説明

親水性組成物及び親水性部材

【課題】柔軟でかつ膨潤し難い、耐傷性と耐水擦り性に優れた親水性塗膜、及びこの親水性塗膜を形成できる親水性組成物の提供を目的とする。
【解決手段】(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマー、(B)ラテックス、及び(C)触媒を含有する親水性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の基板表面に防汚性、防曇性、且つ、より良好な耐傷性と耐水擦り性を有する親水膜を形成するのに有用な親水性組成物、及び、該親水性組成物による親水膜を備えた防汚性、防曇性表面を有する親水性部材、アルミニウム製フィン材、熱交換器、エアコンに関する。
【背景技術】
【0002】
部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。特に、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。
また、近年、モバイルの普及に伴い、ディスプレイが屋外で使用されることが多くなってきたが、外光が入射されるような環境下で使用されると、この入射光はディスプレイ表面において正反射され、反射光が表示光と混合して表示画像が見にくくなるなどの問題を引き起こす。このため、ディスプレイ表面に反射防止光学部材を配置することがよく行われている。
このような反射防止光学部材としては、例えば、透明基板の表面に金属酸化物などからなる高屈折率層と低屈折率層を積層したもの、透明基板の表面に無機や有機フッ化化合物などの低屈折率層を単層で形成したもの、或いは、透明プラスチックフィルム基板の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凹凸状の表面により外光を乱反射させるものなどが知られている。これら反射防止光学部材表面も、前述の光学部材と同様に、人が使用することによって、指紋や皮脂などの汚れが付着しやすいが、汚れが付着した部分だけ高反射となり、汚れがより目立つという問題に加え、反射防止膜の表面には通常、微細な凹凸があり、汚れの除去が困難であるという問題もあった。
【0003】
固体部材の表面に汚れを着き難くしたり、付着した汚れを取りやすくした性能を持つ汚れ防止機能を表面に形成する技術が種々提案されている。特に反射防止部材と防汚性部材との組合わせとしては、例えば、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜と、有機ケイ素置換基を含む化合物で処理してなる防汚性、耐摩擦性材料(例えば、特許文献1参照)、基板表面に末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚性、耐摩擦性のCRTフィルター(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、ポリフルオロアルキル基を含むシラン化合物をはじめとするシラン化合物を含有する反射防止膜(例えば、特許文献3参照)や、二酸化ケイ素を主とする光学薄膜とパーフルオロアルキルアクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体との組合せ(例えば、特許文献4参照)が、それぞれ提案されている。
しかしながら、従来の方法で形成された防汚層は、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、フッ素やケイ素などの表面エネルギーの低い材料による表面処理は経時的な防汚性能の低下が懸念され、このため、防汚性と耐久性の優れた防汚性部材の開発が望まれている。
【0004】
光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基板の表面が親水化されると、付着水滴が基板表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。さらに、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。
【0005】
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(例えば、非特許文献1参照)が、この塗膜はある程度の親水性を有するものの、基板との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0006】
また、表面親水性に優れたフィルムとしては従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基板表面に光触媒含有層を形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら酸化チタンからなる膜は脆いため耐傷性と耐磨耗性が低い、さらに光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、且つ、良好な耐傷性と耐摩耗性を有する防汚性部材が求められている。
【0007】
一方、自動車、産業機械、スチール製家具、建築物内外装、家電用品、プラスチック製品などの塗料に加水分解性シリル基を有するビニル系共重合体とアクリルポリオールとのブレンド系、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体とアルコール系水酸基を有するビニル系単量体との共重合体などを塗料に用いることについての検討がされている(例えば、特許文献6参照)。この塗料を用いることで耐酸性や耐候性に優れた塗膜を形成させることができる。しかし、この塗料では形成された塗膜の親水性が低いため、付着した汚れが落ち難く、見た目の美しさ、掃除の容易さ、掃除回数の低減等の点から、耐汚染性の改良が望まれている。上記の問題を改良するために、塗膜を水蒸気などで後処理して親水化する方法が提案されたが、それでも十分な親水性は得られていない。
【0008】
こういった課題を解決するために、表面親水性を高めようと親水基と加水分解性シリル基を有するビニル系共重合体を塗料に用いると、親水基が強固に水素結合することによって非常に脆い膜質となり耐傷性が低くなる。また、表面だけでなく膜内も親水的なため膨潤し易く、耐水擦り性が低くなるといった問題があった。
【0009】
また、ポリウレタンなどの高分子マトリクス中にポリビニルピロリドンなどの親水成分を取り込ませた比較的柔軟な塗膜なども検討はされてはいる(例えば、特許文献7参照)が、水擦りなどによって親水成分が脱離すると親水性が著しく低下する問題がある。
【0010】
また、エアコンの熱交換器は熱媒体を移動させるパイプと空気中の熱を吸収または熱媒体中の熱を放散させるフィンから構成されている。ルームエアコンでは銅パイプをフィン材である0.1mm程度の薄板アルミニウムに貫通させて用いられる。該フィン材は、冷房時に発生する凝集水が水滴となりフィン間にとどまることで水のブリッジが発生し、冷房能力が低下する。またフィン間に埃などが付着することでも、同様に冷房能力が低下するという問題がある。
【特許文献1】特開昭64−86101号公報
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【特許文献5】国際公開第96/29375号パンフレット
【特許文献6】特開昭63−132977号公報
【特許文献7】特表2005−523981号公報
【非特許文献1】新聞“化学工業日報”1995年1月30日付け記事
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、親水基同士の相互作用を抑えて膜質を柔軟にし耐傷性を向上させること、膜内を疎水化することにより膨潤を抑え耐水擦り性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、下記構成により、上記課題が解決されることを見出した。
1. (A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーと(B)ラテックスと(C)触媒とを含有することを特徴とする親水性組成物。
2. 前記(B)ラテックスが、(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーと架橋することができる架橋基を表面に有することを特徴とする上記1に記載の親水性組成物。
3. 前記(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーと架橋することができる架橋基が加水分解性シリル基であることを特徴とする上記2に記載の親水性組成物。
4. 前記(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーが下記一般式(I)で表される構造を含むポリマーであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の親水性組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは組成比を表し、0<x<100、0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
5. 前記(C)触媒が酸、アルカリ、金属キレート、金属塩からなる群より選択される少なくとも一つからなることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の親水性組成物。
6. 前記(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマー100質量部に対して、前記(C)触媒を0.1〜20質量部含有することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の親水性組成物。
7. さらに、分子内に1つの加水分解性シリル基を有する親水ポリマー(D)を含有することを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の親水性組成物。
8. 上記1〜7のいずれかに記載の親水性組成物を基材に塗布、乾燥せしめたことを特徴とする親水性部材。
9. 前記基材が、金属、金属合金、セラミック、プラスチック、又は合成繊維であることを特徴とする上記8に記載の親水性部材。
10. 上記1〜7のいずれかに記載の親水性組成物を塗布、乾燥せしめたことを特徴とするフィン材。
11. 上記10に記載のフィン材がアルミニウム製であることを特徴とするアルミニウム製フィン材。
12. 上記11に記載のアルミニウム製フィン材を用いたことを特徴とする熱交換器。
13. 上記12に記載の熱交換器を用いたことを特徴とするエアコン。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐傷性、耐水擦り性が高く、適度な柔軟性を有する親水性塗膜、及びこれを形成することが可能な親水性組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の親水性組成物に含まれる、(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマー、(B)ラテックス、及び(C)触媒について説明する。
【0017】
〔(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマー〕
【0018】
(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマー(特定親水ポリマーともよぶ)が有する加水分解性シリル基は、下記一般式(II)で表される。
−SiR203-m(OR21 (II)
ここで、R20、R21は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは1〜3で表される整数である。
加水分解性シリル基の加水分解物のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合を形成することにより、強固な膜を形成することが可能となる。
【0019】
特定親水ポリマーは、下記一般式(I−a)、(I−b)で示される構造単位を有するポリマーであることが好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(I−a)及び(I−b)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは組成比を表し、0<x<100、0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0022】
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
〜Rは、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0023】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0024】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0025】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0026】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0027】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0028】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0029】
は単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。さらに、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0個から200個までの炭素原子、0個から150個までの窒素原子、0個から200個までの酸素原子、0個から400個までの水素原子、および0個から100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0030】
【化3】

【0031】
また、Lはポリマー又はオリゴマーから形成されていてもよく、具体的には不飽和二重結合系モノマーからなるポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンなどを含むことが好ましく、その他の好ましい例として、ポリ(オキシアルキレン)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリシロキサン等が挙げられ、好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレートである。
これらポリマー及びオリゴマーに用いられる構造単位は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。また、Lがポリマーまたはオリゴマーの場合は構成する元素数に制限は特になく、分子量は1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0032】
は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子が連結基なしに直接結合していることを表す。また、L中に、前記構造は2つ以上存在してもよく、その場合には、互いに同じものでも、異なるものであってもよい。前記構造を1つ以上含むのであれば、他の構造はLで挙げられたものと同様の構造を有することができる。
【0033】
また、Xは親水基であって、−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)又は−N(R)(R)(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0034】
、R又はRとしては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
、Rとしては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等の無機アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等の有機アニオンが挙げられる。
また、このようなXとしては具体的には、−CONa、−CONH、−SONa、−SONH、−PO等が好ましい。
【0035】
x及びyは(A)特定親水ポリマーにおける、一般式(I−a)で表される構造単位と一般式(I−b)で表される構造単位の組成比を表す。x、yは0<x<100、0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。x:yは、99:1〜10:90の範囲であることが好ましく、99:1〜50:50の範囲であることがさらに好ましく、95:5〜70:30の範囲であることが最も好ましい。この範囲に各モノマーのモル比を設定することで、塗布液の高い安定性、高い膜強度と親水性が発現するという効果が奏される。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する構造単位である(I−a)及び(I−b)は、それぞれすべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよく、その場合、一般式(I−a)に相当する構造単位と一般式(I−b)に相当する構造単位の組成比が上記範囲であることが好ましい。
【0036】
(A)特定親水ポリマーの分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0037】
以下に、(A)特定親水ポリマーの具体例〔例示化合物(1)〜(50)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
本発明の(A)特定親水ポリマーを合成する原料化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
(A)特定親水ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0044】
また、上記特定親水ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0045】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0046】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0047】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0048】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0049】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0050】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、(A)特定親水ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、(A)特定親水ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0051】
また、本発明にかかる親水性組成物は、上記(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーのほかに分子内に1つの加水分解性シリル基を有する親水ポリマー(D)を含有することが好ましい。該分子内に1つの加水分解性シリル基を有する親水ポリマー(D)としては、下記一般式(D)で表される構造を含む親水性ポリマーが好ましい。
【0052】
【化9】

【0053】
一般式(D)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、Xは加水分解性アルコキシシリル基を表し、AおよびLは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH、−CON(R、−COR、−OM、−COM、−SOM、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。
【0054】
前記一般式(D)で表される構造を有する親水性ポリマーは、片末端に加水分解性アルコキシシリル基を有する親水性ポリマーであり、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter (Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、加水分解性アルコキシシリル基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
一般式(D)で表される構造を有する親水性ポリマーの質量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000乃至100万がさらに好ましく、2000乃至5万が最も好ましい。
【0055】
上記一般式(D)において、R、Rは、それぞれ独立に、上記式(1)のR、R、RおよびRと同様の置換基を表す。Lは、上記式(1)のL、Lと同義である。Xは上記式(1)と同義である。
【0056】
一般式(D)で表される構造を有する親水性ポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
上記に例示した親水性ポリマーは、例えば、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0060】
【化12】

【0061】
上記式(i)及び(ii)において、A、R〜R、L、Yは、上記一般式(1)と同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
【0062】
親水ポリマー(D)は、親水性組成物中、固形分として0〜50質量%含まれることが好ましく、5〜50質量%含まれることがより好ましい。
前記(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーと、前記分子内に1つの加水分解性シリル基を有する親水ポリマー(D)の、両者の比率は質量比(親水性ポリマーA/親水性ポリマーD)が50/50〜95/5であることが好ましい。
【0063】
〔(B)ラテックス〕
ラテックスとしては、粒子形状を有するラテックスが好ましく、また液安定性の良い水分散性ラテックスが好ましい。水分散性ラテックスは、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、柔軟な性質を示すSBR樹脂やNBR樹脂が好ましい。
上記の(A)特定親水ポリマー及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよい。
ラテックスを添加することで親水性の低下が懸念される。しかし、本発明で用いている(A)特殊親水ポリマーは特に親水性が高いため、他の親水ポリマーを用いるよりラテックス添加による親水性低下を抑制することができる。
ラテックスと(A)特定親水ポリマーを架橋させた場合、ラテックスと(A)特定親水ポリマー間の密着性を向上させることができ膜強度が向上し、また膨潤が抑制されるので、親水膜の耐傷性、耐水擦り性を更に向上させることができる。また、ラテックス表面は(A)特定親水ポリマーで被覆されるので親水性の低下を防ぐという効果もある。
架橋方法としてはラテックス表面に(A)特定親水ポリマーと架橋することのできる架橋基を導入する方法が挙げられ、この架橋基としては加水分解性シリル基が好ましい。加水分解性シリル基は、架橋せずに残った架橋基はシラノール基となるため、親水性の低下を防ぐことができる。
加水分解性シリル基を有するラテックスは、ラテックス表面のアミノ基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ、アルデヒド、イソシアネートなどといった官能基と、これらと反応することのできる官能基を有するシランカップリング剤を反応させることによって得られる。
【0064】
(粒径)
透明性が必要な用途の場合、ラテックス粒子の粒径は50nm以下であることが好ましい。透明性が不要な用途の場合は、特に限定はされないが、耐傷性、耐水擦り性を向上させるためには50μm以下が好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
(添加量)
ラテックス粒子の添加量が多くなると親水性の低下が懸念され、また、添加量が少なくなると膜質が十分柔軟にならないため、添加量としては1%〜90%が好ましい。
【0065】
〔(C)触媒〕
本発明の親水性組成物は、触媒として、酸、アルカリ、金属キレート、金属塩から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。以下これらにつき説明する。
【0066】
(酸)
酸触媒としては、例えば、酢酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グルタール酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、蓚酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸などを挙げることができ、好ましくは、塩酸、硝酸が良い。
【0067】
(アルカリ)
アルカリ触媒としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどを挙げることができ、好ましくは、アンモニア、水酸化ナトリウムが良い。
【0068】
(金属キレート)
金属キレートとしては、例えば周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物とから構成される化合物が挙げられる。
【0069】
構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得
られる錯体が優れており、好ましい。
【0070】
上記金属キレートの配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0071】
好ましい配位子はアセチルアセトンまたはアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本明細書においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0072】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0073】
好ましい金属キレートの例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0074】
(金属塩)
上記の金属キレートの代わりに金属塩を用いることもできる。代表的な金属塩は、例えば周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素のハロゲン化物、酸素酸塩や有機酸塩が挙げられる。
【0075】
前記金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた金属塩を形成する。その中でもZr及びAlから得られる金属塩が優れており、好ましい。
【0076】
好ましい金属塩としては、ZrOCl・8HO、ZrOSO・nHO、ZrO(NO・4HO、ZrO(CO・HO、ZrO(OH)・nHO、ZrO(C、(NHZrO(CO、ZrO(C1825、ZrO(C15やAlCl3、Al23・H2O、Al23・3H2O、Al2(SO43・18H2O、Al2(C243・4H2Oが挙げられる。
【0077】
親水性組成物に使用される触媒の添加量について説明する。この触媒の添加量は特に制限されるものではないが、前記(A)特定親水ポリマー100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲の値とすることが好ましい。触媒の添加量が0.1質量部以上であれば、硬化性が低下せず、十分な硬化速度を得ることができる。触媒の添加量が20質量部以下であれば、得られる硬化物は十分な親水性を有する。硬化性と得られる硬化物の親水性とのバランスがより良好な観点から、触媒の添加量を、(A)特定親水ポリマー100質量部に対して1〜20質量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0078】
本発明の親水性組成物には、(A)、(B)、及び(C)成分に加え、目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。
以下、併用し得る成分について説明する。
【0079】
(1)無機微粒子
本発明の親水性組成物は、親水性の向上や、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が2nm〜1μmであるのが好ましく、10nm〜100nmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、塗布、乾燥して得られる親水膜中に安定に分散して、親水膜の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れる親水膜を形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、組成物の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0080】
(2)界面活性剤
本発明の親水性組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0081】
(3)紫外線吸収剤
本発明においては、親水性組成物によって形成した親水膜の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0082】
(4)酸化防止剤
本発明の親水性組成物により形成した親水膜の安定性向上のため、親水性組成物に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0083】
(5)溶剤
本発明の親水性組成物により親水膜を形成する時に、基材に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性層形成用塗布液に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水膜形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0084】
(6)高分子化合物
本発明の親水性組成物には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0085】
また、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基材への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0086】
また、この他にも、本発明の目的や硬化を損なわない範囲において、ラジカル性重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、濡れ性改良剤、可塑剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、防腐剤、顔料、乾燥剤、沈殿防止剤、たれ防止剤、増粘剤、皮張り防止剤、色別れ防止剤、平滑剤、消泡剤、粘着防止剤、つや消し防止剤、難燃剤、防錆剤などの添加剤を更に含有させることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0087】
〔基材〕
本発明の親水性組成物の支持体として使用可能な基材としては、例えば、防汚及び/又は防曇効果を期待する透明な基材の場合には、その材質はガラス、または無機化合物層を含有したガラス等の無機基材や、透明プラスチック、または無機化合物層を含有した透明プラスチック層など可視光を透過しうる基材が好適に利用できる。
また、防汚及び/又は防曇性部材を透明性を必要としない基材に適用しようとする場合には、上記の透明基材に加えて、例えば、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組合せ、それらの積層体が、支持体基材としていずれも好適に利用できる。
基材としては好ましくは、金属、金属合金、セラミック、プラスチック、又は合成繊維である。
エアコンなどに含まれる熱交換器用のアルミフィン材を基材とすることも好ましい。
【0088】
(基材の処理法)
基材上に組成物を塗布する際、未処理基材のまま、前記親水膜を塗設できるが、必要に応じ、親水膜の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、表面親水化処理を施すことができる。上記表面親水化処理法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、アルカリ洗浄、サンドブラスト、ブラシ研磨などが挙げられる。
【0089】
(下塗り層)
更に、一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては、金属酸化膜といった無機膜や有機膜を用いることができる。また、金属など酸化されやすい基材を用いた場合は、クロメート処理など種々の防錆層を設けることが好ましい。
金属酸化膜としては、SiO、Al、ZrO、TiO等が挙げられ、ゾルゲル法、スパッタ法や蒸着法により形成することができる。
有機膜の素材としては、クロロプレン、NBR、SBR、アクリルの溶剤系接着剤、酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル共重合体、EVA、アクリル、ウレタン、クロロプレン系のエマルション系接着剤、EVA、オレフィン、ポリアミド、ポリエステル、SIS、SBS、SEBSのホットメルト系、ウレタン系、シリコン、アクリルシリコンの常温湿気硬化系、エポキシ、アクリル、ウレタン系、アクリルシリコンの常温硬化系、エポキシ、ユリア、メラミン、フェノール、アクリルシリコンの加熱硬化系、アクリル系のUV硬化系が挙げられる。
上記の有機膜の素材は、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
【0090】
また、上記親水ポリマーや水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
【0091】
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m 2 が好ましく、0.05〜10g/m 2 がより好ましい。
【0092】
〔塗布方法〕
塗布方法は、特に限定されないが、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0093】
本発明にかかる親水性組成物は、アルミニウム製フィン材に塗布して、親水膜を形成し、エアコンの熱交換器に用いることが好ましい。
エアコンとは、エアーコンディショナー(Air Conditioner)の略で、調温、調湿、調和する装置で、クーラーとヒーターを組み合わせた空気調和装置、すなわち冷暖房機のことであり、ルームエアコン、パッケージエアコン、カーエアコンなどの総称を指す。
熱交換器とは、高温の流体がもつ熱エネルギーを低温の流体に伝える装置であり、直接接触方式、隔板や蓄熱器を用いる方式があり、加熱器・冷却器・蒸発器・凝縮器などに使用することができる。熱交換器の用途として、例えば室内用クーラーやエアコン、建設機械用オイルクーラー(油圧作動の建設機械用オイルを冷却)、自動車のラジエーター(エンジンの過熱や加冷を防ぎ、一定温度に保つもの)、コンデンサー(圧縮された高圧ガスは、圧縮熱で暖かくなっているので、この高圧ガスを前面冷却風で冷やし液化状態に戻すもの)、エバポレーター(エアコン関係の中にあり、冷媒のガスを気化させ、廻りの温度を下げるもの)、インタークーラー、車両用ヒーター等が挙げられる。熱交換器はエアコンの部品であり、熱媒体を移動させるパイプと空気中の熱を吸収または熱媒体中の熱を放散させるフィン材から構成される。フィン材表面は結露水によるフィンピッチ間のブリッジ生成を防止するため、親水処理がなされている。近年は汚染物質が存在する環境でも長期間親水性が維持されるフィン材が強く求められている(参考文献:特殊機能コーティング技術 p215〜226 2007年 CMC出版、特開2003−201577号公報)。
フィン材にはアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。該アルミニウム材はアルミニウム純度99%以上、150μm以下の厚み、表面粗さ0.1〜0.4μmのものが好ましく用いられる。また、フィン材に用いられるアルミニウムとしては、表面が脱脂されたもの、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板を挙げることができる。アルミニウム製のフィン材は、表面が化成処理されていることが親水化処理皮膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、例えば、クロメート処理を挙げることができ、その代表例として、アルカリ塩−クロム酸塩法(B.V.法、M.B.V.法、E.W.法、アルロック法、ピルミン法)、クロム酸法、クロメート法、リン酸クロム酸法などの処理法、及びクロム酸クロムを主体とした組成物による無水洗塗布型処理法などが挙げられる。
例えば、熱交換器用フィン材に用いられるアルミニウム等薄板としては、JIS規格で、1100、1050、1200、1N30等の純アルミニウム板、2017、2014等のAl−Cu系合金板、3003、3004等のAl−Mn系合金板、5052、5083等のAl−Mg系合金板、さらには6061等のAl−Mg−Si系合金板等のいずれを用いても良く、またその形状はシートおよびコイルのいずれでも良い。
【0094】
その他、本発明の熱交換器、エアコンには公知の技術(例えば特開2002−106882号公報、特開2002−156135号公報など)を用いることができ、特に制限されない。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
【0096】
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、この板ガラスの表面を10分間UV/O3処理により親水化し、塗布用基板とした。表1に示した組成の塗布液を25℃で2時間攪拌し、塗布用基板に塗布バーで塗布した後、150℃、30分乾燥して、乾燥塗布量3.0g/m2の親水膜を形成した。
以下に、表1に示した成分の調製法あるいは入手先を記す。
【0097】
<親水ポリマー(1)、(2)の合成>
500ml三口フラスコにアクリルアミド11.9g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル11.6g、及び1−メトキシ−2−プロパノール280gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル1.8gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。その後、反応液をアセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、親水ポリマー(1)を得た。乾燥後の質量は22.6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により求めたポリマーの質量平均分子量は19500であった。
以後、実施例にて使用した親水ポリマーは上記と同様の手法により合成し、評価に使用した。実施例に使用した親水ポリマー(1)、(2)の構造を以下に示す。
【0098】
【化13】

【0099】
<親水ポリマー(3)の合成>
三口フラスコにアクリルアミド28g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.36g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った。こうして、親水ポリマー(3)を得た。GPC(ポリエチレンオキシド標準)で求めた親水ポリマー(3)の質量平均分子量は46200であった。
親水ポリマー(3)の構造は以下のとおりである。
【0100】
【化14】

【0101】
<触媒液(1)>
エタノール200gとアセチルアセトン10gを混合し、オルトチタン酸テトラエチル10g加えて10分攪拌した後、精製水100g加えて1時間攪拌し、調製した。
【0102】
<ラテックス粒子(1)>
SBRラテックス(日本ゼオン Nipol LX421粒径100nm)を用いた。
<ラテックス粒子(2)>
蒸留水1072g中に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC 同仁化学製)1.7gとN−ヒドロキシコハク酸イミド(HOSu ペプチド研究所)1gとラテックス粒子(1)256gを溶解させて5分間攪拌した後、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(ALDRICH製)1.6gを加えて2時間攪拌し調製した。
【0103】
<界面活性剤>
下記構造式のアニオン系界面活性剤5質量%水溶液を用いた。
【0104】
【化15】

【0105】
<塗布液の調製>
(実施例1〜4)
表1に記載した固形分濃度(質量%)になるよう次の手順で調製した。
蒸留水にラテックス粒子(1)と親水ポリマー(1)を溶解させ、触媒液(1)を加えた後、室温で2時間攪拌した。これに界面活性剤を加えて塗布液とした。
(実施例5〜8)
ラテックス(1)をラテックス(2)に変更した以外は実施例1〜4と同様の手順で塗布液を調製した。
(実施例9〜12)
親水ポリマー(1)を親水ポリマー(2)に変更した以外は実施例5〜8と同様の手順で塗布液を調製した。
(実施例13〜20)
親水ポリマー(1)を親水ポリマー(1)と親水ポリマー(3)の混合物に変更した以外は実施例1〜4と同様の手順で塗布液を調製した。
【0106】
【表1】

【0107】
〔比較例1〜3〕
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、この板ガラスの表面を10分間UV/O3処理により親水化し、塗布用基板とした。蒸留水中に、表2に記載した各成分を、表2に示した組成(質量部)になるように調製した塗布液を25℃で2時間攪拌し、塗布用基板に塗布バーで塗布した後、150℃、30分乾燥して、乾燥塗布量3.0g/mの親水膜を形成した。
〔比較例4〜5〕
比較例1と同様に、表2に示した組成の塗布液を塗布用基板にスピンコートで塗布し、親水膜を形成した。但し、乾燥塗布量は0.1g/mに変更した。
【0108】
【表2】

【0109】
比較例において、使用した成分は以下のとおりである。
親水ポリマー(1):実施例と同じ親水ポリマー(1)
親水ポリマー(2):実施例と同じ親水ポリマー(2)
親水ポリマー(3):実施例と同じ親水ポリマー(3)
TMOS:テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
触媒液(1):実施例と同じ触媒液
スノーテックC:コロイダルシリカ(粒径10−20nm)分散物20質量%水溶液
界面活性剤:実施例と同じ界面活性剤
【0110】
<親水性部材の評価>
(親水性)
空中水滴接触角の測定(協和界面科学株式会社製DropMaster500で測定)(耐屈曲性)
塗布液をアルミ板に塗布膜厚が0.3mmとなるように塗布し、150℃30分で乾燥させた。この試料についてJIS K5600−5−1に準じ試験を行い割れの有無を評価した。マンドレルは直径2mmのものを用いた。
(鉛筆硬度)
JIS K 5400に準じ、試験(安田精機製作所製鉛筆引っ掻き硬度試験機553−Mで試験)を行った。
(耐水擦り性)
水を含ませた綿棒で塗膜を500g荷重で20回往復摩耗し、傷付きを目視評価した。
(汚染試験)
50mlガラス容器にパルミチン酸を0.2gとり、親水性層を塗布したガラス基板で、親水性層側がパルチミン酸に曝されるように蓋をして105℃/1時間曝気後、30分流水洗浄、80℃/30分乾燥を1サイクルとし、5サイクル後の接触角を測定した。
30°以下・・・・◎
31〜40°・・・・○
41〜70°・・・・△
71°以上・・・・×
【0111】
上記評価法に従った評価結果を表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
また、ガラス基板をアルミニウム板に変更しても、同程度の性能であり、実施例の性能の優劣も変わらなかった。用いたアルミニウム基材はアルミニウム板(A1200、厚み0.1mm)をアルカリ性洗浄液(横浜油脂、セミクリーンA 5%水溶液)に10分浸漬し、水洗を3回繰り返した。
【0114】
表3から明らかなように、本発明の親水性組成物を用いて作製した膜は、親水性、耐傷性、耐水擦り性、耐屈曲性ともに良好であった。実施例1〜4と実施例5〜20との対比において、実施例1〜4は親水性が低かった。これは、ラテックス粒子の違いに起因したものと考えられる。それに対して、実施例5〜20は親水性、耐傷性を両立しており、膜質も非常に柔軟なものであった。また、特に実施例13〜20は耐汚染性が高かった。また、比較例1〜5は親水性、耐傷性は両立するものの、非常に脆い膜質であった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の親水性部材の応用可能な分野の一例を挙げれば、可視光を透過しうる基板が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、バイク用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケース、カメラ用ファインダー、ディスプレイのガラス;メーターのような計測機器、CCDやCMOSのようなイメージセンサのカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムなどが挙げられる。
その他の適用可能な用途としては、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、アルミニウム基板、アルミフィン材、エアコン熱交換器のフィン材、エアコン室内機、エアコン室外機、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、分析装置のセンサー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、タイル、サイディング、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、蛇口、調理レンジ、キッチンフード、レンジフード、換気扇、コンロ、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルム、家庭用電気製品のハウジングや部品や外装及び塗装、OA機器製品のハウジングや部品や外装及び塗装、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルム、おむつやフィルターなどの繊維、各種塗料や機能性膜などの下塗り剤用途などが挙げられ、その応用範囲は広い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーと(B)ラテックスと(C)触媒とを含有することを特徴とする親水性組成物。
【請求項2】
前記(B)ラテックスが、(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーと架橋することができる架橋基を表面に有することを特徴とする請求項1に記載の親水性組成物。
【請求項3】
前記(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーと架橋することができる架橋基が加水分解性シリル基であることを特徴とする請求項2に記載の親水性組成物。
【請求項4】
前記(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマーが下記一般式(I)で表される構造を含むポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の親水性組成物。
【化1】

一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは組成比を表し、0<x<100、0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項5】
前記(C)触媒が酸、アルカリ、金属キレート、金属塩からなる群より選択される少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項6】
前記(A)1分子内に2つ以上の加水分解性シリル基を有する親水ポリマー100質量部に対して、前記(C)触媒を0.1〜20質量部含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項7】
さらに、分子内に1つの加水分解性シリル基を有する親水ポリマー(D)を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の親水性組成物を基材に塗布、乾燥せしめたことを特徴とする親水性部材。
【請求項9】
前記基材が、金属、金属合金、セラミック、プラスチック、又は合成繊維であることを特徴とする請求項8に記載の親水性部材。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の親水性組成物を塗布、乾燥せしめたことを特徴とするフィン材。
【請求項11】
請求項10に記載のフィン材がアルミニウム製であることを特徴とするアルミニウム製フィン材。
【請求項12】
請求項11に記載のアルミニウム製フィン材を用いたことを特徴とする熱交換器。
【請求項13】
請求項12に記載の熱交換器を用いたことを特徴とするエアコン。

【公開番号】特開2009−203449(P2009−203449A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76764(P2008−76764)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】