説明

角質剥離が少ない貼付剤

【課題】良好な付着性を有しながら、剥離時の角質剥離が低減された貼付剤を提供する。
【解決手段】ゴム系粘着基剤と、脂肪酸金属塩成分とを含有する粘着マトリクスを含む貼付剤であって、該脂肪酸金属塩成分の配合割合が粘着マトリクス全体の0.1〜9質量%であり、該脂肪酸金属塩成分が少なくともステアリン酸マグネシウムを含有する貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤、特に剥離時に角質剥離の少ない貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に貼付された状態で薬効成分を効果的に放出する貼付剤は、製薬・医療分野で広く知られており、これまで多くの種類が開発されてきた。貼付剤は、適度な粘着性、良好な薬効成分放出能、製剤内での薬効成分の高い安定性、皮膚への良好な適合性などの特性を有することが好ましいが、中でも皮膚刺激性の低さは、使用者のコンプライアンスの観点からもとりわけ重要である。特に、皮膚付着性の高さが要求される貼付剤においては、皮膚から剥離する際、貼付剤と共に角質が剥離してしまい、その結果皮膚刺激が惹起されることがある。このような場合、角質剥離の抑制が皮膚刺激低減に大きく寄与することになる。
【0003】
角質層は、角質細胞と、これらを互いに結合する細胞間脂質とで構成されており、角質細胞が細胞間脂質との結合力より大きな力で牽引されると、角質細胞の剥離が起こる。したがって、貼付剤の粘着力が強いと当然角質は剥離しやすくなるが、粘着力が同じ場合でも、貼付剤に角質細胞と細胞間脂質との結合力を低下させるような成分が含まれていると、角質の剥離が生じやすくなる。角質の剥離を抑制する一方策として製剤の粘着力を低下させることが考えられるが、粘着力を下げすぎると製剤が剥離しやすくなり、薬効成分を十分に送達できないため、所望の効果を得ることができないという問題が生じる。また、角質細胞と細胞間脂質との結合力を低下させるような成分を含む製剤の場合には、同成分の作用を弱めるような物質を配合するなどの方策が考えられるが、かかる物質を見出すのは技術的に極めて困難である上に、特定の組成の製剤にしか適用できないという問題がある。
【0004】
かかる問題を解決すべく、貼付剤による角質剥離を抑制する試みがこれまでにいくつかなされている。例えば、特許文献1には、SISブロック共重合体、ミリスチン酸イソプロピルおよびテルペンフェノール樹脂を特定の割合で含む貼付シートにおいて、剥離時の角質剥離割合が少なかったことが記載されている。また、特許文献2には、プロピレンオキシド重合体、有機ジイソシアネート化合物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物およびモノオール化合物を反応させて得られるウレタンオリゴマーを含有する層を有する粘着シートにおいて、剥離時の角質剥離がアクリル系共重合物を用いた製剤より少なかったことが記載されている。しかしながら、これらの貼付剤においても角質剥離の抑制、およびこれに伴う皮膚刺激性の低減は依然不充分であった。
【0005】
【特許文献1】特開2004-115774号公報
【特許文献2】特開2004-290554号公報
【特許文献3】国際公開第96/08245号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/078690号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良好な付着性を有しながら、剥離時の角質剥離が少ない貼付剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、貼付剤にゴム系粘着基剤と、特定の割合の脂肪酸金属塩成分とを配合することにより、適切な付着性を維持しつつ、角質の剥離を抑制することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。しかも、驚くべきことに、上記効果は紫外線吸収剤を配合した製剤においても有効であることが確認された。
【0008】
すなわち本発明は、ゴム系粘着基剤と、脂肪酸金属塩成分とを含有する粘着マトリクスを含む貼付剤であって、該脂肪酸金属塩成分の配合割合が粘着マトリクス全体の0.1〜9質量%であり、該脂肪酸金属塩成分が少なくともステアリン酸マグネシウムを含有する、前記貼付剤に関する。
本発明はさらに、ゴム系粘着基剤がSISブロック共重合体を含む、上記貼付剤に関する。
本発明はまた、粘着マトリクスが、さらに薬効成分を含有する、上記貼付剤に関する。
【0009】
さらに本発明は、薬効成分が、抗炎症剤、抗リウマチ剤および局所麻酔剤からなる群から選択される1種または2種以上を含む、上記貼付剤に関する。
また、本発明は、ゴム系粘着基剤と、脂肪酸金属塩成分と、紫外線吸収剤とを含有する粘着マトリクスを含む貼付剤に関する。
なお、本発明において「角質剥離が少ない」または「角質剥離が抑制された」とは、脂肪酸金属塩成分を配合した貼付剤を剥離する時に、貼付剤の粘着面に付着して一緒に剥離してしまう表皮角質が、当該脂肪酸金属塩成分を配合しない点のみにおいて異なる同じ組成の貼付剤に比べて減少していることをいうものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の貼付剤は、剥離時の角質剥離が少ないため、製剤剥離後の発赤、かぶれ、光線過敏症などの皮膚刺激が軽減され、使用者のコンプライアンスが向上する。
【0011】
上記の効果は紫外線吸収剤を配合した貼付剤においてより顕著である。即ち、近年、配合成分の安定性を向上させるために、貼付剤に紫外線吸収剤を配合する試みがなされているが、本発明者は本発明の研究の中で、紫外線吸収剤を配合すると、配合成分の安定性は向上するが、製剤剥離時に角質が剥離しやすい傾向が見出したところ、紫外線吸収剤を配合した製剤において脂肪酸金属塩成分をさらに配合すると、意外にも角質剥離が抑制されることをも同時に見出したのである。
角質剥離が抑制される機構は必ずしも明らかとはいえないが、本発明の貼付剤に含まれるゴム系粘着基剤と、脂肪酸金属塩と、表皮角質との間の未知の相互作用によるものと考えられる。ゴム系粘着基剤と脂肪酸金属塩とを含む貼付剤はすでに知られているが(特許文献3および4参照)、これらの成分の組み合わせにより製剤剥離時の角質剥離が少なくなることは、これまで全く知られていなかった。
【0012】
例えば、特許文献3の実施例28には、SISブロック共重合体、流動パラフィン、ロジンエステル誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、フルルビプロフェンおよびl−メントールを含む貼付剤が記載されているが、同文献において脂肪酸金属塩は、溶解剤としてのl−メントールのエステル化を抑制するために添加されているにすぎず、角質剥離の抑制については何ら記載されていない。
【0013】
また、特許文献4には、SISブロック共重合体、高分子ポリイソブチレン、低分子ポリイソブチレン、ロジン系樹脂、流動パラフィンおよびケトプロフェンを含む貼付剤において、ステアリン酸亜鉛を0.1〜5質量%添加したところ、優れた付着性を保ちつつ剥離時の痛みが低減されたことが記載されている。しかしながら、同文献においても、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が角質剥離を抑制することについては何ら教示するところはなく、またステアリン酸マグネシウムや紫外線吸収剤を含む貼付剤については具体的な製剤例も効果も開示されていない。
【0014】
したがって、ゴム系粘着基剤と、脂肪酸金属塩成分とを組み合わせることにより貼付剤剥離時の角質剥離が抑制されることは、本発明者らが初めて見出したものであり、従来技術からは予測することのできない極めて有用な効果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の貼付剤は、ゴム系粘着基剤と、脂肪酸金属塩成分とを少なくとも含有する粘着マトリクスを含む。
粘着基剤のベースとなるゴム成分としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック(SIS)共重合体が好ましく、中でもSIS共重合体が特に好ましい。
【0016】
SIS共重合体としては、シェル化学社製のもの(商品名:カリフレックスTR−1107、カリフレックスTR−1111、カルフレックスTR−1112、カリフレックスTR−1117)、日本合成ゴム社製のもの(商品名:JSR5000、JSR5002、JSR5100)、日本ゼオン社製のもの(商品名:クインタック3570C)等を好ましく用いることができる。
ゴム成分の配合量は特に限定されないが、好ましくは粘着基剤の10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%、そして特に好ましくは15〜30質量%である。
【0017】
粘着基剤は、粘着付与樹脂、軟化剤、溶解剤、酸化防止剤、安定化剤、充填剤、経皮吸収促進剤等をさらに含むことができる。
粘着付与樹脂としては、脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製、商品名:アルコンP−100など)、水素添加ロジンエステル(荒川化学工業社製、商品名:KE−311、KE−100;ハーキュレス社製、商品名:フォーラル105、フォーラル85など)、水素化脂環族系炭化水素(エクソン化学社製、商品名:エスコレッツ5300など)、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂等を好ましく用いることができる。中でも水素添加ロジンエステルが特に好ましい。
粘着付与樹脂の配合量は特に限定されないが、好ましくは粘着基剤の10〜30質量%、より好ましくは5〜30質量%、そして特に好ましくは5〜26質量%である。粘着付与樹脂の配合量は主に粘着マトリクスの接着性に影響し、配合量が多ければ接着性が増し、少なければ減少する。
【0018】
軟化剤としては、流動パラフィン、ポリブテン、液状ポリイソブチレン、動植物油等を好ましく用いることができる。中でも流動パラフィンが特に好ましい。
軟化剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは粘着基剤の30〜70質量%、より好ましくは35〜60質量%、そして特に好ましくは35〜50質量%である。軟化剤の配合量は主に粘着マトリクスの硬さや凝集力に影響し、配合量が多ければ硬さも凝集力も減少し、少なければいずれも増加する。
【0019】
溶解剤、安定化剤、充填剤、経皮吸収促進剤等については特に限定されず、当該技術分野で公知のものを用いることができる。例えば、溶解剤としてはアジピン酸ジイソプロピル等の脂肪酸エステルやクロタミトン等を、安定化剤としてはジブチルヒドロキシトルエン等を、充填剤としてはカオリン、酸化亜鉛、タルク、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等を用いることができる。
【0020】
脂肪酸金属塩成分は、1種または2種以上の任意の脂肪酸金属塩を含むことができる。かかる金属塩としては、C14〜18脂肪酸の2価以上の金属塩、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム塩等が好ましく、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸マグネシウムがより好ましい。中でも、脂肪酸金属塩成分としてステアリン酸マグネシウムを含む態様が特に好ましい。また、角質剥離抑制作用を高めるため、上記成分に加え、アクリル酸デンプン、ポリアクリル酸系吸水性高分子等の吸水性高分子をさらに配合することができる。なお、遊離の脂肪酸は、粘着基剤に対する相溶性が高すぎるため、貼付剤剥離時の角質剥離を抑制することが困難である。
【0021】
脂肪酸金属塩成分の配合割合は、粘着マトリクスの好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%以上、かつ10質量%未満、さらに好ましくは0.1〜9質量%、そして特に好ましくは0.5〜6質量%である。脂肪酸金属塩成分の配合割合は、粘着マトリクスの0.5〜5質量%がとりわけ好ましく、1〜5質量%が最も好ましい。なお、同成分の配合割合が10質量%を超えると、凝集力が低下する傾向があり、また、0.1質量%未満であると、角質剥離抑制作用が低下する傾向がある。
なお、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸亜鉛を配合することにより、角質剥離の抑制に加え、皮膚から発汗される水分の吸収性を高めることもできる。
【0022】
粘着マトリクスには、1種または2種以上の薬効成分をさらに配合することができる。薬効成分としては、例えば、抗炎症剤、抗リウマチ剤、局所麻酔剤、全身麻酔剤、睡眠剤、鎮痛剤、解熱消炎鎮痛剤、ステロイドホルモン剤、興奮・覚醒剤、精神神経用剤、骨格筋弛緩剤、自律神経用剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、非ステロイド消炎鎮痛剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、カルシウム拮抗剤、抗菌剤、寄生性皮膚疾患用剤、皮膚軟化剤、抗生物質、解毒剤、鎮咳剤、鎮痒剤、催眠剤、精神活力剤、ぜんそく剤、ホルモン分泌促進剤、抗潰瘍剤、制癌剤、ビタミン剤、および美肌成分等の美白効果を有する物質などが挙げられる。
【0023】
このうち、非ステロイド消炎鎮痛剤としては、ケトプロフェン、ジクロフェナク、フェルビナク、フルルビプロフェン等を好適に用いることができる。中でもケトプロフェンが特に好ましい。
薬効成分の配合割合は特に限定されないが、好ましくは粘着マトリクスの0.5〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、そして特に好ましくは0.5〜20質量%である。
【0024】
粘着マトリクスには、上記成分の他、紫外線吸収剤をさらに配合することもできる。紫外線吸収剤は、例えば、配合成分、特に薬効成分の安定化のために有用である。本発明で用いることができる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えば無機系UVA遮断剤や、ジベンゾイルメタン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ケイ皮酸誘導体、カンファー誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、アミノ酸系化合物、ベンゾイルピナコロン誘導体等の有機系UVA遮断剤が挙げられ、このうち1種また2種以上を配合することができる。本発明における好ましい紫外線吸収剤は、無機系UVA遮断剤としては、酸化亜鉛、ジベンゾイルメタン誘導体としては、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ベンゾフェノン誘導体としては、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n−ヘキシルエステル、ケイ皮酸誘導体およびそのエステルとしては、4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸イソステアリル等の4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸の分枝鎖状アルキルエステル、カンファー誘導体としては、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルホン酸、ベンゾトリアゾール誘導体としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−[2−メチル−3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニール]プロピル]フェノール、アミノ酸系化合物としては、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−ヘキシルエステル、ベンゾイルピナコロン誘導体としては、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオンである。
【0025】
本発明の貼付剤において、特に好ましいUVA遮断剤は4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンである。
紫外線吸収剤の配合割合は、薬効成分、およびそれ以外の配合成分の安定化に寄与できる濃度であれば特に限定されないが、好ましくは粘着基剤の0.1〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
【0026】
粘着マトリクスは、例えば、上記各成分を適切な条件下で混合することにより製造することができる。かかる条件は当業者であれば容易に見出すことができる。
本発明の貼付剤は、例えば、上記粘着マトリクスをライナーに塗布し、その上に支持体を積層して得ることができる。ライナーおよび支持体は特に限定されず、当該技術分野で公知のものを用いることができる。ライナーとしては、基材材質が例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリオレフィン、アルミ箔、紙であるものが好ましい。ライナーには、シリコン処理およびテフロン処理などの離型処理を施すことができる。支持体としては、例えば、材質がPET等のポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨンである編布、織布、不織布や、材質がPET等のポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリオレフィン、アルミ箔であるフィルム、上記フィルムを複数組み合わせた複合フィルム、上記布とフィルムとの複合材料などを好ましく用いることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(クレイトンD-1107)20重量部、ポリイソブチレン10重量部、水添ロジンエステル(ステベライトエステル)10重量部、流動パラフィン(クリストールJ-352)48重量部、ステアリン酸亜鉛2重量部、およびステアリン酸マグネシウム2重量部(成分A)を、窒素ガス雰囲気下110〜130℃の温度で、60分間混合して溶融物を得た。これに4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン3重量部、l−メントール3重量部、およびケトプロフェン2重量部(成分B)を加え、さらに10分間混合し、均一な粘着マトリクス溶融物を得た。
次に前記の溶融物を70cm2あたり1gとなるように、片面シリコン処理されたPETフィルム(75μm)のシリコン処理面に均一に塗布した後、ポリエステル編布を積層して貼付剤を得た。
【0028】
実施例2
下記成分を実施例1と同様に処理し、貼付剤を得た。
【表1】

【0029】
実施例3
下記成分を実施例1と同様に処理し、貼付剤を得た。
【表2】

【0030】
比較例1
下記成分を実施例1と同様に処理し、貼付剤を得た。
【表3】

【0031】
試験例1(角質剥離の評価)
貼付剤剥離時の角質剥離の程度を評価するため以下の実験を行った。実施例1および比較例1でそれぞれ得た貼付剤(約3cm×3cm)を各被験者(A、B、C)の前腕内側に6時間貼付した後、各貼付剤を剥離した。剥離した各貼付剤に染色液(水98%、ニンヒドリン2%)を噴霧して、各貼付剤の粘着面に付着した角質を染色した。同染色により角質は青色に染まる。結果を図1〜3に示すが、いずれの被験者においても、実施例1で得られた脂肪酸金属塩成分を含む本発明の貼付剤(右側)の方が、同成分を含まない比較例1の貼付剤(左側)よりも明らかに角質の付着が少なかった。
【0032】
試験例2(粘着性の評価)
本発明の貼付剤の粘着性を、プローブタック試験および180°剥離試験により評価した。
プローブタック試験は、ASTM D2979に準拠した条件で行った。すなわち、試験装置としてプローブタックテスター(理学工業)を用い、上昇速度=5 mm/秒、接着時間=1秒、剥離速度=5 mm/秒、接着荷重=100g、プローブ=ベークライト5mmΦの条件で5回試験し、その平均を得た。
また、180°剥離試験は、日本薬局方「絆創膏」に準拠した条件で行った。すなわち、試験装置としてオートグラフ(島津製作所)を用い、圧着ローラー=800g(300 mm)、被着体=ベークライト板、剥離速度=300 mm/分、検体幅20 mm×50 mmの条件で10回試験し、その平均を得た。
上記両試験の結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

表4の結果から、実施例1の製剤の粘着性は比較例1のものと同程度であり、本発明の貼付剤が適切な粘着性を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】被験者Aから剥離した貼付剤への角質の付着状況を示した写真図である。左側が比較例1の貼付剤、右側が実施例1の貼付剤である。
【図2】被験者Bから剥離した貼付剤への角質の付着状況を示した写真図である。左側が比較例1の貼付剤、右側が実施例1の貼付剤である。
【図3】被験者Cから剥離した貼付剤への角質の付着状況を示した写真図である。左側が比較例1の貼付剤、右側が実施例1の貼付剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム系粘着基剤と、脂肪酸金属塩成分とを含有する粘着マトリクスを含む貼付剤であって、該脂肪酸金属塩成分の配合割合が粘着マトリクス全体の0.1〜9質量%であり、該脂肪酸金属塩成分が少なくともステアリン酸マグネシウムを含有する、前記貼付剤。
【請求項2】
ゴム系粘着基剤がSISブロック共重合体を含む、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
粘着マトリクスが、さらに薬効成分を含有する、請求項1または2に記載の貼付剤。
【請求項4】
薬効成分が、抗炎症剤、抗リウマチ剤および局所麻酔剤からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項3に記載の貼付剤。
【請求項5】
ゴム系粘着基剤と、脂肪酸金属塩成分と、紫外線吸収剤とを含有する粘着マトリクスを含む貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−151886(P2006−151886A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346151(P2004−346151)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】