されているもので、コーティング表面において、1平方メートルあたり28ワット(W/m)の強度を有する)が挙げられるが、これに限定されない。
【0094】
特定の実施形態において、本発明の液体組成物から形成されるコーティングは、少なくとも0.5cm−1min−1(例えば、少なくとも1.0cm−1min−1)の光活性を示す。光活性は、米国特許第6,027,766号の第11欄第1行〜第12欄第55行に記載されているように評価され得、この米国特許は、本明細書中に参考として援用される。
【0095】
特定の実施形態において、本発明の液体組成物から形成されるコーティングは、太陽光に1時間〜2時間の間曝露すると、超親水性にされる。あるいは、本発明の液体組成物から形成されるコーティングは、28W/mの強度のUV放射線に1時間曝露すると、超親水性にされ得る。
【0096】
先に議論されたように、本発明の液体組成物から形成されるコーティングは、とりわけ、非常に好ましい親水性の、抗静電性の、かつ/または抗菌性の特性を示し得る。これらのコーティングは、親水性であり、そして光触媒物質の光励起の際に超親水性にされるので、本発明の組成物から作製されるコーティングは、有利な自己清浄化特性、汚れ防止特性、および/またはくもり止め特性を示し得る。従って、本発明はまた、塗装されたコーティングされた物品の汚れ防止特性および/またはくもり止め特性を改善するための方法に関する。
【0097】
本発明の組成物から作製されるコーティングの別の特徴は、このコーティングが、特に耐久性のあることである。本発明の組成物から作製されたコーティングの驚くべき耐久性は、このフィルム表面が、加速された天候条件下で長時間にわたって、接触角度を維持する能力の観点で測定され得る。長時間にわたって、または多数回のワイピングサイクルにわたって試験されたサンプルによって維持され得る接触角度の程度が低いほど、このフィルムはより耐久性がある。このフィルムの耐候性のシミュレーションは、耐候性試験チャンバ(Cleveland Condensing Cabinet(CCC)およびQUV Tester(Cleveland,OhioのQ−Panel Companyの製品)が挙げられる)を介して得られ得る。
【0098】
特定の実施形態において、光触媒物質は、本発明の液体組成物中に、CCCチャンバへの4000時間の曝露後に10°未満(例えば、5°未満)の接触角度、および/または3cm−1min−1の光活性を維持するコーティングを生じるために十分な量で、存在する。ここで、CCCチャンバは、140°F(60℃)の蒸気温度で、室内の周囲環境で作動され、これは、試験表面への一定した水凝集を生じる。実際に、本明細書中の実施例によって示されるように、このような組成物の特定の実施形態への光触媒物質の含有は、本明細書中に記載される型の親水性結合剤を含有するが光触媒物質を含有しない組成物と比較して、劇的に改善された耐久性を示すコーティングを生じることが見出された。図4によって示されるように、本発明の特定の実施形態において、光触媒物質は、組成物中に、このコーティングを上記のようにCCCチャンバ内に4000時間曝露した後でさえも、その初期の水接触角度を維持する(すなわち、水接触角度が、初期の水接触角度の4°以内であり、ここで、「初期の水接触角度」とは、実施例に記載されるように、UV光に2時間曝露した後であるがCCCチャンバに曝露する前に観察される水接触角度をいう)コーティングを与えるために十分な量で含有され得る。一方で、光触媒物質が存在しない場合、約2000時間〜3000時間のこのような曝露の後にその初期の水接触角度を維持し得ないコーティングが得られた。実際に、これらの実施例は、光触媒物質が存在しない場合、この表面の接触角度は、3500時間のCCCへの曝露後に、初期の接触角度のほぼ3倍に増加することを示す。いずれの理論によっても束縛されないが、本発明者らは、この驚くべき結果が、光触媒物質のオルガノシランとの部分的な架橋(これは、このコーティング中にSi−O−Ti結合を与える)に起因し得ると考える。本発明者らは、いくらかの光触媒物質は、このような架橋に関与し、一方で、いくらかの光触媒物質は、4000時間のCCC曝露後でさえも、光触媒活性化のために利用可能なままであると考える。
【0099】
特定の実施形態において、本発明の組成物から作製されたコーティングは、65℃〜70℃のブラックパネル温度で蛍光管(B313ナノメートル)を備えるQUV Tester中での650時間の曝露、および50℃で4時間の凝縮湿度への曝露後に、5°〜6°の接触角度を維持し得る。
【0100】
以下の実施例が、本発明を説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をその細部まで限定するとみなされるべきではない。他に示されない限り、以下の実施例および本明細書全体における全ての部および百分率は、重量に基づく。
【実施例】
【0101】
(実施例1:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
酸加水分解触媒溶液(本明細書中で、溶液「A」と称される)を、7,000グラムの脱イオン水を、清浄な乾燥した2ガロンの容器に添加することによって、調製した。攪拌しながら、1.0グラムの70%硝酸を添加し、そしてとっておいた。
【0102】
15.5グラム(約0.10モル)の、98% TMOS(テトラメトキシシラン)(約6グラムのSiOに相当する)を、清浄な乾燥した1リットルのガラスビーカーに添加した。3.6グラムの溶液A(約0.20モルのHO)を、このTMOSにゆっくりと添加し、氷浴を使用することによってその発熱を制御し、温度を25℃未満に維持した。溶液Aの添加の完了時に、この部分的に加水分解されたシラン溶液を、約25℃で1時間保持した。別の清浄な乾燥したビーカーで、290.5グラムのエタノールおよび290.5グラムの脱イオン水を混合し、次いで、1時間の保持時間の後に、攪拌しながら、部分的加水分解物に添加した。次いで、この希釈されたシラン溶液のpH(pH約5)を、0.80グラムの氷酢酸を攪拌しながら添加することによって、pH約3.9に調整した。得られた1% SiO結合剤溶液を、攪拌しながら一晩かけて、完全に加水分解させた。
【0103】
上記溶液を用いる試験パネルへの塗布は、良好な濡れを示し、光学的な傷がなく、そして良好な親水性を維持しながら、50回の浸水/乾燥サイクルをパスした。
【0104】
(実施例2:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
15.5グラム(約0.10モル)の、98% TMOS(約6グラムのSiOに相当する)および3.6グラムの無水メタノール(共溶媒)を、清浄な乾燥した1リットルのガラスビーカーに添加した。3.6グラムの溶液A(約0.20モルのHO)を、このTMOS溶液にゆっくりと添加し、溶液Aの添加の速度によってその発熱を制御した。この添加の間に達したピーク温度は、33℃であった。溶液Aの添加の完了時に、この部分的に加水分解されたシラン溶液を、約25℃で1時間保持した。別の清浄な乾燥したビーカーで、287グラムのエタノールおよび290.5グラムの脱イオン水を混合し、次いで、1時間の保持時間の後に、攪拌しながら、部分的加水分解物に添加した。次いで、この希釈されたシラン溶液のpH(pH約5)を、0.80グラムの氷酢酸を攪拌しながら添加することによって、pH約3.9に調整した。得られた1% SiO結合剤溶液を、攪拌しながら一晩かけて、完全に加水分解させた。
【0105】
上記溶液を用いる試験パネルへの塗布は、水をはじく(dewetting)問題を示し、斑が生じた(mottling)。これらの試験結果は、共溶媒の含有が、より十分な加水分解および対応するより高分子量のオリゴマーを形成するための縮合を提供することを示した。このことは、塗布の際に観察された挙動を示した。
【0106】
(実施例3:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
15.5グラム(約0.10モル)の、98% TMOS(テトラメトキシシラン)(約6グラムのSiOに相当する)を、清浄な乾燥した1リットルのガラスビーカーに添加した。3.6グラムの溶液A(約0.20モルのHO)を、このTMOSにゆっくりと添加し、溶液Aの添加の速度によってその発熱を制御した。この添加の間に達したピーク温度は、40℃であった。溶液Aの添加の完了時に、この部分的に加水分解されたシラン溶液を、約25℃で1時間保持した。別の清浄な乾燥したビーカーで、290.5グラムのエタノールおよび290.5グラムの脱イオン水を混合し、次いで、1時間の保持時間の後に、攪拌しながら、部分的加水分解物に添加した。次いで、この希釈されたシラン溶液のpH(pH約5)を、0.80グラムの氷酢酸を攪拌しながら添加することによって、pH約3.9に調整した。1% SiO結合剤溶液を、攪拌しながら一晩かけて、完全に加水分解させた。
【0107】
上記溶液を用いる試験パネルへの塗布は、水をはじく問題を示し、斑が生じた。これらの試験結果は、発熱を制御せず、そして加水分解の温度を約40℃にまで達せさせることが、より高分子量のオリゴマーを形成するためのより高度の縮合を提供することを示した。このことは、塗布の際に観察された挙動を示した。
【0108】
(実施例4:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
メタノールおよび脱イオン水を、1:1(w:w)の比で、攪拌しながら混合した。この混合物を、室温まで冷却した。10.0gのMS−51シリケート溶液(Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japan)を、ガラス反応器に入れ、続いて、504.8gの、予め混合したメタノール/水溶媒混合物を、一度に添加した。この溶液を、20℃〜22℃で15分間攪拌した。次いで、5.2gの氷酢酸を、攪拌しながらこの反応器に添加した。この溶液混合物を、周囲温度でさらに24時間攪拌した。この溶液の最終SiO含有量は、1%であり、pHは3.5であった。
【0109】
(実施例5:加水分解されたオルガノシリケート結合剤の調製)
1−プロパノールおよび脱イオン水を、1:1(w:w)の比で、攪拌しながら混合した。この混合物を、室温まで冷却した。別の容器内で、10.0gの氷酢酸を90.0gの1−プロパノール/水溶媒混合物で希釈することによって、氷酢酸溶液を調製した。5.0gのMS−51シリケート溶液をガラス反応器に入れ、続いて、253.7gの、予め混合した1−プロパノール/水溶媒混合物を、一度に添加した。この溶液を、20℃〜22℃で15分間攪拌した。次いで、1.4gの予め調製した氷酢酸溶液を、攪拌しながらこの反応器に添加した。この溶液混合物を、周囲温度でさらに24時間攪拌した。この溶液の最終SiO含有量は、1%であり、pHは4.1であった。
【0110】
(実施例6:液体組成物の調製)
表1の液体組成物A〜Gを、以下のように調製した。充填物Iを、磁気攪拌機を備えた1リットルのガラス容器内で調製した。充填物Iを、結合剤物質をこの容器に入れ、次いで脱イオン水を、攪拌しながらこの容器に添加することによって、調製した。この混合物のpHを、所望のpHに達するまで2Nの塩酸を攪拌しながら添加することによって、1.8に調整した。
【0111】
充填物IIを、磁気攪拌機を備えた4オンスのガラス容器内で調製した。チタニアゾルをこの容器に添加し、そしてそのpHを、所望のpHに達するまで2Nの塩酸を攪拌しながら添加することによって、1.8に調整した。次いで、充填物IIを、攪拌しながら充填物Iに添加し、親水性組成物A〜Gを生成した。
【0112】
【表1】

MSH−200 Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから市販されている加水分解したオルガノシリケート(1%固形分)
NTB−1 Showa Denko K.K.,Tokyo,Japanから市販されているチタニアゾル
STS−01 Ishihara Sangyo Kaisha Ltd.から市販されているチタニアゾル。
【0113】
(実施例7−フロートガラス試験基材)
9インチ×12インチのフロートガラス試験基材の表面を、希釈したDart 210溶液(Madison Chemical Co.,Inc.から市販されている)でこの基材を清浄化することによって、準備した。この溶液を、溶液が5%〜10%のDart 210の濃度を有するように、濃Dart 210を脱イオン水で希釈することによって、調製した。次いで、この基材を熱水道水で、次いで脱イオン水でリンスした。この試験基材に、Windex(登録商標)をスプレーし、そしてペーパータオル(Kimberly−Clark Corp.から市販されているKaydry(登録商標))で拭いて乾燥させた。
【0114】
実施例6の液体組成物の各々を、Fisher Scientificから市販されているBLOODBLOC Protective Padを使用するワイプ塗布によって、試験基材に塗布した。このパッドで、泡適用器の周りを包んだ。次いで、1.5グラムの親水性組成物を、点眼器または滴下用頂部を有するプラスチックビンを使用して、このパッドに塗布した。次いで、この湿ったパッドをガラス試験基材と接触させることによって、この組成物を、真っ直ぐな、わずかに重なる行程で塗布した。塗布後、この基材を室温で少なくとも2乾燥させ、その後、試験した。結果を、表2にまとめる。
【0115】
【表2】

サンプルを、X線蛍光分析を使用して分析した
光触媒活性を、米国特許第6,027,766号の第11欄第1行〜第12欄第55行に記載されているように評価した
表面抵抗を、ACL Statitide Model 800 Megohmeterを用いて、(1)サンプル上の数箇所に5ミリメートルの間隔を空けて配置した大きい範囲のプローブ、または(2)サンプル上の数箇所に2.75インチの間隔を空けて配置した、計器のオンボードプローブのいずれかを使用して、評価した。
ヘーズを、Pacific Scientific Company,Silver Spring,Mdから入手可能なHazegard(登録商標) Model No.XL−211ヘーズメーターを用いて評価した。
【0116】
(耐久性試験−試験1)
液体組成物AおよびBでコーティングされた試験基材を、140°F(60℃)で作動するCleveland Condensation Chamberに入れた。各試験基材を、このチャンバから毎週取り出し、そして水接触角度を決定するために試験した。この組成物の光活性を、この基材をUV光に曝露する前と後との水接触角度の差を測定することによって決定した。曝露の間隔は、Cleveland,OhioのQ−Panel Companyによって供給されるUVA−340ランプまたは直接の太陽光に対して、2時間であった。報告される水接触角度を、定着液滴法によって、Gartner Scientific角度計光学機器を備えた、Lord Manufacturing,Inc.によって製造される改変された捕捉気泡インジケータを使用して、測定した。測定されるべき表面を、水平位置に、上に向けて、光源の正面に配置した。水の定着液滴を、この光源の正面で、この表面の頂部に配置し、これによって、円形の分度器の目盛を備える角度計の望遠鏡を通して定着液滴の輪郭が見え、そして接触角度が、度で測定されるようにした。結果を、表3にまとめる。
【0117】
【表3】

(耐久性試験−試験2)
液体組成物A〜Gでコーティングした試験基材の耐久性を、上に記載されたようなUV光得の曝露の後であるがCleveland Condensation Chamber内への配置の前の水接触角度を測定することによって、試験した。次いで、同じ基材を、上記のように少なくとも4000時間CCC内に配置し、次いで取り出した。次いで、これらの基材を、上記のようにUV光に曝露し、そして水接触角度を測定することによって、試験した。結果を、表4にまとめる。
【0118】
【表4】

(耐久性試験−試験3)
本発明の組成物でコーティングした試験基材の耐久性をまた、親水性オルガノシリケート結合剤を含有するが光触媒物質を含有しない組成物でコーティングした基材と比較した。実施例6の親水性組成物BおよびF、ならびに0.95/0.5の結合剤対二酸化チタンの比を有する類似の組成物(組成物J)を、上記のようにCleveland Condensation Chamber内に配置し、定期的に取り出し、そして上記のように、UV光に曝露した。比較用組成物Aは、Dainippon Shikizai,Tokyo,Japanから入手可能なShinsui Flow MS−1200であり、そして比較用組成物Bは、Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから入手可能なMSH−200であった。得られた試験基材を、上記のように、水接触角度について試験した。結果を、図4に示す。
【0119】
(実施例8−液体組成物の調製)
液体組成物HおよびIを、WINDEXを表5に示される量でこの組成物に含有させ、そして結合剤/TiOの重量比を表5に記載されるように調整したことを除いて、実施例6に記載される様式で調製した。次いで、これらの組成物の耐久性を、耐久性試験−試験1に記載される様式で分析した。結果を、表6に記載する。
【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

(実施例9−液体組成物の濁度)
液体組成物K、L、M、およびOを、pHを表7に記載される値に調整し、そして結合剤/TiOの重量比を表7に記載されるように調整したことを除いて、実施例6に記載される様式で調製した。液体組成物N、P、およびQを、充填物IのpHを調整せず、そして充填物IIが、チタニアゾルを脱イオン水で15%固形分から2%固形分まで希釈するために十分な量のチタニアゾルと脱イオン水との混合物であることを除いて、実施例6に記載されるのと類似の様式で調製した。充填物IIのpHを調整せず、そして充填物IIを、充填物Iに添加して、液体組成物を作製した。次いで、これらの組成物の濁度を、Shaban Manufacturing Inc,H.F.Instruments Divisionにより製造されるTurbidimeter,Model DRT−100Dによって、28mmの直径×91mmの長さを有する平底のサンプルキュベットを使用して、経時的に分析した。結果を、表7に記載する。
【0122】
【表7】

(実施例10−プラスチックレンズでの曇り耐性)
この実施例は、本発明の曇り止め特性を説明することを意図する。供給業者によって染色不可能なハードコートで予めコーティングされた熱可塑性ポリカーボネートレンズ(Gentex Optics,Inc.から市販されているGentex(登録商標)PDQ(登録商標))を、石鹸水で洗浄し、脱イオン水およびイソプロピルアルコールでリンスし、そして自然乾燥させることによって、表面処理した。次いで、これらのレンズをプラズマ処理した。実施例10Aとして、さらなるコーティングを、このレンズに塗布しなかった。実施例10Bとして、プラズマで表面処理したレンズを、Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから市販されているMSH−200加水分解オルガノシリケート(1%固形分)でコーティングした。実施例10Cとして、プラズマで表面処理したレンズを、実施例6の組成物Eに記載された型の組成物で、浸漬コーティングによって、230mm/分の引き出し速度でコーティングした。
【0123】
曇り特性を、熱湯を満たしたカップ上にこのレンズを配置することによって、評価した。実施例10Aのレンズは、その面積全体にわたって曇った。実施例10Bのレンズは、その面積の50%〜60%にわたって曇った。実施例10Cのレンズは、その表面に曇りを有さない。
【0124】
(実施例11−自動車のブレーキダストによる汚れに対する耐性)
この実施例は、本発明の汚れ防止特性を説明することを意図する。DaimlerChrysierから購入した2つのアルミニウム合金の車輪を、マスキングテープを使用して、等しい5つの領域に分割した。これらの車輪を、1996年モデルのChrysler Jeep Cherokeeに取り付けた。1つの車輪(車輪#1)を、前の客席側に設置し、そして他方の車輪(車輪#2)を、前の運転者側に設置した。設置の前に、車輪#1および車輪#2の各々の5つの領域を、以下のように処理した。
【0125】
(車輪#1の準備)
乗物への設置の前に、車輪#1の5つの領域を、以下のように処理した。領域1には、コーティングを塗布しなかった。領域2を、Hi−GardTM 1080(PPG Industries,Inc.から入手可能な、オルガノシラン含有コーティング溶液)で、洗浄瓶を使用するカーテンコーティングによってコーティングし、5分間自然乾燥させ、そして240°F(116℃)で3時間焼成した。領域3を、領域#2に関して上に記載されたように、Hi−Gard 1080でコーティングした。焼成後、領域3を、Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから市販されているMSH−200加水分解オルガノシリケート(1%固形分)で、浸漬したスポンジを用いるワイプオン塗布によって、コーティングした。次いで、このMSH−200を自然乾燥させ、そして自己縮合させた。領域4を、領域2に関して上に記載されたように、Hi−Gard 1080でコーティングした。焼結後、領域4を、実施例6の組成物Eに記載される型の組成物、および脱イオン水とエタノールとの混合物(50/50の重量比)で、浸漬したスポンジを使用して、ワイプオン塗布によってコーティングした。領域5を、実施例6の組成物Eに記載される型の組成物でコーティングした。
【0126】
この乗物を、1週間運転した。車輪#1の領域1〜領域5は、水ですすぐ前に、清浄さに有意な差を示さなかった。園芸用ホースからの水でのリンス後、車輪#1の領域1〜領域5の清浄さを、1〜10のスケールで測定した。より大きい数字が、より清浄な表面を表す。これらの結果を、表8に要約する。
【0127】
【表8】

(車輪#2の準備)
乗物への設置の前に、車輪#2の5つの領域を、以下のように処理した。領域1には、コーティングを塗布しなかった。領域2を、SolGard(登録商標) 330(PPG Industries,Inc.から入手可能な、オルガノシラン含有コーティング溶液)で、洗浄瓶を使用するカーテンコーティングによってコーティングし、5分間自然乾燥させ、そして240°F(116℃)で3時間焼成した。領域3を、領域#2に関して上に記載されたように、Hi−Gard 1080でコーティングした。焼成後、領域3を、Mitsubishi Chemical Corporation,Tokyo,Japanから市販されているMSH−200加水分解オルガノシリケート(1%固形分)で、浸漬したスポンジを用いるワイプオン塗布によって、コーティングした。次いで、このMSH−200を自然乾燥させ、そして自己縮合させた。領域4を、領域2に関して上に記載されたように、Hi−Gard 1080でコーティングした。焼結後、領域4を、実施例6の組成物Eに記載される型の組成物、および脱イオン水とエタノールとの混合物(50/50の重量比)で、浸漬したスポンジを使用して、ワイプオン塗布によってコーティングした。領域5を、実施例6の組成物Eに記載される型の組成物でコーティングした。
【0128】
この乗物を、1週間運転した。車輪#1の領域1〜領域5は、水ですすぐ前に、清浄さに有意な差を示さなかった。園芸用ホースからの水でのリンス後、車輪#1の領域1〜領域5の清浄さを、1〜10のスケールで測定した。より大きい数字が、より清浄な表面を表す。これらの結果を、表9に要約する。
【0129】
【表9】

(実施例12Aおよび12B−塗装された表面への塗布)
実施例12A:3グラムのSurfynol 465(Air Productsから入手可能)を、実施例6の組成物Eに記載された型の100グラムの液体組成物に添加し、そしてこの混合物を攪拌することによって、液体組成物を調製した。
【0130】
(パネルの準備)
Betz Permatreat 1500で予備処理されたアルミニウムパネルを、Truform(登録商標) ZT高光沢白色ポリエステルコーティング(PPG Industries,Inc.から入手可能)で、ワイヤを巻き付けた引き下げ棒を使用して、0.7ミル〜0.8ミルの乾燥フィルム厚で、コーティングした。このコーティングしたアルミニウムパネルを、450°F(ピーク金属温度)で30秒間焼成した。実施例12(1)として、さらなるコーティングを加えなかった。実施例12(2)として、上記で調製された親水性組成物を、Truform ZTで塗装したアルミニウムパネルの上に、ワイヤを巻き付けた引き下げ棒を使用して、0.05ミル〜0.15ミルの乾燥フィルム厚で塗布した。このパネルを、350°F(ピーク金属温度)で25秒間焼成した。
【0131】
(曝露試験の結果)
コーティングされたパネルおよびコーティングされていないパネルを、6ヵ月後に、マレーシアで比較した。結果を、表10に記載する。
【0132】
【表10】

明度(L)を、Kollmorgen InstrumentsのMacbeth事業部から入手可能なMacBeth Color Eye(登録商標) 2145 Spectrophotometerを使用して決定した。明度の測定を、曝露試験の前後に行い、そして差(dL)を記録した。より0に近いdLの値(正であっても負であっても)は、より良好な性能を示す。低いΔLの値は、より小さい色変化を意味する。負の値は、そのコーティングが、元の色の読み取りと比較して、より暗い色になったことを意味する。未洗浄領域の低いΔは、このパネルが、洗浄なしでもさほど汚れていなかったことを示す。
【0133】
実施例12B: Betz Permatreat 1500で予備処理されたアルミニウムパネルを、Duranar(登録商標) Semi Glossコーティング(PPG Industries,Inc.から入手可能)で、実施例12Aに記載されたのと類似の様式でコーティングした。
【0134】
実施例12(3)として、実施例12Aに記載される液体組成物を、Duranarで塗装されたアルミニウムパネルの上に、ワイヤを巻きつけた引き下げ棒を使用して、0.05ミル〜0.15ミルの乾燥フィルム厚で塗布した。このパネルを、350°F(ピーク金属温度)で25秒間焼成した。実施例12(4)として、Toto Frontier Research Co.,Ltdが、二酸化チタンを含有する、メンテナンスがさほど必要でない(low maintenance)クリアコートで仕上げた。実施例12(3)および12(4)のパネルを、南フロリダで、13ヶ月および14ヶ月曝露した。実施例12(4)のパネルにおいては、亀裂が観察され、実施例12(4)のパネルにおいては、亀裂が観察されなかった。
【0135】
(実施例13:ミルワーク(millwork)基材への塗布)
サンプルの準備:コントロールサンプルは、実験室で作製されたか、または市販の溶媒含有ポリウレタンミルワークコーティングで仕上げられた市販の製品パネルであった。試験部分を、最初に、一部をイソプロパノールでワイプすることによって、調製した。次に、実施例6の組成物Eに記載される型の液体組成物を、浸漬されたペーパークロスでこの部分にわたって軽くワイプすることによって、塗布した。コーティングを、一晩自然乾燥させた。サンプルを、4つの基材(フェノール性紙の外装ドア基材(FWD)、ガラス繊維引抜成型品(pult)、ビニル外装されたガラス繊維引抜成型品(VCP)、およびマツ材の窓基材(NLP))に対して調製した。サンプルを、マレーシアの3ヶ月間曝露の曝露現場に送付し、その後、返却されて、色の変化および光沢の保持について評価した。結果を、表11に記載する。
【0136】
【表11】

改変が、本発明に対して、上記記載に開示された概念から逸脱することなくなされ得ることが、当業者によって容易に理解される。このような改変は、特許請求の範囲が、文言上、そうではないことを明白に言及しない限り、添付の特許請求の範囲内に含まれるとみなされるべきである。従って、本明細書中に詳細に記載された実施形態は、説明のみであり、本発明の範囲を限定しない。本発明は、添付の特許請求の範囲およびその任意の全ての均等物の全範囲に与えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、本発明の特定の非限定的な実施形態に従って、親水性結合材料から形成された乾燥フィルムのフーリエ変換赤外分光法(「FTIR」)分析を反映するチャートである。
【図2】図2は、本発明の特定の非制限的な実施形態の拡大スケールでの概略的な断面図である。
【図3】図3は、本発明の特定の非制限的な実施形態を示す、電界放出走査電子顕微鏡二次電子顕微鏡写真(倍率、40,000倍)である。
【図4】図4は、実施例2に記載されるように実施される耐久性試験の結果を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物であって、該液体組成物は、以下:
(a)光触媒材料、および
(b)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む親水性結合剤、
を含む、液体組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記光触媒材料の少なくとも一部は、3nm〜35nmの平均結晶直径を有する粒子の形態で存在する、液体組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記光触媒材料が、二酸化チタンの板チタン石形態、火炎熱分解によって化学的に改変された二酸化チタン、窒素ドープ二酸化チタン、プラズマ処理二酸化チタン、およびこれらの混合物からなる群より選択される、液体組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記光触媒材料が、水中に分散された光触媒材料の粒子を含むゾルの形態で提供される、液体組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記光触媒材料が、該組成物の全重量に基づいて、0.1〜0.75重量%の範囲の量で、該液体組成物中に存在する、液体組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記オルガノシリケートが、オルガノキシシラン、オルガノキシシロキサン、およびこれらの混合物からなる群より選択され、該オルガノキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、およびこれらの混合物からなる群より選択される、液体組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記オルガノシリケートが、該組成物の全重量に基づいて、SiOとして計算して、0.1〜2重量%の範囲の量で該液体組成物中に存在する、液体組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記光触媒材料および前記オルガノシリケートが、0.05:0.95〜5:0.3の重量比で、該液体組成物中に存在している、液体組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の液体組成物であって、該組成物のpHが、3.5以下である、液体組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の液体組成物であって、該組成物のpHが、7.0〜8.5である、液体組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の液体組成物から形成された硬化フィルムでコーティングされた、基材。
【請求項12】
請求項11に記載の基材であって、前記フィルムが、20nm〜60nmの乾燥膜厚を有する、基材。
【請求項13】
請求項11に記載の基材であって、前記フィルムが、前記光触媒材料の光励起の前に、10°以下の初期水接触角度を示す、基材。
【請求項14】
請求項11に記載の基材であって、前記光触媒の励起に続いて、前記フィルムが、5°未満の水との水接触角度を示す、基材。
【請求項15】
請求項1に記載の液体組成物を作製する方法であって、該方法は、以下:
(a)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む親水性材料を提供する工程であって、該親水性材料のpHは3.5以下である、工程;
(b)希釈剤中に分散された光触媒材料を含むゾルまたはペーストを提供する工程であって、該ゾルまたはペーストのpHは3.5以下である、工程;および
(c)工程(a)において提供された該親水性材料と、工程(b)において提供された該ゾルまたはペーストとを混合して、該光触媒材料を該親水性材料中に分散させる工程、
を包含する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記工程(a)において提供される親水性材料は、以下:
(1)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む親水性材料を提供する工程であって、該親水性材料のpHが前記所望のpHよりも高い、工程、および
(2)該所望のpHが達成されるまで該親水性材料に酸を添加する工程、
によって得られる、方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、前記工程(b)において提供されるゾルまたはペーストは、以下:
(1)希釈剤中に分散した光触媒材料を含むゾルまたはペーストを提供する工程であって、該ゾルまたはペーストのpHが前記所望のpHよりも大きい、工程、および
(2)該所望のpHが達成されるまで、該ゾルまたはペーストに酸を添加する工程、
によって得られる、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の液体組成物を作製するための方法であって、該方法は、以下:
(a)本質的に完全に加水分解したオルガノシリケートを含む親水性材料を提供する工程であって、該親水性材料のpHは7.0〜8.5である、工程;
(b)希釈剤中に分散された光触媒材料を含むゾルまたはペーストを提供する工程であって、該ゾルまたはペーストのpHは7.0〜8.5である、工程;および
(c)工程(a)において提供された該親水性材料と、工程(b)において提供された該ゾルまたはペーストとを混合して、該光触媒材料を該親水性材料中に分散させる工程、
を包含する、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記工程(a)において提供される親水性材料は、以下:
(1)本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む親水性材料を提供する工程であって、該親水性材料のpHが前記所望のpH未満である、工程、および
(2)該所望のpHが達成されるまで該親水性材料に塩基を添加する工程、
によって得られる、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記工程(b)において提供されるゾルまたはペーストは、以下:
(1)希釈剤中に分散した光触媒材料を含むゾルまたはペーストを提供する工程であって、該ゾルまたはペーストのpHが前記所望のpH未満である、工程、および
(2)該所望のpHが達成されるまで、該ゾルまたはペーストに塩基を添加する工程、
によって得られる、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の液体組成物であって、該液体組成物が、少なくとも3ヶ月の保管期限を有する1パックの液体組成物の形態である、組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物であって、前記1パックの液体組成物が少なくとも6ヶ月の保管期限を有する、組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の組成物であって、前記1パックの液体組成物が少なくとも12ヶ月の保管期限を有する、組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の組成物であって、前記組成物が、3ヶ月後に600NTU以下の濁度を有する、組成物。
【請求項25】
基材をコーティングする方法であって、該方法は、以下:
(a)該基材に、請求項1に記載の液体組成物を塗布する工程、および
(b)該組成物を硬化させる工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記組成物は、該組成物を少なくとも2時間、25℃で空気に曝すことによって硬化される、方法。
【請求項27】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記光触媒材料は、Cleveland Condensation Chamberに4000時間曝露した後に初期水接触角度を維持するコーティングをもたらすのに十分な量で前記液体組成物中に存在し、ここで該CCCチャンバーは、試験表面上に一定の水凝縮をもたらす屋内の周囲環境において、140°F(60℃)の蒸気温度で操作される、液体組成物。
【請求項28】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記光触媒材料は、Cleveland Condensation Chamberに4000時間曝露した後に10°未満の水接触角度を維持するコーティングをもたらすのに十分な量で前記液体組成物中に存在し、ここで該CCCチャンバーは、試験表面上に一定の水凝縮をもたらす屋内の周囲環境において、140°F(60℃)の蒸気温度で操作される、液体組成物。
【請求項29】
請求項1に記載の液体組成物であって、前記結合剤は、以下:
(a)多段階プロセスであって、第1段階および第2段階を含み、該第1段階において、部分的加水分解重縮合反応生成物が、酸加水分解触媒の存在下において、オルガノシリケートと水を反応させることによって形成され、該水が、該オルガノシリケートのオルガノキシ基を加水分解し得る化学量論量未満の量で存在し、該第2段階において、該部分的加水分解重縮合反応生成物が、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを形成するために、大量の水と接触される、多段階プロセス、および
(b)有機酸加水分解触媒および/または有機溶媒の存在下で、テトラアルコキシシランオリゴマーと水とを反応させるプロセスであって、該水が、該アルコキシシランのオルガノキシ基を加水分解し得る化学量論量よりもかなり多い量で存在して、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを形成する、プロセス
から選択されるプロセスによって調製される、液体組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の液体組成物であって、前記結合剤が、多段階プロセスによって調製されている、液体組成物。
【請求項31】
請求項30に記載の液体組成物であって、前記水が、前記オルガノシリケートのオルガノキシ基の50%を加水分解し得る化学量論量で、第1段階の間、存在する、液体組成物。
【請求項32】
請求項30に記載の液体組成物であって、前記第1段階が、前記加水分解反応の結果として形成されるSi−OH基の縮合の程度を制限する条件下で行われる、液体組成物。
【請求項33】
請求項32に記載の液体組成物であって、前記加水分解反応の結果として形成されたSi−OH基の縮合の程度を制限する条件が、外部冷却による反応の発熱の制御、前記酸触媒の添加速度の制御、および/または任意の有機共溶媒の実質的な非存在下での第1段階の加水分解の実行から選択される、液体組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−500433(P2008−500433A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515364(P2007−515364)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/018626
【国際公開番号】WO2005/118724
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】