説明

角パイプとその製造方法

【構成】 側面に切欠孔13を有する角パイプ12を、金属板体17をロール成形することにより製造する角パイプの製造方法において、前記金属板体17に予め前記切欠孔13を設けておき、その金属板体17を所定のロールフラワに従って平板状態から直接角形断面形状にロール成形した後、その金属板体17の板端間を突合せ溶接して角形断面を閉塞する。
【効果】 ロール成形機5 が一台で済むので設備コストを低減化できると共に、切欠孔13の位置ずれ等を生ずることなくロール成形できるので、製品精度の高い角パイプ12を極めて簡便に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、角パイプとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、上下複数段の棚板を有するラックの支柱や建設資材等においては、鋼製の角パイプが広く利用されている。この角パイプは、通常、帯状の金属板体を複数のロールをタンデムに配置したロール成形機にかけてロール成形することにより製造されるが、特にラックの支柱として用いる角パイプの場合には、棚板を掛止させるための切欠孔を角パイプの側面に設けておくのが一般的である(図1参照)。
【0003】図13は、かかる切欠孔を設けた角パイプの従来の製造方法を示している。即ち、従来では、先ず帯状の金属板体20を断面丸形にロール成形してその板端を電縫溶接した後、できた丸形管21を四方からロール22で徐々に押圧して角形管23とし、その後、角形管23の側面にパンチング24によって切欠孔25を設けるようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の技術では、金属板体20を一旦丸形管21に成形してから角形管23に成形し直すことにしているため、以下に示すような欠点がある。
■ ロール成形機が丸形用と角形用の二種類のものが必要となり、設備コストが高くつきしかも作業場占有面積が大きくなる。
■ 溶接線26における亀裂の発生を防止するため、従来では、溶接線26を角パイプの側面中央を通るようにしなければならならず、従って、特に内厚が薄い角パイプではその溶接線26部分が強度上のネックとなって断面剛性をあまり大きくできない。
【0005】また、従来の製造方法では、角形管23の成形後に孔明け作業を行っているため、以下に示すような欠点がある。
■ 角形管23の変形防止の観点から、パンチング24の雌型27を角形管23の断面内にスライド自在に挿入しなければ切欠孔25を設けることができない。従って、従来では孔明け装置の構造が専ら複数で高価なものとなっており、この点からも設備コストが高くつく。
■ 角パイプの断面剛性を増すために、例えば図4に示すように、切起し片14を断面内部に残すようにして切欠孔25を形成したい場合があるが、従来の孔明け方法では、雌型27を角形管23断面内でスライドさせる必要があるので、かかる切起し片14を形成するのは非常に困難である。
【0006】一方、例えば図14に示す如く、金属板体20に予め切欠孔25を設けておき、その後その金属板体20を前記従来の技術と同様に丸形管21から角形管23にロール成形することにより、孔明け作業における従来の欠点を回避することが考えられる。しかし、この製造方法では、特に丸形管21から角形管23に成形し直す際に、切欠孔25の位置ずれや切欠孔25周辺の材料が応力集中によって座屈する場合があり、製品部止りが低下するという欠点がある。
【0007】本発明は、このような実情に鑑み、強度面及び製品精度面でより優れた角パイプを提供し、しかもかかる角パイプを極めて簡便かつ安価に製造し得るようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明は次の技術的手段を講じた。即ち、請求項1記載の発明は、側面に切欠孔13を有する角パイプ12を、金属板体17をロール成形することにより製造する角パイプの製造方法において、前記金属板体17に予め前記切欠孔13を設けておき、その金属板体17を所定のロールフラワに従って平板状態から直接角形断面形状にロール成形した後、その金属板体17の板端間を突合せ溶接して角形断面を閉塞することを特徴とする。
【0009】また、請求項2記載の発明は、側面に切欠孔13を有し、金属板体17をロール成形することにより製造される角パイプにおいて、前記金属板体17に予め前記切欠孔13を設け、その金属板体17は、所定のロールフラワに従って平板状態から直接角形断面形状にロール成形され、その金属板体17の板端は、角形断面のコーナ部16において突合せ溶接されていることを特徴とする。
【0010】更に、請求項3記載の発明は、切欠孔13の一側には、角形断面の内方に膨出する切起し片14が形成されていることを特徴とする。
【0011】
【作用】本発明方法によれば、金属板体17を平板状態から直接角形断面形状にロール成形するので、ロール成形機5 が一台で済み、切欠孔13の位置ずれ等を生じさせることなく所定の断面形状に成形できる。請求項2記載の発明では、溶接線15を角パイプ12の断面コーナ部16に配しているので、角パイプ12の断面剛性が増大する。
【0012】請求項3記載の発明では、切欠孔13の一側に切起し片14を残すようにしており、角パイプ12の断面欠損を有効に防止している。
【0013】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例について詳述する。図2は、本発明方法が採用される角パイプの製造設備の概要を示している。この製造設備は、同図左側から順に、アンコイラ1 、レベラ2 、NCフィーダ3 、切欠プレス4 、ロール成形機5 、高周波溶接機6、走行切断器7 、ラインアウトテーブル8 をタンデムに配置して構成されている。
【0014】前記ロール成形5 は、上下一対のローラ9,10を多数直列に備えていて、本実施例では、全部で20段のローラ9,10を有している。また、高周波溶接器6 は、スライダ11を介してロール成形機5 の上部でパスライン方向に移動自在に取付けられている。図3及び図4において、12は本実施例で製造対象とした角パイプで、断面方形の鋼製のものが採用され、図外のラックの棚板を支持する支柱となるものである。この角パイプ12は、棚板を種々の高さで支持すべく、その側面の上下方向所定間隔おきに多数の切欠孔13を備え、本実施例では、この切欠孔13の一側に、角パイプ12の断面内方に膨出する切起し片14を残すことにしている。
【0015】また、15は角パイプ12の溶接線を示し、本実施例では、この溶接線15が当該角パイプ12の断面コーナ部16に位置するように突合せ溶接されている。次に、上記角パイプ12の製造方法を順を追って説明する。図1に示す如く、先ず角パイプ12の素材となる帯状の金属板体17は、前記アンコイラ1 及びレベラ2 によって平坦化され、この平坦状態において切欠プレス4によって所定位置に切欠孔13が設けられる。尚、このとき切欠孔13の一側には、前記切起し片14が上方突出状に残されるようになっている。
【0016】その後、この切欠孔13を有する金属板体17は、従来のように一旦丸形に成形するのではなく、前記20段ロール成形機5 によって平板状態から直接方形断面形状にロール成形される。図5は、かかるロール成形を行う場合のロールフラワを示しており、同図におけるNO.1,NO.2 …は、ロール番号を示す。
【0017】図5からも明らかなように、本実施例では、先ず第2ロールによって金属板体17の板端をアール加工することにしている。これは、本実施例でこの板端部分が成形後の角パイプ12の断面コーナ部16を構成するようにしているので、後の突合せ溶接がなされやすいようにするためである。次に、第2から第8ロールによって金属板体17の両端をある程度起こした後、第9から第12ロールによって金属板体17の中央部を下側が稜線となるように曲げ、その後は、第13から第16ロールによって断面を徐々に閉じて行くようにしてロール成形される。
【0018】そして、第17ロールにおいて、板端間が略接触すると、第17ロールと第18ロール間に配置しておいた前記高周波溶接機6によって板端間が突合せ溶接される。尚、第19及び第20ロールは、断面閉塞後の角パイプの断面寸法を微調整するためのロールである。尚、図6乃至図12は、上記ロールフラワーのうち、それぞれ第2、第6、第8、第11、第13、第16、第18ロールの縦断面図を示す。このうち、図6において、上側のロール9 に周溝18が設けられているのは、金属板体17に形成した切起し片14をつぶさないようにするためである。
【0019】その後、上記のようにしてロール成形された角パイプ12は、前記走行切断機7によって所定長さに切断され、ラインアウトテーブ8 上に搬出される。このように、本実施例によれば、予め切欠孔13を有する金属板体17を直接角形断面形状にロール成形することにしたので、ロール成形機5 が一台で済み設備コストを低減化できると共に、切欠孔13の位置ずれやその周辺材料の座屈を生じることなくロール成形できるので、精度の高い切欠孔13付き角パイプ12を非常に簡便に製造することができる。
【0020】また、本実施例に係る製造方法によれば、ロールフラワの最終段階で突合せ溶接を行うので、上述のように角パイプ12の溶接線15を断面コーナ部16に配置することができ、成形後の角パイプ12の断面剛性を可及的に増大することができる。また、切欠孔13の一側に切起し片14が残った金属板体17をロール成形することもでき、切欠孔13による断面欠損を有効に防止できる利点がある。
【0021】更に、本実施例によれば、平板状態の金属板体17に孔明け作業を行うので、切欠プレス4 も簡単な構造のもので足り、この点からも設備コストの低減を図ることができる。尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、角パイプ12の断面剛性を特に高める必要のない場合には、溶接線15を角パイプ12の側面中央に配置するようにしてもよく、また、敢えて切起し片14を残しておく必要もない。
【0022】また、本発明方法によれば、前記ラックの支柱のみならず、その他、各種建設資材等に用いる角パイプも製造可能であり、ロールフラワを設計しなおすことにより異形断面の角パイプも成形しうることは勿論である。
【0023】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、ロール成形機5 が一台で済むので設備コストを低減化できると共に、切欠孔13の位置ずれ等を生ずることなくロール成形できるので、製品精度の高い角パイプ12を極めて簡便に製造することができる。請求項2記載の発明によれば、接接線15が断面コーナ部16に配置されているので、角パイプ12の断面剛度を増大させることができる。
【0024】請求項3記載の発明によれば、切欠孔13の一側に切起し片14が残されているので、角パイプ12の断面剛度を更に増させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】角パイプの製造方法の概略説明図である。
【図2】角パイプの製造設備の側面図である。
【図3】角パイプの斜視図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】ロールフラワの説明図である。
【図6】第2ロールの縦断面図である。
【図7】第6ロールの縦断面図である。
【図8】第8ロールの縦断面図である。
【図9】第11ロールの縦断面図である。
【図10】第13ロールの縦断面図である。
【図11】第16ロールの縦断面図である。
【図12】第18ロールの縦断面図である。
【図13】従来の角パイプの製造方法を示す概略説明図である。
【図14】比較例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
12 スライダ
13 切欠孔
14 切起し片
16 断面コーナ部
17 金属板体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 側面に切欠孔(13)を有する角パイプ(12)を、金属板体(17)をロール成形することにより製造する角パイプの製造方法において、前記金属板体(17)に予め前記切欠孔(13)を設けておき、その金属板体(17)を所定のロールフラワに従って平板状態から直接角形断面形状にロール成形した後、その金属板体(17)の板端間を突合せ溶接して角形断面を閉塞することを特徴とする角パイプの製造方法。
【請求項2】 側面に切欠孔(13)を有し、金属板体(17)をロール成形することにより製造される角パイプにおいて、前記金属板体(17)に予め前記切欠孔(13)を設け、その金属板体(17)は、所定のロールフラワに従って平板状態から直接角形断面形状にロール成形され、その金属板体(17)の板端は、角形断面のコーナ部(16)において突合せ溶接されていることを特徴とする角パイプ。
【請求項3】 切欠孔(13)の一側には、角形断面の内方に膨出する切起し片(14)が形成されていることを特徴とする請求項2記載の角パイプ。

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図10】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【公開番号】特開平5−92212
【公開日】平成5年(1993)4月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−252185
【出願日】平成3年(1991)9月30日
【出願人】(591225291)双福鋼器株式会社 (4)