説明

観察用器具および観察用器具ホルダ

【課題】観察対象にレンズが近づいた状態であっても、ホルダとの物理的干渉が生じにくい観察用器具および観察用器具を支持するホルダを提供する。
【解決手段】ホルダによって支持された状態において用いられ、観察対象となる試料を収容する試料収容領域Fを有する観察支援具10と、観察支援具10上の試料収容領域Fを覆う透明基板20と、を有し、試料を顕微鏡により観察するための観察用器具である。透明基板20は、観察支援具10に固着される。観察支援具10は、その周縁部にホルダベース220により支持される支持部Gを有する。この支持部Gは、透明基板20に覆われない領域であって、透明基板20の顕微鏡に対向する観察面21より後退して段差を形成する位置に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物、細胞等の試料の観察に用いられる観察用器具および観察用器具を支持するホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物、細胞等(以下、単に「細胞」と称する)について顕微鏡による観察を行う際、貫通孔などを有する基板をガラス板上に圧接し、貫通孔から注入した細胞を基板とガラスとの間に収容した状態で行われることがある。これをガラス基板から観察する場合、焦点位置のズレが生じないことが重要である。焦点位置のズレを生じさせず細胞の顕微鏡観察を行うための技術が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1では、貫通孔および溝を設けた基板をガラス基板に接合させた一体化チップを、基板の貫通孔と対応する位置に貫通孔を有するチップホルダに貼り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−124904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、貫通孔などを有する基板とガラス基板とを接合し一体化チップとすることにより、基板とガラス基板とが一定の位置を保つ構成となっている。
【0006】
ところで、細胞のように微小なサイズの観察対象を観察する場合は、分解能を向上させるために、開口数の大きいレンズを用いて観察することがある。開口数の大きいレンズを用いた観察の場合、観察対象にレンズが近づいた状態にする必要がある。しかし、特許文献1では、レンズがホルダに接触するなどの物理的な干渉が生じ、レンズが観察対象に近づけない場合がある。すなわち、特許文献1では、観察対象にレンズが近づいた状態であっても、ホルダとの物理的干渉が生じないための考慮がされていない。
【0007】
レンズとホルダとの物理的な干渉を防ぐためには、まず、レンズの寸法に対して十分大きな寸法のチップを用いて細胞を観察することが考えられる。しかし、この場合、チップの中心付近に収容された細胞のみしか観察できず、効率も悪く、コストもかかってしまう。また、チップ自体にたわみが生じやすく、焦点位置のズレが生じやすくなる。
【0008】
本発明では、観察対象にレンズが近づいた状態であっても、ホルダとの物理的干渉が生じにくい観察用器具および観察用器具を支持するホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ホルダによって支持された状態において用いられ、試料を顕微鏡により観察するための観察用器具であって、
観察対象となる試料を収容する試料収容領域を有する観察支援具と、
前記観察支援具上の試料収容領域を覆う透明基板と、を有し、
前記透明基板は、観察支援具に固着され、
前記観察支援具は、その周縁部に前記ホルダにより支持される支持部を有し、
前記支持部は、前記透明基板に覆われない領域であって、前記透明基板の顕微鏡に対向する観察面より後退して段差を形成する位置に設けられること
を特徴とする観察用器具が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、ホルダによって支持された状態において用いられ、試料を顕微鏡により観察するための観察用器具であって、
観察対象となる試料を収容する試料収容領域を有する観察支援具と、
前記観察支援具上の試料収容領域を覆う透明基板と、
前記観察支援具を支持するサポート基板と、を有し、
前記透明基板は、観察支援具に固着され、
透明基板と観察支援具とは、前記サポート基板から凸型に突出した構造に支持され、
前記サポート基板は、前記観察支援具が載せられていない周縁部に前記ホルダにより支持される支持部を有することを特徴とする観察用器具が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、ホルダによって支持された状態において用いられ、試料を顕微鏡により観察するための観察用器具であって、
観察対象となる試料を収容する試料収容領域を有する、複数の観察支援具ユニットと、
前記複数の観察支援具ユニットが、それぞれの試料収容領域を覆う状態で固着される透明基板と、
前記透明基板を支持するサポート部材と、を有し、
前記サポート部材は、透明基板と接する面まで凸型に突出した形状に形成され、透明基板と接する領域には、前記観察支援具ユニットを収容する凹部が観察支援具に対応して設けられ、凸型の非突出部分が、前記ホルダと接して、当該観察用器具を支持する支持部となることを特徴とする観察用器具が提供される。
【0012】
また、本発明の他の態様によれば、前述した観察用器具を支持するホルダであって、
前記観察用器具を支持するホルダベースを備え、
前記ホルダベースの底面には、前記観察用器具の透明基板を少なくとも収容する観察窓を構成する段部を有することを特徴とする観察用器具支持ホルダが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、開口数の大きなレンズを用いた観察においても考慮した観察用器具および観察用器具を支持するホルダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは本発明の第1実施形態の観察用器具ホルダの構成部材のそれぞれを分解した状態により示す斜視図、図1Bは観察用器具ホルダの各構成部材に対応する截断端面図。
【図2】図2は第1実施形態の観察用器具を示す平面図。
【図3】図3Aは図2のA−A矢視断面図、図3Bは図2のB−B矢視断面図。
【図4】図4Aはホルダベースの側面図、図4Bは後述する図4CのA−A矢視截断端面図、図4Cは図4AのX矢視側からの平面図、図4Dは図4AのY矢視側からの平面図。
【図5】図5Aはスペーサ30の構造の一例を示す側面図、図5Bは後述する図5CのA−A矢視截断端面図、図5Cはスペーサ30の平面図。
【図6】図6Aは緩衝材40の一例の側面図、図6Bは後述する図6CのA−A矢視截断端面図、図6Cは緩衝材40の平面図。
【図7】図7Aは押さえ具300の側面図、図7Bは後述する図7CのA−A矢視截断端面図、図7Cは図7AのX矢視側からの平面図、図7Dは図7AのY矢視側からの平面図。
【図8】図8Aは定部材400の側面図、図8Bは後述する図8CのA−A矢視截断端面図、図8Cは定部材400の平面図。
【図9】図9Aは第1の実施形態の観察用器具ホルダの構成部材が組み立てられ、第1実施形態の観察用器具が保持された状態の端面図、図9Bは図9Aに示す押さえ具貫通孔311の開講部分(Z矢示部分)の構造を示す部分拡大平面図、図9CはそのA−A断面図。
【図10】図10Aは図4に示すホルダベース200に載せられた図2に示す観察用器具100のB−B矢視拡大端面図、図10Bは図4に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察用器具100のC−C矢視拡大端面図。
【図11】図11は第2実施形態の観察用器具を示す平面図。
【図12】図12Aは図11のA−A矢視断面図、図12Bは図11のB−B矢視断面図。
【図13】図13Aはホルダベース200に載せられた図11に示す観察用器具100AのB−B矢視拡大端面図、図13Bはホルダベース200に載せられた図11に示す観察用器具100AのC−C矢視拡大端面図。
【図14】図14は第3実施形態の観察用器具を示す平面図。
【図15】図15Aは図14のA−A矢視断面図、図15Bは図14のB−B矢視断面図。
【図16】図16Aはホルダベース200に載せられた図14に示す観察用器具100BのB−B矢視拡大端面図、図16Bはホルダベース200に載せられた図14に示す観察用器具100BのC−C矢視拡大端面図。
【図17】図17は第4実施形態の観察用器具を示す平面図。
【図18】図18Aは図17のA−A矢視断面図、図18Bは図17のB−B矢視断面図。
【図19】図19Aはホルダベース200に載せられた図17に示す観察用器具100CBのB−B矢視拡大端面図、図19Bはホルダベース200に載せられた図17に示す観察用器具100CのC−C矢視拡大端面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。以下では、試料として細胞を顕微鏡で観察するために用いる観察用器具と、観察用器具を支持するため観察用器具ホルダとを例として挙げる。
【0016】
[第1実施形態]
図1Aに本発明の第1実施形態の観察用器具ホルダの構成部材のそれぞれを分解した状態により示す。図1Bに観察用器具ホルダの各構成部材に対応する截断端面を示す。なお、図1Aおよび図1Bには、第1実施形態の観察用器具100も含めて図示してある。
【0017】
(観察用器具100)
まず、第1実施形態の観察用器具100について説明する。図2に第1実施形態の観察用器具100を示す。図3Aに図2のA−A矢視断面図を示し、図3Bに図2のB−B矢視断面図を示す。本実施形態の観察用器具100は、図1A、図1B、図2、図3Aおよび図3Bに示すように、観察支援具10と、透明基板20と、を有する。
【0018】
(観察支援具10)
観察支援具10には、図2および図3Aに示すように、観察対象となる試料が収容され、透明基板20により覆われる面(試料収容面)に、複数の試料収容領域Fがスペース13となる領域を挟んで配列されている。各試料収容領域Fには、図2において破線により示す長方形状の穴14が、試料収容面側に開口する状態に設けられる。また、各試料収容領域Fにおいては、試料収容領域Fの配列の方向と直交する方向に並ぶ、一対の第1観察支援具貫通孔12a、第2観察支援具貫通孔12bが設けられる。また、各対の第1観察支援具貫通孔12aと第2観察支援具貫通孔12bとの間に、試料観察域11が配置される。
【0019】
試料観察域11は、図2に示すように、前述した穴14の中央を横断する位置に、破線により示すように長方形状に設けられる。具体的には、図3Aに示すように、穴14の底部14aから穴内に突出する形状となっている。すなわち、この試料観察域11は、穴14の底の一部を長方形状に浅くした構造となっている。
【0020】
また、穴14は、その底部14aにおいて、前述した第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bとそれぞれ連通する構造となっている。図3Aに示すように、観察支援具10に、後述するように透明基板20が配置された状態において、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bが、試料観察域11を経て連通する状態となる。
【0021】
試料観察域11は、細胞群を収容して観察を行うための主たる領域である。本実施形態では、図2および図3Bに示すように、試料観察域11は、長方形状の底面と、対向する1組の側面が形成されて、長方形状の底面の上方に直方体状空間として構成される。試料観察域11の、幅、長さおよび深さは、観察用器具100の目的に基づいて、それぞれが決められる。本実施形態では、例えば、幅が1.2mm、長さが0.13〜0.26mm、および、深さが観察支援具表面から4〜8μm、となっている。なお、観察支援具10は、幅が14mm、長さが6mm、厚さが0.4mmである。
【0022】
第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bは、断面形状が円形である。その直径は、例えば、φ=1mmである。観察支援具貫通孔12a、12bは、細胞培養液、細胞、刺激物質等の試料液体の注入および排出に用いられる。例えば、第1観察支援具貫通孔12aが細胞培養液のソースとして機能し、第2観察支援具貫通孔12bは細胞培養液のドレインとして機能する。第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bのソースおよびドレインの機能については役割を交換することができる。
【0023】
図2に示す第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bは、断面形状が円形となっている。しかし、断面形状は、円形に限られない。試料液体を円滑に注入し、および、排出することができる形状であればよい。例えば、長方形、正方形としてもよい。また、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bの大きさは、観察する細胞に応じて定められる。
【0024】
観察支援具10の試料観察域11が設けられている面に、後述する透明基板20が配置され、固着される。具体的には、図3Aおよび図3Bに示すように、観察支援具10の周縁(後述する支持部Gとなる部分)を除く部分と、スペース13とが、透明基板20に覆われる状態になるように透明基板20が配置され、固着される。透明基板20が観察支援具10に配置され、固着されることにより、複数の試料収容領域Fの開口端の周縁部が透明基板20と密着することになる。その結果、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bと、試料観察域11と、が透明基板20に覆われ、細胞液等が漏れないように封止される。
【0025】
また、観察支援具10は、図2、図3Aおよび図3Bに示すように、その周縁部に、支持部Gを有する。本実施形態では、支持部Gは、観察支援具10の周縁4辺に設けられている。また、この支持部Gは、顕微鏡に対向する面側において、透明基板20の顕微鏡対向面より透明基板20の厚さ相当分後退した段差を形成するように設けられる。したがって、本実施形態では、支持部Gは、透明基板20に覆われていない領域として設けられる。この支持部Gは、後述する観察用器具ホルダの観察用器具支持部220と接して、観察用器具100全体を支持する。観察支援具10の支持部Gの幅は、特に限定されず、観察用器具100全体が支持できればよい。
【0026】
観察支援具10は、例えば、シリコンウエハを、フォトリソグラフィー技術を用いて加工することにより形成される。
【0027】
(透明基板20)
本実施形態では、透明基板20として、例えばガラス板を用いる。具体的には、顕微鏡による観察の際に用いられるカバーガラスと同等機能を持つガラス板を用いる。また、本実施形態では、図2、図3Aおよび図3Bに示すように、透明基板20は、観察支援具10の試料観察域11が設けられている面の中央部に配置される。具体的には、図2、図3Aおよび図3Bに示すように、透明基板20は、試料収容領域Fおよびスペース13を覆って、観察支援具10に、その周縁部を残した状態となるように配置される。また、透明基板20は、本実施形態では、観察支援具10との接触部分に固着される。透明基板20が観察支援具10と固着されることにより、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bと、試料観察域11とを含む試料収容領域Fが透明基板20に覆われ、細胞液等が漏れないように封止される。観察支援具10と透明基板20との固着の方法としては、例えば、陽極酸化接合が用いられる。
【0028】
透明基板20の幅および長さの寸法は、図2、図3Aおよび図3Bに示すように、観察支援具10に固着した際、観察支援具10に、支持部Gとなる周縁部を残すことができる寸法とする。例えば、幅が6mm、長さが14mmである。透明基板20の幅および長さの寸法を観察支援具10より小さくすることで、透明基板20が観察支援具10に固着された際、観察支援具10の周縁部に透明基板20に覆われない領域である支持部Gが設けられる。また、透明基板20の厚さについては、例えば、0.17mmであり、顕微鏡観察に影響を及ぼさない厚さであればよい。
【0029】
(観察用器具ホルダ)
次に、第1実施形態の観察用器具ホルダについて説明する。第1実施形態の観察用器具ホルダは、図1Aおよび図1Bに示すように、観察用器具100を支持するホルダベース200と、ホルダベース200上において、観察用器具100の固定を行う固定機構Mと、を有する。これらの部材は、例えば、ステンレススチール等の金属により形成される。もちろん、材質はこれに限定されない。
【0030】
固定機構Mは、観察用器具100をホルダベース200内で押さえ込む押さえ具300と、押さえ具300をホルダベース200に固定する固定部材400と、を構成要素として含む。
【0031】
ホルダベース200には、観察用器具100と、スペーサ30と、緩衝材40とが、この順に収容される。この状態のホルダベース200に、押さえ具300が装着される。押さえ具300は、固定部材400によりホルダベース200に固定される。これにより、固定部材400により押圧された押さえ具300が、緩衝材40を介して観察用器具100を押圧して、観察用器具100をホルダベース200内において固定する。
【0032】
図1Aおよび図1Bに示すように、観察用器具100と押さえ具300との間に、緩衝材40、および、緩衝材40の位置を固定するスペーサ30が配置される。緩衝材40は、押さえ具300の押し込みの際における観察用器具100の破損を防ぐ機能を有している。なお、本実施形態では、図1Aおよび図1Bに示す緩衝材40に限られず、緩衝材40と同様の機能を有する部材であればよい。省略できる場合には、緩衝材40を省略してもよい。また、緩衝材40とスペーサ30とを一体化したものを用いてもよい。
【0033】
また、図1Aおよび図1Bに示すように、ホルダベース200と押さえ具300との間にシール材50が配置される。シール材50は、ホルダベース200と押さえ具300との間から細胞培養液が漏れるのを防ぐ機能を有している。シール材50としては、例えば、O−リングを用いることができる。しかし、これに限られず、同様の機能を有する部材であれば、他の部材であってもよい。また、省略できる場合には、シール材50を省略してもよい。
【0034】
(ホルダベース200)
ホルダベース200の側面図、A−A矢視截断端面図、X矢視側からの平面図、Y矢視側からの平面図を、それぞれ、図4A、図4B、図4C、図4Dに示す。
【0035】
ホルダベース200は、有底円筒体として形成される。ホルダベース200は、押さえ具ケース210と、観察用器具支持部220と、スペーサ支持部230と、観察窓240と、押さえ具支持部250と、外向きフランジ260と、により構成される。
【0036】
ホルダベース200の内部空間である押さえ具ケース210には、押さえ具300の押さえ部310(図9A参照)が収容される。押さえ具ケース210の底211の中央部には、観察用器具100を支持するための構造として段部を構成する観察用器具支持部220が設けられる。また、観察用器具支持部220の外周側には、スペーサ30を支持するための段部としてスペーサ支持部230が設けられる。観察用器具支持部220と、スペーサ支持部230とは、底211に階段状に設けられる。
【0037】
観察用器具支持部220は、底211に、観察窓240の開口端の外側の縁として観察用器具100を支持するための段部として設けられる。また、段部の形状を、観察用器具100の観察支援具10の外形と対応させた形状とすることによって、段部の内周壁によって、観察用器具100の横方向のずれが規制される。
【0038】
観察用器具支持部220は、上方から見て短冊状に形成され、かつ、四隅に半円形状の切り込み221が設けられた形状となっている。この切り込み221は、観察用器具100の観察用器具支持部220への着脱を容易にするために設けられている。具体的には、ピンセットの先などが、挿入できる形状としてある。
【0039】
また、図9Aに示すように、観察用器具支持部220の段部としての高さは、すなわち、ホルダベース200の底面225から高さは、透明基板20の厚さ相当する長さに設けられている。
【0040】
スペーサ支持部230は、観察用器具支持部220の外周側に、スペーサ30を支持するための段部として設けられる。また、段部の形状を、スペーサ30の外形と対応させた形状とすることによって、段部の内周壁によって、スペーサ30の横方向のずれが規制される。また、スペーサ支持部230の四隅にも、スペーサ30の着脱を容易にするために切り込み231が設けられている。切り込み231は、本実施形態では半円状に設けられている。
【0041】
観察窓240は、図4C、図4Dに示すように、押さえ具ケース210の底211の中央部に設けられている。観察窓240の幅および長さの寸法を、観察用器具100の透明基板20の平面形状および外形寸法と対応させた形状に設けられている。また、観察窓240の深さ方向の寸法は、本実施形態においては、透明基板20の厚さに相当する寸法とする。もちろん、観察窓240の深さに合わせて、相当する厚さを有する透明基板20を採用してもよい。なお、本実施形態では、図4C、図4Dに示すように、観察窓240の四隅にも、切り込み241を設けている。これは、観察用器具100が挟まってしまった場合、ホルダベース200のY矢視側からピンセットなどによる着脱を容易にするためである。
【0042】
観察用器具100がホルダベース200の観察用器具支持部220に収容されたとき、観察用器具100の透明基板20は、観察窓240内に収容されることとなる(図9A参照)。その結果、観察支援具10の試料観察域11が、透明基板20を介して観察窓240において観察可能となる。すなわち、この観察窓240に顕微鏡の対物レンズLを近接させ、当該観察窓240が臨む試料観察域11内の細胞を観察することが可能となる。
【0043】
本実施形態では、観察用器具支持部220の(Y矢視方向)厚さ、すなわち、観察窓240の深さが、前述したように、透明基板20の厚さに相当する高さに設けられている。このため、観察用器具100が観察用器具支持部220に収容されたとき、透明基板20の、観察支援具10と固着されていない面(顕微鏡と対向する側の面である観察面)21とホルダベース200の底面225とがフラットな状態になる(図9A参照)。これにより、細胞を観察する際、対物レンズLを透明基板20の観察面21上に沿って相対的にスキャンさせた場合に、同対物レンズLがホルダベース200の底面225などに接触することなく観察することができる。
【0044】
押さえ具支持部250は、シール材50を固定するシール材固定部251と、ピンホール252と、を有する。シール材固定部251は、押さえ具ケース210の外周形状に沿って設けられている。なお、シール材50を省略できる場合には、シール材固定部251を省略してもよい。一方、ピンホール252には、後述する押さえ具300の第1ピン331が挿入される。これにより、押さえ具300が、ホルダベース200の押さえ具ケース210内で回転するのを防いでいる。なお、本実施形態では、押さえ具支持部250にピンホール252を設けているが、押さえ具300の第1ピン331と合わさることで、押さえ具300の押さえ具ケース210内で回転するのを防ぐ機能を有するものであればよい。例えば、押さえ具300の第1ピン331を挿入することができるくぼみでもよい。
【0045】
外向きフランジ260は、図4Aおよび図4Bに示すように、雄ねじ261を有する。この雄ねじ261は、後述する図8Aおよび図8Bに示す固定部材400の雌ねじ401と螺合する。
【0046】
(スペーサ30)
スペーサ30の構造の一例について、側面図、A−A矢視截断端面図、平面図を、図5A、図5B、図5Cに示す。スペーサ30は、観察窓240を臨む位置に貫通孔31を有する。貫通孔31は、後述する緩衝材40の外形と対応させた形状とすることによって、貫通孔31の内周壁によって、ホルダベース200内での緩衝材40の平面方向のずれが規制される。
【0047】
本実施形態では、スペーサ30の貫通孔31を緩衝材40の外周形状を対応させた形状としたが、ホルダベース200内での緩衝材40の平面方向のずれを防ぐことができるものであればよい。
【0048】
(緩衝材40)
緩衝材40の一例の、側面図、A−A矢視截断端面図、平面図を、図6A、図6B、図6Cに示す。
【0049】
緩衝材40は、例えば、ゴムシートなどの弾性材料により形成される。緩衝材40の外形は、本実施例では、スペーサ30の貫通孔31に対応した外周形状とする。また、厚さ方向の形状としては、観察用器具100を被い、破損を防ぐことができる形状であればよい。
【0050】
図6Cに示すように、緩衝材40は、複数の緩衝材貫通孔41を有する。各緩衝材貫通孔41は、図2に示す観察支援具10の観察支援具貫通孔12a、12bに対応した位置に設けられる(図10B参照)。緩衝材40に設けられる緩衝材貫通孔41の位置および数は、図6Cに示す例に限られない。観察支援具10の観察支援具貫通孔12a、12bの配置に応じて、緩衝材貫通孔41を設ける位置を決めることができる。
【0051】
また、緩衝材40は、第2ピン42を有する。緩衝材40の第2ピン42は、後述する押さえ具300のくぼみ312に挿入される。これによって、緩衝材貫通孔41と、後述する押さえ具貫通孔311と、の位置がずれることを防いでいる。
【0052】
なお、緩衝材40は、ホルダベース200内での平面方向のずれを防ぐために、スペーサ30と一体化したものでもよい。つまり、緩衝材40の外形が、ホルダベース200のスペーサ支持部230の段部の形状に対応するものでもよい。
【0053】
(押さえ具300)
押さえ具300の側面図、A−A矢視截断端面図、X矢視側からの平面図、Y矢視側からの平面図を、それぞれ、図7A、図7B、図7C、図7Dに示す。
【0054】
押さえ具300は、側面部325と底面部315とを有する有底円筒体として形成される。押さえ具300は、押さえ部310と、ケース320と、外向きフランジ330と、を有する。ケース320は、側面部325と底面部315とにより構成される。
【0055】
押さえ部310は、底面部315の中央部に設けられている。また、押さえ具300の軸方向に厚みが設けられている。押さえ部310の軸方向の長さは、使用する緩衝材40の厚さとの関係で決まる。本実施形態では、図9Aに示すように、押さえ部310は、緩衝材40を介して観察用器具100を押圧する。
【0056】
また、図7B、図7C、図7Dに示すように、押さえ部310の中央部には、複数の押さえ具貫通孔311が設けられる。各押さえ具貫通孔311は、図2に示す観察支援具10の観察支援具貫通孔12a、12bと連通可能となるように、対応した位置に設けられる(図10B参照)。押さえ具貫通孔311から細胞培養液の注入および排出を行う。
【0057】
押さえ具貫通孔311は、図9AにおけるZ矢視部分を拡大した図9Bに示すように、観察支援具貫通孔12a、12bに対応して、311aと311bとにより対を構成する。また、各貫通孔311a、311bは、図9BにおけるA−A矢視断面図である図9cに示すように、長方形の溝311c内に開口する構造となっている。このような構造とした理由は、この溝311cを含めて観察用の試料液体を満たすことにより、観察支援具貫通孔12a、12b内の試料液体が、311aおよび311bの上方側で連通して、試料液体のレベル差が生じないようにするためである。この結果、試料観察域11において、レベル差に起因する試料液体の揺れが抑えられる。
【0058】
なお、他の図では、押さえ具貫通孔311の開口部分の図示を簡略化するため、押さえ具貫通孔311a、311bが溝311c内において開口する構造を示すことを省略している。図9Bおよび図9Cに示す構造と同様の構造とすることを想定している。これは、他の実施形態においても同様である。
【0059】
押さえ部310のY矢視側には、くぼみ312が設けられている。くぼみ312には、緩衝材40の第2ピン42(図6A参照)が挿入される。これによって、緩衝材貫通孔41と、押さえ具貫通孔311との位置がずれることを防いでいる。
【0060】
ケース320は、押さえ具300のX矢視側の中央部に設けられている。ケース320には、押さえ部310の押さえ具貫通孔311から細胞培養液を注入するための細胞注入管(図示せず)、押さえ具貫通孔311から細胞培養液を排出するための細胞排出管(図示せず)、細胞培養液の温度を計測する温度センサ(図示せず)などを収容する。
【0061】
外向きフランジ330のY矢視側に第1ピン331が設けられている(図7D)。第1ピン331は、ホルダベース200のピンホール252に挿入される。これにより、押さえ具300が、ホルダベース200の押さえ具ケース210内で回転するのを防いでいる。
【0062】
(固定部材400)
固定部材400の側面図、A−A矢視截断端面図、平面図を、それぞれ、図8A、図8B、図8Cに示す。
【0063】
固定部材400は、円環状の形態を有する。その円環の一端側に、内向きフランジ410を有する。また、固定部材400の円環の他端側の内周側に、雌ねじ401が形成されている。
【0064】
雌ねじ401には、ホルダベース200の雄ねじ261がねじ込まれる(図9A参照)。これにより、押さえ具300が、内向きフランジ410により押圧されて、押さえ具ケース210内に固定される。また、内向きフランジ410により押圧されて、押さえ具300が緩衝材40を介して観察用器具100を押圧する。
【0065】
(使用態様)
次に、本実施形態の観察用器具および観察用器具ホルダの使用態様について説明する。図9Aに、本実施形態の観察用器具ホルダの構成部材が組み立てられ、本実施形態の観察用器具が保持された状態の断面図を示す。また、図10Aおよび図10Bに、本実施形態の観察用器具ホルダの観察用器具100付近の拡大図を示す。すなわち、図10Aは図4に示すホルダベース200に載せられた図2に示す観察用器具100のB−B矢視拡大端面図、図10Bは図4に示すホルダベースに載せられた図2に示す観察用器具100のC−C矢視拡大端面図をそれぞれ示す。
【0066】
図10Aに示すように、観察用器具100において、観察支援具10の試料観察域11を含む試料収容領域Fが設けられている面に、透明基板20が接して、試料収容領域Fの開口面を覆っている。これにより、試料観察域11が細胞等の観察対象収容空間として機能できることとなる。
【0067】
一方、図10Bに示すように、観察用器具100において、観察支援具10の試料観察域11が設けられている面に、透明基板20が接して、第2観察支援具貫通孔12b(12aについても同じ)の開口面を覆っている。これにより、図3Aに示す構造に基づいて観察対象収容空間に、これと連通する第2観察支援具貫通孔12a(12bでもよい)を介して、観察対象となりうる液体を注入し、第2観察支援具貫通孔12b(12aでもよい)を介して排出することができる。
【0068】
なお、試料液体を満たした場合に、図9Bおよび図9Cにおいて示したように、押さえ具貫通孔311a、311bの開口部において試料液体が連通する。このため、前述したように、試料観察域において試料液体の揺れが抑えられる。
【0069】
図10Aおよび図10Bに示すように、ホルダベース200に観察用器具100が収容されたとき、ホルダベース200の観察用器具支持部220と観察用器具100の支持部Gとが接して、観察用器具100全体が支持されている。そして、緩衝材40を介して押さえ具300によって固定されている。本実施形態の観察用器具ホルダでは、上記のように、観察用器具100において透明基板20の支持および固定を行っているため、観察現場での、観察用器具100に対する透明基板20の接着作業を必要としない。
【0070】
また、図10Aおよび図10Bに示すように、ホルダベース200に観察用器具100が収容されたとき、ホルダベース200の観察窓240内に観察用器具100の透明基板20が位置している。この観察窓240に位置した透明基板20を通して、試料観察域11内の細胞等を顕微鏡により観察することができる。このとき、ホルダベース200の観察窓240の深さ、すなわち、ホルダベース200の段部の高さが、支持部Gの透明基板20の観察面からの段差が、本実施形態では、透明基板20の厚さ、相当するように設けられている。そのため、図10Aおよび図10Bに示すように、透明基板20の観察面21とホルダベース200の底面225とがフラットな状態となる。したがって、開口数の大きい対物レンズL(例えば、油浸レンズ)を観察窓240に近接させた状態で透明基板20の観察面に沿って移動させても、ホルダベース200と対物レンズLとが接触することなく、観察を行うことができる。
【0071】
さらに、観察窓240から透明基板20が突出していないので、顕微鏡の対物レンズLを観察窓240の外側から近接して相対平面移動させた場合でも、対物レンズLが透明基板20と接触することが避けられる。
【0072】
なお、ホルダベース200に観察用器具100が収容する際、ホルダベース200に設けられた観察窓240側から、例えば、図示しない吸引ピンセットにより観察用器具100を吸引して捕捉することによって、搬送、取り付け、取り外し等の取り扱いを容易に行うことができて、その結果、観察用器具100の取り付け作業を容易に行うことが可能となる。
【0073】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の観察用器具および観察用器具ホルダについて説明する。
【0074】
(観察用器具100A)
まず、第2実施形態の観察用器具100Aについて説明する。図11に第2実施形態の観察用器具100Aを示す。図12Aに図11のA−A矢視断面図を示し、図12Bに図11のB−B矢視断面図を示す。第2実施形態の観察用器具100Aの構成は、第1実施形態の観察用器具100とほぼ同様であり、異なる点を中心として説明する。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には同じ符号を付してある。
【0075】
第2実施形態の観察用器具100Aは、図11、図12Aおよび図12Bに示すように、観察支援具10Aと、透明基板20と、を有する。
【0076】
観察支援具10Aには、第1の実施形態と同様に、図11および図12Aに示すように、複数の試料収容領域Fがスペース13となる領域を挟んで配列されている。各試料収容領域Fには、長方形状の穴14と、一対の第1観察支援具貫通孔12a、第2観察支援具貫通孔12bとが設けられる。また、各対の第1観察支援具貫通孔12aと第2観察支援具貫通孔12bとの間に、試料観察域11が配置される。
【0077】
一方、観察支援具10Aは、図12Aおよび図12Bに示すように、試料収容面側の周縁部の面を後退させた段部状態に形成された支持部GAを有する。この支持部GAは、図2に示す支持部Gに相当するものである。しかし、観察支援具10Aは、透明基板20に覆われる領域が他の領域より突出した凸形状に形成され。このように、その厚さ方向に凸形状に構成される点において、図2に示す支持部Gとは構成が異なっている。支持部GAは、試料収容領域F等の形成を含めて、例えば、フォトリソグラフィー技術を用いて形成することができる。
【0078】
観察用支援具10Aの試料収容面(試料観察域11が設けられている面)側に、支持部GAを除く領域を覆うように、透明基板20が配置され、固定される。具体的には、図12Aおよび図12Bに示すように、観察用支援具10の凸部分の縁15に囲まれる領域を覆うように、スペース13を含む透明基板20に接して、陽極酸化等により固着される。透明基板20との固着により、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bと、試料観察域11と、が透明基板20に覆われ、細胞液等が漏れないように封止される。
【0079】
また、観察支援具10Aは、図11、図12Aおよび図12Bに示すように、透明基板20に覆われていない領域である支持部GAを有する。支持部GAは、観察支援具10Aの縁15より外側の領域、すなわち、透明基板20と固着されていない領域において、透明基板20と固着されている面より低い位置に、段差を構成するように設けられている。この支持部GAは、観察用器具ホルダの観察用器具支持部220と接して、観察用器具100A全体を支持する。支持部GAの幅は、特に限定されず、観察用器具100A全体が支持できればよい。また、支持部GAから透明基板20の観察面21までの段差としての高さは、観察用器具ホルダの観察用器具支持部220の段部の高さ、言い換えると、観察窓240深さに相当していればよい。例えば、0.17mmとする。
【0080】
(観察用器具ホルダ)
次に、第2実施形態の観察用器具ホルダについて説明する。第2実施形態の観察用器具ホルダは、第1実施形態の観察用器具ホルダとほぼ同様であり、異なる点を中心として説明する。
【0081】
第2実施形態の観察用器具ホルダと、第1実施形態の観察用器具ホルダとは、ホルダベース200の観察用器具支持部220の段部の高さ、すなわち観察窓240の深さが異なる。すなわち、観察用器具支持部220の段部の高さは、第1実施形態では、透明基板20の厚さ相当に設けられている。一方、第2実施形態では、観察用器具支持部220の段部の高さは、透明基板20の観察面21から支持部GAまでの段差相当に設けられている。
【0082】
(使用態様)
次に、第2実施形態の観察用器具および観察用器具ホルダの使用態様について説明する。図13Aおよび図13Bに、組み立てられ観察用器具を保持した状態の、第2実施形態の観察用器具ホルダの観察用器具100A付近の断面拡大図を示す。すなわち、図13Aはホルダベース200に載せられた図11に示す観察用器具100AのB−B矢視拡大端面図、図13Bはホルダベース200に載せられた図11に示す観察用器具100AのC−C矢視拡大端面図をそれぞれ示す。
【0083】
図13Aに示すように、観察用器具100Aにおいて、観察支援具10Aの試料観察域11が設けられている面に、透明基板20が接して、試料観察域11の開口面を覆っている。これにより、試料観察域11が細胞等の観察対象収容空間として機能できることとなる。
【0084】
一方、図13Bに示すように、観察用器具100Aにおいて、観察支援具10Aの試料観察域11が設けられている面に、透明基板20が接して、第2観察支援具貫通孔12b(12aについても同じ)の開口面を覆っている。これにより、図12Aに示す構造に基づいて観察対象収容空間に、これと連通する第2観察支援具貫通孔12a(12bでもよい)を介して、観察対象となりうる液体を注入し、第2観察支援具貫通孔12b(12aでもよい)を介して排出することができる。
【0085】
図13Aおよび図13Bに示すように、ホルダベース200に観察用器具100Aが収容されたとき、ホルダベース200の観察用器具支持部220と観察用器具100Aの支持部GAとが接して、観察用器具100A全体が支持されている。そして、緩衝材40を介して押さえ具300によって固定されている。本実施形態では、観察用器具100Aにおいて透明基板20の支持および固定を行っているため、第1実施形態と同様に、観察現場での、観察用器具100Aに対する透明基板20の接着作業を必要としない。
【0086】
また、図13Aおよび図13Bに示すように、ホルダベース200に観察用器具100Aが収容されたとき、ホルダベース200の観察窓240に観察用器具100Aの透明基板20が位置している。この観察窓240に位置した透明基板20を通して、試料観察域11内の細胞等を顕微鏡により観察することができる。このとき、観察用器具支持部220の観察窓240の深さは、透明基板20の観察面21からの支持部GAまでの段差相当となるように設けられている。そのため、透明基板20とホルダベース200の底面225とがフラットな状態となる。したがって、開口数の大きい対物レンズL(例えば、油浸レンズ)を観察窓240に近接させて、当該透明基板20の観察面21に沿ってスキャンさせたとしても、ホルダベース200または透明基板20と、対物レンズLとが接触することなく、観察を行うことができる。
【0087】
なお、ホルダベース200に観察用器具100Aが収容する際、ホルダベース200に設けられた観察窓240側から、前述した吸引ピンセット等により、観察窓240を介して、観察用器具100Aを吸引することにより補足して運ぶことにより、観察用器具100の取り付け作業が容易になる。
【0088】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態の観察用器具および観察用器具ホルダについて説明する。
【0089】
(観察用器具100A)
まず、第3実施形態の観察用器具100Bについて説明する。図14に第3実施形態の観察用器具100Bを示す。図15Aに図14のA−A矢視断面図を示し、図15Bに図14のB−B矢視断面図を示す。第3実施形態の観察用器具100Bの構成は、第1実施形態の観察用器具100とほぼ同様であり、異なる点を中心として説明する。なお、第1実施形態と同様な機能を有する部位には同じ符号を付してある。
【0090】
第3実施形態の観察用器具100Bは、図14、図15Aおよび図15Bに示すように、観察支援具10Bと、透明基板20と、サポート基板60と、を有する。
【0091】
観察支援具10Bには、第1、第2の実施形態と同様に、図14および図15Aに示すように、複数の試料収容領域Fがスペース13となる領域を挟んで配列されている。各試料収容領域Fには、長方形状の穴14と、一対の第1観察支援具貫通孔12a、第2観察支援具貫通孔12bとが設けられる。また、各対の第1観察支援具貫通孔12aと第2観察支援具貫通孔12bとの間に、試料観察域11が配置される。
【0092】
観察支援具10Bは、透明基板20に対する寸法が第1実施形態の観察用支援具10と異なり、観察用支援具10Bの幅および長さの寸法は透明基板20のものと同じである。
【0093】
観察用支援具10Bの試料観察域11が設けられている面には、透明基板20が配置され、固着される。具体的には、図15Aおよび図15Bに示すように、観察試料域11およびスペース13を含む、観察支援具10Bの縁15に囲まれる領域が透明基板20に覆われる。観察支援具10Bと透明基板20との固着により、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bと、試料観察域11と、が透明基板20に覆われ、細胞液等が漏れないように封止される。
【0094】
また、観察支援具10Bは、透明基板20と固着されている面の反対側の面において、サポート基板60と固着される。固着は、例えば、接着材により行うことができる。このサポート基板60には、観察支援具10Bに設けられている観察支援具貫通孔12a、12bに対応した位置に一対のサポート基板貫通孔60a、60bが設けられている。
【0095】
サポート基板60は、例えば、金属、樹脂等の材料により板状に形成される。観察支援具10Bおよび透明基板20を支持のための支持部材として機能する。具体的には、図14、図15Aおよび図15Bに示すように、透明基板20および観察支援部10Bに覆われている領域と、これらに覆われていない領域である支持部GBとにより構成される。
【0096】
支持部GBは、周縁に設けられる。このため、透明基板20と観察支援具10Bとが、サポート基板60の支持部GBの面から凸型に突出した構造となる。この突出部分の段差、すなわち、支持部GBの面から透明基板20の観察面21までの高さは、透明基板20の厚さと観察支援具10Bの厚さの和に相当する。この支持部GBは、観察用器具ホルダの観察用器具支持部220と接して、観察時に、観察用器具100B全体を支持する。支持部GBの幅は、特に限定されず、観察用器具100B全体が支持できればよい。
【0097】
(観察用器具ホルダ)
次に、第3実施形態の観察用器具ホルダについて説明する。第3実施形態の観察用器具ホルダは、第1実施形態の観察用器具ホルダとほぼ同様であり、異なる点を中心として説明する。
【0098】
第3実施形態の観察用器具ホルダと、第1実施形態の観察用器具ホルダとは、ホルダベース200の観察用器具支持部220の観察窓240の深さ、すなわち軸方向長さがから段部の高さが異なる。
【0099】
観察用器具支持部220の段部の高さ(観察窓240の深さ)は、第1実施形態では透明基板20の厚さ相当分であったが、第3実施形態では、透明基板20の厚さと、観察支援具10Bの厚さとの和に相当する高さとなるように設けられている。
【0100】
(使用態様)
次に、第3実施形態の観察用器具および観察用器具ホルダの使用態様について説明する。図16Aおよび図16Bに、組み立てられ、観察用器具を保持した状態の、第3実施形態の観察用器具ホルダの観察用器具100B付近の断面拡大図を示す。すなわち、図16Aはホルダベース200に載せられた図14に示す観察用器具100BのB−B矢視拡大端面図、図16Bはホルダベース200に載せられた図14に示す観察用器具100BのC−C矢視拡大端面図をそれぞれ示す。
【0101】
図16Bに示すように、観察用器具100Bにおいて、観察支援具10Bの試料観察域11が設けられている面に、透明基板20が接して、試料観察域11の開口面を覆っている。これにより、試料観察域11が細胞等の観察対象収容空間として機能できることとなる。
【0102】
一方、図16Aに示すように、観察用器具100Bにおいて、観察支援具10Bの試料観察域11が設けられている面に、透明基板20が接して、第2観察支援具貫通孔12b(12aについても同じ)の開口面を覆っている。これにより、図15Aに示す構造に基づいて観察対象収容空間に、これと連通する第2観察支援具貫通孔12a(12bでもよい)を介して、観察対象となりうる液体を注入し、第2観察支援具貫通孔12b(12aでもよい)を介して排出することができる。
【0103】
図16Aおよび図16Bに示すように、ホルダベース200に観察用器具100Bが収容されると、ホルダベース200の観察用器具支持部220と観察用器具100Bの支持部GBとが接し、緩衝材40を介して押さえ具300によって固定される。支持部GBを介して観察用器具支持部220により観察用器具100B全体が支持される。そして、なお、第3実施形態では、観察支援具10Bは、サポート基板60に固着されているため、強固に支持される。また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、観察現場での、観察用器具100Bに対する透明基板20の接着作業を必要としない。
【0104】
また、図16Aおよび図16Bに示すように、ホルダベース200に観察用器具100Bが収容されたとき、ホルダベース200の観察窓240に観察用器具100Bの透明基板20が位置している。この観察窓240に位置した透明基板20を通して、試料観察域11内の細胞等を顕微鏡により観察することができる。観察用器具支持部220の観察窓240からの段部の高さが、透明基板20の観察面21から支持部GBまでの段差、すなわち、透明基板20の厚さと観察支援具10Bの厚さとの和に相当した高さに設けられているため、透明基板20とホルダベース200の底面225とがフラットな状態となる。したがって、開口数の大きい対物レンズL(例えば、油浸レンズ)を観察窓240に近接させて、透明基板20の面に沿ってスキャンさせても、ホルダベース200または透明基板20と対物レンズLとが、接触することなく、観察を行うことができる。
【0105】
なお、ホルダベース200に観察用器具100Bが収容する際、ホルダベース200に設けられた観察窓240側から、観察窓240を介して、例えば、吸引ピンセットにより観察用器具100Bを吸引することにより捕捉して、観察窓に装着することができる。したがって、観察用器具100の取り付け作業が容易になる。
【0106】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態の観察用器具および観察用器具ホルダについて説明する。
【0107】
(観察用器具100A)
まず、第4実施形態の観察用器具100Cについて説明する。図17に第4実施形態の観察用器具100Cを示す。図18Aに図17のA−A矢視断面図を示し、図18Bに図17のB−B矢視断面図を示す。なお、第1から第3実施形態と同様な機能を有する部位には同じ符号を付してある。
【0108】
第4実施形態の観察用器具100Cは、図17、図18Aおよび図18Bに示すように、観察支援具10Cと、透明基板20と、サポート部材70と、を有する。
【0109】
第4実施形態の観察用器具100Cは、第3の実施形態と異なり、各試料収容領域F単位に形成された観察支援具ユニット10Cが透明基板20に固定された状態で、サポート部材70に設けられた凹部71に収容されて、支持される構造を有する。すなわち、観察用器具100Cは、複数個の観察支援具ユニット10Cを、試料収容領域数分、スペース73を間において、透明基板20に配置して固定し、さらに、サポート部材70により、補強した構造を有する。ここで、観察支援具ユニット10Cは、図17、図18Aおよび図18Bに示すように、前述した観察支援具10における一つの試料収容領域Fを切り出したものと同様の構造を備えている。各観察支援具ユニット10Cには、試料収容領域Fに、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bと、試料観察域11とが設けられる。各観察支援具ユニット10Cは、例えば、前述した観察支援具10のように形成しておき、チップ状に切り出すことにより設けることができる。
【0110】
具体的には、図18Aおよび図18Bに示すように、観察試料域11が、間隔を開けるためのスペーサとして機能するスペース73を挟んで順次配列される。配列される各観察支援具ユニット10Cは、透明基板20との固着により、各観察支援具ユニット10Cにおいて、第1観察支援具貫通孔12aおよび第2観察支援具貫通孔12bと、試料観察域11と、が透明基板20に覆われ、細胞液等が漏れないように封止される。
【0111】
また、観察支援具ユニット10Cは、透明基板20と固着されている面以外の面において、サポート部材70の凹部71に収容される。このサポート部材70の各凹部71の底面には、各観察支援具ユニット10Cに設けられている観察支援具貫通孔12a、12bに対応した位置に、それぞれと対応して連通するように一対のサポート部材貫通孔70a、70bが設けられている。また、サポート部材70のうち、観察支援具ユニット10C間が、前述したスペース73を構成している。
【0112】
サポート部材70は、例えば、金属、ケイ素等の他、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂等により形成することができる。強度、精度などを考慮すると金属が好ましく用いられる。このサポート部材70には、凹部71が設けられ、各観察支援具ユニット10Cを収容すると共に、透明基板20を支持する支持部材としての機能を有する。図17、図18Aおよび図18Bに示すように、サポート部材70は、透明基板20と接する面まで凸型に突出した形状となっている。このサポート部材の非突出部分、すなわち、透明基板20に覆われていない領域を有し、その部分が支持部GCとなる。この支持部GCは、観察用器具ホルダの観察用器具支持部220と接して、観察用器具100C全体を支持する。支持部GCの幅は、特に限定されず、観察用器具100C全体が支持できればよい。また、透明基板20の観察面から支持部GCの面までの段差は、観察用器具支持部220の段部の高さ(観察窓240の深さ)に相当する。
【0113】
(観察用器具ホルダ)
次に、第4実施形態の観察用器具ホルダについて説明する。第4実施形態の観察用器具ホルダは、基本的な構成は、第3の実施形態の観察用器具ホルダとほぼ同様であり、異なる点を中心として説明する。
【0114】
第4実施形態の観察用器具ホルダと、第3の実施形態の観察用器具ホルダとは、ホルダベース200の観察用器具支持部220の段部の観察窓240に、第3の実施形態では観察支援具10Bが装着され、第4の実施形態では、透明基板20とサポート部材70の凸部とが装着される点において相違する。観察窓240の深さについては、第3の実施形態と第4の実施形態において同一となってもよい。
【0115】
(使用態様)
次に、第4実施形態の観察用器具および観察用器具ホルダの使用態様について説明する。図19Aおよび図19Bに、組み立てられて観察用器具を保持した状態の、第4実施形態の観察用器具ホルダの観察用器具100C付近の断面拡大図を示す。すなわち、図19Aはホルダベース200に載せられた図17に示す観察用器具100CBのB−B矢視拡大端面図、図19Bはホルダベース200に載せられた図17に示す観察用器具100CのC−C矢視拡大端面図をそれぞれ示す。
【0116】
すなわち、図18Bに示すように、観察用器具100Cにおいて、観察支援具ユニット10Cの試料観察域11が設けられている面が、透明基板20に接して、試料観察域11の開口面を覆われている。これにより、試料観察域11が細胞等の観察対象収容空間として機能できることとなる。
【0117】
一方、図18Aに示すように、観察用器具100Cにおいて、観察支援具ユニット10Cの試料観察域11が設けられている面に、透明基板20が接して、第2観察支援具貫通孔12b(12aについても同じ)の開口面を覆っている。これにより、図18Aに示す構造に基づいて観察対象収容空間に、これと連通する第2観察支援具貫通孔12a(12bでもよい)を介して、観察対象となりうる液体を注入し、第2観察支援具貫通孔12b(12aでもよい)を介して排出することができる。
【0118】
図19Aおよび図19Bに示すように、ホルダベース200に観察用器具100Cが収容されたとき、ホルダベース200の観察用器具支持部220と観察用器具100Cの支持部GCとが接して、観察用器具100C全体が支持されている。そして、緩衝材40を介して押さえ具300によって固定されている。また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、観察現場での、観察用器具100Cに対する透明基板20の接着作業を必要としない。
【0119】
また、図19Aおよび図19Bに示すように、ホルダベース200に観察用器具100Cが収容されたとき、ホルダベース200の観察窓240に、観察用器具100Cの透明基板20と、サポート部材70の凸部とが位置している。この観察窓240に位置した透明基板20を通して、試料観察域11内の細胞等を顕微鏡により観察することができる。このとき、観察用器具支持部220の観察窓240からの段部の高さは、透明基板20の監察部から支持部GCまでの段差、すなわち、透明基板20の厚さと観察支援具10Cの凸部の厚さとの和に相当した高さに設けられている。そのため、透明基板20とホルダベース200の底面225とがフラットな状態となる。したがって、開口数の大きい対物レンズL(例えば、油浸レンズ)を観察窓240に近接させて、透明基板20の観察面21に沿ってスキャンさせても、ホルダベース200または透明基板20と対物レンズLとが、接触することなく、観察を行うことができる。
【0120】
なお、ホルダベース200に観察用器具100Cが収容する際、ホルダベース200に設けられた観察窓240側から、観察窓240を介して、例えば、吸引ピンセットにより観察用器具100Bを吸引することで、さらに観察用器具100の取り付け作業が容易になる。
【符号の説明】
【0121】
F…試料収容領域、G、GA、GB、GC…支持部、M…固定機構、
10…観察支援具、11…試料観察域、12a…第1観察支援具貫通孔12a、12b…第2観察支援具貫通孔、13…スペース、14…穴、20…透明基板、21…観察面、30…スペーサ、40…緩衝材、60…サポート基板、70…サポート部材、
100、100A、100B、100C…観察用器具、200…ホルダベース、210…押さえ具ケース、220…観察用器具支持部、225…底面、230…スペーサ支持部、240…観察窓、250…押さえ具支持部、260…外向きフランジ、300…押さえ具、400…固定部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダによって支持された状態において用いられ、試料を顕微鏡により観察するための観察用器具であって、
観察対象となる試料を収容する試料収容領域を有する観察支援具と、
前記観察支援具上の試料収容領域を覆う透明基板と、を有し、
前記透明基板は、観察支援具に固着され、
前記観察支援具は、その周縁部に前記ホルダにより支持される支持部を有し、
前記支持部は、前記透明基板に覆われない領域であって、前記透明基板の顕微鏡に対向する観察面より後退して段差を形成する位置に設けられること
を特徴とする観察用器具。
【請求項2】
請求項1に記載の観察用器具において、
前記支持部の段差は、前記観察面から透明基板の厚さに相当する高さであることを特徴とする観察用器具。
【請求項3】
請求項2に記載の観察用器具において、
前記観察支援具は、前記透明基板に覆われる領域が他の領域より突出した凸形状に形成され、
前記支持部の段差は、前記観察面から透明基板の厚さに相当する高さと、前記凸形状に突出した高さとの和に相当する高さであること
を特徴とする観察用器具。
【請求項4】
ホルダによって支持された状態において用いられ、試料を顕微鏡により観察するための観察用器具であって、
観察対象となる試料を収容する試料収容領域を有する観察支援具と、
前記観察支援具上の試料収容領域を覆う透明基板と、
前記観察支援具を支持するサポート基板と、を有し、
前記透明基板は、観察支援具に固着され、
透明基板と観察支援具とは、前記サポート基板から凸型に突出した構造に支持され、
前記サポート基板は、前記観察支援具が載せられていない周縁部に前記ホルダにより支持される支持部を有することを特徴とする観察用器具。
【請求項5】
ホルダによって支持された状態において用いられ、試料を顕微鏡により観察するための観察用器具であって、
観察対象となる試料を収容する試料収容領域を有する、複数の観察支援具ユニットと、
前記複数の観察支援具ユニットが、それぞれの試料収容領域を覆う状態で固着される透明基板と、
前記透明基板を支持するサポート部材と、を有し、
前記サポート部材は、透明基板と接する面まで凸型に突出した形状に形成され、透明基板と接する領域には、前記観察支援具ユニットを収容する凹部が観察支援具に対応して設けられ、凸型の非突出部分が、前記ホルダと接して、当該観察用器具を支持する支持部となることを特徴とする観察用器具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の観察用器具を支持するホルダであって、
前記観察用器具を支持するホルダベースを備え、
前記ホルダベースの底面には、前記観察用器具の透明基板を少なくとも収容する観察窓を構成する段部を有することを特徴とする観察用器具支持ホルダ。
【請求項7】
請求項6に記載のホルダにおいて、
前記段部の高さは、前記収容される透明基板の顕微鏡対向面が前記ホルダベースの底面とフラットになる高さに設定されることを特徴とする観察用器具支持ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−38923(P2011−38923A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187317(P2009−187317)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(500201406)株式会社ECI (12)
【Fターム(参考)】