説明

親水性膜形成用組成物および親水性部材

【課題】本発明の目的は、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の研究をさらに進めることで、上記先行技術を発展させ、各種の基板表面に防汚性、防曇性に優れ、且つ、より良好な耐摩擦性を有する親水膜を形成するのに用いられる親水性組成物を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、適切な支持体表面に該親水性組成物により形成された親水膜を備えた、防汚性、防曇性及びその耐摩擦性に優れた表面を有する親水性部材を提供することにある。
【解決手段】(A)両性イオン低分子化合物、(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー、(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマー、及び(C)金属錯体触媒を含有する親水性膜形成用組成物であって、(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー/(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーの質量比率が50/50〜5/95の範囲内である親水性膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性膜形成用組成物および表面親水性部材に関する。詳細には、親水性、耐久性、透明性、および保存安定性に優れた親水化表面層を与える親水性膜形成用組成物ならびに該表面親水性層を備える表面親水性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。特に、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。
また、近年、モバイルの普及に伴い、ディスプレイが屋外で使用されることが多くなってきたが、外光が入射されるような環境下で使用されると、この入射光はディスプレイ表面において正反射され、反射光が表示光と混合して表示画像が見にくくなるなどの問題を引き起こす。このため、ディスプレイ表面に反射防止光学部材を配置することがよく行われている。
このような反射防止光学部材としては、例えば、透明基板の表面に金属酸化物などからなる高屈折率層と低屈折率層を積層したもの、透明基板の表面に無機や有機フッ化化合物などの低屈折率層を単層で形成したもの、或いは、透明プラスチックフィルム基板の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凹凸状の表面により外光を乱反射させるものなどが知られている。これら反射防止光学部材表面も、前述の光学部材と同様に、人が使用することによって、指紋や皮脂などの汚れが付着しやすいが、汚れが付着した部分だけ高反射となり、汚れがより目立つという問題に加え、反射防止膜の表面には通常、微細な凹凸があり、汚れの除去が困難であるという問題もあった。
【0003】
固体部材の表面に汚れを着き難くしたり、付着した汚れを取りやすくした性能を持つ汚れ防止機能を表面に形成する技術が種々提案されている。特に反射防止部材と防汚性部材との組合わせとしては、例えば、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜と、有機ケイ素置換基を含む化合物で処理してなる防汚性、耐摩擦性材料(例えば、特許文献1参照。)、基板表面に末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚性、耐摩擦性のCRTフィルター(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。また、ポリフルオロアルキル基を含むシラン化合物をはじめとするシラン化合物を含有する反射防止膜(例えば、特許文献3参照。)や、二酸化ケイ素を主とする光学薄膜とパーフルオロアルキルアクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体との組合せ(例えば、特許文献4参照。)が、それぞれ提案されている。
しかしながら、従来の方法で形成された防汚層は、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、フッ素やケイ素などの表面エネルギーの低い材料による表面処理は経時的な防汚性能の低下が懸念され、このため、防汚性と耐久性に優れた防汚性部材の開発が望まれている。
【0004】
光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基板の表面が親水化されると、付着水滴が基板表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。さらに、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。
【0005】
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)が、この塗膜はある程度の親水性を有するものの、基板との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0006】
また、表面親水性に優れたフィルムとしては従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基板表面に光触媒含有層を形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら酸化チタンを用いた親水性フィルムは充分な膜強度を有さず、さらに光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、且つ、良好な耐摩耗性を有する防汚性部材が求められている。
【0007】
上記課題を達成するために、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の特性に着眼し、親水性ポリマーとアルコキシドとを加水分解、縮重合することにより架橋構造を備えた親水性表面が優れた防曇性、防汚性を示し、且つ、良好な耐摩耗性を有することが見出されている(特許文献6参照)。
しかしながら、基板が窓ガラス、鏡などでは、空気中の塵、埃などが付着すると、乾いた布で拭き取る必要がある。この場合、摩擦により静電気が発生すると、更に汚れが付着し、汚れが蓄積してしまい、水をつけても洗い流しにくくなる。このため、更なる防汚性、膜強度の向上が求められている。
【0008】
また、エアコンの熱交換器は熱媒体を移動させるパイプと空気中の熱を吸収または熱媒体中の熱を放散させるフィンから構成されている。ルームエアコンでは銅パイプをフィン材である0.1mm程度の薄板アルミニウムに貫通させて用いられる。該フィン材は、冷房時に発生する凝集水が水滴となりフィン間にとどまることで水のブリッジが発生し、冷房能力が低下する。またフィン間に埃などが付着することでも、同様に冷房能力が低下するという問題がある。
【特許文献1】特開昭64−86101号公報
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【特許文献5】国際公開第96/29375号パンフレット
【特許文献6】特開2002−361800号公報
【非特許文献1】新聞“化学工業日報”1995年1月30日付け記事
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の研究をさらに進めることで、上記先行技術を発展させ、各種の基板表面に防汚性、防曇性に優れ、且つ、より良好な耐摩擦性を有する親水膜を形成するのに用いられる親水性組成物を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、適切な支持体表面に該親水性組成物により形成された親水膜を備えた、防汚性、防曇性及びその耐摩擦性に優れた表面を有する親水性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、両性イオン低分子化合物とくにベタイン構造を有する化合物に着目し、これを親水性膜形成用組成物に添加することにより、親水性膜の防汚性のみならず、親水性、塗膜強度、耐久性がさらに向上することを見出し、本発明を完成した。即ち、下記手段により、上記課題を解決した。
【0011】
1. (A)両性イオン低分子化合物、(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー、(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマー、及び(C)金属錯体触媒を含有する親水性膜形成用組成物であって、(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー/(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーの質量比率が50/50〜5/95の範囲内である親水性膜形成用組成物。
2. 前記(C)金属錯体触媒が、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素化合物から構成されるものである上記1に記載の親水性膜形成用組成物。
3. 前記(A)両性イオン低分子化合物がベタイン構造を有する上記1又は2に記載の親水性膜形成用組成物。
4. 前記(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーが、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である上記1〜3のいずれかに記載の親水性膜形成用組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
上記一般式(1)で表される構造を有する親水性ポリマーは、構造単位(i)、(ii)で表されるポリマーユニットの少なくとも一方の末端に、構造単位(iii)で表されるシランカップリング基を有する。
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表し、mは0、1または2を表し、x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y100であり、x+y=100となる数を表す。L1、L2、L3は、それぞれ独立に、単結合又は有機連結基を表し、Y1、Y2は、それぞれ独立に、−N(R7)(R8)、−OH、−NHCOR7、−CONH2、−CON(R7)(R8)、−COR7、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。
5. 前記(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーが、少なくとも下記一般式(2)で表される構造を有する化合物である上記1〜4のいずれかに記載の親水性膜形成用組成物。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(2)中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。L11は単結合又は多価の有機連結基を表す。L12は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。nは1〜3の整数を表す。p及びqは、p+q=100とした時の組成比を表し、0<p<100、0<q<100である。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
6. 基材上に上記1〜5のいずれかに記載の親水性膜形成用組成物を塗布した親水性部材。
7. 上記1〜5のいずれかに記載の親水性膜形成用組成物を塗布したフィン材。
8. 上記7に記載のフィン材がアルミニウム製であるアルミニウム製フィン材。
9. 上記8に記載のアルミニウム製フィン材を用いた熱交換器。
10. 上記9に記載の熱交換器を用いたエアコン。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、両性イオン低分子化合物とくに特定ベタイン構造を有する化合物を親水性膜形成用組成物に添加している。ベタイン添加により汚れが付着しにくくなる。これは、ベタイン添加により、親水性膜の電気抵抗が下がり、帯電しにくくなったためと考えられる。さらに、ベタインは親水性も高いため、親水性膜は、防汚性だけではなく、親水性も向上する。さらにベタイン化合物が両性イオンパートを有することで、本発明の組成物が加水分解、縮重合して有機無機複合体ゾル液が形成される際、有機成分であるベタイン化合物が無機成分である特定アルコキシド加水分解縮重合物とイオン結合により相互作用しやすくなり、硬化後は有機と無機が均一分散した塗膜が形成され、優れた強度、耐久性を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)両性イオン低分子化合物、(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー、(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマー、(C)金属錯体触媒を含有することを特徴とする。
以下に、本発明の親水性組成物に含まれる各成分について説明する。
【0018】
〔(A)両性イオン低分子化合物〕
本発明の両性イオン低分子化合物としては、特に限定されるわけではないが、同一分子内に陽イオンと陰イオンをもつ化合物、酸性基と塩基性基をもつ化合物等が挙げられる。同一分子内に陽イオンと陰イオンをもつ化合物の例としてはベタイン構造を有する化合物、同一分子内に酸性基と塩基性基をもつ化合物の例としてはアミノ酸が挙げられる。本発明において特に好ましいのは分子全体として電荷をもたないベタイン構造を有する化合物であり、陽イオンとしては四級アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどのカチオン、陰イオンとしては−CO-、−SO-、−PO3-、−OPO3-−などのアニオンであることが好ましい。
(A)両性イオン低分子化合物の好ましい分子量の範囲は100〜1000、特に好ましくは200〜800である。
【0019】
ベタイン化合物は親水性部材中に固定化させるために水酸基を分子内に少なくとも1個有するものが好ましく、さらにシランカップリング基を分子内に少なくとも1個有するものが特に好ましい。 本発明に用いられる特定ベタイン化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
ベタイン化合物の親水性膜形成用組成物中の含有量は、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは10〜50質量%の範囲で使用される。この範囲において良好な帯電防止能、親水性と膜強度が得られ、膜にクラックが入るなどの懸念もないため好ましい。
【0028】
〔(B)親水性ポリマー〕
本発明の親水性膜形成用の組成物は親水性ポリマーを含有し、(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を含有する親水性ポリマー(以下、(B−1)特定親水性ポリマーとも称する)、と(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を含有する親水性ポリマー(以下、(B−2)特定親水性ポリマーとも称する)を両方含有し、(B−1)/(B−2)の質量比率が50/50〜5/95の範囲内にある。
通常、(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を含有する親水性ポリマーに対して、(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を含有する親水性ポリマーを混合すると、密着性や耐水性が低下する可能性があると考えられるが、本発明では上記のように(B−1)特定親水性ポリマー/(B−2)特定親水性ポリマーの比率を特定の範囲にすることで、親水性を維持したまま、密着性と耐汚染性を向上させることができるという予想外の結果が得られる。
(B−1)特定親水性ポリマー/(B−2)特定親水性ポリマーを併用する質量比率は、50/50〜5/95の範囲内であり、好ましくは40/60〜5/95の範囲内である。
(B−1)特定親水ポリマー及び(B−2)特定親水ポリマーの合成は容易ではないため、両方を同時に入手することは難しい。また(B−1)特定親水ポリマー及び(B−2)特定親水ポリマーは溶媒への溶解性も異なるため、用いる比率によっては併用すると溶解性に問題が生じる懸念もある。
以下に、(B−1)ポリマー末端シランカップリング基を有する親水性ポリマー、(B−2)側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーについて説明する。
【0029】
<(B―1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー>
本発明のポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーとしては、その構成単位であるモノマーのlogPが−3〜2であるのが好ましく、−2〜0であるのがより好ましい。この範囲において、良好な親水性が得られる。
ここでlogPとは、Medicinal Chemistry Project, Pomona College, Claremont,Californiaで開発され、Daylight Chemical Information System Inc. より入手できるソフトウェアPCModelsを用いて算出した化合物のオクタノール/水分配係数(P)の値の対数である。
【0030】
本発明においては、親水性膜の特性のさらなる向上の観点からは、(B−1)末端シラン変性親水性ポリマーとして、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する特定親水性ポリマー〔以下、適宜、「(B−1)特定親水性ポリマー」と称する〕を含有することが好ましい。
【0031】
【化10】

【0032】
一般式(1)で表される構造を有する親水性高分子化合物は、構造単位(i)、(ii)で表されるポリマーユニットの両末端の少なくとも一方に、構造単位(iii)で表されるシランカップリング基を有していればよく、他の末端にもこの官能基を有していてもよく、水素原子、または重合開始能を有する官能基を有していてもよい。
上記一般式(1)において、mは0、1または2を表し、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
1〜R6は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0033】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。
アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いらる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、
【0034】
N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、
【0035】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アル
コキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0036】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO-)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げる
ことができる。
【0037】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0038】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12まての分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0039】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0040】
1およびL2は、単結合又は有機連結基を表す。ここで、有機連結基とは非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0041】
【化11】

【0042】
3は、単結合又は有機連結基を表す。ここで、有機連結基とは、非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、上記L1およびL2と同様のものを挙げることができる。中でも、特に好ましい構造としては、−(CH2n−S−である(nは1〜8の整数)。
【0043】
また、Y1およびY2は、−NHCOR7、−CONH2、−CON(R7)(R8)、−COR7、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。また、−CON(R7)(R8)についてR7、R8がお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R7、R8はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R1〜R6がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0044】
7、R8としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
また、Y1、Y2としては具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3-NMe4+、モルホリノ基等が好ましい。
【0045】
x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y100であり、x+y=100となる数を表す。
【0046】
(B−1)特定親水性ポリマーの分子量としては、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がさらに好ましく、1,000〜30,000が最も好ましい。
【0047】
本発明に好適に用い得る(B−1)特定親水性ポリマーの具体例(1−1)〜(1−23)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
<合成方法>
本発明における(B−1)末端シラン変性親水性ポリマーとして、例えば(B−1)特定親水性ポリマーは、下記構造単位(i)及び(ii)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記構造単位(iii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。この反応様式は特に制限されるものではないが、ラジカル重合開始剤の存在下、或いは、高圧水銀灯の照射下、バルク反応、溶液反応、懸濁反応などを行えばよい。
【0052】
また、重合反応において、(iii)で表される構造単位の導入量を制御し、これと構造単位(i)又は(ii)との単独重合を効果的に抑制するため、不飽和化合物の分割添加法、逐次添加法などを用いた重合法を行うことが好ましい。
構造単位(iii)に対する構造単位(i)、(ii)の反応比率は特に制限されるものではないが、構造単位(iii)1モルに対して、構造単位(i)、(ii)が0.5〜50モルの範囲内とすることが、副反応の抑制や加水分解性シラン化合物の収率向上の観点から好ましく、1〜45モルの範囲がより好ましく、5〜40モルの範囲であることが最も好ましい。
【0053】
【化15】

【0054】
上記構造単位(i)、(ii)及び(iii)において、R1〜R6、L1〜L3、Y1、Y2、mは、上記一般式(1)におけるそれらと同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0055】
〔(B−2)側鎖にシランカップリング基を含有する親水性ポリマー〕
本発明で使用することのできる(B−2)側鎖にシランカップリング基を含有する親水性ポリマーとしては、下記一般式(2−a)、(2−b)で示される構造単位を有することが好ましい。
【0056】
【化16】

【0057】
一般式(2−a)及び(2−b)中、R1〜R8は、一般式(1)におけるR1〜R6と同義であり、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。L11は単結合又は多価の有機連結基を表す。L12は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。nは1〜3の整数を表す。p及びqは、p+q=100とした時の組成比を表し、0<p<100、0<q<100である。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
1〜R8の好ましい範囲、有しても良い置換基などは、一般式(1)におけるR1〜R6におけるものと同じである。
【0058】
11は単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。さらに、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0個から200個までの炭素原子、0個から150個までの窒素原子、0個から200個までの酸素原子、0個から400個までの水素原子、および0個から100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0059】
【化17】

【0060】
また、L11はポリマー又はオリゴマーから形成されていてもよく、具体的には不飽和二重結合系モノマーからなるポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンなどを含むことが好ましく、その他の好ましい例として、ポリ(オキシアルキレン)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリシロキサン等が挙げられ、好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレートである。
これらポリマー及びオリゴマーに用いられる構造単位は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。また、L11がポリマーまたはオリゴマーの場合は構成する元素数に制限は特になく、分子量は1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0061】
12は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子が連結基なしに直接結合していることを表す。また、L12中に、前記構造は2つ以上存在してもよく、その場合には、互いに同じものでも、異なるものであってもよい。前記構造を1つ以上含むのであれば、他の構造はL11で挙げられたものと同様の構造を有することができる。
【0062】
また、Xは親水基であって、−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)又は−N(R)(R)(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、一般式(1)におけるR1〜R6がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0063】
、R又はRとしては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
、Rとしては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等の無機アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等の有機アニオンが挙げられる。
また、このようなXとしては具体的には、−CONa、−CONH、−SONa、−SONH、−PO等が好ましい。
【0064】
p及びqは(B−2)側鎖にシランカップリング基を含有する親水性ポリマーにおける、一般式(2−a)で表される構造単位と一般式(2−b)で表される構造単位の組成比を表し、0<p<100、0<q<100、p+q=100である。組成比p、qは、30<p<100、0<q<70であることが好ましい。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する構造単位である(2−a)及び(2−b)は、それぞれすべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよく、その場合、一般式(2−a)に相当する構造単位と一般式(2−b)に相当する構造単位の組成比が上記範囲であることが好ましい。
【0065】
(B−2)側鎖にシランカップリング基を含有する親水性ポリマーの分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0066】
以下に、(B−2)側鎖にシランカップリング基を含有する親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(1)〜(52)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0067】
【化18】

【0068】
【化19】

【0069】
【化20】

【0070】
【化21】

【0071】
【化22】

【0072】
【化23】

【0073】
(B−1)及び(B−2)の親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0074】
また、上記(B−1)及び(B−2)の特定親水性ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0075】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0076】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0077】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0078】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0079】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0080】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、(B−1)及び(B−2)の親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、(B−1)及び(B−2)の総親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0081】
また、組成物中、(B−1)及び(B−2)の親水性ポリマーと下記の親水性ポリマーを併用することも可能である。
アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニル類或いはその加水分解物、スチレン類、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、アクリルニトリル、無水マレイン酸類、マレイン酸イミド類などのモノマーを原料とするポリマーが挙げられる。
特に上記のモノマーでもアミノ基、アンモニウム基、水酸基、スルホンアミド基、カルボキシル基又はその塩、リン酸基又はその塩、スルホン酸基又はその塩、エーテル基特にエチレンオキシ基を有するモノマーが好ましい。
また、上記以外に主鎖にウレタン結合、或いはアミド結合、或いはウレア結合を有する親水性ポリマーも使用することが可能である。
【0082】
アクリル酸エステル類の具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0083】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
【0084】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0085】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0086】
ビニル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルピロリドン等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、トリメトキシスチレン、カルボキシスチレン、スチレンスルホン又はその塩等が挙げられる。
【0087】
本発明に係る(B−1)及び(B−2)に属する特定親水性ポリマーの総量は、本発明の親水性組成物の不揮発性成分に対して、硬化性と親水性の観点から、好ましくは5〜95質量%、更に好ましくは15〜90質量%、最も好ましくは20〜85質量%の範囲で含有される。ここで、不揮発成分とは、揮発する溶媒を除いた成分をいう。
【0088】
〔(C)金属錯体触媒〕
本発明の親水性組成物においては、(A)両性イオン低分子化合物、(B−1)特定親水性ポリマーさらに(B−2)特定親水性ポリマーを溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために、金属錯体触媒を使用する。
【0089】
本発明で用いられる(C)金属錯体触媒としては、前記(B−1)、(B−2)親水性ポリマー中のシランカップリング基を加水分解、重縮合し、(B−1)、(B−2)親水性ポリマー同士の結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、例えば、金属錯体からなるルイス酸触媒もまた好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0090】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシー4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0091】
好ましい配位子はアセチルアセトンまたはアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0092】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0093】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0094】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0095】
本発明に係る(C)金属錯体触媒は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0.01〜50質量%、更に好ましくは0.1〜25質量%の範囲で使用される。また、(C)触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0096】
本発明の親水性組成物には、前記必須成分である(A)両性イオン低分子化合物、(B−1)特定親水性ポリマー、(B−2)特定親水性ポリマー及び(C)金属錯体触媒に加え、目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。以下、併用しうる成分について説明する。
【0097】
〔(D)Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物〕
本発明で用いられる(D)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物(特定アルコキシドとも呼ぶ)は、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、(B−1)特定親水性ポリマー、(B−2)特定親水性ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な被膜を形成する。
(D)特定アルコキシドは、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましく、親水性膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、前記(B−1)特定親水性ポリマー、(B−2)特定親水性ポリマー、(D)一般式(3)で表される特定アルコキシドを混合して支持体表面に被覆し、加熱、乾燥する。
【0098】
【化24】

【0099】
一般式(3)中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R10はアルキル基又はアリール基を表し、YはSi、Al、Ti又はZrを表し、kは0〜2の整数を表す。R及びR10がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0100】
以下に、(D)一般式(3)で表される特定アルコキシドの具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。YがSiの場合、即ち、特定アルコキシド中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0101】
YがAlである場合、即ち、特定アルコキシド中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
YがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
YがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
これらの中でも、YがSiであるアルコキシドが被膜性の観点から好ましい。
【0102】
本発明に係る(D)特定アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
(D)特定アルコキシドは、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%の範囲で使用される。
特定アルコキシドは市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0103】
〔界面活性剤〕
本発明においては、前記親水性組成物の被膜面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0104】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0105】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0106】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。 なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0107】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
〔無機微粒子〕
本発明の親水性組成物には、形成される親水性膜の硬化被膜強度向上及び親水性向上のために無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmであるのがよい。上記範囲であると、親水層中に安定に分散して、親水層の膜強度を十分に保持し、親水性に優れる膜を形成することができる。上述したような無機微粒子はコロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
【0109】
本発明に係る無機微粒子は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の範囲で使用される。また、無機微粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、親水性部材の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0111】
〔酸化防止剤〕
本発明の親水性部材の安定性向上のため、親水性層形成用塗布液に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0112】
〔高分子化合物〕
本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0113】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0114】
〔親水性組成物の調液〕
親水性組成物の調製は、(A)両性イオン低分子化合物、(B)親水性ポリマー、(C)金属錯体触媒、及び(D)Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物をエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0115】
前記(A)両性イオン低分子化合物、(B−1)特定親水性ポリマー、(B−2)特定親水性ポリマー、及び(C)金属錯体触媒を含有する親水性膜形成用組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0116】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
このような本発明の親水性組成物を含む溶液を、適切な支持体上に被膜し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることができる。即ち、本発明の親水性部材は、支持体上に、前記本発明の親水性組成物を被膜し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜を有するものである。
親水性膜の形成において、親水性組成物を含む溶液を被膜した後の加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点からは、50〜200℃の温度範囲において、2分〜1時間程度行うことが好ましく、80〜160℃の温度範囲で、5〜30分間乾燥することがより好ましい。また、加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
【0117】
〔基板〕
本発明の親水性部材の支持体として使用可能な基板としては、例えば、防汚及び/又は防曇効果を期待する透明な基板の場合には、その材質はガラス、または無機化合物層を含有したガラス等の無機基板や、ステンレス、アルミニウム等の金属基板や、透明プラスチック、または無機化合物層を含有した透明プラスチック層など可視光を透過しうる基板が好適に利用できる。
【0118】
無機基板の詳細について述べれば、通常のガラス板、樹脂層、気体層、真空層などを含む積層ガラス板、強化成分や着色剤などを含む各種のガラス板を挙げることができる。
無機化合物層を含有したガラス板としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属性酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化リチウム、フッ化トリウム等の金属ハロゲン化物;などで形成した無機化合物層を備えたガラス板を挙げることができる。
【0119】
無機化合物層は、単層あるいは多層構成とすることができる。無機化合物層はその厚みによって、光透過性を維持させることもでき、また、反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層の形成方法としては、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0120】
また、プラスチックなどの有機基板のうち、透明プラスチック基板としては、可視光透過性を有する種々のプラスチック材料からなる基板を挙げることができる。特に、光学部材として使用される基板は、透明性、屈折率、分散性などの光学特性を考慮して選択され、使用目的により、種々の物性、例えば、耐衝撃性、可撓性など強度をはじめとする物理的特性や、耐熱性、耐候性、耐久性などを考慮して選択される。これらの観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロフィン等のセルロース系樹脂などを好ましく挙げることができる。これらは、使用目的に応じて、単独で用いられてもよく、或いは、2種以上を混合物、共重合体、積層体などの形態で組み合わせて用いることもできる。
【0121】
プラスチック基板として、ガラス板の説明において記載した無機化合物層をプラスチック板上に形成したものを用いることもできる。この場合、無機化合物層は反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層をプラスチック板上に形成する場合も、前述した無機基板におけるのと同様の手法で形成することができる。
【0122】
透明プラスチック基板に無機化合物層を形成する場合、両層の間には、ハードコート層を形成してもよい。ハードコート層を設けることにより、基板表面の硬度が向上すると共に、基板表面が平滑になるので、透明プラスチック基板と無機化合物層との密着性が向上し、耐引っ掻き強度の向上と、基板の屈曲に起因する無機化合物層へのクラックの発生を抑制することができる。このような基板を用いることで親水性部材の機械的強度を改善できる。ハードコート層の材質は、透明性、適度な強度、及び機械的強度を有するものであれば、特に限定されない。例えば、電離放射線や紫外線の照射による硬化樹脂や熱硬化性の樹脂が使用でき、特に紫外線照射硬化型アクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、熱硬化性ポリシロキサン樹脂が好ましい。これらの樹脂の屈折率は、透明プラスチック基板の屈折率と同等、もしくはこれに近似していることがより好ましい。
【0123】
このようなハードコート層の被膜方法は、特に限定されず、均一に塗布されるのであれば任意の方法を採用することができる。また、ハードコート層の膜厚は3μm以上であれば十分な強度となるが、透明性、塗工精度、取り扱いの点から5〜7μmの範囲が好ましい。さらにハードコート層に平均粒子径0.01〜3μmの無機あるいは有機物粒子を混合分散させることによって、一般的にアンチグレアと呼ばれる光拡散性処理を施すことができる。これらの粒子は透明であれば特に限定されないが、低屈折率材料が好ましく、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが安定性、耐熱性等の点で特に好ましい。光拡散性処理は、ハードコート層の表面に凹凸を設けることによっても達成できる。
【0124】
このように、ガラス板やプラスチック板に無機化合物層を有するものを基板として用い、親水性表面を形成することにより、本発明の親水性部材を得ることができる。親水性部材は表面に親水性と耐久性に優れた親水性膜を有することより、支持体(基板)表面に優れた防汚性、特に油脂汚れに対する防汚性、防曇性のいずれか或いは双方を付与することができる。
本発明の親水性部材表面に適用可能な反射防止層は、前述の無機化合物層に限定されず、例えば、反射率、屈折率の異なる複数の薄層を積層することにより、反射防止効果を得る公知の反射防止層なども適宜用いることができ、その材料も無機化合物、有機化合物のいずれも使用することができる。特に、表面に反射防止膜としての無機化合物層が形成された基板は、反射防止膜が形成された側の表面に本発明に係る親水性ポリマー鎖を適用することにより、表面の防汚性及び/又は防曇性機能、さらに反射防止性に優れた本発明の防汚性及び/又は防曇性部材とすることができる。また、目的に応じて、前記構成を有する部材に、偏光板などの機能性光学部材などを、ラミネートに代表される貼り合わせ技術で貼り合わせることにより、本発明の親水性部材を用いて種々の機能や特性を有する反射防止・光学機能性部材を得ることもできる。
【0125】
これらの反射防止部材や反射防止・光学機能性部材を、粘着剤、接着剤などを用いて各種ディスプレイ(液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなど)の表示装置の前画板のガラス板、プラスチック板、偏光板などに貼付することにより、この反射防止部材の表示装置への適用が可能となる。
【0126】
また、本発明の親水性部材は、前記した表示装置以外にも、防汚及び/又は防曇効果を要求される種々の用途への適用が可能である。なお、防汚及び/又は防曇性部材に透明性を必要としない基板に適用しようとする場合には、上記の透明基板に加えて、例えば、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組合せ、それらの積層体が、支持体基板としていずれも好適に利用できる。
【0127】
本発明においては、基材と親水性層との間に、一層または二層以上の下塗り層を設けることができる。
下塗層は、Si、Ti、ZrおよびAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物と不揮発性の触媒とを少なくとも有する組成物を、加水分解、重縮合させたものであることが好ましい。
Si、Ti、ZrおよびAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物と不揮発性触媒とを少なくとも有する組成物を、加水分解、重縮合させた下塗層は、架橋構造を有し、このようなアルコキシド化合物の加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。
【0128】
Si、Ti、ZrおよびAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物としては前述のものが挙げられる。これらのなかでも、反応性、入手の容易性からSiのアルコキシドが好ましく、具体的には、シランカップリング剤に用いる化合物を好適に使用することができる。
【0129】
下塗層で用いられる不揮発性の触媒とは、沸点が20℃未満のもの以外のものであり、換言すれば、沸点が20℃以上のものや、そもそも沸点がないもの(熱分解など、相変化を起こさないものを含む)等である。
本発明に用いられる不揮発性の触媒としては、特に限定されないが、金属錯体(金属のキレート化合物とも称する)やシランカップリング剤が挙げられる。その他、当業界においては触媒として酸またはアルカリが好適に用いられるが、これらも沸点が20℃以上のものであれば特に制限なく適用可能である。たとえば沸点が−83℃の塩酸などは除かれるが、沸点が121℃の硝酸や分解温度が213℃のリン酸などは本発明において不揮発性の触媒として適用される。
金属錯体としては、前述のものが挙げられる。
【0130】
不揮発性の触媒として用いられるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、酸性またはアルカリ性を示す官能基を有するものが挙げられ、さらに詳細には、ペルオキソ酸、カルボン酸、カルボヒドラゾン酸、カルボキシミド酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、セレノン酸、セレニン酸、セレネン酸、テルロン酸、及び上記のアルカリ金属塩などといった酸性を示す官能基、或いは、アミノ基などといった塩基性を示す官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0131】
下塗層は、基材上に上記アルコキシド化合物と不揮発性の触媒とを少なくとも有する組成物を、基材上に、塗布し、加熱、乾燥することにより、該組成物が加水分解、重縮合させて、形成することができる。下塗層形成のための加熱温度と加熱時間は、ゾル液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から加熱温度は150℃以下であることが好ましく、加熱時間は1時間以内が好ましい。
下塗層は、公知の塗布方法で作成することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0132】
このようにして得られた下塗層は、その中に不揮発性の触媒が活性を失わずに含有されて存在し、特にその表面にも存在することにより、該下塗層と親水性層の界面における密着性が極めて高いものとなる。
【0133】
また、下塗層は、プラズマエッチングまたは金属粒子を混入させて微細凹凸を設けることにより、該下塗層と親水性層の界面における密着性をさらに高いものとすることができる。
【0134】
下塗り層の素材としては、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることもできる。
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0135】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m2 が好ましく、0.1〜10g/m2 がより好ましい。
【0136】
本発明にかかる親水性組成物は、アルミニウム製フィン材に塗布して、親水膜を形成し、エアコンの熱交換器に用いることが好ましい。
エアコンとは、エアーコンディショナー(Air Conditioner)の略で、調温、調湿、調和する装置で、クーラーとヒーターを組み合わせた空気調和装置、すなわち冷暖房機のことであり、ルームエアコン、パッケージエアコン、カーエアコンなどの総称を指す。
熱交換器とは、高温の流体がもつ熱エネルギーを低温の流体に伝える装置であり、直接接触方式、隔板や蓄熱器を用いる方式があり、加熱器・冷却器・蒸発器・凝縮器などに使用することができる。熱交換器の用途として、例えば室内用クーラーやエアコン、建設機械用オイルクーラー(油圧作動の建設機械用オイルを冷却)、自動車のラジエーター(エンジンの過熱や加冷を防ぎ、一定温度に保つもの)、コンデンサー(圧縮された高圧ガスは、圧縮熱で暖かくなっているので、この高圧ガスを前面冷却風で冷やし液化状態に戻すもの)、エバポレーター(エアコン関係の中にあり、冷媒のガスを気化させ、廻りの温度を下げるもの)、インタークーラー、車両用ヒーター等が挙げられる。熱交換器はエアコンの部品であり、熱媒体を移動させるパイプと空気中の熱を吸収または熱媒体中の熱を放散させるフィン材から構成される。フィン材表面は結露水によるフィンピッチ間のブリッジ生成を防止するため、親水処理がなされている。近年は汚染物質が存在する環境でも長期間親水性が維持されるフィン材が強く求められている(参考文献:特殊機能コーティング技術 p215〜226 2007年 CMC出版、特開2003−201577号公報)。
フィン材にはアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。該アルミニウム材はアルミニウム純度99%以上、150μm以下の厚み、表面粗さ0.1〜0.4μmのものが好ましく用いられる。また、フィン材に用いられるアルミニウムとしては、表面が脱脂されたもの、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板を挙げることができる。アルミニウム製のフィン材は、表面が化成処理されていることが親水化処理皮膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、例えば、クロメート処理を挙げることができ、その代表例として、アルカリ塩−クロム酸塩法(B.V.法、M.B.V.法、E.W.法、アルロック法、ピルミン法)、クロム酸法、クロメート法、リン酸クロム酸法などの処理法、及びクロム酸クロムを主体とした組成物による無水洗塗布型処理法などが挙げられる。
例えば、熱交換器用フィン材に用いられるアルミニウム等薄板としては、JIS規格で、1100、1050、1200、1N30等の純アルミニウム板、2017、2014等のAl−Cu系合金板、3003、3004等のAl−Mn系合金板、5052、5083等のAl−Mg系合金板、さらには6061等のAl−Mg−Si系合金板等のいずれを用いても良く、またその形状はシートおよびコイルのいずれでも良い。
【0137】
その他、本発明の熱交換器、エアコンには公知の技術(例えば特開2002−106882号公報、特開2002−156135号公報など)を用いることができ、特に制限されない。
【実施例】
【0138】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0139】
〔実施例1〕
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面をグロー処理により親水化した後、下記組成の親水性層塗布液(1)をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性層を形成して親水性部材を形成した。
【0140】
<親水性層塗布液(1)>
・下記ゾルゲル調製液 (1) 500g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 5g
【0141】
【化25】

【0142】
<ゾルゲル調製液(1)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン0.25g、オルトチタン酸テトラエチル0.3g、精製水300g中に、下記の(B−1)特定親水性ポリマー(例示化合物1−1)7.5g、(B−2)特定親水性ポリマー(例示化合物2)22.5g、特定ベタイン化合物(例示化合物1)7.5gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0143】
<(B−1)特定親水性ポリマー(例示化合物1−1)の合成>
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により、4000の質量平均分子量を有するポリマー(前記例示化合物(1−1))であることを確認した。5%水溶液粘度は2.5cPs、親水性基の官能基密度は、13.4meq/gであった。
【0144】
<(B−2)特定親水性ポリマー(例示化合物1)の合成>
500ml三口フラスコにアクリルアミド56.9g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル11.6g、及び1−メトキシ−2−プロパノール280gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル2.3gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。アセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、前記例示化合物(1)である特定親水性ポリマー(1)を得た。乾燥後の質量は65.6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により質量平均分子量8,500のポリマーであった。
【0145】
(評価)上記親水性部材について、以下の評価を行った。
表面抵抗値:商品名「Hiresta HT-210」(三菱油化(株)製)を用い、25℃、60%RHにて測定した。
【0146】
防曇性:昼間、室内の蛍光灯下で、1分間水蒸気を当て、水蒸気から離した後、25℃、RH10%の環境下に配置し、前記と同様の照射条件の蛍光灯下において曇り具合及びその変化を下記基準により三段階で官能評価した。
○:曇りが観察されない
△:曇っているが、10秒以内に回復し、曇りが見られなくなる
×:曇っており、曇りが10秒経過しても回復しない
【0147】
防汚性:カーボンブラック懸濁液(10%水溶液)が入ったエアスプレーで親水性部材の表面が均一に隠蔽するまで塗布をし、60℃で1時間乾燥させた後、室温まで放冷する
。その後、流水下にて、親水性部材表面のカーボンブラック洗い落とし、室温で1時間乾燥させ、接触角を測定した。カーボンブラック(CB)処理後(カーボンブラック懸濁液を塗布、乾燥、洗浄し、室温で1時間乾燥させた後)も水滴接触角が低い値を示す場合、防汚性が良好であるとした。
【0148】
耐水性:120cmサイズの親水性部材を水中でスポンジ往復10回こすり処理を行い、その前後の質量変化から残膜率を測定した。残膜率が高いほど、耐水性が高い。
【0149】
引っ掻き試験:0.1mm径サファイア針に5gから始めて5gきざみに加重をかけて親水層表面を走査し、傷付きが発生した加重を評価(新東科学株式会社製引っ掻き強度試験機Type18Sで測定)。加重が大きくても傷付きがないほうが耐久性良好である。
【0150】
保存安定性(裏面接着):5cm四方の親水性部材50枚を重ね、万力を使用してトルク300kgで圧着し、45℃75%湿度環境で1日経時させた後の裏面接着性を評価した。裏面接着しないほうが保存安定性に優れていることを意味する。
【0151】
〔比較例1〕
特定ベタイン化合物(例示化合物1)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に親水性膜を形成した。結果を表1に示す。
【0152】
【表1】

【0153】
〔実施例2〜5〕
特定ベタイン化合物(例示化合物1)を表2に示す特定ベタイン化合物に変更した以外は実施例1と同様に親水性膜を形成、評価した。結果は表1に示した。
【0154】
【表2】

【0155】
〔実施例6〕
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面を10分間UV/O3処理により親水化した後、下記組成の第1層塗布液(1)をスピンコート塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の第1層を形成した。室温で十分冷却した後、第1層塗布面に実施例1で用いた親水性層塗布液(1)を第2層としてスピンコート塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して乾燥塗布量1.0g/mの第2層を形成した。
評価結果は表1に示した。
【0156】
<第1層塗布液(1)>
・コロイダルシリカ分散物20質量%水溶液(スノーテックスC)100g
・下記ゾルゲル調製液(2) 500g
・前記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0157】
<ゾルゲル調製液(2)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)8gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0158】
〔実施例7〕
表面をグロー処理により親水化したポリエチレンテレフタレート(PET)基板(厚み50μm)を準備し、下記組成の第1層塗布液(2)をスピンコート(1000rpm30秒)し、100℃2分間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.5g/mの第1層を形成した。第1層の水滴接触角は80°であった。続いて、第1層の上に、実施例1で使用した親水性層塗布液(1)をスピンコート(100rpm2分の後、50rpmで5分、200rpmで2分)し、100℃、10分間オーブン乾燥して、乾燥塗布量2.0g/m2の親水性層を形成して親水性部材を作製した。
評価結果は表1に示した。
【0159】
<第1層塗布液(2)>
・エピコート1009(シェルケミカルズジャパン製) 100g
・タケネートD110N(武田薬品工業製、固形分10%) 100g
・メチルエチルケトン 1200g
【0160】
〔実施例8〕
表面を10分間UV/O3処理により親水化したSUS基板(厚み1.1mm)に実施例7記載の第1層を設け、さらにその第1層の上に下記組成の第1層塗布液(3)をスピンコート(1000rpm60秒)し、100℃10分間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.5g/mの層を形成し、二層構造の第1層を形成した。第1層塗布液(3)により形成した層の水滴接触角は10°であった。続いて、該二層構造の第1層の上に実施例1で使用した親水性層塗布液(1)を用いて親水性層を形成して親水性部材を作製した。
評価結果は表1に示した。
【0161】
<第1層塗布液(3)>
・PVA105水溶液(クラレ製、固形分6%) 130g
・グリオキザール水溶液(東京化成製、固形分40%) 50g
・エチレングリコールジグリシジルエーテル(東京化成製) 10g
・メタノールシリカ(日産化学製、固形分30%) 30g
・前記アニオン系界面活性剤(1)5質量%水溶液 20g
・精製水 7600g
【0162】
〔実施例9〕
アルカリ性洗浄液(横浜油脂、セミクリーンA 5%水溶液)に10分浸漬し、水洗を3回繰り返したアルミニウム板(A1200、厚み0.1mm)を準備し、下記組成の第1層塗布液(4)をバー塗布し、100℃−10分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量0.1g/mの第1層を形成した。室温で十分冷却した後、第1層塗布面に親水性層塗布液(2)を第2層としてバー塗布し、150℃−30分でオーブン乾燥して乾燥塗布量0.5g/mの第2層を形成し、親水性部材を作製し、評価を行った。
【0163】
<第1層塗布液(4)>
・下記ゾルゲル調製液(3) 500g
・上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0164】
<ゾルゲル調製液(3)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)4g、メチルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)4gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0165】
<親水性層塗布液(2)>
・下記ゾルゲル調製液(4) 500g
・上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 5.0g
【0166】
<ゾルゲル調製液(4)>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン0.25g、オルトチタン酸テトラエチル0.3g、精製水300g中に、(B−2)特定親水性ポリマー(例示化合物51)22.5g、(B−1)特定親水性ポリマー(例示化合物2)7.5g、特定ベタイン化合物(27)を混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0167】
(評価)上記親水性部材について、以下の評価を行った。結果を表4に示す。
密着性:親水性部材上にセロハンテープを貼着したのちに剥がし、親水性膜が剥がれるか目視で確認した。
○:剥がれなし
△:部分的に剥がれ有り
×:全面的に剥がれ
耐汚染性(耐パルミチン酸):50mlガラス容器にパルミチン酸を0.2gとり、親水性膜を塗布したアルミ基板で、親水性膜側がパルミチン酸で曝されるように蓋をして105℃/1時間曝気後、30分流水洗浄、80℃/30分乾燥を1サイクルとし、5サイクル後の接触角を測定した。接触角の値が小さいほど防汚性に優れる。
【0168】
〔比較例2〕
親水性層塗布液(2)中の(B−1)特定親水性ポリマーをポリアクリルアミドに変えたこと以外は、実施例9と同様の方法で親水性部材を作製し、評価を行った。
【0169】
〔実施例10〜13〕
親水性層塗布液(2)中の、(B−2)特定親水性ポリマーと(B−1)特定親水性ポリマーの種類と質量比を表3のように変えたこと以外は実施例9と同様の方法で親水性部材を作製し、評価を行った。
【0170】
【表3】

【0171】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の親水性部材の応用可能な分野の一例を挙げれば、可視光を透過しうる基板が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムなどが挙げられる。
その他の適用可能な用途としては、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、熱交換器用放熱フィン、エアコン室内機、エアコン室外機、パッケージエアコン、カーエアコン及び上記物品表面に貼付させるためのフィルム、家庭用電気製品のハウジングや部品や外装及び塗装、OA機器製品のハウジングや部品や外装及び塗装、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムなどが挙げられ、その応用範囲は広い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)両性イオン低分子化合物、(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー、(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマー、及び(C)金属錯体触媒を含有する親水性膜形成用組成物であって、(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー/(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーの質量比率が50/50〜5/95の範囲内である親水性膜形成用組成物。
【請求項2】
前記(C)金属錯体触媒が、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素化合物から構成されるものである請求項1に記載の親水性膜形成用組成物。
【請求項3】
前記(A)両性イオン低分子化合物がベタイン構造を有する請求項1又は2に記載の親水性膜形成用組成物。
【請求項4】
前記(B−1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーが、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の親水性膜形成用組成物。
【化1】

上記一般式(1)で表される構造を有する親水性ポリマーは、構造単位(i)、(ii)で表されるポリマーユニットの少なくとも一方の末端に、構造単位(iii)で表されるシランカップリング基を有する。
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表し、mは0、1または2を表し、x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y100であり、x+y=100となる数を表す。L1、L2、L3は、それぞれ独立に、単結合又は有機連結基を表し、Y1、Y2は、それぞれ独立に、−N(R7)(R8)、−OH、−NHCOR7、−CONH2、−CON(R7)(R8)、−COR7、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。
【請求項5】
前記(B−2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーが、少なくとも下記一般式(2)で表される構造を有する化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の親水性膜形成用組成物。
【化2】

一般式(2)中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。L11は単結合又は多価の有機連結基を表す。L12は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。nは1〜3の整数を表す。p及びqは、p+q=100とした時の組成比を表し、0<p<100、0<q<100である。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項6】
基材上に請求項1〜5のいずれかに記載の親水性膜形成用組成物を塗布した親水性部材。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の親水性膜形成用組成物を塗布したフィン材。
【請求項8】
請求項7に記載のフィン材がアルミニウム製であるアルミニウム製フィン材。
【請求項9】
請求項8に記載のアルミニウム製フィン材を用いた熱交換器。
【請求項10】
請求項9に記載の熱交換器を用いたエアコン。

【公開番号】特開2009−235130(P2009−235130A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79325(P2008−79325)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】