説明

角膜障害治療剤

本発明は、角膜の術後の角膜知覚回復やドライアイの症状を改善する新しいタイプの医薬を提供する。ソマトスタチン受容体作動薬の適用は、白内障手術後、LASIK手術後、神経麻痺性角膜症、角膜潰瘍、糖尿病性角膜症などの角膜神経変性に伴う角膜知覚低下、ドライアイ症状の改善に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明はソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜神経軸索伸展促進剤、および角膜神経軸索伸展による角膜知覚の回復、改善、並びにドライアイ及び角膜上皮欠損の治療剤に関する。
【背景技術】
レーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)、レーザー角膜切削形成術(レーシック;LASIK)、角膜移植などの角膜手術後には、角膜神経が切断されるため、通常約3週間から1年間角膜知覚機能の低下症状が起きるといわれている。そしてこの角膜知覚機能の低下から角膜手術後の患者では瞬目回数が減少しドライアイの症状が認められることが問題となっている。また、ドライアイ患者では、涙液機能の低下から角膜知覚の低下をもたらし、さらにこの角膜知覚の低下がさらなる涙液機能の低下と循環し、角膜表面の症状がさらに悪化することが問題となっている。しかし、現在角膜手術後の角膜知覚の回復は自然回復に委ねられ、またドライアイの治療においても角膜知覚を回復させるための積極的治療は施されていないのが現状である。
一方、ソマトスタチン(somatostatin)は、成長ホルモン放出抑制因子(somatotropin release inhibiting factor;SRIF)として、1973年に視床下部から単離されたペプチドで、現在までに、5個のサブタイプのソマトスタチン受容体が見出されており、それぞれSSTR1、SSTR2、SSTR3、SSTR4およびSSTR5と命名されている。ソマトスタチンは成長ホルモン放出抑制因子として神経組織に広く分布し、眼組織においても虹彩、毛様体、網膜にソマトスタチン受容体が存在することが確認されている(Mori,M.、et al.,Neuroscience Letters,1997年,223巻,3号,p.185−188)。
また、ソマトスタチンは生体内において、内分泌系、外分泌系、神経系などにおいて多彩な機能を有し、例えば、神経伝達や神経細胞成長調節などに関与すること、また、PC12細胞において神経軸索伸展を促進させる作用があると報告されている(Ferriero,M.D.et.,Developmental Brain Research,1994年,80巻,p.13−18)。
ソマトスタチンが関与する眼疾患としては、緑内障、角膜実質の炎症、虹彩炎、網膜炎、白内障、結膜炎などが知られている(特表2002−515912、対応:WO98/58646、EP1019050)。
ソマトスタチンそのもの、またはその類縁体を医薬品として開発する試みもなされており、例えば,ソマトスタチン受容体作動薬として知られているオクトレオチド(octreotide)は消化管ホルモン産生腫瘍および末端肥大症・下垂体性巨人症の治療薬として市販されている。その他、例えば;ランレオタイド(lanreotide)(特開平2−289599、対応:EP389180)、AN−238(特表2000−502055、対応:WO97/19954、US5843903)、PTR−3173(特表2002−518339、対応:US6051554、US6355613)、SSTR2,SSTR3に親和性を有するアミン誘導体(特開2000−226373、対応:US6329389)、ソマトスタチン受容体機能調節作用を有し、糖尿病、肥満糖尿病合併症などの予防または治療に有用な芳香族アミン誘導体(特開2000−191615、対応:EP1123918)、ソマトスタチン受容体作動作用を有し、糖尿病などの予防または治療に有用な縮合環化合物(特開平11−209356、対応:US6352982)、
例えば、式I

〔XはAsp−Arg−Met−Pro−Cys,Arg−Met−Pro−Cys,Met−Pro−Cys,Pro−CysまたはCysを、XはArgまたはLysを、XはSerまたはThrを、XがCys−LysまたはCysを示す。〕で示されるソマトスタチン様活性を有するペプチド(特開平10−174587)、
例えば、式II

などで表されるソマトスタチン作動薬(特表2001−518895、対応:WO98/45285、EP977751)、
例えば、式III

などで表されるソマトスタチン作動薬(特表2001−519811、対応:WO98/44921、US6063796)、
例えば、式IV

などで表されるソマトスタチン作動薬(特表2001−519812、対応:WO98/44922、US6063796)、
式V

〔式中、R11は、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、(C−C)アルキル基、及び(C−C)アルコキシ基から選択した基であり;Xは、−CH−基、−SO−基、−CO−基、又は直接結合であり;そしてYは、CH基又は窒素原子である〕などで表されるソマトスタチンアゴニスト(特開2001−114761、対応:EP1086947A1)、
例えば、式VI

などで表されるソマトスタチンアゴニスト(特開2002−3498、対応:US2001/047030)、
例えば、5−グアニジノ−2((2−(トルエン−4−スルフォニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−3−カルボニル)−アミノ〕−ペンタン酸メチルエステルなどのSSTR2に作用するソマトスタチンアゴニスト(US2002/91125A1)、
例えば、式VII

などで表されるソマトスタチンアゴニスト(US2002/91090A1)、
式VIII

で示されるソマトスタチンアナログ(WO2002/10192)、
ソマトスタチンの1以上のサブタイプの受容体からアゴニスト効果を引き起こすイミダゾリル誘導体(WO99/64401)、ソマトスタチン受容体と親和性を持つヒダントイン誘導体(WO2001/85718)、ソマトスタチン受容体のリガンドとして有用な4−アミノピペリジン誘導体(WO2001/44191)、
例えば、式IX

などで表されるソマトスタチンアゴニスト(US6387932)、
例えば、Phe−シクロ(Cys−D−Trp−Lys−Cys)−Thr−NHで示されるSSTR1アゴニスト(WO2000/75186)、
選択的SSTR4結合作用を有し、緑内障治療作用が期待されるとして、式X

などで表される化合物(US6127343)、
式XI

〔式中、RはC−Cアルキル、アダマンチルなどを示す〕で示されるソマトスタチンアナログ(WO2000/10589)、
例えば、式XII

などで示されるソマトスタチンアゴニスト(WO99/22735、対応:US6117880)、
例えば、式XIII

などで示されるソマトスタチンアゴニスト(特表2001−502712、対応:US6020349、US6083960)、
例えば、式XIV

などで示されるソマトスタチンの作動因子(特表2001−525793(対応:WO97/43278、EP912551)、例えば、シクロ〔Tyr−D−Trp−Lys−Val−Phe(4−(3−メトキシフェニル)イミダゾール)−Gly〕などで示されるサイクリックソマトスタチン類似体(特表2002−518409(対応:WO99/65942、EP1086131)、不安、欝などの処置に有用なSSTR1選択的アゴニストであるエルゴリン誘導体(特表2001−527580(対応:WO98/54183、US6221870)、ソマトスタチン受容体機能調節剤としてのビフェニル化合物(特開2002−80439、対応:WO2002/000606)、ソマトスタチン受容体に結合して、Naチャンネルを遮断するβ−カルボリン誘導体(特表2002−517500、対応:WO99/64420、EP1086101)、バプレオチド(vapreotide,Sharon Gazal et al.,Journal of Medicinal Chemistry,2002年,45巻,p.1665−1671)、ソマトスタチン受容体結合阻害作用を有する化合物で、基:

の2位に窒素原子が置換していることに特徴がある特異な化学構造を有するアミン誘導体(特開2002−348287)、およびソマトスタチンレセプターに対して親和性および選択性を有するピリドチエノジアゼピン(特表2002−541260、対応:WO2000/61587)などが知られている。
その一方、角膜においては、ソマトスタチン受容体が存在することは未だ報告されていない。また、角膜の神経に関して、三叉神経節で分岐する第一枝(ophthalmic branch)由来の神経のほとんどが角膜に分布し、角膜の術後知覚回復、角膜上皮の修復などに深く関わっていることが報告されている(Ke−Ping Xu et al.Cornea,1996年,15巻,p.235−239)。
しかし、三叉神経(角膜神経)にソマトスタチン受容体が存在することや、三叉神経(角膜神経)の神経軸索伸展をソマトスタチンが促進させるという報告は認められない。
【発明の開示】
本発明は、レーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)、レーザー角膜切削形成術(レーシック;LASIK)、および、角膜移植などの角膜手術後やドライアイ患者などで角膜知覚機能の低下した患者の角膜知覚機能を回復させ、さらに、これら角膜知覚機能の低下に伴う角膜上皮の障害を治療する医薬を提供する。
本発明者らは、角膜の術後の角膜知覚回復やドライアイの症状を改善する新しいタイプの医薬を提供することを目的に検討を行ったところ、ソマトスタチンが三叉神経(以後、角膜神経ということもある。)の軸索伸展促進効果があること、また三叉神経にソマトスタチン受容体が存在することを初めて見出し、これらの知見に基づいてさらに研究をすすめ、ソマトスタチン受容体作動薬を角膜知覚回復などの医薬として利用する本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜神経軸索伸展促進剤、
(2)ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜知覚回復剤、
(3)ソマトスタチン受容体作動薬を含有するドライアイ治療剤、
(4)ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜上皮欠損治療剤、
(5)ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜神経軸索伸展促進用医薬組成物、
(6)ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜知覚回復用医薬組成物、
(7)ソマトスタチン受容体作動薬を含有するドライアイ治療用医薬組成物、
(8)ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜上皮欠損治療用医薬組成物、
(9)角膜神経軸索伸展促進用医薬組成物を製造するためのソマトスタチン受容体作動薬の使用、
(10)角膜知覚回復用医薬組成物を製造するためのソマトスタチン受容体作動薬の使用、
(11)ドライアイ治療用医薬組成物を製造するためのソマトスタチン受容体作動薬の使用、
(12)角膜上皮欠損治療用医薬組成物を製造するためのソマトスタチン受容体作動薬の使用、
(13)角膜神経の軸索伸展促進が必要とされる疾患対象にソマトスタチン受容体作動薬の有効量を投与することによる角膜神経の軸索伸展促進方法、
(14)角膜知覚の回復が必要される疾患対象にソマトスタチン受容体作動薬の有効量を投与することによる角膜知覚回復方法、
(15)ドライアイに罹患した疾患対象にソマトスタチン受容体作動薬の有効量を投与することによるドライアイの治療方法、
(16)角膜上皮が欠損した疾患対象にソマトスタチン受容体作動薬の有効量を投与することによる角膜上皮欠損の治療方法、
に関するものである。
ここで、ソマトスタチン受容体作動薬とは、ソマトスタチンそのものの他、ソマトスタチン受容体に作用し、ソマトスタチンと同様の作用を示すものをいい、ソマトスタチンアゴニスト、ソマトスタチン類似体、ソマトスタチンアナログなどといわれているものを包含する。
ソマトスタチン受容体作動薬としては、ソマトスタチンそのものの他、ソマトスタチン受容体に作用しソマトスタチンと同様の作用を示すものであれば、いずれの化合物であっても有利に使用できる。そのような化合物としては、例えば,ソマトスタチン受容体作動薬として知られているオクトレオチド(octreotide)、特開平2−289599(対応:EP389180)に記載のランレオタイド(lanreotide)、バプレオチド(vapreotide)などのオクタペプチド、特表2000−502055(対応:WO97/19954、US5843903)に記載の例えばAN−238などのソマトスタチン類似環状ペプチド、特表2002−518339(対応:US6051554、US6355613)に記載の例えばPTR−3173などの主鎖環化ソマトスタチン類似体、特開226373(対応:US6329389)や特開2002−348287に開示のアミン誘導体、特開2000−191615(対応:EP1123918)に記載の芳香族アミン誘導体、特開平11−209356(対応:US6352982)に記載の縮合環化合物、特開平10−174587に記載のペプチド類、特表2001−518895(対応:WO98/45285、EP977751)、特表2001−519811(対応:WO98/44921、US6063796)および特表2001−519812(対応:WO98/44922、US6063796)に記載のソマトスタチン作動薬、特開2001−114761(対応:EP1086947A1)、特開2002−3498(対応:US2001/047030)、US2002/91125A1、US2002/91090A1、US6387932、WO99/22735(対応:US6117880)、特表2001−502712(対応:US6020349、US6083960)に記載のソマトスタチンアゴニスト、WO2002/10192およびWO2000/10589に記載のソマトスタチンアナログ、WO99/64401に記載のイミダゾリル誘導体、WO2001/85718に記載のヒダントイン誘導体、WO2001/44191に記載の4−アミノピペリジン誘導体、WO2000/75186に記載のSSTR1アゴニスト、US6127343に記載の選択的SSTR4結合作用を有し、緑内障治療作用を示す化合物、特表2001−525793(対応:WO97/43278、EP912551)に記載のソマトスタチンの作動因子、特表2002−518409(対応:WO99/65942、EP1086131)に記載のサイクリックソマトスタチン類似体、特表2001−527580(対応:WO98/54183、US6221870)記載のエルゴリン誘導体、特開2002−80439(対応:WO2002/000606)に記載のビフェニル化合物、特表2002−517500(対応:WO99/64420、EP1086101)に記載のβ−カルボリル誘導体、および特表2002−541260(対応:WO2000/61587)に記載のピリドチエノジアゼピンなどが挙げられる。
本発明のソマトスタチン受容体作動薬を含有する医薬は、哺乳動物(例えばヒト、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)の角膜神経が障害、切断または角膜上皮が欠損した角膜において、低下した角膜知覚機能の回復に有用である。例えば、PRKやLASIK、角膜移植などの手術後の低下した角膜知覚回復のための治療薬として、あるいは角膜知覚の低下したドライアイ患者の治療薬として、さらに、角膜知覚機能の低下に伴う角膜上皮障害の治療薬として有用である。また、ソマトスタチン受容体作動薬としては、ソマトスタチン受容体サブタイプであるSSTR2または/およびSSTR4に特異的に作用するアゴニスト(作動薬)がより好ましい。
本発明の医薬は全身的または局所的に投与される。全身的には経口投与の他、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射など非経口的にも投与される。局所的には、眼に投与される。
本発明の医薬の製剤形態としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、坐剤などの固形剤、およびシロップ剤、注射剤、点眼剤などの液剤などが挙げられる。顆粒および錠剤として製造する場合には、例えば賦形剤(乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、結晶セルロースなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウムなど)、崩壊剤(デンプン、カルメロースナトリウム、炭酸カルシウムなど)、結合剤(デンプン糊液、ヒドロキシプロピルセルロース液、カルメロース液、アラビアゴム液、ゼラチン液、アルギン酸ナトリウム液など)などを用いることにより任意の剤形を製造することができる。また、顆粒剤および錠剤には、適当なコーティング剤(ゼラチン、白糖、アラビアゴム、カルナバロウなど)、腸溶性コーティング剤(例えば酢酸フタル酸セルロース、メタアクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロースなど)などで剤皮を施してもよい。
カプセル剤として製造する場合には、適当な賦形剤、例えば流動性と滑沢性を向上させるためのステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸など、また加圧流動性のための結晶セルロースや乳糖などの他、上記崩壊剤などを適宜添加したものを均等に混和または粒状もしくは粒状としたものに適当なコーティング剤で剤皮を施したものを充填するが、適当なカプセル基剤(ゼラチンなど)にグリセリンまたはソルビトールなどを加えて塑性を増したカプセル基剤で被包成形することもできる。これらカプセル剤には必要に応じて、着色剤、保存剤[二酸化イオウ、パラベン類(パラオキシ安息香酸メチル、エチル、プロピルエステル)]などを加えることができる。カプセル剤は通常のカプセルの他、腸溶性コーティングカプセル、胃内抵抗性カプセル、放出制御カプセルとすることもできる。腸溶性カプセルとする場合、腸溶性コーティング剤でコーティングした化合物または化合物に上記の適当な賦形剤を添加したものを通常のカプセルに充填または、カプセル自身を腸溶性コーティング剤でコーティング、もしくは腸溶性高分子を基剤として成形することができる。
坐剤として製造する場合には坐剤基剤(例えばカカオ脂、マクロゴールなど)を適宜選択して使用することができる。
シロップ剤として製造する場合、例えば安定剤(エデト酸ナトリウムなど)、懸濁化剤(アラビアゴム、カルメロースなど)、矯味剤(単シロップ、ブドウ糖など)、芳香剤などを適宜選択して使用することができる。
本発明の医薬を注射剤または点眼剤として製造する場合、医薬上許容される添加物、例えば等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコールなど)、緩衝剤(リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液など)、保存剤(パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂など)、増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなど)、安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエンなど)、pH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸など)などを適宜添加した溶液に溶解または分散することによって製造することができる。
上記シロップ剤、注射剤および点眼剤における添加剤の添加量は、添加する添加剤の種類、用途などによって異なるが、添加剤の目的を達成し得る濃度を添加すればよく、等張化剤は、通常、浸透圧が約229〜約343mOsmとなるよう、約0.5〜約5.0w/v%を添加する。また、緩衝剤は約0.01〜約2.0w/v%程度、増粘剤は約0.01〜約1.0w/v%程度、安定化剤は約0.001〜約1.0w/v%程度になるように添加する。pH調整剤は、適宜添加し、通常pH約3〜約9、好ましくは約4〜約8になるように添加する。
特に点眼剤として使用する場合、ソマトスタチン受容体作動薬の濃度は、通常下限は約0.0005w/v%、約0.001w/v%、約0.005w/v%であり、上限は約1.0w/v%、約0.5w/v%、約0.1w/v%、約0.05w/v%、約0.01w/v%に調製される。
本発明におけるソマトスタチン受容体作動薬の投与量は対象となる疾患、症状、投与対象、投与方法などにより異なるが、例えばPRK手術後の角膜知覚回復剤として成人の眼に局所的に使用する場合には、例えばソマトスタチン約0.01w/v%含有する点眼液を、1回約20〜約50μL、1日数回点眼するのがよい。
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
DNase:デオキシリボヌクレアーゼ
SSTR:ソマトスタチン受容体
GAPDH:グリセルアルデヒド−3−ホスフェート−デヒドロゲナーゼ
NGF:神経成長因子
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA:メッセンジャーRNA
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Me :メチル基
【図面の簡単な説明】
図1はウサギ三叉神経と網膜でのソマトスタチン受容体サブタイプ(SSTR2及びSSTR4)の発現を示す図である。
図2は培養ウサギ三叉神経細胞とその細胞からの軸索伸展を示す位相差顕微鏡像である。Aは無添加群、Bは1μMソマトスタチン添加群、Cは10μMソマトスタチン添加群、DはNGF添加群、Eはソマトスタチン+NGF添加群の各細胞を示す。
図3はウサギの角膜神経を切断した後の角膜知覚の推移を示すグラフである。*は基剤投与群に対する有意差を示す(n=6〜12、平均値±標準誤差、p<0.05)。
図4は培養ウサギ三叉神経細胞とその細胞からの軸索伸展を示す蛍光顕微鏡像である。Aはコントロール群、Bは10μMオクトレオチド添加群の各細胞を示す。
図5は図4と同じ試験において、全細胞数に対する神経突起形成細胞の比率(%)示すグラフである。*はコントロールに対する有意差(n=3、平均値±標準誤差、p<0.05)を示す。
図6は培養ウサギ三叉神経細胞とその細胞からの軸索伸展を示す蛍光顕微鏡像である。Aは無添加群、Bは1μM化合物1添加群、Cは0.1μM化合物2添加群の各細胞を示す。
図7は図6と同じ試験において、培養細胞のニューロフィランメント量を表す吸光度を示すグラフである(n=3、平均値±標準誤差)。
発明の実施のするための最良の形態
本発明を以下の試験例及び実施例に従いさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
試験例1.ウサギ三叉神経におけるソマトスタチン受容体の発現
1)使用動物
福崎養兎組合より購入した日本白色種ウサギ(体重2.0kg)を使用した。
2)試験方法
日本白色種ウサギにセラクタール(xylazine):ケタラール(塩酸ケタミン)=0.5:1の混合液を筋肉内注射(0.9mL/kg)し、全身麻酔を実施した。生理食塩水で心臓灌流後、網膜と三叉神経節をそれぞれ採取した。TRIzol Reagent(GIBCO BRL社製)を用いたAGPC法により、組織からRNAを抽出し、DNase処理によりゲノムDNAを除去した後、SuperScripit II(GIBCO BRL社製)を用いて逆転写反応を行なった。cDNAを、Platinum Taq DNA polymerase(GIBCO BRL社)を用いて表1に記す反応条件で増幅させた。なお、プライマーは表1記載のウサギのソマトスタチン受容体SSTR2遺伝子特異的プライマー(後記配列表:配列番号1)とSSTR4遺伝子特異的プライマー(後記配列表:配列番号2)を使用した。網膜およびGAPDHは発現の陽性コントロールとして用いた。

3)試験結果
結果を図1に示した。ウサギ網膜(R)と三叉神経(T)におけるソマトスタチン受容体、SSTR2およびSSTR4サブタイプをRT−PCR法により解析した結果、両組織においてSSTR2およびSSTR4とも発現が認められた。
試験例2.培養ウサギ三叉神経細胞における神経軸索伸展促進作用(In vitro実験)
1) 使用動物
福崎養兎組合より購入した日本白色種ウサギ(生後2〜3日目)を使用した。
2) 被験物質
被験物質として、ソマトスタチン(CALBIOCHEM社製,Lot B33795)およびNGF(NGF−7S,Sigma社製)を使用した。被験物質はリン酸緩衝液(PBS)に100μMソマトスタチン、20μg/mL NGF−7Sになるよう溶解した。調製した試薬は−80℃に保存し、使用前に溶解して使用した。
3) 試験方法
三叉神経細胞の単離はChanらの報告(Kuan Y.Chan and Richard H.Haschke.Exp.Eye Res.41:687−699,1985)を参考にして行った。すなわち、エーテル麻酔下、ウサギを生理食塩水で心臓灌流後、三叉神経節を切り出し、神経分散液(住友ベークライト)を用いて、三叉神経節を分散させ、ポリリジン/ラミニンでコートした24ウェルプレート(住友ベークライト)に細胞を播種した。細胞数は1ウェルあたり約3000細胞とし、培養条件は5%CO、95%空気環境下、37℃とした。細胞は5%牛血清(Fetal calf serum;FCS)添加ダブルベッコの修正イーグル培地/F−12(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium/Nutrient Mixture F−12:DMEM/F−12)培養液中に播種して24時間培養後、培養液をFCS無添加のDMEM/F−12培養液に交換した。
その後、以下の5群:
I 無添加群
II 最終濃度1μMとなるようソマトスタチンを添加した群
III 最終濃度10μMとなるようソマトスタチンを添加した群
IV 最終濃度1μg/mLとなるようNGF添加した群
V ソマトスタチンおよびNGFをそれぞれ最終濃度1μMおよび1μg/mLとなるよう同時に添加した群
に分け、さらに48時間培養した。
ソマトスタチンおよびNGFによる三叉神経細胞の突起形成と軸索伸展に対する効果は位相差顕微鏡を用いた観察によって形態的に評価した。
4)試験結果
図2は培養ウサギ三叉神経細胞の位相差顕微鏡像を示す。(A)は第I群の細胞を、(B)は第II群の細胞を、(C)は第III群の細胞を、(D)は第IV群の細胞を、(E)は第V群の細胞をそれぞれ示している。
無添加群の細胞ではわずかな神経突起の形成が認められた(A)。1μMソマトスタチン添加群の細胞(B)は(A)に比較して明らかに軸索伸展が促進され、10μMソマトスタチン添加群の細胞(C)でも長い軸索伸展を示す細胞が多く観察された。NGF添加群の細胞(D)およびNGFとソマトスタチンを同時に添加した群の細胞(E)においても、無添加群(A)に比較して明らかに神経細胞の神経軸索伸展促進作用が認められた。
試験例3.ウサギ角膜神経切断後の角膜知覚機能変化(In vivo試験)
1)使用動物
福崎養兎組合より購入した体重1.5kg〜2.0kgの雄性日本白色種ウサギを使用した。
2)被験物質
被験物質としてソマトスタチン(CALBIOCHEM社製,Lot B33795)とNGF(NGF−7S,Sigma社製)を使用した。被験物質は、以下に示す基剤に溶解し、試験に用いた。
基剤処方:
塩化ナトリウム 0.9g
リン酸2水素ナトリウム・2水和物 0.1g
水酸化ナトリウム 適量(pH7.0)
注射用蒸留水 適量
全量 100mL
3)試験方法
ウサギにセラクタール(xylazine):ケタラール(塩酸ケタミン)=0.5:1混合液を筋肉内注射(0.9mL/kg)し、全身麻酔を実施した。角膜を直径6mmのトレパンで標識し、その上位180度の角膜を円形切開しながら8.0ナイロン縫合糸で縫合した。縫合の直後から、基剤(基剤投与群、n=10)、ソマトスタチン溶液(100μM、ソマトスタチン投与群、n=12)あるいはNGF溶液(20μg/mL、NGF投与群、n=6)を50μLずつ、4回/1日、4週間連続点眼投与した。手術後一週間は1日4回の被験物質点眼の際に、同時にタリビット点眼液(Tarivid ophthamic solution,Santen)を点眼投与した。動物は室温23±3℃、湿度55±10%、12時間照明(8:00点灯、20:00消灯)に設定された飼育室内で1ケージあたり1匹収容し、飼育した。角膜知覚はCochet−Bonnet角膜知覚計(LUNEAU社製)を用いて、手術3日目と1、2、3、4、6週目に測定した。角膜知覚(%)は、各個体の手術前の知覚を100%とし算出した。
4)試験結果
図3は角膜神経を切断後の角膜知覚の推移を経時的に示している。角膜知覚は角膜切開手術3日後から1週後にかけて、すべての群で急激に低下したが、2週目以降、緩やかな角膜知覚の回復が認められた。3週、4週間後にソマトスタチン投与群において、基剤投与群と比較して有意な角膜知覚回復効果が認められた(p<0.05、Dunnett検定)。
試験例4.培養ウサギ三叉神経細胞の軸索伸展に対するオクトレオチドの効果(In vitro試験)
1)使用動物
福崎養兎組合より購入した日本白色種ウサギ(生後2〜3日目)を使用した。
2)被験物質
オクトレオチド(Octreotide;SMS 201−995,American Peptide Company,Inc.)を使用した。
3)試験方法
細胞培養:三叉神経細胞の単離はChanらの報告(Kuan Y.Chan and Richard H.Haschke.Exp.Eye Res.41:687−699,1985)を参考にして行った。すなわち、エーテル麻酔下、生理食塩水で心臓灌流後、三叉神経節を切り出し、神経分散液(住友ベークライト)を用いて、三叉神経節を分散させた後、細胞数を計測して、ポリリシンでコートした8ウェルカルチャースライド(BECTON DICKINSON)に細胞を播種した。細胞数は1ウェルあたり約3×10細胞とし、培養条件は5%CO、95%空気下、37℃とした。細胞培養にはニューロベーサル培養液(GIBGO)にB27サプリメント(GIBGO;0.02mL/mL培養液)を添加した培養液を用い、細胞播種直後にオクトレオチド(10μM最終濃度)を培養液中に添加して24時間培養した。
免疫染色:培養24時間後に、細胞を4%パラホルムアルデヒトで室温で2時間固定し、神経細胞体および神経突起を構成するニューロフィラメントを特異的に認識する抗ニューロフィラメント200抗体(NF,Anti−Neurofilament200,Sigma)を用いて神経細胞、軸索および突起を蛍光染色した。染色細胞は蛍光顕微鏡からコンピュータに画像として取り込み、画像解析ソフト(MacSCOP,MITANI CO.)を用いてオクトレオチドによる突起形成と軸索伸展に対する効果を評価した。すなわち、細胞の軸索伸展長および細胞体直径を画像解析ソフトを用いて測定し、細胞体の直径の2倍以上長さの軸索を持つ細胞を神経突起形成細胞として全細胞数に対する比率(%)を計算した。
4)試験結果
図4は培養ウサギ三叉神経細胞におけるオクトレオチドの神経突起、軸索伸展効果を示している。(A)はオクトレオチド無添加培養液で24時間培養したコントロールのウサギ三叉神経細胞を、(B)はオクトレオチドを最終濃度10μM添加した培養液で24時間培養した細胞を示す。コントロールの細胞群に比較し、オクトレオチド添加群では神経突起形成細胞が増加することが確認された。
図5は神経突起形成細胞の全細胞数に対する比率(%)を示している。神経突起形成細胞の比率はコントロール群では全細胞の約21%、オクトレオチド添加群では全細胞の約43%であり、オクトレオチド添加による神経突起形成細胞の有意な増加が認められた(n=3、平均値±標準誤差、t検定、p<0.05%)。
以上のことから、ソマトスタチンのアナログであるオクトレオチドは三叉神経細胞の軸索伸展を促進することが分った。
試験例5.培養ウサギ三叉神経細胞の軸索伸展に及ぼすソマトスタチン受容体アゴニストの効果(In Vitro実験)
1)使用動物
北山ラベスより購入した日本白色種ウサギ(生後2〜3日)を使用した。
2)被験物質
被験物質であるソマトスタチン受容体アゴニストとして、SSTR2特異的アゴニストである、6−アミノ−2−(3−(1H−インドール−3−イル)−2−((4−(2−オキソ−2、3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−イル)ピペリジン−1−カルボニル)アミノ)プロピオニルアミノ)ヘキサン酸t−ブチルエステル(以下、化合物1と称する。)、および、SSTR4特異的アゴニストである、1−(3−(N−(5−ブロモピリジン−2−イル)−N−(3,4−ジクロロベンジル)アミノ)プロピル)−3−(3−(1H−イミダゾル−4−イル)プロピル)チオウレア(以下、化合物2と称する。)を使用した。化合物1は特表2001−519812(WO98/44922)、実施例4の化合物で、実施例2の方法に従って合成した。化合物2は特表2001−525793(WO97/43278)実施例15の記載に従い合成した。
3)試験方法
細胞培養:ウサギ三叉神経細胞の単離はChanらの報告(Kuan Y.Chan and Richard H.Haschke.Exp.Eye Res.41:687−699,1985)を参考にして行った。すなわち、エーテル麻酔下、生理食塩水で心臓灌流を施した後、三叉神経節を取り出し、神経分散液(住友ベークライト)を用いて三叉神経節を分散させ、三叉神経細胞を調製した。細胞培養にはNeurobasal medium(GIBCO)にB27 Supplement(GIBCO;最終濃度.2%v/v)およびL−Glutamin(GIBCO;最終濃度.1mM)を添加した培養液を用い、培養条件は、5%CO2,95%air,100%humidity,37℃,48時間とした。細胞はポリリジンでコートした8ウェルカルチャースライド(BECTON DICKINSON)に約3×10細胞/ウェル、あるいはポリリジンでコートした96ウェルプレートに3×10細胞/ウェルとなるよう播種し、被験物質群の培養液中には化合物1(最終濃度1μM)または化合物2(最終濃度0.1μM)を添加した。
細胞染色:48時間培養終了後、96ウェルプレートに播種した細胞を4%パラホルムアルデヒドにて固定し、神経細胞体および神経突起を構成するニューロフィラメントを特異的に認識する抗ニューロフィラメント200抗体(Sigma)およびHRP結合ヤギ抗マウスIgG抗体(和光純薬)を用いて細胞のニューロフィラメントを標識した。標識した細胞上に50μLの0.02%H(Nacalai Tesque)および0.2%ο−phenylenediamine(Sigma)を含むクエン酸緩衝液を添加して30分間発色させた後、50μLの4.5M HSO(Nacalai Tesque)を添加して反応を停止した。発色終了後、これの492nmの吸光度を測定し、この測定値を染色されたニューロフィラメント量として、神経突起形成の指標とした(Taniwaki T.,et al.Dev.Brain Res.(1995)88,109−166)。8ウェルカルチャースライドに播種した細胞は、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、抗ニューロフィラメント200抗体(Sigma)を用いて固定した標本を染色し、Alexa Fluor568結合二次抗体(Molecular probes)を用いて蛍光標識した。蛍光標識された細胞を蛍光顕微鏡下で観察し、細胞像をコンピュータに画像として取り込んだ。
4)実験結果
図6は培養ウサギ三叉神経細胞の蛍光顕微鏡像を示している。(A)はソマトスタチン受容体アゴニスト無添加培養液で培養したコントロール群の細胞を、(B)は化合物1を最終濃度1μM添加した群の細胞を、(C)は化合物2を最終濃度0.1μM添加した群の細胞を示している。コントロール群の細胞に比較し、化合物1または化合物2を添加した群の細胞では神経突起形成細胞が増加することが確認された。図7は各添加群の細胞のニューロフィラメント量を表す吸光度を示すグラフである。コントロール群の吸光度は0.798、化合物1添加群および化合物2添加群ではそれぞれ0.876および0.850であった。すなわち、ソマトスタチン受容体アゴニスト添加によってニューロフィラメント量が増加しており、神経突起形成細胞の増加を反映していると考えられた。
以上のことから、ソマトスタチン受容体アゴニストである化合物1と化合物2は三叉神経細胞の軸索伸展を促進する作用のあることがわかった。
以下に製剤実施例を示す。
実施例1 錠剤
ソマトスタチン 50 mg
乳糖 80 mg
デンプン 17 mg
ステアリン酸マグネシウム 3 mg
結晶セルロース 10 mg
以上の成分を1錠分の材料として、常法により錠剤を成形する。錠剤は必要に応じて通常用いられる腸溶性コーティング剤(例えばフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、糖衣およびフィルム(例えばエチルセルロース)を適用してもよい。
実施例2 カプセル剤
ソマトスタチン 75 mg
マンニトール 75 mg
デンプン 17 mg
ステアリン酸カルシウム 3 mg
以上の成分を1カプセル剤の材料として均一に混合し、常法により顆粒状とし、硬カプセルに充填する。この充填する前に必要に応じて顆粒は通常用いられる腸溶性コーティング剤(例えばフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、糖衣またはフィルム(例えばエチルセルロース)を適用してもよい。
実施例3 注射剤
化合物1 750 mg
カルボキシメチルセルロースナトリウム 500 mg
注射用水 適量
全量 100 mL
以上の成分を常法により無菌的に混和して注射剤を調製する。
実施例4 点眼剤
化合物2 50 mg
ホウ酸 700 mg
ホウ砂 適量(pH7.0)
塩化ナトリウム 500 mg
ヒドロキシメチルセルロース 0.5 g
エデト酸ナトリウム 0.05 mg
塩化ベンザルコニウム 0.005mg
滅菌精製水 適量
全量 100mL
滅菌精製水80mLを約80℃まで加温し、ヒドロキシメチルセルロースを加えて攪拌し、液温を室温まで戻す。この液に化合物2、塩化ナトリウム、ホウ酸、エデト酸ナトリウムおよび塩化ベンザルコニウムを加えて溶解する。ホウ砂を適量加えてpHを7に調整する。滅菌精製水を加えて100mLまでメスアップする。
実施例5 点眼剤
酢酸オクトレオチド 112 mg
D−マンニトール 4.5 g
リン酸二水素ナトリウム 0.1 g
水酸化ナトリウム 適量(pH7.0)
滅菌精製水 適量
全量 100mL
滅菌精製水80mLに酢酸オクトレオチド、D−マンニトール、リン酸二水素ナトリウムを加えて溶解する。水酸化ナトリウムを適量加えてpHを5.0に調整する。滅菌精製水を加えて100mLまでメスアップする。調製した点眼剤をメンブランフィルターで滅菌ろ過後、ディスポーザブル(ユニットドース)容器に充填、密封する。
【産業上の利用可能性】
本発明のソマトスタチン受容体作動薬を含有する医薬は、三叉神経細胞軸索伸展促進作用および角膜知覚機能回復作用を有することから、角膜神経の損傷などに伴う角膜知覚機能低下の改善および角膜知覚機能低下に伴うドライアイ症状の改善に有用である。具体的には、ソマトスタチン受容体作動薬を適用することにより、白内障手術後やLASIK手術後の角膜知覚の低下、神経麻痺性角膜症、角膜潰瘍、糖尿病性角膜症などの角膜神経変性に伴う角膜知覚低下、ドライアイ症状の改善効果が期待できる。
以上、本発明の具体的な態様のいくつかを詳細に説明したが、当業者であれば示された特定の態様には、本発明の新規な教示と利点から実質的に逸脱しない範囲でいろいろな修正と変更をなすことは可能であるので、そのような修正および変更も、すべて後記の特許請求の範囲で請求される本発明の精神と範囲内に含まれるものである。
本出願は、日本で出願された特願2002−318881および特願2003−040250を基礎としており、それらの内容は本出願にすべて包含されるものである。
【配列表】

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜神経軸索伸展促進剤。
【請求項2】
ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜知覚回復剤。
【請求項3】
ソマトスタチン受容体作動薬を含有するドライアイ治療剤。
【請求項4】
ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜上皮欠損治療剤。
【請求項5】
ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜神経軸索伸展促進用医薬組成物。
【請求項6】
ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜知覚回復用医薬組成物。
【請求項7】
ソマトスタチン受容体作動薬を含有するドライアイ治療用医薬組成物。
【請求項8】
ソマトスタチン受容体作動薬を含有する角膜上皮欠損治療用医薬組成物。
【請求項9】
角膜神経軸索伸展促進用医薬組成物を製造するためのソマトスタチン受容体作動薬の使用。
【請求項10】
角膜知覚回復用医薬組成物を製造するためのソマトスタチン受容体作働薬の使用。
【請求項11】
ドライアイ治療用医薬組成物を製造するためのソマトスタチン受容体作動薬の使用。
【請求項12】
角膜上皮欠損治療用医薬組成物を製造するためのソマトスタチン受容体作動薬の使用。
【請求項13】
角膜神経の軸索伸展促進が必要とされる疾患対象にソマトスタチン受容体作動薬の有効量を投与することによる角膜神経の軸索伸展促進方法。
【請求項14】
角膜知覚の回復が必要される疾患対象にソマトスタチン受容体作動薬の有効量を投与することによる角膜知覚回復方法。
【請求項15】
ドライアイに罹患した疾患対象にソマトスタチン受容体作動薬の有効量を投与することによるドライアイの治療方法。
【請求項16】
角膜上皮が欠損した疾患対象にソマトスタチン受容体作動薬の有効量を投与することによる角膜上皮欠損の治療方法。

【国際公開番号】WO2004/039403
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501843(P2005−501843)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013503
【国際出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】