説明

観視状況確認装置及び方法及びプログラム

【課題】 家庭において観視者が立体映像サービスを観視する際の観視状況を計測する。
【解決手段】 本発明は、予めデータベース部に、視聴者が観視の都度入力するモニタの情報、判定手億製図の定義、観視者の以前の日常的な健康管理データを格納しておく。立体映像サービス観視者の観視状況を把握したいという立体映像サービス提供者からの要求を受けて、データ取得部に対し、観視者の観視状況を計測するよう要求する。制御部は、データ取得部の計測結果を受け取り、データベース部を検索し、レベル分けをし、観視状況レベルを立体映像サービス提供者に回答する。これにより、観視者の観視状況の確認を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観視状況確認装置及び方法及びプログラムに係り、特に、立体映像等の映像を様々な端末に提供し、観視者が適正な状況で観視できているかを確認するための観視状況確認装置及び方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
TV、ゲーム端末、携帯端末等で立体映像を観視できる環境が整いつつあり、家庭環境でも容易に観視可能となっている(例えば、非特許文献1参照)。また、立体映像サービスでは、モニタを裸眼や専用メガネ、あるいは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用して観視可能であるが、立体映像視聴時に体調不良を起こすケースが国民生活センター等に報告され、問題視されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
そのため、政府や業界としては適正な観視状況での視聴を推奨している(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「3Dディスプレイ 3度目の正直」pp.55-79. NIKKEI ELECTRONICS 2008.9.22.
【非特許文献2】3D映画による体調不良 (http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20100804_2.pdf)
【非特許文献3】3Dコンソーシアムガイドライン (http://www.3dc.gr.jp/jp/scmt_wg_rep/guide_index.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
立体映像観視による体調不良を避けるために、観視者は、正しい姿勢での観視が促されている。しかし、家庭での観視においては、以下のような問題が発生することがあり、常に適正な観視状況で観視できているかどうかはサービス提供者にとっても家庭での観視者自身にとっても不明である。
1)観視者が適正な視距離で観視していない。
2)観視者が適正な姿勢で観視していない。
【0006】
(寝転がった状態で観視している、水平位置で見ていない、など)
3)観視状況の照度が適正でない。
4)観視時間が適正時間を超えている。
5)立体映像が観視者の生体に悪影響を与えている。
【0007】
(正しい姿勢で見ていても、立体映像の観視に慣れていないため、疲労したり、気分が悪くなる。)
そこで、立体映像サービス提供者が、家庭における立体映像サービス観視時の観視者の観視状況を適正に把握し、観視者に対し、不適正な観視状況の是正を図る技術の提供を実現することが望まれている。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、不適正な観視状況の是正を図る技術を提供するために、立体映像サービス提供者が、過程における立体映像サービス観視時の観視者の観視状況を適正に把握するための観視状況確認装置及び方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、映像サービス観視時の観視者の観視状況を把握するための観視状況確認装置であって、
前記観視者の観視状況の計測を行うデータ取得手段と、
観視状況判断に必要な情報が保存されている記憶手段と、
外部からの要求に応じて、前記データ取得手段において計測した計測情報と前記記憶手段から取得した情報に基づき観視状況を算出する観視状況計算手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、立体映像サービス観視者の観視状況レベルを立体映像サービス提供者が客観的に取得できるようになる。この観視状況レベルを利用すれば、適正な観視姿勢による立体映像観視を観視者に促し、立体映像観視によって発生する観視者の体調不良を防ぐことができる。また、この観視状況レベルを利用すれば、提供するサービス自身を立体から2D表示に切り替えるなどの刺激を低減する対処をすることで、立体映像観視によって発生する観視者の体調不良を防ぐことができる。これにより、より安心・安全な立体映像観視が可能となるので、立体映像サービスの普及が進むことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態における観視状況確認装置の構成図である。
【図2】本発明の対象範囲を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるカメラ部の構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態における標準的な判定特性図である。
【図5】本発明の一実施の形態における一時データ保存部と体調データ部に格納されるデータの例である。
【図6】本発明の一実施の形態における観視を要求した立体映像サービス提供者に回答するレベルの一覧である。
【図7】本発明の一実施の形態におけるモニタに対する首の動きと台形ひずみの関係を示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態における首の角度とクロストークの関係を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態における人間の目のダイナミックレンジ(文献5より引用)である。
【図10】本発明の一実施の形態における距離判定部の動作を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施の形態における姿勢(首の角度)判定部の動作を説明するための図である。
【図12】本発明の一実施の形態における観視照度判定部の動作を説明するための図である。
【図13】本発明の一実施の形態におけるモニタサイズと明るさ感の関係を示す図である。
【図14】本発明の一実施の形態における観視時間判定部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
以下、図面を用いて本願発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態における観視状況確認装置の構成を示す。
【0015】
観視状況確認装置は、制御部100、データ取得部200、データベース部300から構成される。制御部100は、立体映像サービス提供者からの、立体映像サービス観視者の観視状況を把握したいという要求を受けて、データ取得部200に対し、観視者の観視状況を計測するよう要求する。制御部100は、立体映像サービス提供者から受け取った、観視者が利用中のモニタ等の機器に関する情報を機器データ部310に登録する。その後、データ取得部200の計測結果を受け取り、データベース部300を検索し、制御部100において、観視状況の適正さを観視状況レベルとして求め、レベル分けし、その観視状況レベルを出力する。立体映像サービス提供者が、提供された観視状況レベルにより観視者の観視状況を確認できるようになる。
【0016】
本発明では、立体映像サービス観視者の宅内に観視状況確認装置を設置することを想定している。そして、立体映像サービス提供者は必要に応じて観視状況確認装置に向けて観視状況確認の要求を出す。なお、データ取得部200のみを宅内に設置し、制御部100とデータベース部300は、立体映像サービス提供者のセンターサーバに設置するということも考えられる。
【0017】
本発明の対象範囲は、図2に示す通り、観視状況確認装置が、立体映像サービス提供者からの観視状況確認の要求を受け取り、その要求に回答するところである。なお、立体映像サービス提供者が、観視状況確認装置から受け取った回答に応じて、観視者に警告音を発したり、提供サービスの映像を変更するような処理は、本願の対象外とする。
【0018】
以下に、各部の機能について説明する。
【0019】
制御部100は、立体映像サービス提供者からの観視状況確認の要求と、モニタ等の機器に関する情報の登録の要求を受け取る。観視状況確認の要求に対しては、データ取得部200、データベース部300を制御し、受け取った要求に対する立体映像サービス提供者への回答を行う。本実施の形態では、立体映像サービス提供者からの観視状況確認の要求を受けているが、観視者自身が要求を出すというケースも考えられる。モニタ等の機器に関する情報の登録の要求に対しては、制御部100は、立体映像サービス提供者からのモニタ等の機器に関する情報の登録の要求を受け取り、後述するデータベース部300の機器データ部310に登録する。なお、データベース部300に登録する情報の入手に関しては、観視者が事前に、立体映像サービス提供者に連絡するものとする。観視者は、観視状況確認装置を初めて利用する際や、利用するモニタを変更した際などに、立体映像サービス提供者に対し、モニタサイズ、輝度、コントラストなどのモニタに関する情報を報告する。立体映像サービス提供者は、観視者からの報告を受け、観視状況確認装置に対し、情報登録を要求するという流れである。観視者自身が入力できるよう変更することも考えられる。制御部100の詳細な構成については後述する。
【0020】
なお、観視者が観視の都度入力するモニタの情報、判定特性図の定義、観視者の日常的な健康管理データを入力するためのユーザインタフェースは本発明の範囲外であるので詳細な説明は省略する。
【0021】
データ取得部200は、一般的な各種センサ210とカメラ部220から構成される。これらは既存の技術を用いるものとする。
【0022】
各種センサ210は、人感センサや、測距センサ、照度計、タイマー、水平器、加速度センサなど観視状況を計測するために必要なセンサや、血圧計、筋電計、脈波計、心電計、眼球運動計測装置、脳血流計測装置、瞳孔径計測装置などの観視者の生体反応(体調)を計測するための生体計測センサを想定している。データ取得部200が取得するセンサ計測値には、例えば、観視姿勢、観視距離、観視者の首の角度、観視環境の照度、観視時間、生体反応情報などがあり、それぞれの計測値を個別に、もしくは複数を組み合わせて制御部100に渡す。
【0023】
各種センサ210の詳細を以下に示す。
【0024】
センサ1は、人感センサ、測距センサなどの観視距離を計測するためのセンサである。たとえば、人感センサをモニタに設置し、観視者とモニタとの距離を計測する。具体的には、人の動きを察知、自動で照明器具の電源をON/OFFできるセンサ(文献1:パナソニック電工株式会社プレスリリース配信・掲載サービス(2010年3月19日)「eワイヤレスシリーズ」(http://prtimes.jp/main/html/releasedetail/release_id/170/company_id/1169))や、人が遠ざかると自動でテレビのスイッチが切れるシステム(文献2:ソニー 液晶テレビBRAVIA<ブラビア>製品情報(http://www.sony.jp/bravia/products/KDL-46V5/feature_4.html#L1_439)などで用いられているセンサが適用できる。ここで、計測値は、x1と定義する。
【0025】
センサ2は、水平器、加速度センサなどの観視者の首の角度を計測するためのセンサである。首が傾いた状態での視聴は、メガネ式3D映像の場合、左右眼それぞれに正しく映像が呈示されず、疲労感や映像酔いにつながるため、考慮する必要がある。具体的には、水平器を3Dメガネに設置し、観視者の首の角度を計測する。計測値は、x2と定義する。
【0026】
センサ3は、照度計などの観視環境の照度を計測するためのセンサである。照度計をモニタに設置し、観視環境の照度を計測する。計測値は、x3と定義する。
【0027】
センサ4は、タイマーなどの観視時間を計測するためのセンサである。計測値は、x4と定義する。
【0028】
センサ5は、血圧計、筋電計、脈波計、心電計、眼球運動計測装置、脳血流計測装置、瞳孔径計測装置などの観視者の生体反応を計測するためのセンサである。例えば、眼球運動を計測することで、観視者が集中して観視しているかどうかの確認や目の疲労感の推定を行ったり、心拍を計測することで、ストレス状態を計測するということが挙げられる。なお、ここでは、血圧計をセンサ5aとし、その計測値をx5aと定義する。また、筋電計をセンサ5bと定義し、その計測値をx5bと定義する。脈波計をセンサ5cとし、その計測値をx5cと定義する。心電計をセンサ5dとし、その計測値をx5dと定義する。眼球運動計測装置をセンサ5eとし、その計測値をx5eと定義する。ここで、さらに体温計や発汗計測装置、皮膚温計測センサなどを増やしていくことも考えられる。
【0029】
カメラ部220は、図3のように、観視者の観視姿勢を撮影し、解析部において動画の解析を行う。観視者数や、観視者の視線方向、頭の位置、首の向き等は、文献3(NTT技術ジャーナル2007.8(http://www.ntt.co.jp/journal/0708/files/jn200708021.pdf)に記された技術を適用することで解析できる。ここでは、カメラ部220の解析結果のうち、観視者の視線方向の解析結果をxと定義する。なお、カメラ部220において、観視距離や観視姿勢(観視者の視線方向や首の角度)、照度、撮影時間、観視者の眼球運動や瞬目率を解析することで、上記センサ情報の代わりの情報に置き換えることもできる。
【0030】
データベース部300は、機器データ部310、特性データ部320、体調データ部330から構成される。
【0031】
機器データ部310は、利用中のモニタのサイズ、輝度、コントラストなどのモニタに関する情報を保持する。機器情報は、立体映像サービス提供者が観視状況確認装置に対し、機器情報登録の要求を出したときに、登録される。
【0032】
特性データ部320は、観視状況の適正さを判定するための標準的な判定特性図を保持する。判定特性図は予め実験により定義し、組み込んでおく。判定特性図を図4に示す。詳細は後述する。
【0033】
体調データ部330は、血圧や心拍数、体温、瞳孔径などの観視者の体調に関する情報を数日分保持する。映像サービス利用時のデータ取得部200の計測結果(本例では、x5a,x5b,x5c,x5d,x5e)が蓄積されている。また、立体映像サービスを利用していない日に計測した、観視者が日常的な健康管理のために計測しているデータを保存するケースも考えられる。
【0034】
制御部100は、一時データ保存部110、計算部120、統合部130から構成される。
【0035】
一時データ保存部110では、データ取得部200の結果を一時的に保存する。なお、センサ5で計測した体調データ(例では、x5a,x5b,x5c,x5d,x5e)は、過去の体調データとしてデータベース部300の体調データ部330にも保存する。なお、一時データ保存部110と体調データ部330に保存されるデータは、図5の通りである。
【0036】
計算部120は、観視者の観視状況のレベル分けを行う。なお、本発明では、映像サービス観視者の観視状況として、以下の5点に着目している。
【0037】
1)観視距離
2)観視姿勢(視線方向、首の角度)
3)観視環境の照度
4)観視時間
5)観視者の体調
この5点に関して、距離判定部121、姿勢(首の角度)判定部122a、姿勢(視線)判定部122b、観視照度判定部123、観視時間判定部124、体調判定部125において、それぞれ観視状況のレベル分けを行う。距離判定部121において、観視距離の適正さの観視状況レベル(y1)を求め、姿勢(首の角度)判定部122aにおいて、姿勢(首の角度)の適正さの観視状況レベル(y2a)を求め、姿勢(視線)判定部122bにおいて、姿勢(視線)の適正さの観視状況レベル(y2b)を求め、観視照度判定部123において、観視照度の適正さの観視状況レベル(y3)を求め、観視時間判定部124において、観視時間の適正さの観視状況レベル(y4)を求め、体調判定部125において、観視者の体調のレベルを観視状況レベル(y5)として求める。なお、観視状況レベルは、OKまたはNGというように2値で表現することや、複数段階に分けて定量化することが考えられる。ここでは、後者を採用し、観視状況レベルは0以上1以下の値をとるように定義する。適正な状態に近いほど(例:適正な距離に近いほど)1に近づき、悪いほど0に近づく(レベルが下がる)。
【0038】
さらに、各判定部において、モニタや観視者の体調の影響を考慮し、図4の標準的な判定特性図を変形する。変形された判定特性図を用いて、さらに精密な観視状況レベル(z1,z2a,z2b,z3,z4,z5)を求める。本実施の形態では、精密な観視状況レベルも、0以上1以下の値をとるものとする。なお、モニタや観視者の体調の影響を考慮した変形の詳細は後述する。
【0039】
統合部130では、各判定部のレベル分けの結果を統合したレベルを算出する。統合観視状況レベル(L)算出の一例を示す。
【0040】
L=average (z1,z2a,z2b,z3,z4,z5)
制御部100は、観視状況の確認を要求した立体映像サービス提供者に対し、計算部120と統合部130のレベル分けの結果を回答する。回答は、以下の図6のようなイメージである。なお、図6の項目すべてを回答する場合や、一部のみを回答する場合が考えられるが、回答方法については本発明の範囲外であり、図6に示す回答イメージ以外の形態でもよい。
【0041】
立体映像サービス提供者は、観視状況のレベルが分かると、レベル0の場合は「観視していない」、レベル1の場合は「適正に観視している」といったように観視状況を確認することができる。
【0042】
また、本願では言及しないが、観視状況のレベル判定結果を基に、立体映像サービス提供者は、観視者に対し、レベルに応じて適正な観視を促すテロップを表示したり、警告音を発したり、休憩を促したり、提供している立体映像サービスの表示を2D表示に切り替えて刺激を少なくしたり、サービスを停止したり、といった対応を取ることができ、観視者による不適切な状況での観視を防ぐことができる。
【0043】
これより、特性データ部320の保持する図4に示す判定特性図の詳細を記す。
【0044】
まず、距離判定特性図(図4(a−1))について記す。3Dモニタの場合、標準的な観視距離は、モニタの高さ(H)の3倍とされている(文献4:3Dコンソーシアムガイドライン(http://www.3dc.gr.jp/jp/scmt_wg_rep/guide_index.html)。この距離よりも近い場合や遠い場合には、視差角が変化し、疲労感を生じる可能性が高まる。そのため、距離判定特性図は、距離x1が観視距離3Hから離れるほど、レベルy1が下がるように定義する。距離判定特性図の例を図4(a−1)および、以下の式に記す。
【0045】
1 = 1−(x1−3H)2/9H2
姿勢(首の角度)判定特性図(図4(a−2))の詳細を記す。観視者の首が傾いている場合、クロストークが大きくなる(文献4、図7)。特に、偏光式のメガネで視聴する場合には、左右眼の映像を左右眼それぞれに正しく提示できず、疲労感が生じる。そこで、クロストークを考慮し、首の角度x2がモニタと観視者の眼が水平となっている状態(角度0)から外れるほど、レベルy2aが下がるような判定特性図を定義する。姿勢(首の角度)判定特性図の実施例を図4の(a−2)および、以下の式に記す。
【0046】
2a = 1−a2a x22
ここで、定数a2aは、事前に観視者の首の角度と疲労感の関係を調べる実験を行い、定義する。
【0047】
姿勢(視線)判定特性図(図4(b))の詳細を記す。モニタと観視者の向きに関しては、モニタに対して正面から観視せずに斜めから視聴すると、台形ひずみが大きくなるという特性がある(文献4、図8)。ひずんだ映像を見ていると、眼に違和感が生じる。そのため、視線x6が正面(角度0)から外れるほど、レベルy2aが下がるような判定特性図を定義する。姿勢(視線)判定特性図の実施例を図4の(b)および、以下の式に記す。
【0048】
2b = 1−a2b62
ここで、定数a2bは、視線と違和感の関係を調べる実験を行い、定義する。
【0049】
観視照度判定特性図(図4(c))の詳細を記す。人の目は、周囲の明るさに応じて、認識できるもっとも明るい部分と暗い部分の幅、いわゆるダイナミックレンジをシフトさせている(図9)。部屋が明るければ、人間の目は、明るい物体が見えるようにダイナミックレンジを自動的に明るい方向へシフトするため、逆にテレビ映像の暗い部分の階調を認識できなくなる(文献5:視聴環境に適応するテレビ技術(http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2009/06/64_06pdf/a07.pdf)。観視照度判定特性図の例を図4(c)および以下の式に記す。
【0050】
【数1】

ここで、図4の(c)および、定数i,i,i,iは、一般的なモニタの輝度を基準に図9より定義した。一般的なモニタの輝度としては、家庭で一番利用されているモニタの輝度を用いることなどが考えられる。しかし、観視照度判定部123において、利用したモニタ輝度を考慮した観視照度判定特性図に変更をすることもできる。詳細は後述する。
【0051】
観視時間判定特性図(図4(d))の詳細を記す。観視時間x4が基準観視時間tから外れるほど、観視者は疲労する。そのため、観視時間x4が基準観視時間tから外れるほど、レベルyが小さくなるような判定特性図を定義する。観視時間判定特性図の例を図4(d)及び以下の式に記す。
【0052】
≦ t のとき y = 1
> t のとき y = 1- a ( x- t )2
ここで、基準観視時間t は、予め定義しておく。基準観視時間tの設定方法は、連続視聴により疲労を催すとされる時間を設定する方法や、観視者が自分で設定する方法が考えられる。定数aは、観視時間と疲労感の関係を調べる実験を行い、定義する。
【0053】
体調判定特性図(図4(e))の詳細を記す。ここでは、センサ5aの血圧計の値x5aを利用した場合の例を記す。観視者が、いつもと同じ環境で3D映像サービスを観視していたとしても、その日の体調が悪いような場合には、いつも以上に疲労感や映像酔いを感じる。そのため、その日の体調や、観視中の体調変化に応じてレベルy5aを変化させる。具体的には、体調が悪い場合には、レベルy5aが小さくなるような特性図を定義する。体調判定特性図の実施例を図4(e)および、以下の式に記す。
【0054】
5a= 1 - ( x5 - p )2 / p2
ここで、基準血圧pは、予め定義しておく。基準血圧pの設定方法は、世代平均を用いたり、観視者個人の日常の値(体調データ部330に事前に保存してあるもの)を用いたり、観視前の準備状態のときに計測した値を用いることが考えられる。また、図4(e)では、血圧を例に記したが、心拍数や体温、発汗の度合をレベル分けすることも考えられる。
【0055】
これより、計算部120の各判定部の動作を示す。
【0056】
距離判定部121では、観視距離の適正さのレベル(観視状況レベル:y1,z1)を求める。まず、特性データ部320より、距離判定特性図(図4の(a−1))を検索する。また、機器データ部310よりモニタサイズを検索し、モニタサイズを考慮した距離判定特性図を定義する(図10(a)。この特性図を用いて、センサ1の計測値xを観視状況レベルyに変換できる。さらに、同じ距離であっても、コンテンツによっては疲労感を感じたり、興奮が高まったりする可能性がある。そのため、センサ5aの血圧計で計測した血圧値(x5a)が変化した場合には距離判定特性図を変形する。例えば、観視前よりも血圧が上昇している場合は、興奮状態にあることが予想されるので、近くで見ている場合よりも、離れて観視している場合にレベルが高くなるように距離判定特性図を変形する(図10(b))。これにより、判定特性図にモニタ特性と生体影響を反映することができる。この判定特性図を用いて、センサ1の計測値x1をより精密な観視状況レベルz1に変換できる(図10(c))。なお、途中の段階の判定特性図を利用して、センサ計測値x1を観視状況レベルz1に変換することもできる。
【0057】
姿勢(首の角度)判定部122aでは、観視者の首の角度の適正さのレベル(観視状況レベル:y2a、z2a)を求める。まず、特性データ部より、姿勢(首の角度)判定特性図(図4-2a)を検索する。この特性図を用いて、センサ2の計測値x2を観視状況レベルy2aに変換できる。また、機器データ部310よりモニタのコントラスト比を検索する。コントラスト比が大きい場合、左右眼の映像の差が明確になり、クロストークが大きくなると考えられる。そのため、モニタのコントラスト比を考慮した姿勢(首の角度)判定特性図に変更する(図11(a))。さらに、首が傾いたまま観視を続けると、首や肩に疲労感が生じる可能性がある。そのため、同じ首の角度(x2)であっても、首周りの筋活動が変化している場合には、レベルが下がるように判定特性図を変形する(図11(b))。これにより、判定特性図にモニタ特性と生体影響を反映することができる。この判定特性図を用いて、センサ2の計測値x2を精密な観視状況レベルz2aに変換する(図11(c))。なお、首周りの筋活動は、センサ5bの筋電計で計測することが考えられる。また、途中の段階の判定特性図を利用して、センサ2の計測値x2を精密な観視状況レベルz2aに変換することもできる。
【0058】
姿勢(視線)判定部122bでは、観視者のモニタに対する首の向き(視線方向)の適正さのレベル(観視状況レベル:y2b,z2b)を求める。特性データ部320より、姿勢(視線)判定特性図(図4(b))を検索する。この特性図を用いて、カメラ部220の観視者の視線の計測値x6を観視状況レベルy2bに変換できる。ここでは、モニタや生体影響を考慮した特性図を考えていないので、y2b=z2bとするが、モニタや生体影響を考慮する場合もありうる。
【0059】
観視照度判定部123では、観視環境の照度の適正さのレベル(観視状況レベルy3、z3)を求める。まず、特性データ部320より、観視照度特性図(図4(c))を検索する。また、機器データ部310よりモニタの輝度とサイズを検索する。そして、モニタの輝度に応じて図4(c)を変更し、観視照度判定特性図(図12(a))を定義する。この特性図を用いて、センサ3の計測値x3を観視状況レベルy3に変換できる。また、同じ輝度でも、画面サイズが大きくなるほど明るく感じることが知られている(文献6:「画面の好ましい輝度とテレビ画面サイズの関係」(http://ci.nii.ac.jp/els/110007384655.pdf?id=ART0009247953&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1305161789&cp=)、及び図13)。例えば、モニタサイズが小さい場合、同じ輝度であってもサイズの大きいモニタに比べて、暗く感じる(輝度が低く感じる)。そのため、モニタサイズを考慮し、図12(b)のように判定特性図を変形する。図12(b)では、モニタサイズが小さい場合を示しており、図12(a)の波形を輝度に応じて左方向にシフトさせている。さらに、照度と映像酔いには関係がある(文献7:映像酔いガイドライン検証システムの実用化に関するフィージビリティスタディ報告書(http://home.jeita.or.jp/ce/report/summary(19-f-7).pdf)。照度が高い方が、映像酔いのリスクは下がる。そのため、センサ5cの脈波センサと、センサ5dの心電図計の計測結果より、映像酔いの程度を評価する。そして、映像酔いを感じている場合には、さらに判定特性図を変形する(図12(c))。なお、映像酔いを感じている場合とは、脈波伝播時間と心拍数の間の相関関係が大きい場合、脈波伝播時間と心拍数の値が所定の値より大きい場合、等、種々の判定方法があるが、本発明では特にその検出方法を限定するものではない。図12(c)では、生体影響として映像酔いがある場合、図12(a)の波形を生体影響に応じて左方向にシフトしている。これにより、判定特性図にモニタ特性と生体影響を反映することができる。この判定特性図を用いて、センサ3の計測値x3を精密な観視状況レベルz3に変換する(図12(d))。なお、途中の段階の判定特性図を利用して、センサ3の計測値x3を精密な観視状況レベルz3に変換することもできる。
【0060】
観視時間判定部124では、観視時間の適正さのレベル(観視状況レベル:y4、z4)を求める。まず、特性データ部320より、観視時間判定特性図(図4(d))を検索する。この判定特性図を用いて、センサ4の計測値x4を観視状況レベルy4に変換できる。また、モニタや生体影響を考慮するために判定特性図を図14(a)のように定義する。なお、図中のTは以下のように定義する。
【0061】
T= average (z1,z2a,z2b,z3 ) ×t
1,z2a,z2b,z3は、利用中のモニタや観視者の生体影響、観視状況を考慮した値となっている。そのため、これらを用いて判定特性図を設定することで、観視者の総合的な状況を考慮した判定特性図とする。また、眼の疲労感が高まっている場合にも、観視時間を短くするよう変換する(図14(b))。これにより、判定特性図にモニタ特性と生体影響を反映することができる。この判定特性図を用いて、センサ4の計測値x4を精密な観視状況レベルz4に変換する(図14(c))。なお、眼の疲労感は、センサ5eで眼球運動を計測し、瞬目率で評価する。カメラの解析結果から評価することも考えられる。なお、途中の段階の判定特性図を利用して、センサ4の計測値x4を精密な観視状況レベルz4に変換することもできる。
【0062】
体調判定部125では、観視者の体調のレベルを観視状況レベル(y5,z5)として求める。特性データ部より体調判定特性図(図4(e))を検索し、センサ5の計測値x5を観視状況レベルy5に変換できる。ここでは、モニタを考慮した特性図を考えていないのでy5=z5とするが、モニタの影響を考慮する場合もありうる。
【0063】
統合部130では、上記で求められた各判定部121〜125の判定結果(z1,z2a,z2b,z3,z4,z5)を、平均した統合したレベルLを算出し、前述の図6に示すように、標準的な判定特性図より算出した観視状況レベル、モニタや観視者の体調の影響を考慮して算出した精密な観視状況レベル、及び統合レベルを出力する。なお、判定結果を平均し、統合したレベルを求める方法は一例であり、観視状況レベル毎に重みづけをして平均値を求めたり、観視状況レベルの積を求めるような他の方法で統合観視状況レベルを求めてもよい。
【0064】
なお、上記の図1の観視状況確認装置の構成要素の動作をプログラムとして構築し、観視状況確認装置として動作するコンピュータにインストールし、実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0065】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
立体映像サービスに限らず、観視状況を確認したい場合に利用することができる。例えば、現在、多くの企業で利用されているeラーニングにおいて、受講者が本当に受講しているかを確認する際に、本願発明を利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
100 制御部
110 一時データ保存部
120 計算部
121 距離判定部
122a 姿勢(首の角度)判定部
122B 姿勢(視線)判定部
123 観視照度判定部
124 観視時間判定部
125 体調判定部
130 統合部
200 データ取得部
210 各種センサ
220 カメラ部
300 データベース部
310 機器データ部
320 特性データ部
330 体調データ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像サービス観視時の観視者の観視状況を把握するための観視状況確認装置であって、
前記観視者の観視状況の計測を行うデータ取得手段と、
観視状況判断に必要な情報が保存されている記憶手段と、
外部からの要求に応じて、前記データ取得手段において計測した計測情報と前記記憶手段から取得した情報に基づき観視状況を算出する観視状況計算手段と、
を備えることを特徴とする観視状況確認装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、
前記観視者が使用中の機器データ、予め定義された特性データ、観視者の過去の体調データを蓄積し、
前記観視状況計算手段は、
前記観視者の観視姿勢、観視距離、観視者の首の角度、観視環境の照度、観視時間、生体反応情報のいずれかを検知する1つ以上のセンサから取得した前記計測情報と、前記記憶手段の前記特性データとを組み合わせて、該計測結果ごとの観視状況を算出する計算手段を有し、
前記計算手段は、
前記機器データ及び前記観視者の過去の体調データを加味して前記観視状況を算出する
請求項1記載の観視状況確認装置。
【請求項3】
前記記憶手段の前記特性データとして、観視状況の適正さを判定するための標準的な判定特性図を有し、
前記観視状況計算手段は、
前記記憶手段の前記機器データと前記体調データ(生体影響)と前記判定特性図をもとに、当該判定特性図を変形し、前記データ取得手段から取得した前記計測情報と変形した判定特性図を用いて、当該計測情報毎に観視状況を算出する手段と、
前記計測情報毎の観測状況から統合観視状況レベルを算出する手段を含む
請求項1または2に記載の観視状況確認装置。
【請求項4】
映像サービス観視時の観視者の観視状況を把握するための観視状況確認方法であって、
データ取得手段が、前記観視者の観視状況の計測を行うデータ取得ステップと、
観視状況計算手段が、外部からの要求に応じて、前記データ取得ステップにおいて計測した計測情報と観視状況判断に必要な情報が保存されている記憶手段から取得した情報に基づき観視状況を算出する観視状況計算ステップと、
を有することを特徴とする観視状況確認方法。
【請求項5】
前記観視状況計算ステップは、
前記観視者の観視姿勢、観視距離、観視者の首の角度、観視環境の照度、観視時間、生体反応情報のいずれかを検知する1つ以上のセンサから取得した前記計測情報と、前記記憶手段に格納されている予め定義された特性データとを組み合わせて、該計測結果ごとの観視状況を算出する計算ステップを含み、
前記計算ステップにおいて、
前記記憶手段に格納されている前記観視者が使用中の前記機器データ及び前記観視者の過去の体調データを加味して前記観視状況を算出する
請求項4記載の観視状況確認方法。
【請求項6】
前記特性データは、観視状況の適正さを判定するための標準的な判定特性図を含み、
前記観視状況計算ステップにおいて、
前記記憶手段の前記機器データと前記体調データ(生体影響)と前記判定特性図をもとに、当該判定特性図を変形し、前記データ取得手段から取得した前記計測情報と変形した判定特性図を用いて、当該計測情報毎に観視状況を算出し、
前記計測情報毎の観測状況から統合観視状況レベルを算出する
請求項4または5記載の観視状況確認方法。
【請求項7】
コンピュータを、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の観視状況確認装置の各手段として機能させるための観視状況確認プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−65965(P2013−65965A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202307(P2011−202307)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】