説明

解熱鎮痛医薬組成物

【課題】イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物を含有する安定な医薬組成物の提供。
【解決手段】イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とを実質的に互いに接しないように含有する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解熱鎮痛に有用なイブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェンは、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の一種であり、関節リウマチ、関節痛、関節炎、神経痛、神経炎、背腰痛、頸腕症候群、子宮付属器炎、月経困難症、急性上気道炎、手術後・外傷後等の消炎・鎮痛・解熱に有効な医療用医薬品として知られている。また、イブプロフェンはいわゆるスイッチOTC化された化合物でもあり、OTC医薬品としても汎用されている。そして、アリルイソプロピル尿素、イソプロピルアンチピリン、エテンザミド、ブロモワレリル尿素、酸化マグネシウム等の種々の薬物を配合したOTC医薬品としての解熱鎮痛剤や総合感冒薬が市販されている(非特許文献1及び2)。
【0003】
一方で、イブプロフェンはNSAIDsの一種ということもあって、副作用として、イブプロフェンに起因する消化管障害等が生じる可能性がある。
このため、十分な解熱鎮痛効果を得るために、イブプロフェン投与の増量を企図しても、投与量を増量することができないという問題が生じている。
この問題に対し、鎮痛・鎮痙作用を有するブチルスコポラミン臭化物をイブプロフェンとともに服用すると、低用量でも優れた鎮痛作用を示すことが知られている(特許文献1)。また、ブチルスコポラミン臭化物も、スイッチOTC化された化合物で、胃痛、腹痛、さしこみ(疝痛、癪)、胃酸過多、胸やけに効能・効果を有するOTC医薬品が市販されている(非特許文献3)。
【0004】
イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物を配合した製剤については、特許文献1に記載の錠剤及び細粒剤が知られている。
しかしながら、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが相互作用を示すか否かについては知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4153124号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】OTCハンドブック 2008−09 製品集 株式会社学術情報流通センター 第2−9頁
【非特許文献2】OTCハンドブック 2008−09 製品集 株式会社学術情報流通センター 第16−39頁
【非特許文献3】OTCハンドブック 2008−09 製品集 株式会社学術情報流通センター 第142−151頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物を含有する医薬組成物を固形製剤化すべく検討したところ、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物を混合して保存すると、意外にもこれら化合物の間に相互作用が生じ、この相互作用により変色や湿潤等が発生し、保存に際する安定な状態が保たれにくいことを見出した。
従って、本発明の課題は、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物を含有する安定な医薬組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物との接触が前記相互作用の原因であることが明らかとなった。 そこで、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが実質的に接触しないように医薬組成物中に含有せしめることにより、上記相互作用が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とを実質的に互いに接しないように含有する医薬組成物を提供するものである。
また、本発明は、イブプロフェンを含む粒状物とブチルスコポラミン臭化物とを含有し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが、実質的に互いに接しないように含まれている医薬組成物を提供するものである。
また、本発明は、ブチルスコポラミン臭化物を含む粒状物とイブプロフェンとを含有し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが、実質的に互いに接しないように含まれている医薬組成物を提供するものである。
また、本発明は、イブプロフェンを含む粒状物とブチルスコポラミン臭化物を含む粒状物とを含有し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが、実質的に互いに接しないように含まれている医薬組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物との相互作用を抑制できる。したがって、本発明によれば、保存安定性が優れた、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物を含む医薬組成物を提供することができる。
また、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物を含有する錠剤を小型化することができ、従来、イブプロフェン150mgとブチルスコポラミン10mgを服用するに際しては、1回あたり2錠服用しなければならなかったところ、1回あたり1錠の服用で済む。したがって、本発明によれば、服用コンプライアンスを大きく改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の医薬組成物は、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とを実質的に互いに接しないよう含有するものである。
以下、本発明で用いられるイブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物について、説明する。
本発明の医薬組成物で用いられるイブプロフェンは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明においては、日本薬局方イブプロフェンが好ましい。日本薬局方イブプロフェンの性状は、白色の結晶性の粉末である。
【0012】
本発明の医薬組成物中のイブプロフェンの含有量は、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、1日あたりの服用量を適宜検討して決定すればよいが、1日あたり、イブプロフェンとして、10〜3000mg服用できる量が好ましく、30〜2000mg服用できる量がより好ましく、100〜600mg服用できる量がさらに好ましい。1日あたりの服用量は、1〜4回に分けて服用すればよく、3回に分けて服用するのが好ましい。1回あたりの服用量としては、イブプロフェンとして60〜200mgが好ましく、150mgと200mgがさらに好ましい。
【0013】
本発明の医薬組成物で用いられるブチルスコポラミン臭化物は公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明においては、日本薬局方ブチルスコポラミン臭化物が好ましい。日本薬局方ブチルスコポラミン臭化物の性状は、白色の結晶又は結晶性の粉末である。
本発明の医薬組成物中のブチルスコポラミン臭化物の含有量は、服用者の性別、年齢、症状等に応じて1日あたりの服用量を適宜検討して決定すればよいが、1日あたり、ブチルスコポラミン臭化物として、3〜1000mg服用できる量が好ましく、5〜500mg服用できる量がより好ましく、1日あたり、30〜100mg服用できる量がさらに好ましい。1日あたりの服用量は、1〜5回に分けて服用すればよく、3回に分けて服用するのが好ましい。1回あたりの服用量としては、ブチルスコポラミン臭化物として、1回10〜20mgが好ましく、10mgと20mgがさらに好ましい。
【0014】
本発明の医薬組成物中に含まれるイブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物との含有比は、上述した各成分の1日あたりの服用量に応じて、適宜検討して決定すればよいが、イブプロフェン1質量部に対し、ブチルスコポラミン臭化物を0.0125〜1質量部含有するものが好ましく、0.022〜1質量部含有するものがより好ましい。
本発明の医薬組成物中のイブプロフェンの含有量としては、本発明の医薬組成物全質量に対し、35〜95質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましく、45〜90質量%がさらに好ましく、50〜85質量%が特に好ましい。
また、本発明の医薬組成物中のブチルスコポラミン臭化物の含有量としては、本発明の医薬組成物全質量に対し、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、1〜6.5質量%がさらに好ましく、2〜6質量%が特に好ましい。
【0015】
本発明において、医薬組成物中のイブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物との接触により相互作用が生じることを初めて見出した。この知見に基づき、医薬組成物中において、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とを実質的に接触しないように含有せしめることにより、当該2成分間の相互作用を改善しうる。
すなわち、本発明の医薬組成物は、医薬組成物中、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とを実質的に互いに接しないように含有するものである。
本発明において、「実質的に互いに接しないように含有する」とは、医薬組成物中、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが相互作用を発現しない程度に接触しないよう含有することを意味するが、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが接触しないように含有することが好ましい。
本発明の医薬組成物は、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法にしたがって、適宜製剤添加物を用いることにより、種々の剤形に製剤化することができる。
また、本発明の医薬組成物に係る剤形は、特に限定されるべきものではないが、服用の簡便性や薬物服用量の管理等の観点から、固形製剤が好ましい。固形製剤の具体例としては、例えば、錠剤(口腔内崩壊錠、チュアブル錠、分散錠、溶解錠、トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、ガム剤等の口腔用錠剤も含む)、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、ドライシロップ剤、経口ゼリー剤等の経口投与製剤が挙げられるが、経口固形製剤が好ましい。また、本発明の医薬組成物は、公知の方法により、糖衣やフィルムコーティング等により、被覆されていてもよい。
【0016】
本発明の固形製剤としては、(A)イブプロフェンそのもの、若しくはイブプロフェンを含有する固形組成物と、(B)ブチルスコポラミン臭化物そのもの、若しくはブチルスコポラミン臭化物を含有する固形組成物とを含有し、これらの固形組成物を構成する成分によって、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが互いに接しないように配置されているものが挙げられる。これらの固形組成物の形態は、粉状、粒状、錠剤状のような形態である。
上記固形製剤の具体的な形態として、以下の(イ)〜(チ)等を例示することができ、これらは前述のとおり公知の方法、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法により、適宜製剤添加物を用いて、製造、製剤化することができる。
【0017】
(イ)イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物のうちいずれか一方を適当な方法で造粒して粒状物とし、これに他方のイブプロフェン又はブチルスコポラミン臭化物を造粒せずに含有せしめて製した散剤や顆粒剤等、並びに当該粒状物を更に適当な方法で被覆した製剤。
(ロ)イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物をそれぞれ適当な方法で別個に造粒して粒状物とし、これらを含有せしめして製した散剤や顆粒剤等、並びに当該粒状物を更に適当な方法で被覆した製剤。
(ハ)上記(イ)又は(ロ)で製した散剤や顆粒剤等をカプセルに充填したカプセル剤。(ニ)上記(イ)又は(ロ)で製した粒状物等を適当な方法で製錠して得た錠剤。製錠は、圧縮法のほか、適当な方法により一定の形状に成形することでも達成できる。
【0018】
(ホ)イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが実質的に互いに接触しないように製した多層錠、並びに当該多層錠を更に適当な方法で被覆した製剤。当該多層錠としては、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物を、互いに異なる層に位置させたものが好ましく、三層以上の多層錠として、イブプロフェンを含む層とブチルスコポラミン臭化物を含む層が互いに接しないように位置させたものがより好ましい。なお、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物として、上記(イ)や(ロ)で製した粒状物を用いることができる。
【0019】
(ヘ)イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物のいずれか一方を核錠(芯錠、中心錠ともいう)に配置し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが実質的に互いに接触しないように製した有核錠、並びに当該有核錠を更に適当な方法で被覆した製剤。なお、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物として、上記(イ)や(ロ)で製した粒状物を用いることができる。
【0020】
(ト)上記(イ)又は(ロ)の粒状物に換えて、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物のいずれか一方又は両方をα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンやγ
−シクロデキストリン等のシクロデキストリン類等で包接した包接化合物を用いた製剤。(チ)イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物のいずれか一方を通常の方法で製した製剤中に含有し、糖衣層やフィルムコーティング層を設けた製剤であって、当該糖衣層やコーティング層に他方を含有し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが実質的に互いに接しないように製した製剤(剤形が錠剤である場合、糖衣錠やフィルムコーティング錠と称される。)。
【0021】
上記(イ)及び(ロ)等における粒状物は、押し出し造粒、転動造粒、撹拌造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、破砕造粒、溶融造粒等の公知の造粒方法により、適宜製剤添加物を用いて製すればよい。本発明においては、イブプロフェンを含有する粒状物、及びブチルスコポラミン臭化物を含有する粒状物のいずれもが同一の造粒方法により製されていてもよいし、相異なる造粒方法により製されていてもよい。
【0022】
例えば、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物のうちいずれかを含有する粒状物は、イブプロフェン又はブチルスコポラミン臭化物、流動化剤(例えば、軽質無水ケイ酸や含水二酸化ケイ素等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース等)等を含む混合物を用いて造粒することにより製することができる。
また、イブプロフェン又はブチルスコポラミン臭化物を、流動化剤等を分散させた結合剤溶液を用いて造粒することによっても製することができる。あるいは、常温時には固体であって、加熱により溶融又は軟化するような融点(凝固点)が低く、かつイブプロフェン又はブチルスコポラミン臭化物の融点(凝固点)よりも低い結合剤(例えば、マクロゴール類(例えば、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000等);油脂類(例えば、牛脂硬化油、硬化油、水素添加植物油、ダイズ硬化油、カルナウバロウ、サラシミツロウ、ミツロウ、モクロウ等);炭化水素類(例えば、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等);高級アルコール類(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール等);脂肪酸類(例えば、ステアリン酸等);脂肪酸エステル類(例えば、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリン等)等)を用いて、溶融造粒することにより製することもできる。
なお、上記流動化剤の使用量は、固形製剤1質量部に対し、通常、0.001〜1質量部、好ましくは0.002〜0.5質量部である。また、上記結合剤の使用量は、固形製剤1質量部に対し、通常、0.001〜3質量部、好ましくは0.005〜2質量部であり、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0023】
また、イブプロフェンを含有する粒状物は、市販品を用いることもでき、例えば、イブプロフェン顆粒20%「タツミ」(辰巳化学株式会社)、ブルフェン(登録商標)顆粒20%(科研製薬株式会社製)、ランデールン(登録商標)顆粒20%(鶴原製薬株式会社製)等を挙げることができる。なお、イブプロフェンをブチルスコポラミン臭化物に替えることにより、上記と同様にしてブチルスコポラミン臭化物を含有する粒状物を製することができ、市販品も用いることができる。
【0024】
医薬組成物中におけるイブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物の相互作用は、これらを実質的に接しないように医薬組成物中に含有せしめるのみならず、これらに加えて吸湿性高分子を共存せしめることにより、当該相互作用を改善することができる(後記試験例2参照)。
すなわち、本発明の医薬組成物としては、上記イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物の他に、吸湿性高分子を含有するのが好ましい。
【0025】
この場合において、吸湿性高分子を含有する医薬組成物の中でも、医薬組成物の剤形が固形製剤であるときの具体的な形態としては、以下の(い)〜(ち)等を例示することができ、これらは前述の(イ)〜(チ)等の方法を基礎としたものである。具体的な製剤化等については、前述と同様、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法により、適宜製剤添加物を用いて、製造、製剤化することができる。
【0026】
(い)イブプロフェン、ブチルスコポラミン臭化物及び吸湿性高分子を用い、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物のうちいずれか一方を適当な方法で造粒して粒状物とし、これに他方のイブプロフェン又はブチルスコポラミン臭化物を造粒せずに含有せしめて製した散剤や顆粒剤等、並びに当該粒状物を更に適当な方法で被覆した製剤。吸湿性高分子は当該粒状物中に含有させてもよいし、粒状物とは別に含有させてもよい。
【0027】
(ろ)イブプロフェン、ブチルスコポラミン臭化物及び吸湿性高分子を用い、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物をそれぞれ適当な方法で別個に造粒して粒状物とし、これらを含有せしめて製した散剤や顆粒剤等、並びに当該粒状物を更に適当な方法で被覆した製剤。吸湿性高分子は、いずれか一方の粒状物中に含有させてもよいし、両方の粒状物中に含有させてもよいし、また、これら粒状物とは別に含有させてもよい。
(は)上記(い)又は(ろ)で製した散剤や顆粒剤等をカプセルに充填したカプセル剤。(に)上記(い)又は(ろ)で製した粒状物等を適当な方法で製錠して得た錠剤。製錠は、圧縮法のほか、適当な方法により一定の形状に成形することでも達成できる。
【0028】
(ほ)イブプロフェン、ブチルスコポラミン臭化物及び吸湿性高分子を用い、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが実質的に互いに接触しないように製した多層錠、並びに当該多層錠を更に適当な方法で被覆した製剤。当該多層錠としては、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物を、互いに異なる層に位置させたものが好ましく、三層以上の多層錠として、イブプロフェンを含む層とブチルスコポラミン臭化物を含む層が互いに接しないように位置させたものがより好ましい。なお、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物として、上記(い)や(ろ)で製した粒状物を用いることができる。多層錠において、吸湿性高分子は、イブプロフェンを含む層及びブチルスコポラミン臭化物を含む層のうちいずれかに位置させてもよいし、両方の層に位置させてもよい。さらに、いずれかの層の中間層に位置させてもよい。
【0029】
(ヘ)イブプロフェン、ブチルスコポラミン臭化物及び吸湿性高分子を用い、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物のいずれか一方を核錠(芯錠、中心錠ともいう)に配置し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが実質的に互いに接触しないように製した有核錠、並びに当該有核錠を更に適当な方法で被覆した製剤。なお、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物として、上記(い)や(ろ)で製した粒状物を用いることができる。有核錠において、吸湿性高分子は、核錠に位置させてもよいし、外殻に位置させてもよいし、核錠と外殻のいずれにも位置させてもよい。
【0030】
(と)イブプロフェン、ブチルスコポラミン臭化物及び吸湿性高分子を用い、上記(い)又は(ろ)の粒状物に換えて、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物のいずれか一方又は両方をα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンやγ−シクロデキスト
リン等のシクロデキストリン類等で包接した包接化合物を用いた製剤。吸湿性高分子は、いずれか一方の包接化合物の近傍に位置させてもよいし、両方の包接化合物の近傍に位置させてもよい。
【0031】
(ち)イブプロフェン、ブチルスコポラミン臭化物及び吸湿性高分子を用い、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物のいずれか一方を通常の方法で製した製剤中に含有し、糖衣層やフィルムコーティング層を設けた製剤であって、当該糖衣層やコーティング層に他方を含有し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが実質的に互いに接しないように製した製剤(剤形が錠剤である場合、糖衣錠やフィルムコーティング錠と称される。)。吸湿性高分子は、通常の方法で製した製剤中に位置させてもよいし、糖衣層やフィルムコーティング層に位置させてもよいし、糖衣層やフィルムコーティング層のいずれにも位置させてもよいし、さらには、製剤中、糖衣層及びフィルムコーティング層のいずれにも位置させてもよい。
【0032】
本発明の医薬組成物で用いられる吸湿性高分子とは、吸湿性を有し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物との相互作用を改善する効果を有する高分子であれば、特に限定されない。本発明で用いられる吸湿性高分子を例示すれば、吸湿性を有するセルロース誘導体又はその塩、吸湿性を有する1−ビニル−2−ピロリドン重合物、吸湿性を有するスターチ誘導体又はその塩等の高分子等が挙げられる。この中でも、吸湿性を有するセルロース誘導体又はその塩が好ましい。
【0033】
上記吸湿性を有するセルロース誘導体又はその塩としては、セルロース中のヒドロキシ基をエーテル化したもの、エーテル化したセルロースのエステル、これらの架橋重合物やそれらの塩等が挙げられる。具体的には、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等が挙げられる。
これらの中でも、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウムが好ましい。
これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
【0034】
また、吸湿性を有する1−ビニル−2−ピロリドン重合物としては、1−ビニル−2−ピロリドンの直鎖重合物及び1−ビニル−2−ピロリドンの架橋重合物等が挙げられる。1−ビニル−2−ピロリドン重合物としては、例えば、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90、クロスポビドン等が挙げられる。吸湿性を有するスターチ誘導体又はその塩としては、でんぷんのカルボキシメチルエーテル又はその塩等が挙げられ、例えば、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。
【0035】
本発明に係る医薬組成物中の吸湿性高分子の含有量は、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物との相互作用の改善において、用いる吸湿性高分子の種類等に基づき、適宜検討して決定すればよいが、例えば、イブプロフェン1質量部に対して、吸湿性高分子を0.01〜3質量部含有するものが好ましく、0.02〜2質量部含有するものがより好ましい。
本発明においては、吸湿性高分子は製剤添加物の一例である。吸湿性高分子を、特にイブプロフェン又はブチルスコポラミン臭化物を含む粒状物とするに際しての結合剤として用いたとき、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物との相互作用をより抑制することが期待できる。
【0036】
本発明の医薬組成物には、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物以外の薬物、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方、キサンチン系成分等からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含んでいても良い。
【0037】
解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、チアラミド塩酸塩、ラクチルフェネチジン、ロキソプロフェンナトリウム水和物等が挙げられる。
【0038】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、アゼラスチン塩酸塩、アリメマジン酒石酸塩、イソチペンジル塩酸塩、イプロヘプチン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩、エメダスチンフマル酸塩、カルビノキサミンジフェニルジスルホン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、dl−クロルフェニラミンマレイン酸塩、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、ジフェテロール塩酸塩、ジフェテロールリン酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミンタンニン酸塩、トリプロリジン塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、トンジルアミン塩酸塩、フェネタジン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、メキタジン、メトジラジン塩酸塩、メブヒドロリンナパジシル酸塩、エメダスチンフマル酸塩等が挙げられる。
【0039】
鎮咳剤としては、例えば、アロクラミド塩酸塩、エプラジノン塩酸塩、カルベタペンタンクエン酸塩、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩、ジブナートナトリウム、ジメモルファンリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、チペピジンクエン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩等が挙げられる。
【0040】
ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン塩酸塩、ノスカピン等が挙げられる。
【0041】
気管支拡張剤としては、例えば、トリメトキノール塩酸塩、フェニルプロパノールアミン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、プソイドエフェドリン硫酸塩、メチルエフェドリン、dl−メチルエフェドリン塩酸塩、l−メチルエフェドリン塩酸塩、dl−メチルエフェドリンサッカリン塩、メトキシフェナミン塩酸塩等が挙げられる。
【0042】
去痰剤としては、例えば、アンブロキソール塩酸塩、アンモニア・ウイキョウ精、エチルシステイン塩酸塩、塩化アンモニウム、カルボシステイン、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、メチルシステイン塩酸塩、l−メントール、リゾチーム塩酸塩等が挙げられる。
【0043】
催眠鎮静剤としては、例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素やブロムワレリル尿素等が挙げられる。
【0044】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB6
、ビタミンB12、ビタミンC、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等(例え
ば、チアミン、チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ジセチアミン塩酸塩、セトチアミン塩酸塩、フルスルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩、オクトチアミン、シコチアミン、チアミンジスルフィド、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステル、リボフラビン酪酸エステル、リン酸リボフラビンナトリウム、パンテノール、パンテチン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル、シアノコバラミン、メコバラミン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、ヘスペリジン等)が挙げられる。
【0045】
抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩類(例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等)、セアプローゼ、セミアルカリプロティナーゼ、セラペプターゼ、トラネキサム酸、プロクターゼ、プロナーゼ、ブロメライン等が挙げられる。
【0046】
胃粘膜保護剤としては、例えば、アミノ酢酸、アルジオキサ、ケイ酸マグネシウム、ゲファルナート、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩(アルミニウムグリシネート)、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、スクラルファート、セトラキサート塩酸塩、ソファルコン、炭酸マグネシウム、テプレノン、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルメチオニンスルホニウムクロリド等が挙げられる。
【0047】
抗コリン薬としては、例えば、オキシフェンサイクリミン塩酸塩、ジサイクロミン塩酸塩、メチキセン塩酸塩、スコポラミン臭化水素酸塩、ダツラエキス、チペピジウム臭化物、メチルアトロピン臭化物、メチルアニソトロピン臭化物、メチルスコポラミン臭化物、メチル−l−ヒヨスチアミン臭化物、メチルベナクチジウム臭化物、ピレンゼピン塩酸塩、ベラドンナアルカロイド、ベラドンナエキス、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド、ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン、ロートエキス、ロート根、ロート根総アルカロイドクエン酸塩等が挙げられる。
【0048】
生薬類としては、例えば、アカメガシワ(赤芽柏)、アセンヤク(阿仙薬)、インヨウカク(淫羊霍)、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金)、エンゴサク(延胡索)、エンメイソウ(延命草)、オウゴン(黄岑)、オウセイ(黄精)、オウバク(黄柏)、オウヒ(桜皮)、オウレン(黄連)、オンジ(遠志)、ガジュツ(我朮)、カノコソウ(鹿子草)、カミツレ、カロニン(か楼仁)、カンゾウ(甘草)、キキョウ(桔梗)、キョウニン(杏仁)、クコシ(枸杞子)、クコヨウ(枸杞葉)、ケイガイ(荊芥)、ケイヒ(桂皮)、ケツメイシ(決明子)、ゲンチアナ、ゲンノショウコ(現証拠)、コウブシ(香附子)、ゴオウ(牛黄)、ゴミシ(五味子)、サイシン(細辛)、サンショウ(山椒)、シオン(紫苑)、ジコッピ(地骨皮)、シャクヤク(芍薬)、ジャコウ(麝香)、シャジン(沙参)、シャゼンシ(車
前子)、シャゼンソウ(車前草)、獣胆(ユウタン(熊胆)を含む)、ショウキョウ(生姜)、ジ
リュウ(地竜)、シンイ(辛夷)、セキサン(石蒜)、セネガ、センキュウ(川きゅう)、ゼンコ(前胡)、センブリ(千振)、ソウジュツ(蒼朮)、ソウハクヒ(桑白皮)、ソヨウ(蘇葉)、タイサン(大蒜)、チクセツニンジン(竹節人参)、チョウジ(丁子)、チンピ (陳皮)、トウキ(当帰)、トコン(吐根)、ナンテンジツ(南天実)、ニンジン(人参)、バイモ(貝母)、バクモンドウ(麦門冬)、ハッカ(薄荷)、ハンゲ(半夏)、バンコウカ(番紅花)、ハンピ(反鼻)、ビャクシ(白し)、ビャクジュツ(白朮)、ブクリョウ(茯苓)、ボタンピ(牡丹皮)、ボレイ(牡蠣)、マオウ(麻黄)、ロクジョウ(鹿茸)等の生薬及びこれらの抽出物(エキス、チンキ、乾燥エキス等)等が挙げられる。
【0049】
漢方処方としては、例えば、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等が挙げられる。
【0050】
カフェイン類としては、例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン水和物、無水カフェイン等が挙げられる。
【0051】
キサンチン系成分としては、例えば、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリン等が挙げられる。
【0052】
上述のようなイブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物以外の薬物の中でも、本発明の医薬組成物が解熱鎮痛剤や総合感冒薬等として用いられる観点から、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン、エテンザミド等の解熱鎮痛剤;抗ヒスタミン剤、アリルイソプロピルアセチル尿素やブロムワレリル尿素等の催眠鎮静剤;乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム等の胃粘膜保護剤;安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン水和物、無水カフェイン等のカフェイン類等の薬物が好ましいものとして挙げられる。
【0053】
本発明は、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物との相互作用改善技術に関するものであるが、本発明の医薬組成物としては、1錠(200mg)当たり、イブプロフェン75mg、ブチルスコポラミン臭化物5mg、ヒドロキシプロピルセルロース10mg、クロスカルメロースナトリウム20mg、軽質無水ケイ酸10mg、結晶セルロース70mg及びタルク10mgを含有する錠剤、当該錠剤にヒドロキシプロピルメチルセルロース(2910)10質量部及びクエン酸トリエチル1質量部を精製水115質量部に溶解させ、これに酸化チタン2質量部を分散させた液をコーティングしたフィルムコーティング錠(5mgのフィルム層を有し、1錠が205mg)及び1包(1.2g)当たり、イブプロフェン150mg、ブチルスコポラミン臭化物10mg、結晶セルロース610mg、カルメロースカルシウム200mg、ヒドロキシプロピルセルロース30mg及びオイドラギットL200mgを含有する細粒剤でないものが好ましい。
上述の1錠200mgの錠剤は、1回にイブプロフェン150mg及びブチルスコポラミン臭化物10mgを服用するに際して2錠を要するところ、本発明に係る医薬組成物(錠剤)は、1回1錠を服用することで達成し得、服用コンプライアンスの観点で優れたものである。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
試験例1 相互作用の検討(1)
イブプロフェン150質量部及びブチルスコポラミン臭化物10質量部を混合し、ガラス瓶に入れ、50℃で保存した(参考例1)。比較対照として、イブプロフェン単独(対照例1)、ブチルスコポラミン臭化物単独(対照例2)を同様にガラス瓶に入れ、50℃で保存した。保存開始直後、2週間後及び4週間後のガラス瓶内各々の状態を評価し、結果を表1に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1から明らかなように、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物の混合物を50℃で保存すると、混合物は湿潤し、さらに変色することがわかった(参考例1)。一方、イブプロフェン、ブチルスコポラミン臭化物を各々単独で保存したものには変化は生じなかった(対照例1及び2)。このことから、混合物の状態変化は、イブプロフェとブチルスコポラミン臭化物が相互作用を生じた結果であることが判明した。
【0058】
試験例2 相互作用の検討(2)
イブプロフェン150質量部及びブチルスコポラミン臭化物10質量部を混合し、ガラス瓶に入れ、40℃で保存した(参考例2)。比較対照として、イブプロフェン単独(対照例3)、ブチルスコポラミン臭化物単独(対照例4)を同様にガラス瓶に入れ、40℃で保存した。
イブプロフェン150質量部、ブチルスコポラミン臭化物10質量部、及び吸湿性高分子の一例であるクロスカルメロースナトリウム20質量部を混合し、同様にガラス瓶に入れ、40℃で保存した(参考例3)。
保存開始直後及び6ヶ月後のガラス瓶内各々の状態を評価し、結果を表2に示した。
【0059】
【表2】

【0060】
表2から明らかなように、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物の混合物を40℃で6ヶ月保存すると、混合物は湿潤し、かつ変色した状態であった(参考例2)。一方、イブプロフェン、ブチルスコポラミン臭化物を各々単独で保存したものは、保存開始直後の状態を保ち、変化は生じなかった(対照例3及び4)。これらより、混合物の状態変化は、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物が相互作用を生じた結果であることが判明した。
また、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物の混合物にクロスカルメロースナトリウムをさらに加えたものは、保存開始直後の状態を保ち、変化は生じなかった(参考例3)。この結果から、吸湿性高分子は、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物の相互作用を改善することが判明した。
【0061】
試験例3 相互作用の検討(3)
イブプロフェン150質量部及びブチルスコポラミン臭化物10質量部を混合し、ガラス瓶に入れ、60℃で保存した(参考例4)。
イブプロフェン150質量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース15質量部及び軽質無水ケイ酸6質量部を混合し、精製水を用いて練合・造粒して造粒物を得た。得られた造粒物にブチルスコポラミン臭化物10質量部を混合し、ガラス瓶に入れ、60℃で保存した(実施例1)。
ブチルスコポラミン臭化物10質量部、ヒドロキシプロピルセルロース1質量部及び乳糖水和物25.5質量部を混合し、精製水を用いて練合・造粒して造粒物を得た。得られた造粒物にイブプロフェン150質量部を混合し、ガラス瓶に入れ、60℃で保存した(実施例2)。
イブプロフェン150質量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース15質量部及び軽質無水ケイ酸6質量部を混合し、精製水を用いて練合・造粒して造粒物を得た。一方、ブチルスコポラミン臭化物10質量部、ヒドロキシプロピルセルロース1質量部及び乳糖水和物25.5質量部を混合し、精製水を用いて練合・造粒して造粒物を得た。得られた2種類の造粒物を混合し、ガラス瓶に入れ、60℃で保存した(実施例3)。
保存開始直後及び1週間後のガラス瓶内各々の状態を評価し、結果を表3に示した。
【0062】
【表3】

【0063】
表3から明らかなように、イブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物の混合物を60℃で保存すると、1週間後には、混合物は固化した状態となった(参考例4)。
一方、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とを実質的に互いに接しないように含有したものは、保存開始直後の状態を保ち、変化は生じなかった(実施例1〜3)。
したがって、参考例4と実施例1〜3の結果から、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とを実質的に互いに接しないようにすることによって、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物の相互作用を改善することができることが判明した。
【0064】
製造例1
イブプロフェン150質量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース12質量部、クロスカルメロースナトリウム25質量部及び軽質無水ケイ酸6質量部を混合し、精製水を用いて練合し、造粒した後、整粒して造粒物を得た。一方、ブチルスコポラミン臭化物10質量部、ヒドロキシプロピルセルロース1質量部及び乳糖水和物36質量部を混合し、エタノールを用いて練合し、造粒した後、整粒して造粒物を得た。得られた2種類の造粒物にタルク10質量部を加えて混合し、打錠用顆粒を得た。
得られた打錠用顆粒を打錠し、1錠当たりイブプロフェンを150mg、ブチルスコポラミン臭化物を10mg含有する錠剤を得た。
【0065】
製造例2
ヒドロキシプロピルメチルセルロース10質量部及びクエン酸トリエチル1質量部を精製水115質量部に溶解させ、これに酸化チタン2質量部を分散させて、フィルムコーティング液を調製した。コーティング装置を用いて、前述のコーティング液を噴霧し、製造例1で得た錠剤(素錠)に10mgのフィルム層を有するフィルムコーティング錠を得た。
【0066】
製造例3
クロスカルメロースナトリウム25質量部の代わりにカルメロースを用いる以外は製造例1と同様にして、1錠当たりイブプロフェンを150mg、ブチルスコポラミン臭化物を10mg含有する錠剤を得た。
【0067】
製造例4
製造例2と同様にして、製造例3で得た錠剤(素錠)に10mgのフィルム層を有するフィルムコーティング錠を得た。
【0068】
試験例4 相互作用の検討(4)
製造例1及び製造例3で得た錠剤(素錠)、並びに製造例2及び製造例4で得たフィルムコーティング錠を各々ガラス瓶に入れ、40℃で保存した。
保存開始直後及び6ヶ月後のガラス瓶内における各錠剤の状態を評価し、結果を表4に示した。
【0069】
【表4】

【0070】
表4から明らかなように、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とクロスカルメロースナトリウムを含有する錠剤(素錠)は、6ヶ月保存後も保存開始直後の状態を保ち、変化は生じなかった(製造例1)。同様に、クロスカルメロースナトリウムの換わりにカルメロースを含有する錠剤(素錠)も、6ヶ月保存後も保存開始直後の状態を保ち、変化は生じなかった(製造例3)。
また、製造例1及び製造例3各々の素錠にフィルムコーティングした錠剤は、6ヶ月保存後であっても保存開始直後の状態を保ち、変化を生じなかった(製造例2及び製造例4)。
【0071】
製造例5
イブプロフェン200質量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース12質量部、カルメロース25質量部及び軽質無水ケイ酸6質量部を混合し、精製水を用いて練合し、造粒した後、整粒して造粒物を得た。一方、ブチルスコポラミン臭化物10質量部、ヒドロキシプロピルセルロース1質量部及び乳糖水和物36質量部を混合し、エタノールを用いて練合し、造粒した後、整粒して造粒物を得た。得られた2種類の造粒物にタルク10質量部を加えて混合し、打錠用顆粒を得た。
得られた打錠用顆粒を打錠し、1錠当たりイブプロフェンを200mg、ブチルスコポラミン臭化物を10mg含有する錠剤を得た。
【0072】
製造例6
ヒドロキシプロピルメチルセルロース10質量部及びクエン酸トリエチル1質量部を精製水115質量部に溶解させ、これに酸化チタン2質量部を分散させて、フィルムコーティング液を調製した。コーティング装置を用いて、前述のコーティング液を噴霧し、製造例5で得た錠剤(素錠)に10mgのフィルム層を有するフィルムコーティング錠を得た。
【0073】
製造例7
カルメロース25質量部の代わりにクロスカルメロースナトリウムを用いる以外は製造例5と同様にして、1錠当たりイブプロフェンを200mg、ブチルスコポラミン臭化物を10mg含有する錠剤を得た。
【0074】
製造例8
製造例6と同様にして、製造例7で得た錠剤(素錠)に10mgのフィルム層を有するフィルムコーティング錠を得た。
【0075】
製造例9
イブプロフェン200質量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース12質量部、カルメロース25質量部及び軽質無水ケイ酸6質量部を混合し、精製水を用いて練合し、造粒した後、整粒して造粒物を得た。一方、ブチルスコポラミン臭化物20質量部、ヒドロキシプロピルセルロース1質量部及び乳糖水和物26質量部を混合し、エタノールを用いて練合し、造粒した後、整粒して造粒物を得た。得られた2種類の造粒物にタルク10質量部を加えて混合し、打錠用顆粒を得た。
得られた打錠用顆粒を打錠し、1錠当たりイブプロフェンを200mg、ブチルスコポラミン臭化物を20mg含有する錠剤を得た。
【0076】
製造例10
ヒドロキシプロピルメチルセルロース10質量部及びクエン酸トリエチル1質量部を精製水115質量部に溶解させ、これに酸化チタン2質量部を分散させて、フィルムコーティング液を調製した。コーティング装置を用いて、前述のコーティング液を噴霧し、製造例9で得た錠剤(素錠)に10mgのフィルム層を有するフィルムコーティング錠を得た。
【0077】
製造例11
カルメロース25質量部の代わりにクロスカルメロースナトリウムを用いる以外は製造例9と同様にして、1錠当たりイブプロフェンを200mg、ブチルスコポラミン臭化物を20mg含有する錠剤を得た。
【0078】
製造例12
製造例10と同様にして、製造例11で得た錠剤(素錠)に10mgのフィルム層を有するフィルムコーティング錠を得た。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、保存安定なイブプロフェン及びブチルスコポラミン臭化物を含有する医薬組成物を提供することができる。
また、1回服用量としての常用量(イブプロフェン150mg又は200mg、ブチルスコポラミン臭化物10mg又は20mg)を含有しうる医薬組成物(例えば、錠剤)とすることができるので、服用者のコンプライアンスが良好である。また、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とを簡便に併用することができるため、優れた鎮痛作用を有し、副作用が軽減された解熱鎮痛薬や総合感冒薬として優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とを実質的に互いに接しないように含有する医薬組成物。
【請求項2】
イブプロフェンを含む粒状物とブチルスコポラミン臭化物とを含有し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが、実質的に互いに接しないように含まれている医薬組成物。
【請求項3】
ブチルスコポラミン臭化物を含む粒状物とイブプロフェンとを含有し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが、実質的に互いに接しないように含まれている医薬組成物。
【請求項4】
イブプロフェンを含む粒状物とブチルスコポラミン臭化物を含む粒状物とを含有し、イブプロフェンとブチルスコポラミン臭化物とが、実質的に互いに接しないように含まれている医薬組成物。
【請求項5】
剤形が固形製剤である請求項1〜4いずれか1項に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2013−63969(P2013−63969A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191189(P2012−191189)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】