説明

観察装置、検査装置および検査方法

【課題】 ウェハを検査する際の下地の影響を低減させた検査装置を提供する。
【解決手段】 検査装置1は、複数種の波長を有する照明光でウェハを照明する照明部30と、照明光により照明されたウェハを撮影する撮影部40と、複数種の波長毎に所定の重み付けを行って撮影部40により撮影されたウェハの検査用撮影像を生成するとともに、生成した検査用撮影像に基づいてウェハにおける欠陥の有無を判定する画像処理部27とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等に代表される被検基板の表面を観察するための観察装置、並びに、被検基板の表面を検査するための検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ(以下、ウェハと称する)の表面に形成されたパターンの異常や、レジスト(感光樹脂膜)上の傷および異物等を観察もしくは検査する装置として、様々な装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このようなウェハの検査は、破壊検査と非破壊検査とに大別される。破壊検査にはSEM(走査型電子顕微鏡)による検査等があり、非破壊検査には、目視による検査や、ウェハ表面を照明して得られる反射光を撮影して解析する検査等がある。
【0003】
また、ウェハの検査は各工程で行うことが好ましいが、欠陥がある場合に再生が可能なパターンの露光および現像工程が終わった段階で行う検査が特に重要である。なお、半導体製造工程では、レジストが塗布されたウェハの表面に所定の回路パターンが露光されると、現像、エッチング、スパッタリング、ドーピング、CMP(化学的機械的研磨)等の多くの工程を経て、再度レジスト塗布の後に別の回路パターンが露光され、その後同様の工程を経て複数の層が積み重ねられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−135211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この段階で最上層の回路パターンを照明しその反射光を撮影して検査すると、照明光が最上層の回路パターンより下層の部分で干渉を起こし、下層部分の形状が均一でない場合には干渉の程度も均一とはならないため、反射光に輝度の不均一な干渉光が含まれてしまうことがあった。そして、輝度の不均一な干渉光は、反射光によるウェハの像に濃淡となって現れるため、傷や異物の影響による濃淡と輝度の不均一な干渉光による濃淡とが区別できず、ウェハ検査の精度を低下させていた。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、被検基板を検査(観察)する際の下地の影響を低減させた観察装置、並びに検査装置および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る観察装置は、複数種の波長の照明光で被検基板を照明する照明部と、照明光により照明された被検基板を撮影する撮影部と、複数種の波長毎に重み付けを行って撮影部により撮影された被検基板の観察用撮影像を生成する撮影像生成部とを備えて構成される。
【0008】
なお、上述の観察装置において、撮影部は、複数種の波長に対応して複数設けられた撮像素子と、被検基板からの光を複数種の波長毎に分離して複数の撮像素子にそれぞれ導く撮像光学系とを有し、撮影像生成部は、複数の撮像素子により複数種の波長毎に撮影された撮影像に対し重み付けを行ってそれぞれ合成することにより、観察用撮影像を生成するように構成されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る検査装置は、複数種の波長の照明光で被検基板を照明する照明部と、照明光により照明された被検基板を撮影する撮影部と、複数種の波長毎に重み付けを行った被検基板の検査用撮影像を生成する撮影像生成部と、撮影像生成部により生成された検査用撮影像に基づいて被検基板における欠陥の有無を判定する判定部とを備えて構成される。
【0010】
なお、上述の検査装置において、照明部により被検基板を照明する照明光は平行光であり、撮影部は、被検基板からの正反射光による被検基板の像を撮影することが好ましい。
【0011】
また、上述の検査装置において、被検基板の表面には所定の繰り返しパターンが形成されており、照明光のうち第1の偏光状態の光を被検基板に送る第1の偏光素子と、被検基板の表面における第1の偏光状態が繰り返しパターンの繰り返し方向に対して斜めになるように被検基板を保持する保持部と、被検基板からの反射光のうち第1の偏光状態の光と直交する第2の偏光状態の光を撮影部に送る第2の偏光素子とを備え、撮影部は、第2の偏光状態の光による被検基板の像を撮影するような構成であってもよい。
【0012】
さらに、上述の検査装置において、照明部は、複数種の波長に対応して複数設けられるとともに複数種の波長のうち互いに異なるいずれかの波長を有する照明光をそれぞれ発する複数の照明器と、複数の照明器から発せられた照明光を合成して被検基板に導く集光光学系とを有して構成されることが好ましい。
【0013】
また、上述の検査装置において、複数種の波長は、3種類以上の波長で設定され、重み付けの割合は、所定の基準基板を照明部により照明して撮影部で撮影し、撮影像生成部により生成される基準基板の検査用撮影像において、基準基板の像が実際の基準基板の像とほぼ同一となるような割合に設定されることが好ましい。
【0014】
さらに、上述の検査装置において、撮影部は、複数種の波長に対応して複数設けられた撮像素子と、被検基板からの光を複数種の波長毎に分離して複数の撮像素子にそれぞれ導く撮像光学系とを有し、撮影像生成部は、複数の撮像素子により複数種の波長毎に撮影された撮影像に対し重み付けを行ってそれぞれ合成することにより、検査用撮影像を生成するように構成されることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る検査方法は、複数種の波長の照明光で被検基板を照明し、照明光により照明された被検基板を撮影し、複数種の波長毎に重み付けを行って、撮影した被検基板の検査用撮影像を生成し、生成した検査用撮影像に基づいて被検基板における欠陥の有無を判定することを特徴とする。
【0016】
なお、上述の検査方法において、被検基板を撮影する際、被検基板からの光を複数種の波長毎に分離して撮影し、複数種の波長毎に撮影した撮影像に対し重み付けを行ってそれぞれ合成することにより、検査用撮影像を生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検基板を検査(観察)する際の下地の影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る検査装置の全体構成を示す図である。
【図2】照明部の構成を示す図である。
【図3】撮影部の構成を示す図である。
【図4】ウェハの撮影像の一例を示す図である。
【図5】ウェハの一例を示す断面図である。
【図6】ウェハにおける加工膜の膜厚に対する干渉光の輝度の特性を例示する図である。
【図7】第2実施形態に係る検査装置の全体構成を示す図である。
【図8】ウェハ表面の外観図である。
【図9】繰り返しパターンの凹凸構造を説明する斜視図である。
【図10】直線偏光の入射面と繰り返しパターンの繰り返し方向との傾き状態を説明する図である。
【図11】直線偏光と楕円偏光の振動方向を説明する図である。
【図12】直線偏光の振動面の方向と繰り返しパターンの繰り返し方向との傾き状態を説明する図である。
【図13】直線偏光の振動面の方向が繰り返し方向に平行な偏光成分と垂直な偏光成分とに分かれる様子を説明する図である。
【図14】偏光成分の大きさと繰り返しパターンのライン部の線幅との関係を説明する図である。
【図15】検査装置の変形例を示す図である。
【図16】第1および第2実施形態の検査装置によるウェハ表面の検査方法を示すフローチャートである。
【図17】第1実施形態の検査装置においてe線の光線でウェハを照明して撮影した像である。
【図18】第1実施形態の検査装置においてg線の光線でウェハを照明して撮影した像である。
【図19】第1実施形態の検査装置においてh線の光線でウェハを照明して撮影した像である。
【図20】第1実施形態の検査装置において図17の像と図19の像を合成した像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。第1実施形態の検査装置1aは、図1に示すように、被検基板であるウェハ10を支持するステージ20と、主に3種類の波長を有する照明光でウェハ10を照明する照明部30と、当該照明光により照明されたウェハ10を撮影する撮影部40と、照明光学系23および観察光学系24と、画像処理部27および画像表示装置28とを主体に構成される。この検査装置1aは、半導体回路素子の製造工程において、ウェハ10の表面の検査を自動的に行う装置である。ウェハ10は、最上層のレジスト膜への露光・現像後、不図示の搬送系により、不図示のウェハカセットまたは現像装置から運ばれ、ステージ20に吸着保持される。
【0020】
ステージ20は、ステージ20(ウェハ10)の中心を通る法線(図1において上下方向に延びる軸)を回転軸としてウェハ10を回転可能に保持する。また、ステージ20は、上記回転軸および照明光の進む方向に対して垂直な方向(図1において奥手前方向)に延びる軸を中心に、ウェハ10を傾ける(チルトさせる)ことが可能であり、照明光の入射角を調整できるようになっている。
【0021】
照明部30は、図2に示すように、上述した3種類の波長に対応して設けられた3つの照明器31a,31b,31cと、各照明器31a,31b,31cから発せられた照明光を合成してウェハ10に導く集光光学系35とを備えて構成される。第1照明器31aは、詳細な図示を省略するが、キセノンランプや水銀ランプ等の光源や、光源からの光のうち所望の波長成分(輝線スペクトル)を抽出する干渉フィルタ(バンドパスフィルタ)等から構成され、上述した3種類の波長の一つである第1の波長を有する照明光を発するようになっている。
【0022】
第2照明器31bは、第1照明器31aと同様の構成であるが、3種類の波長の一つである第2の波長を有する照明光を発するようになっている。第3照明器31cも、第1照明器31aと同様の構成であるが、3種類の波長の一つである第3の波長を有する照明光を発するようになっている。これからわかるように、3つの照明器31a,31b,31cは、3種類の波長のうち互いに異なるいずれかの波長を有する照明光をそれぞれ発するようになっている。なお実際には、3つの照明器31a,31b,31cはそれぞれ、第1〜第3の波長±10nm〜30nm程度の波長幅を有する照明光を発する。
【0023】
集光光学系35は、3つの集光レンズ32a,32b,32cと、3つのミラー36,37,38とを有して構成される。第1集光レンズ32aは、第1照明器31aから発せられた第1の波長を有する照明光を集光して第1のミラー36に導く。第2集光レンズ32bは、第2照明器31bから発せられた第2の波長を有する照明光を集光して第2のミラー37に導く。第3集光レンズ32cは、第3照明器31cから発せられた第3の波長を有する照明光を集光して第3のミラー38に導く。
【0024】
第3のミラー38は、通常の反射ミラーである。第3のミラー38では、第3集光レンズ32cからの第3の波長を有する照明光が反射して第2のミラー37に向かうようになっている。第2のミラー37は、いわゆるダイクロイックミラーである。第2のミラー37では、第2集光レンズ32bからの第2の波長を有する照明光が反射して第1のミラー36に向かい、また、第3のミラー38からの第3の波長を有する照明光が透過して第1のミラー36に向かうようになっている。
【0025】
第1のミラー36も、いわゆるダイクロイックミラーである。第1のミラー36では、第1集光レンズ32aからの第1の波長を有する照明光が透過してウェハ10の表面に向かい、また、第2のミラー37からの第2および第3の波長を有する照明光が反射してウェハ10の表面に向かうようになっている。このように、第1のミラー36および第2のミラー37において第1〜第3の波長を有する照明光が合成されウェハ10に導かれる。なお、図2(図15も同様)においては、説明のため第1〜第3の波長を有する照明光の光軸を分けて記載しているが、実際には、合成され照明光の光軸は一致することになる。
【0026】
なお、第1集光レンズ32aと第1のミラー36との間には、第1のシャッター33aが光路上へ挿抜可能に設けられており、第1照明器31aによる照明のオン・オフを切り替えることができるようになっている。また、第2集光レンズ32bと第2のミラー37との間には、第2のシャッター33bが光路上へ挿抜可能に設けられており、第2照明器31bによる照明のオン・オフを切り替えることができるようになっている。また、第3集光レンズ32cと第3のミラー38との間には、第3のシャッター33cが光路上へ挿抜可能に設けられており、第3照明器31cによる照明のオン・オフを切り替えることができるようになっている。
【0027】
図1に示すように、照明光学系23は、照明部30からの照明光を平行光にしてウェハ10の表面に導くいわゆるテレセントリックな光学系になっている。また、照明部30と照明光学系23との間には、照明側偏光フィルタ22が光路上へ挿抜可能に設けられているが、第1実施形態では照明側偏光フィルタ22が光路上から抜去された構成となっている(照明側偏光フィルタ22の詳細については後述する)。
【0028】
観察光学系24は、ウェハ10の表面で反射した光を撮影部40に向けて集光する光学系である。また、観察光学系24と撮影部40との間には、受光側偏光フィルタ25が光路上へ挿抜可能に設けられているが、第1実施形態では受光側偏光フィルタ25が光路上から抜去された構成となっている(受光側偏光フィルタ25の詳細については後述する)。このように、第1実施形態では、照明側偏光フィルタ22および受光側偏光フィルタ25がそれぞれ光路上から抜去された構成となっており、照明部30によりウェハ10を照明する照明光が平行光となり、撮影部40がウェハ10からの正反射光による(ウェハ10の)像を撮影することになる。
【0029】
撮影部40は、図3に示すように、3種類の波長に対応して設けられた3つの撮像素子41a,41b,41cと、ウェハ10からの反射光を3種類の波長毎に分離して3つの撮像素子41a,41b,41cにそれぞれ導く撮像光学系45とを備えて構成される。第1〜第3撮像素子41a,41b,41cは、CCDやCMOS等の増幅型固体撮像素子であり、素子上に結像されたウェハ10の像を光電変換して、画像信号を画像処理部27に出力する。
【0030】
撮像光学系45は、3つのミラー46,47,48を有して構成される。第4のミラー46は、いわゆるダイクロイックミラーである。第4のミラー46では、ウェハ10からの第1の波長を有する反射光が透過して第1撮像素子41aに向かい、第2および第3の波長を有する照明光が反射して第5のミラー47に向かうようになっている。第5のミラー47も、いわゆるダイクロイックミラーである。第5のミラー47では、第4のミラー46からの第2の波長を有する反射光が反射して第2撮像素子41bに向かい、また、第4のミラー46からの第3の波長を有する反射光が透過して第6のミラー48に向かうようになっている。
【0031】
第6のミラー48は、通常の反射ミラーである。第6のミラー48では、第5のミラー47からの第3の波長を有する反射光が反射して第3撮像素子41cに向かうようになっている。このように、第4のミラー46および第5のミラー47においてウェハ10からの反射光が第1〜第3の波長を有する反射光に分離され第1〜第3撮像素子41a,41b,41cにそれぞれ導かれる。
【0032】
画像処理部27は、撮影部40の第1〜第3撮像素子41a,41b,41cから出力される画像信号に基づいて、3種類の波長毎に撮影された(ウェハ10の)撮影像を取り込むとともに、取り込んだ撮影像に対し所定の画像処理を行ってウェハ10の検査用撮影像を生成する。なお、画像処理部27には、比較のため、基準基板となる良品ウェハ(不図示)の撮影像(反射画像)も予め記憶されている。
【0033】
そして画像処理部27は、被検基板であるウェハ10の検査用撮影像を生成すると、その輝度情報を良品ウェハの撮影像の輝度情報と比較する。このとき、検査用撮影像における暗い箇所の輝度値の低下量(光量変化)に基づいて、ウェハ10表面の欠陥を検出する。たとえば、輝度値の低下量が予め定められた閾値(許容値)より大きければ「欠陥」と判定し、閾値より小さければ「正常」と判定すればよい。そして、画像処理部27による輝度情報の比較結果およびそのときのウェハ10の検査用撮影像が画像表示装置28で出力表示される。
【0034】
なお、画像処理部27においては、上述のように、良品ウェハの撮影像を予め記憶しておく構成の他、ウェハ10のショット領域の配列データと輝度値の閾値を予め記憶しておく構成でもよい。この場合、ショット領域の配列データに基づいて、ウェハ10の検査用撮影像における各ショット領域の位置が分かるので、各ショット領域の輝度値を求める。そして、その輝度値と記憶されている閾値とを比較することにより、パターンの欠陥を検出する。閾値より輝度値が小さいショット領域を「欠陥」と判定すればよい。
【0035】
第1実施形態の検査装置1aによるウェハ10表面の検査方法について、図16に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、ステップS101において、検査対象のパラメータを設定する。パラメータには、ウェハ10のショットサイズ、チップサイズ、下地構造情報、波長毎の補正ゲイン(重み付け)、ショット配列や、チップ領域11内の構造データ等がある。なお、ウェハ10の表面には、例えば図8に示すように、複数のチップ領域11が配列されている。
【0036】
次に、ステップS102において、検査対象となるウェハ10をステージ20に搬送する。このとき、搬送されたウェハ10がステージ20に吸着保持される。
【0037】
次に、ステップS103において、照明部30により、3種類の波長(第1〜第3の波長)を有する照明光でウェハ10を照明する。このとき、照明部30では、第1〜第3照明器31a,31b,31cからそれぞれ第1〜第3の波長を有する照明光が発せられ、集光光学系35により第1〜第3の波長を有する照明光が合成されてウェハ10に導かれる。これにより、複数種(3種類)の波長を有する照明光を比較的容易に作り出すことが可能になる。このように照明部30から発せられた照明光は、照明光学系23で平行光となってウェハ10の表面に照射され、ウェハ10の表面で反射した正反射光が観察光学系24により撮影部40に向けて集光される。
【0038】
次に、ステップS104において、上述の照明光により照明されたウェハ10を撮影部40により撮影し記録する。このとき、ウェハ10からの正反射光が撮像光学系45により3種類の波長(第1〜第3の波長)毎に分離されて第1〜第3撮像素子41a,41b,41cに導かれ、素子上に結像された(ウェハ10の)像が各撮像素子41a,41b,41cでそれぞれ光電変換されて、画像信号が画像処理部27に出力される。
【0039】
第1〜第3撮像素子41a,41b,41cにより3種類の波長毎に撮影されると、画像処理部27は、ステップS105〜S110において、第1〜第3撮像素子41a,41b,41cにより撮影された撮影像に対し所定の重み付けを行ってそれぞれ合成することにより、ウェハ10の検査用撮影像を生成する。具体的には、3種類の波長毎の重み付けに対応したゲインを、各撮像素子41a,41b,41cで撮影された撮影像(輝度)にそれぞれ掛けて合成する。これにより、画像処理だけで所定の重み付けを行うことができるため、装置構成を簡便にすることができる。
【0040】
なお、重み付けの割合は、基準基板となる良品ウェハ(不図示)を照明部30により照明して撮影部40で撮影し、画像処理部27により生成される良品ウェハの検査用撮影像において、良品ウェハの像が実際の良品ウェハの像とほぼ同一となるような割合に設定されることが好ましい。これにより、ウェハ10を検査する際の下地の影響をより確実に低減させることができ、ウェハ検査の精度をより向上させることができる。
【0041】
ステップS105〜S110について述べると、まず、ステップS105では、チップ領域11内の構造データに応じて、チップ領域11をさらに複数のエリアに分割する。
【0042】
次に、ステップS106では、3種類の波長毎に各撮像素子41a,41b,41cで撮影された撮影像でのウェハ10表面の輝度分布を算出する。このとき、ステップS105で分割したエリア毎に輝度分布を算出する。
【0043】
次に、ステップS107では、ステップS105で分割した複数のエリアうち一つのエリアにおける撮影像(画像)を3種類の波長毎に選択する。
【0044】
次に、ステップS108では、選択したエリアの輝度分布が均一となるように、ステップS107で3種類の波長毎に選択したエリアの輝度に対し、3種類の波長毎の重み付けに対応したゲインを掛けて(もしくは、オフセットを行って)、各波長毎のエリアの撮影像を合成する。
【0045】
次に、ステップS109では、ステップS105で分割した全てのエリアを選択するまで、ステップS107〜S108を繰り返す。
【0046】
次に、ステップS110では、輝度分布が均一となるように生成された各エリアの撮影像を繋ぎ合わせて合成し、一つの検査用撮影像を生成する。
【0047】
そして、上述のようにウェハ10の検査用撮影像を生成すると、画像処理部27は、ステップS111において、その輝度情報を良品ウェハの撮影像の輝度情報と比較等することでウェハ10表面の欠陥を検出し、ウェハ10における欠陥の有無を判定する。
【0048】
ところで、図4(a)に示すように、e線の波長(546nm)を有する照明光を用いて異物19が付着したウェハ10を照明した場合、全体的に暗い濃淡にムラのある撮影像50aとなる。また、図4(b)に示すように、g線の波長(436nm)を有する照明光を用いて同じウェハ10を照明した場合、全体的に暗く異物19の存在を確認し難い撮影像50bとなる。なお、図4において、撮影像における濃淡(輝度)の分布をグラフおよびハッチングで表している。
【0049】
ウェハ10の表面に平行光(照明光)が照射されると、図5に示すように、ウェハ10の表面が平坦である場合には反射光が正反射光となる。一方、ウェハ10の表面に異物19が付着している場合には反射光が散乱光となり、反射光によるウェハ10の撮影像において異物19の影響による濃淡が現れ、異物19を検出することが可能になる。また、ウェハ10の表面に傷18が生じている場合も同様である。
【0050】
しかしながら、最上層のレジスト層16を照明しその反射光を撮影して検査すると、照明光が最上層のレジスト層16より下層に位置する加工膜15の部分で干渉を起こし、加工膜15の形状が均一でない場合には干渉の程度も均一とはならないため、反射光に輝度の不均一な干渉光が含まれてしまう。そして、輝度の不均一な干渉光は、図4(a)および(b)に示すように、反射光によるウェハ10の撮影像に濃淡となって現れるため、傷18や異物19の影響による濃淡と輝度の不均一な干渉光による濃淡とが区別できず、ウェハ検査の精度を低下させてしまう。
【0051】
これに対し、図4(c)に示すように、e線およびg線の2つの波長を有する照明光を用いて同じウェハ10を照明した場合、輝度の不均一な干渉光による濃淡のムラが少ない撮影像55が得られる。これは、加工膜の膜厚に対する干渉光の輝度の特性がe線およびg線でほぼ対称であるため、e線およびg線の2つの波長を有する照明光を用いてウェハ10を照明すると、干渉光の輝度の特性が互いに相殺されてしまうからである。なお、加工膜の膜厚に対する干渉光の輝度の特性を、図6に例示する。このようにして得られる撮影像を検査用撮影像55として用いれば、精度の高いウェハ10の検査が可能になる。
【0052】
これにより、第1実施形態の検査装置1aおよび検査方法によれば、複数種の波長毎に所定の重み付けを行ってウェハ10の検査用撮影像を生成し、生成した検査用撮影像に基づいてウェハ10における欠陥の有無を判定するため、輝度の不均一な干渉光による濃淡のムラを減少させて、ウェハ10を検査する際の下地の影響を低減させることが可能になり、ウェハ検査の精度を向上させることができる。
【0053】
また、前述したように、2種類の波長を用いて検査用撮影像を作成し、輝度の不均一な干渉光による濃淡のムラを減少させることが可能であるが、3種類以上の波長を用いることで、輝度の不均一な干渉光による濃淡のムラをより確実に減少させることが可能になって、ウェハ10を検査する際の下地の影響をより確実に低減させることができ、ウェハ検査の精度をより向上させることができる。
【0054】
ここで、図17から図19に本実施形態で実際に得られた画像を示す。図17は本実施形態でe線の光線でウェハを照明して撮影した像である。図から判るように同心円上のムラが発生している。次に、図18は本実施形態でg線の光線でウェハを照明して撮影した像である。やはり同心円状のムラが発生している。次に、図19は本実施形態でh線の光線でウェハを照明して撮影した像である。図19でもムラは発生しているが、中央付近は暗くなっており図17に示したe線でウェハを照明して得られた像のムラとは明暗の関係が逆転していることが判る。
【0055】
次に、図17の像と図19の像を、ムラが打ち消されるように重み付けを行い、合成した像が図20である。図20から明らかなように、全体にムラの少ない像が得られ、ムラによる影響を低減させて精度の高い検査が可能となる。
【0056】
続いて、検査装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態の検査装置1bは、図7に示すように、第1実施形態の検査装置1aと同様の構成であるが、照明部30と照明光学系23との間の光路上に照明側偏光フィルタ22が挿入されるとともに、観察光学系24と撮影部40との間の光路上に受光側偏光フィルタ25が挿入される点で、第1実施形態の検査装置1aと構成が異なる。
【0057】
なお、ウェハ10の表面には、図8に示すように、複数のチップ領域11がXY方向に配列され、各チップ領域の中に所定の繰り返しパターン12が形成されている。繰り返しパターン12は、図9に示すように、複数のライン部2Aがその短手方向(X方向)に沿って一定のピッチPで配列されたレジストパターン(例えば、配線パターン)である。隣り合うライン部2A同士の間は、スペース部2Bである。なお、ライン部2Aの配列方向(X方向)を「繰り返しパターン12の繰り返し方向」と称する。
【0058】
ここで、繰り返しパターン12におけるライン部2Aの線幅DAの設計値をピッチPの1/2とする。設計値の通りに繰り返しパターン12が形成された場合、ライン部2Aの線幅DAとスペース部2Bの線幅DBは等しくなり、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比は略1:1になる。これに対して、繰り返しパターン12を形成する際の露光フォーカスが適正値から外れると、ピッチPは変わらないが、ライン部2Aの線幅DAが設計値と異なってしまうとともに、スペース部2Bの線幅DBとも異なってしまい、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が略1:1から外れる。
【0059】
第2実施形態の検査装置1bは、上記のような繰り返しパターン12におけるライン部2Aとスペース部2Bとの体積比の変化を利用して、繰り返しパターン12の欠陥検査を行う形態である。説明を簡単にするため、理想的な体積比(設計値)を1:1とする。体積比の変化は、露光フォーカスの適正値からの外れに起因し、ウェハ10のショット領域ごとに現れる。なお、体積比を断面形状の面積比と言い換えることもできる。
【0060】
また、本実施形態においては、繰り返しパターン12に対する照明光(後述)の波長と比較して繰り返しパターン12のピッチPが十分小さいものとする。このため、繰り返しパターン12から回折光が発生することはなく、繰り返しパターン12の欠陥検査を回折光により行うことはできない。本実施形態における欠陥検査の原理は、以降、装置の構成(図7)とともに順に説明する。
【0061】
ところで、ステージ20は、ステージ20の法線A1を回転軸としてウェハ10を回転可能に保持しており、ウェハ10における繰り返しパターン12の繰り返し方向(図8および図9におけるX方向)を、ウェハ10の表面内で回転させることが可能である。第2実施形態におけるステージ20は、所定の回転位置で停止し、ウェハ10における繰り返しパターン12の繰り返し方向(図8および図9におけるX方向)を、後述の照明光の入射面(照明光の進行方向)に対して、45度だけ斜めになるように保持する。
【0062】
照明側偏光フィルタ22は、照明部30からの照明光を透過させて3種類の波長(第1〜第3の波長)を有する第1の直線偏光L1に変換し、照明光学系23を介してウェハ10の表面に照射するようになっている。この直線偏光L1が、本実施形態における照明光である。
【0063】
第1の直線偏光L1の進行方向(ウェハ10表面上の任意の点に到達する直線偏光L1の主光線の方向)は、照明部30からの光軸O1に略平行である。光軸O1は、ステージ20の中心を通り、ステージ20の法線A1に対して所定の角度αだけ傾けられている。ちなみに、第1の直線偏光L1の進行方向を含み、ステージ20の法線A1に平行な平面が、直線偏光L1の入射面である。図10の入射面A2は、ウェハ10の中心における入射面である。
【0064】
また、本実施形態では、第1の直線偏光L1がp偏光である。つまり、図11(a)に示すように、直線偏光L1の進行方向と電気(または磁気)ベクトルの振動方向とを含む平面(直線偏光L1の振動面)が、直線偏光L1の入射面A2内に含まれる。直線偏光L1の振動面は、照明側偏光フィルタ22の透過軸により規定される。なお、ウェハ10の各点における直線偏光L1の入射角度は、平行光のため互いに同じであり、光軸O1と法線A1とのなす角度αに相当する。
【0065】
また、ウェハ10に入射する直線偏光L1がp偏光であるため、図10に示すように、繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)が直線偏光L1の入射面A2(ウェハ10の表面における直線偏光L1の進行方向)に対して45度の角度に設定された場合、ウェハ10の表面における直線偏光L1の振動面の方向と繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)とのなす角度も、45度に設定される。
【0066】
言い換えると、第1の直線偏光L1は、ウェハ10の表面における直線偏光L1の振動面の方向(図12におけるVの方向)が繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)に対して45度傾いた状態で、繰り返しパターン12を斜めに横切るようにして繰り返しパターン12に入射する。
【0067】
このような第1の直線偏光L1と繰り返しパターン12との角度状態は、ウェハ10の表面全体において均一である。なお、45度を135度,225度,315度のいずれかに言い換えても、第1の直線偏光L1と繰り返しパターン12との角度状態は同じである。また、図12の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)とのなす角度を45度に設定するのは、繰り返しパターン12の欠陥検査の感度を最も高くするためである。
【0068】
そして、第1の直線偏光L1を用いて繰り返しパターン12を照明すると、繰り返しパターン12から正反射方向に楕円偏光L2が発生する(図7および図11(b)を参照)。この場合、楕円偏光L2の進行方向が正反射方向に一致する。正反射方向とは、直線偏光L1の入射面A2内に含まれ、ステージ20の法線A1に対して角度α(直線偏光L1の入射角度αに等しい角度)だけ傾いた方向である。なお、上述の通り、繰り返しパターン12のピッチPが照明波長と比較して長いため、繰り返しパターン12から回折光が発生することはない。
【0069】
ここで、第1の直線偏光L1が繰り返しパターン12での反射により楕円化し、繰り返しパターン12から楕円偏光L2が発生する理由について簡単に説明する。第1の直線偏光L1は、繰り返しパターン12に入射すると、振動面の方向(図12のV方向)が、図13に示す2つの偏光成分VX,VYに分かれる。一方の偏光成分VXは、繰り返し方向(X方向)に平行な成分である。他方の偏光成分VYは、繰り返し方向(X方向)に垂直な成分である。そして、2つの偏光成分VX,VYは、それぞれ独立に、異なる振幅変化と位相変化とを受ける。振幅変化と位相変化が異なるのは、繰り返しパターン12の異方性に起因して複素反射率(すなわち複素数の振幅反射率)が異なるからであり、構造性複屈折(form birefringence)と呼ばれる。その結果、2つの偏光成分VX,VYの反射光は互いに振幅と位相が異なり、これらの合成による反射光は楕円偏光L2となる(図11(b)を参照)。
【0070】
また、繰り返しパターン12の異方性に起因する楕円化の程度は、図11(b)で示す楕円偏光L2のうち、図11(a)で示す直線偏光L1の振動面に垂直な偏光成分L3(図11(c)を参照)と考えることができる。そして、この偏光成分L3の大きさは、繰り返しパターン12の材質および形状と、図12の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)とのなす角度に依存する。このため、V方向とX方向とのなす角度を一定の値(本実施形態では45度)に保つ場合、繰り返しパターン12の材質が一定であっても、繰り返しパターン12の形状が変化すると、楕円化の程度(偏光成分L3の大きさ)が変化することになる。
【0071】
繰り返しパターン12の形状と偏光成分L3の大きさとの関係について説明する。図9に示すように、繰り返しパターン12は、ライン部2Aとスペース部2BとをX方向に沿って交互に配列した凹凸形状を有し、適正な露光フォーカスで設計値通りに形成されると、ライン部2Aの線幅DAとスペース部2Bの線幅DBが等しく、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が略1:1となる。このような理想的な形状の場合、偏光成分L3の大きさは最も大きくなる。これに対し、露光フォーカスが適正値から外れると、ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比が略1:1から外れる。このとき、偏光成分L3の大きさは理想的な場合と比較して小さくなる。偏光成分L3の大きさの変化を図示すると、図14のようになる。図14の横軸は、ライン部2Aの線幅DAである。
【0072】
このように、第1の直線偏光L1を用いて、図12の振動面の方向(V方向)が繰り返しパターン12の繰り返し方向(X方向)に対して45度だけ傾いた状態で、繰り返しパターン12を照明すると、正反射方向に反射して生じた楕円偏光L2は、その楕円化の程度(図11(c)における偏光成分L3の大きさ)が、繰り返しパターン12の形状(ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比)に応じたものとなる。楕円偏光L2の進行方向は、直線偏光L1の入射面A2内に含まれ、ステージ20の法線A1に対して角度αだけ傾いている。
【0073】
なお、観察光学系24の光軸O2は、ステージ20の中心を通り、かつ、ステージ20の法線A1に対して角度αだけ傾くように設定される。したがって、繰り返しパターン12からの反射光である楕円偏光L2は、この光軸O2に沿って進むことになる。
【0074】
受光側偏光フィルタ25は、ウェハ10表面からの正反射光を透過させて第2の直線偏光L4に変換する。受光側偏光フィルタ25の透過軸の方位は、上述した照明側偏光フィルタ22の透過軸に対して垂直になるように設定される。すなわち、第2の直線偏光L4の進行方向と垂直な面内における第2の直線偏光L4の振動方向が、第1の直線偏光L1の進行方向と垂直な面内における第1の直線偏光L1の振動方向に対して垂直になるように設定される。
【0075】
したがって、楕円偏光L2が受光側偏光フィルタ25を透過すると、楕円偏光L2の図11(c)における偏光成分L3に相当する直線偏光L4のみが抽出されて、撮影部40に導かれる。その結果、撮影部40における第1〜第3撮像素子41a,41b,41cの素子上には、撮像光学系45により3種類の波長毎に分離された第2の直線偏光L4によるウェハ10の反射像がそれぞれ形成される。なお、ウェハ10の反射像の明暗は、直線偏光L4の光強度に略比例し、繰り返しパターン12の形状に応じて変化する。また、ウェハ10の反射像が最も明るくなるのは、繰り返しパターン12が理想的な形状の場合である。
【0076】
第2実施形態の検査装置1bによるウェハ10表面の検査方法について、図16に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、ステップS101において、第1実施形態の場合と同様に、検査対象のパラメータを設定する。次に、ステップS102において、第1実施形態の場合と同様に、検査対象となるウェハ10をステージ20に搬送する。
【0077】
次に、ステップS103において、照明部30により、3種類の波長(第1〜第3の波長)を有する照明光でウェハ10を照明する。このとき、照明部30から発せられた照明光は、照明側偏光フィルタ22で第1の直線偏光L1に変換されるとともに、照明光学系23で平行光となってウェハ10の表面に照射される。また、ウェハ10の表面で反射した正反射光は、観察光学系24で集光され、受光側偏光フィルタ25で楕円偏光L2が第2の直線偏光L4に変換されて撮影部40に導かれる。
【0078】
次に、ステップS104において、第1の直線偏光L1により照明されたウェハ10を撮影部40により撮影し記録する。このとき、第2の直線偏光L4が撮像光学系45により3種類の波長(第1〜第3の波長)毎に分離されて第1〜第3撮像素子41a,41b,41cに導かれ、素子上に結像された第2の直線偏光L4によるウェハ10の反射像が各撮像素子41a,41b,41cでそれぞれ光電変換されて、画像信号が画像処理部27に出力される。
【0079】
第1〜第3撮像素子41a,41b,41cにより3種類の波長毎に撮影されると、画像処理部27は、ステップS105〜S110において、第1実施形態の場合と同様に、第1〜第3撮像素子41a,41b,41cにより撮影された撮影像に対し所定の重み付けを行ってそれぞれ合成することにより、ウェハ10の検査用撮影像を生成する。そして、画像処理部27は、ウェハ10の検査用撮影像を生成すると、ステップS111において、その輝度情報を良品ウェハの撮影像の輝度情報と比較等することで、繰り返しパターン12の欠陥(ライン部2Aとスペース部2Bとの体積比の変化)を検出し、繰り返しパターン12における欠陥の有無を判定する。
【0080】
第1の直線偏光L1を用いて、繰り返しパターンが形成された最上層のレジスト層を照明すると、照明光が最上層のレジスト層より下層に位置する加工膜の部分で干渉を起こし、反射光に輝度の不均一な干渉光が含まれてしまうのは、第1実施形態の場合と同様である。ただし、受光側偏光フィルタ25が設けられているため、構造性複屈折が生じない(繰り返しパターン12が形成されない)部分の正反射光は撮影部40で検出されない。一方、繰り返しパターン12からの反射光である楕円偏光L2は、干渉により、図11(b)における二点鎖線のように輝度(振幅)が変化するため、加工膜の形状が均一でない場合には、結果的に輝度の不均一な干渉光が含まれてしまう。そのため、第1実施形態の場合と同様にして検査用撮影像を生成すれば、精度の高いウェハ10の検査が可能になる。
【0081】
この結果、第2実施形態の検査装置1bおよび検査方法によれば、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。また、直線偏光を用いて繰り返しパターン12の欠陥を検出するため、照明波長と比較して繰り返しパターン12のピッチPが十分小さくても、確実に欠陥検査を行うことが可能である。
【0082】
なお、第2実施形態の検査装置1bでは、照明波長と比較して繰り返しパターン12のピッチPが十分小さい場合に限らず、繰り返しパターン12のピッチPが照明波長と同程度でも、照明波長より大きい場合でも、同様に繰り返しパターン12の欠陥検査を行うことができる。すなわち、繰り返しパターン12のピッチPに拘わらず、確実に欠陥検査を行うことができる。繰り返しパターン12による直線偏光L1の楕円化は、繰り返しパターン12のライン部2Aとスペース部2Bとの体積比に依存して起こるものであり、繰り返しパターン12のピッチPに依存しないからである。
【0083】
また、上述の各実施形態において、第1〜第3撮像素子41a,41b,41cにより3種類の波長毎に撮影された撮影像に対し所定の重み付けを行ってそれぞれ合成することにより、ウェハ10の検査用撮影像を生成しているが、これに限られるものではない。例えば、図15に示すように、3つの集光レンズ32a,32b,32cと3つのミラー36,37,38との間にそれぞれNDフィルタ34a,34b,34cを設け、各NDフィルタ34a,34b,34cにより第1〜第3の波長を有する照明光の輝度をそれぞれ調節することにより、所定の重み付けを行うようにしてもよい。なおこのとき、撮影部40において、撮像素子が一つで済み、撮像光学系45が不要となる。
【0084】
また、上述の各実施形態において、画像処理部27がウェハ10表面(もしくは繰り返しパターン12)における欠陥の有無を判定せずに、所定の重み付けを行って生成した撮影像を観察用撮影像として画像表示装置28で表示し、目視によりウェハ10表面(もしくは繰り返しパターン12)の欠陥を検出するようにしてもよい。このように観察装置として使用する場合においても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
また、上述の実施形態において、3種類の波長を有する照明光を用いているが、これに限られるものではなく、例えば、2種類でも4種類でもよく、複数種の波長を用いるようにすればよい。
【符号の説明】
【0086】
10 ウェハ(被検基板)
12 繰り返しパターン
20 ステージ(保持部)
27 画像処理部(撮影像生成部および判定部)
30 照明部
35 集光光学系
40 撮影部
45 撮像光学系


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の波長の照明光で被検基板を照明する照明部と、
前記照明光により照明された前記被検基板を撮影する撮影部と、
前記複数種の波長毎に重み付けを行って前記撮影部により撮影された前記被検基板の観察用撮影像を生成する撮影像生成部とを備えて構成されることを特徴とする観察装置。
【請求項2】
前記撮影部は、前記複数種の波長に対応して複数設けられた撮像素子と、前記被検基板からの光を前記複数種の波長毎に分離して前記複数の撮像素子にそれぞれ導く撮像光学系とを有し、
前記撮影像生成部は、前記複数の撮像素子により前記複数種の波長毎に撮影された撮影像に対し前記重み付けを行ってそれぞれ合成することにより、前記観察用撮影像を生成するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
数種の波長の照明光で被検基板を照明する照明部と、
前記照明光により照明された前記被検基板を撮影する撮影部と、
前記複数種の波長毎に重み付けを行った前記被検基板の検査用撮影像を生成する撮影像生成部と、
前記撮影像生成部により生成された前記検査用撮影像に基づいて前記被検基板における欠陥の有無を判定する判定部とを備えて構成されることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
前記照明部により前記被検基板を照明する照明光は平行光であり、
前記撮影部は、前記被検基板からの正反射光による前記被検基板の像を撮影することを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記被検基板の表面には所定の繰り返しパターンが形成されており、
前記照明光のうち第1の偏光状態の光を前記被検基板に送る第1の偏光素子と、
前記被検基板の表面における前記第1の偏光状態が前記繰り返しパターンの繰り返し方向に対して斜めになるように前記被検基板を保持する保持部と、
前記被検基板からの反射光のうち前記第1の偏光状態の光と直交する第2の偏光状態の光を前記撮影部に送る第2の偏光素子とを備え、
前記撮影部は、前記第2の偏光状態の光による前記被検基板の像を撮影することを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項6】
前記照明部は、前記複数種の波長に対応して複数設けられるとともに前記複数種の波長のうち互いに異なるいずれかの波長を有する照明光をそれぞれ発する複数の照明器と、前記複数の照明器から発せられた照明光を合成して前記被検基板に導く集光光学系とを有して構成されることを特徴とする請求項3から請求項5のうちいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記複数種の波長は、3種類以上の波長で設定され、
前記重み付けの割合は、所定の基準基板を前記照明部により照明して前記撮影部で撮影し、前記撮影像生成部により生成される前記基準基板の前記検査用撮影像において、前記基準基板の像が実際の前記基準基板の像とほぼ同一となるような割合に設定されることを特徴とする請求項3から請求項6のうちいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記撮影部は、前記複数種の波長に対応して複数設けられた撮像素子と、前記被検基板からの光を前記複数種の波長毎に分離して前記複数の撮像素子にそれぞれ導く撮像光学系とを有し、
前記撮影像生成部は、前記複数の撮像素子により前記複数種の波長毎に撮影された撮影像に対し前記重み付けを行ってそれぞれ合成することにより、前記検査用撮影像を生成するように構成されることを特徴とする請求項3から請求項7のうちいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項9】
複数種の波長の照明光で被検基板を照明し、
前記照明光により照明された前記被検基板を撮影し、
前記複数種の波長毎に重み付けを行って、撮影した前記被検基板の検査用撮影像を生成し、
生成した前記検査用撮影像に基づいて前記被検基板における欠陥の有無を判定することを特徴とする検査方法。
【請求項10】
前記被検基板を撮影する際、前記被検基板からの光を前記複数種の波長毎に分離して撮影し、
前記複数種の波長毎に撮影した撮影像に対し前記重み付けを行ってそれぞれ合成することにより、前記検査用撮影像を生成することを特徴とする請求項9に記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−83672(P2013−83672A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−13941(P2013−13941)
【出願日】平成25年1月29日(2013.1.29)
【分割の表示】特願2009−501274(P2009−501274)の分割
【原出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】