説明

角層細胞分化正常化用皮膚外用剤

【課題】角層細胞面積増加作用を促進させ、角層細胞の正常な分化を相乗的に促進することができる外用医薬組成物を提供する。
【解決手段】ヘパリン類似物質、アラントインまたはその誘導体、パントテン酸またはその誘導体を含有する外用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表皮角化細胞の角層細胞への正常な分化を促進する外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の角層は、生体の最外層に存在し、生体からの過剰な水分蒸散防御や、刺激物質あるいは化学物質と生体の接触を防御するなど、バリア機能を担っている。角層を構成する角層細胞は、表皮角化細胞が基底層で増殖後、有棘層、顆粒層へと分化しながら表層へ移動し、最終分化の際に脱核および扁平化の形態的変化を経て形成される。その形態は扁平な板状であり、例えば表皮角化細胞の分化が正常に行われない場合は、異常な形態の角層細胞を生じる。またその面積は、一般に表皮角化細胞の分化速度に反比例することが知られている。表皮角化細胞の分化速度は、バリア機能の破たんあるいは炎症等の刺激によって亢進され、その結果角層細胞は面積が小さく、形状も厚い未成熟なものを生じる。このような異常な角層細胞によって構成される角層は、本来有しているはずのバリア機能が正常な角層より劣っていることが知られている。したがって角層細胞面積の計測は、角層細胞の正常度や表皮角化細胞の分化の状態の鑑別に役立ち、その結果から肌状態を推し量ることができる(特許文献1、2)。すなわち、角層細胞の面積を正常化することは、表皮角化細胞の分化の正常化と、これに伴う表皮バリア機能の正常化を意味する。
【0003】
従来、表皮角化細胞において分化に異常をきたした際には、その結果生じる乾燥肌に対する対症療法として皮膚外用剤などの保湿剤が使用される方法がとられていた。一般に用いられる保湿剤としては、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール、天然植物由来の抽出成分、皮膚構成成分であるアミノ酸、ピロリドンカルボン酸等の天然保湿因子、セラミド類やコレステロール類等の細胞間脂質成分及びコラーゲン、ヒアルロン酸等の生体内高分子などが挙げられ、これらを配合した皮膚外用剤の使用により皮膚の保湿性を向上させることで肌状態の改善が試みられていた。しかしながら、このような外用剤の塗布は一時的に皮膚の水分量を高める効果しかなく、回復に時間がかかるなど、本質的な皮膚の機能回復は期待できないものであり、更に優れた肌機能の正常化作用を有する皮膚外用剤が望まれていた。
【0004】
一方、他に皮膚外用剤に配合されている保湿機能を有する物質としてヘパリン類似物質がある。ヘパリン類似物質は、血行促進作用、繊維芽細胞増殖抑制作用を有することが知られている。また、ヘパリン類似物質は保湿能を有している老人性乾皮症などの各種乾燥性皮膚疾患の治療薬として用いられているが、角層細胞やバリア機能には影響を与えない旨の報告がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-38449 号公報
【特許文献2】特開2001-13138 号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本臨床皮膚科医学会雑誌, 56:87-96, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、角層細胞への正常な分化を促進し、角層を構成する角層細胞の面積を増大させ、角層の構造および機能を正常化し得る外用医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究した結果、角層細胞への正常な分化を促進して角層を構成する角質細胞の面積を増大させ、それによって角層の構造および機能を維持または正常化させることができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ヘパリン類似物質にアラントイン及び/又はアラントイン誘導体、および、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質を含むことを特徴とする外用医薬組成物である。
特に、本発明の外用医薬組成物において、ヘパリン類似物質の含量は全体の0.01〜5質量%、アラントイン及び/又はアラントイン類縁物質の含量は全体の0.01〜5質量%、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質の含量は全体の0.01〜10質量%である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、表皮角化細胞の分化異常をともなうアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や軽度な肌荒れなどにも好適な外用医薬組成物を提供することができる。
本発明により、皮膚疾患等によって異常をきたしている角層細胞の形状および細胞面積は、角層細胞が本来有すべき形状および面積に十分近くなり、角層が本来有すべき構造および機能(たとえばバリア機能)を回復または維持することができるので、本発明の効果は「角層細胞分化正常化促進効果」、「角層細胞面積正常化促進効果」または「角層正常化促進効果」と称することもできる。したがって、本発明の外用医薬組成物を「角層細胞分化正常化剤」と称することもできる。
本発明の外用医薬組成物は患部の状態を改善又は治療する効果が増強されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の組成物および比較例の組成物を適用した場合(実施例1)の角層細胞面積をピクセル単位で表したものである。*p < 0.05 ( n = 8 )
【図2】図2は本発明の組成物および比較例の組成物を適用した場合(実施例2)の角層細胞面積をピクセル単位で表したものである。**P<0.01,*P<0.05( n = 8 )
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、保湿剤として用いられるヘパリン類似物質に創傷治癒促進剤であるアラントイン及び/又はアラントイン類縁物質、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質を配合すると、角層細胞の正常な分化を相乗的に促進することを見いだしたことに基づく。 本発明に用いられるヘパリン類似物質は、ムコ多糖の多硫酸化エステルで、D-グルクロン酸とN-アセチル-D-ガラクトサミンからなる二糖を反復単位とする多糖体を多硫酸化したものである。その構造中に硫酸基、カルボキシル基、水酸基などの多くの親水基を持ち、高い保湿能を有し、日本薬局方外医薬品規格に収載されているものが好適に使用される。
【0012】
本発明において、アラントイン及びアラントイン類縁物質は、創傷治癒促進作用を有する有効成分である。アラントイン類縁物質とは、ヒダントイン骨格を持ち創傷治癒・抗炎症作用を有する有効成分であり、具体的には、アラントイン類縁物質にはアラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明に用いられるパンテノール及びパンテノール類縁物質は、創傷治癒作用を有する有効成分であり、具体的には、パンテノール類縁物質には、パントテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アセチルパンテニルエチルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の外用医薬組成物中、上述のヘパリン類似物質は、全体の0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%とすることができる。アラントイン及び/又はアラントイン類縁物質は、全体の0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%とすることができる。パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質は、全体の0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%とすることができる。
本発明の外用医薬組成物において、ヘパリン類似物質、アラントイン及び/又はアラントイン誘導体、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質は、それぞれ2種以上を配合することもできるが、その場合はそれぞれについての総量が上述した範囲となるように配合するのが好ましい。
【0015】
本発明の効果(「角層細胞分化正常化促進効果」、「角層細胞面積正常化促進効果」または「角層正常化促進効果」)の評価は当業者に知られた適切な実験モデルを利用することができる。具体的には、例えば以下の1)〜6)に記載したように評価することができる。
【0016】
1)ヘアレスマウス頸背部をアセトン/エーテル(1:1)及び精製水を含浸した脱脂綿で当該試験部位をパッティングし、皮膚バリア破壊処理を行ない、角層細胞面積が小さい動物モデルを作成する。
2)当該外用医薬品組成物などの検体20mgを前記動物モデルの試験部位に適用する。
3)試験部位から角層細胞を、テープストリッピング法にて採取する。
4)採取した角層細胞をブリリアントグリーン・ゲンチアナバイオレット(BG)染色にて染色する。
5)染色した角層細胞の顕微鏡画像を画像処理ソフト(例えば、ImageJ:National Institutes of Health開発)により解析し、角層細胞の面積を計測する。その際、各試料あたり一定個数の角層細胞、例えば30個の角層細胞をランダムに選んで面積を平均値、場合により標準偏差を計算し、それらの値を各試料における角層細胞面積として評価することができる。
6)各検体の効果は、各検体についての角層細胞面積と無塗布対照の角層細胞面積とを比較することにより評価することができる。
本明細書において、「角層細胞の正常な分化」とは、基底層で増殖した表皮角化細胞が、有棘層、顆粒層への分化を経て最終分化により扁平な角層細胞となって皮膚表面に移動してくる過程であり、無処理の健全な対照動物において角層を構成する細胞(角層細胞)が通常有する形態及び細胞面積を有する細胞が表皮に出現する過程をいう。
【0017】
本発明の外用医薬組成物には、ヘパリン類似物質、アラントイン及び/又はアラントイン誘導体、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質の他必要に応じて発明の効果を損なわない範囲で医薬品、医薬部外品及び化粧品等に使用される様々な有効成分を配合してもよい。例えば、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、生薬成分、鎮痒剤、創傷治癒剤、局所麻酔剤、ビタミン剤、清涼化剤、保湿剤、殺菌剤、血管収縮剤及びアミノ酸類等を含有させることができ、次のような成分が例示される。
【0018】
抗炎症剤の例として、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸又はその誘導体、カンゾウ抽出物、ステロイド化合物(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、クロベタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、コルチゾン、フルメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン又はそれらの誘導体)、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、ウフェナマート、ピロキシカム、ケトプロフェン、サリチル酸又はその誘導体、ジメチルイソプロピルアズレン、トウキエキス、シコンエキスなどが挙げられる。
抗ヒスタミン剤の例として、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メキタジン、アゼラスチン、エメダスチン、ケトチフェン又はそれらの誘導体などが挙げられる。好ましくは、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩が挙げられる。
【0019】
美白剤の例として、L−システイン、ハイドロキノン、グルコサミン、L−アスコルビン酸、グルタチオン、コウジ酸、エラグ酸、胎盤抽出物、ユビキノン類又はそれらの誘導体が挙げられる。
【0020】
生薬成分の例として、サイコ、ブクリョウ、ケイヒ、カンゾウ、オウゴン、オウバク、オウレン、サンシシ、ジオウ、シャクヤク、センキュウ、トウキ、ハマボウフウ、ボウフウ、オウヒ、キキョウ、ショウキョウ、ドクカツ、ケイガイ、モクツウ、ゴボウシ、チモ、センタイ、クジン、ソウジュツ、インチンコウ等。
鎮痒剤の例として、サリチル酸又はその誘導体、ノニル酸ワニリルアミド、カプサイシン、ニコチン酸ベンジル、トウガラシチンキ等が挙げられる。
創傷治癒剤の例として、酸化亜鉛などが挙げられる。
局所麻酔剤の例として、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、アミノ安息香酸又はそれらの誘導体などが挙げられる。
【0021】
ビタミン剤の例として、ビタミンA類[レチノール及びその誘導体(例えば、レチナール、レチノイン酸、パルミチン酸レチノール等)]、ビタミンB1類[チアミン及びその誘導体、(例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン等)]、ビタミンB2類[リボフラビン及びその誘導体(例えば、リン酸リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、及びフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム等)]、ビタミンB3類[ニコチン酸及びその誘導体(ニコチン酸アミド、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル等)]、ビタミンB6類[ピリドキシン及びその誘導体(例えば、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキシン、及びピリドキサール等)]、ビタミンB12類[コバラミン及びその誘導体(例えば、シアノコバラミン、メコバラミン、及び塩酸ヒドロキソコバラミン等)]、ビオチン、葉酸またはその薬学上許容される塩、ビタミンC類[アスコルビン酸及びその誘導体(例えば、エリソルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アルコルビン酸等)、ビタミンD類[カルシフェロール及びその誘導体(例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等)]、ビタミンE類[トコフェロール、ユビキノン及びその誘導体(例えば、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム等)]、その他のビタミン類(例えば、ヘスペリジン、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン、エリオシトリン、イノシトール、及びそれらの薬学上許容される塩)などが挙げられる。
【0022】
清涼化剤の例として、カンフル、ボルネオール又はそれらの類縁物質、ウイキョウ油、ユーカリ油、ハッカ油などが挙げられる。
保湿剤の例として、多価アルコール(グリセリン、1,3−ブチレングリコールなど)、ヒアルロン酸又はその誘導体、高分子化合物(コラーゲン、キトサンなど)、アミノ酸(グリシン、アラニン、アスパラギン酸など)、天然保湿因子(乳酸ナトリウム、尿素など)、セラミド、植物抽出エキス(カミツレエキス、アロエエキスなど)などが挙げられる。
【0023】
殺菌剤の例として、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミドなどが挙げられる。
血管収縮剤の例として、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、メチルエフェドリン又はその塩類などが挙げられる。
アミノ酸類の例として、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、セリン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、及びそれらの薬学上許容される塩(例えば、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェノリン等)等が挙げられる。
【0024】
本発明の外用医薬組成物は、上述の、ヘパリン類似物質、アラントイン及び/又はアラントイン誘導体、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質及を常法に従って各種基剤と共に配合することにより調製することが出来る。一般に基剤として使用する原料のいずれも本発明の外用医薬組成物の調製のために用いることが出来る。
そのような基剤の例としては、ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、スクワラン、セレシン、ゲル化炭化水素及びマイクロクリスタリンワックス等の炭化水素;ステアリン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸等及びベヘン酸等の高級脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等の高級脂肪アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロプル及びアジピン酸ジイソプロピル等の脂肪酸エステル油;トリイソオクタン酸グリセリン及びトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等の多価アルコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン 酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、テトラステアリン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット、ポリオキシエチレン(60)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール(4EO)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10EO)、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等の非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム及びセチル硫酸ナトリウム等のイオン性界面活性剤;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びポリエチレングリコール等の多価アルコール;カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル化デンプン300及びポリビニルピロリドン等の高分子化合物;ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素ナトリウム等のpH調整剤;エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン及び酢酸エチル等の有機溶剤;塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等の安定化剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウム等の防腐剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の外用医薬組成物を調製する場合には、上記成分及び水等の媒体を混合して調製するが、その配合割合に制限はなく、例えば、水0〜80質量%、炭化水素0〜99質量%、高級脂肪酸0〜25質量%、高級脂肪アルコール0〜25質量%、脂肪酸エステル油0〜50質量%、多価アルコール脂肪酸エステル 0〜30質量%、界面活性剤0〜10質量%、多価アルコール0〜90質量%、高分子化合物0〜10質量%、pH調整剤0〜10質量%、有機溶剤0〜99質量%、安定化剤0〜10質量%、防腐剤0〜5質量%である。
【0026】
本発明の外用医薬組成物は、通常の軟膏剤、クリーム剤、乳剤、ゲル剤、外用液剤、ラッカー剤、貼付剤、パップ剤、坐剤、注入剤の製造方法に従って製造することができる。また、その調製方法は、特に制限されるものではなく、例えば各種剤型の製剤を調製するのに必要な公知の賦形剤などの適宜成分を上記必須成分及び任意成分と共に配合して各製剤の常法によって調製することができる。
【0027】
本発明の外用医薬組成物の使用量、用法は、特に制限されるものではなく、上記剤型等により適宜選定することができ、例えば乾燥性皮膚疾患や炎症性皮膚疾患に伴う角化不全に対する治療或いはケアに用いられている従来の医薬品、医薬部外品、化粧品等の各種皮膚外用剤(外用医薬組成物)の通常量で1日1回〜数回、1〜数日間にわたって乾燥性皮膚疾患や炎症性皮膚疾患の起こっている患部及びその近傍に一様に塗布するなどの用法で上記疾患に伴う角化不全が生じている、又は角化不全の生じる可能性がある皮膚に適用することによって、アトピー性皮膚炎や主婦湿疹などに代表される乾燥性皮膚疾患や炎症性皮膚疾患に伴う角化不全症状態を効果的に改善又は予防することができる。
【0028】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
【0029】
ヘパリン類似物質にアラントイン及びパンテノールを含有した外用液剤と、ヘパリン類似物質を単独で含有する外用液剤、アラントイン及びパンテノールを含有する外用液剤の角層面積正常化作用を比較した。
[実施例の組成物および比較例の組成物の調製]
以下の組成物を作製した。各組成物の配合は表1に示した。表中、各成分に関する数値は組成物全体に対する各成分の質量%である。
1)実施例1の組成物
有効成分としてヘパリン類似物質、アラントイン及びパンテノールに精製水に加え溶解し均一にする。次ぎに、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを精製水に加えて溶解した液を加えて外用液剤を得た。配合量及び基剤成分は、表1に示す。
2)比較例1の組成物
ヘパリン類似物質を添加しないこと以外は実施例1の組成物の作製と同様の操作を行い、外用液剤を得た。
3)比較例2の組成物
アラントイン及びパンテノールを添加しないこと以外は実施例1の組成物の作製と同様の操作を行い、外用液剤を得た。
【0030】
表1

【0031】
[各組成物のマウスによる角層正常化促進効果測定]
1群8匹ずつの雄性ヘアレスマウス(体重約30g、7週齢)を、21.0±0.5℃、湿度55±5%に調節された室内で、背部の皮膚にアセトンとエーテルの等量混合液および蒸留水を1日2回の割合で5日間にわたり塗布し、十分に角層細胞が小さくなったヘアレスマウスの背部皮膚を試験部位とした。試験部位に実施例及び比較例の外用液剤20μLを1日1回、計3回連続して各々背部に塗布した。また、対象として精製水を同様の操作で適用した。
適用の翌日に、試験部位から角層細胞を、テープストリッピング法にて採取し、ブリリアントグリーン・ゲンチアナバイオレット(BG)染色にて染色した後、染色した角層細胞の顕微鏡画像を画像処理ソフト(ImageJ:National Institutes of Health開発)により角層細胞の観察画像を解析し、各試料あたり約30個の角層細胞をランダムに選んで面積を平均し、各試料における角層細胞面積とし評価した。
【0032】
(試験結果)
結果を表2及び図1に示す。
表2 マウスによる角層正常化促進効果(n=8)

*p < 0.05 vs対照
表2及び図1から明らかなように、実施例1の群では各比較例群に対して角層を構成する角層細胞面積が有意に大きくなった。角層細胞の正常な分化が促進され、角層正常化が特に促進されていることが示され、ヘパリン類似物質とアラントイン・パンテノールが組み合わさることで、ヘパリン類似物質に対するアラントイン及びパンテノール配合による相乗効果が明らかになった。
【実施例2】
【0033】
ヘパリン類似物質にアラントイン及びパンテノールを含有した外用クリーム剤と、ヘパリン類似物質を単独で含有する外用クリーム剤、アラントイン及びパンテノールを含有する外用クリーム剤、ヘパリン類似物質、アラントインとパンテノールを含まない外用クリーム剤の角層面積正常化作用を比較した。
【0034】
[実施例の組成物および比較例の組成物の調製]
以下の組成物を作製した。各組成物の配合は表3に示した。表中、各成分に関する数値は組成物全体に対する各成分の質量%である。
1)実施例2の組成物
調製方法としては、まずトコフェロール酢酸エステル、ステアリルアルコール、ベヘン酸、パルミチン酸セチル、マイクロクリスタリンワックス、トリイソオクタン酸グリセリン、白色ワセリン、モノステアリン酸ソルビタン、グリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンセチルエーテルを加熱し均一に溶解する。次に、ヘパリン類似物質、パンテノール、アラントイン、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エデト酸ナトリウム、クエン酸及びクエン酸ナトリウムに精製水を加え加熱し均一に溶解し、先の油相に攪拌しながら加え乳化物を調製した。これを更に40℃以下になるまで冷却し、外用クリーム剤を得た。配合量及びその他の基剤成分は、表3に示す。
2)比較例3の組成物
ヘパリン類似物質を添加しないこと以外は実施例1の組成物の作製と同様の操作を行い、外用クリーム剤を得た。
3)比較例4の組成物
アラントイン及びパンテノールを添加しないこと以外は実施例1の組成物の作製と同様の操作を行い、外用クリーム剤を得た。
4)比較例5の組成物
ヘパリン類似物質、アラントイン及びパンテノールを添加しないこと以外は実施例1の組成物の作製と同様の操作を行い、外用クリーム剤を得た。
【0035】
表3

【0036】
各組成物のマウスによる角層正常化促進効果を実施例1に記載したのと同様に行った。対照は実施例と同様、精製水とした。
【0037】
(試験結果)
結果を表4及び図2に示す。
表4 マウスによる角層正常化促進効果(n=8)

**p < 0.01、*p < 0.05 vs比較例
表4及び図2から明らかなように、実施例2の群では各比較例群に対して有意に大きくなった。角層細胞の正常な分化が促進され、角層正常化が特に促進されていることが示され、ヘパリン類似物質とアラントイン・パンテノールが組み合わさることで、ヘパリン類似物質に対するアラントイン及びパンテノール配合による相乗効果が明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリン類似物質、アラントイン及び/又はアラントイン誘導体、および、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質、を含む外用医薬組成物。
【請求項2】
アラントイン類縁物質が、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウムからなる群より選ばれる請求項1記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
パンテノール類縁物質が、パントテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アセチルパントテニルエチルエーテルからなる群より選ばれる請求項1または、請求項2記載の外用医薬組成物。
【請求項4】
角層細胞の正常な分化を促進する角層細胞分化正常化剤である、請求項1〜3のいずれか1項記載の外用医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−231128(P2011−231128A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−179402(P2011−179402)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000150028)株式会社池田模範堂 (8)
【Fターム(参考)】