説明

解析装置、解析方法、プログラム

【課題】生物の代謝によって生じる物質を、より適切に解析することが可能な解析装置等を提供すること。
【解決手段】生物の代謝によって生じる物質を解析する解析装置であって、第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータが格納されるデータ格納手段と、前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する差分ピーク特定手段と、前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して所定範囲内の領域における前記第2のマススペクトルデータのピーク値を、該所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピーク値で除算した値を評価値として出力する評価手段と、を備える解析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計を用いて得られたデータに基づき、生物の代謝によって生じる物質を解析する解析装置及び方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生物に薬品等を投与した前後の血液や尿等を採取し、成分を比較することによって薬効や副作用を調べる試みが行われている。このように、外部から投与された物質が生体内で変化した反応物質は、外因性代謝物と称される。また、生体の活動に起因して生体内で発生又は変化したアミノ酸等の反応物質は、内因性代謝物と称される。これらを、生物の代謝によって生じる物質と総称する。現在、医薬品開発の現場では、代謝物の有無とその安全性を調査することが義務付けられている。
【0003】
生物の代謝によって生じる物質のみならず、試料に含まれる物質を同定するには、質量分析計やクロマトグラフィー等が用いられる。
【0004】
ここで、物質(薬品等)を投与して代謝が予想できる化合物の有無を調べるのは、比較的容易である(Targeted Approach)。物質が酸化することが予想されれば酸素Oの質量=15.9949増加した物質を調べればよいし、物質がメチル化することが予想されればCHの質量=14.0157増加した物質を調べればよい。
【0005】
これに対し、比較前後のデータから、代謝が予想できない化合物の有無を調べるのは、比較的困難である(Non Targeted Approach)。特に、環開裂代謝の結果として表れる、構造変化の予測が困難な代謝物を調べる際には、予め質量を予測するのが困難な場合があり、データを広く検索する必要が生じる。図1は、環開裂代謝を例示した図である。
【0006】
特許文献1には、クロマトグラフ質量分析を行うことにより得られたデータに対し、同一保持時間及び同一質量数におけるノイズデータを減算し、マススペクトル又はクロマトグラフを作成する装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−131284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特に生物の代謝によって生じる物質を同定しようとする際には、上記特許文献1に記載されているように、単純に減算したデータを提示するのみでは、データから所望の特徴を発見できない場合がある。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、生物の代謝によって生じる物質を、より適切に解析することが可能な解析装置等を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための一態様は、
生物の代謝によって生じる物質を解析する解析装置であって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータが格納されるデータ格納手段と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する差分ピーク特定手段と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して所定範囲内の領域における前記第2のマススペクトルデータのピーク値を、該所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピーク値で除算した値を評価値として出力する評価手段と、
を備える解析装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生物の代謝によって生じる物質を、より適切に解析することが可能な解析装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】環開裂代謝を例示した図である。
【図2】本発明の一実施例に係る解析装置1のシステム構成例である。
【図3】本発明の一実施例に係る解析装置1の他のシステム構成例である。
【図4】質量分析計100の出力データを概念的に示す図である。
【図5】本実施例の解析装置1の機能構成例である。
【図6】本実施例の解析装置1により実行される処理の概要を示すフローチャートである。
【図7】パラメータ入力画面24Aの一例である。
【図8】表示装置24により表示されるデータ指定画面24Bの一例である。
【図9】あるm/z領域におけるControl*、Sample*、及びDifferenceと、Differenceのピークにおけるm/z、当該m/zを中心とした領域Spec Ref Rangeを示す図である。
【図10】図9とは異なるm/z領域におけるControl*、Sample*、及びDifferenceと、Differenceのピークにおけるm/z、当該m/zを中心とした領域Spec Ref Rangeを示す図である。
【図11】Sample*のピーク値をControl*のピーク値で除算して評価値を算出することの優位性を説明するための説明図である。
【図12】Sample*のピーク値をControl*のピーク値で除算して評価値を算出することの優位性を説明するための説明図である。
【図13】マスクロマトグラムデータ(ChrC1、ChrC2、ChrS1、ChrS2)を例示した図である。
【図14】ChrS1**、ChrS2**、ChrC1**、ChrC2**についての種々のパターンを示す図である。
【図15】結果出力画面24Cの一例である。
【図16】パラメータを補足説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の一実施例に係る解析装置1について説明する。
【0015】
[基本構成]
図2は、本発明の一実施例に係る解析装置1のシステム構成例である。図示するように、解析装置1は、質量分析計100に接続され、ユーザ200によって種々の設定入力等が行われるコンピュータである。
【0016】
また、解析装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)10と、ドライブ装置12と、補助記憶装置16と、メモリ装置18と、インタフェース装置20と、入力装置22と、表示装置24と、を備える。これらの構成要素は、バスやシリアル回線等を介して接続されている。
【0017】
CPU10は、例えば、プログラムカウンタや命令デコーダ、各種演算器、LSU(Load Store Unit)、汎用レジスタ等を有するプロセッサである。ドライブ装置12は、記憶媒体14からプログラムやデータを読み込み可能な装置である。プログラムを記録した記録媒体14がドライブ装置12に装着されると、プログラムが記録媒体14からドライブ装置12を介して補助記憶装置16にインストールされる。記録媒体14は、例えば、CD−ROM、DVDディスク、USBメモリ等の可搬型の記録媒体である。また、補助記憶装置16は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリである。
【0018】
プログラムのインストールは、上記のように記憶媒体14を用いる他、インタフェース装置20がネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードし、補助記憶装置16にインストールすることによって行うこともできる。また、情報処理装置の出荷時に、予め補助記憶装置16やROM(Read Only Memory)等に格納されていてもよい。このようにしてインストール又は予め格納されたプログラムをCPU10が実行することにより、図2に示す態様の情報処理装置が、本実施例の解析装置1として機能することができる。
【0019】
メモリ装置18は、例えば、RAM(Random Access Memory)やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)である。インタフェース装置20は、上記ネットワークとの接続等を制御する。入力装置22は、例えば、キーボードやマウス、タッチパッド、タッチパネル、マイク等である。また、表示装置24は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の表示装置である。
【0020】
なお、図3は、本発明の一実施例に係る解析装置1の他のシステム構成例である。図示するように、解析装置1は、ユーザ200によって設定入力が行われる一以上のクライアントコンピュータ50に接続されたサーバ装置であってもよい。
【0021】
質量分析計100は、例えば磁場型/電場型のFT−MS、TOF等の高分解能質量分析計である。質量分析計100は、導入された試料を分析し、保持時間(RT;Retention Time)とm/zを軸とした強度(Intensity)の分布を示す三次元データを出力する。図4は、質量分析計100の出力データを概念的に示す図である。質量分析計100の出力データは、メモリ装置18等に格納される。
【0022】
本実施例における質量分析計100には、例えば薬品を生物に投与する前(第1のタイミング)に生物から採取された血液、尿等の試料と、薬品を生物に投与した後(第2のタイミング)に生物から採取された血液、尿等の試料が導入される。また、このような薬物投与の前後に限らず、運動を行った前後、食事を行った前後、薬品を投与した直後と一定時間後等、第1及び第2のタイミングは任意に定めて良い。
【0023】
以下、第1のタイミングで採取された試料を分析した質量分析計100の出力データをControlと、第2のタイミングで採取された試料を分析した質量分析計100の出力データをSampleと称する。Control及びSampleは、それぞれ一回ずつのデータでもよいし、それぞれが複数回のデータであってもよい。更に、「複数回のデータ」とは、血液や尿の採取が複数回行われたことを意味するものであってもよいし、同一の試料を質量分析計100が複数回分析した結果であってもよい。
【0024】
[解析装置の機能構成]
図5は、本実施例の解析装置1の機能構成例である。解析装置1は、マスター制御部30と、マススペクトル生成部32と、マスクロマトグラム生成部34と、差分ピーク特定部40と、第1の評価部42と、第2の評価部44と、総合評価部46と、を備える。
【0025】
これらの機能ブロックは、補助記憶装置16等に格納されたプログラム・ソフトウエアをCPU10が実行することにより機能する。なお、各機能ブロックが明確に別のプログラムにより実現される必要はなく、いずれかの機能ブロックが、サブルーチン等で他の機能ブロックにより呼び出されるものであっても構わない。また、このようなソフトウエアブロックに限らず、IC(Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウエアによってこれらの機能ブロックが実現されてもよい。
【0026】
また、マススペクトル生成部32及びマスクロマトグラム生成部34は、質量分析計100の機能であってもよい。この場合、マススペクトル生成部32及びマスクロマトグラム生成部34は、解析装置1の機能としては必須の構成でない。
【0027】
図6は、本実施例の解析装置1により実行される処理の概要を示すフローチャートである。本フローは、例えばマスター制御部30の指示によって進行する。
【0028】
まず、マスター制御部30は、パラメータ入力画面Aを表示装置24に表示させ、ユーザにパラメータを入力させる(S200)。
【0029】
マスター制御部30は、ユーザによるパラメータ入力が終了すると(S202)、データ指定画面24Bを表示装置24に表示させ、ユーザにデータを指定させる(S204)。なお、データ指定とパラメータ入力の順序が逆でもよい。
【0030】
マスター制御部30は、ユーザによるデータの指定が終了すると(S206)、マススペクトル生成部32にマススペクトルデータを生成させ(S208)、これに基づいて差分ピーク特定部40に差分ピークリストPL(D)を作成させる(S210)。そして、差分ピークリストPL(D)に基づき第1の評価部42に評価値Score(m/z)を算出させる(S212)。
【0031】
次に、マスター制御部30は、マスクロマトグラム生成部34にマスクロマトグラムデータを生成させ(S214)、これに基づいて第2の評価部44に評価値Score(Chrom)を算出させる(S216)。
【0032】
次に、マスター制御部30は、算出された評価値Score(m/z)と評価値Score(Chrom)に基づき、総合評価部46にランキング処理を行わせ(S218)、ランキング結果を表示装置24に表示させる(S220)。
【0033】
(パラメータ入力)
図7は、パラメータ入力画面24Aの一例である。入力されるパラメータの詳細については後述し、ここでは概略のみ説明する。
【0034】
図中、Spec Thresholdは、差分データDifferenceのピークを定義するための閾値である。また、Score(Spec) Thresholdは、評価値Score(m/z)に対する閾値である。また、Spec Ref Range(ppm)は、差分ピークリストPL(D)に登録されているm/zを中心とした領域Spec Ref Rangeを規定するための係数である。また、Ref Zero Specは、Control*のピーク値PC(m/z)が発見されない場合に代入される所定値である。また、Chrom Thresholdは、隆起区間の強度面積に対する閾値である。また、Score(Chrom) Thresholdは、評価値Score(Chrom)に対する閾値である。また、Chrom Ref Range(ppm)は、差分ピークリストPL(D)に登録されているm/zを中心としてマスクロマトグラムデータを生成するm/zの範囲を規定する値である。また、Ref Zero Chromは、隆起区間の強度面積がゼロとなった場合に代入される所定値である。
【0035】
パラメータ入力画面24Aにおいてユーザがパラメータを入力し終わり、Calculateをクリックすると、評価値Score(m/z)の算出が開始される。なお、Spec Ref Range(ppm)やChrom Ref Range(ppm)は、質量分析計100の分解能によって最適値が決定されるため、自動的に設定されてもよい。その他のパラメータについても、用途に応じて最適な値が自動的に決定されても構わない。
【0036】
(評価値Score(m/z)の算出)
マススペクトル生成部32は、質量分析計100の出力データ(Control、Sample)を時間に関して積算し、マススペクトルデータを生成してメモリ装置18等に格納する。前述のように、Control、Sampleはそれぞれ複数回の試行に係るデータであり得るため、以下ではControlに含まれる一回分のマススペクトルデータをC1、C2、C3、…と、Sampleに含まれる一回分のマススペクトルデータをS1、S2、S3…と、それぞれ表現する。これらのマススペクトルデータは、m/zを軸としたIntensityの分布を示す二次元データ(ベクトルデータ)となる。マスクロマトグラム生成部34の機能については、後述する。
【0037】
図8は、表示装置24により表示されるデータ指定画面24Bの一例である。本画面において、ユーザはC1、C2、C3、…、S1、S2、S3、…の中から所望のデータを選択することができる。具体的には、Addボタンをクリックすることにより、採用可能なマススペクトルデータがポップアップ画面で表示され、その中から選択されたデータがControlリスト24Ba、Sampleリスト24Bbに登録される。なお、Controlリスト24Ba、Sampleリスト24Bbに登録されたマススペクトルデータは、同数である必要はない。
【0038】
差分ピーク特定部40は、Controlリスト24Ba、Sampleリスト24Bbに登録されたデータ(C1、C2、C3、…、S1、S2、S3、…)に対し、次式(1)、(2)により、それぞれの平均を求めて平均化データControl*、Sample*を生成する。式中、nはControlに係る標準化データの数であり、mはSampleに係る標準化データの数である。ここで、Control*、Sample*並びにCi*、Sj*は、それぞれm/zを軸としたIntensityの分布を示す二次元データ(ベクトルデータ)である。
【0039】
Control*=(ΣCi*)/n (i=1〜n) …(1)
Sample*=(ΣSj*)/m (j=1〜m) …(2)
【0040】
差分ピーク特定部40は、更に、次式(3)に基づき、Control*とSample*の差分を計算して差分データDifferenceを生成する。ここでは、Control*の方がSample*よりも大きい部分については、分析上の意義が小さいため、ゼロを下限値とする。本実施例の解析装置1は、生物の代謝によって生じる物質を解析することを目的としているからである。
【0041】
なお、データ(C1、C2、C3、…、S1、S2、S3、…)の軸ラベルが一致しない場合や、Control*とSample*の軸ラベルが一致しない場合は、平均化や差分演算の前に何らかの調整演算を行ってよい。
【0042】
Difference=Max{(Sample*−Control*),0} …(3)
【0043】
ここで、Intensity=0が連続するデータ領域については、除外する処理を行ってよい。これによって、データ数を半減させることが期待される。
【0044】
そして、差分ピーク特定部40は、差分データDifferenceのピークにおけるm/zを特定する。ここで「ピーク」とは、例えば「Intensityが閾値“Spec Threshold”以上である連続データのうち最も高いIntensityを付けた箇所」と定義する。このような定義によって抽出されたm/zは、差分ピークリストPL(D)としてメモリ装置18等に格納される。
【0045】
第1の評価部42は、差分ピークリストPL(D)に登録されているm/zを中心とし、当該m/zにSpec Ref Range(ppm)を乗算した値を加算及び減算して得られる境界間の領域Spec Ref Rangeにおける、Control*とSample*のそれぞれのピークを求める。領域Spec Ref Rangeは、あるm/zに対し、[m/z×(1−Spec Ref Range(ppm)),m/z×(1+Spec Ref Range(ppm))]という区間で定義される。なお、これに限らず、あるm/zに対し、所定値を加算及び減算して得られる境界間の領域をSpec Ref Rangeと定義してもよい。
【0046】
図9は、あるm/z領域におけるControl*、Sample*、及びDifferenceと、Differenceのピークにおけるm/z(200.045)、当該m/zを中心とした領域Spec Ref Rangeを示す図である。また、図10は、図9とは異なるm/z領域におけるControl*、Sample*、及びDifferenceと、Differenceのピークにおけるm/z(400.12)、当該m/zを中心とした領域Spec Ref Rangeを示す図である。
【0047】
第1の評価部42は、次式(4)に示すように、各領域Spec Ref RangeにおけるSample*のピーク値PSを、同じ領域Spec Ref RangeにおけるControl*のピーク値PCで除算して、評価値Score(m/z)を算出してメモリ装置18等に格納する。評価値Score(m/z)は、マススペクトルデータに着目した、m/zを評価する評価値である。
【0048】
Score(m/z)=PS/PC …(4)
【0049】
ここで、Control*のピーク値PCが発見されない場合も想定されるが、この場合、第1の評価部42は、微小な所定値(例えば0.1程度)でピーク値PCを置換した上で、上式(4)の計算を行う。これによって、ゼロで除算を行うことによりエラーが発生するのを防止することができる。なお、ピーク値PC及びピーク値PSを付ける「ピーク」は、例えば最大強度が所定値以上であり、ゼロから最大強度に至る傾きが所定角度以上である箇所等と定義される。
【0050】
このように、Sample*のピーク値PSをControl*のピーク値PCで除算して評価値Score(m/z)を算出することにより、生物の代謝によって生じる物質を、より適切に解析することができる。
【0051】
図11及び図12は、Sample*のピーク値をControl*のピーク値で除算して評価値を算出することの優位性を説明するための説明図である。
【0052】
図11で示すm/zのピーク(450)においては、Control*、Sample*共に、比較的高いピークを示している。このため、下段に示すDifferenceのピークも高く現れているが、元々大きいIntensityを示すm/zであるため、測定誤差や生体の状態変化によってControl*やSample*が変動した場合、Differenceのピークは大きく変動する。従って、このm/zのピーク(450)は、生物の代謝によって生じる物質の解析において、余り重視すべきでない部分である。
【0053】
しかしながら、仮にSample*からControl*を減算して評価値を算出した場合、図11で示すような、Control*、Sample*共に大きいIntensityを示すm/zに対して高い評価値を算出してしまう可能性が高い。この点、本実施例の解析装置1ではSample*のピーク値をControl*のピーク値で除算して評価値を算出しているため、評価値は6.0e4/4.0e4=1.5となり、余り高い評価値を出力しない。なお、図11で示すm/zのピークにおいては、図11の最下段で示すマスクロマトグラム(後述する)のControl分(ChrC1、ChrC2)も高い値を示すため、後述する評価値Score(Chrom)も余り高い数値を示さない。
【0054】
一方、図12で示すm/zのピーク(460)においては、Control*はピークが発見されないが、Sample*は比較的高いピークを示している。このため、このm/zのピークは、生物の代謝によって生じる物質の解析において重視すべき部分である。本実施例の解析装置1ではSample*のピーク値をControl*のピーク値で除算して評価値を算出しているため、評価値は2.0e2/0.1(ピーク不発見時の所定値)=2000となり、高い評価値を出力する。なお、図12で示すm/zにおいては、図12の最下段で示すマスクロマトグラムのSample側(ChrS1、ChrS2)も高い値を示すため、後述する評価値Score(Chrom)も高い数値となる。
【0055】
このように、本実施例の解析装置1によれば、Sample*のピーク値PSをControl*のピーク値PCで除算して評価値Score(m/z)を算出することにより、生物の代謝によって生じる物質を、より適切に解析することができる。
【0056】
また、差分ピークリストPL(D)に登録されたm/zを中心とした、ある程度の広さ(余裕)を持たせた領域Spec Ref Rangeにおける、Control*とSample*のそれぞれのピークを求めて評価値Score(m/z)を算出するため、測定誤差や生体の状態変化をある程度吸収することができる。この結果、一回分のデータのみからでも、有意な結果を得ることができる。
【0057】
(評価値Score(Chrom)の算出)
一方、マスクロマトグラム生成部34は、質量分析計100の出力データ(Control、Sample)を、差分ピークリストPL(D)に登録されているm/zを中心とし、当該m/zにChrom Ref Range(ppm)を乗算した値を加算及び減算して得られる境界間の領域Chrom Ref Range内のm/zで固定した、保持時間が指定範囲内であるマスクロマトグラムデータ(ChrC1、ChrC2、…、ChrCn、ChrS1、ChrS2、…、ChrSm)を生成する。
【0058】
ここで、領域Chrom Ref Rangeは、あるm/zに対し、[m/z×(1−Chrom Ref Range(ppm)),m/z×(1+Chrom Ref Range(ppm))]という区間で定義される。なお、これに限らず、あるm/zに対し、所定値を加算及び減算して得られる境界間の領域をChrom Ref Rangeと定義してもよい。
【0059】
すなわち、マスクロマトグラム生成部34は、Control、Sampleに含まれる、領域Chrom Ref Range内のm/zがChrom Ref Range内である成分を抜き出し、マスクロマトグラムデータとする。マスクロマトグラムデータは、質量分析計100の出力する三次元データを、m/zを切り口としてIntensityの時間推移を記述した二次元データ(ベクトルデータ)である。マスクロマトグラムデータがControl、Sample毎に複数存在するのは、前述のように、Control、Sampleが、それぞれ複数回の試行に係るデータであり得るからである。
【0060】
図13は、マスクロマトグラムデータ(ChrC1、ChrC2、ChrS1、ChrS2)を例示した図である。図中、#で示す部分は、実際にはChrC1、ChrC2、ChrS1、ChrS2の全てゼロであるが、視認しやすいようにIntensityが大きくなる側にオフセットさせている(図11、12も同様である)。なお、マスクロマトグラムデータは、ノイズの発生が小さく、ゼロ区間が長い性質を有している。
【0061】
第2の評価部44は、まず、マスクロマトグラムデータ(ChrC1、ChrC2、…、ChrCn、ChrS1、ChrS2、…、ChrSm)のそれぞれについて、値がゼロから増加して再度ゼロとなるまでの区間(隆起区間)のIntensityを積算した値、すなわち隆起区間の強度面積(ChrC1**、ChrC2**、…、ChrCn**、ChrS1**、ChrS2**、…、ChrSm**)を算出する。
【0062】
ここで、各マスクロマトグラムデータにおいて、隆起区間が複数個出現することもあるので、その場合、強度面積が最大の隆起区間を採用するものとする。ここで、微小ノイズの発生を考慮し、「値がゼロから増加して再度ゼロとなるまでの区間」に代えて、「値が微小値未満から増加して再度微小値未満となるまでの区間」としてもよい。
【0063】
また、隆起区間の強度面積がゼロとなった場合は、微小な所定値(例えば0.1程度)で、当該ゼロとなった隆起区間の強度面積を置換する。
【0064】
そして、第2の評価部44は、次式(5)により、ChrSj**(j=1〜m)とChrCi**(i=1〜n)のそれぞれの幾何平均(特許請求の範囲における「強度を積算した値に基づく指標値」に相当)の差分を求めて評価値Score(Chrom)を算出する。評価値Score(Chrom)は、マスクロマトグラムデータに着目した、m/zを評価する評価値である。
【0065】
【数1】

【0066】
上記のように、隆起区間の強度面積がゼロとなった場合は、微小な所定値で置換しているため、例えばChrC1**のみがゼロで、ChrC2**〜ChrCn**が比較的大きいような場合、ChrC2**〜ChrCn**の存在を全く無視した結果とはならない。この結果、評価値Score(Chrom)において、分析の失敗や処理エラーによって必要なデータが隠蔽されるのを防止することができる。
【0067】
また、評価値Score(Chrom)は、ChrSj**(j=1〜m)とChrCi**(i=1〜n)のそれぞれの幾何平均を用いているため、ChrSj**(j=1〜m)が全体的に大きい場合、及びChrCi**(i=1〜n)が全体的に小さい値に、大きい値を示す。この結果、評価値Score(Chrom)は、所望のデータに対して高い値を算出することができる。図14は、ChrS1**、ChrS2**、ChrC1**、ChrC2**についての種々のパターンを示す図である。本図において、生物の代謝を解析する上で最も重要なのは、最下段のデータパターンである。評価値Score(Chrom)は、図14における最下段のデータパターンに対して、高い値を示すことができる。
【0068】
また、生物の代謝を解析する上では、ピークのIntensityがそれほど高くなくとも、台地状にIntensityが出現する場合、その物質(m/z)が重要な場合がある。例えば図12で示すm/zが、これに該当する。この点、評価値Score(Chrom)は、隆起区間の強度面積を反映しているため、このような物質に対して高い評価値を示すことができる。
【0069】
これらの結果、評価値Score(Chrom)を用いることによって、生物の代謝によって生じる物質を適切に解析することができる。
【0070】
(総合評価)
総合評価部46は、第1の評価部42により算出された評価値Score(m/z)と、第2の評価部44により算出された評価値Score(Chrom)の双方を加味して、m/zをランキングし、高い評価を得たm/zから順に表示されるように、表示装置24に指示する。
【0071】
まず、総合評価部46は、第1の評価部42により算出された評価値Score(m/z)と、第2の評価部44により算出された評価値Score(Chrom)のそれぞれに対して閾値Score(Spec) Threshold、Score(Chrom) Thresholdを適用し、いずれの閾値も上回らないm/zについては、表示対象から除外する(双方の閾値を上回らないm/zを除外してもよい)。
【0072】
そして、総合評価部46は、例えば、次式(6)に示すように、評価値Score(m/z)と評価値Score(Chrom)の双方又はいずれか一方に所定の係数を乗じて加算することにより総合評価値Score(Total)を算出し、総合評価値Score(Total)の大きいm/zから順に高い並べて表示させる。なお、これに限らず、評価値Score(m/z)と評価値Score(Chrom)を乗算して総合評価値Score(Total)を算出してもよいし、評価値Score(m/z)と評価値Score(Chrom)の双方を加味したものであれば、如何なる手法を用いて総合評価値Score(Total)を算出してもよい。
【0073】
Score(Total)=A1×Score(m/z)+A2×Score(Chrom) (A1、A2は係数)…(6)
【0074】
(結果出力)
図15は、結果出力画面24Cの一例である。結果出力画面24Cのランキング表示部24Caでは、上記のようにランキングされたm/zが順に表示される。ランキング表示部24Caでは、m/zに対応して、差分ピーク強度(Int)、総合評価値Score(Total)、評価値Score(m/z)、Score(Chrom)等が表示される。
【0075】
ランキング表示部24Caの左端部には、チェックボックス24Caaが設けられており、データ出力の際に、各m/zを含めるかどうかを選択可能となっている。
【0076】
結果出力画面24CにおいてExport CSVがクリックされると、チェックボックス24Caaにチェックが入れられたm/zに関するデータが、CSV形式等によって外部に出力される。出力の態様には、プリントアウト、電子データとして送信すること等が挙げられる。
【0077】
また、結果出力画面24Cは、ランキング表示部24Caから選択されたm/zを中心としたControl*、Sample*、Difference、マスクロマトグラム等を表示するデータ内容表示部24Cb、設定されたパラメータを表示するパラメータ表示部24Cc等を含んでよい。
【0078】
なお、図16は、各パラメータを補足説明するための説明図である。図中(1)は、差分データDifferenceのピークを定義するための閾値Spec Thresholdを概念的に示している。また、図中(2)は、差分ピークリストPL(D)に登録されているm/zを中心とした領域Spec Ref Rangeを規定するための係数Spec Ref Range(ppm)が示すm/zの幅を概念的に示している。また、図中(3)は、差分ピークリストPL(D)に登録されているm/zを中心としてマスクロマトグラムデータを生成するm/zの範囲を規定する値であるChrom Ref Range(ppm)を概念的に示している。
【0079】
[まとめ]
以上説明した本実施例の解析装置1によれば、評価値Score(m/z)や評価値Score(Chrom)を算出することにより、解析に必要なm/zを抽出することができるため、生物の代謝によって生じる物質を適切に解析することができる。
【0080】
また、評価値Score(m/z)と評価値Score(Chrom)の双方を加味した総合評価値Score(Total)を算出してランキングを行うことにより、生物の代謝によって生じる物質を更に適切に解析することができる。
【0081】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 解析装置
10 CPU
12 ドライブ装置
16 補助記憶装置
18 メモリ装置
20 インタフェース装置
22 入力装置
24 表示装置
24A パラメータ入力画面
24B データ指定画面
24C 結果出力画面
30 マスター制御部
32 マススペクトル生成部
34 マスクロマトグラム生成部
40 差分ピーク特定部
42 第1の評価部
44 第2の評価部
46 総合評価部
100 質量分析計
200 ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の代謝によって生じる物質を解析する解析装置であって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータが格納されるデータ格納手段と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する差分ピーク特定手段と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して所定範囲内の領域における前記第2のマススペクトルデータのピーク値を、該所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピーク値で除算した値を評価値として出力する評価手段と、
を備える解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の解析装置であって、
前記評価手段は、前記所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピークが発見できなかった場合は、ゼロを超える所定値を前記第1のマススペクトルデータのピーク値とみなして前記評価値を算出する手段である、
解析装置。
【請求項3】
生物の代謝によって生じる物質を解析する解析装置であって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータが格納されるデータ格納手段と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する差分ピーク特定手段と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して第1の所定範囲内の領域における前記第2のマススペクトルデータのピーク値を、該所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピーク値で除算した値を第1の評価値として出力する第1の評価手段と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して第2の所定範囲内の領域における、前記第1及び第2のタイミングにそれぞれ対応する第1及び第2のマスクロマトグラムデータを生成して前記データ格納手段に格納するマスクロマトグラムデータ生成手段と、
前記第1及び第2のマスクロマトグラムデータにおける強度がゼロ又は微小値未満でない区間における強度を積算した値に基づく指標値をそれぞれ算出し、該算出した指標値の差分を求めて第2の評価値として出力する第2の評価手段と、
前記第1の評価値と前記第2の評価値に基づきm/zをランキング付けした結果を出力する制御手段と、
を備える解析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の解析装置であって、
前記第1の評価手段は、前記所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピークが発見できなかった場合は、ゼロを超える所定値を前記第1のマススペクトルデータのピーク値とみなして前記評価値を算出する手段である、
解析装置。
【請求項5】
生物の代謝によって生じる物質を検出する解析装置であって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータが格納されるデータ格納手段と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する差分ピーク特定手段と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して所定範囲内の領域における、前記第1及び第2のタイミングにそれぞれ対応する第1及び第2のマスクロマトグラムデータを生成して前記データ格納手段に格納するマスクロマトグラムデータ生成手段と、
前記第1及び第2のマスクロマトグラムデータにおける強度がゼロ又は微小値未満でない区間における強度を積算した値に基づく指標値をそれぞれ算出し、該算出した指標値を減算した値を評価値として出力する評価手段と、
を備える解析装置。
【請求項6】
コンピュータが、生物の代謝によって生じる物質を解析する解析方法であって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータをデータ格納手段に格納する処理と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する処理と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して所定範囲内の領域における前記第2のマススペクトルデータのピーク値を、該所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピーク値で除算した値を評価値として出力する処理と、
をコンピュータが実行する解析方法。
【請求項7】
コンピュータが、生物の代謝によって生じる物質を解析する解析方法であって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータをデータ格納手段に格納する処理と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する処理と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して第1の所定範囲内の領域における前記第2のマススペクトルデータのピーク値を、該所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピーク値で除算した値を第1の評価値として出力する処理と
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して第2の所定範囲内の領域における、前記第1及び第2のタイミングにそれぞれ対応する第1及び第2のマスクロマトグラムデータを生成して前記データ格納手段に格納する処理と、
前記第1及び第2のマスクロマトグラムデータにおける強度がゼロ又は微小値未満でない区間における強度を積算した値に基づく指標値をそれぞれ算出し、該算出した指標値の差分を求めて第2の評価値として出力する処理と、
前記第1の評価値と前記第2の評価値に基づきm/zをランキング付けし、該ランキングに基づいてm/zその他の一覧表示を行うように表示手段に指示する処理と、
をコンピュータが実行する解析方法。
【請求項8】
コンピュータが、生物の代謝によって生じる物質を解析する解析方法であって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータをデータ格納手段に格納する処理と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する処理と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して所定範囲内の領域における、前記第1及び第2のタイミングにそれぞれ対応する第1及び第2のマスクロマトグラムデータを生成して前記データ格納手段に格納する処理と、
前記第1及び第2のマスクロマトグラムデータにおける強度がゼロ又は微小値未満でない区間における強度を積算した値に基づく指標値をそれぞれ算出し、該算出した指標値を減算した値を評価値として出力する処理と、
をコンピュータが実行する解析方法。
【請求項9】
コンピュータに、生物の代謝によって生じる物質を解析させるためのプログラムであって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータをデータ格納手段に格納する処理と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する処理と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して所定範囲内の領域における前記第2のマススペクトルデータのピーク値を、該所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピーク値で除算した値を評価値として出力する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、生物の代謝によって生じる物質を解析させるためのプログラムであって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータをデータ格納手段に格納する処理と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する処理と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して第1の所定範囲内の領域における前記第2のマススペクトルデータのピーク値を、該所定範囲内の領域における前記第1のマススペクトルデータのピーク値で除算した値を第1の評価値として出力する処理と
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して第2の所定範囲内の領域における、前記第1及び第2のタイミングにそれぞれ対応する第1及び第2のマスクロマトグラムデータを生成して前記データ格納手段に格納する処理と、
前記第1及び第2のマスクロマトグラムデータにおける強度がゼロ又は微小値未満でない区間における強度を積算した値に基づく指標値をそれぞれ算出し、該算出した指標値の差分を求めて第2の評価値として出力する処理と、
前記第1の評価値と前記第2の評価値に基づきm/zをランキング付けし、該ランキングに基づいてm/zその他の一覧表示を行うように表示手段に指示する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
コンピュータに、生物の代謝によって生じる物質を解析させるためのプログラムであって、
第1のタイミングと、該第1のタイミング以降の第2のタイミングで前記生物から採取された物質に関して質量分析計が出力した第1及び第2のマススペクトルデータをデータ格納手段に格納する処理と、
前記データ格納手段に格納された第1及び第2のマススペクトルデータの差分を計算して差分データを生成し、該差分データのピークにおけるm/zを特定する処理と、
前記差分データのピークにおけるm/zを中心とし、m/zに関して所定範囲内の領域における、前記第1及び第2のタイミングにそれぞれ対応する第1及び第2のマスクロマトグラムデータを生成して前記データ格納手段に格納する処理と、
前記第1及び第2のマスクロマトグラムデータにおける強度がゼロ又は微小値未満でない区間における強度を積算した値に基づく指標値をそれぞれ算出し、該算出した指標値を減算した値を評価値として出力する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図4】
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