説明

角化細胞のpar2活性化を阻害するための組成物及び方法

角化細胞のPAR2活性化を阻害するための組成物が開示され、該組成物はビタミンB3化合物、N−アシルアミノ酸化合物及びカラフトコンブ抽出物を含有する。一実施形態において、角化細胞のPAR2活性化を阻害するための組成物は、ナイアシンアミド、N−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニン及びカラフトコンブ抽出物を含有する。背景技術にて特定された技術的問題に応答して、本発明は、角化細胞のPAR2活性化の阻害方法を含む他の形態をとり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB3化合物、N−アシルアミノ酸化合物及びカラフトコンブ(Laminaria Saccharina)の抽出物を使用する、PAR2阻害を強化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニンは、皮膚色素沈着における基本的な化合物である。メラニンは、基本的なレベルで、酵素チロシナーゼと基質としてのL−チロシンとが関与するメラニン形成細胞内の複雑な反応セットにより生成される。チロシナーゼは、L−チロシンのDOPA(L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)への変換と、DOPAのドーパキノンへの変換とを触媒する。ドーパキノンは、更なる変換を受けてメラニンを形成する。メラニンは、メラノソームとして知られている小器官内に凝集し、このメラノソームは、樹状突起として知られるメラニン形成細胞の細長い線維に沿って角化細胞に移動される。メラノソーム内に発現されているおよそ1500の遺伝子産物が存在し、そのうちの600は任意の所定の時間に発現され、そのうちの100はメラノソームに固有のものであると考えられている。加えて、シグナル伝達、メラニン形成細胞内でのメラノソームの輸送、角化細胞へのメラノソームの移動に関与する多数の調節要素が存在する。
【0003】
メラニン生成サイクルにおける1つの機構は、食作用によるメラノソームのメラニン形成細胞から角化細胞への移動である。研究により、角化細胞上に発現されたプロテアーゼ活性化受容体2(PAR−2)がメラノソーム移動に関与し、それにより色素沈着を調節する可能性があることが見出されている。Seiberg,M.ら、The Protease−Activated Receptor 2 Regulates Pigmentation via Keratinocyte−Melanocyte Interactions,Experimental Cell Research 254,25〜32(2000)を参照されたい。トリプシン(又はトリプシン様プロテアーゼ)を有する(又はペプチド拮抗薬SLIGRLによる)PAR−2の活性化は色素沈着を誘導し、これは色素過剰スポット又はまだらな皮膚色調として出現し得ることがある。したがって、PAR−2のトリプシン(又はトリプシン様プロテアーゼ)活性化を阻害する化合物は、角化細胞によるメラニン形成細胞の食作用を混乱させ又は低減すると思われる。PAR−2活性化を阻害する化合物は、色素沈着過剰及びメラニン過剰生成を同様に調節するであろう。
【0004】
メラニン過剰生成に関連した病態は、色素沈着過剰と称される。例えば、メラニン沈着症又は肝斑(melasma)は、通常、頬、額、及び時には上唇及び首にわたり対称的に分布する、境界がはっきりとしたでき物のような茶色いスポットの発生により特徴付けられる病態である。この病態は、しばしば妊娠中(妊娠性黒皮症又は「妊娠顔貌」)及び閉経期に生じる。また、この病態は、しばしば経口避妊薬を摂取している者に見出され、時折、経口避妊薬を摂取していない非妊娠女性に見出され、また時には男性にも見出される。上述したものと類似した顔の色素沈着過剰のパターンは、肝斑(chloasma)と称される慢性肝疾患に関連している場合がある。老化皮膚に関連した他の通常の病態は、時には「染み」と称される暗色スポットの発生である。色素沈着過剰の他の形態は、紫外線照射又は他の炎症性刺激により生じ得る。色素沈着過剰は、その病態の遺伝的素因の結果として生じる場合もあり、又は創傷治癒の過程で発生する場合もある。
【0005】
色素沈着過剰の外観を改善するための多数の活性成分が販売されている。例えば、N−アシルフェニルアラニン及びN−アシルチロシン等のN−アシルアミノ酸化合物とビタミンB3との使用は、インビトロでのメラニン生成の調節に有益であることが示されている。Millikin,C.L.ら(2008年2月)を参照されたい。ウンデシル−10−エノイル−フェニルアラニン(Sepiwhite(登録商標))は、インビボでのメラニン生成の調節において美容成分N−アセチルグルコサミン及びナイアシンアミドに更なる利益を提供し、2008 American Academy of Dermatology,San Antonio,TXにポスター発表された。現存する製品は色素沈着過剰の調節に有効であるが、より効果的な製品に対する願望が継続している。
【0006】
褐藻の一種であるカラフトコンブの抽出物は、当技術分野にて公知である。1つの例は、Biotech Marine,Franceにより、商標名Phlorogineで販売されている。Phlorogineは、例えば米国特許出願公開第2008/0119527A1号に記載されているように、皮脂腺の活性を調節し得る抗脂漏性剤として既知である。褐藻の抽出方法も公知である。欧州特許第1074262B1号は、褐藻綱及びラミナリアオクロロイカ(Laminaria Ochroleuca)種の抽出方法を記載している。これらの抽出物は、浸透圧安定剤(osmoprotector)、フリーラジカルスカベンジャー、又は、皮膚老化作用の効果に対抗するものとして美容組成物中に使用されるよう記載されている。ブランド名SK−II Facial Clear Solution(Procter & Gamble,Cincinnati,OH)で販売されている美容組成物は、約1.25%のPhlorogine濃度を有する。SK−II Facial Clear Solutionは、油性光沢を増大させずに、皮膚を保湿する保湿ゲルとして販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0119527A1号
【特許文献2】欧州特許第1074262B1号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Seiberg,M.et al.The Protease−Activated Receptor 2 Regulates Pigmentation via Keratinocyte−Melanocyte Interactions,Experimental Cell Research 254,25〜32(2000)を参照されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
角化細胞のPAR2活性化を阻害するための組成物は、ビタミンB3化合物、N−アシルアミノ酸化合物及びカラフトコンブ抽出物を含有する。所定の実施形態において、角化細胞のPAR2活性化を阻害するための組成物は、ナイアシンアミド、N−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニン及びカラフトコンブ抽出物を含有する。
【0010】
本発明は更に、開示した組成物を塗布することによる、角化細胞のPAR2活性化を阻害する方法に関する。本発明は、背景技術にて特定された技術的問題に応答して、他の形態をとり得る。本発明の更なる形態は、以下の詳細な説明から認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、添付図面と併せて以下の説明から、より良く理解されると考えられる。参照する図面は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【図1】点滴器の形態を有する例示的なアプリケーター。
【図2】棒状物の形態を有する例示的なアプリケーター。
【図3】細先端チューブの形態を有する例示的なアプリケーター。
【図4】参加者のフルカラー画像。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特に指示のない限り、本明細書で使用される百分率及び比率は、全て総組成物の重量を基準とし、測定は、全て25℃で行われる。全ての数字範囲はより狭い範囲を含み、線引きされている範囲の上限及び下限は置き換え可能であり、明白に線引きされていない更なる範囲を形成する。
【0013】
本発明の組成物は、本明細書に記載の必須構成成分並びに任意成分を含み、それらから本質的に成り、又はそれらから成ることができる。本明細書で使用するとき、「から本質的に成る」とは、組成物又は構成成分が追加成分を包含してもよいが、それら追加成分が特許請求される組成物又は方法の基本的及び新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0014】
組成物に関連して使用される用語「塗布する」又は「塗布」は、本発明の組成物を表皮等のヒト皮膚表面上に塗布し又拡げることを意味する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「皮膚科学的に許容可能な」は、記載される組成物又は構成成分が、過度の毒性、不適応性、不安定性、アレルギー反応等がなく、ヒトの皮膚組織と接触して使用するのに好適であることを意味する。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「安全かつ有効な量」は、有益な利益を有意に誘導するのに十分な化合物及び組成物の量を意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「炎症後色素沈着過剰」は、特に暗色皮膚被験者における、一過性炎症事象に応答した急性の又は一時的な色素沈着の増大を指す。炎症後色素沈着過剰は一般に、一過性炎症事象が消散した後、低下する。一過性炎症事象の例には、挫創病変、内方発育毛、引っ掻き傷、虫刺され、界面活性剤損傷、及び短時間の紫外線曝露が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「色素過剰スポット」は、局部的かつ慢性の又は全身性のメラニン過剰生成により、色素沈着が隣接する皮膚範囲よりも大きい、皮膚の画定された範囲を指す。色素過剰スポットは一般に、直径約2mm〜約10mmであるが、より小さい又は大きいスポットの可能性もある。色素過剰スポットは、染み、日焼けによる染み(sun spot)、黒子(solar lentigo)、低メラニン性病変(hypo-melanotic lesion)、そばかす及び肝斑スポットのうちの1つ以上を含むことができる。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「染み」は、内因性又は外因性の加齢因子により生じる局部的かつ慢性のメラニン過剰生成により、色素沈着が隣接した皮膚の色素沈着よりも多い皮膚の画定された範囲を指す。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「皮膚色調剤」は、メラニン生成シグナル、メラニンの合成、メラニン形成細胞と角化細胞との間でのメラニンの全身輸送、及び/又はメラニン分解を調節する薬剤を指す。皮膚色調剤は、美白剤又は色素沈着低下の美容薬剤として作用することにより、まだらな皮膚色調の外観を改善することができる。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「皮膚色調」は、一過性ではなく全身性のメラニン合成による、皮膚におけるメラニンの全体的な外観を指す。皮膚色調は一般に、皮膚の広い範囲にわたり特徴付けられる。範囲は、理想的には100mm2であってもよいが、顔の皮膚の全体、又は任意の顔の皮膚表面等のより広い範囲が想定される。皮膚色調は、画像分析により測定することができる。例えば、全体的な明るさは、L***色空間内のL*座標により測定することができる(International Commission on Illumination)。メラニンマッピング等の発色団マッピングとメラニン濃度とは、全体的な皮膚色調の指標として使用することができる。発色団マップデータから平均メラニンを計算することができる。加えて、皮膚色調均一性はメラニン均一性から測定することができ、メラニン均一性も発色団マップデータから計算することができる。好適な発色団マッピング法は、以下の実施例にて論じられる。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「顔の皮膚表面」は、額、眼窩周囲、頬、口周囲、頤及び鼻の皮膚表面のうちの1つ以上を指す。
【0023】
I.組成物
本発明の組成物は、色素沈着過剰の処置、調節、改善及び/又は予防用である。組成物は、哺乳動物の皮膚表面、特にヒトの皮膚に塗布されるためのものである。組成物は、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、化粧水、スティック、ペンシル、スプレー、エアゾル、軟膏、クレンジング洗剤液およびクレンジング棒状固形物(cleansing liquid washes and solid bars)、シャンプー及びヘアコンディショナー、ペースト、フォーム、パウダー、ムース、髭剃りクリーム、ティッシュ、細片(strip)、パッチ、電気駆動パッチ、創傷被覆材及び粘着性包帯、ヒドロゲル、フィルム形成製品、顔及び皮膚マスク(不溶性シートを有する及び有さない)、ファンデーション、アイライナー及びアイシャドウ等の化粧品等が挙げられるがこれらに限定されない、非常に様々な製品形態を有することができる。組成物の形態は、組成物中に存在する場合、選択された皮膚科学的に許容可能な特定のキャリアに従い得る。
【0024】
A.カラフトコンブ抽出物
本発明の組成物は、安全かつ有効な量のカラフトコンブ抽出物、即ち褐藻類抽出物を含有する。好ましい抽出物は、Marine Biotech,Franceから入手可能なPhlorogine及び/又はPhlorogine BGである。別の好適なカラフトコンブ抽出物は、Ennagram,Franceから製品コードHG 657により入手可能である。組成物は、組成物の少なくとも約0.001重量%、0.0006重量%、0.2重量%又は1重量%の量のPhlorogine及び/又はPhlorogine BGを含有してもよい。組成物は、組成物の約50重量%、20重量%、10重量%、5重量%又は1重量%未満の量のPhlorogine及び/又はPhlorogine BGを含有してもよい。Phlorogine及び/又はPhlorogine BG使用の例示的な範囲は、組成物の0.008重量%〜50重量%、約0.04重量%〜20重量%、0.2重量%〜10重量%、1重量%〜5重量%及び1重量%〜3重量%を含む。
【0025】
組成物は、十分な量のカラフトコンブ抽出物を含有して、組成物中の他の活性物質の色素沈着過剰の処置効果を強化又は改善することができる。一実施形態において、組成物は、十分な量のカラフトコンブを含有して、ビタミンB3化合物及び/又はN−アシルアミノ酸化合物の効果を強化又は改善する。所定の実施形態において、カラフトコンブ抽出物は、ナイアシンアミド及び/又はN−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニンの抗力を強化又は改善することができる。別の実施形態では、組成物は、十分な量のカラフトコンブ抽出物を含有して、組成物中の他の活性物質のPAR−2阻害効果を強化又は改善することができる。所定の実施形態において、カラフトコンブ抽出物は、ナイアシンアミド及び/又はN−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニンのPAR−2阻害効果を強化又は改善することができる。別の実施形態では、組成物は、十分な量のカラフトコンブ抽出物を含有して、組成物中の他の構成成分のPAR2阻害効果を強化する。例えば、組成物は、十分な量のカラフトコンブ抽出物を含有して、ビタミンB3化合物及びN−アシルアミノ酸化合物からなる、組成物の他の構成成分のPAR2阻害効果を強化することができる。
【0026】
カラフトコンブ抽出物は、例えば水、増粘剤、湿潤剤、溶剤及び可溶化剤等の他の化合物を含有してもよい。例えば、Phlorogine及び/又はPhlorogine BGは、およそ約1%〜約2.5%の乾燥抽出物を含有し、残りの物質は不活性キャリアである。したがって、本発明の組成物は、組成物の約0.00001重量%〜約1.25重量%、一実施形態では約0.00006重量%〜約0.5重量%、別の実施形態では約0.002重量%〜約0.25重量%のカラフトコンブ抽出物を含有してもよい。更なる別の実施形態では、組成物は、全組成物の約0.01重量%〜約0.125重量%、更なる別の実施形態では0.01重量%〜0.075重量%のカラフトコンブ抽出物を含有する。カラフトコンブ抽出物は、例えば欧州特許第1074262B1号に記載されているもの等の、当該技術分野にて既知のプロセスにより調製することができる。
【0027】
B.N−アシルアミノ酸化合物
組成物は、安全かつ有効な量の1つ以上のN−アシルアミノ酸化合物を含有してもよい。アミノ酸は、当該技術分野において既知のいかなるアミノ酸の1つでもあることができる。N−アシルアミノ酸化合物は、N−アシルアミノ酸、それらの異性体、それらの塩、及びそれらの誘導体を含む。本発明のN−アシルアミノ酸化合物は、式Iの化合物に相当する。
【0028】
【化1】

式中、Rは、水素、アルキル(置換又は非置換、直鎖又は分岐鎖)、アリール、又はアルキルと芳香族基との組み合わせである。当該技術分野で既知のアミノ酸の可能な側鎖のリストは、Stryer,Biochemistry,1981,published by W.H.Freeman and Companyに記載されている。R1は、C1〜C30、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状、置換又は非置換のアルキル;置換又は非置換の芳香族基;又はそれらの混合物であることができる。
【0029】
N−アシルアミノ酸化合物は、N−アシルフェニルアラニン、N−アシルチロシン、それらの異性体、それらの塩、及びそれらの誘導体からなる群から選択されてもよい。アミノ酸は、D異性体又はL異性体、あるいはそれらの混合物であることができる。N−アシルフェニルアラニンは、下式IIに相当する。
【0030】
【化2】

式中、R1は、C1〜C30、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状、置換又は非置換のアルキル;置換又は非置換の芳香族基;又はそれらの混合物であることができる。
【0031】
N−アシルチロシンは、下式IIIに相当する。
【0032】
【化3】

式中、R1は、C1〜C30、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状、置換又は非置換のアルキル;置換又は非置換の芳香族基;又はそれらの混合物であることができる。
【0033】
局所用の皮膚色調を均一化する(美白又は色素沈着の減少)化粧品として特に有用なのは、N−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニンである。この薬剤は、広い分類のN−アシルフェニルアラニン誘導体に属し、そのアシル基はC11モノ不飽和脂肪酸部分、及びアミノ酸はフェニルアラニンのL異性体である。N−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニンは、下式IVに相当する。
【0034】
【化4】

【0035】
本明細書で使用されるN−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニンは、SEPPICから商標名Sepiwhite(登録商標)で市販されている。
【0036】
本発明の組成物は、組成物の約0.0001〜約25重量%、約0.001〜約10重量%、約0.01〜約5重量%、又は約0.02〜約2.5重量%のN−アシルアミノ酸を含有することができる。
【0037】
C.ビタミンB3
本発明の組成物は、安全かつ有効な量のビタミンB3化合物を含有してもよい。ビタミンB3化合物は、米国特許第5,939,082号に記載されるように、皮膚状態を調整するのに特に有用である。組成物は、組成物の約0.01重量%〜約50重量%、約0.1重量%〜約20重量%、約0.5重量%〜約10重量%、約1重量%〜約5重量%、又は約2重量%〜約5重量%のビタミンB3化合物を含有する。
【0038】
本明細書で使用するとき、「ビタミンB3化合物」は、式Vを有する化合物を意味する。
【0039】
【化5】

式中、Rは、−CONH2(即ち、ナイアシンアミド)、−COOH(即ち、ニコチン酸)、又は−CH2OH(即ち、ニコチニルアルコール);これらの誘導体;及び前述のいずれかの塩である。
【0040】
上述のビタミンB3化合物の例示的な誘導体としては、ニコチン酸の非血管拡張性エステル(例えば、トコフェリルニコチネート、ミリスチルニコチネート)を含むニコチン酸エステルが挙げられる。
【0041】
好適なビタミンB3化合物の例は、当該技術分野において周知であり、多数の供給源(例えば、Sigma Chemical Company、ICN Biomedicals,Inc.及びAldrich Chemical Company)より市販されている。
【0042】
D.皮膚科学的に許容可能なキャリア
本発明の組成物は、組成物用の皮膚科学的に許容可能なキャリア(「キャリア」と称してもよい)も含有し得る。本明細書で使用するとき、「皮膚科学的に許容可能なキャリア」という語句は、キャリアがケラチン組織への局所塗布に好適であり、良好な審美特性を有し、組成物中の活性物質と適合性があり、安全性又は毒性についていかなる不当な問題も起こさないことを意味する。一実施形態において、キャリアは、組成物の約50重量%〜約99重量%、約60重量%〜約98重量%、約70重量%〜約98重量%、又は代替的に約80重量%〜約95重量%のレベルで存在する。
【0043】
キャリアは、多種多様な形態をとることができる。非限定例には、単純な溶液(例えば、水性、有機溶媒又は油ベースの)、乳濁液、及び固体形態(例えば、ゲル、スティック、流動性固体、又は無定形材料)が挙げられる。所定の実施形態において、皮膚科学的に許容可能なキャリアは、乳濁液の形態を有する。乳濁液は、一般に、連続水相(例えば水中油型及び水中油中水型)、又は連続油相(例えば油中水型及び油中水中油型)を有するものとして分類され得る。本発明の油相には、シリコーンオイル、非シリコーンオイル(炭化水素油、エステル、エーテル等)、及びこれらの混合物が含まれ得る。
【0044】
水相は、典型的には、水を含む。しかしながら、別の実施形態では、水相は、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他の水溶性スキンケア活性物質が挙げられるが、これらに限定されない水以外の構成成分を含み得る。一実施形態では、組成物の非水構成成分は、グリセリン及び/又は他のポリオール等の湿潤剤を含む。しかしながら、組成物は、実質的に(即ち、1%未満の水)又は完全に無水であってもよいことを理解するべきである。
【0045】
所望の製品形態を得るために、好適なキャリアが選択される。更に、構成成分(例えば、カラフトコンブ抽出物、日焼け止め活性物質、追加の構成成分)の可溶性又は分散性は、キャリアの形態及び特性に影響し得る。一実施形態では、水中油又は油中水型の乳濁液が好ましい。
【0046】
乳濁液は、更に乳化剤を含有してもよい。組成物は、キャリアを十分乳状にする任意の好適な百分率の乳化剤を含有してもよい。好適な重量範囲は、組成物の、約0.1重量%〜約10重量%又は約0.2重量%〜約5重量%の乳化剤を含む。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、又はカチオン性であってよい。好適な乳化剤は、例えば、米国特許第3,755,560号、同第4,421,769号、及びMcCutcheonのDetergents and Emulsifiers,North American Edition、317〜324頁(1986)に開示されている。好適な乳濁液は、所望の製品形態に応じて、幅広い粘度を有し得る。
【0047】
キャリアは、当業者に周知であるように増粘剤を更に含有して、好適な粘度及び流動学的特性を有する組成物を提供してもよい。
【0048】
E.任意成分
いくつかの実施形態では、カラフトコンブ抽出物と組み合わせて、組成物中に皮膚色調剤を含ませることが望ましい場合がある。皮膚色調剤は、全体的な皮膚色調を更に改善するよう含められてもよい。存在する場合、本発明の組成物は、組成物の約50重量%、40重量%、30重量%、20重量%、10重量%、5重量%又は3重量%迄の皮膚色調剤を含有する。存在する場合、本発明の組成物は、組成物の少なくとも約0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%又は1重量%の皮膚色調剤を含有する。好適な範囲は、組成物の約0.1重量%〜約50重量%、約0.2重量%〜約20重量%、又は約1重量%〜約10重量%の皮膚色調剤の好適な範囲を含む、下限及び上限の任意の組み合わせを含む。皮膚色調剤の効力がかなり多様であるため、皮膚色調剤の最適な量は選択される特定の活性物質に依存することにより、本明細書に列挙した量は、規準としてのみ使用されるべきである。
【0049】
好適な皮膚色調剤には、糖アミン、アルブチン、デオキシアルブチン、ヘキシルレゾルシノール等の1,3−ジヒドロキシ−4−アルキルベンゼン、ジラウリン酸スクロース、バクコイル(bakuchoil)(4−[(1E,3S)−3−エテニル−3,7−ジメチル−1,6オクタジエニル]フェノール又はモノテルペン(monterpene)フェノール)、ピレノイン(pyrenoine)(Biotech Marine,Franceから入手可能)、キビ(panicum miliaceum)種子抽出物、アーラトン(arlatone)二酸、ケイ皮酸、フェルラ酸、アクロマキシル(achromaxyl)、メチルニコチンアミド、油可溶性甘草抽出物、葉酸、ウンデシレン酸(即ち、ウンデセン酸)、ウンデシレン酸亜鉛、チアミン(ビタミンB1)及びその塩酸塩、L−トリプトファン、ヒマワリ(helianthus annuus)(サンフラワー)及びブドウ(vitis vinifera)(グレープ)葉抽出物、カルノシン(即ち、ドラゴシン)、ゲンチシン酸メチル、1,2−ヘキサンジオール及び1,2−オクタンジオール(即ち、Symrise AG,GermanyによりSymdiol 68として販売されている組み合わせ)、イノシトール、、コウジ酸(koijic acid)、ヘキサミジン化合物、サリチル酸、並びにプロピオン酸レチノール及びプロピオン酸レチニルを含むレチノイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
所定の実施形態において、追加の皮膚色調剤は、糖アミン、ヘキサミジン化合物、サリチル酸、ヘキシルレゾルシノール等の1,3−ジヒドロキシ−4−アルキルベンゼン、及びレチノイドからなる群から選択される。本明細書で使用するとき、「糖アミン」には、その異性体及び互変異性体、並びにその塩(例えばHCl塩)及びその誘導体が含まれる。糖アミンの例としては、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、マンノサミン、N−アセチルマンノサミン、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、これらの異性体(例えば立体異性体)、及びこれらの塩(例えばHCl塩)が挙げられる。本明細書で使用するとき、「ヘキサミジン化合物」とは、式VIを有する化合物を意味する。
【0051】
【化6】

式中、R1及びR2は任意であるか、又は有機酸(例えばスルホン酸等)である。一実施形態において、ヘキサミジン化合物はジイセチオン酸ヘキサミジンである。
【0052】
色素沈着過剰は、皮膚炎症から生じ得る。色素沈着過剰、より詳細には炎症後色素沈着過剰を引き起こす一過性炎症事象としては、挫創病変、内方発育毛、引っ掻き傷、虫刺され、界面活性剤損傷、アレルゲン、及び短時間の紫外線暴露が挙げられるが、これらに限定されない。炎症後色素沈着過剰を含む、炎症誘導による色素沈着過剰は、本発明の組成物中に抗炎症剤を組み込むことにより対処することができる。存在する場合、本発明の組成物は、組成物の約20重量%、10重量%、5重量%、3重量%又は1重量%迄の抗炎症剤を含有する。存在する場合、本発明の組成物は、組成物の少なくとも約0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%又は1重量%の抗炎症剤を含有する。好適な範囲は、下限と上限との任意の組み合わせを含む。好適な抗炎症剤には、非ステロイド系の抗炎症剤(イブプロフェン、ナプロキセン、フルフェナム酸、エトフェナマート、アスピリン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム及びフェルビナクが挙げられるが、これらに限定されないNSAIDS)、グリシルリジン酸(グリシルリジン、グリシルリキシン酸(glycyrrhixinic acid)及びグリシルレチン酸グリコシドとしても知られている)及びグリシルリジン酸二カリウム等の塩、グリシルレテン酸(glycyrrhetenic acid)、甘草抽出物、ビサボロール(例えば、αビサボロール)、マンジスタ(キイチゴ属の植物、特にクルマバアカネ(Rubia cordifolia)から抽出される)、及びガッグル(guggal)(コミフォラ属の植物、特にコミフォラムクリ(Commiphora mukul)から抽出される)、コーラノキ抽出物、カミツレ、ムラサキツメクサ抽出物、及びムチサンゴ(sea whip)抽出物(ヤギ目の植物からの抽出物)、上記のいずれかの誘導体、及びこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
【0053】
本発明の組成物は、1つ以上の日焼け止め活性物質(日焼け止め剤)及び/又は紫外線吸収剤を含んでよい。本明細書において「日焼け止め活性物質」には、集合的に日焼け止め活性物質、日焼け止め剤、及び/又は紫外線吸収剤が含まれる。日焼け止め活性物質には、日焼け止め剤と物理的日焼け防止剤の双方が含まれる。日焼け止め活性物質は、有機又は無機であってよい。好適な日焼け止め活性物質の例は、「日焼け止め剤」としてPersonal Care Product Council’s International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Thirteenth Editionに開示されている。特に好適な日焼け止め活性物質は、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート(PARSOL(商標)MCXとして市販)、4,4−t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン(PARSOL(商標)1789として市販)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチル−p−アミノ安息香酸、ジガロイルトリオレエート、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、エチル−4−(ビス(ヒドロキシプロピル)アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシルサリチレート、グリセリル−p−アミノベンゾエート、3,3,5−トリ−メチルシクロヘキシルサリチレート、アントラニル酸メチル、p−ジメチル−アミノ安息香酸又はアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−p−ジメチルアミノベンゾエート、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸、2−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−スルホンベンゾオキサゾイン酸、オクトクリレン、酸化亜鉛、ベンジリデンカンファー及びその誘導体類、二酸化チタン、並びにこれらの混合物である。
【0054】
一実施形態において、組成物は、組成物の約1重量%〜約20重量%、代替的に約2重量%〜約10重量%の日焼け止め活性物質を含有してもよい。正確な量は、選択された日焼け止め活性物質と、当業者の知識の範囲内である所望の太陽光線保護指数(SPF)に応じて変動するであろう。
【0055】
本発明の組成物は、本発明の利益を受け入れ難いほど変更しなければ、様々な他の成分を含有することができる。存在する場合、本発明の組成物は、組成物の約0.0001重量%〜約50重量%、約0.001重量%〜約20重量%、又は代替的に約0.01重量%〜約10重量%の任意構成成分を含有することができる。本明細書に列挙した量は規準としてのみ使用されるべきであり、組成物中に使用される任意構成成分の最適な量は、それらの効力がかなり多様であるため、選択される特定の活性物質に依存するであろう。したがって、本発明において有用ないくつかの任意構成成分の量は、本明細書に列挙した範囲外であり得る。
【0056】
組成物中に組み込まれる場合、任意成分は、過度の毒性、不適応性、不安定性、アレルギー反応等を示すことなく、ヒトの皮膚組織に接触させて用いるのに好適でなければならない。本発明の組成物は、抗挫創活性物質、落屑活性物質、抗セルライト剤、キレート剤、フラボノイド、日焼け活性物質、非ビタミン酸化防止剤及びラジカルスカベンジャー、育毛調整剤、しわ防止活性物質、抗皮膚萎縮防止活性物質、鉱物、フィトステロール及び/又は植物ホルモン、N−アシルアミノ酸化合物、抗菌活性物質又は抗真菌活性物質、並びに他の有用なスキンケア活性物質等の任意構成成分を含有してもよく、これらは、米国特許出願公開第2006/0275237(A1)号及び同第2004/0175347(A1)号に更に詳細に記載されている。
【0057】
Personal Care Product Council’s International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Thirteenth Editionには、皮膚ケア産業において通常使用されている非常に様々な非限定的な美容及び医薬成分が記載され、それらは本発明の組成物中で使用するのに好適な任意構成成分である。これらの成分クラスの例としては、研磨材、吸収剤、芳香剤等の美容構成成分、色素、顔料/着色剤、精油、アンチケーキング剤、消泡剤、抗菌剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、充填剤、キレート化剤、化学的添加剤、着色剤、美容収斂剤、美容殺生物剤、変性剤、薬物収斂剤、皮膚軟化剤、外用鎮痛剤、フィルム形成剤又は材料、乳白剤、pH調整剤、保存剤、噴霧剤、還元剤、捕捉剤、皮膚冷却剤、皮膚保護剤、増粘剤粘度調節剤、ビタミン及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
II.例示的な組成物
以下は、本発明の組成物の非限定的な実施例である。これらの実施例は単に説明のために示すものであり、本発明を限定するものと解釈すべきでなく、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの改変が可能であり、当業者にはこれらのことが理解されよう。実施例においては、特に指定のない限り、全ての濃度が重量%として列挙されており、希釈剤、充填剤等の微量物質は除外し得る。そのため、列挙した配合は、列挙した成分及びこのような成分に関連するいかなる微量物質をも含む。当業者にとって明白なように、このような微量物質の選択は、本明細書に記載したように本発明を作るために選択した特定成分の物理的及び化学的特質によって変わることになる。
【0059】
全ての実施例は、色素沈着過剰の処置、調節、改善及び/又は予防に使用することができる。本発明は、更に、1つ以上の色素過剰スポットのための局部的処置を含む治療計画、又は組成物によるより広い若しくは全般的な顔の皮膚処置を含む治療計画に関するものであってもよい。
【0060】
【表1】

*1−Biotech Marine,Franceから入手可能。
*2−SEPPIC,Franceから入手可能なSepiwhite。
*3−Cognis GmbHから入手可能なEmulgade PL 68/50。
*4−SEPPIC,Franceから入手可能なSepigel 305。
*5−Dow Corning,Inc.,Midland,MIから入手可能なDow Corning DC1503。
【0061】
本発明の組成物は、一般に、局所塗布組成物を製造する技術分野において知られているような従来の方法によって調製される。このような方法は、通常、加熱、冷却、真空の適用等を用いて又は用いずに、成分を1つ以上の工程で混合して比較的均一な状態にするものである。一般に、乳濁液は、最初に水相物質を脂肪相物質とは別個に混合し、その後2相を適宜組み合わせて、所望の連続層を得ることにより調製される。組成物は、好ましくは、安定性(物理的安定性、化学的安定性、光安定性)、及び/又は活性物質の送達を最適化するように調製される。この最適化には、適切なpH(例えば、7未満)、活性剤と錯体になり、ひいては安定性又は分配にマイナスの影響を与え得る物質の排除(例えば、汚染鉄の排除)、錯体形成を防止する手法(例えば、適切な分散剤又は二重区画包装)の使用、適切な光安定性の手法(例えば、日焼け止め剤/日焼け防止剤の組み込み、不透明包装の使用)の使用等が含まれてもよい。
【0062】
III.処置方法
処置、塗布、調節又は改善の様々な方法として、前述した組成物を使用することができる。組成物は、皮膚表面に塗布されてもよい。組成物は、PAR2阻害を必要とする皮膚表面に塗布されてもよい。例えば、組成物は、色素過剰スポット又はまだらな色調を含む皮膚表面に塗布されてもよい。組成物は、メラニン調節及び/又は低減を必要とする皮膚表面に塗布されてもよい。最も問題の皮膚表面は、顔の皮膚表面、手及び腕の皮膚表面、足及び脚の皮膚表面、並びに首及び胸の皮膚表面(例えば、デコルタージュ)等の、衣服で覆われない皮膚表面である傾向がある(が、これらに限定されない)。特に、色素過剰スポットの識別は額、口周囲、頤、眼窩周囲、鼻及び/又は頬の皮膚表面を含む顔の皮膚表面であってもよい。
【0063】
本方法は、組成物による処置のために皮膚表面を識別する工程を含んでもよい。色素過剰スポットは、使用者、又は例えば皮膚科医、美容師、若しくは他の介護者等の第三者により識別されてもよい。識別は、寸法及び/又は色に基づいて、処置を必要とする皮膚の色素過剰スポットを視覚的に検査することにより行われてもよい。メラニンの識別は、SIAscope(登録商標)V(Astron Clinica,Ltd.,UKから入手可能)又はVISIA(登録商標)Complexion Analysisシステム(Canfield Scientific,Inc.,Fairfield,NJから入手可能)等の市販の撮像装置により行われてもよい。両方の装置は、皮膚の画像を収集し、メラニン等の発色団を識別することが可能である。次にこれらの画像を使用して、色素過剰スポット又はまだらな色調を識別することができる。
【0064】
組成物を皮膚表面に塗布する多数の投与計画が存在する。組成物は、処置期間中、少なくとも1日1回、1日2回、又は1日により頻繁に塗布されてもよい。1日2回塗布される場合、第1及び第2の塗布は、少なくとも1〜12時間の間隔を空ける。一般に、組成物は、朝及び/又は就寝前の夜に塗布され得る。
【0065】
組成物は、皮膚表面に塗布されて十分な接触時間残留され、及び/又は、十分な回数、繰り返し塗布されて、所望のPAR2阻害を達成してもよい。所定の実施形態において、接触時間は、約1時間、2時間、6時間、8時間、12時間又は24時間を越える。接触時間は、組成物の塗布から、組成物が除去される迄の時間である。所定の実施形態において、組成物は、基質を濯ぎ又は洗浄することにより除去され得る。
【0066】
処置期間は、理想的には、PAR2阻害を与えるのに十分な時間である。処置期間は、色素過剰スポットの外観の改善、メラニンにおける低減、又は皮膚色調の均一化を提供するのに十分な時間であり得る。改善は、色素過剰スポットの大きさの検知可能性の低下、色素過剰スポットの色の薄化(例えば、色の明るさの上昇)、又は色素過剰スポットのメラニンの減少であってもよい。処置期間は、単一の塗布又は多数の塗布を含むことができる。組成物は、少なくとも毎日塗布されてもよい。別の実施形態では、組成物は、少なくとも1日2回塗布される。少なくとも約1週間にわたって多数の塗布が行われてもよい。代替的に、処置期間は、約4週間を越え、又は約8週間を越えてもよい。所定の実施形態では、処置期間は、数ヶ月(即ち3〜12ヶ月)又は数年間にわたり延長するであろう。
【0067】
組成物を皮膚表面に塗布する工程は、局部的塗布により行われてもよい。組成物の塗布に関連して、用語「局部的な」、「局部」又は「局部的に」は、組成物が標的範囲(色素過剰スポット等)に送達される一方、処置を必要としない皮膚表面への送達を最小限にすることを意味する。局部的塗布により、適度の量の組成物が、色素過剰スポット等の標的範囲に隣接した範囲に塗布される(即ち、組成物は幾分かの拡がりを有することなく、色素過剰スポットの境界線内に塗布され又は残留する見込みはない)ことが理解される。組成物又は皮膚科学的に許容可能なキャリアの形態は、局部的塗布を容易にするように選択されるべきである。本発明の所定の実施形態は、組成物を色素過剰スポットに局部的に塗布することを想定しているが、本発明の組成物は1つ以上の顔の皮膚表面に対してより全般的に又は広く塗布されて、顔の皮膚領域内の色素過剰スポットの外観を低減できることを認識するであろう。
【0068】
いくつかの実施形態では、組成物は局部的及び全般的な塗布に適した様々なアプリケーターにより送達されてもよい。いくつかのアプリケーターの例は、図1〜3に示されている。図1にて、好適なアプリケーター10は、組成物を収容し得るボトル14と共に示されている点滴器12であってもよい。図2は、組成物を収容し得るハウジング24を有する棒状物22としてのアプリケーター20を示す。棒状物22は、取っ手部26、柄部27及びアプリケーターヘッド28を備えてもよい。アプリケーターヘッド28は、組成物を解放可能に保持し得る繊維、泡状体、綿又は任意の他の好適な材料を含んでもよい。図3は、本体34と、細い分配先端部36とを有する細先端チューブ32としてのアプリケーター30を示す。組成物は本体34内に貯蔵され、尖った先端部36を通して分配されてもよい。第1の組成物を色素過剰スポットに局部的に塗布できる、綿棒等の他のアプリケーターも使用することができる。他の好適なアプリケーターには、Shya Hsin Plastic Works,Inc.,Taiwanから入手可能なSH−0127ペンアプリケーターと、SwabPlus,Inc.,Chinaから入手可能なXpress Tip又は液体充填スワブ(liquid filled swab)のいずれかとが挙げられる。アプリケーターは、およそ約2mm〜約10mmの直径を有する色素過剰スポットに組成物を容易に塗布し、また、約1〜約50uL/cm2又は約1〜約5uL/cm2の量の組成物を投与できるよう構成されていてもよい。別の実施形態では、組成物は1つ以上の色素過剰スポットに塗布され、より一般的には、1つ以上の顔の皮膚表面に同時に(即ち、30分間未満、又は典型的には5分間未満にわたり)塗布される。
【0069】
本明細書に記載するいくつかの方法は、本発明の組成物をアプリケーターで塗布することを想定しているが、アプリケーターは必要なく、本発明の組成物は人の指で直接、又は他の従来の様式で塗布できることが認識されるであろう。
【0070】
好適な方法は、上記の工程のうちの任意の1つ以上を含む。角化細胞のPAR2活性化を阻害する1つの好適な方法は、ビタミンB3化合物、N−アシルアミノ酸化合物及びカラフトコンブ抽出物を含有する組成物を、角化細胞のPAR2活性化を阻害するのに十分な期間、皮膚表面上に塗布する工程を含む。角化細胞のPAR2活性化を阻害する別の好適な方法は、ビタミンB3化合物、N−アシルアミノ酸化合物及びカラフトコンブ抽出物を含有する組成物を皮膚表面に塗布する工程を含み、組成物は角化細胞のPAR2活性化を阻害するのに十分な期間、少なくとも毎日塗布される。
【0071】
IV.試験方法
以下の方法は、本発明の様々な実施形態の所定の特徴及び利点を説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0072】
PAR−2阻害アッセイ−本アッセイの原理は、活性化PAR−2受容体へβアレスチンを動員して、基質を切断して定量化可能な発光シグナルを生じる活性βガラクトシダーゼ酵素の形成をもたらすことに依存する。PAR−2はトリプシンの添加、またSLIGRLペプチドの添加のいずれかによって活性化されることができる。
【0073】
βガラクトシダーゼのα断片に結合したPAR−2受容体を発現している細胞、及びβガラクトシダーゼのβ断片に結合したβアレスチンを発現している細胞は、DiscoveRx Corp.,Freemont,CAから得られる。細胞を、T75又はT150培養フラスコ内にて、10%熱不活性化ウシ胎児血清、500単位/mLペニシリン、500ug/mLストレプトマイシン、800ug/mLゲンタマイシン、及び300ug/mLハイグロマイシンで補充されたDulbeccoの修正イーグル培地からなる培養液(培地の全構成成分は、Invitrogen Corp.,Carlsbad,CAから入手可能)中で、CO2インキュベーター内にて37℃で増殖する。細胞がおよそ80%コンフルエンシーに到達した際、細胞解離バッファ(Corp.,Carlsbad,CAから商品番号13151−014として入手可能)を使用して細胞をフラスコから剥離する。血球計を使用して細胞を計数し、384ウェルプレート内にて20uL/ウェルのOpti−MEM(登録商標)培地(Corp.,Carlsbad,CAから入手可能)中、10000細胞/ウェルで播種する。細胞を24〜48時間培養する。
【0074】
トリプシンによるPAR2活性化の潜在的な阻害剤をアッセイするために、各ウェルを水中の試験材料1uLで処理する。各試験材料は、3重に試験する。細胞をCO2インキュベーター内で30分間インキュベートした後、トリプシン1uLを加える(およそ0.1ug/uL)。細胞をCO2インキュベーター内で1時間インキュベートした後、細胞溶解物基質溶液(11uL/ウェル)を加える。溶解物基質溶液は、DiscoveRx Corp.,Freemont,CAからPathHunter(商標)検出キット(カタログ#93−0001)内にて入手可能であり、キット内には、構成成分が以下の比で混合されている。
アッセイバッファ:基質1:基質2=19:5:1
【0075】
プレートを800×gで手短に遠心分離して(およそ5分間)気泡を除去した後、室温で1時間インキュベートする。発光を各ウェルに関してEnvision(商標)2101 Multilabel Reader(PerkinElmer,Inc.,Boston,MAから入手可能)上で読み取る。範囲は、溶媒対照+トリプシンを有するウェル(高対照)と、溶媒対照を有し、トリプシンを有さない(低対照)ウェルとにより測定する。各処理のPAR2阻害パーセントを、発光シグナルの下記の式により計算する。
【0076】
【数1】

【0077】
統計は、T−検定関数、不均一分布関数を有する片側棄却域を用いてMicrosoft,Redmond,WAによりExcel内で行う。
【0078】
上記に概略したアッセイを用いて、カラフトコンブ抽出物(例えばPhlorogine)、N−アシルアミノ酸(例えばSepiwhite)及びビタミンB3(例えばナイアシンアミド)の様々な濃度及び組み合わせを試験した。1% Phlorogineの原料組成物(即ち、およそ0.025%〜0.01%のカラフトコンブ抽出物を含有する組成物)、1% Sepiwhite、5%ナイアシンアミド、及びそれらの組み合わせを調製し、使用前に希釈する。試験は、0.045、0.023及び0.006の希釈係数にて行う。明確さのため、係数0.045で希釈された1% Sepiwhite組成物は、0.045%のSepiwhiteを含有する試験組成物(compositing)を与える。
【0079】
下記の表に報告されている値は、PAR2活性化の阻害パーセントである。下記の表に報告された全部の値は、およそp≦0.05で統計的に有意であると思われる。図4は、表中のデータのグラフであり、Y軸はPAR2阻害パーセントである。化合物の組み合わせの各化合物に関して、3つの棒グラフは、希釈係数0.045、0.023及び0.006を表す。100%の値は、トリプシンイニシエータが存在しない対照と等価なPAR2活性化の阻害を表す。
【0080】
【表2】

【0081】
Phlorogineを含有する試験組成物は、単独で阻害効果を殆ど示さないか全く示さない。Sepiwhite及びナイアシンアミドは、個々に、より高い希釈で顕著な阻害効果を示す。Sepiwhite及びナイアシンアミドは、一緒になって、特により高い希釈で卓越した阻害効果を示す。Sepiwhite、ナイアシンアミド及びPhlorogineの組み合わせは、Sepiwhiteとナイアシンアミドとの組み合わせよりも更に大きい阻害効果を示す。この結果は、Phlorogineが単独では阻害効果を殆ど提供しないことから予想外である。理論に束縛されるものではないが、Phlorogineは、ナイアシンアミド/SepiwhiteのPAR2阻害効果を強化すると思われる。PAR2活性化を阻害することにより、メラニン形成細胞から角化細胞への食作用によるメラノソームの移動が同様に阻害される。PAR2活性化の阻害の増大は、角化細胞内のメラニンの存在を減少させ又は制限することによりそれ自体を現すものと思われる。
【0082】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0083】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は出願を含め、本明細書において引用される全ての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。更に、本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいて、本書においてその用語に与えられた定義又は意味が適用されるものとする。
【0084】
本発明の特定の実施形態が例示され、記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角化細胞のPAR2活性化の阻害方法であって、ビタミンB3化合物、N−アシルアミノ酸化合物及びカラフトコンブ抽出物を含有する組成物を、前記角化細胞のPAR2活性化を阻害するのに十分な期間、皮膚表面に塗布する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記皮膚表面が顔の皮膚表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、前記皮膚表面上の色素過剰スポットに塗布される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、前記皮膚表面に少なくとも1日1回又は2回、少なくとも約4週間又は8週間塗布される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、皮膚科学的に許容可能なキャリアを更に含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、色調剤、日焼け止め活性物質、抗炎症活性物質、又はそれらの組み合わせを更に含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、好ましくは撮像装置により、PAR2阻害を必要とする皮膚表面を識別する工程を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
角化細胞のPAR2活性化の阻害方法であって、ビタミンB3化合物、N−アシルアミノ酸化合物及びカラフトコンブ抽出物を含有する組成物を皮膚表面に塗布する工程を含み、前記組成物が少なくとも毎日、少なくとも1時間の接触時間で塗布される、方法。
【請求項9】
角化細胞のPAR2活性化を阻害するための組成物であって、
a.約0.5%〜約10%のナイアシンアミドと、
b.約0.001〜約10%のN−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニンと、
c.前記ナイアシンアミド及びN−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニンのPAR2阻害を強化するのに十分な量のカラフトコンブ抽出物と、
を含有する、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−519735(P2012−519735A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525586(P2012−525586)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/042861
【国際公開番号】WO2012/011908
【国際公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】