説明

角栓再生抑制剤

【課題】肌荒れを起こさずに効果的に角栓の再生を抑制し得る角栓再生抑制剤の提供。
【解決手段】(a)乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸、およびそれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上と、(b)脂肪酸石鹸、高級アルキル硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル低級アルキルタウリン塩、ベタイン系界面活性剤、およびポリオキシアルキレンフィトステロールの中から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤と、(c)POE・POPジメチルエーテル、トラネキサム酸、パントテニルエチルエーテル、オトギリソウ、セリン、トリメチルグリシン、アラニン、グリシルグリシン、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート、1−ピペリジンプロピオン酸、およびそれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、角栓再生抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は角栓再生抑制剤に関する。さらに詳しくは、肌荒れを起こさずに効果的に角栓の再生を抑制し得る角栓再生抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
角栓の悩みは、女性の肌悩みの中でも上位に挙げられる項目である。角栓は、皮脂や剥離した角層等の混合物が毛孔(毛穴)に詰まったものであり(非特許文献1参照)、これが成長すると、毛穴が白く詰まった吹き出物状となり、あるいは産毛や汚れをさらに含むと毛穴が黒く詰まった吹き出物状となり、いずれも肌がブツブツした状態となって目立ち、見た目にも、また触感としてもざらついて、好ましくない。また、これを放置すると肌トラブルにもつながるといわれている。このようなすでに形成されてしまった角栓に対する対応策としては、洗浄料やパックなどで除去するのが一般的であり、非常に多くの商品が販売されているが、除去効率はあまり高いものではなく、除去してもまた1週間程度で再生してきてしまうこともあった。またパックでの処理を繰り返すことで肌荒れしてしまうことも多かった。
【0003】
これに対し、毛穴から角栓を除去した後、当該毛穴に角栓が再生されるのを抑えるための角栓再生抑制剤として、タンニン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、グルタミン酸などの有機酸類およびその塩に効果があることが知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。しかしながら、その効果はなかなか実感しにくいのが実情で、市場においても、収斂化粧水など毛穴の引き締めをうたう商品はあるものの、角栓を再生しにくくすることをうたった商品は存在していなかった。また、有機酸単独では肌荒れや感覚刺激が起こる場合があり、化粧品として一般的に使用することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−360834号公報
【特許文献2】特開平4−360830号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】栃尾 巧、フレグランスジャーナル、2008年8月号、28−32頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、肌荒れを起こさずに、効果的に角栓の再生を抑えることができる角栓再生抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ねた結果、特定の有機酸と、特定の界面活性剤と、特定の抗肌荒れ性成分を組み合わせることで、肌荒れを起こさずに効果的に角栓の再生を抑えることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、(a)乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸、およびそれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上と、(b)脂肪酸石鹸、高級アルキル硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル低級アルキルタウリン塩、ベタイン系界面活性剤、およびポリオキシアルキレンフィトステロールの中から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤と、(c)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジメチルエーテル、トラネキサム酸、パントテニルエチルエーテル、オトギリソウ、セリン、トリメチルグリシン、アラニン、グリシルグリシン、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート、1−ピペリジンプロピオン酸、およびそれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする角栓再生抑制剤に関する。
【0009】
また本発明は、(a)成分を0.001〜20質量%、(b)成分を0.001〜20質量%、(c)成分を0.001〜20質量%含有する、上記角栓再生抑制剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、肌荒れを起こさずに効果的に角栓の再生を抑えることができる角栓再生抑制剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例2における製剤3の連用塗布による角層水分量への影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。なお、以下において、POEはポリオキシエチレンを、POPはポリオキシプロピレンを、それぞれ示す。
【0013】
[(a)成分]
本発明に用いられる(a)成分は、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸の中から選ばれる有機酸、あるいはそれらの塩である。塩としては、一般に化粧料に用いられ得るものであれば特に限定するものでなく、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、等)、アンモニウム塩、有機アミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、等)などが挙げられる。中でも乳酸、コハク酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、またはこれらの塩が好ましい。(a)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0014】
(a)成分の配合量は、本発明の角栓再生抑制剤中に0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%である。0.001質量%未満では(a)成分としての効果を十分に発揮することができず、一方、20質量%を超えて配合しても、配合量に見合った効果の増大は望めない。
【0015】
[(b)成分]
(b)成分は、脂肪酸石鹸、高級アルキル硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル低級アルキルタウリン塩、ベタイン系界面活性剤、およびポリオキシアルキレンフィトステロール中から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤である。
【0016】
脂肪酸石鹸としては、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム等が挙げられる。
【0017】
高級アルキル硫酸エステル塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等が挙げられる。
【0018】
N−アシルグルタミン酸塩としては、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸カリウム、N−ココイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ココイルグルタミン酸ジカリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノカリウム等が挙げられる。
【0019】
N−アシル低級アルキルタウリン塩としては、特にN−アシルメチルタウリン塩が好ましく、具体例として、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリンマグネシウム等が挙げられる。
【0020】
ベタイン系界面活性剤としては、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酪酸ベタイン、アルキルベタイン(例えば、ラウリルベタイン等)、アミドベタイン、スルホベタイン等が挙げられる。またそれらの塩が挙げられる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。
【0021】
ポリオキシアルキレンフィトステロールとしては、ポリオキシエチレンフィトステロールが好適に用いられる。特に好ましくは、5〜50モル、より好ましくは20〜50モル、のオキシエチレンが付加したポリオキシエチレンフィトステロールである。具体的には、POE(5)フィトステロール、POE(10)フィトステロール、POE(20)フィトステロール、POE(30)フィトステロール等が挙げられ、市販品としてはNIKKOL BPS−5、NIKKOL BPS−10、NIKKOL BPS−20、NIKKOL BPS−30(以上、いずれも日本サーファクタント工業(株)製)等が挙げられる。
【0022】
(b)成分としては、特にPOEフィトステロール、ラウリン酸カリウム、ラウリルベタイン等が好ましい。
【0023】
(b)成分の配合量は、本発明の角栓再生抑制剤中に0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%である。0.001質量%未満では(b)成分としての効果を十分に発揮することができず、一方、20質量%を超えて配合しても、配合量に見合った効果の増大は望めない。
【0024】
[(c)成分]
(c)成分は、一般に皮膚外用剤に用いられ得る抗肌荒れ効果を奏する成分であり、例えば、トラネキサム酸、トラネキサム酸メチルアミドなどのトラネキサム酸誘導体、1−ピペリジンプロピオン酸、ビタミンEアセテートやビタミンEニコチネート等のビタミンE誘導体、エリスリトール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジメチルエーテル(=POE・POPジメチルエーテル)、パントテニルエチルエーテル、セリン、トリメチルグリシン、アラニン、グリシルグリシン等が例示される。(c)成分は塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)の形で用いてもよい。また、上記以外にも、オトギリソウ、カミツレ、クララ、シャクヤク等の植物エキスも挙げられる。
【0025】
本発明では中でも、POE・POPジメチルエーテル、トラネキサム酸、パントテニルエチルエーテル、オトギリソウ、セリン、トリメチルグリシン、アラニン、グリシルグリシン、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート、1−ピペリジンプロピオン酸、およびそれらの塩が好ましく用いられる。
【0026】
なお、POE・POPジメチルエーテルは、POEとPOPのモル比が、それぞれ1:2〜5:1程度のものが好ましく用いられる。また、オキシエチレン付加モル数が1〜70のものが好ましく、2〜20のものがより好ましく、オキシプロピレン付加モル数が1〜70のものが好ましく、2〜20のものがより好ましい。(c)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
(c)成分の配合量は、本発明の角栓再生抑制剤中に0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%である。0.001質量%未満では(c)成分としての効果を十分に発揮することができず、一方、20質量%を超えて配合しても、配合量に見合った効果の増大は望めない。
【0028】
上記(a)〜(c)成分を組み合せた本発明の角栓再生抑制剤は、肌荒れを起こさず、角栓の再生抑制効果および効果実感に優れる。なお「角栓の再生抑制」とは、毛孔から一度角栓を除去した後、当該毛孔に角栓が再度形成されることを抑えることをいう。
【0029】
本発明の角栓再生抑制剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意添加成分、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、水溶性高分子、キレート剤、低級アルコール、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、粉末成分、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0030】
本発明の角栓再生抑制剤の剤型は、特に限定されるものでなく、液状製剤、ゲル状製剤、クリーム、シート含浸製剤等として用いることができるが、特に液状製剤が好ましい。なお本発明の角栓再生抑制剤はpH3.0〜8.0程度とするのが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。
【0032】
(実施例1:ヒト試験による角栓再生抑制効果比較)
1.試料
下記に示す製剤1、製剤2(=製剤1にPOE(30)フィトステロールを添加した試料)を用いた。製剤1は(a)成分、(c)成分を配合した比較品製剤、製剤2は(a)成分、(b)成分、(c)成分を配合した本発明品製剤である。
【0033】
(製剤1:比較品製剤。pH4.1)
コハク酸 0.5(質量%)
乳酸 1
トラネキサム酸 1
エタノール 5
グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
POE(14)・POP(7)ジメチルエーテル 1
水酸化カリウム 0.135
グリシン 0.1
イオン交換水 残余
【0034】
(製剤2:本発明品製剤。pH4.1)
コハク酸 0.5(質量%)
乳酸 1
トラネキサム酸 1
エタノール 5
グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
POE(14)・POP(7)ジメチルエーテル 1
水酸化カリウム 0.135
グリシン 0.1
POE(30)フィトステロール 2
イオン交換水 残余
【0035】
2.評価試験方法
30代〜50代の比較的角栓の目立つ男性4名により、角栓の再生抑制試験を実施した。角栓の観察は、鼻頂部の適当なエリアに枠紙を貼り、ビデオマイクロスコープ(VMS。「キーエンス VHX−100」)観察にて行った。上記領域に対して、スライドグラス(マツナミ APSコート付き、s8444)に接着剤(「アロンアルファA」;三共)を数滴たらした後、その接着剤塗布面側を密着させた。10分間経過後にゆっくりとスライドグラスを剥離して角栓を除去した。再度VMS観察によって、完全に角栓を除去できた毛穴を特定し、これら特定した毛穴について、以降、角栓が再生してくる経過を観察した。ここで、製剤を使用しない状態(コントロール)での角栓再生の経過と、製剤(製剤1、2)を連用塗布したときの角栓再生の経過を比較した。
【0036】
製剤1:1日2回、2mLずつコットン(資生堂ビューティーアップコットン)に取り、VMS観察部位である鼻頂部を含む小鼻および頬を中心とした全顔に塗布し、3週間連用した。
【0037】
製剤2:上記製剤1の場合と同様に塗布する実験を同一の被験者4名で実施した。ただし、製剤2ではVMS観察部位である鼻頂部を含む半顔に適用とし、3週間連用した。
【0038】
経時で同一毛穴の角栓の成長を比較し、製剤を使用しない状態(コントロール)での角栓成長に比べ、製剤を塗布したときの角栓成長(=毛穴が詰まる)が遅かったものを「勝ち」、コントロールと製剤塗布時とで角栓成長がほぼ同じ程度のものを「引き分け」、製剤を塗布しない状態(コントロール)での角栓成長に比べ、製剤を塗布したときの角栓成長(=毛穴が詰まる)が速かったものを「負け」として、4名分の比較を行った。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
なお、最初に完全に角栓を除去できた毛穴の数(=試験評価の対象となる毛穴の数)が各評価試験ごとに異なるため、製剤1と製剤2とで評価した各毛穴の数は異なっている。被験者4名合計で、製剤1を用いた試験では12勝8敗9分けであったものが、製剤2を用いた試験では16勝2敗7分けであった。下記表2に「勝ち」のみの率を算出した結果を示すが、製剤2を用いた試験では、「勝ち」率が明らかに上昇していた。すなわち、(a)成分と(c)成分を含む製剤1に比べ、製剤1に(b)成分を添加した製剤2が角栓再生抑制効果の高いことが確認された。
【0041】
【表2】

【0042】
(実施例2:角栓再生抑制剤による肌状態への影響)
1.試料
下記に示す製剤3(=上記製剤2にパントテニルエチルエーテルを添加した製剤。本発明品製剤)を用いた。
【0043】
(製剤3:本発明品製剤。pH4.1)
コハク酸 0.5(質量%)
乳酸 1
トラネキサム酸 1
エタノール 5
グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
POE(14)・POP(7)ジメチルエーテル 1
水酸化カリウム 0.135
グリシン 0.1
POE(30)フィトステロール 2
パントテニルエチルエーテル 0.05
イオン交換水 残余
【0044】
2.評価試験方法
男性被験者5名を対象に、上記製剤3を小鼻および頬に3週間半顔で連用塗布し、無塗布側の肌状態変化と比較を行った。塗布側と無塗布側の小鼻について、連用前および連用3週間後の皮脂量と角層水分量をマルチプローブメータMP5(Courage+khazaka社)により測定、比較した。表3に皮脂量の結果を、図1に角層水分量の結果を示す。図1中、縦軸はCorneometer測定値(単位:AU)を示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表3に示す結果から明らかなように、皮脂量は塗布側でも増加傾向にあるものの、無塗布側に比べてその増加は抑制傾向にあり、個人別でも5名中4名でその傾向が認められた。
【0047】
また図1に示す結果から明らかなように、角層水分量も塗布側で平均値として増加する幅が大きく、個人別でも5名中3名で塗布側が良くなっていた。このように、製剤3を連用塗布することで、肌状態が良好となったことが確認された。
【0048】
(実施例4:ヒト試験による角栓再生抑制効果比較)
1.試料
実施例1に記載の製剤2(=本発明品製剤)、および下記製剤4、5を用いた。
【0049】
製剤4は、製剤2からトラネキサム酸およびPOE(14)・POP(7)ジメチルエーテルを抜去し、グリセリン、水酸化カリウムを増量し、キシリトールを添加した製剤で、(a)成分、(b)成分を配合した比較品製剤である。
【0050】
製剤5は、製剤2からトラネキサム酸を抜去し、水酸化カリウムを増量し、L−セリン、トリメチルグリシン、オトギリソウエキスを添加した製剤で、(a)成分、(b)成分、(c)成分を配合した本発明品製剤である。
【0051】
(製剤4:比較品製剤。pH4.2)
コハク酸 0.5(質量%)
乳酸 1
エタノール 5
グリセリン 9
キシリトール 3
ジプロピレングリコール 5
水酸化カリウム 0.5
グリシン 0.1
POE(30)フィトステロール 2
イオン交換水 残余
【0052】
(製剤5:本発明品製剤。pH4.2)
コハク酸 0.5(質量%)
乳酸 1
エタノール 5
グリセリン 5
L−セリン 0.1
トリメチルグリシン 2.9
オトギリソウエキス 0.1
ジプロピレングリコール 5
POE(14)・POP(7)ジメチルエーテル 1
水酸化カリウム 0.5
グリシン 0.1
POE(30)フィトステロール 2
イオン交換水 残余
【0053】
2.評価試験方法
30代〜50代の比較的角栓の目立つ男性4名により、角栓の再生抑制試験を実施した。被験者4名のうち、3名は実施例1と共通の被験者であった(被験者No.1、3、4。実施例1と同じ番号を付した)。残り1名(被験者No.5)は今回評価試験を初めて実施した。なお実施例4の評価試験は、実施例1の評価試験とは別の日に行った。
【0054】
角栓の観察は、実施例1と同様の要領で行った。すなわち、鼻頂部の適当なエリアに枠紙を貼り、VMS観察にて行った。上記領域に対して、スライドグラス(マツナミ APSコート付き、s8444)に接着剤(「アロンアルファA」;三共)を数滴たらした後、その接着剤塗布面側を密着させた。10分間経過後にゆっくりとスライドグラスを剥離して角栓を除去した。再度VMS観察によって、完全に角栓を除去できた毛穴を特定し、これら特定した毛穴について、以降、角栓が再生してくる経過を観察した。ここで、製剤を使用しない状態(コントロール)での角栓再生の経過と、製剤(製剤2、4、5。1つの試験での製剤は1種類のみ)を連用塗布したときの角栓再生の経過を比較した。各製剤を1日2回、2mLずつコットンに取り、VMS観察部位である鼻頂部を含む小鼻および頬を中心とした全顔に塗布し、3週間連用した。いずれも同一の被験者4名で実施した。
【0055】
経時で同一毛穴の角栓の成長を比較し、製剤を使用しない状態(コントロール)での角栓成長に比べ、製剤を塗布したときの角栓成長(=毛穴が詰まる)が遅かったものを「勝ち」、コントロールと製剤塗布時とで角栓成長がほぼ同じ程度のものを「引き分け」、製剤を使用しない状態(コントロール)での角栓成長に比べ、製剤を塗布したときの角栓成長(=毛穴が詰まる)が速かったものを「負け」として、4名分の比較を行った。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
なお、最初に完全に角栓を除去できた毛穴の数(=試験評価の対象となる毛穴の数)が各評価試験ごとに異なるため、製剤2、4、5で評価した各毛穴の数は異なっている。下記表5に「勝ち」のみの率を算出した結果を示す。
【0058】
【表5】

【0059】
表5に示す結果から明らかなように、被験者No.3では、製剤2と5に比べ製剤4の角栓再生抑制効果が高い結果が示されているが、表4の結果を併せてみると、試験評価対象毛穴数に対する「負け」の率が、製剤2では0%、製剤5では8.7%であるのに対し、製剤4での「負け」の率は28.6%にも上る。表5において、他の被験者(3名)では製剤4に比べ製剤2と5の角栓再生抑制効果が高い。被験者4名合計でみても、製剤2と比較して製剤4の塗布では「勝ち」の割合が減少し、製剤5の試験では製剤2とほぼ同等である。すなわち、(a)成分と(b)成分のみを含む製剤4に比べて、(a)成分、(b)成分、(c)成分すべてを配合した製剤2および5が角栓再生抑制効果の高いことが確認された。
【0060】
(実施例6:角栓再生抑制剤のスクリーニング)
実施例1で記載の方法に準じて得られた角栓を用いて、以下の表6に示す評価薬剤を用いて、角栓再生抑制効果についてスクリーニングを行った。
【0061】
すなわち、スライドグラスに接着剤(「アロンアルファA」;三共)を数滴たらした後、その接着剤塗布面側を被験者の鼻頂部の一部領域に密着させた。10分間経過後にゆっくりとスライドグラスを剥離して角栓を得た。
【0062】
このようにして得たスライドグラス上の角栓を、カッター等で接着面から切り出し、カバーグラス上に敷いた両面テープの上に接着させた。それを5mLシャーレに入れ、表4に示す評価薬剤を含む水溶液(1%水溶液)を加えた。実体顕微鏡、SEMにより、角栓の経時での変化を観察し、角栓の崩壊程度に応じその形態を以下の4段階で評価した。なお評価は実体顕微鏡法、SEM法による評価を総合評価した。
(評価基準)
ランク0:変化なし(角栓の表面に全く変化が認められない)
ランク1:やや変化が認められる(角栓の表面が若干不鮮明になるなど若干の変化が認められる)
ランク2:変化あり(角栓の表面に明らかな変化が認められる)
ランク3:かなり変化あり(角栓の表面が崩れるなど、凹凸変化が顕著である)
(評価液)
評価液は表6に示す評価薬剤含む水溶液(1質量%含有水溶液)を用いた。
【0063】
【表6】

【0064】
以下に、さらに本発明の処方例を示す。
【0065】
(処方例1:乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)ステアリン酸 2.0
(2)ラウリン酸 0.5
(3)セチルアルコール 1.5
(4)ワセリン 5.0
(5)流動パラフィン 10.0
(6)POE(10)モノオレイン酸エステル 2.0
(7)ポリエチレングリコール(1500) 3.0
(8)トリエタノールアミン 1.0
(9)水酸化カリウム 0.05
(10)カルボキシビニルポリマー 0.05
(11)亜硫酸水素ナトリウム 0.01
(12)防腐剤 適 量
(13)香料 適 量
(14)クエン酸 0.05
(15)1−ピペリジンプロピオン酸 0.05
(16)イオン交換水 残 余
(製法)
(16)の一部に(10)を溶解する(A相)。残りの(16)に(7)、(8)、(9)、(11)、(14)、(15)を加え、加熱溶解した70℃に保つ(水相)。一方、(1)〜(6)、(12)、(13)を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え予備乳化を行い、A相を加えホモミキサーで均一に乳化し、乳化後よくかき混ぜながら30℃まで冷却して乳液を得る。
【0066】
(処方例2:乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)マイクロクリスタリンワックス 1.0
(2)ミツロウ 2.0
(3)ラノリン 20.0
(4)流動パラフィン 10.0
(5)スクワラン 5.0
(6)ソルビタンセスキオレイン酸エステル 4.0
(7)POE(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0
(8)ラウリルベタイン 0.1
(9)プロピレングリコール 7.0
(10)L−アルギニン塩酸塩 5.0
(11)L−アラニン 1.0
(12)グリセリン 3.0
(13)グリコール酸 0.05
(14)亜硫酸水素ナトリウム 0.01
(15)防腐剤 適 量
(16)香料 適 量
(17)イオン交換水 残 余
(製法)
(17)に(8)〜(14)を加え、加熱して70℃に保つ(水相)。一方、(1)〜(7)、(15)、(16)を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。油相をかき混ぜながら水相を徐々に加え、ホモミキサーで均一に乳化した後、よくかき混ぜながら30℃まで冷却し、乳液を得る。
【0067】
(処方例3:乳液(W/O乳化タイプ))
(配 合 成 分) (質量%)
(1)イソプロピルアルコール 10.0
(2)ジイソステアリン酸ジグリセリル 0.5
(3)POE変性ジメチルポリシロキサン 1.0
(4)ポリオキシエチレンフィトステロール 0.5
(5)オクタメチルシクロテトラシロキサン 25.0
(6)デカメチルシクロペンタシロキサン 15.0
(7)トリメチルシロキシケイ酸 5.0
(8)ユーカリ油 3.0
(9)香料 0.05
(10)ジプロピレングリコール 2.0
(11)フェノキシエタノール 0.3
(12)エデト酸3ナトリウム 0.1
(13)イオン交換水 残 余
(14)塩化カリウム 0.5
(15)トラネキサム酸 0.5
(16)乳酸 0.05
(製法)
(1)〜(9)を加熱溶解し(油相)、(10)〜(16)を溶解し(水相)、油相に水相を添加し、乳化し、乳液を得る。
【0068】
(処方例4:ゼリー)
(配 合 成 分) (質量%)
(A相)
95%エチルアルコール 10.0
POE(20)オクチルドデカノール 1.0
パントテニルエチルエーテル 0.1
ラウリルベタイン 0.05
ビタミンE−アセテート 0.05
防腐剤 適 量
(B相)
水酸化カリウム 0.1
(C相)
グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 10.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
クエン酸 0.05
L−アルギニンマグネシウム塩 0.05
カルボキシビニルポリマー 0.2
イオン交換水 残 余
(製法)
A相、C相をそれぞれ均一に溶解し、C相にA相を加えて可溶化する。次いでB相を加えた後充填を行い、ゼリーを得る。
【0069】
(処方例5:O/Wクリーム)
(配 合 成 分) (質量%)
A.油相
セタノール 4.0
ワセリン 7.0
イソプロピルミリステート 8.0
スクワラン 15.0
ステアリン酸モノグリセリンエステル 2.2
POE(20)ソルビタンモノステアレート 2.8
ラウリルベタイン 0.05
5−エトキシサリチル酸 0.01
ビタミンEニコチネート 2.0
香料 0.3
酸化防止剤 適 量
防腐剤 適 量
B.水相
グリセリン 10.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02
キシリトール 1.0
ジプロピレングリコール 4.0
POE(14)・POP(7)ジメチルエーテル 1.0
L−アラニン 3.0
エデト酸二ナトリウム 0.01
クエン酸 1.0
精製水 残 量
(製法)
A(油相)とB(水相)をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解した。次いで、AをBに加えて、乳化機で乳化した。さらに、乳化物を熱交換機を用いて冷却して、クリームを得る。
【0070】
(処方例6:W/Oクリーム)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)塩化ジメチルジステアリルアンモニウム処理ヘクトライト 2.0
(2)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン重合体 0.1
(3)ラウリルベタイン 0.5
(4)流動パラフィン 10.0
(5)ワセリン 5.0
(6)オクタン酸セチル 20.0
(7)L−グルタミン酸ソーダ 0.01
(8)ジプロピレングリコール 5.0
(9)メチルパラベン 0.2
(10)サリチル酸 1.0
(11)キシリトール 2.0
(12)グリシルグリシン 0.5
(13)イオン交換水 残 量
(製法)
(2)、(3)、(4)、(6)を50℃に昇温した後、(5)を加え完全に溶解した油相パーツに(1)を加えて均一に分散を行ったものに、(13)へ(7)〜(12)を溶解させた水相パーツを50℃に加温して添加を行い、HMにて均一分散した後、室温まで冷却し、W/Oクリームを得る。
【0071】
(処方例7:白濁化粧水)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)α−オレフィンオリゴマー 2.0
(2)イソステアリルアルコール 0.5
(3)イソステアリン酸 0.8
(4)セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.1
(5)POE(14)・POP(7)ジメチルエーテル 1.0
(6)POE(30)フィトステロール 1.0
(7)酢酸DL−α−トコフェロール 0.05
(8)香料 適 量
(9)1,3−ブチレングリコール 5.0
(10)エタノール 5.0
(11)キサンタンガム 0.1
(12)コハク酸 0.5
(13)ジプロピレングリコール 5.0
(14)トラネキサム酸 1.0
(15)ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
(16)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.005
(17)フェノキシエタノール 0.5
(18)メタリン酸ナトリウム 0.05
(19)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 0.2
(20)水酸化カリウム 0.2
(21)乳酸 1.0
(22)濃グリセリン 5.0
(23)精製水 残 量
(製法)
(1)〜(8)を、70℃に加熱溶解し、攪拌混合し、温度を70℃に維持して攪拌を行いながら、(23)を徐々に添加して乳化を行い、水中油型乳化組成物を得る。得られた水中油型乳化組成物を、さらに(9)〜(22)を含む水性処方中に添加し、攪拌により均一分散させて白濁化粧水を得る。
【0072】
(処方例8:化粧水)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)コハク酸 0.5
(2)乳酸 1.0
(3)エタノール 5.0
(4)ビタミンEアセテート 0.05
(5)グリセリン 5.0
(6)オトギリソウエキス 0.1
(7)クララエキス 0.1
(8)ジプロピレングリコール 5.0
(9)POE(14)・POP(7)ジメチルエーテル 1.0
(10)水酸化カリウム 0.5
(11)グリシン 0.1
(12)POE(30)フィトステロール 1.0
(13)イオン交換水 残 余
(製法)
(3)に(4)と過熱溶解した(12)を溶解する。また(13)に(1)、(2)、(5)〜(11)を溶解し、両者を混合し化粧水を得る。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の角栓再生抑制剤は、肌荒れを起こさずに効果的に角栓の再生を抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸、およびそれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上と、(b)脂肪酸石鹸、高級アルキル硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル低級アルキルタウリン塩、ベタイン系界面活性剤、およびポリオキシアルキレンフィトステロールの中から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤と、(c)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジメチルエーテル、トラネキサム酸、パントテニルエチルエーテル、オトギリソウ、セリン、トリメチルグリシン、アラニン、グリシルグリシン、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート、1−ピペリジンプロピオン酸、およびそれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、角栓再生抑制剤。
【請求項2】
(a)成分を0.001〜20質量%、(b)成分を0.001〜20質量%、(c)成分を0.001〜20質量%含有する、請求項1記載の角栓再生抑制剤。

【図1】
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【公開番号】特開2013−49667(P2013−49667A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160781(P2012−160781)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】