説明

角度調節装置及びシャワーシステム

【課題】機能部の向きを遠隔操作で調節可能とする角度調節装置及びシャワーシステムを提供する。
【解決手段】角度調節装置7は、利用者が操作可能な位置に取付けられる操作側ベース部材11、操作側ベース部材11に軸支される第1操作側部材12、第1操作側部材12に軸支される第2操作側部材13、及び、第2操作側部材13に固定される操作部14を具備する操作側構成部8と、操作側構成部8とは離れた位置に取付けられる作動側ベース部材21、作動側ベース部材21に軸支される第1作動側部材22、及び、第1作動側部材22に軸支されるとともに、シャワーヘッド3と連結される第2作動側部材23とを具備する作動側構成部9と、第1操作側部材12の動作に伴う動力を第1作動側部材22に伝達する第1駆動部材31と、第2操作側部材13の動作に伴う動力を第2作動側部材23に伝達する第2駆動部材36とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身に取付けられる機能部の向きを調節可能とする角度調節装置、及び角度調節装置をシャワー装置に具体化したシャワーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オーバーヘッドシャワーのシャワーヘッドは、浴室等の天井や壁の比較的高所に設置されている。また、利便性を向上させるべく、シャワーヘッドの向きが調節可能に構成されたものがある(例えば、特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−279484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示されているオーバーヘッドシャワーに関しては、シャワーヘッドの向きを調節するために、利用者がシャワーヘッドを直接触れて操作する必要がある。このため、利用者は比較的高所にまで手を伸ばさなくてはならず、操作が比較的困難なものとなるおそれがある。特に、身長の低い利用者については、シャワーヘッドに手が届かないことも想定され、この場合、向きの調節自体が行えなくなってしまうおそれがある。
【0005】
なお、上述した課題は、オーバーヘッドシャワーのシャワーヘッドの向きを調節する構成に限られるものではなく、例えば、スポットライトの照射部、空気調和設備の送風口、防犯カメラのレンズ部等といった利用者の手が届き難い場所に設置されるが、向きの調節が行えることで利便性が飛躍的に向上するような機能部の向きを調節する構成にも該当する問題である。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、機能部の向きを遠隔操作で調節可能とする角度調節装置及びシャワーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.利用者が操作可能な操作部を有する操作手段と、所定の機能部を取付け可能に構成され、取付けられた前記機能部の角度を調節可能とする作動手段と、前記操作手段と前記作動手段とを連動させる連動手段とを備える角度調節装置であって、
前記操作手段は、
利用者が操作可能な位置に設けられる操作側ベース部材と、
前記操作側ベース部材に対して回動可能に軸支される第1操作側部材と、
前記第1操作側部材の軸線方向とは異なる方向を軸線方向として、前記第1操作側部材に対して回動可能に軸支されるとともに、前記操作部と連結される第2操作側部材とを備え、
前記作動手段は、
前記操作手段とは離れた位置に設けられる作動側ベース部材と、
前記作動側ベース部材に対して回動可能に軸支される第1作動側部材と、
前記第1作動側部材の軸線方向とは異なる方向を軸線方向として、前記第1作動側部材に対して回動可能に軸支されるとともに、前記機能部と連結される第2作動側部材とを備え、
前記連動手段は、
前記第1操作側部材の動作に伴う動力を前記第1作動側部材に伝達する第1駆動部材と、
前記第2操作側部材の動作に伴う動力を前記第2作動側部材に伝達する第2駆動部材とを備えていることを特徴とする角度調節装置。
【0009】
手段1によれば、操作手段の操作部を動かすことで、連動手段を介して作動手段を連動させて、作動手段に取付けられた機能部の向きを調節することができるようになっている。このため、離れた位置での操作によって機能部の向きを調節することができ、角度調節装置を用いることで機能部の利便性を飛躍的に向上させることができる。また、機能部及び操作部はそれぞれ2軸方向に変位可能に構成されている。このため、機能部の向きを細かく調節することができる。さらに、操作部への操作の方向と機能部の動作の方向との対応関係を把握し易くすることができ、機能部が2軸方向に変位する構成であっても比較的スムースに機能部の向きの調節を行うことができる。加えて、角度調節装置には、電気的な構成が不要であるため、電気的構成を設置し難い環境でも比較的簡単に設置・使用することができ、また、省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
手段2.前記第1駆動部材は、
可撓性を有し、一端が前記操作側ベース部材に接続されるとともに、他端が前記作動側ベース部材に接続される略チューブ状の第1連結管と、
前記第1連結管に挿通され、一端が前記第1操作側部材に連結されるとともに、他端が前記第1作動側部材に連結される第1連動ワイヤとを備え、
前記第2駆動部材は、
可撓性を有し、一端が前記第1操作側部材に接続されるとともに、他端が前記第1作動側部材に接続される略チューブ状の第2連結管と、
前記第2連結管に挿通され、一端が前記第2操作側部材に連結されるとともに、他端が前記第2作動側部材に連結される第2連動ワイヤとを備えることを特徴とする手段1に記載の角度調節装置。
【0011】
手段2によれば、第1操作側部材が動作すると、第1連動ワイヤが第1操作部材によって引っ張られたり押し出されたりするようにして第1連結管の内側を相対的に変位するとともに、当該第1連動ワイヤの動作に伴って第1作動側部材が連動することとなる(第2操作側部材及び第2作動側部材に関しても同様)。このように、駆動部材として連結管と連動ワイヤとを用いることで、操作手段と作動手段との間の距離や、操作手段及び作動手段の設置の向きを適宜変更することが容易なものとなる上、角度調節装置の簡素化や組付け作業性の向上等を図ることができる。
【0012】
手段3.前記第1連結管及び前記第2連結管は、前記第1連結管及び前記第2連結管自身の長さを調整可能な長さ調整手段を備えていることを特徴とする手段2に記載の角度調節装置。
【0013】
手段3によれば、第1及び第2連結管の両端を接続した後、第1及び第2連結管と、その内側に挿通される第1及び第2連動ワイヤとの相対的な長さ、すなわち、第1及び第2連結管を貫通する第1及び第2連動ワイヤのうち第1及び第2連結管の外部に露出する部位の長さを変化させることができる。従って、操作手段と作動手段との動作を合わせるための微調整等を比較的容易に行うことができる。
【0014】
手段4.前記第1操作側部材の回動軸線方向と、前記第2操作側部材の回転軸線方向とが直交していることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の角度調節装置。
【0015】
手段4によれば、第1操作側部材及び第2操作側部材の回転軸線方向が直交していない場合に比べ、角度調節装置の操作性の向上や、構成の簡素化等を図ることができる。
【0016】
手段5.前記機能部として、前記第2作動側部材に対してシャワーヘッドが取付けされていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の角度調節装置。
【0017】
角度調節装置には電気で動作するような電気的構成を一切必要としないため、本手段5のように角度調節装置が水回りに設置される場合でも、水濡れ等に起因する故障や事故を回避することができる。
【0018】
手段6.利用者が操作可能な操作部を有する操作手段と、シャワー装置のシャワーヘッドが取付けられ、前記シャワーヘッドの角度を調節可能とする作動手段と、前記操作手段と前記作動手段とを連動させる連動手段とを備えるシャワーシステムであって、
前記操作手段は、
利用者が操作可能な位置に取付けられる操作側ベース部材と、
前記操作側ベース部材に対して回動可能に軸支される第1操作側部材と、
前記第1操作側部材の軸線方向とは異なる方向を軸線方向として、前記第1操作側部材に対して回動可能に軸支されるとともに、前記操作部と連結される第2操作側部材とを備え、
前記作動手段は、
前記操作手段よりも高所に取付けられる作動側ベース部材と、
前記作動側ベース部材に対して回動可能に軸支される第1作動側部材と、
前記第1作動側部材の軸線方向とは異なる方向を軸線方向として、前記第1作動側部材に対して回動可能に軸支されるとともに、前記機能部と連結される第2作動側部材とを備え、
前記連動手段は、
前記第1操作側部材の動作に伴う動力を前記第1作動側部材に伝達する第1駆動部材と、
前記第2操作側部材の動作に伴う動力を前記第2作動側部材に伝達する第2駆動部材とを備えていることを特徴とするシャワーシステム。
【0019】
手段6のように、上述した手段1〜5の作用効果が奏されるシャワーシステムに具現化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】角度調節装置を示す斜視図である。
【図2】操作側構成部の斜視図である。
【図3】作動側構成部の斜視図である。
【図4】操作側構成部の一部断面を含む斜視図である。
【図5】作動側構成部の一部断面を含む斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、シャワーシステム1は、機能部としてのシャワーヘッド3を備えるシャワー装置2と、シャワーヘッド3の向きをシャワーヘッド3から離れた位置での操作によって調節可能とする角度調節装置7とを備えている。角度調節装置7は、操作手段としての操作側構成部8と、シャワーヘッド3が取付けられるとともに、当該シャワーヘッド3の角度を調節可能とする作動手段としての作動側構成部9とを備えている。尚、図4に示すように、シャワーヘッド3には、複数の散水孔4が形成されるとともに、可撓性のある給水管5が接続されており、給水管5から給水された水が散水孔4から散水されるようになっている。
【0022】
図2、図4に示すように、操作側構成部8は、図示しない浴室の壁パネルに対して利用者が操作可能な位置(例えば床面から1000mm程度上方の位置)に取付けられる操作側ベース部材11と、操作側ベース部材11に対して回動可能に軸支される第1操作側部材12と、第1操作側部材12に対して回動可能に軸支される第2操作側部材13と、第2操作側部材13に連結される操作部14とを備えている。本実施形態では、第1操作側部材12は、壁パネルに対して垂直な方向(操作側構成部8と正対する利用者からすると前後方向)が回動軸線方向となっており、第2操作側部材13は、水平方向で、かつ、第1操作側部材12の回動軸線方向と直交する方向(操作側構成部8と正対する利用者からすると左右方向)が回動軸線方向となっている。また、図1に示すように、操作部14は、第1操作側部材12の前方を覆うようにして配置される略円盤状の本体部15と、本体部15の下端から下方に延出する操作レバー16とを備え、本体部15の中央部と、第1操作側部材12とが相対変位不可能に連結されている(図4参照)。
【0023】
図3、図5に示すように、作動側構成部9は、図示しない浴室の天井パネルに取付けられる作動側ベース部材21と、作動側ベース部材21に対して回動可能に軸支される第1作動側部材22と、第1作動側部材22に対して回動可能に軸支されるとともに、シャワーヘッド3が取付けられる第2作動側部材23とを備えている。本実施形態では、第1作動側部材22は、天井パネルに対して垂直な方向(鉛直方向)が回動軸線方向となっており、第2作動側部材23は、水平方向で、かつ、第1操作側部材22の回動軸線方向と直交する方向(第2操作側部材13の回動軸線方向と同じく、利用者からすると左右方向)が回動軸線方向となっている。
【0024】
また、角度調節装置7は、第1操作側部材12の動作に伴う動力を第1作動側部材22に伝達する第1駆動部材31と、第2操作側部材13の動作に伴う動力を第2作動側部材23に伝達する第2駆動部材36とを備えている。図4、図5等に示すように、第1駆動部材31は、可撓性を有し、一端が操作側ベース部材11に接続されるとともに、他端が作動側ベース部材21に接続される第1チューブ32と、第1チューブ32に挿通され、一端が第1操作側部材12に連結されるとともに、他端が第1作動側部材22に連結される第1連動ワイヤ33とを備えている。第2駆動部材36は、可撓性を有し、一端が第1操作側部材12に接続されるとともに、他端が第1作動側部材22に接続される第2チューブ37と、第2チューブ37に挿通され、一端が第2操作側部材13に連結されるとともに、他端が第2作動側部材23に連結される第2連動ワイヤ38とを備えている。
【0025】
尚、第1駆動部材31及び第2駆動部材36は、接続される対象が異なるだけで、基本的に同じものである。加えて、チューブ32、37の内径は、連動ワイヤ33、38の外径とほぼ同じ(若干大きい)であり、連動ワイヤ33、38は、チューブ32、37内を摺動可能となっている。本実施形態では、第1駆動部材31及び第2駆動部材36によって連動手段が構成されている。
【0026】
また、本実施形態では、第1チューブ32及び第2チューブ37のうち、作動側構成部9側の端末部については、それぞれ作動側ベース部材21及び第1作動側部材22に対して直接接続されているが(図5参照)、他方の操作側構成部8側の端末部については、それぞれ長さ調節手段としての第1長さ調節機構34及び第2長さ調節機構39を介して、操作側ベース部材11及び第1操作側部材12に接続されている(図4参照)。
【0027】
図4に示すように、第1長さ調節機構34は、第1操作側部材12に対して相対変位不可能に固定される筒状の固定部材41と、固定部材41と第1チューブ32とを連結する筒状の可動部材42とを備え、全体として第1チューブ32に挿通された第1連動ワイヤ33を挿通可能に構成されるとともに、伸縮可能に構成されている。より具体的には、固定部材41は、内周面に雌ねじが形成された雌ねじ形成部41aを備えるとともに、可動部材42は、固定部材41の雌ねじ形成部41aに螺着される雄ねじ形成部42aを備えており、固定部材41に対して可動部材42を相対的に回動変位させることで、雄ねじ形成部42aの雌ねじ形成部41aへの挿入量、すなわち、第1長さ調節機構34の全長が変化するようになっている。さらに、可動部材42の雄ねじ形成部42aにはナット43が螺着されている。そして、角度調節装置7の設置に際し、第1長さ調節機構34の長さ調節が行われた後、所謂ダブルナットの要領でナット43が締められることで、可動部材42と固定部材41とが固定されている。
【0028】
尚、第2長さ調節機構39についても第1長さ調節機構34と同様の構成を具備しており、第2操作側部材13に固定される固定部材41と、固定部材41と第2チューブ37とを連結する可動部材42と、ナット43とを備えている。また、長さ調節機構34、39は、防錆処理された金属により構成されている。本実施形態では、第1チューブ32及び第1長さ調節機構34によって第1連結管が構成され、第2チューブ37及び第2長さ調節機構39によって第2連結管が構成される。
【0029】
また、図4、図5に示すように、第1チューブ32及び第2チューブ37の各両端末部には、チューブ32、37の一般部の外径よりも大きな径を有するフレア部45が形成されている。そして、少なくとも第1及び第2チューブ32、37の操作側構成部8側の端末部に関しては、それぞれフレア部45が第1及び第2長さ調節機構34、39の可動部材42に対して回転可能に取付けられている。これにより、長さ調節機構34、39の調節が行われた場合であっても、チューブ32、37のねじれを解消することができる。
【0030】
さらに、第1連動ワイヤ33及び第2連動ワイヤ38の両端末部には、それぞれ鋸歯状のラック部材47a、47b、48a、48bが取付けられている。これに対応して、第1操作側部材12、第1作動側部材22、第2操作側部材13、及び第2作動側部材23には、各部材12、22、13、23の回動軸線方向を中心軸とする略円柱状に構成されるとともに、外周面において対応する連動ワイヤ33、38のラック部材47a、47b、48a、48bと噛み合う歯形部(便宜上、図示略)が形成されたピニオン部12a、22a、13a、23aが設けられている。すなわち、第1連動ワイヤ33は、ラック部材47a、47bを介して、第1操作側部材12、及び第1作動側部材22と連結されている。また、第2連動ワイヤ38は、ラック部材48a、48bを介して、第2操作側部材13、及び第2作動側部材23と連結されている。尚、本実施形態のラック部材47a、47b、48a、48bは、連動ワイヤ33、38等とともに連動手段(第1駆動部材及び第2駆動部材)を構成する部材である。
【0031】
そして、第2操作側部材13の回動軸線を中心に操作レバー16を上方に操作することで、第2操作側部材13のピニオン部13aに噛み合うラック部材48aが第2チューブ37から遠ざかる方向(本例では下方)に変位し、第2連動ワイヤ38が操作側構成部8側に引き出される。さらに、第2連動ワイヤ38の作動側構成部9側の端末部に取付けられたラック部材48bが第2チューブ37に近づく方向(本例では後方、図5では紙面左側)に変位し、当該ラック部材48bに噛み合う第2作動側部材23のピニオン部23aが回動してシャワーヘッド3が上側を向くように変位する。
【0032】
一方、第2操作側部材13の回動軸線を中心に操作レバー16を下方に操作することで、第2操作側部材13のピニオン部13aに噛み合うラック部材48aが第2チューブ37に近づく方向(本例では上方)に変位し、第2連動ワイヤ38が作動側構成部9側に押し出される。さらに、第2連動ワイヤ38の作動側構成部9側の端末部に取付けられたラック部材48bが第2チューブ37から遠ざかる方向(本例では前方、図5では紙面右側)に変位し、当該ラック部材48bに噛み合う第2作動側部材23のピニオン部23aが回動してシャワーヘッド3が下側を向くように変位する。
【0033】
また、第1操作側部材12の回動軸線を中心に操作レバー16を右方(図4では紙面手前側)に操作することで、第1操作側部材12のピニオン部12aに噛み合うラック部材47aが第1チューブ32から遠ざかる方向(本例では下方)に変位し、第1連動ワイヤ33が操作側構成部8側に引き出される。さらに、第1連動ワイヤ33の作動側構成部9側の端末部に取付けられたラック部材47bが第1チューブ32に近づく方向(本例では後方、図5では紙面左側)に変位し、当該ラック部材47bに噛み合う第1作動側部材22のピニオン部22aが回動してシャワーヘッド3が利用者から見て時計回り方向に変位する。
【0034】
一方、第1操作側部材12の回動軸線を中心に操作レバー16を左方(図4では紙面奥側)に操作することで、第1操作側部材12のピニオン部12aに噛み合うラック部材47aが第1チューブ32に近づく方向(本例では上方)に変位し、第1連動ワイヤ33が作動側構成部9側に押し出される。さらに、第1連動ワイヤ33の作動側構成部9側の端末部に取付けられたラック部材47bが第1チューブ32から遠ざかる方向(本例では前方、図5では紙面右側)に変位し、当該ラック部材47bに噛み合う第1作動側部材22のピニオン部22aが回動してシャワーヘッド3が利用者から見て反時計回り方向に変位する。尚、シャワーヘッド3のうち散水孔4が形成された機能面が第1作動側部材22の回転軸線方向に対して直交していない状態であれば、第1作動側部材22の回転軸線を中心にシャワーヘッド3が回動することで、シャワーヘッド3が右側を向いたり左側を向いたりする。
【0035】
尚、図2、図3に示すように、操作側ベース部材11及び作動側ベース部材21には、第1操作側部材12及び第1作動側部材22を回動変位させる際に、第2駆動部材36(第2長さ調節機構39及び第2チューブ37)の変位を許容するための切欠き部49、50が形成されている。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態によれば、操作側構成部8の操作レバー16を操作することで、駆動部材31、36の連動ワイヤ33、38等を介して作動側構成部9を連動させて、作動側構成部9に取付けられたシャワーヘッド3の向きを調節することができるようになっている。このため、離れた位置からの操作(遠隔操作)によってシャワーヘッド3の向きを調節することができ、角度調節装置7を用いることでシャワー装置2の利便性を飛躍的に向上させることができる。例えば、給水した状態で顔を濡らさずにシャワーヘッド3の向きを変えたり、洗髪時等にシャワーヘッド3を操作したりすることが比較的容易になる上、身長の低かったり、手を高く上げることのできない利用者であってもシャワーヘッド3の向きを調節することが可能となる。
【0037】
また、シャワーヘッド3及び操作レバー16はそれぞれ2軸方向に変位可能に構成されている。このため、シャワーヘッド3の向きを細かく調節することができる。さらに、操作レバー16への操作方向と、シャワーヘッド3の動作方向との対応関係を分かり易くすることができ、シャワーヘッド3が2軸方向に変位する構成であっても比較的スムースにシャワーヘッド3の向きの調節を行うことができる。加えて、角度調節装置7には、電気的な構成が不要であるため、電気的構成を設置し難い或いは設置するために相当の施工が必要となる浴室内でも比較的簡単に設置・使用することができ、また、省エネルギー化を図ることができる。
【0038】
また、第1操作側部材が動作すると、第1連動ワイヤが第1操作部材によって引っ張られたり押し出されたりするようにして第1連結管の内側を相対的に変位するとともに、当該第1連動ワイヤの動作に伴って第1作動側部材が連動することとなる(第2操作側部材及び第2作動側部材に関しても同様)。このように、操作側構成部8と作動側構成部9とを連動させる構成としてチューブ32、37と連動ワイヤ33、38とを用いることで、操作側構成部8と作動側構成部9との間の距離や、操作側構成部8及び作動側構成部9の設置の向きを適宜変更することが容易なものとなる上、連動させる角度調節装置の簡素化や組付け作業性の向上等を図ることができる。
【0039】
さらに、チューブ32、37の操作側構成部8側の端末部には、自身の長さ(連動ワイヤ33、38を貫通させるための孔の貫通方向における長さ)を変更可能な長さ調節機構34、39が設けられている。このため、チューブ32、37の両端を接続した後、チューブ32、37を取外さなくても、チューブ32、37及び長さ調節機構34、39を足した長さと、その内側に挿通される連動ワイヤ33、38との相対的な長さを変化させることができる。従って、操作側構成部8の動作(操作レバー16の操作量)と、作動側構成部9の動作(シャワーヘッド3の動作量)とを合わせるための微調整等を比較的容易に行うことができる。
【0040】
加えて、第1操作側部材12の回動軸線方向と、第2操作側部材13の回転軸線方向とが直交しているため、直交していない場合に比べ、角度調節装置7の操作性の向上や、操作側構成部8の構成の簡素化等を図ることができる。さらに、第1作動側部材22の回動軸線方向と、第2作動側部材23の回転軸線方向とが直交しているため、直交していない場合に比べ、シャワーヘッド3の動作性の向上や、作動側構成部9の構成の簡素化等を図ることができる。
【0041】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0042】
(a)上記実施形態では、連動ワイヤ33、38の両端末部に設けられたラック部材47a、47b、48a、48bと、第1操作側部材12、第1作動側部材22、第2操作側部材13、及び第2作動側部材23においてそれぞれ一体的に設けられたピニオン部12a、22a、13a、23aとを噛み合わせることで操作レバー16とシャワーヘッド3とを連動させているが、別のリンク機構を用いて連動させるように構成してもよい。
【0043】
(b)上記実施形態では、操作側構成部8の第1操作側部材12の回動軸線が操作側構成部の前方に位置する利用者から見て前後方向に延び、第2操作側構成部8の回動軸線が利用者から見て左右方向に延びているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、第1操作側部材12の回動軸線方向と、第2操作側部材13の回動軸線方向とが異なっていればよい。また、作動側構成部9の第1作動側構成部9の回動軸線が上下方向に延び、第2作動側構成部9の回動軸線が利用者から見て左右方向に延びているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、第1作動側部材22の回動軸線方向と、第2作動側部材23の回動軸線方向とが異なっていればよい。但し、上記実施形態のように、操作レバー16を上下(前後)に動かすことでシャワーヘッド3も上下(前後)に動き、操作レバー16を左右に動かすことでシャワーヘッド3も左右に動くといったように、手元の操作とシャワーヘッド3の動作とが一致するように構成することで、操作性の向上を図ることができる。
【0044】
(c)上記実施形態では、シャワーヘッド3が浴室の比較的高所に据え付けられるシャワーシステム1に具体化されているが、例えば、スポットライトの照射部、空気調和設備の送風口、防犯カメラのレンズ部等といった利用者の手が届き難い場所に設置されるが、向きの調節が行えることで利便性が飛躍的に向上するような機能部を備える構成に適用してもよい。特に、上記実施形態の角度調節装置7に関しては、電気的構成や電波(電磁波)を使用しないため、電気や電波を使用し難い環境でも問題なく設置して使用することができる。また、操作側構成部8と作動側構成部9との位置関係についても特に限定されるものではなく、例えば、壁や柵を挟んで水平に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…シャワーシステム、3…シャワーヘッド、7…角度調節装置、8…操作側構成部、9…作動側構成部、11…操作側ベース部材、12…第1操作側部材、13…第2操作側部材、14…操作部、21…作動側ベース部材、22…第1作動側部材、23…第2作動側部材、31…第1駆動部材、32…第1チューブ、33…第1連動ワイヤ、34…第1長さ調節機構、36…第2駆動部材、37…第2チューブ、38…第2連動ワイヤ、39…第2長さ調節機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が操作可能な操作部を有する操作手段と、所定の機能部を取付け可能に構成され、取付けられた前記機能部の角度を調節可能とする作動手段と、前記操作手段と前記作動手段とを連動させる連動手段とを備える角度調節装置であって、
前記操作手段は、
利用者が操作可能な位置に設けられる操作側ベース部材と、
前記操作側ベース部材に対して回動可能に軸支される第1操作側部材と、
前記第1操作側部材の軸線方向とは異なる方向を軸線方向として、前記第1操作側部材に対して回動可能に軸支されるとともに、前記操作部と連結される第2操作側部材とを備え、
前記作動手段は、
前記操作手段とは離れた位置に設けられる作動側ベース部材と、
前記作動側ベース部材に対して回動可能に軸支される第1作動側部材と、
前記第1作動側部材の軸線方向とは異なる方向を軸線方向として、前記第1作動側部材に対して回動可能に軸支されるとともに、前記機能部と連結される第2作動側部材とを備え、
前記連動手段は、
前記第1操作側部材の動作に伴う動力を前記第1作動側部材に伝達する第1駆動部材と、
前記第2操作側部材の動作に伴う動力を前記第2作動側部材に伝達する第2駆動部材とを備えていることを特徴とする角度調節装置。
【請求項2】
前記第1駆動部材は、
可撓性を有し、一端が前記操作側ベース部材に接続されるとともに、他端が前記作動側ベース部材に接続される略チューブ状の第1連結管と、
前記第1連結管に挿通され、一端が前記第1操作側部材に連結されるとともに、他端が前記第1作動側部材に連結される第1連動ワイヤとを備え、
前記第2駆動部材は、
可撓性を有し、一端が前記第1操作側部材に接続されるとともに、他端が前記第1作動側部材に接続される略チューブ状の第2連結管と、
前記第2連結管に挿通され、一端が前記第2操作側部材に連結されるとともに、他端が前記第2作動側部材に連結される第2連動ワイヤとを備えることを特徴とする請求項1に記載の角度調節装置。
【請求項3】
前記第1連結管及び前記第2連結管は、前記第1連結管及び前記第2連結管自身の長さを調整可能な長さ調整手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の角度調節装置。
【請求項4】
前記第1操作側部材の回動軸線方向と、前記第2操作側部材の回転軸線方向とが直交していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の角度調節装置。
【請求項5】
前記機能部として、前記第2作動側部材に対してシャワーヘッドが取付けされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の角度調節装置。
【請求項6】
利用者が操作可能な操作部を有する操作手段と、シャワー装置のシャワーヘッドが取付けられ、前記シャワーヘッドの角度を調節可能とする作動手段と、前記操作手段と前記作動手段とを連動させる連動手段とを備えるシャワーシステムであって、
前記操作手段は、
利用者が操作可能な位置に取付けられる操作側ベース部材と、
前記操作側ベース部材に対して回動可能に軸支される第1操作側部材と、
前記第1操作側部材の軸線方向とは異なる方向を軸線方向として、前記第1操作側部材に対して回動可能に軸支されるとともに、前記操作部と連結される第2操作側部材とを備え、
前記作動手段は、
前記操作手段よりも高所に取付けられる作動側ベース部材と、
前記作動側ベース部材に対して回動可能に軸支される第1作動側部材と、
前記第1作動側部材の軸線方向とは異なる方向を軸線方向として、前記第1作動側部材に対して回動可能に軸支されるとともに、前記機能部と連結される第2作動側部材とを備え、
前記連動手段は、
前記第1操作側部材の動作に伴う動力を前記第1作動側部材に伝達する第1駆動部材と、
前記第2操作側部材の動作に伴う動力を前記第2作動側部材に伝達する第2駆動部材とを備えていることを特徴とするシャワーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152485(P2012−152485A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16053(P2011−16053)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(392028767)株式会社日本アルファ (73)
【Fターム(参考)】