説明

角膜コラーゲンの架橋のため、および眼の障害の治療のための方法およびデバイス

眼内に治療用または診断用のエネルギー(例えば、光、超音波、電離放射線(例えばX線)、振動、熱エネルギーなど)を送達するための方法およびデバイス。エネルギー放射デバイスは眼上に配置されて眼内へエネルギーを送達するために使用される。デバイスは、デバイスが眼上に配置されている間に対象者の眼瞼が開閉することを可能にするように構築されうる。該デバイスは、角膜コラーゲンの架橋、光線療法、光線力学療法、薬物の光活性化などを含む、様々なエネルギーに基づいた治療法またはエネルギーを媒介とした治療法に使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して生物学、医学、光学およびエレクトロニクスの分野に関し、より具体的には、エネルギー(例えば光、超音波、電離放射線(例えばX線)、振動、熱エネルギーなど)を、単独で、または化学物質と組み合わせて、眼に送達して所望の治療効果または診断効果をもたらすための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの眼の前面は一般に、前眼房および虹彩を覆う透明なドーム型の角膜を備えている。光は角膜を通り抜け、前眼房を満たす透明な液体を通り抜け、虹彩の開口部を通り抜け、次いで眼の水晶体を通り抜ける。角膜は、その辺縁部を除けば血管を欠いているが、多くの神経を含んでいる。角膜は、角膜の前面を潤す涙および角膜の後方側と接触する房水から、栄養素および酸素を受け取る。
【0003】
角膜は、光が眼に入るときに光を集束する助けとなる。角膜の湾曲は角膜の集光力を提供している。眼に入る光は、水晶体に達する前に角膜によって部分的に屈折せしめられる。さらに、角膜は、異物が瞳、虹彩または眼の内部を傷つけるのを防止する保護カバーとしての役割も果たす。
【0004】
角膜は、外側(前方)の上皮層、内側(後方)の内皮、および上皮層と内皮との間に位置する比較的厚い支質を有する。ボーマン層として知られる薄い滑らかな膜が、上皮層と支質の前面との間に位置している。デスメ層として知られる別の薄い膜は、支質の後面と内皮との間に位置している。ボーマン層と同様に支質も、角膜の形状を規定する頑丈なコラーゲン繊維を含有している。支質内のコラーゲン繊維は、必要とされる透明度を提供する規則的な幾何学的方式で配置構成される。
【0005】
いくつかの病理学的障害により、角膜の形状が悪い方向に変化することがある。一般に、角膜拡張症は角膜の生体力学的な弱化または不安定化によって引き起こされる。角膜拡張症は、LASIKのような屈折矯正手術の合併症として生じることがある。円錐角膜として知られるあるタイプの角膜拡張症では、角膜は薄化して形状が異常な円錐形となる。円錐角膜は比較的よく起こり、約1000人に1人発症する。現在、屈折矯正手術に起因する円錐角膜および角膜拡張症は、角膜移植の一般的な適応である。しかしながら、角膜移植には費用がかかり、相当な回復時間を必要とし、十分でないドナー組織を利用する可能性があり、術後合併症という固有のリスクを有する。したがって、上記患者において角膜移植の必要を遅延または防止することが可能ないかなる治療も非常に有益となりうる。
【0006】
角膜矯正術は、近視のような通常の障害または角膜拡張症もしくは円錐角膜のようなその他の病状に起因する屈折障害を矯正するために、角膜の外形を一時的に再成形するための特別に設計された強剛なコンタクトレンズを使用するプロセスである。通常は、矯正用の角膜矯正レンズは夜のみ装用される。場合によっては、必要とされる程度の角膜再成形を達成するため、徐々に湾曲が大きくなる一連の角膜矯正レンズが数日または数週間にわたって使用される。角膜の所望の再成形が実現された後、角膜矯正術で矯正された角膜の形状を維持するための手段が取られなければ、角膜は元の形状に戻りやすい。
【0007】
矯正された角膜の形状を維持するためにとられることのある1つの手段は、矯正された角膜の形状を維持するための特別に成形された角膜矯正レンズ(例えば「リテーナー」)を周期的に挿入かつ装用することである。既に記述のある別の手法は、角膜のコラーゲン繊維を架橋することにより角膜をその矯正された形状に「固定する」ことである。角膜矯正を伴わない角膜コラーゲン繊維の架橋も、角膜拡張症または円錐角膜のような角膜疾患の進行を防止するための手段として使用され、かつ報告されている。一般に、角膜コラーゲンの架橋は、リボフラビン(ビタミンB2)と組み合わせて紫外光線A(UVA)を施用することにより従来達成されてきた。典型的には、この処置法では、麻酔点眼剤が眼に投与されて上皮層が除去される。次いでリボフラビン点眼剤が投与される。リボフラビンは、UVAの架橋作用の増強、さらには十分量のUVAの吸収のいずれにおいても作用することにより、眼の網膜またはより深部の構造物の損傷を防止する。リボフラビンが投与された後、患者は、一定期間(例えば30分間)、体外に配置された紫外光線を見詰めなければならない。この処置法の終了時に、上皮が取り除かれた角膜の前面にソフトコンタクトレンズの性質を帯びた角膜帯具が適用される。この角膜帯具は典型的には何日間か適所に放置され、その後除去されなければならない。抗生物質および抗炎症点眼剤が典型的には該処置法の後に約2週間使用される。
【0008】
さらに、特許文献1(デボア(Devore)ら)には、軟化剤を用いて角膜を軟化させるステップと、角膜を所望の前方曲率に再成形するための型(例えば成形用コンタクトレンズ)を適用するステップと、角膜がその新しい形態を保持するように角膜組織を急速に再安定化または「固定」するステップと、を備えた角膜矯正法について記載されている。グルタル酸無水物のような化学的軟化剤が角膜を柔らかくするために角膜に適用され、その後、所定の曲率および形態の特別に設計された型が角膜に適用される。軽微な下方圧力が、角膜を再成形するための所定期間にわたって型に加えられる。紫外線源のような安定化手段が型の上方に(すなわち患者の眼と直接接触せずに)配置される間、型は定位置に維持される。紫外線が角膜組織を「再安定化する」ために所定時間にわたって角膜に適用され、その結果角膜は型を取り除いた際もその形状を保持するようになる。この安定化プロセスは、角膜の形状を維持するためにリテーナーを継続装用する必要をなくすため、既に従来の角膜矯正術を経験済みの患者に使用することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/016,731号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
より安全、より容易であり、かつ潜在的にそれほど高価ではない方法で角膜コラーゲンを架橋するための新しいデバイスおよび方法の開発が当分野において絶えず必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヒトまたは動物対象者の眼に治療用または診断用のエネルギーを送達するための方法およびデバイスであって、エネルギー放射デバイスが対象者の眼に装着され、次いで眼内に治療用または診断用のエネルギー(例えば、光、超音波、電離放射線(例えばX線)、振動、熱エネルギーなど)を送達するために使用される、方法およびデバイスを提供する。いくつかの実施形態では、該デバイスは、エネルギー放射デバイスが眼に配置されている間に対象者の眼瞼が開閉することを可能にするように構築されうる。いくつかの実施形態では、エネルギー放射デバイスは、コンタクトレンズ本体と、電源と、コンタクトレンズ本体の上または中に配置された1つ以上のエネルギーエミッタとを有する、内蔵型のエネルギー放射コンタクトレンズデバイスを含んでなることができる。他の実施形態では、デバイスは、エネルギー放射コンタクトレンズデバイスを、対象者の眼の外側に残されて無線または有線接続によりエネルギー放射コンタクトレンズデバイスに接続される電力モジュールまたは制御モジュールのうち少なくともいずれか一方のような別個の装置と、組み合わせて備えていてもよい。
【0012】
さらに本発明によれば、一般的なコンタクトレンズの方式のように角膜の前面に装着される前述の特性の発光コンタクトレンズデバイスを使用する、角膜コラーゲンを架橋する方法およびデバイスが提供される。いくつかの実施形態では、発光コンタクトレンズは、架橋光線(例えば、リボフラビンのような補助剤の付随投与の有無にかかわらず、UVA)の送達と同時に角膜に所望の力を加えるように成形されることにより、コラーゲンの架橋が起こるにつれて所望の角膜形状が達成または維持される場合もある。発光コンタクトレンズデバイスは眼に着用されるので、患者は体外に配置された発光源を見詰める必要は無く、治療の間も、歩行可能なまま、かつ/または診療所や医療施設の外にいるままでよい。さらに、本発明の少なくとも一部の実施形態では、上皮層を除去する必要が最小限となるかまたは完全に回避されることにより、角膜帯具の適用およびその後の除去の必要もなくなる可能性がある。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、発光コンタクトレンズデバイスであって、コンタクトレンズ本体と、電源と、該デバイスが配置される角膜の中へコラーゲンを架橋する光を放射するための少なくとも1つの光エミッタとを含んでなるデバイスが提供される。
【0014】
さらに本発明によれば、ヒトまたは動物対象者の眼内で角膜コラーゲンを架橋するための方法であって、a)対象者の眼に、発光デバイスであって該発光デバイスが眼に配置されている間に対象者の眼瞼が開閉することを可能にするデバイスを、装着するステップと、b)発光デバイスに、眼の角膜の中へコラーゲンを架橋する光を放射させることにより、その角膜内部でコラーゲンを架橋させるステップと、を含んでなる方法が提供される。リボフラビンのような、光吸収剤もしくは光防護剤のうち少なくともいずれか一方、またはコラーゲンの所望の架橋を促進するその他の作用薬が、コラーゲンを架橋する光の放射に先立ち、または放射と同時に、投与されてもよい。任意選択で、眼に発光デバイスを装着する前に、上皮層の一部または全部が既知の技法によって(物理的または化学的に)除去または破壊されてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、角膜の前面に発光デバイスがあることにより、上皮層が十分に透過性となって、事前の上皮層の除去または破壊を必要とすることなく、有効な量の、リボフラビンのような光吸収剤もしくは光防護剤のうち少なくともいずれか一方が角膜に入ることが可能となろう。この点では、該デバイスの眼と接触する内部表面は、上皮層の所望の破壊または透過性増大を引き起こすように構成されてもよいし、リボフラビンのような、光吸収剤もしくは光防護剤のうち少なくともいずれか一方でコーティングされるかまたは同剤が装荷されて、同剤が該デバイスからその下にある角膜組織内へと直接溶出するかまたは適用されるようになっていてもよい。
【0015】
さらになお本発明によれば、本明細書中に記載される発光デバイスおよび方法は、角膜矯正術による角膜の再成形の有無にかかわらず使用可能である。例えば、単に角膜の現在の形状を(例えば角膜拡張症または円錐角膜のような疾患の初期の進行を停止または遅延させるために)維持することが望まれる場合、本発明の発光デバイスは、事前または同時進行の角膜矯正術による角膜の再成形を伴うことなく、角膜コラーゲンの架橋を達成するために使用されうる。その他の場合、例えば眼の屈折障害を矯正することが望まれる場合は、角膜矯正術による角膜の再成形は、角膜コラーゲンの架橋を行うための本発明の発光デバイスの使用に先行して行われてもよいし、同時に行われてもよい。この点では、本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態は、コラーゲン架橋プロセスの間に治療的に改変された角膜の形状をもたらすかまたは維持するため、角膜に所望の力を加えるように特別に成形されてもよい。
【0016】
さらになお本発明によれば、本発明の発光デバイスは、それ自体が治療的(例えば、抗微生物性−抗生、抗ウイルス性、抗寄生虫性(antiparacytic)、抗真菌性、殺微生物性、殺細菌性、殺真菌性、殺胞子性、消毒性、など)である光エネルギーを送達するため、または、光線力学療法もしくは光感作におけるように、投与される作用薬と組み合わせて光活性化療法を行うため、のうち少なくともいずれか一方のために使用されてもよい。一般に、光感作は、光活性化合物が投与されて標的細胞に選択的に蓄積する治療である。その後、光エネルギー(例えば可視光線)が標的細胞に施用される。光活性化合物と光との相互作用は、酸素の存在下において、標的微生物を局所的に破壊するいくつかの細胞傷害性反応をもたらす。光感作は抗微生物剤の使用の潜在的な代替となりうる。この目的に使用されうる光感作物質の例には、テトラピロール核を有する化合物、例えばポルフィリン、クロリン(chlorine)、バクテリオクロリン、フタロシアニンおよびテキサフィリンが挙げられる。光感作物質ならびに適切な投与および使用方法のさらなる例は、ハンブリン(Hamblin)、M.R.ら、「光線力学療法:感染症への新たな抗微生物的アプローチ?(Photodynamic therapy: a new antimicrobial approach to infectious disease?)」、フォトケミカル・アンド・フォトバイオロジカル・サイエンシズ(Photochem. Photobiol. Sci.)、2004年、第2巻、p.436−450、およびジョリ(Jori)、G、「微生物感染症の光線力学療法:技術的現状と展望(Photodynamic Therapy of Microbial Infections: State of the Art and Perspectives)」、ジャーナル・オブ・エンバイロメンタル・パトロジー・トキシコロジー・アンド・オンコロジー(Journal of Environmental Pathology, Toxicology, and Oncology)、2006年、第25巻、第1−2号、p.505−519、に記載されている。コラーゲン架橋剤の使用に関して上記に説明されるように、光線力学療法(例えば光感作)を達成するために光感作物質またはその他の作用薬と組み合わせて本発明の発光デバイスが使用される場合には、上皮層の一部または全部が光感作物質の分布を促進するために既知技法により(物理的または化学的に)除去または破壊されてもよい。これらの事例のうち一部においては、角膜の前面に発光デバイスがあることにより、上皮層は、上皮層の事前の除去または破壊を必要とせずに有効な量の光感作物質またはその他の光線力学療法剤が角膜に入るのを可能にする、十分な透過性となるであろう。この点では、眼と接触する該デバイスの内部表面は、上皮層の所望の破壊もしくは透過性増大を引き起こすように構成されてもよいし、かつ/または、光感作物質もしくはその他の光線力学療法剤がデバイスからその下にある角膜組織中へと溶出するかもしくは送達されるように、光感作物質もしくはその他の光線力学療法剤を用いたコーティングもしくは装荷がなされてもよい。
【0017】
さらになお本発明によれば、本発明のエネルギー放射コンタクトレンズデバイスが対象者の眼に配置されて診断目的でエネルギーを送達するために使用され、次いで様々な感知装置が、眼表面および眼内のさらに深部での画像化およびその他の診断的用途のために眼内へ放射されたエネルギーに起因する変数を画像化または感知する(例えば、後方散乱光、誘起自己蛍光、組込まれた外因色素の蛍光の測定)ために使用される、方法およびシステムが提供される。
【0018】
本発明のさらに別の態様および詳細は、本明細書中にて以下に述べる詳細な説明および実施例を読めば理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ヒトの眼の前方部分の冠状断面図。
【図1A】眼の角膜の様々な組織学的な層を示す、図1の領域1Aの拡大図。
【図2A】本発明のエネルギー放射コンタクトレンズデバイスの一実施形態の側面斜視図。
【図2B】図2Aのデバイスの平面図。
【図3】エネルギー放射コンタクトレンズデバイスの別の実施形態を、無線接続により該コンタクトレンズデバイス上の回路構成に接続される電源と組み合わせて含んでなる、本発明のシステムを示す概略図。
【図4】エネルギー放射コンタクトレンズデバイスの別の実施形態を、配線接続により該コンタクトレンズデバイス上の回路構成に接続される電源と組み合わせて含んでなる、本発明のシステムを示す概略図。
【図5A】角膜が角膜矯正術のような他の手段によって再成形された後で角膜コラーゲンの架橋を行うために本発明の発光デバイスが使用される、1つの方法のステップを示す流れ図。
【図5B】他の手段による角膜の事前の再成形を伴うことなく角膜コラーゲンの架橋および角膜の再成形を行うために本発明の発光デバイスが使用される、別の方法のステップを示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の詳細な説明および実施例は、本発明の実施例または実施形態のうち必ずしも全部ではないにせよ一部について非網羅的に記載する目的で提供されるものであり、本発明の範囲をどのようにも限定しないものとする。
【0021】
以下の詳細な説明および該説明が参照する添付図面は、本発明の実施例または実施形態のうち必ずしも全部ではないにせよ一部について説明するように意図されている。記載された実施形態は、あらゆる点において単に例証であって限定的ではないものとみなされるべきものである。この詳細な説明の内容および添付図面は、本発明の範囲をどのようにも限定しない。
【0022】
図1に示されるように、ヒトの眼Eの前面は概して角膜C、前眼房AC、虹彩I、および水晶体Lを備えている。透明なドーム型の角膜Cは虹彩Iを覆っている。
角膜Cの様々な層は図1Aの断面図に示されている。図のように、角膜Cは外側(前方)の上皮層EL、内側(後方)の内皮EN、および上皮層ELと内皮ENとの間の比較的厚い支質Sを有する。膜質のボーマン層BLが上皮層ELと支質Sとの間に存在する。デスメ層DLは支質Sと内皮ENとの間に存在する薄い基底膜である。支質Sおよびボーマン層BLの中に存在するコラーゲン繊維は角膜Cの形状を実質的に規定している。支質S内部のコラーゲン繊維は、必要とされる透明性を提供する規則的で幾何学的な方式で配置構成されている。内皮ENおよびデスメ層DLは角膜Cの流体含量の調整において役割を果たしている(play a roll)。内皮細胞が外傷または疾患により失われた場合、空いた空間を満たすために他の既存の内皮細胞が肥大または拡大するが、新たな内皮細胞は生じない。あまりにも多数の内皮細胞が最終的に失われた場合、内皮層の流体調整機能が損なわれて、浮腫すなわち角膜内部の流体過剰および結果として生じる視力障害、表面変化および疼痛を引き起こす。
【0023】
図2Aおよび2Bは、本発明の発光コンタクトレンズデバイス10の比較的基礎的な実施形態を示す。このデバイス10は、直径Dの開放底部を有する凹面レンズ本体12を含んでなる。レンズ本体12の上または中に配置されるのは1つ以上の電源14ならびに1つ以上の光エミッタ16aおよび16bである。光エミッタ16a、16bは電源14に接続されて該電源から電力を受け取る。光エミッタ16a、16bは、エネルギーを与えられると、レンズ本体12の下側へ向かって光を放射し、その結果放射された光はデバイス10が配置されている眼Eの角膜Cに入るようになっている。図2Aおよび2Bに示された特定の実施例では、2つの(2)光エミッタがある。しかし、当然ながら、単一の光エミッタまたは任意の他の複数の光エミッタが使用されてもよい。
【0024】
電源14の特定の数、種類、サイズおよび配置は、デバイス10の意図される適用および用途に基づいて選択されうる。例えば、電源14は、薄膜電池(例えば「マイクロバッテリー」)または小さなボタン型電池のような、意図された時間にわたって光源16a、16bに電力を供給するための適切なサイズ、耐用年数および出力の任意のバッテリーを含んでなることができる。本発明の少なくともいくつかの実施形態において使用可能な薄膜電池の例には、必ずしも限定されるものではないが、「極薄電解質を有する薄膜電池(Thin−Film Battery Having Ultra−Thin Electrolyte)」と表題がつけられた米国特許第7,144,655号明細書(ジェンソン(Jenson)ら):「リチウム二次電池およびその調製方法のための陽極薄膜(Thin Film For Lithium Secondary Battery And Preparation Method Thereof)」と表題がつけられた米国特許第7,052,801号明細書(パーク(Park)ら)、および「補聴器用の小型充電式薄膜電池システム(Compact Rechargeable Thin Film Battery System For Hearing Aid)」と表題がつけられた米国特許出願公開第2009/0010462号明細書(エキアン(Ekchian)ら)に記載されたものがあり、個々のそのような特許および公開特許出願の全開示内容は参照により明示的に本願に援用される。別例として、電源は、外部バッテリー、他のマイクロバッテリー、ソーラーサーキット、細素線を介して接続された外部高周波デバイス、磁気キャパシタ、発熱を伴う化学反応を介して電力を生じる化学物質、および動力学的システム(自動巻き式腕時計で使用されるものなど)を含んでなることができる。電源の全体または一部がコンタクトレンズ本体12から離れて設置される代替実施形態では、電源は、任意の適切な有線または無線手段(その具体例は図3および4に示され、かつ後述される)によってコンタクトレンズ本体12の上または中の回路構成に接続されうる。そのような代替電源の別例は、コンタクトレンズから対象者の身体の外側の場所へと光が届くコンタクトレンズシステムについて述べている「内蔵発光コンポーネントを備えたコンタクトレンズ(Contact Lens with Integrated Light Emitting Component)」と表題がつけられた米国特許出願公開第2010/0001926号明細書(アミルパルビズ(Amirparviz)ら)に記載されており、同文献の全開示内容は参照により明示的に本願に援用される。
【0025】
さらに、1つ以上の光エミッタ16a、16bの特定の数、種類、サイズおよび配置も、デバイス10の意図される適用および用途に基づいて選択されうる。例えば、角膜コラーゲンの架橋に用いるように意図されたデバイスの実施形態では、光エミッタは1つ以上の発光ダイオード(LED)、マイクロLED、レーザダイオード、発光チップ、発光半導体、マイクロチップレーザなどを含んでなることができる。コラーゲン架橋がリボフラビンを用いて行なわれる実施形態では、光エミッタは紫外光線Aまたは青色光を放射することが好ましいであろう。いくつかの実施形態では、光エミッタ16a、16bは、約360〜約370ナノメートル、好ましくは約365nmの光を、約3mW/cmの強度で少なくとも約30分間放射しうるが、そのような時間は必要に応じてさらに長くても短くてもよい。別例として、またはより具体的には、リボフラビンと併用してコラーゲンを架橋するために、1つ以上の光エミッタ16a、16bは、対応する放射照度を約3mW/cm2として約5.4mJ/cmの紫外光線Aを放射してもよい。別例として、またはより具体的には、1つ以上の光エミッタは、デバイス10から角膜Cの中への、1つ以上の小型の光エミッタ、例えば発光ダイオード(LED)、マイクロLED、発光チップ、発光半導体、マイクロチップレーザ、その他のUVAもしくは青色光のエミッタ、または任意のコラーゲンを架橋する光のエミッタを含んでなることができる。
【0026】
マイクロLEDの例は米国特許第6,410,940号明細書に記載されており、同文献の全開示内容は参照により明示的に援用される。これらのマイクロLEDのアレイは、典型的な数十mAの電流レベルでは低いDC電圧(数ボルト)しか必要としない。個々のマイクロLEDは標準LEDより典型的には数百倍小さく、したがって、単数のマイクロLEDであれマイクロLEDのアレイであれ、角膜Cへの配光を最適化するためにレンズ本体12の中または上の戦略的な位置に設置可能である。実施例は、カンザス大学によって開発中の青色マイクロLEDをさらに含み、かつ、「紫外線および深紫外線発光ダイオードの封止およびパッケージング(Encapsulation And Packaging Of Ultraviolet And Deep−Ultraviolet Light Emitting Diodes)」と表題がつけられた米国特許出願公開第2006/0138443号明細書(ファン(Fan)ら)、ならびに「マイクロLEDに基づいた高圧AC/DCインジケータランプ(Micro−LED Based High Voltage AC/DC Indicator Lamp)」と表題がつけられた米国特許出願公開第2006/0169993号明細書(ファン(Fan)ら)に記載された技術を組み入れてもよいし、同技術により製造されてもよく、前記文献の全開示内容は参照により本願に明示的に援用される。
【0027】
デバイス10の回路構成は、ユーザが使用時に光エミッタ16a、16bにエネルギーを与えることを可能にする適切な切替装置を組込むことになろう。この目的のためにデバイス10に組み入れ可能な1つの種類の切替装置は、絶縁材の薄板(例えば半硬質プラスチックのストリップ)であって、当初はデバイスの回路内の断続器接点の間に挿入されることにより該断続器接点を離れているように保持し、かつ該ストリップが除去される(例えば、引き抜かれる)ときまで電源14を光エミッタ16a、16bから絶縁する、薄板である。このように、ユーザは、絶縁ストリップを単純に引き抜くことにより使用直前にデバイス10に電力を供給することができる。
【0028】
この実施例では、電源14、光エミッタ16a、16b、および関連する回路構成(例えば、電源14を光エミッタ16a、16bおよびオンオフ切替装置に接続する電気伝達性材料の細素線またはストリップ)は、任意の適切な方法でコンタクトレンズ本体12の上または中に取り付け可能である。いくつかの実施形態、例えばデバイス10が角膜Cに形状改変力または保形力を加えることが望まれる実施形態では、コンタクトレンズ本体12は、既知またはコンタクトレンズの構築に適切な種類の剛性材料または気体透過性の剛性材料から形成されうる。そのような材料の例にはポリメタクリル酸メチルが挙げられる。他の実施形態、例えばデバイス10が、角膜Cに形状改変力または保形力を加えることなく、光に基づいた抗微生物性(例えば抗生、抗ウイルス性、抗寄生虫性(antiparacytic)、抗真菌性、殺微生物性、殺細菌性、殺真菌性、殺胞子性、消毒性、などの)作用、コラーゲン架橋、光感作または光線力学療法を達成するために角膜Cに光を投じるために使用されている実施形態では、コンタクトレンズ本体12は、既知またはソフトコンタクトレンズの構築に適切な種類の軟質材料から形成されうる。そのような材料の例にはヒドロゲルおよびシリコーンヒドロゲルが挙げられる。
【0029】
デバイス10が眼上に配置されている間に対象者の眼瞼がデバイス10の上で開閉することが望ましいので、一般に、デバイス10の前面および後面は比較的滑らかであることが望ましい。これを達成する1つの方法は、コンタクトレンズ本体12を最初に2個の部品に、すなわち前部または蓋部および後部または底部として形成することであろう。その後、電源14、光エミッタ16a、16b、および関連する回路構成(例えば、電源14を光エミッタ16a、16bおよびオンオフ切替装置に接続する電気伝達性材料の細素線またはストリップ)は、レンズ本体12の蓋部と底部との間に適切な状態に設置可能であり、次いで該蓋部および底部がともに融合されることにより、電源14、光エミッタ16a、16b、および関連する回路構成(例えば、電源14を光エミッタ16a、16bおよびオンオフ切替装置に接続する電気伝達性材料の細素線またはストリップ)が融合された上部部分と下部部分との間に取り込まれた、単一体のレンズ本体12が形成される。オンオフ切替器として使用されるべき任意の着脱可能な絶縁体ストリップが、融合されたコンタクトレンズ本体の一端から突出していて、必要な時にデバイスにエネルギーを与えるために該ストリップが容易に除去可能となっていてもよい。
【0030】
デバイス10を構築するための別例の材料、手段、コンポーネント、および埋め込み型/食刻型回路モールドは、コンタクトレンズから対象者の身体の外側の位置へと光が届くコンタクトレンズシステムについて述べている、「内蔵発光コンポーネントを備えたコンタクトレンズ(Contact Lens with Integrated Light Emitting Component)」と表題がつけられた米国特許出願公開第2010/0001926号明細書(アミルパルビズ(Amirparviz)ら)に記載されており、同文献の全開示内容は参照により明示的に本願に援用される。デバイス10はさらに、別例として、コンタクトレンズ本体の上面にコンポーネント14、16a、16bを取り付けることにより構築されることも考えられ、特に、該コンポーネントは、眼瞼がデバイス上で開閉するのを可能にするのに十分に平たい、すなわち薄型である。
【0031】
図3および4は、対象者の眼の外側にあって無線接続または配線接続によりコンタクトレンズの上または中の回路構成と通信するコンポーネント(例えば電源またはコントローラのうち少なくともいずれか)と組み合わせた本発明のエネルギー放射コンタクトレンズデバイスの代替実施形態を示す。
【0032】
具体的には、図3は、エネルギー放射コンタクトレンズデバイス104と組み合わせて高周波コントローラ102を含んでなる無線システム100の実施形態を示す。この実施例では、エネルギー放射コンタクトレンズデバイス104は上述のようなコンタクトレンズ本体106を含んでなる。コンタクトレンズ本体106の上または中に配置されるのは回路構成であって、例えば、電力モジュール108、アンテナ110、ツェナーダイオード112、抵抗器114、116、および、所望のエネルギーをコンタクトレンズ本体106の下面を通して下向きにかつコンタクトレンズデバイス104が配置された眼の中へ放射するレーザダイオード106、を含んでなるレーザ加工回路または食刻回路である。コントローラ120は、エネルギーを与えられると、該コントローラのアンテナ120からコンタクトレンズ回路構成のアンテナ110へと高周波シグナルまたはその他の適切なエネルギーシグナルを送信する。これにより電力モジュール108が起動され、次いで電力モジュールはレーザダイオード118から眼内へのエネルギーの放射をもたらす。
【0033】
図4は、エネルギー放射コンタクトレンズデバイス204と組み合わせて、電源オン/オフ切替器、電源オン/オフ表示灯、レーザ使用切替器、タイマーおよび治療中表示灯を有するコントローラ202を含んでなる、配線型システム200の実施形態を示す。この実施例では、エネルギー放射コンタクトレンズデバイス204は上述のようなコンタクトレンズ本体206を含んでなる。コンタクトレンズ本体206の上または中に配置されるのは回路構成であって、例えば、ツェナーダイオード210、抵抗器214、216、および所望のエネルギーをコンタクトレンズ本体206の下面を通して下向きにかつコンタクトレンズデバイス204が配置された眼の中へ放射するレーザダイオード218、を含んでなるレーザ加工回路または食刻回路である。細素線208は、エネルギー放射コンタクトレンズデバイス204の片側から伸びてコンタクトレンズ本体206の上または中の回路構成をコントローラ202に接続する。コントローラ202は素線208を介してコンタクトレンズ本体206の上または中の回路構成に電力を送る。これにより、レーザダイオード118から眼内へのエネルギーの放射が引き起こされる。細素線208は、治療中に眼の片側から出て伸びるのに十分に小さな直径であることにより、治療中に対象者の眼瞼が開閉することを可能にしている。
【0034】
図3および4に示されたデバイス100、200の回路のレイアウトおよび電子部品は市販で入手可能であるが、注文仕様であってもよい。市販で入手可能な発光レーザダイオードを使用して任意の所望の種類の光(例えば赤色、白色、緑色、青色、UV、UVAなど)を送達することができる。レーザダイオードは、日本国鳥取市の三洋電機株式会社および日本国東京都のソニー株式会社などの様々な供給元から市販で入手可能である。いくつかの実施形態では、小型で平たい構造を有するレーザダイオードは、装用者の快適さのために、かつ可能な場合には対象者の眼がデバイス装用時に開閉することを可能にするために、使用されうる。例えば、ヘイラー、ランディー A(Heyler, Randy A)ら、「薄型フラットパック:低コストで高信頼性の適用のための高出力ファイバーカップルレーザダイオードパッケージ(Low−Profile Flat Pack: A High−Power Fiber Coupled Laser Diode Package for Low−Cost High−Reliability Applications)」、プロシーディングス・オブ・SPIE(Proc. SPIE)、2004年、第5358巻、p.29を参照のこと。
【0035】
図5Aおよび5Bは、本発明の発光コンタクトレンズデバイス10が角膜コラーゲンの架橋に使用される方法の2つの非限定的な例を概説する流れ図である。図3Aの方法では、デバイス10は対象者の角膜が角膜矯正術(またはその他の適切な術式)によって再成形された後に使用される。図3Bの方法では、デバイス10は角膜矯正術または任意の他の角膜再成形術による対象者の角膜の事前の再成形を伴わずに使用される。
【0036】
図5Aまたは5Bの方法のいずれにおいても、角膜Cの上皮層ELを除去または破壊して、その後の有効量のリボフラビンまたは他の作用薬の角膜Cまたは前眼房ACのうち少なくともいずれか一方への分布を促進することが、望ましい場合もあれば臨床的に必要とされる場合もある。当業者には理解されるように、これは様々な方法で達成することができる。例えば、上皮層ELは、約20%の濃度のアルコール溶液を使用して化学的に除去されてもよいし、スポンジでこすったりきさげ加工具で削ったりすることにより物理的に切除されてもよいし、メスを用いた切断や任意の他の既知技法により切開または破壊されてもよい。臨床医が切除を選択する場合、上皮層は典型的には直径約4〜9mm、好ましくは約5〜8mm、最も好ましくは約5〜6mmの区域から除去されうる。別例として、垂直方向および水平方向の切込み、例えばメスによる切込みが上皮層内に作られてもよい。投与されたリボフラビンのような架橋剤が角膜全体にわたって拡散するのを助けるために、幅が約1mmおよび長さ4〜5mmの、2以上、例えば3個の垂直スリットおよび1以上の水平スリットが上皮層に作られてもよい。さらに、上述のように、デバイス10自体が上皮の破壊を引き起こすかまたは上皮層ELに小さな切込みを形成するように設計されることにより、処置前の上皮層ELの除去または破壊の必要が排除されてもよい。図3Aの処置法では、該処置法の角膜矯正術の段階が完了した後で、何らかの任意選択の上皮層ELの除去または破壊が一般に行なわれることになろう。
【0037】
特に図5Aの処置法に関しては、角膜矯正術または任意の他の適切な角膜再成形術は当分野で既知の技術を使用して行なわれる。典型的には、標準的な角膜矯正術を用いて、特殊コンタクトレンズが角膜形状の所望の改変を達成するために数週間にわたり夜間に機能する。伝導性角膜形成術として知られる、角膜矯正術の代替法では、コラーゲンを選択的に縮小させて角膜の形状を変化させるために、選択区域の角膜内へ加熱金属プローブが挿入される。角膜矯正術と同様に、伝導性角膜形成術に起因する角膜形状の変化は無期限には続かず、数か月から数年にわたって退行する可能性がある。一部の角膜矯正術の場合、酵素またはその他の組成物のような角膜の軟化剤または不安定化剤が角膜の再成形を支援または加速するために使用されうるが、その例は、「酵素−角膜矯正術(Enzyme−Orthokeratology)」と表題が付けられた米国特許第5,626,865号明細書(ハリス(Harris)ら)、および米国特許出願公開第2001,0016731号明細書(デボア(Devore)ら)に記載されており、前記文献の全開示内容は参照により明示的に本願に援用される。しかし、当然のことであるが、本発明は、限定するものではないが、角膜の軟化剤または不安定化剤が使用されない方法を明らかに含んでいる。
【0038】
図5Aの方法において角膜再成形および何らかの任意選択の上皮層ELの除去または破壊が完了した後、ならびに図5Bの方法において何らかの任意選択の上皮層ELの除去または破壊の後に、光吸収物質(photoabsorbing substance)のような架橋剤が眼に局所投与される。そのような作用剤はリボフラビン溶液を含んでなるものであってよい。本発明の発光デバイスと併せて使用するのに適した1つの特定の局所用リボフラビン製剤は、「長期にわたるCKRのための併用療法(Combination Therapy For Long−Lasting CKR)」と表題をつけられた米国特許出願公開第2009/0171305号明細書(エルハージェ(El Hage))に記載されており、前記文献の全開示内容は明示的に本願に援用される。この溶液はデキストランおよびリボフラビンを含んでなる。例えば、無菌の0.1%リボフラビン水溶液は、10mgのリボフラビン−5−リン酸を10mLの20%デキストラン−T−500溶液中に溶解することにより調製されうる。その後、この溶液は、リボフラビンが眼の前眼房ACに達するのに十分な時間(例えば10〜15分以上)、対象者の眼Eに局所投与されうる。望ましい場合には、眼科医またはその他の訓練された観察者が、リボフラビンが眼の前眼房ACにいつ分布したかを細隙灯検査によって確認してもよい。いくつかの実施形態では、該架橋剤は、方法の個別のステップにおいて随意に投与されるのではなく、本発明の発光デバイス10の中または上にコーティングまたは配置されて、デバイス10が眼に装着された後に架橋剤がデバイス10から角膜Cへ送達されるようになっている。
【0039】
図3Aおよび3Bの方法のいずれにおいても、発光デバイス10は眼に装着され、角膜コラーゲンの所望の架橋度を達成するのに十分な期間、角膜Cにコラーゲン架橋光を送達するために使用される。これは、青色LED光(例えば青色マイクロLEDからの光)、または360〜約370ナノメートル、好ましくは約365nmのUVA光を、約3mW/cmの強度で少なくとも約30分間送達することを含んでなることができるが、そのような期間は必要に応じてより長くても短くてもよい。別例として、またはより具体的には、リボフラビンと併用してコラーゲンを架橋するために、1以上の光エミッタ16a、16bは、対応する放射照度を約3mW/cmとして約5.4mJ/cmのUVA光を放射することができる。デバイス10は、対象者の眼がデバイス10の上で開閉することを可能にするように内蔵および構築されるので、本方法のこのステップは、対象者が歩行可能であるか、または診療所もしくは医療施設から遠方にいるかのうち少なくともいずれかである間も少なくとも時々は実施可能である。コンタクトレンズ本体12は、デバイス10が使用されている間に対象者が比較的正常な視覚を有することを可能にするために、十分に透明であるとよい。
【0040】
図3Aおよび3Bの方法のいずれにおいても、所望の程度のコラーゲン架橋が達成された後、デバイス10は眼から取り除かれて廃棄される。
当然のことであるが、本発明について本発明の一定の実施例または実施形態に関して上記に説明してきたが、それらの実施例および実施形態に対して、本発明の意図された趣旨および範囲から逸脱することなく様々な追加、削除、変更および改変がなされうる。例えば、1つの実施形態または実施例のいかなる要素または属性も、別の実施形態または実施例に組み入れたり別の実施形態または実施例と併用したりすることが該実施形態または実施例の意図された用途に不適当となる場合の特別の定めのないかぎり、別の実施形態または実施例に組み入れたり別の実施形態または実施例と併用したりすることができる。さらに、方法またはプロセスのステップが特定の順序で記載または列挙された場合、そのようなステップの順序は、特別の定めのない限り、または順序の変更が該方法またはプロセスをその意図された目的について実施不可能とするのでないかぎり、変更可能である。適切な追加、削除、改変および変更はすべて記載された実施例および実施形態の等価物とみなされるべきであり、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物対象者の眼に治療用または診断用のエネルギーを送達するための方法であって、前記方法は、
a)対象者の眼に、エネルギー放射デバイスであって該エネルギー放射デバイスが眼に配置されている間にその眼の眼瞼が開閉することを可能にするデバイス、を装着するステップと、
b)該発光デバイスに、治療用または診断用のエネルギーを眼内に送達させるステップと
からなる方法。
【請求項2】
エネルギー放射デバイスは、光、超音波、電離放射線、X線、振動および熱からなる群から選択されるエネルギーを放射する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デバイスは対象者の眼の角膜内へ光を放射する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
角膜に入る光は光抗微生物作用を引き起こす、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
デバイスは角膜コラーゲンの架橋を促進するために眼の角膜内にエネルギーを放射する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
デバイスは角膜コラーゲンの架橋を促進するために眼の角膜内に光を放射する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
デバイスから放射される光との組み合わせで角膜コラーゲンの所望の架橋をもたらす作用薬を眼に投与するステップをさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
作用薬はリボフラビンを含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
デバイスはレンズ本体と少なくとも1つの光エミッタとを含んでなる、請求項7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
デバイスは青色光または紫外光線を放射する、請求項7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
デバイスは紫外光線Aを放射する、請求項7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
紫外光線Aは対応する放射照度を約3mW/cm2とした約5.4mJ/cmである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
デバイスは約360〜約370ナノメートルの波長を有する光を放射する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
デバイスは約365nmの波長を有する光を放射する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
デバイスは約3mW/cmの強度を有する光を所望の期間放射する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
光は少なくとも約30分間角膜内に送達される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
デバイスは、発光ダイオード(LED)、マイクロ発光ダイオード(マイクロLED)、レーザダイオード、青色マイクロLED、発光チップ、発光半導体、マイクロチップレーザおよびその他のUVA光または青色光のエミッタからなる群から選択された種類の光エミッタを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
作用薬は角膜に局所施用される、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
作用薬は当初はデバイス上またはデバイス内にあり、その後デバイスから眼内へと送達される、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
眼の角膜上の上皮層の少なくとも一部を除去または破壊するステップをさらに含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
上皮層の少なくとも一部はデバイスの眼への装着の前に除去または破壊される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
上皮層の少なくとも一部はデバイスが眼に装着された後で該デバイスにより除去または破壊される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
大量の作用薬がデバイス上またはデバイス内にあり、該デバイスによって眼に送達される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
作用薬は光感作物質であり、該光感作物質の中にデバイスが該光感作物質と相互作用する光を送達して眼内に光線力学療法をもたらす、請求項7に記載の方法。
【請求項25】
光感作物質は、テトラピロール核を有する化合物、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、フタロシアニンおよびテキサフィリンからなる群から選択される少なくとも1つの作用薬を含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
光線力学療法は抗微生物作用をもたらす、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
角膜の形状はデバイスが眼に装着される前に改変される、請求項5に記載の方法。
【請求項28】
角膜の形状はデバイスが眼に装着される前に角膜矯正術によって改変される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
角膜の形状はデバイスが眼に装着される前に改変されない、請求項5に記載の方法。
【請求項30】
デバイスは、角膜コラーゲンが架橋されるにつれて所望の角膜形状を誘導または維持するために角膜に力を加えるように構築される、請求項5に記載の方法。
【請求項31】
角膜の軟化剤または不安定化剤が角膜の再成形を促進するために使用される、請求項27または30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
角膜の軟化剤または不安定化剤が角膜の再成形を促進するために使用されない、請求項27または30のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
ヒトまたは動物対象者の眼に治療用または診断用のエネルギーを送達するための送達用デバイスであって、前記デバイスは、
上方面および下方面を有するコンタクトレンズ本体と、
該コンタクトレンズ本体の上または中にあって、コンタクトレンズ本体の下方面を通して治療用または診断用のエネルギーを放射し、該エネルギーが、コンタクトレンズ本体が装着されたヒトまたは動物対象者の眼に入るように配置された、少なくとも1つのエネルギーエミッタと
を含んでなるデバイス。
【請求項34】
該デバイスは、デバイスが眼に配置されている間に対象者の眼の眼瞼が開閉することを可能にするように構成される、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
少なくとも1つのエネルギーエミッタは少なくとも1つの光エミッタを含んでなる、請求項31に記載のデバイス。
【請求項36】
少なくとも1つの光エミッタは青色光またはUVA光を放射する、請求項33に記載のデバイス。
【請求項37】
少なくとも1つの光エミッタは、発光ダイオード(LED)、マイクロ発光ダイオード(マイクロLED)、レーザダイオード、青色マイクロLED、発光チップ、発光半導体、マイクロチップレーザおよびその他のUVA光または青色光のエミッタからなる群から選択される、請求項33に記載のデバイス。
【請求項38】
コンタクトレンズ本体の上または中に設置された電源をさらに含んでなる、請求項33に記載のデバイス。
【請求項39】
対象者の眼の外側に残って無線接続または有線接続によりデバイスと通信するコントローラをさらに含んでなる、請求項33に記載のデバイス。
【請求項40】
コントローラはエネルギーエミッタにエネルギーを与えるためにデバイスに電力を送達する、請求項39に記載のデバイス。
【請求項41】
デバイスの上または中に設けられた作用薬をさらに含んでなり、デバイスが対象者の眼に配置されると、治療上または診断上有効な量の該作用薬が該デバイスから対象者の眼へと溶出するかまたは該デバイスにより対象者の眼へ送達されるようになっている、請求項33に記載のデバイス。
【請求項42】
作用薬は、コラーゲン架橋剤、光吸収剤、光感作物質、光活性化薬物、その他の薬物、診断薬および蛍光色素からなる群から選択される、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
作用薬はリボフラビンを含んでなり、デバイスはリボフラビンと相互作用する光を放射してデバイスが配置された眼の角膜内のコラーゲンの架橋を引き起こす、請求項41に記載のデバイス。
【請求項44】
デバイスは、角膜内への作用薬の分布を促進するために、該デバイスが配置される眼の角膜の角膜上皮層の少なくとも一部を破壊または除去するように構成される、請求項31または43に記載のデバイス。
【請求項45】
ヒトまたは動物対象者の眼に、該対象者の眼に配置された発光デバイスから眼内への光の放射と併用して投与するための組成物の製造における、光吸収剤、光感作物質および光活性化薬物からなる群から選択される作用薬の使用。
【請求項46】
作用薬は、放射された光との併用で角膜コラーゲンの架橋を引き起こす光吸収剤である、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
作用薬はリボフラビンを含んでなる、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
作用薬は、放射された光との併用で眼において光線力学療法的作用を引き起こす光感作物質である、請求項45に記載の使用。
【請求項49】
光感作物質は、テトラピロール核を有する化合物、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、フタロシアニンおよびテキサフィリンからなる群から選択される、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
光線力学作用は光線力学的抗微生物作用である、請求項48または49に記載の使用。

【図1】
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【図1A】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2013−518672(P2013−518672A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552043(P2012−552043)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023401
【国際公開番号】WO2011/094758
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512201731)モンテフィオーレ メディカル センター (1)
【氏名又は名称原語表記】MONTEFIORE MEDICAL CENTER
【Fターム(参考)】