説明

角速度検出装置

【課題】本発明は、振動子の不正振動を抑え、不正振動によるノイズを小さくし、SN比の劣化を抑えて歩留まりを改善することができる角速度検出装置を提供する。
【解決手段】本発明は、音叉型の振動子100と、振動子100の腕部を振動方向に駆動する駆動回路200と、振動子100に角速度が加わることで生じる電気信号を検出する検出回路300とを備える角速度検出装置である。振動子100は、腕部の振動方向を制御する制御電極150,170をさらに有し、検出電極148,168は、腕部の中立面に対して対称の位置に形成した第1の検出電極部148a,168aと、第2の検出電極部148b,168bとを有し、一方の腕部に形成した第1の検出電極部および第2の検出電極部の合成電圧を、他方の制御電極に印加し、他方の腕部に形成した第1の検出電極部および第2の検出電極部の合成電圧を、一方の腕部の制御電極に印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度検出装置に関し、特に、音叉型の振動子を備える角速度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
角速度検出装置は、ジャイロセンサとも呼ばれ、撮像手段の手振れ検出やカーナビゲーションの方向検出に利用されている。角速度検出装置は、近年さらに需要が様々な分野に拡大すると共に、小型化、高性能化などの要求がなされている。
【0003】
特許文献1には、角速度の検出を行なう角速度検出装置が開示されている。特許文献1に開示してある角速度検出装置は、振動子の同一投影面の投影面幅方向中心からずれた位置に、個別に駆動電圧を印加される複数の駆動用圧電素子を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−102013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、角速度検出装置は、振動子の形状が非対称になると、振動子の振動方向以外の方向に不正振動が生じ、検出信号にノイズが含まれることになる。検出信号にノイズが含まれるとSN比が劣化し、角速度検出装置が不良品と判定され歩留まりが低下するという問題があった。
【0006】
また、振動子の形状が非対称になる原因としては、振動子を製造するプロセスに起因することが多く、たとえば半導体基板からフォトリソグラフィ技術を用いて振動子を形成する場合、半導体基板を深堀エッチングした際のテーパ形状が、1つの原因となる。そして、1つの半導体ウェハから複数の振動子を切出して製造する場合、振動子の形状の非対称は、半導体ウェハの中心部から切出した振動子に比べ、外周から切出した振動子の方が大きくなる。そのため、半導体ウェハの外周から切出した振動子は、中心部から切出した振動子に比べ、検出信号に含まれるノイズが大きくなりSN比が劣化する。
【0007】
それゆえに、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、振動子の不正振動を抑え、不正振動によるノイズを小さくし、SN比の劣化を抑えて歩留まりを改善することができる角速度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る角速度検出装置は、それぞれの腕部に駆動電極と検出電極とを有する音叉型の振動子と、駆動電極に接続し、振動子の腕部を振動方向に駆動する駆動回路と、検出電極に接続し、振動子に角速度が加わることで生じる電気信号を検出する検出回路とを備える角速度検出装置であって、振動子は、腕部の振動方向を制御する制御電極をさらに有し、検出電極は、腕部の中立面に対して対称の位置に形成した第1の検出電極部と、第2の検出電極部とを有し、一方の腕部に形成した第1の検出電極部および第2の検出電極部の合成電圧を、他方の制御電極に印加し、他方の腕部に形成した第1の検出電極部および第2の検出電極部の合成電圧を、一方の腕部の制御電極に印加する。
【0009】
好ましくは、第1の検出電極部および第2の検出電極部の合成電圧を増幅して、制御電極に印加する増幅回路をさらに備える。
【0010】
好ましくは、増幅回路は、第1の検出電極部および第2の検出電極部の合成電圧が予め定めた値以下になるように、制御電極に印加する合成電圧の増幅率を制御する。
【0011】
好ましくは、制御電極は、腕部の中立面上に形成してある。
好ましくは、制御電極は、腕部の中立面に対して対称の位置に形成した第1の制御電極部と、第2の制御電極部とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る角速度検出装置は、一方の腕部に形成した第1の検出電極部および第2の検出電極部の合成電圧を、他方の腕部の制御電極に印加し、他方の腕部に形成した第1の検出電極部および第2の検出電極部の合成電圧を、一方の腕部の制御電極に印加することで、逆位相となる信号を制御電極に印加することができ、振動子の不正振動を抑え、不正振動によるノイズを小さくすることができる。そのため、本発明に係る角速度検出装置は、SN比の劣化を抑えて歩留まりを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置の振動子の構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す振動子の切断線IIA−IIAに沿った断面図を示す。
【図3】第1検出電極および第2検出電極で検出される電気信号およびノイズ信号を示す波形図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置の構成を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置の振動子の別の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る角速度検出装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置の振動子の構成を示す平面図である。図1にはX方向、Y方向、およびZ方向を示す記号が併記されている。なお、X方向は、振動子100の幅方向に相当し、Y方向は、振動子100の長さ方向に相当する。また、Z方向は、振動子100の高さ方向に対応し、紙面の奥側から手前側に向かう方向である。
【0015】
本発明の実施の形態に係る角速度検出装置は、振動子100の他に、振動子100を駆動する自励発振回路を含む駆動回路、および振動子100からの検出出力に基づいて角速度信号を処理する信号処理回路を含む検出回路などを備えるが、説明の便宜上これらの回路は図示していない。また、振動子100は、音叉型振動子である。
【0016】
振動子100は、圧電体142が形成されたT字状の基部110を有する。基部110は振動子100が作り込まれる図示しない半導体基板の一部で固定されている。基部110の頂部から第1振動腕120と第2振動腕130が並行して設けられる。圧電体142は、基部110だけではなく、第1振動腕120、および第2振動腕130の一主面を覆って設けられている。第1振動腕120と第2振動腕130の形状および大きさはほぼ同じである。2つの振動腕は中心線C1−C1を境にして互いに線対称になるよう形成されている。
【0017】
第1振動腕120には、電気信号を入力するための第1駆動電極144、第2駆動電極146、および電気信号を出力するための第1検出電極148が各別に形成される。第2振動腕130には、電気信号を入力するための第3駆動電極164、第4駆動電極166、および電気信号を出力するための第2検出電極168が各別に形成される。なお、第1振動腕120および第2振動腕130にモニタ電極を設け、振動子100の振動状態に応じた電気信号を取出して、該電気信号は図示しない自励発振回路にフィードバックしてもよい。
【0018】
図1に示した振動子100は、たとえば幅が60μmであり、長さが500μm〜600μmである。したがって、長さは幅のほぼ10倍の大きさである。また、第1振動腕120および第2振動腕130の幅は、共に等しくたとえば24μmである。
【0019】
第1駆動電極144および第3駆動電極164の幅は共に等しく、たとえば2μmである。第2駆動電極146および第4駆動電極166の幅は共に等しく、たとえば2μmである。
【0020】
第1振動腕120に設けられた第1検出電極148、および第2振動腕130に設けられた第2検出電極168の幅は共に等しく、たとえば16μmである。また第1駆動電極144と第1検出電極148との離間距離および、第3駆動電極164と第2検出電極168との離間距離は共に等しくたとえば1μmである。また第1検出電極148と第2駆動電極146との離間距離、および第2検出電極168と第4駆動電極166との離間距離は共に等しくたとえば1μmである。
【0021】
第1検出電極148は、第1振動腕120の中立面に対して対称の位置に形成した第1の検出電極部148aと、第2の検出電極部148bとを有している。つまり、第1検出電極148は、U字型形状をしている。同様に、第2検出電極168は、第2振動腕130の中立面に対して対称の位置に形成した第1の検出電極部168aと、第2の検出電極部168bとを有している。つまり、第2検出電極168は、U字型形状をしている。
【0022】
さらに、第1振動腕120は、第1検出電極148の第1の検出電極部148aと、第2の検出電極部148bとに挟まれ、第1振動腕120の中立面上の位置に制御電極150を形成してある。制御電極150は、第1振動腕120の振動方向を制御するための電極である。同様に、第2振動腕130は、第2検出電極168の第1の検出電極部168aと、第2の検出電極部168bとに挟まれ、第2振動腕130の中立面(図示していないが、第1振動腕120の中立面と同様の位置にある)上の位置に制御電極170を形成してある。制御電極170は、第2振動腕130の振動方向を制御するための電極である。
【0023】
図2は、図1に示す振動子100の切断線IIA−IIAに沿った断面図を示す。図2に示す断面図は、第1振動腕120および第2振動腕130の断面図である。第1振動腕120および第2振動腕130には圧電体142が形成される。圧電体142の厚みはたとえば1.0μmである。第1振動腕120における圧電体142の第1主面には、紙面左側からみて第1駆動電極144、第1の検出電極部148a、制御電極150、第2の検出電極部148b、および第2駆動電極146がこの順序で所定の間隔を保って形成される。同様に、第2振動腕130における圧電体142の第1主面には、紙面右側からみて第3駆動電極164、第1の検出電極部168a、制御電極170、第2の検出電極部168b、および第4駆動電極166がこの順序で所定の間隔を保って形成される。これらの各電極の厚みは共に等しい。なお、図示していないが、これらの各電極上にはシリコン酸化物、たとえば二酸化シリコン膜(SiO)からなる堆積膜を形成してもよい。
【0024】
図示していないが、圧電体142の第2主面には下部電極、半導体基板がこの順序で形成されている。下部電極、圧電体142、および第4駆動電極166(第3駆動電極164)までの厚みはたとえば約1.4μmである。なお、圧電体142の第1主面に設けられた第3駆動電極164、第4駆動電極166、および第2検出電極168は共に同じ厚みで形成される。また下部電極の厚みは、第3駆動電極164、第4駆動電極166、および第2検出電極168のそれらと同じ厚みで形成される。なお、第1振動腕120に形成される各駆動電極、各検出電極の厚みも第2振動腕130側と同じ大きさである。
【0025】
ここで、下部電極には、たとえば白金(Pt)/チタン(Ti)の積層膜などを用いることが可能であり、上部電極である第1駆動電極144(第2駆動電極146、第1検出電極148、第3駆動電極164、第4駆動電極166、および第2検出電極168)には、たとえば酸化イリジウム(IrO)/イリジウム(Ir)の積層膜や金(Au)膜などを用いることが可能である。圧電体142は、強誘電体層であり、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)膜やランタンドープジルコン酸チタン酸鉛(PLZT)膜などを用いることが可能である。なお、PZT層やPLZT層はゾルゲル法等により形成される。
【0026】
図2に示す圧電体142であって、第1駆動電極144と下部電極とに挟まれる部分には、第1駆動電極144に供給される供給電圧V1と下部電極に供給される供給電圧V3による電位差が生じる。すなわち、圧電体142であって第1駆動電極144と下部電極とに挟まれる部分には電位が(V1−V3)である電圧Vs1が印加されることになる。電圧Vs1が印加される圧電体142の該部分は電圧Vs1により圧縮・伸長変形し、第1伸縮運動を行う。
【0027】
一方、圧電体142であって、第2駆動電極146と下部電極とに挟まれる部分には、第2駆動電極146に供給される供給電圧V2と下部電極に供給される供給電圧V3による電位差が生じる。すなわち、圧電体142であって第2駆動電極146と下部電極とに挟まれる部分には電位が(V2−V3)である電圧Vs2が印加されることになる。したがって電圧Vs2が印加される圧電体142の該部分は電圧Vs2により伸長・圧縮変形し、上記第1伸縮運動とは逆位相の第2伸縮運動を行う。
【0028】
第1伸縮運動および第2伸縮運動により振動子100の第1振動腕120(第2振動腕130)はX方向に互いに離間および互いに接近する方向、すなわち、横方向の横振動を行う。振動子100の形状が対称に形成されている場合、図2(a)に示す振動子100のように、第1振動腕120および第2振動腕130が正常な振動方向に振動することになる。しかし、振動子100の形状がわずかに非対称に形成されている場合、図2(b)に示す振動子100のように、第1振動腕120および第2振動腕130が正常な振動方向と異なり、不正振動を含む振動方向に振動することになる。
【0029】
正常な振動方向に振動する場合、第1検出電極148は、図2(a)に示すように第1の検出電極部148aに生成される電荷量と、第2の検出電極部148bに生成される電荷量とが常に等しく逆極性となる。同様に、第2検出電極168は、図2(a)に示すように第1の検出電極部168aに生成される電荷量と、第2の検出電極部168bに生成される電荷量とが常に等しく逆極性となる。たとえば、第1の検出電極部148aに3つの負電荷が生成されると、第2の検出電極部148bに3つの正電荷が生成され、第1振動腕120と逆位相となる第2振動腕130第1の検出電極部168aに3つの負電荷が生成され、第2の検出電極部168bに3つの正電荷が生成される。
【0030】
しかし、不正振動を含む振動方向に振動する場合、第1検出電極148は、図2(b)に示すように第1の検出電極部148aに生成される電荷量と、第2の検出電極部148bに生成される電荷量とが等しくなく逆極性となる。同様に、第2検出電極168は、図2(b)に示すように第1の検出電極部168aに生成される電荷量と、第2の検出電極部168bに生成される電荷量とが等しくなく逆極性となる。たとえば、第1の検出電極部148aに2つの負電荷が生成されると、第2の検出電極部148bに4つの正電荷が生成され、第1振動腕120と逆位相となる第2振動腕130第1の検出電極部168aに4つの負電荷が生成され、第2の検出電極部168bに2つの正電荷が生成される。
【0031】
よって、図2(b)に示す、第1の検出電極部148aと第2の検出電極部148bとの合成電圧は1つの電荷分だけ正電圧となり、第1の検出電極部168aと第2の検出電極部168bとの合成電圧は1つの電荷分だけ負電圧となる。なお、第1の検出電極部148aと第2の検出電極部148bとの合成電圧は、第1検出電極148で検出される電気信号の電圧であり、第1の検出電極部168aと第2の検出電極部168bとの合成電圧は、第2検出電極168で検出される電気信号の電圧である。
【0032】
そのため、振動子100は、正常な振動方向以外の方向に不正振動が生じると、図2(b)に示すように第1検出電極148および第2検出電極168に電圧が生成され、ノイズが検出されることになる。図3は、第1検出電極148および第2検出電極168で検出される電気信号およびノイズ信号を示す波形図である。図3(a)に示す波形は、第1検出電極148で検出される電気信号Aとノイズaとが示されている。電気信号Aは、振動子100に角速度を加えたとき第1振動腕120に生じるコリオリ信号であり、ノイズaは不正振動により第1振動腕120に生じる信号である。図3(b)に示す波形は、第2検出電極168で検出される電気信号Bとノイズbとが示されている。電気信号Bは、振動子100に角速度を加えたとき第2振動腕130に生じるコリオリ信号であり、ノイズbは不正振動により第2振動腕130に生じる信号である。
【0033】
第1検出電極148で検出される信号と、第2検出電極168で検出される信号とは、逆位相になるので、電気信号Aと電気信号Bとが逆位相になり、ノイズaとノイズbとが逆位相になる。本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置では、この関係を利用し、第1検出電極148で検出されたノイズaで第2振動腕130の不正振動を抑え、第2検出電極168で検出されたノイズbで第1振動腕120の不正振動を抑える構成を採用している。
【0034】
図4は、本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置の構成を示す概略図である。図4に示す角速度検出装置では、振動子100、駆動回路200、検出回路300を備えている。振動子100は、第1振動腕120と第2振動腕130とを有し、第1振動腕120に第1駆動電極144、第1の検出電極部148a、制御電極150、第2の検出電極部148b、および第2駆動電極146が形成され、第2振動腕130に第3駆動電極164、第1の検出電極部168a、制御電極170、第2の検出電極部168b、および第4駆動電極166が形成されている。
【0035】
駆動回路200は、第1駆動電極144、第2駆動電極146、第3駆動電極164および第4駆動電極166に接続し、振動子100の第1振動腕120および第2振動腕130を振動方向に駆動する。
【0036】
検出回路300は、第1検出電極148および第2検出電極168に接続し、振動子100に角速度が加わることで生じる電気信号を検出する。
【0037】
さらに、第1検出電極148の第1の検出電極部148aと第2の検出電極部148bとの合成電圧が、第2振動腕130の制御電極170に印加され、第2検出電極168の第1の検出電極部168aと第2の検出電極部168bとの合成電圧が、第1振動腕120の制御電極150に印加される。
【0038】
これにより、第1振動腕120は、図3に示したノイズaの逆位相のノイズbの信号が制御電極150に印加され、ノイズaを生じる不正振動を抑える駆動を行なう。同様に、第2振動腕130は、図3に示したノイズbの逆位相のノイズaの信号が制御電極170に印加され、ノイズbを生じる不正振動を抑える駆動を行なう。よって、本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置は、振動子100の不正振動を抑え、不正振動によるノイズを小さくすることができる。
【0039】
検出回路300は、検出した電気信号A,Bに対して予め定めた処理を行ない、検出した角速度の結果を出力する。検出回路300は、不正振動によるノイズが小さくなるので、SN比が改善する。なお、検出回路300で用いる電気信号A,Bに対する処理は、公知の処理を用いているため詳細な説明を省略する。
【0040】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置は、第1振動腕120に形成した第1の検出電極部148aおよび第2の検出電極部148bの合成電圧を、第2振動腕130の制御電極170に印加し、第2振動腕130に形成した第1の検出電極部168aおよび第2の検出電極部168bの合成電圧を、第1振動腕120の制御電極150に印加することで、逆位相となる信号を制御電極150,170に印加することができ、振動子100の不正振動を抑え、不正振動によるノイズを小さくすることができる。そのため、本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置は、SN比の劣化を抑え、従来、不正振動が原因で不良品としていたものを良品とすることができ、歩留まりを改善することができる。
【0041】
なお、本発明の実施の形態1に係る制御電極150は、第1の検出電極部148aと、第2の検出電極部148bとに挟まれ、第1振動腕120の中立面上の位置に形成してある。同様に、本発明の実施の形態1に係る制御電極170は、第1の検出電極部168aと、第2の検出電極部168bとに挟まれ、第2振動腕130の中立面上の位置に形成してある。しかし、制御電極150,170の形状は、これに限定されるものではなく、複数本に分け、それぞれを振動腕の中立面に対して対称の位置に形成してもよい。
【0042】
具体的に、図5は、本発明の実施の形態1に係る角速度検出装置の振動子の別の構成を示す断面図である。なお、図5に示す振動子101の断面図は、図1に示す振動子100の切断線IIA−IIAに沿った断面図と対応する位置で切断した断面図である。
【0043】
図5に示す振動子101は、図1に示す振動子100と異なり、制御電極150,170が第1の制御電極部150a,170aと、第2の制御電極部150b,170bとを有している。そして、第1の制御電極部150aと第2の制御電極部150bとは、第1振動腕120の中立面に対して対称の位置に形成し、第1の制御電極部170aと第2の制御電極部170bとは、第2振動腕130の中立面に対して対称の位置に形成してある。
【0044】
制御電極150,170は、第1の制御電極部150a,170aと、第2の制御電極部150b,170bとで構成することで、振動腕の中立面の位置以外にも不正振動を抑える制御信号を印加することができるので、より効率よく不正振動を抑えることが可能になる。
【0045】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る角速度検出装置は、第1の検出電極部148a,168aおよび第2の検出電極部148b,168bで検出することができるノイズの電圧が小さい場合に、ノイズの電圧を増幅して制御電極150,170に印加する構成である。図6は、本発明の実施の形態2に係る角速度検出装置の構成を示す概略図である。
【0046】
図6に示す角速度検出装置は、振動子100、駆動回路200、検出回路300、増幅回路400,500を備えている。なお、図6に示す角速度検出装置は、増幅回路400,500を備えている以外、図4に示した角速度検出装置と同じ構成であるため、同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明は繰返さない。
【0047】
増幅回路400は、第1検出電極148の第1の検出電極部148aと第2の検出電極部148bとの合成電圧を、予め定めた増幅率で増幅して、第2振動腕130の制御電極170に印加する。増幅回路500は、第2検出電極168の第1の検出電極部168aと第2の検出電極部168bとの合成電圧を、予め定めた増幅率で増幅して、第1振動腕120の制御電極150に印加する。
【0048】
これにより、第2検出電極168の第1の検出電極部168aと第2の検出電極部168bとの合成電圧が低くい場合であっても、第1振動腕120に生じる不正振動を抑えることができる。また、第1検出電極148の第1の検出電極部148aと第2の検出電極部148bとの合成電圧が低くい場合であっても、第2振動腕130に生じる不正振動を抑えることができる。なお、制御電極150,170に印加される信号は、第1振動腕120,第2振動腕130に生じるノイズの信号対して常に逆位相となるので、電圧(振幅)を調整するだけでよい。
【0049】
以上のように、本発明の実施の形態2に係る角速度検出装置は、第1の検出電極部148a,168aおよび第2の検出電極部148b,168bの合成電圧を増幅して、制御電極170,150に印加する増幅回路400,500をさらに備えるので、合成電圧が低い場合であっても、第1振動腕120,第2振動腕130に生じる不正振動を抑えることができ、不正振動によるノイズを小さくすることができる。
【0050】
なお、増幅回路400,500は、予め定めてある増幅率に固定してある場合に限定されるものではなく、第1の検出電極部148a,168aおよび第2の検出電極部148b,168bの合成電圧が予め定めた値以下になるように、制御電極170,150に印加する合成電圧の増幅率を制御してもよい。
【0051】
つまり、制御電極150に制御電圧を印加することで第1振動腕120の不正振動が小さくなり、それに伴い第1の検出電極部148aおよび第2の検出電極部148bの合成電圧も小さくなる。第1の検出電極部148aおよび第2の検出電極部148bの合成電圧が小さくなることで、制御電極170に印加する制御電圧も小さくなるので、第2振動腕130の不正振動が抑えられなくなり、第1の検出電極部168aおよび第2の検出電極部168bの合成電圧が逆に大きくなる。
【0052】
そこで、増幅回路400,500は、第1の検出電極部148a,168aおよび第2の検出電極部148b,168bの合成電圧が予め定めた値になるように、フィードバック制御することで、安定して第1振動腕120,第2振動腕130に生じる不正振動を抑えることができる。つまり、一方の振動腕から他方の振動腕の制御電極に印加する制御信号が小さくなることで、他方の振動腕の第1の検出電極部148a,168aおよび第2の検出電極部148b,168bの合成電圧が予め定めた値より大きくならないように、他方の振動腕の制御電極に印加する制御信号を増幅する。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
100,101 振動子、110 基部、120 第1振動腕、130 第2振動腕、142 圧電体、144 第1駆動電極、146 第2駆動電極、148 第1検出電極、148a,168a 第1の検出電極部、148b,168b 第2の検出電極部、150,170 制御電極、150a,170a 第1の制御電極部、150b,170b 第2の制御電極部、164 第3駆動電極、166 第4駆動電極、168 第2検出電極、200 駆動回路、300 検出回路、400,500 増幅回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの腕部に駆動電極と検出電極とを有する音叉型の振動子と、
前記駆動電極に接続し、前記振動子の前記腕部を振動方向に駆動する駆動回路と、
前記検出電極に接続し、前記振動子に角速度が加わることで生じる電気信号を検出する検出回路と
を備える角速度検出装置であって、
前記振動子は、前記腕部の前記振動方向を制御する制御電極をさらに有し、
前記検出電極は、前記腕部の中立面に対して対称の位置に形成した第1の検出電極部と、第2の検出電極部とを有し、
一方の前記腕部に形成した前記第1の検出電極部および前記第2の検出電極部の合成電圧を、他方の前記腕部の前記制御電極に印加し、他方の前記腕部に形成した前記第1の検出電極部および前記第2の検出電極部の合成電圧を、一方の前記腕部の前記制御電極に印加する角速度検出装置。
【請求項2】
前記第1の検出電極部および前記第2の検出電極部の合成電圧を増幅して、前記制御電極に印加する増幅回路をさらに備える、請求項1に記載の角速度検出装置。
【請求項3】
前記増幅回路は、前記第1の検出電極部および前記第2の検出電極部の合成電圧が予め定めた値以下になるように、前記制御電極に印加する合成電圧の増幅率を制御する、請求項2に記載の角速度検出装置。
【請求項4】
前記制御電極は、前記腕部の中立面上に形成してある、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の角速度検出装置。
【請求項5】
前記制御電極は、前記腕部の中立面に対して対称の位置に形成した第1の制御電極部と、第2の制御電極部とを有する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の角速度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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