説明

親疎水異方性板状粒子及びその製造方法、並びにそれからなる乳化剤

【課題】一つの板状粒子について、その一方の面と他方の面とが、親水性・疎水性を異にする親疎水異方性板状粒子及びその製造方法、並びにそれからなる乳化剤、乳化助剤を提供する。
【解決手段】アクリル系重合体の板状粒子であって、該板状粒子の一方の面Aと他方の面Bのそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上ある親疎水異方性板状粒子である。具体的には一方の表面に親水性基が配列し、他方の表面に疎水性基が配列したアクリル系共重合体或いはアクリル系共重合体混合物の板状粒子などである。アクリル系共重合体又はアクリル系共重合体混合物を溶剤に溶解し、この溶液を前記溶剤と混和しない液体表面上に展開して薄膜を形成させ、次いで、該薄膜を取り出し、その後該薄膜から溶剤を除去し、粉砕して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親疎水異方性板状粒子、すなわち、一つの板状粒子について、その一方の面と他方の面とが、親水性・疎水性を異にする板状粒子に関する。また、本発明は、親疎水異方性板状粒子の製造方法、親疎水異方性板状粒子からなる乳化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粒子の表面を他の微細粒子で被覆するなどして多機能を付与した複合粒子が種々提案されており、近年は、一つの粒子に異方性を持たせた異方性粒子が提案されている。例えば、高分子粒子の片側表面と他方の片側表面とが異なる性能(例えば、親水性と疎水性、正電荷と負電荷)を有する粒径0.01〜10000μmの表面異方性高分子粒子が提案され、この表面異方性高分子粒子は、高分子粒子の片側表面を薬剤で処理し、次いでもう片側を別の薬剤で処理するか或いは薬剤で処理しないでおくことによって製造するものである(特許文献1)。
【0003】
また、シリコーン樹脂粉末、アクリル樹脂粉末、ポリエチレン樹脂粉末、ナイロン樹脂粉末などの基粉末の粒子表面が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛などの親水性物質によって、局所において緻密に被覆されている異方性粒子が提案され、また、この異方性粒子を、上記の基粉体を含む油中水型エマルションの内水相で親水性物質を調製して親水性物質で基粉体の表面を局所において緻密に被覆して製造することが提案されている(特許文献2)。更に、溶解度パラメーターが異なる2種以上のポリマーからなる多相ポリマー微粒子を製造し、この多相ポリマー微粒子を形成する一部のポリマーを選択的に除去する形状異方性粒子の製造方法が提案されている(特許文献3)。
【0004】
また、従来、樹脂の微細粒子の製造方法は種々提案されているが、その一つとして、スチレン、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルの単独重合体或いはこれらと他のモノマーとの共重合体などの線状ポリマーを有機溶剤に溶解した重合体溶液を、常温で液体である液層の液面上に膜状に展開させ、脱溶剤して前記液層の上に薄膜を形成させ、この薄膜を粉砕して板状のポリマー微粉末を製造する方法が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3567269号公報
【特許文献2】特開2007−302823号公報
【特許文献3】特開2008−74915公報
【特許文献4】特許第3825650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一つの板状粒子について、その一方の面と他方の面とが、親水性・疎水性を異にする異方性板状粒子、すなわち親疎水異方性板状粒子及びその製造方法、並びにそれからなる乳化剤、乳化助剤を提供することを目的とする。更に、この親疎水異方性板状粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アクリル系重合体の板状粒子であって、該板状粒子の一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上あることを特徴とする親疎水異方性板状粒子である。このアクリル系重合体は、親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体であってもよい。このアクリル系共重合体は、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、下記一般式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素またはメチル基を示し、Xは、炭素数2〜5の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、nは1〜200の数を示す)
で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとのアクリル系共重合体が好ましい。
【0010】
また、上記のアクリル系重合体は、親水性基を有するアクリル系共重合体と、疎水性基を有するアクリル系共重合体との混合物であってもよい。この親水性基を有するアクリル系共重合体は、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルとビニルピロリドン又はポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体が好ましく、また、疎水性基を有するアクリル系共重合体は、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと前記一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとの共重合体である疎水性基を有するアクリル系共重合体が好ましい。
【0011】
上記の親疎水異方性板状粒子は、その一方の面がアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した球状粒子で形成された凹凸面であってもよい。すなわち、形状異方性板状粒子であってもよい。この場合、アクリル系重合体は、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと前記一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとの共重合体が好ましく、球状粒子はシリカ粒子が親疎水異方性の点で好ましい。また、板状粒子の厚み(A)と球状粒子の平均粒子径(B)の比(A)/(B)が、0.025〜10が好ましい。
【0012】
本発明の親疎水異方性板状粒子において、板状粒子の平均粒子径は10.0〜70.0μmが好ましく、板状粒子のアスペクト比(平均粒子径/平均厚み)は、1〜140が好ましい。本発明の親疎水異方性板状粒子は、乳化剤又は乳化助剤に有用である。また、本発明は、この親疎水異方性板状粒子を乳化剤又は乳化助剤として配合した化粧料である。
【0013】
本発明は、上記の親疎水異方性板状粒子の製造方法にも係わる。すなわち、本発明は、アクリル系重合体を溶剤に溶解し、この溶液を前記溶剤と混和しない液体表面上に展開して薄膜を形成させ、次いで、該薄膜を取り出し、その後該薄膜から溶剤を除去し、粉砕することを特徴とする上記の親疎水異方性板状粒子の製造方法である。このアクリル系重合体は、前記した親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体、或いは親水性基を有するビニル単量体を共重合成分とするアクリル系共重合体と、疎水性基を有するビニル単量体を共重合成分とするアクリル系共重合体との混合物が好ましく用いられる。また、球状粒子を有する親疎水異方性板状粒子は、上記のアクリル系重合体を溶剤に溶解した溶液中に球状粒子を添加して分散溶液を調製し、これを同様に薄膜化し、粉砕して製造することができる。上記の溶剤としては、酢酸エチル及び/又はメチルエチルケトンが好ましく、上記の液体は水が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の親疎水異方性板状粒子は、板状粒子の一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上ある。そのため、親疎水異方性板状粒子は、その粒子自体が界面活性を呈し、乳化剤或いは乳化助剤として有用である。そして、良好なピッカリングエマルションを形成でき、このピッカリングエマルション組成物は皮膚外用剤、化粧料に好適である。また、皮膚外用剤や化粧料などに界面活性化合物を乳化剤として配合するのが不都合な場合は、この親疎水異方性板状粒子は乳化剤或いは乳化助剤として特に有用である。また、その一方の面がアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した球状粒子で形成された凹凸面である親疎水異方性板状粒子は、両表面の形状が異なるため、光反射性などで異方性があり、例えば化粧料に配合することにより、乳化効果の他に、特異な反射効果をも付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の親疎水異方性板状粒子の一例の外形を示す斜視図である。
【図2】本発明の球状粒子を有する親疎水異方性板状粒子の一例の断面の模式図である。
【図3】水/シリコーン油/親疎水異方性板状粒子の3成分系相図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で言う、親疎水異方性板状粒子とは、一つの板状粒子について、その一方の面と他方の面とが親水性、疎水性を異にする板状粒子をいう。図1は、本発明の異方性板状粒子の一例の外形を示す斜視図である。1はアクリル系重合体からなる親疎水異方性板状粒子である。そして、本発明の親疎水異方性板状粒子は、該板状粒子の一方の面であるA面と、他方の面であるB面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上ある。通常、一方の面のA面が親水性であれば、その反対面のB面は疎水性にするが、両面共に親水性、或いは疎水性でもよい。例えば、板状粒子の両面が疎水性であっても、その一方の面の疎水性が他方の面の疎水性より著しく強く、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上あるものも本発明の親疎水異方性板状粒子である。接触角は、接触角測定装置(Dropmaster DM500 協和界面科学株式会社製)、液滴法(θ/2法)を用いて、精製水2.0μLをサンプル面に滴下した後、1.0秒後の接触角を測定した値である。
【0017】
本発明の親疎水異方性板状粒子はアクリル系重合体からなっている。本発明で用いるアクリル系重合体は、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルから選ばれた単量体の単独重合体又はこれら共重合体、或はその他の単量体との共重合体が好ましく用いられる。これらの重合体は、薄膜を製造しやすく、したがって板状粒子を製造しやすい利点がある。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アククリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、メタクリル酸アルキルエステルとしてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの単独重合体又は共重合体が用いられる。
【0018】
本発明で用いるアクリル系重合体は、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと、親水性基を有するビニル単量体及び/又は疎水性基を有するビニル単量体との共重合体である。そして、アクリル系重合体として、メタクリル酸メチル単位を50質量%以上含有するメタクリル樹脂を用いると、透明性、展延性、付着性等に優れた板状粒子が得られやすい。なお、メタクリル酸メチル単位を75質量%〜99質量%と、アクリル酸アルキル類単位を1質量%〜25質量%含むメタクリル樹脂は、透明性に特に優れ、また有機溶剤に溶解しやすいので好ましい。また、このメタクリル樹脂の平均重合度が約600以上で1300以下であると、重合体溶液の溶液粘度が低く、そのため厚さの薄い薄膜、ひいては厚さの薄い板状粒子が得られやすい。
【0019】
本発明の本発明の親疎水異方性板状粒子は、たとえば、(1)親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体からなり、一方の表面に該アクリル系共重合体中の親水性基が配列し、他方の表面に該アクリル系共重合体中の疎水性基が配列した板状粒子である。また、(2)親水性基を有するアクリル系共重合体と、疎水性基を有するアクリル系共重合体との混合物からなり、一方の表面に混合物中の親水性基が配列し、他方の表面に混合物中の疎水性基が配列した板状粒子である。また(3)一方の面が親水性基又は疎水性基を有するアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した疎水性又は親水性の球状粒子の凹凸面である板状粒子である。そして、これらの板状粒子の一方の面と他方の面とのそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上になるようにする。
【0020】
前記(1)の親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体からなる親疎水異方性板状粒子の場合、このアクリル系共重合体としては、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと親水性を有する単量体と疎水性基を有する単量体との共重合体が用いられる。そして、親水性を有する単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールメチルアクリレート、ビニルピロリドンなどが挙げられる。また、疎水性基を有する単量体としては、例えば前記の一般式(1)で示されるようなジメチルポリシロキサンマクロモノマーなどのビニル基を有するシリコーン化合物が挙げられる。この共重合体の具体例としては、メタクリル酸メチル98モル%、アクリル酸メチル1モル%、ポリエチレングリコールメチルアクリレート1モル%の組成の共重合体が挙げられる。また、疎水性が著しく強い基と疎水性が弱い基を有する例として、メタクリル酸メチル98モル%、アクリル酸メチル1モル%、前記の一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマー1モル%の組成の共重合体が挙げられる。
【0021】
前記(2)の親水性基を有するアクリル系共重合体と、疎水性基を有するアクリル系共重合体との混合物からなる親疎水異方性板状粒子の場合、親水性基を有するアクリル系共重合体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールメチルアクリレート、ビニルピロリドンなどの親水性を有する単量体とアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルの共重合体である。また、疎水性基を有するアクリル系共重合体としては、例えば前記の一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーなどのビニル基を有するシリコーン化合物などの疎水性基を有する単量体とアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルの共重合体である。
【0022】
前記(3)の一方の面が親水性基又は疎水性基を有するアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した疎水性又は親水性の球状粒子の凹凸面である親疎水異方性板状粒子の場合、アクリル系重合体としては、例えば、上記の(2)で述べた親水性基を有するアクリル系共重合体又は疎水性基を有するアクリル系共重合体が用いられる。また、球状粒子は、例えばシリカ粒子、シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子などが用いられ、これらより一種又は二種以上を適宜用いる。親水性の球状粒子としては球状シリカ粒子が好ましい。また、球状粒子を親水化処理あるいは疎水化処理して適用することも可能である。球状粒子は、平均粒子径1.0〜10.0μmのものが好ましい。なお、本発明において、平均粒子径の測定は、レーザー型乾式粒度分布測定装置(セイシン企業社製 PRO7000S)を用いた。
【0023】
アクリル系重合体として、前記一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーを共重合した重合体を用いると、このアクリル系重合体は疎水性が増大する。また、球状粒子としてシリカ粒子を用いると、球状粒子で形成された凹凸面の親水性が大きくなる。そのため、アクリル系重合体で形成された平滑面と、球状粒子で形成された凹凸面の両者の接触角の角度差が15度以上の異方性板状粒子を得ることができる。この際、シリカ粒子は粒子径の大きい平均粒子径2〜5μmのものが、親水性が大きくなり好ましい。
【0024】
図2は、本発明の親疎水異方性板状粒子の一例の断面の模式図である。2は疎水性基を有するアクリル系重合体である。3は親水性球状粒子である。親疎水異方性板状粒子の一方の面aは疎水性基を有するアクリル系重合体2で形成された平滑面である。他方の面bは、疎水性基を有するアクリル系重合体2から突出した親水性球状粒子3で形成された凹凸面である。したがって、この親疎水異方性板状粒子は、形状において異方性を有する、いわゆる形状異方性板状粒子でもある。この平滑面aの平滑度は、凹凸差が50nm以下(表面形状粗さ測定:非接触型三次元光干渉式表面粗さ測定装置WYKO NT-1100を用い、測定モードPSI、測定範囲50倍(0.09×0.12mm)の条件にて測定)が好ましい。また、凹凸面bは、アクリル系重合体表面とそこから突出した球状粒子との凹凸差で表わした場合、0.8μm以上の凹凸差が好ましい。この凹凸差は、球状粒子の粒径で異なり、実験によれば、粒子径最小範囲が1.0μmの球状粒子を用いた場合、その凹凸差は、球状粒子の一部がアクリル系重合体表面に埋没し固着しているため、1.0μmよりは小さくなる。
【0025】
本発明の親疎水異方性板状粒子の大きさは、平均粒子径10〜70μmが好ましいが、具体的には、使用目的によって決められる。化粧料に配合する場合、好ましくは10.0〜50.0μm、より好ましくは10.0〜30.0μmである。また、そのアスペクト比(平均粒子径/平均厚み)は1〜140である。
【0026】
本発明の親疎水異方性板状粒子は、一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上あるという親水性、疎水性に関し異方性を有する。すなわち、この親疎水異方性板状粒子は、一方の面が親水性であり、他方の面が疎水性であって、この異方性板状粒子が水相と油相の2相間の界面に吸着し、これによって安定化されたエマルジョンが形成される。接触角の角度差が15度未満では、界面への吸着に劣り、乳化不良を起こすため、本発明の目的を達成しない。本発明の親疎水異方性板状粒子は粉体乳化剤、粉体乳化助剤として用いられ、O/W型、W/O型の乳化物を調製可能である。そして、これを粉体乳化剤に用いてピッカリングエマルションを生成させることができる。そして、皮膚外用剤や化粧料の乳化に有用である。
【0027】
図3は、水/シリコーン油/親疎水異方性板状粒子の3成分系相図である。親疎水異方性粒子(実施例5)の粉体乳化(Pickering Emulsion)能を確認するために、親疎水異方性粒子、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製 KF−96(6CS))、水の3成分系における相図を作成した。実験方法は、ジメチルポリシロキサンに親疎水異方性板状粒子をデスパー3500rpmにて分散後、精製水を徐々に添加して、各状態を光学顕微鏡にて観察した。図3において、粉体状態とは、連続相が親疎水異方性板状粒子である。ネットワーク状態とは、キャピラリー乃至スラリー状で、連続相がジメチルポリシリキサン又は親疎水異方性板状粒子(どちらか分からない)である。図3において、分散状態とは、連続相であるジメチルポリシロキサン中に親疎水異方性板状粒子及び水が分散されている。O/Wとは、連続相が水であり、乳化滴を形成する。W/Oとは、連続相がジメチルポリシロキサンであり、乳化滴を形成する。分離状態とは、連続相が水、またはジメチルポリシロキサンであり、親疎水異方性板状粒子の造粒粒子を形成する。
【0028】
次に、本発明の親疎水異方性板状粒子の製造方法について説明する。前述した(1)親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体からなり、一方の表面に該アクリル系共重合体中の親水性基が配列し、他方の表面に該アクリル系共重合体中の疎水性基が配列した親疎水異方性板状粒子の場合、及び前述した(2)親水性基を有するアクリル系共重合体と、疎水性基を有するアクリル系共重合体との混合物からなり、一方の表面に混合物中の親水性基が配列し、他方の表面に混合物中の疎水性基が配列した親疎水異方性板状粒子の場合は、それぞれのアクリル系共重合体或いはアクリル系共重合体混合物を溶剤に溶解し、該溶液を前記溶剤と混和しない液体表面上に展開して薄膜を形成させ、次いで、該薄膜を取り出し、その後該薄膜から溶剤を除去し、粉砕することにより製造できる。また、前述した(3)一方の面が親水性基又は疎水性基を有するアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した疎水性又は親水性の球状粒子の凹凸面である親疎水異方性板状粒子の場合は、親水性基又は疎水性基を有するアクリル系重合体を溶剤に溶解し、これに球状粒子を添加して分散溶液を調製し、該分散溶液を前記溶剤と混和しない液体表面上に展開して薄膜を形成させ、次いで、該薄膜を取り出し、その後該薄膜から溶剤を除去し、粉砕することにより製造できる。球状粒子の添加量は、アクリル系重合体溶液の5〜30質量%である。上記の「溶剤と混和しない液体」は、溶剤の溶解度が50質量%以下である液体(液体に対する溶剤の溶解度が50質量%以下)が好ましく用いられる。
【0029】
これらの製造方法において、上記のアクリル系重合体の溶解に用いる有機溶剤は、炭素数2〜8のケトン類又はエステル類の溶剤、例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。これらは、2種類以上を混合して、液体との相溶性を調整した混合溶剤にして用いることができる。アクリル系重合体溶液は、例えばポリマー濃度が5〜30質量%となるようにアクリル系重合体を有機溶剤に溶解することで製造できる。このアクリル系重合体溶液は約5〜50パスカルセコンド(Pa・S)(約50〜500センチポイズ)の溶液粘度(20℃)を有することが好ましい。
【0030】
このアクリル系重合体溶液を、常温の液体(溶剤と混和しない液体)の液層の液面上に膜状に展開させ、揮発や液体への移行により脱溶剤して、液層の上にアクリル系重合体の薄膜を形成させる。アクリル系重合体溶液を液面上に膜状に展開させるのは、液体の液面上に、アクリル系重合体溶液を滴下し、浮上展開させることにより、容易に行える。薄膜の厚さ、ひいては板状粒子の厚さは、液層の液面に滴下する重合体溶液の量、粘度などによって調整する。アクリル系重合体の量が、液層の液面1m2当たり0.1g〜50gとなるように重合体溶液を液層の上に展開させると、約0.1μm〜50μmの厚さを有する薄膜、ひいては板状粒子が得られる。
【0031】
上記の液層に用いる液体は、溶剤と混和しない液体で、水、炭素数1〜4のアルコール(メタノール、エタノール等)、或いはアルコール類と水とを混合した水溶液が挙げられる。取り扱い易さ、コスト、薄膜の製造し易さ等の点から、水を70質量%以上、好ましくは90質量%以上含むものが好ましい。また、水溶性の無機塩類を水に溶解した無機塩類水溶液は、比重を1以上に調整し易いので、液層として用いると薄膜を製造し易い。無機塩類の例は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等である。無機塩類は、水100質量部に対して、約5〜50質量部の割合で用いることができる。液層の温度は、0℃から30℃の範囲であることが好ましい。特に10℃から25℃の範囲が薄膜の形成性も良く、また作業性も良いので好ましい。
【0032】
次いで、液層上に形成された薄膜を採取する。採取した薄膜は、減圧濾過等により、水等の液体を除去し、乾燥し、粉砕機により粉砕して微粉末(板状粒子の集合体)を得る。上記粉砕機は、ボールミル、衝撃微粉砕機、ジェット粉砕機などが用いられる。粉砕方法としては、約−30℃以下、好ましくは約−70℃以下の沸点を有する液化気体等の冷却剤により薄膜を冷却しながら薄膜を破砕する冷凍粉砕が好ましい。薄膜を粉砕して得た板状粒子の表面形状は、薄膜の表面形状と同様である。
【0033】
本発明の異方性板状粒子を粉体乳化剤に用いてピッカリングエマルションを製造するには、それ自体既知の通常のピッカリングエマルション製造方法で行える。また、本発明の皮膚外用剤や化粧料において使用される異方性板状粒子の配合量は、特に制限はないが、化粧料全体に対して0.5〜60質量%が好ましく、更に好ましくは3〜40質量%である。板状ポリマー粉体の配合量がこの範囲であれば、肌に塗布する際の柔らかな感触、スライド性、肌への密着感に優れ、経時における化粧膜の色ぐすみのなさ、透明感の持続性等の化粧効果の高さ等、さらに乳化物における安定性において特に良好な化粧料が得られるので好ましい。
【実施例1】
【0034】
500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル39.2g、アクリル酸メチル0.35g、シリコーンマクロモノマー(RES−422 信越化学工業社製)8.0g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、アクリル系共重合体(1)を32.5g得た。得られたアクリル系共重合体(1)のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は40000であり、またメタクリル酸メチル98モル%とアクリル酸メチル1モル%とシリコーンマクロモノマー1モル%の共重合組成であった。
【0035】
このアクリル系共重合体(1)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解し、この溶液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下して展開させ、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系共重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。この薄膜は、上側の空気と接した面も、下側の水に接した面も平滑であった。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより本発明の板状粒子を得た。得られた粉体の平均粒径は40μm、平均厚みは3.0μmであった。
【実施例2】
【0036】
(a)500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル37.6g、アクリル酸メチル0.35g、1−ビニル−2−ピロリドン2.22g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、アクリル系共重合体(2)を20.0g得た。得られたアクリル系共重合体(2)は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が80000であり、またメタクリル酸メチル94モル%とアクリル酸メチル1モル%と1−ビニル−2−ピロリドン5モル%の共重合組成であった。
【0037】
(b)500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル38.4g、アクリル酸メチル0.35g、シリコーンマクロモノマー(RES−422 信越化学工業社製)24.0g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、アクリル系共重合体(3)を35.0g得た。得られたアクリル系共重合体共重合体(3)は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が50000であり、またメタクリル酸メチル96モル%とメタクリル酸メチル1モル%とシリコーンマクロモノマー3モル%の共重合組成であった。
【0038】
(c)上記で得られたアクリル系重合体(2)及びアクリル系重合体(3)を1:1の質量%の比率で、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下し、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより実施例2の板状粒子を得た。得られた粒子の平均粒径は30μm、平均厚みは3.0μmであった。
【実施例3】
【0039】
実施例1で得られたアクリル系共重合体(1)及び実施例2で得られたアクリル系共重合体(2)を1:1の質量%の比率で、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下し、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状粒子を得た。得られた粒子の平均粒径は40μm、平均厚みは3.5μmであった。
【実施例4】
【0040】
(a)500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル39.2g、アクリル酸メチル0.35g、PEGメタクリレート(ブレンマーPE−350 日本油脂社製)1.75g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、アクリル系共重合体(4)を30.0g得た。得られたアクリル系共重合体(4)は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が90000であり、またメタクリル酸メチル98モル%とメタクリル酸メチル1モル%とPEGメタクリレート1モル%の共重合組成であった。
【0041】
(b)実施例1で得られたアクリル系共重合体(1)及び上記のアクリル系共重合体(4)を1:1の質量%の比率で、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下し、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状粒子を得た。得られた粒子の平均粒径は30μm、平均厚みは3.0μmであった。
【実施例5】
【0042】
(a)500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル39.6g、アクリル酸メチル0.35g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、共重合体30.0gを得た。得られたアクリル系共重合体(5)は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が100000であり、メタクリル酸メチル99モル%とアクリル酸メチル1モル%の共重合組成のアクリル系重合体であった。
【0043】
(b)上記で得たアクリル系共重合体(5)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、アクリル系共重合体に対して20質量%となるように粒子径0.5−3.0μm(粒度分布70%以上)の親水性シリカ粉末(ゴットボールE2−824C 鈴木油脂工業社製)を添加して分散液を調製した。さらに、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下して展開させ、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系共重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。この薄膜は、上側の空気と接した面は平滑であり、下側の水に接した面はシリカ粒子で形成された凹凸を有していた。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより本発明の板状粒子を得た。得られた粉体の平均粒径は40μm、平均厚みは2μmであった。
【実施例6】
【0044】
実施例1で得られたアクリル系重合体(1)を酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、アクリル系重合体に対して20質量%となるように粒子径2.0−5.0μm(粒度分布70%以上)の親水性シリカ粉末(ゴットボールD11−796C 鈴木油脂工業社製)を添加して分散液を調製した。さらに、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下して展開させ、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。この薄膜は、上側の空気と接した面は平滑であり、下側の水に接した面はシリカ粒子で形成された凹凸を有していた。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより本発明の板状粒子を得た。得られた粉体の平均粒径は40μm、平均厚みは3.0μmであった。
〔比較例1〕
【0045】
実施例5で得たアクリル系共重合体(5)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、重合体に対して20質量%となるように粒子径2.0−5.0μm(粒度分布70%以上)の親水性シリカ粉末(ゴットボールD11−796C 鈴木油脂工業社製)を添加して分散液を調製した。さらに、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下して展開させ、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。この薄膜は、上側の空気と接した面は平滑であり、下側の水に接した面はシリカ粒子で形成された凹凸を有していた。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより本発明の板状粒子を得た。得られた粉体の平均粒径は40μm、平均厚みは3μmであった。
〔比較例2〕
【0046】
実施例5で得たアクリル系共重合体(5)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解し、その後、実施例1と同様にして薄膜を作り、脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状粒子を得た。得られた粉体の平均粒径は40μm、平均厚みは2.0μmであった。
〔比較例3〕
【0047】
実施例2で得られたアクリル系重合体(3)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解し、その後、実施例1と同様にして薄膜を作り、脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状粒子を得た。得られた粉体の平均粒径は40μm、平均厚みは5.0μmであった。
〔比較例4〕
【0048】
実施例2で得たアクリル系共重合体(2)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解し、その後、実施例1と同様にして薄膜を作り、脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状粒子を得た。得られた粉体の平均粒径は40μm、平均厚みは4.0μmであった。
〔比較例5〕
【0049】
実施例4で得たアクリル系共重合体(4)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解し、その後、実施例1と同様にして薄膜を作り、脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状粒子を得た。得られた粉体の平均粒径は40μm、平均厚みは3.0μmであった。
【0050】
上記実施例1〜6及び比較例1〜5について、各例で得られた板状粒子の表裏面の形状を観察し、20℃の水との接触角を測定し、また接触角差を算出した。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
上記の観察方法、測定方法及び評価方法は次のとおりである。
A.形状異方性板状粒子の表面観察(走査型電子顕微鏡(SEM)測定)
前記調製法で作成された薄膜について表裏が分かるように採取し、各面に対して走査型電子顕微鏡(リアルサーフェスビューVE−7800)を用い、1.0kV、1000倍の条件で表面観察を行った。
B.接触角の測定方法
前記調製法で作成された薄膜について表裏が分かるように採取し、測定サンプルとした。測定は、接触角測定装置(Dropmaster DM500 協和界面科学株式会社製)、液滴法(θ/2法)を用いて、精製水2.0μLを各面に滴下した後、1.0秒後の接触角を測定した。測定は各面に対して5回行い、その平均値を面の接触角とした。各面の差を親疎水異方性差の指標とした。表1で「気−液界面」とは、作成時に空気に接した側の面を言う。また「液−液界面」とは、作成時に水に接した側の面を言う。
【0053】
また、実施例1、5、6で得られた板状粒子、及び比較例2、3で得られた板状粒子を乳化剤に用いて乳化物を調製し、その乳化状態を評価した。その結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
(試料の調製方法)
イ.成分(1)〜(6)を、それぞれデスパーミキサーにて成分(7)に均一に分散する。
ロ.イに成分(8)を徐々に滴下し、デスパーミキサーにて乳化する。
(評価方法・評価基準)
前記調製方法によって得られた乳化物の乳化状態を光学顕微鏡にて目視観察した。判定基準は次の通りである。
○:粒子径の分布が狭く、球状の乳化粒子が乳化層を形成している。
△:粒子径の分布が広く、凝集形の乳化粒子が乳化層を形成している。
×:乳化層が形成されていない。
【符号の説明】
【0056】
1 異方性板状粒子、2 アクリル系重合体、3 球状粒子、A 親水性面、B 疎水性面、a アクリル系重合体で形成された平滑面、b 球状粒子で形成された凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合体の板状粒子であって、該板状粒子の一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上あることを特徴とする親疎水異方性板状粒子。
【請求項2】
アクリル系重合体が、親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体である請求項1記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項3】
アクリル系共重合体が、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、下記一般式(1):
【化1】

(式中、R1は水素またはメチル基を示し、Xは、炭素数2〜5の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、nは1〜200の数を示す)。
で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとのアクリル系共重合体である請求項2記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項4】
アクリル系重合体が、親水性基を有するアクリル系共重合体と、疎水性基を有するアクリル系共重合体との混合物である請求項1記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項5】
アクリル系共重合体の混合物が、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルとビニルピロリドン又はポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体と、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと下記一般式(1):
【化2】

(式中、R1は水素またはメチル基を示し、Xは、炭素数2〜5の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、nは1〜200の数を示す)
で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとの共重合体の混合物である請求項4記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項6】
アクリル系重合体の板状粒子であって、その一方の面がアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した球状粒子で形成された凹凸面である請求項1記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項7】
アクリル系重合体が、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルの重合体であり、球状粒子がシリカ粒子である請求項6記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項8】
アクリル系重合体が、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと、下記一般式(1):
【化3】

(式中、R1は水素またはメチル基を示し、Xは、炭素数2〜5の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、nは1〜200の数を示す)
で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとの共重合体であり、球状粒子がシリカ粒子である請求項6記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項9】
板状粒子の平均粒子径が10.0〜70.0μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項10】
板状粒子のアスペクト比(平均粒子径/平均厚み)が、1〜140である請求項1〜8のいずれかに記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項11】
板状粒子の厚み(A)と球状粒子の平均粒子径(B)の比(A)/(B)が、0.025〜10である請求項6〜8のいずれかに記載の親疎水異方性板状粒子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の親疎水異方性板状粒子からなる乳化剤。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の親疎水異方性板状粒子からなる乳化助剤。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の親疎水異方性板状粒子を乳化剤又は乳化助剤として配合した化粧料。
【請求項15】
アクリル系重合体を溶剤に溶解し、この溶液を前記溶剤と混和しない液体表面上に展開して薄膜を形成させ、次いで、該薄膜を取り出し、その後該薄膜から溶剤を除去し、粉砕することを特徴とする請求項1記載の親疎水異方性板状粒子の製造方法。
【請求項16】
アクリル系重合が、請求項2〜3のいずれかに記載のアクリル系共重合体である請求項15記載の親疎水異方性板状粒子の製造方法。
【請求項17】
アクリル系重合が、請求項4〜5のいずれかに記載のアクリル系共重合体の混合物である請求項15記載の親疎水異方性板状粒子の製造方法。
【請求項18】
アクリル系重合体を溶剤に溶解し、これに球状粒子を添加して分散溶液を調製し、該分散溶液を前記溶剤と混和しない液体表面上に展開して薄膜を形成させ、次いで、該薄膜を取り出し、その後該薄膜から溶剤を除去し、粉砕することを特徴とする請求項1記載の親疎水異方性板状粒子の製造方法。
【請求項19】
溶剤が酢酸エチル及び/又はメチルエチルケトンである請求項15〜18のいずれかに記載の親疎水異方性板状粒子の製造方法。
【請求項20】
液体が水である請求項15〜18のいずれかに記載の親疎水異方性板状粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−285610(P2010−285610A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109069(P2010−109069)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】