説明

解重合ペクチンを安定剤として使用して食品を調製するためのプロセス

【課題】発酵タンパク質製品の生成の間に、発酵前、および好ましくは初期の低温殺菌の前に添加され得る、代替的な安定剤を提供すること。
【解決手段】発酵タンパク質製品の生成の間に、発酵前、および好ましくは初期の低温殺菌の前に添加され得る、代替的な安定剤を提供する必要性が存在する。本発明は、食品を生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、(i)食品中間体を提供するために、食品原料と安定剤とを接触させる工程;および(ii)その食品中間体を発酵させる工程を包含し、ここで、この安定剤は解重合ペクチンを含み、そしてこの食品原料はタンパク質を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の生成のためのプロセス、およびそのプロセスによって生成された食品に関連する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
あるタンパク質含有食品(例えば、飲用ヨーグルトおよび撹拌型ヨーグルトのような酸性の乳製品(daily product))は、凝集、沈殿(sedimentation)および分離に対してタンパク質系を安定させるために、安定剤を必要とする。牛乳に存在する主なタンパク質は、カゼインであり、それは、全タンパク質含有量の約80%を構成する。牛乳の残りのタンパク質は、「乳清タンパク質」と称され、そして主にβ−ラクトグロブリンおよびα−ラクトアルブミンからなる。牛乳は、水と乳固形分からなる。乳固形分は、脂肪および無脂乳固形分(MSNF)を含み、MSNFは、ラクトースおよび種々の無機質と共にタンパク質を構成する。
【0003】
ペクチンは、伝統的に、酸化されたタンパク質飲料(代表的には高エステルペクチン)および撹拌型ヨーグルト(代表的には低エステルペクチン)のようなタンパク質含有食品中に安定剤として使用されている。ペクチンは、緑地植物(例えば、果物および野菜)中に見出される構造多糖類であり、そして柑橘類の果物の皮から抽出され得る。分子レベルにおいて、ペクチンは、α−1,4グリコシド結合(「滑面領域(smooth region)」)を通して連結されるガラクツロン酸単位の直鎖からなる。この通常の構造は、中性の糖(「毛様領域(hairy region)」)の側鎖を有するラムノピラノシル残基によって中断される。ペクチン分子は、約200,000までの分子量および約800単位までの重合の程度を有する。ガラクツロン酸単位の、一定の割合のカルボン酸基は、メチルエステル化される。ペクチンの特性は、エステル化の程度に依存し、このエステル化の程度は、低エステル(LE)ペクチンに関しては、50%未満でありそして高エステル(HE)ペクチンに関しては、50%を超える。
【0004】
ペクチンは、系のpHに依存して、カゼインミセルの凝集を防ぐ能力またはそれをもたらす能力のいずれかを有することが公知である。ミセルのカゼイン−ペクチン系は、中性pH 6.7における親水コロイド非吸着および枯渇凝集(depletion flocculation)からpH 4における親水コロイド吸着および重合体の安定化へ転換する(非特許文献1、2)[2,4]。それゆえ、ペクチンは、酸性のpHにおいて有効な安定剤であるが、中性のpH条件においては、それは、乳タンパク質に不適合であり、そしてその乳を2つの相へ分離する。
【0005】
カゼインミセルの枯渇凝集は、カゼインミセルの間の引力相互作用を誘導するコロイド状のカゼインミセルの間の間隙からの重合体ペクチン鎖の排除に関与する。枯渇引力(depletion attraction)が十分に強い場合、分離的な相分離が起こり、2つの不混和性の水相が生じ、そこでは、上相では、ペクチンが豊富でそしてカゼインミセルが乏しいのに対し、上相は、対照的に、主にカゼインミセルで充填されている(非特許文献1、2、3)[1,2,4]。低いペクチン濃度において、ペクチン分子によって占有される相容量は、小さい。ペクチンの濃度を増加していくと、上記占有される容量およびペクチン溶液の浸透圧力が増加し、そしてカゼインミセルのより強力な凝集を誘導する。最終的に、あるペクチン濃度において、相分離が生じる。約0.20%のHEペクチンが、pH 6.7にて脱脂粉乳中に相分離を誘導するために必要とされる(非特許文献1)[2]。
【0006】
ペクチンは、それがpH 6.7にて脱脂粉乳を含む溶液中にある場合に、非吸着重合体であるが、pHを5.3に減少させた場合、ペクチン分子は、カゼインミセルの上へ吸着する。ペクチン濃度が低く、そしてカゼインミセルの全体を覆うために不十分な場合、架橋凝集(bridging flocculation)が起こる。さらにペクチン濃度を増加する場合、カゼインミセルは、完全にコーティングされ、そしてその系は再び安定化する。それによって、カゼイン粒子の間の引力が減少し、そして安定状態が得られる(非特許文献1)[2]。カゼインミセルの上へのペクチンの吸着は、カゼインの等電点(約pI 4.6)以上のpH状態において可能であるが、効率的な安定化のpHは、一般に、約pH 3.5から4.4に制限され、ペクチンとカゼインが効果的な吸着のための十分な反対の正味電荷を保有する(非特許文献2)[4]。
【0007】
この仕組みは、タンパク質凝集に対して酸性タンパク質飲料を安定化するために使用される。効率的な重合体の安定化は、高分子量、広い表面被覆範囲とガラクツロン酸基のブロック状の(blockwise)分布との組み合わせによって達成される。それゆえ、理論的には、最良の重合体安定剤は、強制的な重合体の重なりに際し斥力を増加させるため、低溶媒親和性を有する強い吸着末端と高溶媒親和性を有する膨大なダングリング末端との共重合体である(非特許文献2)[4]。酸性タンパク質飲料の安定化に関して、HEペクチンは、最適の親水性コロイドと一般に考えられている。HEペクチンは、低エステル(LE)ペクチンよりも低い電荷密度を有し、そしてそれによってカゼインミセルとのより弱い静電気的相互作用を有するが、一般にカゼイン分散のより有効な安定剤として役立つ。HEペクチン分子のより小さい領域は、カゼイン粒子と相互作用し、ペクチンダングリング鎖のより実質的な部分が、溶媒相互作用から免れることを可能にし、従って、立体障害を通じてタンパク質凝集を防いでいると考えられている(非特許文献4)[7]。
【0008】
異なるpH値におけるHEペクチンの安定化の特徴の違いは、HEペクチンが安定剤として使用され得る用途、およびHEペクチンが添加され得る生成プロセスの段階を決定する。
【0009】
タンパク質飲料の酸性化は、酸(例えば、酸性フルーツジュース)の添加によって達成され得る。酸性化はまた、発酵を介しても達成され得る。しかし、HEペクチンを含む酸化されたタンパク質飲料に関して、これらの2つのプロセスは、技術的に互いに異なる。
【0010】
直接的に酸化されたタンパク質飲料(例えば、ミルクジュース飲料)に対して、ジュースおよび/または酸の乳への直接的な添加は、制御不能なサイズの酸性カゼイン粒子の形成を生じる。これらの粒子は、代表的には、懸濁液中に保持するには大きすぎ、熱処理に際し、砂のような口あたりを伴う不安定な酸性タンパク質飲料が生じる。直接的に酸化されたタンパク質飲料の生成において、中性pHにおける高分子量HEペクチンの不安定化効果は、有利に使用される。HEペクチンは、代表的には、酸性化の前に乳に添加され、そして中性pHの条件下で、2つの相へと乳の分離を誘導する。ペクチンの浸透圧効果は、より低いタンパク質の豊富な相に無処理のカゼインミセルを集中させ、そしてペクチンの豊富な乳清相を事実上ミセルの存在しない状態にする。このカゼイン相は、液体の特性を有し、そして撹拌することによって液滴の形態で乳清相へ分散され得る。より多くのせん断が系に適用されると、液滴がより小さくなり、そしてその系は、より水中油乳濁液のようになる。直接の酸性化を通じたその後の急速なpHの低下は、カゼイン液滴を、それらの中性乳中で有していたサイズでその天然の形態に凝結し、そしてそれによって制御されたサイズの酸性カゼイン粒子を生み出す(非特許文献5)[5]。酸性化プロセスの間、カゼインの天然の安定化は破壊され、そして上述のカゼインミセルの周りの防御コーティングを形成するHEペクチンの存在が、凝集および沈降(precipitation)を防ぐ(非特許文献6)[13]。
【0011】
従って、直接的に酸化されたタンパク質飲料に対して、HEペクチンが、中性pHにて添加され、そして相分離を誘導する。強い機械的な撹拌が、次いで、沈降したカゼインタンパク質を懸濁液中に保持するために使用される。その系は、急速に酸性化され、カゼインタンパク質を懸濁液中に凝結させる。カゼインタンパク質は、酸性条件下で高エステルペクチン分子によって安定化され、そしてそれによって最終用途における沈殿を防止する。
【0012】
発酵乳製品に対して、HEペクチンは、同じ方法では使用され得ない。発酵乳製品の生成は、代表的には、乳主成分の低温殺菌工程、続いて細菌を用いた接種工程そして最終的には発酵工程が関与する。細菌による発酵の間、乳のpHは、上記の適用における急速なpHの低下と対照的に徐々にそしてゆっくりと低下する。それによって、カゼインミセルの分解が生じ、乳をヨーグルトへと濃化またはゲル化する(非特許文献5、6)[5,13]。
【0013】
発酵前の乳への伝統的な、高分子量HEペクチンの添加が、上述のように相分離を誘導するのは、最終発酵飲料の効率的なタンパク質の安定化のために必要とされる濃度で適用される場合である。この適用における相分離は、望ましくない。なぜなら、特徴的なヨーグルトの構造およびその後のテクスチャー(texture)の効果が、失われるからである。さらに、沈降したカゼインミセルは、この適用では、撹拌によって懸濁液中に保持され得ない。機械的な圧力および酸素の取り込みは、通常、生きた細菌に最高の発酵条件を与えるために乳の発酵中には避けられる。それゆえ、分離されたカゼインミセルを懸濁液中に保持するための強い機械的な撹拌は、適用され得ない。その上、pHは、カゼイン構造を凝結できないほど遅く低下する。まとめると、高分子量HEペクチンは、発酵前に乳に添加される場合、通常効果的ではなく、そしてその代わりに、発酵後に添加され、酸化されたタンパク質を凝集から保護する(非特許文献7)[14]。
【0014】
発酵乳製品(例えば、撹拌型ヨーグルト)に関して、ペクチン安定剤の代表的な選択は、発酵タンパク質系に安定性とテクスチャーとの両方を提供する、LEペクチンである。中性乳において、相分離の境界(phase separation boundary)は、LEペクチンが添加される場合、より低いペクチン濃度においてさえ得られる(非特許文献8)[16]。実際には、約0.15%のLEペクチンが、相分離なしに中性乳に添加され得る。しかし、この低量は、結果として生じる発酵乳製品(例えば、撹拌型ヨーグルト)において必要とされる高粘性およびクリーム性を得るにはしばしば十分ではない。さらに、粘性およびクリーム性の向上に対するこの要求は、乳固形成分(例えば、タンパク質および脂肪)が経費削減またはカロリー低下の目的で処方物中において減少される場合、さらにより問題となる。
【0015】
生きた培養物を含む発酵乳製品に関して、最終製品は、通常、低温殺菌も滅菌もされない。それゆえ、発酵中の汚染および最終製品の汚染を避けるために、発酵前に乳を低温殺菌することが、最も重要である。ペクチンが、生きた培養物を含む発酵乳飲料に適用される場合、これもまた、製品の汚染を避けるためにも滅菌されなければならない。上で考察されるように、公知の商業用ペクチン製品は、低温殺菌、接種および発酵前に乳に添加され得ず、そしてそれゆえ、そのペクチンは、別個に滅菌される必要がある。このことは、代表的に、ペクチン水溶液の加熱滅菌に関与し、これはペクチンを溶解しおよび熱するためのさらなる処理および機器を必要とする。このペクチンは、代表的には、ペクチンシロップの形態であり、このシロップは、加熱することにより滅菌され、そしてその後既に発酵された乳主成分に添加される。さらなるペクチンの滅菌プロセスは、さらなるタンク容量および加熱機器を必要とし、そしてエネルギー費用を増加させる。糖との乾燥混合物の形態で発酵乳に直接にペクチンを添加する、代替的かつより単純な方法は、汚染の危険性のため、適用できない。
【0016】
発酵乳製品の製造者にとって、発酵前に(すなわち、ゆっくりとした酸化の前に)乳へ添加され得る安定剤を用いて操作することは、(例えば、プロセス機器およびエネルギー必要量の点で)より容易でかつ廉価である。発酵前に、汚染を避けるために乳を低温殺菌することが、一般的であるが、また、最適なヨーグルト構造を得るために、乳清タンパク質を加熱し、変性することが、非常に重要である。このプロセスは、乳の低温殺菌が安定剤の低温殺菌と組み合わされ得る場合、非常に単純化される。そして、その安定剤は、別個に殺菌される必要はない。さらに、安定剤を添加する方法は、より柔軟性がある。なぜなら、糖との乾燥混合物としての直接的添加と飽和糖溶液中での分散との両方の直接添加が、溶解安定剤溶液の代替として使用され得るからである。
【0017】
乳のような食品原料中のタンパク質と適合し、食品原料に添加され得、食品原料と共に低温殺菌することに耐え、発酵中の凝集および相分離を予防し、そして最終的に、発酵後および必要に応じて保存期間を延長するための最終低温殺菌後に酸性タンパク質を安定化する発酵タンパク質食品の安定剤を探求することが望ましい。
【0018】
低温殺菌、接種および発酵の前に添加され得る安定剤を提供することの困難の1つは、中性pHにおけるタンパク質(例えば、乳タンパク質)との安定剤の不適合性である。概して、タンパク質(例えば、乳タンパク質)および多糖類(例えば、ペクチン)は、十分に高いバルク濃度においておよび中間生体高分子複合体の形成を阻害する条件下において不適合である。これは、主に十分に高いイオン強度(0.2を超える)、タンパク質等電点以上のpH値および3%〜4%以上の全生体高分子濃度において発生する(非特許文献3、9、8)[1,12,16]のに対し、アルカリ性pH条件および低いイオン強度は、同時溶解性(co−solubility)を促進する(非特許文献2、3)[1,4]。さらに、タンパク質−多糖類不適合性は、通常、加熱に際しおよびタンパク質の変性と共に増加する(非特許文献9、10、11、12)[6,9,12,15]。それゆえ、乳の重要な低温殺菌は、発酵前に乳清タンパク質を変性するために、中性pH条件においてカゼインミセルとペクチンとのブレンドの中で一層さらに不適合性を促進しやすい。限定された適合性のための条件は、中性多糖類(例えば、イナゴマメガムおよびグアールガム)、硫酸化多糖類(例えば、カラギーナン)またはカルボキシル化多糖類(例えば、ペクチン)を含む系については異なり、そしてその適合性は、代表的には、硫酸多糖類>中性多糖類>カルボキシル化多糖類の順で減少する(非特許文献4、9、10)[6,7,12]。カゼインミセルの安定化に対するいくつかの親水性コロイドの効果を、中性多糖類のイナゴマメガムおよびグアールガム;カルボキシル化多糖類のアラビアガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ペクチン、ヒアルロン酸およびアルギン酸塩;および硫酸化多糖類のアガロース、ヘパリン、硫酸コンドロイチン、硫酸セルロース、フコイダンおよびカラギーナン、を用いてテストした。唯一カラギーナンが、pH 6.8にて顕著な安定化を誘導した(非特許文献13)[11]。
【0019】
高分子鎖の高分子量および強剛性は、不適合性を増加させる傾向があり、そして通常直鎖状の多糖類は、分岐状多糖類よりもタンパク質と不適合である。概して、分子量および親水性についての違いが大きいほど、生体高分子の不適合性はより明白である(非特許文献9)[12]。以下の例が、文献において見出される:
・中性pHにおけるHEペクチンおよび脱脂粉乳の系は、明確に枯渇凝集を示す(非特許文献2、3、14)[1,4,8]。不安定化およびその後の相分離は、技術的尺度において脱脂粉乳由来のタンパク質を効率的に濃縮する手段としてさらに公知である(非特許文献15)[10]。中性pHにおけるカゼインミセルの枯渇凝集は、そのタイプのペクチン(低エステルペクチン、低エステルアミド化ペクチンおよび高エステルペクチン)が使用される場合はいつでも、発生する。相分離の境界は、HEペクチンよりもLEペクチンでの低多糖類濃度にて得られる(非特許文献8)[16]。
・中性pHにてグアールガム(中性多糖類)を脱脂粉乳と混合することは、相分離に結び付くが、その相の境界は、グアールガムの分子量が分解を通じて減少される場合、より高いグアール濃度へと移行する(非特許文献16)[17]。低分子量のイナゴマメガム、グアールガムおよび加水分解されたグアールガム(全て中性多糖類)は、中性pHでのミセルカゼイン系において異なった振る舞いをする。イナゴマメガムおよび加水分解されたグアールガムは、始めのグアールガムサンプルよりも低い内的粘性を有するので、それらは、1つの分子につき、媒体の中で、グアールガム鎖よりも小さい容量を占有する。従って、重合体の排除が、より低い程度で発生し、同じ多糖類濃度においてカゼインミセルの凝集の減少を生じる(非特許文献17)[18]。
・pH 7において、CMCは、容易に脱脂粉乳とカゼインモデル溶液との両方からカゼインを沈降させる。より高い粘性タイプ(すなわち、より高い分子量のタイプ)が使用される場合、より少ないCMCが必要とされる(非特許文献2)[4]。
【0020】
現時点において、発酵タンパク質飲料の用途のために、発酵前に添加され得る、唯一周知でありそして市場において容易に入手可能な商業製品は、Fuji Oilによって製造される可溶性ダイズ多糖類(SSPS)である(非特許文献18)[19]、ダイズから抽出および精製された水溶性多糖類である。Fuji Oil Co.,Ltd.(日本)は、1993年から、商品名であるSOYAFIBE−Sとして、SSPSを市場に出している。SSPSは、主にダイズの食物繊維からなり、水溶液の中で比較的低い粘性および高い安定性を有する。
【0021】
SSPSは、かなり短い骨格および非常に多くの長い側鎖を有し、HEペクチンよりも非常に多く分枝化した重合体である。HEペクチンは、長い骨格およびやや少しの短い側鎖を有する。SSPSの糖成分は、主にガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸であるが、多くの他の要素(例えば、ラムノース、フコース、キシロースおよびグルコース)も含む。HPLCによるゲルろ過クロマトグラフィー分析は、SSPSが、約550,000、約25,000および約5,000の分子量を有する、おおよそ3つの要素からなることを示す。SSPSの主な成分は、長鎖ラムノガラクツロナンおよび短鎖ホモガラクツロナンからなるのに対し、柑橘類ペクチンは、短鎖ラムノガラクツロナンおよび長鎖ホモガラクツロナンからなる。SSPSに関して、相同の(homogenous)ガラクトシルおよびアラビノシル中性糖側鎖は、ラムノースを通じてラムノガラクツロナン領域と組み合わさり、そしてガラクツロノシル主要骨格よりも長い。
【0022】
SSPSは、約20%のガラクツロン酸含有量を有するのに対し(非特許文献18[19])、ペクチンは、少なくとも65%のガラクツロン酸含有量を有する。この酸の陰イオン基は、おそらく陽イオンタンパク質粒子の表面に結合し、その結果SSPSは、カゼインミセルを保護する。SSPSの吸着層は厚いと想定される。なぜなら、各分子は、ガラクトースおよびアラビノースの側鎖が豊富だからである(非特許文献18)[19]。SSPSは、ゲル化することなく、冷水と熱水の両方に可溶性であり、そして他のガム/安定剤の粘性と比較して比較的低い粘性を示す。酸、熱または塩(例えば、Ca塩)は、顕著に溶液中のSSPSの粘性を影響しない。酸性条件下、SSPSは、タンパク質粒子を凝集および沈降から防ぐ。
HEペクチンと違い、SSPSの興味ある点は、酸性タンパク質飲料の粘性を上げることなく、低pH条件においてタンパク質粒子を安定化させるその能力である。SSPSは、発酵前の処理の初期段階において適用されても機能することが報告されており、このことは製造プロセスの改善を可能にする。SSPSは、より低いpHの生成物において(pH 4.0以下)良い安定化効果を示す。しかし、SSPSは、より高いpH(例えば、約pH 4.4)においてHEペクチンよりもより効果が少なく、高い無脂乳固形分含有量(MSNF)を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】A.Marozieneら、Food Hydrocolloids 第14巻、第391−394頁、2000、Interaction of pectin and casein micelles
【非特許文献2】A.Syrbeら、Int.Dairy Journal、第8巻、第179−193頁、1998、Polymer science concepts in dairy systems−an overview of milk protein and food hydrocolloid interaction
【非特許文献3】U.Einhorn−Stollら、Nahrung/Food 第45巻、第332−337頁、2001、Thermodynamic compatibility of sodium caseinate with different pectins、Influence of the milieu conditions and pectin modifications
【非特許文献4】E.Dickinson、Trends in Food Science & Technology、第9巻、第347−354頁、1998、Stability and rheological implications of electrostatic milk protein−polysaccharide interactions
【非特許文献5】S.H.Christensen、FIA Conference Proceedings、9 頁、1992、Protein−pectin interaction in sour milk beverages
【非特許文献6】L.Macfadyen、Int.Food Ing.第1/2巻、第11−14頁、1992、New uses of pectin in the dairy industry
【非特許文献7】G.Tilly、Food Ingredients Europe:Conference Proceedings、第105−121頁、1991、Stabilization of dairy products by hydrocolloids
【非特許文献8】J.−L.Doublierら、Current Opinion in Colloid & Interface Science、第5巻、第202−214頁、2000、Protein−polysaccharide interactions
【非特許文献9】V.Tolstoguzov、Macromolecular interactions in food technology(N.Parrisら)、ACS Symposium series、第2−14頁、1996、Structure−property relationships in foods
【非特許文献10】V.B.Tolstoguzov、Functional properties of food macromolecules(J.R.Mitchell編)、Elsevier Applied Science Publishers、London、第385−415頁、1986、Functional Properties of Protein−Polysaccharide Mixtures
【非特許文献11】V.B.Tolstoguzov、Nahrung、第42巻、第205−209頁、1998、Physico−chemical modification of food proteins:Food emulsions
【非特許文献12】J.M.M.Cruijsenら、Netherlands Milk & Dairy Journal、第48巻、第177−180頁、1994、Effect of malto−dextrins on the heat stability of caseinate emulsions
【非特許文献13】G.O.Phillips、Emulsifiers、stabilisers and thickeners for the food industry 1、第19−37頁、1986、Interactions of anionic food hydrocolloids
【非特許文献14】E.Kratzら、Deutsche Milchwirtschaft、第32巻、第995−996頁、1992、Apfelpektine zur stabilisierung von Milchprodukten
【非特許文献15】P.G.Dalevら、the 3rd International Symposium of Separations for Biotechnologyにおいて提出された論文、University of Reading、第147−151頁、1994、Use of non−specific interactions of gelatin and pectin for concentration and separation of proteins and formulation of new nutritive products
【非特許文献16】R.Tuinierら、Food Hydrocolloids、第14巻、第1−7頁、2000、The effect of depolymerised guar gum on the stability of skim milk
【非特許文献17】S.Bourriotら、International Dairy Journal、第9巻、第353−357頁、1999、Phase separation、rheology and structure of micellar casein−galactomannan mixtures
【非特許文献18】H.Maeda、Handbooks of Hydrocolloids(G.O.PhilipsおよびP.A.Williams編)、Woodhead Publishing LTD.第17章、第309−320頁、2000、Soluble soybean polysaccharide
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
発酵タンパク質製品の生成の間に、発酵前、および好ましくは初期の低温殺菌の前に添加され得る、代替的な安定剤を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、先行技術の問題を軽減する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
食品の生成のためのプロセスであって、以下の工程:
(i)食品中間体を提供するために、食品原料を安定剤と接触させる工程;
および
(ii)該食品中間体を発酵させる工程;
を包含し、該プロセスにおいて、該安定剤は、解重合ペクチンを含み、そして該食品原料は、タンパク質を含む、プロセス。
(項目2)
項目1に記載のプロセスであって、工程(ii)の前に、工程(i)(a):前記食品中間体を低温殺菌する工程、をさらに包含する、プロセス。
(項目3)
項目1または項目2に記載のプロセスであって、工程(ii)の前に、工程(i)(b):前記食品中間体を接種する工程、をさらに包含する、プロセス。
(項目4)
項目1から項目3のいずれか1項に記載のプロセスであって、以下の順に、以下の工程:
(i)食品中間体を提供するために、食品原料を安定剤と接触させる工程;
(i)(a)該食品中間体を低温殺菌する工程;
(i)(b)該食品中間体を接種する工程;および
(ii)該食品中間体を発酵させる工程
を包含する、プロセス。
(項目5)
項目1から項目4のいずれか1項に記載のプロセスであって、工程(iii):工程(ii)の前記生成物を低温殺菌する工程、をさらに包含する、プロセス。
(項目6)
項目1から項目5のいずれか1項に記載のプロセスであって、工程(iv):ジュースおよび/または酸を、工程(i)(b)の前記生成物および/または工程(ii)の前記生成物および/または工程(iii)の前記生成物に添加する工程をさらに包含する、プロセス。
(項目7)
項目1から項目6のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、25℃にて5%溶液中で、15cPから400cPの粘性を有する、プロセス。
(項目8)
項目1から項目7のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、25℃にて5%溶液中で、20cPから400cPの粘性を有する、プロセス。
(項目9)
項目1から項目8のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、25℃にて5%溶液中で、25cPから50cPの粘性を有する、プロセス。
(項目10)
項目1から項目9のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、本質的に直鎖炭水化物ポリマーである、プロセス。
(項目11)
項目1から項目10のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、少なくとも65%のガラクツロン酸含有量を有する、プロセス。
(項目12)
項目1から項目11のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、少なくとも50%のエステル化の程度を有する、プロセス。
(項目13)
項目1から項目12のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、50%から85%のエステル化の程度を有する、プロセス。
(項目14)
項目1から項目13のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、65%から75%のエステル化の程度を有する、プロセス。
(項目15)
項目1から項目11のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、50%未満のエステル化の程度を有する、プロセス。
(項目16)
項目1から項目11のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、20%から50%のエステル化の程度を有する、プロセス。
(項目17)
項目1から項目16のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記タンパク質が、動物起源および/または野菜起源および/または微生物起源である、プロセス。
(項目18)
項目1から項目17のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記タンパク質が、動物起源である、プロセス。
(項目19)
項目1から項目18のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記タンパク質が、乳タンパク質である、プロセス。
(項目20)
項目1から項目19のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記食品原料が、乳を含む、プロセス。
(項目21)
項目20に記載のプロセスであって、前記乳が、0.1重量%から25重量%、好ましくは3重量%から25重量%、より好ましくは9重量%から25重量%の無脂乳固形分含有量を有する、プロセス。
(項目22)
項目2から項目21のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記低温殺菌工程(i)(a)が、少なくとも80℃、より好ましくは約95℃、の温度にて行われる、プロセス。
(項目23)
項目2から項目22のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記低温殺菌工程(i)(a)が、5分から15分の間、より好ましくは約10分間、にわたって行われる、プロセス。
(項目24)
項目3から項目23のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記接種工程(i)(b)が、生きた食品等級微生物の添加を含む、プロセス。
(項目25)
項目24に記載のプロセスであって、前記生きた食品等級微生物が、共生細菌である、プロセス。
(項目26)
項目24または項目25のいずれかに記載のプロセスであって、前記生きた食品等級微生物が、Bifidobacteria、Streptococcus thermophilus、Lactobacilliおよびそれらの混合物からなる一覧から選択される、プロセス。
(項目27)
項目24、項目25または項目26に記載のプロセスであって、前記生きた食品等級微生物が、Bifidobacteria、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus bulgaricusおよびそれらの混合物からなる一覧から選択される、プロセス。
(項目28)
項目24から項目27のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記生きた食品等級微生物が、Streptococcus thermophilusおよびLactobacillus bulgaricusを含む、プロセス。
(項目29)
項目1から項目28のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記発酵工程(ii)が、30℃から50℃まで、好ましくは37℃から43℃まで、の温度にて行われる、プロセス。
(項目30)
項目1から項目29のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記発酵工程(ii)が、2時間から48時間の間にわたって行われる、プロセス。
(項目31)
項目5から項目30のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記低温殺菌工程(iii)が、少なくとも80℃、好ましくは約90℃、の温度にて行われる、プロセス。
(項目32)
項目5から項目31のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記発酵工程(iii)が、5秒から30秒、好ましくは10秒から20秒の間にわたって行われる、プロセス。
(項目33)
項目1から項目32のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記食品が、飲料である、プロセス。
(項目34)
項目1から項目33のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記食品が、発酵乳飲料である、プロセス。
(項目35)
項目1から項目34のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記食品が、ヨーグルト飲料である、プロセス。
(項目36)
項目1から項目35のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記食品が、飲用ヨーグルト飲料である、プロセス。
(項目37)
項目1から項目32のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記食品が、撹拌型ヨーグルトである、プロセス。
(項目38)
項目1から項目37のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記食品が、0.01重量%から0.03重量%、好ましくは約0.02重量%の量の生きた食品等級微生物を含む、プロセス。
(項目39)
項目1から項目38のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記食品が、0.3重量%から3.0重量%の量の安定剤を含む、プロセス。
(項目40)
項目1から項目39のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記食品が、4.6未満のpHを有する、プロセス。
(項目41)
食品の生成のためのプロセスであって、食品原料に直接的に安定剤を溶解する工程を包含し、該安定剤が、解重合ペクチンを含み、そして該食品原料がタンパク質を含む、プロセス。
(項目42)
項目41に記載のプロセスであって、前記安定剤が固形形態である、プロセス。
(項目43)
項目41または項目42に記載のプロセスであって、前記食品原料が、乳を含む、プロセス。
(項目44)
項目1から項目43のいずれかに記載のプロセスであって、前記解重合ペクチンが、アミド化されている、プロセス。
(項目45)
項目1から項目44のいずれかに記載のプロセスであって、前記安定剤が、2種以上の解重合ペクチンのブレンドを含む、プロセス。
(項目46)
項目1から項目45のいずれかに記載のプロセスであって、前記安定剤が、HE解重合ペクチンとLE解重合ペクチンとのブレンドを含む、プロセス。
(項目47)
項目1から項目46のいずれかに記載のプロセスであって、前記安定剤が、LEアミド化解重合ペクチンとHE解重合ペクチンとのブレンドを含む、プロセス。
(項目48)
項目1から項目47のいずれかに記載のプロセスであって、前記安定剤が、さらに高分子量のペクチンを含む、プロセス。
(項目49)
項目1から項目48のいずれかに記載のプロセスであって、前記安定剤が、HE解重合ペクチンおよび高分子量のペクチンを含む、プロセス。
(項目50)
項目1から項目49のいずれか1項のプロセスによって得られたか、または得られ得る、食品。
(項目51)
食品のテクスチャーおよび/または粘性を改善するための安定剤の使用であって、該安定剤は、解重合ペクチンを含む、使用。
(項目52)
項目51に記載の使用であって、前記安定剤が、さらに高分子量、高エステルペクチンを含む、使用。
【0026】
(発明の説明)
1つの局面において、本発明は、食品を生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、(i)食品中間体を提供するために、食品原料を安定剤と接触させる工程;および(ii)その食品中間体を発酵させる工程を包含し、ここで、上記安定剤は、解重合ペクチンを含み、そして上記食品原料は、タンパク質を含む。
【0027】
1つの局面において、本発明は、食品を生成するためのプロセスを提供する。そのプロセスは、食品原料の中に安定剤を直接的に溶解する工程を包含し、ここで、その安定剤は、解重合ペクチンを含み、そしてその食品原料は、タンパク質を含む。
【0028】
別の局面において、本発明は、本発明のプロセスによって得られたか、または得ることが可能な食品を提供する。
【0029】
さらなる局面において、本発明は、食品のテクスチャーおよび/または粘性を改善するための安定剤の使用を提供し、ここで、その安定剤は、解重合ペクチンを含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「食品」とは、人間または動物による消費のために適切である物質を意味する。その食品が、本明細書において記載されるようなプロセスの生成物である一方、消費の前にさらなる処理を受け得ることは、容易に理解される。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「安定剤」とは、凝集および/または沈殿および/または分離を防止または実質的に減少するために、物質が接触される系中のタンパク質を安定化し得る物質を意味する。「系」とは、例えば、タンパク質を含む食品原料、タンパク質を含む食品中間体またはタンパク質を含む食品であり得る。好ましくは、「系」は、タンパク質を含む食品である。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「食品原料」とは、食品の1つ以上の成分を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「発酵」とは、代表的には、所望の化学的変化が微生物および/または微生物の酵素の活動を通じて有機基質中に引き起こされるプロセスを意味する。発酵条件は、代表的には、特定の期間、特定の温度に達しそしてその温度を維持することを含む。その温度および期間が、発酵に関連する生化学的プロセス(特に、所望の程度まで進むための微生物による有機化合物の分解)を可能にするために選択され得ることは、容易に理解される。その有機化合物は、例えば、炭水化物、特に糖(例えば、ラクトース)であり得る。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「解重合ペクチン」とは、天然に存在するペクチンを2つ以上のフラグメントに分解することによって得られたか、または得られ得る物質を意味する。ペクチンは、反復した構造単位を含む骨格を有し、代表的には、800単位までの重合の程度を有する。これらの反復した構造単位は、主に、ガラクツロン酸残基およびラムノピラノシル残基である。解重合ペクチンは、250単位程度の鎖(例えば、15単位から250単位の鎖)を有する。天然に存在するペクチンは、任意の適切な解重合方法(例えば、種々の機械的方法、化学的方法、熱的方法、酵素的方法または放射線による方法またはこれらの組み合わせ)によって分解され得る。適切な解重合方法は、Studies on Pectin Degradation,W.H.Van Deventer−SchriemerおよびW.Pilnik,Acta Alimentaria,第16巻(2),143−153頁(1987)の中で考察された方法を含む。用語「解重合ペクチン」とはまた、例えば、15単位から250単位の短鎖、および特に15から250ガラクツロン酸単位のガラクツロン短鎖を有する、天然に存在するそれらの物質を含む。
【0035】
(利点)
本発明者らは、驚くべきことに、解重合ペクチンを含む安定剤は、発酵前にタンパク質含有食品原料(例えば、乳)へ直接的に適用され得、そしてさらに得られた食品(例えば、発酵乳製品であり得る)を安定し得ることを見出した。
【0036】
先行技術の安定剤(例えば、高分子量ペクチン)は、発酵前にタンパク質含有食品原料(例えば、乳)に添加した場合、相分離を誘導する。それゆえ、伝統的に、食品の所望の安定化を達成するために発酵後に安定剤を添加することが、必要とされてきた。
【0037】
さらなる利点は、安定剤を添加する方法は、糖との乾燥混合物としての直接的添加と飽和糖溶液中での分散との両方が、溶解された安定剤溶液に代替として使用され得るため、より柔軟性があることである。
【0038】
本発明者らはまた、驚くべきことに、解重合ペクチンを含む安定剤が、他の安定剤(例えば、ペクチン)よりも容易に食品原料(例えば、乳)の中に直接的に溶解することを見出した。それゆえ、本安定剤は、別個の溶解工程の必要性を回避して、食品原料の中に直接溶解され得る。このことは、生成プロセスをさらに単純化する。
【0039】
参照を容易にするため、本発明のこれらの局面およびさらなる局面が、ここで適切なセクションの見出しのもとに考察される。しかし、各セクションにおける教示は、各特定のセクションに必ずしも限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(好ましい実施形態)
(プロセス)
既に述べたように、1つの局面において、本発明は、食品を生成するためのプロセスを提供する。そのプロセスは、(i)食品中間体を提供するために、食品原料を安定剤と接触させる工程;および(ii)その食品中間体を発酵させる工程を包含し、ここで、上記安定剤は、解重合ペクチンを含み、そして上記食品原料は、タンパク質を含む。
【0041】
1つの局面において、本発明は、工程(ii)の前に、工程(i)(a):食品中間体を低温殺菌する工程、をさらに包含するプロセスを提供する。換言すれば、本発明は、以下の順で、以下の工程を包含する、食品の生成のためのプロセスを提供する:(i)食品中間体を提供するために、食品原料を安定剤と接触させる工程;(i)(a)上記食品中間体を低温殺菌する工程;および(ii)上記食品中間体を発酵させる工程。ここで、上記安定剤は、解重合ペクチンを含み、そして上記食品原料は、タンパク質を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「低温殺菌」とは、食品原料中の生きた生物体(例えば、微生物)の存在を減少または除去することを意味する。好ましくは、低温殺菌は、特定の期間、特定の温度を維持することによって達成される。この特定の温度は、通常加熱することによって達成される。この温度および期間が特定の細菌(例えば、有害な細菌)を死滅させるかまたは不活化させるために選択され得ることは、容易に理解される。急速な冷却工程が、その後に続き得る。
【0043】
本発明者らは、驚くべきことに、解重合ペクチンを含む安定剤が、低温殺菌前および発酵前にタンパク質含有食品原料(例えば、乳)へ直接的に適用され得、そしてさらに、得られた食品(例えば、発酵乳製品であり得る)を安定化し得ることを、見出した。
【0044】
本発明のこの実施形態は、例えば、食品が、生きた培養物を含むために、食品が最終低温殺菌工程を受けない場合、特に、有利である。これらのような適用において、このプロセスは、食品の製造者が安定剤を別個に低温殺菌することを回避させる。なぜなら、この安定剤および食品原料は、発酵前に共に低温殺菌され得るからである。このことは、エネルギーおよび機器費用の削減、処理時間の減少および処理手順の単純化の点で利益に結び付く。特に、安定剤の別個の低温殺菌に関するエネルギー費用、タンク容量および加熱機器は、必要ない。
【0045】
1つの局面において、本発明は、工程(ii)の前に、工程(i)(b):食品中間体を接種する工程、をさらに含むプロセスを提供する。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「接種」とは、微生物を系に導入することを意味する。この微生物は、例えば、細菌であり得、そして培養を開始するために使用され得る。
【0047】
この局面によると、本発明は、以下の順に以下の工程を包含する、食品の生成のためのプロセスを提供する:(i)食品中間体を提供するために、食品原料と安定剤とを接触させる工程;(i)(b)上記食品中間体を接種する工程;および(ii)上記食品中間体を発酵させる工程。ここで、上記安定剤は、解重合ペクチンを含み、そして上記食品原料は、タンパク質を含む。
【0048】
非常に好ましい局面において、本発明は、以下の順に以下の工程を包含する、食品の生成のためのプロセスを提供する:(i)食品中間体を提供するために、食品原料と安定剤とを接触させる工程;(i)(a)上記食品中間体を低温殺菌する工程、(i)(b)上記食品中間体を接種する工程;および(ii)上記食品中間体を発酵させる工程。
【0049】
好ましい局面において、上記プロセスは、さらに工程(iii):工程(ii)の生成物を低温殺菌する工程、を含む。
【0050】
別の好ましい局面において、上記プロセスは、さらに工程(iv):工程(i)(b)の生成物および/または工程(ii)の生成物および/または工程(iii)の生成物に、ジュースおよび/または酸を添加する工程、を含む。
【0051】
(安定剤)
既に述べたように、本発明の使用のための安定剤は、解重合ペクチンを含む。
【0052】
好ましい局面において、解重合ペクチンは、25℃にて5%溶液中において、15cPから400cP(例えば、20cPから300cP、20cPから200cP、20cPから100cPまたは25cPから50cP)の粘性を有する。代表的には、粘性は、以下に記載の方法に基づき測定可能である。
【0053】
1つの好ましい局面において、安定剤は、25℃にて5%溶液中において、150cPより大きい(例えば、150cPから400cPより大きい、例えば、150cPから300cPより大きいまたは150cPから200cPより大きい)粘性を有する。代表的には、粘性は、以下に記載の方法に基づき測定可能である。
【0054】
好ましくは、解重合ペクチンは、本質的に直鎖炭水化物重合体である。これは、本質的に分枝した炭水化物重合体であるSSPSと正反対である。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「炭水化物重合体」とは、実質的に炭素原子、水素原子および酸素原子のみを含み、そしてカルボキシル化ポリヒドロキシアルデヒドの反復した構造単位を含む分子を意味する。好ましくは、この炭水化物重合体の少なくとも90%の原子は、炭素原子、水素原子または酸素原子であり、より好ましくは、少なくとも98%(例えば、99%または100%)が、炭素原子、水素原子または酸素原子である。
【0056】
炭水化物重合体は、1つ以上の側鎖が置換された主要骨格を含み得る。
【0057】
用語「本質的に直鎖状の」とは、骨格の原子の総数が、側鎖の原子の総数よりも多いことを意味する。
【0058】
既に述べたように、解重合ペクチンは、250程度の反復した構造単位を含む。好ましくは、解重合ペクチンは、15単位から250単位(例えば、15単位から200単位、20単位から150単位または30単位から100単位)を含む。好ましくは、反復した構造単位は、ガラクツロン酸残基および/またはラムノピラノシル残基である。
【0059】
1つの局面において、解重合ペクチンは、250程度のガラクツロン酸単位を含む。好ましくは、解重合ペクチンは、15から250のガラクツロン酸単位(例えば、15から200のガラクツロン酸単位、20から150のガラクツロン酸単位、または30から100のガラクツロン酸単位)を含む。好ましい局面において、解重合ペクチンは、少なくとも65%(例えば、少なくとも70%または少なくとも75%または少なくとも80%)のガラクツロン酸含有量を有する。ガラクツロン酸含有量は、[3]に記載された方法を使用して、測定され得る。
【0060】
1つの局面において、好ましくは、解重合ペクチンは、少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、または少なくとも65%)のエステル化の程度を有する。この局面において、好ましくは、解重合ペクチンは、50%から90%(例えば、50%から85%、より好ましくは、65%から75%)のエステル化の程度を有する。非常に好ましい実施形態において、解重合ペクチンは、約70%のエステル化の程度を有する。そのような解重合ペクチンは、以下において「解重合高エステルペクチン(high ester depolymerised pectin)」といわれる。従って、1つの好ましい実施形態において、解重合ペクチンは、解重合高エステルペクチン(HE−DPP)である。
【0061】
少なくとも50%のエステル化の程度を有する解重合ペクチンは、ヨーグルト(特に、ヨーグルト飲料)の生成のためのプロセスにおいて、特に有利であり得るが、ヨーグルトの生成については、50%以下のエステル化の程度はまた、適切であり得る。
【0062】
別の局面において、好ましくは、解重合ペクチンは、50%未満(例えば、40%未満または30%未満または20%未満)のエステル化の程度を有する。そのような解重合ペクチンは、以下において「解重合低エステルペクチン(low ester depolymerised pectin)」といわれる。従って、1つの好ましい実施形態において、解重合ペクチンは、解重合低エステルペクチン(LE−DPP)である。
【0063】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、例えば、撹拌型ヨーグルトに関して、解重合ペクチンは、約20%から約50%(より好ましくは、約30%から約50%、さらにより好ましくは約40%から約50%)のエステル化の程度を有する。
【0064】
種々のエステル化の程度の解重合ペクチンは、任意の解重合ペクチンまたは解重合ペクチン生成物の部分的な化学的エステル分解または部分的な酵素的エステル分解によって調製され得る。化学的エステル分解反応[20、21]は、有機酸または無機酸の使用によって、水性媒体中または部分的に水性の媒体中のメチルエステル基の酸性加水分解に関与し、あるいはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または強塩基(例えば、アンモニアまたは置換アミン)による、水性媒体中または部分的に水性の媒体中のメチルエステル基の塩基性加水分解に関与する。解重合ペクチンの酵素的エステル分解は、酵素の作用条件に合致するpH、温度およびイオン強度において、植物ペクチンエステラーゼ、真菌ペクチンエステラーゼまたは細菌ペクチンエステラーゼあるいはこれらの組み合わせの使用によって達成され得る[24、25]。
【0065】
エステル分解反応は、湿らせた解重合ペクチン原料、粗ペクチン抽出物、ペクチン濃縮物または沈降したペクチンまたは部分的に乾燥したペクチンならびに再溶解されたペクチン、懸濁したペクチンまたは部分的に溶解したペクチンまたは湿らされたペクチンに対して化学的にまたは酵素的に実行され得る。
【0066】
本発明の別の局面において、解重合プロセスは、上述のエステル分解方法の1つによるペクチンまたはペクチン生成物のエステル分解の後かまたは同時に使用される、以下に述べる解重合プロセスの1つかまたは組み合わせであり得る。
【0067】
「ペクチン生成物」とは、植物、ペクチン原料、およびペクチン処理作業過程または単離されたペクチン生成物の中に存在するような、ペクチンまたは改変されたペクチンの任意の形態として規定される。
【0068】
本発明の1つの好ましい実施形態において、解重合ペクチンは、アミド化されている。
【0069】
種々のアミド化の程度の解重合アミド化ペクチンは、溶液中、懸濁中においてか、または湿らせた生成物として、任意の解重合ペクチンまたはペクチン生成物を、所定の程度のアミド化を生じるために適切なアンモニア濃度、温度および時間においてアンモニア水またはアンモニアガスにより処理することによって調製され得る[22、23]。以下に記載されるプロセスによる解重合は、ペクチンのアミド化の間または後に実行され得る。多くの場合、アミド化プロセスの前、間または後に、上述のエステル分解プロセスの1つを実行することにより、同じ解重合ペクチン生成物中に、より低い程度のエステル化と部分的なアミド化との両方を得ることは、都合が良い。
【0070】
25%未満(例えば、20%未満または10%未満または5%未満)のアミド化の程度の解重合ペクチンは、いくつかの局面において、有利であり得る。
【0071】
従って、1つの特に好ましい実施形態において、解重合ペクチンは、アミド化LE解重合ペクチンである。
【0072】
別の特に好ましい実施形態において、解重合ペクチンは、アミド化HE解重合ペクチンである。
【0073】
解重合ペクチンは、任意の適切な解重合方法によってペクチンから調製され得、そしてこのペクチンは、任意の適切な供給源から得られ得る。ペクチンの供給源の例は、柑橘類の果物(レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツ、マンダリン、タンジェリン、パメロなど)、リンゴ、サトウダイコン根、ニンジン、ヒマワリ頭部残留物、タマネギ、モモ、グレープベリー、マンゴー、グアバ、カボチャ、セイヨウカボチャ、トマト、アプリコット、バナナ、マメおよびジャガイモである。ペクチンは、市販のペクチンであり得る。1つの局面において、解重合ペクチンは、柑橘類果物から得られ得る(好ましくは、得られる)。
【0074】
あるいは、解重合ペクチンは、始めにペクチンを単離することなく、直接的にペクチンの供給源の1つから調製され得、そして解重合ペクチンは、続いて、抽出され得る。例えば、ペクチンの解重合は、収穫された植物材料において、植物材料の処理の後に、例えば、乾燥前または乾燥後のジュース生成物由来の植物残留物において、実行され得る。解重合はまた、ペクチン処理の間に(ペクチン抽出前、ペクチン抽出中、またはペクチン抽出後のペクチンジュースまたはペクチン濃縮物の中で)実行され得る。ペクチンの乾燥中の湿った沈澱したペクチンにおいてまたはペクチンが単離された後の乾燥ペクチンにおいて(例えば、乾燥ペクチン、湿らせたペクチン、溶解されたペクチンまたは懸濁したペクチンにおいて)、解重合を実行することもまた、可能である。
【0075】
解重合方法としては、種々の機械的方法、化学的方法、熱的方法、酵素的方法および放射線による方法またはこれらの任意の組み合わせ、特に、長鎖(例えば、長いガラクツロナン鎖)をより短い鎖(例えば、15個から100個の反復した構造単位(例えば、ガラクツロン酸単位))へ分解し得る方法が挙げられる。
【0076】
化学的解重合方法は、酸方法、アルカリ方法、酸化方法または還元方法であり得る。酸解重合は、Mazoyerら、英国特許出願GB 2,311,024(1997)中に示される。β除去によるペクチンのアルカリ解重合は、Renardら、Visser&Voragen、Pectins and Pectinases pp.603−608(1996)およびSajjaanantakulら、J.Food Sci.,54:1272−1277(1989)により研究された。多糖類の酸化的解重合は、MillerによりBiochemical and Biophysical Research Communications 第141巻、238−244頁(1986)において研究された。熱的解重合研究の例は、MerrilおよびWeeks、J.Am.Chem.Soc.,67:224(1945)、Mitchellら、米国特許第5,498,702号(1996)中に提示されている。ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼまたはペクチン酸リアーゼによるペクチンの酵素的解重合は、植物材料中ならびにペクチン抽出物中の両方でのペクチン物質の解重合に対して広く推奨されている。
【0077】
解重合ペクチンは、以下の一般的手順により調製され得る。ペクチン(例えば、市販のペクチン)は、85℃から90℃の脱塩水中に溶解され、5%溶液を形成する。この溶液のpHは、20%の炭酸ナトリウム溶液の添加によって5.5へ調製される。この溶液を、この溶液の粘性(25℃にて測定される)が30cPから50cPに減少されるまで、2時間から8時間80℃にて保持される。このpHは、続いて、30%の硝酸の添加により3.5まで低下し、そしてこの混合液は、室温にまで冷却される。ペクチンは、適切な撹拌のもと、3体積部の80%のイソプロピルアルコールに混合液を注ぐことにより、溶液から析出(precipitate out of)する。約4時間後、この析出物は、布を通したろ過によってその液体から分離され、そして80%のイソプロピルアルコールの別の部により洗浄する。この布を圧した後、その材料を、一晩60℃の換気オーブン中で乾燥する。最終的に、乾燥生成物は、製粉されて解重合ペクチンを得る。
【0078】
解重合ペクチンを含む安定剤は、任意の適切な形態で(特に、乾燥混合物として、溶液としてまたは分散液として)提供され得る。既に述べたように、プロセスの工程(i)は、食品原料と安定剤とを接触させている。これは、任意の適切な様式で行われ得る。1つの局面として、安定剤は、糖との乾燥混合物であり、そして、安定剤溶液を提供するために水中に溶解される。次いで、この安定剤溶液は、食品中間体を提供するために、撹拌することによって食品原料(例えば、乳)と混ぜ合わされる。
【0079】
解重合ペクチンに加えて、安定剤は、他の要素(例えば、デキストロース)を含み得る。1つの実施形態において、安定剤は、解重合ペクチンおよび高分子量高エステルペクチンを含む。
【0080】
用語「高分子量、高エステルペクチン」とは、25℃にて5%溶液中で400cPを超える粘性、および少なくとも50%のエステル化の程度を有するペクチンを意味する。
【0081】
1つの実施形態において、安定剤は、本質的に解重合ペクチンのみを含む。
【0082】
別の実施形態において、安定剤は、少なくとも1種の解重合ペクチンを含む。
【0083】
本発明の1つの好ましい実施形態において、安定剤は、ブレンドの形態である。例えば、安定剤は、2種以上の解重合ペクチン、または、1種以上の解重合ペクチンと1種以上の高分子量(HMW)ペクチンとの混合物を含み得る。
【0084】
従って、安定剤は、以下から選択される2種以上の解重合ペクチンのブレンドを含み得る:
HE解重合ペクチン;
LE解重合ペクチン;
アミド化HE解重合ペクチン;
アミドLE化解重合ペクチン;
これらのペクチンは、必要に応じて1種以上の高分子量ペクチンと組み合わされ得る。
【0085】
1つの特に好ましい実施形態において、安定剤は、2種以上の解重合ペクチンの混合物を含む。すなわち、安定剤は、2種以上の異なる解重合ペクチンのブレンドである。
【0086】
1つの特に好ましい実施形態において、安定剤は、LE解重合ペクチンおよびHE解重合ペクチンを含み、ここで、このLE解重合ペクチンおよびHE解重合ペクチンは、上に規定されたようなものである。
【0087】
別の特に好ましい実施形態において、安定剤は、約10:1から1:10の比率(より好ましくは、約5:1から1:5、さらにより好ましくは、約3:1から1:3、さらにより好ましくは、約2:1から1:2の比率)で、LE解重合ペクチンとHE解重合ペクチンとを含む。
【0088】
1つの特に好ましい実施形態において、安定剤は、約1:1の比率でLE解重合ペクチンおよびHE解重合ペクチンを含む。
【0089】
別の特に好ましい実施形態において、安定剤は、約2:1の比率でLE解重合ペクチンおよびHE解重合ペクチンを含む。
【0090】
1つの特に好ましい実施形態において、安定剤は、約64%のLE解重合ペクチンおよび約36%のHE解重合ペクチンを含む。
【0091】
上で述べたように、本発明の1種以上の解重合ペクチンは、高分子量ペクチンと組み合わされ得る。従って、1つの好ましい実施形態において、安定剤は、LE解重合ペクチンおよびHMWペクチンを含む。代替的な好ましい実施形態において、安定剤は、HE解重合ペクチンおよびHMWペクチンを含む。
【0092】
本発明の中のプロセス中で(例えば、飲用ヨーグルトの安定化において)使用するためのHMWペクチン(解重合ペクチンとの組み合わせにおける使用のためのもの)は、60%〜85%および好ましくは、65%〜75%からのエステル化の程度を有するHMWペクチンから選択され得る。発酵タンパク質食品の調製における多量のHMWペクチンの使用に関連する問題を防ぐために、解重合ペクチンと組み合わせて使用されるHMWペクチンの量は、好ましくは、0.15%、0.1%、0.75%、または0.5%未満であり、そして/または本発明のプロセスにおいて使用されるHMWペクチンの解重合ペクチンに対する比率は、好ましくは、50%を超えるべきではなく、より好ましくは、40%を超えるべきではなく、さらにより好ましくは、30%を超えるべきではない。より好ましくは、解重合ペクチンと組み合わせて使用されるHMWペクチンの量は、0.15%未満である。
【0093】
1つの特に好ましい実施形態において、HWMペクチンの解重合ペクチンに対する比率は、約30%である。そのようなブレンドは、特に有利であると認められる。
【0094】
本発明のプロセスにおける使用のための適切なHMWペクチンは、以下のペクチンを含むが、それらに限定されるものではない:
GRINDSTED(登録商標)Pectin AMD 760、780、781、782、783、382、383
GRINDSTED(登録商標)Pectin RS 400、450、461
Unipectin AYD 10、20、22、28、29、258、30、31、35、250、358
Citrico type 7010、7016、7017、7050、7051、7052、7060、7062、7063
Classic CM 201、203
Genupectin YM 100、200、115L、115H、150L、150H;JM 150、240;JMJ
Obipektin Brown Ribbon、Brown Ribbon K、Brown Ribbon P、Brown Ribbon Q。
【0095】
本発明のさらに別の好ましい実施形態において、安定剤は、LE解重合ペクチンおよびHE解重合ペクチンを含み、これらの各ペクチンは、必要に応じてアミド化され得る。
【0096】
1つの好ましい実施形態において、安定剤は、アミド化LE解重合ペクチンおよびHE解重合ペクチンを含む。より好ましくは、この安定剤は、約10:1から1:10の比率(より好ましくは、約5:1から1:5、さらにより好ましくは、約3:1から1:3、さらにより好ましくは、約2:1から1:2の比率)で、アミド化LE解重合ペクチンとHE解重合ペクチンとを含む。さらにより好ましくは、この安定剤は、約64%のアミド化LE解重合ペクチンおよび約32%のHE解重合ペクチンを含む。
【0097】
別の好ましい実施形態において、安定剤は、LE解重合ペクチンおよびアミド化HE解重合ペクチンを含む。
【0098】
さらに別の好ましい実施形態において、安定剤は、アミド化LE解重合ペクチンおよびアミド化HE解重合ペクチンを含む。
【0099】
別の好ましい実施形態において、安定剤は、アミド化解重合ペクチンおよびHMWペクチンを含む。
【0100】
従って、1つの好ましい実施形態において、安定剤は、アミド化LE解重合ペクチンおよびHMWペクチンを含む。別の好ましい実施形態において、安定剤は、アミド化HE解重合ペクチンおよびHMWペクチンを含む。
【0101】
本発明において使用される解重合ペクチンの正確な量は、使用される解重合ペクチンの粘性および種類、ならびに解重合ペクチンのLE/HEおよび/または解重合ペクチンのアミド化された種類の混合物が使用されるか否か、ならびにその解重合ペクチンまたはその混合物が適切な量のHMWペクチンと共に使用されるか否か、に依存する。異なる解重合ペクチン、またはその混合物、またはHMWペクチンとのそのブレンドが、異なる食品に対して好まれ得る;例えば、LE解重合ペクチン、またはLE解重合ペクチンおよびHE解重合ペクチンのブレンドが、撹拌型ヨーグルトにおいては好まれ、他方で、HE解重合ペクチンは、飲用ヨーグルトにおける使用に好まれる。このことは、さらに付随の実施例において説明される。使用される解重合ペクチンの最適な量は、本明細書において設定される方法を使用した通常の実験法を用いて当業者によって容易に決定され得る。
【0102】
代表的には、本発明の範囲内において、より高い粘性の解重合ペクチンが、より少量で使用され得るが、それでも本発明の方法に有益な技術的効果を達成する。この量はまた、エステル化の程度に依存し得るが、これもまた、純粋な解重合ペクチンが使用されるかまたは解重合ペクチンのブレンドが使用されるかに依存する。代表的には、より高いエステル化価を有する解重合ペクチンは、より高い量にて使用され得るが、それでも本発明の方法に有益な技術的効果を達成する。上に述べたように、本発明のアミド化解重合ペクチンを使用することは、可能である。アミド化解重合ペクチンを使用する場合、エステル化の程度がより低下し得る一方で、より高いエステル化の程度を有する解重合ペクチンを使用する場合に得られた量のレベルを保持する。
【0103】
(食品原料)
既に述べたように、食品原料は、タンパク質を含む。好ましくは、このタンパク質は、動物起源および/または野菜起源および/または微生物起源である。このタンパク質は、適切な供給源から(例えば、タンパク質粉末またはタンパク質単離体として)単離され得る。
【0104】
動物起源のタンパク質を含む適切な食品原料は、例えば、牛乳、バッファロー乳、ヤギ乳、またはヒツジ乳であり得る。野菜起源のタンパク質を含む適切な食品原料は、例えば、ダイズ、コメ、コムギ、カラスムギ、マメまたはココナッツであり得るか、またはそれらに由来し得る。
【0105】
好ましい局面において、食品原料は、動物起源のタンパク質および野菜起源のタンパク質を含む。好ましくは、食品原料は、動物起源のタンパク質を含む。好ましくは、このタンパク質は、乳タンパク質である。
【0106】
1つの好ましい局面において、食品原料は、乳を含む。1つの局面において、この乳は、牛乳、バッファロー乳、ヤギ乳およびヒツジ乳からなる一覧から選択される。この乳は、全脂肪乳または部分脱脂乳であり得る。1つの局面において、この食品原料は、乳および野菜起源のタンパク質を含む。野菜起源のタンパク質は、例えば、ダイズタンパク質、またはコメタンパク質であり得る。
【0107】
好ましくは、乳は、0.1重量%から25重量%(好ましくは、3重量%から25重量%、より好ましくは、9重量%から25重量%)の無脂乳固形分含有量を有する。
【0108】
食品原料は、他の食品成分(例えば、乳化剤、親水性コロイド、保存剤、抗酸化剤、着色料、香味料、酸味料および甘味料)を含み得る。
【0109】
(発酵前の低温殺菌)
既に述べたように、1つの局面において、本発明のプロセスは、工程(i)(a):食品中間体を低温殺菌する工程、を含む。
【0110】
好ましくは、低温殺菌工程(i)(a)は、少なくとも80℃(好ましくは、少なくとも90℃)の温度にて行われる。より好ましくは、低温殺菌工程(i)(a)は、少なくとも95℃(例えば、95℃から100℃)の温度にて行われる。1つの局面において、好ましくは、低温殺菌工程(i)(a)は、約95℃の温度にて行われる。1つの局面において、好ましくは、低温殺菌工程(i)(a)は、少なくとも100℃の温度にて行われる。
【0111】
好ましくは、低温殺菌工程(i)(a)は、1分から20分(好ましくは、5分から15分(例えば、約10分))の期間にわたって行われる。
【0112】
好ましい局面において、低温殺菌工程(i)(a)は、約95℃の温度にて約10分間、行われる。
【0113】
(接種)
既に述べたように、1つの局面において、本発明のプロセスは、工程(i)(b):食品原料を接種する工程を含む。
【0114】
好ましくは、接種工程(i)(b)は、生きた食品等級微生物(live food−grade micro−organism)の添加を含む。好ましくは、生きた食品等級微生物は、生きた食品等級細菌である。好ましくは、その生きた食品等級細菌は、食品の食味および/または香りおよび/またはテクスチャーに影響を及ぼし得る。1つの局面において、好ましくは、生きた食品等級細菌は、食品の食味に影響を及ぼし得る。別の局面において、好ましくは、生きた食品等級細菌は、食品の香りに影響を及ぼし得る。さらなる局面において、好ましくは、生きた食品等級細菌は、食品のテクスチャーに影響を及ぼし得る。好ましくは、生きた食品等級細菌は、食品の食味、香りおよびテクスチャーに影響を及ぼし得る。
【0115】
用語「食味および/または香りおよび/またはテクスチャーに影響を及ぼし得る」とは、生きた食品等級細菌の非存在下の食品と比較して、食品の食味および/または香りおよび/またはテクスチャーを変更し得ることを意味する。
【0116】
好ましくは、生きた食品等級微生物は、共生細菌である。
【0117】
用語「共生細菌」とは、ヒトの健康および/または動物の健康に対し有益な効果を有する細菌を意味する。共生細菌は、胃腸管においておよび/または尿生殖管において活動し得る。共生細菌の健康上の利点としてはが挙げられる:
・病原菌に対する拮抗作用
・有益な代謝活性(例えば、ビタミンの生成または胆汁酸塩加水分解酵素活性)
・免疫応答の刺激
・発癌の初期の事象に対する保護
・腸障害の回復の改善。
【0118】
好ましい局面において、生きた食品等級微生物は、Bifidobacteria、Streptococcus thermophilus、Lactobacilliおよびそれらの混合物からなる一覧から選択される。好ましくは、生きた食品等級微生物は、Bifidobacteria、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus bulgaricusおよびそれらの混合物からなる一覧から選択される。好ましい局面において、生きた食品等級微生物は、Lactobacillus bulgaricusおよび/またはStreptococcus thermophilus(好ましくは、Lactobacillus bulgaricusおよびStreptococcus thermophilus)を含む。
【0119】
好ましくは、生きた食品等級微生物は、食品中間体の0.01重量%から0.05重量%の量で添加される。好ましくは、生きた食品等級微生物は、0.01重量%から0.03重量%の量で添加される。
【0120】
(発酵)
既に述べたように、本発明のプロセスは、工程(ii):食品中間体を発酵させる工程、を含む。
【0121】
好ましくは、発酵工程(ii)は、30℃から50℃(好ましくは、35℃から45℃、より好ましくは、37℃から43℃)の温度にて行われる。
【0122】
好ましい局面において、発酵工程(ii)は、約42℃の温度にて行われる。
【0123】
好ましくは、発酵工程(ii)は、2時間から48時間の期間にわたって行われる。
【0124】
好ましい局面において、発酵工程(ii)は、約42℃の温度にて2時間から10時間(好ましくは、4時間から8時間)、行われる。
【0125】
(発酵後の低温殺菌)
既に述べたように、1つの好ましい局面において、本発明のプロセスは、工程(iii):工程(ii)の生成物を低温殺菌する工程、をさらに含む。
【0126】
好ましくは、低温殺菌工程(iii)は、少なくとも約80℃(好ましくは、少なくとも85℃)の温度にて行われる。より好ましくは、低温殺菌工程(iii)は、少なくとも90℃(例えば、90℃から100℃)の温度にて行われる。1つの局面において、好ましくは、低温殺菌工程(iii)は、約90℃の温度にて行われる。別の局面において、好ましくは、低温殺菌工程(iii)は、100℃以上の温度にて行われる。
【0127】
好ましくは、低温殺菌工程(iii)は、5秒から30秒(好ましくは、10秒から20秒、より好ましくは、約15秒)の期間にわたって行われる。
【0128】
好ましい局面において、低温殺菌工程(iii)は、約90℃の温度にて約15秒の期間にわたって行われる。
【0129】
この最終的な発酵後の低温殺菌工程は、保存期間の長い製品を提供するために含まれ得る。好ましい局面において、この食品は、7日を超える(好ましくは、14日を超える、より好ましくは、28日を超える)保存期間を有する。1つの好ましい局面において、この食品は、3ヶ月を超える(好ましくは、4ヶ月を超える、好ましくは、5ヶ月を超える(例えば、6ヶ月を超える))保存期間を有する。
【0130】
(pH調製)
既に述べたように、別の好ましい局面において、上記プロセスは、さらに、工程(iv):工程(i)(b)の生成物および/または工程(ii)の生成物および/または工程(iii)の生成物に、ジュースおよび/または酸を添加する工程、を含む。好ましくは、このジュース/または酸は、工程(ii)の生成物および/または工程(iii)の生成物に添加される。好ましくは、このジュース/または酸は、工程(ii)の生成物に添加される。
【0131】
好ましくは、ジュースは、フルーツジュースである。適切なフルーツジュースの例としては、リンゴジュース、アプリコットジュース、バナナジュース、グレープフルーツジュース、グレープジュース、グアバジュース、レモンジュース、ライムジュース、マンダリンジュース、マンゴジュース、オレンジジュース、ピーチジュース、パメロジュース、セイヨウカボチャジュース、カボチャジュース、タンジェリンジュース、トマトジュースおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0132】
上記ジュースは、天然ジュースまたは加工されたジュース(例えば、濃縮ジュースまたはそこから分離された1つ以上の成分を有するジュース)であり得る。好ましくは、このジュースは、添加前に少なくとも80℃(例えば、少なくとも85℃または少なくとも95℃)の温度にて低温殺菌される。
【0133】
好ましくは、酸は、食品の酸である。適切な食品の酸の例としては、クエン酸、リンゴ酸、および乳酸が挙げられる。この局面において、好ましくは、この食品の酸は、クエン酸、乳酸またはそれらの混合物である。
【0134】
ジュースおよび/または酸の添加は、その系のpHを改変し得、そして代表的には、その系のpHを低下させる。
【0135】
好ましい局面において、発酵工程(ii)の直前の食品中間体のpHは、pH 6.0からpH 8.0(好ましくは、pH 6.3からpH 7.0(例えば、pH 6.5からpH 7.0)、より好ましくは、約pH 6.7)であるか、またはそのように調節される。
【0136】
好ましい局面において、ジュースおよび/または酸は、発酵工程(ii)の生成物に添加される。好ましくは、十分なジュースおよび/または酸が、pH 4.6未満(好ましくはpH 4.4未満、好ましくはpH 4.2未満、より好ましくは約pH 4.0)へとpHを調製するために添加される。
【0137】
(食品)
1つの局面において、本発明は、本発明のプロセスにより得られた食品を提供する。別の局面において、本発明は、本発明のプロセスにより得られた食品を提供する。
【0138】
本発明のプロセスにより得られ得る(好ましくは、得られた)食品は、任意の適切な発酵タンパク質含有食品であり得る。
【0139】
適切な食品の例としては、チーズ、クアルク(quarg)、サワークリーム、模造サワークリーム(例えば、植物油による)、デザートクリーム、発酵デザート製品(例えば、固めたまたは撹拌型ヨーグルトデザートおよびヨーグルトムース)、冷凍発酵製品(例えば、冷凍ヨーグルトまたは冷凍発酵アイスクリーム)、ラッシー(lassi)飲料、アイラン(ayran)、ラバン(laban)、バターミルク、ケフィア飲料(乳酸およびアルコール発酵)、液体ヨーグルト(例えば、飲用ヨーグルト)、乳酸菌飲料、例えば、乳、乳清および/またはダイズに基づく発酵タンパク質飲料とジュース、パルプ、果物などとのブレンド(これは、ジュースによって直接的に酸化されたミルクジュース飲料と同じではない、スムージー(smoothie)のようなジュースと混ぜ合わされたヨーグルトであり得る。)、強化ドリンク(例えば、Ca強化飲用ヨーグルト)およびタンパク質を豊富に含むソフトドリンクが挙げられる。他の適切な食品は、乳タンパク質に加えてまたは乳タンパク質の代わりに、ダイズタンパク質を含む、上記で列挙された任意の食品を含む。
【0140】
好ましくは、食品は、0.01重量%から0.05重量%(より好ましくは0.01重量%から0.03重量%、好ましくは0.02重量%)の量の生きた食品等級微生物を含む。
【0141】
好ましくは、食品は、0.1重量%から5.0重量%(好ましくは0.2重量%から4.0重量%、好ましくは0.3重量%から3.0重量%)の量の安定剤を含む。
【0142】
好ましくは、食品は、0.1重量%から1.0重量%(好ましくは0.2重量%から0.8重量%、好ましくは0.4重量%から0.7重量%)の量の解重合ペクチンを含む。1つの局面において、好ましくは、食品は、0.4重量%程度(例えば、0.4重量%から0.1重量%、または0.4重量%から0.2重量%または0.4重量%から0.3重量%)の量の解重合ペクチンを含む。
【0143】
1つの局面において、食品は、飲料である。
【0144】
好ましくは、食品は、発酵乳飲料(好ましくはヨーグルト飲料、より好ましくは飲用ヨーグルト飲料)である。
【0145】
用語「発酵乳飲料」とは、任意の種類の生物体による任意の種類の発酵によって生成された食品を網羅する。
【0146】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、食品は、ヨーグルト飲料である。
【0147】
用語「ヨーグルト飲料」とは、代表的に、Lactobacillus bulgaricusおよびStreptococcus thermophilusの組み合わせによる発酵によって生成された乳製品を網羅する。用語、ヨーグルト飲料とは、低MSNF含有量を有する希釈乳飲料を含む。
【0148】
本発明の別の特に好ましい実施形態において、食品は、飲用ヨーグルト飲料である。
【0149】
用語「飲用ヨーグルト飲料」とは、代表的に、Lactobacillus bulgaricusおよびStreptococcus thermophilusの組み合わせによる発酵によって生成された乳製品を網羅する。飲用ヨーグルト飲料は、代表的には、8%以上の無脂乳固形分を有する。さらに、飲用ヨーグルト飲料のための生きた培養物の数は、代表的には、少なくとも10細胞形成単位(CFU)である。
【0150】
食品が、飲用ヨーグルト飲料である場合、好ましくは、安定剤は、HE解重合ペクチン、または解重合ペクチンとHMWペクチンとのブレンドを含む。好ましくは、安定剤は、HE解重合ペクチン、またはHE解重合ペクチンとHMWペクチンとのブレンドを含む。好ましくは、安定剤がブレンドである場合、HE解重合ペクチンのHMWペクチンに対する比率は、上に規定されたようなものである。
【0151】
飲用ヨーグルト飲料に関する、1つの特に好ましい実施形態において、安定剤は、25℃にて5%溶液中において、150cPより大きい(より好ましくは150cPから400cP、さらにより好ましくは300cPから400cP、さらにより好ましくは約400cP)粘性を有する。別の特に好ましい実施形態において、安定剤は、25℃にて5%溶液中において、約25cPから50cP(より好ましくは、40cP)の粘性を有する。
【0152】
飲用ヨーグルト飲料に関して、好ましくは、安定剤は、50%から85%(より好ましくは56%から75%、さらにより好ましくは少なくとも70%)のエステル化の程度を有する。
【0153】
飲用ヨーグルト飲料に関して、好ましくは、安定剤は、実施例1および実施例2において示される安定剤から選択される。すなわち、安定剤は、DPP2、DPP4、またはDPP4とHMWペクチン(例えば、GRINSTED(登録商標)Pectin AMD
780)との混合物から選択される。
【0154】
飲用ヨーグルトに関して、好ましくは、安定剤は、0.4重量%から0.7重量%の解重合ペクチンまたはそのブレンドを含む。1つの特に好ましい実施形態において、安定剤は、約0.3重量%DPP4と約0.1重量%のHMWペクチン(例えば、GRINSTED(登録商標)Pectin AMD 780)とのブレンドを含む。別の特に好ましい実施形態において、安定剤は、約0.4重量%のDPP4、または約0.5%のDPP2を含む。
【0155】
本発明の別の好ましい実施形態において、食品は、撹拌型ヨーグルトである。
【0156】
用語「ヨーグルト」とは、代表的に、Lactobacillus bulgaricusおよびStreptococcus thermophilusの組み合わせ、または任意の他の適切な微生物の組み合わせによる発酵によって生成された乳製品を網羅する。ヨーグルトは、周知であり、そして、例えば、TamineおよびRobinson[26]によって説明されるような生成物のタイプである。より正確には、ヨーグルトに関連する先行技術の概要は、米国特許第4,289,789号[27]に示されている。
【0157】
用語「撹拌型ヨーグルト」とは、特に、発酵後の機械的処理作用を受け、その結果、発酵段階下で形成された凝塊の破壊および液化をもたらす、ヨーグルト製品をいう。この機械的処理は、代表的には(しかし排他的にではなく)、ヨーグルトゲルを撹拌、ポンプで汲み(pumping)、ろ過もしくは均質化することによって、またはこのゲルを他の成分と混ぜ合わせることによって得られる。撹拌型ヨーグルトは、代表的には(しかし排他的ではなく)、9%から15%の無脂乳固形分を有する。
【0158】
食品が撹拌型ヨーグルトである場合、好ましくは、安定剤は、LE解重合ペクチン、またはLE解重合ペクチンとHE解重合ペクチンとのブレンドを含む。より好ましくは、安定剤は、上で規定された比率でLE解重合ペクチンおよびHE解重合ペクチンを含む。さらにより好ましくは、安定剤は、約64%対約36%の比率でLE解重合ペクチンおよびHE解重合ペクチンを含む。
【0159】
撹拌型ヨーグルトに関して、別の実施形態において、安定剤は、HE解重合ペクチン、またはHE解重合ペクチンとLEアミド化解重合ペクチンとのブレンドを含む。
【0160】
1つの特に好ましい実施形態において、食品が撹拌型ヨーグルトである場合、安定剤は、以下に示される実施例3および実施例4で開示される安定剤から選択される。すなわち、安定剤は、DPP5、DPP6、DPP7、DPP8、DPP9およびDPP10から選択される。
【0161】
好ましくは、25℃にて5%溶液中で測定される場合、撹拌型ヨーグルトに関して、安定剤は、約20cPから約50cP(より好ましくは、約40cP)の粘性を有する。
【0162】
撹拌型ヨーグルトに関して、1つの特に好ましい実施形態において、安定剤は、約0.1重量%から約0.5重量%(より好ましくは約0.2重量%から約0.5重量%、さらにより好ましくは約0.3重量%から約0.5重量%)の量で使用されるLE解重合ペクチンを含む。
【0163】
撹拌型ヨーグルトに関して、別の特に好ましい実施形態において、安定剤は、約0.1重量%から約0.5重量%(より好ましくは約0.2重量%から約0.5重量%、さらにより好ましくは約0.3重量%から約0.5重量%)の量で使用されるHE解重合ペクチンを含む。
【0164】
撹拌型ヨーグルトに関して、1つの特に好ましい実施形態において、安定剤は、約64%のLE解重合ペクチンと約36%のHE解重合ペクチンとのブレンドを含む。好ましくは、この実施形態において、安定剤は、約0.1重量%から約0.5重量%(より好ましくは約0.2重量%から約0.5重量%、さらにより好ましくは約0.3重量%から約0.5重量%)の量で使用される。
【0165】
撹拌型ヨーグルトに関して、別の特に好ましい実施形態において、安定剤は、約0.1重量%から約0.5重量%(より好ましくは約0.2重量%から約0.5重量%、さらにより好ましくは約0.3重量%から約0.5重量%)の量で使用されるLEアミド化解重合ペクチンとHE解重合ペクチンとのブレンドを含む。好ましくは、LEアミド化解重合ペクチンとHE解重合ペクチンとの比率は、約64%:36%である。
【0166】
好ましくは、食品は、pH 4.6未満(好ましくはpH 4.4未満、好ましくはpH 4.2未満、より好ましくは約pH 4.0以下)のpHを有する。
【0167】
好ましくは、食品は、0.1重量%から20重量%(好ましくは1重量%から15重量%、より好ましくは1重量%から10重量%)の無脂乳固形分(MSNF)含有量を有する。1つの局面において、MSNF含有量は、3重量%未満である。好ましい局面において、MSNF含有量は、少なくとも3重量%である。さらに好ましい局面において、MSNF含有量は、少なくとも8重量%である。
【0168】
飲用ヨーグルトは、代表的には、最低8重量%のMSNFを含む。ヨーグルト飲料は、代表的には、最低3重量%のMSNFを含む一方、ソフトドリンク、ミルクジュース飲料および類似の製品は、代表的には、3重量%未満のMSNFを含む。
【0169】
既に述べたように、好ましい局面において、食品は、7日を超える(好ましくは14日を超える、より好ましくは28日を超える)保存期間を有する。1つの好ましい局面において、食品は、3ヶ月を超える(好ましくは4ヶ月を超える、好ましくは5ヶ月を超える(例えば、6ヶ月を超える))保存期間を有する。
【0170】
(他の局面)
1つの局面において、本発明は、直接的に食品原料中に安定剤を溶解する工程を包含する、食品の生成のためのプロセスを提供する。ここで、この安定剤は解重合ペクチンを含み、そして、この食品原料はタンパク質を含む。
【0171】
この局面において、好ましくは、安定剤は、固形形態である。安定剤は、例えば、粉末形態であり得る。安定剤は、糖との乾燥混合物の形態であり得る。
【0172】
この局面において、好ましくは、食品原料は乳を含み、より好ましくは、食品原料は乳である。
【0173】
この局面において、好ましくは、プロセスは、本明細書に記載されたようなものである。この局面において、好ましくは、安定剤は、本明細書に記載されたようなものである。この局面において、好ましくは、食品原料は、本明細書に記載されたようなものである。この局面において、好ましくは、プロセス、安定剤および食品原料は、本明細書に記載されたようなものである。
【0174】
1つの局面において、本発明は、食品のテクスチャーおよび/または粘性(例えば、口あたりおよび/または他の感覚刺激性の特性)を改善するための安定剤の使用を提供する。ここで、この安定剤は、解重合ペクチンを含む。この局面において、好ましくは、安定剤は、さらに、高分子量、高エステルペクチンを含む。この局面において、好ましくは、食品は、飲料ではない。
【0175】
用語「高分子量、高エステルペクチン」とは、25℃にて5%溶液中で400cPを超える粘性、および少なくとも50%のエステル化の程度を有するペクチンを意味する。
【0176】
この局面において、好ましくは、食品は、0.1重量%から1重量%(好ましくは0.2重量%から0.7重量%、より好ましくは0.2重量%から0.5重量%)の量の安定剤を含む。
【0177】
本発明の局面は、添付の特許請求の範囲において規定される。
【0178】
本発明は、ここで、以下の実施例においてさらに詳細に記載される。
【実施例】
【0179】
以下の略称を、実施例のセクションの全体において使用する:
DPP 解重合ペクチン;
HE pectin 高エステルペクチン;
LE pectin 低エステルペクチン;
DE エステル化の程度;
MSNF 無脂乳固形分;
AMD 780 GRINDSTED(登録商標)Pectin AMD 780;
SSPS Soyafibe−S−DA 100;
SY 200 GRINDSTED(登録商標)Pectin SY 200;
Wave 212 GRINDSTED(登録商標)Pectin Wave 212;
SY 640 GRINDSTED(登録商標)Pectin SY 640。
【0180】
(粘性の決定)
粘性を、以下の方法によって測定した。
【0181】
5%溶液を調製するために、25.00gの安定剤を、風袋を量られた(tared)ビーカー中で約500mlの脱塩水に80℃にて溶解した。
【0182】
この安定剤溶液を、25℃に冷却し、そして1Nの塩酸または20%の炭酸ナトリウム溶液を添加することによりpHを、3.5±0.2に調節した。
【0183】
この溶液の総重量を、脱塩水で希釈することによって500.0gにした。
【0184】
粘性を、25℃、60rpmにて、スピンドル番号61(高い粘性の場合には、スピンドル番号62または63)を用いたBrookfield Viscometer model DV−IIの60rpmにて測定した。
【0185】
【表1】

Wave 212、SSPSおよびAMD 780は、比較例である。
【0186】
(エステル化の程度およびアミド化の程度の決定)
5gのペクチンサンプルを、250mlビーカー中へ0.1mgの精度まで量り、そして105mlの溶媒(100mlの60%のイソプロピルアルコール水溶液と5mlの濃塩酸との混合物)を添加した。この混合物を、10分間電磁撹拌機上で撹拌し、そして真空下で、乾燥した、予め重さを量った粗いガラスろ過漏斗を通してろ過した。その残渣を6つの15ml部分の溶媒で洗浄し、続いて、そのろ液に塩化物がなくなるまで(100mlの蒸留水中に1.7gの硝酸銀を含んだ溶液でテストした)、60%のイソプロピルアルコール水溶液(6〜8部分の20ml)で洗浄した。最後に、固体を約30mlの100%のイソプロピルアルコールを用いて洗浄し、そして105℃のオーブンで2時間半、乾燥させた。この生成物を、乾燥機で冷却し、そして重さを量った。
【0187】
20.00mlの0.5Nの水酸化ナトリウムを、20mlのメスピペットを使用して、ビーカーの中へ移し、そして20.00mlの0.5Nの塩酸と混合し、20mlのメスピペットを使用して、移した。2滴のフェノールフタレイン指示液の溶液(100mlの96%エタノール中に1gのフェノールフタレインが溶解されている)を添加し、そしてこの溶液を0.1Nの水酸化ナトリウムを用いて滴定した。その容量(V ml)を記録した。
【0188】
正確には、10分の1の、洗浄されそして乾燥されたペクチンを、250mlのErlenmeyerフラスコの中へと重さを量っていれ、そして2mlの96%エタノールで湿らせた。このフラスコを、電磁撹拌機の上に配置し、そしてはねるのを避けながら、100mlの沸騰しそれから冷却された脱イオン水をゆっくりと添加した。このフラスコに栓をして、そして全てのペクチンが完全に溶解されるまで撹拌した。5滴のフェノールフタレイン溶液を添加し、そして0.1Nの水酸化ナトリウムを用いて滴定した。この容量をmlでVと記録した。20.00mlの0.5N水酸化ナトリウムを添加し、そしてこのフラスコに栓をし、そして激しく振動させた。この内容物を、エステル基にけん化するために15分間静置させた。20.00mlの0.5N塩酸を添加し、そしてピンク色が消えるまでこの溶液を振動させた。3滴のフェノールフタレイン溶液を添加し、そして淡いピンク色が得られるまで、この溶液を0.1Nの水酸化ナトリウムを用いて滴定した。必要とされた0.1Nの水酸化ナトリウムの容量を、Vmlとして記録した。
【0189】
上記溶液を、定量的に滴定機から250ml丸底フラスコに移し、そしてアダプター(Kjeldahl蒸留器具)を通じてレシーバーフラスコに強く接続されたコンデンサーに接続されている、ドロップコレクターに集積した。20.00mlの0.1N塩酸をレシーバーフラスコに添加した。55±5mlの30%水酸化ナトリウム溶液を丸底フラスコに添加し、そしてこの混合液をゆっくりと蒸留し、そして約120mlを集積した。3滴の指示溶液(1lの96%エタノール中に溶解された0.4gのメチルレッドおよび0.6gのブロムクレゾールグリーン)を、蒸留するために添加して、そしてこの溶液を当量点(mlでBと記録された)まで、0.1Nの水酸化ナトリウムを用いて滴定した。
【0190】
エステル化の程度を計算するために:
【0191】
【数1】

【0192】
アミド化の程度を計算するために:
【0193】
【数2】

【0194】
(実施例1)
目的:飲用ヨーグルトの生成のための低温殺菌、接種および発酵前に乳に添加された解重合ペクチンの性能をテストすること。
【0195】
(安定剤)
GRINDSTED(登録商標)Pectin AMD 1387を、85℃から90℃にて脱塩水中に溶解し、5%溶液を形成した。20%炭酸ナトリウム溶液を添加することにより、pHを5.5に調製した。この溶液の粘性(25℃にて測定される)が約35cPに低下するまで、この溶液を8時間80℃に保持した。次いで、30%の硝酸を添加することによって、pHを3.5まで低下させ、そしてこの混合液を室温まで冷却した。適切な撹拌のもと、3体積部の80%イソプロピルアルコールの混合液に注ぐことによって、ペクチンを、その溶液から析出させた。約4時間後、この析出物を、布を通じたろ過によってこの液体から分離し、そして別の80%イソプロピルアルコールを用いて洗浄した。この布を圧した後、その材料を一晩60℃の換気オーブン中で乾燥させた。この乾燥した生成物を製粉し、DPP2とした。
【0196】
【表2】

34.3cPの粘性を有する解重合ペクチン(DPP2)を、以下の実施例において使用した。
【0197】
以下の市販の安定剤もまた、比較例として使用した:
GRINDSTED(登録商標)Pectin AMD 780(AMD 780)、GRINDSTED(登録商標)Pectin Wave 212(Wave 212)、およびSoyafibe−S−DA 100(Fuji Oil Co.,Ltd.(日本)によって生成された、可溶性ダイズ多糖類、SSPS)。GRINDSTED(登録商標)製品は、DaniscoA/Sから入手可能である。
【0198】
製法条件:最終的な飲用ヨーグルトを、8%の無脂乳固形分(MSNF)、8%の糖含有量、0.1%の脂肪含有量、および4.0〜4.1のpHによって特徴付けた。安定剤を以下の濃度にて適用した(総飲料成分の重量%):
【0199】
【表3】

【0200】
プロセス条件:脱脂粉乳粉末を、50℃にて30分間水和した。安定剤は、総糖量の1/8を有する乾燥混合物であり、そして80℃にて脱イオン水中に溶解した。その後、この安定剤溶液を、40℃にまで冷却し、そして5分間撹拌した状態で再混合された乳に添加した。この安定剤と乳とのブレンドを、10分間、95℃にてタンクの中で低温殺菌して、42℃の発酵温度にまで冷却し、そして0.02%ヨーグルトカルチャーJo−mix NM 1−20を用いて接種した。この安定剤と乳とのブレンドを42℃にてpH 4.2まで発酵させ、次いで、これらを、カゼインカードを破壊するために撹拌し、そして10℃にまで冷却した。
【0201】
残りの糖部分を、飲用ヨーグルトに添加した。クエン酸溶液を添加することによって、pHを4.0に調製した。この段階において、サンプルを、2つの部分に分割した:後の低温殺菌を伴わない均質化、および後の低温殺菌と組み合わされた均質化。均質化を、300barにて実行した。低温殺菌されるべきサンプルを、60度までに予熱し、そして300bar/60℃に均質化し、そして続けて、15秒間90℃にて低温殺菌した。全ての飲料を、ビンに詰め、そして冷却条件下において保存した。
【0202】
サンプルの評価:全てのサンプルを、生成後1日、5℃にて保存し、視覚的に検査した。さらに、全てのサンプルを、生成後5日間5℃にて保存し、視覚的におよび分析的に検査した。粘性を、スピンドル番号61を用いたBrookfield Viscometer model DVIIを用い、そして30rpmで作動して、10℃にて測定した。読み取りを、30秒後に行った。沈殿を、Heraeus Varifuge 3.2Sにおける20分間の2800gにて遠心分離によって促進させ、そして沈殿物の全体のサンプルに対する比率として表現した。その粒子サイズを、Malvern Mastersizer SにおいてpH 4.0のリン酸クエン酸塩緩衝液中で測定した。
【0203】
(結果−生成後1日目)
低温殺菌されていないサンプル(保存期間を延長するための最終的な低温殺菌なし)
【0204】
【表4】

後に低温殺菌されたサンプル(保存期間を延長するための最終的な低温殺菌)
【0205】
【表5】

(結果−生成後5日目)
低温殺菌されていないサンプル(保存期間を延長するための最終的な低温殺菌なし)
【0206】
【表6】

後に低温殺菌されたサンプル(保存期間を延長するための最終的な低温殺菌)
【0207】
【表7】

Wave 212およびAMD 780を含むサンプルを、多少圧縮された沈殿とともに全体的に分離した。激しい振動でこの沈殿物を再分散することが不可能であったので、この飲料をこれらの安定剤を用いて分析的に特徴付けることは、不可能であった。
【0208】
市販のペクチン安定剤を、発酵前の適用に添加する場合に、一般的に何が起こるか説明するために、AMD 780を、適用試行に含めた。低温殺菌乳−ペクチンブレンドは、ほとんど直ぐに不安定化し、そしてその後の発酵、均質化および低温殺菌という処理のもと、再安定化しなかった。
【0209】
25℃にて5%溶液中において、約242cPのより高い粘性を有するという事実にも関わらず、Wave 212は、DPP2に類似の特徴を有するHEペクチン繊維生成物である。AMD 780は、代表的には、1000cPを超える粘性を有する。他の一連のテストから(本明細書においては、報告されていない)、Wave 212が0.5%にて発酵ヨーグルトに適用される場合、Wave 212は、上記の飲用ヨーグルトの製法を安定化し得ることが公知である。しかし、本試行は、乳−ペクチンブレンドの後に続く不安定化なしに発酵前に乳に添加されるには、Wave 212にとってこの粘性は高すぎることを示す。
【0210】
SSPSは、低温殺菌、接種および発酵前に乳に添加される場合さえ、飲用ヨーグルトを安定化すると主張される。しかし、SSPSは、主に、本試行で適用された条件よりも低いMSNF含有量およびpH値において対象とされる。それゆえ、本テストの飲用ヨーグルトの特徴は、SSPSにとって完全には最適ではない。通常の条件において、AMD
780と共に安定化される(すなわち、発酵後にヨーグルトに添加される)場合、約2〜3%の沈殿物値が、本製法およびプロセスによって予測される。
【0211】
DPP2は、解重合ペクチンを含む安定剤が、SSPSと匹敵する安定化の性能で、乳の低温殺菌、接種、および発酵の前に乳へ添加され得ることを示す。乳−安定剤ブレンドは、低温殺菌、接種、および発酵に際して分離せず、そして最終的な飲用ヨーグルトの均質化に際して、および低温殺菌に際してさえも、かなり安定な生成物が得られた。SSPSのように、結果として生じる飲用ヨーグルトのサンプルの安定化は、完全には最適であり得ない。製法条件の調製(例えば、より低いMSNF含有量、より低いpH)が、DPP2の性能を改善し得る。
【0212】
上記データは、第2の低温殺菌工程の有害な作用がないこと、それ故、本発明は、長期保存製品における適用(代表的には、6ヶ月の保存期間)および生きた微生物を含む食品への適用(代表的には、14日から28日の保存期間)に適切であることを示す。
【0213】
(実施例2)
目的:長期保存飲用ヨーグルト(後に低温殺菌された飲用ヨーグルト)の生成のための低温殺菌、接種および発酵の前にペクチン安定剤を乳に添加する、飲用ヨーグルトの適用における、1)400cPに近い粘性を有するDPP4、および2)DPP4と高分子量ペクチンとの組み合わせ、の性能をテストすること。
【0214】
DPP4を、DPP2と同じ手順によってGRINDSTED(登録商標)Pectin AMD 1387から生成した(5%溶液中で粘性を約400cPまで増加させるために2時間加熱処理したことのみ異なる)。
【0215】
テストされた解重合ペクチンサンプルの特徴は、以下のようであった:
【0216】
【表8】

上記に一覧にされた解重合ペクチンサンプル(DPP4)を、0.30%および0.40%の量で適用した。さらに、0.30%のDPP4と0.10%のAMD 780とのブレンド(以下を参照のこと)を、試行において適用した。
【0217】
以下の公知の安定剤を、比較例として使用した:Danisco A/Sから入手可能なGRINDSTED(登録商標)Pectin AMD 780(AMD 780)を、0.40%にて適用した。Soyafibe−S−DA 100(Fuji Oil Co.,Ltd.(日本)により生成された、SSPS、可溶性ダイズ多糖類)を、0.40%にて適用した。
【0218】
飲用ヨーグルトモデル:最終的な飲用ヨーグルトを、8%の無脂乳固形分(MSNF)含有量、8%の糖含有量、0.1%の脂肪含有量、および4.0のpHによって特徴付けた。この乳主成分を、Jo−Mix NM 1−20を使用して発酵した。
【0219】
製法条件およびプロセス条件:(飲用ヨーグルトのサンプルあたり4000gの総容量に基づく)337gの脱脂粉乳粉末を、30分間50℃にて約2830gの水中で(安定剤の量に依存して2826g〜2842gの範囲にわたる)水和した。安定剤は、総糖量の1/8との乾燥混合物であり、そして80℃にて500gの脱イオン水中に溶解した。その後、この安定剤溶液を40℃に冷却し、そして5分間撹拌した状態で再混合された乳に添加した。この安定剤−乳ブレンドを、10分間95℃にてタンク中で低温殺菌し、42℃の発酵温度に冷却し、そして0.02%のJo−Mix NM 1−20を用いて接種した。安定剤−乳ブレンドを、42℃にてpH 4.2まで発酵した。次いで、このブレンドを、カゼインカードを破壊するために撹拌し、そして後の発酵を防ぐために10℃に冷却した。
【0220】
残りの糖部分(総量で320g)を、飲用ヨーグルトに添加した。クエン酸溶液の添加によって、pHを4.0に調製した。このサンプルを、300bar/60℃にて均質化し、そしてその後90℃にて15秒間、低温殺菌した。全ての飲料を、10℃に冷却し、ビンに詰め、そして低温条件で保存した。
【0221】
サンプルの評価:全てのサンプルを、生成後7日目に(5℃にて保存)、視覚的におよび分析的に検査した。最終的な飲料の粘性を、10℃で、スピンドル番号61を用いたBrookfield Viscometer model DV−IIを用いて、30rpmで作動して、測定した。読み取りを、30秒後に行った。沈殿を、室温にて、Heraeus Varifuge 3.2Sにおける20分間の2800gでの遠心分離によって促進させ、そして沈殿物の全体のサンプルに対する重量比として表現した。
【0222】
(結果−生成後7日目)
【0223】
【表9】

上記の実施例1と比較して、この実験は、より高い粘性(すなわち、400cpに近い(すなわち、始めの試行よりもより高い分子量))を有する解重合ペクチンサンプルを適用した。DPP4サンプルを、実施例1よりもより少ない量にて適用した。ブラインドサンプルと比較して顕著な安定性の向上を、0.40%のDPPの量によって得た。
【0224】
安定性を、DPP4とAMD780とをブレンドすることによってさらに向上させた。0.30%のDPP4と0.10%のAMD 780とのブレンドは、これらの条件のもと、0.40%のSSPSと同じくらい等しく機能した。
【0225】
400cPよりわずかに低い粘性を有するDPP4は、低温殺菌、接種、発酵および後の低温殺菌の前に乳に0.40%にて添加された場合、後の低温殺菌を受けた飲用ヨーグルトの安定性を向上した。この安定性は、0.30%のDPP4と0.10%のAMD 780とのブレンドによりさらに向上し、ここで、この安定性は、0.40%のSSPSを用いて得られた安定性と等しくなった。
【0226】
(実施例3)
目的:撹拌型ヨーグルトの生成のための低温殺菌、接種および発酵される前に、ペクチン安定剤を乳粉末と乾燥ブレンドし、分散および水和させる場合の、撹拌型ヨーグルトの適用の際の種々のエステル化の程度を有する解重合ペクチンの性能をテストすること。この実験はまた、標準的な高分子量生成物(例えば、GRINDSTED(登録商標)Pectin SY 200が、その最大限の受容可能なレベルである0.15%にて発酵前の乳に添加される場合)によって得られ得るものと比較して、粘性の増加およびクリーム性の増加を達成することが可能か否かを研究する。
【0227】
225gのGRINDSTED(登録商標)Pectin LC 1700を、4Lの熱い脱塩水中に溶解し、そしてこの温度を80℃に調節した。そして、1.2gの過酸化水素水溶液(35%)を、次いで添加した。80℃にて4時間撹拌した後、この混合液を、室温にまで冷却し、そして8Lの80重量%イソプロピルアルコール水溶液中に混合することによって沈降させた。1時間ゆっくりとかき混ぜた後、この沈降物を、布に通したろ過によって集め、この物質をさらに、4Lの60重量%のイソプロピルアルコール水溶液中に1時間懸濁することによって洗浄した。布を通したろ過によって水相を分離した後、この沈降物質を手で圧し、そして一晩60℃の換気オーブンにて乾燥させた。203gの乾燥DPP5を、0.25mmスクリーンに通るように製粉した。
【0228】
DPP7を、実施例1のDPP2の調製のための手順を反復することによりGRINDSTED(登録商標)Pectin AMD 1387から生成した。
【0229】
テストされた解重合ペクチンサンプルの特徴およびその適用量は、以下のようである:
【0230】
【表10】

*DPP6は、64%のDPP5と36%のDPP7とのブレンド(すなわち、LE−DPPペクチンとHE−DPPペクチンとのブレンド)である。
【0231】
市販の、標準的なペクチンであるGRINDSTED(登録商標)Pectin SY
200(高分子量ペクチン)を、比較の目的でコントロールとして使用した。このペクチンを、ヨーグルトが所定の処理条件において受容不可能なほど粒子が粗くなる前の最大限の受容可能なレベルに対応する0.15%にて、基準として適用した。
【0232】
撹拌型ヨーグルトモデル:撹拌型ヨーグルトは、再構成された脱脂粉乳粉末および全脂粉乳から生じた2%の脂肪を含み、10.5%のMSNFに対応した4.0%のタンパク質に調節された。発酵を、最終的に4.5のpHを目標にYO−MIXTM 301カルチャーを用いて実行した。
【0233】
製法条件およびプロセス条件(撹拌型ヨーグルトのサンプルあたり4000gの総容量に基づく):ペクチンを、225gの脱脂粉乳粉末と294gの全脂粉乳とを乾燥させブレンドし、そして適切な撹拌のもと45℃にて3468gの水に添加した。この混合液を、65℃/200にて均質化し、80℃に予熱しそして6分間95℃にて低温殺菌した。この混合液を、0.02%のYO−MIXTM 301を用いて接種し、そしてpH 4.5まで42℃にて発酵した。最終的に、このヨーグルトサンプルを、24℃に冷却し、ビンに詰め、そして5℃にて保存した。
【0234】
サンプルの評価:全てのサンプルを、生成に際して3日目に以下の判定基準に関して分析した:
・pHを、pHメーターMETTLER DELTA 340を用いて測定した。
・Brookfield粘性を、スピンドルS25を用いた30rpmで作動させたBrookfield DV II + Viscometerにて測定した。5℃にて15mlのサンプル容量を、測定のために使用した。この読み取りを、30秒後行った。
・尺度1(表面に乳清がない)から9(表面に明白な乳清がある)までの、視覚的シネレシス。
・尺度1(非常に粒が粗い)から9(非常に滑らか)までの、視覚的滑らかさ。
・尺度1(非常に薄い)から9(非常に濃厚)までの、口の中での分解に対するサンプルの耐性として判断される濃厚さ。
・尺度1(滑らか/粒子がない)から9(非常にザラザラしている)までの、飲み込む際の、口中に残り、感じられる粒子として判断されるざらつき感(sandiness)。・口の中でのクリーム性(あり(クリームのような感覚)または、なし(水っぽい)と判断される)。
【0235】
(結果−生成後3日目)
【0236】
【表11】

粘性:0.10%で投与されたDPP5を除いて、0.10%〜0.20%にて投与された全ての解重合ペクチンサンプルは、0.15%のSY 200に近いか、等しいかまたはわずかに高い粘性さえ生じた。0.30%以上に解重合ペクチンの量を増加させることは、0.15%のSY 200に比較して、粘性の明らかな向上に結び付いた。
【0237】
視覚的シネレシス:全てのサンプルが、基準のサンプルの0.15%SY 200と同等な、限定されたシネレシスを示した。
【0238】
滑らかさ:全てのサンプルを、ごくわずかな差異で、滑らかさが高いと、ランク付けした。
【0239】
濃厚さ:全てのサンプルを、0.15%のSY 200の基準のサンプルと同等かまたはそれよりも濃厚と知覚した。0.30%以上の分析的に測定した粘性量に関して、テストされた解重合ペクチンのサンプルは、0.15%のSY 200と比較して、明白に濃厚さを改善した。
【0240】
ざらつき感:全てのサンプルを、ざらつき感に関して平等にランク付けした。
【0241】
クリーム性:0.15%のSY 200の基準のサンプルは、クリーミーであるとは見出されなかったが、他方で、テストされた解重合ペクチンは、撹拌型ヨーグルトをクリーミーにした。
【0242】
この試行に適用された解重合ペクチンサンプル(DPP5、DPP6およびDPP7)を用いて、最大受容可能なレベルの0.15%で投与された基準のペクチンであるGRINDSTED(登録商標)Pectin SY 200によって得られたものと同等かまたはより明白に高い粘性を有する撹拌型ヨーグルトを生成することが可能だった。0.30%以上で投与された解重合ペクチンにより、粘性の増加、濃厚さの感覚の増加およびクリームのような知覚を達成した。GRINDSTED(登録商標)Pectin SY 200のような従来の、市販の高分子量ペクチンタイプとは対照的に、このような多量の解重合ペクチンは、撹拌型ヨーグルトの生成のための低温殺菌、接種および発酵前に乳粉末と乾燥ブレンドされ、分散および水和され得る。これは、0.15%〜0.20%で使用されるGRINDSTED(登録商標)Pectin SY 200のような標準的なペクチン生成物より通常発生するざらつき感の生成なしに可能であった。
【0243】
(実施例4)
目的:低温殺菌および発酵の前の乳に適用する場合の、撹拌型ヨーグルトにおける、アミド化LE解重合ペクチン、HE解重合ペクチン、およびこれらの混合物の性能をテストすること。
【0244】
230gのGRINDSTED(登録商標)Pectin LA 1490を、撹拌することによって4Lの熱い脱塩水中に溶解し、そしてこの混合液の温度を80℃に調節した。この撹拌した混合液に、1.20gの過酸化水素水溶性(35%)を添加し、そして撹拌を80℃にて4時間続けた。室温に冷却した後、この解重合ペクチンを、8Lの80重量%のイソプロピルアルコール水溶液中に混ぜることによって沈降した。1時間この沈降物をゆっくりと混ぜた後、この沈降物を布を通したろ過によって集め、そしてこの物質をさらに、4Lの60重量%のイソプロピルアルコール水溶液中で1時間懸濁することによって洗浄した。布を通じたろ過による液相の分離後に、この沈降物質を手で圧し、そして一晩60℃の換気オーブンにて乾燥させた。217gのDPP9を単離し、そして0.25mmスクリーンに通るように製粉した。
【0245】
DPP10を、実施例1によるGRINDSTED(登録商標)Pectin AMD
1387から調製した。
【0246】
この実施例において使用される組成物DPP8は、以下のようである:
DPP9 32g
DPP10 18g
総量 50g。
【0247】
ブレンドDPP8の組成は、64%の解重合アミド化低エステルペクチンおよび36%の解重合高エステルペクチンである。
【0248】
テストされた解重合ペクチンサンプルの特徴は、以下のようである:
【0249】
【表12】

基準として、0.1%の量のGRINDSTED(登録商標)pectin SY 640を使用した。GRINDSTED(登録商標)pectin SY 640は、アミド化低エステルペクチンである。
【0250】
手順:ヨーグルトの調製のための手順は、脂肪を2%に調節するためにクリームを製法に添加したことを除いて、実施例3と同一である。上記粉末成分を混合し、そしてこの乾燥ブレンドを45℃にて撹拌のもとクリームと水に添加し、そしてその後65℃に予熱し、65℃/200barにて均質化し、そして6分間95℃にて低温殺菌した。低温殺菌後、スターターカルチャーYo−Mix 410の添加(0.02単位/lの脱脂粉乳に10%溶液として添加される)の前に、この混合物を5℃まで冷却した。スターターカルチャーの接種後、この乳調製物を、42℃の温度にて発酵した。
【0251】
上記発酵を、pH 4.50まで進めさせた。この特定の選択されたカルチャーを用いた代表的な発酵時間は、約5時間であると見出された。この発酵物をプレート熱交換器上で24℃まで冷却し、そして5×155mlビーカーの各々に配置し、そして5℃にて保存した。
【0252】
生成されたヨーグルトを、以下に関して分析した:
・シネレシス(3週間後に測定した);
・Polyvisc粘性(Polyvisc(登録商標)機器、5℃にて100mlの容量のヨーグルトを放出して15秒後に覆われる距離の測定;高いPolyvisc指標は、流動性の粘性のない生成物に対応する);
・Brookfield粘性(標準)。
【0253】
テストされた解重合ペクチンサンプルの特徴は、以下のようである:
試行したヨーグルトの成分:
【0254】
【表13】

試行したヨーグルトの評価:
【0255】
【表14】

高いBrookfield粘性および低いPolyvisc指標レベルによって示されるように、この一連の試行からの全体的な結論は、0.3%から0.5%のDPP10 HE解重合ペクチンの量の使用レベルが、0.1%の量の基準SY 640ペクチンまたは11%のMSNF+を有するがペクチンを有さない基準のヨーグルトと、類似かまたはより高い粘性レベルを生じるということである。同じ結論を、0.3%および0.4%の量のレベルのペクチンDPP8に関して引き出し得るが、0.5%の量のレベルにおいては、ペクチンDPP8を含むヨーグルトサンプルの粘性は、崩れる。
【0256】
全ての量のレベルにおいて、シネレシスは、基準の11%のMSNFヨーグルトサンプルの中でよりも、3つのテストされたペクチンのいずれかを含むヨーグルトサンプルにおいてより低かった。
【0257】
上記の明細書において述べられた全ての刊行物は、参考として本明細書において援用されている。本発明の記述された方法および系の種々の変更および改変は、本発明の範囲および精神から逸脱せずに当業者に明白である。本発明は、特定の好ましい実施形態と関連して記述されてきたが、主張された本発明は、そのような特定の実施形態に過度に制限されるべきではないと理解されるべきである。実際、化学、生化学または関連分野の当業者に明白な、本発明を実行するために記述した様式の種々の変更は、添付の特許請求の範囲の内であることが意図される。
【0258】
(参考文献)
【0259】
【化1】

【0260】
【化2】

【0261】
【化3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2010−187703(P2010−187703A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131480(P2010−131480)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【分割の表示】特願2006−523709(P2006−523709)の分割
【原出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】