説明

解剖病理学における自動リーンメソッド

【課題】情報管理のよりよい調整によってAPラボ全体のワークフローを向上させる。
【解決手段】組織染色を行うラボで染色される組織サンプルに関連する情報を機械的に処理する方法であって、LISから患者のデータにアクセスするように構成されたラベルプリンタであって、データエレメントスキャナを有し、かつネットワーク接続されたラベルプリンタをカッティングステーションに隣接して配置し、組織カセットのデータエレメントからカセットデータを読み出し、カセットデータをLISにアップロードし、組織サンプルに対する試験指示にLISを介してアクセスし、それぞれの組織切片について行われる手順の試験手順識別子を符号化するラベルを印刷するようにラベルプリンタに指示し、手順の試験手順識別子を符号化するラベルを印刷し、それぞれのラベルをスライドに付し、少なくとも1つの組織切片を切断し、それを各ラベル付けされたスライドに載せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連する出願の相互参照]
本出願は、米国仮特許出願番号第60/751、807号、すなわち2005年12月19日に出願された、発明の名称AUTOMATED LEAN METHODS IN ANATOMICAL PATHOLOGY、代理人整理番号310/003/PPAの利益を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明の方法は、一般に解剖病理学の分野に関し、より具体的には組織染色の技術に関する。さらにより具体的には、本方法は、情報管理のよりよい調整によってAPラボ全体のワークフローを向上させる新しい技術を実証するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の製造工程は、1つに熟練した作業者、高い仕掛品在庫、絶え間ない生産促進、および生産計画の調整を含んでいることが多い。これらの特徴は、製品出荷、人材、高い仕掛品在庫、および組立てライン作業における非効率等のような制限効果を加えている。本来、リーン生産は、従来の製造に関連した問題を克服すべく製造または組立てライン工程で実施されていた。該リーン生産はトヨタの製造方式に基づいたものであり、その典型的な実践は、”The Machine that Changed the World”(1991年、Harper Collins社出版、James P. Womack著)に見出すことができる。リーン生産システムの基本理念は、可能な限り最も経済的な方法で生産することである。該リーン生産システムは、無駄な資源および時間を最小限にしながら、高品質の製品を生産する等のような顧客の要求を満たすことに重点的に取り組むことにより達成されるものである。
【0004】
病院をベースとした解剖病理学(「AP」)ラボは、個々の患者の事例を軸にして発展してきた。すなわち、各患者は、臨床医の初期診断に基づいて、1から約20の試験(スライド)までのいかなる試験をも要求する。したがって、APラボは、この初期のワークフローモデルを反映する一連の「バッチ」ベースの工程を発展させてきた。このようなAPラボに対応するために、企業は、このバッチ工程をエミュレートするワークフローソリューションを提供し、APラボは一連のバッチワークフローモジュールへと発展してきた。従来、IHC(免疫組織化学)染色および特殊染色による組織染色は手作業で行われていたが、アリゾナ州ツーソンにあるVentana Medical Systems社による320システムが現れる1991年頃までは、退屈な手作業の染色工程に対する代替方法はなかった。組織染色工程は、パラフィンに組織を埋め込むステップと、該組織を「切片」と呼ばれる薄片(4ミクロンが典型的である)に分割するステップと、顕微鏡のスライド上にその切片を載せるステップと、パラフィンに埋め込まれた組織切片を脱パラフィンするステップと、その時組織が存在している疎水性の環境を一連の段階的なキシレン/アルコール/水槽によって水性の環境へと変化させるステップと、5つの基本技術(H&E染色、パパニコロウ染色、IHC染色、ISH染色、または特殊染色)の1つを使用して、組織を染色するステップと、該組織を疎水性の環境に再度段階的に変えるステップと、最後に、記録保管のために組織にカバーグラスをかけるステップと、を含む一連の基本的なステップに分割される。規模の経済性のために、これらの工程の大半は、「一群(batch)」の試料で同時に行われる。自動化された組織染色は、その大部分が手作業の工程を模倣している一連の自動化されたバッチ工程と見なすことができる。
【0005】
例えば、後でミクロトームによって手作業で組織から切片を切断することができるように、最初のステップの1つは、パラフィンに組織を埋め込むことである。Sakura(TISSUE−TEK(商標))、ThermoShandon(EXCELSIOR(商標))、Leica(ASP300(商標))、およびVision Biosytems(PELORTS(商標))等のような企業および他の企業は、何百もの組織ブロックをすべてバッチモードで処理する組織プロセッサを提供している。連続的に組織を処理すると主張する1人の新規参入者、すなわちSakura Xpress(商標)がある。さらに、ほとんどのヘマトキシリン&エオシンの主要な染色システムも、該システムが多数のスライドのかごまたはトレーを同時に染色するという点でバッチといえる。例えば、LeicaXLStainer、SakuraDRS−60等を参照されたい。
【0006】
今日のAPラボの重要な関心事は、試料追跡である。臨床医およびプライマリーケアの専門家がより多くの時間およびより速いターンアラウンドタイムを要求するので、病院は、試験要件の規模および複雑さという難題に継続して取り組んでいる。より多く/より良く/より速くというこの圧力に対抗するには、取り違えおよび過失が生じないように、明確に試料を追跡する必要がある。コンピュータは、該追跡を行うのに理想的に位置付けられており、したがって、病院情報システムが承認から試験まですべての病院をベースとした活動を追跡するために開発された。さらに、ラボが顧客との接触を維持しながらその独自の要件を管理することができるように、システムベンダーは、病院情報システム(「HIS」)の一部またはそれと統合されたラボ情報システム(「LIS」)も設計した。典型的なLISは、Cerner社により、PathNet(登録商標)family of laboratory information solutions(Cerner社、カンザス州、カンザスシティ(Kansas City、KS))として設計および販売されている。
【0007】
今日のAPラボの典型的なワークフローを図1に示している。これは、さらなる改良に直結する手作業によるバッチ工程と、自動化されたバッチ工程とが併用されたものである。今後解決すべき根本的な課題は、組織染色工程全体に対する完全な情報追跡ソリューションの不足である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の方法による実施形態は、組織染色を行うラボで染色される組織サンプルに関連する情報を機械的に処理する方法であって、ラボ情報システム(LIS)から患者のデータに直接または間接的にアクセスするように構成されたラベルプリンタであって、該プリンタと電気的に通信するデータエレメントスキャナを有し、かつネットワーク接続されたラベルプリンタを、カッティングステーションに隣接して配置するステップと、カセットに関連する、組織サンプルを有する組織カセットのデータエレメントからカセットデータを読み出し、該カセットデータを前記LISにアップロードするステップと、前記組織サンプルから切断される幾つかの組織切片と、それぞれの組織切片について行われる手順とを決定する、前記組織サンプルに対する試験指示に前記カセットデータを用いてLISを介してアクセスするステップと、前記それぞれの組織切片について行われる手順の試験手順識別子を符号化するラベルを必要枚数印刷するように、ラベルプリンタに指示するステップと、前記それぞれの組織切片について行われる手順の試験手順識別子を符号化するラベルを印刷するステップと、前記それぞれのラベルをスライドに付するステップと、少なくとも1つの組織切片を切断し、それを各ラベル付けされたスライドに載せるステップと、
を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】受付から終了の署名までのその種々の工程を移動する組織サンプルの組織評価ストリームマップを示す流れ図である。
【図2】1つのシナリオで実行されるような方法を示す本発明の実施形態の図である。
【図3】本発明の代替の実施形態の図である。
【図4】LISの機能ブロックを示すダイアグラムである。
【図5】本明細書の技術の一実施形態における処理ステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.はじめに
リーン手法は、1)モデル化したい工程を観察するステップと、2)その工程を定義するステップと、3)既存の工程内の機会を定義するステップと、4)改良の機会を発展させるステップと、5)該改良を実施し維持するステップと、の5つの基本的なステップを含んでいる。解剖病理学ラボに適用されるようなリーン原理は、既存の工程のマップ開発が推奨される出発点であることを示唆している。図1に材料と情報との両方を含む1つの特別な組織学の生産経路を視覚化した組織学の工程マップが示されている。図の左側で、先ず試料が受理され(「検査サンプル受理」)、次に病院のラボ情報システム(「LIS」)を介して入力される依頼伝票が、試験が行われるように生成される。通常、LISは、依頼者および提供者を試験依頼、試験状態、および結果情報に接続するネットワーク接続されたソフトウェア事業である。通常、このシステムは包括的である、すなわち試験を依頼、または該試験依頼を処理する必要のある病院関係者はだれでも、このシステムにアクセスすることができる。該システムは、病院内の患者の試験依頼および試験データ、および院外の患者をベースとした院外から提出された試験依頼および試験データも格納している。LISには試験が行われる各患者の試験追跡用データベースがある。LISは患者にケース番号を割り当て、該患者のケース番号を、治療する内科医、そのケースに関与する他の内科医、入院患者/外来患者の状態、保険情報、依頼された試験、試験の状態、試験結果等のようなデータと関連付ける。
【0011】
一般的なAPラボの工程が本明細書で説明されるが、説明する一般的な工程の各々に対して多くのステップを含んでいる。受付は、LISを使用して試料を追跡する際の最初のステップである。試料確認、試験依頼、ケース番号等は、受け付け中にLISに割り当てられ、および/またはログインされる。APラボの中には、「受付番号」をさらに割り当てるところもあるが、これはそのAPラボだけの独自の番号体系である。典型的に、上述のデータは、通常患者を識別するために病院のLISによって割り当てられた唯一の識別子であるケース番号を含んでいる。LISデータベースには、APラボで行われる試験を定義するケース番号に関連付けられたさらなるデータがある。通常、そのような試験データは、第1の染色(「H&E」)および/または第2の染色(「特殊染色/IHC/ISH)」)等のような種類の染色試験を含んでいる。該第1の染色は、通常ヘマトキシリン‐エオジン組合せ染色である。第2の染色は、「特殊染色」、免疫組織化学(「IHC」)染色、またはインサイチュハイブリダイゼーション(in situ hybridization(「ISH」))染色を含んでいる。パパニコロウ染色はさらに別種の特殊染色である。
【0012】
さらに図1を参照して、いったんカセットが識別されてLISに入力されると、該カセットは次に肉眼視ステーション(grossing station)に入る。これは、「肉眼視」組織があらゆるさらなる分析的処理のために準備される場所である。適切な組織サンプルは、次の化学処理およびパラフィン浸潤のための組織サンプルを保持する開き戸を備えた、小さな孔のあいたプラスチック容器であるカセットに置かれる。該カセットは、消えないインク、またはバーコードまたはRFIDのようなマシン可読ラベルのいずれかで書かれたまたは符号化された何らかの形式のデータ要素を持っていなくてはならない。該データ要素は、カセットにある間試料を追跡するのに必要である。その後、カセット内の試料は、組織処理およびパラフィンへの埋め込みに提出される。組織処理は、通常徐々に高濃度にしたエタノールの複数の浴槽に試料を浸して組織を脱水し、次にクロロホルム、キシレン、またはHistoclear(商標)のような洗浄剤に浸し、最後に熱い溶融パラフィンワックスに浸す(浸潤)ことになる。この4時間に及ぶ工程中に、パラフィンワックスが水と置換する、すなわち柔らかく湿った組織は硬いパラフィンブロックになり、該組織をその後より多くの溶融ワックスを含む別のカセットに置いて(埋め込み)、冷却して固めることが可能である。得られた組織サンプルはその水がパラフィンと置換されており、組織の薄い本質的に透明な薄片すなわち「切片」に切り分けられるくらい硬い。
【0013】
切片の脆弱性のために、該サンプルは先ず切片工程において手作業で切断され、次に切片が平らにされ浮かぶ水槽の表面に浮かべられる。その後、切片がスライド表面に定着するように、各切片は、浮かんでいる切片の下のスライドを持ち上げることにより下から取り上げられる。スライドの切片を乾燥しベーキングした後、該切片は染色工程の準備ができたことになる。しかしながら、パラフィンに埋め込まれた切片は先ず脱パラフィンされ、その後パラフィン溶剤は、組織が再び水性の環境に浸されるまで連続してエタノール水溶液で(再度)交換されなければならない。水をベースにした染色が大半であるが、いずれの場合にも、染色は組織構造を選択的に浮き彫りにして組織サンプルの形態を明らかにするものである。該形態は、試料が正常かどうかを判断する鍵となる。正常な形態はそれ以上試験の必要がないことを示すが一方、疑わしい形態はさらなる第1および/または第2の染色用の再切断を指示してもよい。染色後、スライドは再び脱水され、不変のカバースリップスライドを作成するために非水性の接着剤を使用して組織切片上に接着されたガラスのカバープレートの使用が可能になる。最後に、スライドは、患者またはケース番号によって並べられたグループの形で、永久にラベル付けされ、分類され、再調査と分析のために病理学者に輸送されてもよい。この時点で、病理学者は、撮像、さらなる染色、または終了の署名が次のステップかどうかを判断する。
【0014】
組織染色は無傷細胞で行われてもよく、そのように行われたときは「細胞診」と呼ばれる。例えば、頚部の試料は、該頚部の表面がブラッシングおよび洗浄される洗浄工程によって歯頚部から採取され、洗浄された細胞は特別に処方された保存液に集められる。その後、細胞は、該細胞がさらなる染色操作で付着する帯電したスライドガラス上でろ過される。本発明の方法が組織サンプルで行われるかまたは細胞で行われるかは、本発明の目的には無関係である。ろ過および適用ステップを自動化する1つのシステムは、TriPath社(ノースカロライナ州、バーリントン(Burlington、NC))によって販売されている。
【0015】
なお、この基本的なフローはごく最近できたもので、10年ほど前まではすべての工程は手作業で行われていたことに留意すべきであろう。典型的な組織学ラボは、1日当たり500枚に及ぶスライドを共同で処理できる人を数人雇用してこれらのステップをすべて行ってもよい、そうすれば、組織は、APラボに留まっている間、分析過程の管理を通して往復することができる。自動化およびリーンシステムの構想の到来により、APラボのパラダイムは急速に発展している。以上より明らかなように、この工程中に生じる組織の取扱いのすべてについて、試料の正確な追跡が極めて重要になってきている。
B.定義
次の用語は、明細書および請求項の中で使用されるとき、次に示す意味を持つものとする。
【0016】
用語「ネットワーク接続されたラベルプリンタ」は、ラボ情報システムまたはネットワークに接続されたラベルプリンタを意味している。「ネットワーク接続」は、一般に、電子装置がデータおよびコマンド情報の両方を通信することができる電子ネットワークに接続されていることを意味している。本明細書の文脈において、ネットワーク接続されたラベルプリンタは、スライドラベルに印刷されるデータを受信する。ラベルプリンタは、印刷指示を受け取る準備ができた状態、その印刷キューにおける印刷ジョブの状態、スライドへの貼付けを待っている印刷されたラベル等に関する信号もネットワークに送信することができる。
【0017】
用語「ラベルプリンタ」および「ラベル」は、EBAR(商標)プリンタ(アリゾナ州ツーソン、ベンタナ(Ventana、Tucson、AZ))のような標準スライドラベル印刷装置およびそれに付属するラベルを含んでいる。上記EBARプリンタはネットワーク対応型ではないが、ネットワーク対応ラベルプリンタは、SATO CT410DTサーマルプリンタと呼ばれるGeneral Data(オハイオ州クリーブランド (Cleveland、OH))から供給され、StainerShield(商標)スライドラベルおよびUltraLabel(商標)Gold バージョン7ソフトウェアと共に使用される。スライドラベルは、スライドのすりガラス端部に適合する必要があり、該ラベルに対して行われる、キシレンおよびアルコールのような溶剤との接触を含む化学処理ステップに耐える必要もある。さらに、用語「プリンタ」は、スライドプリンタまたはスライドエッチャーのようなスライドに直接印刷する装置に適用してもよい。これらの装置は、レーザによってエッチングできまたは消えないインクでスライドにバーコードを直接印刷できるので、別のラベルを使用する必要がない。そのような装置の一例として、組織カセットにも印刷するLeica IPS(Leica Microsystems AG、ドイツ、ウェッツラー( Wetzlar、Germany))がある。
【0018】
用語「患者のデータ」は、患者に一意的に関連付けられた格納データまたはLISによってアクセス可能なデータを含んでいる。該患者のデータは、通常、患者の氏名、ケース番号、患者の組織サンプルに対して行われる試験、該試験と相互に関係あるプロトコルおよびそのそれぞれの識別番号、組織がLISへ入力された日付、患者に関連付けられた医師等を含んでいる。
【0019】
用語「カッティングステーション」は、ミクロトームまたは類似の装置を使用して、組織カセット内の組織を切片にするために設けられた場所を意味している。該カッティングステーションは、通常は組織学の技術者によって手作業で行われる後の切断作業のために、組織カセットがミクロトームに置かれている作業場所である。切片は約3〜6ミクロンの厚さであり、その後スライド上に取り上げられる水槽に「浮かべられ」ている。カッティングステーションは、水槽を備えたミクロトームを含み、例えばバーコードから情報を読み出すことができるマシンビジョン可能なスキャナをさらに含んでいてもよい。
【0020】
用語「LIS」は、「Labo Information Syatem」に対する省略表現である。LISは、ラボの複数の機器およびコンピュータを接続するソフトウェア駆動の電子ネットワークであると一般に理解されており、少なくとも該機器およびコンピュータの状態は中心に配置された1つまたは2つ以上のコンピュータによって監視されている。ソフトウェアの要素は、共通のネットワークプロトコルを共有する機器のグループの間での共通の制御および通信を可能にする。そのような1つのプロトコルがHL−7プロトコルである。該HL−7は、コンピュータアプリケーション間で医療特定データを交換するためのANSI規格である。HL−7は、健康環境のための開放型システム間相互接続(OSI:Open System Interconnection)層プロトコルの最上層(Level 7)を指す「Health Level 7」をいう意味である。現在、新しいラボの機器は大半このプロトコルを採用している。典型的なLISは、Cerner社により、PathNet(登録商標)family of laboratory information solutions(Cerner社、カンザス州、カンザスシティ(Kansas City、KS))として設計および販売されている。他のLISとしては、Impac(Tamtron)およびMediTechのLIS−Magicがある。
【0021】
用語「データエレメント」は、マシンまたは人が読み取り可能なフォーマットでデータを取り込み/格納するデバイスを意味している。例として、ケース番号のような英数字の情報およびバーコードスキャナが読み出すバーコードの両方を含んだスライドラベルが挙げられる。典型的なデータエレメントはバーコードラベルであるが、その他、高周波識別装置(「RFID:Radio Frequency Identification Device」)、クレジットカードに見られるような磁気的に符号化された情報を持つ磁気ストライプ、またはデジタルカメラによって読み出され、光学式文字認識(OCR:Optical Character Recognization)ソフトウェアによって翻訳できる光学的に符号化されたテキスト情報が挙げられる。バーコードは、光学的に符号化された要素1−Dバーコードおよび2−Dバーコード、データ行列、およびデータグリフ等のような完全に光学的に読み取り可能な装置も含むことができる。スライドラベル上の英数字文字はデータ要素であってもよい。英数字文字は、デジタルカメラ、OCRソフトウェアによって解読されたテキスト、および後の使用のために転送または格納される結果的に得られた情報によって走査されてもよい。
【0022】
用語「データエレメントスキャナ」は、上に定義されるようなデータ要素から符号化された情報を読み出すように構成された、あらゆるマシンビジョンシステムを含んでいる。典型的なスキャナとして、RFIDリーダ、バーコードスキャナ、磁気ストリップリーダ、デジタルカメラ等が挙げられる。
【0023】
用語「電気的に接続された」は、言及しているシステムが通信を所望している他のシステムにハード接続(例えば、電話回線、光ファイバーケーブル等)を介してまたは無線的に無線接続を介して電気的に接続されていることを意味しており、両システムは互いに信号を送信および/または受信できる。
【0024】
用語「組織カセット」は、パラフィンに埋め込む組織サンプルを配置し、含むように機能する組織サンプルケースの共通の記述子である。埋め込み後、組織カセットは、ミクロトームで後に切断する試料を配置するのに継続して使用される。試料は通常埋め込み装置に対して数百のバッチでロードされるので、組織カセットは、該組織カセットに関連付けられた基本的な識別情報を持っている必要がある。したがって、ラボが内部の組織サンプルを追跡するために、各カセットは、カセット番号、ケース番号、またはそれらの組合せのような少なくとも1つの唯一の識別子を持つ必要がある。通常、カセットには、バーコードに符号化された受け入れまたはケース番号情報、または消えないインクで書かれた英数字のテキストがある。本発明の方法において、いずれも本発明の範囲内にある。
【0025】
用語「カセットデータ」は、もしあればカセットの唯一の識別番号を指している。該カセットデータはカセットを追跡するのに組織学ラボで使用される。カセット番号も該カセットデータに含むことができる。
【0026】
「対応する患者の試験手順データを識別すること」という句の中で使用されるような用語「識別すること」は、LISまたは中間ソフトウェアアプリケーションがその特定の試料について行われる試験をカセットデータと関連付け、LISまたは中間ソフトウェアアプリケーションが、次に、該LISまたは中間ソフトウェアアプリケーションにおいて指定された試験の番号および種類に基づいて、プリンタに要求されたラベルを印刷させるために指示を送信することを意味している。
【0027】
用語「マシンビジョンシステム」は、電磁スペクトルに符号化された情報をマシンによって認識可能な情報に翻訳および/または通信する能力を持つ、あらゆるマシンベースのシステムを意味している。今日利用可能な一般的マシンビジョンシステムはカメラベースのシステムを含んでおり、該カメラは、2、3例を挙げると、赤外線、紫外線、X線、および可視部からの情報を検出するように設計されている。他のマシンビジョンシステムは、前述したRFIDのような電磁スペクトルの無線部分にある情報を読み出して送信してもよい。現在公知のまたは今後開発されるいかなるマシンビジョンシステムも、本発明の範囲内にある。
【0028】
用語「組織サンプルに関連付けられたマシンビジョン識別情報」は、組織サンプルに添付または関連する符号化された情報、例えば組織検体が置かれたスライド上のバーコード、または組織サンプルを保持している組織カセットに添付または埋め込まれたRFID等を意味している。しかし、識別情報もカセットに間接的に関連付けることができる。
【0029】
用語「試験指示」は、それぞれの患者に対して臨床医によって指示された試験である。通常、これらの指示は行われる試験の種類および番号を示している。該試験指示は、H&E(Hematoxylin and Erosin)染色のような第1の染色、疾病マーカーに特定の抗体を利用する免疫組織化学染色、インサイチュハイブリダイゼーション(DNAプローブ)染色、または特殊染色(純粋に化学染色)のような第2の染色のいくつかを指定することができる。さらに、対照試験も試験指示によって指定されてもよい。
【0030】
用語「試験手順識別子」は、手順をその個々のステップにまたは該手順の処方箋に関連付けるのに使用される唯一の番号である。染色する手順については、各手順は、その個々の組織切片について全染色工程を行うのに必要な多くの染色ステップを含んでいる。他の手順は、脱パラフィン、抗原回復、ベーキング、および染色システムによって自動化された他の工程に特定のものであってよい。通常、試験手順識別子は、自動化された染色システムがスライドラベルを読むときに、該システムが、その後手順識別子を使用して染色作業を行うのに必要なステップを手順テーブル内で調べるように、バーコードラベルのようなマシン可読識別子に符号化されている。完全に行うには、処理される多くの試料の試験を完了するのに何百、恐らくは何千もの個別のステップが必要である。例えば、BenchMark(商標)XTシステム(アリゾナ州ツーソン、Ventana)は、30の試験を同時に行うことができることを意味する30のスライド収容能力を備えているが、各試験には50〜100の個別のステップがある。
【0031】
用語「ケース番号」は、個々の患者の試料に対して病院から与えられた識別子である。該ケース番号は患者の守秘義務を維持するための鍵であり、病院の職員が患者の個人情報を洩らさずに自分の職務を追跡し完了することを可能にする。
【0032】
「VIP/VLM」は、NexES、バージョン10.1ソフトウェア(アリゾナ州ツーソン、Ventana)に埋め込まれているVentana Interface Point/Ventana Lab Mnagerソフトウェアを指している。VlPは、LISとVLMとの間のインタフェースとして機能する。VLMは、Ventana自動化染色システム同士の間でデータの複製を容易にする管理ソフトウェアであり、これにより、複数のVentana染色機器を使用しているラボで染色作業が最適化されるように、システム同士が試薬および状態データを共有することを可能にする。より詳しい説明は、2005年1月10日出願の米国特許番号第11/032、324号に含まれており、これは参照によりここに組み込まれている。
C.本発明の実施形態の説明
本発明の方法による実施形態は、次のステップを含んだ組織染色を行うラボにおける情報の流れを機械的に処理する方法である。先ず、病院のLISから患者のデータに直接または間接的にアクセスするように構成されたネットワーク接続されたラベルプリンタであって、該プリンタと電気的に通信するデータエレメントスキャナを有し、かつネットワーク接続されたラベルプリンタをカッティングステーションに隣接して配置することである。LISが、同じカッティングステーションにあるカセットに対応するスライドラベルの印刷コマンドを送信するので、該カッティングステーションに隣接してラベルプリンタを配置することは、リーンシステムの観点から効率的である。したがって、切断作業者がカッティングステーションに留まり、ある程度離れて置かれたラベルプリンタのところにラベルを持って行って置く必要がないことはより効率的である。
【0033】
次のステップは、ラベルプリンタで組織カセットに関連するデータエレメントからデータを入力することを含み、該データの入力は、カセットに関連するデータエレメントからデータを読み出すこと、LISへカセットデータをアップロードすることを含んでいる。該データエレメントは例えばバーコードラベルであってもよく、バーコード内に符号化されたカセットデータは、カセットに対する唯一の識別コードであってもよい。そのコードは受け付け中に既に割り当てられているであろうし、LISは該カセットコードと行われる試験とを相関付けている。バーコードの場合、データを読み出すステップは、バーコードスキャナでカセットバーコードを単に走査するだけで達成することができる。該バーコードスキャナはスタンドアロンであってもよく、またはミクロトームまたはラベルプリンタに組み込まれていてもよい。もしあっても、それがどの装置に取り付けられるかは重要ではない。バーコードスキャナは無線のハンドヘルドスキャナであってもよい。データエレメントがバーコードでなくて例えばRFIDの場合、APラボは、常に試料を追跡するRFIDラボネットワークを備えていてもよい。RFIDを備えたカセットからデータを入力することは、RFIDリーダの読み出す範囲内にあるカセットを「ボディチェック」するのと同じくらい簡単であってもよい。RFIDリーダはカセットの存在を検知し、スライドラベル印刷の準備ができたときにLISに該カセットを登録する。あるいは、ある理由でバーコードスキャナによりカセットデータを読み出すことができない場合、カセットデータは、ラベル付けソフトウェアGUI(グラフィカルユーザインタフェース)に手作業で入力されてもよい。次に、データの読み出しおよびアップロードは手作業で行われるだろうが、それは本発明の独創的な方法の範囲内にある。
【0034】
次のステップは、対応する患者の試験プロトコルデータを識別し、次に該試験手順データをラベルに印刷されるようにプリンタにダウンロードすることである。上述のごとく、LISは、既に、カセットデータに対応する特定の試料について行われる試験のリストをプリンタに入力している。LIS、またはVentana Lab Manager(「VLM」、アリゾナ州ツーソン、Ventana(Ventana、Tucson、AZ)))のような中間ソフトウェアアプリケーションは、LIS/VLMのケース番号データを調べることによって指示された試料および試験にカセットデータを相関付けてもよい。ケース番号は、次に必要なラベルの枚数を決定する切断される切片の数を示している。特定の手順識別子は、各ラベル上に識別子を印刷するラベルプリンタにダウンロードされる。該ラベルは、染色工程の次の段階で自動染色装置によって使用される。プロトコル識別子は、正確な一連の染色ステップ(染色「手順」)と相関付けられて自動染色システムによって読み出され、それに従って実行される。各ラベルはさらに、ケース番号、染色の種類等のような種々の重要な情報を説明している人が読み取り可能な文字を含んでいてもよい。
【0035】
次のステップは、患者に対するLISで指定された各試験に対応するラベルに情報を印刷すること、各スライドに単一のラベルを添付することを含んでいる。前述のごとく、カセットを読み出すことによりLISが試験手順データを識別した後、プロトコル識別子は印刷用のラベルプリンタに送信される。スライドラベルが印刷されると、組織学の技術者はスライドのすりガラス端部にそれらを置く。この時点で、スライドにラベル付けするには2つの可能性しかない、すなわち、試料がスライド上に置かれる前に該スライドにラベル付けされるか、または置かれた後でスライドにラベル付けされるかである。本発明の方法はいずれの状況も意図している。ラベル付ステップはカセットからスライドまでの情報の転送を完了させるものであり、切片がカセットと同じ識別情報を持っていることを確保する重要なステップである。
【0036】
指示された試験がIHC、特殊染色、またはISH試験の場合、陽性対照スライドが必要である。該陽性対照スライドにはその上に陽性試料があり、そのようなものとしてそれを識別する情報がある。カセットがLISに対して識別された後では、LIS患者情報は既に陽性対照を指定しており、試料と陽性対照の両方を識別する情報を含んだスライドラベルが印刷される。この新しいラベルは、元の陽性対照スライドに被せられる。
【0037】
最後のステップは、各ラベル付けされたスライドごとに組織切片を切断し、スライド上にその切片を載せることである。通常、技術者はラベルをすべて印刷し、次にスライドにラベルを付け、ラベル付けされたスライドを水槽の隣に置いておく。その後、技術者は、一連の切片をスライド1枚につき1つ切断し、それらを取り上げるために浮かばせておく。その後、技術者は、スライド1枚につき1つの切片(H&E)、または第2の染色(IHC/SS/ISH)を行う場合には追加のスライド上に追加の切片を取り上げ、ベーキングステップのラックの上にスライドを置く。技術者が、最初にラベルを付けてその次に組織を適用する場合、この段階の過失の可能性は最小となるべきである。しかしながら、技術者が最初に組織を適用してその次にラベルを付ける場合、技術者は、ミクロトーム中のブロックがスライドラベルに対応していることを確認しなければならない。そうでなければ、切断領域にその上に組織切片が置かれている、ラベル付けされていないスライドが存在することになり、それらが何のスライドであるかという疑問が生じてくる。
【0038】
染色がIHC染色である場合、わずかに異なる工程が適用される。前述のごとく、陽性対照スライドが使用されなければならない。陽性対照スライドは、それに付着した陽性になる組織切片を既に持っており、すなわちそれは、染色と反応して、試験されている生化学的マーカーの存在を浮き彫りにする。例えば、ER(Estrogen Recepter)に対する試験が指示されている場合、試料はER陽性対照スライドに付着し、その上にはER陽性「対照」組織が載っている。結果は、2つの切片がスライド上にあり、1つは既にわかっている陽性、他方は試験サンプルである。自動染色機能がすべて正確に働いていると、陰性試料の場合には少なくとも陽性対照が染色する。両方の組織が陽性に染色する場合、試料は真に陽性である。陽性対照スライドは、トレーサビリティを提供する情報、および/または、試験がどのようなものであるかの何らかの指示を含んでいる。例えば上記のER状況においては、スライドは、その上のどこかに「ER陽性」および/またはトレーサビリティ番号を含んだラベルまたは鉛筆で書いた情報を持っている。カセット/試料データが正確なスライドに一致することを確保するために、陽性対照スライドラベルは、以前の情報(例えば「ER陽性」)および新しい試料データを含んだ新しいラベルを上に重ねて付けられたものでなければならない。第1の染色については、染色システムが適切に働いていることを保証するための、スライドの全バッチに対する単一制御である「バッチ制御」が使用されてもよい。
【0039】
本発明の他の実施形態は、USネットワークに接続されたマシンビジョンシステムに対して、試験される組織サンプルを有する組織カセットを識別するステップを含んだラボの染色工程において組織サンプル情報を調整する方法に関する。マシンビジョンシステムは、遠隔情報読み取り可能な機能を備えたマシン、機器、またはコンピュータとして一般に説明されている。そのようなマシンビジョンシステムの一般的な例は、パーツおよびツールを識別するのに組立てラインで使用されるロボットカメラ、スーパーマーケットのレジスキャナのようなバーコードスキャナ、追跡されている製品のRFIDに書き込む付加の機能を備えたRFID対応システム等である。これらは光学装置および高周波装置の例である。
【0040】
次のステップは、組織サンプルに関連付けられたマシン可読識別情報をLISに転送することである。組織サンプルに関連付けられた識別情報は、通常カセット識別子またはケース番号である。いずれの場合においても、該識別情報は、人および/またはマシンによって読み取り可能な消せないパターンを作成するように、プリンタまたはレーザベースのエッチャーによって、カセット表面に印刷されてもよいしまたはエッチングされてもよい。例えば、情報を転送する活動は、バーコードに対する走査工程によって達成される。前述のごとく、バーコードスキャナはバーコード情報を読み出し、次にVLMのようなLISまたはミドルウェアソリューションに該情報を送信する。
【0041】
次のステップは、LISを介して組織サンプルに対する試験指示にアクセスすることであり、該試験指示は、切断される切片およびそれぞれの切片について行われる手順を決定する。上述のごとく、LISは、既に、カセットデータに対応する特定の試料について行われる試験のリストをプリンタに入力している。LIS、またはVentana Lab Manager(「VLM」、アリゾナ州ツーソン、Ventana)のような中間ソフトウェアアプリケーションは、LIS/VLMのケース番号データを調べることによって指示された試料および試験にカセットデータを相関付ける。例えば、LISにおける試験指示がこのケース番号に対して「ER」の場合、LISは、2つのラベルを印刷するコマンドを作成するが、1つはERプロトコル識別子およびケース番号を持ち、もう1つはその上にER陽性対照組織プロトコル識別子およびケース番号を持っている。対照試験はLISで指定されなくてもよいが、ある試験が指示された場合、LISは、デフォルトにより、必要な対照試験も実行される試験のリストに加えられるようにプログラムされるべきである。
【0042】
LISまたはVIP/VLMは、対応する組織切片について行われる手順を符号化するラベルを必要な枚数印刷するようにラベルプリンタに指示する。なお、当業者には、スライドプリンタもこの機能に使用できることは知られているべきであろう。スライドプリンタは、スライドガラスの表面に直接情報を符号化し、別のラベル付けステップの必要性をなくしている。スライドプリンタの一例として、Leica IPC(Leica Microsystems AG、ドイツ、ウェッツラー(Wetzlar、Germany))がある。
【0043】
工程の最後のステップは、対応する組織切片について行われる各手順を符号化するスライドラベルを印刷すること、スライドに該スライドラベルを付すること、ラベル付けされたスライド上に少なくとも1つの組織切片を置くこと、対応するスライドラベル上で識別されたプロトコルに従って、スライド上の1つまたは2つ以上の組織切片を染色すること、いくつかの実施形態における1つまたは2つ以上の対照組織切片を含む2つ以上の切片が、スライドに置かれてもよい。
【0044】
次の例は、ここで議論した本発明の実施形態の説明であり、いかなる方法においても添付の請求項を制限するように適用されるべきではない。
D.例
図2は、本発明の一実施形態の図である。同図は、埋め込みからカッティングステーションに至る組織カセットの基本的なフローを示している。パラフィンに埋め込まれた患者の試料を含んだパラフィンブロックを持つカセット10が、スキャナ20で走査されるのを待つキューに位置している。スキャナ20は、当然APラボで採用される技術に依存するが、バーコードリーダ、RFIDアンテナ、磁気ストライプリーダ、デジタルカメラを使用している画像システム、またはあらゆる類似のマシン可読技術であってもよい。説明のみを目的としてスキャナがバーコードスキャナとすると、スキャナ20では技術者がカセットを走査し、スキャナは、LIS80でさらに処理を行うために、VIP75を介してラボネットワークまたはデータバス70にデータを送信する。ラボは、Ventana Interface Point/Ventana Lab Manager(「VIP/VLM」)ソフトウェア75/ハードウェア77のような中間ソフトウェアソリューションを利用して、Ventana機器のネットワークとAPラボLISとの間のインタフェースを提供する。VIP/VLMは、2005年1月10日出願の、同時係属米国特許出願番号第11/032、324号(Showalterら)にさらに詳細に説明されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれている。以下の図3にLIS80についてより詳細に説明する。ミクロトーム30のブロックには技術者によって切断されることになっているカセット10が載せられている。切片(図示せず)が水バッチ40に浮かべられ、スライド50上に取り上げられるのを待つ。スライド50は、取り上げ前にラベル付けされてもよいしまたは取り上げ直後にラベル付けされてもよい。試験がIHC試験の場合、スライドは陽性対照スライドであってもよいが、その場合スライドには再びラベル付けされる必要がある。いずれの場合においても、ラベルプリンタ60は、染色装置によって読み取り可能なバーコード化された情報を持つスライドラベルを印刷する。該スライドラベルは、少なくともケース番号を含んでいる。該スライドラベルは、一般に染色手順識別子も含んでいる。組織が取り上げられ、スライドがラベル付けされた後、該スライドは、後の組織染色工程のスライドに組織を付着させるために、短いベーキングサイクルの間オーブンに入れられるトレー90に置かれる。
【0045】
図3は代替の実施形態を示している。図3は、ラベルプリンタ60が共有のラボリソースであってもよく、したがってカッティングステーションから遠くにあってもよいという点で、図2の実施形態と異なっている。ラベルプリンタ60もVIP/VLMにネットワーク接続されてLISと電子通信しているが、別のプリンタが各カッティングステーションにはない。したがって、各切断技術者は、ラベルのところまで行かなければならないかまたはラベルをプリンタのところまで持って行かなければならない。
【0046】
図4は、本発明の方法のステップを示す流れ図である。ステップ302で、ラベル付けソフトウェアグラフィカルユーザインタフェース(「GUI」)はオープンであり、データ入力画面は、組織学の技術者がカセットデータをVIP/VLMへ入力、またはカセットデータの自動走査を監視することを可能にしている。ステップ304で、切片を切断する責任のある組織学の技術者(「切断作業者」)は、カセットを走査することにより、または手作業でカセット識別情報を入力することにより、カセットデータを入力する。該ステップは、データ入力エラーを減らすために自動化されるのが好ましい。ステップ306で、カセット識別情報は送信されるかまたはVIP/VLMに利用可能となる。いったん、VIP/VLMが、カッティングステーションに新しいカセットがあることを記録すると、該VIP/VLMは、ステップ308で、行われる試験を含んだ対応する患者のデータについてLISに問い合わせを行う。ステップ310で、VIP/VLMは、スライドラベルに印刷するための適切な試験指示を書式設定する。あるいは、スライドプリンタがスライドラベラーの代わりに使用されていれば、VIP/VLMはスライド印刷工程の指示を作成する。ステップ312で、ラベル付け指示または印刷指示が、状況に応じてラベルプリンタまたはスライドプリンタに送信される。この時点で、該流れ図は分岐して2つの潜在的な経路を示している。スライドが印刷されることになっている場合、スライドプリンタはスライドを印刷するステップ316で処理が継続される。システムがラベラーを含んでいる場合、ステップ314およびステップ318が行われる。ラベル付けという追加のステップは、ステップ318で切断作業者によって行われる。次に、ステップ320で、切断作業者は切片を切断し、それらを水槽に浮かべる。最後に、ステップ322で、切断作業者は、ラベル付けまたは印刷されたスライドに切片を載せ、この後、該切片は乾燥(またはベーキング)ステップ324に進める準備ができている。
【0047】
図5は、組織学のJIT(ジャストインタイム)の製造原理を利用している技術のさらに他の実施形態における処理ステップを示す流れ図である。ステップ402で、受付およびテスト情報がLISへ入力される。ステップ404で、テスト情報はLISからVIP/VLMへ送信される。一実施形態で行うことができるステップ402に関連付けられた処理は、例えば図3からのステップに関連して、本明細書に別記される。ステップ406で、組織学の管理者が、切断作業者の作業優先順位を設定するために介在してもよい。前述の設定は「負荷平準化」と呼ばれ、作業に問題が生じないことを確保するために、切断作業者に適切な作業を配分することを含んでいる。情報がLISから送信された後の「負荷平準化」の導入は、個々の切断作業者へのブロックの配分のバランスを保つ管理を可能にし、それによりラボの生産性をより良く管理することができる。ステップ406で行われるような切断作業者への作業の配分は、任意の異なる1つまたは2つ以上の要素を考慮して、組織学の管理者によって行われてもよい。例えば、作業配分は、各切断作業者の能力および現在の負荷、様々な種類の組織サンプルに対する各切断作業者のあらゆる切断専門技術または専門等に基づいていてもよい。負荷平準化ステップ406の後、プリンタはステップ408で指示(通常ケース番号または氏名)を印刷し、どれが次の1つまたは2つ以上のケースか、またはどれが次に切断すべき1つまたは2つ以上のブロックかについての信号を各切断作業者に送信する。言い換えれば、次の切片をいつ切断すべきかおよびどの試料から切断すべきかについての、切断作業者への信号としての役割を印刷が果たすとい点で、印刷という行為は切断工程を促進または制御する。前述のステップは、Kanban System(看板システム)および技術の適用を意味している。「Kanban」は、「信号」を意味する日本語の用語である。JIT製造において、Kanbanという用語は、信号を使用して予測や予想ではなく実際のニーズに対応する生産方式を作るストック方式を表すのに使用することができる。前述の原理および技術の導入により、ブロック/スライドの生産過剰が縮小され、ミスがなくなる。
【0048】
なお、負荷平準化ステップ406は、印刷に先立つ様々な時点で行われてもよいことに留意すべきであろう。例えば、図3を参照してここに説明されるように、VIP/VLMは、ステップ310で印刷指示を作成し、次にステップ312でラベルまたはプリンタへの印刷指示を送信する。一実施形態において、負荷平準化は、ステップ310の後のような、VIP/VLMがラベラーまたはプリンタに印刷指示を送信する前に行われてもよい。他の実施形態において、他の選択肢として、印刷指示がステップ312でプリンタに送信された後であるがステップ314または316のいずれかで印刷する前に、負荷平準化が行われてもよい。さらに他の実施形態において、VIP/VLMがLISからの試験情報を受信した後(例えば、ステップ308)であるがステップ310で印刷指示を作成する前に、負荷平準化が行われてもよい。
【0049】
ここで説明しているような負荷平準化のステップは、任意の1つまたは2つ以上の手作業による技術および/または自動化された技術を使用して、組織学の管理者または他の適切な個人によって行われてもよい。例えば、一実施形態において、組織学の管理者が個々の切断作業者に彼らの能力について目視的に検査をするかおよび/または口頭で質問することにより、配分が行われてもよい。他の実施形態において、ソフトウェアは、種々のカッティングステーションの現在の割り当て、作業負荷、および/または性能的側面を追跡および監視するために使用されてもよく、追加試料の配分の決定に関して使用されてもよい。前述の内容は、一実施形態で利用できる異なる手作業のおよび/または自動化された技術の単なる例である。
【0050】
種々の変更が、本明細書に開示された実施形態に対し行われてもよいことは理解されるであろう。したがって、上記説明は限定としてではなく単に好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付された請求項の精神および範囲内で、他の変更を構想するであろう。本明細書に引用された特許および参照文献はすべて、参照によりその全体が明確に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織染色を行うラボで染色される組織サンプルに関連する情報を機械的に処理する方法であって、
ラボ情報システム(LIS)から患者のデータに直接または間接的にアクセスするように構成されたラベルプリンタであって、該プリンタと電気的に通信するデータエレメントスキャナを有し、かつネットワーク接続されたラベルプリンタを、カッティングステーションに隣接して配置するステップと、
カセットに関連する、組織サンプルを有する組織カセットのデータエレメントからカセットデータを読み出し、該カセットデータを前記LISにアップロードするステップと、
前記組織サンプルから切断される幾つかの組織切片と、それぞれの組織切片について行われる手順とを決定する、前記組織サンプルに対する試験指示に前記カセットデータを用いてLISを介してアクセスするステップと、
前記それぞれの組織切片について行われる手順の試験手順識別子を符号化するラベルを必要枚数印刷するように、ラベルプリンタに指示するステップと、
前記それぞれの組織切片について行われる手順の試験手順識別子を符号化するラベルを印刷するステップと、
前記それぞれのラベルをスライドに付するステップと、
少なくとも1つの組織切片を切断し、それを各ラベル付けされたスライドに載せるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記プリンタは、HL−7プロトコルを使用してLISにネットワーク接続されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者のデータは、患者に一意的に関連付けられたケース番号を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者のデータは、その特定の患者について指示された試験に対応する試験手順識別子を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記データエレメントはバーコードを有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記データエレメントはRFIDを有する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記データエレメントスキャナはバーコードリーダを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記データエレメントスキャナはRFIDリーダを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
スライドに付されたラベル上の符号化された試験手順識別子のそれぞれは、そのスライドの組織切片について行われる試験手順を一意的に識別する識別番号を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記それぞれのラベル上の情報はマシン可読情報を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記マシン可読情報はバーコードを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マシン可読情報はRFIDを有する請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記それぞれのラベル上の情報は人とマシンの両方が読み取り可能な情報を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
カセットデータを読み出すことは、スキャナを使用してカセットに関連するデータエレメントを走査することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記印刷に先立ち、負荷平準化を行って切断用の前記組織サンプルを配分することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記負荷平準化を行い、複数のカッティングステーションの各々の作業負荷と切断能力のうち少なくとも1つに合わせて、前記複数のカッティングステーションに前記組織サンプルを配分する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
負荷平準化を行って切断用の前記組織サンプルを配分することをさらに含み、前記負荷平準化を行うステップは、前記ラベルプリンタに印刷を指示した後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
負荷平準化を行って切断用の前記組織サンプルを配分することをさらに含み、前記負荷平準化を行うステップは、前記ラベルプリンタに印刷を指示する前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
複数のサンプルに対して前記印刷を行う順序は、前記複数のサンプルの各々が切断される順序を示している、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−58261(P2012−58261A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275209(P2011−275209)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【分割の表示】特願2008−545815(P2008−545815)の分割
【原出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(508176968)ヴェンタナ メディカル システムズ, インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】VENTANA MEDICAL SYSTEMS, INC.
【Fターム(参考)】