説明

角目ネット編地とその製造方法

【課題】 縦横に伸縮しにくく、一方向にカールすることが無く、柔らかくて軽く薄い安定した形状の角目ネット編地とその製造方法を提供する。
【解決手段】 経編の複数の鎖編糸12と挿入糸16の束ね糸部17により縦方向集束糸14を編成する。挿入糸16は、複数本の鎖編糸12に所定コース数毎に絡む束ね糸部17と、縦方向集束糸14の編成方向に対して側方の他の縦方向集束糸14に振られる横方向振糸部18とから成る。各挿入糸16は、各々所定コース数ずつ一対の縦方向集束糸14に編まれるように、複数ウェール数ずつ交互に振って編成する。縦方向集束糸14と挿入糸16による横方向振糸部18とにより、矩形の目が形成される。各糸は、ポリ乳酸繊維等の生分解性繊維より成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネット編地の目の形状が四角形である角目ネット編地とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レース生地や農業用等の各種の網等に用いられる編地は、目の形状が六角形や略円形等のものがある。これらのネット編地の場合、編地の性質により一方向にカールしたり、縦横に大きく伸縮して形状不安定なものであった。
【特許文献1】特開平7−126967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の技術の場合必要以上に伸縮性があり、例えば農業用のネットとして用いる場合、縦方向に引っ張ると幅が狭くなり、幅方向に張力がかかると長さが短くなる等の不便があった。また、軽く薄いネットが好ましいが、従来の編組織の場合軽く薄くすると、一方向にカールしやすく、一旦カールしてしまうと広げにくく、取り扱い性が悪いものであった。
【0004】
また、農業用ネットの場合、使用済みのネットは廃棄物として所定の処分を行わなければならず、廃棄処理における環境負荷が大きいものであった。
【0005】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みて成されたものであり、縦横に伸縮しにくく、一方向にカールすることが無く、柔らかくて軽く薄い安定した形状の角目ネット編地とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、経編の複数の鎖編糸と挿入糸の束ね糸部により縦方向集束糸を編成し、前記挿入糸は、複数本の前記鎖編糸に所定コース数毎に絡む前記束ね糸部と、前記縦方向集束糸の編成方向に対して側方の他の縦方向集束糸に振られる横方向振糸部とから成り、前記各挿入糸は、各々所定コース数ずつ一対の前記縦方向集束糸に編まれるように、複数ウェール数ずつ交互に振って編成され、前記縦方向集束糸と前記挿入糸による横方向振糸部とにより、矩形の目が形成されて成る角目ネット編地である。前記各糸は、ポリ乳酸繊維等の生分解性繊維により形成されているものである。
【0007】
前記縦方向集束糸は、各々鎖編された2本の鎖編糸を前記挿入糸の束ね糸部により束ねられたものである。また、前記挿入糸は、隣り合う各々複数本の鎖編糸同士、または間に前記縦方向集束糸を挟んで所定ウェール数ずつ交互に振られているものである。
【0008】
またこの発明は、経編の複数の鎖編糸と挿入糸の束ね糸部により縦方向集束糸を編成し、前記挿入糸を、複数本の前記鎖編糸に所定コース数毎に絡むように編成するとともに、前記縦方向集束糸の編成方向に対して側方の他の縦方向集束糸に振って横方向振糸部を形成するもので、前記各挿入糸を、前記鎖編糸の編成方向に対して側方の異なる複数本の鎖編糸との間で、各々所定コース数ずつ一対の前記縦方向集束糸に編まれるように複数ウェール数ずつ交互に振って編成するとともに、前記複数本の鎖編糸を前記束ね糸部により束ねるようにして絞り込んで前記縦方向集束糸を形成し、前記縦方向集束糸と前記挿入糸による横方向振糸部とにより矩形の目を形成する角目ネット編地の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明の角目ネット編地は、複数本の鎖編糸を挿入糸の編成時に絞り込んで、長手方向に縦方向集束糸を形成し、この縦方向集束糸とともに編成される挿入糸を、近接する所定ウェール間で、所定コース毎に交互に振って横方向振糸部を設け、矩形の目のネット編地を形成したので、極めて細い糸で編まれ比較的大きな角目にもかかわらず、縦方向及び横方向に必要以上に伸縮しにくく、一方向に不用意に伸びることがない。従って、一方向の伸びによりそれと直交する方向に縮むことも無く、農業用やその他の用途で使用する際も、広げやすく扱いやすいものである。また、軽く薄いネット編地を形成することができ、材料コストを抑え、搬送も容易なものとすることができる。
【0010】
さらに、編成するための糸を生分解性のポリ乳酸繊維の糸を用いることにより、使用後に埋め立て処分しても分解して土に帰るもので、環境に与える負荷がほとんど無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施形態の角目ネット編地について、図面に基づいて説明する。図1、図2は、この発明の第一実施形態の角目ネット編地を示すもので、この実施形態の角目ネット編地10は、生分解性のポリ乳酸繊維の糸により形成されている。ポリ乳酸繊維は、トウモロコシやサツマイモ等のデンプンから製造されるもので、埋め立て処理により微生物により分解され、炭酸ガスと水になる資源循環型の繊維材料である。
【0012】
角目ネット編地10は、2ウェール分の鎖編糸12による鎖編により、1本の縦方向集束糸14が形成されている。2本の鎖編の鎖編糸12には、1本の挿入糸16の束ね糸部17が絡み、7コース数ずつ互いに隣り合う一対の縦方向集束糸14間で振られながら編成されている。さらに、この挿入糸16の振りにより、ネット編地10の横方向振糸部18を構成している。そして、鎖編糸12と束ね糸部17による縦方向集束糸14と、挿入糸16の横方向振糸部18により、矩形の網目が形成されている。
【0013】
この実施形態のネット編地10の製造は、鎖編による2ウェール分の鎖編糸12から、挿入糸16の束ね糸部17により縦方向集束糸14を形成する。このとき、挿入糸16による編成時に、挿入糸16の束ね糸部17を絞り込んで、2本の鎖編糸12による鎖編部分が、1本の縦方向集束糸14に束ねられるものである。
【0014】
この実施形態のネット編地10は、図2に示すように長手方向に対して平行と直角方向の角目のネットを形成するもので、薄く柔らかであり、極めて軽いものとすることができる。例えば、本願出願人による編成によれば、8.5g/mの編地を製造することができた。さらに、このネット編地10は、極めて細い糸で編まれ比較的大きな角目にもかかわらず、角目の構造により縦方向及び横方向には必要以上に伸びず、例えば縦方向の引っ張りにより横方向の幅が縮んでしまうということが無く、取り扱いやすい。さらに、幅方向にカールすることもなく、平面状の状態を常に安定的に維持するものであり、この点からも取り扱いが容易である。
【0015】
次にこの発明の第二実施形態の角目ネット編地について、図3を基に説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態では、一対の挿入糸16を、隣り合う2本ずつの鎖編糸12同士で、互いに対称となるように振って編成したものである。
【0016】
この実施形態のネット編地20についても上記実施形態と同様の効果を得ることができ、縦方向集束糸14及び横方向振糸部18をより強く安定なものとすることができる。また、このようにして製造したネット編地20の重さは、例えば10.0g/mと極めて軽く、上記実施形態の例と比べて僅かに重い程度である。
【0017】
次にこの発明の第三実施形態の角目ネット編地について、図4を基に説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態では、挿入糸16を、隣り合う2本ずつの鎖編の鎖編糸12による縦方向集束糸14同士ではなく、縦方向集束糸14を1本とばして、1本おきに隣り合う一対の縦方向集束糸14同士で、交互に振って編成している。
【0018】
この実施形態のネット編地30についても上記実施形態と同様の効果を得ることができ、横方向振糸部18を多くして、横方向により強いものとすることができる。また、このようにして製造したネット編地20の重さは、例えば9.0g/mと極めて軽く、上記実施形態の例と比べて僅かに重い程度である。
【0019】
次にこの発明の第四実施形態の角目ネット編地について、図5を基に説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態では、挿入糸16は、束ね糸部17の始めと終わりの所定位置に各々編み目17aを形成している。これにより、この角目ネット編地40の形態安定性及び強度が、より高いものとすることができる。特に、編地の仕上げセット工程を省いて使用する場合に極めて有効なものである。また、この実施形態のネット編地40についても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0020】
なお、この発明の角目ネット編地は上記実施形態に限定されるものではなく、糸の材料や、鎖編糸編成方法や、挿入糸の振り方、編み込み方は自由に変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第一実施形態の角目ネット編地の編成パターンを示す概略図である。
【図2】この実施形態の角目ネット編地の正面図である。
【図3】この発明の第二実施形態の角目ネット編地の編成パターンを示す概略図である。
【図4】この発明の第三実施形態の角目ネット編地の編成パターンを示す概略図である。
【図5】この発明の第四実施形態の角目ネット編地の編成パターンを示す概略図である。
【符号の説明】
【0022】
10 ネット編地
12 鎖編糸
14 縦方向集束糸
16 挿入糸
17 束ね糸部
18 横方向振糸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経編の複数の鎖編糸と挿入糸の束ね糸部により縦方向集束糸を編成し、前記挿入糸は、複数本の前記鎖編糸に所定コース数毎に絡む前記束ね糸部と、前記縦方向集束糸の編成方向に対して側方の他の縦方向集束糸に振られる横方向振糸部とから成り、前記各挿入糸は、各々所定コース数ずつ一対の前記縦方向集束糸に編まれるように、複数ウェール数ずつ交互に振って編成され、前記縦方向集束糸と前記挿入糸による横方向振糸部とにより、矩形の目が形成されて成ることを特徴とする角目ネット編地。
【請求項2】
前記各糸は、生分解性繊維により形成されていることを特徴とする請求項1記載の角目ネット編地。
【請求項3】
前記縦方向集束糸は、各々鎖編された2本の鎖編糸を前記挿入糸の束ね糸部により束ねられたものであることを特徴とする請求項1または2記載の角目ネット編地。
【請求項4】
前記挿入糸は、隣り合う各々複数本の鎖編糸同士、または間に前記縦方向集束糸を挟んで所定ウェール数ずつ交互に振られているものであることを特徴とする請求項1,2または3記載の角目ネット編地。
【請求項5】
経編の複数の鎖編糸と挿入糸の束ね糸部により縦方向集束糸を編成し、前記挿入糸を、複数本の前記鎖編糸に所定コース数毎に絡むように編成するとともに、前記縦方向集束糸の編成方向に対して側方の他の縦方向集束糸に振って横方向振糸部を形成するもので、前記各挿入糸を、前記鎖編糸の編成方向に対して側方の異なる複数本の鎖編糸との間で、各々所定コース数ずつ一対の前記縦方向集束糸に編まれるように複数ウェール数ずつ交互に振って編成するとともに、前記複数本の鎖編糸を前記束ね糸部により束ねるようにして絞り込んで前記縦方向集束糸を形成し、前記縦方向集束糸と前記挿入糸による横方向振糸部とにより矩形の目を形成することを特徴とする角目ネット編地の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−70398(P2006−70398A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256706(P2004−256706)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(594030340)福井編織株式会社 (2)
【Fターム(参考)】