説明

解体作業機の油圧駆動装置

【課題】少ない流量で破砕機の開閉速度を上げることを可能にする解体作業機の油圧駆動装置を提供する。
【解決手段】シリンダ19、20の伸び動作時に、一方のシリンダ19のロッド室19bからの戻り油をヘッド室19aに回生する差動回路55と、他方のシリンダ20のヘッド室20aに圧油を供給するように切り換わるシーケンス弁47とを設ける。他方のシリンダ20のヘッド室20aとロッド室20bを繋ぐ油路に第2パイロットチェック弁48を設け、他方のシリンダ20のロッド室20bを開放させる第1切換弁51を設ける。シリンダ19、20の縮み動作時に、他方のシリンダ20のヘッド室20aの圧油を蓄圧するアキュームレータ52と、アキュームレータ52に対する圧油の流れを制御する第2切換弁54と、一方のシリンダ19のヘッド室19aからの戻り油をアキュームレータ52に導く第3パイロットチェック弁49とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄骨・鉄筋コンクリート造の構造物などの解体に用いられる解体作業機の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鉄骨・鉄筋コンクリート造の構造物などを解体する際には、解体作業機が多用されている(例えば、特許文献1参照)。この種の解体作業機1は、例えば図5に示すように、下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3上に上下方向に起倒自在に取り付けられたフロント作業機4とを備えて構成されている。
【0003】
また、フロント作業機4は、後端が上部旋回体3に回動自在に支持されたブーム5と、ブーム5の先端に回動自在に支持されたジブ6と、ジブ6の先端に回動自在に支持されたアーム7と、アーム7の先端側に回動自在に取り付けられた破砕機8とを備えて多関節状に形成されている。そして、ブームシリンダ9とジブシリンダ10とアームシリンダ11がそれぞれ伸縮駆動することにより、ブーム5とジブ6とアーム7がそれぞれ回動して起倒し、アタッチメントシリンダ12が伸縮駆動することにより、リンク機構13を介して破砕機8が回動する。なお、油圧ショベルのバケットを破砕機8に交換し、解体作業機1として使用できるように構成したものもある。
【0004】
さらに、破砕機8は、図6に示すように、アーム7に取り付けるためのブラケット14と、旋回ベアリング15と、旋回ベアリング15に取り付けられたボディー16と、ボディー16にピン結合された一対のロッカビーム17、18と、一対のロッカビーム17、18をそれぞれ回転駆動させるための一対のロッカビームシリンダ19、20とを備えて構成されている。また、各ロッカビームシリンダ19、20に圧油を供給するためのスイベルジョイント21と、ボディー16を回転させるための旋回モータ22と、一対のロッカビーム17、18にピン23、24で連結され、一対のロッカビーム17、18を同期して動かすためのリンク25とを備えて構成されている。
【0005】
そして、この破砕機8では、旋回モータ22に圧油を供給することで、旋回ベアリング15を介してボディー16が軸線O1周りに回転し、一対のロッカビーム17、18の向きを調整することができる。また、スイベルジョイント21から一対のロッカビームシリンダ19、20に圧油を供給することで、一対のロッカビーム17、18が開閉駆動し、鉄骨・鉄筋コンクリート造の構造物などを破砕することができる。
【0006】
一方、解体作業機の油圧駆動回路(油圧駆動装置)Aは、例えば図7に示すように、上部旋回体3の油圧駆動回路26と破砕機8の油圧駆動回路27とを備え、上部旋回体3の油圧駆動回路26は、エンジン28とメインポンプ29、30とコントロールバルブ31とタンク32を備えて構成されている。
【0007】
また、破砕機8の油圧駆動回路27は、旋回モータ側油圧回路33とロッカビームシリンダ側油圧回路34とを備えている。そして、旋回モータ側油圧回路33は、上部旋回体3の油圧駆動回路26のコントロールバルブ31と旋回モータ22を繋ぐ回路であり、2つのオーバーロードリリーフ弁35、36を備えて構成されている。一方、ロッカビームシリンダ側油圧回路34は、上部旋回体3の油圧駆動回路26のコントロールバルブ31と一対のロッカビームシリンダ19、20をスイベルジョイント21を介して繋ぐ回路であり、リリーフ弁37及びチェック弁38からなるカウンタバランス弁39と、パイロットチェック弁40とを備えて構成されている。
【0008】
そして、上記構成からなる解体作業機の油圧駆動回路Aにおいて、無負荷の状態で一対のロッカビームシリンダ19、20を伸ばすとき(伸び動作時)には、各ロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aにメインポンプ29、30から圧油が供給されるとともに、各ロッカビームシリンダ19、20のロッド室19b、20bの戻り油がパイロットチェック弁40を通じてヘッド室19a、20aに回生(再生)される。また、破砕機8が鉄筋コンクリートなどを噛み込んで、各ロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aの圧力が上がると、リリーフ弁37のパイロット室にヘッド室19a、20aの圧力が作用して、このリリーフ弁37が開き、ロッド室19b、20bからの戻り油がコントロールバルブ31を介してタンク32に開放される。
【0009】
一方、一対のロッカビームシリンダ19、20を縮めるとき(縮み動作時)には、カウンタバランス弁39の入口圧がパイロットチェック弁40に導かれ、このパイロットチェック弁40が閉じた状態で保持される。このため、メインポンプ29、30から供給される圧油は、カウンタバランス弁39のチェック弁38から各ロッカビームシリンダ19、20のロッド室19b、20bに供給され、ヘッド室19a、20aからの戻り油がコントロールバルブ31を通じてタンク32に開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−189932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の解体作業機の油圧駆動回路(油圧駆動装置)Aにおいては、破砕機8を駆動するために、大きく離れた上部旋回体3と破砕機8をホースなどの配管で接続し、大量の圧油を破砕機8に供給しているため、配管の圧力損失による動力損失が大きく、燃費が悪いという問題があった。
【0012】
さらに、ロッカビームシリンダ19、20を駆動する際の圧力損失を低減するために太い配管が必要になる。また、破砕機8に大流量の圧油を供給するため、破砕機8の応答性が悪く、さらに、他の作業装置(ブームシリンダ9、ジブシリンダ10、アームシリンダ11、アタッチメントシリンダ12、上部旋回体3の旋回装置など)との連動操作性が悪いという問題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、少ない流量で破砕機の開閉速度を上げることができ、配管の圧力損失の低減、破砕機の応答性の向上、他の作業装置との連動操作性の向上を図ることを可能にする解体作業機の油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0015】
請求項1記載の解体作業機の油圧駆動装置は、一対のロッカビームシリンダが伸縮駆動することによってリンクで結合された一対のロッカビームが同期して開閉駆動する破砕機を備えた解体作業機の油圧駆動装置であって、カウンタバランス弁と第1パイロットチェック弁を備え、ロッカビームシリンダの伸び動作時に、一方のロッカビームシリンダのロッド室からの戻り油を一方のロッカビームシリンダのヘッド室に回生する差動回路と、一対のロッカビームシリンダのヘッド室を繋ぐ油路に設けられ、ロッカビームシリンダの伸び動作時に、一方のロッカビームシリンダのヘッド室の圧力が規定圧以上になると、他方のロッカビームシリンダのヘッド室に圧油を供給するように切り換わるシーケンス弁と、他方のロッカビームシリンダのヘッド室とロッド室を繋ぐ油路に設けられた第2パイロットチェック弁と、他方のロッカビームシリンダのヘッド室の圧力が所定の圧力になるとともに切り換って他方のロッカビームシリンダのロッド室を開放させる第1切換弁と、ロッカビームシリンダの縮み動作時に、他方のロッカビームシリンダのヘッド室の圧油を蓄圧するためのアキュームレータと、シーケンス弁の入口圧の大きさに応じて切り換り、アキュームレータに対する圧油の流れを制御する第2切換弁と、一対のロッカビームシリンダのヘッド室を繋ぐ油路に設けられ、ロッカビームシリンダの縮み動作時に、一方のロッカビームシリンダのヘッド室からの戻り油をアキュームレータに導くための第3パイロットチェック弁とを備えて構成されていることを特徴とする。
なお、「回生」とは、戻り油をタンクに戻すことなくロッカビームシリンダに供給してロッカビームシリンダの伸縮駆動に利用することを意味する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の解体作業機の油圧駆動装置においては、無負荷の状態におけるロッカビームシリンダの伸び動作時、すなわち、無負荷の状態で破砕機(一対のロッカビーム)を閉じるとき、シーケンス弁によって一方のロッカビームシリンダのヘッド室にのみ圧油を供給し、且つ差動回路によって一方のロッカビームシリンダのロッド室からの戻り油がヘッド室に回生される。また、他方のロッカビームシリンダは、第2パイロットチェック弁が開いてロッド室からヘッド室に戻り油が回生され、且つ不足油量がアキュームレータから供給されて、一方のロッカビームシリンダと同期(連動)して伸びる。これにより、少ない流量で、破砕機(一対のロッカビーム)が閉じる速度を上げることができる。
【0017】
また、破砕機を閉じる動作で負荷が加わったときは、すなわち、一方のロッカビームシリンダのヘッド室の圧力が規定圧以上になり、他方のロッカビームシリンダのヘッド室に圧油を供給するようにシーケンス弁が切り換わると、一対のロッカビームシリンダのヘッド室に圧油が供給される。さらに、他方のロッカビームシリンダのヘッド室の圧力が所定の圧力になって第1切換弁が切り換り、他方のロッカビームシリンダのロッド室が開放され、このロッド室からの戻り油がタンクに戻される。これにより、少ない流量でロッカビームシリンダを駆動するようにした場合であっても、従来と同様の破砕力を確保することが可能になる。
【0018】
一方、ロッカビームシリンダの縮み動作時、すなわち、破砕機(一対のロッカビーム)を開くときには、シーケンス弁によって一方のロッカビームシリンダのロッド室にのみ圧油を供給する。また、第2パイロットチェック弁が切り換わって他方のロッカビームシリンダのヘッド室とロッド室が連通し、ヘッド室からの戻り油の一部がロッド室に回生される。さらに、各ロッカビームシリンダのヘッド室からの残りの戻り油がアキュームレータに蓄圧される。これにより、少ない流量で、破砕機の開く速度を上げることが可能になる。また、戻り油の流量を大幅に減らすことができる。
【0019】
よって、請求項1記載の解体作業機の油圧駆動装置によれば、上部旋回体の油圧源から破砕機に供給する圧油の流量及び破砕機からタンクに戻る戻り油の流量を大幅に減らすことができ、少ない流量で破砕機の開閉速度を上げることができる。これにより、配管による圧力損失を下げることができ、燃費を改善することが可能になる。
【0020】
また、破砕機に供給する圧油の流量を減らすことができるので、解体作業機の連動操作性を向上させることが可能になる。さらに、少ない流量で破砕機の開閉速度を上げることができることで、上部旋回体から破砕機に接続する配管を細くすることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る解体作業機の油圧駆動装置(油圧駆動回路)を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る解体作業機の油圧駆動装置(油圧駆動回路)を示す図であり、無負荷状態でロッカビームを閉じる際の油圧駆動装置の状態を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る解体作業機の油圧駆動装置(油圧駆動回路)を示す図であり、負荷が加わった状態でロッカビームを閉じる際の油圧駆動装置の状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る解体作業機の油圧駆動装置(油圧駆動回路)を示す図であり、ロッカビームを開く際の油圧駆動装置の状態を示す図である。
【図5】解体作業機を示す図である。
【図6】破砕機を示す図である。
【図7】従来の解体作業機の油圧駆動装置(油圧駆動回路)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1から図6を参照し、本発明の一実施形態に係る解体作業機の油圧駆動装置について説明する。ここで、本実施形態は、例えば鉄骨・鉄筋コンクリート造の構造物などの解体に用いられる解体作業機の油圧駆動装置に関するものである。このため、本実施形態では、図5から図7に示した解体作業機の油圧駆動装置A及び解体作業機1と同様の構成に対し同一符号を付して説明を行う。
【0023】
本実施形態の解体作業機の油圧駆動装置(油圧駆動回路)Bは、図1に示すように、上部旋回体3の油圧駆動回路26と破砕機8の油圧駆動回路45とを備え、上部旋回体3の油圧駆動回路26は、エンジン28とメインポンプ29、30とコントロールバルブ31とタンク32を備えて構成されている。
【0024】
また、破砕機8の油圧駆動回路45は、旋回モータ側油圧回路33(図示省略;図7参照)とロッカビームシリンダ側油圧回路46とを備えている。旋回モータ側油圧回路33は、上部旋回体3の油圧駆動回路26のコントロールバルブ31と旋回モータ22を繋ぐ回路であり、2つのオーバーロードリリーフ弁35、36を備えて構成されている。
【0025】
一方、本実施形態のロッカビームシリンダ側油圧回路46は、上部旋回体3の油圧駆動回路26のコントロールバルブ31と一対のロッカビームシリンダ19、20をスイベルジョイント21を介して繋ぐ回路である。
【0026】
そして、このロッカビームシリンダ側油圧回路46は、第1リリーフ弁37及び第1チェック弁38を備えるカウンタバランス弁39と、第1パイロットチェック弁40と、シーケンス弁47と、第2パイロットチェック弁48と、第3パイロットチェック弁49と、第2チェック弁50と、第1切換弁51と、アキュームレータ52と、第2リリーフ弁53と、第2切換弁54とを備えて構成されている。
【0027】
カウンタバランス弁39と第1パイロットチェック弁40は、一方のロッカビームシリンダ19のロッド室19bからの戻り油を一方のロッカビームシリンダ19のヘッド室19aに回生(再生)する差動回路55を構成している。そして、カウンタバランス弁39の第1リリーフ弁37は、コントロールバルブ31と各ロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aを繋ぐ第1油路56からパイロット圧を導くように第1油路56に繋げて設けられるとともに、コントロールバルブ31と各ロッカビームシリンダ19、20のロッド室19b、20bを繋ぐ第2油路57に繋げて(コントロールバルブ31と一方のロッカビームシリンダ19のロッド室19bを繋ぐ第3油路58に)設けられている。また、カウンタバランス弁39の第1チェック弁38は、第3油路58の第1リリーフ弁37を挟んでコントロールバルブ31側と一方のロッカビームシリンダ19のロッド室19b側とにそれぞれ繋げて設けられている。
【0028】
また、第1パイロットチェック弁40は、第1油路56の一方のロッカビームシリンダ19とコントロールバルブ31の間と、第3油路58(第2油路57)の一方のロッカビームシリンダ19と第1リリーフ弁37(第1チェック弁38)の間にそれぞれ、第4油路59で繋げて設けられている。さらに、この第1パイロットチェック弁40は、第3油路58ひいてはこの第3油路58が繋がる第2油路57からパイロット圧を導くように、第3油路58の第1リリーフ弁37と第2油路57の間に繋げられている。
【0029】
シーケンス弁47は、第1油路56の一方のロッカビームシリンダ19のヘッド室19aと他方のロッカビームシリンダ20のヘッド室20aの間に設けられている。すなわち、シーケンス弁47は、一対のロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aを繋ぐ油路に設けられている。また、シーケンス弁47は、第1油路56のシーケンス弁47と一方のロッカビームシリンダ19の間からパイロット圧を導くように設けられている。
【0030】
第2パイロットチェック弁48は、第1油路56の他方のロッカビームシリンダ20とシーケンス弁47の間と第2油路57にそれぞれ、第5油路60で繋げて設けられている。すなわち、第2パイロットチェック弁48は、他方のロッカビームシリンダ20のヘッド室20aとロッド室20bを繋ぐ油路に設けられている。また、第2パイロットチェック弁48は、第3油路58(第2油路57)の圧力を導くように、第3油路58の第1リリーフ弁37と第2油路57の間に繋げられている。
【0031】
第3パイロットチェック弁49は、第1油路56のシーケンス弁47と一方のロッカビームシリンダ19の間と、第5油路60のシーケンス弁47(第1油路56)と第2パイロットチェック弁48の間にそれぞれ、第6油路61で繋げて設けられている。すなわち、第3パイロットチェック弁49は、一対のロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aを繋ぐ油路に設けられている。また、第3パイロットチェック弁49は、第3油路58(第2油路57)からパイロット圧を導くように、第3油路58の第1リリーフ弁37と第2油路57の間に繋げられている。
【0032】
第2チェック弁50は、第2リリーフ弁53から流出した油を低圧回路に導くためのものであり、第1油路56の第1パイロットチェック弁40(第4油路59)と一方のロッカビームシリンダ19の間と、第2油路57の他方のロッカビームシリンダ20とコントロールバルブ31の間にそれぞれ、第7油路62で繋げて設けられている。
【0033】
第1切換弁51は、他方のロッカビームシリンダ20のヘッド室20aの圧力が所定の圧力になるとともに切り換って、他方のロッカビームシリンダ20のロッド室20bからの戻り油を第2油路57及びコントロールバルブ31を通じてタンク32に開放するためのものである。そして、この第1切換弁51は、第2油路57に設けられるとともに、第5油路60の第2パイロットチェック弁48と第3パイロットチェック弁49(第6油路61)の間から圧力を導くように第5油路60に繋げて設けられている。
【0034】
アキュームレータ52は、各ロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aの圧油を蓄圧するためのものであり、第8油路63を介して第1油路56の他方のロッカビームシリンダ20とシーケンス弁47の間に繋げて設けられている。また、第2リリーフ弁53は、第8油路63と第2チェック弁50を繋ぐ第9油路64に設けられている。
【0035】
第2切換弁54は、シーケンス弁47の入口圧の大きさに応じて切り換り、アキュームレータ52に対する圧油の流れを制御するためのものであり、アキュームレータ52と他方のロッカビームシリンダ20を繋ぐ第8油路63に設けられている。また、第2切換弁54は、第1油路56のシーケンス弁47と第3パイロット弁49(第6油路61)の間から圧力を導くように第1油路56に繋げて設けられている。
【0036】
そして、上記構成からなる本実施形態の解体作業機の油圧駆動装置Bにおいて、一対のロッカビームシリンダ19、20を伸ばし、破砕機8のロッカビーム17、18を閉じるとき(ロッカビームシリンダ19、20の伸び動作時)、無負荷の状態では、図2に示すように、第1油路56の圧力が低いため、シーケンス弁47が閉じている。これにより、メインポンプ29、30から供給される圧油は、一方のロッカビームシリンダ19のヘッド室19aにのみ供給され、圧油の供給によって一方のロッカビームシリンダ19が伸びる。また、一方のロッカビームシリンダ19が伸びると、一方のロッカビームシリンダ19のロッド室19bからの戻り油によって第1パイロットチェック弁40が開き、この戻り油が第3油路58を通じて第1油路56、さらに一方のロッカビームシリンダ19のヘッド室19aに回生して供給される。このようにロッド室19bからの戻り油がヘッド室19aに回生されることで、一方のロッカビームシリンダ19の伸長速度が増大し、一方のロッカビーム17が速く閉じるように駆動する。
【0037】
また、リンク25を介して一方のロッカビーム17に他方のロッカビーム18が繋がっているため、一方のロッカビーム17が速く閉じると、この一方のロッカビーム17に連動して他方のロッカビーム18が速く閉じる。すなわち、一対のロッカビーム17、18が速く閉じるように、他方のロッカビームシリンダ20が一方のロッカビームシリンダ19に同期して伸びる。また、このとき、他方のロッカビームシリンダ20のロッド室20bからの戻り油によって第2パイロットチェック弁48が開き、この戻り油が第2油路57、第5油路60、第1油路56を通じて他方のロッカビームシリンダ20のヘッド室20aに回生して供給される。さらに、第1油路57のシーケンス弁47からコントロールバルブ31の間の圧力が低いため、第2切換弁54が切り換り、第8油路63を通じてアキュームレータ52に蓄圧された圧油が他方のロッカビームシリンダ20のヘッド室20aに供給される。これにより、他方のロッカビームシリンダ20が確実に一方のロッカビームシリンダ19に同期して速く閉じるように駆動する。
【0038】
次に、負荷が加わった状態でロッカビームシリンダ19、20を伸ばし、ロッカビーム17、18を閉じる際には、すなわち、一対のロッカビーム17、18が鉄筋コンクリートなどを噛み込み、第1油路56の圧力が上昇すると(一方のロッカビームシリンダ19のヘッド室19aの圧力が規定圧以上になると)、図3に示すように、シーケンス弁47が開き(シーケンス弁47が他方のロッカビームシリンダ20のヘッド室20aに圧油を供給するように切り換り)、メインポンプ29、30からの圧油が各ロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aに供給される。
【0039】
また、第1油路56の圧力が上がると、この第1油路56の圧力が作用してカウンタバランス弁39の第1リリーフ弁37が開く。このため、一方のロッカビームシリンダ19のロッド室19bからの戻り油がカウンタバランス弁39(第1リリーフ弁37)、コントロールバルブ31を通じてタンク32に開放される。
【0040】
また、第1油路56の圧力が上がってシーケンス弁47が開き、他方のロッカビームシリンダ20のヘッド室20aにメインポンプ29、30の圧油が供給されると同時に、第5油路60の圧力が上がって第1切換弁51が切り換わり、他方のロッカビームシリンダ20のロッド室20bからの戻り油が第1油路57、コントロールバルブ31を通じてタンク32に開放される。さらに、第1油路56の圧力が上がることで第2切換弁54も切り換り、アキュームレータ52と他方のロッカビームシリンダ20の間が閉じられる。
【0041】
これにより、メインポンプ29、30からの圧油が各ロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aに供給され、且つ各ロッカビームシリンダ19、20のロッド室19b、20bからの戻り油がタンク32に開放されて、一対のロッカビームシリンダ19、20が同期して伸びる。そして、このように各ロッカビームシリンダ19、20に圧油が給排され、一対のロッカビーム17、18が同期して閉じることで、従来と同様の破壊力が確保され、鉄骨・鉄筋コンクリート造の構造物などがこれら一対のロッカビーム17、18によって好適に破砕されることになる。
【0042】
一方、破砕機8のロッカビーム17、18を開くとき(ロッカビームシリンダ19、20の縮み動作時)には、各ロッカビームシリンダ19、20のロッド室19b、20bに第2油路57を通じてメインポンプ29、30からの圧油を供給する。そして、第2油路57(第3油路58)の圧力が第1パイロットチェック弁40に導かれているため、この第1パイロットチェック弁40は閉じた状態で保持される。このため、メインポンプ29、30から供給される圧油は、第1チェック弁38から一方のロッカビームシリンダ19のロッド室19bに供給され、この一方のロッカビームシリンダ19が縮まる。また、ヘッド室19aからの戻り油は、その一部が第1油路56、コントロールバルブ31を通じてタンク32に開放される。
【0043】
さらに、リンク25を介して一方のロッカビーム17に他方のロッカビーム18が繋がっているため、一方のロッカビーム17が開くと、この一方のロッカビーム17に連動して他方のロッカビーム18が開く。すなわち、他方のロッカビームシリンダ20が一方のロッカビームシリンダ19に同期して縮んで、一対のロッカビーム17、18が開く。
【0044】
また、このとき、他方のロッカビームシリンダ20のヘッド室20aからの戻り油は、その一部が第2パイロットチェック弁48を通じてロッド室20bに回生される。これにより、他方のロッカビームシリンダ20ひいてはリンク25を介して繋がる一方のロッカビームシリンダ19が同期して速く開く。さらに、残りの戻り油は、第3パイロットチェック弁49によって一方のロッカビームシリンダ19のヘッド室19aから導かれた戻り油と合流し、第2切換弁54を通じてアキュームレータ52に蓄圧される。
【0045】
そして、本実施形態の解体作業機の油圧駆動装置Bにおいては、上記のように、無負荷の状態で破砕機8を閉じるとき、シーケンス弁47によって一方のロッカビームシリンダ19のヘッド室19aにのみメインポンプ29、30の圧油が供給され、且つ差動回路55によって一方のロッカビームシリンダ19のロッド室19bの戻り油がヘッド室19aに回生される。また、他方のロッカビームシリンダ20は、第2パイロットチェック弁48が開いてロッド室20bからヘッド室20aに戻り油が回生され、且つ不足油量がアキュームレータ52から供給されて、一方のロッカビームシリンダ19と同期(連動)して伸びる。これにより、少ないポンプ流量で、破砕機8の閉じる速度を上げることができる。
【0046】
また、破砕機8を閉じる動作で負荷が加わったときは、一対のロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aにメインポンプ29、30からの圧油が供給され、さらに、ロッド室19b、20bからの戻り油をタンク32に開放するので、少ない流量でロッカビームシリンダ19、20を駆動するようにした場合であっても、従来と同様の破砕力を確保することが可能になる。
【0047】
一方、破砕機8を開くときには、シーケンス弁47によって一方のロッカビームシリンダ19のロッド室19bにのみメインポンプ29、30からの圧油が供給される。また、第2パイロットチェック弁48が切り換わって他方のロッカビームシリンダ20のヘッド室20aとロッド室20bが連通し、ヘッド室20aからの戻り油の一部がロッド室20bに回生される。さらに、各ロッカビームシリンダ19、20のヘッド室19a、20aからの戻り油がアキュームレータ52に蓄圧される。これにより、少ない流量で、破砕機8の開く速度を上げることが可能になる。また、戻り油の流量を大幅に減らすことができる。
【0048】
よって、本実施形態の解体作業機の油圧駆動装置Bによれば、上部旋回体3の油圧源から破砕機8に供給する圧油の流量及び破砕機8からタンク32に戻る戻り油の流量を大幅に減らすことができ、少ない流量で破砕機8の開閉速度を上げることができる。これにより、配管による圧力損失を下げることができ、燃費を改善することが可能になる。
【0049】
また、破砕機8に供給する圧油の流量を減らすことができるので、解体作業機1の連動操作性を向上させることが可能になる。さらに、少ない流量で破砕機8の開閉速度を上げることができることで、上部旋回体3から破砕機8に接続する配管を細くすることも可能になる。
【0050】
以上、本発明に係る解体作業機の油圧駆動装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 解体作業機
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント作業機
5 ブーム
6 ジブ
7 アーム
8 破砕機
9 ブームシリンダ
10 ジブシリンダ
11 アームシリンダ
12 アタッチメントシリンダ
13 リンク機構
14 ブラケット
15 旋回ベアリング
16 ボディー
17 一方のロッカビーム
18 他方のロッカビーム
19 一方のロッカビームシリンダ
19a ヘッド室
19b ロッド室
20 他方のロッカビームシリンダ
20a ヘッド室
20b ロッド室
21 スイベルジョイント
22 旋回モータ
23 ピン
24 ピン
25 リンク
26 上部旋回体の油圧駆動回路
27 従来の破砕機の油圧駆動回路
28 エンジン
29 メインポンプ
30 メインポンプ
31 コントロールバルブ
32 タンク
33 旋回モータ側油圧回路
34 ロッカビームシリンダ側油圧回路
35 オーバーロードリリーフ弁
36 オーバーロードリリーフ弁
37 第1リリーフ弁
38 第1チェック弁
39 カウンタバランス弁
40 第1パイロットチェック弁
45 破砕機の油圧駆動回路
46 ロッカビームシリンダ側油圧回路
47 シーケンス弁
48 第2パイロットチェック弁
49 第3パイロットチェック弁
50 第2チェック弁
51 第1切換弁
52 アキュームレータ
53 第2リリーフ弁
54 第2切換弁
55 差動回路
56 第1油路
57 第2油路
58 第3油路
59 第4油路
60 第5油路
61 第6油路
62 第7油路
63 第8油路
64 第9油路
A 従来の油圧駆動装置(油圧駆動回路)
B 解体作業機の油圧駆動装置(油圧駆動回路)
O1 破砕機の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のロッカビームシリンダが伸縮駆動することによってリンクで結合された一対のロッカビームが同期して開閉駆動する破砕機を備えた解体作業機の油圧駆動装置であって、
カウンタバランス弁と第1パイロットチェック弁を備え、ロッカビームシリンダの伸び動作時に、一方のロッカビームシリンダのロッド室からの戻り油を一方のロッカビームシリンダのヘッド室に回生する差動回路と、
一対のロッカビームシリンダのヘッド室を繋ぐ油路に設けられ、ロッカビームシリンダの伸び動作時に、一方のロッカビームシリンダのヘッド室の圧力が規定圧以上になると、他方のロッカビームシリンダのヘッド室に圧油を供給するように切り換わるシーケンス弁と、
他方のロッカビームシリンダのヘッド室とロッド室を繋ぐ油路に設けられた第2パイロットチェック弁と、
他方のロッカビームシリンダのヘッド室の圧力が所定の圧力になるとともに切り換って他方のロッカビームシリンダのロッド室を開放させる第1切換弁と、
ロッカビームシリンダの縮み動作時に、他方のロッカビームシリンダのヘッド室の圧油を蓄圧するためのアキュームレータと、
シーケンス弁の入口圧の大きさに応じて切り換り、アキュームレータに対する圧油の流れを制御する第2切換弁と、
一対のロッカビームシリンダのヘッド室を繋ぐ油路に設けられ、ロッカビームシリンダの縮み動作時に、一方のロッカビームシリンダのヘッド室からの戻り油をアキュームレータに導くための第3パイロットチェック弁とを備えて構成されていることを特徴とする解体作業機の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−2326(P2012−2326A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140512(P2010−140512)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】