説明

角度酔歩の監視のためのシステムおよび方法

【課題】実際の回転および振動情報に関連する不要な信号成分、およびIOCからの光グリッチなど変調により誘導される誤差を低減し、角速度出力を決定するジャイロスコープを提供する。
【解決手段】このジャイロスコープ10は、第1のバイアス変調周波数で角速度測定値を復調して、角速度信号を決定するよう構成された第1の復調器22と、第2のバイアス変調周波数で角速度測定値を復調して、ARW情報を含む信号を提供するよう構成された第2の復調器24とを含む。このジャイロスコープは、メモリ内に格納されることになるARWに比例する出力を提供するARW推定器25をさらに含む。第2のバイアス変調周波数は、第1のバイアス変調周波数の偶数次高調波である。このジャイロスコープはまた、第2の復調器の角速度測定入力をフィルタ処理するためのフィルタを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度出力を測定するためのジャイロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバジャイロ(FOG)の重要な要件は、健全性診断のためにその健全性の状態または精度を監視する能力である。FOGを含むほとんどのナビゲーションシステムでは、角度酔歩(角度ランダムウオーク:ARW)がナビゲーション誤差の主な原因である。ARWは、他のタイプの誤差(例えば倍率やバイアス誤差)とは無関係で、角速度計算に直接影響を与える単位時間の平方根当たりの度数を単位として測定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ARWモニタは、健全性診断のための貴重な情報を提供することができる。ARWの監視に使用される現在のシステムおよび方法は、実際のARWの代わりに、ARWに影響を与えるパラメータを間接的に監視するだけである。こうした間接的なARWの決定は、追加の維持費用、および誤警報や誤やまった否定を含む精度問題をもたらし得る。また、これらのシステムは、システムサイズ、重量、および消費電力を負の方向に増やす多数のパラメータ監視装置を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、ジャイロスコープは、第1の変調周波数で角速度測定値を復調して、角速度出力を決定するよう構成された第1の構成要素と、第2の変調周波数で角速度測定値を復調して、ARW出力を決定するよう構成された第2の構成要素とを含む。また、このジャイロスコープは、ARW出力を格納するよう構成されたメモリを含む。
【0005】
本発明の別の態様によれば、第2の変調周波数は、第1の変調周波数の偶数次高調波である。
本発明のさらなる態様によれば、このジャイロスコープはまた、第2の復調器の角速度測定入力をフィルタ処理するためのフィルタを含む。
【0006】
本発明の好ましい実施形態および代替実施形態について、以下の図面を参照して、以下で詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に従って形成されるジャイロスコープの一例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に従って形成される信号処理回路の一例を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に従って形成される信号処理回路の一例を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に従って使用されるフィルタの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、角速度出力の角度酔歩(ARW)を測定するための構成要素を有するジャイロスコープである。図1は、本発明の一実施形態例に従って形成される光ファイバジャイロスコープ(FOG)10の簡易化された閉ループアーキテクチャを示す。FOG10は、集積光学回路(IOC)12を有する回転感知ループを含む。FOG10は、光検出回路(PDC)14、ARWモニタを備える信号処理回路(SPC)16、および集積光学駆動回路(IODC)18も含む。
【0009】
FOG10は、IOC12の光ファイバコイルの周りを反対方向(例えば時計回り(CW)方向および反時計回り(CCW)方向)に移動する2つの光線の間の位相の差を決定することによって、角速度または特定の回転軸の周りの速度を測定する。IOC12からのアナログ位相出力信号は、PDC14に伝えられる。PDC14は、アナログ位相出力信号を増幅し、変調されたデジタル位相シフトデータに変換する。次いで、PDC14のデジタル位相シフトデータは、SPC16に伝えられる。SPC16は、復調し、ARWについて監視し、統合し、次いで統合された結果をIODC18に伝える。IODC18は、SPC16から受信された信号をアナログ位相シフトデータに変換し、それを増幅し、次いで、フィードバックループを介して、増幅されたアナログ位相シフトデータをIOC12に伝える。次いで、IOC12は、受信したアナログ位相シフトデータを使用して、IOC12の光学コイルの周りを移動する2つの光線間の位相シフトを相殺する。
【0010】
図2は、本発明の一実施形態に従って形成されるFOG20のSPC16−1構成要素を示す。SPC16−1は、ARW推定器25に結合されているARW復調器24、レートアキュムレータ26に接続されているレート復調器22、および変調器28を含む。レート復調器22、レートアキュムレータ26、および変調器28は、デジタル位相シフトデータをIODC18に提供して、回転によって誘起される位相シフトを相殺する。
【0011】
一実施形態において、レート復調器22およびARW復調器24は、PDC14からデジタル位相シフトデータを受信する。ARW復調器24は、逆回転レートまたは機械振動信号が復調される信号に影響を与えないように、所定の変調周波数でバイアスされる。この所定の周波数でARW復調器24をバイアスすることによって、IOC12−1から受信された、変調された信号に影響を与えるノイズのみがARWに関連する。所定の変調周波数の正確な選択は、実際のARWを決定するのに極めて重要である。というのは、レート復調器22のバイアス変調周波数の周囲の周波数帯域は、実際の回転レートによって破損されるのに対して、かなり高い周波数帯域は、機械的振動によって破損されるからである。
【0012】
用途に応じて、回転レートは、基底帯域から2、3ヘルツまたはDCから数百ヘルツとすることができる。振動信号は、2、3ヘルツから数キロヘルツに及び得る。音響誘導信号は、数十ヘルツから数キロヘルツに及ぶ。こうした範囲のすべては、バイアス変調周波数、またはバイアス変調周波数の奇数高調波に関するものである。
【0013】
バイアス変調周波数の偶数高調波周波数で、復調された信号のノイズ測定は、本質的に回転または振動信号がない。したがって、これらの偶数高調波の周囲の狭帯域内でバイアス変調周波数を選択することによって、復調された信号は、実際のARW情報を提供することができる。一実施形態において、ARW復調器24は、レート復調器22のバイアス変調周波数の2倍でバイアスされる。別の実施形態において、ARW復調器24は、レート復調器22のバイアス変調周波数の4倍でバイアスされる。
【0014】
図2に示されるように、ARW復調器24からの「ARW出力」は、ARWに比例する信号ではなく、むしろ分散の平方根(標準偏差)がARWに比例するということである。したがって、ARWに比例する信号を取得するために、ARW復調器24の出力に対する追加の機能が実行される。一実施形態において、追加の機能は、標準偏差計算、または高速フーリエ変換ベースのスペクトル密度など、分散に関連する他の何らかの類似の方法とすることができる。この機能は、ジャイロプロセッサSPC16、システムプロセッサ(図示せず−慣性航法装置(IMU)など、より大きいシステムに統合されるジャイロ)、または顧客のシステム(図示せず)に存在し得る。ARW推定器25は、ARWに比例する出力を提供する機能を実行する。次いで、ARW推定器25の出力がメモリに送信される。ARW復調器24の出力が直接メモリに行く可能性は低い(しかし、あり得る)。というのは、この時点におけるデータレートは、非常に高く(40kHz以上)、したがってかなり多くのメモリを必要とすることになるからである。
【0015】
一実施形態において、メモリは、受信された比例するARW出力がFOG20の全体的な健全性を決定するために追跡される外部健全性監視装置(図示せず)に含まれる。
図3は、本発明の別の実施形態に従って形成されるFOG30のSPC16−2構成要素を示す。SPC16−2は、フィルタ40に接続されているARW復調器34、レートアキュムレータ36に接続されているレート復調器32、および変調器38を含む。この実施形態において、ARW復調器34は、デジタル位相シフトデータをフィルタ40に送信する。一実施形態において、フィルタ40は、所定のARWバイアス周波数の周囲の周波数帯域で、PDC14からの変調された位相シフトデータ信号をフィルタ処理するために使用されるバンドパスフィルタを含む。
【0016】
ARW復調器34からの信号は、破損信号からの任意の影響をさらに低減するために、所定の周波数帯域を選択するために、フィルタ処理される。例えば、ARWモニタは、IOC12によってもたらされる光グリッチにより、非常に低い周波数(1Hzよりはるかに低い)でいくつかの破損信号を有し得る。フィルタ40は、破損信号がないARW情報を有する周波数成分のみを通すために最適化される通過帯域を有する。
【0017】
別の実施形態において、フィルタ40は、時間領域と周波数領域との間で受信データを変換するために、高速フーリエ変換(FFT)を適用しやすくする処理回路を含む。バンドパスフィルタ40またはFFTは、実際の回転および振動情報に関連する不要な信号成分、およびIOCからの光グリッチなど変調により誘導される誤差を低減するのを助ける。
【0018】
図4は、ARW復調器24の後に配置されるフィルタ40−1の一例を示す。フィルタ40−1は、変調により誘導される誤差などの破損信号がない所定の周波数でバイアスされるフィルタ復調器52を含む。フィルタ復調器52の後には、例えば、所定の期間にわたってフィルタ復調器出力を蓄積するアキュムレータ54などのローパスフィルタがある。蓄積期間の最後に、アキュムレータの最終カウントがレジスタ56に保存され、次いで、アキュムレータ値は、ゼロにリセットされる。このプロセスは、フィルタ復調器出力のローパスフィルタリングを提供するだけでなく、データレートを低減し、このことは、ARWデータをメモリに保存し、さらに診断アルゴリズムによって処理することができるようになる前に必要となり得る。ローパスフィルタリングを行うためにアキュムレータ54およびレジスタ56を使用することは、処理サイクルまたはFPGAまたはASICゲートに関して、非常に効率的な方法である。復調器と、それに続くローパスフィルタによるフィルタリングによって、ARW復調器出力の非常に狭い周波数帯域を選択することができ、したがって、破損信号の除去をかなり向上させる。
【0019】
独占的な所有権または特権が請求される本発明の実施形態は、以下のように定義される。
【符号の説明】
【0020】
10 光ファイバジャイロスコープ(FOG)
12 集積光学回路(IOC)
14 光検出回路(PDC)
16 信号処理回路(SPC)
18 集積光学駆動回路(IODC)
20 FOG
22 レート復調器
24 ARW復調器
26 レートアキュムレータ
28 変調器
30 FOG
32 レート復調器
34 ARW復調器
36 レートアキュムレータ
38 変調器
40 フィルタ
52 フィルタ復調器
54 アキュムレータ
56 レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の変調周波数で角速度測定値を復調し、前記角速度信号を決定するよう構成された第1の構成要素(22)と、
第2の変調周波数で前記角速度測定値を復調し、ARW情報を含む信号を提供するよう構成された第2の構成要素(24)と、
前記第1および第2の構成要素によって復調された前記角速度測定値に基づいて前記角速度信号を決定するよう構成された第3の構成要素(16)と、
を含む角速度信号を決定するためのジャイロスコープ(10)。
【請求項2】
前記第2の変調周波数は、前記第1の変調周波数の偶数次高調波または前記第1の変調周波数であり、前記第2の復調器の出力をフィルタ処理するよう構成されたフィルタをさらに含み、前記フィルタはバンドパスフィルタであり、そして復調器およびローパスフィルタを含み、前記ジャイロスコープは閉ループ光ファイバジャイロスコープである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の構成要素の出力を受信し、ARWに比例する値を出力するよう構成されたARW推定器をさらに含む、請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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