説明

角度調整機構

【課題】従来よりも物品の角度調整操作が簡単な角度調整機構を提供する。
【解決手段】本発明の角度調整機構Aは、物品(ケース100)の背面に対してスタンド200の一端を軸支して他端を軸回りに回動させる軸部21と、前記物品の前記背面に対して前記スタンド200をスライド可能なように前記軸部21を内嵌して案内する案内溝2と、前記案内溝2の延在方向に沿って複数配設される前記軸部21を支承する軸支部と、複数の前記軸支部ごとに前記物品の前記背面に対する前記スタンドの回動角度を設定する回動角度設定手段(回動角度設定軸31)と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の設置面に対する傾斜角度を多段階に調整する角度調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電話機本体の角度調整が可能なスタンド付きの卓上電話機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この卓上電話機によれば、電話機本体の背面に対するスタンドの取付け角度を調整することで、卓上での電話機本体の傾斜角度を調整することができる。
【0003】
この卓上電話機のスタンドは、電話機本体の背面に連結されるその脚部の一端側が、当該背面側に設けられた軸部によって軸支されることにより、脚部の他端側(自由端側)が前記の軸部回りに回動可能となっている。そして、脚部の一端側には、電話機本体の背面側に向けて突出する楔状突起が形成されている。
【0004】
また、この脚部には、前記の軸部を内嵌するためのスリット状の長孔が脚部の長手方向に沿うように形成されている。これにより、脚部は、この長孔に内嵌された軸部に対してスライド移動が可能となって、前記の楔状突起を有する脚部の先端部は、電話機本体の背面に対して接近移動又は離反移動が可能となっている。
【0005】
一方、電話機本体の背面には、スタンドの取付け角度に応じて脚部の楔状突起を受け入れる複数の位置決めピットを有している。具体的には、軸部回りに脚部が回動することに伴って回動する楔状突起の円弧状の回動軌跡に沿って並ぶように配置されている。
【0006】
このような卓上電話機のスタンドによれば、所望のスタンド角度となるように脚部を軸部回りに回動させると共に、楔状突起を電話機本体の背面に対して接近移動させることにより対応する位置決めピットに嵌め込むことができる。このことにより電話機本体の背面に対するスタンドの脚部の角度が設定されて、卓上での電話機本体の傾斜角度が調整される。
【0007】
ところで、このような卓上電話機のスタンドにおいては、脚部の角度を設定した後に、不用意に楔状の先端部が位置決めピットから抜け出ることを防止するために、軸部の係止機構がさらに設けられている。具体的には、この係止機構は、軸部を長孔から離脱させる窪みで構成されている。この係止機構によれば、軸部が長孔内でスライド移動することができなくなって位置決めピットから楔状の先端部が抜け出ることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−278414号公報(図19、図21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の卓上電話機のスタンドは、スタンドの脚部の角度設定操作(電話機本体の角度調整操作)が複雑になる問題がある。つまり、ユーザが、初期状態の電話機本体の傾斜角度から所望の傾斜角度に設定し直す際に、(1)電話機本体の軸部を係止機構の窪みから離脱させることによって、軸部を脚部の長孔内に移動させる操作、(2)脚部の楔状突起を位置決めピットから離反移動させる操作、(3)所望のスタンド角度となるように脚部を軸部回りに回動させる操作、(4)楔状突起を位置決めピットに接近移動させて、対応する位置決めピットに嵌め込む操作、及び(5)軸部を長孔から係止機構の窪みに戻す操作、からなる5つの操作が必要となる。
したがって、物品の配置面に対する傾斜角度を調整する際に、角度調整操作が従来よりも簡単な角度調整機構が望まれている。
【0010】
そこで、本発明の課題は、従来よりも物品の角度調整操作が簡単な角度調整機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する本発明の角度調整機構は、物品の背面に配置され、前記物品をその設置面に対して傾斜させて支持するスタンドと、前記物品の背面に対して前記スタンドの一端を軸支して他端を軸回りに回動させる軸部と、前記物品の背面に対して前記スタンドをスライド可能なように前記軸部を内嵌して案内する案内溝と、前記案内溝の延在方向に沿って複数配設される前記軸部を支承する軸支部と、複数の前記軸支部ごとに前記物品の前記背面に対する前記スタンドの回動角度を設定する回動角度設定手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも物品の角度調整操作が簡単な角度調整機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る角度調整機構を取り付けた卓上電話機(ケース)の側面図である。
【図2】図1のケースの天地を逆にしてケースの背面側を示すと共に、ケースからスタンドを分離させた様子を示す分解斜視図である。
【図3】図2のIII部の部分拡大斜視図であり、図2のスタンドにおける左側の軸部近傍の部分拡大図である。
【図4】図2のスタンドにおける右側の軸部近傍の側面図である。
【図5】図2のV部の部分拡大であり、図2のケースにおける右側の背面突出壁の部分拡大斜視図である。
【図6】図2のケースにおける左側の背面突出壁に形成される案内溝及び位置決め凹部の平面模式図である。
【図7】ケースが、図1の傾斜角度θaに調整される際の案内溝における軸部の位置と、位置決め凹部における回動角度設定軸の位置とを示す平面模式図である。
【図8】図1のケースの傾斜角度θaよりも大きい傾斜角度θbに調整されたケースの側面模式図である。
【図9】図1のケースの傾斜角度θaから図8の傾斜角度θbに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する第1の経路図である。
【図10】図1のケースの傾斜角度θaから図8の傾斜角度θbに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する第2の経路図である。
【図11】図1のケースの傾斜角度θaから図8の傾斜角度θbに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する第3の経路図である。
【図12】図8のケースの傾斜角度θbよりも大きい傾斜角度θcに調整されたケースの側面模式図である。
【図13】図8のケースの傾斜角度θbから図12の傾斜角度θcに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する経路図である。
【図14】図1のケースの傾斜角度θaよりも小さい傾斜角度θdに調整されたケースの側面模式図である。
【図15】図1のケースの傾斜角度θaから図14の傾斜角度θdに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する経路図である。
【図16】ケースの背面突出壁に形成される位置決め凹部の第1の変形例を示す平面模式図である。
【図17】ケースの背面突出壁に形成される位置決め凹部の第2の変形例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る角度調整機構について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る角度調整機構を取り付けた卓上電話機の側面図である。図1中、符号100は、物品としての卓上電話機のケース下半体(以下、単に「ケース100」と略記する)であり、符号200はスタンドであり、符号Gは、卓上電話機の設置面である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る角度調整機構Aは、ケース100の設置面Gに対する傾斜角度を多段階に調整するものである。具体的には、角度調整機構Aは、ケース100の前端(図1の紙面左側の端)が設置面Gに接する状態で、ケース100の後端(図1の紙面右側の端)が設置面Gから離反する角度を調整するものである。
【0016】
このような角度調整機構Aは、ケース100の背面(設置面Gに対向する面)に配置され、ケース100を設置面Gに対して傾斜させて支持するスタンド200と、このスタンド200の一端を軸支してスタンド200の他端をその軸回りに回動可能とする軸部21と、を備えて構成されている。
【0017】
図1中、符号110は、ケース100の背面に設けられる背面突出壁であり、符号31は、スタンド200の一端側で軸部21と並ぶように配置される回動角度設定軸である。
背面突出壁110には、後記するように、軸部21を内嵌して案内する案内溝2と、内嵌する回動角度設定軸31をその内側縁部(後記する支持部20aから20d(図6参照))で支持する位置決め凹部11と、が形成されている。
【0018】
図2は、図1のケースの天地を逆にしてケースの背面側の様子を示す斜視図であり、ケースからスタンドを分離させた様子を示す分解斜視図である。図2中の前後左右上下を示す方向矢印の向きは、図1に示すように、ケース100を水平な設置面Gに配置した際に、ユーザ側に向く前側を前とし、ユーザの右側を右とし、鉛直方向を上とした各方向を基準に設定している。
【0019】
図2に示すように、ケース100の背面には、その後方寄りに一対の背面突出壁110,110が相互に向き合うように配設されている。この背面突出壁110,110は、平面視で略台形の板状体で形成されており、その台形の上底側(短辺側)が下方に位置し、下底側(長辺側)が上方に位置して、この下底側でケース100の背面の左右側縁寄りにそれぞれ接続されている。この背面突出壁110,110に形成される案内溝2(図5参照)及び位置決め凹部11(図5参照)については、後に詳しく説明する。
【0020】
図2に示すように、スタンド200は、ケース100の左右両側にそれぞれ配置されることとなる、図2に示す前後方向に長い一対の脚部200a,200aと、これらの脚部200a,200a同士を中程で繋ぐ、左右方向に長い支持部200bとで略H字状を呈している。そして、脚部200a,200a同士は、相互に左右対称の形状となるほかは同一の構造を有している。
そして、スタンド200は、これらの脚部200a,200aの図2に示す後端でケース100の背面に、具体的には背面突出壁110に軸支されることとなる。なお、脚部200a,200aの後端は、特許請求の範囲にいう「スタンドの一端」に相当する。
【0021】
図3は、図2のIII部の部分拡大斜視図であり、図2のスタンドにおける左側の軸部近傍の部分拡大図である。
図3に示すように、脚部200aの後端には、軸部21と、回動角度設定軸31とが設けられている。これらの軸部21及び回動角度設定軸31は、脚部200aのそれぞれの後端から左右方向外側に向けて突出する柱状に形成されている。そして、軸部21の断面形状は、長丸に形成され、回動角度設定軸31は円形に形成されている。図3中、符号31aは、後記するように、回動角度設定軸31を脚部200aの後端に支持するステーである。
【0022】
軸部21は、前記したように、スタンド200(図1参照)の回動中心を規定するものである。この軸部21は、後記するように、案内溝2(図6参照)の延在方向に沿って複数(本実施形態では3つ)形成される軸支部1a,1b,1c(図6参照)のそれぞれで支承される。
【0023】
図4は、図2のスタンドにおける右側の軸部近傍の右側面図である。
図4に示すように、本実施形態での軸部21は、前記したように、その断面が長丸形状となっている。そして、軸部21は、その短径eが脚部200aの長手方向に沿い、その長径fが脚部200aの幅方向に沿うように、脚部200aのそれぞれの後端(図2参照)に立設されている。図4中、符号31aは、ステーである。
【0024】
回動角度設定軸31は、スタンド200(図1参照)が軸支部1a,1b,1c(図6参照)のそれぞれにおいて支承されて回動する際に、軸支部1a,1b,1cごとにケース100(図1参照)の背面に対するスタンド200の回動角度を設定するものであり、後記する位置決め凹部11(図1参照)と共に、特許請求の範囲にいう「回動角度設定手段」を構成している。
【0025】
図4に示すように、本実施形態での回動角度設定軸31は、その断面形状が直径gの円形で形成されており、脚部200aの回動中心を規定する軸部21からその回動半径の外側に離間するようにステー31aを介して脚部200aの後端に配置されている。
【0026】
ちなみに、本実施形態での回動角度設定軸31は、前記した長丸の軸部21の長径f方向に沿って延在するステー31aの先端に設けられている。これらの軸部21及び回動角度設定軸31は、前記したように、脚部200aのそれぞれ後端から左右方向外側に向けて突出する柱状に形成されており、次に説明する背面突出壁110に形成される案内溝2及び位置決め凹部11にそれぞれに内嵌されるように、略同じ高さとなるように形成されている。
【0027】
一対の背面突出壁110,110(図2参照)の対向面のそれぞれには、前記したように、軸部21を内嵌して案内する案内溝2と、回動角度設定軸31を内嵌してその内側縁部で位置決めする位置決め凹部11と、が形成されている。
そして、一対の背面突出壁110,110同士は、相互に左右対称の形状となるほかは同一の構造を有している。
【0028】
図2に示すように、案内溝2は、ケース100の前後方向に延在するように背面突出壁110の前方寄りに形成されている。次に参照する図5は、図2のV部の部分拡大であり、図2のケースにおける右側の背面突出壁の部分拡大斜視図である。
図5に示すように、案内溝2には、その延在方向に沿って前側から順番に、軸支部1a、軸支部1b、及び軸支部1cが配設されている。
また、背面突出壁110には、回動角度設定軸31(図1参照)の回動路11aから11dを有する前記した位置決め凹部11が形成されている。
【0029】
図5中、符号20aから20dは、回動路11aから11dのそれぞれの奥止まり(終端部)に形成される、回動角度設定軸31(図1参照)の支持部であり、符号51aから51dは、回動路11aから11dのそれぞれの奥止まり(終端部)で支持部20aから20dを区画するように配置されるそれぞれ一対の突起であり、符号41aから41cは、位置決め凹部11に内嵌される回動角度設定軸31を、回動路11aから11dのそれぞれに誘導する分岐部であり、符号51e及び51fは、回動路11aと回動路11dとの間で分岐部41aを区画するそれぞれ一対の突起であり、符号51gは、分岐部41aと分岐部41bとを区画する一対の突起であり、符号51hは、分岐部41bと分岐部41cとを区画する一対の突起である。
【0030】
ちなみに、これらの突起51aから51dは、後記するように、回動角度設定軸31(図1参照)が支持部20aから20dのそれぞれに配置される際に、回動角度設定軸31を支持部20aから20dに位置決めするものである。また、突起51aから51dは、回動角度設定軸31が支持部20aから20dのそれぞれに対して嵌脱される際に弾性変形することで、ユーザにクリック感を持たせるためのものである。
【0031】
また、突起51e及び51fは、後記するように、回動角度設定軸31が分岐部41aに配置される際に、回動角度設定軸31を分岐部41aに位置決めするものである。また、突起51e及び51fは、回動角度設定軸31が分岐部41aに対して嵌脱される際に弾性変形することで、ユーザにクリック感を持たせるためのものである。
【0032】
また、突起51g及び51hは、後記するように、回動角度設定軸31(図1参照)が分岐部41a及び分岐部41b同士の間、並びに分岐部41b及び41c同士の間で行き来する際に弾性変形することで、ユーザにクリック感を持たせるためのものである。
【0033】
次に、図6を参照しながら案内溝2及び位置決め凹部11について更に詳しく説明する。図6は、図2のケースにおける左側の背面突出壁に形成される案内溝及び位置決め凹部の平面模式図である。
図6に示すように、案内溝2に形成される軸支部1a,1b,1cは、案内溝2の幅kよりも大きい直径jの円形の窪みで形成されている。また、この案内溝2に内嵌される軸部21(図4参照)の長径f及び短径e(図4参照)と、軸支部1a,1b,1cの直径j及び案内溝2の幅kとの大小関係は、直径j>長径f>幅k>短径eとなっている。
【0034】
位置決め凹部11の回動路11a及び回動路11dは、軸部21(図4参照)が軸支部1aに支承されて、この軸部21回りに回動角度設定軸31が回動する際の、その回動軌跡が描く円弧形状に沿うように形成されている。
【0035】
位置決め凹部11の回動路11bは、軸部21(図4参照)が軸支部1bに支承されて、この軸部21回りに回動角度設定軸31が回動する際の、その回動軌跡が描く円弧形状に沿うように形成されている。
【0036】
位置決め凹部11の回動路11cは、軸部21(図4参照)が軸支部1cに支承されて、この軸部21回りに回動角度設定軸31(図4参照)が回動する際の、その円弧形状の回動軌跡に沿うように形成されている。
【0037】
そして、回動路11aから11cのそれぞれの円弧長さは、回動路11a、回動路11b及び回動路11cの順番で段階的に短くなっている。そして、これらの回動路11a,11b,11cのそれぞれの円弧長さに応じて、スタンド200の傾斜角度が調整されることとなる。この傾斜角度が調整については、後に詳しく説明する。
なお、回動路11dは、後記するように、スタンド200を折り畳む際に回動角度設定軸31(図4参照)の移動路として使用される。本実施形態での回動路11dの円弧長さは、回動路11aから11dのうち最も長くなるように設定されている。
【0038】
また、これらの回動路11a,11b,11c,11dの幅は、図5に示す突起51aから51eによる狭小部を除いて幅hで形成され、回動路11a,11b,11c,11dの奥止まり(終端部)の支持部20aから20dの周壁は、この幅hと等しい直径hの半円周面で形成されている。また、この位置決め凹部11に内嵌される回動角度設定軸31(図4参照)の直径g(図4参照)と、回動路11a,11b,11c,11dの幅h(支持部20aから20dの周壁の直径h)と、突起51aから51eによる狭小部の幅iとの大小関係は、幅h(直径h)>直径g>幅iとなっている。
【0039】
次に、本実施形態に係る角度調整機構Aの動作について説明する。
以下では、角度調整機構Aによって、図1に示す傾斜角度θaに調整されたケース100の状態から、後記する傾斜角度θb、傾斜角度θc、及び傾斜角度θdに順番に変化させていく態様について説明する。
【0040】
図7は、ケースが、図1の傾斜角度θaに調整される際の案内溝における軸部の位置と、位置決め凹部における回動角度設定軸の位置とを示す平面模式図である。図8は、図1のケースの傾斜角度θaよりも大きい傾斜角度θbに調整されたケースの側面模式図である。図9は、図1のケースの傾斜角度θaから図8の傾斜角度θbに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する第1の経路図である。図10は、図1のケースの傾斜角度θaから図8の傾斜角度θbに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する第2の経路図である。図11は、図1のケースの傾斜角度θaから図8の傾斜角度θbに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する第3の経路図である。
【0041】
ケース100(図1参照)が傾斜角度θa(図1参照)に調整された際の軸部21(図1参照)は、図7に示すように、案内溝2の軸支部1aに支承されたスタンド200の回動により、回動角度設定軸31が、回動路11aの支持部20aに配置されている。この際、回動角度設定軸31は、ケース100(図1参照)の自重により、回動路11aの奥止まり(終端部)の周壁面に当接する。これにより、スタンド200は、ケース100の背面に対してなす角度が決定されて、ケース100を設置面G(図1参照)に対して傾斜角度θaで傾斜させて支持する。
【0042】
そして、回動角度設定軸31の直径g(図4参照)と、突起51aによる狭小部の幅i(図6参照)との大小関係が「直径g>幅i」となっているので、突起51aは回動角度設定軸31が支持部20aから抜け出ることを防止する。
また、軸支部1a内で回転した軸部21は、前記したように、軸部21の長径f(図4参照)と、案内溝2の幅kとの大小関係が、「軸部21の長径f>案内溝の幅k」となっているので、軸部21は、軸支部1a内に留められる。
なお、図7中、符号1b及び符号1cは、それぞれ軸支部であり、符号11は、位置決め凹部であり、符号11b及び符号11cは、それぞれ回動路であり、符号41aは、分岐部であり、符号51eは突起である。
【0043】
次に、図8に示すように、ケース100が設置面Gに対して前記した傾斜角度θa(図1参照)よりも大きい傾斜角度θbに調整される場合について説明する。
図8中、符号21は、軸部であり、符号31は、回動角度設定軸31であり、符号2は案内溝であり、符号11は、位置決め凹部であり、符号110は、背面突出壁である。
【0044】
図1のケース100の傾斜角度θaを図8の傾斜角度θbに調整する際に、ユーザは、図9に示すように、スタンド200を把持して軸支部1aに支承された軸部21を中心に右回りに回動させる。この際、軸部21の長径fと、軸支部1aの直径jとの大小関係が、「直径j>長径f」となっているので、軸部21は、軸支部1a内で回転可能となっている。これにより、回動角度設定軸31は、突起51aを乗り越えて支持部20aを脱すると共に突起51eを乗り越えて分岐部41aに移動する。
図9中、符号1b及び符号1cは、それぞれ軸支部であり、符号2は、案内溝であり、符号11は、位置決め凹部であり、符号51b及び符号51fは、突起であり、符号110は、背面突出壁である。
【0045】
次いで、ユーザは、図10に示すように、背面突出壁110に対してスタンド200をスライド移動させることで、軸部21を軸支部1aから軸支部1bに移動させると共に、回動角度設定軸31を分岐部41aから分岐部41bに突起51gを乗り越えさせて移動させる。
この際、軸部21は、前記したように、軸部21の短径e(図4参照)と、案内溝2の幅k(図6参照)との大小関係が「幅k>短径e」となっているので、分岐部41aから分岐部41bへの移動が可能となる。
図10中、符号1cは、軸支部であり、符号11は、位置決め凹部であり、符号51hは、突起である。
【0046】
次いで、ユーザは、図11に示すように、スタンド200を把持して軸支部1bに支承された軸部21を中心に左回りに回動させる。これにより、回動角度設定軸31は、分岐部41bから回動路11bに誘導されると共に、突起51bを乗り越えて支持部20bに嵌め込まれる。
この際、回動角度設定軸31は、ケース100(図8参照)の自重により、回動路11bの奥止まり(終端部)の周壁面に当接する。これにより、スタンド200は、ケース100の背面に対してなす角度が決定されて、ケース100を設置面G(図8参照)に対して傾斜角度θb(図8参照)で傾斜させて支持する。
【0047】
そして、回動角度設定軸31の直径g(図4参照)と、突起51bによる狭小部の幅i(図6参照)との大小関係が「直径g>幅i」となっているので、突起51bは回動角度設定軸31が支持部20bから抜け出ることを防止する。
また、軸支部1b内で回転した軸部21は、前記したように、軸部21の長径f(図4参照)と、案内溝2の幅kとの大小関係が、「軸部21の長径f>案内溝の幅k」となっているので、軸部21は、軸支部1b内に留められる。
図11中、符号2は、案内溝であり、符号11は、位置決め凹部であり、符号110は、背面突出壁である。
【0048】
次に、図12に示すように、ケース100が設置面Gに対して前記した傾斜角度θb(図8参照)よりも大きい傾斜角度θcに調整される場合について説明する。
図12は、図8のケースの傾斜角度θbよりも大きい傾斜角度θcに調整されたケースの側面模式図である。図13は、図8のケースの傾斜角度θbから図12の傾斜角度θcに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する経路図である。
図12中、符号21は、軸部であり、符号31は、回動角度設定軸31であり、符号2は案内溝であり、符号11は、位置決め凹部であり、符号110は、背面突出壁である。
図13中、符号1aは、軸支部であり、符号2は、案内溝であり、符号11は、位置決め凹部であり、符号11b及び符号11cは、それぞれ回動路であり、符号51c及び符号51hは突起であり、符号110は、背面突出壁であり、符号200は、スタンドである。
【0049】
図8のケース100の傾斜角度θbを図12の傾斜角度θcに調整する際に、ユーザは、図9、図10及び図11で示した支持部20aから支持部20bに回動角度設定軸31を移動させる手順と同様の手順を追って、図13に示すように、軸部21を軸支部1bから軸支部1cに移動させると共に、回動角度設定軸31を、支持部20bから、分岐部41b及び分岐部41cを経て支持部20cに移動させる。
【0050】
これにより、回動角度設定軸31は、ケース100(図12参照)の自重により、回動路11cの奥止まり(終端部)の周壁面に当接する。そして、スタンド200は、ケース100の背面に対してなす角度が決定されて、ケース100を設置面G(図12参照)に対して傾斜角度θc(図12参照)で傾斜させて支持する。
【0051】
この際、回動角度設定軸31の直径g(図4参照)と、突起51cによる狭小部の幅i(図6参照)との大小関係が「直径g>幅i」となっているので、突起51cは回動角度設定軸31が支持部20cから抜け出ることを防止する。
また、軸支部1c内で回転した軸部21は、前記したように、軸部21の長径f(図4参照)と、案内溝2の幅kとの大小関係が、「軸部21の長径f>案内溝の幅k」となっているので、軸部21は、軸支部1c内に留められる。
また、各支持部20a,20b,20cに対応してθa>θb>θcとなる。つまり、各支持部20a,20b,20cの高さが低くなることにより設置面Gに対するケース100の傾斜角度が小さくなっていく。
【0052】
次に、図14に示すように、ケース100が設置面Gに対して前記した傾斜角度θa(図1参照)よりも小さい傾斜角度θdに調整される場合について説明する。
図14は、図1のケースの傾斜角度θaよりも小さい傾斜角度θdに調整されたケースの側面模式図である。図15は、図1のケースの傾斜角度θaから図14の傾斜角度θdに調整される際に、軸部及び回動角度設定軸の移動経路を説明する経路図である。
図14中、符号21は、軸部であり、符号31は、回動角度設定軸31であり、符号2は案内溝であり、符号11は、位置決め凹部であり、符号110は、背面突出壁である。
【0053】
図1のケース100の傾斜角度θaを図14の傾斜角度θdに調整する際に、ユーザは、図15に示すように、スタンド200を把持して軸支部1aに支承された軸部21を中心に右回りに回動させる。これにより、回動角度設定軸31は、突起51aを乗り越えて支持部20aを脱すると共に突起51eを乗り越えて分岐部41aに移動する。
次いで、回動角度設定軸31は、分岐部41aから突起51fを乗り越えて回動路11dに誘導された後に、突起51dを乗り越えて支持部20dに嵌め込まれる。
【0054】
そして、回動角度設定軸31の直径g(図4参照)と、突起51dによる狭小部の幅i(図6参照)との大小関係が「直径g>幅i」となっているので、突起51dは回動角度設定軸31が支持部20dから抜け出ることを防止する。
この際、スタンド200は、図14に示すように、ケース100の背面に沿うように折り畳まれて配置される。
そして、回動角度設定軸31が支持部20d(図15参照)に支持されることによって、スタンド200は折り畳まれた状態が維持される。ちなみに、この状態のスタンド200は、設置面Gに接地せずに、これに代わって背面突出壁110が設置面Gに接することとなる。
【0055】
以上のような角度調整機構Aによれば、次のような作用効果を奏することができる。
本実施形態に係る角度調整機構Aにおいては、図1及び図7、図8及び図11、並びに図12及び図13に示すように、軸部21は、案内溝2の延在方向に複数配設される軸支部1a,1b,1cごとに、位置決め凹部11の各支持部20aから20dで支持される回動角度設定軸31によって、ケース100に対するスタンド200の回動角度が決定される。したがって、ユーザは、支持部20aから20dのうち、回動角度設定軸31を嵌め入れる支持部を選択することで、ケース100に対してスタンド200がなす回動角度を設定することにより、設置面Gに対するケース100の傾斜角度を調節することができる。
【0056】
つまり、この角度調整機構Aによれば、ユーザは、初期状態のケース100の傾斜角度から所望の傾斜角度に設定し直す際に(例えば、傾斜角度θa(図1参照)から傾斜角度θb(図8参照)に設定しなおす際に)、(1)図9に示すように、回動角度設定軸31を支持部20aから分岐部41aに移動させる操作、(2)図10に示すように、回動角度設定軸31を分岐部41aから分岐部40bに移動させる操作、及び(3)回動角度設定軸31を分岐部41bから支持部20bに移動させる操作、からなる3つの操作を行う。
【0057】
これに対して、従来の角度調整機構(例えば、特許文献1参照)では、前記したように、ユーザは、初期状態の電話機本体の傾斜角度から所望の傾斜角度に設定し直す際に、5つの操作が必要となる。
したがって、本実施形態によれば、従来の角度調整機構よりも物品(ケース100)の角度調整操作数が少なく、簡単な角度調整操作で物品の角度調整を行うことができる角度調整機構Aを提供することができる。
【0058】
また、この角度調整機構Aによれば、回動角度設定軸31が、各回動路11aから11dの奥止まり(終端部)に形成される各支持部20aから20dで支持されるので、回動角度設定軸31は各支持部20aから20dから脱離し難くなっている。そのため、この角度調整機構Aによれば、設定したスタンド200の傾斜角度が不用意に変わることが防止される。
【0059】
また、この角度調整機構Aによれば、回動角度設定軸31を各支持部20aから20d内に止めおく、突起51aから51dを備えているので、設定したスタンド200の傾斜角度が不用意に変わることが更に確実に防止される。
【0060】
また、この角度調整機構Aによれば、ユーザは、回動角度設定軸31の移動を目で追いながらスタンド200の角度を設定することができるので、操作性が一段と良好となる。
【0061】
また、この角度調整機構Aによれば、回動角度設定軸31の直径に対する各回動路11aから11dの幅に余裕を持たせることもでき、高い寸法精度が要求されることがない。また、スタンド200側に設けた軸部21及び回動角度設定軸31と、これらが内嵌される案内溝2及び位置決め凹部11とで連結部を構成することができるので、金型構造を簡単にすることができる。よって、この角度調整機構Aによれば、製造コストを低減することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、3つの軸支部1a,1b,1cと、4つの支持部20a,20b,20c,20dと、を有しているが、これらの数に制限はなく、5段以上の角度調整を可能とすることもできる。
【0063】
また、前記実施形態では、回動路11aから11cは、各分岐路41a乃至41cから上方に延出する構成となっているが、下方に延出する構成であってもよい。
【0064】
また、前記実施形態では、位置決め凹部11が回動角度設定軸31の回動軌跡に沿うように形成された回動路11aから11dを有する構成となっているが、本発明はこれに限定されるものではない。次に参照する図16は、ケースの背面突出壁に形成される位置決め凹部の第1の変形例を示す平面模式図である。図17は、ケースの背面突出壁に形成される位置決め凹部の第2の変形例を示す平面模式図である。
【0065】
図16に示すように、第1の変形例に係る位置決め凹部11は、個別の回動路11aから11cを有していない構成となっている。また、第2の変形例に係る位置決め凹部11は、支持部20a,20b,20cの高さが、図16の変形例とは逆に、案内溝2側から離れるに従って、段階的に高くなる構成となっている。
なお、図16及び図17中、符号1a,1b,1cは、軸支部であり、符号110は、背面突出壁であり、符号51a,51b,51cは、突起である。
ちなみに、前記実施形態では、支持部20a,20b,20cの高さが、案内溝2側から離れるに従って、段階的に低くなっているが、高くなる構成とすることもできる。
また、本実施形態では、支持部20a,20b,20cの高さを水平とすることもできる。このような角度調整機構Aは、支持部20a,20b,20cに嵌り込む回動角度設定軸31の高さは同じ(水平位置)となるが、スタンド200が前後方向に移動することで、設置面Gに対するケース100の傾斜角度は変化することとなる。
【0066】
また、前記実施形態では、スタンド200側に軸部21及び回動角度設定軸31が設けられ、背面突出壁110側に案内溝2及び位置決め凹部11が設けられているが、これとは逆に、スタンド200側に案内溝2及び位置決め凹部11が設けられ、背面突出壁110側に軸部21及び回動角度設定軸31が設けられる構成とすることもできる。
【0067】
また、前記実施形態では、前記物品としての卓上電話機の設置角度を調整する角度調整機構を想定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、家電製品等の他のあらゆる物品に適用可能であることは言うまでもない。
【0068】
また、前記実施形態では、水平な設置面Gを想定しているが、角度調整機構Aは、傾斜面、垂直面を設置面とする部品に適用することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1a 軸支部
1b 軸支部
1c 軸支部
2 案内溝
11 位置決め凹部(回動角度設定手段)
11a 回動路(回動角度設定手段)
11b 回動路(回動角度設定手段)
11c 回動路(回動角度設定手段)
11d 回動路(回動角度設定手段)
21 軸部
20a 支持部(回動角度設定手段)
20b 支持部(回動角度設定手段)
20c 支持部(回動角度設定手段)
20d 支持部(回動角度設定手段)
31 回動角度設定軸(回動角度設定手段)
51a 突起
51b 突起
51c 突起
51d 突起
51e 突起
51f 突起
51g 突起
51h 突起
100 ケース(物品)
110 背面突出壁
200 スタンド
A 角度調整機構
e 軸部の短径
f 軸部の長径
G 設置面
j 軸支部の直径
k 案内溝の溝幅
θa 傾斜角度
θb 傾斜角度
θc 傾斜角度
θd 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の背面に配置され、前記物品をその設置面に対して傾斜させて支持するスタンドと、
前記物品の前記背面に対して前記スタンドの一端を軸支して他端を軸回りに回動させる軸部と、
前記物品の前記背面に対して前記スタンドをスライド可能なように前記軸部を内嵌して案内する案内溝と、
前記案内溝の延在方向に沿って複数配設される前記軸部を支承する軸支部と、
複数の前記軸支部ごとに前記物品の前記背面に対する前記スタンドの回動角度を設定する回動角度設定手段と、
を備えたことを特徴とする角度調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の角度調整機構において、
前記回動角度設定手段は、前記スタンドの回動中心から半径方向外側に離れて位置するように前記スタンドに設けられる回動角度設定軸と、
前記スタンドが予め設定された回動角度となるように、前記回動設定軸を支持する支持部と、
を有することを特徴とする角度調整機構。
【請求項3】
請求項2に記載の角度調整機構において、
前記支持部は、受け入れた前記回動角度設定軸を前記支持部に留める突起を有し、
前記回動角度設定軸は、前記突起を乗り越えることで前記支持部に対して嵌脱自在となっていることを特徴とする角度調整機構。
【請求項4】
請求項1に記載の角度調整機構において、
前記軸支部は、前記案内溝の溝幅kよりも大きい直径jの平面視で円形の窪みで形成され、
前記軸部は、断面視で長丸形状となっていると共に、この軸部の長径f及び短径eと、前記溝幅k及び軸支部の直径jとの大小関係は、直径j>長径f>溝幅k>短径eとなっていることを特徴とする角度調整機構。
【請求項5】
請求項2に記載の角度調整機構において、
前記支持部は、前記軸部回りに回動する回動角度設定軸の回動軌跡に沿って形成される回動路の終端部に設けられ、前記スタンドの回動角度は、前記回動路の長さに応じて設定されることを特徴とする角度調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−110543(P2013−110543A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253403(P2011−253403)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】