説明

親水性薄膜及びその製造方法

【課題】 この発明は、良好な親水性を示し、耐久性に優れた親水性薄膜を提供すること、及び、前記親水性薄膜を簡便な方法で製造する親水性薄膜の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 この親水性薄膜は、Al−O−P結合を有してなり、走査型プローブ顕微鏡を使用して測定された表面の十点平均粗さ(Rz)が20nm未満であり、この親水性薄膜の製造方法は、基材表面に設けられたアルミナ薄膜を、リン酸基含有化合物の水溶液中で、水熱合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、親水性薄膜及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、良好な親水性を示し、耐久性に優れた親水性薄膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、電車及び住宅用の窓ガラス、自動車用及び浴室や洗面所等の住宅用の鏡、眼鏡、望遠鏡、双眼鏡等にあっては、雨水、湯気、湿気等によって、曇ること又は結露することのないように、これらガラス表面には親水性を付与することが要求される。
【0003】
ガラス、鏡、及びレンズ等の部材表面に親水性を付与する技術として、界面活性剤を部材表面に塗布することにより親水性を発現させる方法が知られている。しかし、この方法では、塗布された界面活性剤が水により容易に流れ落ちてしまい、親水性が持続しない。
【0004】
水溶性高分子を部材表面に塗付することにより親水性を発現する方法が、例えば、特許文献1に記載されている。界面活性剤と同様に水溶性高分子を部材表面上に保持することは困難であり、耐久性に劣る。
【0005】
シリカ及び/又はアルミナ薄膜を部材表面に形成する方法が、例えば、特許文献2に記載されている。しかし、シリカ及び/又はアルミナ薄膜のみでは水の接触角が小さくならないので、接触角を低下させる他の手段が必要である。そのため、この方法によると製造プロセスが複雑になってしまう。
【0006】
チタニアに光を照射すると親水性が付与されることを応用して、部材表面に親水性を付与する技術が、例えば、特許文献3及び特許文献4に記載されている。しかし、チタニアの親水性の効果は光照射時のみに発現され、光が照射されない場合には親水性の効果が発現されないので、使用環境が制限される。
【0007】
リン酸及びリン酸アルミニウム等のリン酸塩をシリカ及びアルミナ等のセラミックスに複合化する技術が、特許文献5に記載されている。しかし、前記文献に記載されている薄膜は、親水性を有することについて記載がない。また、リン酸及びリン酸塩を表面改質剤としてそのまま用いる場合には、沸騰水下又は高温下において親水性が低下してしまい、耐久性に劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−102189号公報
【特許文献2】特開平3−174986号公報
【特許文献3】特許第3384284号公報
【特許文献4】特許第3620619号公報
【特許文献5】特表2005−53554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、良好な親水性を示し、耐久性に優れた親水性薄膜を提供すること、及び、前記親水性薄膜を簡便な方法で製造する親水性薄膜の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、
(1)Al−O−P結合を有してなり、走査型プローブ顕微鏡を使用して測定された表面の十点平均粗さ(Rz)が20nm未満である親水性薄膜である。
【0011】
前記(1)の手段における好ましい態様としては、
(2)前記Al−O−P結合が、X線光電子分光法により薄膜表面のXPSスペクトルを測定したときに、133.0eV以上135.0eV以下の範囲内に存在するP2pスペクトルのピークおよび74.0eV以上76.0eV以下の範囲内に存在するAl2pのスペクトルのピークに拠り、
(3)前記親水性薄膜が、基材表面に設けられたアルミナ薄膜を、リン酸基含有化合物の水溶液中で、水熱合成してなることを特徴とする。
【0012】
この発明の課題を解決するための第2の手段としては、
(4)基材表面に設けられたアルミナ薄膜を、リン酸基含有化合物の水溶液中で、水熱合成する親水性薄膜の製造方法である。
【0013】
前記(4)の手段における好ましい態様としては、
(5) 前記リン酸基含有化合物は、下記式(1)または(2)で示されるリン酸基含有有機化合物若しくはその塩、ならびに、
PO(CHSiX ・・・・(1)
〔RPO(CHNH ・・・・・(2)
〔ただし、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリル基またはO−フェニル基を表し、2個のRは同一であってもよく、又、別異であってもよい。Xはハロゲン、−OHまたは−OR(Rは、アルキル基またはアリル基を表す。)を表す。uは、1〜10の整数を表す。vおよびwは整数を表し、vとwとの和が3である。〕
MPO、Mn+23n+1、(MIPO、(MII(PO、(MIII(POで示される無機化合物およびそのエステル化合物(ただし、Mは水素原子または任意の金属イオン、Mは水素原子または+1価の金属イオン、MIIは+2価の金属イオン、MIIIは+3価の金属イオンを表し、nは2以上の整数を表す。)よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物であり、
(6)前記水熱合成は、150℃以上200℃以下で、10分以上60時間以下の時間で行なわれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、良好な親水性を示し、耐久性に優れた親水性薄膜を提供することができる。また、前記親水性薄膜を簡便な方法で製造することのできる親水性薄膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の親水性薄膜は、Al−O−P結合を有してなり、走査型プローブ顕微鏡を使用して測定された表面の十点平均粗さ(Rz)が20nm未満である。
【0016】
この親水性薄膜は、表面にAl−O−P結合が存在することにより、表面が平滑であっても、良好な親水性を有する。また、この親水性薄膜を沸騰水へ浸漬又は高温下に載置した後においても、親水性が維持されて耐久性に優れる。
【0017】
親水性薄膜がAl−O−P結合を有することは、X線光電子分光分析(ESCA又はXPS)装置を用いて、X線光電子分光法により薄膜表面のXPSスペクトルを測定したときに、P2pスペクトルの結合エネルギーのピークトップが133.0eV以上135.0eV以下の範囲内に存在し、Al2pスペクトルの結合エネルギーのピークトップが74.0eV以上76.0eV以下の範囲内に存在することにより確認することができる。
【0018】
前記P2pスペクトルのピークは、薄膜表面におけるリン酸イオンの存在を示す。この発明に係る親水性薄膜が、表面が平滑であるにもかかわらずに良好な親水性を発現するのは、このリン酸イオンのOと水のHとの間に水素結合が形成されることにより、水に対する親和性が高くなるからである。
【0019】
この発明の親水性薄膜は、その薄膜表面について走査型プローブ顕微鏡(SPM)を使用して測定された十点平均粗さ(Rz)が20nm未満であり、通常、0.1nm以上である。一般に、親水性の表面においては、平坦面より凹凸面の方が水に対する接触角が低くなり、親水性がより良好になる。しかし、凹凸面は耐摩耗性に劣る。すなわち、凹凸面は摩耗されることにより、凸部が破壊されて水に対する接触角が大きくなる。しかし、この発明の親水性薄膜は、比較的硬度の高い平坦面であるので、摩擦を受けても表面の形状及び構造は安定であり、変化しない。その結果、この発明の親水性薄膜は、表面の形状の変化により水に対する接触角が大きくなることがなく、長期間にわたって親水性が保持される。
【0020】
前記十点平均粗さ(Rz)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて、薄膜表面における任意の線分500nmにおける粗さ曲線から、その平均線から最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和として算出される。例えば、薄膜表面における任意の5つの線分について、十点平均粗さを測定して、得られた測定値の算術平均を十点平均粗さ(Rz)とすることができる。
【0021】
この発明の親水性薄膜は、その薄膜表面の水に対する接触角が10°以下である。一般に、薄膜表面の水に対する接触角が20°以下であるとき、薄膜表面は親水性を有すると評価することができ、特に薄膜表面の水に対する接触角が10°以下であるとき、薄膜表面は超親水性を有すると評価することができる。この発明の親水性薄膜は、その薄膜表面の水に対する接触角が10°以下であるので、超親水性を有する。また、親水性を有する親水性薄膜の表面は、通常、防曇性及び防汚性を有する。
【0022】
前記接触角は、室温で水平な試料台の上に載置された親水性薄膜の表面に2μLの水滴を滴下して、水滴における空気と親水性皮膜とに接する点から水滴の曲面に接線を引いたときのこの接線と親水性皮膜の表面との角度を、接触角計を用いて測定することにより求めることができる。
【0023】
この発明の親水性薄膜は、実質的にシリカ(SiO)が無含有である。従来、親水性を有する薄膜を形成する際に、シリカ(SiO)が利用されることがあった。しかし、この発明の親水性薄膜は、シリカ(SiO)が無含有であっても良好な親水性を有し、しかも耐久性に優れている。
【0024】
この発明の親水性薄膜は、例えば、以下に説明する簡便な方法により製造することができる。
【0025】
この発明の親水性薄膜の製造方法は、アルミナゾルを基材表面に塗布し、次いで、得られた塗布膜を硬化処理することにより形成されたアルミナ薄膜をリン酸基含有化合物の水溶液中で水熱合成することを特徴とする。
【0026】
前記アルミナゾルに分散されているアルミナ水和物粒子及び/又はアルミナ粒子は、球状、針状、繊維状、柱状、及び板状等の種々の形態を採ることができ、種々の形態を有するアルミナ水和物粒子及び/又はアルミナ粒子が含まれていても良い。
【0027】
この発明におけるアルミナゾルは、例えば、アルミニウム化合物を加水分解することによって調整することができ、必要に応じて酸性もしくはアルカリ性条件下で解膠する。この加水分解は、アルミニウム化合物を溶媒に溶解し、得られる溶液を一定の条件下で処理することにより行うことができる。
【0028】
アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子の形態は、アルミニウム化合物の種類、加水分解及び解膠の条件を適宜選択することにより調整することができる。
【0029】
前記アルミナゾルを調製するための原料であるアルミニウム化合物としては、水または水性有機溶媒等の溶媒中でアルミニウム酸化物のゾルを形成することのできるゾル形成性アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0030】
前記ゾル形成性アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムハロゲン化物、アルミニウム亜ハロゲン酸塩、アルミニウム次亜ハロゲン酸塩、アルミニウムハロゲン酸塩、アルミニウム過ハロゲン酸塩、アルミニウム無機酸塩、アルミニウム有機酸塩、アルミニウムアルコキシドおよびアルミニウム錯体からなる群から選択されたアルミニウム化合物を挙げることができる。
【0031】
具体的には、前記アルミニウムハロゲン化物としては、三フッ化アルミニウム、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウムおよび三沃化アルミニウム等を挙げることができ、前記アルミニウム次亜ハロゲン酸塩としては、次亜塩素酸アルミニウム、次亜臭素酸アルミニウムおよび次亜沃素酸アルミニウム等を挙げることができる。
【0032】
前記アルミニウムハロゲン酸塩としては、塩素酸アルミニウム、臭素酸アルミニウムおよび沃素酸アルミニウム等を挙げることができ、前記アルミニウム過ハロゲン酸塩としては、過塩素酸アルミニウム、過臭素酸アルミニウムおよび過沃素酸アルミニウム等を挙げることができ、前記アルミニウム無機酸塩としては、硝酸アルミニウムおよび硫酸アルミニウム等を挙げることができる。
【0033】
前記アルミニウム有機酸塩としては、Al(OCHO)、Al(OCOR(但し、Rは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基または炭素数6〜20の芳香族基)で表されるモノカルボン酸塩、Al(OCORCOO)(但し、Rは、炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、環状アルキレン基または炭素数6〜20の芳香族基)で表されるジカルボン酸塩、Al(OH)(OCOR)、AlO(OH)(OCOR、Al(OCORのいずれかの一般式で表されるカルボン酸アルミニウム(以上の化学式において、Rは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アラルキル基、または炭素数6〜20の芳香族基を示す。)を挙げることができる。
【0034】
前記モノカルボン酸塩としては、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、酪酸アルミニウム、吉草酸アルミニウム、カプロン酸アルミニウム、ヘプタン酸アルミニウム、オクタン酸アルミニウム、ノナン酸アルミニウム、デカン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウムおよびステアリン酸アルミニウム等を挙げることができ、ジカルボン酸塩としては、シュウ酸アルミニウムおよびコハク酸アルミニウム等を挙げることができる。
【0035】
前記アルミニウムのアルコキシドとしては、Al(OR(但し、Rは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、または炭素数6〜20の芳香族基を示す。)で表される化合物を挙げることができる。
【0036】
前記アルミニウムのアルコシドとしては、アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート等を挙げることができる。
【0037】
前記アルミニウム錯体としては、例えば、ジケトン錯体、ジケトン錯体ハロゲン化物およびジケトン錯体無機酸塩等を挙げることができる。
【0038】
前記ジケトン錯体としては、例えば、アセチルアセトナトアルミニウム、アセト酢酸アルミニウム、1,3−プロパンジオナトアルミニウム、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトアルミニウム、1−フェニルプロパンジオナトアルミニウムおよびトロポロナトアルミニウム等を挙げることができる。
【0039】
前記ジケトン錯体ハロゲン化物としては、アセチルアセトナトアルミニウム塩化物、アセト酢酸アルミニウム塩化物、1,3−プロパンジオナトアルミニウム塩化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトアルミニウム塩化物、1−フェニルプロパンジオナトアルミニウム塩化物、トロポロナトアルミニウム塩化物等のジケトン錯体塩化物、アセチルアセトナトアルミニウム臭化物、アセト酢酸アルミニウム臭化物、1,3−プロパンジオナトアルミニウム臭化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトアルミニウム臭化物、1−フェニルプロパンジオナトアルミニウム臭化物、トロポロナトアルミニウム臭化物等のジケトン錯体臭化物、アセチルアセトナトアルミニウム沃化物、アセト酢酸アルミニウム沃化物、1,3−プロパンジオナトアルミニウム沃化物、1,3ージフェニル−1,3−プロパンジオナトアルミニウム沃化物、1−フェニルプロパンジオナトアルミニウムヨウ化物、トロポロナトアルミニウム沃化物等のジケトン錯体沃化物、アセチルアセトナトアルミニウムフッ化物、アセト酢酸アルミニウムフッ化物、1,3−プロパンジオナトアルミニウムフッ化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトアルミニウムフッ化物、1−フェニルプロパンジオナトアルミニウムフッ化物およびトロポロナトアルミニウムフッ化物等のジケトン錯体フッ化物等を挙げることができる。
【0040】
また、前記アルミニウム錯体としては、エチルアセトアセテートアルミニウムイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムイソプロピレート等を挙げることもできる。
【0041】
これらの中でも、適度な加水分解性を有し、副生成物の除去が容易であることなどから、アルミニウムアルコキシドが好ましく、炭素数2〜5の低級のアルコキシル基を有するものが特に好ましい。
【0042】
前記ゾル形成性アルミニウム化合物を加水分解する方法としては、例えば、前記ゾル形成性アルミニウム化合物を適宜の有機溶媒に加えた後、この溶液を水に接触させる方法を挙げることができる。この場合、水をあらかじめ溶媒に配合させておいてもよい。この加水分解の際には、酸または塩基を触媒として存在させてもよい。また、前記ゾル形成性アルミニウム化合物を水に懸濁させ、酸または塩基を触媒として加えることにより、透明ゾル液を調製することもできる。
【0043】
加水分解するときの反応温度は、通常は、室温〜100℃とすることができるが、ゾル形成反応を促進する観点から、反応温度は、室温よりも高い範囲の温度、例えば、40〜100℃の範囲の温度とすることが好ましい。加水分解するときの反応時間は、通常は、0.1〜10時間、好ましくは、0.5〜5時間、特に好ましくは、0.5〜4時間である。
【0044】
前記ゾル形成性アルミニウム化合物を溶解するために用いられる水性有機溶媒としては、水に溶解するアルコール系有機溶媒、これらアルコール系有機溶媒の混合物およびアルコール系有機溶媒の一種または二種以上と水との混合物等を挙げることができる。
【0045】
前記アルコール系有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノールおよびシクロヘキサノール等の1価アルコール類ならびにエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の2価アルコール類を挙げることができる。
【0046】
前記ゾル形成性アルミニウム化合物を前記溶媒に溶解させる濃度は、適宜に選択することができる。前記濃度は、具体的には、溶媒100質量部に対し、ゾル形成性アルミニウム化合物を0.1〜50質量部となるように調整され、好ましくは、1〜30質量部の範囲となるように調整される。
【0047】
前記ゾル形成性アルミニウム化合物を前記溶媒と反応させる際に、触媒として用いることのできる酸としては、無機酸および有機酸を挙げることができる。無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸等を挙げることができ、有機酸としては、例えば、低級のモノカルボン酸を挙げることができ、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等を挙げることができる。
【0048】
触媒として用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の苛性アルカリ類、一級アミン、二級アミン、三級アミン等のアミン類、エタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチル−N−エタノールアミン等のアルカノールアミン類を挙げることができる。
【0049】
この発明において、アルミナゾルを塗布する基材としては、親水性を付与することが要求される材料であれば特に制限はないが、ガラス、金属、セラミックス、プラスチックス等を挙げることができる。これら材料の中でも、雨水、湯気、湿気等によって、曇ることまたは結露することを防止または抑制する要求度の高いガラスが好ましい。
【0050】
前記ガラスにも制限はなく、例えば、石英ガラス、96%石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、鉛ガラス等のガラスを挙げることができ、より具体的には、自動車及び電車等の窓ガラス、自動車用の鏡、浴室や洗面所等の住宅用の鏡、眼鏡、望遠鏡、双眼鏡等を挙げることができる。
【0051】
この発明においては、前記アルミナゾルを基材表面に塗布し、次いで、得られた塗布膜を硬化処理することによりアルミナ薄膜が形成されるが、アルミナゾルを基材表面に塗布する前に、基材表面を清浄化することが好ましい。基材表面を清浄化することにより、はじきを生じることなく均一な塗布膜を形成することができるからである。
【0052】
この清浄化の手段としては、例えば、基材がガラスの場合は、洗剤、特に中性洗剤を用いて洗浄処理する手段を挙げることができ、基材が金属の場合は、脱脂剤含有液に浸漬処理する手段を挙げることができる。
【0053】
前記脱脂剤含有溶液における脱脂剤としては、塩基性の化合物を含有する脱脂剤が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0054】
基材表面にアルミナゾルを塗布する方法としては、例えば、アルミナゾルに基材を浸漬した後、これを緩やかに引き上げるディップ法、固定された基材表面上に適宜の方法によってアルミナゾルを流延する流延法、アルミナゾルを貯留した槽の一端からアルミナゾル中に基材を浸漬し、前記槽の他端から基材を取り出す連続法、回転する基材上にアルミナゾルを滴下し、基材に作用する遠心力によってアルミナゾルを基材上に流延するスピンナー法、基材の表面にアルミナゾルを吹き付けるスプレー法等を挙げることができる。
【0055】
アルミナ含有ゾル液の塗布量は、アルミナ含有ゾル液の粘度、その他の条件により一律ではない。1回の塗布では、目的の厚さの薄膜が得られない場合は、数回の塗布を繰り返すこともできる。
【0056】
前記の各種方法によって基材表面に塗布されたアルミナゾルの塗布膜を、必要に応じて乾燥した後、硬化処理することにより、アルミナ薄膜が形成される。硬化処理としては、加熱処理または光照射処理を挙げることができ、光照射処理としては、紫外線照射処理が好ましい。
【0057】
アルミナ薄膜を形成するための加熱処理(以下、焼成処理ということがある)の条件に特別な制限はないが、その温度は、基材の耐熱温度に応じて選択することができ、通常は、100℃以上における適宜の温度が採用される。基材を加熱する際には、直接に前記温度に加熱してもよく、比較的低温で予熱し、次いで前記温度に加熱してもよい。また、その時間は、通常、1分間〜10時間の範囲内であり、好ましくは10分〜5時間の範囲内である。
【0058】
アルミナ薄膜を形成するための紫外線照射処理の条件にも特別な制限はないが、室温〜150℃下に紫外線照射することが好ましい。照射する紫外線の光源としては、高圧水銀灯または低圧水銀灯を使用することができ、これら水銀灯を使用すると、適切な強度の紫外線を廉価に照射することができる。
【0059】
得られたアルミナ薄膜の厚さは、用途に応じて適宜、決定することができ、通常、10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0060】
この発明の親水性薄膜の製造方法は、前記のようにして形成されたアルミナ薄膜を、リン酸基含有化合物の水溶液中で水熱合成することを特徴とする。
【0061】
前記リン酸基含有化合物としては、このリン酸基含有化合物の水溶液中で、後述する水熱合成をすることにより、リン酸基含有化合物からリン酸基が解離して、前記アルミナ薄膜中のアルミニウムイオンと結合して、Al−O−P結合を形成する化合物であれば特に制限はなく、リン酸基含有有機化合物及びリン酸基含有無機化合物を挙げることができる。
【0062】
前記リン酸基含有有機化合物としては、下記式(1)、(2)のいずれかの式で表される化合物若しくはその塩を挙げることができる。
PO(CHSiX ・・・・(1)
〔RPO(CHNH ・・・・・(2)
〔ただし、Rは水素原子、アルキル基、アルコシ基、アリル基またはO−フェニル基を表し、2個のRは同一であってもよく、別異であってもよい。Xはハロゲン、−OH(水酸基)または−OR(Rは、アルキル基またはアリル基を表す。)を表す。uは、1〜10の整数を表す。vおよびwは整数を表し、vとwとの和が3である。〕
【0063】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基等を、前記アルコシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等を挙げることができる。また、前記ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。
【0064】
好ましいリン酸基含有有機化合物の具体例としては、3−トリヒドロキシシリルプロピルメチルホスホネート−ナトリウム塩(以下、「HSiP」と略記することがある。)およびニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(以下、「NTP」と略記することがある。)を挙げることができる。
【0065】
前記水熱合成における、リン酸基含有有機化合物の水溶液の濃度は、特に制限はないが、通常、0.01〜50質量%、好ましくは、0.1〜30質量%である。
【0066】
前記リン酸基含有無機化合物としては、MPO、Mn+23n+1、(MIPO、(MII(PO、(MIII(POで示される無機化合物およびそれらのエステル化合物(ただし、Mは水素原子または任意の金属イオン、Mは水素原子または+1価の金属イオン、MIIは+2価の金属イオン、MIIIは+3価の金属イオンを表し、nは2以上の整数を表す。)を挙げることができる。
【0067】
前記リン酸基含有無機化合物の具体例として、無水リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸アルミニウム、リン酸水素アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸水素亜鉛等を挙げることができる。
【0068】
前記水熱合成における、リン酸基含有無機化合物の水溶液の濃度は、特に制限はないが、通常、0.01〜50質量%、好ましくは、0.1〜30質量%である。
【0069】
前記アルミナ薄膜をリン酸基含有化合物の水溶液中で水熱合成する方法としては、例えば、前記リン酸基含有化合物の水溶液が収容された耐熱性の容器に、表面にアルミナ薄膜が形成された基材を入れて、この容器をオートクレーブ内に設置して、150℃以上180℃以下の温度範囲で、10分以上60時間以下、好ましくは30分以上30時間以下の時間で水熱合成する方法を挙げることができる。このとき、容器内にはアルミナ薄膜が浸される程度のリン酸基含有化合物の水溶液が収容されていれば良い。
【0070】
このようにして水熱合成することで親水性薄膜が製造される。容器内から取り出した親水性薄膜が形成された基材は、適宜純水で洗浄される。
【0071】
この発明の親水性薄膜は、ガラス、金属、セラミックス、プラスチック等に適用することができる。この発明の親水性薄膜は、良好な親水性を示し、耐久性に優れるので、防曇性及び防汚性が長期間に渡って必要とされる前記素材に好適に利用される。この発明の親水性薄膜は、住宅用、自動車、及び電車等の窓ガラス、浴室及び洗面所等の鏡、軍事用又は民生用の望遠鏡、双眼鏡及び反射鏡等の表面に形成されることにより、前記窓ガラスや鏡の防曇性及び防汚性を長期間に渡って維持することができる。また、送水管の内面をこの発明の親水性薄膜でコーティングすると、管の内面が親水性となるので、送水負荷が低減されて、送水電力を節減することができる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に詳しく説明する。これらの実施例によってこの発明が限定されることはない。
【0073】
<実施例1>
(親水性薄膜の作製)
以下の手順にしたがって、基材としての無アルカリガラスの表面に親水性薄膜を形成した。
(1)アルミナ薄膜の作製
繊維状アルミナゾルA(川研ファインケミカル社製 アルミナ含有量5.0質量%、繊維長さ1400nm、繊維径4〜5nm)2.00gに純水18.0gを加え、室温で10分間攪拌し、濃度10質量%のHClをpH1になるまで加え、アルミナゾル塗布液Aを得た。
【0074】
無アルカリガラスを中性洗剤で洗浄後、純水でリンスし、エアガンで水滴を除去して乾燥させ、塗布用ガラス基板とした。次に、上記アルミナゾル塗布液Aを洗浄済みの無アルカリガラス基板上にスピンナー法により、回転速度500rpmで5秒間塗布した後に回転数2000rpmで20秒間塗布し、アルミナゲル膜Aを作製した。得られたアルミナゲル膜Aに高圧水銀灯(H1000L、東芝ライテック株式会社製)を用いて紫外線を10分間照射し、アルミナ薄膜Aを得た。
【0075】
(2)アルミナ薄膜の水熱合成
アルミナ薄膜Aを、以下のプロセスで1質量%ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTP)水溶液を用いて水熱合成した。すなわち、アルミナ薄膜Aを1質量%ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTP)水溶液を入れたテフロン(登録商標)内筒に入れて浸漬させた。この内筒をオートクレーブ内に設置し、180℃で4または6時間加熱処理して、それぞれ水熱合成試料A−1またはA−2を得た。加熱後、オートクレーブから試料を取り出し、純水で洗浄して透明試料を得た。
【0076】
(耐久性試験)
実施例1で得られた水熱合成試料A−1及びA−2について、以下の(1)沸騰水耐久試験と(2)耐熱試験を行い、その後に各試料の水に対する接触角を測定することにより耐久性を評価した。試料の水に対する接触角は、自動接触角計 DM−501(協和界面科学株式会社製)を用いて測定した。接触角は2μLの水滴を用いて測定した。
【0077】
水熱合成試料、沸騰水耐久試験後の試料および耐熱試験後の試料の水に対する接触角は、試験後直ちに測定し、さらに2日後および7日後に測定した。結果を表2に示す。
【0078】
(1)沸騰水耐久試験
容量200mLのビーカーに純水150mLを入れて沸騰するまで加熱した。次いで、この沸騰水に水熱合成試料A−1及びA−2を1時間浸漬させた。その後、水熱合成試料A−1及びA−2を沸騰水から取り出し、乾燥させた。
【0079】
(2)耐熱試験
100℃の電気炉に水熱合成試料A−1及びA−2を入れて2時間加熱し、その後自然放冷させた。
【0080】
<実施例2>
実施例1における繊維状アルミナゾルAを繊維状アルミナゾルB(川研ファインケミカル社製 アルミナ含有量5.0質量% 繊維長さ2000nm、繊維径4〜5nm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、アルミナ薄膜Bを作製し、アルミナ薄膜Bを実施例1と同様にして水熱合成を行い、それぞれアルミナ水熱合成試料B−1(180℃/4時間水熱合成)およびB−2(180℃/6時間水熱合成)を得た。これらの試料について実施例1と同様に耐久性試験を行った。
【0081】
<実施例3>
実施例1における繊維状アルミナゾルAを板状アルミナゾルC(川研ファインケミカル社製 アルミナ含有量 5.5質量% 長辺20〜50nm、短辺10〜50nm、厚み5〜20nm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、アルミナ薄膜Cを作製し、アルミナ薄膜Cを実施例1と同様にして水熱合成を行い、それぞれアルミナ水熱合成試料C−1(180℃/4時間水熱合成)およびC−2(180℃/6時間水熱合成)を得た。これらの試料について実施例1と同様に耐久性試験を行った。
【0082】
<実施例4、5、6>
実施例1、2および3における沸騰水耐久試験を1時間から2時間に代えた以外は実施例1と同様に行った。
【0083】
<実施例7、8、9>
実施例1、2および3における耐熱試験を2時間から4時間に代えた以外は実施例1と同様に行った。
【0084】
<比較例1>
実施例1で作製したアルミナ薄膜Aを試料として、実施例1と同様に耐久性試験を行った。
【0085】
<比較例2>
実施例2で作製したアルミナ薄膜Bを試料として、実施例1と同様に耐久性試験を行った。
【0086】
<比較例3>
実施例3で作製したアルミナ薄膜Cを試料として、実施例1と同様に耐久性試験を行った。
【0087】
<比較例4>
実施例1で作製したアルミナ薄膜Aを1質量%ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTP)水溶液に室温で1分間浸漬した。その後、電気炉を用いて250℃で30分加熱して、アルミナ薄膜試料Dを得た。このアルミナ薄膜試料Dを試料として耐久性試験を、実施例1と同様に行った。
【0088】
[XPSスペクトルの測定]
前述した各試料について、X線光電子分光法により、複合型電子分光装置ESCA−5800(ULVAC−PHI社製)を用いてXPSスペクトルを測定した。得られた結合エネルギーデータは、Cs1スペクトルのピークトップを284.6eVとして、帯電補正を行った。P2p及びAl2pスペクトルの結合エネルギー値(eV)でPおよびAlの化学種を評価した。結果を表1に示す。
測定条件は以下の通りである。
X線源:Monochromated−Al−Kα線
光取り出し角度:15〜45°
測定深さ:約2nm
測定エリア:2×0.8mm
測定試料は、試料を適切大に折り割って、そのまま装置にセットした。
【0089】
[平均粗さの測定]
前述した各試料について、試料表面の粗さを走査型プローブ顕微鏡(NanoScope 3a デジタル・インスツルメンツ社製)を用いて測定し、500nmの長さでの十点平均粗さ(Rz)で評価した。
測定条件は以下の通りである。
測定モード:原子間力顕微鏡(AFM)
Scan size:500nm
Scan rate:1Hz
サンプル数:256
カンチレバー:NCH−10V
結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
表1に示されるように、試料A−1〜C−2は、P2pスペクトルのピークトップが133.0eV以上135.0eV以下に、Al2pスペクトルのピークトップが74.0eV以上76.0eV以下に存在した。これらの結果から、これらの試料の表面には、Al−O−P結合が存在することが確認された。
【0093】
一方、試料A〜CにはP2pスペクトルのピークが存在しなかったことから、試料の表面にリン酸イオンが存在しないことが確認された。試料Dは、P2pスペクトルのピークトップが132.7eVに存在し、Al2pスペクトルのピークトップが73.6eVに存在した。これらの結果から、試料Dの表面にはAl−O−P結合が存在しないことが確認された。
【0094】
さらに、表1に示されるように、試料A−1〜C−2、A〜Dは、いずれもその表面の十点平均粗さが20nm以下であり、きわめて平坦な平面であった。
【0095】
表2に示されるように、この発明の範囲内にある試料は、いずれも水熱合成後の試料の水に対する接触角が10°以下であり、超親水性を示した。沸騰水耐久試験後及び耐熱試験後に測定した試料の水に対する接触角は、いずれも20°以下であり、親水性であった。これらの結果から、この発明の範囲内にある試料は、耐久性に優れることが示された。また、水に対する接触角が20°以下の表面を有する薄膜は、通常、防曇性及び防汚性を有することから、この発明の範囲内にある試料は、防曇性及び防汚性を有する。
【0096】
この発明の範囲外にある試料A、B、C、Dは、試料作製直後の試料の水に対する接触角が20°以下であったが、沸騰水耐久試験後及び耐熱試験後に測定した試料の水に対する接触角は、いずれも20°を大幅に超えており、親水性を示さなかった。これらの結果から、試料A、B、C、Dは耐久性に劣っていることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al−O−P結合を有してなり、走査型プローブ顕微鏡を使用して測定された表面の十点平均粗さ(Rz)が20nm未満である親水性薄膜。
【請求項2】
Al−O−P結合が、X線光電子分光法により薄膜表面のXPSスペクトルを測定したときに、133.0eV以上135.0eV以下の範囲内に存在するP2pスペクトルのピークおよび74.0eV以上76.0eV以下の範囲内に存在するAl2pのスペクトルのピークに拠る請求項1に記載の親水性薄膜。
【請求項3】
前記親水性薄膜が、基材表面に設けられたアルミナ薄膜を、リン酸基含有化合物の水溶液中で、水熱合成してなる請求項2に記載の親水性薄膜。
【請求項4】
基材表面に設けられたアルミナ薄膜を、リン酸基含有化合物の水溶液中で、水熱合成する親水性薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記リン酸基含有化合物は、下記式(1)または(2)で示されるリン酸基含有有機化合物若しくはその塩、ならびに、
PO(CHSiX ・・・・(1)
〔RPO(CHNH ・・・・・(2)
〔ただし、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリル基またはO−フェニル基を表し、2個のRは同一であってもよく、又、別異であってもよい。Xはハロゲン、−OHまたは−OR(Rは、アルキル基またはアリル基を表す。)を表す。uは、1〜10の整数を表す。vおよびwは整数を表し、vとwとの和が3である。〕
MPO、Mn+23n+1、(MIPO、(MII(PO、(MIII(POで示される無機化合物およびそのエステル化合物(ただし、Mは水素原子または任意の金属イオン、Mは水素原子または+1価の金属イオン、MIIは+2価の金属イオン、MIIIは+3価の金属イオンを表し、nは2以上の整数を表す。)よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物である請求項4に記載の親水性薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記水熱合成は、150℃以上200℃以下で、10分以上60時間以下の時間で行なわれる請求項4又は5に記載の親水性薄膜の製造方法。

【公開番号】特開2012−172061(P2012−172061A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35430(P2011−35430)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21〜22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテク・先端部材実用化研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(390003001)川研ファインケミカル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】