説明

親水性薬剤を含むモノフィラメント

ポリエステルモノフィラメントおよびポリアミドモノフィラメントを処理するのに適している親水性薬剤を本明細書に開示する。本明細書に開示される処理されたモノフィラメントは、水溶液を表面に塗布する(医薬および化粧料を皮膚に塗布することを含む)ためのモノフィラメントを含むフィラメントおよびブラシ塗布具に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノフィラメントを様々な水溶液および塗布に適したものにする吸収(pick−up)性、保持性および放出性を有する親水性モノフィラメントを記載する。
【背景技術】
【0002】
合成モノフィラメントは、液体を表面に塗布するためのブラシ(化粧料用ブラシおよび塗料刷毛など)の毛材に広く使用されてきた。しかし、合成モノフィラメントは親水性ではない。モノフィラメントが液体化粧料または塗料を含む液体を吸収できるようにするために、モノフィラメントの改質が行われてきた。
【0003】
モノフィラメント(ブラシ用毛材)は、水を吸収できるようにするために、一般にフラッギング(flagged)、末端部の研磨、捲縮、嵩高加工、天然毛との混合が行われる、または空隙を有するブラシに集成される。米国特許第5,128,208号明細書は、フラッギングや尖鋭化が向上し、従って塗料の吸収や放出が改善されるようにモノフィラメントの断面を改質できる方法を示している。
【0004】
また、モノフィラメントが液体を保持できるようにするために、欧州特許第1272070B1号明細書および欧州特許出願公開第2004/0187893A1号明細書に開示されているような空洞(空孔)、または凸部および凹部(米国特許第4,381,325号明細書)を有するようにモノフィラメントの表面を改質できることも示されてきた。凹部を形成する一般的な方法は、強アルカリ処理を使用する化学的尖鋭化である。
【0005】
医薬用および薬用化粧料用塗布ブラシに使用される親水性モノフィラメントの必要が生じた。米国特許出願公開第2007/0160562A1号明細書、国際公開第2007/143568A1号パンフレット、水性薬液の塗布は薬液の効能および安全性に重要である。これらの特許出願は、睫毛の育毛を促進するために、睫毛の生え際にそって眼瞼に医薬を塗布する方法を記載している。的確な送達および特定の量または用量を放出する能力が望ましい。標的に送達されない余分な無駄を防止するために、且つ医薬が眼に入ることを防止するために、皮膚に送達される医薬の量は正確でなければならない。また、医薬の塗布が使用者にとってより容易になるように、医薬が塗布具に吸着される速度も重要である。更に、塗布ブラシ用毛材は滅菌可能で、皮膚と接触するのに安全でなければならず、医薬と反応してはならない。また、毛材は、皮膚に接触したとき、感触が柔軟でなければならない。
【0006】
モノフィラメントが水溶液を吸収できるようにする従来の方法は、医薬の塗布に関する要求を全て満たすのに理想的ではない。例えば、フラッギング、末端部の研磨、または尖鋭化によるモノフィラメントの先端部の改質は、ブラシの先端部の表面積が限られているため、小型の塗布ブラシで水性医薬の小滴を吸収、保持、および放出するのに十分ではない。
【0007】
典型的には、直径の小さいモノフィラメント(<5ミル)の製造中、静電気を低減し、加工性を改善するために、モノフィラメントはシリコーンまたはスリップ剤(slip agents)でコーティングされる。このコーティングによって生じる問題は、シリコーンが疎水性であることである。そのため、このようなコーティングは水を吸着するのに、または水を迅速に吸着し、水を保持し、および/または水を放出するのに好ましくない。水および/または水溶液を容易に吸収し(迅速に吸着し)、放出するモノフィラメントが必要とされている。
【0008】
他の用途で、水溶液または水性廃棄物を吸着するために市販の親水性コーティング剤が使用されてきた。例えば、テキスタイル繊維潤滑剤には、繊維の加工を改善するために使用され、そのうえオムツのトップシートにおける使用などの衛生用途にも使用されるものがある。Goulston Technologies,Inc.(Monroe,NC)から市販されているLurol PP−912は、人造繊維をコーティングするのに使用され、繊維の加工を改善する潤滑剤の役割をする。Lurol PP−912は、また、親水性であり、液体廃棄物を吸着できるため、オムツのトップシートなどにおけるような衛生用途における繊維コーティング剤としても使用される。Goulston Technologies,Inc.(Monroe,NC)製の別のコーティング剤であるLurol PS−9725−NADは、Lurol PP−912と類似の特性を有し、類似の衛生用途および繊維用途に使用される。
【0009】
本発明は、米国特許出願公開第2007/0160562A1号明細書および国際公開第2007/143568A1号パンフレットに記載されているような、医薬の塗布、および他の化粧料または薬用化粧料の塗布に関する要求を満たすモノフィラメントを記載する。吸水性と放水性の好ましいバランスを提供するのに有効な量の親水性薬剤を有する処理されたモノフィラメント、およびコーティング剤の塗布方法を本明細書に開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、(i)ポリマーモノフィラメントと(ii)有効量の親水性薬剤とを含む、処理されたポリマーモノフィラメントを提供することであり、前記薬剤は前記モノフィラメントの吸水および保水を増加させる。
【0011】
本発明の別の目的は、化粧料の塗布、医薬の塗布、または薬用化粧料の塗布を含む様々な水性媒体の塗布に使用される、処理されたモノフィラメントを提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(i)ポリマーモノフィラメントと(ii)有効量の親水性薬剤とを含む、処理されたポリマーモノフィラメントを本明細書に開示するが、前記薬剤は前記モノフィラメントの吸水および保水を増加させる。本明細書に開示されるモノフィラメントは、所望の量の水溶液を確実に的確に送達し、塗布するのに必要な吸水性、保水性、および放水性のバランスを提供する。
【0013】
本明細書で使用する場合、「吸収」は、処理されたモノフィラメントが、水および/または水溶液をモノフィラメント表面に吸着することによって吸い上げる能力を意味する。この用語は、また、モノフィラメントが、処理されたモノフィラメントを含むブラシの中に水および/または水溶液を吸収する能力も含む。
【0014】
本明細書で使用する場合、「保持」は、処理されたモノフィラメントが、処理されたモノフィラメントの表面または処理されたモノフィラメントを含むブラシに十分な量の水および/または水溶液を保持する能力を意味する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「放出」は、処理されたモノフィラメントから所望の標的または表面への水および/または水溶液の移動を意味する。
【0016】
本発明のモノフィラメントは、化粧料の塗布、医薬の塗布、または薬用化粧料の塗布を含む、様々な水性媒体の塗布に使用される。化粧料、医薬、および薬用化粧料の用語は限定的な意味で使用されるものではなく、これらの用語はそれぞれを含む包括的な意味で使用されるものとする。本明細書に開示される処理されたモノフィラメントは他に、水性塗料、歯ブラシまたは歯洗浄液、洗浄液、または隠蔽液にも用いられる。
【0017】
「化粧料」とは、清浄化、美化、魅力を増す、または外見の変化のために、人体に擦り込まれる、注がれる、振り掛けられる、噴霧される、導入されるまたは他の方法で塗布されることが意図された物品を意味する。
【0018】
「医薬」とは、疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防に使用されることが意図された物品、ならびに、ヒトまたは動物の身体の構造またはいずれかの機能に影響を及ぼすことが意図された(食品以外の)物品を意味する。
【0019】
「薬用化粧料」とは、薬物のような効果を有する化粧品を意味する。この用語は、化粧品業界で使用されることがある。「薬用化粧料」の用語は、また、化粧料としてまたは医薬として許容される(即ち、ヒトまたは他の哺乳動物に使用するのに適している)賦形剤(excipient)、担体、または賦形剤(vehicle)に有効成分が入っているものを含む。有効成分は、典型的には、化粧料以外の用途に認可され、新規な消費者用途のために再配合されたものである(例えば、有効成分を認可された用途より低濃度で使用する)。
【0020】
化粧用および医薬用ブラシ塗布具に使用される典型的なモノフィラメントは親水性ではなく、ある種の塗布に関する要求を満たさない。化粧用および医薬用ブラシ塗布具は、水性の化粧料または医薬の塗布に使用される。モノフィラメント表面の親水性を増加させるモノフィラメントが必要とされている。親水性を付与する方法としては、モノフィラメントを有効量の親水性薬剤でコーティングすること、または、フィラメントを押し出す前に有効量の親水性薬剤をポリマー樹脂と混合することが挙げられるが、これらに限定されない。本発明では、モノフィラメントはその表面にコーティング剤を塗布することによって処理される。
【0021】
本発明の親水性コーティング剤は、水溶液に暴露された後もモノフィラメント上に残存するため、水性の化粧料または医薬を塗布するための化粧用塗布具および医薬用塗布具に使用するのに適している。それは、モノフィラメントのコーティングが水溶液に暴露されても損なわれないことを意味する。更に、コーティング剤ならびにコーティングされたモノフィラメントは、ヒトの皮膚と接触するのに適している。
【0022】
処理されたモノフィラメントを含む医薬用塗布具は、少量(液滴または小滴など)の水溶液を吸収(吸着)する能力を有していなければならず、水溶液は、標的またはヒトの皮膚と接触したとき、ブラシから容易に放出されなければならないことが分かる。(i)使用者が吸収時間を長くするまたは短くすることによりばらつきが生じる可能性が少なくなるように、(ii)所望の吸収を達成するのに簡単な指示だけで済むように、および(iii)吸収量に基づいて所望の量が適切に放出されるように、吸収は迅速に起こらなければならない。処理されたモノフィラメントまたは処理されたフィラメントを含む塗布ブラシに目的の量の水溶液が迅速に吸収されることが必要である。
【0023】
本発明の処理されたモノフィラメントは、比較的迅速な水溶液の吸収を示す。目的の量の水溶液が処理されたモノフィラメントまたは処理されたモノフィラメントを含む塗布ブラシに吸着された後、水溶液がモノフィラメントに保持されることが必要である。皮膚または他の標的への水溶液の制御放出を可能にするために、保持は必要である。ブラシから放出される水溶液の量は多過ぎてはならず、さもなければ水溶液が皮膚を流れ落ち、水溶液で処置されることが意図されていない皮膚の領域(目の中など)と接触する可能性がある。更に、処理されたモノフィラメントからの水溶液の放出は、また、水溶液がモノフィラメントから離脱し、目的とする標的、即ち、ヒトの眼瞼または皮膚と接触するのに(即ち、表面または皮膚が乾燥したままにならないようにまたは乾燥した感じがあるままにならないように)十分でなければならない。
【0024】
本明細書に開示される、処理されたモノフィラメントの具体的な用途の1つは、睫毛の貧毛症の治療のために眼瞼の睫毛の生え際のところに医薬を塗布するための塗布具における使用である。本明細書に開示される、処理されたモノフィラメントは、1)処理されたモノフィラメントがヒトの皮膚と接触するのに許容される、2)化粧品および医薬品と適合性のある親水性薬剤での処理、3)表面処理剤は、モノフィラメント表面に残存するコーティング剤である、4)医薬用および/または化粧料用に認可されるのに適格なコーティング成分およびモノフィラメント成分の使用、5)処理されたモノフィラメントが水溶液および/または水性製品を容易に、好ましくは1秒未満で吸収する、6)処理されたモノフィラメントが十分な量の医薬を保持し、皮膚に放出する、7)処理されたモノフィラメントが医薬を皮膚に放出し過ぎないこと(医薬を放出し過ぎると、皮膚の意図されていない領域(例えば、目)が医薬に暴露される可能性がある)を含む、この特定の用途のための特有の要件を満たす。
【0025】
本明細書に開示される処理されたモノフィラメントは、モノフィラメント表面に有効量の親水性薬剤を塗布することによって処理される。有効量の親水性薬剤とは、所望の吸収性を、所望の保持性、および好ましくは所望の放出性と共に付与するのに必要な量である。必要に応じて最小量の親水性薬剤を使用することが好ましい。モノフィラメントに塗布される親水性薬剤の濃度は、供給源から得られる濃度によって決まり、有効量によって所望の吸収および所望の放出が得られる限り、一般に重要ではない。本明細書に開示される処理されたモノフィラメントは、シリコーンまたは類似のスリップ剤でコーティングされたモノフィラメントよりも、吸水性および放水性が改善されている。本明細書に開示されるコーティングされたモノフィラメントは、化粧料、医薬、歯洗浄液、家庭用、工芸用、工業用、芸術用および自動車用塗料、ならびに隠蔽液(印刷用修正液など)に使用されるものを含む様々な水溶液を塗布するのに有用であるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明のモノフィラメントは、当該技術分野で既知のポリマー材料から調製される。これらには、(i)以下に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、Hytrel(登録商標)熱可塑性ポリエステル(TPE)を含むポリエステル、および(ii)以下に限定されるものではないが、ナイロン6、ナイロン6,6、およびナイロン6,12を含むポリアミドが挙げられる。
【0027】
本明細書に開示される、ポリエステルおよびポリアミドから調製されたモノフィラメントは、モノフィラメントを向上させるようにまたは使用者に対する魅力が増すように、とりわけ、ヒトの皮膚に使用される処理されたモノフィラメントが得られるように改質されてもよい。改質には、モノフィラメントに柔軟性を付与するために行われるものもある。これらの改質には、所望の色を加えること、尖鋭化(tipping)、フェザリング(feathering)、および異形断面(shaped cross-section)の形成が挙げられる。
【0028】
尖鋭化は、機械的に達成されてもまたは化学的に達成されてもよい。機械的尖鋭化は、モノフィラメントを回転砥石上を通過させることによって達成されてもよい。モノフィラメントを尖鋭化する一般的な方法には、米国特許第4,381,325号明細書に記載されている化学尖鋭化として知られている方法がある。本発明のモノフィラメントに尖鋭化を施す場合、尖鋭化プロセスの後にモノフィラメントを親水性薬剤で処理することが好ましい。このような処理は、好ましくは、本実施例に例示するように、尖鋭化されたフィラメントを親水性薬剤でコーティングすることである。
【0029】
柔軟性を得、剛性を低減するためにフェザリングが得られるように、モノフィラメントに、異形断面(三室(trilocular)または四室(tetralocular)など)の形成を含む他の改質を行ってもよい。別の好適な改質は、剛性が低減するように、押出に適した紡糸口金を使用して中空のモノフィラメントを調製することである。このような改質は当該技術分野で一般に知られており、例えば、米国特許第5,128,208号明細書および米国特許第4,279,053号明細書に記載されており、これらは参照により本明細書に援用される。
【0030】
本発明の有用な親水性薬剤は、選択されたポリマー材料と適合性があり、親水性、水溶液の吸収、保持、および、好ましくは放出、より好ましくは水溶液の予測可能なまたは一定した放出を示すものである。好適な親水性薬剤としては、Lurol PS−9725 NADおよびLurol PP−912が挙げられ、これらは共にGoulston Technologies,Inc.(Monroe,North Carolina)から市販されている。
【0031】
モノフィラメントの処理法により、モノフィラメントの表面でコーティング剤のむらがないようにコーティング剤が塗布されることが好ましい。
【実施例】
【0032】
実施例I
この実施例では、親水性薬剤で処理した場合のPBTモノフィラメントとナイロン6,12モノフィラメントの吸水性の改善を例示する。表Iおよび表IIにデータを記載する。
【0033】
サンプルA、B、C、D、EおよびFのモノフィラメントは、PBTポリエステル(BASFによって提供されるUltradur B4500)を使用して製造し、モノフィラメントに典型的な押出法を使用して押し出した。二軸押出機(Berstorff製の43mm二軸押出機)を使用して、PBT樹脂を黒色の着色剤(AmerichemによりPBTマスターバッチ(29290−A1)として提供されるPigment Black 7)と共に溶融した。溶融ポンプ(Zenith pumps製)を使用し、直径0.014”の円形キャピラリを360本含む紡糸口金プレートを通して258℃の温度でモノフィラメントを押し出した。次いで、得られたモノフィラメントを急冷し、最終直径0.0032”(0.081mm)に延伸した。次いで、得られたモノフィラメントを弛緩させた。弛緩工程は、モノフィラメントを165℃に75秒間加熱する調整プロセスを含んだ。
【0034】
親水性薬剤で処理しなかったサンプルAを直径10”のスプールに巻き取った。得られたスプールは、直径0.081mmの円形モノフィラメント360本からなるフィラメントロープを含んだ。
【0035】
サンプルB、C、DおよびEも、親水性薬剤で処理せずに直径10”のスプールに巻き取った。得られたスプールは、直径0.081mmの円形モノフィラメント360本からなるフィラメントロープを含んだ。
【0036】
サンプルBでは、モノフィラメントをコーティングすることにより、360本のモノフィラメントからなるストランドフィラメントロープを処理した。スプールから巻き出し、フィラメントロープを40Cの脱塩水中0.26(重量)%のDow Corning(R)24 Emulsionの分散体に30分間浸漬することによってコーティングを行った。Dow Corning(R)24は35%シリコーンエマルションである。得られたモノフィラメント表面上のシリコーン濃度は、この直径の市販のモノフィラメントに典型的な濃度であった。
【0037】
サンプルCでは、モノフィラメントをコーティングすることにより、360本のモノフィラメントからなるストランドフィラメントロープを処理した。スプールから巻き出し、フィラメントロープを40Cの脱塩水中0.35(重量)%のLurol PS−9725 NAD(Goulston Technologies,Inc.により提供される)の分散体に30分間浸漬することによってコーティングを行った。
【0038】
サンプルDでは、モノフィラメントをコーティングすることにより、360本のモノフィラメントからなるストランドフィラメントロープを処理した。スプールから巻き出し、フィラメントロープを40Cの脱塩水中0.2(重量)%のLurol PS−9725 NADの分散体に30分間浸漬することによってコーティングを行った。
【0039】
サンプルEでは、モノフィラメントをコーティングすることにより、360本のモノフィラメントからなるストランドフィラメントロープを処理した。スプールから巻き出し、フィラメントロープを40Cの脱塩水中1.5(重量)%のLurol PS−9725 NADの分散体に30分間浸漬することによってコーティングを行った。浸漬後、コーティングされたフィラメントを空気乾燥させた。
【0040】
サンプルFは、モノフィラメントをコーティングすることにより処理した。スプールに巻き取る前に、Lurol PS−9725 NADを使用してコーティングを行った。Lurol PS−9725 NAD(Goulston Technologies,Inc.により提供される)を40Cの脱塩水中に0.15重量%で分散させた。ロールをコーティング剤の浴に部分的に浸漬して逆回転させることによってコーティング剤を塗布した。フィラメントロープを、逆回転ロール上を通過させた。コーティング剤の塗布は、フィラメントロープの速度と逆回転ロールの速度により制御した。コーティング剤を塗布した後、得られたモノフィラメントを直径10”のスプールに巻き取った。得られたスプールは、直径0.081mmの円形モノフィラメント360本からなるフィラメントロープを含み、フィラメントロープの全長がLurol PS−9725 NADでコーティングされた。
【0041】
以下の手順を使用してサンプルA、B、C、D、EおよびFのモノフィラメントの吸水を評価した。まず、モノフィラメント0.070グラムを集成し、結束した束にした。得られた束は長さ約1.5インチであった。2番目に、束の重量を測定した。3番目に、重さ0.0345グラムの水、35マイクロリットルをピペットで束に加えた。4番目に、水が全て束に浸み込む時間を測定した。
【0042】
表Iは、有効量の親水性薬剤で処理されたモノフィラメント(即ち、Lurol PS−9725 NADでコーティングされたPBTモノフィラメント)の吸水の改善を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
サンプルG、H、I、JおよびKのモノフィラメントは、ナイロン6,12(DuPontにより提供されるZytel 158)で製造し、モノフィラメントに典型的な押出法を使用して押し出した。単軸押出機(Davis Standard製の2.5インチ単軸押出機)を使用してナイロン6,12樹脂を溶融した。溶融ポンプ(Zenith pumps製)を使用し、直径0.014”の円形キャピラリを440本含む紡糸口金プレートを通して248℃の温度でモノフィラメントを押し出した。次いで、得られたモノフィラメントを急冷し、最終直径0.0025”(0.064mm)に延伸した。次いで、得られたモノフィラメントを弛緩させた。弛緩工程は、モノフィラメントを170℃に75秒間加熱する調整プロセスを含んだ。
【0045】
親水性薬剤で処理しなかったサンプルGを直径10”のスプールに巻き取った。得られたスプールは、直径0.064mmの円形モノフィラメント220本からなるフィラメントロープを含んだ。
【0046】
サンプルH、I、J、およびKを親水性薬剤で処理せずに直径10”のスプールに巻き取った。得られたスプールは、直径0.064mmの円形モノフィラメント220本からなるフィラメントロープを含んだ。
【0047】
サンプルHでは、モノフィラメントをコーティングすることにより、220本のモノフィラメントからなるストランドフィラメントロープを処理した。スプールから巻き出し、フィラメントロープを40Cの脱塩水中0.26(重量)%のDow Corning(R)24 Emulsionの分散体に30分間浸漬することによってコーティングを行った。Dow Corning(R)24は35%シリコーンエマルションである。得られたモノフィラメント表面上のシリコーン濃度は、この直径の市販のモノフィラメントに典型的な濃度であった。
【0048】
サンプルIでは、モノフィラメントをコーティングすることにより、220本のモノフィラメントからなるストランドフィラメントロープを処理した。スプールから巻き出し、フィラメントロープを40Cの脱塩水中0.035(重量)%のLurol PS−9725 NAD(Goulston Technologies,Inc.により提供される)の分散体に30分間浸漬することによってコーティングを行った。
【0049】
サンプルJでは、モノフィラメントをコーティングすることにより、220本のモノフィラメントからなるストランドフィラメントロープを処理した。スプールから巻き出し、フィラメントロープを40Cの脱塩水中0.2(重量)%のLurol PS−9725 NAD(Goulston Technologies,Inc.により提供される)の分散体に30分間浸漬することによってコーティングを行った。
【0050】
サンプルKでは、モノフィラメントをコーティングすることにより、220本のモノフィラメントからなるストランドフィラメントロープを処理した。スプールから巻き出し、フィラメントロープを40Cの脱塩水中1.5(重量)%のLurol PS−9725 NAD(Goulston Technologies,Inc.により提供される)の分散体に30分間浸漬することによってコーティングを行った。浸漬後、コーティングされたモノフィラメントを空気乾燥させた。
【0051】
以下の手順を使用してサンプルG、H、I、JおよびKのモノフィラメントの吸水を評価した。まず、モノフィラメント0.070グラムを集成し、結束した束にした。得られた束は長さ約1.5インチであった。2番目に、束の重量を測定した。3番目に、重さ0.0345グラムの水、35マイクロリットルをピペットで束に加えた。4番目に、水が全て束に浸み込む時間を測定した。
【0052】
表IIは、有効量の親水性薬剤で処理されたモノフィラメント(即ち、Lurol PS−9725 NADでコーティングされたナイロン6,12モノフィラメント)の吸水の改善を示す。
【0053】
【表2】

【0054】
以下の方法を使用して、モノフィラメント上のコーティング剤の重量パーセント(%)を測定した。まず、化学天秤で空の清浄なアルミニウムトレイの重量を測定し、小数点第4位にまるめた。2番目に、コーティングされたモノフィラメント10グラムの重量を測定し、アルミニウムトレイに加えた。3番目に、イソプロパノールまたはキシレン100mlをアルミニウムトレイに加えた。イソプロパノールはLurol PS−9725 NADの溶媒として使用した。キシレンはシリコーンの溶媒として使用した。4番目に、モノフィラメントを溶媒に1時間浸漬した。5番目に、モノフィラメントを溶媒で2〜3回すすぎ、アルミニウムトレイから取り出した。6番目に、アルミニウムトレイと溶媒を換気フードに入れ、一晩揮発させた。7番目に、抽出されたコーティング剤を有するアルミニウムトレイの重量を測定し、コーティング剤のパーセンテージを算出した。
【0055】
実施例II
サンプルA−Kを実施例Iに記載のように調製した。
以下の手順を使用して、様々なコーティング剤を有するモノフィラメントの水を保持する能力を、放出される水の測定に基づいて評価した。まず、モノフィラメント0.070グラムを集成し、結束した束にした。得られた束は長さ約1.5インチであった。2番目に、束の重量を測定した。3番目に、重さ0.0345グラムの水、35マイクロリットルをピペットで束に加えた。4番目に、0.0345グラムの水を全てモノフィラメントの束に浸み込ませた。5番目に、濡れた束でヒトの手の裏に1インチの線を引いた。6番目に、束の重量を測定した。7番目に、束が放出する水の量を算出した。
【0056】
表IIIおよび表IVは、モノフィラメントの保水性に及ぼすコーティング剤の影響を示すために、ヒトの手に放出される水のパーセンテージの測定に基づく保水を示す。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリマーモノフィラメントと(ii)有効量の親水性薬剤とを含む、処理されたポリマーモノフィラメントであって、前記薬剤が前記モノフィラメントの吸水および保水を増加させる、処理されたポリマーモノフィラメント。
【請求項2】
前記親水性薬剤が化粧料、医薬、薬用化粧料に使用するのに適している、請求項1に記載のモノフィラメント。
【請求項3】
前記モノフィラメントを前記親水性薬剤でコーティングすることによって処理される、請求項2に記載のポリマーモノフィラメント。
【請求項4】
シリコーン処理されたモノフィラメントよりも吸水が改善されている、請求項1に記載のコーティングされたモノフィラメント。
【請求項5】
ポリエステルまたはポリアミドから選択されるポリマーを含む、請求項1に記載のモノフィラメント。
【請求項6】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、および熱可塑性ポリエステル(TPE)からなる群から選択される、請求項4に記載のモノフィラメント。
【請求項7】
前記ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン6,6、およびナイロン6,12からなる群から選択される、請求項4に記載のモノフィラメント。
【請求項8】
尖鋭化されている、請求項1または2に記載のモノフィラメント。
【請求項9】
異形断面を有する、請求項1または2に記載のモノフィラメント。
【請求項10】
ブラシまたは塗布具に使用される、請求項1に記載のモノフィラメント。
【請求項11】
ブラシまたは塗布具である、請求項1または3に記載のモノフィラメントを含む製造物品。
【請求項12】
前記ブラシまたは塗布具が水性の化粧液または薬液の塗布に使用できる、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記ブラシまたは塗布具が水性の塗料、隠蔽液、または歯洗浄組成物に使用できる、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記コーティング剤が、ヒトの皮膚と接触するのに適している、請求項1に記載のモノフィラメント。

【公表番号】特表2012−510003(P2012−510003A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537675(P2011−537675)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/065480
【国際公開番号】WO2010/060017
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】