説明

観察方法、観察装置および欠陥検査装置

【課題】周期的なパターンを持つ対象物を撮影する場合、使用するカメラの分解能と対象物のパターン周期の値が近いと、撮影した画像にモアレが見られることがある。画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなく、モアレを解消した画像を得る観察方法およびそのモアレを解消した画像を利用する観察装置や欠陥検査装置を提供することを課題とする。
【解決手段】周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察方法であって、対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概n+1/2倍(nは整数、0を含む)だけシフトさせた半周期シフト画像を取得し、対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概m倍(mは整数、0を含む)だけシフトさせた全周期シフト画像を取得し、前記半周期シフト画像と前記全周期シフト画像を重ね合わせた合成画像を観察することで、周期的パターンを持つ対象物を観察する観察方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は周期的パターンを持つ対象物を、画像のボケをほとんど生じさせることなくかつパターン周期とカメラの分解能が接近した条件であってもモアレを解消した対象物の画像を得る観察方法および観察装置および欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の固体撮像素子(CCDやCMOSなど)や各種の撮像管など、各種の撮像デバイスを用いたカメラを使用して周期的なパターンを持つ対象物を撮影する場合、使用するカメラの分解能と対象物のパターン周期の値が近いと、撮影した画像にモアレが見られることがある。対象物についての各種観察や対象物のパターン中の欠陥箇所検出などの検査を行う際にモアレが発生していると、観察作業の効率が悪くなったり検査の質が落ちたりするなどの悪影響がある場合が多い。これは対象物の観察したい状態量や変化量などによる明度差、あるいは検出したい欠陥などによる明度差よりも、モアレの縞状の明暗の差のほうが十分大きい場合が多いためである。
【0003】
モアレを解消する、従来の方法および装置としては、レンズの焦点を外すことによりパターンを不鮮明にしてモアレの発生を防ぐものがあった。(特許文献1)
あるいは、得られた画像の輝度変化からモアレ発生部分を推定し、その部分にのみ強いデジタルフィルタをかけることでモアレを除去するものがあった。(特許文献2)
あるいは、光散乱板を介することによってパターンを不鮮明にしてモアレの発生を防ぐものがあった。(特許文献3)
【特許文献1】特願平06−283163
【特許文献2】特願平10−283263
【特許文献3】特願2002−22290
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術はいずれにおいても大幅な画像の不鮮明化を伴い、対象物に存在する、パターン周期と同レベルのサイズの変化や欠陥を観察したり検出したりすることは困難になるという問題を持っていた。
【0005】
本発明はこのような従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、周期的パターンを持つ対象物を、画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつパターン周期と各種撮像デバイスを用いたカメラの分解能が接近した条件であっても、モアレの影響のない画像を得る観察方法およびそのモアレの影響のない画像を利用する観察装置や欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の請求項1においては、 周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察方法であって、
対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概n+1/2倍(nは整数、0を含む)だけシフトさせた半周期シフト画像を取得し、
対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概m倍(mは整数、0を含む)だけシフトさせた全周期シフト画像を取得し、
前記半周期シフト画像と前記全周期シフト画像を重ね合わせた合成画像を観察することで、周期的パターンを持つ対象物を観察する観察方法としたものである。
【0007】
本観察方法によれば、画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつモアレの影響のない画像を得ることができる。
【0008】
また本発明の請求項2では、周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察装置であって、
対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概n+1/2倍(nは整数、0を含む)だけシフトさせた半周期シフト画像を取得する手段と、
対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概m倍(mは整数、0を含む)だけシフトさせた全周期シフト画像を取得する手段と、
前記半周期シフト画像と前記全周期シフト画像を重ね合わせた合成画像を出力する手段とを有する、周期的パターンを持つ対象物を観察する観察装置としたものである。
【0009】
本観察装置によれば、画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつモアレの影響のない画像を得ることができる。
【0010】
また本発明の請求項3では、周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察装置であって、
対象物からの入射光をとらえて対象物の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段と対象物の間に設置された、透明平板および対象物からの入射光に対して前記透明平板の角度を変更可能に傾斜させる傾斜手段と、
撮像された対象物の画像を出力する出力手段とを有する観察装置としたものである。
【0011】
本観察装置によれば、透明平板により画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつモアレの影響のない画像を得ることができる。
【0012】
また本発明の請求項4は、前記撮像手段によって撮像された対象物の複数の画像を記憶する記憶手段と、
該撮像された対象物の複数の画像を重ね合わせて合成画像を作成する演算手段と、
前記合成画像を出力する出力手段とを有する請求項3に記載の観察装置としたものである。
【0013】
本観察装置によれば、透明平板により得た半周期シフト画像と全周期シフト画像を重ね合わせることで、画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつモアレの影響のない合成画像を得ることができる。
【0014】
また本発明の請求項5では、周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察装置であって、
対象物からの入射光をとらえて対象物の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段と対象物の間に設置された、1個以上の鏡またはプリズムまたは鏡とプリズムの組み合わせと、
前記1個以上の鏡またはプリズムまたは鏡とプリズムの組み合わせを傾斜または移動させる手段と、
撮像された対象物の画像を出力する出力手段とを有する観察装置としたものである。
【0015】
本観察装置によれば、1個以上の鏡またはプリズムまたは鏡とプリズムの組み合わせにより、画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつモアレの影響のない画像を得ることができる。
【0016】
また本発明の請求項6は、前記撮像手段によって撮像された撮像された対象物の複数の画像を記憶する記憶手段と、
該撮像された対象物の複数の画像を重ね合わせて合成画像を作成する演算手段と、
前記合成画像を出力する出力手段とを有する請求項5に記載の観察装置としたものである。
【0017】
本観察装置によれば、1個以上の鏡またはプリズムまたは鏡とプリズムの組み合わせにより得た半周期シフト画像と全周期シフト画像を重ね合わせることで、画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつモアレの影響のない合成画像を得ることができる。
【0018】
また本発明の請求項7では、周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察装置であって、
対象物からの入射光をとらえて対象物の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段と対象物の間に設置された複屈折性を持つ平板と、
撮像された対象物の画像を出力する出力手段とを有する観察装置としたものである。
【0019】
本観察装置によれば、複屈折性を持つ平板により画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつモアレの影響のない画像を得ることができる。
【0020】
さらに本発明の請求項8では、周期的パターンを持つ検査対象物の欠陥を検査する装置であって、請求項2〜7のいずれかの観察装置で得られた周期的パターンを持つ対象物の画像または合成画像について、欠陥箇所の検出を行う検査手段を有することを特徴とする欠陥検査装置としたものである。
【0021】
本欠陥検査装置によれば、画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつモアレを解消した画像を得て、その画像に対して欠陥検査を行うことができるので、より質の高い検査を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の観察方法により、周期的パターンを持つ対象物を、画像の不鮮明化をほとんど生じさせることなくかつパターン周期とカメラ分解能が接近した条件であってもモアレの影響のない画像を得ることができる。また、本発明の観察装置および検査装置により、モアレを解消した画像を使って観察および検査することが可能となり、観察や検査の作業を容易にしたり、観察や検査の質をより向上させたりする効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態で、本発明の請求項4の観察装置または検査装置の模式図である。装置筐体、検査対象把持手段、光源、透明平板保持手段、透明平板の傾斜角変更手段、カメラ固定手段等は図示省略してある。
【0024】
また、本実施形態を含め後述した全ての実施形態において、撮像手段としてはCCDカメラを用いたが、他の撮像素子や撮像管などを用いたカメラを使用してもかまわない。
【0025】
検査対象11からの入射光はパターン周期の1/2だけ光路をシフトするような角度をつけて設置された透明ガラス板13を透過し、光路がシフトされた状態でCCDカメラ12に入射する。この状態で対象物の1回目の撮影を行い、半周期シフト画像(図9)を記憶手段に保存する。
【0026】
次いで傾斜角変更手段により、透明ガラス板13を14で示したように傾斜角0°に移動する。この状態で2回目の撮影を行い、無シフト画像(図10)を記憶手段に保存する。ここで無シフト画像というのは、対象物のパターン周期の概m倍(mは整数、0を含む)だけシフトさせた全周期シフト画像のうちm=0の場合の画像のことを指す。
【0027】
傾斜角変更手段としては、光学部品用の回転ステージを手動または電動モーター駆動する機構などが使用できる。
【0028】
次に演算手段は、2回の撮像により得られた記憶手段内の半周期シフト画像と無シフト画像を重ね合わせる処理を行い、合成画像(図11)を作成する。
【0029】
観察装置の場合は、前記合成画像は表示手段に送られて画像表示され、作業者がそれを観察作業に使用する。検査装置の場合は、前記合成画像はさらに検査手段にも送られて、検査判定処理の対象画像として使用される。
【0030】
本実施形態を含め後述した全ての実施形態において、記憶手段、演算手段、検査手段、表示手段はそれぞれ別々の装置を使用することも可能であるが、1台のコンピューター上に画像を記憶する領域があり、画像重ね合わせと検査のためのソフトウェアが動作していて、さらにはそのコンピューターに付属している各種の表示用ディスプレイに合成画像や検査結果などが表示されるようにしたものを使用してもかまわない。
【0031】
半周期シフト画像(図9)と無シフト画像(図10)においては理解の助けとするために格子線を重ねて表示している。格子を参考に両画像の同じ位置を見ると半周期シフト画像のモアレ明線の位置が無シフト画像においては暗線となっており、モアレの位相がちょうど反転していることがわかる。このため、両画像を重ねて表示すれば図11のごとくモアレの解消された画像となる。
【0032】
本実施例においては透明ガラス板13の屈折率1.5、厚み5mmで、検査対象のパターンピッチは0.8mmであったので、半周期シフト画像を得るための透明ガラス板13の傾斜は、13.5°となる。また本実施例での画像のボケ量は0.4mm程度となり、これはカメラの分解能の1/2程度であるため、小さい変化や欠陥の画像にもほとんど影響は出ないことがわかる。
【0033】
本実施形態では透明ガラス板を用いたが、CCDカメラが予め光学フィルター等を装備している場合はそれを傾斜させることによって本発明の効果を得ることももちろん可能である。
【0034】
また本実施形態では透明ガラス板の傾斜角を変更して半周期シフト画像と無シフト画像を得たが、透明平板保持手段によって透明ガラス板を光路外に移動することによって無シフト画像を得ることももちろん可能である。
【0035】
また本実施例では無シフト画像を重ね合わせたが、例えば傾斜角25.5°として全周期シフト画像を得て、これを半周期シフト画像と重ね合わせることもちろん可能である。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図2は本発明の請求項3の観察装置または検査装置の模式図である。図1と同様に、装置筐体、検査対象把持手段、光源、透明平板保持手段、透明平板の傾斜角変更手段、カメラ固定手段等は図示省略してある。
【0037】
検査対象21からの入射光は、傾斜角変更手段により0°〜パターン周期の1/2だけ光路をシフトするような角度までの角度範囲で揺動する透明ガラス板23を透過してCCDカメラ22に入射する。
【0038】
ここでは、透明ガラス板23の揺動の速度とCCDカメラ22の露光のタイミングは、CCDカメラ22の露光時間内に、透明ガラス板23がその揺動範囲の一端から他端への動きを一定速度で完了するようにした。
【0039】
傾斜角変更手段としては第1実施形態と同様に光学部品用の回転ステージなどを使用することができるが、本実施形態では透明ガラス板23の揺動速度は一定である必要があるので、前記回転ステージの駆動には電動モーターなどを使用することが望ましい。
【0040】
より一般的には、CCDカメラ22の露光時間内に透明ガラス板23の揺動がk往復(kは正整数)するようにすれば、1回の撮像でモアレを解消した画像を得ることができる。また、CCDカメラの露光時間と透明ガラス板の揺動が上記のような関係になるようにしておけば、露光開始のタイミングは任意である。さらに1回の露光時間のあいだに行われる揺動回数を十分に大きくすれば、揺動回数を整数に合わせることも不要である。
【0041】
観察装置の場合は、得られた画像は各種の表示手段に送られて画像表示され、作業者がそれを観察作業に使用する。検査装置の場合は、得られた画像はさらに検査手段にも送られて、検査判定処理の対象画像として使用される。
【0042】
第2の実施形態では1回の撮像でモアレを解消した画像を得ることができるので、第1の実施形態に比べて、画像を記憶したり合成したりする処理が不要になるという利点がある。一方、第2の実施形態では透明平板の傾斜角度を所定速度で揺動させる機構が必要になるが、第1の実施形態では透明平板について傾斜角度を2個設定できるか、透明平板を光路外に移動できればよいので、透明平板の傾斜角度変更手段を簡素にできるという利点がある。
【0043】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図3は本発明の請求項6の観察装置または検査装置の模式図である。図3では、装置筐体、検査対象把持手段、光源、鏡保持手段、鏡の傾斜角変更手段、カメラ固定手段等は図示省略してある。
【0044】
検査対象31からの入射光は、水平から45°の通常の設置角34から、パターン周期の1/2だけ光路をシフトするような角度をつけて設置された鏡33で反射され、CCDカメラ32に入射する。この状態で半周期シフト画像を得て記憶手段に保存する。
【0045】
次いで傾斜角変更手段により、鏡33の傾斜角を34のごとくに通常の設置角に変更し、無シフト画像を得て記憶手段に保存する。なお、鏡33はプリズムで代替することももちろん可能である。
【0046】
鏡の傾斜角変更手段としては、光学部品用の回転ステージを手動または電動モーター駆動する機構などが使用できる。またガルバノミラーやポリゴンミラーを鏡33として使用すれば、それらの角度変更機能を利用することもできる。
【0047】
次に演算手段は、2回の撮像により得られた記憶手段内の半周期シフト画像と無シフト画像を重ね合わせる処理を行い、合成画像を作成する。得られた合成画像はモアレが解消された画像となっている。
【0048】
観察装置の場合は、前記合成画像は各種の表示手段に送られて画像表示され、作業者がそれを観察作業に使用する。検査装置の場合は、前記合成画像はさらに検査手段にも送られて、検査判定処理の対象画像として使用される。
【0049】
なお、本実施例では無シフト画像を使用したが、鏡33を全周期シフト画像が得られるような角度に設置しておいて全周期シフト画像を得て、これを半周期シフト画像と重ね合わせることももちろん可能である。
【0050】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図4は本発明の請求項5の観察装置または検査装置の模式図である。図3と同様に、装置筐体、検査対象把持手段、光源、鏡保持手段、鏡の傾斜角変更手段、カメラ固定手段等は図示省略してある。
【0051】
検査対象41からの入射光は45°〜45°+パターン周期の1/2だけ光路をシフトするような角度までの角度範囲で揺動する鏡43に反射されてCCDカメラ42に入射する。このときCCDカメラ42が露光を行えば、モアレを解消した画像を得ることができる。
【0052】
本実施形態の傾斜角変更手段は、第2実施形態と同様に鏡43の揺動速度は一定である必要があるので、光学部品用回転ステージを使用する場合には駆動に電動モーターなどを使用することが望ましい。また、ガルバノミラーやポリゴンミラーを鏡43として使用してそれらの角度変更機能を利用する場合にも、揺動速度を一定にするために電気的に駆動するのが望ましい。
【0053】
鏡43の揺動の速度とCCDカメラ42の露光のタイミングは、露光時間内に一端から他端への動きを完了するようにしたが、より一般的には、露光時間内に揺動がk往復(kは正整数)するような速度とすれば露光のタイミングは任意である。さらに1回の露光時間のあいだに行われる揺動回数を十分に大きくすれば、揺動回数を整数に合わせることも不要である。
【0054】
観察装置の場合は、前記画像は各種の表示手段に送られて画像表示され、作業者がそれを観察作業に使用する。検査装置の場合は、前記画像はさらに検査手段にも送られて、検査判定処理の対象画像として使用される。
【0055】
第4の実施形態では1回の撮像でモアレを解消した画像を得ることができるので、第3の実施形態に比べて、画像を記憶したり合成したりする処理が不要になるという利点がある。一方、第4の実施形態では鏡の傾斜角度を所定速度で揺動させる機構が必要になるが、第3の実施形態では鏡について傾斜角度を2個設定できればよいので、鏡の傾斜角度変更手段を簡素にできるという利点がある。
【0056】
なお、鏡を使用した第3および第4の実施形態での鏡の傾斜角度範囲は、透明平板を使用した第1および第2の実施形態での透明平板の傾斜角度の範囲よりも一般的に小さくできる。傾斜角度の範囲が小さいと、傾斜角変更手段の機構を簡略化できるし傾斜角変更に要する時間が短くて済むという利点がある。
【0057】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図5は本発明の請求項6の別の観察装置または検査装置の模式図である。図5では、装置筐体、検査対象把持手段、光源、鏡保持手段、鏡の位置変更手段、カメラ固定手段等は図示省略してある。
【0058】
検査対象51からの入射光は、水平から45°の傾斜角で設置された鏡53で反射されてCCDカメラ52に入射する。このときに鏡53を、位置54からパターン周期の1/2だけ光路をシフトするような位置に平行移動して設置しておいて1回目の撮影を行い、半周期シフト画像を得て記憶手段に保存する。
【0059】
次いで位置変更手段により、鏡53を元の位置54に変更し、無シフト画像を得て記憶手段に保存する。なお、鏡53はプリズムで代替することももちろん可能である。
【0060】
鏡53の位置変更手段としては、光学部品用の平行移動ステージを手動または電動モーター駆動する機構、各種リニアガイドを使用した位置決め機構を手動または電動モーターで駆動するものなどが使用できる。
【0061】
次に演算手段は、2回の撮像により得られた記憶手段内の半周期シフト画像と無シフト画像を重ね合わせる処理を行い、合成画像を作成する。得られた合成画像はモアレが解消された画像となっている。
【0062】
観察装置の場合は、前記合成画像は各種の表示手段に送られて画像表示され、作業者がそれを観察作業に使用する。検査装置の場合は、前記合成画像はさらに検査手段にも送られて、検査判定処理の対象画像として使用される。
【0063】
なお、本実施例では無シフト画像を使用したが、鏡53を全周期シフト画像が得られるような位置に設置しておいて全周期シフト画像を得て、これを半周期シフト画像と重ね合わせることもちろん可能である。
【0064】
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。図6は本発明の請求項5の別の観察装置または検査装置の模式図である。図5と同様に、装置筐体、検査対象把持手段、光源、鏡保持手段、鏡の位置変更手段、カメラ固定手段等は図示省略してある。
【0065】
検査対象61からの入射光は水平から45°に保持され、パターン周期の1/2の振幅で鏡面に平行に往復運動する鏡63に反射されてCCDカメラ62に入射する。このときCCDカメラ62が露光を行えば、モアレを解消した画像を得ることができる。
【0066】
鏡63の位置変更手段としては、光学部品用の平行移動ステージや各種リニアガイドを使用した位置決め機構を用いることができるが、第2および第4の実施形態と同様に鏡63の速度は一定である必要があるので、電動モーターなどで駆動するのが望ましい。
【0067】
鏡63の往復運動の速度とCCDカメラ62の露光のタイミングは、露光時間内に一端から他端への動きを完了するようにしたが、より一般的には、露光時間内に往復運動がk往復(kは正整数)するような速度とすれば露光のタイミングは任意である。さらに1回の露光時間のあいだに行われる往復運動回数を十分に大きくすれば、往復運動回数を整数に合わせることも不要である。
【0068】
観察装置の場合は、前記画像は各種の表示手段に送られて画像表示され、作業者がそれを観察作業に使用する。検査装置の場合は、前記画像はさらに検査手段にも送られて、検査判定処理の対象画像として使用される。
【0069】
第6の実施形態では1回の撮像でモアレを解消した画像を得ることができるので、第5の実施形態に比べて、画像を記憶したり合成したりする処理が不要になるという利点がある。一方、第6の実施形態では鏡の傾斜角度を所定速度で揺動させる機構が必要になるが、第5の実施形態では鏡について傾斜角度を2個設定できればよいので、鏡の傾斜角度変更手段を簡素にできるという利点がある。
【0070】
なお、鏡を使用した第5および第6の実施形態での鏡の移動範囲は、検査対象の周期的パターンの周期の1/2程度という狭い範囲で済む。移動範囲が小さいと、移動手段の機構を簡略化できるし移動に要する時間が短くて済むという利点がある。
【0071】
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。図7は本発明の請求項6のまた別の観察装置または検査装置の模式図である。図7では、装置筐体、検査対象把持手段、光源、鏡保持手段、光路シフト手段の位置変更手段、カメラ固定手段等は図示省略してある
【0072】
検査対象71からの入射光は、光路シフト手段73を構成する4枚の鏡によって順次反射されてCCDカメラ72に入射するが、このとき最も検査対象71に近い鏡74を、パターン周期の1/2だけ光路をシフトするように設置しておく。この状態で半周期シフト画像を得て記憶手段に保存する。
【0073】
次いで位置変更手段により鏡74を、無シフト画像を得られる位置に平行移動して撮像を行い、無シフト画像を得て記憶手段に保存する。なお、光路シフト手段73の任意の1枚以上の鏡はプリズムで代替することももちろん可能である。
【0074】
鏡74の位置変更手段としては、光学部品用の平行移動ステージを手動または電動モーター駆動する機構、各種リニアガイドを使用した位置決め機構を手動または電動モーターで駆動するものなどが使用できる。
【0075】
次に演算手段は、2回の撮像により得られた記憶手段内の半周期シフト画像と無シフト画像を重ね合わせる処理を行い、合成画像を作成する。得られた合成画像はモアレが解消された画像となっている。
【0076】
観察装置の場合は、前記合成画像は各種の表示手段に送られて画像表示され、作業者がそれを観察作業に使用する。検査装置の場合は、前記合成画像はさらに検査手段にも送られて、検査判定処理の対象画像として使用される。
【0077】
なお、本実施形態では無シフト画像を使用したが、鏡74を全周期シフト画像が得られるような位置に設置しておいて全周期シフト画像を得て、これを半周期シフト画像と重ね合わせることもちろん可能である。
【0078】
また、鏡74を往復運動させるようにすれば、第6の実施形態と同様に1回の撮像でモアレを解消した画像を得ることも可能である。
【0079】
本実施形態の光路シフト手段73は光路を折り曲げることにより、所定の範囲を撮像するのに必要な光路長を確保しつつ、検査対象71とCCDカメラ72の距離を短くすることができる。したがって本実施形態による観察装置または検査装置のサイズを小さくできるという効果がある。
【0080】
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。図8は本発明の請求項7の観察装置または検査装置の模式図である。図8では、装置筐体、検査対象把持手段、光源、方解石平板保持手段、カメラ固定手段等は図示省略してある。
【0081】
検査対象81とCCDカメラ82の間に、複屈折性を有する方解石の平板83を設置する。検査対象81からの入射光は、通常光84と異常光85のズレ量がパターン周期の1/2となるような厚みに成型された方解石の平板83を透過してCCDカメラ82に入射する。この状態でCCDカメラ82が露光を行えば、モアレを解消した画像を得ることができる。
【0082】
観察装置の場合は、前記画像は各種の表示手段に送られて画像表示され、作業者がそれを観察作業に使用する。検査装置の場合は、前記画像はさらに検査手段にも送られて、検査判定処理の対象画像として使用される。
【0083】
本実施形態では、方解石平板を揺動または移動させることなくモアレを解消した画像を得ることができるので、第1〜第7の実施形態に比べて揺動手段および移動手段を具備する必要がなく、また揺動や移動にかかる時間も必要ない、という利点がある。
【0084】
なお、モアレが発生するのはCCDカメラの分解能と対象物のパターン周期が接近している場合のみである。したがって、方解石の平板としては前記の場合に対応した厚みのものを1枚用意しておけばよい。また、モアレが発生しない程度にパターン周期長が異なる対象物の場合は、方解石の平板を光路上に設置したままでも、画像の撮影にはほとんど不都合はない。というのはこのときに画像がぼやける量は、対象物のパターン周期の1/2程度であり十分に軽微とみなせるからである。
【0085】
本発明の各実施形態の説明および図1〜8では、半周期シフト画像および無シフト画像または全周期シフト画像を得るときのシフトの方向を1次元的に表現している。より一般的に、対象物のパターン周期が2次元的、つまりx方向とy方向に周期があるときには、半周期シフト画像および無シフト画像または全周期シフト画像を得るときのシフトの方向を、対象物の周期パターンのxy方向つまり対角線方向になるように、各シフト画像を得る手段の面内の設置方向を変更すればよい。
【0086】
また本発明でモアレを解消した画像を得るために、半周期シフト画像と無シフト画像(あるいは全周期シフト画像)を重ねた場合、シフトした方向に画像がぼやけたり2重に見えたりすることになり、そのぼやける量は、シフト量である対象物パターン周期のn+1/2倍(nは整数、0を含む)と同程度になる。したがってシフト量の絶対値はできるだけ小さく設定したほうが、得られるモアレ解消画像の質がよくなり、最も望ましいのはシフト量の絶対値を対象物のパターン周期の1/2としたときである。
【0087】
なお、各シフト画像を取得する方法として、本発明で記述したもの以外にも、対象物を動かす、カメラ自体を動かす、カメラ内部の撮像素子を動かすなどの方法が考えられる。
【0088】
しかし、対象物が大きいとか重いとか壊れやすいものである場合、対象物を正確に動かすためには、対象物を保持および移動するステージ等に特殊な機能が必要になるし、対象物自体を破損するおそれがあるため、対象物を動かすという方法は不利な場合が多い。
【0089】
また、カメラのような精密機器にはなるべく振動や衝撃を与えないほうが望ましいし、カメラ自体を可動にすると装置の光軸ずれが発生しやすくなるなどの点を考慮すると、カメラ自体を動かすという方法にも不利な点が多い。
【0090】
また、カメラ内部の撮像素子を動かすという方法については、撮像素子の移動機構をカメラ内部に内蔵する必要があるため、特殊な構造のカメラということになり、カメラの取り扱いや価格の面で不利であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上詳細に説明した通り、本発明の検査装置によれば、周期的パターンを持つ検査対象を、画像のボケをほとんど生じさせることなくかつパターン周期とカメラの分解能が接近した条件であってもモアレの影響なく検査および観察することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施形態の装置模式図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の装置模式図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の装置模式図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の装置模式図である。
【図5】本発明の第5の実施形態の装置模式図である。
【図6】本発明の第6の実施形態の装置模式図である。
【図7】本発明の第7の実施形態の装置模式図である。
【図8】本発明の第8の実施形態の装置模式図である。
【図9】周期的パターンを持つ対象物を、本発明の装置により撮像した半周期シフト画像である。
【図10】周期的パターンを持つ対象物を、本発明の装置により撮像した無シフト画像である。
【図11】半周期シフト画像(図9)と無シフト画像(図10)を重ね合わせた合成画像である。
【符号の説明】
【0093】
11・・・・周期的パターンを持つ検査対象
12・・・・CCDカメラ
13・・・・透明ガラス板
14・・・・無シフト画像採取時の透明ガラス板位置
21・・・・周期的パターンを持つ検査対象
22・・・・CCDカメラ
23・・・・透明ガラス板
31・・・・周期的パターンを持つ検査対象
32・・・・CCDカメラ
33・・・・鏡
34・・・・無シフト画像採取時の鏡位置
41・・・・周期的パターンを持つ検査対象
42・・・・CCDカメラ
43・・・・鏡
51・・・・周期的パターンを持つ検査対象
52・・・・CCDカメラ
53・・・・鏡
54・・・・無シフト画像採取時の鏡位置
61・・・・周期的パターンを持つ検査対象
62・・・・CCDカメラ
63・・・・鏡
71・・・・周期的パターンを持つ検査対象
72・・・・CCDカメラ
73・・・・光路シフト手段
74・・・・光路シフト手段を構成する鏡のうち、最も検査対象に近い鏡
81・・・・周期的パターンを持つ検査対象
82・・・・CCDカメラ
83・・・・方解石平板
84・・・・通常光の光路
85・・・・異常光の光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察方法であって、
対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概n+1/2倍(nは整数、0を含む)だけシフトさせた半周期シフト画像を取得し、
対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概m倍(mは整数、0を含む)だけシフトさせた全周期シフト画像を取得し、
前記半周期シフト画像と前記全周期シフト画像を重ね合わせた合成画像を観察することで、周期的パターンを持つ対象物を観察する観察方法。
【請求項2】
周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察装置であって、
対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概n+1/2倍(nは整数、0を含む)だけシフトさせた半周期シフト画像を取得する手段と、
対象物からの入射光を、対象物のパターン周期の概m倍(mは整数、0を含む)だけシフトさせた全周期シフト画像を取得する手段と、
前記半周期シフト画像と前記全周期シフト画像を重ね合わせた合成画像を出力する手段とを有する、周期的パターンを持つ対象物を観察する観察装置。
【請求項3】
周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察装置であって、
対象物からの入射光をとらえて対象物の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段と対象物の間に設置された、透明平板および対象物からの入射光に対して前記透明平板の角度を変更可能に傾斜させる傾斜手段と、
撮像された対象物の画像を出力する出力手段とを有する観察装置。
【請求項4】
前記撮像手段によって撮像された対象物の複数の画像を記憶する記憶手段と、
該撮像された対象物の複数の画像を重ね合わせて合成画像を作成する演算手段と、
前記合成画像を出力する出力手段とを有する請求項3に記載の観察装置。
【請求項5】
周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察装置であって、
対象物からの入射光をとらえて対象物の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段と対象物の間に設置された、1個以上の鏡またはプリズムまたは鏡とプリズムの組み合わせと、
前記1個以上の鏡またはプリズムまたは鏡とプリズムの組み合わせを傾斜または移動させる手段と、
撮像された対象物の画像を出力する出力手段とを有する観察装置。
【請求項6】
前記撮像手段によって撮像された撮像された対象物の複数の画像を記憶する記憶手段と、
該撮像された対象物の複数の画像を重ね合わせて合成画像を作成する演算手段と、
前記合成画像を出力する出力手段とを有する請求項5に記載の観察装置。
【請求項7】
周期的パターンを持つ対象物を撮像することによって周期的パターンの観察を行う観察装置であって、
対象物からの入射光をとらえて対象物の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段と対象物の間に設置された複屈折性を持つ平板と、
撮像された対象物の画像を出力する出力手段とを有する観察装置。
【請求項8】
周期的パターンを持つ検査対象物の欠陥を検査する装置であって、請求項2〜7のいずれかの観察装置で得られた周期的パターンを持つ対象物の画像または合成画像について、欠陥箇所の検出を行う検査手段を有することを特徴とする欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−315770(P2007−315770A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142560(P2006−142560)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】